NOVA警察はガイアの100億年の時空に神経系をはりめぐらせていた。
夥しいチャートの群れ。それを束ねる
無数の生い茂るモナドたち。そのあいだを縫って、
NOVA警察の情報伝達経路がこまごまとした網の目を描いている。
人類が化石燃料を大量消費していた時代の時空域のある点(地球周辺の宇宙空間)において、
分裂飛行をする質量体を確認したミドンさんたち(NOVA警察の下部組織)は、
質量体が当該時空域に出現するのと同時にレーザー光線を照射、
深海魚の形をした舟を航行不能にした。
ミドンさんたちの円盤は動きを止めた深海魚に近づくとき、
近くにいたフダラク市に、通りすがりにマイクロブラックホールを投げ込んだ。
小さな点はフダラク市の質量を飲み込みながら、市の中央を走るダイモン通りの上空で
青い光を放ち続けた。
フダラク市はNOVA警察の廃棄した衛星都市を地球人類が植民地化したもので、
富士の樹海のなかのある溶岩洞窟と次元回廊で結ばれていた。
フダラク市の矢場徹吾市長は衛星都市運用法第十二条にもとづき、次元回廊の出入り口を爆破し、
フダラク市の運命を地球から切り離した。
17時間後にはフダラク市は跡形もなく消滅していた。
市民の一部はスペースシャトルで宇宙空間に脱出し、
軌道上の宇宙ステーションに救出されたり、重力井戸を下って地球表面までたどり着いたりしたが、
大部分は市と運命をともにし、単なる質量にまで還元されてしまったという。