大御所 東瑠利子

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49高城涼子 ◆3hoyN3.pmOxR
【音楽家東瑠利子、華麗なる愛】 ■第二十三回■
昭和60年の秋は静かに過ぎていった。
街中では枯葉が舞うようになり、冬の訪れを感じるようになっていた。

瑠利子は勉学にいそしむ一方で黛敏郎の「涅槃交響曲」や
武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」などに関心を示していた。
瑠利子の部屋から重厚なクラシックの音が途切れることはなかった。

秋も深まった昭和60年10月下旬のある夕暮れ時であった。
瑠利子はいつものようにステレオでクラシック鑑賞をしていると、
母が青ざめた表情で部屋に飛び込んでくるなり、こういった。

「伯母さんがね、さっき車に轢かれて…」

瑠利子は頭の中が真っ白になった。
伯母さんはどうなったのか聞こうとしたが聞けなかった。
母は両手で顔を覆って泣き崩れた。

(第二十四回に続く)