『文藝春秋』 2008年11月号
恐慌前夜 ドル崩落が日本を襲う 田代秀敏
だが、これまで金融大国として君臨してきたアメリカの超トリプルA国債のCDSに値段がつき、
市場では売買されているのである。それはすなわちアメリカの破綻もありえないことではない、
と認識する人が金融機関にいることを意味する。
米国債がデフォルトになるようなことがありうるのか。
(中略)
この米国債を世界で一番多く保有している国はどこか。
日本である。
(中略)
だが、ヨーロッパのユーロ圏全体を見ると、すでに5月からGSE債はもちろん米国債も手放し
続けている。
9月25日、ドイツのシュタインブリュック財務相は「米国は世界の金融システムにおける超大国
の座を失い、世界の金融システムは一段と多極化するだろう。欧州大陸の他の主要国(G7)の
財務相もこの意見を共有している」と連邦議会で発言した。前もって米国債、GSE債を売り払い、
リスク回避をした側の余裕の発言ともとれる。
このしたたかな欧州は、アメリカが抱えるリスクを利益に転じようとしているのではないか。
そんな観測も出始めた。市場で取引されている米国債のCDSが、ユーロ建てであることから、
欧州の銀行が発売元なのではないかと推測されているのだ。米国債がデフォルトした後に、
ユーロがドルに代わる基軸通貨になる、そんな深謀遠慮さえ垣間見える。
『Voice』 2008年11月号
ドル一極支配は壊れている 倉都康行
http://www.php.co.jp/magazine/voice/?unique_issue_id=12371 現在、米国の借金である国債は約半分が海外によってファイナンスされており、こうした救済の
拡大で、海外勢はむしろ米国の返済リスクを真剣に問うようになるだろう。すでに欧州市場では、
米国政府のデフォルトを想定した新しい市場が誕生している。ドルの信認はまさに正念場を
迎えている。