1 :
マロン名無しさん:
3 :
マロン名無しさん:2010/11/13(土) 16:28:01 ID:BKf7jXpv
代行ありがとー!!
JEDIさんここだー! ここにきてくれー!!
4 :
マロン名無しさん:2010/11/13(土) 17:12:49 ID:/a9DcsxF
5 :
マロン名無しさん:2010/11/13(土) 18:35:04 ID:vSgtz3yq
皆さん、こんばんは。
昨日は失礼しました。
スレを立てて下さったお陰で続きを投下することができます。
ハトプリ映画観賞の興奮も冷めやらぬうちに本日分の投下参ります。
今日は1週間に一度は必ず来る休み――つまり日曜日である。
父そうじろうが所用で朝から出かけているため、泉家にはこなたとゆたかしかいない。
かがみと終日デートを予定していた彼女も病弱なゆたかのために、できるお姉さんとして振る舞うことになった。
この小早川ゆたかという少女は見た目に反して賢しい。
ぼんやりと2人、テレビを観ながら、
「ねえ、お姉ちゃん」
不意に声をかける?」
「ん?」
「違ってたらごめんね……その…………」
「うん」
「かがみ先輩と付き合ってたりするの?」
「うぇっ!?」
まるで予想していなかった問いに、こなたは大仰に反応してしまう。
しまった、と思ってももう遅い。
彼女のリアクションこそがその問いに対する明確な回答となってしまった。
「やっぱりそうだったんだ」
「え、いや……ゆーちゃん、なんでそう思ったの?」
イエスと答えない代わりに質問に質問を被せる。
周囲には知らせたくないというかがみの考えに追従している以上、襤褸(ぼろ)を出してゆたかに悟られるわけにはいかない。
「だってお姉ちゃん、よく先輩と電話で話してるし、帰りが遅いのも、その……デートなんでしょ?」
「………………」
「お姉ちゃん、雰囲気変わったもん。なんていうか、前よりずっと綺麗になったよ」
「綺麗…………?」
小学生の体格からほとんど変わらずの彼女は、”可愛い”と評されることはあっても、”綺麗”という言葉をかけられたことはなかった。
それだけに近しい存在――ゆたかから飛び出した思わぬキーワードにこなた自身、どう反応していいか分からなかった。
「うん、なんか”お姉ちゃん”っていうより、”お姉さん”って感じかな……」
「………………」
こなたの立ち居振る舞いは内密にしたい2人の間柄について、それを知られたくない相手に十分すぎるほどの手掛かりを与えていたようだ。
「ゆーちゃん、お願いがあるんだけど」
「…………?」
「このコト、内緒にしといてくれる?」
こなたにしては珍しく卑屈なほど真摯な様子で静かに言う。
もし拒めば口止めの取引でも持ちかけてきそうな鬼気迫る口調である。
「誰にも言うつもりないよ。おじさんにも黙ってたほうがいいんでしょ?」
ゆたかは儚げに、しかしどこか芯の通った力強さを秘めた笑みを浮かべた。
彼女にすれば、わざわざこれを口外する理由はない。
「そういう気持ち、よく分かるから」
「…………?」
ゆたかの頬が紅潮する。
こなたには何となくその理由が掴めていたが、敢えて訊くような無粋な真似はしない。
「私もみなみちゃんのコト――」
しなくともこうして自分から打ち明けてくるのだ。
律義な彼女は相手の秘密だけ知っているのが卑怯だと思ったのであろう。
自分も同様の秘密を持っている事を暴露することで不公平感を無くし、対等の立場に立つつもりだ。
「私もね、みなみちゃんのコト好きなんだ。最初は友だちとしてだったけど……いつの間にか……」
「うん」
「優しくしてもらってるうちにだんだん……。もしかしたらみなみちゃんも私のことが? って思ったこともあったけど……。
でもそれって思い上がりだよね? みなみちゃんは友だちとして私を支えてくれてるんだよね?」
彼女にしては珍しく饒舌だった。
が、紡がれる言葉は前向きなものではなく、自身を卑下するばかりである。
「そんなことないと思うよ」
ゆたかが言ったように、”そういう気持ちがよく分かる”こなたは微笑みながら言う。
「好きでもない人と一緒にいたがるわけないじゃん? ましてやその人のこと何度も助けたりなんて、普通はしないと思うよ。
口には出さないだろうけど、みなみちゃんもゆーちゃんと同じ風に考えてるんじゃないかな」
この台詞はただゆたかを慰めるように見えて、こなたが自身を励ます意味も持つ。
「そう、かな…………?」
「そうだよ。ゆーちゃんさ、みなみちゃんとひよりんとよく3人でいるんだよね?」
「う、うん……」
「じゃあさ、みなみちゃんがひよりんに接する時と、ゆーちゃんに接する時って同じかな?」
「………………?」
「たぶん違うと思うんだよね」
こなたは岩崎みなみと柊かがみをダブらせながら言った。
2人には共通点がある。
賢しいことと、面倒見がよい点だ。
そしてどちらもなかなか本心を語りたがらないところがある。
「みなみちゃん、口数が少ない分、普段の態度でゆーちゃんへの”好き”を表してるんだよ、きっと」
当て推量ではない。
遡って入学試験。
この時既に、岩崎みなみのゆたかに対する優しさは表れていた。
その後もゆたかから語られる学校生活の話題には、必ずと言っていいほどみなみが出てくる。
彼女自身の欲目もいくらかは含まれているのだろうが、語られる岩崎みなみは常に好人物である。
人間はその場にいない者を悪く言う癖があるが、逆に褒めちぎるのは難しい。
この点からもゆたかがみなみに対して抱いている感情を、こなたはずっと前から察してはいたのである。
「で、ゆーちゃんはそれをちゃんと感じてる、と」
「お姉ちゃん…………」
ゆたかの瞳がじわりと潤んだ。
「なんちゃって……私のキャラじゃないよね!」
言っていて自分も恥ずかしくなったこなたは、赤面を隠そうと立ち上がった。
「お茶淹れてくるよ。ゆーちゃんも飲む?」
「あ、う、うん!」
こなたよりもさらに顔を真っ赤にしたゆたかは、俯き加減に肯う。
「じゃあちょっと待っててね」
足早に居間を立ち去るこなたは、左手にしっかりと携帯電話を握っていた。
・
・
・
・
・
運の悪いことにポットは洗浄中だったため、鍋で直接お湯を沸かすことになった。
その間、こなたはかがみに短いメールを送る。
送信先:かがみん
件名:
本文:
『私たちのこと、みさきちに話したの?』
愛を深め合った2人に言葉の飾りは不要だ。
利発なかがみはたったこれだけの文章で、こなたが知りたいこと全てを把握できるだろう。
送信してからわずか5分。
発信者:かがみん
件名:Re
本文:
『それとなくはね。でも日下部の奴、イマイチ分かってないみたいだったわ。
ハッキリ言うのもなんだから今はぼかしてるけど。でもその時が来たらちゃんと言うつもり。
あいつ意外と独占欲強いみたいだから、さっさと教えておいたほうがいいと思ってるんだけどね』
返ってきた内容は、こなたもある程度は予想していたものだった。
かがみは絵文字や顔文字を使いたがらない。
素っ気ない言葉の連続で事実を伝えるのみだった。
「まあ、相手がみさきちじゃあね――」
それも仕方がない、と彼女は思った。
つかさやみゆきとは違って、日下部みさおという少女は他者の心情を察しそうにない。
遠回しな説明は効き目がなく、直截簡明に打ち明けたほうがいいのだろう。
しかし明言するにはまだ些かの躊躇いがある。
”その時が来たら〜”
という一文は今のかがみの逡巡を如実に表しているのだろうと。
「ま、いっか」
こなたが呟いた時、沸点に達した水が早く火を止めろと急かした。
もう何度目か分からない甘美な時間である。
つかさやみゆきを蔑ろにしないようにと、ほどほどにいつもの4人グループで行動する。
だが放課後になると一転、昼間我慢していた分を取り戻すように2人は街に繰り出す。
デートと言ってもやる事といえば買い物か食事か、その程度しかない。
2人きりでカラオケに行くという雰囲気にもなかなかならず、度重ねてきたデートもマンネリ気味になってきた。
そこでどちらからともなく駅のはずれの公園に行くことになった。
愛しい人と時を過ごすにはその時々の、互いの心情にあった場所を選ばなくてはならない。
「たまにはこういう所もいいよね」
とはこなたの弁だ。
日々の大半を虚像に費やしてきた彼女には、ちょっとした公園も新鮮に映るものらしい。
2人はごく自然に手を繋ぎ合っている。
昼間からこういう場所に来る人は少なく、同性同士であっても人目を気にせずに接することができる。
特になにかするわけではない。
強いて言えばこれはちょっとした休憩だ。
敢えて喧騒から離れ、別の種類の刺激を受けるための。
息抜きである。
「そう、ね…………」
ベンチに腰をおろし、前髪をかき上げるかがみの仕草は美しい。
「………………」
こなたはその様にまたひとつ、彼女の魅力を発見した。
恋慕は人を盲目にする。
二次元の世界で何組もの男女が結ばれていくのを観てきたこなたは今、自分がまさにそれらギャルゲーの男主人公さながらに
ひとりの少女に恋をしていることを改めて認識する。
沈黙ですら2人を祝福するBGMに成り得る。
言葉に依らなくても互いの意思の疎通は図れるし、むしろ言葉にしないほうがより伝わる想いもある。
しばらく他愛もない会話を交えた2人は、妙にそわそわして視線を逸らす。
時間はたっぷりある。
こなたにはゆたかという心強い味方がいる。
彼女が味方なら、みなみも間違いなく頼りになる人物となる。
そうじろうには打ち明けていないが、娘を溺愛する彼が娘の想いを無惨に踏み躙るハズがない。
彼氏ができたというなら反発もしようが、相手は彼も多少は興味を持っている柊かがみである。
この状況はむしろ、父親が歓迎するだろう。
溺れてもよい甘美は望むと望まざるとに関係なく向こうからやって来るのだ。
「ねえ、かがみ…………」
恋心は人を積極的にさせる。
丸っこい唇で、精一杯の艶っぽい声を出して。
「な、なによ……?」
いつもと明らかに雰囲気の違うこなたに、かがみは少し身構えた。
こういう時の泉こなたは表情からは読みとれないようなことを考えている。
警戒する必要などないというのに、かがみはつい彼女に対して防備を敷きたくなる。
「……キス、しよっか?」
「え――?」
唐突で不自然だが、彼女たちの関係を考えればごく自然な流れであったかもしれない。
互いの気持ちが同じであることを確認した後は、2人だけの時間を作る。
2人だけの時間ができれば手を繋いで愛を深める。
それをクリアできれば今度は口づけ――。
情愛の表現に段階があるのは当然であり、この順序を間違えると待ち受けるのはたいてい悲劇的な結末である。
こなたは順序を守った。
本心では独占欲の強さからかがみを束縛したい想いに駆られたものの、彼女の意思を尊重して強引な手段は控えてきた。
自分をそう冷静に見たからこそ、彼女はこの口づけが決して逸ったものではなく、頃合いだと判断できた。
そして彼女の知る柊かがみはこのテの表現に奥手であることも考慮して……。
「私たち、付き合ってるワケじゃん。もうそろそろキスくらいしてもいいよね?」
これは正しい行いだ、当然の行為だと正当化するようにこなたは呟く。
誰かに対する問いかけではない。
答えを聞く前にこなたは身を乗り出していた。
すぐ隣に座る勝ち気な少女の唇に、自分のそれを重ねてさらなる愛を育もうと。
やや背伸び気味に、こなたは求めた。
「ちょっと待って!」
だが――それは叶わなかった。
かがみは反射的に身を退いて顔を背けた。
彼女はそのまま立ち上がり、こなたから些か距離を置いた。
それが拒絶であると気付くのに数瞬。
泉こなたそのものではなく、あくまでキスに対しての拒絶であると気付くのにさらに数秒を要した。
「かがみ…………?」
齟齬だった。
親密な間柄であっても、個人対個人である以上、あらゆる考え方が同一であるハズがない。
こなたはそれを勘違いしていたようだ。
自分が相手を好きなのだから、相手も自分を好きに違いないと。
自分がキスを求めているのだから、相手もそれを求めているに違いないと。
相思相愛になったことで罹る思いこみの病である。
「かがみ…………」
「ごめん、私、今日はもう帰るわ……」
乱暴に鞄を掴んだ彼女は足早にその場を離れていく。
「あ、え……? ちょ、かがみ…………!?」
去り際、こなたがちらりと見たかがみの横顔は悔しそうだった。
”何かに負けた”ような悲しみの色も僅かに浮かんでいる。
「待ってよッ!!」
呼びかけも虚しく、少女は走り去ってしまった。
こなたの脚力ならすぐに追いつくが、彼女の足は凍りついたように動かない。
(選択肢、間違えたかな…………)
こんな時でさえ恋愛ゲームを思い浮かべてしまう自分が、こなたは嫌になった。
このまま昨日分と併せて本日分の投下をする予定でしたが、急遽修正したい箇所を見つけました。
ここで中断し、続きは2時間ほどしてから投稿いたします。
それでは暫らく。
続きwktk
2ちゃん終了のおしらせ
ここ最近とは打って変わり、少女は憔悴した顔で帰宅した。
元気のない娘にそうじろうは何事かと訝ったが、まさか同性愛に興じているとは思わない彼は、
友だちとケンカしたのか程度にしか考えない。
そうだとすれば深刻な問題ではなく、彼は何があったのかと問うような無粋な真似はしない。
親心を見せるべき局面と黙って見守る局面を、彼はきちんと心得ているのである。
「先輩と何かあったの?」
秘密事を知っているゆたかは、その原因をずばりと言い当ててくる。
疑問調ではあるものの、みなみとの些細なすれ違いを経験している彼女には分かるのである。
「ううん、別に――」
と言いかけてこなたは、
「や、やっぱり分かっちゃうか……」
恥ずかしそうに頭を掻いた。
こなたが落ち込むのは深夜アニメの録画に失敗したか、特番や野球中継の延長で観たい番組を潰された時くらいだ。
そのどちらでもないとすれば当座、彼女が思い悩む理由は柊かがみ以外に考えられない。
「ケンカしたの?」
これもまた確信があっての問いだ。
「ケンカってわけじゃないないけどね、うん。私が悪いんだよ……その、焦ってたからさ」
ゆたかにウソを吐きたくないこなたは事実を暈かして答えた。
先走ってしまった、という自覚はある。
互いの距離を縮めるにも互いのペースがあることを、彼女はなおざりにしてしまったのだ。
(かがみって強そうに見えるけど、そういうところナイーブなんだよね)
それにもう少しだけ。
ほんの少し早く気付いているだけで防ぐことができた小さな亀裂である。
「元気出して…………」
今のゆたかにはこの程度しか言えない。
”焦った”というこなたが何をしたのか、彼女にもおおよその見当はついている。
だがそれは当事者間の問題であって、いくら心配しているといってもそこまで踏み込んではいけない、ともゆたかは思っている。
愛し合っている限り、多少の亀裂は必ず修復される。
彼女はこう思っているようだ。
「大丈夫だよ。私とかがみんの仲だからね」
力なく笑うこなたは不安を隠すよう努めた。
ゆたかの良き姉でありたいと願う彼女は、こんなところで弱い自分を見せられないのである。
「だから心配しな――」
突然、ポケットに入れていた携帯電話が振動した。
公園での一件で放心していたせいでマナーモードを解除していなかったらしい。
(かがみからだっ!!)
直感したこなたは部屋に戻るとゆたかに言い置き、急いで居間を出た。
振動は2回。これはメールを着信した合図だ。
落ち着きなく視線を彷徨わせ自室のドアを閉めたこなたは、汗ばむ手で携帯電話を開く。
発信者:かがみん
件名:
本文:
『今日はゴメン。やっぱり怒ってるわよね? いきなりだったからビックリしたのよ。
だからついあんな態度とっちゃったけど、あんたのこと嫌いになったわけじゃないから。
むしろ嬉しかった。考えてみれば私たち付き合ってるんだからキスくらいしても当然なのよね』
メールは便利だ、とこなたは思った。
言いにくいこともこうして文字にできる。
ディスプレイに表示された無機質な文字列からは分からないが、かがみはこれを打つのに相当な時間を要しただろう。
仮にこれが顔を合わせての会話だったなら、きっとこれだけのメッセージを伝えるのに5分はかかったに違いない。
迷いながら――赤面しながら――メールするかがみを想像し、こなたは知らず頬を紅潮させていた。
ただ、メールという便利な通信手段は、最も肝心な部分を全く伝えてはくれない。
つまり送り手の心情面だ。
これがかがみの本心であることは間違いなさそうだが、怒りながら打ったのか、後悔しながら綴ったのかまでは分からない。
せめて電話なら声調や間の取り方、言葉の端々から相手の心理を察することができるのに。
「………………」
彼女の不安は拭えない。
文字により意思の伝達は、送る側に十分な時間を与えている。
この文面は突発的に思った事の羅列である可能性があると同時に、数時間の深慮の末に紡がれた可能性もあるのだ。
しかし彼女の不安は間もなく届いたもう1通のメールで霧消した。
発信者:かがみん
件名:
本文:
『だから明日の放課後、ちゃんとあんたとしたいと思う。許してくれるなら明日の放課後、屋上に来て』
しっかり者に見えるかがみは、時たまこうして些細なミスをすることがある。
1通目は間違って途中で送信してしまったのだろう。
そういう迂闊なところも含めて、こなたはかがみが好きなのだ。
しかもこの文面。
かがみにはこなたの愛の一表現を受け容れる準備ができているということである。
「かがみ…………」
あの艶やかな唇。
勝ち気そうなツリ目。
凛々しい佇まい。
聞く者の脳を痺れさせるような声。
それら全てが欲目というフィルターを通して、恋する少女の五感を悉く支配する。
「かがみぃ…………!」
甘ったるい声で愛しい相手の名を呼びながら、こなたは無意識のうちに秘部に指を当てがっていた。
罪の意識はある。恥ずかしいという想いもある。
しかし彼女には勝手に動く指を止めることはできなかった。
ここしばらくはそうじろうやゆたかよりも、かがみの横顔を見ている時間のほうが遥かに永かった。
そのお陰で彼女はこうして目を閉じるだけで、デジタル写真の如くに柊かがみという少女の姿を鮮明に瞼の裏に思い描くことができるのだ。
しかもデジタルデータ同様にこの記憶の中の少女を、好きなように加工することもできる。
時に少年のそれを思わせる口調。
揺るぎない信念を宿す瞳。
風にさらさらと揺れるツインテール。
手を繋いだ時に感じる温もりさえ。
いまこなたが見ているのはかがみだが、暗闇の中に浮かぶ彼女は衣服を纏っていない。
最も性的な興奮を催す恰好で、空想の柊かがみはこなたに全裸の自分を惜しげもなく披露している。
「かが……み…………」
控えめな指の動きは小さなふくらみの上下に合わせるようにペースを上げていく。
シーツが汚れることも厭わないでこなたは敏感な部分を優しく強く撫でまわす。
「ふぅ…………」
想像の中のかがみは頬を赤らめた。
だが現実のこなたは耳まで真っ赤にしながら、肩で息をしている。
「………………」
なだらかな2つの丘は輪郭こそ胸の体を成していないが、性的刺激を伝達する役目は十分に果たしているようだ。
片手は秘部を弄びながら、もう片方の手は豆粒ほどの突起を絶妙な力加減で摘む。
毎日のように繰り返す一人遊び。
終わった後に押し寄せる罪悪感。
想像とはいえかがみを性欲を満たすための道具として扱っているようで、快感を得る度にそれと同じかそれ以上の苦痛を伴う夜の遊び。
それでも止められないのは一途にかがみを愛しているからだと彼女は自らの行為を正当化する。
「………………っ!」
この全身を閃電が駆け抜けるような悦楽は何度味わっても飽きることがない。
こなたは人形のように四肢をだらしなく伸ばし、その余韻に溺れた。
おそらく明日、放課後に交わされる口づけはこの夜の遊びよりもずっと淡白だろう。
文字通り唇を合わせるだけの何ということのない動作だからだ。
だがそれによって得られる享楽は自慰によって得られるそれの比ではないハズだ。
瞼の裏のかがみとは違う、現実のかがみとの接近。
(かがみ…………)
彼女の指はまたしても小さなふくらみに伸びていた。
徹夜とは文字どおり”夜を徹すること”であるが、それによって翌朝に感じる疲労は人それぞれに異なる。
一種の爽快感を味わうこともあれば、耐えがたい苦痛を伴うこともある。
今日のこなたはその両方を同時に感じている。
かがみを想いながら自らを慰め続け、気がつくと朝日が昇っていた。
それを忌むべき――あるいは恥ずかしい――行為だと認識しながら、彼女は何度も何度も絶頂に辿り着いた。
ピークを迎える度にまたひとつ、かがみを愛することができたと思い込めるのだ。
「泉さん、顔色が悪いようですが…………?」
みゆきが不安げに訊ねる。
「ちょっと寝不足でさ。でも大丈夫だよ」
もちろんウソではない。
みゆきは体調が優れないのではないかという意味で問うたが、今のこなたはむしろ逆。
今も舞い上がりそうなのを必死に抑えているのだ。
次の授業をこなせば本日のカリキュラムは終了。
生徒は軛(くびき)から解放され、部活にあるいは寄り道にと思い思いの自由な時間を過ごす。
「そうですか? あまり無理はなさらないほうが――」
「平気だって」
「何か悩み事がおありなのではありませんか?」
「えっ…………?」
こなたが驚いたのは疑念を持った言葉に対してではない。
あの温厚篤実なみゆきが妙に鋭い視線を向けてきたからだ。
「いえ、何もなければよいのですが……泉さんのことですから何かお隠しになっているのではと……」
「そ、そんなことないよ! 大丈夫だって!」
「……本当に?」
疑いの眼差しを向ける厳しい表情すら、彼女の場合は優雅に映る。
「何か言い難いことがあるのではありませんか?」
この詮索の仕方は稚拙だ。
人間、誰しもそうした秘密のひとつやふたつは持っている。
こう問いかけるみゆきにも、口にするのが憚られる隠し事はあるハズだ。
それをこのたった一言で吐露させようとするのは、彼女が見せた才媛に似つかわしくない軽率さだった。
「本当だって。みゆきさん心配しすぎだよ」
みゆきが心底から気遣うような視線を向けた時、チャイムが鳴って担当の教師がやって来た。
いよいよ最後の授業である。
チャイムに救われた、とこなたは思った。
(言い難いこと……か。私たちの関係のこと言ってるんだよね、やっぱり……。
みゆきさんだって当然、気付いてるんだよね)
2人の付き合いは暗黙の了解、という形で進展してきた。
かがみの希望に従い、こなたは自分が彼女と付き合っている事実はゆたかを除いて誰にも伝えていない。
だが平素の振る舞いを考えれば、いくら秘匿したところでいつも近くにいるつかさやみゆきは勘付くだろう。
彼女たちは既にこの秘密の関係について確信を持っているに違いない。
確信であって確証でないのは、当人からの告白がないからだ。
知られている事実であっても、かがみが了承するまでは黙っていようと思っているこなたにとって、
先ほどのみゆきの追及には肝を冷やすものがあった。
(かがみが言いたくないって言ってるんだから、私が勝手に打ち明けちゃ駄目だよね)
こなたは小さく息を吐いた。
彼女の意識は黙秘を貫いたことよりも、間もなく訪れる素晴らしい瞬間の連続に向いていた。
このやる気の全く起きない英語の授業が終わった時、こなたとかがみ、2人の新たな密事が始まるのだ。
カタカナで発音していると思われる初老教師のぎこちない音読も、今の彼女の耳には届かない。
テストに出る単語や文法など何の意味も成さないのだ。
最高のシチュエーションでの再度の愛の告白。
重なり合う口吻。
互いの距離をゼロ以下にする秘密の儀式。
それを想像しただけでこなたの口元は自然と緩んでしまう。
・
・
・
・
・
長い長い最後の授業は、彼女が妄想に耽っている間に終わった。
開いたノートにはアルファベットの一文字すら書き加えられていない。
ホームルームでも彼女は上の空だった。
「お〜い、泉〜〜。聞いとんかー?」
ぼんやりとしているところに、ななこがジト目で問う。
「あ、はい、聞いてます!」
もちろん聞いてなどいない。
ホームルームとは授業と放課後との区別をつけるための単なる仕切りで、意味などないことをこなたは知っているのだ。
だから彼女はこの仕切りが早く取り払われることを願った。
おそらく5分以内。
簡単に伝達事項を知らせればホームルームは終わる。
「――よし! ウチからは以上! ほな号令頼むで」
エセ関西弁は一日の終わりの時のみ弾んだ声に変わる。
ただしその余韻は直後に40人が椅子を引きずる音で無惨にかき消されてしまうのである。
俄かにざわめく教室の中、こなたは真っ赤になった顔を隠すように俯いた。
血液が異常な速さで全身を駆け巡る。
「こなちゃん。本当に大丈夫なの?」
寝不足気味だった表情は一転、今度は朱に染まった顔をつかさが覗きこんだ。
傍からは発熱しているようにも見える。
「平気平気」
と笑って答えるこなたは、これから行われる秘密の儀式が誰にも気付かれないように気を配る。
かがみと唇を重ねることはもちろん、屋上に上がる後ろ姿さえ目撃されてはならない。
「だといいけど……」
どこか不安そうなつかさを見て、こなたは首を傾げた。
「……そういえばみゆきさんは?」
先ほどあれだけ心配そうに質問を重ねてきたみゆきの姿がない。
「ゆきちゃんならホームルームが終わった後すぐに帰ったよ」
つかさはみゆきの机を示した。
掛けられていた鞄は確かに無くなっている。
「ほんとだ。委員会の仕事でもあるのかな?」
律儀なみゆきが付き合いの長い友人に別れの挨拶を告げずに教室を出るのは珍しいが、
こなたにとっては好都合だった。
常に真摯に構える彼女の追及を前に、こなたは真実を隠し続ける自信が持てなかった。
かがみとの関係を隠すのは、問いかけに対して虚偽の回答になる。
令嬢みゆきへの誣告は彼女の性質もあって、それをする者に後ろめたさを抱かせる。
早々と同性愛を打ち明けてしまえば、もうこうした悩みを抱える必要も無くなるのだが、
かがみと足並みを揃えたいこなたにはできない。
「じゃあ、また明日ね」
「うん。バイバイこなちゃん」
できるだけ自然な風を装って鞄を手にし、できるだけ自然な風を装って教室を出る。
放課後といえばたいてい、こなたとかがみの2人で秘密のデートに興じているため、つかさがそれを妨げることはない。
(黒井先生、こんな日に限ってホームルーム長いんだから……)
小走りに屋上に向かうこなたは、”廊下を走るな”という貼り紙を3度ほど素通りした。
1秒だって待たせるわけにはいかない。
普段の遊びの待ち合わせとはワケが違うのだ。
(かがみ…………)
階段を駆け上がり、たどり着いた鉄扉。
施錠されていないのは生徒に開放しているためだ。
実際、屋上で昼食をとる生徒もおり、この学園では貴重な憩いの場となっている。
「………………」
深呼吸をひとつして、ゆっくりと扉を開く。
瞬間、差し込む陽光にこなたは思わず目を瞑った。
拓けた屋上には――。
西日を遮るものはひとつだけ。
凛々しく、しなやかで、艶めかしく、優雅で、したがって美しいシルエット。
逆光で明らかにはならないが、こなたにはハッキリと見えていた。
「かがみ…………」
そのあまりの美しさに彼女は呼吸するのも忘れて見惚れてしまう。
背を向けて立つかがみは振り向かない。
ただ、
「こなた…………」
と、艶っぽい声が返ってくるのみである。
「ごめん、遅くなって……」
言いながら一歩踏み出したこなたは違和感を持った。
(………………?)
何かがおかしかった。
おかしなハズはない。
かがみに呼ばれた屋上。
そこに彼女がいるのは当然だし、呼ばれたこなたがここにいるのもまた当然だ。
「ほんと待ちくたびれたわよ」
かがみの口調はいつもより少しだけ甘えた感じである。
これからの出来事に緊張しているのかもしれない。
こなたはそう思ったが、すぐにその考えを振り払った。
(かが……み…………?)
歩みかけたこなたの足がぴたりと止まった。
違和感の正体に気付いてしまったのだ。
こなたの目線からはハッキリとは見えなかったが、かがみの後ろ――つまりは彼女の前――に誰かがいる。
かがみよりもほんの少しだけ背の高い少女が――。
今回はここまでです。
性描写は苦手なので、その辺りの稚拙さはご海容ください。
それではまた。
乙でした!続き楽しみにしてます
プロになり損ねた奴が未練たらたら
素人相手に文士気取りはみっともないぞ
29 :
マロン名無しさん:2010/11/14(日) 04:02:40 ID:LXg2fLXw
誰かって
誰かしかいねえじゃねえかああああああああああ
ちくしょおおおおおおおお明日も待ってりゃいいんだろおらああああああああ
きっとみさきちがNOTセクシャルマイノリティをカサにして立ちはだかるんだろうな……
皆さん、こんばんは。
本日分の投下参ります。
少し多めなので途中で規制かかると思いますが、よろしくお願いします。
「………………ッ!?」
さらに衝撃的な事実に気付いた彼女は、その場から逃げだしたくなった。
柊かがみとその何者かは――。
互いの唇を重ねていたのだ。
唇だけではない。
四肢にいたるまでが完全にかがみの陰に隠れていた。
こなたがもう少し長身だったらすぐに分かっただろう。
少しクセのあるショートカット。
日に焼けた小麦色の肌はかがみとはまた違った美しさを際立たせる。
「ビックリしたでしょ?」
何者かから離れたかがみは、極めて緩慢な動作で振り返った。
その際、体を少し右へずらし、もう一人の少女と横に並ぶ。
「みさきち…………!!」
名前を呼ばれた少女は満足げな笑みを浮かべている。
「おう、チビッ子。恋人を待たせるのは良くないぜ?」
無邪気なその笑顔の奥底に、こなたはハッキリと邪気を感じ取った。
「どういう……こと…………?」
状況がまるで呑みこめないこなただが、少なくとも思わしくないことが起こっているのはすぐに分かった。
いるハズのないみさおがいて、しかもかがみと唇を重ねていたというだけで彼女の心は引き裂かれそうになる。
「私たちね、賭けをしてたのよ」
「賭け……?」
「そう。簡単なことよ。今日、”あんたがここに来るかどうか”、それだけ」
「………………」
「最初はそうじゃなかったんだけどな」
みさおが付け足す。
「本当はね、”あんたが私とキスするか”で賭けてたのよ。でもそれだと勝負着けるために本当にキスしなくちゃならないじゃない?
私はそんなの絶対イヤだからね。日下部以外の人と唇重ねるなんてありえないし」
さらりと彼女は恐ろしいことを言った。
「そうなんだよな。キス寸前で止めりゃいいんだけど、それだと”しない”に賭けた方が勝つみたいになるだろ?
だから途中でルール変えたんだよ。柊が誘ってチビッ子が乗ったら私の勝ち。乗らなかったら柊の勝ちってことで」
「賭け…………?」
こなたはもう一度呟いた。
言葉の意味は分かるが、それを本当に理解するのに今の彼女では時間がかかる。
「だから言ってるじゃない。賭けの対象はあんたで、あんたがここに来るかどうかで賭けてたんだって」
「そうだぜ。ま、今回は私の勝ちだけどな」
みさおが子供っぽい笑みを浮かべた。
「…………それじゃあ、かがみは私がキスしないほうに賭けてたってこと…………?」
2人の言い分を聞いているうちに、こなたにも漸く状況が見えてくる。
悪質なギャンブルに巻き込まれたこと。
自分がそれに利用されたということ。
さらにはかがみが、先ほど問うたように”キスに応じない側”にベットしたことも。
そこを訊ねられると彼女は憮然として、
「まあ、ね」
短く答える。
「でもさ、柊。昨日、チビッ子からキス迫られたんだろ? ってことはそのまま行けばしてたってことだよな?
ならその時点で私の勝ちだったじゃんか」
今日、この今日。
勝敗が決まったも同然だというのに、その判定を今日に持ち越したことにみさおは口を尖らせた。
「なによ、じゃああのままキスしてもよかったのか? あんたが見てないところで」
「いや、それは駄目だ。柊が私以外の奴とするなんて許せるわけないだろ」
「ほら、みなさい。そう言うと思って勝負の日を今日にしたのよ」
「なんか納得いかね〜。昨日、柊が拒んだことでチビッ子をガッカリさせる目的があったんじゃねーの?
それでもし今日来なかったらまんまと柊の勝ちだしさ」
「ほお〜、まるで私がこなたとキスして欲しかったみたいな言い方ね?」
「そりゃ一応、そっちに賭けてたし……」
悄然とするこなたをよそに、2人は妙に弾んだ声で盛り上がっている。
まるで悪びれる様子もなく。
ちょっとした遊びの気分で。
ここにいる泉こなたという少女が、どれほど心に深い傷を負っているかも考えずに。
深い悲しみはこれ以上ないほどに心を抉る。
信じていた者からの裏切りが、細くなった精神を打ち砕く。
真実を知った泉こなたは絶望の淵に立っている自分を見つめていた。
悔しさ、憤り、悲しみ……。
それらが綯い交ぜになってこなたを襲う。
様々な感情がぐるぐると駆け巡る。
最後に残ったのは負の感情の集大成とも言うべき憎悪だった。
「かがみッ!!」
女性の感覚とは不思議なものだ。
こういう時、陰で想い人と結託し、嘲弄してきた日下部みさおに対してまず憤りを露にするべきだが、
こなたは自分を裏切った本人――柊かがみを憎んだ。
気がつくとこなたはかがみに飛びかかっていた。
恋心を利用して弄び、剰(あまつさ)え賭けの対象にまでした彼女への強い憤り。
あの艶やかな長髪を掴んで引き倒し、厭らしい笑みを浮かべる彼女の顔を殴りつけなければ気が済まない。
そう考え至る前にこなたの体は動いていた。
しかし格闘技経験者も既に鍛錬から離れて数年が経っている上に、負の感情に支配されている今では、
自慢の電光石火の体捌きも精彩さに欠ける。
しかも彼女には柊かがみしか見えていない。
そのことが大きな仇となった。
「うっ…………!!」
脇腹に走る鈍い痛みにこなたは蹲った。
みさおが振り上げた足をゆっくりと地につけた。
陸上部で鍛え上げた脚は走る以外にも、こうして愛しい人を守る時にも役に立つ。
こなたと違って今も鍛えられているみさおの脚力は他に抽(ぬき)んでている。
良く言えば無駄のない、悪く言えば成長が見られない幼い体躯は、閃電の如く繰り出された膝をまともに受け、
その衝撃をダイレクトに髄に伝える。
「う……けほっ…………」
鈍痛が間もなく激痛に変わるとこなたは嘔吐(えず)いた。
「おいおい、柊に手上げるつもりかよ?」
みさおが勝ち誇った顔で見下ろす。
「みさきち…………!!」
怨みがましい目でこなたが見上げる。
「そんな顔すんなよ。チビッ子だって”途中までは”私と同じだったろ?」
みさおはそう言ってちらりとかがみを見やる。
「いいじゃない、こなた。1ヶ月弱だったけど恋愛ごっこができて。ゲームばっかりじゃ飽きるでしょ?」
このギャンブルには30日間という期限が設けられていた。
つまりみさおが勝利するためには、かがみが真剣を装ってこなたと逢瀬を重ねる必要があったのだ。
「なんで、こんなこと……ヒドイよ…………」
激しい怒りの後に、ほんの少しだけ悲しみが追ってくる。
涙は見せまいとこなたは強がったが、その意思に反して目元はじわりと濡れていた。
かがみが”キスをする方”に賭けていたなら、彼女の壊れていく精神はもう少し延命を図れただろう。
そうしていれば例えギャンブルだったとはいえ、かがみはキスを望んだハズなのだ。
だが実際に泉こなたの恋心と、彼女の性質を見抜いていたのは今や恋敵となったみさおだった。
常に先手を打ち、自分よりも遥かに先を行くみさおに、こなたの心は無残に食い破られていく。
「ああ、チビッ子がなんか勘違いしてたみたいだからな。ちょっと思い知らせてやろうと思ってさ」
企てが見事成功に終わり、みさおは心底から嬉しそうに言う。
「勘違い…………?」
「前から柊のこと好きだったんだろ? いつも一緒にいるから柊も同じ気持ちだとか思ってたんじゃねーの?」
「………………ッ!!」
「”オレの嫁”とか言ってたよな。あん時は笑いを堪えるのが大変だったぜ」
堪えるのが大変だった分、彼女はここぞとばかりに大笑した。
「ま、仲良くする分には問題ねーけどさ。私だってそこまで柊を束縛する気ねえし。でも勝手に自惚れて柊の周りウロチョロされちゃたまんねーからな。
ちょっと揶揄ってやろうと思ったわけよ。柊の口から直接断られりゃさすがにチビッ子も諦めつくだろ?」
言いながらみさおはかがみの肩に手を回す。
「なあ、チビッ子。柊を独り占めしたかったんだろ? こうやってほいほい来るところ見りゃ分かるぜ」
先ほどまでの快活そうな笑みから一転、みさおはハッキリと敵愾心をもってこなたを睥睨した。
「でも柊はどうだったんだろうな。一回でも考えたことあるか? 柊は自分のことどう思ってるのかって――」
「………………」
こなたは唇を噛んだ。
「――って分かるわけねえよな。チビッ子は自分のことしか考えてなかったみたいだし」
意味ありげにみさおが鼻を鳴らす。
「どういう……こと……?」
「だから――」
彼女は肩に回した手を自分に寄せ、かがみと頬を密着させた。
「柊はチビッ子のことなんて何とも思ってなかったってことだよ」
「…………!!」
「私なら分かるぜ? いま柊が何考えてるか、どう思ってるか、何をしたいか、どうして欲しいか、ってな」
「それなら私もよ」
と、かがみが同調する。
「それが好き合ってる者同士なんだよ。チビッ子みたいに自分の欲求ばっか押しつけるような奴が柊と釣り合うかよ。そう思わねえか?」
こなたは何も答えられなかった。
「さっきだってちょっと頭に来たからって柊に手上げようとしただろ? 本当に好きなんだったらそんな事しねえぜ?
分かるよな、チビッ子――結局……」
みさおにしては実に巧みな言葉の切り方をし、数秒の間を空けた後、
「お前の柊に対する愛なんてその程度ってことなんだよ。いや、愛なんかじゃない。単なる独り善がりだぜ」
こなたの脳に直接叩きこむようにねちっこくトドメを刺した。
「ハッキリ言っとく。柊に手出したら私が許さないからな!」
そう言い放つ少女は、普段の言動も相まって逞しい少年のように見えた。
「日下部…………」
惚れなおしたか、かがみは何か言いたそうに唇を動かした。
が、声にはならない。
「さっきのこと考えたら逆上して何やらかすか分かんねえからな。心配すんなって。こいつが何かしてきても私が守ってやるよ」
かがみほどの深謀遠慮は期待できない彼女だが、真実を知ったこなたがどのような手に出るかは賭けをする前から分かっていた。
だからこそ先ほど、こなたが飛びかかって来た時も冷静に対処することができたのだ。
みさおにとって意外だったのは、その狙いが自分ではなくかがみに向けられていたことくらいである。
「嬉しいけど気をつけたほうがいいわよ。前に言ったけどこいつ、格闘技習ってたらしいから」
能天気に構えないかがみは警戒心を解こうとはしない。
「大したことねえよ。どうせ合気道だかの護身術の類だろ?」
みさおにはもちろん格闘技の心得はないが、圧倒的な体格差、筋力差で容易くひっくり返せると確信している彼女は、
敵の間合いにいてもまるで動じない。
「………………ッ!!」
どこまでも嘲弄されるこなたの精神はぐちゃぐちゃになっている。
彼女は戦意を喪失した。
そう考えたかがみは、
「こういう事には結構ドライだと思ってたけど、あんたも意外と一途よね」
馬鹿にしたように言い、みさおに向きなおる。
「いつから…………」
こなたは中空を眺めて呟いた。
「いつからなのさ……2人が……そんな……」
虚脱しているこなたを見下ろすかがみは実に幸せそうだった。
「さあ、いつからかしらね。去年だっけ? 一昨年だっけ?」
「おいおい、まさか忘れたわけじゃないだろ。中二ん時だよ」
「ウソよ。忘れるわけないじゃない。日下部との思い出はちゃんと覚えてるわよ」
みさおがさらりと口にした、時期を特定する言葉にこなたは愕然とした。
いつか所有権争いを繰り広げた際に、この少女はこう言ったハズだ。
”柊とは5年連続同じクラスなんだぞ”
どうやら5年連続だったのは”クラス”だけではなかったようだ。
陵桜に入る前から――こなたがかがみと出会うずっと前から、この2人はこういう関係だったという事になる。
こなたが望んでいた関係を遥か以前からいとも容易く成立させていたという事になる。
しかもその相手が――。
(みさきち…………!!)
日下部みさおである。
これがつかさなら諦めもついた。
双子という他人よりもずっとずっと深い関係性ゆえに、こなたはそれを理由に無理やりにでも自分を納得させられたに違いない。
だが現実はいつも辛辣で、よりによって一番”そうであって欲しくない人物”がかがみのパートナーとなってしまっている。
「それにしても柊がここまで演技できるとは思わなかったな」
そのまま抱き合うのかと思えば、みさおは焦らすように腕を組む。
「柊ってすぐ顔に出るじゃん? こういうの苦手かと思ってさ」
彼女はそう言うが、顔に出るからこそこなたを本気にさせたのだと分かっていた。
かがみのような性質の人間はウソを吐くと、それがあからさまになる。
顔が赤くなる、語気が荒くなる、そっぽを向く。
よほど鈍い者でない限り、彼女がウソや誤魔化しに終始しているとすぐに分かる。
この反応が”恥じらう少女”を演出し、ツンデレを形成する。
かくして向き合ったこなたはいちいち恥ずかしがるかがみを見て、本当に恋をしているのだと思い込む。
それは決して間違いではない。
ただし真実ではない。
厳密には彼女はこなたではなく、みさおに恋をしているからだ。
「まあ一応賭けは賭けだしね。命令権も懸かってるし、私もちゃんとやらないとあんたに怒られそうだし」
かがみは憮然として言った。
「仕方ないわね。こいつ、そっち系の趣味はないと思ってたのに」
「ははは、”うちのかがみが〜”とか言ってた時のこいつはマジで恋する乙女の目だったぜ? それで確信したんだよ。
柊が迫れば絶対に乗ってくるってさ。私の目に狂いはなかったぜ」
「卑怯よ。はじめから勝敗分かっててこんな話持ち出すなんて」
「それだけ柊が魅力的ってことだろ? 怒ることないじゃんか。むしろ喜べって」
勝ちに気を良くしているのか、みさおはニヤニヤと笑みを浮かべている。
「あ〜あ、こんな事なら真剣に演技するんじゃなかったわよ。こなたに嫌われるように振る舞えばよかったわ」
「おいおい、それじゃ賭けにならねーじゃん」
憮然とするかがみを宥めるみさお。
宥め役はあやの直伝だ。
「途中からヤキモキしてたくせに」
「するかよ」
「ふーん、どうだか……」
軽口を叩き合う2人は、誰の目から見てもお似合いのカップルだ。
我の強い者同士だが、率先して引っ張っていくのはみさお。
かがみは渋々ながらもそれに従い、気がつけば二人三脚で事を為していく。
(………………!!)
こなたは生まれて初めて嫉妬を覚えた。
自分だけのかがみと親しげに喋っているみさおを。
本当なら自分がいるべきポジションに居座るみさおを。
かがみと濃厚なキスをしていたみさおを。
こなたは嫉(そね)んだ。
「なんで!? なんでみさきちなのっ!? ねえ、かがみ……なんで私じゃないの!?」
こなたは既に恋する少女だった。
「なんでなの!! なんでみさきちなんかに……!!」
この構図は恋愛物にありがちな修羅場。
ゲームなら選択肢次第でハッピーエンドに辿り着けるが、これは現実だ。
こなたが主人公でかがみがヒロインの空想の世界ではない。
「あんたもいい加減モノ分かりが悪いわね」
呆れる、というよりもはや蔑みに近い厭らしい笑みを浮かべるかがみ。
「――って言うか……謝れ、こなた。今のは日下部に失礼だ」
その笑みが瞬時に消え、彼女は殆んど唇を動かさずに言った。
自身は冗談でみさおをバカにした発言をするが、それを自分以外――ましてやこなたのように知に劣る愚者――が
吐くことを彼女は決して赦さない。
「分かんないよ……なんで……ねえ、かが――」
「謝れって言ってんのよッ!」
かがみが怒気を露にする。
泉こなたの前には、もはや彼女のよく知る柊かがみは存在していない。
子ども同然の、あるいは空気を読まない言動にも、彼女は呆れながらも決して突き放すことはなかった。
母性を擽られたように、最後には腕白な我が子にするように微苦笑しては庇ってくれた。
しかし、それはもうない。
一切のフォローを断つどころか、今やこなたの敵として眼前にはだかっている。
「あんたなんかには一生分からないわよ」
鋭い目つきをさらに鋭くしてこなたを睥睨する。
「日下部の格好いいところも可愛いところも――ゲームやアニメばっかりのあんたに分かるわけないわ」
柊かがみはこなたの全てを批判し、否定した。
たったこれだけの言葉が、状況も合わせてこなたのアイデンティティを悉く崩壊させていく。
(分かるわけないじゃん……私が好きなのはかがみだけなのに……!!)
なぜ想い人はここまで自分を苦しめるのか。
何かの試練なのか。
こうやって試しているのか。
これだけ深く傷つけられても、なおかがみを愛せるかどうかをテストしているのか。
真実の愛を示せというのか。
(分かりたくもないよ……みさきちのいいところなんて…………)
こなたの心はぐちゃぐちゃに掻き乱された。
かがみの惜しみない愛情を一身に受けるみさおが許せなかった。
愛されるのは私だ!
(……………………)
こなたは厭らしく嗤うみさおを窺った。
精神的に甚大な苦痛を受け、烈しい怒りに思考を支配されたこなたは一瞬、
この悪女みさおがかがみを言葉巧みに唆したのだと思い込んだ。
ここで元凶を叩き伏せれば、きっと目を醒ましてくれるに違いない!
恋愛対象である柊かがみはこなたの中では美化され、理想どおりの女性に仕上がっている。
現実を直視できない彼女はこう思い込むことで痛みからの逃避を図る。
妄想を抜きにしても、かがみと結託して自分を弄んだ事実は変わらない。
怒りと憎しみを日下部みさおに叩きつけることは何も間違ってはいない。
(思い知らせてやる……!!)
敵愾心を剥き出しにするも、どこかに冷静さが残っていたらしい。
こなたはみさおを油断させるため、憎悪を滲ませた瞳でかがみを睥睨する。
視線は動かさず、視野で間合いを測る。
勝利に酔いしれ慢心しているみさおの注意が逸れた。
(今だっ!!)
こなたは素早く地を蹴った。
気合は十分。最高の踏み込みだ。
このままタックルの要領でみさおを突き飛ばし、体勢が崩れたところで関節を極めるハズだった。
殺意はあっても本当に殺したりなどしない。
無傷のまま激痛を与え、二度とかがみに近づかないようにするつもりだった。
だがみさおにあと半歩というところで、こなたの体はぐいっと持ち上げられた。
「………………ッッ!?」
頭部に痛みを感じた一瞬後、髪を掴み上げられたのだと分かった。
みさおは姿勢を低くして突進してきたこなたの髪を引っ掴むと、その勢いを利用して手前に引っ張り上げた。
こなたの足が宙を蹴り、引きずられるようにして前のめりになる。
「そう来ると――」
その隙を逃さず繰り出されたみさおの膝が、ガラ空きになった腹に突き刺さる。
「くっ…………!!」
呻く間もなく1発、
「――思ってたぜっ!」
さらに2発の膝蹴りをまともに受け、こなたの視界がぐらりと揺らぐ。
みさおが掴んでいた髪を放し、両手で胸倉を掴んで締め上げた。
「このチビ――!!」
みさおは転落防止用のフェンスにこなたを押しつける。
「うぅ…………」
そのまま持ち上げられたこなたは喉を押さえられた息苦しさから、手足をばたつかせる。
「………………」
窒息から逃れるためにみさおの手を引き離そうとするが、こなたの力では敵わない。
ぼやけた視界の中に敵意をむき出しにした日下部みさおと――。
その後ろで腕を組み、愉快そうにその様を見つめる柊かがみがいた。
「日下部ぇ、そろそろ離してやらないと死んじゃうかもよ」
かがみが厭らしく哂う。
みさおはこなたを憎々しげに睨みつけると、幼躯を乱暴に放り投げた。
反射的に受け身はとれたものの、背中を強打したこなたは一瞬呼吸が止まった。
「危ねえ、もうちょっとで殺しちまうとこだったぜ」
本気なのか気圧しのためか、みさおは恐ろしく冷たい口調で言い放つ。
「頭に血が昇って暴力かよ? 見苦しい奴だな」
吐き捨てるよう言い、みさおはこなたの脇腹を踏みつけた。
「くぅっ…………!!」
痛みと苦しみと惨めさを味わいながら、こなたはそれでも負けまいと睨みを利かせる。
しかし両者の体勢を見れば必死の抵抗も蟻が象に噛みつく程度でしかない。
(なんでこんな奴に…………ッ!)
なまじ武術の心得がある彼女にとってはあり得ない状況だった。
いくら相手が体を鍛えているといっても、それは陸上競技という狭い範囲での鍛錬であり、
反射や素早い体捌き、さらには高い技術を要する格闘では負けるハズがなかった。
……彼女は気付いていない。
敵愾心に支配されて動きが鈍くなったのは間違いないが、彼女が以前に学んでいたという格闘技は、
自分に挑みかかってくる相手の動きを先読んで受け流し、反撃に転じることを前提とする武術だった。
今のように憎悪から敵を叩きのめすための流派ではない。
烈しい感情の波に呑まれた彼女は、攻撃ではなく防衛を礎とする流儀であることを忘れていたのだ。
こなたの動きを鈍らせているのは感情の揺れだけではない。
彼女が夜を徹して耽っていた遊びは、何にも代え難い快楽を齎す一方で、
僅かな思考力の低下と体力の大きな消耗を副作用に持つ。
そして何より――。
人は憎い誰かを攻撃するより、愛しい誰かを守る時のほうが遥かに強くなれる。
これが両者の決定的な違いであり、勝敗を分けた最も大きな要因である。
「………………」
こなたは自らの敗因に気付かない。
みさおは自らの勝因が分からない。
しかし彼女にはどうでもよい事である。
なぜならこの快活な少女はずっと前から勝っていたのだから。
遡ればこの戦いが始まる前から――。
勝負はついていたのである。
「あっけないものよね」
みさおの足下で屈辱に塗れる少女を見下ろし、かがみが口の端を歪めた。
接近し、剰え余裕の表情を浮かべられるのは、もはやこなたに抗う気力がないと分かるからだ。
圧倒的な勝者と敗者との格の違いを見せつけられた今、人並みのプライドを持つ少女がこの先、
足掻けば足掻くほどに惨めさを味わわされることに気付かないハズがない。
「柊の買い被りだったみたいだな。大したことねえじゃん」
この体勢からでは不意を衝こうにも起き上がりの動作などで数秒を要する。
もしまたこなたが実力行使に出てもすぐに対応できるだろう。
(相当痛めつけてやったからな。動きもかなり鈍くなってるだろ)
愛するかがみを守るためには、気の短い虫の羽をもいでおく必要がある。
「あ…………ッッ!!」
みさおは止めにとこなたの肩を乱暴に踏みつけると、かがみの手を引いて数歩下がった。
「これで分かったでしょ、こなた? あんたの入り込む隙なんてないのよ」
「………………」
「今度また私の日下部に手出ししようとしたら、私だって何をするか分からないわよ」
しっかりと釘を刺しておいてから、かがみはみさおと熱い熱い抱擁を交わす。
上体を起こしたこなたはドス黒い感情を沸き立たせたが、今となってはこうして鈍痛の走る腹部を押さえ、
かつての愛しい少女と恋敵を睨むことでしかそれを表現できない。
嫉妬と憎悪の混じった視線に気付いたみさおは、
「それにしてもオタクって根暗でひきこもりのイメージあったけど、結構大胆だよな」
視線はかがみに、しかし口調は間違いなくこなたに向けて悪辣な言葉を放つ。
「なんだっけ? ”かがみのこと、好きになってもいいですか”だったか?」
「な、なんでそれ…………!?」
こなたは気を失いそうになった。
ひどい酸欠状態に陥ったように激しい眩暈と嘔吐感に苛まれる。
かろうじて意識は保っているものの、目の前は真夜中のように暗い。
「チビッ子から来るメールは逐一チェックしてたからな」
「あんた、私が送ったメール、全部私が打ったと思ってただろ?」
みさおが言い、畳みかけるようにかがみが付け足す。
「実はそうじゃないんだよな。昨日のとかは私が考えたんだぜ」
信じられない、という思いはもはやこなたにはない。
この2人が結託していると判明した時点で分かることだ。
こなたへの恋情を募らせ、活発だが奥手な恋人を演じてきた柊かがみが綴ってきたメールの数々。
キャラじゃないと思いながらも彼女同様、含羞の色を浮かべながらこなたが綴ってきたメールの数々。
そのどちらもを、みさおは見ていたのだ。
こなたをますますその気にさせるための文面を、みさおとかがみは一緒になって考え、送信したのだ。
「日下部は勉強嫌いなわりにそういうとこ、結構面白い文句思いつくわよね」
「これも柊への愛だよ、愛」
「ちょっと、こなたみたいな言い方しないでよ」
かがみが苦笑交じりに言う。
「ははは……ぜんぶ……全部ウソだったんだ…………」
こなたは笑っていた。
笑うことで既に寸襤褸(ずたぼろ)になっている精神が完全に崩壊するのを防ぐ。
この防衛反応は人間が生まれ持って備えているもので、こなたにはそうした意図はなかった。
「まあ負けは負けだしね。ほら、さっさと命令しなさいよ」
敗者であるハズのかがみは、なぜか勝者よりも強気に振る舞う。
腰に手を当て、口を尖らせ、拗ねたような口調で。
だが頬はうっすら赤く、一度は逸らした目を再びみさおに向けた時の表情は――。
勝敗など関係ないと言わんばかりに幸せそうだった。
(私にだってそんな顔したことないのに…………!!)
こなたは歯噛みした。
演技とはいえ彼女に対しても、柊かがみは適度に恥じらう”恋する少女”としての反応をいくつも見せてきた。
しかしそれらは全て”ツンデレ”として表現できる程度のものだった。
アニメで喩えれば借金執事を擁するお嬢様や、人間を使い魔にする魔法使いなどが見せるリアクションとなにひとつ変わらない。
かがみが”こなただけに見せる側面”は無かったのだ。
(………………ッッ!!)
とにかく嬉しそうなのだ。
たいていの人間は勝負事にはまず勝ちたいと思う。
どんなに小さな諍いでも進んで負けを狙おうとする者はまずいないだろう。
勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。
それが人間のハズだ。
しかし今、柊かがみはそうではなかった。
みさおに命令されることを望んでいるような節さえあった。
「ふふん、覚悟しろよ柊!」
悪戯っぽく笑うみさお。
だが根が単純な彼女は勝負に勝つことを念頭に置いていたせいか、勝った後に何を命令するかまでは考えていなかったようだ。
「早くしなさいよ。あと60秒経っても何もなかったらチャラだからね」
主導権はかがみが握っている。
「ちょっと待てってヴぁ! いま考えてんだから」
「そういう事は先に決めておきなさいよね」
手のかかる子供を見守る母親のように、かがみは苦笑交じりにみさおを見つめる。
「う〜ん…………」
腕を組み、目を閉じてしばし考察する。
こなたは再び躍りかかるタイミングを窺った。
散々に弄ばれ、挙句に隙があったとはいえ膝蹴りまで食らわされたこなたの屈辱は計り知れない。
組み伏せて痛めつけてやりたかったのだ。
自分を裏切ったかがみと、隠れてその様を楽しんでいたみさおを。
「あと30秒!」
と、かがみが言った途端、みさおがパッと目を開いた。
「………………」
その所為で飛びかかるタイミングを逸してしまい、こなたは拳を握りしめた。
「決めたぜ!」
不敵に笑うみさおは、かがみではなくこなたを見下ろしている。
「ここでさ、チビッ子の見てる前でいつもみたいにやるってのはどうだ?」
「はぁっ!?」
かがみが頓狂な声をあげる。
口を開けたままの彼女は呆れを遥かに通り越しているようだ。
だがこの提案はかがみをただ辟易させるためのものではない。
2人の意思疎通がとれているからこそ出された提案であり、命令であり、誘いである。
「ふふ…………」
その意図を理解したかがみは小さく噴き出した。
「な、なんだよ? ヘンなこと言ったか?」
みさおが口を尖らせる。
「そうじゃないわよ。ただ、やっぱりあんたとは相性がいいんだなって思っただけ」
「ん?」
「私もね、勝ったら同じこと言うつもりだったのよ。ここで、日下部と……」
「なんだよ、それじゃ罰ゲームでも何でもないじゃん。場所が違うだけで」
「だって他に思いつかないし」
「………………」
「………………」
「ま、うちらの愛の深さなんて最初から分かってたことだけどな」
見せつけるように、知らしめるように、みさおはこなたを見やった。
(みさきち…………!!)
心の中で呪詛の念を叩きつけるこなたは、それでも彼女をそう呼んでいる自分が理解できなかった。
この渾名は半分は親しみを込めて付けたが、もう半分は嘲りの意味があったハズだった。
つまり本人に分からないようさり気なく”男性っぽい名前”をチョイスし、遠回しにボーイッシュな面を愚弄していたのだ。
女の子なのに女の子らしくない、むしろ男の子に近い言動や性格。
こなたはかがみを通して互いに自己紹介をした時から勘付いていたのかもしれない。
日下部みさおとは仲良くはなれない。
かがみを中心に置いた時、みさおとこなたの立ち位置は似通っている。
それが分かっているからこそ、競争相手になるに違いないと。
実際、こなたはそれよりずっと前からかがみに好意を寄せていた。
ストレートに告白したことはなかったが、恋慕の情は日増しに強くなる。
そんな中、みさおの存在は明らかに邪魔だった。
同じ中学で5年間同じクラスで――。
所有権を巡っての小競り合いでは、彼女はいつもそうして”付き合いの長さ”を語りたがった。
だからこなたは”付き合いの深さ”で対抗した。
どうせ同じクラスなだけの癖に。
陵桜では自分といる時間のほうが遥かに長いんだ。
それに名字で余所余所しく呼び合っている仲が深いハズがない。
本当に親しいのは――昵懇の間柄なのは互いに名前で呼び合っている自分たちだと。
おバカでボーイッシュの体育会系は柊かがみとは決して釣り合わない存在なのだと。
こなたは内心ではずっと思っていた。
「チビッ子が見てるけど、いつもどおりにいくからな」
”いつもどおり”という部分を強調したみさおは、かがみのスカートの中に手を入れた。
「ちょ、いきなりかよっ!?」
口調は荒いが抵抗はしない。
陰部に心地よい刺激が与えられ、かがみは内股になってくすぐったさから身を捩る。
これは前戯ですらない。
みさおはそのままもう片方の手で張りのあるかがみの胸を包みこんだ。
生身よりも衣服を通したほうがその刺激が強いこともある。
「日下部ぇ……いつもどおりって言ったじゃない…………」
上と下から突き上げてくる快感に、かがみは自然と甘い声を出している。
「ちょっとペース早いんじゃないの?」
「そう言うなよ。柊が演技に集中できるようにって1週間我慢してた私の身にもなれって」
「そんなのあんたの勝手――んッ!」
赤い顔で反駁しようとしたかがみの唇が塞がれた。
みさおは見た目からは想像もつかないほどに時に激しく、時にねちっこく、口腔内で行われるもうひとつのキスで
戦術的なテクニックを駆使して主導権を握っている。
舌端同士の絡み合いでは明らかにみさおに分があった。
受身がちなかがみの感度を知り尽くしている彼女は、精神を崩壊させるほどの快感を与えたかと思えば、次の瞬間には敢えて口吻を離す。
(やるなら最後までやりなさいよ……いつも……いいところで止めるんだから…………)
緩急をつけた責めに興奮と快感を味わうかがみは、まだ快楽の絶顛には辿り着かない。
みさおは彼女の敏感なところも鈍いところも知っているし、快感への耐性も得心している。
どこまで責めれば落ちるか熟知している彼女は、かがみが絶頂に至るギリギリのところで手を止めるのだ。
「いい具合に濡れてきたな」
みさおも恍惚の表情になって甘い声で囁く。
「……焦らすの……やめなさいよね…………」
指先が僅かに動くたびに、かがみの体はピクンと小さく跳ねる。
「簡単にイッたらつまんねえじゃん。こういうのはじっくり楽しむもんだぜ?」
「だったらあんたにもやってあげるわよ!」
「うひゃうっ!?」
痺れを切らしたかがみは反撃に出た。
防備を疎かにしていたみさおは、内股を走る刺激に頓狂な声をあげた。
「や、急にやめろよなっ! ヘンな声出しちまったじゃんか!」
「毎日鍛えてるくせに、あんたもここは弱いのね」
今度はかがみが主導権を握り、攻勢一辺倒のみさおを落としにかかる。
「私だってあんたの弱点くらい知ってるのよ?」
「へへん、返り討ちにしてやるぜ」
2人は互いの四肢の全てを使って快楽の境地を目指した。
エスカレートしていく行為は淫靡で悖徳的な儀式の一部分だ。
「ちょっと痛いわね」
仰向けになったかがみはみさおに覆い被さられたことで、冷たく固い床面に背を押しあてられた。
「すぐに気持ち良くなるって。それより制服汚れてもいいのか?」
「平気よ。あんたの練習に付き合ったってことにするわ」
「本番だぜ、これ」
「バカ。部活の練習のこと言ってるのよ」
「分かってるって。いちいちマジになって可愛い奴だよな、ひいらぎは」
「………………!!」
「ほら、もうちょっと力抜けって……そうそう、そんな感じで――」
夕陽を浴びて今、ひとつになる2人の少女のシルエットは艶めかしい。
倫理や道徳を遥かに超越した美がそこにある。
互い衣服を纏ってはいるが、その行為の円滑さは生まれたままの姿で行うそれとなにも変わらない。
分かり合っているからこそ。
愛し合っているからこそできる、生物の取り得る行動の中で最も尊貴で最も卑俗な愛の営み。
決して子孫を残すことができず種の存続になんら貢献しない彼女たちの睦みは、快楽のみを求めた無意味で自堕落な遊びだ。
「くさかべ……」
「ひいらぎぃ……」
組み重なった2人はもう既に一体となっているのに、それでも我慢できずに名を呼び合っては互いを求め合う。
融合と置き換えてもよいくらいに肌を密着させた2人は、その触れ合う部分の全てが性感帯となる。
露出している部分は彼女たちの”いつも”よりずっと少ないハズなのに、得られる刺激はその数倍だ。
かがみよりも背が高く体格も良いみさおがリードをとる。
この構図はそのまま2人の性格を表しているようで、攻めるみさおと受けるかがみという関係性はなかなか崩れない。
「お、前よりちょっと痩せたんじゃね?」
ひどく場違いな科白が快活な少女の口から飛び出す。
悪戯っぽく笑う彼女はかがみの肋(あばら)から下腹部にかけてをゆっくりと撫でている。
「え、そ、そう……?」
”痩身”というキーワードは年頃の女性に対する最上級の褒め言葉だ。
しかもそれを恋焦がれる相手から聞いたかがみは、仰向けに寝そべったまま舞い上がった。
「柊は努力家だよな……」
「あ、あんたこそ毎日部活がんばってるじゃない」
頬を朱に染めて讃え合う。
小麦色に日焼けしたみさおを仰ぎ、かがみは彼女の二の腕あたりに指をあてがう。
筋肉の歪さは全く感じない。
むしろ健康的でシャープな流線型は、たとえ同性であっても見る者に憧憬の想いを抱かせる。
「………………」
もはや暴力に訴える気すら萎えてしまったこなたは、全身から力が抜けてしまったようにその場に崩れ落ち、
光の宿らない瞳で少女たちの営みを眺めていた。
負の感情にのみ支配されている彼女だが、絶望の中にもまだ”泉こなた”としての意識が僅かばかり残っている。
(かがみ…………)
震える手はいつしか下着の内側をまさぐっていた。
怒りのために上がっていた体温は、今となっては性的な興奮によってさらに上昇している。
殆ど起伏のない胸をさすり、もう片方の手で秘部を刺激する。
惨めだった。
この上なく惨めだった。
恋心を弄び、ずっと自分を騙していた柊かがみへの強い憤りの念は消えない。
だが一方でそんな彼女をまだ愛している自分がいる。
(かがみぃぃ…………!!)
みさおを自分に置き換え、愛しい少女と睦む自分を想像しながら。
こなたの手は遅く早く動き、快楽の高みへと己を押し上げる。
毎夜のように繰り返してきた自慰とはまるで味が違う。
身も心もかがみと一体となり――こなたはそう思い込んでいる――あらゆる興奮、感動、快感を共有しようとする。
「はふ…………」
火照った体は限界が近い。
細い指先は愛液に濡れ、それを潤滑油にさらに激しく刺激を与えているのは妄想の中の柊かがみだ。
ドン! と体の奥から凄まじいエネルギーが溢れ出す。
これが瞬く間に全身を駆け抜け、血管の隅から隅まで恐ろしいスピードで蛇行する感覚。
「ひいらぎいぃぃッッ!!」
「くさかべえぇぇっっ!!
3人が同時に絶頂を迎えた。
屋上に響き渡る彼女たちの艶めかしい声に、こなたは永く短い夢から現実に引き戻された。
今日はここまでです。
長くなりましたが次々回あたりに完結します。
それではまた。
51 :
マロン名無しさん:2010/11/14(日) 22:44:03 ID:LXg2fLXw
何だこれもう……
ご都合主義の自慰駄文
こういう文章書ける奴ってきっと誰かを殺してるんじゃね
皆さん、こんばんは。
本日分の投下参ります。
・
・
・
・
・
肩で息をしながらみさおがゆっくり立ち上がる。
スタミナのある彼女は短距離を走り終えた程度の心地よい疲労感に酔いしれたが、
かがみは全身から力が抜けきってしまったように横たわったままだ。
「………………」
「………………」
みさおと目が合ったこなたは、自分が”していたこと”にようやく気付いた。
文字通り、死にたくなるほどの羞恥心が彼女を襲う。
日頃、饒舌なみさおはこの時ばかりは何も言わず、嘲るように口の端を歪める。
「………………ッ!!」
そして見せつけるようにたった今、起き上がったばかりのかがみの唇を塞ぐのだ。
意識の半分は快感の波に溺れていた彼女は、その小さな責めに抗し得ない。
今までの濃厚な重なり合いから一転、このあまりに素っ気ないキスは食後のデザートのようなものだ。
ゆらり、とこなたは立ち上がった。
足が小刻みに震えているのは快楽の頂上から下降しているためだ。
「見てたわよ、こなた? あんたさ、私とこういうコトがしたかったんでしょ?」
かがみが厭らしく嗤った。
この成績優秀な少女は知っている。
こなたがキスを迫った時から、彼女がそれ以上の関係――行為――を求めていたこと。
”同性愛”というある種の禁忌を犯せた者が、浅い口づけだけで満足できるとは思えない。
「あんたのことだから、私のコト想像しながら毎晩オナニーしてたんだろ?」
年頃の娘なら憚りたくなるような単語をさらりと吐く。
射竦めるような眼光に、こなたはビクリと体を震わせた。
「図星みたいだぜ」
「ふん……やっぱりね」
拗ねたような、怒ったような顔でこなたを睨みつけたかがみはやや身を乗り出すようにして、
「気持ち悪い」
精一杯の悪意を叩きつける。
「………………!!」
そのたった一言に、こなたの精神は今度こそ粉砕された。
「私でオナニーしていいのは日下部だけよ」
「ああ、逆に私をオカズにしていいのも柊だけだぜ?」
「おまっ、オカズって……もうちょっと表現考えなさいよね」
「ほ〜ぉ? じゃ”オナニー”はいいのかよ?」
「うっ…………」
あれほど恥ずかしい姿を晒しても赤面しなかったかがみは、みさおのちょっとした言葉狩りに口ごもる。
こんな小さな言い合いすらも、もはやこなたの感情を動かすことはない。
かがみに、そしてみさおに全てを否定された彼女は虚ろな瞳で中空を見つめている。
「ふふ…………」
こなたの口が勝手に動き、侮蔑の笑みを漏らす。
様子の妙にみさおはかがみを庇うように半歩進み出た。
また手を上げるかもしれない。
力のある者はたいていその力を使いたがるものだ。
(まだ動けるのか……しぶとい奴だな)
姫を守る騎士さながらに、みさおは鋭い目でこなたを睥睨する。
だが彼女はその視線に臆することなく一歩、一歩とゆっくり距離を詰めてくる。
「2人して私を騙して……バカにして……いい気分だっただろうね」
あの甘ったるい声は呪詛の念を含んだ邪悪なものに変わっていた。
「いい気分なワケないじゃない」
かがみが弾んだ声で反応する。
「考えてもみなさいよ。私が勝つにはあんたとキス寸前までいかなきゃならない。でも日下部以外となんて絶対イヤ。
でもそうしなきゃ負ける――好きでもないオタクと形だけでも恋人のフリするのがどれだけ辛かったか……」
「………………」
柊かがみは残酷だった。どこまでも卑劣だった。
「ハッキリ言ってあんたと手を繋ぐのも……ううん、並んで歩くだけでも吐き気がしてたっていうのに」
その悪辣さに便乗するように、
「私だってそうさ。一時的とはいえチビッ子に譲らなきゃなんねえもんな。学校にいる時はわざと私をぞんざいに扱えって柊に言ったけど、
実際やられると演技だと分かってても結構ヘコむもんだぜ?」
みさおが陽気に笑って言う。
「いいよ…………」
こなたは殆ど聞き取れない声で呟く。
「お似合いだよ……2人とも……」
「言われなくてもそうよ」
「あったり前だろ」
”お似合い”という言葉を祝福の意味に捉えない2人は、しかしその一言を盾に堂々と絆を強くする。
「そんな2人に私からプレゼントだよ。最初で最期のプレゼントだからしっかり受け取ってよね」
抑揚のない、古い機械から発せられたような音声が風に乗って聞かせたい相手の耳にだけ届く。
みさおはさらに注意深く身構えた。
(…………ッ!?)
突然、こなたが走り出した。
「柊っ!」
かがみに離れるように言うと、みさおは足に力を入れてこなたを正面に見据えた。
陸上部顔負けの走力を見せる彼女がまっすぐに向かってくる。
だが2人のアテは外れた。
逆上したこなたがなりふり構わず暴力に訴えるつもりだと思っていたみさおは、彼女の奇行に目を白黒させた。
風を切って走る彼女は2人の脇を通り過ぎ、そのまま速度を落とさず反対側のフェンスに飛びつく。
「あっ――――!」
そこでかがみは初めてこなたの思考を読みとった。
転落防止用に四辺に設置されたフェンスの一部分。
老朽化が進んだまま取り替えられていなかったのか、小学生程度なら通り抜けられる穴が開いている。
「一生無くなることのない宝物をあげるよっ!」
身軽なこなたはその隙間にするりと体をくぐらせ、フェンスの向こう側に立った。
肩越しに振り返った少女は、些か狼狽した様子のツインテールの少女を一瞥すると、
「好きだよ、かがみ――」
本心の半分を吐露した。
複雑な表情のまま、こなたは屋上の縁に爪先を当てる。
微風が彼女の背中を押し――。
幼躯はそのまま地面に吸い込まれるように落ちていった。
(かがみ……)
宙を舞いながらこなたは愛しい彼女の姿を思い浮かべた。
柊かがみを心底から愛していたのは間違いなかった。
裏切られ、弄ばれた今でもその感情は変わっていない。
だがそれと同じくらいに憎悪の念も深かった。
(かがみ…………!)
愛情の深さは憎しみの深さに等しい。
そのジレンマに苦しむこなたが短い時間の中で下した決断がこの結末に結び付く。
文字どおり、”殺したいほど愛して”しまった柊かがみへの――。
贐(はなむけ)であり、復讐である。
泉こなたにとっての永遠はここで終わり、そして間もなく始まる。
ぐしゃり、と頭蓋が砕け散る音が脳内に響き渡る瞬間。
彼女は嗤った。
かがみには愛憎を抱いているが、みさおに対しては殺意に近い憎悪しかない。
しかし敢えて殺さず自ら死を選ぶ。
これが憎い相手を直接殺すよりも遥かに残酷で効果的な仕返しの方法だと、こなたは身を躍らせる前から確信していた。
目の前で人が落ち、全身の骨が砕ける音を聞き、そのまま死を迎える様を見た人間が平静を保てるハズがない。
この出来事は日下部みさおにとって忘れられない大事となるだろう。
忘れたくても忘れられない、いつまでも脳裏に膠着(こびりつ)く音と映像となって残り続けるのだ。
重要なのは自殺の瞬間をただ見せるのではなく、”かがみとみさお”が同時にその場に居合わせること。
(………………)
この凄惨な光景は必ず2人にとってトラウマとなる。
そして封印してしまいたい記憶はいずれある条件が整った時、フラッシュバックという形で2人の心に鋭い爪を突き立てる。
発作はトラウマとして刻み込まれた状況が再現された時、本人の意思に関係なく起こる。
状況の再現――すなわち、かがみとみさおが顔を合わせた時、だ。
「ふふ…………」
その様がこなたには容易に想像できた。
この2人は互いに傷を舐め合うように寄り添うだろう。
しかしそれも束の間だ。
程なくしてフラッシュバックに苛まれる彼女たちは、それが引き起こされる原因となる対象――つまり互いを遠ざけることになる。
かがみがみさおと、みさおがかがみと甘美の世界を生きる時、こなたの最期の瞬間を思い出さずにはいられなくなる。
愛する者同士がその距離を縮めれば縮めるほど、忌まわしき記憶が蘇って却って互いを遠ざける結果となる。
これ以上の皮肉はない。
(スクイズやってて良かったよ……まさか私がこんな役するとは思わなかったけど……)
豪猪(やまあらし)のジレンマにも似たこの効果こそ、こなたの最初で最期の祝福となるのである。
(苦しめ……苦しめばいいんだ!)
呪詛の念をたっぷり注ぎこんだこなたは、痛みを感じる間もなく折れた肋骨に肺腑を突き刺されて意識を失った。
縁からそっと顔を覘かせ、真下でうつ伏せに倒れたまま動かないこなたを認めたかがみはようやく一息ついた。
「ふん……あれなら即死ね」
”即死”という揺るぎない事実は柊かがみにこの上ない安堵を齎(もたら)してくれる。
運良く――あるいは運悪く――こなたが一命をとりとめたなら、駆けつけた生徒や教師たちに秘密を吐露してしまうかもしれない。
真実を知ってから彼女が投身するまで40分程度。
遺書を書く暇もなければ誰かに口外する機会もなかった。
(ということは…………)
秘密は秘密のまま、この事実は誰にも、どこにも露見しない。
泉こなたの自殺は”単なる自殺”で片づけられるのだ。
(ま、泣くフリくらいはしてやらねーとな)
日下部みさおと柊かがみの相性は抜群だ。
発声によらずとも、互いの考えは常に一致していると分かる。
例えば恋に一途な少女が裏切りを苦に自殺しても、罪悪感に駆られるどころか、その死をむしろ喜んでいることだ。
(チビッ子、これを私たちに見せつけることで後味を悪くさせるつもりだったんだろ?
フラッシュバックだっけ? 確かに効果的な方法だよなァ――でも……)
みさおは目を細めた。
(相手を選ぶべきだったな。柊との仲がこんな”くだらない”事で引き裂かれると思ってたのかよ?
お前は最後の最期まで柊のコトが何ひとつ分からなかったんだな。独り善がりもいいとこだぜ)
生暖かい風が吹いた。
「安心したわ、これで報復とか気にしなくて済むし」
振り返ったかがみはため息をついた。
「あいつ、オタクのくせにケンカ強いみたいだし割と積極的な方だから何かやってくると思ってたのよね」
「ケンカなら私だって負けないぜ? 毎日鍛えてるからな」
みさおは拳を握りしめて言った。
「それより早く降りようぜ」
「なんでよ? もう私たちの邪魔する奴はいないのよ? どうせならこのままさっきの続き――」
「バカ、そうじゃねーよ! うちらが屋上にいることが誰かにバレたらまずいって言ってんだよ」
「あ…………」
言われて初めて彼女はそれに気付いた。
熱く深い情愛は時に人を愚かにするらしい。
「普段しっかりしてっけど、たまにそうやって抜けたところ見せるのが可愛いんだよな〜」
「う、うっさいっ!」
2人は急いで校舎に戻る。
駆け足気味に階下に降りた後、すぐに歩調を遅くしたのは屋上から駆け下りてきたと周囲に思わせないためだ。
荒くなる呼吸を抑えながらのちょっとした工夫だったが、幸い校舎内には生徒や教師の姿はなかった。
「西館から出ようぜ」
とみさおが提案した理由は、それが校舎を出てから校門まで直進した場合に唯一こなたの遺体を見ずに済むコースだからだ。
「お、あんたにしちゃ名案じゃない」
先ほどの仕返しとばかりにかがみが苦笑交じりに言った。
中庭は俄かにざわめき立ち、部活に勤しんでいた生徒たちが一様に本館の方へ走っていく。
2人はその波に逆らうようにして敷地を出た。
ただしその際、不自然にならないよう時おり後ろを振り返るという演技も付け加えておく。
騒ぎを尻目に平然と下校する姿が誰かの目に留まり、そのまま記憶されていると他日、厄介なことになりかねない。
「ウチに来ねえ?」
「え、今から?」
「当たり前だろ。今日さ、兄貴も親も用事でいないんだよ」
かがみがハッとなってみさおを見た。
「――ってことは?」
「そ、ウチには私ひとりってわけだ」
「行くわ」
誰もいないとなれば断る理由はない。
家族の目を気にすることなく、好きなだけ好きなことができる。
かがみは素早く携帯電話を開くとみきとつかさにメールを送った。
こなたの死が直ちに生徒たちに伝わるようであれば、その知らせは同じクラスのつかさにも必ず届く。
その後ではみさおの家に泊まる――とは言いにくい。
この場合は……。
”お泊まり”という甘美のイベントを成立させてからこなたの死を知る、という順序が望ましい。
「大胆だな〜柊は。今夜は寝かさないつもりだろ?」
自分から誘っておいて、彼女は官能的な声をかがみの耳に吹き込む。
「さっきの続きがしたいだけよ」
素っ気なく答えるその顔は真っ赤に染まっている。
「じゃ決まりだな。コンビニ寄ろうぜ。ポッキー買い込まねーとな」
みさおは無邪気に笑ってそう言うと、横を歩く少女の肩に手を回した。
今日はここまでです。
次回で完結しますので、もう暫らくお付き合いくださいませ。
それではまた。
63 :
マロン名無しさん:2010/11/16(火) 21:58:07 ID:QS6E58Ye
これなんてスクイズって思ってたら話内にそのネタ出ててワロタw
皆さん、こんばんは。
最後の投下参ります。
翌日。
ホームルームで担任が知らせた事実は教室を大いに震撼させた。
「――そういうことや。しばらくの間、休校になる。部活動も当面は中止や」
黒井ななこが淡々と伝達事項を述べるのは、そうしなければ押し寄せる感情の波に逆らえず落涙してしまいそうだったからだ。
動揺が広がるB組の前で涙を見せれば不安がる生徒たちの統率がとれなくなる。
ここは敢えて気丈に振る舞い、教え子たちを落ち着かせなければならない。
深い悲しみが室内を覆う。
彼女とはさほど仲の良くなかったクラスメートも、同じ教室で過ごした同級生の自殺という事実に沈痛な面持ちになる。
「………………!!」
声こそあげなかったが、つかさもみゆきも涙を零していた。
明るく社交的で周囲を和ませていた泉こなたはもういない。
しかも事故や病気が原因ではなく、屋上からの投身自殺という結末には泣いても泣いても足りなかった。
「こなちゃん……こなちゃんが……」
動機に全く心当たりのない2人はこの現実を受け容れられなかった。
ストレスとはおよそ無縁と思えた少女の自殺。
進学や家族に関する悩みもなければ、いじめに遭っていたわけでもない。
(なぜこんなことを…………!)
つかさよりもずっと思慮深いみゆきは、その理由をあれこれと想像してみる。
が、あくまで他人の想像で真実には決してたどり着けない。
英邁な彼女が推測したのは、その動機が学校に関係しているのであろう、ということくらいだ。
・
・
・
・
・
C組では桜庭ひかるがこの事態を伝えていた。
もともと感情の起伏が見えにくい彼女は、意識しなくても事務的に生徒たちにあらましを説明することができる。
こちらも動揺が広がっているが、隣のクラスほど陰鬱なムードにはならない。
泉こなたと接点があった生徒が殆どいないためだ。
従って自殺という大事件を淡白に語るひかると、それをどこか――ある意味では必然的に――他人事のように聞いている生徒たち、という構図が出来上がる。
俯き小刻みに体を震わせるかがみとみさおは、こなたの死を悼んで泣いているのではない。
深い悲しみによって引き起こされる嗚咽は、その状況を知らない者からすれば笑いを我慢しているようにも見える。
この2人がまさにそれだった。
声をあげて笑い出しそうになるのを必死に堪えるその様は、場の雰囲気と相まって嗚咽を漏らしているとしか思われない。
邪魔者は消えた。自ら命を絶った。そして真相を知る者は誰もいない。
これほど愉快なことはない。
かがみもみさおも、ひかるの話など全く聞いていない。
誰よりも早くこの事実を知っていたから耳を傾けたところで新鮮味はないし、流れからして当面は休校になることも分かっている。
差し当たり彼女たちが考えなければならないのはその休みの間、どのようなシチュエーションで逢瀬を重ねるかに尽きる。
課題も何も出ない、完全なる自由な時間。
日が昇り、沈んでもなお甘い一時を堪能できるまたとないチャンスなのである。
(お…………?)
ポケットの中の携帯電話が振動した。
みさおはひかるに気付かれないように机の下でディスプレイを開く。
『1件の新着メールがあります』
の表示に彼女の頬は思わず緩む。
だがここで返信文を打てばさすがにその挙動がひかるの目に留まるだろう。
みさおはそのままの姿勢で受信メールを開いた。
雲ひとつない青空。
下校していく生徒たちの波。
名前も知らない小鳥が宙を舞う。
それらを順番に眺めていると、ここから数十メートル離れた場所で少女が死んだとは思えなくなる。
こなたが飛び降りた事で屋上は完全閉鎖。
真下の現場もぐるりと囲いで覆われ、誰も立ち入ることはできなくなった。
だがそれ以外の場所――ここ体育館裏も――は全く手をつけられず、平時のそれと変わらない。
だから現場にさえ近付かなければ惨劇の匂いすら感じられない。
「悪りぃ、遅くなって」
人目を憚るように小走りにやって来たみさおは全く息が上がっていない。
「どうしたんだよ? 改まってこんなメール送ってさ。教室じゃ話せないことでもあんのか?」
みさおはこなたの死に触れて悲しむフリを続けている。
だが時たまにその意識が薄れ、いつもの快活な口調に戻ってしまうのだ。
「ごめんね」
謝った相手は口元に手を当てて困惑しているようにも見えた。
大和撫子と表現してもよい佇まいのこの少女は、いつでも控えめだった。
わざわざホームルームを狙ってみさおにメールを送り、体育館裏に呼び出すという行為も彼女にとってはなかなかに勇気の要る作業だった。
「いや、別に謝らなくていいって。それよりホントにどうしたんだよ? なんかあやのらしくないぜ?」
――峰岸あやの。
もともと儚さの漂う彼女がみさおにはいつにも増して大人しく見えたが、それはこなたの死を知ったからだと思った。
かがみを通して知り合った相手だ。
さして付き合いは長くはないが、一度でも言葉を交わした人間の自殺という結末に塞ぎこんでいるのだろう。
みさおの知る幼馴染みはそういう人物だ。
「ごめんね、みさちゃん。急に呼び出して」
と前置きしたうえで、
「ちょっと見て欲しいものがあったから」
鞄から茶封筒を取り出し、みさおに手渡す。
「ん…………?」
無地の封筒の口は開いている。
訝しみながら彼女は中身を取り出した。
「………………ッッ!?」
瞬間、健康的な小麦色の顔が比喩ではなく蒼白に彩られていく。
「な、なんで……あやの…………?」
震える手からそれらが零れ落ち、みさおは慌てて拾い集めようとする。
その様をあやのはぼんやりと眺めていた。
「なんでだよ……これ……どうなって――?」
定まらない視線があやのを捉え、手許のそれらを捉えた。
封筒に入っていたのは数枚の写真だった。
屋上の校舎に続く通路からシャッターを切られたそれらには、みさおとかがみの姿が写っている。
問題はその状況。
1枚は2人が睦んでいる場面。
1枚はこなたがそれを見ながら自慰に耽っている場面。
1枚はこなたがフェンスに向かって走っている場面。
そしてもう1枚には――フェンスの向こうで飛び降りる瞬間のこなたがしっかりと記録されていた。
「あ、あやの…………?」
彼女が最初に呟いた、
”ごめんね”
の意味が分かったみさおは危うく気を失いそうになった。
相当に優位に立ったあやのはしかし強気に出るどころか寧ろ卑屈になって、
「他にもあるの」
と言って今度はむき出しの写真を束で取り出す。
新たに差し出されたそれらは最初の4枚を繋ぐ重要な役割を果たしていた。
どれもアングルは同じだが、みさおとかがみの営みの経過が十数枚に及ぶ。
こなたの痴態に関してもよくよく見れば、左手を股間にあてがっているシーンもあれば無い胸を自ら揉みしだく一面もある。
彼女が走っているところも、落ちていくところもストロボ写真のように時の流れと対象の動きが生々しく刻まれていた。
これは動画の切り抜きだ――みさおが気付いたのは数秒が経ってからだった。
「…………いたのか?」
短すぎる問いにあやのは頷く。
「柊ちゃんと何かやってるのは分かってたの。泉ちゃんもいたから彼女に絡んでる事だっていうのもすぐに気がついたわ」
「………………」
「こういうやり方、本当は嫌だけど……でもこうでもしなきゃみさちゃん、きっと動いてくれないと思ったから」
その穏やかな口調が悪魔の囁きに聞こえ、みさおは後ずさった。
「きょ、きょう……脅迫するとかじゃないよな?」
たったこれだけの疑問を述べるだけでも、カラカラに乾いた喉はまともな発音を許してくれない。
みさおはあやのをよく知っている。
秘密を知ったとはいえ、それをネタに強請る峰岸あやのの姿が想像できない。
だから彼女が金品を脅し取るハズはない、とみさおは願った。
しかしもしそうなら、そもそもこんな場所に呼び出して写真を見せるという行動の理由が説明できない。
「みさちゃん、お願い……」
やはり脅迫ではなかった。
高圧的な態度に出ることも、秘密の漏洩を匂わせる強気の発言も彼女はしなかった。
ただ、すまなそうに、
「この事……バラされたくなかったら柊ちゃんと別れて」
極めて意外な条件を出してきた。
「…………は?」
真摯な様にみさおは別の種類の恐怖を味わう。
結局、脅したことには変わりない。
金品の要求をしなかっただけで、あやのは情報の秘匿と引き換えにみさおにとって金品よりも大切なものを失わせようとしているのだ。
「私……ずっとみさちゃんが好きだったの……」
頬を赤くしてあやのが言う。
みさおはすぐにはその言葉の意味が理解できなかった。
あり得ない科白があり得ない状況で吐かれたのだ。
しかもウソでも冗談でもない。
「お兄さんと仲良くしてたのも、本当は……ごめんね、みさちゃんの気を引きたかったから――」
「ちょっと待てよ。あやのは兄貴と…………」
「私とお兄さんが仲良くしてたら、みさちゃんがヤキモチ焼いてくれるんじゃないかって思ってたの。
でも全然振り向いてくれなくて……それで、成り行きで付き合うみたいになっちゃったけど……」
別に好きで付き合っているのではない、自分が好きなのはずっと前からみさおだ、と彼女は続けた。
「あや……の……?」
「みさちゃん、口を開けば柊ちゃんのコトばっかり……すごく苦しかった。柊ちゃんの話する度に胸が苦しかったのよ?」
「………………」
「どうして? 中学に入るまでは私たち、いつも一緒にいたのに。柊ちゃんと知り合ってからみさちゃん、変わったわ。
なんで私じゃないの? なんであの娘なの? 私のほうがみさちゃんのコトたくさん知ってるのにっ!!」
「あやの…………」
「みさちゃんが背景だって言った時は――不名誉だけど私は嬉しかったの。だって”私たち”って言ってくれたから。
私にはみさちゃんしかいないの。みさちゃんだってそうでしょ?」
くしゃり、という音にみさおは視線を下げた。
あやのが持っていた写真を握りつぶしている。
「あんな娘のどこがいいの? 頭はいいかも知れないけど、私だって負けてない。料理だって私のほうがずっとできるの!
みさちゃんが好きなもの、毎日作ってあげるわ。ミートボールにハンバーグに――嫌いな野菜は出さないって約束するから!」
「お、落ち着けって…………!」
「宿題だって全部見せてあげる! 趣味だって合わせる! みさちゃんが言うならお気に入りのぬいぐるみだって全部捨てるから」
「………………」
みさおはだんだん怖くなってきた。
行き過ぎた恋は人を盲目にするが、みさおもかがみも互いを深く好き合ってはいてもここまで苛烈ではない。
燃えるような情愛の中にも引くべき一線というものがあって、2人はそれを暗黙のルールとして遵守していた。
だがあやのにはそれがない。
偏愛が狂愛に転じた時、峰岸あやのは自分の欲求を抑えられなくなってしまったのだ。
「あやの…………」
幼馴染みにここまで愛されていると分かっても、みさおはそれを嬉しいとは感じられなかった。
彼女にとってあやのは昵懇の間柄であっても、恋愛対象ではない。
物心ついた頃から一緒にいたために、友人という感覚が抜け切らなかったのかも知れない。
「こんな事したくないのっ! みさちゃんを困らせたくないの! だからお願い……柊ちゃんと早く別れてよ…………!」
口ではそう言いながらも、あやのは皺くちゃになった”証拠”をみさおに突きつけている。
「さあ…………」
あやのは笑んでいた。
みさおが本当にかがみを愛しているのなら、彼女が窮地に立たされないようにこの要求を受け入れるに違いない。
彼女はとても優しいから。
それが峰岸あやのの知る、”日下部みさお”だから。
愛するがゆえに愛する人と離別する。
あやのはその隙間を待っているのだ。
その時は間もなくやって来る。
それが分かっている彼女は無理にそうしようとしなくても次から次へと笑みを零す。
澄んでいて濁っている双眸に全身を掴まれたみさおは――。
とうとう一言も返すことができなくなり、彼女の狂った笑顔の虜となる。
冷たい風が吹き荒れた。
その中に――。
みさおはこなたの嘲笑う声を聞いた気がした――。
終
以上で終了です。
スレを跨ぐ長文になってしまい申し訳ありません。
お読み下さりありがとうございました。
また来年お会いしましょう。
何かしら天誅下ると思ってたけどそうきたかw
色々予想外の展開ばっかで興味深かった
てっきりゆたかが絡んでくるかと思ってた
あやのは予想外だったわ
最後の最後でどんでん返しやなあw
なるほどの……
かがみの演技ってのは予想してたけど、オチは予想できなかったわ
必然性のない結末に尾ひれをつっただけの駄文
チラ裏にでも書いてろボケ死ね
JEDI氏はこなた嫌いなの?
JEDIは読んだ人間に不快感を与えるのがうれしいだけの精神障害
関係ないスレにも欝や理屈っぽいSS投下して荒らす最低の屑
らき☆すたには全く愛着はない
単に作りやすく読者を得やすいから食いものにして自己満足しているだけ
自殺スレでそれを言うとはびっくりですわ
まあまあまあまあ
他のスレにも手を出すからな
ここは隔離スレで
ここでしか受け入れら得ないことを理解汁
改めてお読みくださってありがとうございます。
>>73 >>74 >>75 >>76 僕は恒に読み手の予想を裏切るよう書いているので、
このような感想を戴けるのは允に感慨無量です。
>>78 みさおが好きなのでどうしてもこなたが嫌いになってしまいます。
ガイドブック2の両者のパラメータには未だに納得がいきません。
みさおは本物の池沼だからな
書いてる奴も同じだろ
86 :
ethtrh:2010/11/22(月) 22:46:22 ID:0ijjkg7R
こなたんかわえええええ
こなたは自殺可愛い
うむ
わかる
泉こなたの優れた運動神経に目を付けた組織が「これはただのアニオタ少女で終わらすのは惜しい」と考え拉致、
一切の有無を言わせる事無くその五体を刻み、骨は超合金、筋肉は強化人工筋肉、臓器は各種メカニックに
改造されてしまうのだった。
後は脳改造を加える事でこなたは組織の為に戦う怪人の一人に〜と思われたが、自分が自分で無くなる事を恐れた
こなたは何とか組織を脱出、以後は自分の身体を弄り人で無くした組織への復讐の為に仮面を被って組織と戦う事に…
組織の送り込む怪人を撃退して行くこなたであったが、何も知らない一般の人達から見ればこなた自身もまた
組織の怪人と同じ怪物に過ぎなかった。
さらにこなた自身も改造された事によって身に付いた超人的な力をコントロールしきれず、
力の加減を間違えてしまった為にゆたかの身体を捻り潰して一生寝たきりになる大怪我を負わせてしまう
そのせいでこなたを憎むようになったみなみが自分から組織に志願し、原形を留めぬまでに異形の改造人間となって
こなたに挑みこなたを動揺させるが、最終的にはこなたの手で息の根を止められる
みなみの件で組織はこなたの周辺の人間を改造・洗脳して送り込む作戦を考え付き、つかさ・かがみ・みゆき等
こなたの身近の人間が次々に組織によって拉致され異形の改造人間とされてこなたに送り込まれる。
親友が敵となった事にこなたも動揺・葛藤するが、こなた自身に彼女達を元に戻す力は無く
結局自分の手で息の根を止めるしか無かった。
最終的に組織を壊滅させる事に成功するこなたであったが、後に残ったのは怪物最後の一人として
一般の人々から恐れられるこなたと言う現実だった。
自分の戦いは何だったのだろうとこなたは葛藤しながら、数多の怪人を倒してきた己の超人的な腕力で
自身の身体を砕き、息を引き取る
って言う仮面ライダー的電波スマソ
イイジャン
前スレ麾く煉獄をお勧めしていたのがいるけど。たしか、つかさが
そうじろうにレイプされてブチ切れた伸恵が銀行強盗したり、
ヤクザ皆殺しにしたり、ファミレスで強盗殺人したりするやつだっけ?
みたことないわそのSS
ああ
神奈川版じゃね?
96 :
マロン名無しさん:2010/12/15(水) 15:46:16 ID:H46+c1WU
てか面白いな
神奈川版とオリジナルとは雲泥の差
でも、神奈川版とオリジナルの麾く煉獄はストーリー自体同じじゃないの?
いったいどこが違うのかね?
同じに見えるのか?
神奈川の駄作がこのスレをダメにした
厳密に言うと神奈川もどきな
本家のはもっと洗練されてる
最近やたら出てきてる神奈川版は頻度は大したものだが中身がまるでない
何となく文体真似てるだけで本家に失礼だ
102 :
マロン名無しさん:2010/12/17(金) 08:29:50 ID:wKAwrIUu
たしかに、私のお父さんの時点でおかしかった、実際ギャグ
呼ばわりされていたな。
吉野家にコカインが置かれてあったり、かがみが鉈を振り回したり
家に危険物が置かれてあったり、特に酷かったのはつかさが覚醒剤やっている
事なんだよな、そんな設定どこから持ってきたんだよ。小早川家の目的は
そうじろうに復讐っていうのは後付けくさい、というかあれは遺産目当てと
書かれていた。後はりゅうじとか竜崎とか大石とか空気キャラが多かったことだな。
巡らされた籌最初から読みたい
そうじろうがかがみと再婚して、当初はこなたが「かがみんが義母さんになったー」
って喜んでたけど、子供が一人二人と生まれるにつれてこなたが邪魔者扱いされて行き
最終的にはこなた自殺…と言う展開を…
すごく久々にきた、1つ質問したい。前ここでやっていた「つかさのアルバイト」って完結したの?
つかさがかがみを家から追い出し、正体を知ったまつりを電話越しで言いくるめるまでは知っているんだけど・・・
106 :
マロン名無しさん:2010/12/19(日) 20:26:59 ID:tJl84FsT
うーんと
今晩は。SS落とします。今日含めて三日ほどで完了する予定。
恐らく24日か25日に向けて投下準備をなさってるであろうグレゴリー氏の
前座となれば幸い。
『Living on the hell』
夕陽が照らす屋上のフェンスの向こう側、そこに彼女は居た。
長い髪を風が吹くままに靡かせ、遠くを見つめて座り込んでいる。
風で飛んでいってしまいそうな程に儚く小さい背中に、
つかさは話しかける。
「こなちゃん」
こなたは振り向かなかったが、返事だけは返してきた。
「何?」
「帰ろ?」
「ヤダよ」
素っ気無い態度だが、つかさはもう一度問いかけた。
「帰ろ?」
「もう帰る場所なんて無いよ」
吐き捨てるような言葉だが、つかさはめげない。
「あるよ。私が待ってるから」
「待ってて欲しいのは、つかさじゃない」
「分かってる。此処に来て欲しいのも、私じゃなかったんだよね?」
「そうだよ。どうしてつかさが居るの?私は」
「お姉ちゃんの携帯にメールしたんでしょ?
つまりそういう事なんだ」
こなたの溜息が聞こえた。
「勝手にかがみの携帯見たんだ」
「携帯だけじゃなく、部屋もね。
流石だよね、お姉ちゃん。携帯電話にはそのテの証拠は一切残して無かったよ。
こなちゃんと日下部さんとお姉ちゃんの間でだけ通用しそうな
隠語っぽいのは散見したけど。
お姉ちゃんから、携帯で直接的な表現や
有名なスラングは使うなって言われてたんでしょ?」
「つかさには関係無いよ。私はかがみを待ってるの。
帰ってくれる?」
要求には従わず、つかさはこなたに背を向けて腰掛ける。
フェンス越しに背中合わせの二人の間を、一陣の風が舞った。
こなたの髪の毛がまた靡いただろうか、それを見れない姿勢を歯痒く思った。
「帰るとしたら、こなちゃんと一緒だよ」
「帰る場所なんて無いんだよ。どうせ私はもう、終わってるから」
「それでお姉ちゃんを道連れにしようとして呼んだの?」
「かがみには、最後の挨拶がしたかっただけ。対面でね。
今じゃもう、家に行っても会ってくれないし。人目に付く場所で私とは会いたくないだろうから」
「ねぇ、こなちゃん。死ぬ心算なんだよね?
まだ、やり直せるんじゃないかな?」
──日下部さんと違って
その言葉は喉下まで出かかったが、結局言わなかった。
口に出してしまえば、絶望が確定していまいそうだったから。
「無理だよ。身体も心もボロボロ。偶に幻覚や幻聴まで現れるんだから。
それに、私が捕まれば……出所が問題になる。
迷惑、かけたくないよ。
今の弱った精神状態で、警察の尋問に沈黙貫き通せる自信が無いし」
「出所、お姉ちゃんだよね?」
「それ知ってるから、携帯盗み見たり部屋探索したりしたんでしょ?」
「そうだけど……あんなの庇う必要無いよ」
つかさは吐き捨てた。
「ねぇ、知ってる?
お姉ちゃんが日下部さんやこなちゃんにスピード売りつけた理由」
覚醒剤、という語を使う気になれなかった。
ハードドラッグをこなた達が使用していた、それを改めて突きつけられるから。
スラングがドラッグへの抵抗を下げる効果を、つかさは実感した。
「私やみさきちを元気にする為、それが理由だったかな」
「それはどうせお姉ちゃんが言った事でしょ?見え透いた大義名分だよ」
「別に本心は何でもいいよ。私もみさきちも、かがみんが好きだった。
だから遊ぶ金欲しさとかでも許せるよ。
好きな人への貢物の為……とかでもきっと許せる」
「じゃあ、これはどう?スピードよりは安全だけど高価なドラッグを買う為。
お姉ちゃんはリタラーなんだよ」
こなたに動じる気配は無かった。
返答も落ち着いたものだ。
「かがみがリタリン使ってたのは初耳だね。どうして知ってるの?」
「部屋探索した時に見つけたよ。ラベルは剥がされてたけど、
薬剤に刻まれているCG202の文字は削ってなかったから」
「そっか」
「感想はそれだけ?お姉ちゃんは、自分は比較的安全なドラッグを使って、
友達のこなちゃんや日下部さんには最も危険なドラッグの一つ、
スピ……メタンフェタミンを売りつけてたんだよ?」
今度はスラングを抑えて正式名称を口にした。
かがみの悪辣さを際立たせる為に。
「リタリンだって安全とは言い難いと思うけどね。
そりゃ、覚醒剤よりはマシだけど」
「お姉ちゃんがR買うお金を手に入れる為に、
こなちゃんや日下部さんは何をさせられたの?
お金は絞りつくされて、それで足りなくなると身体売らされて金作らされて……。
挙句、日下部さんは……。
それでも許せるの?それでも庇いたいって思うの?」
つかさは話しているうちに、自身の感情が昂ぶってゆくのを感じた。
言葉にする事でかがみの怒りが再確認されているのだろう。
対するこなたの言葉は落ち着いたものだった。
かがみへの怒りなど微塵も感じられない。
「いいよ、それでも。私はそれでもかがみが好きだから。
みさきちも同じ思いだったんじゃないのかな。
今はもう、意思がどれほどあるのか不明瞭だけど。
でももし意思が戻ってくるような事があれば、
入手経路なんて吐ける状態じゃなくなってたって事を有難く思うんじゃないかな。
かがみを売らずに済んだって事だから。
それくらい、私もみさきちもかがみに惚れてたんだよ」
みさおもまた、かがみから覚醒剤を買っていた人間の一人だった。
彼女は遡る事二日前から入院していた。
覚醒剤中毒によって人格は破壊され、廃人同然だ。
警察も彼女から入手経路を聞き取る事を諦めざるを得ないだろうが、
みさおの周辺に対する操作は行うだろう。
それはこなたにも捜査の手が伸びる事を意味する。
こなたも既に、挙動を見れば薬物乱用が一目瞭然と言える程までに深く蝕まれている。
それで観念したのだろう。
「でもね、こなちゃん。どうせお姉ちゃんは捕まるよ。
お姉ちゃんだって日下部さんとは結構会ってた。お姉ちゃんにだって捜査の手は伸びる。
私が部屋を見た時と違って、今はもう証拠品は捨ててるだろうけど」
「なら、私が死ねば大丈夫じゃん。」
「んーん。ドラッグストアや薬局で何を買っていたのか、
そのレベルで捜査されたらすぐに陥落すると思うよ」
「薬局?」
「そ、こなちゃんはお姉ちゃんのスピード入手経路は聞いてない?」
「クラブの知り合いから、純物の冷たいの回されてるって訊いてるけど」
「違う。私がお姉ちゃんの部屋を見た時に何を見つけたか。
麻黄やメチルエフェドリン塩酸塩を多く含有する漢方薬や鎮咳薬……
麻黄湯やアストフィリンだね。
他にも、エタノールや希塩酸、濾紙。
ご丁寧にヨウ素やマッチまであったよ。赤リンの代替にマッチだなんて酷いよね。
自家製造してたんだよ。混じりっ気無しなんて大嘘。
色々混ざってる上に素人調合だよ。
混ざり物の素人調合っていう点も、
日下部さんが壊れたりこなちゃんがボロボロになった一因かもしれない。
混ざり物がクリアな物よりバッドな方向に作用する、よく聴く話だよ」
背中合わせなので表情までは伺えないが、こなたから動じた様子は伝わらない。
少なくとも声に動じた様子は無い。
「そっか。私やみさきちはかがみんの手作りを頂いてたってワケか。
これが愛情たっぷりのお弁当だったのなら、もっと嬉しかっただろうね」
「値段、釣り上げられてたんでしょ?」
「まーね。警察の手入れが厳しくなって先方の供給体制が悪化した、
ってのが理由だったけど」
「それもR手に入れる為の方便だったって、もう分かったでしょ?
ドラッグストアや薬局で揃うようなものに、原価変動なんてあるワケ無いんだから。
Rは高いからね。たかが1錠が1000円近辺から酷ければ2000円を越える。
それを手に入れる為には、収入源をしっかりと持つしかない。
こなちゃんや日下部さんをスピードで漬けて止められない状態にして、売価を釣り上げる。
お金が無くなっても相手が女なんだから、身体を売らせて無限に絞る事ができる。
実際には無限とはいかなかったけど。日下部さんの精神が壊れちゃったから。
それでも許すの?」
「許すよ。何処までも許すよ、かがみなら。
きっとみさきちだって、同じ思いだったはずだよ。
同じ思いで、男どもの玩具になってた」
「その玩具のされ方も酷かったらしいね。
あれじゃ性欲満たす玩具にされたというより、
何処まで人体が耐久力を持つかの人体実験の玩具だよ。
ねぇ、尿道っておしっこする穴だよね?そこに何を入れられたの?
あんなものでピストン運動なんて、人間のする事じゃない。
血塗れだったらしいね。
そして肛門はうんちする穴だよね?そこはどうされた?
アナルセックスには決して使われないえげつない道具でグチャグチャにされて、
大変だったらしいね。
乳首に穴は幾つ空いたの?ピアス幾つ通された?何回電流流された?」
つかさは話している内に、視界が滲むのを感じた。
哀しみと怒りが綯い交ぜになって、語調を激しくしてゆく。
「お臍の穴、何考えてあんな事したんだろうね。入るとでも思ったのかな?
それとね、カテーテルから膀胱へとあんなもの注入するなんて酷いと思うな。
水も注入されて膀胱パンパンになって、悶絶して転げまわったんでしょ?
でも詰まっちゃって中々排出できない、地獄だったろうね。
まだまだあるよ。鞭とか蝋とか鎖とか縄とか針とかマスクとかはまだ理解できる。
でも有刺鉄線とか電球とか剣山とか瞬間接着剤とかは理解できない。
どう考えても使っていい道具じゃない」
つかさの双眸から、抑え切れなかった涙が溢れていた。
それでもどうにか、嗚咽は堪えた。
「詳しいね、つかさ」
「そのマッドなご趣味を持ってる男の人たち、お姉ちゃんの斡旋でしょ?
PCのデータに色々やり取りがあったよ。
背筋が凍ったよ。そして殺意抑えるのに、苦労したよ」
「かがみの為になるならそれで良かったし、薬買うお金も欲しかったしね。
それに、気持ちよくなかったワケじゃないよ?
きっとあの逸脱したプレイの日々の何処かで、私達の性感帯はズレちゃったんだ。
私達が堪えきれない痛みを感じたとしたらきっと一つ。
それは、かがみが好きなのに、他の男たちのいいようにされてたって事。
それもかがみの斡旋によってね」
こなたやみさおのかがみに対する愛情は、思っていた以上に深いらしかった。
なのに自分は残酷な宣言をしようとしている、それがつかさには躊躇われた。
だが結局、言った。
それがかがみへの思いを断たせて死を思いとどまらせる一打になると信じて。
「でもお姉ちゃん──」
(ゴメンね、こなちゃん。残酷だけどこれは本当の事なんだ)
「──私の事が好きなんだよ?」
それまで感情の動きを見せなかったこなたが、
初めて昂ぶりを見せた。
「知ってるよっ」
耳元でフェンスの揺れる音が響いた。
こなたが力任せに拳を叩きつけたのだろう。
「だからお姉ちゃんは、こなちゃんの事も日下部さんの事も好きじゃない。
なのに庇うの?」
「それでも好きだし……かがみがつかさの事が好きなのなんて、
分かってた事だよ。見てれば一目瞭然の明々白々だったよ。
それは私もみさきちも理解してた。だからこそ、みさきちとは仲良くなれた。
同じ叶わぬ想いに身を焦がす同志だったから」
「叶わぬ想いって言うのなら、お姉ちゃんだってそうだけどね。
お姉ちゃんが好きな相手は……こなちゃんの事が好きだから」
こなたからの返答は無い。
つかさは改めて、素直な想いを口にした。
「私は、こなちゃんが好き。だからこなちゃんには死なないで欲しい。
一緒に歩んで欲しい。
こなちゃんにあんな事させて、こんな風にしちゃったお姉ちゃんが憎い」
冷たい風が頬を嬲った。
そして
「私はつかさが嫌い」
冷たい言葉が心を嬲った。
「そっか。振られちゃったな、えへへ」
強がって見せるが、虚勢である事を示すように涙が地面を打った。
「そうだよ、嫌いだよ。だって私にとっては、敵わぬ相手だから。
かがみが好きな、相手だから」
「それ聴くとなお一層、お姉ちゃんが嫌いになるね。
それはそうとね、こなちゃん。
実は、あるよ?お姉ちゃんを逮捕させない方法」
こなたからの反応は無かったが、つかさは構わず続けた。
「言ったよね?お姉ちゃんは自家製造でスピードを調達したって。
そしてそれに用いた材料は、ドラストや薬局で事足りるものばかりだよ。
つまりね、こなちゃんが自分で買って調合して、日下部さんに売りつけた事にすればいい。
そうすればお姉ちゃんは守れる。
いや……何なら私が調合してこなちゃんや日下部さんに回した、って事でもいいよ。
売りは初犯でも執行猶予付かなさそうだから、私が被ってあげるよ。
そのくらいには、こなちゃんが好きだから……守りたいと思うよ。
そしてこなちゃんは私が嫌い、
双方の利害が一致するって点だと、優れた解決策だと思うけど」
こなたの溜息が聞こえた。
「無理だよ。私はそれらの薬を買ってないんだ。
取調べの時にボロが出る可能性は高い。
それはつかさにも言える事でしょ?
増してや私は具体的な調合手順さえ知らない。
いや、それらの解決を付けたとして。
私のお父さんの妹の娘が……つまり私の従姉妹が警察官なんだ。
そっちにもできれば迷惑かけたくないから、売りやってましたって罪は被り辛い。
そしてつかさ。つかさが捕まればきっとかがみが庇うよ。
つまり、真実を口にする。かがみが作って私やみさきちに売ったと。
だからつかさも罪を被れないよ」
それはその通りだった。
つかさとしても、上手くいくとは思っていない。
こなたを死から遠ざけられればそれでいい、そう思っていた。
それすら巧くいかなかったが。
「でも……。こなちゃんが死んでも、どうせお姉ちゃんは捕まるよ?
こなちゃんを殺したお姉ちゃんを私は許せないから。
私はきっと、警察に密告する」
「つかさ、私を好きなら、私の好きなようにさせて。
かがみを警察に売らないで」
「私が応と答えて実際に密告しなかったところで……多分捕まるよ。
日下部さんやこなちゃんと頻繁に会っていた人間の一人だもの。
お姉ちゃんは薬局を幾つか掛け持ちはしたんだろうけど、
それでもやっぱり目立ってはいただろうね。
足はきっとすぐに付く。死んでやる意味は多分無いよ?」
「幾つも薬局掛け持ちしたなら、ダイジョブだよ。
増してや証拠も捨ててあるなら」
「その捨てる行為すらが、不審な行動だよ。
誰かの目に付いていたらやっぱりアウト」
「私は信じてるよ、かがみの幸運を。
何よりね、どうせかがみが捕まるとしても、私はかがみが捕まるところなんて見たくないから。
それだって死ぬ理由の一つにはあるんだ。
それに……もうどうせ死ぬしかないから」
最後の言葉からは強い諦念が感じられた。
「どうせ死ぬしか無いって……どういう事?」
「覚醒剤無しじゃ生きていけない。薬が抜けたら、酷い憂鬱に襲われるんだ。
幻覚や幻聴さえ聴こえる。虫が身体を駆け巡る感覚すら覚えるよ。
蟻走感はコークバグに限った話じゃないね。
そしてね、これ以上覚醒剤続けても、やっぱり私は死ぬ。
耐性の形成が思ってたより早くて、今や大量にキメないと効かないから。
今思えば、急激な耐性形成も混ざり物のせいかもね。
みさきちは心が壊れてしまった、私もそうなるか、或いは生命が終わるか」
こなたの口調は淡々としたものだった。
それを聴いていたつかさの胸中に、
かがみに対する怒りとこなたに対する悲しみの他にもう一つ、強い感情が宿った。
それは自分に対する覚悟、だった。
「そっか。こなちゃん、どうしても死ぬの?」
「うん」
「ならさ、私も一緒に死ぬよ」
そしてその覚悟を口に出す。
こなたは一拍間を置いてから、返事を寄越してきた。
「何で?私が好きだから?」
「うん。一緒なら死んでもいい、こなちゃんが居ない世界で生きるなら死んだ方がマシ。
そのくらいには、こなちゃんが好きだから……死にたいと思うよ」
「私はゴメンだね」
こなたの返答はにべも無かった。
「でもさ、私も一緒に死ねば、お姉ちゃんを密告する人は居なくなる。
それはこなちゃんにとってもメリットのある事じゃないの?」
こなたは溜息を吐いてから、言葉を返してきた。
「つかさ、さっき私はつかさが嫌いって言ったけど……
それはかがみを巡る恋敵のハイエンドだからだよ。
決して存在そのものを憎んでいるワケじゃない。
かがみから好かれている点さえ除けば、良い友達になれると思うよ。
それに、私の事を……こんなラリッパな私を好いてくれる人には、
生きていて欲しいんだよ。死んで欲しくない」
「残酷な事言うよね、こなちゃん。それじゃ私はどうなるの?
私は一人地獄に住まなきゃいけない。ゴメンだよ、そんなのは」
「一人じゃないよ。かがみに峰岸さんやみゆきさん、
幾らでも好いてくれる人は居るでしょ」
「それでも……こなちゃんと一緒に居たい。
地獄まででもお供したいよ」
「駄目だって。それにさ、ほら、つかさが死ぬとかがみが悲しむから」
今度はつかさが溜息を吐く番だった。
「結局最後までお姉ちゃんかぁ。ねぇ、一つ訊きたいんだけど。
もし一緒に死のうと言ったのが私じゃなくてお姉ちゃんだったのなら、
こなちゃんはどうしてた?」
こなたは考え込むように数秒黙り込んでから、口を開いた。
「かがみには生きて幸せになって欲しい、素直にそう思うよ。
でも、きっと一緒に死んでくれるのは嬉しい事だって、
そうも思っちゃうんじゃないかな」
「そこが私とお姉ちゃんの違いかー。結局私、お姉ちゃんには勝てないんだね」
「ごめん、つかさ」
「謝らなくていいよ、寧ろ謝られると恐縮。
だって私、こなちゃんの望む通りに動くとは約束できないから。
一緒に死ぬのが無理でも、後を追うのは私の勝手。
何より、こなちゃんの自殺を思い止まらせる、それを諦めたワケじゃないし」
「それは拒ませてもらうよ、何度でもね」
その時、屋上の扉が開いた。
衣擦れの音がフェンス越しに聴こえ、
それがこなたが振り向いた音だとつかさにはすぐに分かった。
そしてまた、屋上の扉から現れる顔にも予想は付いていた。
その人物はつかさを見て、訝しげな声を発した。
「つかさ?どうしてここに……」
現れた人物は話題の渦中にあった柊かがみ、その人だった。
いつものことながら貴方の博学能文ぶりには頭が下がります。
各々の心理がどのように描写され、どのように展開していくのかを楽しみにしています。
他スレさえ荒らさなきゃね
うつ☆すた思い出すな
思いっきり立ち位置逆だけど
あれはいい話だった。漫画も秀逸だったし
*
訝しげな声は、つかさの後ろからも聴こえた。
「かがみ……どうして此処に?」
「アンタが呼んだんでしょうが。で、どうしてつかさも居るワケ?
てっきり私は、こなたと二人きりで話があるもんだと思ってたけど」
つかさに聴かれては困る話、そう勘付いているのだろう。
だが覚醒剤をこなたやみさおに売っていた事を、
既につかさに知られている点にまでは気付いていないらしい。
「どうしてって、お姉ちゃんの携帯に届いてたメール見たからだよ。
今日のこの時間に、こなちゃんがここで待つっていう内容のね。
先回りして指定時間より早めに来てみたら、
案の定既にこなちゃんが居たってワケ。だから色々とお話したよ」
「アンタね、幾ら姉妹だからって勝手に人のケータイ見たら駄目でしょ」
かがみの発言は呆れ混じりだったが、
つかさの返答には怒りが篭っていた。
「良い事言うね。でもそれは自分に言い聞かせてよ。
知らないとでも思った?私の携帯電話や部屋を勝手に見たりしてた事。
それは仕返ししたから良いとして、
勝手に下着盗んで新品にすり替えるなんて異常だよね」
「つかさ……アンタ私の部屋まで見たの?」
「下着までは盗んで無いけど、お姉ちゃんのになんて興味も無いし。
部屋は見させてもらったよ、エフェドリン配合の鎮咳薬からヨウ素まで。
更に言えば、麻黄湯やそれからエフェドリン抽出するのに必要な物も。
手っ取り早いナガヰ錠は手に入らなかったのかな?
赤リンの為のマッチも見たよ。
それと……CG202って刻まれた錠剤、あれRだよね?」
一瞬にしてかがみの顔が青褪めた。
「そっか。つかさの話、本当だったんだ。
てかつかさ、あのメール見た時消さなかったんだね。
ここでかがみと鉢合わせる可能性が高かったのに」
「お姉ちゃんと会いたかったんでしょ?なら消さないよ」
かがみが現れた時、こなたが訝っていた理由が分かった。
つかさがメールを消したと思い込んでいたのだ。
確かに邪魔要らずでこなたと話す事に魅力はあったが、結局つかさは消さなかった。
つかさは今度はかがみに向けて言葉を放つ。
「ねぇ、お姉ちゃん。こなちゃんがこれから何をしようとしているか、分かるよね。
あの悲壮に満ちたメールの文面見れば、分かるよね。
私だって咄嗟に分かったよ。ああ、自殺するんだな、って。
そしてお姉ちゃんにはその原因も分かるよね?
お姉ちゃんがこなちゃんに売りつけたスピードだよ。
日下部さんが壊れたのも、それが原因でしょ?」
かがみは絞り出すように言葉を放った。
「し、知らないわよ」
言葉は震え、それに呼応するように足も震えている。
「安心して、かがみん。私は死ぬから。
それで出所は有耶無耶になる。
そこまで都合よく事が運ばないかもしれないけれど、
少なくとも私からかがみんが出所だっていう情報は漏れないから」
こなたの言葉に対して、かがみはヒステリックに反応した。
「何言ってるのよっ。私は知らない、そもそもアンタに何も売ってない」
「そうだね、私はかがみから何も買ってない。私が勝手にどっかから仕入れてやっただけ」
「分かってるじゃない。そういう物分りのいい所、私好きよ。
つかさは誤解してるのよ」
つかさは溜息を吐いた。
「パソコンも見させてもらったよ。フリーメールもね。
常時ログインはセキュリティ上問題あったね。
自室のマイPCなら誰も勝手に見ないだろうと油断したのかな?
家族の中に敵が居るかもしれないのに。
そのメールの中には、えげつないものもあったよ。
こなちゃんと日下部さんをマニアックなプレイが好きな男の人たちに斡旋するメール。
人体の限界まで何でもやらせます、好きなように壊してください、
徹底的に遊べます、ズタズタのグチャグチャのメチャメチャにできます、エトセトラ。
凄いよね、友達を斡旋する内容とは思えない紹介文。
彼らのオーダーも酷かったよね。例えば電球を、ねぇ?」
かがみは顔面蒼白だった。
それが何よりの証左だというのに、尚も抗う。
「そ、それらは……全部隠語よ。
まさか本当に電球突っ込んで割らせるなんてやるわけないでしょ……。
電球なんてローターの業界用語よ。ローター使用可能って意味でしか無いわ」
「私だってまるっきり無垢ってワケでも無いよ。そんな業界用語無いから」
「わ、私達内部の符丁よっ。それに斡旋だって、こなたや日下部から頼まれたからで……。
そうよね、こなた。
アンタが淫乱だから私に男あてがってくれ、そう頼んだのよねっ?
正直なアンタが私は好きよ。
正直に話してつかさの誤解を解いてくれるなら、
今生の別れにキスしてあげてもいいわ」
「……うん、そうだよ。私が……その、淫乱だから、
かがみに無理言って男の人紹介してもらったんだよ。
マニアックなプレイだって、私が変態だからであって……」
こなたの声調には無理矢理搾り出したような感があった。
つかさは溜息を吐く。
「まだお姉ちゃんを庇うんだね。そこまでして言いなりになるんだね。
ねぇ、こなちゃん。
お姉ちゃんはね、自分が愛されている事を知っていて、
口裏を合わせるように強要してるんだよ?
じゃなきゃ、キスしてあげてもいい、なんて言葉は出てこない。
こなちゃんの愛情を利用してるんだよ?
それって一等酷い事なんだ。それでも、まだ好きなの?」
「うん、好きだよ。嫌いになれたら、楽だろうけどね」
蚊の鳴く様な小さな声だったので、
場所が近いつかさにさえ聞き取るのは辛うじてだった。
「つかさ、アンタは誤解をしてるわ。
だから、ね?私と一緒に帰ろ?
後はこなたが一人で好きなようにケリを付けるだろうから」
こなたの自殺を黙認しろ、かがみはそう言っているのだ。
「こなちゃんも一緒じゃないと帰らないよ。
大体お姉ちゃんはこなちゃんとお話する為に此処に来たんでしょ?
今帰ったら目的なんて果たせなくない?」
「こなたに呼ばれたから来ただけ。
こなた。まだ私と何か話す事、ある?」
「無いよ。私はただ、かがみに一目会いたかった、それだけだから。
来てくれてありがと」
「そういう事。こなたの目的が済んだ段階で、私はもう用済みなワケよ。
だから帰るわよ、つかさ」
「私は帰らない。
それにお姉ちゃん、さっきこなちゃんにキスするって言ったよね?
その約束を果たさずに帰るの?」
つかさは憎悪の篭った瞳でかがみを睨みつけた。
本心を言えばこなたが自分以外の人間と口付けを交わすところなど見たくはない。
だがこなたの心を思えば、かがみの不義理を咎めずにはいられなかった。
「そういえば……してたね。
かがみんがキスしてくれるなら、最後に一回だけでもキスしてくれるなら、
私は悔いなく後処理を完結できるよ」
こなたも同調した。かがみとの接吻は彼女にとっても魅力的なのだろう。
「分かったわよ。約束は事実だしね」
消極的ともとれる返答をした後、かがみはつかさ達の居る方向へと歩みを進めてきた。
こなたの眼前、フェンスの前で立ち止まると、不意につかさを呼んだ。
「そうだ、つかさ」
「何?ふぐっ」
呼ばれるままかがみに顔を向けた途端、唇を唇で塞がれた。
咄嗟にかがみの肩を突いて、密着した唇を剥がす。
「痛っ。ファーストを捧げてやったのに」
「要らないよっ」
ハンカチで口を拭いながら吐き捨てる。
それは敵意を隠す事の無い、否、見せ付けるような丹念な拭い方だった。
「傷つくわね。ま、ファーストは捧げた事だし、こなたにもあげる」
傷ついたのはこなたの方だ、そうつかさは思った。
目の前で好きな相手が口付けを交わす、
それはこなたの破綻寸前の精神にどれ程の深手となったか、
それを思うと心が痛んだ。
「ほら」
フェンスから上半身を乗り出し、かがみはこなたの頬に口付けた。
「何処にしてるのっ?」
つかさは抗議を発するが、かがみは飄々としたものだった。
「唇にキスするとは言ってないから」
つかさはそんなかがみの態度を憎々しく思いつつも、何処か安堵した気持ちもあった。
眼前でこなたの唇が奪われる様を目撃せずに済んだから。
「いいよ、これでも充分幸せだから」
こなたは何処か恍惚とした表情で、そう呟いた。
薬漬けにされて金銭を毟られて、それでもまだ足りないと身体まで売らされて──
にも関わらず、頬に軽く唇を当てられただけで満足だと言ったのだ。
かがみのこなたに対する扱いの酷さに、つかさは改めて憤懣を覚えた。
「そ。じゃ、用も済んだ事だし、私帰るわね」
かがみは何事も無かったかのように背を翻した。
その袖をつかさは掴む。
「こなちゃんは……自分からスピードの出所が漏れるのを恐れて
自殺しようとしてるんだ……。
今の精神状態じゃ、尋問に対して沈黙を貫き通せるだけの忍耐力が無いからって……。
つまり、お姉ちゃんを守る為なんだよ?
それなのにお姉ちゃんは……そんないい加減な態度で……。
日下部さん壊したっていうのに、その罪悪感さえ見られない。
ねぇ、何とも思わないの?
お姉ちゃんのせいで一人の人間が壊れて、
そしてお姉ちゃんの為に一人の人間が死のうとしてるんだよ?」
「何の話だかさっぱりね。
こなたが何をしていたのかも、こなたが何をしようとしてるのかも、
私には分からないわ。
だから前も後も全てこなたの責任であって、私には与り知らぬ事よ」
かがみは未だ飄々としていた。
あくまでも最後まで知らぬ存ぜぬで通す心算らしい。
その態度に対して、つかさは憤懣の限りを声に込めて決意を叩きつける。
「ああ、そう。こなちゃんが死んだら、私も死んでやるんだから」
かがみは色をなした。
「ふ、ふざけるんじゃないわよっ。アンタね、よーく考えなさい。
一体アンタが死んで、何か意味が残るの?
そもそもどうしてアンタ、こなたと一緒に死ぬなんて発想が出てくるのよ?」
「私はこなちゃんの事が好きだから」
その一言で、かがみの鋭い視線がこなたに向けられた。
「何ですって?」
「こなちゃんを睨まないで。私が一方的に好きなだけだから」
「何で……あんなのの何処がいいのよっ?
冷たいのがキマってないと何もできやしないのよ?
薬が無けりゃ廃人同然のダウナーよ?目を覚ましなさい、つかさ」
「そんな状態にしたのはお姉ちゃんのクセに。
っていうか、自分だってリタラーのクセに」
「冷たいのとリタは違うわよっ。リタなんて強化版カフェインみたいなものよ。
でも冷たいのは違う。あれはコークやヘロと並んで最も危険な」
「良く分かってるね、お姉ちゃん。強化版カフェインの下りは言い訳っぽいけど。
スピードの危険性はそのとおり。そんなのにこなちゃんを漬けたんだ。
私の大好きなこなちゃんを。だから許せない。
そして、漬けられたからって私はこなちゃんを嫌いにならない。
もうその先の道が無くて死ぬしか無いと言うのなら、私も付いて行く。
それぐらい、こなちゃんの事が好きだから」
かがみは改めて憤懣の篭った瞳でこなたを見据えた。
「アンタ……私のつかさを誑かしたのね……ふざけるんじゃ、ないわよっ」
今にも掴みかからんばかりの形相が浮かんでいるが、
こなたの対応は落ち着いたものだった。
「そんな心算は無いよ。私が好きなのは……私とみさきちが好きなのは、かがみんだけ。
だから、そんな目で見ないで欲しいな。ちゃんと死ぬからさ。秘密は持っていく。
それでかがみんを警察に売らずに済むし、かがみんが捕まるところを見ずに済む」
「アンタが口閉ざしたまま死ねば、警察になんて……」
自分に言い聞かせるように口にしたかがみに対し、つかさは冷たく言い放つ。
「警察舐め過ぎだと思うよ」
「警察信じ過ぎなだけよ、アンタ達が」
かがみは言うや否や、つかさを抱きすくめた。
「ほら、とっとと飛びなさい。私がつかさを抑えているうちに。
そうすれば、アンタの事も好きになってやる。
言う通りにしないなら、アンタの事を」
「止めてよ、その先は言わないで」
こなたが慌てたように遮った。
例え仮定の話であれ、かがみから嫌いと言う言葉を聞きたく無いのだろう。
そしてまた、
架空の言であれ、かがみから好きという言葉を聴いたまま逝きたいのだろう。
「すぐに、死ぬからさ」
こなたは虚空へ向けて跳躍した。
「こなちゃんっ」
乱暴に足掻いてかがみの抱擁を脱すると、
つかさもフェンスを飛び越えて虚空に踊った。
「つかさぁっ」
かがみの叫喚が後方から響く。
だが構ってなどいられない。
不安定な空中だったが、どうにか右手でこなたの手首を掴む。
そして残った左手でフェンスの金網を掴もうとして──
左手は何も掴まずに空振りした。
(ああ、失敗。死んじゃうな、この高さだと。
でもいっか。こなちゃんとなら、死んでも)
すぐに伝わるであろう衝撃に備えて目を瞑る。
せめて手を繋いだまま逝こうと、こなたの手首を硬く握り締めたまま。
だが、落下の衝撃は伝わらなかった。
代わりに左手首に圧力を感じる。
訝しげに瞳を開いて視線を上に向けると、
つかさの左手首を右手で掴むかがみの姿があった。
空へと身体はほぼ乗り出されており、
フェンスの金網を掴む左手と縁に掛けられた左足だけが物と接触していた。
つかさがそうしたように、かがみもフェンスを飛び越えて来たらしい。
「つかさっ。右手を離しなさい」
右手には、こなたの手首が依然握られている。
「ヤダ。お姉ちゃんが右手離せば?」
それはつかさの命を繋ぐ右手だが、
こなただけ死なせて自分が助かる心算など毛頭無かった。
「ふっざけるんじゃないわよっ。
早く右手離しなさい。私……そろそろ限界よ……」
実際、人間二人の体重を支え続けるのは至難だろう。
それを感じ取ってか、こなたもつかさに語りかける。
「つかさ、離して。かがみの腕力もそう長くは持たない。
私はもうどうせ助からないからさ。つかさまで死ぬ必要は無いよ」
「ヤダ、離さない。こなちゃんを見殺しなんて、できないよ……」
「つかさ、早くして。手が痺れて……限界が近い……」
搾り出すようなかがみの声を無視して、つかさはこなたに語りかける。
「こなちゃん、さっき言ったよね?
お姉ちゃんが一緒に死んでくれるのは嬉しい事だって。
私も混ざっちゃうけど、それ叶えられるよ?」
こなたは一瞬だけ目を見開いたが、冷めた言葉で応じてきた。
「限界が来たら、流石に右手の方……つかさを握る手を離すでしょ。
かがみとは一緒に死ねない。かがみだけが助かるよ」
「大丈夫。お姉ちゃんは私を見殺しにはできない。
だからこそ、危険を顧みずにフェンスを飛び越えてまで私を掴んだ。
お姉ちゃんは私を見殺すくらいなら、きっと死ぬよ」
「つかさっ、アンタっ」
かがみの非難に満ちた声が響く。
つかさは視線を上に転じて、嘲笑と共に言葉を返した。
「あはっ、聴いた?そうだよねぇ、お姉ちゃん。
右手を離せば、お姉ちゃんだけは助かる。
私もこなちゃんも死ぬんだから、少なくとも私達の口からはスピード売った事実は漏れない。
それでもお姉ちゃんは右手を離せないよねぇ?
私の事がそれだけ好きだから。私の事を愛しすぎちゃってるから。
ねぇ?どう思う?私って残酷だと思う?思うよね?
だって愛されてる事を利用して、お姉ちゃんを苦しめてるんだから。
愛情をいいように利用して、お姉ちゃんを死に誘っているんだから。
でもこれ、お姉ちゃんがこなちゃんに対して行った事なんだ。
こなちゃんや日下部さんに対して行った、残酷な仕打ちなんだ」
つかさはそこで言葉を切ると、かがみを見据えた。
かがみの表情から悔恨や懺悔は見て取れなかった。
「私ね、お姉ちゃんの事が嫌いだけど、憎んでさえいるけど……。
でもこんな残酷な仕打ちでお姉ちゃんからの愛情を遇している事、
流石に罪悪感くらいは抱いているんだ。
お姉ちゃんは……どう?罪悪感、今更ながらでも少しは芽生えた?」
かがみはそれに対して、冷たい声で返してきた。
「そんなの後で幾らでも抱いてやるから、今はその右手を離しなさいっ」
つかさは呆れたように溜息を吐くと、こなたに語りかける。
「ここまで言って尚、右手を離さないんだ、お姉ちゃんは。
だから」
その後は、こなたが継いだ。
「私と一緒に死んでくれそうだね。
嬉しい、って思っちゃうよ」
満足したように呟くと、こなたは身体を揺らし始めた。
それはかがみの腕に更に負荷を加えて──
「限……界……」
その言葉と共に、かがみは手を離した。
離した手は、左手だった。
「でもつかさと一緒に死ねるなら悪くないわ」
その言葉を口にした時のかがみの顔には、陶酔に満ちた笑顔が浮かんでいた。
(狂ってるよ、お姉ちゃん)
つかさは胸中呟いた。
そして、三人の身体は空に踊った。
(終わり、か)
落下していく最中、つかさはこなたの声を聴いた気がした。
『かがみと死ねるんだね……』
(私もこなちゃんと死ねるね……)
『でもさ……つかさには生きてて欲しいな』
(え?)
鈍い音が耳朶に響いて、つかさの意識は闇へとフェードアウトしていった。
意識が途絶える直前にも、
『こんな私を好いてくれてありがと』
こなたの声が聴こえた気がした。
あっもこっちも荒らしやがって
あっちもこっも荒らしやがって()
面白いじゃん
つかさ可愛い
つまらん実につまらんよ
*
「死ねなかったな……」
つかさは呟く。
屋上から落下した時、
こなたの身体が緩衝材の役割を果たしたお陰でつかさは一命を取り留めたらしい。
こなたはつかさを抱きしめるような姿勢で逝ったという話だった。
それは偶然だろうと周囲の人間は話していたが、つかさには分かった。
こなたに助けられたのだと。守られたのだと。
(あの声、幻聴じゃなくって本当にこなちゃんの声だったのかな?)
その答えを知る人間は居ない。
こなただけではなく、かがみも帰らぬ人となった。
そして、こなたの覚醒剤使用もかがみの譲渡・製造行為も警察の知る所となった。
結局それはニュースを賑わす事も無く、よくある話の一つとして処理されていくのだろう。
つかさとて助かりはしたものの、
怪我は酷く今日まで入院生活を続けざるを得なかった。
退院すると父や母や姉達の何処か翳のある笑顔に迎えられた。
その翳の意味を、つかさは知っている。
決して身内から犯罪者が出た事に対する憤りでは無い。
(あんな人でも……犯罪犯した今でも、
この人達にとってはかけがえの無い娘であり妹だったんだな)
つかさにはかがみを許す事などできないが、
それでも家族の痛みが分からぬ程鈍感でも無かった。
だから、つかさも出来るだけかがみの死を悼むように振舞った。
(どうしようかな……)
つかさは折角退院したのだから散歩したいと言い置いて、家を出た。
姉のいのりやまつりが付き添いを申し出たが、つかさは頑なに拒んだ。
恐らく彼女たちはつかさが死への衝動に再び駆られないか心配なのだろう。
そしてその心配は決して杞憂などでは無い。
(実際、こなちゃんが居ないんじゃ生きている意味無いよね)
つかさは当ても無く彷徨う。
(私も、死んじゃおっかな。
こなちゃん、酷いよ。私も連れてってくれれば良かったのに。
そりゃお姉ちゃんと二人っきりで死にたかっただろうし、
私だってこなちゃんに守ってもらって悪い気はしないよ?
でもね……こなちゃんの居ない世界で生きて欲しいと言われても、
それは地獄に一人で住むような茫漠とした孤独なんだよ)
途方も無く歩き回って人気の無い畦道にまで辿り着いた時、
後ろから声を掛けられた。
「ひぃちゃん」
あやのの声だった。そういえば、彼女も中学は一緒だった。
偶然出会ってもおかしくない人間だ。
「こんな所で出会うなんて偶然だね、あやちゃん」
そう言いながら振りむいたつかさの瞳に飛び込んできたのは、二人の人影だった。
勿論その内の一人は声を掛けてきたあやのだ。
もう一人は
「ここで出会ったのは偶然では無いのですよ。見かけたのは偶然でしたが」
みゆきだった。
「ゆきちゃん?どうして鷲宮に?」
「みさちゃんのお見舞い、付き添ってもらって。
だから一緒に居るんだ。そしたらひぃちゃんが歩いてるのが見えて……。
尾行する心算は無くって、声を掛けるタイミング図ってたんだけどね。
思いつめた顔してたからつい此処まで声かけそびれちゃって……」
今思えば、つかさのお見舞いにもみゆきとあやのが連れ添って来ていた。
みさおのお見舞いにみゆきが付き添うのも、不自然とまでは言えなかった。
「そっか……。日下部さん、どんな感じ?」
途端、あやのの顔に翳が差した。
「私の事も……知覚してないみたい。
回復はやっぱり、絶望的だって」
「ごめんね、あやちゃん」
「どうしてひぃちゃんが謝るの?」
「私のお姉ちゃんのせいで……」
「それはひぃちゃんのせいじゃないわ。
私だって、薬に依存しているみさちゃんに気付いてあげられなかったんだし」
あやのは辛そうに目を伏せた。
「それは、無理の無い事だよ。
日下部さんもこなちゃんも、閉鎖的になっていったから」
「そうだね、殆ど会わなくなっちゃったもんね。
ねぇ、ひぃちゃんは遠い所行っちゃったりしないよね?
私を置いて、遠い所行っちゃったりしないよね?」
それは縋るような声だった。
(ああ、そうか……。
あやちゃんも、かけがえの無い存在を失って弱ってるんだ……)
みさおは死んでこそいないが、
あやのの事すら知覚できない程に壊れている。
「私は何処にも行かないよ。あやちゃんも何処にも行かないでね?」
つかさは死への羨望を断ち切って、力強くそして優しくあやのを抱きしめた。
「私っ私っ……みさちゃんが居なくなって、しかもそれが……
親友だと思ってた柊ちゃんが覚……冷たいのを売ったからだなんて……
どうしたらいいか……」
途端、堰が切れたようにあやのは泣き出した。
あやのもまた、覚醒剤と言う名称を使う事を避けていた。
それを言ってしまえば、二度とみさおが帰ってこないとでも信じているかのように。
或いは、言いさえしなければ帰ってくる可能性があると信じているかのように。
それはつかさにも理解できる事だった。
また、他にも言わない方がいい事はあった。
(言わないほうがいいよね、スピード買うお金を得る為に身体売ってたなんて)
今のあやのの精神状態では、それを真っ向から受け止める事などできやしないだろう。
自分の胸の内でだけ留めていればいい、つかさはそう判断した。
「あやちゃん、大丈夫。私が居るから」
「えぐっ、そうだね、高良ちゃんもそれは言ってくれた。
でも……ひぃちゃんも辛いよね……。柊ちゃんや……泉ちゃんが……うぅ……」
かがみに対しては特段の悲しみは湧かず、
寧ろ今をしてなお憎しみは消えていない。だが、こなたに対してはその通りだった。
あやのを置いて逝く事が不憫で死への願望は断ち切ったものの、
こなたに対する恋慕の念は消えずに燻り続けている。
「大丈夫だよ……大丈夫……私は大丈夫……」
言葉とは裏腹に、涙が頬を伝った。
「ひぃちゃんっ」
つかさもまた、あやのに抱きしめられた。
「あや……ちゃん……」
二人は抱き合って泣いた。
みさおやこなたへの思いが、二人の間で消えずに燻っている。
ひとしきり泣いた頃、みゆきが優しい声音で声をかけてきた。
「安心して下さい、私が居ますから。
何か辛いことがあれば、いつでも力になります」
「そう……だったよね。高良ちゃんには本当に何度も助けられた……。
みさちゃんが病院に担ぎ込まれた日から、ずっと……力になってくれた……。
ほんとに……ありがとう……」
あやのが涙声で礼を述べた。
「いえいえ、礼には及びません。
つかささんも、私が居る事を忘れないで下さいね。力になれますから」
「ありがとう、ゆきちゃん。今までも、力になってくれたよね。
度々お見舞いに来てくれて」
つかさにしても、既にみゆきやあやのには助けられていた。
気が塞ぐ病室で、この二人はいつも自分に和やかな気分を届けてくれた。
それはこなたの居ない孤独を埋めるには至らずとも、支えの一つにはなっていた。
「でも、高良ちゃんも辛いでしょ?
高良ちゃんも私を頼っていいのよ?」
あやのに倣って、つかさも言葉を放つ。
「ゆきちゃん、私達も力になるからね」
「私は大丈夫ですよ」
その申し出を拒絶するように、みゆきは手を振った。
「え?」
「お二人程、かがみさん達との間で関係があるわけではありませんから」
そうだろうか。
つかさは考えた。確かにみさおとは殆ど付き合いは無かった。
こなたとも頻繁にプライベートを共有していた印象は無い。
だが、かがみとは?
同じ委員長で秀才だった事もあり、頻繁に話していた印象があった。
それに、付き合いが浅かったとは言え、
こなたやみさおと話す時のみゆきは楽しそうだった。
一緒に海に行った時、確かに楽しそうだった。
「本当に?ゆきちゃん、辛かったら泣いていいんだよ?」
その申し出をすら、みゆきは拒んだ。
「いえ、お二人程辛くはありませんから」
だがつかさは気付いた。恐らくあやのも気付いただろう。
みゆきの両手には拳が握られ、それが震えていた事に。
表情こそ繕われてはいるが、手にまで繕いのコントロールは及んでいない。
「嘘だよ……。ゆきちゃんは優しいから、日下部さんやこなちゃんは勿論、
お姉ちゃんに対してだって、悲しんでるよ……」
「うん……。高良ちゃんは辛いって事を普段は表情に出さないけど、
時々翳が覗くもん」
一瞬、みゆきの瞳が潤んだ。
だが落涙には至らなかった。
みゆきは無理矢理感情を抑えるように、淡々と言葉を紡ぐ。
「いえ、私には悲しむ資格はありません。
私は……彼女達を軽蔑すらしたんですよ?
覚醒剤中毒と覚醒剤の売りをやる犯罪者だって、そう軽蔑したんですよ?
私の心から蔑みの感情が消え去ったのは、泣きさざめく峰岸さんと、
病室の中で暗く佇むつかささんを見てからでした」
みゆきはそこで言葉を切ると、自嘲気味に続けた。
「彼女達の為に泣いている人間が居るのに、私は軽蔑してしまいました。
それに……彼女達の心を慮ってやれなかった。
ドラッグに手を出した彼女達を心が弱いとすら思ってしまったんです。
でも……彼女達も薬物に手を出さざるを得ない地獄に置かれていたんでしょう。
薬物に依存せざるを得ない状況を省みる事無く……私は……。
私だって、安易にスマートドラッグに頼る事があると言うのに……。
そんな私に、今更悲しんで泣くような資格は無いんですよ」
みゆきは辛そうだった。だが、その言葉通りに泣きはしなかった。
つかさは慰めるように声をかけた。
「それもしょうがない事だよ。スピードは違法で、そして危険なんだ。
使用した人間を軽蔑するのも、多分一般的な感情だと思う。
私やあやちゃんが悲しんだのは、偶々それが親しい人だったからで……。
それに悪いのは弱さ云々でも状況云々でも無くてね、お姉ちゃんだよ。
日下部さんやこなちゃんはお姉ちゃんによって薬漬けにされたんだから」
みゆきは目を伏せながら、言葉を吐き出した。
「いえ……そもそも薬に依存しきるその前の段階で、お二人は辛い何かがあったはずです。
だからこそ、お二人はかがみさんの誘うままに最初の一発に手を出した」
その”辛い何か”がつかさには分かっていた。
かがみに対する、決して叶う事の無い恋慕の情だ。
だからこそ、つかさはかがみが許せない。
「その辛い何かっていうのがつまり、お姉ちゃんに対する恋心なんだ。
それを知っていながらなお、
お姉ちゃんはその辛さに付け込んで二人を薬に漬け込んだ。
それはつまり、最初の一発目からしてお姉ちゃんが悪いんだ」
つかさは吐き捨てた。
「そのかがみさんですが……。
実は私、以前からリタリンやコンサータには理解は示せました。
別に鬱病に限った話ではなく、気が塞いで辛くてしょうがない、そんな人は大勢居ますから。
病にまでは至らずとも、地獄のような孤独や不満や鬱屈を感じる人だって大勢居る。
でもカフェインやアドラフィニルじゃそのダウナーマインドを飛ばすには弱い。
またその原因の解決の道筋も無い。
そんな時にリタリンがあんな厳格な処方に依らず合法化されて
お気軽に手に入るのであれば、
一体どれ程の人間が救われるのか、そう考えた事は幾度もありました……。
かがみさんもその一人だった。
その点を無視して、私はかがみさんを……一旦は軽蔑してしまった。
辛い境遇にある人間が救いを求める様を見て弱いと嘲笑う側を、
私は冷たい人達だと断じていたのに……。
いつの間にか私もそちらに組してしまっていたんです」
そこまで聴いて、つかさは漸く理解した。
かがみもまた、薬に救いを求めざるを得ない程に辛い境遇にあったのだと。
そしてその辛さの原因も、つかさには想像できた。
(私、だよね。私に対する恋情が……お姉ちゃんを苦しめていたんだ。
それが今やナルコレプシーやU17のADHD以外で非合法となっている
Rへとお姉ちゃんを走らせた……。
私にも原因があったんだ。
こなちゃんや日下部さんがスピードに手を出した責は、私にもあったんだ)
どうせ叶わぬ想いだからこそかがみは、今際の際に
『でもつかさと一緒に死ねるなら悪くないわ』
などと陶酔を孕んだ笑顔で満足気に言い放ったのだろう。
あの声も表情も明瞭に思い出せる。記憶に焼き付いている。
「私が悪いんだ……。お姉ちゃんは私を好いていた。
だけど私は……姉妹同士なんておかしいと思って、それにこなちゃんが好きだったから……
冷たく拒絶し続けた。私が……悪いんだ……」
それでもかがみを許す気にはなれないが、以前よりも憎しみが和らいだ気がした。
その和らいだ分だけ、つかさは自分を憎んだ。
「いえ、つかささんが悪いわけではありません」
「そうだよ、悪くないっ、ひぃちゃんは悪くなんてないよっ。
悪いのは……何だったんだろうね……」
ドラッグか恋かはたまた運なのか。
(こなちゃんや日下部さんなのか、お姉ちゃんなのか、
それともやっぱり私なのかな……)
つかさの胸中の呟きは、誰にも聴かれる事は無い。
誰からともなく彼女達は身を寄せ合って抱き合った。
それでも彼女達の抱える地獄の共有には至らないだろう。
原因が同一であっても、住む地獄の内容が違うから。
あやのは旧友のみさおが崩壊してその記憶からも忘れ去られ、
みゆきは自身がかつて嫌った側と同一の価値観でかがみ達を蔑んでしまった。
つかさもこなたを喪い、しかもそれは元を辿れば自身に原因があった。
各々が違う内容故に苦しみを分かち合えず共有する事もできず、
彼女達は地獄に一人住んでいる。
みさおがそうであるように。
こなたがそうであったように。
そしてかがみもまた、その一人であったように。
彼女達は地獄の上で生きている。
<FIN>
>>141-148 以上で完結です。
ご高覧頂き、有難うございました。
お体に気をつけて年末年始をお過ごし下さいませ。
本年もありがとうございました。
それではまた、次の機会に。
次がないといいな
別のSSでもありましたが惚れられた側の強み、惚れた側の弱み。
両者がどろどろの愛憎劇を生み出した見事な展開でした。
一般に禁止されている薬物使用が問題なのではなく、
禁止されていると分かっていてなお、使用せざるを得ない状況に人々を追い込んだ
艱難辛苦を伴う現実のほうが問題である、とお考えなら允頷くところです。
リタリンは最早小児ADHDにも適応外じゃなかったっけ
どっちにしろ適応外だからあんま深く知らないが
成人発達障害者には薬売り医者を丸め込んでベタナミン出させるぐらいしか希望残ってねえ
いや、そんなことはどうでもいいが
乙
グレゴリー来るかな?
154 :
マロン名無しさん:2010/12/25(土) 02:03:26 ID:+y+Kv3m5
英語詳しくないし揚げ足取りみたいでアレなんだけど、
hell
あああ途中送信した上にあげてしまった申し訳ない!
英語詳しくないし揚げ足取りみたいでアレなんだけど、
「hell」につく前置詞ってinでなくonなの?
って書こうとしたんだ
素朴な疑問なんだけど気分悪くしたらごめんなさい
地獄の中で生きるのと地獄の上で生きるのは違う
血の池の中に浸かって無数の手にぐちゃぐちゃにされながら生きるのと
血の池の上に一本張ったロープの上から無数の手が人をぐちゃぐちゃにするのを見降ろしながら生きるのぐらい違う
日本語的なあえての誤用ってやつだろう
”on”にしてあるのは現実こそが地獄で、その地獄の上に人間が生きている
ことを作者が表現したいのだと推測
うぜえなザコのコメント
wikiは機能してないの?
オフ会スレ落ちてるな。
中尉生きてるかな
年越し自殺
この擦れにとって最悪の年になりますように
住民が皆自殺しますように職人が惨殺されますように
163 :
マロン名無しさん:2011/01/03(月) 15:07:01 ID:+SOXOivv
なに言ってんだこいつ
このスレから犯罪者が出ますように
こなたん
寒さのあまりこなた自殺
なんか少しこなたを殴りたい
こなたを殴りたければ
まずオレを倒してから行きな
ガッシボカ
あの基地外一生入院してたらいいのに
誰だよ
こなたじゃね?
入院生活に嫌気が差して自殺。
ピクシブに絵をアップロードしたこなたが1点評価喰らいまくって凹んで自殺
寧ろひよりー?
四面楚歌更新されてんじゃん
本当に下手くそな絵は評価すらされないぜ
言っちゃったw
オレは四面楚歌好きだぜ
なかなか更新されないから半分諦めてたところだ
178 :
マロン名無しさん:2011/02/08(火) 20:17:59 ID:TxqC7Rcq
なんだこの駄スレは
つーかデフォ北がまだ居たのが驚きだぜ
またスレにも遊びに来てくれよな
漫画もいいけどたまにはデフォ北氏のSS読みたい
ってのは贅沢っていうかプレッシャーになるのかな
彼のSSは斬新だったな
グレゴリーは死んだ方がいいがな
バレンタインデーにもグレちゃん来なかったね
JEDIの新作来ないかな
チートこなた
JEDI死なないかな
過疎
平和な進行と言い換えてもいい
ヤケクソ来てるじゃん。
乙&期待
190 :
マロン名無しさん:2011/03/15(火) 10:20:25.19 ID:9fYD1vSU
期待あげ
ヤケクソとか懐かしいな。どんな話だったっけ?
このスレの絵師職人が地震津波放射能で市んでいますように
こなたが避○民に輪姦されて自殺する話とか絶対に書くなよ
194 :
マロン名無しさん:2011/03/22(火) 17:30:44.45 ID:uOuX7xMM
ちょん切ったこなたの両足首を使って足コキし射精するまでの様子をそうじろうさんに見せつけたい
放射能被曝でこなたが白血病で死ぬ話しなんか絶対に書くなよ
押すなよ、絶対押すなよ
ふるなよw
白血病で死んだらスレタイ違反だが、
放射線浴びた事で差別受けて自殺とかなら。
善意で家に泊めた避難民にこなたゆたかパティが凌辱されて自殺する話なんか絶対に書くなよ
まだ暫くは震災ネタや放射能ネタは使いづらいだろう。
不謹慎という言葉で創作活動を妨げる勢力が跋扈してるから。
>不謹慎という言葉で創作活動を妨げる勢力が跋扈してるから。
どうでもいいけどここのSSって
こういうなんともいえない言い回しが多くないか?w
ラノベっぽいというか
どこもそうなのかな
ちぇ更新されてる生きてやがったのか
いろんなSSスレ見てるがここのやつが一番くせになる
でも職人は一時期に比べてだいぶ減ったね
創作中だと信じたい
こなたってまだ生きてたの?
青虫はしぶといからね
テスト
お久しぶりです。神奈川です。
新作を今晩上げます。
テンション上がってきた
4月10日は死闘の日
211 :
マロン名無しさん:2011/04/12(火) 13:26:50.77 ID:TgvVi06I
こな殺wktk
待ってました〜!
規制か釣か
規制なら避難所に頼むぜ
215 :
マロン名無しさん:2011/04/24(日) 11:53:24.95 ID:/qWBuhMO
この度の福島原発事故を受けて、トンキン(東京)人の身勝手さ、性格の悪さが
全国民の知るところとなりましたね。東京に限りませんが、被災者に対する
ホテルの宿泊拒否、ガソリンの給油拒否、避難先の小学校でのいじめ、
物資の必要以上の買い溜め、ほか非人道的な鬼畜並みの言動の数々を、
ネットでもリアルでも見かけて心を痛めた人も多かったことでしょう。
周知のとおり、東京はそういった種類の人間がとくに集まる場所です。
ですから、原発は東京に作れば良いのです。もともとほとんど東京で使う
電気の発電所は東京に作るのが筋ではないでしょうか?
被災地の瓦礫やゴミをもってきて、東京湾を埋め立てて敷地を確保すると
良いでしょう。大部分東京で使う電気をその場所で作ることで、
送電ロスを大幅に防ぐことが出来、良いことずくめです。
何か事故があったら首都機能がまずいですって?
耐震設計や津波対策をしっかりやれば大丈夫です。それに事故があったら、
今回のように周囲の人間の生活や、尊い命、健康が犠牲になるわけですから、
首都機能の理由だけで、東京で使う電気の為の原発を地方に作るという、
理不尽で身勝手なことがまかり通って良いはずはありません!
そしてまた、すでに副首都の建設計画が急ピッチで進められているので、
首都機能は今後各地方に分散されていき、東京があぼーんしても、
日本という国は機能し続けることが出来るようになります。
日本の品格を貶める東京人の蛮行を皆で食い止め、東京人の心を浄化しよう!!
東京にも福島出身者が居るよねー、ねー
生きる価値のない汚物トンキン
宮城www
【阪神・淡路大震災】午前5時46分52秒黙祷
http://hato.2ch.net/test/read.cgi/news/1295209334 ---------------------------------------------
5: ティーラ(宮城県):2011/01/17(月) 05:23:26.31 ID:a2euPQBk0
メシウマだろ
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11: おたすけ血っ太(東京都):2011/01/17(月) 05:24:17.34 ID:7+Fvsek40
大阪人とか間引きした方がいいんじゃね??wwwwwww
27: ウルトラ出光人(東京都):2011/01/17(月) 05:28:17.09 ID:M+qgbmbP0
メシウマ記念日だな( ^ν^)
52: フライング・ドッグ(千葉県):2011/01/17(月) 05:35:11.37 ID:0wPaRplP0
何で関西土人が死んだ幸福に黙祷しなきゃいけねえの?
パレードだろ普通、ディズニー貸し切りでやりたいわ
82: レイミーととお太(神奈川県):2011/01/17(月) 05:43:00.91 ID:uurskFjaP
大阪人が死んでも俺の世界ランクが上がらないからマジ悲しいw
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259: チョキちゃん(宮城県):2011/01/17(月) 06:32:53.28 ID:VeS4vJcr0
このスレで黙祷しちゃってるのは、災害でウジ虫みたいに怯えて逃げ回ってた奴らなんだろうなw
--------------------------------------------
307: ひよこちゃん(山形県):2011/01/17(月) 07:40:25.66 ID:0WxWRNpw0
今日は朝から赤飯です^^
420: キャティ(埼玉県):2011/01/17(月) 09:32:18.64 ID:XCIcodQB0
何でもっと死ななかったんだよ 関西土人シネヨマジで 臭いんだよ本当に
220 :
マロン名無しさん:2011/04/29(金) 06:06:17.04 ID:sx36R0+w
うんこうんこうんこ うんこを食べると
きみもきみもきみも トンキンになれるよw
神奈川…
222 :
マロン名無しさん:2011/05/03(火) 00:34:42.60 ID:omYpqKJx
トンキンの汚物ぶり
先の震災で甚大な被災地をそっちのけでSNS、2ちゃんねるで被災者アピールをし、必要な情報の伝達を妨害した
マスゴミに踊らされる低脳ぶりを今回もいかんなく発揮、その後被災地に必要な物資を買い漁って復興に最も重要な初期救援に多大な支障を招いた
たかが数時間の計画停電に愚痴文句を並べ立て、しかも節電は東北のためと思い込んでいる
福島に原発を押し付けながら風説の流布を積極的に行い、東北産食品を拒否、西日本から物資を買い漁る身勝手さを曝露
普段からの根拠のない優越感が失墜、日本最低民度確定になった今、誰かを叩かないと自我を保てない脳障害から外国人叩きに必死
原発問題の賠償金を他地方に押し付け、そのくせ電力をよこせという恥知らずで身勝手な発言で、ますます社会のゴミ認定
唯一震災で大量虐殺を行った歴史で明らかなように脳障害と凶暴性を持ちます。しかもその隠蔽のため当時のマスゴミの捏造記事をコピペし、ますます卑しさを露呈
火災の多さ、喧嘩の早さは抑制が効かない凶暴性を明示しています
上方が江戸のことだと思い込んでいる馬鹿が多くいて関西に来て失笑を買うと発狂します
東下りを上京という言葉に置き換えるなど日本語を破壊します
明らかにやまとと違う人種の東方土人とやまとを追い出された無能の劣悪遺伝子が交配された猿に似た顔つきが特徴の劣化雑種です
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こなた「トンキン人って酷いんだねー」
みゆき「……」
226 :
マロン名無しさん:2011/05/03(火) 12:14:16.00 ID:jJE3YGuA
皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿皿
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/i,.\_:::::::| u::::: / :::::::::// :::::::::\ すぐに切れる脳障害トンキン虫
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トンキン人はなにかあるとすぐ外国人を引き合いに出しちゃうよね
日本最低の民度だからってコンプ丸だしで気持ち悪すぎww
やれやれだぜ
227 :
マロン名無しさん:2011/05/03(火) 12:14:47.26 ID:jJE3YGuA
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231 :
マロン名無しさん:2011/05/04(水) 15:35:21.00 ID:xEaDq/zZ
ところで空気市民は茎の欠陥疑惑造成地については息巻いているのかw
最近SS来ないな
233 :
SS:2011/05/09(月) 17:45:57.10 ID:???
ジークハイル!!
ストックはありますが投下を見合わせています。
come on!
こなた VS 勇次郎
範馬勇次郎の鬼の一撃で泉こなた自殺
こなたの誕生日に無反応w
誕生日スルーされたぼっちっぷりに嫌気が差してこなた自殺
「「「お誕生日おめでとう♪」」」
「ありがとう \(≡ω≡.)/」
つかさ「こなちゃんももう30か〜」
みwiki「結婚とか考えてるんですか?」
「全然w なにそれ?美味しいの? (≡ω≡.)」
かがみ「……」
「かがみんどうしたの?(≡ω≡.)」
かがみ「い、いや……」
つかさ「変なお姉ちゃん。アハハ♪」
みwiki「体調でも優れませんか?」
かがみ「大丈夫、大丈夫。ささっ、盛り上がろうよ!」
「そうそう。今日は私の誕生日なんだから♪ (≡ω≡.)」
つかさ「それじゃね〜」
みwiki「お元気で」
かがみ「じゃ、じゃあ……」
「みんなも元気でね (≡ω≡.)」
続く
つかさ「こなちゃん元気そうだったね。」
みwiki「とても30台とは思えませんね。私なんてお肌がもう……」
かがみ「……」
つかさ「お姉ちゃん、さっきからどうしたの?」
かがみ「……し……わよ。」
つかさ「何?聞こえな〜い。」
かがみ「あんた達、おかしいわよ!」
つかさ「はぁ?」
みwiki「どういうことですか?」
かがみ「だって……だって……」
かがみ「こなた、部屋から出てきてないでしょ!」
続く
こなた自冊SSで過去にクロスオーバー(他作品含作品)あったか?
世界狂えや法破れや
こなたは性的いじめが似合う
本家の神奈川さんか?
こなた死んじゃ嫌
そりゃね
今晩残り上げます。
期待してます!
早く上げてよー
忍法帖じゃね?
規制が厳しくなったからなぁ
大好きだよこなた
こなちゃん愛してる
神奈川は忍法帖?
短冊「こなたが自さt」
神奈川待ち^^
一時期の賑わいぶりは完全になくなっちまったな
アングラに相応しい
地味に自殺限定のなのがキツイな
262 :
マロン名無しさん:2011/07/28(木) 20:32:10.77 ID:1Bb6SDOj
それにしてもjinは名作だったなぁ
【おまじない】
ジュニア○このレスを見た人はめっちゃA幸運です○
えっと、このレスを、ド低脳中卒チビキモハゲ変質者ルンペンジジイ
キング・クリムゾン◆JOJO/AxYxIが巣食うスレに3つ以上貼り付けてください!
そうすると下記のようなことが起こりますヨ♪
◆好きな人に告られる!!
◆告ったらOKもらえる!!
◆彼カノがいる人ゎめっちゃLOVEAになれる!!
◆男女にモテる!!
◆5キロ痩せる!!
◆お小遣いが上がる!!
◆キング・クリムゾン◆JOJO/AxYxIとかいう糞コテが永久にアク禁になる!!
これを貼った友達は成功したそうです!!
391 名前:最低人類0号[sage] 投稿日:2011/07/30(土) 22:44:30.46 ID:yt2Ua+UuO
こなたんはかがみよりDQNのティンコの方がずっと好きみたいだね。
御愁傷さまw
392 名前:最低人類0号[sage] 投稿日:2011/07/30(土) 23:18:44.27 ID:wZFRA/Xu0
かがこなは中の人関係ないからw
こなたが放射能に塗れて自殺する話
こなた大好き愛してる。
グチャグチャのボロボロにしたい。
泣き叫ぶのを犯したい。
俺の小便を飲ませたい。
地下牢に閉じ込め、屈服するまで粗末な餌を与えたい。
完全に服従したら思いっきり贅沢させて甘えさせたい。
怪我とか精神疾患は魔法で治してあげたい。
完全に服従って精神疾患で良くね?
こなたと無理心中したい。
あの世でこなたと幸せに暮らすんだ。
レザーフェイスVSこなた
つかさ「こなちゃんが?」
みwiki「部屋から出ない?」
「「何を今さら〜www」」
かがみ「なによ、なにが可笑しいのよ!」
つかさ「だってお姉ちゃん…… こなちゃんがああなったの、昨日今日じゃないんだよ?」
みwiki「もう何年? えっと…… 」
かがみ「5年。5年前よ。」
続く。携帯からはキツイ…
続き待ってた!
先の展開が楽しみ
「かがみ〜ん。私、就職決まったよ♪(≡∀≡. )」
かがみ「本当? 良かったじゃない。あんたみたいなのでも社会に出れるなんて…… グスッ」
「もう泣かないでよ〜 あとさりげなく酷いこと言ってない? (≡ω≡.)」
かがみ「ごめんごめん。でも、本当心配だったんだから…… あんた何時も口だけで……」
オリオンヲナゾル〜♪
「あっ、てっちんからだ。……
ハローもしもし、うん、ばっちし! 余裕で内定ゲットゥ〜 うん、うん、本当? 嬉しい♪ じゃあ今晩ね〜 (≡З≡.)」
かがみ「てっちんって、あのサークルの彼氏? なんだっけ…… 」
「COOLJAPAN研鑽会。その辺のキモオタの集まりとは違って、社会に溶け込むクリエイティブ集団だよ。(≡ω≡.)」
かがみ「私には、あんたが昔嫌ってたヌルオタの集団にしか見えないだけどな〜」
「確かにみんなワンPースとか成るTOくらいしか読まないけど、これからどんどんオタク道を突き進むんだよ (≡ω≡.)」
つかさ「あったよね〜そんなサークル。」
みwiki「適当な事言って、その実態はただのヤリサー。男性への免疫が少ないオタク女をターゲットにしたバカの集まりでしたわ。」
つかさ「こなちゃん、ものの見事に引っ掛かってたね。」
みwiki「私達に優越感でも持ちたかったんでしょうね。」