■■■  一級建築士製図編 Part34  ■■■

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284製図男
 去年も試験前は緊張した。しかし今年はそれをはるかに上回るパニックだった。
「絶対に落ちることのない成績」を取った。
しかしその栄光が、逆に重くのしかかる。本当に信じられない皮肉である。
 「何でなんだ、どうしてなんだ」僕は一晩中唸っていた。

夜が明けた。結局一睡も出来なかった。

 目は真赤に染まり、叫び続けていたせいで喉も枯れている。
「ちきしょう、ちきしょう」僕はそう何度も小声を吐きながら、家を出ていく。
何かにとりつかれた様なその格好は、誰が見ても異様だった。

 試験が始まった。そこで僕は、ついに全ての限界を迎える。
 何も考えられない極限の状況の中で、僕は試験用紙を眺める。
いつもはスラスラ読めていたが、今日はいくら読んでも頭に入ってこない。
神経がもうろうとしている。
285製図男:2005/10/29(土) 22:12:28 ID:???
さらに昨晩の睡眠薬や風邪薬の、過多な摂取も災いしたのだろう。
胃が痙攣しているのか、吐き気がいつまでも止まらない。

 実際9月に入ってから、ストレス性の血便が止まらなかった。
健康管理はしていたが、神経の方まではどうしようもなかったのだ。
体は悲鳴をあげていたのだろう。ここにきて僕はついに、限界に打ちのめされた。

 帰り道、緊張から開放され笑顔がこぼれる受験生の人波の中で、
僕は顔をグシャグシャにしながら、泣いていた。

結局この日、試験用紙を前に何にも出来なかったのだ。
屈辱の何ものでもない。「絶対に受かる」、その自信が一番のプレッシャ−だった。
286製図男:2005/10/29(土) 22:16:19 ID:???
 製図試験前日、一晩中、落ちたときの命を奪われる恐怖が、僕を押しつぶした。
睡眠薬を3個も飲んだ。それでも眠れない。
眠れればなんでもいいと思い、「カゼ薬」までも大量に飲んだ。
「早く寝ないと」、焦れば焦るほど僕はおかしくなっていく。
いくら力があっても、究極の集中力を要する難問だ。万全で挑みたい。

「落ちる、このままだったら落ちる」、

恐怖が最高潮に達したその時だった。
 強烈なめまいがして、世界がぼやけた。そこで全てが終わったのだ。

 トイレにかけこんだ僕は、吐いていた。
極度の緊張からくる神経的な症状だった。
 よく受験参考書には、
「本番前は誰でも緊張するんだ。だからそんなのには打ち勝て!」
といったメッセ−ジが書いてある。
「誰でも同じように」というが、本当にそうなんだろうか。
それはあまりに厳しすぎる話だ。
少なくとも僕は、過去10回の学科試験とと7回の受験には耐えられた。
しかし「本番」というその重圧には、耐えることが出来なかったのだ。
 18年の戦いの結末がこれか、何も良いことなんてないのか、
そう思えば思う程、本当に惨めだった。
287製図男:2005/10/29(土) 22:17:05 ID:???
 「こんな人生なら、もうやめだ・・・」

家に戻っても、僕は涙を抑え切れなかった。18度目の涙だった。
 僕は泣いていた。いつまでも泣いていた。

「もうどうなってもいい」

そう全てを捨てていた。
すると不思議なことに、いつの間にか僕は眠りにおちていた。
精神の限界を超え、疲れが波となって押し寄せてきたのだ。
何日ぶりか、僕は深い眠りの中にいた。
288名無し組:2005/10/29(土) 22:20:07 ID:???
一応私は製図試験7年目の方の製図男ですが上の方とは関係ありません。
私は今回は結果発表を待つだけです。
お邪魔しました。
289製図男:2005/10/29(土) 22:27:52 ID:???
今年、僕の体調は完璧だった。
 脳はさえわたり、力に満ちあふれている。
(先ほどの文章は昨年書いたもの)

昨年、「限界」にまで追いつめた事が、全ての勝因だったのだ。
ピ−クを過ぎた僕の精神は、試験のみに集中出来る最高の状態にあった。
 大教室には400人程度の受験生がいたが、敵はやはり自分自身だった。

 「この運命に挑戦してやる、今なら僕を止められないぞ!ドラマは終わりだ!」

 僕は心の中でそう叫ぶと、自分の力を信じた。
もう、「運命」は抵抗出来なかった。
 体が万全ならば、やはり問題などどこにも無い。
その年は昨年より難化したが、僕には関係なかった。
完璧に読める、解ける、そんな興奮さえ沸き上がってくる。
出題条件もスラスラ読めて、迷うところはない。

「完璧に条件をクリアしないと受からない」

ここまで歪んだ僕の勝負だったが、この時はそれでも手応えがあった。
昨年とは違う「完璧」という感覚だ。
290製図男:2005/10/29(土) 22:35:35 ID:???
合格発表である。 
僕は建築士会で静かにその審判の時を待っていた。
 僕の周りにいる受験生の群集が、ドッと湧く。
そう、合格番号の掲示板を持った職員が、やってきたのだ。
合格発表が始まる。
 「ついにクライマックスか」
 泣きそうになる気持ちを僕は抑えた。
−51128−運命を決めるこの番号を確認する。
緊張からか、手が震えている。
ノドもカラカラだ。
しかし今日は負けない。やってやるよ、これが最後の言葉だった。
 僕は前に出た。
                
−51024−
−51050−
−51053−
−51080−
−51082−
−51128−
−51134−
−51135−
               
 ・・・・・合格
291製図男:2005/10/29(土) 22:36:44 ID:???
 「終わった、終わったんだ」、力が一気に抜け、今までの記憶がとんでいく。
全ての感情を超えた。それは夢の世界だった。
 ようやく気付いた。冷静に考えられた。これだけ頑張ったんだ、
だから受かって当然なんだ、何をそこまで悩んでいたんだ。
 「呪い」の様に苦しみ続けた建築士受験という大命題。
勉強している時は、どれだけ難しいんだろう、と悩み続けた。
「死」まで覚悟した。
しかしそれだけ苦しめば、絶対に手に出来るものだった。
すごくも何ともない。
努力さえすれば手に入るという、「簡単」なものだった。
全てが終わった今、僕は憑き物が取れたように、そう悟った。