漫画家の画力を語るスレ4【作家限定】

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752いしかわじゅんの安彦評1/3
「当時漫画を一杯書いたアニメーターの中では一番漫画に近い線を書く人なんだよ。
 だから生き残ったんだけれど。。
 当時漫画書いたアニメーターの線はね、ほんとにヒューンと走ってて
 抑えの全然、、俺たちが思い入れを仮託できない線なんだよね。
 漫画の線ってただぴゅって引いてあるだけなんだけれど、
 その一本一本にね俺たちがなんか思い入れをしょわせて読んでいるんだよ。
 それがね、ないんだよ。
 アニメーターの絵ってたぶん同じ絵をたくさん書かなきゃいけないんで、
 この一枚、このワンカットにたぶん気持ちの入り方が薄いんだと思う。
 格好いい絵を書かなきゃいけないから、一々格好いいんだけれど、
 格好よすぎてどうも入れない。
 安彦さんの漫画にもそういうところがあるんだけれどね」
「安彦さんの漫画とか見ていると難しい構図っていうのはないんだよね。
 漫画家ってもっとくどい構図とか、奇をてらった構図をつい書いてしまうんだけれど
 安彦さんの構図って全部分かりやすんだよね。
 すーっと読めていってしまう構図をとる。
 それはね、アニメーターの書く漫画の割と特徴なんだよね」
753いしかわじゅんの安彦評2/3:2010/01/26(火) 11:46:40 ID:???
「絵の面でいくとね、
 安彦さんは凄く巧くて何でも書けるんだけれど、
 年は俺たちと、そんなに変わらない、3つくらいしか違わないんだけれど
 漫画世代としてはだいぶ上なんだよ、漫画世代っていうか書いているものがね。
 俺たちの世代っていうのはつまりニューウェーブっていう世代、
 俺たちから下がニューウェーブなんだよ。
 ニューウェーブっていうのは何かっていうと、
 今までの漫画にリアルを持ち込んだっていうことなんだよな。
 例えば大友克洋とかいうのを出せば一番分かりやすいんじゃないかと思うんだけれど。
 大友克洋が初めてたとえば動くメカを書いたんだよ。
 見たこともないメカなんだけれど、
 これはきっと動いて何らかの作用をするなっていうメカを初めて書いた。
 誰かを殴るときにちゃんと体重がのっていて、
 ちゃんと人間が動いて、インパクトがあって体重がむこうに移って、
 リアルっていうものを持ち込んだのが、たぶんニューウェーブだったんだよ。
 それは絵だけでなくて、ストーリーとか設定とかすべてに関してなんだけれど、
 安彦さんの、、たとえば絵でいくとね、安彦さんの絵は記号なんだよね」
754いしかわじゅんの安彦評3/3:2010/01/26(火) 11:49:15 ID:???
「安彦さんが書いているのは、格闘しているっていう記号を書いているだけなんだよ。
 相手の肩に手をかけて次のシーンでもう投げ飛ばしているけれど、
 相手の肩に手をかけてここからどうやって
 相手を崩して担いで投げたかっていうのは見せてないんだよ。
 この人は相手を投げましたということが書きたいだけなんだよね。
 多分俺たちから下の世代は、これを書くときにはもっとね。
 相手の身体に重みがあって、自分にも重みがある。
 相手に筋肉があって、自分にも筋肉があって骨がある。
 それをどう崩してどう投げるかというところに意味があるはずだ。
 というのが多分ニューウェーブなんだよ。
 安彦さんはうまいんだけれど、そこを書かない、書けない人なんだよ。
 多分どっかの時点で俺にはこれは書けないなと思って、
 書かないことを選んだんだけれど、それはつまり書けないんだよ。
 だから巧いんだけれど、凄くうまくて何でも書けて、
 俺は読みながら達者なものだな、こんなに何でも書けるんだなと読んでいくんだけれど、
 でも俺はもうその次を見てしまったんだよ。
 だから安彦さんがどんなにうまくても、俺はもう一つね、興味をもてないんだよ。
 うまいなぁと思いながら、でも俺はその先を知ってるよと思ってしまうんだよな」