ネギま!×好きな作品クロス小説スレ6時間目

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1マロン名無しさん
ネギま!と他作品をSSを作るスレです。以下のルールを守ってより良いスレを作りましょう!

1.基本的にはsage進行。落ちそうになったらたまにはageて
2.荒し、煽りは徹底スルー。反応する人も同じです
3.他作品なら何でもコラボあり(ゲーム、映画、ドラマ等)但し全年齢板なのでアダルト作品はご遠慮ください
4.オリキャラは基本的には禁止ですが、物語の都合上やむ得ない場合は事前に知らせてください
5.職人(小説、SSの書き手さんの事)への催促はやめましょう。職人さんにも個人的な都合があります
6.指摘と中傷は別物。指摘歓迎、中傷不愉快
7.なにか質問があればまとめサイトのコメント欄に
次スレは>>980踏んだ人。もしくは容量が480KBになった時

前スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1217595809/1-100

まとめサイト
http://www16.atwiki.jp/amaterasu/pages/6.html

ネタはあっても文章が書けないという人、気にせずに投下してください。腕は書いていくうちに上がるもの。
無限の組み合わせを考えるの皆様です。それでは夢のコラボ世界へどうぞ…。
2マロン名無しさん:2008/09/01(月) 19:52:26 ID:???
乙2ゲト

ドラ作者が土曜に投下してたけど、圧縮でもあったのか?
3マロン名無しさん:2008/09/02(火) 00:34:09 ID:???
>>1
4マロン名無しさん:2008/09/04(木) 17:22:26 ID:???
このスレ何人ぐらい人居るんだろう
5名無しさん:2008/09/05(金) 12:39:52 ID:???
「ネギま!」と「ドクター秩父山」の田中圭一先生の最低漫画シリーズを合体させてください。
6Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/06(土) 05:09:17 ID:???
また落ちるのが怖い……
ということで分割して投下します。


私の文章が稚拙なもので、少々勘違いをさせてしまい申し訳ございませんでした。
言い訳をさせていただくなら、

リポートの最後に和美があの台詞を言った。

それにより、ピーターの台詞がかぶり、彼の口調を思い出した、という展開となっております。
紛らわしい文章で書いてしまい、申し訳ございませんでした。
あとで書き直すんで、許してください{汗

>>のび太のin麻帆良祭り

ちょwwwww静香ちゃんのバイオリンwwww騒音兵器ですなwwwww
7Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/06(土) 05:10:24 ID:???
マイケルは、2−Aの担任である。
それに対し、マイケルの主な仕事は、2−Aの教師ではなくどちらかといえば警備員隊長のほうが多い。
これは、マイケル自身の能力の問題であった。
教師となる上で必要なのは、勉学が優れていることだけではなく、いかに人に教えることが重要となる。
マイケルはその点では教師には向いていなかった。
まあ、元々彼が担任になったのは、ネギの代役、ある意味では代わりのようなものなのだから。
ましては、当の本人が元軍人で戦闘を得意としているなら、そりゃあおのずと警備の仕事が多くなるのは当たり前となる。
そういうわけで、開始数日となればネギが担任の仕事をしてマイケルが外回りでうろつくのが2−Aの当たり前の風景となっていた。


余談だが、なぜ新入りである彼が警備員から飛び越して警備隊「隊長」になったかとかといえば、今度新設される事になった隊長の候補が病院でミイラ男に成り果ててしまっ

たからである。


兎に角、彼は現在は警備員であり、その仕事の内一つとして、生徒たちの朝の通学を見張る必要があった。
生徒の通学といえど侮るなかれ、この巨大な学園に通う全ての学生、いや都市に住む大半の住人が、同じ時間帯この大通りを通るのである。
その数は5〜60人では済まされない。
比較的幅の広いはずの両脇の歩道は生徒たちでいっぱいになり、路面電車はすでに定員を大幅にオーバーするのは当たり前。
自動車が走る車道である中央道路にも人の波ができるほどである。
8Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/06(土) 05:11:16 ID:???
が、これでもまだまだ序の口。
これが始業ベルが鳴る10分前、つまり遅れれば遅刻扱いになる時間帯と鳴るともう収集がつかなくなるぐらいの規模になる。

正直言って、これまで大規模な事故が起こらなかったのはは奇跡に近いだろう、とマイケル本人も思うぐらいである。

マイケルは、そんな「大規模な事故」がいつ起こらないように監視するのが、朝の警備員としての役目である。
具体的に言えば、通路に突っ立って通学する生徒を監視することだ。
簡単な行動だが、長期間の立ち仕事なので、なかなか辛いものがある。
しかも朝早くから警備しなくてはならないが、マイケルは元々早起きなうえ、身体も鍛えていたためこれ以上ない適役であるのだ。


「あ、マイケルさん、おはようございます!」

「OH!ヘロー!ボーイズ!」

そして、マイケルはそんな通学生徒たちの注目の的でもあった。

任務に当初は明らかに警戒されていた節があったが、その人柄のためかすぐに打ち解けることができた。
また、ここは工学部のロボットがたまに試験運転として学園をうろつきまわることもあり、その内の一つだと思われたのだろう。
生徒たちはマイケルに対して興味こそもつが、恐怖といったような感情は持つことはなかった。
9Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/06(土) 05:14:14 ID:???
Metal Wolf Chaos in Mahora 媚薬の匂いはバラの香り!! 大作戦!

御武運を!大統領!



「では、一時間目を始める!まずは……ウム、英語か」

さて、今日はマイケルがめずらしく朝から教室にいた。
なぜなら、一時間目が彼の受け持つ授業だからだ。
英語の教科はマイケルができる数少ない授業の一つである。
ネギもイギリス人だが、なにせマイケルはネイティヴアメリカン。
おまけに日本語、フランス語、ドイツ語等いろいろな言語を難なくこなすことができるのだ。
そういった点ではネギよりもマイケルのほうが教師としては向いているのである。

「The fall of Jason the flower.
Spring came……では、以下の文を訳してもらおうか。
 では……」

マイケルが教科書から視線を教室へとあげる、と皆が一斉にあっちの方角を向く。
マイケルと誰も目をあわせようとしない。
こういった所はアメリカとはやはり違うものだ、とマイケルが内心ため息をつきながら、問題を答える生贄を探していると。
10Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/06(土) 05:16:13 ID:???
「……………」

いた。
この前ずいぶんとお世話になった(パイパン的な意味で)明日菜である。
皆と同じように明らかに首を90度ほど回転させて、目を極力合わせないようにしているのだが……。

(カグラザカ、さりげなさを装いたいのはわかるが、明らかに目立っているぞ)

明日菜の左手で回転しているペンは、すでに回転数を二ケタに数えている。
本人は気づいていないのだろうが、とっくにギネスを越えている辺りだ。


「では、ペン回しの達人である、カグラザカに頼もうか」

「−−−−−−ッ!?」
11Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/06(土) 07:22:20 ID:???
規制に引っかかった……ようやく解除。

これからは、一話を分割して投下したいと思います。
長々と待たせては申しわけない……と思いまして{汗

あと、全角ダッシュ―のいい打ち方知っている人いませんか?
自分じゃ…できない{涙
12ドラネギ作者 ◆t69vA8A38s :2008/09/08(月) 15:12:31 ID:???
大統領乙です。
それから我が新作への初レスありがとうですw

打ててはいるみたいなのでいい打ち方と言う意味やそちらのPCか携帯の
仕様はよく分かりませんが、
>>10の最終行を書くとしたらと言う意味でしたら、
「だっしゅ」を変換するか記号一覧で―を出して
6つ横に並べてやれば――――――投下後一本線に見えると思いますが。

では、今回の投下入ります。

お久しぶりで前スレ落ちたので作品解説から、

恒例の大冒険を終えたドラえもん一行は事故で不時着した
タイム・パトロールのタイムマシンに遭遇
搭乗していた隊員はドラえもん達に「まほらがくえん、ちゃおりんしぇん」
とのみ言い残しタイムマシンの暴走に呑み込まれる。

超鈴音が麻帆良学園3‐Aである事を知った大長編五人組のドラ・パーティーは
確認のために学園祭前日の麻帆良学園都市を訪れるが、行き違いから、
得体の知れない術を使うあるいは超一味と思われたドラ・パーティーを
確実に確保しようと動き出した魔法教師と
魔法としか思えない超能力を使う集団に狙われていると警戒したドラ・パーティーが
一進一退の攻防戦を展開する。
13のび太のin麻帆良祭:2008/09/08(月) 15:13:53 ID:???
>>12

学園祭一日目、自分達の身の安全を取り戻すためにもドラ・パーティーは
唯一の手がかりである超鈴音を探すため
動物ごっこぼうしと武器入り探検ごっこセットを装着して学園祭に潜入。
余りの混雑に3‐A凸を諦めた一同は手分けして探索を開始、
のび太はギャラクシー・ウォーでゆーな☆キッドとのコンビで高得点をマークし、
しずかは超鈴音には会えなかったものの、途中まで案内してくれた
早乙女ハルナと宮崎のどか、居合わせた長谷川千雨に、
たまたま残されていたバイオリンで生演奏を披露する。

では、本編再開です。

>>83(前スレ)

時計の針を少し逆回転させる。
「しずかちゃーん」
「なーにスネ夫さん」
図書館島の一角で、糸なし糸電話型トランシーバーで呼び出されたしずかがスネ夫に言った。
「ほら、これ」
「?」
スネ夫がしずかにチラシを見せる。
「コスプレコンテスト?」
「非公認イベントだけど、結構レベル高いらしいよ。ジャーン」
「それって」
「着せかえカメラー、さっきドラえもんに借りて来たんだ。
それにほら、即興だけどデザインも出来てるし、ちょっと参加してみようよ」
「えー、でもー」
「ほら、非公認だけど結構知る人ぞ知るコンテストみたいだから
何か手がかりあるかも知れないしさ、ね、ね」
14のび太のin麻帆良祭:2008/09/08(月) 15:14:59 ID:???
>>13
「んー、もー…」
と、言いながら割合満更でもなさそうなしずかを伴い、
スネ夫は参加者達の人混みの中に入って行った。
「ここって本当は図書館なのよね」
「なんか、ちょっとした本棚の迷路だね。あそこなんていいかな?」
二人が適当な物陰に入る。着替えが簡単であると言うこの立地条件が
ここでの開催の利点と言えた。
「これ、最新式なんだって、一括装填連続撮影データ保存編集ありの。
じゃ、いくよー」
「…きゃあああっ!」
平成の戦隊シリーズ悪女を思わせる強烈なデザインに、しずかが悲鳴を上げて体を抱いた。
「え?駄目?いいと思うんだけどなー…じゃあこれ」
次のデザインは、特撮の隊員服を思わせるものだった。
「うん、これなら…」
「でもちょっと地味かなー、後二枚デザイン残ってるからそれ試して…」
「あーっ!」
素っ頓狂な声に二人がそちらを見ると、中学生くらいの少女が二人を指さしていた。
「何ですの、騒々しい」
「わあ、美人」
その後ろから現れた背の高い超の付くくらいスマートだけど出る所はバッチリ出ている
金髪少女の登場にスネ夫が思わず呟いた。
「いいんちょあれあれ凄いんだよー♪何今のなにー?手品ー?」
「えー、あー、CGです」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら近づいて来るまき絵にスネ夫が言った。
「ふーん、すごいんだねー♪それで作るのー?」
まき絵が無邪気そのものの口調でカメラを見た。
“…こっちも可愛い、ちょっとバカっぽいけど…”
「え、ええ、試して見ますか?」
強烈なポジティブ・パワーに押されたスネ夫がそう言ってシャッターを切った。
15のび太のin麻帆良祭:2008/09/08(月) 15:16:10 ID:???
>>14
「すごーいすごーいすごーい♪いいんちょいいんちょー」
気が付いた時には、首から下戦隊ピンク姿のまき絵にカメラを取り上げられていた。
「うーんと、こうだよねー」
「あっ、ちょっ…」
「あらあら、最近のCGはよく出来てますわね♪」
清楚な中に威厳すら感じさせるプリンセス・アヤカがほほほと笑った。
「おーい、何やってんだー」
「あー、千雨ちゃーん♪千雨ちゃんも撮ったげるー」
カシャッ

「はぁ、はぁ、はぁ、ぜー、ぜー…」
阿鼻叫喚の修羅場の中、
何とか着せかえカメラのリセットを発動させてダッシュで逃走したスネ夫が
壁に手を着いて息をつく。
「ここ、どこ?」
「地下みたいだね」
スネ夫が周囲を見回してしずかに言った。
「地下までずっと図書館なのね」
「図書館島って言うぐらいだかね。えーと、休憩所だって」
簡単な休憩所でスネ夫がどさっとソファーに掛けた。
「ああ、何か飲む?さっき自動販売機あったけど」
「うん、何か冷たいの」
「分かった」
立ち上がったスネ夫が近くの自販機に足を運ぶ。
少し待っていたしずかが立ち上がってそちらに足を向ける。
「きゃー!誰かぁーっ!!」
16のび太のin麻帆良祭:2008/09/08(月) 15:17:23 ID:???
>>15

カレイジュースと書かれたパックがくずかごに捨てられ、
その傍らで真っ青な顔で泡を吹いて痙攣していたスネ夫が担架に乗せられ運ばれていく。
「いやー、あそこ注意書きなかったんだねー」
救護所で、しずかの叫びに駆け付けたハルナが言った。
「ここってさー、結構マニア向けの珍味売ってたりするんだわ。
あの子もすぐに気が付くと思うけどごめんごめん」
無責任な話ではあるが、隣でごめんなさいごめんなさいと頭を下げるのどか共々、
しずかから見て余り悪い人達には見えなかった。
「でもまあ、確かに立入許可区域ではあるけど、珍しいね。
小学生でしょ?あそこで何か探し物?」
「ええ…ちょっと、あの、超鈴音さんの事を」
「何?超りん?」
「ええ、凄い中学生の経営者がいるって聞いて、
興味があってこの学園祭の機会に何か分からないかなって」
「超りんならうちらのクラスだけど。何なら会ってく?
超りん忙しいから保障は出来ないけど私たちこれからちょっと時間空くし」
ハルナが言い、隣でのどかが笑って頷いた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
17マロン名無しさん:2008/09/09(火) 22:58:00 ID:???
W復活age
18マロン名無しさん:2008/09/12(金) 14:05:06 ID:???
保守
19マロン名無しさん:2008/09/13(土) 01:34:30 ID:???
ho
20Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/13(土) 17:50:50 ID:???
ドラネギの作者様、乙です。

>>12
いや、そういう方法があったとは……返答ありがとうございます。
我ながら情報科にいるというのに…なさけない(涙

おお、では投下します。
21Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/13(土) 17:52:48 ID:???
「はあ〜〜〜〜〜〜〜…………」

授業も終わり、休み時間になると中庭では生徒たちがまとまって談笑しているのがちらほらと見える。
そんな中、授業を終えたネギは一人広場の噴水に腰掛け、おおよそ少年が出すにはふさわしくない重いため息をはいていた。
後ろにはこれまた場に似合いそうな暗いオーラを背負っている。
具体的にいうなら「ズーン」だ。縦線付きの。

「……あら? ネギ先生、こんなところでどうしたのですか?」

「し、しずな先生」

そんな自分の名を呼ぶ声に、顔を上げるネギ。
ネギの前に現れたのは、近くを通りかかっていた、この学園の指導教員であるしずなであった。
上品でおしとやかでいて実は芯の強い、生徒や教師からも人気のある女性だ。

「こんなところでため息なんかついて……何か悩み事でもあるんですの?」

「い、いえ。何でもありませんので、僕は大丈夫ですから!」

傍らにおいておいた荷物を慌ててかき集め、立ち上がりその場を後にしようとするネギ。
その後姿を、しずなが手を引っ張って押し留めた。

「し、しずな先生!?」

「まあまあ、慌てず落ち着いて。ふふふ、ネギ先生は嘘が下手ね」

「…………」

「実は私、マイケル先生が『スプリングフィールドが元気がない!同じクラスの担任として一大事だ!』なんて言って騒いでて、彼に慰めてくれるように頼まれたのよ」

「………!!」
22Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/13(土) 17:54:09 ID:???
彼女が此処に来るようになった、事のあらましはこうだ。 
数時間前、いつものように職員室で友人と談笑をしていたしずなを、マイケルが突然訪れたのである。
彼の話によれば、最近ネギは授業が終わってから一人で公園をうろついているらしい。
別にそれだけでは元気がないとは判別できないが、

「彼の普段の授業の様子や生徒との交流を見ていればわかる!なぜなら私は2−Aの担任だからだ!!」

などとマイケルは自信満々に言い切った。
一体どこからその自信が出てくるのか……しずなはわからないが、彼が言っているのだからまあ考慮する必要はあるだろう。
なぜ自分に頼んだのか理由がわからないが、そこは聞くべきところではあるまい。
彼にも事情もあるのだろう、ということで二つ返事で引き受けることになった。

この時、マイケルがネギが元気がないのに気がついたのは事実ではあるが、その際に『あれはきっとホームシックに違いない! ならば母性本能の強そうなミス・シズナにたのもう!!』などと、強烈に一方的な決め付けがあったことは黙っておこう。

ちなみに、マイケルとしずな……この二人が初めてお互いに顔をあわせたのは、数日前、ネギが学園にやってくる一日前のことだ。
学園長室に入って、マイケルと初対面したしずなはそれはもう見た瞬間ギネスに載りそうな位の速さで失神したらしい。
そりゃあ、身の丈の二倍はありそうなロボットにいきなり抱きつかれそうになれば(マイケルにとってはアメリカ流の親愛なる挨拶)あたりまえかもしれないが。


「じ、実は……」

ネギはしばらく俯いていたが、やがてぽつりぽつりとしずなに語りだした。
23Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/13(土) 17:55:38 ID:???
ネギはここ数日間授業をやって、(副担任だが)自分はなるべく担任らしく勤めてこようと努力してきた。
その甲斐あってか、授業のほうも(明日菜と委員長の喧嘩を除けば)滞りなく順調にすすんでいる。
しかし、教師として過ごしていて過ごしていて、皆は優しく接しているが、その態度は「自分が少年だからではないか?」という感がぬぐえないでいたのだ。
そうなると自分は皆から頼りない教師だと思われているのではないか?と考えてしまう。
それに対し、警備員の仕事であまりクラスに来ることのないはずのマイケルが、逆に生徒たちに慕われているようであるのだ。
自分はマイケルよりも皆と接してきたはずなのに、その思いさらにそれがネギを悩ます。

つまり、ネギは自分は教師に向いていないのではないか?と落ち込んでいるのだ。


ネギの独白を聞いたしずなは思わず苦笑してしまった。
自分が見る限り、マイケルとネギは両者とも教師としてしっかりしている人間だ。
が、やはりネギは見た目は子供なので、生徒の方もマイケルの方に自然に頼るようになってしまうのは仕方のない事だろう。
決して生徒たちは別にネギのことを悪く見ているわけではないが、どうにもネギにはそう見えてしまうらしい。


「だったら、自分から悩みを聞いてみるのはどう?」

「え?」

「生徒というものは、自分から先生に悩みを打ち明けれるような子供ばかりではないのよ。
 人に相談できず、心の内側にとどめてしまう子供も、少なくはないの。
 今のネギ先生みたいに、ね」

「そ、そうなんですか?」

「ええ。だから、そういう事にも気がついて、心を開かせてあげたり、悩みを解決させてあげるのも、教師としての役割だと私は思っているわ」
24Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/13(土) 17:56:41 ID:???
まあ、亀の甲より年の功とも言うように、この分野もマイケルのほうが得意だろう。
実際、ネギのそんな悩みに気がついた? のも元々は彼が見抜いたからだ。
しかし、それでもネギを元気付けることには成功したようだ。

「は、はい!わかりました!よ〜し、頑張るぞ!」

顔に笑顔を取り戻したネギは、早速生徒との仲を深めるべく、行動を開始する。
しずなは今度はそれを引きとめようとせず、手を振って自室で何か企てようとする後姿を送っていった。
少年の今後の無事を祈りながら。


……これがまた、一騒動起こすことになるのは、しずなの預かり知らぬ所である。
25Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/13(土) 17:58:07 ID:???
投下終了。
これが玄人と素人の差か……。

メタルウルフ買ったよwwwww
アルバイト三か月分オワタwwwww
やべぇwwww超面白いwwwwww
でもNYの波動砲で積んでますwwwww
26マロン名無しさん:2008/09/13(土) 18:05:27 ID:???
うーん、ネギまならすとライクウィッチーズともいけそうだな・・・
27ドラネギ作者 ◆t69vA8A38s :2008/09/16(火) 14:17:01 ID:???
大統領、続きが楽しみです。
では、今回の投下、入ります。

>>16

「うんめーっ!肉まんさいこーっ!!」
「杏仁豆腐も美味しいわー」
「いやー、待った甲斐がありましたー、口直しと言うには贅沢過ぎます!」
「美味しいねードラえもーん」
「うーん♪」
図書館島でスネ夫のお詫び方々チケットを貰い、
超包子テーブル席で貪り食らいながら賞賛するドラ・パーティーに
この大混雑の中でも挨拶に来たメインシェフ四葉五月がぺこりと頭を下げる。
「あー、四葉さん、ですか?」
「はい」
“…可愛い声…”
スネ夫が声を掛け、男子三人が心の中で呟いた。
「ここのオーナーが確か超鈴音さんなんですよね。
スーパー起業家中学生がいると聞きまして、勉強のためにちょっと興味があって来たんですが
どこかでお会いできますか?」
「ごめんなさい、超さん今色々と準備で忙しいですから」
「そうですか」
ぺこりと頭を下げ、五月が戻って行く。
28のび太のin麻帆良祭:2008/09/16(火) 14:18:10 ID:???
>>27

「今、何か光った?」
石ころぼうしを被って麻帆良上空をタケコプターで飛行していたのび太が
周囲をきょろきょろと伺う。
「もう日が沈んで来た」
石ころぼうしを被りタケコプターで集団飛行していたドラ・パーティーの中で
しずかが言った。
「色々回ったからねー、もうクタクター」
のび太が言った。
「でも、半分どころか全然回ってないよ」
パンフ片手にスネ夫が言う。
「面白いけど、学園祭の規模じゃないよー」
のび太が悲鳴を上げた。
「うん、何か絞り込んで考えないと埒があかない…」
「…あっ…」
ドラえもんが言いかけた時、しずかが声を上げた。
「どうしたの?」
「あれ…のどかさん?」
「ん?」
「何か様子が変…襲われてる?」
しずかの物騒な言葉に、一同がそちらに視線を向ける。
「誰か止めに入ったけど…駄目みたい、追い掛けられてる…空、飛んでる?」
「ええーっ?」

「何やってるの?あの人嫌がってるんじゃないの?」
屋根から屋根に跳躍しているその前方に降下したのび太が言い、
その周辺をドラ・パーティーが囲む。
「…お邪魔虫さんですか…」

短いですけど今回はここまでです。続きは折を見て。
29Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/19(金) 01:29:04 ID:???
みんな、そのネギに近寄っちゃだめだ!
しずちゃんにげてぇぇぇえええ!!

・・・はい、すみません。
こっそり投下いたします。
30Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/19(金) 01:30:00 ID:???
「はあっ!せやぁっ!!」

森の中に、一人の少女の叫び声が響き渡る。
町の外輪の一帯を占める森のある開けた一角、そこが彼女―――桜咲刹那の鍛錬場所である。
彼女の周囲には、気の力で宙に浮いた人形がふよふよと浮遊している。
その中心にいる刹那の手には、愛刀である「夕凧」が握られていた。

麻帆良の郊外には、都会的な市街とは打って変わった、広大な森が存在している。
よく動物などが見かけられるため、初等部などの生徒達がが遠足などで訪れることもある、憩いの場として存在している。
が、普段は欝蒼と木々が生い茂るこの森の中は、その広さから道に迷いやすいこともあり、個人で許可なしに入るような事は禁じられている。
おまけに、この土地に住み着いているのは何も普通の動物だけではない。
この近辺に住まう妖怪も、ここの魔力にひかれてこの森に現れることもたびたびあるのだ。
それなりの実力者でもなければ、魔法使いでさえ危険だといわれているのだ
そのため、この森を個人で訪れるような物好きはこの学園にはあまりいない。

ところが、それなりの実力者の中には、この森を活用する者もいる。
例えばこの森で射的なんぞしたり、森に修行として住んでいたり、などなど。
そして、刹那もこの森の一時的な住人の一人。
一般人が不用意に侵入し、見つかるということもなく、それでいて学園の結界の近くに位置しているため、妖怪たちに襲われることもない。
生い茂った木々も的代わりに活用することもできるし、近くに水場も存在する此処は、刹那の格好の練習場となっているのだ。


刹那は、まるで舞を踊るかのように、森の中を駆け巡っていた。
宙に浮いた標的の急所を、寸分たがわず切り裂く。

その刹那、次の獲物を瞬時に見定め。
そして、間髪いれずに切り裂く。

見定め、切り裂く。
31Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/19(金) 01:32:48 ID:???
また、見定め、切り裂く。

途方もない、その繰り返し。


刹那は円を書くように配置された訓練用の的の中心で、ひたすら踊り続けた。
右手に持った夕凧が空を切り、そのたびに一陣の風が吹き、標的が破壊されていく。

そして数分後、最後の的が真っ二つに切り裂かれた。

「くうっ……」

直後、刹那は崩れ落ちるように地面に膝を着いた。
鍛錬を開始してからすでに一時間が経過している。
その間、彼女はひと時も休まずに鍛錬をしているのだ。
全力で行動をした応酬。当然、身体の負担も大きい。

しかし、刹那は苦悶の表情を浮かべ、首を振る。

だめだ、これでは足りない。
少なくとも、もう2セットほどしなければこの憤りを抑えることはできないだろう。
頭の中がふつふつ(ヤバイ時は『ぐつぐつ』となる)と沸き立ち、それが血にもめぐっているような感触。
そう、これは怒りだ。
どうしようもない、不安と焦燥感、そして不快感と怒りがまざりあったもの。

この時、刹那は柄にもなくいらだっていた。
32Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/19(金) 01:35:06 ID:???
原因は……はっきりしている。
先日自分のクラスに入ってきた、あのマイケル・ウィルソンとか言うふざけた教師のことである。

そもそも、今回の騒動はおかしなことがありすぎだ。

この麻帆良学園は、表向き普通の巨大学園都市を名乗っている。
だが、その裏は東の魔法使い達を代表する者たちの、根城となっているのである。
童話なら、「魔法使いの城」とでも言ったほうがいいだろう。
日常と非日常が表裏一体で合わさった学園。
そのため、たまにいささか奇妙な事が起こることもある。
表向き、新聞では怪奇現象やら見間違いだやらで収まっているが、裏は全て魔法がらみのものである。
もちろん、魔法のことは知れてはならないため、一般人がそれを知ることはまずない。
その裏の部分とそれなりに繋がりのある刹那にも、それは理解している。

今回の担任騒動もそのひとつだった。
いや、であるはずだった。
彼女の聞いた情報では、重症を負ったタカミチの代わりに教師となるのは、イギリスから来た少年魔法使い。
少年魔法使い、というのはおそらくネギ・スプリングフィールドの事だろう。
別に、子供とはいえ魔法使いが教師になるということは、彼らの世界からすれば、労働基本法を無視すれば不思議なことではない。

ところが、どこがどうトチ狂ったのか、実際に教師になってしまっているのはアメリカから来たあの男。
教師になるはずだったネギはというと、副担任へと格下げになってしまっている。
しかも、正体不明のパワードスーツを着たままで学園生活を送っているとの事だ。
おまけに何故か、いつの間にか学園長直々に警備隊隊長という称号を貰っている。
子供が教師をやることも十分に奇怪なことだが……あんな男が教師をやることのほうが、はっきり言って異常事態だ。

いや……考えてみれば、そもそもドアを突き破って入ってくる教師がどこにいるというのか?


刹那は放課後、その思いを抱えてわざわざ学園長室に殴りこみにいったのだ。
くつろいでいる最中に現れた、いきなりの来客に驚いている近右衛門に、刹那は激しい口調で詰め寄ったのだ。
33Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/19(金) 01:37:10 ID:???
どうしてあのような男が教師なのか?
なぜ警備隊長になったのか?
今回の報告のほかに、一体何があったというのか
そもそもあの男は何者なのか?など。


しかし、いやおそらくこの騒動を起こした中心人物であろう近右衛門は

「いや……そのう……これには、深い事情があっての……うん、それはそれはグランドキャニオンよりも深い事情なんじゃ!」

などと冷や汗混じりに変な答えを返し、結局真相はうやむやにされて終わってしまったのだ。



(刹那にとっては)緊急事態だというのに、どういうわけか遅くなる学園の対応。
刹那のこの頃の苛立ちの原因は一重にそれだった。

ここ麻帆良は、その特殊な成り立ちのために、妖怪たちがうろつくこともあれば、保管された機密情報を狙った侵入者が現れることも多数ある。
それらを撃退するために、学園側は通常の警備員のほかに、お抱えの魔法教師を警備に当たらせている。
しかし、その大半はこの学校の教師であり、警備員の仕事のほかにも、彼らには教師としての仕事があるのだ。
そうなると警備にどうしても空白が生じてしまうため、学園でも有数の実力を持つとされている生徒にも、警備を担当しているものもいるのだ。


だが、桜咲 刹那にはもうひとつの役目も存在した。
学園長の命により、自分のクラスメートである木乃香を護衛する任についているのだ。
木乃香は外見は至って普通の少女だが、その体内には東洋でも随一の非常に膨大な魔力を抱え込んでいる。
魔法使いの視点から見れば、彼女は非常に特殊な体質を持つ人間であり、それにより今までさまざまな連中からその身を狙われれいるのだ。
今でこそ少なくなったが、その連中の影は、この麻帆良学園に彼女が入学した今をもっても、消えることはない。
本来西の住人である木乃香がこの学園にいるのも、彼女を守るために彼女の父親が配慮したものである。
無論、木乃香にはそんなことなど一切伝えていない。
34Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/19(金) 01:39:01 ID:???
本人はいたってぽけーっとした学園生活を送っている。

いや、そうなるように彼女に普通の学園生活を送らせるために、近右衛門が四方八方から手を尽くしているのだ。
……心配するあまり、たまに少々行き過ぎた過保護な事もしでかしてしまうが。
刹那は、そんな木乃香の護衛手段の一つとして存在しているのである。
彼女がマイケルを必要以上に警戒しているのはこのためでもあった。



どうして東の長とも言われている近右衛門が、あのような男をよりにもよって木乃香のクラスの担任にした理由がわからない。
というか、なぜおびえているのかすらわからない。
だが、彼が動けないというのなら、自分が動くだけのことである。

おそらく、これが知れれば命令違反になり、自分は処罰されるだろう。
よくて学園追放。
悪ければ、おそらく極刑にかけられるかもしれない。
でも、それでもいいと彼女は思っている。
この命など、すでに彼女に奉げているのだから。
事が起こる前に、元凶を排除すればいい。
彼女が望んでいるのは、幼きころからの親友の平穏な日々なのだから。
35Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/19(金) 01:40:50 ID:???
投下終了。

まあ、刹那はどこの小説見ても、大半が暴走してますからな・・・
こうなるのも、仕方の無いこと・・・なのかな?

対決はおそらく次話にもちこしになるかと。
36グラインドハウス支配人:2008/09/19(金) 22:04:45 ID:???
皆様、お久しぶりです。
体調不良から戻ってまいりました。
皆様に余計な心配事をお掛け致しました。
大変申し訳ございませんでした。

諸般の事情により、公開予定の二本目の上映内容を変更したいと思います。
当支配人の勝手な都合により、ご迷惑をお掛けして大変申し訳ございません。
二本目も、当支配人が自信を持ってお送りできると自負しております。

それではお送り致します。
37ヒットマン:2008/09/19(金) 22:07:39 ID:???
prologue

雨の打つ、激しい音。
男が車に乗り込む前から降り続いていた雨が、車全体を包み、支配している。
だが、車内を包むのは、外の雨の音だけには留まらなかった。
男の体内から響く鼓動が木霊していた。
やけに煩い。
脈打つ鼓動は雨の音よりも大きく木霊し、男にとっては耳鳴りがしそうだった。
男は胸を押さえていた。
身体から飛び出そうな鼓動をしている心臓を。
……原因はわかっている。

今回の仕事は最初からおかしかった。
何から何までお膳立てされているかのようだった。
明らかに自分以外の何者かの影響があった。
だが、それを確かめる時間もなかった。
結果的に、自分は尻尾を巻いて逃げるだけだった。

だが、結果など現時点ではどうでもいいし、真相の解明もどうでもいい。
今、男にとって大事なのは、男を襲っているこの危機だ。
数分……いや数十分だろうか?
男は命からがら逃げてきた。
毒を盛られたのだ。
霧状の毒物だった。
その毒の症状が何かはわからない。
仕事の前のブリーフィングで説明を受けた気がするが、思い出せない。
記憶力が著しく低下し、意識障害もおきている気がする。
心臓が大きく脈動し、身体中の血管が燃えるように熱い。
汗もどんどん吹き出ている。
男はなんとか思い出そうとしていた。
……この毒は、最終的にどんな作用を起こすのだろうか?
38ヒットマン:2008/09/19(金) 22:08:15 ID:???
身体中が痙攣する。
寒くて震える。
ふと、鼻から口へ伝う物が流れた。
手にとってそれをみると……それは鼻血だった。
……男は思い出した。
この毒に侵された人間の末路を。

男は震える手で車の座席に置いてあるブリーフケースを取り出した。
特徴のある刻印のあるケースだった。
男は開くと、身につけている品を全部ブリーフケースに仕舞い込み始めた。
ありとあらゆる品が詰め込むと、最後の品を懐から取り出した。
……それは、二挺の拳銃だった。
シルバーのコルト・ガバメントだった。
標準より銃身は長く、また、グリップにブリーフケースと同じ刻印が施されていた。
ガバメントをケースに仕舞うと、男は自身が着ているスーツの上着を脱ぎ、ホルスターを脱いで同じようにケースに仕舞う。

……よし、これで身元を特定する品はないはずだ。
残りの物は、この車のキー、そして……。
男はブリーフケースの小物入れから、円筒状のスチール製の小物を取り出した。
キャップを外すと、鋭い針が剥き身になり、暗闇の中、月の光を浴びて光っていた。
ブリーフィングの時の説明に、この小物の説明を受けた。
毒の影響で意識混濁だが、覚えている限りでは、これは解毒剤の入った使いきりの注射器だ。
この鋭い針を心臓に垂直に刺せば、圧力で中の解毒剤が体内に注入されるという。
……今回の仕事で使うかもしれないと渡されたのだ。
一応念のため……のつもりだったが、まさか本当に使う事になろうとは思わなかった。
副作用の説明もされたような気はするが、今のこの状況で副作用を危険視し、解毒剤を使わないなどという選択はできない。
男は車のキーと解毒剤だけを持ち、車から降りた。
電子音が鳴り、車の施錠がされるのを確認すると、車から出来るだけ離れた。
自分と車、そしてその中の品を結びつける物を出来るだけ離したかった。
39ヒットマン:2008/09/19(金) 22:08:53 ID:???
……足元がおぼつかない。
片足を引きずるように駆ける。
身体中の血管が破裂しそうだった。

(限界か……)

男は街路樹の一本に目をつけ、その根元を掘り始めた。
頭痛や眩暈を起こしている中、勢いだけで掘り進めると、その中に車のキーを埋めた。
そして、立ち上がり、また離れるように駆けた。
もう、自分がどこにいるのかもわからない。
木々が覆い茂る地帯にいるが、街から離れているのかもわからない。
ふと、ついに脚を引っ掛け、倒れこんだ。
全身を強い雨が打ちつける。
男は仕舞いこんでいた解毒剤を取り出し、天にかざした。
……身元を特定する物を隠匿する為に多くの時間を費やした。
毒が回ってからどのくらいの時間が経っているかはわからない。
もしかしたら、今更解毒剤を打っても助からないかもしれない。

(……なら、その時はその時だ)

仰向けになった男は、ワイシャツの上から注射器の針を心臓に突き刺した。
パシュッという空気の圧力で、解毒剤が心臓に注ぎ込まれた。
男は全身を痙攣させながら、意識が薄れていく気がした。
薄れる視界の中、最後に見たのは満月だった。
雲からのぞく満月が、男を惹き付けた。
そして、その記憶が、最後だった。
男は、雨の中、仰向けに倒れたまま目を閉じ、動かなくなった。
40ヒットマン:2008/09/19(金) 22:09:49 ID:???





――――― ヒットマン -Code MAHORA- ――――――




41ヒットマン:2008/09/19(金) 22:11:02 ID:???
Chapter.1「Who am I ?」

宮崎のどかは大雨の中、後悔していた。
ルームメイトの早乙女ハルナに頼まれごとをされていたのだ。
普段、ハルナの趣味を手伝っているのどかだが、今回ばかりはレベルが違っていた。
ハルナの趣味である「マンガ」の締め切りに付き合わされた。
ここまではいい、いつものことだ。
だが、今回は並外れての「修羅場」だった。
いつ終わるかわからない無間地獄のようだった。
意識の混濁、睡魔、ありとあらゆる誘惑から負けないようにがんばっていた。
二人の親友である、綾瀬夕映と共にがんばった。
そして、数十分前に、とうとう完成した。
今日完成し、すぐに入稿するために郵便局に行こうとした。
だが、ここで問題が発生した。
以下、問題点を列挙する。

1、ハルナ、夕映、両名の活動停止(緊張状態を解いた事による急激な睡眠)
2、問題点1により、郵便局へ持ち込む人間がのどか一人になったという事。
3、完成時、すでに深夜を回っており、寮から出るのは校則違反に相当する。
4、深夜まで開いている郵便局はひとつしかない。
5、しかもその郵便局は、明日は開かない。
6、今日速達で送らないと、確実に原稿を「落とす」ことになるという事。

この問題点を、のどかはひとりで解決しなくてはいけなかった。
42ヒットマン:2008/09/19(金) 22:11:32 ID:???
今日、一生懸命頑張って作った原稿を落とすなど、親友に顔向け出来ない。
寮を抜け出し、校則違反になるかもしれないが、そんな事は気にしていられない。
他の人に助けてもらうわけにもいかない。
自分達の都合で助けてもらうなど、筋違いだ。
のどかは意を決して、外に出た。
どのくらいの時間が掛かったかはわからないが、無事郵便局に原稿を持っていくことが出来た。
速達で印刷所に送り全ての仕事は終わった。
凝った身体を少しでも休めるため、郵便局に備え付けの椅子に座った。
……それが仇となった。
郵便局員に起こされ、自分が一時間程居眠りしていた事を知った。
あわてて外に飛び出るが、外はいつのまにか大雨が降っていた。
寮を出るとき、降りそうだなとは思っていたが、すぐに戻るつもりで傘を持って来ていなかった。
のどかは泣きながら、寮へ向かって走っていった。

(……こんな事になるなんて……)

傘を持ってこなかったのが悔やまれた。

麻帆良学園都市は日本の都市の中では、治安がいい方だと常々のどかは思っていた。
だが、それでも100%ではない。
犯罪の発生は、人口の数に比例して数が増える。
人が多ければ、それだけ問題も起きる。
のどかは、そんな簡単な問題でさえも、この大雨で忘れていた。
そのために、身近に迫る危機に対応できなかった。
43ヒットマン:2008/09/19(金) 22:12:04 ID:???

「っ!?」

目の前に立ちふさがる、薄汚いパーカーを着た男。
のどかは思わず、後ずさりし、後ろを振り向く。
すると、二人のジャージを着た男が同じように迫っていた。
明らかに柄の悪い男だった。
三人とも、肩で風切るようにふてぶてしく近づき、のどかを注視している。
獲物を取り囲み、間合いを詰めていく獣のようだった。
のどかはまさに、獲物の羊そのものだった。

「よう!こんな時間に夜遊び?」

「あ……あぁ……」

のどかは声が出なかった。
恐怖で完全に萎縮していた。
次々に男達が声をかけてくる。
それはナンパなどという生易しい物ではない。
相手の都合など考えずに自分達の物にしようとする、獣の行動だった。
のどかには、男達の声がまるで獣のうなり声のように聞こえた。
教師であり、想い人であるネギ・スプリングフィールドと出会って、少しは男に対する考えが改まってはいたが、こんなことをされれば評価を変えずにはいられない。
少なくとも、ネギ以外の男性については評価を著しく下げることになるだろう。
それ以前に、目の前の男達によって、大事に守ってきた純潔を散らす事、それによって影響されるその後の人生が怖い。
なにより、想い人のために大事にしてきた想いを散らされるのが辛い。
44ヒットマン:2008/09/19(金) 22:13:10 ID:???
(ね、ネギ先生……ネギ先生……!)

想い人の名を頭の中で呼び続ける。
そうすれば、助けにきてくれるんじゃないか?そんな淡い期待を込めていた。
だが、三人の獣は弄ぶようにジリジリと近づいて来る。
雨に濡れた服が身体に張り付いて気持悪い。
緊張で流れた冷や汗も含まれているのだろう、汗臭さも感じる。
身体が強張る。

「た、助けて……下さい……」

苦し紛れに呟いたのどかの言葉を、男達は囃し立てた。

「オイオーイ!別に殺すわけじゃないぜ?ちょっと俺たちと遊ぶだけじゃねぇか?」

男達はゲラゲラ笑い、煽るように威嚇する。
殺すつもりはない、と男達は言ったが、男達がのどかにする行為は、のどかにとっては死に相当する。
それを、まるで男達は週末にメロリンコックな気分でマリファナを吸うような感覚で行おうとしている。
しかし、それを理解しろと言ったところで、理解してくれるかどうかは怪しい。
パーカーを着た男が、右手に銀色に光る物を弄んでいた。
くるくる何度も回転すると、鋭い刃が飛び出ていた。
あれは……バタフライ・ナイフだ。
あれで脅かしたり……服を切り裂いたりするのだ。
奥歯がガチガチと馬鹿みたいに震える。
脚の力もやっと立っていられるぐらい、力が無い。
バタフライ・ナイフを弄ぶ男は、それで煽るのが楽しいように、くるくると何度も往復させ弄んでいる。
そして……ナイフの刃を垂直に向けると、眼光が鋭く光った。
のどかは踵を返すと、そのまま走った。
踵を返した視線の先には、両脇に別の男達二人が居たが、その脇を潜らせるかのように、道を開けた。
のどかには、思慮する余裕はなかったが、男達は敢えて逃がしたのだ。
45ヒットマン:2008/09/19(金) 22:13:47 ID:???
獣とこの男達が違うのは、欲求と切実さの問題だ。
獣は、獲物を仕留めなければ生きていけない。
食欲と明日への活力という現実。
だが、この男達は違う。
別にのどかを逃がしても明日のわが身を憂うことはない。
あの気の弱い少女のことだ。
名前もわからないチーマーを警察に訴え出る事も出来るわけがない。
あの少女は、この手の事件に合うと泣き寝入りする典型的なタイプだ。
わが身に危険が及ばないのなら、これは完全に「遊び」だ。
……なら、とことんまで弄んで、嬲(なぶ)って、屠るべきだ。
のどかが逃げ出したのを、ニヤリと笑って、男達は後を追いかけた。
未成熟な少女であるのどかと、いい年をした大人の男である三人。
体力が勝っているのはどちらか、論ずるより明らかだった。
男達は余裕でのどかに追いつくが、捕まえず、わざと泳がし弄んでいた。
たまに前に回りこむと、捕まえる振りをして、脇で逃がす。
のどかは、自分の機転で逃げられたと思っているかもしれないが、それは大間違いだった。
すべては、弄び、嬲り、獲物の血肉を貪り食う獣のように、屠るための遊びだ。
獲物であるのどかは、そんな事を露とも知らず、懸命に逃げ惑っていた。
前から降り注ぐ雨が、何度も顔を叩く。
目に雨水が入り、酷く滲みる。
そのせいか、涙が溢れ出ていた。
いや、雨のせいにするのはよそう。
……己が心を駆り立てる恐怖心故だ。
人間の姿を借りた悪魔が3人、囃し立てるように恐怖を与える。
のどかはそれから逃げるしかなかった。
地面に膝をついて、手をついて。
鼻を啜り、言葉にならない声を漏らし、必死に恐怖から逃げる。
でも、恐怖は先回りし、待ち受ける。
この恐怖に駆り立てられる時間は、いつになったら終わるのか。
46ヒットマン:2008/09/19(金) 22:15:00 ID:???
ふと、のどかの中で、恐ろしいぐらい冷静な自分がいるのに気付いた。
そうだ。
恐怖の時間は、いつか終わる。
子供のときに受けた予防接種の注射。
あれだって、そうではないか。
痛い思いは数えるほどしかない。
その後に訪れる平穏を考えれば、我慢してやり過ごすの待てばいいのだ。
人生は有限だが、長いのだ。
痛みを我慢すれば、いずれ平穏が訪れる。
やり過ごせばいい、やり過ごせば……。
そう思いながらのどかは、組し抱く男達の下で、恐怖がやり過ごされるのを待っていた。

雷が、三人の男を映し出す。
形容しがたい程、のどかには男達が醜く映っていた。
醜悪さというのは、外見変えてしまうのか、と思った程だ。
そんな三人の形容などどうでもいいのに、のどかは思い至った。
これから自分に行われる残虐な行い。
男にとってはただ性欲を満たすためだけの行為だが、女にとっては死そのものに値する行為、それが行われるのだ。
のどかは恐怖で、心の中の怖いと思う感覚が麻痺したのか、とても冷静な感情で自分に行われる行為を予想した。
それでも、その行為によって自分がどうなってしまうのか、それは想像するだけでも苦痛だった。
人間は、苦痛を伴う想像は、想像すら出来ない。
この時は、その心理現象を心から感謝した。
47ヒットマン:2008/09/19(金) 22:15:36 ID:???
そして、すくなくとも、自分の人生を省みた。
自分を生んでくれた両親に、申し訳ないと思った。
健やかに育ってくれる事を願っていたに違いない両親に、申し訳ないと思った。
次に、親友達に、申し訳ないと思った。
明るく楽しい生活を、乱すことになって、申し訳ないと思った。
そして最後に、ネギ・スプリングフィールドに、申し訳ないと思った。
こんな自分に、心痛める、優しい先生に、申し訳ないと思った。
のどかの目には、涙が溢れ、零れた。
男達の囃し立てるゲラゲラと笑う声は、まるで遠くで聞こえているようだった。
のどかの目には、まるで霧の掛かった光景だった。
耳鳴りなのか、キーンと張るような音が耳を覆う。
まるで、爆発に巻き込まれ、耳が遠くなり、意識が混濁しているかのようだった。
自分と外界に大きな半透明の壁があるように思えた。
宮崎のどかという自分の意思が、宮崎のどかという身体に閉じ込められているような感覚。
いや、これからされる行為を思えば、今自分は、宮崎のどかという肉人形なんだ。
それでも、宮崎のどかは、世界に伝えるように、自分の、意識が保っていられる内に、伝えたかった。
愛すべき、すべての人に。

「ご……」

僅かに開いた唇の中に、雨の水滴が入り込む。
だが、それでも、言葉を紡いだ。
それが、宮崎のどかとしての最後の言葉だと思って。

「……ご…………ごめん……なさい……」

世界の全てに、ごめんなさい。

そう呟くような言葉を紡ぐと、宮崎のどかの意識は途切れた。
48ヒットマン:2008/09/19(金) 22:20:41 ID:???
のどかは閉じた目を開いた。
その見開いた光景は、並木林と街灯、そして黒い空だった。
空から降り注ぐ雨が目を打つ。
……おかしい。
のどかは異変を感じていた。
まず、視界に、あの醜悪な男達が映っていない。
もうこの場にいないのか?
それなら、既に行為が及んだ後なのだろうか?
ならば、なぜ自分は正気を保っていられたのだろうか?
案外、正気を保てるほど、大した行為ではなかったのだろうか?
いや、まず行為の恐怖性に関しては、ありえない。
あれが「大した行為ではない」はずがない。
経験の有無はこれから確認しなくてはいけないが、「大した行為ではある」のだ。
なら、なぜ自分は正気を保っているのだ?
少なくとも、現状認識をしようという意欲はある。
ふと気が付く。
身体に何の違和感もないのだ。
恐怖の行為をされれば、少なからず肉体の損傷はあるはずだ。
それがまったくない。
厳密にいえば、少々身体が凝っているぐらいか。
では、行為は及んではいない?
……なぜ?
49ヒットマン:2008/09/19(金) 22:21:07 ID:???
のどかはその時、身体を起こし、ようやく現状を認識していた。
……自分の両脇に、あの醜悪な男の二人が倒れていた。
二人とも両目を剥いて、倒れている。
死んでいるのか、それとも気絶しているだけかはわからないが、不自然に身体を捻じ曲げている。
……そして最も不可思議な事に気付いた。
第4の男がいたのだ。
それものどかを遮る……いや、立ち塞がり、守るように仁王立ちして。
男は、さっきの下品で醜悪な男とは違い、上品で尊大で、そして威圧するような貫禄があった。
しかもそれは、のどかに大してではなく、男の影になっている、あの醜悪な最後の男に対してであった。
醜悪な男は、のどかの目の前にいる男に、バタフライ・ナイフをチラつかせて、虚勢のような威嚇をしている。
のどかの前にいる男は、のどかの足元のすぐ近くにおり、何があってものどかを守ろうという強い意志を感じられた。
のどかを守る騎士は、暗くて識別し難いが、長身で肉付きがいいのが服の上からもわかった。
黒のスーツを着ているが、どう見ても堅気のサラリーマンには見えない。
むしろ……「ヤクザ」、そう形容するのが似合う気がする。
しかし、のどかには目の前にいる騎士をそう形容するのは相応しくないと思った。
なんというか……失礼な気がする。
この場を推測するに……彼は本当に騎士なのだ。
どういうわけか、意識を失い、襲われる前に、目の前に現れ、瞬く間に悪者二人を叩きのめし、自分を守るように立ち塞がってくれたのだ。
こんなこと、滅多にあるわけがない。
だが、本当に訪れた幸運なのだ。
自分の運命を呪い、人生に別れを告げ、親しい人に謝罪したのに……。
その運命を、あっという間に変えてくれたのだ。
雷鳴が轟き、後姿を向けている騎士の姿がくっきりと浮かび上がった。
特徴的だったのは、彼の頭部だった。
頭髪は無く、後頭部に刺青のような刻印が刻まれているだけだった。
その刺青は……バーコードだった。
獣の男は、そのバーコードの騎士に、必死に威嚇している。
仲間二人が倒され、動揺しているのが、のどかでもわかった。
50ヒットマン:2008/09/19(金) 22:22:29 ID:???
「て、てめぇ!何者だ!邪魔すんじゃねぇ!」

バーコードの男は、男の罵声をその身体で受け止め、受け流していた。
それは、まるで蛮族の野人と、日本の武士が対峙するようだった。
まるで意に介さずといった感じで、バーコードの男は厳しい目を男に向けた。
男は、言葉にせずとも、「ひっ!?」という悲鳴を上げていた。

「……今、俺の事を何者だ、と聞いたな。俺もそれが知りたい。……俺は何者だ?」

初めて、バーコードが付けられた騎士の言葉を聞いた。
しかし……。

(……何を言っているのだろう、この人は?)

のどかがそう思ったのと同時に、野蛮な男もそう思ったに違いない。

「わけのわかんねぇこと言ってんじゃねぇーっ!」

と、緊張の糸が、バーコードの男の言葉で切れたのか、バタフライ・ナイフを突き立て、襲い掛かった。
男の繰り出すナイフは直情的で、素人を脅し、仕留めるぐらいなら十分だろう。
ただし、そこまでだ。
騎士に通じるかどうかは、まったくの別問題だった。
バーコードの騎士は繰り出した男のナイフを持つ手の手首を掴み上げると、いっきに反対方向に捻り上げた。
男は電撃を浴びたかのように、悲鳴を上げ、無力にその場に座り込んだ。
バーコードの騎士は、男の持つバタフライ・ナイフを取り上げる。
その間にも、男の手首を捻り上げ、無力にしている。
バーコードの騎士はナイフの刃を突き立て、男を注視した。
51ヒットマン:2008/09/19(金) 22:48:26 ID:???
「……答えてくれ。俺は何者だ?」

男は呻き声をあげながら、それでも挑発のつもりか、口の減らない言葉を並べ立てた。

「知るかよ!てめぇ見たいなキチガイ野郎!知ったこっちゃねぇ!それより、俺たちに手を出した事を後悔するんだな!俺の仲間が黙っちゃいねぇぞ!?」

だが、バーコードの男は、男の並び立てる脅し文句などまるで興味がないようだった。

「興味がない。……それに、お前は仲間に助けを求めることは出来ない。なぜなら、お前は、『彼女』に謝罪をしなかった」

『彼女』……それがのどかを指す事に、のどか自身気付いた。
バーコードの騎士は男に構わず続ける。

「つまり……俺にとって、お前を生かす理由が無くなったわけだ」

「っ!?」

バーコードの騎士は、ナイフを振り上げた。
のどかはすぐに察知した。
ナイフの振り下ろされる先は……男の頭部だ。
深く突き刺すつもりなのだ。
人間の頭蓋骨を一撃で突き刺した時、どの程度まで突き刺さるかは分からない。
だが、どちらにしろ、それは死を意味していた。

……バーコードの騎士は、目の前の男を殺す事に、何の躊躇もなかった。
52ヒットマン:2008/09/19(金) 22:49:15 ID:???
「だ、だめですぅっ!!」

のどかは叫んでいた。
叫ばずにはいられなかった。

騎士の持つナイフの切っ先が、男の髪の位置で止まっていた。
驚く程正確に、勢いの付いていたナイフはピッタリと止まっていた。
そのナイフを、恐怖に彩られた醜悪な男は、目を離す事が出来なかった。

「あっ……あ……あぁ……」

男は恐怖で言葉にならない声を上げていた。
ふと、バーコードの騎士がのどかの方へ振り向いた。
暗くて分からなかった顔が、稲妻の閃光でライトアップされた。
掘りの深い顔で、黒い眉毛の男だった。
国籍は不明だが、20代後半から30代後半辺りの顔立ちだった。
決して爽やかな顔ではなく、笑顔が想像できないぐらい厳格な表情をしていた。
バーコードの男はのどかを一瞥すると、バタフライ・ナイフを翻し、ナイフの刃を柄に収め、その柄で男の顔を殴った。
男は血を噴出し、白目を剥いて気絶した。
バーコードの男はそれを確認すると、バタフライ・ナイフをスーツの胸ポケットに、まるでペンを収めるように仕舞った。
あまりにも呆気ない救出劇だった。
53ヒットマン:2008/09/19(金) 22:49:47 ID:???
のどかは差し伸べられる手に戸惑っていた。
見知らぬ、暖かい手。
だが、それは自分を穢そうとした男達を瞬く間に倒せる程、力強い。
だが、同時にそれは酷く残酷で、暴力的だ。
この差し出される手は、さっきののどかの制止の叫びが無ければ、人の命を奪っていた。
のどかは、差し出される手……黒革の手袋に包まれたその手から、差し出される男の顔を観た。
笑顔ひとつ無い。
厳格な顔を維持したままだ。
だが、それでも、……慈愛に満ちた顔をしている。
純粋にのどかを心配している顔だ。
……信じていいのだろうか?
だが、のどかはすぐにそんな思考に至った自分を恥じた。
残酷な陵辱から救ってくれた相手を警戒するなど、そんな事は失礼だ。
少なくとも、感謝の気持ちを抱くべきなのだ。
のどかは警戒心を解き、男の差し出された手を握り返した。
男は手を引いてのどかを立たせた。

「……大丈夫か?」

男の言葉に、のどかは改めて自身の身体を見つめた。
身体が凝っている気がするが、外傷はない。
精密検査をしなくてはわからないと思うが、純潔を散らしたわけではないと思う。

「だ、大丈夫です……」

のどかがそう口を開くと、途端に恐怖が襲い掛かった。
54ヒットマン:2008/09/19(金) 22:50:21 ID:???
麻酔で鈍っていた感覚が取り戻したかのように。
地面が崩れ落ちるような感覚、そして、膝の力が抜ける感覚。
そして全身を襲う震え。
血の気が全身から引き、言い様のない寒気が襲った。

「……っ!?」

のどかは膝を崩し、身体が倒れた。
そののどかを、男はそっと手で抱きかかえた。

「無理をするな」

「……は、」

のどかは言いかけて、男を見上げた。
自分を陵辱し穢そうとした男と、その男を蹴散らした騎士のような男。
のどかは男に対して苦手意識を持っていたが、誠実な男を見るのは、想い人のネギ・スプリングフィールド以来だった。

「……はい、ありがとう……ございます」

のどかは恐怖に怯える心に差し込む暖かい光に感謝し、騎士に柔らかい笑顔を向けた。

男はのどかを抱きかかえ、のどかに教えてもらった寮への道を歩んだ。
男は、あの後、病院に行く事を勧めたが、のどかは深夜に寮を抜け出した事が気に掛かるようで、明日病院へ行くと言って断った。
55ヒットマン:2008/09/19(金) 22:50:52 ID:???
「あの……、ありがとうございます……」

のどかは男の腕の中で呟くように小さな声で囁いた。
基本的に気の小さいのどかは、蚊の鳴くような声だ。
だが、多くの人は、そんなのどかが信念の強い、性根の座った少女だとは知らないし、彼女自身も自覚していない。
気の弱い少女の外見に、すっかり隠れてしまっている。
男は視線だけのどかに向けると、すぐに正面の道に目を向けてしまった。

「気にするな」

厳格という言い方をしたが、のどかにとっては「冷たい」という印象も抱いた。
頭髪は無く、毛は眉とまつ毛のみであるから、国籍を識別する事は出来ないが……少なくとも黄色人種ではなく、白人だと分かる。
だが、それ以外はセールスマンのように、感情を起伏させ表面に現さない厳格さがある。
言い換えれば、個性の無だ。
特徴という特徴がなく、主たる主がない。
無、そのものと言えた。
のどかは、名前が知りたかった。

「あの……よかったらで……いいんですけど……」

「…………」

「お名前……教えてくれませんか?」

「…………」
56ヒットマン:2008/09/19(金) 23:01:22 ID:???
男は無言で、非難のような目をのどかに向けた。
のどかは、男が機嫌を悪くしたものと思い、おおいに狼狽した。

「い、いえ!い、嫌ならいいんです!ごめんなさい……」

のどかの悲痛なまでの狼狽ぶりに、男も困惑した。
いや、「困惑のような表情」をした。

「……別に嫌じゃない。……だが、教えることは出来ない」

のどかは、男が機嫌を悪くしたわけではない事が分かってホッとしたが、だが、気分を害してしまったから名前を教えてくれないんだと思った。
だが、そうではなかった。

「教えるにも……教えられん。俺も自分の名前がわからない」

「え……?」

「誰か、俺を知っているのなら、教えてくれ。……俺は誰だ?」
57グラインドハウス支配人:2008/09/19(金) 23:03:06 ID:???
以上で、Capter.1の上映を終了致します。
次回、Capter.2の時にお会いしましょう。
感想・お批判お待ちしております。

よろしくお願いします。
58ドラネギ作者 ◆t69vA8A38s :2008/09/20(土) 00:57:27 ID:???
>>57
キタアアァァァァァアアアアアア!!!
とにかくあらゆる意味でまずは復活を祝し

てか凄ぇ、言うだけあるわ>>36生意気言ってスマソ

こちらは淡々と、今回の投下、入ります。

>>28

「風?」
「風花、武装解除!」
「わあっ!」
「やあーん、もうっ!!」
ドラえもんと、離れて飛行していたしずかを除き、それは甚大なる被害をもたらしていた。
「あった!着せかえカメラーっ!!サンプルモード連続撮影…」
「あっ」
「おっ」
「おーっしっ!ゴーダ戦隊ジャイレンジャー!しゅつどおーっ!!」
「オーッ!!」
空中であたふたしていた面々が、ジャイアンの号令で心機一転、
呼称はこの際おいといて拳を振り上げ再び取り囲みにかかろうとした。
「…危ないっ!」
ぼうっとともった怪しい光にドラえもんが叫び、ジャイレンジャーが空中で一斉に散開する。
「気を付けてっ!衝撃波を帯びたビーム攻撃だっ!!」
「あの子も魔法使いっ!?」
ドラえもんの声にしずかが叫ぶ。
「野郎っ!」
相手を同年代と見たジャイアンが屋根に降りて突っ込み、
一瞬で吹っ飛ばさたジャイアンが、空中でのび太とスネ夫に背中を支えられた。
59のび太のin麻帆良祭:2008/09/20(土) 01:00:41 ID:???
>>58
「やるじゃん、奥の手だっドッカーン!」
ジャイアンの装着した空気砲による砲撃は、
差し出された掌の少し先でことごとく粉砕されて空気に戻っている。
「わっ!」
「ひらりっ!!」
「サ、サンキューとドラえもんっ!」
気が付いた時にはすぐ目の前に相手の全身が見え、
間一髪、間に入ったドラえもんのヒラリマントが軌道を変更していた。
「このっ!…わっ!!…」
空中で取り囲んだドラえもんと男子三人がショックガンと空気砲で
一斉射撃を掛けたが、僅かな動きでするすると交わされ
あるいは謎のバリヤーでダメージを与えられない。
「わあっ!わあっわあっ!!」
最も正確的確な射撃により交わしきれないと読まれて
そちらに防壁を集中しての正面突破を仕掛けられたのび太が悲鳴を上げる。
「大丈夫ですかっ!?」
遠くから女の子の声が聞こえ、
間一髪、相手の意識が横合いからの攻撃に向いた事でのび太が救われる。
「ふーっ」
「引き揚げっ!」
「え?」
ドラえもんの声に、一息ついたのび太が間抜けな声を出す。
「昨日の魔女っ子だよっ!」
「あっ、そうなのっ!?」
こけおどし手投げ弾が投げ入れられる中、
スネ夫の声にのび太も慌てて石ころぼうしを被って撤収準備に入り、
空中をダッシュで引き揚げるのび太は一瞬、急接近してすれ違う愛衣の真剣な横顔を見た。
60のび太のin麻帆良祭:2008/09/20(土) 01:03:45 ID:???
>>59

「大丈夫かしらのどかさん…」
急遽現場離脱したはいいが、そもそもの事態は解決していないので、
空中でしずかが心配そうな声を出すのも無理からぬ事。
「そうだね、ちょっと待って」
ドラえもんがスパイセットを取り出す。
ウィッグの首の様なそれは、
目玉型のカメラと耳型の盗聴器が空を飛んで標的をとらえ、
その結果はウィッグ型本体の口にあるモニターテレビで把握出来る。
「ちょっと見せて」
のび太がドラえもんの後ろから割って入る。
「えーっと、あれかな?あの星の髪飾り…」
のび太とドラえもんが一瞬目を見開いてべろんと舌を垂らし、
ドラえもんがぶつんとモニターのスイッチを切って咳払いをした
「な、なんだよのび太?」
「どうしたんだよのび太ドラえもんっ!?」
「いやなんでもないなんでもない」
空中で押し問答が小一時間(大げさ)。
「もうっ!」
しずかが本体を取り上げスイッチを入れる。
「あれかしら?一緒にいた、鈴、の…」

ザザァ…ン

しばらくそのままでお待ち下さい

講○社○学館

しずかが無言でスイッチを切る。
61のび太のin麻帆良祭:2008/09/20(土) 01:06:49 ID:???
>>60

「何だろ、あれ?」
再び空中からの探索を開始したドラ・パーティーの中でスネ夫が言う。
「えーと、神社だね、でもどんどん人が増えてる」
パンフを手にドラえもんが入った。
「行ってみようぜ」
ジャイアンが言い、一同が龍宮神社周辺に着地する。
「凄い人出」
やけにゴツイ人だかりの中でしずかが少し不安そうに言う。
「えーと、まほら武道会…」
「格闘イベントかよ!」
ドラえもんが見付けた張り紙に、腕まくりしたジャイアンの鼻からプシューッと噴射する。
「賞金…いっせんまんえんっっっ!?!?!?」
「ええー!?」
のび太の絶叫に他のメンバーも同調した。
「ねえ、これこれこれ!」
スネ夫が何かを見付けていた。
「これ、さっきもらった号外だけど」
「M&A、って何?」
「主催者が…」
のび太の疑問を余所に、一同の目はそこに集中した。
「行ってみよう!」
62のび太のin麻帆良祭:2008/09/20(土) 01:10:15 ID:???
>>61

「うひょー!」
「もうっ」
ジャイアンが奇声を上げ、スネ夫とのび太とドラえもんも前のめりに舌を出しそうになる。
そんなレースクイーンと見まごうお姉様の司会で開会式はスタートしていた。
しかし、その名が出た時、ドラ・パーティーの表情に緊張が走る。
「…あの人が…」
「…超、鈴音…」
どこかミステリアスで神秘的ですらある。けれんみがあるのかと思えば、
無邪気な少女の可愛らしい一面も覗かせる。
ドラえもんは、一目で理解出来る相手ではない事だけは理解した。
のび太とスネ夫とジャイアンは見惚れていた。
しずかも、ちょっと別の意味で見惚れていた。

「おーっしっ、いっちょ行くかぁーっ!!」
「ジャイアン本気なのおっ!?」
ブンと体の前で下向きに腕を交差するジャイアンにスネ夫が絶叫した。
「みんなすっごい強そうだよっ!いくらジャイアンでも勝ち負け以前に…」
「でもよー、何かさっき子供も参加してたぞー、俺とおんなじぐらいのなー。
それにほら、ちっちゃい女の子まで参加してる、いくっきゃねーだろっ!!」
「ジャイアン…」
ガハハと笑って人混みに消えていくジャイアンをスネ夫は呆然と見送った。

>>29
あーすいません、標的変更・源しずか、ってのは無理でした。
毎回楽しませてもらってます。

久しぶりの三競演への参加、嬉しく思います。

今回はここまでです。続きは折を見て。
63マロン名無しさん:2008/09/23(火) 12:12:28 ID:???
保守
64マロン名無しさん:2008/09/26(金) 00:52:31 ID:???
保守
65マロン名無しさん:2008/09/27(土) 03:04:43 ID:???
早いけど保守
66マロン名無しさん:2008/09/30(火) 21:42:39 ID:???
保守
67ドラネギ作者 ◆t69vA8A38s :2008/10/01(水) 14:39:09 ID:???
お久しぶりです。では、今回の投下、入ります。

>>62
「たけしさん、大丈夫かしら?」
「ゴリラぼうしの効果があるから意外といい線いくかもね。
それぐらいのハンディがあってもいいでしょう。
それより、わざわざ大金でM&Aしてまでこんな大会を開いたって、何かあるのかも知れない。
超鈴音が何を考えているのか、もしかしたら分かるかも。
なんかないかなんかないか…あった」
ジャイアンを除く一同がドラえもんの手に集中する。
「ツキの月ーっ!!」

「ジャイアンっ!!」
「たけしさんっ!!」
ドラえもんとスネ夫、しずかがズタボロのジャイアンに駆け寄る。
「達人から直接個人教授をうけたぞ。ひじょーにためになった!!」
「なかなかいい根性してるアル、五年後にまた来るヨロシ」

「何だとっ!?」
ドラえもんから事情を聞いたジャイアンが叫び声を上げた。
「ここに参加してるの、みんな達人の中の達人だぞ、死ぬ気かあいつっ!?」
「だったらとっくにつまみ出されてるよジャイアン」
スネ夫が軽口で言った。
「おーっとっ!!」
司会者クイーン朝倉和美の派手な煽りがまた響き渡った。
「これは…クロスカウンターです、クロスカウンターの群れですっ!!
一人二人三人四人…リングの中の選手全員にクロスカウンターがめり込んでいます。
いや、どうやら、辛うじて無傷の選手がいる様ですねぇ…
大豪院ポチ選手と…これは…」
68のび太のin麻帆良祭:2008/10/01(水) 14:40:31 ID:???
>>67
相変わらず思わせ振りな前振りだが、和美が驚いていたのは本当だった。
「少年…子供です。こちらも子供ですっ!
小学校高学年ぐらいの男の子っ!手元のデータによりますと…
テ○ィ・ザ・ノビー、熊さん帽子がキュートなテ○ィ・ザ・ノビー、
恐るべき強運かそれとも目にも止まらぬ早業か、
外部参加で詳細なデータは不明、
しかし、また一人少年戦士の決勝トーナメント進出ーっ!!!」

「取りあえず、予選通過したよドラえもん」
予選を終えたのび太がドラえもんに言った。
「うん」
「すごいわのび太さん」
「いやー、えへへー」
「何だよ、運が良かっただけじゃん」
スネ夫が言う。
「決勝トーナメントってすっげぇ強いぞ、どうすんだよのび太?」
ジャイアンが真面目な口調で言った。
「そうなんだ、予選はうまくいったけどみんなすっごく強そうだった」
「それは追々考えるしかない。
とにかく、目的は超鈴音に関する手がかりを集める事なんだから」
ドラえもんが言った。
69のび太のin麻帆良祭:2008/10/01(水) 14:41:38 ID:???
>>68

「あれ、のどかさん達と…あの魔法使いの男の子?」
「えっ?」
そちらを見たドラ・パーティーが首を傾げる。
先ほどまで襲われていた方と襲っていた方が実に和気藹々としている。
「あれーっ、しずかちゃんじゃないー?」
「あ、ハルナさん」
「どーも」
仕方がないので、覚悟を決めて一同がそちらに合流する。
「さっきはどうも」
「いやー、お役に立てないで」
ぺこりと頭を下げるしずかにハルナがカラカラ笑う。
「あのー、大丈夫ですか?」
のび太がぼそっとハルナに尋ねる。
「しずちゃんのバイオリン…」
「ああ、凄いもの聞かせてもらった。まあ、これも経験だね。
ネタはあるに超した事ないからさ、これでも慣れておけば何かの役に立つかも知れないし」
ハルナが苦笑いする。
「ノビさんですか、ネギ・スプリングフィールドです」
ネギがぺこりと頭を下げ、一同硬直する。
「あ、ああ、ノビです」
のび太がぎくしゃくと頭を下げる。
「あの、のどかさん」
しずかがのどかに小声で声を掛ける。
「はい」
「その、さっきこのネギ君に襲われているみたいに見えたんだけど…」
「あ、ああ、あれですか、あれはそのー、えーと、
ネギせんせーがスーパースタミナまんを食べ過ぎてしまいましてー」
70のび太のin麻帆良祭:2008/10/01(水) 14:42:46 ID:???
>>69
「先生?」
しずかが改めて聞き返す。
「そうなんです、十歳ですけど大学まで出てて学校の先生なんですよー」
「飛び級ですか、凄いなー」
「いえー」
スネ夫の言葉にネギが頭を掻く。
「でも、本当に大丈夫なんですか?」
しずかが改めて聞き返す。
「だーいじょうぶ大丈夫、いっつもはとーってもジェントルマンの英国紳士なんだから、
じれったいぐらいにねーのどかー」
「ハルナー」
「でもネギ先生?決勝トーナメント進出って事は強いんだよなー」
ジャイアンが言った。
「うん、すっごく強いんだって。ノビ君も進出でしょう」
ハルナが言う。
「え、ええ…」
「えーと、僕達はそろそろ…」
ドラえもんが言う。
「じゃあ、明日試合で」
「うん」
爽やかに言うネギにのび太が応じるが、無論、自信は無い。
「魔法使いと繋がっているのなら、うかつに近づかない方がいいかもね」
スネ夫が言う。
「のどかさんやハルナさん、いい人なんだけど。ネギ君も悪い人には見えなかったわ」
しずかが言った。
71のび太のin麻帆良祭:2008/10/01(水) 14:43:54 ID:???
>>70

「よっ」
「え、僕?」
神社を出て、振り返った先で、セーラー服姿の少女がにかっと笑っていた。
「えーと…あ、ゆーなさん」
「そ、なんか名前あったからもしかしたらって思ったら、やるじゃん」
「いやー、えへへー」
「ふん、のび太のくせに」
脇でスネ夫が呟く。
「頑張ってねーって言いたいけどさー、
うちの担任とかクラスメートも決勝トーナメントいっちゃってるんで、ま、頑張って」
「はい」
よく分からない日本語を使う裕奈にのび太も嬉しそうに答えた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
72マロン名無しさん:2008/10/04(土) 00:41:11 ID:???
保守
73Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 04:08:20 ID:???
どうも、半月放っておいてしまった作者です。
小説って書くのは難しいですね、すみません。
投下します。

>>62 ドラネギの作者様、乙です。
のび太が決勝進出とは、予想できなかったな……
続きが楽しみだ。
あと、私の戯言など気にせず、頑張ってください。

そういや、原作10巻までしか読んでない(汗
74Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 04:09:41 ID:???
しかし、刹那がそう意義込む一方で、それを達成するには最初にして最大の問題が存在した。
そもそも、どうやって敵であるマイケルを「倒す」かである。

刹那は野太刀「夕凧」を愛用の武器として使用している。
流派は「神鳴」。
京を守り、魔を滅ぼすといわれた、数百年の歴史を持つ剣の流派だ。
接近戦には滅法強いが、基本的に近接戦闘一点ばりの戦い方を得意とする。

しかし、マイケルはどうだろうか?
先日あったばかりの男だ。戦法や使用する武器などの情報は皆無に等しい。

「後ろにコンテナのようなものを背負っていたが……もしかしたら、あれから武器を出すのか?」

気になる点といえば、彼のパワードスーツの後ろにある、その身長ほどあろうかという巨大な二つのコンテナ。
それは、故郷である京都の物語に登場する男、弁慶のかつぐ武器の入った巨大な籠を思わせるような存在感だ。
あれが武器として使われるのなら?
確かに普段の生活に使うにはあれはあまりに大きすぎる、かといって武器として使えそうな外見はしていない。
となると、あれだけ巨大なコンテナから武器を取り出すと考えられるわけだが、そうなれば考えられるのは持ち運ぶ数の少なくていい刀より、真名のような多数の銃火器を使

用した戦い方なのだろうか。
真名はよく戦闘には複数の武器を持って出て行く。あの中にも、多数の銃火器が入っていると考えたほうがいいかもしれない。

もし、そうだとすれば……戦闘は射撃戦VS格闘戦になることになる。
銃器相手になれば、リーチの短いこちらの不利だ。
うまく懐に入ればこちらに手はあるが……だとしても、あの男がそんな隙を見せるだろうか?
それに、万一近づいたところでマイケルは鋼鉄製のスーツを身にまとっており、夕凧相手ではどこまで通用するかわからない。
75Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 04:10:18 ID:???
しかし、そんなことでへこたれないのが桜咲 刹那。
勝率が不安なら、増やすよう努力すればいいこと。
ならばと、彼女はクラスメートの有志に協力を仰ごうとした。

これは、その時の彼女たちの様子である。



VS 長瀬 楓  職業 忍者  線目


「ん〜〜〜〜……」

昼休みの校舎の屋上。
コートが張られているそこは、昼休みに集団で昼食を取るのに利用する生徒も多い。
さて、その中に中学生と思えぬ背の高さを持つ少女と、対称的に少々低い少女。
楓と刹那という、なんとも奇妙なカップルが座り込んでいた。

事の始まりは、昼休み開始直後から始まる。
いつものように仲良しグループの風香、史伽3名と食事を取ろうとしていたところ、刹那が話があるといってきたのだ。
おなじ職業柄とはいえ  首を傾げるが、かなり深刻そうな顔をしていたので、これは一大事だと思い、双子に先に食べるように行って、刹那と二人で屋上に向かったのだ。


それで、言ったはいいが彼女にしてみては何故かもじもじとして言いよどんでいたため

「クラスメートなのだから、どーんといってみろ」

なんて聞いてみたところ帰ってきた返事が

「……担任を倒すため、協力してほしい」
76Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 04:11:44 ID:???
とのこと。
これにはさすがの楓も目が点、いや線にならざるを得ない!
その返答に窮し、今現在うなっているところというわけである。

楓にしてみても、刹那の言い分もわからないまでも無い。
考えてみれば、情報にはない相手が自分のクラスの担任になっているのだから、警備を任された彼女の立場上としてはとしては彼を警戒するのは当たり前の行動だろう。
が、なぜこうも必要以上に警戒する必要があるのか?
それも担任となってから幾週間も経っていないというのに排除するという飛躍した答えが飛び出るのか、楓にはさっぱりわからない。

しかし、いくらそんな馬鹿げた頼みでも、目の前にいる彼女にとっては至って重大な決断なのだろう。
その頼みがいかにとんちんかんなものであっても、クラスメートだと言った手前、ここは真面目に答えておくべきだ。

「残念でござるが……手助けはできない。
 拙者としては、もう少し様子を見たほうがいいでござるよ」

「……なぜだ?」

刹那が不満そうな顔を楓にむける。
自分の考えにそれなりに自信を持っているのだろう。
責任感が強いというのは警備員としては優秀だが、此処までくれば重症だ。

「マイケル先生が担任になった理由は、拙者にもわからん。
 でも、それだけで行動に出るようでは早計すぎると思うでござる。
 状況を見極めるためにも、もう少し時間が必要でござらんか?
 それに、人というのは第一印象でそうそう決まるものではござらん。
 というか、刹那殿もそこの所はよ〜〜く知っておるでござろう??」

「う、それは……そうだが……」
77Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 04:12:25 ID:???
この上なく正論。その上痛いところを突かれて、押し黙ってしまう刹那。
実は、刹那のこの暴走癖は今に始まったことではないのである。
この状態ですら、学園の仲間達の必死の努力によって昔に比べればとても改善されたほうだ。
それこそ昔――この学園に新入してきた時など、友達などおらずその生い立ちから仲間という概念を持っていなかった刹那にとって、日常生活は「木乃香を守る」ということ

しか存在しなかった。
木乃香に近づいた者は、刹那が怪しい奴と認定された瞬間に、二度と近づかないように滅多切りにあっていたのである。
それは2−Aの顔ぶれによって今では収まっているが、あの時は苦労したものだ。

そんな過去がしみじみと頭の中をよぎる楓。
その傍らで、刹那が腕を組んでうんうんとうなっている。

確かに、刹那は少々?短絡的なところはあった。
それは彼女自身も認めている問題ではある。
正直、あの過去は自分の中では黒歴史に入るものだ。

しかし、事は急を要しているのだ。
こと木乃香の事となれば、わずかな遅れや油断が致命的なものとなるのである。

しかし、木乃香関係のことは学園長に口止めされているが故に、木乃香の特質というものを楓は知らない。
刹那はそう思っているから、楓は非協力的なのだと思っているのである。

「それに……拙者はマイケル先生は中々面白い先生でござるよ♪
 風香と史伽の二人もずいぶんと気に入っている様子でござったし」

(結局それが本音かーー!!)

シリアスなムードを一瞬でぶち壊した、楓の言葉に刹那はがくっと首を落とす。
78Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 04:23:42 ID:???
「まー刹那殿も、そうそう気を荒立てずに、のんびりとすごしてみてはどうでござるか〜〜」

ふらふらと屋上を出て行くクラスメートの後姿を見ながら、刹那はあきらめ、次をあたってみることにした。



VS  エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル 略エヴァ 決して突撃銃ではありません。


次に当たったのは、クラスの高嶺の花?ことエヴァンジェリン。
見かけこそただの10歳の少女だが、その正体は何百年と生きてきた吸血鬼、真祖の姫君。
魔法界を震え上がらせた、最強といわれる部類の魔法使いなのである。
ずいぶん前に力を封印されたとはいえ、学園でも指折りの実力を持つ少女である。
なぜその彼女がこの学園にいるのかは不明である。

クラスメートとはいえ、かつて闇の福音と呼ばれて恐れられていた少女。
それもプライドの塊といってもいい彼女が、こんな自分の頼みを聞いてくれるとは思えないが……。
確か、情報では保健室にいるはずだ。
ということで一応、頼んでみてみることにしたのであった。
79Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 04:24:44 ID:???
「断る」

が、その結果はこの即答だった。

クラスメートからエヴァが保健室にいると聞いた刹那が、ベッドに寝ていた彼女にカーテン越しに先ほどの問いをした所。
返ってきた返事は、刹那の返答すら許さないかのような単純かつ簡潔な一言だった。

やはり、無理だったか。
などと内心でため息をつきつつ、刹那は彼女の機嫌を損ねないうちに、他の所を当たろうと腰を浮かそうとしたところで。


「奴を倒すのは、この私一人だけだからな……」


怒りを押し殺そうとしたような声で、そんな言葉が耳に入った。
何を言っているのだろうかと、刹那が顔を上げ、その瞬間、彼女は固まってしまった。

見舞いに来た客をカーテン越しで話をするのはさすがに失礼だと思ったのだろう。 
刹那とエヴァを隔てた布が彼女の従者によって取り払われ、開けられた視界の先にいた少女は……。
頭に氷水を十分に入れた袋を、彼女の従者がかぶせている状態だったからである。
80Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 08:04:26 ID:???
「あの、その、エヴァンジェリンさん、それは?」

「マスターはマイケル先生の挨拶の際、放たれた黒板消しで頭部に重大な損傷を負っている状態なのです。
 命に別状はありませんが、傷があまりにも深いので、治癒魔法では完治が遅くなるということで、こうやって頭を冷やしているのです。」

「茶々丸、『マイケル』だ『マイケル』。
 あの男に先生などつける必要は無い」

あ、そういえば、と。
マイケルが入ってきたとき、なぜかエヴァは机にめり込んだ状態で、しばらく動かなかった。
授業が終わったころにようやく彼女の異常に気がついたほかのクラスメートによって、保健室に運ばれたのであった。
あれは寝ていたのではなく、頭部に猛烈な衝撃を受けて気絶していたのだ。

診察の結果、魔法を使っても完全に治すことができなかった。
そのため、頭部に巨大なたんこぶを残すことになったエヴァは、時折茶々丸に頭を冷やされながら治癒魔法によって傷が引くのを待つ日々である。
いくら黒板消しといえど、弾丸のごとく放たれた物体を頭に受けて、たんこぶ程度で済んだのも恐ろしいが……。
どうやらエヴァはそれをひどく根に持っているらしい。
81Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 08:05:49 ID:???
「というわけだ、刹那。
 貴様があいつに何をたくらんでいるかは知らんが……あの、あのふざけた男にはこの私自身が氷の鉄槌を下さなければならんのだ。
 誰の助力も借りん、自分の力でな。
 真祖の姫を怒らせればどうなるか思い知らせてやるぞ?
 それはもう徹底的に徹底的に徹底的に……。
 フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

「……マスターは花粉症で少々ハイになっているみたいです。
 刹那さん。申し訳ありませんが、他を当たっていただけませんか?
 このままではマスターがまた暴れだします」

花粉症でどうなれば、そのような症状を引き起こせるのか?
まあ、この状態で協力をしてもらったなら、それこそ学園が氷漬けになるような騒動を引き起こすだろう。
基本的に不干渉の立場をとっていた彼女がここまで人に興味を持ったことにクラスメートとして喜ぶべきか悲しむべきか……。
何れにせよ、協力は取れそうにもない。

次の目的地へ向かうため、刹那は保健室を後にし、校庭へと歩みを向けた。
目的地は、今の時間帯部活をしている格闘少女の元である。
82Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 08:07:15 ID:???
VS  古菲  (クーフェイ)  作者はしゃべり方が超との区別がつきません


「マイケル先生?ああ、よくウチの部に遊びに来るアルよ」

古菲は中国武術研究会に所属しており、現在はその部長を務めている。
放課後は外で訓練をしている。
いつものように部活をしていた古菲を訪ねた刹那。
さすがにストレートに言うものではないな、ということでまず彼女に、マイケルのことを聞いてみる。
と、信じられないような答えが入ってきた。

「く、古菲。マイケル先生について何か知っているのか!?」

「いやあ、先生が前に学園の中を歩いていたときに、偶然ウチの部活の練習時間にぶつかったアルね。
 その時、一回手合わせしてもらったアルよ。
 さすが先生名乗るだけアルアルネ。
 隙見せたら一気に畳み掛けられてしまったアル。
 まだまだ私も修行が足りない見たい。
 あの巨体がCQCを使ってきたときはさすがに驚いたけど」

 教師になるのに格闘技が必要なのかどうかはわからないが、刹那は別のところで驚いていた。

「し、CQC!?」

「お、刹那もCQC知っているアルか?
 CQCは、アメリカ軍の開発した格闘技アルね。
 いや〜やっぱり本場の兵隊はめちゃくちゃ強いアル!」

「あ、アメリカ兵!? そんな……なんで……なんでそんな奴が担任に!?」
83Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 08:08:00 ID:???
「……もしかして刹那、マイケル先生が元軍人だって気がつかなかったアルか?」

「!! う、い、いやだった本人はいっていないし……」

「あのスーツ見たら少なくとも軍人か何かだって誰だってわかるアル。多分クラスのほとんどは気がついていたと思うアルよ」

残念!
刹那、バカイエローに撃沈。


おお、刹那よ! 死んでしまうとは情けない!



VS 龍宮 真名  無類のガンオタク


「ふふふふふふふ」

休み時間。
人気の無い、それでも開けた空間の一角で自分の狙撃銃を磨きながらうっとりと見つめる、変人。
それが彼女の数少ない友人、龍宮真名である。
この二人は普段から気兼ね無く話せる仲なのだが、この時ばかりはどうも話しかけにくい。
84Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 08:08:54 ID:???
「あ、あの〜。真名?」

愛用の武器を整備するのは、戦士として当たり前のことではあるが。
こんなところで笑いながら銃器を磨くのは、彼女限定の発作である。
さてこの少女が刹那にとって最後の頼みの綱であるのだが、内心恐る恐る話しかける刹那。
しかし、彼女は明後日の方角を向いたまま、笑いながら銃器を磨いている。

へんじはない。
ただのしばかねのようだ!

せつなは、きょくだいざんまけんをつかった!



「何人に向けて刀を振り回しているんだ、刹那?」

刹那の斬撃を喰らい、所々焦げた真名が刹那を睨みつけている。

「何を言っているか。
 お前がまた異世界にトリップしているからではないか。

「それはそれで手加減とかそういうものをだ……まあ、いいか。
 所でこんな時間に私に何の用だ?」

「ああ、そうだった。(危うく忘れるところだった……)
 でだ、マイケル先生のことについてなんだが……」

「マイケルだとお!?」
85Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 08:13:16 ID:???
刹那の口からマイケルという単語が飛び出した瞬間、いきなり真名が刹那に覆いかぶさってきた。
そのままの体制でもつれ込み、刹那を下に、真名が上に覆いかぶさるような体制で床に押し付ける。
目が血走り、鬼気迫った表情、おまけに服の所々が焦げて破けた姿はまるで、獲物を見つけた猛獣……いやゾンビである。

「まままままま真名!? 私はそんな気はないぞ!?」

「……ああ、刹那か。スマン」

「言う台詞が違うぞ、全く……一体どうしたというのだ?」

服についたほこりを払い落としながら、刹那が(叩きのめされた)真名に向き直る。
若干顔が赤くなっている。

「おお。そうだ!!
 いや、聞いてくれ刹那。
 この学園の連中は魔法使いばかりでな、銃を使う奴がおらんのだ」

「……それが?」

「だからだ! 私の話を聞いてくれる奴など一人もおらんのだ!」
86Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 16:04:49 ID:???
真名は一応魔法使いであるが、どちらかといえば「魔法という存在を知っている人間」であり、銃器を使った戦いを好んでいる。
世界レベルで見ればそんな魔法使いはめずらしいことではないが、銃器に関する厳しい法律があるここ日本では、銃器を持つ魔法使いというのは珍しい部類に入るのだ。
特に「純」魔法使いが多いこの学園では、銃を使うのは真名のみとなってしまうのである。
たまに整備などで工学部を訪れる事はあるが、彼らは機械として真名の銃を整備しているのであって、銃器マニアである真名には遠く及ばない。
さらに、目の前に親友は、刀を使う少女であり。
そんな刹那などが真名の話がわかるはずが無く。

要約すれば、この2年間かなり話題に飢えている状態であったのだ。
付け加えるならば、この発作もそれが原因である。

「……なんだ、そんなもんd」

「そんな問題だと!? 刹那、これは由々しき問題だ! 学園の風格にかかわる非常に大変な問題なんだ!」

先ほどと同じ、いやそれ以上に鬼気迫る表情で刹那につかみかかる真名。
目が血走るどころか白目も無く真っ赤になっている。
妖怪すら裸足で逃げ出してしまいそうな表情だ。

「わわわわわ、わかったから離れてくれ真名! 私が悪かった!」

「わかればよろしい!
 ……しかし、マイケル先生が私の銃器を見て、一目見てピタリと当ててきたんだ。いや、あの時は驚いたな」
87Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 16:05:46 ID:???

「お前の銃の種類を当てたのか?
(やはり、軍人なのだろうか……?)」

「ああ、先生はアメリカにいたお方でな……。おまけに元軍人で、昔は世界を飛び回っていた経験もあるし
 ここでまさか話の合うお方と会えるとは思いもよらなかったな。
 それでだ、先生はAK47が好きらしくてな……私は形はロシア製は好きだが安全性ではアメリカン……おい、聴いているのか刹那」

「あ、あのだな真名、私はちょっと」

「ああ、マイケル先生の情報だろ?何度でも聞かせてやる。
 マイケル先生が背中から巨大なミニガンを出したときは喜びのあまり気絶しそうになったな。
 ああ、あの姿はいつ見ても美しい、長大な砲身やずらりと並んだ銃口、側面に存在する巨大な弾帯は絶頂すら覚える。
 ほかにもな……おいこら、寝るな刹那、で、それがだな……」
88Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/10/05(日) 16:07:02 ID:???
投下終了。
さるさんくらって少し寝てたらこんな時間になっちまった!

近況報告
GTA買ったけど、PCのスペックが悪くてできないオワタ
89ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/10/07(火) 19:43:12 ID:???
実写化キタアアァァァァアアアアア

すいません、それだけです
90マロン名無しさん:2008/10/08(水) 00:42:47 ID:xQft25o7
何の?
91マロン名無しさん:2008/10/08(水) 12:26:25 ID:/L5Ti+PP
クレしんアッパレ戦国が実写化するらしい
ついでに保守age
92マロン名無しさん
保守