520 :
柊:
夜。47体のハケンたちはハケン倉庫に収納されている。
狭い廊下の両側に3段ずつ並ぶ、カプセルシート。
備品を置く棚のようでもあり、牢のようでもあった。
いまではハケンたちの首には金属製の首輪がはめられていて、
リモートコントロールで注射針が突き出し、いつでも
脳を眠らすことができるようになっている。眠らすだけで殺すわけではないのは、
自殺志願でバカをやるハケンが出て来ることへの抑止だ。
鰍は首輪に反対したが、
眼の前で実行されたテロがハケンたちに悪影響を与えたかも知れない
という懸念を持つ基地司令は、鰍の要望に同意しなかった。万が一、
叛乱じみた真似でもされれば基地司令の首がとぶ。
鰍としては、データ収集用の実験動物として使っているハケンに、
余計なストレスが掛かってノイズとなることをいやがったのであり、
基地司令に安全保障上の問題だと言われては、それ以上
反対する理由は別になかった。むしろ、
47体を軍用芋虫犬製作工場に下取りに出して、
新しいロットを買いなおすことを考えるべきなのかも知れなかった。