【電気グルーヴ発 猛毒経由 ムネオハウス逝き】
先日の最高大会議VS殺害塩化ビニールは、
ナードコアテクノと呼ばれた(あえて過去形)ムーブメントが、
長い年月を経て、先祖がえり的に
殺害塩化ビニールとコラボレートしたイベントでした。
共演した全のイワキはMC時には興奮しっぱなしで
猛毒や殺害塩化ビニールへの熱い思いを語り、
オーガナイザーのDJ急行もいつも以上のハイテンションで、
最後に出演した猛毒?のライブ時は、
最高会議側のお客さんも殺害塩化ビニール側のお客さんも入り混じって、
近年まれに見ぬ異常な盛り上がりを見せました。
さて、本日はその歴史を少し紐解いてみましょう。
日本のテクノミュージックの歴史を紐解くと、
デトロイトテクノ以降(わかりやすく言えばYMO以降の世代)の、
今現在一般的に使われている「テクノ」という音楽ジャンルが
日本に根付いたきっかけとなったのは電気グルーヴであり、
石野卓球の功績だったりします。
その石野卓球のテクノ啓蒙活動のひとつが、
「電気グルーヴのオールナイトニッポン」
というラジオの深夜放送でした。
今でこそ、大物アーティスト気取りの石野卓球と
テレビのバラエティ番組で所在無さ気なピエール瀧ですが、
当時の二人のトークは抜群に面白く、
下手な芸人を遥かに凌駕する軽妙なトークで若者の人気を集めていました。
その番組の中で「今週のお薦め曲」というコーナーがあり、
UnderworldやORBITALなど、
今ではオリコンチャートに顔を出すような大物をはじめ、
さまざまなテクノの名曲を紹介していました。
そこで卓球はこう言いました。
「ギターとか買ってバンドやるぐらいなら、絶対シンセサイザー買った方がいいよ」
そうやって卓球に騙された若者が
シンセサイザーやシーケンサーやサンプラーなどを買い揃えていきました。
その中で真っ当な道を進んだ人達というのが、
KAGAMやTAKAMIなど(いわゆるABEND世代)の
今後のテクノシーンを担っていく人材だったりするわけです。
しかし、世の中すべてがそういう真っ当な道に進むわけではなく、
真っ当な道を進んだ人達が、手に入れたサンプラーで
ドラムやシンセサイザーの音を取り込んでいたのに対して、
サンプラーを手に入れて真っ先にサンプリングしたのが、
ファミコンの効果音だったり、テレビアニメの決め台詞だったり、
プロレスのマイクアピールだったり、
特撮の迷台詞だったりする奴らがいました。
その様な異形のテクノを作り出すことになった者達に
絶大な影響を与えたのが「猛毒」というバンドです。
この猛毒も「電気グルーヴのオールナイトニッポン」の
「今週のお薦め曲」のコーナーでかかったのですが、
一部の若者たちに強烈なインパクトを与えました。
そういった流れで、電気グルーヴの影響下の元、
異形のテクノを作り続けたのが、
レオパルドンの高野政所やトイレーベルの中島(BUBBLE-B、カラテクノ)
シャープネル、全(旧:全日本レコード)などの
のちにナードコア四天王などとも呼ばれた人たちでした。
全国同時多発的に
確実にあらぬ方向に日本独自のテクノ文化が生まれて進化していきました。
この辺が、伝説のクラブイベントである「スピードキング」につながり、
「アーケードアタック」などで交わっていくのですが、
その辺はおいおい機会があったら(たぶん無い)書くことにします。
それらがサブカルチャー系雑誌の
「クイックジャパン」に大きく取り上げられ
「ナードコアテクノ」と呼ばれるようになり、
更に、電気グルーヴを通っていない、
次世代ナードコアテクノが出てくるようになりました。
最終的に、このナードコアテクノは、
ムネオハウスムーブメントに繋がり
(実際ムネオハウスには変名でナードコアテクノの
第一世代が参加していたりするんですが、こっちの話しも今回は割愛)
ネタモノサンプリングをもちいたテクノというのは、
国内では確固たるジャンルを築き、独自の文化として発展中です。
(コアな層に言わせりゃ、ムネオハウスで終わったって感じですがね)