・・・
今後の生産年齢人口の急減は、1950年代初頭からの大規模な育児制限の結果である。優生保護法など
による育児制限によって、戦後のベビーブームが早期に終結したことが、いわゆる「団塊の世代」を生んだ。
生産年齢人口の急減は、その団塊の世代が高齢者となり、代わって育児制限の行われた世代が、生産
年齢人口の中核となるためである。日本特有の「人口の谷」の存在が、他の先進国と異なり、経済を縮小
に導くのである。
ここから二つの結論が得られる。一つは、出生率の向上、つまり少子化対策では問題を解決し得ないという
ことである。なぜなら今後の生産年齢人口の減少速度は変えることができない。これから生まれてくる人々の
問題ではなく、すでに存在する人々の年齢構成の問題だからである。
いま一つは、外国人労働者の活用も問題の解決にはならないということである。現在最も外国人比率の高い
ドイツ並みに増やした場合の国民所得を試算したが、図のように、日本経済が早晩、縮小に向うことに変わり
はない。それだけ生産年齢人口の減少速度が大きいのである。
さらに外国人労働者の大規模な活用は、別の問題を生む。現在の外国人労働者への関心は、高度な技術労働者
ではなく、単純労働者に集中している。そのため、流入する外国人労働者は20-30歳代が中心となるが、それは第二次
ベビーブームの世代と一致する。
そして、他国の例からみて、その活用には限度があり、いずれ抑制に転じざるを得ないとすると、
それは第二次ベビーブームの「山」を高め、その後の「谷」を一層深くする。当面の経済の縮小幅は小さくなるかも
しれないが、将来の経済の縮小を一層急激なものにするのである。いわば「後世代への負担の移転」である。