>>960の続き
【音楽家東瑠利子、華麗なる愛】第二部 ■第七回■
友達が帰った後、母親と瑠利子は後片付けに追われた。
高級絨毯に落ちたクリームやソースを落とすのは大変な作業であった。
絨毯の上にゴザかブルーシートでも敷けばよかったと母は悔やんだ。
この高級絨毯は数年前に父がエジプトで購入してきたものであった。
日本ではなかなか入手することが難しいものなのである。
母はため息をつきながら瑠利子に言った。
「もうああいう子は連れて来ない方がいいわね、
悪いけどあの子達は瑠利子の足手まといになるだけでしょう」
瑠利子はしばらくうつむいたまま黙っていたが、やがて母に言った。
「お母さん、みんなを責めないで、お願い。みんなは決して悪くないの。
ただ、お父さんとお母さんに甘やかされて育ったからしつけが出来てないだけ。
根はとってもいい子達だから許してあげて。これから私も注意するから」
母は黙って頷いた。母は瑠利子の真心の美しさに感動していた。
そして思った。こんなに優しい瑠利子なのに、友達はなんで
どいつもこいつもろくでなしばっかりなのであろうか、と。
一刻も早く瑠利子を正しい環境、正しい人たちの中に置かないと
やがてとんでもないことになるであろうと思わざるを得なかった。
母は瑠利子の肩に手を置いたまま思案し続けていた。
(第八回に続く)