3 :
1/2:2009/05/13(水) 21:00:02 ID:???
第295話 技VS力
「おおっ!跳び関節!!」
相手に跳びつき足で首を刈り、畳に引き倒して関節を極める斉藤の裏技、『跳び関節』。
しかし寸前、橘は取られた右腕をロックして伸ばされないよう防ぎ、踏みとどまる。
ここで審判の「待て」。跳び関節は不発に終わった。
橘の体を持っていければそのまま十字固めが極まったのだが、
これだけの体重差があると跳び関節はなかなか決まらない。
(フン、またこんな技を……橘にはそんなもの通用せんぞ)
石丸が心の中で呟く。
折角の隠し玉が破られてしまったものの、「大丈夫、見ろ」巧が斉藤を示す。
「どうせこんなに早く倒せるとは思ってない……って顔だ」
試合再開。橘は積極的に攻めていこうとするも、組み手争いでことごとく斉藤がそれを上回る。
奥襟を取りにくる橘の手を捕まえて、逆に支え釣り込み足。橘がぐらついたその隙を突く。
(組みに来たところを足技で崩し、逆に自分に有利な組み手にしてしまった!)
驚く鳶嶋の前で――「だああっ」斉藤が橘に背負いを仕掛ける!
しかし体重差は約50kg。簡単に担ぎ上げられずつぶされてしまう。
仕切り直して試合再開。そこで石丸の声が飛ぶ。
「橘、先に技を出せ!きさま、まだ一発も自分から技を出してないぞ!」
その声に呼応するように斉藤の奥襟を橘がつかむ。
さらに取られていた引き手を切る――と、その弾みで斉藤が体勢を崩す。
(チャンス!)
橘が小外刈りで斉藤を転ばそうとしたその瞬間、
狙ったはずの斉藤の足が彼の足の間に差し込まれ、その動きを止めた。
4 :
2/2:2009/05/13(水) 21:01:16 ID:???
斉藤の技術に驚愕する鳶嶋。
(小外刈りにいくところを股の間に足を差し込んで防ぎやがった!なんであんなことができる!?)
その闘いの模様を巧が誇らしげに見つめ返す。
(見たか橘、そして鳶嶋!これが浜高一の技術屋〈テクニシャン〉・斉藤だぜ!)
さすがに焦り始めた石丸が声を上げる。
「何をしとるかっ橘!つかまえてしまえっ!形にこだわるな!」
もう時間が無い。どんな形でもとにかくポイントを取らなければ――。
なりふり構わず攻めかかる橘。(「形にこだわるな!」)
(これかっ!!)
組み手争いも何も関係なく、直接斉藤の足を取りにいく橘。
シンプルな力任せのすくい投げ。万事休すかと思われたその時、
斉藤は橘の足に自分の足を絡めて止めた。
「持ち上げろ――っ!」
「こらえろ――っ!」
ぶつかり合う両校の声。
そして祈る別所さん。(斉藤さんっ!)
そして――橘の腕力に斉藤の脚力が勝った。「待てっ!」
(こ、こいつ!)(なっ、なんだとお〜〜っ!?)
愕然とする橘、それに石丸。
『あ――っ!投げられない、怪力のはずの橘が投げられない!斉藤、橘のすくい投げをしのぎました!』
『昨日の個人戦では、日本中から集まった並みいる重量級を次々と破り、寄せつけなかった橘が、
74kgしかない斉藤を倒すことができません!こんな選手がいたのか!浜名湖の斉藤!』
なんか石丸さん台詞回しがどんどん小者っぽくなってね?
斉藤TUEEE
無差別級王者と互角とは……
このタイトル見ると「首をギュッとね!」って連想してしまう
>>5 あれだけ大声で言えば対応できるヤツは対応しちゃうよな
等の斉藤は巧に口パクで伝えたというのにな
しかしよく考えたら藤田の立場がないな
弱点とか関係なく普通にテクニックで渡り合ってるっぽいしなw
>>5 偉そうに柔道方針語ってたけどコーチだから実権がないんだよ。
もしくは理念は正しくても実際の指導が下手というありがちな指導者とか。
つーか千駄ヶ谷の監督どこいった。
巧って大学4年まで童貞貫いたんだ・・・・
斉藤すごすぎじゃね
実際に軽中量級が重量級タイトルホルダー相手に互角って有り得るのか?
15 :
1/3:2009/05/14(木) 21:02:04 ID:???
浜松のとある商店街、『さっぽろラーメンと餃子の店 さいとう』のテレビで、
春の高校柔道選手権の決勝戦を観ている常連客の男二人、そして斉藤の母。
「おうおう浩ちゃん、投げられないのもいいが、早いとこ相手のヤツ、ブン投げちゃってくれ!」
「バカ野郎、浩ちゃんはがんばってんだよ。相手のヤツをよく見ろ!」
画面の中では斉藤が橘と真っ向から対峙し、互いに睨み合っている。
「げっ、でけえ!」
「おまけにコイツは昨日、高校生の無差別級チャンピオンになってる相手なんだよ!」
店があるために応援に行けなかった斉藤の母は、画面の中の息子を心配そうに見つめるのだった。
第296話 最高の舞台
いまだ両者ノーポイント、互角の争いが続く副将戦。
残り時間は1分を切り、斉藤の弟妹たちが応援の声を張り上げる。
襟を取る橘の右手を引き剥がす斉藤。その光景に石丸は納得がいかない。
(また橘の釣り手がはずされた!?なぜだ…)
がら空きになった橘の懐に斉藤は飛び込み、大腰にいく。
橘はそれをかわして内股で切り返そうとするが、斉藤は動じない。
体勢を崩す橘。内股は不発に終わり、畳にうつ伏せに倒れ込む。
『体の小さな斉藤の堂々たる戦いぶり!すごい!橘、まったく試合の主導権を握れません!』
物凄い形相で斉藤を捕まえようとする橘。その様子を観ていた御厨が呟く。
「こんな必死の橘さんを見るのは、個人戦東京都予選決勝で鳶嶋さんと戦ったとき以来だ……」
16 :
2/3:2009/05/14(木) 21:03:01 ID:???
ここで斉藤は谷落としで奇襲を仕掛ける。
思わず倒れ込む橘。ポイントにはならなかったが、
巨体の橘が技術でもって右へ左へ振り回される様は、観る者を興奮させるに十分だった。
『もう、両校の選手、立ち上がっています!大将戦前に立つのは、あまり見たことありませんねえ』
巧は斉藤の戦いぶりを熱のこもった視線で見つめる。
(斉藤、アイツ……自分の持ってる技術全部使う気かっ!!)
額を伝う汗をぬぐう斉藤。トレードマークの逆立てた髪も落ちてきているが、
彼の表情に浮かぶのは辛さや苦しさなどではなく――歓喜。
(全国大会決勝、相手は日本一をとった高校生。
こんなに燃えられる舞台は、一生に何度もねえだろう!)
残り時間、20秒ちょっと。
このままでは本当に引き分けか――というそのとき、「うおおおおっ!」橘が吠えた。
襟を取りにくる橘の手を斉藤が払う。
だが、それはフェイント。橘の狙いは下、斉藤の左足!
「おらああっ!」
「浩司!」
テレビを観ていた斉藤の母は思わず丼を取り落とし、音を立ててそれが割れた。
17 :
3/3:2009/05/14(木) 21:04:01 ID:???
足を取られて宙に舞う斉藤。
だが、空中で身をひねり、うつ伏せに落ちる。主審は何も取らず、ギリギリセーフ。
橘は即座に寝技を狙う。斉藤をひっくり返し、そのまま上にのしかかる。
残り時間15秒。試合時間が0になる前に押さえ込みに入れば、
そのまま時間になっても押さえ込みが解けるか、一本を取るまで試合は続行されるのである。
「引き分けなんてさせるか!これで終わりだっ!」
「浩司さんっ!」
声を上げる別所さん。
(浩司!)
心の中で叫ぶ斉藤母。
「うおおっ!」
横四方固めを狙って斉藤を追い込む橘。
そのとき、猛獣を誘い込む罠のように斉藤の両脚が跳ね上がる。
そして――橘の首に絡みつく!
『えっ!? こ、これは――っ!』
これはちょっと熱すぎる!
決勝前に燃え尽きてしまいそうだ
やべえ、斉藤カッコよすぎだろ!
>>18 もうこれを最終決戦ということにして大将戦は
「そして激闘の末巧が勝利した」とナレーションで済ませよう
絶対的な力を持つ相手に技で対抗するという
メチャクチャありきたりな展開なのにこんなに燃えるのはなぜなんだ
斉藤先生が主人公みたい
巧の出番あるのか
斉藤スゴすぎる!
もうこのまま二人抜きで優勝にしちゃえよw
>>23 主人公が何もしないまま優勝が決まる
斬新な展開だなw
石丸「お前こそ俺の柔道に相応しい。斎藤、俺の所へ来い」
斎藤「巧、俺はお前と勝負してみたかった」
巧「面白れぇ!」
藤田「アイツら、俺の居ないところでbP争いするなよ……」
次はこんな展開だな
原戦といい橘戦といい
斉藤凄すぎだろJK
もしかして両校とも副将のほうが大将よりも強いんじゃね?
28 :
1/4:2009/05/15(金) 21:12:19 ID:???
第297話 最終決戦
『こっ、これは!三角絞め!』
『上から押さえ込もうとしていたはずの橘が!逆に斉藤の三角絞めにつかまってしまった――っ!』
三角絞めは首を足で絞めつけながら、手の関節をも同時に取るという荒技である。
たとえ残り時間が数秒であっても橘が耐えるのは難しいはず。
そして――残り時間は10秒ちょっと。
最後の最後にきて斉藤、高校No.1、橘を倒す大金星なるか否か。
「取れる!『参った』するしかねえっ!」と大興奮の杉。
そして御厨が悲痛な声を上げる。
「完璧にはいってる!これ以上やられたら、橘さんの右手が!」
それは鳶嶋にも分かっている。だが、それ以上に彼は橘という人間を理解していた。
「橘は『参った』なぞしない!絶対になっ!」
残り4秒。橘は物凄い形相で、技を決められたまま――、
(なっ……!?)(持ち上げやがった……)
斉藤の体ごと立ち上がった。
腕を極められ、首を絞められながらなお、74kgの斉藤をリフトアップするという常識外れの腕力。
橘は最後までその怪物ぶりを見せつけるのであった。
「それまで!」
29 :
2/4:2009/05/15(金) 21:13:17 ID:???
『引き分けです!副将戦、引き分け!!
壮絶な、まるで双方が綱の上でバランスを取り合うように、お互いがピンチの連続でした!
それにしても、浜名湖の斉藤、次から次へと繰り出す技で、橘を完全に翻弄していました!
素晴らしい柔道を見せてくれました!』
斉藤の家でテレビ観戦していた客たちが、その引き分けを悔しがる。
「でも、すげえぜ浩ちゃん!なにしろ高校日本一になったヤツと堂々渡り合ったんだからよ!」
ねえ、おかみさん――と、厨房の斉藤母に呼びかける。
「何言ってんだい。こんな心臓に悪いもんないよ」
彼女は洗い物をしながら、
「まっ、なんとか、自分のやるべき仕事は、キッチリしたみたいだから……良しとしとくかね」
目の端に浮かんだものをそっと指で拭うのであった。
「さ、今度は巧くんを応援しとくれ。浜高……きっとあの子が優勝させて……くれるよ」
「おう、そうだ、まだ優勝したワケじゃねえ!」
「もうひとふんばり、がんばれよ浜高!」
30 :
3/4:2009/05/15(金) 21:14:04 ID:???
その頃――会場では、二試合目に滝川の足技で脳震盪を起こしていた宮崎が目を覚ました。
「おいっ!今、どうなってんだ!」
跳ね起きた彼は、仲安と石野に今の状況を尋ねる。
観客席では、別所さんが頬を紅潮させたまま、今の試合の余韻に浸っていた。
(“柔能く剛を制す”とはよく言う言葉だけど、生まれて初めて本当にそれを見せてもらいました)
さて、そんな彼女に微笑みかける浜高の女性陣。
「“浩司さん”って言ってましたね、下の名前を」
「えっ、えっ!?ほ、本当に!?」
試合の最中、無意識に斉藤を下の名前で呼んでいた彼女。今さらながらに照れまくっていた。
戻ってきた橘の様子を、千駄谷の小野寺監督が診る。
「やはり……右手を痛めていたのか」
斉藤戦で右釣り手がことごとく切られていたのはそのためである。
これが藤田の作戦だった。三溝の立ち姿勢からかける関節技で、橘の右手を破壊する。
橘の強力な右釣り手を封じる作戦だったのだ。
さあ、そして、副将戦が引き分けということは――。
とうとうここまできた、大将決戦。
巧の母が風呂敷包みを開くのを見て、杉の母がそれは何かと尋ねる。
でてきたのは額に入った一枚の写真――。
「あの子の父親です」
目を覚ました宮崎が巧に呼びかける。
「オレがいない間に全部終わらせる気だったのかよ!」
「おっと、もう大丈夫そうだなっ!」
これで浜高メンバーの全員が揃った。
31 :
4/4:2009/05/15(金) 21:15:11 ID:???
「オレたちの役目は終わった。巧!」
「あとはまかせた」
「頼むぜ巧!」
「思いっ切りいってこい、巧!」
仲間たち全員がつないできた襷を、大将として彼が受け取る。
「鳶嶋!おまえは一度粉川に勝っている。絶対勝てる」
橘の激励に鳶嶋も頷く。最強軍団、千駄谷学園の全てを背負い、彼は立つ。
『千駄谷学園、大将・鳶嶋雅隆』
『浜名湖高校、大将・粉川 巧!』
『春の高校選手権大会、団体戦決勝はついに大将同士の一騎打ちというクライマックスをむかえました!
全国1966校の頂点に立つのは、大会三連覇を目指す千駄谷学園か!
出場二度目の浜名湖か!すべてはこの一戦で決まります!』
昨年夏のI・H以来、半年余りの時を経て、再び対峙する巧と鳶嶋。
巧は強い眼光で鳶嶋を睨みつける。
(あの日から一日一回は思い出してたぜ、あの試合はな!I・H個人戦決勝!)
それに対して鳶嶋は、冷たい視線を巧に向ける。
(何度こようが叩きつぶしてやる。浜名湖高校、そして、粉川巧!)
そしていよいよ――最終決戦が幕を上げる。
これでトビーが開始直後の出足払いで一本勝ちしたら吹く
作戦はすばらしいが・・・それは弱点なのか?藤田よ
そしていたんだな、千駄ヶ谷の監督。腕の異常に気づいてたんだな。
石丸さんの立場ねえ。いいとこ何もないぞこのおっさんw
ミッタンと斉藤の二人がかりでもぎ取った引き分けだったのか…
そこまでしなきゃ攻略できなかった橘はやっぱりスゲエな
>>あの日から一日一回は思い出してたぜ
それは恋だよ
宮崎カヤの外www
753 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:2009/05/10(日) 22:57:36 ID:???
あれ?主将って桜子じゃなかったっけ?
それはともかく…極められた状態から投げにいった
橘の右腕はどうなっているんだ一体
一本勝ちと引き換えに腕一本…とかシャレにならんぞ
前スレで予想したとおりだったか・・・
それでも斉藤と引き分ける橘がすげー
極められてる右手は負傷してるのに
その状態で力ずくで立ち上がる橘がバケモノすぎるw
姫は相変わらず天然だな
柔道家なのか、恋する乙女モードなのか、さっぱり分からん
斉藤の裏技って、
・変形ひざ固め(VS三工)
・跳び関節(VS三工)
・腹固め(合宿の練習試合)
・腕がらみ(VS東名大藤沢)
それに今回の三角絞めで全部か?
ちゃんと五つ考えてしかも全部使い切ったのか、すごいな河合。
でもさー
これ次回
《巧は畳の上で、これまでの経過を振り返っていた。
色んな相手と戦った。苦しい練習もあった。
全ては、この瞬間のために。
『始めッ!』
「いくぞ鳶嶋!」「さぁ来い粉川!」
――河合先生の次回作に(ry》
的なふいんきがプンプンするんだけど
絶対気のせいだよね?ね!?
>>41 この流れで帯ギュを打ち切るようならサンデーは二度と買わねーw
なんか少林寺の最終回を思い出したぜw
ガンバもそんな最終回を迎えそうなのが大いにあり得るので嫌だが…
涙ぐむ斉藤母とか、I・Hで出せなかった巧父の写真とか、
実際戦ってる巧たちよりも周りの細かい描写にグッとくるものがある。
たしかに斉藤のかーちゃんでちょっとウルっときた
お宅の息子さんはホントにいい仕事したよ
斉藤母が茶碗割ってたから、斉藤が負けちゃうのかと思った
ポイントとられなくて良かった
47 :
1/2:2009/05/16(土) 21:00:49 ID:???
第298話 背負い投げVS袖釣り込み腰
ついに始まった、高校日本一を決める団体戦最後の試合、大将戦。
無名の浜高がここまで千駄谷学園を苦しめているのは、その時点で既に驚くべきことだった。
「自分は今やってる浜名湖の大将・粉川ってのとやったことがありますよ。
昨年のI・Hの団体戦であたって、合わせ技一本で負けちまいましたけどね」
会場の入り口付近でそう語っているのは、東京都内の明政大学に新一年生として入った玉城一史である。
玉城が負けたと聞いて驚く、明政大の先輩達。
「しかし粉川はそのI・Hの個人戦では、あの鳶嶋に決勝で負けてます。そういう因縁があの二人にはあるんですよ」
○東京代表 千駄谷学園 大将・鳶嶋雅隆 VS 静岡代表 浜名湖高校 大将・粉川 巧
場内の誰もが固唾を呑んで見守るこの一戦。
互いに抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げたこの決勝戦、その決着もこの一戦の行方にかかっている。
巧と鳶嶋、互いに激しい組み手争いから――まず仕掛けたのは巧!
「おおっ!」「背負いかっ!?」
しかし鳶嶋は襟をつかむ巧の手を切り、逆にその左袖を取り返す。
そしてそこから――袖釣り込み!
「おう!」
巧はこれに即反応。
逆さになりながら畳に手をつき、うつ伏せに落ちる。「待てっ!」
48 :
2/2:2009/05/16(土) 21:01:37 ID:???
早くも互いの必殺技が飛び出した。
巧の得意は背負い投げ、鳶嶋の得意は袖釣り込み腰。
この二人、どちらも完全に入ってしまったら一本を取れる技を持っている。
一瞬も気を抜けない戦いである。
とはいえ、巧の方が派手に飛ばされているわけで、鳶嶋の方が少し上か。
そんな明政大の先輩の見方を、玉城も素直に認める。
「確かに、技術はそうかもしれません。鳶嶋はケタ外れの天才っスからね。それでも粉川ってヤツは……」
試合再開。豪快に投げられながらも臆することなく攻めていく巧。
「攻めて攻めて攻めまくる。あいつは相手が強ければ強いほどそうなる」
巧がただ上手いだけの選手なら、玉城も負けることは無かったかもしれない。
(粉川か……まるで火が点いたような攻撃をする柔道だな……)
橘もやはり似たような印象を受け、そして呟く。
「鳶嶋とは正反対だ」
『粉川、いった――っ!!』
巧の一本背負い。鳶嶋はこれを際どいところでかわし、切り返す。
片手からの袖釣り込み腰。さらに自由な右腕で巧の足を取り――、
「だああっ!」
――ひっくり返す!
「こっ、これはいったっ!!」
「巧――っ!!」
ここで玉城再登場とは意外だった
巧が先手とって失敗、そのあと相手の得意技で一発って、
試合展開まで玉城戦とかぶらせる気か!?
玉城久しぶりだな
懐かしキャラで思い出したんだが、来留間の兄は今頃どうしてるんだろう?
柔道続けてるのか?
赤石林業の人達(名前が思いだせん)もどうしてるんだろ?
これは技ありフラグだな
赤石の人達ならこの間トラックで伐採した木材運ぶの見たよ
もう柔道はやってないんじゃないかな
え?でもヒゲの人が出足払いで木を伐採していたような…
55 :
1/3:2009/05/17(日) 21:01:16 ID:???
第299話 痛恨の一撃
鳶嶋の袖釣り込み腰に、巧の体が宙を舞う。
完全に入れば一本が決まる必殺技に、巧は――「おっと、これは――っ!?頭から落ちた――っ!」
「技あり――っ!」
勢いは十分に一本あったが、首から落ちたおかげでギリギリ、それを免れた。
『ここで待てがかかりましたが!さきほどの技で頭を強く打ちつけた粉川ですが……大丈夫でしょうか!』
うつ伏せの状態で後ろ頭を押さえる巧。
上になっていた鳶嶋はどこうとして、その膝がまた運悪く巧の頭に当たる。「痛っ!」
跳ね上がるように立ちあがった巧。それに驚いて今度は鳶嶋が転んでしまった。
『粉川、勢いよく立ち上がりました。自分は全然平気だという意思表示でしょうか……おっと?
これは……にらみ合ってますね』
闘志むきだしの二人に、龍子先生が冷や汗をかく。
「ちょ、ちょっと。高校生の試合なんだから、お行儀よく……」
「いいぞいいぞ!こいつらかなりアツくなってきてるぜ!」
「いけいけ!ガチンコ勝負だ!」
会場内のボルテージが高まる中、試合再開。
それと同時に巧は真っ先に飛び出していく。
56 :
2/3:2009/05/17(日) 21:02:14 ID:???
とりあえず頭の方は大丈夫そうで、ほっと一安心の保奈美。その後ろで藤田も安堵の息を吐く。
「まったく。タフなヤツだ」
思わず口を突いて出た呟きだろうが、そんな彼の態度に桜子と保奈美は嬉しげな視線を送るのだった。
(いちいちこいつらは……)
さあ、まだ時間はある。ここからならまだ逆転はできる。
応援席が声を張り上げた。
「ファイト――粉川――!」「いけいけ粉川――!」
その声に応えるかのように、巧が左背負いに行く。
しかし鳶嶋は引き手を切ってこれをかわす。
今の技は失敗こそしたものの、攻め自体は悪くない。
追う立場の巧はガンガン攻めていくしかないのだ。
しかし、石丸はそれを目の前にしても、まだ余裕を保っていた。
「さすが鳶嶋だ。今のかわし方を観ていても、安心して見ていられる」
「組み手だ」
巧の技が決まらないのは、組み手が不十分な状態から技をかけているから。
鳶嶋はこの試合、まだ一度も巧に十分な組み手をさせていないのである。
もっとよく見てみろ――そう言われた御厨は、二人の組み手争いを観察する。
(本当だ。組み手は完全に鳶嶋先輩のほうが上だ。
必ず先に組んで、その後も絶対に粉川の組み手にはさせない)
57 :
3/3:2009/05/17(日) 21:03:07 ID:???
攻めあぐねる巧は鳶嶋から距離を取り、仕切り直す。
この守りの堅さもさすが鳶嶋というべきか。
しかし、こういうときのためにこそ、“アレ”がある。
「やるなら今しかない」「裏技っスね」
西久保の言葉を受けた斉藤が、巧に合図を送る。
巧の裏技、腕返し――、
ところが。(きたっ!!)
鳶嶋はこのタイミングを狙っていた。
巧が腕返しに入るため、鳶嶋の腕を軸に巻き込もうとしたその瞬間、
それを見計らったかのように彼は跳び、のしかかるように上から巧を潰した。
腕返し、失敗。
畳に落ちた巧を鳶嶋はそのまま肩固めに捕まえる。
「押さえ込み――っ!」
・・・・・
(一度見たらこんな技は通用しないんだっ!それが千駄谷の柔道だっ!)
千駄谷学園には一度見た技は二度通じん!これはもはや常識!
腕返し二回転は、かわされた後に虚をついて追撃するためじゃなかったのかよ!
一回転目でこんなつぶされ方されるんなら、二回転の意味ないじゃん!
鳶嶋の方が一枚も二枚も上なカンジだな
今回は勝ちそうな気がしたんだけど…
ここでまた斉藤の助言タイム来るのか?
背負いなんて何回も見せてるし絶対通用しないんだろうな
一回見たぐらいでこんな簡単に対策できるもんなん?
そんだけ技の精度が低いんだろう
大昔に倉田のおっさんが言ってたみたいに
小手先の技を増やすよりもひとつの技を極めようとする方が大切ってことだな
斉藤ぐらい技が多彩なら技の数そのものが武器になってくるだろうけど
66 :
1/3:2009/05/18(月) 21:02:52 ID:???
第300話 裏技破れる!
『はいった――っ!、鳶嶋、押さえ込み――っ!』
鳶嶋は既に巧から技ありを取っている。
そのためこの押さえ込みは25秒で技あり、合わせて一本が決まってしまう。
悲鳴を上げる麻理。巧の名を叫ぶ保奈美。この窮地に浜高応援席は騒然となる。
それにしても、巧の裏技・腕返しはまだ千駄谷の前ではやっていないのに、どうしてそれが破られたのか。
その答えは彼ら、準々決勝で浜高と対した都立・竹の塚高にあった。
「鳶嶋のヤツ、粉川が腕返しにいこうとしたところを上から覆い被さってつぶしやがった!オレがやられた腕返しを!」
巧は竹の塚の下津田との対戦で腕返しを使っていた。鳶嶋はその時に見て、この隠し玉を予め知っていたのである。
巧は必死に両手を使って鳶嶋の頭を押すが、小揺るぎもしない。
「斉藤、巧に指示してくれ!あの肩固めの外し方を!」
(そうだ!今、オレにできることはそれしかない!)
杉に言われて鳶嶋の寝技の隙を斉藤は探す。
と、そこで巧が体をねじり、返そうとするが――鳶嶋は細かく体勢を変えてその抵抗をことごとく封じる。
『粉川、暴れる!必死です!もちろん、25秒押え切れば優勝する鳶嶋も必死!』
寝技から抜け出せない巧の姿にやきもきする杉。「ああっおしい!」
「どうした斉藤、アドバイスはっ!?」焦りを含んだ声で宮崎が問う。だが。
「ダメだ。鳶嶋は寝技もできる。スキがない……」
『今、10秒経過っ!』
「くそおおおおっ!」
67 :
2/3:2009/05/18(月) 21:03:50 ID:???
いよいよ近づく優勝に、千駄谷選手陣の興奮も高まる。橘も見事な戦いぶりを見せた主将を誇る。
(最後はやっぱりおまえが決めてくれたか、雅隆。千駄谷の主将にふさわしい男だ!)
対して悲痛な声しか上がらない浜高応援席。
そして、その状況に我慢のならない男がいた。(なにをやってる!)
藤田である。彼はポケットからカメラ取り出し、立ち上がる。
「立てえ粉川!きさまから借りたこのカメラで負けるとこ撮るぞ、いいのか!?」
亡くなった夫の遺影を手に、巧母は目を逸らさず試合を見つめる。(あなた、見えますか!?)
(今、巧のために大勢の人が応援してくれてるのよ。あなたもあの子に力を貸してあげて!)
千駄谷、浜名湖、両校の応援の声が響き渡る中、時間は20秒を経過。
これで有効のポイントがつき、残りあと5秒。
(あ……)(ダメなのか……)(ああ……)
浜高を応援する皆の間に広がる絶望。
そして千駄谷応援団のカウントダウンが始まる。
(オレの勝ちだ、粉川!)
勝利を確信する鳶嶋。だが、なおも巧は両手で鳶嶋の頭を押す。
皆が肩を落とす中、(巧くん!)
最後の最後まで本当に心から巧を応援しつづける、たった一人の少女がいた。
(巧くん、言ったよね。私たちの前で言ったよね!)
『オレは勝つぞ!』『鳶嶋だろうが橘だろうが!』
保奈美が――声を張り上げる。
「巧くん!負けないでっ!」
68 :
3/3:2009/05/18(月) 21:05:08 ID:???
「うおおっ!」
それはもはや理屈ではなかった。
保奈美の声が響いた瞬間、巧の全身がそれに呼応したかのような驚異的な力を見せ、
鳶嶋の押さえ込みを跳ね返してしまったのである。
「押さえ込み、解けっ!」
『押さえ込み解けた――っ!なんと24秒ギリギリ!
粉川、完全にキマっていた鳶嶋の肩固めを外した――っ!』
信じられない光景に、驚嘆と歓喜の入り混じった声が応援席を埋め尽くす。
ボルテージの高まる会場内。興奮した観客たちの足踏みの音が止まらない。
それはまるで――日本武道館全体が巧の根性に興奮しているかのような。
そして、目の前のこの状況を一番信じられないのが鳶嶋である。
(ウソだ。20秒間寝技で下になって暴れ続けていたのに……!
なぜ最後の5秒間に、それまでで最高の力を出せるんだ!?)
(鳶嶋!まだまだ勝負はこれからだっ!)
主人公補正……
凄いね人体
ねーよwwwww
こんな忘れかけた設定、ギリギリのど緊迫したシーンでもってくんなwww
あー、ヒロイン効果発動か
久々に見た気がする
えええええ
さすがにそれはないわ。今までここまで決定的なシーンどうこうしたことはなかったのに。
逆に考えてるんだ、保奈実の声で巧が覚醒するのではなく
保奈実の声で一瞬だが世界の水平軸が垂直軸に変わると考えるんだ
斉藤VS橘戦で俺の流した涙を返してくれ
この後
有効6つくらい取られて逆境を貯め込んでおいてから
さあ逆転の背負い一閃!
でもわずかに時間切れで巧負けましたぁー!
ぐらいドラマティックな展開に期待
まあ、そんなもんだよな!
だが、鳶嶋有利な形勢の突破口になれたか
ここまでわかりやすい補正だとこれはこれでありな気がするなー
斉藤戦で満足したから最後はヒーローっぽく巧が勝ってくれればいいや
うーん、これはちょっと……
ここまで茂も杉もミッタンも斉藤も、
長いこと練習して苦悩して作戦も立ててそれでもギリギリの綱渡りで、
強豪の千駄谷と渡り合うだけの裏付けを持ってたんだよな。
だから試合の展開も納得できたし、読者の俺らだって安心して燃えられたんだよ。
こんな理不尽な返し方されたらむしろ鳶嶋の方がかわいそうだろ。
82 :
1/2:2009/05/19(火) 21:01:15 ID:???
残り一秒から押さえ込みを抜けた巧。ここから逆転ができるのか。
それともここまで圧倒的なポイントリードをしている鳶嶋が勝ちを決めるのか。
残り時間、1分18秒。
第301話 湧き上がる力
巧から流れ落ちるとめどない汗。
押さえ込みから逃げても、下で暴れていた分、その消耗は激しい。
この状態で果たして鳶嶋と戦うことができるのか。
「ファイト――ッ!」「せっかく生き残れたんだから、一回でも多く技をかけて――っ!」
保奈美と桜子が客席から声を張り上げる。
(しぶといヤツだっ!)
驚くべき粘りを見せる巧に苛立つ鳶嶋は、とどめを刺すべく大外刈りを仕掛けていく。
しかし巧はそれをこらえ、真っ向から押し返す。
(あそこから大外刈りを返した?こいつ、疲れてないのかっ!)
死力を尽くし、鳶嶋に五分で渡り合う巧。
その姿に浜高のメンバーは思い返していた。
カラオケボックスでの諍い。それに対する巧の答え。
『オレが言いたかったのは、柔道を楽しくやるってことだ』
思えばあの時から、浜高柔道部は巧を中心として動き出したのかもしれない。
『日本一!?』『そんなバカな……』『オレら日本一だなんて!』
『オレは勝つぞ!鳶嶋だろうが、橘だろうが!』
杉も、宮崎も、三溝も、最初はとても信じられなかった。しかし、それでも――。
(こいつなら、巧ならやりかねないって…そう思ったんだ!)
83 :
2/2:2009/05/19(火) 21:02:31 ID:???
(時間がないぞ粉川!見せてみろ!おまえの力を!)
藤田の頬を汗が伝う。その手には巧のカメラが握りしめられている。
(やってくれる!巧くんなら、きっと!)
保奈美が、桜子が、祈る。
そこで、観戦していた柴田があることに気づく。
「伴監督、鳶嶋より粉川のほうが、有利な組み手になることが多くなってませんか?」
信じられないことだが、それは事実だった。同じく気づいた橘が戦慄する。
(なぜだ?粉川のヤツ、この試合中に組み手の技術が上がったとでもいうのか!?)
伴監督がその疑問に答える。
「これは、技術がどうのこうのという話じゃないな。強いて言えば……」
「粉川の気迫が、鳶嶋を圧倒している……!!」
しかし、鳶嶋はそれを認めない。
(くそっ、今度こそ……ここでキメてやる!)
鳶嶋必殺の袖釣り込み腰――だが。
「おらあっ!」
巧は引き手を切って、またもそれをこらえた。
その直後、投げを失敗して体勢を崩した鳶嶋の懐に巧は飛び込み――。
「背負いだっ!」
主人公の気迫勝ちは少年漫画のお約束だけど
帯ギュでやるとは思わなかったな〜
精神的に優位に立てば動きが思い切りよくなるし、逆に飲まれれば縮こまる。
いきなり巧がうまくなったっていうより相対的に上下が変わったってとこかな。
24秒まで押さえ込んで勝利まであと少しってところだったのに
理解不能な力で逃げられたら動揺もするわな
鳶嶋のブラコンパワーの気迫じゃ巧のラブラブパワーの気迫には勝てないのか
巧負けで浜高優勝の可能性を追求したい。
次回、鳶嶋先生の河津掛けにご期待下さい!
90 :
1/3:2009/05/20(水) 21:02:54 ID:???
第302話 雌雄決す!
「かついだっ!」
「いや、止めたっ!」
『粉川、かついだ、かついだ――っ!!』
『しかし!』
『鳶嶋、こらえる、こらえる――っ!!』
巧の渾身の背負い投げ。鳶嶋は足を絡めて必死の抵抗。
ぶつかり合う両者の意地と意地。
「巧くんっ!」「いけ――っ!」
保奈美と桜子が声を張り上げる。
「うおおおっ!」
『と、飛んだ――っ!』
巧は鳶嶋に足をかけられていた自分の左脚を跳ね上げ、
自らの体ごと一回転――そして、
二人分の体重をかけて鳶嶋を畳に叩きつけた。
「一本!それまで!」
主審の手が――高々と差し上げられた。
91 :
2/3:2009/05/20(水) 21:03:52 ID:???
『決まった、一本――っ!』
『粉川、背負い一閃、大逆転――っ!』
『浜名湖高校、初優勝――っ!!』
『抱き合って喜んでいます、浜名湖のメンバー五人が……、
まさに五人が一丸となって、ピンチの連続をしのいでしのいで、とうとう日本一の座をつかみました』
試合場に集まり、へとへとの巧を皆がもみくちゃにする。
保奈美、桜子、麻理、それに応援してくれた皆が感動に震え、涙を流す。
「なったんだね、日本一……」「ウン、巧くんがやってくれたんだよ」
呆然と畳に座りこんだまま、まだ立ち上がれない鳶嶋。
浜名湖対千駄谷。
まさに一進一退の攻防で、最後は大将同士の一騎打ちまでもつれ込んだ。
序盤は鳶嶋が袖釣り込み腰で技ありを奪い、
なおも押さえ込みにはいって一気に王手をかけたかに見えた。
しかし、その押さえ込みを時間ギリギリで返し、
最後は背負い投げで巧が逆転勝利をものにした。
先のI・H個人戦で鳶嶋に敗れていた巧は、
この大舞台、この大事な一戦で、見事にその雪辱を果たしたのである。
92 :
3/3:2009/05/20(水) 21:06:25 ID:???
「やってくれましたよ、あの子たち。ねっ西久保さん」
涙ぐみながら西久保に話しかける龍子先生。
ところが彼は先生よりはるかに涙を流して大泣きしていた。
「すんません。大の大人が。
オレは大きな大会じゃほとんど二位ばっかだったんで……優勝の味を知らなかったもんで……」
現役当時は常にライバルの石丸の後塵を拝していた西久保。
彼にとってもこれが初優勝であり、浜高の皆に礼を言いたいと彼は呟く。
(ありがとう、西久保さん……お礼を言いたいのはこっちです)
「一人残しで、白・浜名湖高校の勝ち!」
「礼!」
全員で整列して、今、正式に試合が終わる。
顔を上げた巧の表情には、誇らしげな輝きが満ちていた。
そして――試合を見届けた伴監督が言う。
「柴田、オレは決めたよ。来年ヤツを立体大が取る」
正直なところ、副将戦の方が盛り上がったな
ここまで裏技や弱点というアドバンテージを活かして攻略してきたのが
大将戦だけ対等の条件での勝負でどうするのかと思ったら
理屈抜きの主人公補正でなんとかしちゃったからなぁ
足かけられて止められたのを自分の足ごと跳ね上げて投げるって、
インハイで自分が負けた時の展開、そのままやり返したのか!
どっちらけだな、巧は要らない子。
作者も終盤は巧の試合が一番困ったんじゃないか?
西久保さんがいい味出してる
試合?
まあ、良かったんじゃない
鳶嶋可哀想
ひょっとしてオリンピックまでやるのか?
あーあー、結局主人公補正か...
副将戦までの科学的なトレーニングのよるパワーアップとか、裏技の開発とかの裏付けが台無しだww
大将戦の流れはもう少し考えてほしかったわー
来週からの新展開は日本選抜チームで海外遠征とかか?
>『おまえが鳶嶋に勝って優勝を決める時より、小さなオレが橘を倒した時のほうが、よっぽど会場は沸くだろう』
まったくもってその通りでした。引き分けだったけど。
そんな展開になったらさよなら杉&宮崎ケテーイだな
ミッタンもあやうい
103 :
1/9:2009/05/21(木) 21:08:51 ID:???
第303話 浜高はそして…
春の高校選手権で、ついに浜高柔道部は日本一になった。
そして新学期を迎え、巧たちも三年生に進級した。
東京での写真ができあがってきたので、教室で皆でそれを眺める。
その中には巧の撮ったものも混ざっており、それがまた実にくだらないものばかり。
と、そこで――桜子が素っ頓狂な声を上げた。
「あっ、これ、巧くんが鳶嶋を投げてるとこだ!」
「えっ?」「優勝の瞬間か?」
「本当だ。誰が撮ってたんだろ?」
それはまさに決定的瞬間を、これ以上ないタイミングで見事に切り取ったもの。
そして巧は、すぐにそれを撮ったのが藤田だと思い至った。
(アイツめ……)
柔道部にも、去年以上に多くの入部希望者たちが集まった。
これもやはり全国優勝の効果か、と思いきや。
「あ――っ、マリちゃんだ!」「福岡国際で優勝した!」「本物だ――っ!」
実は単にマリちゃん人気だったりして。
そこで不意に、麻理の頭にかざされる手。
「ウフフ、ちっとも伸びてませんね、身長」
何とも懐かしい顔が、浜高の制服を着て立っていた。
「コ、コイツは!」「杉の妹!」
「あら、杉の妹なんて呼ばないでくださいな。人聞きの悪い。ちゃんと薫という名前があります」
「人聞きが悪いって、おまえなあっ!」
あまりといえばあまりな薫の物言いに、杉は激昂するのであった。
104 :
2/9:2009/05/21(木) 21:09:36 ID:???
まさか柔道部に入るのか、と桜子が薫に尋ねる。
「いえ、私、過激な運動は苦手なので…マネージャー志望なんです」
保奈美の傍にそっと近づく薫。その猫っぽい目が光る。
「保奈美お姉様、色々教えてくださいね?」
「え、ええ……(なんなの……?)」
マネージャーは部員の数が増えれば絶対に必要になるポジションといえる。
そういえば保奈美の後継者もいなかったわけで、薫の申し出はそういう意味では願ったり。
というわけで容認の空気になりかけたのだが、実の兄による反論。
「やめといたほうがい〜〜ぞ〜〜。オレらの下の代が苦しむぞ〜〜」
ともかく、こうして浜高柔道部は新たなスタートを切った。
見かけはラクそうでも内容はキツイ練習で、新入部員の数も瞬く間に減ってしまったのだが、
その分、ヤル気のある者が残った。
ランニングの最中の巧に、龍子先生からお呼びがかかる。何でも、巧に客らしいのだが。
「あれは……立体大の伴先生!」
伴監督が何の用事で来たのか気になる桜子。
だが、杉や斉藤にはその内容が、おおよそ見当が付いていた。
「スカウトだよ。巧に、来年立体大で柔道やらないかって言いに来たんだ」
(巧くんが立体大に……?)
不意に彼女には、巧が遠く感じられる。
そのとき、いきなり巧と伴監督が笑い合った。
どうも彼らは柴田が出ていた全日本体重別の話をしていたらしい。
105 :
3/9:2009/05/21(木) 21:10:47 ID:???
「あの柴田さんがオリンピック代表に選ばれた試合!凄かったっスね、オール一本勝ちで優勝だもん」
まあ、しかし、これからオリンピックまでが本当の勝負。
というところで伴監督は思いつく。
「粉川、立体大へくる話な、じっくり考えていいぞ」
「はあ?」
「オリンピックの柴田の戦いぶりを観てから決めてくれ。
柴田の柔道を見て、何かを感じたら、本気で立体大に来たくなるはずだしな」
そんな話をして、立体大の伴監督は東京に帰っていったのであった。
練習後、完全燃焼してバテバテのメンバー。
汗だくで畳に転がりながら、宮崎と桜子が巧に愚痴めいたことを言う。
「あーあ、巧じゃ進路が決まったか」「あたしら三バカトリオの中で、一人だけ抜け駆けかい!?」
そんな二人に巧はまだ決まったわけじゃないと言うが、
「行くしかないじゃん。アンタは頭で大学行けないんだから」
「ホントだよ、もっとありがたがれ!」
ごもっともな二人の意見に、巧は反論のしようもなかった。
実際、もう三年生なのだから、進路も決めていかなくてはならない。とりあえず杉は、
「早稲田と慶応をすべり止めにして、やっぱ本命は東大……かな」
などとほざく。本当に彼はそのぐらい頭が良かった。
「あ――っ、むかつく野郎だっ!」
斉藤もやはり柔道の強い学校に行くのかと麻理が尋ねる。
ところが、彼の返答は意外なものだった。
「オレは大学には行かないよ。就職だな」
浜高では二割の生徒が就職組。
兄弟も多く家が裕福とは言えない斉藤なら、それは当然の選択だった。
106 :
4/9:2009/05/21(木) 21:11:52 ID:???
「こんなこというの、子供っぽいかも知れないけど……
私、最近ずっと高校生でいられたらいいのにってよく思う」
保奈美が語る。そしてずっとみんな柔道部で、彼女はマネージャーをやるのだとか。
しかし、宮崎も桜子も賛同はしない。
「それはマネージャーの意見ですな。オレだったら、夏の大会終わったら、もう、遊ぶもん!」
「あたしなんか、足がこれ以上太くなる前にカタギに戻らなきゃ」
「それは既に手遅れだ」
言わなきゃいいのに、地雷を踏む杉。
「あーら、杉の奥サマきれいな足」
桜子に足を持ち上げられ、下の地面にひっくり返りそうになる。
「おっ、やめっ…あぶね――っ!」
騒ぎ合う仲間たち。
みんながこうしていられるのも……あと、わずかの時間……。
『さあいよいよ日本の柴田の登場です。
オリンピック柔道三日目、日本まだここまで金メダルはありません!
日本柔道の威信が今、この柴田の双肩にかかっています』
龍子先生の自宅に皆で集まり、そこのテレビでオリンピックの観戦。
麻理は惜しくも代表選考に漏れてしまったが、やはり知っている人が出場していると興奮する。
オリンピックとは本国のライバルを倒し、頂点に立った者同士の舞台。
まさに“選ばれし者”の戦場。その中のさらに頂点を競う決勝戦の幕が上がる。
画面の中の柴田が見事に内股を決め、この瞬間、日本勢初の金メダル獲得が成った。
『やりました、とうとうやってくれました!日本の柴田!
見事な一本勝ち、日本柔道の神髄を世界に見せてくれました――っ!』
107 :
5/9:2009/05/21(木) 21:13:06 ID:???
柴田の優勝に歓喜するメンバー。
「巧、この人がおまえの先輩になるんだな」「いや、まだ決まったわけじゃないけどさ」
以前に伴監督がやってきた際、柴田のオリンピックを観てどうするか決めて欲しいと言っていた。
そしてまさに今、彼の中には明確な感情が熱として芽生え始めていた。
(オリンピックか……!)
彼のその真っ直ぐな目を保奈美は横から眺めていた。
(巧くん……巧くんだったら本当にオリンピックを目指して、きっとこの先がんばっていくんだろうね)
そして、彼女の表情にもまた決意が宿る。
(巧くんは立体大に行く……私も早く決めなきゃ……)
そして、夏――。
最後の夏を、浜高は日本一になったチームとして、堂々と戦い続けた。
インターハイ県予選は、三年目にしてついに三工を降し優勝!
そして金鷲旗大会では再び千駄谷と決勝を争い、ここでは千駄谷が雪辱を果たし準優勝。
しかし、三度決勝を争ったインターハイでは、再び千駄谷を降し優勝した。
そしてインターハイ個人戦では、お互いに階級を中量級に上げた巧と鳶嶋が争い、
巧は鳶嶋を破って、ついに二人の高校時代の戦いに三勝二敗で決着をつけた。
これをもって浜高柔道部の巧たちの世代の戦いは、全て終わったのである。
108 :
6/9:2009/05/21(木) 21:14:24 ID:???
◎浜名湖高校柔道部 団体戦リザルト
○一年目 ・インターハイ 地区予選三位
・高校選手権 地区予選優勝
県予選優勝
全国大会一回戦負け
○二年目 ・インターハイ 県大会準優勝
全国大会ベストエイト
・高校選手権 県大会優勝
全国大会優勝
○三年目 ・金鷲旗大会 (オープン参加)準優勝
・インターハイ 県大会優勝
全国大会優勝
◎最後のインターハイの個人成績
・粉川 巧 中量級優勝
・斉藤浩司 軽中量級準優勝
・宮崎 茂 軽量級優勝
・三溝幸宏 重量級三位
・杉 清修 県予選三位
そして三年の春――卒業式。
滞りなく式も終わり、これで高校生活も最後。友人たちがそれぞれ別れを惜しむ。
「わたし卒業旅行オーストラリアいくのおおっ!」「いいわね。あたしなんて北海道なのにいいっ」
「えっ?おまえ車買ってもらったの?!」「のせろのせろ」
……まあ、それはそれで。
もともと就職希望だった斉藤も、インターハイの成績が良かったおかげで大学から誘いがきた。
奨学金制度も適用してもらい、これで彼も晴れて進学決定。喜びがあふれている。
やはり斉藤自身も柔道を続けたかったのである。
今日はこれからお別れの飲み会――のはずなのだが、
「いや、オレは行けないんだ。もう、これから東京に行かなくちゃならないんだ」
巧は不参加と聞いて仲安が驚く。だが、他のメンバーは既に承知していた。
「立体大の合宿だよ。今晩からもう寮にはいらなくちゃならんのだって」
「まったく、いつもおまえはそうだ。最後まで一人マイペースでよ」
皆に謝る巧。そこでタクシーに乗って母が迎えにきた。
「じゃあ行くわ。宮崎と斉藤とミッタンは、今度会う時はたぶん試合場になるんだろうな」
彼らの進学先はそれぞれ別の大学で、つまりは敵として再会することになるのだろう。
「保奈美、あんたは駅まで見送りに行きな」
桜子が親友の背中を押す。母にも頼まれて承知する彼女。
タクシーに乗り込んだ巧は、窓を開けて仲間たちに最後の言葉を贈る。
「杉、おまえ東大受かれよ!東京で会おうぜ!!
仲安、石野、来留間、また里帰りしたら、学校にカオ出すからな」
そして彼は最後に、桜子に声をかける。
「大学入っても柔道続けろよ。強いんだから、今やめるのもったいないぞ」
「!!まだわかんないよ、そんなの!」
110 :
8/9:2009/05/21(木) 21:18:05 ID:???
走り去っていくタクシー。それを見送ってから宮崎が愚痴る。
「…ったく。最後まで勝手なヤツ。オレら考えてみたらこの三年間、
あのマイペースに振りまわされてきたようなもんだぜ」
「でも、そのおかげでここまで強くなったようなもんだろ?」
斉藤にそう言われ、彼には返す言葉もなかった。
飲み会にさすがに学生服ではヤバイということで、いったん帰って着替えてくることに。
3時に駅前集合ということで話が決まる。
カラオケボックスにて最後の宴――先生の目もなく、アルコールもお咎めなしの無礼講。
そして――。
「おい起きろ。おまえん家のバス亭だぞ」
桜子を送っていくのは家の近い杉。
ところが泥酔状態の彼女は、座席で眠りこけたまま目を覚まさない。
「すみません降ります!しょうがねえな……」
とにかく彼女を背負ってバスから降りるが、杉は桜子の家までは知らない。
「おい、こら酔っぱらい!!おまえん家はどういきゃいいんだよ?」
ところが背中から聞こえてきた声は一言。
「バカ」
「なにを〜〜っ?」
111 :
9/9:2009/05/21(木) 21:19:14 ID:???
ここまで親切にしているのに、あまりといえばあまりな言葉。
さすがの杉もこれには怒るが――それは寝言。そしてまだ続きがあった。
「……巧くんの……柔道バカ……」
彼女の目から流れる涙。その瞬間、杉は彼女の思いを嫌でも理解してしまった。
「…………しょうがねーな…………」
「けどよ海老塚、おまえのすぐ近くにずっとおまえが好きだったヤツがいるんだけどな。いいかげん気づけよ……」
「ん……なに…なにか言った?」
「な、なんでもねーよ」
しかし桜子は、実は案外モテているのであった。
夜空に向かって呟くのは袴田豊。
「海老塚さん……」
そして食事中の藤田も不意に彼女のことを思い浮かべる。
(浜高のあの元気のいい方の女、エビヅカって言ったっけ…あいつ、進路どうなったのかな?)
>・杉 清修 県予選三位
泣けるな…
3位ってことは準決勝で当たってダメだったんだな・・・
唯一全国区でない人間が主将って浜高柔道部は謎の部だな
しかしマキャベリとか読んでるから変な高校生だと思っていたが
杉って頭良かったんだ
ミッタンも準決で大仏に当たったんだろうな
しかし斉藤を破ったヤツが気になる
杉学部はなんだろ・・・
斉藤は原あたりが相手と予想
日程は個人戦が先で団体戦が後だから
団体戦の実況でそれぞれ個人戦優勝・準優勝・3位って紹介されるんだろうな
そして、杉だけ何もつかない(´・ω・`)
対戦校からも、杉だけが安牌扱いされてそうだ……
正直桜子にぶっ飛んだわ
やっぱ最初は巧と桜子くっつける予定だったのかなー
>>118 二年のIHでは団体のほうが先じゃなかったっけか
121 :
マロン名無しさん:2009/05/21(木) 22:20:35 ID:jzC4EpCf
むしろ藤田にぶっ飛んだ
>>120 あれっ、そうだったっけ?
高校選手権では上述の順番だったから混同してたかも
団体で千駄谷に負ける→巧が個人で鳶嶋に負けるだったか
しかしこの駆け足は大学生編はじまるというより、終わり、だよな・・・
> ・宮崎 茂 軽量級優勝
推薦来るだろお前も多分w
ていうか杉以外は推薦で進学余裕だろ
>>125 愚痴を言ってる時は3年のIH前でその結果は出てないんじゃないかな?
まぁ、それを除いても、2年のIH個人3位で選手権優勝時のレギュラーなのだから推薦が来るとは考えないのかよって思うので
>推薦来るだろお前も多分w
ってのは同意w
藤田はともかく袴田……
お前まだ桜子の事好きだったんだな
いい加減あきらめた方がいいぞ
大学編でみんな疎遠になっちゃうより、綺麗に終わって欲しいよ
何かしんみりするな。もうすぐ終わりか。
唐突に五輪意識しだしたから五輪の舞台で巧活躍で終わりなのかも。
そういや杉って中量級のままだったんだろうか。だとすると巧・藤田と・・・
>>130 3年間ずっと同じ階級ってこともあるまい、と言うかそれぐらいの相手以外には負けて欲しくないと言うか
あの巨漢の原がわざわざ斎藤と戦う為に軽中量級まで体重落としたってのかw
それなんて力石
134 :
1/9:2009/05/22(金) 21:01:01 ID:???
三か月後に迫ったオリンピックの女子柔道日本代表が今日、決定したというニュースが流れる。
テレビ画面の中には、女子柔道界のアイドル・マリちゃんとして注目を浴びる、来留間麻理の姿があった。
「海老塚さ――ん!海老塚さ――ん!」
別所さんが入浴中の友人に声をかける。
(※別所愛子・東都女子大四年)
「な――に――っ?」
「麻理ちゃんと薩川さんがニュースに出てますよ―!」
「えっ?ホント?」
今日、五輪代表の最終選考となる女子体重別選手権が東京の代々木で行われ、
麻理はこの試合で堂々三連覇を成し遂げ、四年前には手に入らなかった五輪への切符を獲得したのである。
(※海老塚桜子・同じく東都女子大四年)
湯上りでタオルを巻いた桜子の前には缶ビールが並べられる。
「海老塚さんもおしかったのになあ」「ゆうな、過去のことは」
桜子もまた58kg級で全国ベスト8にまで勝ち進み、
あと二人勝てばもしかしたら――というところまで行っていたのだそうな。
「いや――これが限界だよ。我が女子大始まって以来の全国大会ベスト8だって、先生もほめてくれたじゃん。
さあて今度こそ、私にとっての学生柔道は終わりだぜ」
彼女にとっては高校二年で嫌々始めた柔道。それも卒業までのつもりだったのだが、
「今やめてはもったいない」という誰かの言葉で結局、大学でも続けていたのであった。
画面の中では麻理が生番組に出演中。彼女も大学三年生、20歳になった。
質問の受け答えにも慣れ、立派になった後輩の姿に、桜子は嬉しげな表情を見せる。
麻理の今後の予定は五輪前の強化合宿。だがそのまえに、全日本選手権を見に行くのだという。
それは男子の先輩の応援。つまり彼女と同じ立体大の巧の応援に行くということである。
135 :
2/9:2009/05/22(金) 21:02:03 ID:???
今回、男子78kg級の代表争いは三つ巴の戦いになっており、
一人は前回の五輪金メダリスト・柴田辰徳。
一人は立川体育大四年・粉川 巧
そしてもう一人、明政大四年・藤田恵の名が挙がっていた。
今のところ、実績的な面で柴田が一歩リードしているものの、三者の実力は伯仲。
ここで自分たちの存在をアピールするために、巧と藤田の二人がなんと、
体重無差別の全日本選手権に挑戦するという行動に出て、話題になっているのである。
全日本選手権は日本人の柔道家なら、オリンピックの金メダル以上に欲しいと願うタイトルかも知れない。
年に一度、日本一強い柔道家を決める大会である。
ロス五輪、ソウル五輪で二度金メダルを獲った斉藤仁ですら、山下泰裕の全盛期とぶつかり、
一度しか獲れなかったという、それほど厳しいタイトルなのだ。
(巧くん、全日本に挑戦すんの?マジかよ――78kg級で通用するのかなあ?)
桜子の心配ももっともで、体重無差別とはいっても、
出場選手のほとんどは100kgを超える選手ばかりなのだ。
『うーん、でも私は巧先輩ならもしかしてやってくれるかも知れないと思ってますよ』
などと大きく出た麻理。しかしそこで番組司会から話を振られる。
『こちらが入手した情報によりますと、粉川選手とマリちゃんは、普段から兄妹のように仲がよろしいとか』
『ええっ?』『あら、これは聞き捨てならない』
それが事実なら“柔道界のアイドル・マリちゃんに初めての恋の噂”ということで、
本当のところはどうなのかと突っ込まれる。
慌てた麻理は――、
『粉川先輩は尊敬してるだけです!
第一……粉川先輩には近藤保奈美さんという、昔っからの恋人さんがいるんですよ!』
全国ネットで巧のプライベートを大暴露してしまう。
観ていた桜子は思わず飲みかけのビールを盛大に噴き出すのであった。
136 :
3/9:2009/05/22(金) 21:03:09 ID:???
最終話 道
「おい見たか昨日のニュース!それに今朝のスポーツ新聞でも出てるぜ、巧のことがっ!」
(※杉 清修・東京大学三年〈一浪〉)
情報の周りは早かった。杉はかつての仲間たちに連絡を取る。
「あ――見た見た、笑わせてもらった。相変わらず来留間らしいぜ」
(※宮崎 茂・明政大学四年)
「しかし、変なことで巧は注目を集めちまったよな。五輪代表選考の大事な時期だというのに」
(※三溝幸宏・天味大学四年)
とにかく、全日本の当日には東京へ集合。宮崎は明政大の選手も出るので当然快諾。
「ミッタン来るか?全日本」「あのなー、オレも出場選手なの、一応!」
「えっ、そうなの?」「ちゃんと関西の予選で勝ち上がったんだぞ。『柔道日本』にも載ったのに……」
電話を終えて受話器を置いた三溝に、橘が話しかける。
彼は今度の全日本選手権が、このために妙な盛り上がりになってしまわないか危惧していた。
「しかし、粉川も出場するならライバルの一人だ。オレだって今回の全日本は凄く欲しいっ!」
そういう橘に、三溝も負けずに返す。
「重量級もまだ五輪代表が正式に決まったワケじゃないからな。
でも、それをいうならオレにもまだチャンスがないわけじゃないぞ」
並ぶと寮の廊下が狭くなるほどの二人。天味大が誇る超重量級コンビである。
137 :
4/9:2009/05/22(金) 21:04:09 ID:???
「こらあ宮崎、いつまで新聞読んでんだあ!?そろそろ道場に行く時間だぞ!」
(※玉城一史・明政大大学院)
先輩である玉城に怒鳴られる宮崎。
自分も五月の体重別に出るのだからしっかりしろ、と叱られる。
道場に入った玉城は、その光景に足を止めた。
「見ろ、ヤツを……全日本という目前のでっかい獲物を前にして、ボルテージ上がりっぱなしだ」
そこにあったのは鏡の前でたった一人、気迫のこもった練習を続ける藤田の姿。
(※藤田 恵・明政大四年)
宮崎も彼のその様子に冷や汗を浮かべる。
(すげえ汗だ。鏡の前で一人打ち込みを相当続けてたようだな。
巧よ、今度の藤田はいつも以上に手強いかも知れんぜ)
寮の自室でスポーツ新聞を開き、唸っているのは鳶嶋である。
(※全日本には出場しなかった 鳶嶋雅隆・日の本大四年)
そんな彼の様子に声をかける斉藤。
(※高三の夏の大会のあと推薦が決まって日の本大学に進学 斉藤浩司・日の本大四年)
「斉藤、これは本当なのか?粉川に彼女がいるっていう……」
「近藤さんかい。本当だよ」「ふ――ん」
斉藤が部屋を出て行ったあと、鳶嶋はおもむろに机の引き出しを開ける。
そこには麻理から貰ったサイン色紙が入っていた。
(そ――か。ウワサは単なるウワサだったのか。粉川には別の彼女がいたのか)
そして彼は頬を赤らめるのであった。
138 :
5/9:2009/05/22(金) 21:05:54 ID:???
「おい、言っとくけどな」「わっ!」
「来留間は仲安ってヤツとつきあってんだよ」「ええっ!」
いつのまにやら戻ってきていた斉藤に突き付けられた衝撃の事実。
そして――。
「おらあっ、どーしたあ!気合入れろおっ、コラッ!」
翌日の道場には、涙を流し、半ばヤケッパチ気味に練習に打ち込む鳶嶋の姿があった。
「気合い入ってんな――鳶嶋さん」「あいつも五輪代表候補だからな」
(鳶嶋、そこまで……)
「おい粉川――っ!それに来留間――っ!」
立体大の道場に怒鳴りこんできた柴田。
そこには奥野、長谷、仲安、下津田といった後輩たちの姿があった。
「あっ、柴田さん」「オッス!」「巧さんならいませんが……」
「なに――っ!」
「来留間はいます」「こらあ来留間!」
口の軽さで問題を起こした麻理を柴田が怒る。
涙目で縮こまる麻理。
二十歳の女性とは思えないその仕草に、さすがの柴田もそれ以上強くは言えなかったが――実はそれは擬態。
自分の武器を理解してしたたかになった彼女は、怒りの矛先が逸れたと見てほくそ笑むのであった。
さて、それでは巧の方はどこに行ったのか。
「巧さんなら、ここんとこ午前中はランニングとかのトレーニングに……
皇居の北の丸公園までわざわざ出かけてやってますけど」
139 :
6/9:2009/05/22(金) 21:06:55 ID:???
その頃、巧は武道館の入り口前の階段に腰を下ろし、保奈美からの手紙を開いていた。
『巧くんお元気ですか、全日本選手権に出るんだって?
マリちゃんからの手紙で知りました。78kg級の五輪代表選考は大変なことになってるのね』
保奈美は現在、通訳を目指してヨーロッパに語学留学に行っているらしい。
それも、巧が世界を相手に活躍する時に、役に立ちたいからという理由で。
巧専門の通訳。その話を仲安から聞かされた柴田は驚き呆れていた。
『でも、体重無差別の全日本にチャレンジするなんて、やっぱり巧くんはすごいな。
私が想像していたより、どんどん大きくなっていくね』
それにしても通訳とは。保奈美のその選択は、
巧が必ず世界に出ていく器だと信じていなければとてもできないことだった。
『でも、そんな巧くんにいつもおいてけぼりをくうのはイヤだから、私もがんばろうって思うの。
私は私なりのスピードでいいから、少しずつ巧くんの後をついていくの』
巧は公園の芝生の上でトレーニングを続けながら、保奈美への返事を心の中で書いていた。
(保奈美、オレはそんなに先へ先へと行ってるつもりはないぜ。
オレから見れば、保奈美のほうがどんどん大人になっていくように思える)
(みんなもそうさ。会う度に成長していてびっくりするんだ。
みんな、浜高を卒業してそれぞれの行った場所でがんばってんだなあって)
140 :
7/9:2009/05/22(金) 21:08:09 ID:???
そして――全日本柔道選手権大会、当日。
開会式に整列する巧は、周囲を見回す。
(いるいる)
同じく並ぶ選手の中に三溝の姿が。
(柔道場の横にも)
日の本大の選手を応援にきた斉藤、鳶嶋、御厨。
明政大の選手を応援にきた宮崎、平八郎、玉城。
(観客席にも)
杉、桜子、麻理、別所さん。
石塚、袴田さん、永田、薩川さん、松原さんまで。
(ここに来れば、また会えるヤツらばっかりだ)
そして後ろには――藤田。
(よしっ!いくぞっ!)
「そろそろ、始まっている頃かなあ」
誰もいない浜名湖高校の柔道に並んで立つ、西久保さんと龍子先生。
「巧と三溝が全日本選手権にでるとはねえ……。
しかも巧は、藤田くんと五輪代表をかけて戦うなんて……」
「でも、こうして誰もいない道場にいると……。
なんか今にもあの戸を開けて、巧くんや海老塚さんがくるような……」
141 :
8/9:2009/05/22(金) 21:09:11 ID:???
そのとき。
龍子先生の言葉が現実になったかのように道場の戸が開く。
「ちい――っス、西久保コーチ!」「あれェ?奥さんと二人だけだあ!何してたんスかあ!?」
入ってきたのは二人の今の教え子たち。
「なーにが奥さんだ、コラ。学校じゃ龍子先生だろ!
今日は先輩達が出る全日本を見るからな、早めに練習切り上げるから集中してやるぞ!」
「オ――ッス!」
そこには巧たちが作り上げた柔道部の空気が今もなお残り、続いているのであった。
『おおっ!背負った――っ!140kg!!』
『でました、粉川とくいの背負い投げ!!』
全日本選手権、準決勝戦。
ここまで勝ち上がってきた巧の相手は、なんと三溝。
巧の背負いによりポイントは有効。
「くそっ!!巧ぃ!!」
物凄い形相で立ち上がる三溝。
奇しくも高校時代のチームメイト同士の対決となったこの試合は、
重量級の三溝が78kg級の巧に苦戦を強いられるという展開になった。
その頃――成田空港に一人の女性が降り立つ。
彼女はタクシーに乗り込み、日本武道館まで急ぐよう運転手に頼むのだった。
準決勝第二試合。
注目の藤田と橘の戦いは、両者ポイント無しのまま、旗判定にまでもつれ込んだ。
副審の旗は赤白わかれて、主審の手は藤田に。
78kg級の藤田が重量級のホープ、橘を僅差で降した。
142 :
9/9:2009/05/22(金) 21:10:16 ID:???
『誰がこんなことを予想しえたでしょう!昭和47年以来、20数年ぶりの事態!
両者重量級以外の階級の決勝戦が、今、始まらんとしています!』
『歴史を変えたのはこの二人』
『78kg級、粉川 巧!』
「よく生き残って来たなっ!オレに倒されるために!」
『同じく78kg級、 藤田 恵!』
「こっちのセリフだ!バカが!」
『何かお互いに呟いています!』
どちらか、この戦いの勝者が五輪代表の座に近づくのは必至というこの大一番。
それを省いてもあまりある、大きな意義のあるこの一戦。
だというのに、試合場に立つ二人のやりとりは、昔と何ら変わりのないものだった。
『まさに順道制勝を体現してみせた!二人の選手!はたして勝つのはどちらなのかっ!』
そのとき、杉が、桜子が、斉藤が、宮崎が、三溝が気づく。
この一戦のためにはるばるヨーロッパから戻ってきた彼女の姿に。
試合に間に合わせるために急いできたのだろう。
頬を上気させ、汗を浮かべた保奈美――彼女の声が響く。
「巧くんっ!がんばれっ!」
「いくぞ!!」
「こいっ!!」
――帯をギュッとね!・完――
143 :
業務連絡:2009/05/22(金) 21:12:57 ID:???
次回は単行本30巻のおまけを紹介します。
ミッタンが橘相手に偉そうな口叩いてる!
と思ったらやっぱりかませご苦労様です
トビーキャラ変わったな・・・w
あれだけ好みじゃない言ってたチャーリーと付き合うなんて…
しかもあまつさえ同じ3D大学生だと!?
よもや大学行く代わりにチャーリーも入学させろとか言ったんじゃないだろうな
>>146 福岡国際のラストを思い出すんだ
あの二人はあの時点から付き合っている
そしてそのうちに突きあっている
はぁー…
これじゃ
>>41のほうがまだマシだったかも
鳶嶋カワイソウw
せめて巧対橘、藤田対三溝にしてほしかったのう。
最後にキャラ崩壊してるな、鳶嶋。マリちゃんとはマニアックな
別所さんの発言を見ると大学ではエビの方が強かったのかね?
>>150 それだと藤田が橘にリベンジ出来ないじゃないか
藤田78kg級って、奴にいったい何があったんだ……?
大学編やってほしかったなー
斉藤と鳶嶋がチームメイトとか結構燃える
そして桜子・・・なにげに一途だな・・・
4年も経つのにまださん付けなのか、別所さんは・・・
それにしても大学の面子構成がなかなかいいw
斉藤と別所さんの関係ってどうなってるんだろ?
ちゃんと進展してるのかね?
杉は学部なんなんだろ
桜子はまだ処女か
杉のヤロー嫁にもらってやれよ
しっかし、3年間ずーっと親友の恋人に片思いしてて、
そいつの言葉で結局柔道まで続けてるって、桜子って恋愛方面では危ないな
巧が女にだらしなかったらズルズル愛人の座に納まっちまいそうだ
まあ巧に限ってそれはないだろう
爽やか柔道馬鹿の正統派主人公だし
巧がそんな奴だったら桜子もとっととすっぱり諦められて幸せだったかもしれないのにな
巧がそういうヤツだったら
別所さんと桜子を愛人に…w
巧に関してはカンのいい保奈美が
なぜ桜子の思いに気付いてなかったのか?
それも毎日一緒にいるくらいの親友なのに
……もしや気付いた上で黙っていたとか
挙句、気付いた上でいちゃついていたとか
○単行本第30巻 (表紙:全員集合 裏表紙:巧・保奈美)
・四コマその1『最終話にはかかれてなかった あの人のその後』
1.○袴田さんと石塚くん
同じ大学にはいって袴田さんは女子柔道でちょっと活躍。
卒業したあと半年後、結婚。共働き。
2.○袴田豊
結局、桜子にはフラれたようで失意の高校生活をすごしたが、
大学にいった後はモテたようだ。
3.○平八郎 佐野
大学で柔道を元気に続けている。
○黒柳
相撲界入り。
4.○永田賢
芸能界デビュー。結構人気でる。
ひさしぶりに会った桜子に抱きついたところをフォーカスされたりもしてる。
・四コマその2
1.○来留間先輩
何と大学を中退してしまい地元の会社に就職。
しかし、その会社の野球チームにはいったら、社会人野球で大活躍したため、
プロのスカウトの目に止まりドラフト5位で中日に入団。
今は二軍だが正捕手中村の後釜をひそかに狙っている。
2.○原田くん
挑戦8回めにして、プロテストに合格!これからである。(※美人の彼女)
3.○ドミニク・ミリアン
帯ギュの世界には田村亮子がいないためオリンピックで優勝。
しかし後の世界選手権では、ついに出てきた来留間麻理に負ける。
次のオリンピックには出場権を得たため、今度こそ麻理に勝つと燃えている。
4.○乙淵ふね
いったんは柔道で有名になるのをあきらめ、いろんなオーディションを受けるがことごとく落ちる。
結局、柔道を続けるが薩川佐代子になかなか勝てないため、56kg級に上げようかどうかまよっている。
「ちくしょーエビヅカのヤツ、ろくに努力もせずに本にのりやがってー」
・・・桜子はなし崩し的に永田と結婚するような気がしてきたぜ俺・・・w
原田君オメ
赤石ってかませのイメージだったんだが、作者には愛されてたんだな
ここでふっちんが出てくるとは思わんかったw
来留間先輩は最後までなにがやりたいのか分からないキャラだな
そこがいいんだけど
先輩は逆ドカベンだったけど、結局ドカベン化しやがった
連載お疲れ様でした。大好きな作品だったし丁寧だったので超楽しかったです。
橘・斎藤戦と鳶嶋・粉川戦はやっぱりって感じになったな・・・
>>166 永田はキレるとあぶない変態だけど、悪い奴ではないからいいんじゃないか
まぁ、桜子にピッタリなのは杉か宮崎だと思うけどな
原田くんって思い出せん…
原田くんはダンナでしょ、ゴルフ部で巧に開始早々一本勝ちした人
あらすじさん、長い間お疲れ様でした。
あまりレスはしなかったけど毎日楽しみにしてました。
あぁ、ダンナかw
プロテストの原田でろくブルの原田成吉しか思い浮かばなかった
楽屋裏か・・・
規制されてない時以外はなるべくレスつけたけど、規制多かったなあトホホ。
福岡国際あたりなんも書けんかったぜ!
あらすじさんお疲れ様ッス。
あらすじの人、いままで乙
>178
俺も結構規制で書けない時があった
そんな時に限って、自分の好きな回だったりするし
>規制されてない時以外はなるべくレスつけたけど
微妙に難しいな
あらすじさんも現在規制中なんだね、残念
あらすじさん、代理の人もお疲れ様でした
フネって、描写されてる限り袴田、マリ、薩川くらいにしか負けてないよね?
本気で56kg級にあげたら、案外いいとこいくかも。
自分的にはブルマ柔道着の回に書き込めただけで満足
このスレ読むのが寝る前の日課になってたから終わっちまったのがちと寂しいな...
せめてあらすじさんが規制解除されるまでは保守
あらすじさんとあらすじ代理さんの関係はどういう関係だったのか気になる
代理は避難所のレスに一番早く気付く人間だったというだけのことです
帯ギュは読んだことがないので参加できなかったのが残念です
面白そうだから読みたかったけど読む余裕がなかった…
あらすじさんはまだ規制解除されないのかな
長い間お疲れ様でした
>>186 読んだこと無いのかwww
驚愕の事実www
サーセンww
暇ができたらここの過去ログ読みつつ楽しむことにしますw
ドラマ板に落ちてて詳細未定だけど、とめはね関連でエキストラ募集してたんで
とめはねはドラマ化みたいだね
>>192 俺は、まあいっかーと思った。主役の女の子が可愛かったし
>>193 もちろん主役の男の子はガチャピンだよな?
えっ、遠藤選手がやるんですか?
縁ちゃんのコロコロPK、テラ見タス
考えてみるとNHKでガチャピンってニックネームは大丈夫なのかな?
ほ
し
ひ
ゅ
う
ま
ゅ打った俺もアレだけど完成さすなよ!w
ひを打ったのは俺だ
まさか完成するとは…
ゅ打とうかと思ったけど、自信が無くて打ちきれなかった小心者の俺が通りますよっと
ついに終了かな
うむ
し
ば
た
た
つ
の
り
金
メ
ダ
ル
お
め
で
と
う
!
228 :
マロン名無しさん:2009/07/04(土) 15:11:40 ID:QWQbRvPk
ほしゅ
とうしゅ
いちるいしゅ
にるいしゅ
さんるいしゅ
よんるいしゅ
ごるいしゅ
ろくるいしゅ
ななるいしゅ
はちるいしゅ