大好きな愛犬に捧ぐ独り言。

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680柊の国の鰍
島を時計の文字盤に擬するとき、
11時のあたりには短針のような太い丘があり、>>672
7時のあたりには長針みたいな細長い丘がある。

長針と短針、二つの丘に挟まれた8時〜10時は低く窪んでいて、
小さな「湾」が海に口をあけている。
小学校のグラウンドくらいの砂浜が広がり、
砂浜の手前は花壇のある公園広場になっていた。

6時、5時、4時、3時、2時、1時、12時と島の午後側を半周する遊歩道からは、
いくつかの分岐点から島の午前側への道が走っている。
12時の東屋でゆっくり過ごしたふたりは、
短針の丘の尾根に沿って歩くコースではなく、
10時〜8時の公園広場に降りてくるコースを採った。

「湾」の彼方には、遠く、隣り街の港が見える。

『福裏橋』の根っこに繋がる、松嶋センチュリーホテルや杣石線松嶋海岸駅のある街、
旅行者であるふたりにとっての「自分たちの街」に対する、隣り街である。

島の午後側から見える松嶋の内海の広がりがやがて外洋の水平線に接続してゆくのに比べて、
「湾」の彼方に見える隣り街の港の状景は、喩えて言えば、
高層マンションの窓からの眺望が都市の鳥瞰ではなく、
すぐそこに生えている隣りの高層マンションのベランダであるみたいな感じだった。
若干の失望ではあるのだが、
ふだん真正面から見ることのない状景を見ることには一種の異化効果があり、
それなりに面白くもある。
船が港に入る瞬間に時を固定したみたいな状景だった。