収差の話は関連スレでは既出だけどもう一度整理しとく。
>>187も書いているように、収差には複数の種類があって、
比較的デジタル処理で修正しやすいものと、光学的に修正
したほうが合理的なものがある。
これまでのミラー付き一眼では、部分的な例外は除くと、
基本的には、これらの諸収差をレンズの光学設計で処理
していた。光学設計の際に、さまざまな波長での屈折率を
もつガラスを複雑に組み合わせ、レンズの枚数を増やして
複数の収差が「バランスよく少なくなるように」修正をする。
収差補正はあっちを叩けばこっちが飛び出すみたいな世界
なので、経験と計算に基づいてバランスをとるわけ。
ミラー付き一眼でも最近は部分的にデジタル処理で色収差
補正や歪曲収差補正を「アシスト的に」デジタル処理でやって
いるものはあるんだけど、あくまで「アシスト的」。というのは、
一眼レフではレンズのすっぴんの像をファインダーで見る
仕組みなので、デジタル処理するまえの像があまりに収差が
大きいとファインダー像の品位が落ちてしまうから、ある程度
は光学補正をしておく必要がある。
これに対して、マイクロフォーサーズなどのミラーレス一眼では、
デジタル処理前のすっぴんの像をファインダーで見せる必要が
ないので、これまでにない収差補正の考え方が出来る。つまり、
これまで基本的にはすべて光学設計で「バランスをとりながら」
さまざまな収差を補正していたのに対して、「デジタルで補正
出来るものは大胆にデジタル補正にまかせ、光学的な補正で
効果が高い収差補正を、従来のやり方からみると「バランス無視」
といっていいレベルまで補正してしまう、というような、デジタル
補正と光学補正の役割分担を徹底するという収差補正の考え
方。
実例で言うと、パナのGF1のキットレンズである20mm/1.7の
パンケーキレンズとか、14-45のキットズームが徹底的に
この役割分担による収差補正をしている。アサヒカメラだったか
日本カメラだったか忘れたけど、この安いキットレンズの作例に
対して、「これほど諸収差が完璧に補正された作例は、これまで
見たことが無い」と書いていた。
それはあたりまえで、これまで足だけ使ってサッカーしてた
のを、手も使っていいよ、ということになったようなものなんだ
から、みたことのないような収差補正レベルが達成できる。
パナの初期のマイクロフォーサーズのブランドがなぜ
「LUMIX Gレンズ」であって、「LEICA」でなかったかというのも
実はコストダウンではなくてこの収差補正の考え方が、
レンズ単体での伝統的な収差補正を重んじるライカ社の
測定基準で評価しようがなかった、というのが原因ではないか
と思ってる。(これは単なる憶測だけど)
だから、焦点距離が中望遠に近く、光学設計で諸収差の補正
がやりやすいマクロレンズではライカブランドで出してきたの
ではないかと。
最近関連スレで貼られる、「APS-Cの一眼レフよりも、なぜか
パナのマイクロフォーサーズのキットレンズのほうが細部まで
綺麗に結像している比較写真」というのも、これと関係がある。
歪曲収差をレンズで補正するために、非点収差は「そこそこに」
補正をしているAPS-Cの一眼レフのレンズに対して、歪曲収差
はデジタル補正にまかせて、極限まで非点収差をチューンして
あるマイクロフォーサーズのレンズのほうが、細かいところまで
くっきり写っていても不思議ではない。では歪曲収差が負けて
いるかというと、歪曲収差もデジタル補正で極限まで補正して
いるので、圧倒的に歪も少なかったりする。
つまり、APS-Cの一眼「レフ」と、マイクロフォーサーズを、撮影
後のデータで比較するというのは、足だけつかってサッカーを
やってるチームと、手足両方使えるチームを比較するような
もので、APS-Cが「可哀想」。そんな競争をさせた挙句に、
「APS-Cの一眼レフのほうが画質がいい」などと天真爛漫に
言ってる奴は、データを見る目が無いことを告白しているような
もの。
APS-Cを持ち出すなら、ミラーレスでデジタル補正と光学補正を
ハイブリッドに補正した「新しい世代のAPS-Cミラーレス専用
レンズ」で対決させてこそ、議論になる。
ではそういうAPS-Cのミラーレスレンズがソニーやニコンから
どんどん出てくるかというと、ここで特許の問題がある。
この、デジタルと光学のハイブリッドな収差補正というのが
特許が出されまくっている領域がある。それはどこかというと、
ビデオカメラです。ビデオカメラは構造的にはミラーレス一眼
と同じで、ファインダー像を光学的に確認する必要が無い。
ここ10年以上の家庭用ビデオカメラの価格競争の中で、
レンズのコストを抑えながら画質をハイビジョン対応させる
という無理難題を乗り越えるためのキラーテクノロジーが、
まさにこの「デジタルと光学によるハイブリッドな収差補正」
だったわけですよ。
この分野で、最初にミラーレスを出したのがパナソニックで、
APS-Cで最初にミラーレスを出すのがSamsungで、次に
おっかけて出すのがSONYというのは象徴的でしょ。
これらのメーカーはミラーレスのビデオカメラで収差補正の
ノウハウやら特許やらを取りまくっている。さらにパナソニックは
G1、GH1、GF1、G2と代を重ねるなかで、ミラーレス一眼の
基本特許も抑えまくってる。2009年度の世界特許出願シェアで
パナソニックが世界一になったけど、ミラーレス一眼の特許は
地引網というか東京大空襲というか、網羅的に、洩れなく、重複
なく、徹底的に出願をしてるみたいです。
ビデオカメラで同じようにミラーレス収差補正の特許を出してる
ソニーとはクロスライセンスで抑えられるけど、ニコンやキヤノン
はこの家電二社が本気を出して特許係争を仕掛けてきたときに
どうするんだろーw
あ、ニコンとキヤノンの信者の皆さん、叩くときは「妄想乙」とか
「長文乙」とかじゃなくて、具体的な事実を提示して反論して
くださいねーw
以上