ドバイ・ショック 新興国の債務不履行、懸念拡大 「隠された爆弾」欧米注視
11月29日7時56分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091129-00000045-san-bus_all 【ロンドン=木村正人、ワシントン=渡辺浩生】アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国の政府系企業をめぐる信用不安は、
世界的な金融危機から脱し切れていない国際金融市場に、新たなバブル崩壊のリスクを想起させている。欧米中央銀行の
低金利政策を背景に、過剰なマネーが流入する他の新興市場国の財政問題への懸念が広がり、欧米金融当局は事態を注
視している。
ドバイ政府が25日に、債務の支払い猶予を要請した持ち株会社「ドバイ・ワールド」向けの残高を抱える海外金融機関は、
HSBCなど英国勢が中心だ。
UAE全体の債務総額は1230億ドルで、うち英銀の貸し付けは約4割の502億ドル。債務総額が590億ドルとも伝えられる
「ドバイ・ワールド」には、昨年の金融危機で公的資金が注入され、事実上国有化された英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコット
ランド(RBS)が、過去3年間で22億8000万ドルの融資に関与していたことが判明。米金融大手ゴールドマン・サックスの推
計では、HSBCの貸付額は6億1100万ドル、スタンダード・チャータード銀行は1億7700万ドルにのぼる。
今後の債権処理の行方次第では、RBS再建への懸念が広がる恐れもあり、ブラウン英首相は27日、「世界の金融システム
は強固になった。この問題に対応することは可能だ」と、“ドバイ・ショック”が第2の世界的金融危機の引き金になるとの懸念
を否定した。
英銀などがドバイのリゾート開発に貸し込んできたのは、背後に石油マネーを持つアブダビが控えているからだ。政府系ファン
ド、アブダビ投資庁の資産は8750億ドルと推定され、万が一、ドバイ経済が破綻(はたん)してもアブダビが救済に乗り出すと
みられている。このため、世界市場への影響は限定的との見方もある。
しかし、“ドバイ・ショック”の余波は広がりを見せている。昨秋のリーマン・ショックを引き金に深刻化した金融危機は最悪期を
脱したとして、活況を取り戻していた欧米市場に「隠された債務の爆弾」(米紙ニューヨーク・タイムズ)の存在を思い起こさせた。
米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)による超金融緩和策で市場にだぶついたマネーは、中東産油国や新
興市場国が発行する高金利の債券市場に流入。「ドバイ・ワールド」をめぐる信用不安によって、ドバイ政府のみならず、巨額
の対外債務を抱える新興国の財政問題に懸念が生じ始めている。