防犯上、脱衣所に監視カメラを設置する銭湯や温浴施設が増えている。相次ぐ盗難事件
に業を煮やした施設側の苦肉の策ともいえるが、女性客からは「盗撮と同じではないか」
などの苦情が絶えない。カメラ付き携帯電話による盗撮行為などが問題になっているだけ
に、法律の専門家も「撮影していることをきちんと明示しないと、人権侵害になる」と警告
している。(森本尚樹)
明石市の主婦(58)は今月初め、長女(26)とともに神戸市垂水区の温泉施設を訪れた。
脱衣所で服を脱いでいると、長女が声を上げた。「カメラ!」
見上げると、天井に四台の監視カメラ。設置を知らせる表示もない。裸で涼んでいた多く
の女性は、気付いていないようだった。二人はバスタオルを手放せなかった。
施設によると、カメラは昨秋に設置。浴場内で利用者がロッカーの鍵を取られ、貴重品を
盗まれる事件が相次いだためという。映像は一―二週間保存されるが、警備会社が管理
し、施設では見られないという。
苦情に対し、施設側は「お客さまに安心して利用していただくのが第一。今後も継続したい」
と動じない。しかし、別の女性客(28)も「街角での盗撮が問題になっている時代。録画され
た映像がどうなっているのか、疑わないわけにはいかない。知っていれば、来なかった」と
話す。
同市灘区の温泉施設も六年前、脱衣所に監視カメラを導入。ただ、女湯の脱衣所のカメラ
は「やましい所はないが、心情的に配慮せざるを得ない」と、カバーで覆っている。
玄関には「カメラ設置」と明示しているが、客の通報で警察官が来たこともある。経営者は
「カメラのおかげで、盗難が激減した。男性でも裸を撮られるのは抵抗があるだろうが、理解
してほしい」と訴えている。