297 :
名無しさん@おだいじに:
第六回
表情ひとつ変えず、冷静をよそおって弁明したこの中心人物の言葉を大衆は盲信
した。こいつらは理性を失っている。そう感じた。大衆はすでに感情のみにに支
配されて行動していた。
結局、発起人70余名のうち辞退者は8名にとどまった。しかし、署名の大学提出
は当分保留となった。署名用紙には辞退者の名前が記されており、そこから辞退
者の名前だけを削除したのではこの署名自体、無効になる可能性がある、という
のがその理由だった。
7月8日、恐れていたことが起きた。全国紙に載ってしまったのだ。内容は前に記
したとおり。女子学生は今度は市内の女性グループを味方につけた。そして、民
事告訴した。数日前に、学生中心人物が言っていた通りになった。警察にも再度、
刑事告訴されたらしかった。
警察の取り調べと学校の事情聴取でO君の夏休みはなくなった。
新学期、学校のロッカールームでO君に会った。彼は元気にしていると言い、訴
訟のほうも大事にならず、何とかなりそうだということを話してくれた。O君は
初めに刑事告訴されたとき、自殺を考えるまで追いつめられた。でも、今は理解
者も増えて何とか耐えているといった印象だった。
それから数日後、女子学生の訴えに対する学校側の対応が文書になって掲示され
ていた。そのすぐ横には署名運動で使った文書が貼ってあった。署名は学校に提
出されたのだ。学生の中心メンバーは自らの保身のために署名提出を強行したの
だ。