283 :
名無しさん@おだいじに:
第4回
7月に入って署名運動の具体的内容が決まった。当初、「学内レイプ事件に対し
て男子学生に制裁を求める」という内容は「安全な学校環境づくりを求める」と
いうものに変わっていた。前者の内容のままでは署名が集まらないと学生の中心
メンバーたちは考えたのである。後者の内容としたことで、多くの署名をとりつ
つ間接的に学校が男子学生に制裁を与えるよう仕向けようとしたのである。
二か月ぶりに私たちは再び集められた。私を含め、密会に出席したほとんどが発
起人として名を連ねた。
それから数日後、署名運動の中心メンバーの一人が署名用紙を持って私の所へやっ
てきた。私は、まだ当の男子学生が特定できないでいた。私はその用紙を受け取
り、さり気なく聞いてみた。「Y君にはこの話しはしたの?」するとこう返事が
返ってきた。「微妙な人には最近になって僕が個人的に話しをした。」と。
Y君はO君とは無二の親友である。私はその”微妙な”という言葉にピンときた。
はたしてその予感は的中した。
O君は私の友人でもある。7月3日、金曜よる、Y君を通して急いで連絡をとった。
男子学生とはやはりO君のことだった。翌日O君はこの署名運動について初めて知
ることとなる。
O君には既に弁護士がついていたが、父親の伝を頼ってやっと見つけたという。
そして偶然、大学の顧問弁護士もしていたのだという。だから女子学生が言うと
ころの、大学側がO君に意図的に顧問弁護士をつけたというのは嘘だった。
刑事告訴はされたらしいが既に不受理扱いとなっていた。裁判はおろか起訴も受
理もされていなかったのである。なぜ受理されなかったか。その理由は唯一存在
する物証にある。その物証とは、その女子学生がO君に宛てた手紙である。弁護
士さんいわく、手紙は第三者に見せることはできないというので直接は見せても
らえなかったが、万が一、裁判になっても十分証拠にないりうるものだという。
その手紙の内容はO君に対して好意を寄せるもので、女子学生が訴えるような”
一方的に関係を迫られた”というのには明らかに反するものだった。
284 :
名無しさん@おだいじに:02/05/09 16:51 ID:XnzwSBpE
第五回
私が、学生の動きの経緯を話すと、O君は学生の自分に対する敵対感情に怯えた。
声が震え、手がふるえたので怯えの大きさは外からでもすぐに見てとれた。
ではなぜ、こんな大事になったのか。O君は「自分でもよくわからないけれど、
推察するに、その女子学生はO君に振られたと思い、逆上したのではないか」と
言う。彼の言っていることは当たっているかもしれない。なぜなら人間は異性に
振られると、それまでの感情が敵意となって、それまでとは逆の行動をすること
があるからだ。ストーカー行為がその例だ。
私は学生の中心人物にこのことを話し、私が発起人を自体するこを申し出、それ
と同時に署名運動の取消しを求めた。しかし、彼らは女子学生の言うことを信じ
きっており、何を言ってもだめだった。その後、裁判にはなっていないことを知
ると、彼らは「刑事がだめなら民事がある」。そう言ったそうだ。
それから数日間、私たちは何とか署名運動が止められないものか対策を練った。
署名はかなりの数になっていたらしい。同学年のクラスメイトに話しをすると、
その男子学生とは実はO君だった、ということにみな驚いていた。
私の最も信頼する友人であるR君は事の重大さに気付き、すぐさま発起人を辞退
した。R君は私だけでなく、学内では多くの学生からの信望が厚い。R君の冷静な
判断に改めて敬意を表した。彼はこうも言っていた。「一方的な情報を与えて仮
想の敵を作り、その敵に対する反感感情を植え付け、大衆をあおる。これはファ
シズムを思わせる動きだ。」と。
二名の発起人辞退者を出して、署名運動中心メンバーたちは残る70人余もいる発
起人を集めて緊急会議を開かざるをえなくなった。署名が大学に提出される予定
の前日であった。今度は秘密裏にではなく、学内の教室を使って行われた。私は
もちろんのこと、O君も出席して必死に説明した。しかし、いちど植え付けられ
たO君に対する敵対感情はなかなか収まらなかった。学生中心メンバーたちも、
自分たちから大衆が離れていかないよう必死に弁明した。
「警察で罪を認めている」とか「学校側は男子学生に顧問弁護士をつけた」、
「現在、裁判中」という嘘について彼等は、確認がとれていないと言ってごまか
した。女子学生が6年担当に宛てた手紙の内容と、密会で読ませられたその手紙
コピーの内容に天地がひっくりかえるような決定的な違いがあったことを指摘さ
れると、「実は、手紙は二通あって、表現の仕方に差が出てしまった。あとでそ
れらをお見せします」などと、巧に嘘をついた。その後、その二通の手紙を見た
者は誰もいない。