可憐は今、お兄ちゃんと一緒に暮らしています。
朝になると、可憐はいつもベッドで眠るお兄ちゃんに囁きかけます。
「お兄ちゃん、おはようございます。朝ですよ」
しかし、今日もお兄ちゃんは目を覚ましてくれません。
一週間前、突然お兄ちゃんは眠ったまま起きなくなってしまいました。
咲耶ちゃん達みんながこの事を知ったら心配すると思って、
それ以来内緒でお兄ちゃんを可憐の家に泊めているのです。
お兄ちゃんの身の回りの世話は、全部可憐がしています。
まず朝起きると、お兄ちゃんのお顔をタオルで拭いてあげたり、
服を着替えさせたりします。最近あまりお外に出ていないせいで
しょうか?少し色白になってきたような気がします。
食事の時間になると、可憐は腕に寄りをかけて料理を作ります。
お兄ちゃんは眠っているから自分では食べられないので、可憐が
一度噛んで柔らかくしてから口の中に入れてあげます。
「はい、お兄ちゃん、あ〜ん。おいしい?あれ、そんなにボロボロ
こぼしちゃって。クスッ、お兄ちゃん子供みたい」
それと・・・これはちょっと恥ずかしいんだけど、お風呂の時も
可憐とお兄ちゃんは一緒なのです。可憐、最初はすっごく照れちゃった
けど、なんかこうしていると、子供の頃お兄ちゃんと一緒に入っていた
時の事を思い出しちゃう。あの頃よく背中流しっこしていたよね、お兄ちゃん。
でも、最近お兄ちゃんのお体が少しおかしいの。髪の毛が抜けやすくなって
いたり、背中に変な色の斑点ができていたり。最初の日なんか体が硬くなって
いたりしてて、可憐、ビックリしちゃった。
こうして一緒に暮らしていると、なんか可憐とお兄ちゃんってまるで
夫婦みたい。可憐、子供の頃からずっと夢見ていたの。大きくなったら
大好きなお兄ちゃんと結婚して、一緒に暮らしたいって。
あ・・お兄ちゃんがこんな時なのに、可憐ったらなんて悪い子なのかしら。
可憐、急に小さい頃おばあさまがよく読んでくれた、『眠りの森の美女』の
話を思い出しちゃった。立場は逆だけど、キスをしたらお兄ちゃん起きて
くれるかな?可憐、ドキドキしながらお兄ちゃんの唇にキスしちゃった。
でも、お兄ちゃんは起きてくれません。もうずっとお兄ちゃんは可憐に
話しかけてくれないのかな・・。そう思ったら可憐、悲しくって涙が出ちゃった。
可憐は一日の終わりに、ピアノの前に座って大好きなお兄ちゃんのために
曲を弾きます。ねえお兄ちゃん、この間ピアノの先生に上手くなったねって
褒められちゃった。お兄ちゃんに聴かせようと一生懸命頑張っているからかな?
そういえば、最近少し変なことがあったの。一週間前台所に転がっていた
血まみれのアイスピック。あれは一体なんだったのかしら?
うんうん、そんな事どうでもいいよね。もうこんな遅くなっちゃった。
今夜も一緒に寝ようね。お兄ちゃん・・・大好き・・・・
ダイスキ・・ダイスキ・・ダイスキ・・。