一面にひろがる葦の原。パステルグリーンの空洞。
7次元空間のなかでガイアの多様体からすこし浮上するとこの葦の原に出る。
一本一本の葦は、実は、ひとつひとつの〈生〉を体現している。
なぜこの場所にひとびとの〈生〉が
葦の形に析出してくるのかはよくわからない。
アイはフィールドを張りながら、
牛の胃袋みたいな大きなひろがりのなかを、遊ぶように翔んでいる。
こういう場所では直感が大事だ。
アイは浮遊しながら自分のこころのなかを見つめ、どの葦に惹かれるかを観察している。
これ・・
アイはある葦のそばに降下し、横に立つ。
身長と同じくらいの高さだ。
バッグからナイフを取り出すと葦の背すじを すーっ ときれいに切る。
葦の背中がみるみる開いて膨大な膜の重なりが羽衣のように湧き出して来る。
羽衣はアイの体を包み込み、そして――
アイは杣台駅前のペデストリアンデッキに立っていた。
あの葦が体現している〈生〉にとっての主観的世界(=モナド)のなかに入ったのだ。
〈私〉が空を見上げる。
〈私〉はともだちと二人で歩いていて、ともだちはセーラー服を来た女子高生で、
〈私〉も同じ制服を着ている。
鞄が重たいし、学校帰りで疲れているけど、二人でクリフロード商店街を通って帰ろうと思っていて、
ペデストリアンデッキから階段で降りる。