インターホンが鳴るたびに小学生に引き戻される。
あれは俺だけを殺す機械だよ。
動悸が激しくなって、受話器を持つ手が震えて
どうか運送屋の兄ちゃんでありますようにって心の中で願いながら
意識して低めの声で「はい」って声を出す。
インターホンの音で目覚めた日には本当に最悪で
「ねぇいるー?」などの幻聴に晒されながら金縛りになる。
さらにそれが悪夢と重なると視界がぐにょんぐにょんに。
夢と現実がごっちゃになり恐怖を誤魔化すために笑いたくなる。
初めて一人暮らしをする段になって
「男の癖にオートロックなんていらんだろ」なーんて、失礼しちゃうわ。
悪い魔法使いにヒゲ達磨に変えられてしまっただけの少女なのに。
お願いですから我が家にお越しの際は必ずアポ取ってください。