火山島・大根島は安全か?

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「私は、ハワイのようなホットスポット型の火山は根本的構造が日本の
火山と異なるので、>>40 で別儀にして欲しいと述べたのですが・・・。>52)」
ハワイはホットスポットかどうかに関わらず玄武岩質火山の典型です。
支配的な応力場が巨大な山体が受ける重力的な変形によるものであることを
除けば、マグマの上昇から噴火にいたる力学的現象は多くの火山に共通するものです。
ちなみにキラウエア火山南山腹ヒリナ正断層系のカラパナ地震ですが、
この場合は断層面にそってマグマが上昇するのは可能です。しかし、この断層
のある地域にマグマを持ってくることができない(応力場がマグマだまり-主火
道からマグマを持ってくることを許さない方角にある)のでここから噴火しません。

「さて、粘性の低い溶岩の火山は日本には少なく、有名なものは
火山活動の盛んな伊豆大島のような場所にしかありません。(>53)」
 大きさにこだわらなければ玄武岩の火山は日本にもたくさんあります(特に中国地方!)。
玄武岩を噴出したことのある火山まで含めると大部分の火山が相当します。
基本的にマントルで最初にできるマグマは玄武岩質であるからです。
むしろマグマの供給が多いと大きなマグマだまりを作って結晶分化作用によって
安山岩質マグマをつくったり熱で周りの地殻物質を大量に溶かして流紋岩質マグマを
作ってしまったりして複雑になります。

「やはり、あなたと11氏は別人だったのですね。矛盾してるみたいです
からね。(>51)」
16さんと応力場に関して矛盾はしてないですよ。そして
「南北に走る鳥取西部地震の開口割れ目(岩脈)が東西であるというので全く問題が
ありません。(>51)」は間違いです。
しかし鳥取西部地震と同一の応力場下での開口割れ目(岩脈)が東西である、
というのは間違いではありません。
鳥取県西部地震の震源断層面は北北西-南南東方向でほぼ垂直、左ずれ。
推定される主応力軸は西北西-東南東方向。東西方向の岩脈はこの程度の
一致なら同一応力場のもとで形成されうるとみてよい、
というのが正確な表現です。そして
「横ズレして大根島の所が弱ければ、そこでひっかかって東西に割ける(>51)」
というならわたしや16さんが言うところと結局断層とは方向のちがう割れ目を用意する
ところで同じです。この場合も条件があり、例えば余震域北部が西に屈曲し、そこに
火山がある場合はあり得る配置です。しかし実は余震域は大根島のところまでのびて
いませんね。

 なお大根島を含め中国地方に散在する玄武岩質の単成火山群はほとんどが、アルカ
リ玄武岩マグマというタイプのマグマの噴火でできています。実験岩石学からマントル
のやや深いところでマグマ生産率の比較的少ない状態で生成したものとされています。
これらが地殻内で大型のマグマだまりを構成した可能性はほとんどなく、火山が形成
される(噴火する)時=マントルからマグマが供給された時という見方すら成り立つ
ものです。このようなマグマが地殻の深さ20km程度までの弾性変形-脆性破壊領域、
つまり内陸大地震の発生する領域に常在する可能性はかなり低いです。
したがって断層が動いたと同時に(噴火前兆現象と地震の余震が区別がつかないくらい
の期間に)噴火も起きてしまうことはほとんどないと思います。断層が動いたことによ
る周辺地域の応力降下が減圧発泡を促し上昇のきっかけを作る可能性はありますが、結
局通路は自分で作るので時間差と前兆現象を生じます。また最終的に噴火地点をきめる
弱点という意味では上昇中に出会う古い地質時代の断層などと大差ないでしょう。

 もちろんこの手の火山の生成はまだ観測されていませんし、じゃあナゼそこに大根島
はあるのか?と言われると多分専門の研究者の人も分からないのは事実です。
 しかし「活断層のそばでしか噴火しない。次回も大根島だ」という見解を広めること
は現在の地球科学の知識からいって過去の考え方であり、危険ですらあると思います。