HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました part8
にゃおーん
3 :
マロン名無しさん:2008/07/16(水) 03:40:20 ID:k1kTWmMr
即死回避
我らはSS投下者の代理人
保守のスレッド代行者
,___
/゙ ` ̄ ̄`-,―ー,ハ、 _ ,--、 ,_
l | ゙//:´::::|(二二,)
゙l \ヽ`ー―−- - | ,iii,,ゝ:::::|(二二 ) 我らが使命は
| _`、_ 。 。 。.|。 。,ii,l iノ ̄ヽ(゙~l`) 投下者に襲う規制を
゙l i ` ̄~`tーーl_,_:/:lヽ、___,/-´ そのレスの最後の一片までも
゙| i ー´~l::::::::::::::::://::::_,(二) ―――保守する事―――
l i |::::○ ::::○::::: | ,ー´
l, i イ ゙l::::::::::::::::::::::::::|i:::|ヘー、_
く i i |:::(二)ヽ::::::::::|i:::|lノ ゙゙ `ヽ
゙ゝ`i ノ ,i⌒i⌒i⌒l~ヽ i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー、
<´ゝ- (二| ,i l i , |iiニ,__i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
゙\ ,_,ー´ ̄ー ,/ /:゙ヽ,_,_,_,,ノ゙> |i:::|y _,ー´ ̄/
ヽ ヽ, _-ー´,,ノ:::::::。,>`-ーー、,ゝ.|i:::| i  ゙̄/
|ー,く (,_,ー゙ ̄´ :::::::。゚::: )/ゝ::/ ゙̄/゙|i:::| ,i ヽ_」
゙| ヾ\ \:::::::::::::::。゚:::::::::i// / , .|i:::| \i ,l/
ヽイ-`ヽ ゙\;:::::::::゚。::::::::。\_,/゙。 .|i:::| ヽ, l゙
\ \ヽ \ ゙\ :::::::゚。_。゚:::::::`\ 。 .|i:::| 丶 ,|ノ゙
住民諸君、保守ご苦労
さようなら
一乙アナルボンバー
a
ルイズは泣いていた。ラ・ヴァリエール家の中庭に有る、一つの池。そこに浮かぶ小船の中で、ルイズは毛布を被って
泣いている。母の叱責から逃れたら、何時も決まってここに逃げ込むのだ。そこは、自分の他には誰も近付かないから。
そんな自分に、声をかける者がいた。年は十代の中頃、羽根付きの帽子を被り、顔は見えない。だが、ルイズには
分かった。親によって許婚と決められた、憧れの子爵様だから。
「子爵様、いらしてたんですか?」
「今日は君のお父上に呼ばれたのさ、あの話でね」
「悪い人ですね、子爵様は・・・」
涙を拭い、なるべく普段の表情で子爵を見つめる。相手は目前に方膝を付き、ルイズの頭を優しく撫でた。
「ルイズ、君は僕のことが好きかない? それとも、嫌いかな?」
「そんなの、好きに決まっておりますわ。でも、私は小さいから良く分かりません・・・」
それを聞くと、男は笑った。撫でている手とは逆の手を、ルイズに差し出す。
「ミ・レィディ、手を貸してあげよう。君のお父上には、僕が取りなしてあげるから」
「は・・・はい、お願いします」
手を取り合い、小船から中庭に降り立つ。向こう側から母や召使達が駆け寄ってくるのが、ぼんやりと見えた。
「・・・・・・・・・あれ?」
ルイズは自分のベットの上で、目蓋を開けた。時刻は草木も眠る丑三つ時、窓からは双月の光が差し込み、ルイズの
周りを祝福するかのように光り輝かせている。
棺桶の一つからは、Zの大文字が幾つも連なった声が漏れ出ている。どうやら、セラスはぐっすり寝ているようだ。
壁際に立てかけられた剣からも、小さいながら声が漏れている。まさか剣が鼾をするとは、流石のルイズも『予想外デス』
静かに寝てくれよと思いながら、ルイズはベットから抜け出し窓枠に両腕を乗せると、過去への想いを馳せるのだった。
ルイズが二つの月を眺めている頃、フーケは監獄の中でベットに寝転び脱獄の方法を考えていた。
だが周りには粗末なベットと木の机の他には、何も無い。ご丁寧なことに、食器は全て木製であった。もし収監されたのが
西川寅吉や白鳥由栄であったならば、それでも脱獄できただろう。日本の脱獄トリオなど、フーケが知る由も無いが。
「まったく、女一人を閉じ込めるのにこの物々しさはなんなんだい? 女を敵に回すと恐ろしいって言うってのにさ!」
そう言って不満を漏らすと、フーケは自分を捕まえた二人の使い魔の事を思い出す。鳥の如く弾丸を操る黒髪の女、
ゴーレムにすら穴を開ける大口径の銃を持つ女。どちらも、ただの人間とは到底思えない。
「たいしたもんじゃないの、あいつらは・・・あん?」
監獄が並んだ階の上から、音が聞こえるのに気付いた。それは足音、誰かが近付いて来る音。ガシャガシャと拍車の音を
響かせながら現れたのは、長身で黒いマントを付けた人物。白い仮面で顔を隠し、長い杖を握っている。
「こんな夜更けに客人とは珍しいね、悪いけど茶飲み話なら諦めておくれ。ここには茶を飲むための道具も無いし、話す事も
無いんだから。それでも良いってんなら、どうぞ鍵を開けてベットに座りなさいな」
フーケの挑発的な言葉にも、マントの人物は反応しない。ただ黙って、フーケを見つめている。気味の悪い態度に、フーケは
鉄格子を握り締めて更に挑発する。
「何とか言ったらどうなんだい、変な奴だね。それとも私を殺しに来た刺客様かい、だったら無駄足だったね。どうせ私は
縛り首、遅かれ早かれ地獄行なんだから!」
両手を広げて降参のポーズを示しながら、フーケは相手の隙を窺っていた。杖が無くとも、体術で相手を倒せるかも
しれない。そのためにも、なんとか油断させて中に引き込まなくては・・・
「私は君と話をしに来たんだよ、マチルダ・オブ・サウスゴータ」
いきなり自分の貴族名を喋ったため、体が硬直し顔が蒼白になる。平静を装いながらも、震える声でフーケは尋ねた。
「あんた、いったい何者だい? その名前を知ってる奴は、この世から滅んだと思ってたけど・・・」
「我々はハルケギニアの将来を想い、国境を越えて繋がった貴族の連盟。我々の手でハルケギニアを一つに統一し、始祖
ブリミルが降臨なされた『聖地』を取り戻すのだ」
「バカ言っちゃいけないね、寝言は寝てから言いなさい」
呆れた顔をしながら、フーケは黒マントの男が言った言葉を一笑した。
小競り合いが続く四国を、一つにする? しかも強力な魔法を操るエルフから、『聖地』まで一緒に??
「そんな荒唐無稽な話、聞くだけ無駄だね。そんなもんに私は興味は無いし、係わる積もりも毛頭無いね」
「『土くれ』よ、お前は選択する事が出来る・・・協力するか、ここで死ぬかだ」
黒マントの男は、手にしている杖をフーケに向けた。鉄格子越しに魔法の攻撃を喰らったら、避ける事は出来ない。
「そんなのは選択するとは言わないわ、立派な強制よ。協力して欲しいなら、最初から言いなさいよ」
「それは、協力すると判断して良いのだな。では、我々と一緒に来てもらおう」
そう言うと錠に鍵を差し込み、扉を開けた。外に出ると、フーケを背を伸ばして首をコキコキと鳴らす。
「その前に一つ、聞いときたい事があるんだけど・・・組織の名はなんて言うんだい?」
「レコンキスタ、熱狂的再征服だ」
◇
翌朝、ルイズは何時も通り教室に現れた。後ろには、これまた何時も通りセラスとリップが同伴する。これまで散々に
セラスの魔乳を見ていたクラスメイトも、もう慣れたのか凝視する者はいなくなった。キュルケとタバサを除いては、だ。
二人はフーケ討伐の日から、セラスとリップを特別な目で見るようになった。理由は、二人が吸血鬼だと分かったから。
帰りの馬車でルイズに二人の正体を問い詰め、セラスとリップが何者かを聞かされた。それは、信じがたいほどの事実。
こことは違う、別の世界から来たこと ハルケギニアの吸血鬼とは、違う種族であること 太陽の光は大嫌いなだけで、
大敵では無いこと 非童貞または非処女ならば、幾らでもグールを生み出せること 心臓を貫かない限り、死なないこと
それを聞いて最初こそ二人を恐れたキュルケとタバサだが、ルイズの説明で害は無いと知ると、すぐに態度を元に戻した。
それから学園に着くまで、ハルケギニアと地球の情報交換が始まった。楽しげに話し合う双方を見て、ルイズは安心した。
因みにギーシュもセラスを吸血鬼だと知る一人だが、今の彼はモンモランシーと如何にして仲直りするかで頭が一杯だった。
「ねえ、ルイズ。貴女、その顔どうしたの?」
椅子に座ったルイズに声をかけたのは、香水のモンモランシーだ。水系統のメイジで、治癒を得意としている。
「顔? 顔がどうかした?」
「いや、なんか目の下にクマが出来てるから気になって。あと、涙の後があるから」
「あぁ、これね。昔の夢を見てる時に泣いてたみたいでね、途中で起きて眠れなくなっちゃって」
そう言いながら、腕で顔をゴシゴシと拭った。窓辺で月を見たあとベットに戻ったのだが、眠れないため何度も窓辺と
ベットを往復した。そのため、少し寝不足になってしまったのだ。
「そうなの? じゃあ、私の出番って訳ね」
そう言ってポケットから小さな瓶を取り出すと、机の上に置いた。
「飲み薬に改良した睡眠薬よ、また眠れなくなったら飲みなさい」
「あ、ありがと」
「良いって事よ。寝不足は肌の大敵、女にとって死活問題なんだからね」
手を振りながら、モンモランシーは自分の机に戻って行く。そこへ、ガラッと扉が開いて教師が入って来た。
「知っての通り、私の二つ名は疾風。疾風のギトーだ、これより授業を始める」
長い黒髪に漆黒のマントを羽織った不気味な姿に、教室中がシーンと静まる。その様子に満足すると、ギトーは
キュルケに顔を向けた。
「ミス・ツェルプストー、最強の系統は何か分かるかね?」
「『虚無』を含めてですか、それとも除いて?」
「除いてだ」
「ならば『火』ですわ、ミスタ・ギトー」
キュルケは不敵な笑みを浮かべて、そう言い放った。すぐ横では、セラスが壁に背を預けて座って寝ている。リップは
セラスの太股に頭を乗せて寝ている、言わゆる膝枕だ。
早速支援だ
支援
「『風』です。虚無を除いた四系統の呪文の中で最強の系統はどれでしょう、風でした。参りましょう、アタックチャンス!」
「ちょっと待って下さいミスタ・ギトー、キャラ変わってませんか!?」
「と言うのは冗談として、だ。ミス・ツェルプストー、君の得意な火の魔法を私にぶつけてくれないかね」
当然の爆弾発言に、キュルケを含めた全生徒が目を見開いた。『何を言ってるんだ、このオッサンは!?』と言う想いが、
駆け巡る。キュルケは少し悩んだ後、胸の谷間から杖を抜いた。
「分かりました・・・では」
笑みを消すと呪文を詠唱し、1メイルほどの巨大な火の玉を作り出した。周りの生徒が机の下に隠れるのを確認すると、
杖を前に突き出して炎の玉を飛ばした。だがギトーは避けようとせず、杖を振るって炎の玉を掻き消してしまった。
それでも風の勢いは収まらず、キュルケまで吹っ飛ばした。杖を懐に仕舞い、ギトーは言い放つ。
「『風』が最強たる理由は一つ、『風』は全てをなぎ払う。『火』も『水』も『土』も、『風』の前では屈しざるをえない。
もしかすれば、『虚無』すら吹き飛ばすかもしれんな。君達の前で試せないのが、ちょっと残念だが」
椅子に座って不満そうな顔をしたキュルケを見ても、ギトーは気にした素振りを見せない。そこで何かを思い出したのか、
再び杖を握った。
「もう一つ、『風』が最強である理由を見せよう。ユビキタス・デル・ウィンデ・・・・・・」
呪文を詠唱していた、その時だった。教室の扉が開かれ、妙な格好をしたコルベールが姿を現した。
「どうしたんですかミスタ、今は授業中ですよ」
「ミスタ・ギトー、ちょっと失礼しますぞ!」
頭を下げながら入ってきたコルベールを見て、教師と生徒の頭に『?』マークが浮かんだ。何故かコルベールはロールした
金色のカツラを被り、ローブの胸にレースの飾りや刺繍などを施しているのだ。まるで、偉いさんを迎え入れるかのように。
ギトーの隣に立つと、コルベールは重々しい調子で言った。
更に支援を。
……さるさん規制対策って、どのくらいの時間かけるんだろう。
もっと支援
支援せざるをえない
支援豚ども 支援時間だ
「皆さんに大事な知らせがあります、そのため今日の授業は中止とします!」
『中止』と言う言葉に、生徒達から歓喜の声が上がる。ギトーだけは違うが、気付かずコルベールは続ける。
「皆さん、本日は我がトリステイン魔法学園にとって喜ばしい日です。恐れ多くもアンリエッタ姫殿下が、ゲルマニアご訪問
の帰りに、この魔法学園に立ち寄られるとのことです。したがって本日の授業を全て中止し、全生徒と全教師は正装して門に
整列すること!」
生徒達は授業中止の理由を知ると、一斉に緊張した表情になり頷いた。ギトーも姫殿下では中止も仕方無いと諦め、頷く。
コルベールは目を見張って大声で吼えた。
「諸君が立派な貴族に成長した事を姫殿下にお見せする、絶好の機会です! 御覚えが宜しくなるようにキチンと杖を磨いて
おきなさい。では、解散!」
そう言ってコルベールが扉を指差した時、頭に乗せていたカツラが床に落ちた。席を立とうとしていた生徒が、くすくすと
笑っている。そこへ本を閉じたタバサがコルベールの焼け野原と化した頭を指差して、ポツリと呟いた。
「ハゲ茶瓶」
教室が吉本劇場のように爆笑に包まれた、キュルケが腹を抑えながらタバサの肩をポンポンと叩く。
「今の、良かったわよタバサ。ミスタ・ギトー、タバサに座布団を一枚」
山田君の代理を頼まれたギトーも、口と腹を抑えて悶絶していた。コルベールは沸騰したヤカンのように顔を真っ赤に
させると、大きな声で怒鳴った。
「黙りなさい! ええい黙りなさい、糞蛾鬼どもが! 人の前で大口を開けて笑うとは、貴族にあるまじき行為! 貴族とは
笑う時は顔を背けて、小さく笑うものです! これでは王室に教育の成果が疑われる、オマケにミスタ・ギトーまで笑って!」
「んが〜」
「はい誰ですか、人が説教してる時に寝てるのは?」
犯人はルイズの後ろで眠っている、セラスとリップだった。鼾をかきながら、セラスはリップの頭を無意識に撫でている。
リップは手で顔を擦っている、まるで猫だ。コルベールは顔を引き締め、ルイズに注意する。
「ミス・ヴァリエール、使い魔を起こしなさい」
「はい、今すぐに」
席を立ち、使い魔の元へ走り寄った。傍らに座り、セラスの肩を掴んで前後に揺する。
「ちょっとセラス、起きなさいよ」
「ぐ〜」
「セラス・・・セラス・・・・・・セラスったら!」
「ぐふ、お年寄りがねぇ・・・むにゃむにゃ」
揺すっても名を呼んでも、セラスが目を覚ます様子は無い。溜息をつくと、ルイズはセラスの耳元に顔を近づける。
その際に膝が頭に当たり、リップが目を覚ました。立ち上がって伸びをしてるのを横目に、ルイズはボソリと呟いく。
「・・・・・・ゴロンボ〜」
「は!?」
瞬時に目を覚ますと、セラスは周りを見回す。他の生徒は教室を後にしており、誰もいない。教壇で腰に手を当てた
コルベールが、二人に説明した。
「ミス・セラスとミス・リップは、ミス・ヴァリエールと行動を共にするように。急いで部屋に戻って襟元を正し、門に
整列すること」
それだけ言うと、コルベールはギトーと共に教室を出て行った。何が何やら分からないセラスは、ルイズに尋ねる。
「女王陛下が来る」のだと説明を受け納得すると、ルイズの後を追ってリップと共に部屋へ戻って行った。
◇
二台の馬車が聖獣ユニコーンに引かれながら、魔法学園へと伸びる道を進んでいる。馬車の扉には、王女が乗っている
事を示す紋章が描かれていた。そして周囲は王室直属の近衛隊である魔法衛士隊の面々によって、厳重に警護されていた。
街頭を通っていた平民達からは、歓喜の声が何度となく降り注いだ。馬車が自分達の前を通るたびに、
『トリステイン万歳! マザリーニ枢機卿万歳! アンリエッタ姫殿下万歳!』と、歓声が沸き上がる。だが馬車に乗る
王女アンリエッタと枢機卿マザリーニには、その声を穏やかな気分で聞く事は出来なかった。二人の間には今、政治の話が
取り交わされているのだから。
さあ、諸君 支援を行うぞ
「アルビオンの王党派は、すでにニューカッスル城にまで追い詰められてしまったそうですね。今は篭城戦だそうですが、
何時まで耐えられるか・・・」
「貴族派は多数のメイジや傭兵達によって、数は圧倒的ですからな。アルビオン王家は、もって数日で倒れるでしょう。
始祖ブリミルが授けし三本の王権のうちの一本が、これで途絶える事になります」
悲しげな顔で話すアンリエッタとは対照的に、マザリーニ枢機卿は極めて落ち着いている。流石は先帝が亡くなってから、
国の政治を一手に握っているだけの事はある。
「聞いたところによると、貴族派の者達はハルケギニアを統一するなどと言ってるそうですね。そうなると、ウェールズ
皇太子を亡き者にした後は我がトリステインに杖を向けてくるでしょう」
「その通りです殿下、だからこそ先を読み先に手を打たなくてはなりません。もはや成立は間違いないであろうアルビオン
新政府に対抗するためにも、ゲルマニア政府との同盟は必須なのですから」
同盟と言う言葉を聞いて、アンリエッタは視線を落とした。その姿を見て、マザリーニは慰めの言葉をかける。
「殿下、お気持ちは分かります。好きでも無い男と結納を結ぶ事が如何に辛い事かは、男である私ですら理解できます。
ですが、これも小国トリステインのためなのです。我が国だけでは、アルビオンに対抗する術は無いのですから」
だが、アンリエッタは顔を上げない。それ所か左手で右腕を抑え、全身が震えだした。様子が可笑しい事に気付いた
マザリーニが肩に手を乗せようとした時、アンリエッタが勢い良く顔を上げた。それと同時に右手からは、一輪の花が
飛び出す。驚く枢機卿に、ゆっくりと右手を差し出す。
「枢機卿、花を引っ張ってみてください」
「花をですか? まぁ、別に構いませんが・・・」
了承して花を掴み、ゆっくりと引っ張る。するとどうだろう、ハルケギニアに存在する国々の国旗が糸に繋がってスルスル
と伸び出て来たではないか。唖然とする枢機卿に、アンリエッタは悲しそうな表情で問いかける。
しえんしえーん
「カリオストロ公国大公家の継承者には、世紀の大泥棒が救いの手を差し伸べられました。では私には、救いの手が差し
伸べられるでしょうか。ねえ、枢機卿どの?」
まるで『茨ーの道も〜凍てつーく夜も〜、二人で渡って、行きたい〜』とでも言いたげなアンリエッタに、マザリーニは
二の句が告げられない。話題を逸らそうと、窓を開いて近くの衛士に声をかける。
「お呼びでございますか、鳥のほn・・・猊下」
「ワルド君、魔法学園には後どの程度で到着するのかね?」
「もうそろそろだと思いますが・・・あ、見えてきました。あちらです」
マザリーニが窓から顔を出して見ると、遠くに魔法学園の正門が見えた。顔を引っ込めるとアンリエッタに下車の用意を
するよう伝え、球帽を深く被った。
◇
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下の、おな――――り――――――ッ!」
魔法学園の正門をくぐった先にある、本塔の玄関前。そこに馬車が止まり、衛士の呼び声で王女が赤絨毯を踏み締める。
それと同時に整列した生徒達が、一斉に杖を掲げた。その中の一人、ルイズの横に立つ二人の使い魔も列に加わっていた。
リップはマスケット銃を掲げ、セラスはハルコンネンの代わりにデルフリンガーを抜き身の状態で掲げている。
「やっと俺ッチの出番が来たね、こんな時まで部屋に置きっぱなしにする相棒はヒデェ奴だなぁ」
「す、すいません・・・。でも私は剣とか扱えないし、武器はハルコンネンがあるし・・・」
「だったら弾切れの時の保険代わりでも良いから背中に背負ってくれ、そうじゃないと寂しくて死んじゃう!」
「ちょっと二人・・・って言うのは変だけど、静かにしなさいよ。女王陛下を前にして、失礼は御法度よ」
杖を掲げたまま顔だけを横にして、ルイズが一人と一剣を注意する。姫殿下と枢機卿を真っ直ぐ見つめていたリップが、
クスリと笑った。因みに今日は晴天で時間は昼前、二人の吸血鬼の真上には太陽が輝いている。どうやって日射を防いで
いるかと言うと、リップが右手で銃を掲げ左手で傘を掲げているから。その中にセラスが入ってる、相合傘の状態なのだ。
おまえの〜くちびる〜
男には男の世界がある
「あれがトリステインの姫ねぇ・・・うん、やっぱり私の方が美人だわ」
「ちょっと待ちたまえキュルケ、今のは聞き捨てならないね。姫殿下を侮辱するのは、この僕が許さないよ」
モンモランシーと隣り合っていたギーシュが、キュルケの発言に噛み付く。しかしキュルケは気にする事も無く、セラスの
背中に話しかける。
「ねえ剣さん、貴方は王女と私のどっちが美人だと思う?」
「そんなの、剣の俺には分からねぇよ。そう言う話は、人間さんで勝手に決めてくれ」
「そんなこと言わずに、どっちか決めてみてよ」
鞘に戻されたデルフを掴み、キュルケはなおも問いかける。少しカチャカチャと音を立てると、デルフは言った。
「ど・っ・ち・に・し・よ・う・か・な・天・の・神・様・の・言・う・通・り・・・うん、キュルケお前が美人だ」
「キャーやったわ、なんか良く分かんないけど私が美人に決定!」
一人で盛り上がるキュルケに笑みを浮かべながら、セラスはルイズを見た。学園長のオスマンと話をしている女王陛下
に見つめている・・・が、その時ルイズの顔に変化が起きた。何かに驚いたのか目を見開くと、顔を赤らめたのだ。
ルイズの視線を辿ると、そこには羽帽子を被り、髭を伸ばした貴族が立っている。なんだか妙チクリンな動物に跨り、
陛下を警護しているようだ。
「これはもしや・・・」と思いリップに顔を向けてると、同じ方向に視線を向けている。そしてセラスの視線に気付くと、
右手を握り締めた。何故か親指を、人差し指と中指に挟んでいる。それを見て、セラスはルイズと貴族の関係を理解した。
そして、その日の夜。
部屋で眠る準備をしていたセラスは、ベットに目を向ける。そこにはベットに腰掛け、枕を抱き締めてボーッとするルイズ。
昼間にロリコン貴族を見てから、ずっとこんな調子だ。このままだと消灯しても幽霊みたいに歩いてタバサに怒られそう
なので、なんとか眠らせることにする。
「マースタ〜、もうすぐ眠りの時間ですよ〜。ネグリジェに着替えてくださ〜い」
それでも、ルイズは動かなさい。どうしたもんかと考えていると、リップが隣に立つ。そして首に手刀を叩き込もうと、
右腕を振り上げようとした、その時。ドアが、軽くノックされた。
傷つけることを恐れるあまりに、冷たく突き放す愛もあるさ
「誰だろ?」リップがセラスに促す、『貴女が出なさい』との事だ。
ノックは規則正しく、初めに長く二回そして短く三回。何かの合図だと認識したセラスは、棺桶の横に置いたハルコンネン
を掴み取る。放射線マークの絵柄が描かれた弾薬箱から劣化ウラン弾を取り出し、薬室に詰め込む。ゆっくりとドアに
近付き、鍵を開けた。その瞬間、小柄で黒い頭巾を被った少女が飛び込んで来た。
「ちょっと、誰ですか貴女!? 不法侵入者には、誰何を3回して応答が無い場合は射殺する決まりに」
「待って下さい、私は怪しい者ではありません。ちょっと、ルイズに用がありまして」
「え、マスターにですか?」
セラスが銃を下ろすと、少女は懐から杖を取り出した。軽く振って光の粉を撒くと、頭巾を脱ぐ。そこでルイズが気付き、
ブラウスを着て立ち上がった。
「姫殿下!」
三人の前に現れたのは、昼に学園を訪問したアンリエッタ王女だった。ルイズが慌てて膝をつくのを見て、セラスも隣
に膝をつく。リップは突っ立っていたが、ルイズに睨まれたため大人しく膝をついた。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」
今日はここまで、そろそろリップに名ゼリフを言わせよう。
そういえばセラスって既に日光平気じゃね?
旦那の言葉を借りるなら、日光は嫌いなだけ、では無いでしょうか?
吸血鬼の本能で日光を浴びるのは嫌なんじゃないか。
アーカードでも太陽と流水は大嫌いだし。
アーカードは流水平気なんじゃね?
リオに行く時も棺桶入ってなかったし
さすがに落ちたらアウトだろう。
リップも旦那を海にぶち込もうとしてたし。
前スレ993ってセラス?
>>30 人は雨にぬれても死なないけど傘をさす
>>34 吸血鬼全般の弱点だから落そうとしたけど旦那に効くかどうかはわからないんじゃ
37 :
マロン名無しさん:2008/07/19(土) 15:50:46 ID:WT0q/hAm
ルイズ=アンデルセン
キュルケ=アーカードで突発的に書いてみた
投下する。ノリは軽め
38 :
マロン名無しさん:2008/07/19(土) 15:53:40 ID:WT0q/hAm
私の好敵手である「微熱」のキュルケの召喚した使い魔は恐ろしいものだった。赤い
コートに防止にサングラス、見かけは只の平民である。しかし私たちは声がでない。
誰も彼も固まったままである。皆一様に彼をみる。彼は私たちを見回し、目があう
生徒は皆脅えた。コルベール先生は杖を向けるがキュルケは左手で制止する。彼女
は使い魔に説明をし、契約を要求した。
「私に従僕になれと?」
彼はキュルケに訪ねた。
「ええ、そうよ」
彼女は髪をかきあげながら言い放つ。彼は肩を震わせ笑った。一歩も退かないキュ
ルケに私は改めて感嘆する。
「その前に教えて、あなた何者?」
彼は答えた。
「吸血鬼だ」
その瞬間言いようもない感情が私たちをつつんだ。しかし、私たちは声も上げ
ることができない。キュルケは嬉しそうに手を叩いている。
「では私も問おう。」
サングラスを取り赤い瞳が現れる。そしてその瞬間激しい悪寒が室内に充満する。
生徒達はあるものは失神し、あるものは逃げ出し、あるものは涙を流し笑った。
使い魔達の騒ぎ立てる音が無ければここは静寂だったろう。
「お前はわが主足りえるか?」
狂気のへばりついた顔に絶句した。元々声は出なかったが。キュルケはむっとして言った。
「主人に随分偉そうね」
彼女の言葉の後、私たちを覆った何かが綺麗に消え、使い魔は沈まった。
吸血鬼はキュルケに膝を付き、帽子を取った。
「名前は?」
彼は答えた。
「こう呼ばれていました。
アーカード」
支援、あとsageた方がいいのでは?
40 :
マロン名無しさん:2008/07/19(土) 16:00:40 ID:WT0q/hAm
しかし、私の彼に対する評価は一変する。
正直に言うと私はがっかりした。あの後皆部屋に戻り、残っていた私一人で居残りを
させられ、やっと成功した召喚魔法で呼び出されたのはただの平民だった。その人は
確かにとても背が高い。おそらく2メイル近くあるだろう。胸には十字架の首飾りが
輝いていて、薄汚れたコートを着ていた。彼は何事が起ったかわからない風に辺りを
見回していて、契約を済ませた後も戸惑っていた。私が色々説明をする間も困ったよ
うな顔をするだけだった。コルベール先生にやり直しを要求するが認められない。
私が彼に八つ当たりしたときも、眼鏡の奥の瞳は頼り無さげだった。私は溜息をついた。
なんでいつもこうなんだろうと。
部屋に帰り色々と説明をするが、何も知らないらしく要領を得ない。夜も遅いので
眠ろうと着替えるが、彼は「女の子がはしたないことするんじゃありません」と私を止
める。私は、「使い魔は人間じゃないの。犬猫と同じだから気にする必要なんてないの。」
と言い毛布をかぶる。困っている情けない口調の独り言を聞きながら、頼りにならない
使い魔だと思った。キュルケは吸血鬼で私は頼りないおじさんだと。
しかし、私の彼に対する評価は一変する。
そしてこのやり取りを思い出すたび私は身震いするのだ。
何て命知らずだったのだろうと。
翌朝彼に起こされ目が覚める。水をもってこさせ、顔を洗うよう命じる。
「いけません、それくらい一人で出来ないと」
彼は穏やかに注意した。
「あのね、あなたは平民でしょ?戦ったり、秘薬も集めたりできないんだから雑用くらい
しなさい」
しかし、彼は頑として拒否する。そんな彼に怒った私はとっとと着替えて部屋を出る。
「ああもうこんなに脱ぎ散らかして」
後ろから声がするが無視した。
「あら?」
廊下にはキュルケがいた。挨拶をした後、
「あなた使い魔は?」
と聞かれ、うつむいた。
「あなたみたいな凄いのじゃないわよ」
キュルケは笑って言う
「そりゃ吸血鬼より凄いのなんてそういないわよ」
それはそうだ。
「で?成功したの?」
うなずいた。
「へえ、どんな?」
「へんな平民」
憮然として言う。
「ふうん、けどいいんじゃない?ゼロのルイズにしては」
私はカチンとして叫んだ。前日からのイライラが積もっていた。まあ、いつもどおりと言
えばいつもどおりなのだが。しかし、次のこの一言が原因で私は命を落としかけたのだ。
「何よ!このツェルプストーの淫乱女」
「淫乱女?淫乱女だと」
「淫乱女?淫乱女だと」
突如彼が現れた。壁から、すり抜けて。昨日より激しい威圧感が私を叩きつけた。
「き、吸血鬼」
「こんにちはルイズ・ラ・ヴァリエール。そしてさようなら。お前は私の主を淫乱と
呼んだ。」
彼は懐から銃らしきものを私につきつける。
「おまえここから生きて出られると思うな。
ぶち殺すぞ人間(ヒューマン)」
キュルケが慌てて止めに入るが彼の殺意はぐんぐんと増していく。私はいつのまにか座り
込んでいた。銃口は私の額にむけられ、私の頭が弾け飛ぶ映像が頭に浮かんだ。父や母や
姉への恐怖が比喩にすらならない。意識を手放しかけたその時。
ドコッ
後方から大きな音がする。皆一斉にそちらを見るとあの使い魔が向かってきた。
光の反射で眼鏡の奥の瞳は見えない。彼は吸血鬼に比肩するほどの威圧感を纏っている。口は笑ったように開き、並びのいい歯が見える。そして彼の瞳が見えたとき、私はその瞳
が吸血鬼以上の狂気を含んでいることを理解した。彼は吸血鬼を裂帛の気声のもとに殴り
つけた。人が人を殴ることではありえない爆発音がする。吸血鬼もまた殴り返した。
二人の顔が笑顔ということに気づき私の恐怖は増幅した。頭を抱えて目を瞑る。風圧が
襲う。そして吸血鬼が叫んだ。
「ゲフッ、また逢ったな!アンデルセン!」
彼も鼻血を吹き放ち叫ぶ。
「アーカードォ!!」
吸血鬼は銃を二丁、彼は奇妙な形の剣を二本、それぞれ構え、対峙する。
今にも切り結ぼうとする二人にキュルケが間に入る。
「ルイズを殺さないでアーカード!これは命令よ」
切りつけようとする使い魔に背を向け、アーカードを見据えるキュルケ。
「あんたも止めてルイズ!………ルイズ?」
キュルケは私を見つめ、唖然とした。私の腰辺りをじっと見ている。二人の男もキュルケ
につられ私を見て静止した。気不味い空気に恐る恐る自分の抜けた腰を見ると水たまりが
出来ていた。吸血鬼と使い魔は顔を見合わせる。吸血鬼は、
「闘争の空気ではない」
と来た時のように壁をすりぬけた。使い魔は剣をコートにしまい、落ちた眼鏡を拾った。
「すいません、恐がらせてしまいましたね。大丈夫ですか。」
元の穏やかな顔に戻った彼にキュルケも私も目を丸くした。彼は私を抱きかかえ、
部屋まで運ぶ。私は呆気にとられるばかりだった。
「逃げたわ…」
キュルケは呆然としていた。メイドのシエスタが近づく。
「どうされました?」
「いや、何でも」
彼女は今の出来事を反芻した。
(アーカードったら…あれ位で怒るとはね。私の為とは言え加減ってものを知らないんだ
から。よく言って聞かせないと。しっかしルイズったら情けな…いや無理もないか…。)
「あれ、これ何です?」
シエスタは水溜りをみつけた。キュルケは黙って杖を振り火でそれを蒸発させる。
(そして彼)
水溜りは綺麗に消滅した。
(アーカードは大木すら片手で倒した…その力を持つ鬼と殴り合い。ただの人間じゃない
ことは確か…っていうか知り合いっぽいし…)
彼女は昨晩吸血鬼の力を色々検証した。そしてその強さの底無しさだけはわかった。
(アンデルセンだっけ?アーカードに聞こうかしら)
彼を追いかける
(全く困るわ…もう)
彼女は上機嫌だった。彼女は「微熱」のキュルケである。
部屋の中、彼は新しい服を差し出した。私は自力で着替える。彼は後ろを向いている。
着替えが終わり私は彼に言った。
「助けてくれて…ありがとう」
彼は笑って言った。
「何、礼には及びません」
彼は穏やかだった。先生のようだ。それが逆に怖い。
「今のあなたと、さっきのあなた、どっちが本当なの?」
彼は表情を変えない。
「どちらも私です。」
おそらくさっきの戦ってるのが本当だと思う。
「あなた、何者?」
彼は変わらぬ笑顔で言った。
「アレクサンドル・アンデルセン。ただの神父ですよ。」
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。
おつつ、いいねアンデルセンいいね。
突発だけど連載するのかな?タイトルわからないけど。
あ、タイトル忘れてたorz「虚無と狂信者」です。
連載はそうですね。なるべく頑張るとさせてください。
投下乙!超面白かったです、やっぱアンデルセン神父は良いですね。
それにしても、これからルイズが神父に教育されていくわけか、楽しみ過ぎるw
この二人が相手となれば、ワルドとクロムウェルは涙目どころじゃないなw
50 :
虚無と狂信者:2008/07/19(土) 18:37:55 ID:???
40の最初の行無視してくださいorz
間違えました
たぶん騙りは無いとは思いますけど、もう一度IDを出しつつ鳥を付けた方良いかもしれません
52 :
虚無と狂信者:2008/07/19(土) 19:28:43 ID:WT0q/hAm
すいません初めてで
たいがいのスレではメール欄に sage と書き込むことがローカルルールになっているから注意したほうがいい。
というか頻繁に覗いたり書き込んだりするなら専ブラ(専用ブラウザ)おすすめ。自動でsageてくれるし、文字数・プレビューとか色々便利だから。
まぁ最初のレスだけ支援求める理由で一旦ageてもいいかもしれない、それか投下予告を予めしておくか。
しかし夏なので変なの湧いても困るから、今は無闇にageないほうがいいかもしれない。
トリップは好きでいいと思う、騙りは早々ないと思うし、やっといて損はないけどさ。
55 :
虚無と狂信者:2008/07/19(土) 19:49:22 ID:???
>>53 成る程以後気を付けます。重ね重ねすみません。
56 :
虚無と狂信者:2008/07/19(土) 19:54:37 ID:???
wikiにやっといていいの?
ぞーりんも少尉時代はきっと可愛かったよ
確かにたいそう可愛らしい男の子だったと思うよ
シュレと並ぶくらいの勢いで
ゾーリン兄さんは年月に負けたのさ
今日はもう書き手さんがスレにいらっしゃらないかも知れないし今さらだけど、
>>51-52を見た感じだと、どうもトリップ自体をご存じないのかもしれないので、
話を振った
>>51として、自己満足の説明をするだけさせてもらいます。
鳥というのはトリップのことです
そしてトリップというのは、騙り=なりすましを防ぐ為の機能です
やり方は簡単、半角の#の後に適当な文字列を入れるだけ!
とは言ったものの、多少のルールがあるのでご注意ください
・#の後に入れて認識されるのは半角8文字、全角4文字のみ
つまり「#セイバーは少佐の嫁」と「#セイバーはドクの嫁」は
共に「セイバー」までしか認識されないので「◆ZMEH0UITvg」と表示される
・#の前に入れた文字は普通に表示される
少佐#アレ欲しいは「少佐◆iggaewVUS.」となる
・あらゆる文字が使えるらしい
少なくとも漢字、ひらがな、カタカナ、数字、アルファベットは可
・作品等から連想できるものは止めた方が良い
それこそ「#2ウ7e日ェk」のように「複数の文字が入り交じった適当な文字列」が一番。かも?
懇切丁寧な説明の中に入ってるカバー裏ネタにちょっと吹いたw
63 :
虚無と狂信者:2008/07/20(日) 16:25:48 ID:???
>>61 ご親切にありがとうございます
次回からの投下で使わせて頂きたいと思います
,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、
'r ´ ヽ、ン、
,'==─- -─==', i
i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |
レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .||
!Y!"" ,___, "" 「 !ノ i | _人人人人人人人人人人人人_
L.',. ヽ _ン L」 ノ| .| > ゆっくり待ってるよ!!! <
| ||ヽ、 ,イ| ||イ| /  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
レ ル` ー--─ ´ルレ レ´
学院から早馬を飛ばしてルイズとアーカードは王宮へときていた。
アンリエッタ姫殿下直々の出陣という報を聞いたので、ルイズはいてもたってもいられなかったのである。
既に戦の準備は始められており、王宮内もそれに呼応するかのように張り詰めていた。
いよいよもってアンリエッタ直々の出陣もありえないことではないとルイズは思う。ならばせめて傍に控え、 お支えするのが自分の務めと考えていた。
前回の強引に通行した一件からか、話は通してあったようで、名を名乗るとあっさりと門を通された。
戦の準備が進められてる中、ルイズとアーカードは中庭を歩いていると見知った顔を見つける。
アーカードは爽やかに笑いその人物に手を振った。
視界の端に少女を捉えたマンティコア隊隊長、ド・ゼッサールは苦い顔をする。マザリーニ枢機卿に説明されたものの、恥を掻いたことには変わりない。
少女二人を呆気なく通してしまったということ。その不甲斐無さにマンティコア隊全員、自身のプライドが許せなかった。
手を振っていたアーカードはすぐにルイズに引っ張られる。
「はいはい余計なことしないの、とっとと行くわよ」
「りょ〜かい」
◇
「姫さま・・・」
「ルイズ、会えて嬉しいわ」
部屋に通されると、アンリエッタは今まさに出撃準備をしているようであった。国を守る為、士気を高めアルビオンに打ち勝つ為に。
「やはり・・・姫さま自らご出陣なさるのですね、なれば私をお傍に・・・」
「ルイズ・・・・・・ありがとう、あなたが傍にいてくれればそれだけで心強いわ」
アンリエッタはすんなりとルイズの申し出を受け入れた、内心はやはり不安なのだろう。
ルイズはもう一人いる金髪で青い瞳の剣士風の女性に目をやった、すぐにその視線にアンリエッタが気付く。
「そういえば紹介がまだでしたね、彼女は新たに設置した『銃士』隊の隊長アニエスです。私直属の護衛を務めてもらっています」
アンリエッタの言葉の後、アニエスという名の女剣士は一歩前へ進み出てお辞儀をする。
「アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランです」
軍人気質の一つ一つに無駄がない動作でアニエスは自己紹介をする。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。よろしく、アニエス」
「はっ、よろしくお願いします。ラ・ヴァリエール殿のことは姫殿下から、かねがね聞き及んでおります。今後様々な形でお会いすることになるでしょう」
次にルイズに目で促されたアーカードが名乗る。
「主人ルイズの従僕、アーカードだ」
「アニエスです、アーカード殿。あなたのことも姫殿下から聞いております」
「・・・ほう、なんと?」
「ええ、なんでも恩人だと」
アーカードはアンリエッタの方を見る、アンリエッタはにこやかに笑った。その様子にアーカードもフッと笑みを浮かべる。
概ね紹介も終わり、アンリエッタは出撃の為の準備を再開し、ルイズ達はアニエスから現状を聞くことにした。
現在トリステイン一国のみでアルビオンという大国と戦わなくてはならない状況、さらには既に劣勢の立場にあるということ。
アルビオンは突如として宣戦布告同時攻撃を敢行、矢継ぎ早に軍を侵攻させてきた。
これに対抗する為に急遽出撃したトリステイン艦隊は、準備の足りなさと敵旗艦の長射程の砲撃に出鼻を挫かれ、大打撃を受けた上で一時撤退。
その長射程の大砲を持つロイヤル・ソヴリン級『レキシントン』号を旗艦とした、アルビオンの先遣艦隊は現在示威行動に入っている。
さらにアルビオンの本艦隊も既にラ・ロシェールに展開しつつあった。トリステインには艦隊を二手に分けてまともに戦えるほどの余剰戦力はない。
示威行動に移っている先遣艦隊は、王都すらその侵攻圏内に入っている。当然これを放置することはできない。
しかしアルビオン本艦隊を後回しにすれば、国土を蹂躙されるのは目に見えている。
既にゲルマニアに使者を送り援軍要請の旨を伝えたのだが、未だ軍備が整っていないとの話である。
結果ただでさえアルビオン艦隊と比較して戦力の少ないトリステイン艦隊を、二つに分けるのも止む無しいう結果に至る。
アンリエッタの出陣も苦渋の選択であった。アルビオン本艦隊相手に王女率いる大いに士気を上げたトリステイン艦隊でなんとか食い下がる。
先遣艦隊とぶつかる方は布陣を展開、とにかく余計な動きを取らせないよう時間を掛ける。
あとは正式にゲルマニアの援軍がくるまで保たせるのが目的である。
ゲルマニア艦隊との挟撃の形になればさしものアルビオン軍とて長期決戦を持するとは思えない、戦力も風石も支援にも限界があるだろう。
同盟を組む国とはいえゲルマニアには余計な負担をかけさせる以上、トリステインには相応の代償を求められるだろう。
だがそれでもアルビオンに降伏するよりはいい、現在のアルビオンはゲルマニア以上に不明瞭で何を求めてくるかわからない恐ろしい敵である。
突然の宣戦布告、そしてその直後に艦隊を侵攻させるというほぼ不意打ちとなんら変わらない暴挙に出た国である。決して負けるわけにはいかない。
「クックック、まるで幽霊船だな。そして・・・ははっ、なんとおあつらえ向きなんだ」
戦況を聞いたアーカードはクスクスと笑う、その意図するところは本人にしか分からなかった。
その様子にアンリエッタは怪訝な顔を浮かべる。ルイズは思った、またアーカードはなにかとんでもないことをしでかす気なんじゃないかと。
「どうしたの?なにがそんなに面白いわけ?」
ルイズは問い掛ける。アーカードがおあつらえ向きと言って笑ったのだ、何か意味があるのだろう。
「示威行動をしている艦隊、そちらは私がなんとかしよう」
当然その場にいる者達はアーカードの言葉に驚く、いきなり何を言い出すのかと。
「たった一人で?いくらアンタでも艦隊を相手にするのは不可能でしょ」
ルイズの言葉にアーカードは首を振って否定する。
「SR-71は飛ぶ、コルベールが燃料を作ったからな。強力な対空ミサイルでもない限り、成層圏ギリギリをマッハ3以上でフッ飛ぶ超音速高高度偵察機を落とすことなどできはしない」
アンリエッタは心底わけがわからずアーカードの言葉を聞いていた。
ルイズも半信半疑な状態であった、あの金属の塊が本当に飛行するなんて。そして飛ばしたところで何をどうなんとかするのか。あとミサイルってなんだろう?
「尤も距離を考えれば高高度超音速で飛ばす必要性はないし、空中給油できない上に余分な燃料もない。だが普通に飛行しても、大砲程度じゃ到底捉えることなどできんから支障はない」
「申し訳ありません、仰ってる意味がよく・・・」
アンリエッタが言う。アーカードはポリポリと頭を掻く、どうやって説明したらいいのだろうか。
一貴族の一使い魔の意見一つで、トリステイン軍の動きを決定させるなんて。相応の根拠を提示されない限り納得できるものではないだろう。
しかし説明のしようがない。SR-71を見せてる暇もないだろうし、飛行機一機で敵艦隊を倒すなんて言っても到底信じられる筈もない。
「アーカード殿、先程から何を言っているのだ」
アニエスは鋭い目でアーカードを見据える。
「なんだ?」
「わけのわからない言葉を並べ立て、姫殿下を無闇に惑わすのはやめていただきたい」
「よいのです、アニエス。彼女は何か思うところがあって我々の力になってくれると言っているのですから」
アンリエッタはアニエスを窘める。
「しかし・・・いえ、口が過ぎました。無礼をお許しください」
アニエスはすぐに冷静になる。アンリエッタの大切な友人とその使い魔であり、姫殿下自身が信頼を置いた相手である。
思わず感情的になってしまったが、アンリエッタに制された以上、それ以降自分が差し出がましく口に出すことではない。
アーカードはその様子を静観しつつ、思考を巡らせていた。
「ふむ・・・そうだな、やはり殿下は普通に出撃してくれて構わん。トリステイン艦隊を二つに分けるのもいいだろう。
考えてみれば燃料不良で飛ばない可能性もないとは言えん。私は私で勝手にやらせてもらおう、終わったら援軍に向かう。ルイズ、命令をくれ」
「よくわかんないけど、本当に大丈夫なの?」
「無論だ、ちなみに複座型だが主は乗せられん。やることは特攻によるオーソドックスな攻城戦、そして只只一方的な虐殺だ。もし飛ばなかったらすぐに主達に合流しよう」
アンリエッタ達には未だ理解不能の内容だったが、進軍内容に変更は無いようなのでよしとする。
アーカードにはアーカードの策があるようで、成功すればよくわからないけど、こちらに有利に働くということだけは把握した。
「・・・わかったわ、私は姫さまのお傍にいる。アーカード、あなたはあなたで我々に敵対する勢力を打ち倒しなさい」
「了解、我が主」
――――アーカードは既に学院に戻り、いよいよアンリエッタ指揮の下、トリステイン軍は出撃することとなった。
「・・・ルイズ、私は不安です。あなたがいてくれなければ、きっと重圧で押し潰れていたかもしれません」
ユニコーンに跨り、アンリエッタは隣で馬に乗っているルイズに心の内を明かす。
「ご安心ください、役に立たないかもしれませんが私は姫さまを精一杯お支えします。・・・・・・正直に言えば私も怖いです。でも、信じられるものがあります」
「アーカードさん、ね」
アンリエッタは微笑む。
「はい、アーカードと出会ってからまだ二ヶ月程度ですが・・・大丈夫だと思います。そりゃあ時々私に逆らうし、からかうし、遊ばれたりもしてますけど・・・」
ルイズは目を瞑る。
「それでも私が信じる、私の使い魔です。アーカードはいつだって有言実行をし、私を支えてくれました。だから私も負けられません」
「ふふっ、貴方達には助けられっぱなしです。・・・本当にありがとう」
アンリエッタは大きく一度だけ深呼吸をした。
「では、行きましょうルイズ」
「はいっ!」
アンリエッタは前を向く。国を民を守る王族として、親友とその使い魔に負けない為、強く生きるというウェールズとの約束の為。
ルイズは前を向く。姫殿下を守り支える為、いつだって自分を助けてくれる使い魔に笑われない為、己が歩み進む道程に後悔しない為。
◇
「コルベール、飛行の準備だ」
アーカードの突然の話にコルベールは戸惑う。
「え?は?今からですか?」
「そうだ」
アーカードはJP-7の入った樽を軽々と持ち上げる。
「燃料は私が運ぶ、コルベールはテントを撤去しといてくれ」
「あ・・・はい、わかりました」
コルベールは困惑したまま研究室を出てSR-71の元へと向かい、アーカードは樽を一旦外へとその全てを運び出す。
積み上げた樽を一気に持ち上げ、絶妙なバランスでSR-71が置いてあるところへと歩いていった。
「戦争に・・・行くのですか」
「んむ」
アーカードは簡潔に一言で肯定した、コルベールはなんともいえない顔になる。
「SR-71はあなたの物ですし、私にどうこう言う権利はありません。研究も大方終わりましたし、飛行するのも是非この目で見てみたい」
燃料を入れ終えたアーカードは計器類をチェックしている。
「ですが・・・戦争は、反対です」
アーカードが首を傾けながらコルベールを見る。
「私は好きだぞ」
薄く笑みを浮かべながら言う。コルベールはその言葉でさらに険しい顔になった。
「そんな顔をするな、私は吸血鬼だぞ。貴様よりも遥かに長く生き、幾つもの戦争をしてきた化物だ」
「そう・・・でしたね」
コルベールは煮え切らない態度を見せる。
そう、彼女は吸血鬼。それはSR-71を研究し始めてから数日経って聞いた話である。
アーカードの世界の話を聞いた時にカミングアウトされたこと。当然驚いたものの、異世界の話を考えればどうということはなかった。
「・・・なんだ、お前はこの私に戦争の無意味さでも説く気か?」
「いえ・・・そういうわけでは・・」
アーカードはまた計器類を見始める。特に問題も見当たらない、これなら飛べると確信する。
「ふっ、悩め悩め。若者らしくの」
もういい年であるコルベールは若者と言われ苦笑いを浮かべる、目の前の少女にとっては自分でもまだまだ若輩者ということか。
「あぁそれと、コレはもう戻ってこないからヨロシク」
「は?」
きょとんとしているコルベールにアーカードは続ける。
「コレは破壊槌だ。敵艦に打ち込むのでな、当然壊れる」
SR-71に使用される燃料のJP-7は発火点が低い為、トリエチルボランを始動とアフターバーナー点火に使用する。
特に問題もなくSR-71は始動され、そのエンジン音が響く。アーカードは満足げにうんうんと頷いた。
コルベールの情熱と錬金技術も大したものだと改めて感心する。
アーカードは窓越しにコルベールに手を振った、それに気付いたコルベールは会釈でかえす。
アフターバーナーに点火し、SR-71はどんどん加速度を上げ、遂には離陸した。
轟音と共に飛び立った黒い鳥、その姿に思わずコルベールは見惚れていた。
それが戦争に使われ、一度飛び立った以上もう二度と帰ってこないと言われたものであったが・・・・・・それを忘れさせるほどに荘厳で美しかった。
しかし次の瞬間、SR-71が光った。次の瞬間には炎のようなものが見える。
何事かと思ってコルベールは見つめていたが、しばらくするとまた元に戻った。
心なしか最初より深い黒に染まったような気がしたが、風竜よりも遥かに速いそれはすぐに見えなくなった。
◇
離陸して間もなく、加速度が高まってきたところでSR-71は炎上した。
やはり錬金で同じものを作るのは無理があったようで、燃料に引火したのである。
アーカードは嘆息をつく。元々錬金で作るという事自体に無理があったのだ、飛べただけでも及第点である。
「拘束制御術式、三号二号一号開放」
アーカードの影は瞬時にSR-71を包み込み、燃え上がる機体は黒に覆われすぐに炎は消えた。
「なにも、問題は、ない」
燃料に引火しただけ、クロムウェルでもどうしようもない重大な故障というわけではない。
――――なら問題はない、飛行するのに何も問題は無い。
アーカードは足を組み、膝に手を置いた。端正な顔立ちを大きく歪ませて笑う。
「・・・・・・心せよ、亡霊を装いて戯れなば、汝、亡霊となるべし」
◇
順調だ、何もかも順調だ。
先遣艦隊旗艦レキシントン号に乗ったワルドはゆっくりと空を仰いだ。
既にアルビオン本艦隊はタルブの草原でトリステイン軍と交戦が開始されたらしい。
アンリエッタ直々の陣頭指揮の下、トリステイン軍はなんとか戦えてるという状態でしかない。
戦力的に見てもアルビオンが勝つのは自明の理である。あとはこちらに差し向けられている僅かなトリステイン軍を蹴散らすだけ。
その後は王都まで一気に攻め込んでもよいだろう、この艦なら・・・やれないことはない。
その時だった、ワルドに悪寒が走る。
ただの第六感でしかない、なんの根拠もない。しかし・・・・・・何かがおかしいことだけは、俄かに震える体が理解していた。
「何だ・・・!?何だこれは・・・?」
この心の奥底からナニカが滲み出る感覚、これは・・・以前にも味わったことがある。思い出せ、いつのことだ。
――――――思い出す、そうだ。自分がトリステインを明確に裏切って、『レコン・キスタ』についたあの日。
そう、アルビオンで・・・ウェールズを殺した、あの時に感じたではないかッ!!
支援
「あいつだ・・・あいつだ!!奴が来るッ!!」
ワルドは空を凝視する、何かが見える、空にポツンと確認できる黒い点。それはあっという間に大きくなっていく。
降下による加速度でSR-71はレキシントン号に衝突した。
それはもはや轟音というレベルではない。ワルドは吹き飛ばされ、強く船の端に叩き付けられる。
打ち付けられた所為で呼吸困難に陥る。必死に息を吸い、吐く。燃える異臭が鼻をついた。
レキシントン号は衝撃で大きく高度を落とし、傾くもギリギリのところで保っていた。
爆発し炎上したそれは、十字を描いていた。傾いた船は少しずつだがまた水平に戻っていく。
朦朧とする意識に活を入れてワルドはなんとか立ち上がった、一体何が起こったのか必死に状況を把握しようとする。
その時、燃え上がる十字架に人影を見る。ああ、そうだ・・・そうだった。あいつだ、奴だ、狂気の代弁者、混沌そのもの。
「裏切り者は、一度も許したことがないと言ったろう」
少女は笑う、ただ単純に、しかし明確に、敵意を向けて。
「・・・・・・アーカード」
ワルドは少女の名を呟く。そうだ、まだだった。奴との決着はまだだった。
だが、退くわけにはにはいかない。我が野心の為にも―――ここで引くわけには・・・いかないのだ。
「・・・決着を、つけよう」
知らず知らず笑みを浮かべその言葉を口にした自分にワルドは気付く、一体どのような感情が自分にそうさせているのかわからない。
あまりに突然にやってきた、その非現実的な光景の中で、ワルドとアーカードは睨み合った。
「さあ行くぞ、歌い踊れ、ワルド。豚の様な悲鳴をあげろ」
支援を!一心不乱の支援を!
乙
乙、そしてGJす
棺は…海上じゃあないし、零号発動に必要でも一旦取りに戻ればいいから無問題ですねw
ロリカード乙
ワルドが中尉のポジションだと!
間違っても喰わずに紅葉おろしで
多分記憶のかなたに消えてると思いますが、いつか伯爵書いてた人間ですけど、トリ忘れたwww
そしていーそーがーしー・・・
おかえり伯爵
>>81 おかえり伯爵。
そして自分を覚えている人はいるのだろうか?
しばらく見てなかったら何か移転してて焦った。そりゃ見つからんわけだ。
>>84 ありがとう。
投下伺いしに来たのに書き忘れた。投下よろし?
ちなみに本当に何の変哲もない「マリコルヌ対補正のかかったギーシュ」。
書き上がった後で「HELLSING全く関係ねぇ……」って正気に返った。
正直な話、需要なさそうだし、結果だけ一行で書いて終わらすのもアリだと思ってるんだ。
誘い受けとかではなく素で。どっちがいい?
私は命令を下したぞ!
何も変わらない!
見敵必投! 見敵必投だ!
投下の邪魔をするあらゆる勢力は叩き潰せ!
直接支援放射
ごめん,ちょっと席外してた。んじゃ行きます。
、、、、、、、、、、、
「駒は、僕の手の内にある」
ぽつり、ギーシュは呟いた。
それは誰に聞かせるでもない――
…否、自分自身に聞かせる、言い聞かせる言葉。
それを口にして、ギーシュは薔薇の杖を握り込む。
同時、自分にできる限りの「不敵な笑み」を浮かべ。
ギーシュは状況を開始する。
「……さて、マリコルヌ。まずはルール確認といこうか」
できるだけ「いつも通りの自分」を演じながら、ギーシュは語り始める。
「ルールだって?」
「そうだよ、ルールだ。決闘を決闘たらしめるもの。ただの闘争ならば野蛮な獣にもできるからね。
不満かい?けれど、僕は貴族だ。
『君と違って』、野蛮な行いで無意味に自分を貶めるつもりはないんだ。
ああ、オーク鬼と同じになりたいというのなら、そんな奴に怒る方が恥だし、挑戦を撤回するよ?」
ギーシュはそこまでを一気に言い放つと、くるり、と恰好をつけて回り。
観客の女子たちにウィンクをしてみせる。
それを見て、マリコルヌの神経がさらに逆なでされた。
「〜〜〜〜〜…ッ!
君は本当に僕をコケにしたいらしいな…いいじゃないか!ルールを言えよギーシュ!!」
――かかった。
にやり、ギーシュが「本当に」笑う。
「殆どは普通のメイジの決闘と同じだよ。
勝敗は杖を落とすか、降参させることで決まり。
ただ、開始の合図を決めておきたいだけさ。『不意打ちをされては堪らないから』ね。」
ギーシュはそう言うと、す、と薔薇の杖を前に差し出した。
「……これから僕が杖から一枚の花びらを落とす。それが地面についた瞬間から決闘の開始だ。
詠唱はそれ以前からしていて構わないが、落ちるまで魔法を放ってはならない。
ああ、落とした花びらは僕が最初の魔法に使うよ。
それでどうだい?」
「――っ…………わかった。」
ゴクリ、と息を呑み、マリコルヌが杖を構える。
不意打ち、という言葉に憤るかと思われたが、そんな余裕はないらしかった。
考えてみれば、マリコルヌも学生なのだ。自分に杖が向けられるのは怖いのだろう。
否、ギーシュはグラモンの血筋として、軍事教練の真似事位はしたことがある。
そんな経験すら持っていない分、本当はマリコルヌの方が恐怖が大きいのかもしれなかった。
当たり前なのだが、そんな事実に気付き、ギーシュは少し楽になる。
ふぅ、と一息つき。
覚悟を決める。
決めた。
「さあ、行くよマリコルヌ!」
ばっ、と大仰な手つきで、ギーシュが天高く一枚の花びらを舞わせる。
同時、二人は花びらを必死に見ながら詠唱を始めた。
ひらひらと舞う花びらはやがて二人の間、目線の高さにまで落ちてくる。
花びら越しに二人の目が合った。
ギーシュはやはり口元だけで笑ってみせる。
気分を害した様子のマリコルヌが目線を外し、落ちる花びらを追った。
それを見て、自然な動作でギーシュが一歩下がる。
そして。
「『錬金』!」
「『エア・ハンマー』!!」
二人の呪文が交錯する。
ズドン、と、思いの外激しい音がして、観客は目を見張った。
盛大に土埃を巻き上げ、地面が吹き飛ばしたのはマリコルヌの『エア・ハンマー』だ。
空気の槌は「ドット・メイジとは思えない威力で」先ほどまでギーシュが立っていた位置を吹き飛ばしていた。
その威力と言ったら、吹き飛ばされた土がほんの少しの間だが全員の視界を遮ってしまったほどである。
そして、この結果に最も驚いたのは、おそらくはマリコルヌであったろう。
だが、それも少しの間。
視界が戻ってくるにつれて、マリコルヌは確信を抱く。
即ち――勝てる、という確信を。
自分の魔法の威力が上がった理由は分からない。
けれど、それは今この場においては間違いなく良いことなのだ。
あの生意気な『元』友人を懲らしめてやるのにちょうどいい。
むしろ心配といえば、あれでやっつけてしまっていないかどうかだ。
なぜならもっといたぶってやりたいのだから――じゃなかった、『元』友人が大けがでもしたら大変だからだ。
まあ何にせよ、それは杞憂だったらしい。
憎っくきギーシュはいまだに二本の足で立っていたのだから。
「やるじゃないかマリコルヌ!正直驚いたよ、君がこんなに強い魔法を持っていたなんて!!」
ギーシュが叫ぶ。
「だけど、それでも勝つのは僕さ!
行くよマリコルヌ、 ……『錬金』!!」
「……『エア・ハンマー』!」
ぼごぉ、という音とともに、二つ目のクレーターが出来上がる。
ギーシュの『錬金』は『エア・ハンマー』で消し飛んでしまったのだろう。
ワルキューレの最大錬金人数は七人。
あと五人分、地面ごと吹き飛ばしてしまえばマリコルヌの勝ちだ。
、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
…もっとも、ギーシュがワルキューレを錬金しているのなら、の話だが。
「……とんだ茶番ね」
心底呆れた様子でキュルケが呟く。
なんであんなバレバレの仕掛けに気付かないのだろうか。
マリコルヌも、今まさに熱狂している観客たちも。
やはりトリステイン貴族はどいつもこいつも慢心の過ぎる阿呆なのかと、
以前あったくだらない嫌がらせのことも思い出しながら、心の底から深くため息を吐く。
見物するものの中でこれに気が付いているのは、恐らく自分とタバサ、
そして異世界からやってきた使い魔たちくらいのものだろう。
ただ、ギーシュが心配で仕方ない様子のセラスはそこまで頭が回っていないかもしれない。
全く、こんなに単純な戦術なのに。
座学ならあんなに優秀なのに。
そんなにハラハラしているのを見せられては放っておけないではないか。
主にからかい的な意味で。
真剣に見入っている様子のルイズに、後ろからこっそりと近付く。
途中でアーカードと眼が合い、にやりと笑いあった。
「全くバカらしいわよねぇ、ルイズ」
言いながら、華奢な肩にぽんと手を置く。
「な、何がよ、ツェルプストー!?」
――かかった。
驚いた様子ではあるが、熱中していたのに気付かれたくないのだろう、変な方を向いてルイズが返答した。
手に汗握っている辺り、やはりこの子も仕掛けに気付いていないらしい。
傍から見てるだけでも面白いくらいに感情豊かな観戦っぷりではあったが、やはりこの子は弄ってこそだ。
アーカードと二人で、こっそりとガッツポーズ。
「この決闘のことだろう。ここまで力の差が有っては最早いじめと変わらぬ。
全くかわいそうだのう、誰かさんのせいで」
「誰でしょうねぇ、こんなひどいことが起こした元凶って」
う、とルイズが詰まる。
「大体、貴族同士の決闘はハルケギニアじゃ禁止されてるのに。
勝った方も負けた方もあとでオールド・オスマン直々に厳罰を食らうでしょうね。
勝った方はまだいいけど、負けた方なんて踏んだり蹴ったりよ」
「ほほう、それはそれは」
ああ、とルイズが頭を抱える。
「「ホント、哀れだと思(われることよのう)(うわよねぇ)……」」
二人も倣って頭を抱えるふりをしつつ、ちらりと決闘の様子をうかがってみる。
うん、そろそろか。
再びアイコンタクト。
「「ホント、マリコルヌ(とやらは)(って)かわいそう(だのう)(ねぇ)、ルイズ」
「うぅ…悪かったとは思ってるわよ………
………って、へ?」
このときのルイズの顔を、自分は一生忘れないだろうとキュルケは思った。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
荒い息をつきながら、マリコルヌはあたりを見回す。
この『エア・ハンマー』は何度目だったろうか。
ヴェストリの広場がもう穴ぼこである。
敷き詰められた芝生も台無しだ。ひどく歩きづらい。
が、土埃の舞う視界にも段々と慣れてきた。
そろそろ終わりにしたいなぁ――と、しばし目を凝らしていたが。
「そろそろ終わりにしようか、マリコルヌ」
声は、真後ろから聞こえてきた。
心底あわてた様子でマリコルヌが振り向く。
即座に『エア・ハンマー』を詠唱し、ギーシュに向けて放とうとするが、場所が悪かった。
既にマリコルヌの周りはクレーターに囲まれていたのである。
足を踏み外し、転びかけるマリコルヌを見下ろしつつ、ギーシュは杖を掲げる。
大仰な仕草で花びらを一枚落とし、告げる呪文は『錬金』。
対して、マリコルヌも先ほど撃ち損ねた魔法を花びら向けて解き放つ。
そして。
ギーシュの花びらが銅像と変わる前に、マリコルヌの『エア・ハンマー』がそれを打ち貫いた。
ああ。これで詰みだ。
視界は良好。次に『錬金』を唱える暇なんて与えない。
「僕の勝ちだ、ギーシュ!」
「いや。僕の勝ちだよ、マリコルヌ」
果たして、戦乙女が現れたのはギーシュの後方。
大げさに落として見せた花びらはブラフだったのだ。
生み出したワルキューレを突進させながら、ギーシュは『錬金』を唱え始める。
さては一体で時間を稼ぎ、その間にワルキューレの数を増やすつもりだろう。
だが、ワルキューレとマリコルヌは遠い。
ワルキューレが突進してくるより、そして次のワルキューレが生み出されるより早く、
マリコルヌの詠唱が終わった。舌なめずりをする。
今いるワルキューレと、今作ろうとしているワルキューレ。
どちらも一度に吹き飛ばしてやればギーシュも負けを認めるだろう。
ふん、と鼻を鳴らして、マリコルヌはギーシュの足元を見――
驚愕した。
「なんで花びらがあんなに……っ!?」
ギーシュの足元には大量の花びら。マリコルヌは焦った。
広範にばらまかれた花びらの、どれがワルキューレになるのか分からない。
ならばギーシュをと杖を振り上げたが、さっきまでいたはずの場所にギーシュがいない。
……あれ?と、マリコルヌの頭が一瞬真っ白になり。
その隙に、最初に作られたワルキューレがマリコルヌへ槍を突き付けた。
「……あ。」
思わず間の抜けた声を出すマリコルヌ。
「……」
「……」
「……」
突き刺さる観客の視線と、
「さて、マリコルヌ?」
どこからとなく聞こえるギーシュの声に。
「…………ま、参った」
マリコルヌはがっくりとうなだれて、か細く答えたのだった。
「至極単純な作戦ね」
ふん、とキュルケが嗤い。
「まず、マリコルヌを怒らせて、冷静な判断力を奪う。
『錬金』で土の性質を変えて、相手の『エア・ハンマー』で地面が吹き飛ぶようにする。
目くらまし、足場を悪くすること、相手を増長させることがその狙い。」
タバサが淡々と解説。
「それと、隠れ場所にもなる」
そしてアーカードが補足。
種明かしタイムである。
「相手が動きづらくなるように意識しながら、しばらく穴を開けさせ続ける。
相手が疲れてきた頃合いを見て、先に花びらを撒いておいた辺りに立って、声をかける。
あとは見ての通り。
ワルキューレを突っ込ませて注意を奪い、自分はその隙に穴に隠れた。
本当は、相手が判断に迷った時間でワルキューレの数を増やすべきだったけど」
「……精神力が無かったのね。あるいは、思ったよりマリコルヌの反応が鈍かったから、とか」
「たぶん、両方。」
なるほど。
「でも、綱渡り過ぎない?マリコルヌがギーシュ狙いしてきたらどうしてたのよ」
「そう。花びらを攻撃してくることが前提の作戦。あぶない」
ルイズの問いに、タバサとキュルケが首肯する。が。
「いや、その辺りも多少考えてはいたようだぞ?」
「アーカード?」
「最初の一撃は、おそらくギーシュ狙いだったのだろう。
だからギーシュはさりげなく後ろに下がった。『開始の合図』で注意を別の所へ引いてのう」
「でも、その後は?最初がギーシュ狙いだったんなら、なおさら危ないじゃない!」
「そのためにあのおデブを増長させたのだろう。
圧倒的な力を手にしたとき、そして相手が憎かった時、多くの人間は考えるのだ――
少しでも長く力に酔いしれていたい、いたぶってやりたい、とな」
特に、長く虐げられてきたものは。
そう付け足された科白は、何やらとても実感のこもった,重い言葉だった。
「そのギーシュは?」
「校長室でオスマンに説教食らってるわ。決闘禁止令を破っちゃったわけだし」
「セラス――も付き添い、か。なるほどね。
全く、決闘なんてするからよ。法を破るなんて、トリステイン貴族失格だわ」
「全くだ、のうルイズ」
(いや、あんたらのせいだろ……)
その場にいた誰もが思ったが、誰も口にすることは出来なかった。
君子危うきに近寄らず、である。
「不幸だーーーーっ!!」
以上で投下終了です。
何か,今回はネタ挟めませんでした…最後のはせめてもの抵抗。
ともあれ,今度からはもうちょっとペースアップしたいなぁと思います。
夏休みだし。
それではスレ汚し失礼しました。
タイミングずれてしまってごめんなさい,支援ありがとうございました。
乙です
GOOD GOOD
VEEERYYYY GOOOOD
投下乙
待ってたぞー
ああ、ようやく帰ってきてくれた…
なんか最近賑わってるな!!!
まぁ100レスなのに!!!
さて、ブラム・ストーカーの吸血鬼でも読むかな
ストーカーはよくないと思います><
スカートなら良いんですね?
スマートなら・・・ いや、なんでもない
チョウドイイ
そうか、ブラムスはそいつから取っていたのか・・・あぁスレ違いか
ちょっと投下しますね。
ひゃっはぁー支援
「あぁルイズ、懐かしいルイズ!」
「いけません姫様、こんな下賤な所にいらっしゃっては!」
アンリエッタは歓喜の笑顔を浮かべ、勢いよくルイズに抱き付いた。膝をついていたルイズは、そのまま仰向けに
引っ繰り返ってしまう。
「止めてルイズ、そんな堅苦しい行儀は! 貴女と私は立場を超えた、お友達じゃないの!」
「私などには勿体無い言葉です、姫殿下」
「ここには枢機卿も母上も、甘い汁を吸おうと寄ってくる宮廷貴族もいないのです。私にとって心を許せるのは一人だけ、
ルイズだけよ。そのルイズにまで余所余所しい態度をとられたら、私は・・・」
そう言うとアンリエッタは膝をつき、目に涙を浮かべる。衝撃のスクープ映像に、セラスは驚いた。リップは懐をゴソゴソ
しているが、カメラを持っていない事に気付き残念そうにしている。ルイズがハンカチを取り出し、手渡した。
「その通りです、私と殿下はお友達。宮廷の中庭で蝶を追いかけたり、クリーム菓子を取り合って掴み合ったりしてた時から、
それは変わっていません」
「ありがとう、ルイズ。あ、そう言えば私達が『アミアンの包囲戦』と呼んでいた一戦は覚えてるかしら?」
「姫様の寝室でドレスを奪い合った時ですね、勿論覚えています。どちらが姫の役をするかで揉めて取っ組み合いになって、
姫様のボディー・ブロー → ガゼルパンチ → デンプシー・ロールの3連コンボで私は気絶しちゃって」
「そして私が椅子に座って真っ白になってた所を侍従のラ・ポルトに見つかって大騒ぎになったのよね、あははははは」
とても子供同士の喧嘩とは思えない昔話に、セラスは呆れた顔で見つめていた。隣ではリップが口元に手を当ててクスクス
と笑っている。そこで気になった事を、セラスは尋ねた。
「あの、マスター。その、王女様とはどう言う関係で?」
「姫様が幼少の頃に、遊び相手をさせていただいたのよ」
ルイズは懐かしむように答えると、アンリエッタに向き直った。
「でも驚いたわ、ルイズがそんな昔の事を覚えてくれていたなんて・・・私の事など、とっくに忘れていると思ってた」
「何を言います姫様、忘れる訳など決してありえません! 悩みなど無い楽しい日々は、今も記憶に深く刻まれています!」
ルークとヤンの人情紙支援
それを聞くと、アンリエッタは立ち上がった。ベットに腰掛け、溜息をつく。
「貴女が羨ましいわルイズ、自由って素晴らしいわね」
「何をおっしゃいます、姫様は王女じゃないですか!」
「王国に生まれた姫など、良いものではありません。籠に飼われた鳥も同然、飼い主の機嫌で右に行ったり左に行ったり」
アンリエッタは月を見上げながら、もの悲しげに言った。そしてルイズに振り返ると、手を握る。
「実は私、結婚する事にしたの。相手はゲルマニアの皇帝、アルブレヒト三世」
「ゲルマニア!? 何故ですか、何故あのような成り上がり共の国に!」
「あの、マスター」
「何よセラス、今は話中よ」
「そんなに大声を出すと、隣に聞こえちゃうんじゃ・・・」
ハッとして、ルイズはドアを見る。数秒ほど待つが、隣人から反応は無い。どうやら外出中らしい。一安心すると、
ルイズはアンリエッタに顔を戻す。
「すいません、失礼をば。えっと、どこまで話しましたっけ?」
「皇帝に嫁ぐ所までよ、ルイズ。でも仕方が無いの、同盟を結ぶためだから。それよりルイズ、そちらはどちら様なの?」
そこで初めて、アンリエッタは二人に目を向けた。二人は黙って、アンリエッタを見つめ返す。
「二人は私の使い魔です、姫様。赤い服がセラス、黒い服がリップです。女王陛下の前よ、眼鏡を外しなさいリップ」
いい加減な説明をされながら、リップは眼鏡を外す。アンリエッタは二人を見ると、キョトンとした目でルイズに向き直る。
「魔乳と乙女にしか見えませんが・・・」
「魔乳と乙女です、姫様」
セラスとリップが並んで、軽く一礼する。それを見ると、アンリエッタは小さく笑った。
「貴女って昔から変わってるなって思ってたけど、相変わらずみたいねルイズ。人を使い魔にするなんて、初めて聞くわ」
(本当は人じゃなくて吸血鬼なんです・・・でも黙っとこ)
そう思っていると、アンリエッタは溜息をもらした。気になったルイズは、声をかける。
「姫様、どうかなさいましたか? なんだか、元気が無いように見えますが」
「・・・実は今日ルイズには、頼み事が有って来たの。とある人から、手紙を受け取る任務を受けてもらうために」
「手紙・・・ですか? えっと、因みに手紙の持ち主は今どこに?」
「持ち主はウェールズ皇太子、場所はアルビオンのニューカッスル城です」
「皇太子って、あのプリンス・オブ・ウェールズ様がですか!?」
「そうです。現在のアルビオンの政治情勢は、ルイズも知っていますね」
ルイズは即座に頷く、知らない者などいない。今アルビオンでは王党派と貴族派による戦争が起こっており、すぐにでも
反乱軍が勝利を収めそうだ。もし王室が倒されれば、次はトリステインに侵攻してくると言う噂も出ている。
「そのために、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶ事にしたのです。ですが、その同盟を妨げる材料が一つあります。
それが、ウェールズ皇太子が持つ手紙。それは、私が以前にしたためた物なのです・・・」
「姫様が、ですか・・・。どんな内容の、手紙なのでしょう?」
「それは機密です。ですが手紙をアルビオンに奪われたら、婚姻は解消され同盟が破棄されるのは間違い無い。そうなると、
トリステインだけでアルビオンに対抗しなくてなりません」
言い終えると、アンリエッタはベットに座ったまま両手で顔を覆った。ルイズはドンと胸を叩いて、声高に宣言する。
「お任せ下さい姫様、地獄の釜や竜のアギトの中に入る・・・のは流石に無理ですが、手紙を受け取るくらいは容易い事です。
このルイズ・フランソワーズ、必ずや任務を遂行してみせます!」
セラスはビクッと体を震わせると、主人を見つめる。リップは壁際に座り、王女を見つめる。二人の脳内では弱々しい声で
『マジですか?』と弱音が浮かんでいる。
「引き受けて、くれるんですか? この私の、力になってくれますか?」
「はい! なにせ私には、『土くれのフーケ』を捕らえた優秀な使い魔がいますから!」
「これが、誠の友情と忠誠なのですね。感謝するわ、ルイズ・フランソワーズ」
アンリエッタは立ち上がると、セラスの前に立つ。ゆっくりと手を掴むと、明るい声で言った。
「頼もしい使い魔さん、どうか私の友達をよろしくお願いしますね」
「え・・・あ、はい。よろしく、お願いします」
曖昧に返事をし、差し出された左手の甲に牙を見られないよう口付けをする。リップにも言葉を交わし、口づけをした。
その時、ドアの向こうから笑い声が響いてきた。キザッたらしい声に振り向くと、ドアが勢いよく開かれる。
「その任務、このギーシュ・ド・グラモンにも参加させていただこうじゃないか!」
「ギーシュ、あんた盗み聞きしてたの!?」
現れたのは、以前モンモランシーにフラれてセラスと決闘したギーシュだった。薔薇の造花を銜えたまま、器用に
喋り始める。
「姫殿下、是非とも我がギーシュ・ド・グラモンを任務に加えていただけないでしょうか?」
「グラモン? と言うと、あのグラモン元帥の」
「息子でございます、殿下」
ギーシュが立ち上がって一例すると、アンリエッタは優しく微笑んだ。
「貴方も私の力になってくださるのね、お父様の血を受け継いで勇敢だわ。お願いします、この不幸な姫を助けて下さい」
「ありがとうございます殿下、名を呼んでくださって歓喜の極み!」
ギーシュは感動の余り、両膝をつけて両手を天に仰いだ。『映画プラトーンのようだ』とは、セラスの感想である。
「大丈夫なの、この子は?」
さっきまで黙っていたリップが、口を挟む。目線の先には、仰向けで気絶したギーシュの姿が。ルイズの指示で、セラスが
廊下に引きずり出す。
「では明日の朝、アルビオンへ出発します。」
「道中は危険に満ちていますから、気をつけて行動してください。アルビオン派の者達には、決して捕まらないように。
もし捕まったら拷問によって情報を吐かされ、消されてしまいますからね」
そう言うとアンリエッタは机に座り、手紙を書き始めた。手を止める事無く最後の一行を書き終えると、杖を振って封蝋
をし花王を押す。手紙を掴むと、ルイズに手渡した。
「ウェールズ皇太子に面会できたら、この手紙を渡してください。目的の手紙と交換してもらえるはずです」
ルイズが了解の意思を示すと、アンリエッタは右手の薬指から指輪を抜き取りルイズに手渡した。
「『水のルビー』です、お守りに付けていなさい。この指輪が、貴女達をアルビオンの荒ぶる風から守る事でしょう」
ガタガタ震えながら支援
豚のような支援
翌日の朝、セラスとリップは塔の壁に寄り添い、隣合って座っていた。ルイズは馬小屋で、人数分の馬に鞍を付けている。
ギーシュは出発の準備に手間取っているのか、まだ来ていない。
「何か、変ですね・・・」
「何が?」
空を見上げていたセラスの質問に、リップは聞き返す。
「綺麗な空に、綺麗な太陽。まるで、何処かのリゾートみたいだなって思って」
「・・・確かに」
リップの返答に、セラスは再び空を見上げる。
「来たの間違いですかね?」
自分の意思で召喚された訳では無いのだが、セラスはそう言った。懐から弾丸を取り出し、リップは面倒臭そうに答える。
「私がどう思おうが、関係無いわ。いったん闘争が始まってしまえば、任務だの何だの・・・どうでもよくなるから」
指先で弄びながら、じっと弾丸を見つめている。
「とにかく、任務を果たしたいです」
「・・・気を抜かずに、主人を生かして連れ帰らないとね」
マスケット銃を正面に構え、リップは笑みを浮かべた。ハルコンネンと共にセラスの背中に背負われたデルフリンガーは、
黙って二人の会話に耳を傾けている。そうしていると、ギーシュが塔の入り口から走り出て来た。
「やあ待たせたね、ちょっと身だしなみに時間が掛かってしまって」
そう言った割には、外見に目だった変化は無い。違う所と言えば、靴が乗馬用なくらいだ。
その時、馬小屋からルイズの悲鳴が響いた。セラスは即座に立ち上がり、主人の元へと走る。
「ちょっと、どこ触ってるのよ! や、離しなさいよ!」
「どうしたんですかマスターって、何ですかソレ!?」
そこには巨大なモグラに押し倒される、ルイズの姿が。セラスの後を追って馬小屋に入ったギーシュは、爽やかな笑みを
浮かべながらモグラをルイズから引き離す。
「紹介しよう、僕の使い魔ジャイアントモールのヴェルダンデだ。ヴェルダンデ、ミミズは沢山食べてきたかい?」
誰も彼も黄昏の中に死んでいく支援
「全く、酷い目にあったわ。自分の使い魔くらい、キチンと躾けなさいよね」
不満を口にしながら、ハンカチで顔に付いた泥を拭き落す。因みにリップはモグラを見た途端、外へ走り出して行った。
どうやら、モグラは苦手らしい。指輪をハンカチで拭うと、ルイズは自分の馬に乗り上がった。
「セラス、馬の用意が出来たからリップを連れて来て」
「あ、はい」
小走りで馬小屋を出ると、すぐにリップを見つけた。長身で羽帽子を被った貴族と、向かい合っている。
相手の正体に、セラスは気付いた。たしか、朝の王女訪問の時に護衛をしていた・・・
「私は女王陛下の魔法衛士隊、ワルド子爵だ。君達の任務に同行するよう命を受けたんだが、ルイズはいるかな?」
「馬小屋にいるけど・・・」
リップの胡散臭い物を見る目を気にした風も無く、ワルドは軽く礼をする。そこでセラスに気付くと、歩み寄る。
「君もルイズの使い魔だね、初めまして。私はルイズの婚約者、ワルド子爵だ」
婚約者、と言う言葉にセラスは思考が止まる。マスターの婚約者? この20歳以上の男が、18歳未満のマスターの?
黒い一つ目の妖怪が登場しそうな雰囲気になりかけた時、馬に乗ったルイズとギーシュが馬小屋から出て来た。
「ワルド様!」
「おやルイズ、久しぶりだね」
近寄ってルイズを馬から抱き上げると、クルクルと回し始めた。使い魔の前で赤ん坊のように扱われている事に、
ルイズは顔を赤く染める。
「ワルド様、降ろして下さい。私はもう子供じゃありません」
「これはすまない、嬉しくてつい。あと、彼らを紹介してくれないかね?」
ルイズを地面に降ろすと、ワルドは帽子を目深に被って言った。
「学友のギーシュ・ド・グラモンと、使い魔です。金髪がセラス・ヴィクトリア、黒髪がリップバーン・ウィンクル」
ルイズは交互に指差しながら説明した。ギーシュは全貴族の憧れである魔法衛士隊の隊長に、深々と頭を下げる。
セラスは軽く頭を下げ、リップは余所見をしている。
字楽式黒魔術2008!支援
満足げな顔でワルドが頷くと、口笛を吹いた。すると朝靄の中からグリフォンが飛び出し、ワルドのそばに佇む。
幻獣にビビるリップに気付かず、ワルドはルイズに手招きする。
「おいでルイズ、乗りなさい」
爽やかに笑う許婚に、ルイズは断りの言葉が言えなかった。
門を出て出発するルイズ達を、アンリエッタは学園長室から見つめていた。隣ではオスマンが椅子に座り、頬杖をついて
ボ〜っとしている。部外者が見たら、痴呆症と勘違いされそうだ。
「彼女達に加護を与えてください、始祖ブリミルよ・・・オールド・オスマン、貴方は祈らないのですか?」
「姫、見ての通り老いぼれは横乳・・・ではなくて、祈る王女の姿に見惚れておる所ですじゃ」
下手な誤魔化しに呆れると、アンリエッタは溜息をつく。そこで何かを思い出したのか、真剣な顔でオスマンを睨む。
「実は先ほど王宮から連絡があったのですが、チェルノボーグの牢獄からフーケが脱走したとか。ご存知ですか?」
「いや、初耳ですな。確か城下で一番に監視と防備が厳重だと聞いとるが、何か不備でもありましたかな?」
「門番の話では、不審な人物に風の魔法で眠らされたとか。私と魔法衛士隊が不在の隙を狙われた、つまりは城下に
裏切り者がいると言うこと。これは由々しき事態です、オールド・オスマン」
「なるほど、アルビオン貴族が暗躍しとると考えられますな。確かに、一大事ですな」
首の骨をコキコキと鳴らしながら、面倒くさそうに答える。アンリエッタは、その姿を不安そうな顔で見つめる。
「オールド・オスマン、なぜ貴方はそれほどまでに余裕の態度でいられるのですか? いくら杖は振られ、我々には
待つ事しか出来ないと言っても・・・」
「なあに、あの者達なら道中どんな強敵に阻まれようとも、任務を達成できますからの」
「者達とは、ワルド子爵のことですか? それともギーシュ?」
オスマンは首を横に振る。残るは、ルイズのみ。
「まさか、ルイズと使い魔が!? ルイズは魔法が使えないし、使い魔は平民ではないですか!」
「姫は始祖ブリミルの使い魔の一人『ガンダールヴ』をご存知ですかな?」
「一通りは知っていますが・・・まさか彼女達が?」
そこまで喋って、オスマンは言い過ぎたと気付いた。なんとか誤魔化そうと、例え話に言い換える。
セラスの魔乳支援
「彼女達がガンダールヴと言うのでは無くてですな、『ガンダールヴ』並みに使えると言う意味ですな。ちょっと勘違い
させてしもうたかな? あと、彼女達は異世界から来たと申しておりましたぞ」
「異世界、ですか? 彼女達は、ハルケギニアの者では無いと?」
「そう、どこか別の世界の住民。その言葉を、この老いぼれは信じております。余裕の態度は、それが証拠ですじゃ」
アンリエッタは、窓の外を眺めた。手の甲に、その彼女達の唇の感触が残っている。何故か少し冷たい感覚に疑問を抱き
ながら、手を合わせ無事を祈った。
今日は以上です、急いでルイズ達をラ・ロシェールに向かわせなくては!
スナイピングの職人さんGJ&お疲れ様でした
続き楽しみに待ってます
今まで事あるごとに驚いてた乙女リップが"中尉"に戻ってきた様に思えて
ラ・ロシェールからの戦いが楽しみで仕方ないです。
作者様GJ、そしてお疲れ様でした。
乙であります
ワルドは紅葉おろしと魔弾、いずれの刑に処されるのかなー
魔弾であっさり遍在を消される→本人も撃墜→紅葉おろし
のフルコースでいいんじゃないか?
吸収したら便利そうなんだけどなぁ
どうしよう!ワルドが生きて逃げ切れそうな気がしない!
とりあえず魔乳と乙女言うなwww
ロリカード、スナイプ、どちらにも死亡フラグしかないワルド。
何も 問題は 無い
死亡フラグへし折るワルドの方が珍しいんじゃないか?w
ご立派なのはへし折ってたな
死亡って言うとちょっと語弊があるな
ワルドが吸血鬼になっていたら・・・無理か
きっと俺達の希望通りに子爵は豚のような悲鳴を上げて死んでくれるよ
吸血鬼ワルド→犬の餌、ですね。
わかります。
おっぱいとボイン
今さらだがアルビオンまで引絞られた矢弓のように飛んで行くと思ってた
投下2時間48分・・・くらい前?(・ω・;)
楽しみにしてます
ひゃっはぁー魔乳wktkして待ってます
セラスが赤い服・・?
素敵だ
やはり 作者は 素晴らしい
トリステインから馬で二日、アルビオンの玄関口である港町ラ・ロシェール。峡谷に挟まれた街にある、狭い裏通りの
更に奥。そこに、酒樽の形をした看板を掲げる『金の酒樽亭』が有った。
扉の横には、喧嘩に使われて破壊された椅子が積み上げられている。客同士が口論の末に武器を握って殺し合いをするため、
亭主が『喧嘩の時は椅子を使うように』との張り紙を張ったためである。
そんな店は今、傭兵やならず者によって満員御礼だった。ほとんどはアルビオンの内戦から船で戻って来たばかりで、
血と汗の臭いを周囲に振り撒いている。だが他の客は気にもせず、食べたり飲んだりして騒いでいた。
「アルビオンの王様も終わりだな、これからは共和制の時代だぜ!」
「その通り、と言う訳で共和制に乾杯!」
「酒だ、酒を持って来い!」
そう言って、傭兵達は大声で笑いながら酒を酌み交わしてる。雇い主の敗北が決定的となって逃げ帰ってから、ずっと
この調子だ。だが彼らに恥じる様子は、毛頭無い。敗軍に最後まで付き合う義務など、傭兵には無いのだから。
そんな時、二人の客が店を訪れた。一人は女でフードを被り、一人は男らしく白い仮面を付けている。妙な組み合わせ
に、客達の視線が集まる。女は店内を見渡すとフードを取り、大声で言った。
「ちょいと傭兵を雇いたいんだけど、腕っ節の良い奴らはいるかい?」
男達の群れから、口笛が響く。それは、女が美人だったからだ。切れ長の目で細く高い鼻筋をしており、肌などは象牙の
ようだ。フーケは近くの傭兵の一段に近付くと、金貨の詰った袋をテーブルに置いた。中には、エキュー金貨がギッシリと
詰っている。
「貴方達は、アルビオンの王党派に雇われてたのかい?」
「先月まではな、でも今はフリーだ」
「この金で、貴方達を雇うわ。言っとくけど、逃げたら許さないからね」
「良いぜ。それで、何をすれば良いんだ?」
フーケは白仮面の男と二言三言ほど話すと、醜悪な笑みを男に向けた。
「なに、簡単な事だよ。崖の上から、松明と矢を落すだけさ」
「ねえワルド、ペースが速すぎるわ。三人とも、へばってるみたいだし」
抱かれた姿勢でルイズが言うと、ワルドは後ろを見た。三人とも馬に倒れこむような格好で、ぐったりしている。
魔法学園を出発してから、ワルドは休憩を挟まずグリフォンを走らせている。ギーシュ達は途中の駅で二度ほど馬を交換
したが、すでに三頭目の馬も参りそうな状態だ。このままでは、置いていくことになってしまう。
「ラ・ロシェールの港町まで止まらずに行きたいんだが、やはり無理か・・・」
「どこかで休みましょう、主人として見過ごせないわ」
「悪いが、それは出来ない。夜中までには到着しなくてはならないから、なんとか絶えてもらうよ」
ルイズが後ろを見ると、セラスはぐったりして馬に跨っている。リップはうつ伏せの状態で、ピクリともしない。
それでもマスケット銃を手放さないのは、流石と言えよう。ルイズは心の内で、謝罪の言葉を呟いた。
「大丈夫かよ相棒、今にもギブアップしそうだぜ」
「平気ですってデル公さん、私なら大丈夫ですよ〜・・・」
「明らかに駄目そうじゃね〜か、あと俺はデル公じゃ無いって」
馬に体と胸を預けたセラスに、背中のデルフリンガーが心配そうに声をかける。右隣ではギーシュが、ぶつぶつと
『魔法衛士隊は化物か』などと呟いている。左隣ではリップが馬の背に突っ伏し、ぐったりしている。ワルドの
グリフォンに遅れまいと、なんとか随伴してる状況だ。
「なぁ相棒、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「なんですか、デルフさん?」
「おめぇ、人間じゃ無いだろ」
セラスは体を硬直させ、慌てて前方を見る。ワルドに聞かれていないのにホッと一息つくと、デルフを睨んだ。
「そんな目で見ないでくれよ、Mに目覚めちまうから。で、当たりかい? もしやと思ったけど、やっぱりそうか」
「なんで分かったんですか? デルフさんには、まだ言ってないはずですけど」
「店で相棒に貰われた時、あとフーケ討伐から帰って来て状況を説明された時。相棒の手から、体温を感じなかった。
最初は手袋が熱を遮断してるからと思ってたけど、こうやって背中に背負われてる間も感じないんでね。もしやと思った
けど、やっぱりそうか」
そういうものなのだ それは
支援だ
「あの、デルフさん。その、この事は内密に・・・」
「分かってる、黙っといてやるよ。因みに聞きてえんだけど、相棒の相棒も人間じゃ無いのかい?」
その言葉に、セラスは再びリップを見た。体を起こし、前をじっと見ている。見ると、遠くに街の灯りらしき物が見えた。
もうすぐラ・ロシェールに着いて一息つける安心感からか、笑みを浮かべながら答える。
「実は私達、吸血鬼なんですよ。と言っても、ハルケギニアの吸血鬼とは違いますけど」
「へぇ、そうだったんかい。体温が低いのは、それが原因か」
それで納得したのか、カタカタと震えるとデルフは黙った。が、何か思い出したのか再び喋り出す。
「あぁそうだ相棒、ちょっとお願いしたい事があるんだけどね」
「何ですか、もう喋るのも億劫なんですけど・・・」
「さっき黙ってるって言ったけど、タダじゃ黙れないわ。だから、俺ッチを胸で挟んでくr
右手を背中に回し、デルフリンガーを『軽く』握った。『メキリ』と、鞘が悲鳴の声を響かせる。
「デルフさん、私そう言う冗談は嫌いなんですけど・・・」
「痛い痛い分かったから取り消すから、お願い離して! あ、でも男の大事な所を握られてるみたいで、ちょっと快感♪」
ギーシュやリップ、それにワルドやルイズの耳にも、硬い物を拳で殴りつける音が聞こえた。
「何をしているんだね、ミス・セラス?」
ワルドが声をかけると、セラスは慌てて剣を背中に戻した。その際、ルイズがこっちを見ているのに気付く。
目が合うと、恥かしげに顔を逸らした。
それから数十分ほどして、ルイズ達はラ・ロシャールの入り口に着いた。太陽が沈んだため、セラスはフードを脱ぐ。
周りを見ると、そそり立つ崖の一枚岩に沿って旅館や商店などが並んでいる。良く見ると、建物の一つ一つが同じ岩から
削り出されていた。土系統のスクウェアメイジによって作られたのだとルイズから聞くと、セラスは驚きの声を上げた。
「この先の宿に予約を入れてある、今日はそこで休もう」
そう言ってワルドが前を指差した、その時。いきなり崖の上から、松明が何本も投げ落とされてきた。突然の事に馬が
驚き、悲鳴をあげながら前足を高く上げる。ギーシュが放り出される中、セラスとリップは即座に飛び降りて体勢を整える。
ダイレクトサポート支援
「なんだいきなり、夜盗か山賊の類か!?」
ギーシュが叫ぶなか、何本もの矢が闇夜を切り裂き飛んできた。
セラスは背中からハルコンネンを下ろし、崖に向けて構えた。だが、下からは犯人の姿を捉えられない。その間にも、
上からは松明や矢が飛んでくる。ワルドはルイズを守りながら、小型の竜巻で攻撃している。だが、崖に当たるだけで
攻撃を防ぐには至らない。
「こいつはヤバイね、どうするよ相棒?」
「どうするったって、障害物が邪魔じゃ狙えないし!」
「退いて、私が撃つわ」
そう言ってリップがマスケット銃を空に向け、発砲した。上空で鳥のように方向転換しながら、松明や矢を撃ち抜き
無数の破片と化す。だが攻撃は止む事無く、軽い音を立てて矢が足元に突き刺さる。
どうしようかと思い悩んだ時、ふと騒音が消えた。崖の上から男達の悲鳴が沸き起こり、空に向けて矢を放っている。
そこには一匹のドラゴンが飛んでおり、小型の竜巻で男達を吹き飛ばし始めた。崖から男が何人か転がり落ち、苦悶の
声をあげる。そこで、ルイズが大声で叫んだ。
「あれって、シルフィードじゃないの!?」
「お待たせー、みんな大丈夫〜?」
タバサの風竜であるウィンドドラゴンが降りると、キュルケが手を振りながら近付いてきた。タバサはパジャマ姿のまま、
何事も無いかのように本を読んでいる。
「朝がたに外を散歩してたら貴女達が馬で出かけるのを見たもんでね、急いでタバサを起こしてストーカーして来たのよ♪」
その暢気な言葉に、ルイズは肩を落とした。折角のお忍びの任務だと言うのに、これじゃ台無しじゃないか。だが助けて
もらった手前、文句は言えない。その間にキュルケはワルドに忍び寄り、ギーシュは男達に尋問を始めた。
「ねぇ旦那様、情熱はご存知かしら?」
ワルドはチラリとキュルケに視線を送ると、無言で座り込んでいたルイズを抱きかかえた。
「悪いが、僕には婚約者がいるんでね。君の情熱とやらを、受け止める気は無いよ」
「へ? 婚約者って、ルイズのこと? あらあら、うふふ♪」
赤面したルイズを、キュルケはニヤニヤしながら見つめている。その情景にセラスとリップが苦笑していると、ギーシュが
ワルドの元に歩み寄った。
ココア持ってこい砂糖ありありでな支援
セラスの魔乳に挟まれ隊支援
「子爵、あいつら物取りだと言っていますが・・・どうしましょうか?」
「なら何も問題は無い、放って置こう。早く宿に入って、ゆっくり休みたいからね」
ワルドが一行にそう告げると、ルイズと共にグリフォンに跨る。キュルケの騒がしい声を響かせながら、街に向けて進み
出した。ラ・ロシェールは、もう目と鼻の先であった。
◇
ラ・ロシェールで一番上等な宿『女神の杵』に到着した後、一行は三班に分かれて部屋で休むこととなった。
ワルドとルイズ・キュルケ&タバサとギーシュ・そしてもう一組、敵同士である二人の吸血鬼。
二階の一室で、セラスはベットで横になっていた。一日中ずっと馬に乗っていたので、疲労し切っていたのだ。
リップは壁際のベットで、仰向けで大の字になって眠っている。部屋に向かうまでナチス国歌を鼻歌で歌っていたが、
ベットに着いた途端に夢の中だ。
「アルビオンに向かう船は、明後日の朝らしいね。ま、その間ゆっくりしてれば良いよ」
ベットの脇に立てかけられたデルフが、慰めるように呟いた。セラスは両手を首の後ろに回し、天井を見つめている。
「そうさせてもらいます。デルフさんも、ゆっくり休んで下さい」
「おう分かった、そうさせてもらうわなぁ・・・なぁ、相棒?」
「何ですか?」
眠りかけたデルフの質問に、セラスは顔を向けた。
「おめぇ、タイムリープしてねぇ・・・」
「え?」
体を起こしてデルフを見るが、すでに眠ったのか反応は無い。言葉の意味が分からないまま、セラスは目を閉じた。
すぐ後ろで、魔弾の射手が凶悪な笑みを浮かべて立っているとも知らずに・・・。
「ガンダールヴ? セラスとリップが?」
「誰もが持てる使い魔では、決して無い。君は、それだけの力を潜在的に持っているんだよ」
セラスの隣の部屋で、ルイズはワルドと話し合っていた。最初はルイズの過去についてだったが、途中で話が変わった。
内容は、使い魔に関して。二人の使い魔の正体は、始祖ブリミルを守った伝説の使い魔『ガンダールヴ』だと言うのだ。
突然の事に、ルイズは困惑していた。ゼロと言われ、落ちこぼれな自分が、何でまた伝説などに? 笑えない冗談だ。
オープンセサミ…支援
支援
「ルイズ、君は偉大なメイジとなる。そう、始祖ブリミルのように・・・。もしかしたら、歴史の書に名が残るかも」
ワルドはそこで言葉を切ると、フッと息を吐いた。そしてルイズに顔を近づけると、再び口を開く。
「ルイズ、この任務が終わったら・・・僕と結婚してくれないか?」
「え?」
婚約者の死亡フラグ発言に、ルイズは驚くの声をあげる。
「もう君は十六だ、自分の事は自分で決められる。ずっとほったらかしだった事は謝る、でも僕には君が必要なんだ!」
「ん・・・んふう」
ベットに仰向けで眠るセラスに、黒い物体が覆い被さっていた。そこから二本の腕が伸びており、左肩と右足に
添えられている。そして首筋に顔を寄せ、赤く濡れた舌を這わせる。ピチャリという音に、セラスは目を覚めした。
「リップ・・・さん?」
「あら、お目覚め?」
目の前にいたのは、さっきまで隣で眠っていたリップバーンだった。リップは悪びれた様子も無く、ペロリと舌を出して
妖しい笑みを浮かべる。左肩に添えられた手が胸部に移った所で、意識が覚醒したセラスはリップの両腕を掴んだ。
「な、何してるんですかリップさん! なんで、私のベットに上がってるんですか!?」
「だって、吸血鬼は夜中は起きてるものだし。起きたら貴女が寝てたから、暇潰しに性的なイタズラでも・・・と思って♪」
「せ、せ、性的って・・・」
「それより静かにしないと、隣に聞こえるわ。ご主人様が部屋に来ちゃうかも・・・それでも良い?」
セラスは全身を硬直させた。こんな所をルイズに見られたら、ただでは済まない。レズビアンだと思われるかも・・・。
そうセラスが考えている間に、リップは腕を解いてセラスの両頬を掴む。そして、唇を無理やり奪い取った。
「ん、んむう、むぐぅうう!?」
突然の事に、セラスは脳内パニックに陥った。両腕と両足を激しく動かすが、頭が混乱して上手く力が出ない。
その隙を突き、リップは舌を入れ絡め取る。唾液が混じり合う卑猥な粘着音が、部屋中に響き渡った。
支援!支援!支援!!
よろしい ならば支援だ
新着レズの表示を連打支援
支援
諸君、私はリップが好きだ…
諸君、私はリップが好きだ…
諸君!私はリップが大好きだ!支援!
ワルドとの話を終えてベットに入ろうとした時、隣から物音が聞こえてきた。ワルドも気付いたのか、隣の部屋を気に
している。
「なんだか隣が騒がしいね、何かあったのかな?」
「どうせ二人が騒いでるんだわ、注意して来ます」
ルイズは部屋を出て、隣の部屋の前に立つ。ドアに耳を当て、音を聞いてみる。どうやら、ベットで暴れているらしい。
腰に手を当てて、溜息をついた。
「まったく、これからアルビオンに向かうってのに何やってんのよ。主人として、キチンと叱らないといけないわね」
ドアノブに手をかけ、深呼吸を一回。そして、勢い良くドアを開けた。
「ちょっと二人とも、静かにしなさ・・・い・・・・・・」
ルイズの声に、二人が顔を向けた。口と口の間に、唾液の橋を作った状態で。
「な、何してるの・・・貴女達?」
セラスはベットに仰向けになり、天井を見上げて荒い息を吐いている。そしてリップはセラスに上から被さる格好で、
抱き付いている。怪しいなんてものでは無い、ありえない光景だった。
「見て分かりませんか? 口付けですよ口付け、ただのくだらない普通のね。私にとって、単なる過程に過ぎないわ♪」
ルイズに気付いたセラスが何か言おうとしたが、リップに左手で塞がれた。『むぐぐぐ』と声を出していると、ルイズが
肩を震わせだした。だがすぐに収まると、口を閉じた渋い表情を二人に向けた。
「ごゆるりと・・・・」
そう言って、ルイズはドアを閉めた。中からセラスの叫びが聞こえたが、無視する。部屋でワルドに状況を聞かれたが、
『ただ騒いでただけでした』と言うと、そのままベットに潜り込む。夏コミのネタは、これに決まった。
あれ、なんでエロイ内容になってるんだろう? 続きは日曜日あたりで。
お美事で御座います、支援
危うく最後の行までいれそうになったぜ乙GJ
お疲れ様でした、作者様、そしてこれからどうなるのか別の意味で期待大w
スナゼロ様お美事、お美事で御座います
シグルイのネタを分かってくれて良かった、これからリップ×セラスで頑張ります。
キュルケがアリシアさんに……
ダメだ、欠片も想像できない……
素晴らしい創作能力だ。作者をカテゴリA以上の作家と認識する
そう来るとは思わなかった
夏コミって…このルイズは某サイヤ人の主と同じ業(腐)を背負っているのか。
まがんのつかいまと同じ臭いがしはじめたな
ハァハァ(´Д`)リップは奥手だと思ってたのにハァハァ(´Д`)
あ…?あ…?
虚無と狂信者二話目できました。2310辺りに投下
アンデルセンは、とりあえずは普通にやってくれていた。キュルケが部屋を私から遠い所
にしたり、あの吸血鬼が昼間寝ていたりなどから2人が出会う絶対数も少なかったし、
出会っても私とキュルケが全力で止めたからだが。彼は普段は温厚な神父の顔を崩さなか
ったし、私の雑用を割りとしっかりやった。曰く「孤児院の仕事で慣れている」そうだ。
しかし、隙あらば平民に彼の神の教えを広めようとするのには辟易した。
けれど、あの時の出来事もまた彼なのだろうか。
私が錬金の授業で失敗した時、クラスの皆は私を責め立てた。それは死人がでてもおかし
くない規模の爆発だったから無理もないけど。情けない気分になる私の前に彼は立ち、
私の両肩に両手を置き、皆にこう言った。
「この中で生まれて一度も失敗をしたことの無い人だけがこの子を責めなさい。」
一瞬黙る皆、続けざまに、
「この子を責める前にするべきことがあるでしょう。」
といった。すると何人かが怪我をした人に駆け寄って手当したり、医務室に運んだりした。
また、罰掃除の時に、ゼロのルイズと呼ばれ馬鹿にされていると話した時も、
「神から与えられた命に優劣はありません。皆必ず何かできることが、あるのです。」
と言ってくれた。また、
「貴方の頑張りを神はいつも見ていますよ。もちろん私もね。」
とも言った。私はそっぽをむいたが、嬉しかった。しっかり掃除はさせられたが。
他にもギーシュに絡まれた見ず知らずのメイドを助けたこともあった。その時何故か決闘
を申し込まれたが受け入れた。その時はギーシュに私が飛び蹴りをし、キュルケが絞め落
とすことで事無きを得たが。
しかし、目覚めたギーシュに、
「汝悔い改めなさい、さすれば許されるでしょう。」
と言い、仲直りするよう促すと、意外にも彼はすんなりと受け入れた。
とにかく彼はあの吸血鬼が絡まなければ結構な人格者らしい。
さて、アンデルセンは暇があれば彼が持っている本を読んだり、白紙の本にそれを書き写したりしている。
主に図書館を利用している。平民は入れないはずだが、ミセスシュヴルースに口利きして
貰ったらしい。そんな彼に私はある事を告げる。
「品評会?」
「ええ、使い魔と主の相性を見るの」
正直彼が何をできるかは分からない。冷静に考えれば私が彼を凄いと思う根拠は吸血鬼
と対峙した時に見せる殺気だけだからだ。まさかあれと闘わせる訳にはいかない。
彼はうーんと唸ったあと、何か思いついたようだ。私は何をするのか聞いたが、
「お楽しみです。」
と、はぐらかされた。しかし彼が丁度写し終えたと、あたらしい本を見せたことがヒントらしい。
wikiにあげてもいいのか?支援
一方その頃、キュルケは自分の使い魔に同じことを相談していた。彼はしばし黙考し言った
「アンデルセンと殺し合い」
「NO」
「誰かの血を吸う」
「NO」
「誰かをグールに」
「からかってるでしょ」
「ああ」
キュルケは杖を取り出す。彼は悩むと銃を懐から取り出し己の頭に突きつけた。
彼の頭は弾けた。キュルケはそれをだまってみている。数秒で彼の頭は再生する。
「NOよ。皆卒倒するわ」
彼は笑って言う。
「困った、これでは姿を蝙蝠に変えるくらいしか残っていない。」
「それでいいわよ。」
彼女は部屋を出る。後ろをむきながら、
「それ片付けなさい。」
と、血の残骸をさして言った。荒々しく扉が閉まる。
「了解した。我が主(マイマスター)」
彼はニヤニヤ笑って言った。
品評会当日、いつものように睨みあう2人を引き剥がし、とりあえずアンデルセンを
ステージに引っ張り上げる。
「アンデルセン、顔」
そう言うと彼の顔は戦士から神父へと変わった。大丈夫だろうか。とりあえず私は
彼を東方から来たと紹介した。私はにっこりと挨拶した。その後アンデルセンに、
「本当に大丈夫でしょうね?」
と聞いた。
「任せて下さい。」
彼は笑顔で言う。そして観客に向き直る。
「それでは皆さん、是よりわが神の奇跡をご覧に入れましょう。」
すると、彼は本を取り出した。それを捲っていく。私はある事に気づいた。それはアンデ
ルセンが捲っているのではなく、ひとりでにめくられていくのだ。そして、その本はバラ
バラになりページの一枚一枚が意思をもつ様に動きアンデルセンを隠した。観客はざわつ
き「先住魔法か?」「エルフか?」などと声を上げる。そして本が消えるとアンデルセンの
姿は掻き消えていた。歓声と拍手が鳴り、甲高い口笛が響いた。私はとりあえず笑顔で
ステージから降りた。その後凄しい震えが全身に起こった。
「凄いわ、アンデルセン、」
小躍りした後ふっと我に帰る。
「アンデルセンどこいったの?」
wiki色々考えて載せてみたいと思ったのでよろしくお願いします
神父萌え支援
「ふむ、これは困った」
アーカードの言葉に私はそちらを向いた。
「何が?」
「被ったのだ、マスター」
私は首を傾げる。
「前の人間と被った芸はできん、これは決まりの様なものだ。」
嫌な予感がする。
「再生は無しよ!」
「判っている。なーに問題はない。もう一つ飛びっきりの芸をしよう。」
そう言うと彼は笑ってステージに上がる。私はいつもの調子で自己紹介する。吸血鬼
の登場に多少会場はざわついたが、彼が頭を深々と下げるので淡いながら拍手が起きる。
そして彼は懐から何かを取り出した。それは実りのよい大きなリンゴだった。そして、
彼はそれを高々と掲げた後私の頭にのせる。会場はざわめき、私の背中を汗がつたう。
彼は会場の出口まで移動した。その距離20メイル。額からも汗がつたう。
そしておもむろに銃をとりだした。彼は悲鳴に近いざわめきを堪能した後それを撃った。
私の頭の上のリンゴが撃ち抜かれ落ちた。果汁が伝う。壮大な拍手が私を包んだ。さっき
よりも大きい。私は一礼した後アーカードの元に歩いて行き、彼を連れだした。
「拍手はあの娘よりも大きいぞ、良かったな。」
私は震える手で杖を取り出した。
神父がまるで神父のようだ。
あれ…………?
ファイアーボールという叫びと爆音の後、俺の前に蝙蝠の群れが起り、そいつが現れた。
「全く洒落の通じぬ主だ、アンデルセン」
「アーカード…」
俺はそいつを見据えた。
「随分大人しいじゃないか宿敵。お前ならあんな嬢ちゃんの制止など聞かず、
おっぱじめるかと思ったが」
奴は笑顔で言う。
「どうも、ルーンとやらには主の言うことを聞かせる力があるらしい。それに…」
孤児院の子供たちを思い出す。俺は胸のルーンを指して言う。
「子どもには刺激が大きすぎる。」
奴は肩を震わせ笑う。その笑いを見ながら俺は奴と行った戦闘を思い出す。
果たして一度死んだ俺がこいつとまた戦う権利があるだろうか。
そういう考えが浮かぶことこそ、このルーンの力なのだろうか。
「あのー」
後ろを振り向くとシエスタが立っていた。手には料理がある。それを私に手渡した。
「き、貴族の方だったんですか。」
彼女が戸惑った様に聞く。
「いえいえ、平民です。あれは神の御業ですから。」
彼女は首を傾げる。
「神に仕える者なら努力しだいでできます。それに神は皆平等に我々をお創りなされた。」
彼女に懇々と教えを説く。だが、厨房からは彼女を呼ぶ声がする。
「あ、すいません、忙しくて。」
「いえいえ構いません。神から与えられた職務を全うするのは我々に等しく与えられた義務です。」
彼女はニコリと笑い、
「また、為になる話をしてください。今度は皆に。」
そう言い消えていった。奴は肩を震わせた。
「異教の地で宣教師となるか。」
俺は笑い言った。
「今は、プリミルが俺の…敵だ。」
まってー、ブリミルはあくまでも人支援
投下終了です。繋ぎの話なので少しほのぼので。
神父の性格に関しては異論あるでしょうがなにとぞ
ご了承ください。支援ありがとうございました。
頭を破裂させるほのぼの・・・乙ー
さて三話目ですが、リジェネーターに関する僕の解釈と
オリジナルのメイジの吸血鬼が敵としてでますが問題ないでしょうか
なければ40分ごろ投下します。
教皇庁生物学研究所より再生能力強化用製剤及び当該研究データの全てが奪われ、研究者
十五名が殺害される。遺体の状況から吸血鬼の犯行であると判断し、13課が捜査開始。
二年間の捜査の後構成員二名が行方不明。その後10年間の捜査の結果、進展が認めら
れず捜査の終結を決定する。当製剤唯一の被験者であるアレクサンド・アンデルセン神父
「一体ここどこだ?」
平賀才人は視界に突然現れた森に茫然とする。それもそうだ、今まで東京に居たんだから。
上を見ると月が二つある。彼は笑って言う。
「夢だなこりゃ。」
「「私の使い魔しらない?」」
ルイズとキュルケは二人同時に話しかける
「あなた、リンゴの香水?それ。」
強い匂いにルイズは顔をしかめた。その途端キュルケが震えだす。常に冷静なゲルマニア
の娘の取り乱した姿に、只ならぬものを感じたルイズは話題をそらす。
「そうね…、ねえ、あれ何。」
二人はその光景に絶句する。向こう側の塔の側に巨大なゴーレムが立っていた。
「まさか土くれのフーケ?」
ゴーレムの上には二人の人間が立っていた。一人は黒いローブを着て長い筒を持ち、
一人は白いスーツを着て銀の箱を小脇に抱えた。彼女達はすぐさま向かった。
88ss!!
そいつは素敵だ大好きだ支援
アーカードとアンデルセン、異世界から来た二人はゴーレムではなく、そこに立つ人間に
注目した。白いスーツを着た男に。
「伊達男」
二人は解き放たれたように走り出した。
「待ちなさい。」
撤退するゴーレムの前にルイズが立ちはだかる。ゴーレムは構うことなく突き進もうとする。
「ファイアーボール。」
爆発が起こりゴーレムの左足を抉った、失敗魔法の威力は本物のファイアーボールを凌駕する。
その威力に驚愕したのかゴーレムの動きが止まり、続けさまに横から現れたキュルケが炎
で追撃。ゴーレムは転倒する。伊達男はすぐさま飛び立ち塔の上に登った。そのあまりの
身体能力に二人の少女とフーケさえも驚いた。しかし、伊達男は三人以上の衝撃を受ける。
向かってくる二人の男に、その一方は自分を屠った相手。ドバルカインは払って置いた保険
に感謝した。
「ではさよならフーケさん。さよならセニョリータ。」
彼は指を鳴らした。森から三つの影が飛び出した。
すいません規制食ってました
三人の男は人を超越した速度でルイズ達に迫る。ルイズは錬金をしようとするがその隙すら
無く押し倒された。ルイズを恐れさせたのはその後だ。男の口に生える牙に。キュルケも
また似たような状況になる。男たちは彼女らの首に吸い付こうとする。恐怖に目を瞑った
その時、爆音が響いた。アーカードがキュルケの上の男の頭に銃を撃ったのだ。さらに、
ルイズの上の男の首がぼとりと落ちた。ルイズは慌ててその死体を押しのけた。火事場の
馬鹿力というものだろう。彼女は慌てる頭でそれが自分の使い魔のしたことだときづいた。
彼は真っ直ぐに残った男を見据えている。笑みを浮かべて
残った男は四人に対した。黒い布を纏い姿は見えないその手にはナイフが握られている。アンデルセンとアーカードはすぐにその男が他とは別格の力を持つと見抜いた。二人は目
配せする。アンデルセンは聖書を飛ばし自分の体を包みかき消した。光るページの群れが
ドバルカインを追う。アーカードはキュルケとルイズに後退を促し男と対峙する。男は呪
文を唱えた。
濁流が剣の先から沸き起こりアーカードを襲う。アーカードは横っ飛びでかわし弾丸を撃
つ。男はそれらをナイフで弾き続けざまに呪文を放つ。氷の刃が襲いアーカードに突き刺
さった。キュルケは戦慄を覚えた。男の魔力はトライアングルである親友のタバサに匹敵
する。しかも男の身体能力から明らかに吸血鬼であろう。では同じくトライアングルであ
る自分
は勝ち目がほとんど無い。首筋を汗が伝う。男を見た。彼はさらに氷の矢をアーカードに
叩き込む。そしてアーカードの死体を凍らした。それでも彼はアーカードを見据える。挽
肉の様になり凍った物に未だ警戒を解かない。どこからか蝙蝠が舞い降りる。キュルケは
気づいた。凍らされた物がどす黒くなって腐っているのを、蝙蝠が舞、人を形つくり、ア
ーカードが姿を表す。その顔に浮かぶは、狂った笑いだ。
「素晴らしい、お前を危険度A級の吸血鬼と見なそう。」
拘束制御術式を解放する。彼の体に目が現れる。巨大な複数の目だ。キュルケはそれよりも
アーカードの両眼にこそ恐怖した。
「見せてやろう、本物の吸血鬼の闘争を!」
彼から巨大な犬が飛び出した。その牙が男を襲う。彼はかわそうとするが、左手を食い千
切られた。男は苦しげに呻いた。
「さあ、お楽しみはこれからだ!傷を回復しろ!使い魔を出せ!魔法を使え!姿を霧に変
えろ!ハリー!ハリー!ハリー!ハリー!」
男は背中を向け、悲鳴を上げ逃げようとする。アーカードは怒りを露わにする。
「つまらん!お前も雑魚供と…同じか!」
ヴァスカビルの犬が襲う。それは確かに男に喰いついた。最後男は何かしたかに見えたが何も起こらなかった。
己の使い魔の異常性を見ながらキュルケは眼前で繰り広げられた闘争を思い直した。
(吸血鬼は私たちの世界のものじゃない。アーカードの世界のものだ。それが四体も?
一体何が起こってるって言うの?)
キュルケは白い男が持っていた銀の箱を思い出す。
(あれを奪いに彼らはここへ来た。)
ふと辺りを見回した。フーケがいない。おそらく逃げ出したのだろう。しかし、もう一つ
あるべき影が無い。
「ルイズ…?」
彼女の足跡は森へ続いている。
「あの馬鹿娘!」
規制支援
件の少女は森を走りながら、息を切らし毒ついた。
「何よあいつ!ご主人様を置いてくんじゃないわよ!馬鹿使い魔!」
走るドバルカインの前の木に聖書のページが突き刺さる。驚きながらも振り返る。
その眼はミレニアムの中尉に相応しく闘争の歓喜に染まる。
「いいだろう!首切り判事!お前は我々のサンプルの一つとして列挙されるのだ!」
アンデルセンは十字に銃剣をかざし、いつものように言った。
「我らは神の代理人、神罰の地上代行者、我らが使命は我が神に逆らう愚者をその肉の最後の
一片までも絶滅すること。」
火花が散る。
「AMEN!!!」
伊達夫「私の名は『ト』バルカインだ!!ドバルカインでもコバルトブルーでもないッ!!」
支援
「トバルカイン」ですよ支援
以上です。オリジナルは流石にということで地下水の登場となりました。
次回はアンデルセン対伊達男です。気合い入れて書きます。
支援どうもありがとうございました!
>>195 あーゴメンなさい
お詫びに君にゴイスーなデンジャーが迫ってると忠告するよ。
改行ができてるならもっと君は最高にディ・モールトいいんだがなああ
とりあえずトバルカイン以外の誤字っぽいのそのままにしたけど直すべきか?
まぁ気になれば本人が直すんじゃないかい?
×…ヴァスカビル
○…バスカヴィル
○ブリミル
×プリミル
予告です、21:45くらいから投下しますね。
今回は長くなったので、支援求みます。
では、失礼します。
そうろう気味に支援
アーカードとワルドが互いに睨み合っている中、突如周囲から魔法がとんだ。
SR-71の直撃を免れたメイジ達が次々と魔法を放ったのである。敵と思しき少女に一人が攻撃しだすと、それは連鎖的に広がった。
恐らく本人たちもあまりわけがわかっていない。状況を理解し切れていないが、それでも魔法は浴びせられ続けた。
少女の小さな体躯は引き裂かれ、焼かれ、粉々になりながら吹き飛ぶ。
しかし四散した肉片はたちまち霧のように変化し、生き物のように動き始める。
黒い霧は影となり、影は腕となり、腕は枝のように分かれて全方位に広がる。
それは人間や竜を問わず生物を一瞬にして貫き、砕き、潰した。
レキシントン号に起きた異変を確かめるべく、哨戒を中断して戻ってきた竜騎兵達も、空中で兵士と竜共々刺し貫かれる。
瞬く間にレキシントン号の甲板上は死体に溢れ、もはやその中で生きている者はワルドだけとなった。
「前菜を食い散らかすのは、もうこの辺でいいだろう」
「お・・・おォぉぉオォオオオオオオッッ!!」
ワルドは雄叫びをあげた、己を奮い立たせる為の叫び。目前の化物への畏怖が、分泌されたアドレナリンで麻痺する。
続いてワルドは詠唱、『偏在』を使って数の優位に立つ。
それは最低条件、化物相手にするのだ。真正面から相対するのだけは避けうるべきことである。
間髪入れず、偏在達は魔法を四方からアーカードに叩き込む。本体のワルドも『ライトニング・クラウド』を放った。
炎上で発生し続ける煙が漂う中、アーカードの姿はいつの間にか消えていた。
魔法が命中したところまでは確実に視認していた、魔法を吸収する面倒な剣も構えていない。
(一体どこに消えた!?)
必死に姿を確認しようと目を凝らしていると、突然背後に気配を感じた。
すぐにワルドは振り向きざまに右手に持ったレイピアを気配のする方向へと突き出す。
しかし気付けばレイピアは虚空を貫き、アーカードの左手がレイピアを持ったワルドの右腕を掴んでいた。
支援
「悲鳴をあげろ、豚の様な」
アーカードは掴んだワルドの右腕をグイと引っ張った。と、同時に聞こえたのは音である。
何かがちぎれるような音。そして体の芯、脳髄の奥まで響くような鈍くも・・・軽い音。
その方向に自然と視線が向かう。見ると右足の膝が逆の方向に曲がり、筋繊維がブチブチと悲鳴をあげていた。
ピンク色の肉がこびりついた白い骨が露出し、赤い鮮やかな血が飛び散っていた。
「ひぎぃぃィィいイいイイイイイィャァアアあアあアアッッ!!??」
あまりの光景にワルドは絶叫した。反射的に『ウインド・ブレイク』を放ち、アーカードとの距離が開く。
それは鍛えられた戦士としての反応か、兎にも角にもアーカードとワルドの間合いは開いた。
体制を立て直そうにも、バランスの取れなくなったワルドはその場に崩れ落ちる。
同時にレイピアも右手から離れ、地に転がった。腕に・・・力が入らない、掴まれた時に粉砕されていたのだ。
まともに立つことすらできなくなったワルドは、もはや坐して死を待つだけとなった。
「しょせんこんな物か、小僧」
大きく嘆息する。目の前には戦意の喪失した・・・ただの、ただの人間がいるだけ。
人間は脆い。腕が砕け、足が折れただけで、もうまともに動くことなどできやしない。
それでも魔法で応戦するのを期待していたが、もう目の前の人間にそれを期待するのは無理なようだった。
エサ
「さようならだ、ワルド。お前は犬の肉だ」
アーカードは微塵の感慨なく言った。その言葉に応じるかのように黒犬獣バスカヴィルは咆哮をあげ、ワルドをその顎門で噛み砕く。
ワルドは咀嚼され、飲み込まれ、呆気なく、ボロ雑巾のように死に逝った。
「さて・・・と」
アーカードは艦内に残った人間を鏖しにすべく、歩き出した。
支援
◇
燃えるタルブの上空、トリステイン軍とアルビオン軍が鎬を削っていた。
目的は敵を倒す為ではなく、時間を稼ぐこと。しかし食い下がるだけの戦にも拘わらず、トリステイン軍の損耗は激しかった。
この調子でいけばゲルマニアからの援軍が到着するまでに、嬲り尽くされ負けるのは想像に難くない。
それだけアルビオン軍には勢いがあり、それほど戦力差は明らかであった。
「殿下、大丈夫ですか?」
アニエスに呼ばれ、アンリエッタはいつの間にか震えている自分に気が付く。
目の前で起きている戦争。自分の命令で、兵は戦い死んでゆく。さらに相手を殺している。
英断・・・なのかもしれない。このままいけば犠牲は増えるばかり、そして負けるのも・・・・・・目に見えている。
ならば、そうなる前に降伏するのも―――。
「霧が・・・」
最初に気付いたのはアンリエッタの隣にいたルイズだった。
雲一つない空で幻獣や魔法、砲弾が飛び交い舞う中。そして日光が照らす中、不自然に発生した霧。
次第に濃くなりつつある霧にアンリエッタは考える、霧中の中で戦えば混戦は必至。
命令系統も崩れ、士気は大いに乱れる可能性が高い。ただでさえ劣勢なのだ、それは致命打になりかねない。
多くの人が死ぬ、一時撤退もやむをえない。そして・・・戦うか降伏するかの選択も―――。
その時、霧がいきなり濃くなった。その所為で陽の光が遮られ、辺りが薄暗くなる。
否、そうではない。濃霧も原因であるが、太陽を遮ったのは霧の所為ではない。
真上に巨大な影が出現したのである。よく見るとそれは船、それも旗艦級の大きさである。
「アルビオン軍の・・・レキシントン号!?」
その姿を見知っていた一人の兵が叫んだ。
「殿下をお守りしろ!」
マザリーニが叫ぶ。本陣の真上に敵艦が突如現れたとあっては、とてつもない異常事態である。
アンリエッタはすぐさまユニコーンから下ろされ近衛が取り囲んだ。
レキシントン号はなんらアクションを起こすことはなく、ただ進んでいた。
しかしこれを捨て置き、放置すれば、トリステイン軍は挟撃の形になってしまうだろう。それだけは防がなければならない。
幸い真下なら砲撃はこない、これはチャンスでもあった。アンリエッタは攻撃の指示を出そうとする。
「待って!姫さま!!」
アンリエッタが指示を出す直前、それを制したのはルイズであった。
「ルイズ!?」
アンリエッタは理由を問い質そうとする、しかしルイズはその前に話し出した。
「わかる・・・なんとなくわかるんです。あれは・・・敵じゃない・・・・・・あれは・・あれは・・・・」
「一体何を言っている!?」
アニエスが叫んだ、敵艦なのに敵じゃないとは一体どういうことか。
「アーカードッ!!」
ルイズは己の使い魔の名前を叫ぶと、同時に馬を走らせた。アンリエッタは咄嗟に言う。
「アニエス!ルイズをお願い!!」
アニエスはハッとするもすぐに行動に移った。近衛騎士の本分ではない、だが命令に体が反応する。
馬に乗ってすぐに走らせる、船は尚もその真上で異様な存在感を放っていた。
◇
かつて、ある吸血鬼が英国にやって来た。自らが渇望する、一人の女を手に入れるために。
その吸血鬼が乗り込んだ帆船は、霧の中を波から波へととび移り、ありえない速度で疾走した。
――――――乗組員を皆殺しにしながら。
そして遂に死人と棺を満載した幽霊船はタルブの草原へと着港した。
船の名は『デメテル』号。ロシア語でデミトリ号である。
「なつかしい、においがする」
船の突端に立ったアーカードは呟く。
「突き刺される男のにおい、斬り倒される女のにおい、焼き殺される赤児のにおい、薙ぎ倒される老人のにおい」
アーカードは薄く笑みを浮かべた。
「死のにおい、戦のにおい」
◇
アルビオン軍の指揮官らは怪訝に思った。いきなり示威行為をしていたはずの『レキシントン』号が出現したのだから。
旧『レキシントン』号はトリステイン軍には目も向けず、迂回しながらアルビオン艦隊へと迫った。
アルビオン軍総司令サー・ジョンストンはすぐに連絡の為の騎兵をやった。
艦に近付いた竜騎兵は何事かと目を疑った。それはもはや『レキシントン』号ではなかったのだ。
巨大な十字架が突き立てられた黒い船。黒いマストから伸びる黒い枝。さながら大木のような、その鋭利な枝の先に・・・刺さっている"モノ"。
あまりにも凄惨な光景に騎兵は嘔吐を催した。それは見る影も無いが・・・間違いなくアルビオン軍の兵士、何十人もの"人間だったもの"が、無惨に串刺しにされていたのである。
思わず目を覆いたくなるほどの惨状、誰がこのような非人道的所業を行ったのか。
そして生存者のいない船が動く理由、一体『レキシントン』号に何が起こったというのか。
そこで竜騎兵は何かを確認した、凝視すると少女が船の中央で佇んでいた。この死船の中で恐らく―――まだ生きている?
次の瞬間その竜騎兵は浮遊感に襲われた、竜が地に向かって落ちていたのだ。何事かと思うと乗っていた竜に穴が開いていた。
よくよく見ると血が大量に流れ出ている。なんだ・・・自分の胸にも、大きな、穴が、開いているではないか。
そこまで思ったところで竜騎兵は地へと堕ちた。
それを契機に次々と他の竜騎兵も落ち始める。
響き渡る破裂音。アーカードはその眼で遠くの竜騎兵を確実に捕捉し、カスール改造銃はその弾丸で飛行している竜騎兵らを正確に撃ち抜いていった。
中には火竜の油袋に引火し、爆散し跡形もなく残らない場合もあった。
「これで最後か」
そう言って最後のマガジンを装填する。最後に放たれた六発の弾丸は残った竜騎兵全てをピッタリ撃ち落とした。
銃をしまったアーカードは次の標的を見定める。
当然敵の旗艦、司令塔を失った軍は烏合の衆。手っ取り早く崩すには頭を潰す。
本来それは容易なことではない、しかし敵艦を装ってる今ならばそれも難しいことではなかった。
アーカードは搭載されている大砲を一発、敵旗艦に撃ち込んだ。
次に串刺しにしていた者達を己の内に取り込んだ後、マストをへし折る。
そして突然の砲撃に混乱している敵旗艦に向かって無造作に投げ放った。
マストは敵旗艦のど真ん中に深々と突き刺さり、その機能と機動力とを奪う。
アーカードはただ一度だけ大きく跳躍し、敵旗艦へと降り立った。
飛び移る最中に取り出したトミーガンを、視界内に見える兵士達に向かって撃ち放った。
何発も体に弾丸を撃ち込まれたアルビオン兵士達は、体が少し跳ねたかと思うと次々にその場に崩れ落ち絶命する。
アーカードを敵と認識したメイジ達が魔法を放つ。
何度も何度も、放たれた魔法がアーカードを蹂躙する。どう見ても、とっくに死んでるだろうにも拘わらず・・・それは尚も続いた。
人の形すらなくなり、魔法を当てるべき目標がわからなくなったところでようやくそれは止まる。
一心不乱の大支援
「はぁ・・・はァ・・・やったか!?」
メイジの一人が言った、上半身がバラバラになった少女を見てもう一人が口を開く。
「殺しすぎでしょう、こりゃ」
「っち、一体なんだったんだ、クソッ!」
さらに一人が死んだ仲間を見て毒づいた。その瞬間、甲板に声が響いた。
「走狗め」
心に直接響いてくるようなその声に、兵士達全員が驚愕する。
「狗では、私は、殺せない」
原型を留めていない上半身がゆっくりと浮き、起き上がる。
兵士たちは呆けた顔で目を見開き、その非現実的な光景を見守るしかなかった。
「化物を打ち倒すのは、いつだって"人間"だ」
その言葉を皮切りに、いつの間にか元の形に戻っていた少女は一人の兵士の首に、その牙を突き立てた。
そのまま大きく振り回し、吸血鬼の咬合力で頭と体が泣き別れになる。
周囲に飛び散る鮮血と、動かなくなった首のない体、そして転がる頭はその場にいた者の思考を麻痺させるには充分であった。
後はただただ一方的な暴虐。
家畜を屠殺するかの如く、踏み潰した虫けらの数を数えるように、アーカードは笑いながら暴力を振るう。
眼前の恐怖に、兵士達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。アーカードはトミーガンを拾い上げ、緩慢に歩いて追跡する。
必死に扉を閉めようとするところに、トミーガンを挟み込む。
「 O p e n S e s a m e 」
できた隙間からさらに左手を捻じ込み、扉は開け放たれた。
「兵士諸君、任務御苦労。さようなら」
身震いするほど禍々しくて悍ましい。死と生の上でダンスを刻む者。狂気と正気を橋渡しする存在。
その少女の姿に、地獄を見る。アルビオン軍兵士達は、わけのわからないまま、ただ生きていることを恐怖し、そして後悔した。
支援するしかないだろう
世界一怖い開けゴマ
◇
ルイズはひたすら馬で戦場を駆けていた。
生々しい戦の惨状を目の当たりにしながらも、心を強く保つ。
次の瞬間、走っている目の前に何かが落ちてきた。
馬は驚きルイズは振り落とされる、咄嗟の事ながらもルイズはかろうじて受身を取った。馬はそのまま走り去っていく。
それは焼け焦げた鞍のようだった。空中から落ちてきたこと、さらには大きさから鑑みるにおそらくは竜の・・・。
「ふぅ〜・・・」
ルイズは大きく息を吐いた。
アーカードから体捌き等を教えてもらう以前の自分だったら、きっと無様に地面に叩き付けられ怪我を負っていたことだろう。
「あっ・・・」
次にルイズは目の前に落ちた物に気付いた。それは姫さまから預かった『始祖の祈祷書』であった。
受身を取れたはいいものの、弾みで落ちてしまったしまったようだ。
ルイズは手早く拾うと同時に、何か違和感を感じた。
(光ってる・・・??)
『始祖の祈祷書』は僅かに発光していた。同時に姫さまから頂いた水のルビーも、ルイズの指で同じように仄かな光を発している。
恐る恐る開くと、白紙だったはずのページにずらっと古代ルーン文字が羅列されていた。
ルイズの鼓動が大きく脈打つ。それを読み進めていく内に、思わず胸の辺りを手でギュッと握った。
読める。内容がわかる。これは――――――。
空に目を向ける、敵旗艦とレキシントン号は遠めでも肉薄するくらいの距離まで近付いていた。
(・・・・・・マスト?)
敵旗艦に突き刺さったナニカ、そしてレキシントン号からなくなっているモノから推察する。
(アーカードは相変わらず随分な無茶を・・・)
あんな破天荒なことを出来るのは、自分の使い魔しかいないだろう。
彼女は彼女の策で示威行動をしていた敵艦を潰し、しかもそれを奪って援軍として駆けつけてくれたのだ。
支援!支援だ!
「すゥ〜〜〜・・・はァ〜〜〜・・・」
ルイズは何度か深呼吸をする。心が妙に落ち着き、少しずつ高揚してくるのがわかる。
『始祖の祈祷書』に書かれていたこと、それが意味すること。
そうだ、一体何故自分が『ガンダールヴ』を召喚したのか。
幼き頃から誰一人として説明できなかった、発動しないのではなく『爆発』という失敗。
そして『始祖の祈祷書』に書かれたその内容。
たった今自分から湧き上がってくる不思議な感覚。全てを照らし合わせて見えてくる結果。
ゼロ
『虚無』のルイズ。
ルイズはギュッと拳を握り締めた。そうだったんだ、落ちこぼれだった理由も・・・その所為だったんだ。
杖を取り出し、始祖の祈祷書を読み進める。知らず知らず唇の端をあげルイズは笑っていた。
ルイズは周囲の様子を一度だけ確認する。
敵軍は混乱していた、それもその筈。敵艦を乗っ取り暴れ回っている自分の使い魔がいるのだから。
だから戦場のど真ん中に立つ一人の少女なんて気にも留まらない。
そもそも制空圏を奪っていた機動力に優れる竜騎兵達は、あらかたアーカードが撃墜したのだから当然だった。
敵艦隊は思うように動けず、地上軍は遠目で見る限りはまだまだ離れている。
ルイズは一呼吸を置き、詠唱を始める。自分の中でナニカが渦巻き、それが高められていくのが分かる。
期待が確信に、推測に過ぎなかったものが事実へと変わった。
嬉しさの余り叫びたくなるものの、詠唱を始めた以上中断するわけにはいかない。
しかしそんな雑念もすぐに振り払われていった。
◇
支援をせずはならんだろう
陸へとノボル
ヨーロッパ
支援
アニエスは必死に馬を走らせ、ようやくルイズの姿を確認した。
桃色の髪を伸ばした小柄な少女。乗っていた馬はどこに消えたのか、たった一人戦場の中で立っていた。
「ヴァリエール殿!!」
アニエスは叫んだ、周囲に敵影がないとはいえ戦場に突っ立ってるなど危険すぎる。
いつ砲弾が飛んでくるかもわからないのだ、しかし声を掛けるものの応答がない。
馬でルイズの前方へと回り込む、そこでようやくルイズが詠唱しているということに気付いた。
馬から降りて近付く、しかしルイズは自分に気付く様子はなかった。
「ラ・ヴァリエール殿?」
再度声を掛けるもののそれを意に介さず、それぞれ書と杖を片手に詠唱を続けていた。恐ろしいまでの集中力である。
アニエスは空を見上げる。
レキシントン号はトリステイン軍に見向きもせず、アルビオン艦隊旗艦まで接近していた。
信じ難いがルイズの言った通り、あそこにはアーカードが乗っているというのか。
俄かには信じ難い。しかしあの少なくとも敵ではない艦が現れてから、流れが大きく変わったのは事実であった。
そしてアルビオン軍は乱れていた。指揮系統のトップに位置した旗艦は炎上し、艦隊はまともに動けなくなっている。
たった一隻の船が戦局を変えてしまった。劣勢であったが今攻めれば恐らく同等の戦いは出来るだろう。
もしそれがたった一人の使い魔がもたらした結果であるなら、その者は英雄というより他ない。
支援
普通の魔法では考えられない長い長い詠唱を終えた。
ルイズはその威力を理解する、アーカードを巻き込んでしまうのが問題だったがそれも杞憂に終わった。
対象を選べる。全てを消し飛ばすか、一部を破壊するか。
尤も全てを吹き飛ばしたところで、己の使い魔だけはきっと何食わぬ顔をしてるんだろうな、などと思っていたが。
艦隊とは距離がある、しかし問題はない。
標的は敵旗艦、そして周囲の艦隊、その全て。
いつの間にか目の前にアニエスがいるが、気にしない。
ルイズは万感の想いを胸に、杖を振り下ろした。
風を切る音に、アニエスは振り向く。見ればルイズがその鳶色の瞳を見開き、掲げていた杖を振り下ろしていた。
その視線は自分よりも遥か後方、アルビオン艦隊を真っ直ぐ見つめていた。
アニエスはまたアルビオン艦隊の方向へと視線をやる、形容するならそれは太陽。
燦々と照りつける、遥か空の上の太陽とは別に、中空に光球が出現した。
光は見る見るうちに艦隊を包み込み、音もなく爆発する。
全てが終わった後に見た光景は、艦隊の全てが炎上する姿。
そしてそれら全部が、ゆっくりと一斉に地上へと墜落していく。普通見ることなどありえない、とてつもない光景であった。
(一体何が・・・・・・!?)
そこではっとしてアニエスはルイズへと再度振り向いた。
ルイズは崩れ落ち、トスっと地べたに座り込んだ。そして大きく息を吐く。
これはまさか――――――ヴァリエール殿が・・・?
タイミングまさにそれだった。ルイズが杖を振り下ろし、そして光が膨れ上がった。
これまでの状況を鑑みるに・・・、一連の不可解な行動、その全てにある種の一貫性があるように感じた。
「ぁぁ・・・そういえばアニエス、こんなところで何やってるの・・?」
思惟に耽るアニエスを、ルイズは呆けた目で見つめる。
「あ・・あぁ、姫さまに頼まれて・・・ラ・ヴァリエール殿を守るようにと」
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ムトウハップ支援
「そう」とルイズはそっけなく言い、次に破顔一笑する。
「はぁ〜〜〜・・・・・・、アーカード大丈夫かなあ?」
そう言って大の字に寝転がる。アニエスはそんな少女を暫し呆然と見つめていたが、跳ねるようにルイズの上半身が起き上がった。
「そうよ!早く姫さまのトコに行かないと!!」
次にルイズは弾かれたように立ち上がる。
「アニエス、馬どこかに行っちゃったから後ろに乗せて。あなたも近衛なんだから、すぐ姫さまのところに行かないと――――」
しかしアニエスは首を振った。
「アルビオン軍は空の主力を失い、謎の攻撃で士気は大いに下がっている。即ち敵はまともな支援も受けられない上に混乱している状況。
即ち今は絶好の機と言えます、これをみすみす逃すとは到底思えません。つまり・・・――――――」
そこまで言ったところで、遠くから怒号のようなものが聞こえる。
方角はルイズやアニエスがきた方向、トリステイン軍がいる陣であった。
「なるほど」
ルイズは納得した。自分達から行かなくても向こうからきてくれる、チャンスは今この時を以って他にないのだ。
「しかしここは通り道になるでしょう、早く離れる必要はあります」
アニエスはそう言うと馬に乗る、ルイズも頷いて後ろに乗った。諸々ルイズに聞きたいことがあったが、アニエスは黙っていた。
表情には出してないがかなり疲労してるようだし、自分の背に体を預けてくるのがわかったからである。
トリステイン軍は勝てる。流れは完全にこちら、勢いもある。
それもこれも恐らくは、自分の後ろにいる小さな英雄のおかげだろう。
そして小さな英雄が放った魔法を、最大限効率的に作用させる為に、艦隊を足止めしたその使い魔。
確たる根拠はない。が、アニエスは何故か確信に近い思いを抱いていた。
支援
◇
草原は墜落した艦隊の墓場のようになっていた。残骸の一部から手が伸び、一人の少女が這い上がって姿を現した。
「ケホッ・・・ケホッ」
艦内にいた筈なのに・・・いきなり視界に光が満ちた、と思えば船が落ちた。
周囲を見る、上空を見る。艦隊全てが落ちていたようだった。
追い詰め殺し損ねた連中が、自分の姿を見つけ逃げているようだったがそれすらも気にならない。
「わけが・・・わからん」
アーカードは空を仰いだまま一人ごちた。
支援するぜ!
サンポール支援
いっしょにあいつらを支援しちまいましょう
以上で終了です、ご支援ありがとうございました。
うっかりして「エサ」がズレてしまったことが悔やまれる。
多分次で二章終了ですかね。
う〜〜〜ん、どこまで続けるか・・・先が見えませんねw
またプロットと構成を考える作業が始まるお・・・。
ここでちょっとアンケ。
これからのヘルシング本編の展開にもよるんですが、
他の虚無の担い手からヘルキャラを召喚しようかなって思ってます。
まぁ誰が誰を召喚するか、は・・・想像に難くないと思います。
やるなら全員が召喚、やらないならやらない。
と思ってるんですが、あまりゼロ魔側を蔑ろにするのもアレかな〜と、ちょっと悩んでおります。
ということで、とりあえず諸々の意見を、飽くまで参考ということで聞きたいです。
構成の上であまりに整合性が取れなくなったり、プロットに無理が出たりする可能性もあるので、
多数意見を必ずやります!とは明言できませんので、そこらへんはあしからず。
では長文失礼しました。
皆さんのレスポンスを楽しみにしつつ、内心ビクビクしながら待ってます。
ではまた。
>>235 ティファニアのところでアンデルセンが狂信者を量産している訳ですね
わかります 投下乙です。
ブラボー!おお…ブラボー!
なんという蹂躙、吸血鬼はこうでなくては。
そして頭に?を浮かべるロリカードはとてもいいです、心が洗われる。
ケホッケホッ言ってるロリカードが可愛いんだけど
何と言うロリカードのチートっぷり、これは間違いなく無敵で不敗で最強だ。
自分も負けてられない。ゼロリカは3巻のラスト、スナゼロは2巻の真ん中。
だいぶ差が開いている、急いで明日の投稿に間に合うよう書かなくては・・・。
明日だと!?
これが神々の黄昏か……。
ロリカードだと、どんなチートでも他のHELLSINGキャラ出してバランス取らなくてもいいやと思えるから不思議。
むしろ、こうロリカードの可愛さをもっと全面にだね、出すべきだと思もうんだな
四話目です。2330辺りに投下します。
しごとが早い・・・
>>240 完璧超人がちょっとでも隙を見せると可愛く見えてしょうがない…そう思うだろ?アンタも!
ベッドの上の男は、震える手で老人にそれを渡した。胸には金の十字架がある。
「このマークを…知るものが居れば…それを…渡して下さい…。」
男は十字架を触りながら、震える声で呟いた。
「我らは…右…手に…短刀と毒…薬を持ち…、左……手に」
トバルカインはトランプを無数に取り出し、アンデルセンは銃剣を逆手に持ち大上段に構
えた。先に動いたのはトバルカインだった。横に駆けながらトランプを放って行く。アン
デルセンはそれの間を抜けながら銃剣を投げつける。双方の得物が双方の頬を掠める、
その傷が治らないことに吸血鬼の緊張は高まる。遠距離での戦いに不利を見たアンデルセン
がトバルカインに突撃を敢行するも、トランプの一斉正射に身を交わすのみ。だがトバルカイン
としてはアーカードが追い付く前に決着を付けねばならない為、精神的には不利であった。
(仕方あるまい、一瞬で蹴りを付けてやる)
サイトはいきなり目の前で始まった戦いを茫然と眺めていた。ふと見やれば辺りの鬱蒼と
した森が随分歩きやすくなっている。二人がどのように戦っているかはわからないが、
片方には見覚えがあった。
(確かブラジルだっけかのテロ事件の映像にあんなのが居たなあ)
ふと自分のかつての行き過ぎた好奇心が生み出したトラウマに落ち込む。
もう一方は心底楽しそうに笑う長身の男だった。K-1にでも出ていそうな体格だ。
(しかし、リアルで長い夢だな)
そう思い呑気に戦いを眺めていたが、流れてきたトランプがサイトの頬を掠めた。
その痛みと流れる血の感触に(おかしいなあ)と苦笑した。
彼らは傍観者を別段気にすることなく戦い続けた。アンデルセンはトランプに邪魔されな
がらもじわりじわりと距離を詰める。そして十分な距離となった時、伊達男のトランプ斉
射の壁の上を飛び越え銃剣を突き立てる。しかし神父は顔をしかめた。
「かかった」
伊達男は無数のトランプに姿を変える。死角から不意を突きトランプをぶつける算段だった。
だがその顔は苦痛に歪む、腹には祝福儀礼済の銃剣が刺さっている。アンデルセンは、攻撃
を回避した際の隙に高速に横からすり抜けたトバルカインを視界の端で捉えていた。アン
デルセンは膝をついた伊達男に歩み寄る。
「DUST TO DUST!塵にすぎないお前たちは、塵に還れ!」
だがその時、何故かアンデルセンは真横に吹き飛んだ。
弾丸が木々の隙間を縫ってすすみアンデルセンの頭部に当たる。なおも頭部で回転を続け
るそれを素手で抉り出した。傷は瞬時に再生する。これが誰の仕業か覚えがあった。面識はなか
ったが。その隙にトバルカインはトランプをアンデルセンの首に刺そうとする。だがアン
デルセンにも助太刀が現れた。彼の後から呪文の詠唱が聞こえる。
「レビテーション!」
トバルカインの全身が爆発した。ただルイズの失敗魔法といえども吸血鬼相手には大した
ダメージを与えられない。しかし、一瞬の躊躇を呼び込んだだけで充分だった。動きの止
まったトバルカインにアンデルセンはさらに二本の銃剣を突きさす。そして首を刎ねて
終えるはずだった。トバルカインが生前の時なら、アーカードと闘う前なら。
あの化け物の言うように豚の様な悲鳴を挙げて、血を吸われ、燃えて死ぬ無様な自分。
それはただ敗れるよりも恐ろしいことだった。またあの様に死ぬならなんと惨めだろうか。
それなら最初から戦わない方がマシでは無かったか。
「なぁぁぁめぇぇぇぇるぅぅぅぅなぁぁぁぁ」
振り絞るような声をあげ、地獄に落ちる前の全ての力を使い切りトランプの群れを放った。
それらはアンデルセンの胴体を貫き続ける。長い長い弾幕だ。永い永い時間だ。攻撃を終
えた後彼を見る。胴体には穴が空き、血が滴る。ぐらりと後ろに倒れる。歓喜の顔を浮か
べるトバルカイン。しかしアンデルセンは踏みとどまった。まだ笑顔の彼になぜかトバル
カインもつられて笑ってしまった。銃剣が振りかぶられる。
トバルカインにもはや余力は無い。一言呟くだけだ。
「Gooood…」
彼の首が舞った。笑いがこびりついていた。しかし神父はいつもの様に言った。
「AMEN!!」
トバルカインにとって自己と敵との闘争以外に関心事は無く、アンデルセンの後に位置す
る彼女に対しても気遣いはなかった。
サイトは動いていた。何が自分を動かしているかはわからない。ただ目の前に少女がいて、
何か危ないものが迫っている。それだけでサイトは駆け、少女を押し倒した。背中を襲う
痛みに呻いた。そして視界はかすみ、口からこみ上げる何かに不快感を覚えた。幾度も幾
度もそれは彼の体を抉っていき、終に激痛により意識を手放した。
ギリギリだった。魔弾の不意打ちはあったものの、それを見積もっても充分な苦戦だった。
気配をさぐるが、魔弾と思しきものは無い。どうやら退いたようだ。楽しい時間だった。
楽しい敵だった。ふと我に帰り、トバルカインの盗んだものを探した。
その銀の箱はすぐに見つかる。持ってみるとそれに刻まれた印に驚いた。アンデルセン
のよく知るマークだった。
「ヴァチカンのマークだと!」
中を開ける。そこには注射器が数本入っていた。
ルイズは自分の状況が掴めていない。アンデルセンを追っていたら、彼は闘っていた。そ
して敵に呪文をかけ爆破した。そして彼が剣を突き立てて終わった筈だった。しかし、何
やら敵が動いたと思ったら横から何かが降ってきた。ふと上を見ると男が自分を押し倒して
いる。顔が近い。
「ちょっとあんた何すんのよ。私はヴァリエール公爵家の三女よ?手を出したら極刑よ?
この変態!どきなさいよ!」
しかし彼の口元の血を見て気づいた。極力彼を動かさないように這い出し彼の背中を見た。
彼の背中は真赤に染まっている。いや、腕足を含めた背面全体が。悲鳴が夜の森に響いた。
「ちょっとルイズ大丈夫?」
キュルケが駆け付けた時、彼女の感心はそこにいた黒髪の少年に注いだ。明らかに致死寸
前の出血の少年、背骨らしきものも見える。ルイズは口元を押さえて泣いていた。
「私を…庇ったの。私のせいで…、この子………。」
キュルケはどう見積もっても彼が数分で死ぬと見抜いた。いや、とっくに死んでいてもお
かしくないのだ。脈は弱く、呼吸はしていない。
「どうにか…ならないの…?」
キュルケは自分の使い魔を見る。
「吸血鬼にするにしてもな…こいつが童貞でなくてはな。」
ふざけているようだがこれは真面目な問題だ。非童貞の人間ではグールにしかならず、
そうなった場合この勇敢な少年を二度殺さねばならない。しかしそれでも可能性に賭けよ
うとした時、アンデルセンが近づく。
「アンデルセン!待って…こいつは…」
彼の狂信をしるルイズはこの使い魔を説得せねばならぬと思った。しかしアンデルセンは
黙って少年の横に座り、聖書のページを飛ばした。一人でにそれらは少年の回りを囲む。
すると何か陣のような物が浮かび上がる。そして何かを物々と呟き始めた。キュルケは彼
が僅かに呼吸を始めたことに驚いた。そしてアンデルセンは銀の箱から何かを取り出した。
そしてそれを彼の腕に当てた。
冷たくて気持ちいいな。っていうか夢で死ぬとかレアだなあ。あのトランプ攻撃があの娘
に向かって行くのを見て何か助けちゃったな。俺あんなに早く動けるんだなあ。ちょっと
びっくりだな、なんかスポーツやってたら賞取れてたかもな。母さんもちっとは喜んだか
も知れない。けど女の子助けたから父さんは褒めてくれるかもな。そういや抱きついた女
何て母さん以外で初めてだな。そういやあの子すげー可愛かったなちょっとないのは欠点
だけど。アレ俺今凄い頭回ってね?これって死ぬ前の走馬灯ってやつか。あーあもっと親
孝行しときゃよかったな。死ぬのか。でも死にたくねえな。なんか暖かくなってきたぞ?
体温が下がったからかな?いよいよかよ。嫌だ嫌だいやだいやだいやだイヤダ痛い!
なんかチクってした。これってあれだな注射だな。でもこれ風邪ってレベルじゃねえっつ
の。なんか変だな…。体中に何かが回って…。虫みたいのが体中を…。!!!!!!
「ねえ?暴れ出したわよ?」
彼はくるしそうに唸り身を捩る。
「再生しているのだ。痛みはある。」
何だコレ?ミミズが体から這い出しているみたいな感じは?傷口が痛い。しかし気付いた。
これは治っているのか。背中が、くっつく。刺さっていたトランプが一人でに抜ける。
俺?どうなったんだ?何になったんだ?
「凄い…。」
サイトの体が見る見る内に綺麗になる。そして完全に治癒され、立ち上がった。
「良かった…。」
ルイズが顔を覆う。サイトは辺りを見回す。
「俺どうなったんだ?あんたら俺に何をしたんだ?」
どうなったかはキュルケが掻い摘んで説明した。そして話をアンデルセンに振る。
「お前に打った注射は生物工学の髄をこらした再生能力強化製剤。そしてそれに私の回復
方術を使った。これによりそれぞれの効果が」
「もういいです。」
サイトは頭を抱えた。一体どういうアメコミだというのか。
「まあ死ぬよりマシと思え。圧倒的にな。我々になるよりは利便性が高い。」
アーカードも口を挟む。気になったのか聞き返した。
「我々って?」
「吸血鬼」
この場にいる全員に声を重ねられ少年は頭を抱える。アーカードが彼に構わず尋ねた。
「貴様童貞か?」
「ハァ?」
「そうか、惜しいことをした。」
サイトは何事か反論しようとするが、不意に視界が暗転する。そしてフラリと倒れてしまった。
地面に伏せそうになる彼をアンデルセンは支えた。
「所詮はどちらも当人の体力次第。これが限界だろう。」
「どうするかね。」
「持っていこう、魔弾には逃げられたようだ。」
そう言うと少年をおぶりアンデルセンが歩きだす。二人の少女も歩きだした。
アーカードは皆の後ろで一人ごちた。
「いいだろう何度でも来るがいい。鉄火を持って闘争を始めるのに一度も二度もないのだから。」
サイトは虚ろな意識の中、大きな背中に気づいた。ふと幼少の頃を思い出す。いつもこう
やって父や母におぶさってもらったっけ。
(これからどうなるんだろう。)
不安に圧されながらも彼は懐かしい感触に身を委ねた。
ルイズは少年の看病をしている。命をかけて私を守ってくれた彼。ふと彼にしたことに頭
を悩ませた。
(助けて貰っといて変態呼ばわりはなかったわね。)
そこにアンデルセンはやってきた。彼女の横に座る。
「明日、オールド・オスマン氏の所へ皆で来るようにとのことです。」
「そう。」
ルイズはじっと少年を見て、唇を噛んでいる。
「ありがとうございました。」
「へ?」
素っ頓狂な声を上げるルイズ。アンデルセンは続ける。
「危ない所でした。」
「あ、あれは当然よ。貴方のご主人様だもの。」
彼は温厚な神父の顔だ。
「ええ、あなたは正しいことをしました。ですから悔やむのはお止めなさい。」
ルイズは彼の方を向く。
「あなたは皆を救いました。あの吸血鬼を倒し、私も死なず、彼も死にませんでした。」
「結果よ。一歩間違えたら…。」
彼も私もアンデルセンも死んでいたかもしれない。だがアンデルセンは笑う。
「正しい心で行った行為には何時だって正しい結果が得られるものです。それが信仰で
あれ誇りであれ信念であれね。」
アンデルセンはにっこりと笑う。
「ヴァチカンとして、カトリックとして感謝します。あなたのおかげで失われた技術を取り戻せた。」
「その銀の箱のこと?」
アンデルセンは箱に描かれた紋章を見て考える。
これをヴァチカンへ届けねばならない。それがイスカリオテとしての使命だ。手段を問わ
ず帰投する。単純な思考が彼を支配する。ふと後ろを見るとルイズは寝息をたて寝ている。
アンデルセンは穏やかな笑顔で彼女に毛布を掛けた。
何事もなかったように静かに、長い夜が過ぎていく。
「嬢ちゃん。」
「何?『地下水』さん。」
「袋にいれて持つのはやめてくれよ。汚いもん見たいにさ。」
「仕方ないでしょ。」
「しっかしあいつら何なんだ?あの化け物共。」
食えない笑顔で長い黒髪の女性は答えなかった。
「さあ、ガリアに戻りましょう。」
支援
熱狂的な支援を!
投下終了です。支援ありがとうございます。
それとまとめてくださったかた、ありがとうございます。
狂信者のこの先の展開に期待しまくってる
投下1時間7分ほど前、予定 (・ω・)
_ _
r、ヽヽ ,..
l.i^iヽヽ! l
`、ヽ `!
`、 ` {
ヽ , ヘヘ
ヽ' / \
く 。. \ ,.-、、ヘ
\゚ 。 \ ,.._彡ミ',ハ、
\ `ゝ、._ ,イヽ (_ノ彡, ヽ
\ __ヽ.l. ヽi、 `i彡ノ// `;- そうだ、これが我々が待ち望んだ
_ ヽ-─  ̄__,..-l、 L./// ,F` 「スナゼロの投下予告」だ…
ヽ´ _. -‐'ニィ○l `` ‐_,ーイ//,ト
/ヽ`=i ,.-'´, - '´,. ヘ. _,!‐.ニ∠._,.-` !、
/ //_..i' /'"l∠ _,.-─‐,.、 `_ヽ、 ヽ
/ /‐-´-〈 イ ...._i'_ i' r(ヽ! l'´ .i
,' / i ヽ l、`ヽ-、/{ヽヽヽ!ミミ、`、
,' i' i. ヽ l、  ̄li. i ` lトl `゙ ヽ
i /l ヽ,.-'′ l、 lヽ ノ ,! `、
,l. /.{ _ l、 ! `l,.'- ´ /
./l/ ! l _.- '´ ヽ. i、 l.\-- ..._ /
/ l l l ヽ ,.- ´ i、 l \
,' l l l.i ´ i、l. \
,' l l. l. l、 _. - ´ i、l. ヽ
,' l. ヽ、_j l、 __.. - ´ l l、 ヽ
i l. `、 `、 ´ l. l、 /ヽ,
`ヽ、l `、 ヽ l l、 ヽ. / ヽ
` / l `、 ヽ l l、 `
スナゼロキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
待ってましたよ〜
もう読み切れません
乙女降輪
一心不乱の支援を!
翌日の朝、ワルドは早くから目を覚ました。ベットから降りて、帽子を被りマントを付ける。そしてルイズを起こさない
よう、そっと部屋を出た。
廊下を歩いて、隣の部屋の前に立った。中には、ルイズの使い魔×2。襟元を正し、軽くノックした。
ベットから誰かが降りる音が聞こえる。ゆっくりとドアが開けられて、ワルドは驚いた。
「あら、ワルド子爵ではないですか。こんな朝早くにどうしました、出発は明日の朝だと聞いていますが」
ドアを開けたのはリップだった。なぜか服を着ておらず、薄い毛布を体に巻いている。良く見ると、部屋の床に服が散乱
している。その中には、作業着らしき服も混ざっていた。
「いや、そのだね・・・ミス・セラスに用が有って来たんだが。彼女は、今どこに?」
ワルドの問いに、リップは黙ってベットを指差す。そこには毛布に包まれて眠る、セラスの姿が有った。表情がゲッソリ
している事に、ワルドは気付く。リップに視線を移すと、逆にツヤツヤしている。昨晩、二人に何が有ったか・・・ワルド
は理解した。
「どうやら、体調が優れないようだね。今日は止めて、また日を改める事にするよ」
「そうですか? 後でセラスに伝えておきますけど」
「いや、良いんだ、急ぎの用って訳では無いからね。では、失礼するよ」
早口で断ると、すぐにドアを閉めた。壁に背を預け、ハ〜ッと息を吐く。
「ルイズの使い魔がガンダールヴだと知って手合わせ願おうと思ったんだが、予定が狂ってしまったな。まさか二人が
灼眼のシャナのソラト&ティリエルや、ブラックラグーンのヘンゼル&グレーテルの様な関係だったとは・・・」
ブツブツ言いながら、部屋に戻る。ルイズが起きており、窓の外を眺めていた。ドアが開いた音に気付き、振り返る。
「ワルド様、どこへ行かれてたんですか?」
事実を言う訳にはいかないため、とっさに誤魔化す。
「いや、ちょっと朝の散歩にね。それより朝食にしよう、他の皆を起こして一階に下りようか」
「じゃあワルド様は先に一階へ降りていて下さい、私は皆を起こして後から行きますから」
そう言うと、ルイズは部屋を出て行った。残されたワルドは、机に置かれていたワインに目を向ける。グラスに注ぎ、
一気に飲み干す。ワルドは上を向いて、眉間を指で摘んだ。
支援
つやつやしてる中尉支援w
悪奴がw支援
朝食を終えると、その場で解散となった。
ギーシュとキュルケは残って酒を酌み交わし、タバサは読書の続きのため部屋に戻った。ワルドは体を動かすため、ルイズ
を連れて中庭の練兵場に向かった。
セラスはリップと共に朝食を赤ワインで済ますと、そのままベットに戻った。と言っても百合の花を咲かせるためでは
無く、純粋に休むため。絡みを期待したVIPの住人は涙目だ。
そして夜になり、街は喧騒に包まれる。その情景を、セラスはベランダから一人で眺めていた。漆黒の空には、二つの月が
輝いている。
ギーシュやキュルケは相変わらず一階で酒を飲んでいる、今はタバサも一緒らしい。明日にはアルビオンに向かうため、
今の内に飲みまくろうと言う魂胆のようだ。騒ぎ声を遠くに聞きながら、空を飛ぶペガサスに跨ったメドゥーサを見上げた。
「セラス」
振り向くと、ルイズが両手を合わせてモジモジしながら立っていた。
「大丈夫なの? なんか元気・・・と言うより、精気が無い気がするけど」
「大丈夫ですよ、これくらい。ちょっと、激しかったですけど・・・」
ルイズはセラスの腕や脚、それに首筋や顔に目を向ける。口付けの痕が、妙に生々しい。あの乙女は中々の兵だと、
ルイズは思った。その時のシーンを妄想して、顔を赤くする。
「お願いですから思い浮かべないで、こっちまで恥かしくなりますから」
「あ・・・ごめん」
まともな恋愛すら未経験のルイズにとって、同性愛は非常にディープな物。考えないでと言われても、一度でも考え出すと
脳内は『その花びらにくちづけを』とか『乙女はお姉さまに恋してる』に勝るとも劣らない景色で埋め尽くされる。
そこまで考えて、ルイズは思った。女同士では子は生まれないが、婚約は出来る事に。言うか言うまいか迷ったが、
使い魔の主人として言っておくことにした。可能性は0では無い、腹に力を込めて声を出す。
涙目どころか凄い方向に進み始めた話に目が離せませんw
「ねぇ、セラス」
「なんですか?」
セラスの不思議な物を見る目を、しっかりと見据えて言った。
「仲人には呼びなさいよ」
そう言ってルイズが立ち去ろうとした時、轟音が響いた。後ろを見ると、月明かりをバックに何かが君臨している。
それは、岩で出来た巨大なゴーレム。肩に乗っていたのはフーケ、そして白い仮面を付けた男だった。
「フーケ!? なんで、牢屋に投獄されたんじゃなかったの?」
「私みたいな美人はだね、もっと世の中のために役立たなくちゃいけないんだよ。だから脱獄したのさ!」
ルイズの絶叫のような問い掛けに、フーケは悪びれることなく答える。それと同時にゴーレムの腕を振り上げ、ベランダ
の一部を一瞬で粉砕した。
「ほらほら、早く逃げないと潰されちまうよ!」
「マスター、急いで部屋の中に!」
ルイズを抱き締めると、セラスは自室へ飛び込んだ。中ではリップがデルフに対して『ドキドキ☆レズビアン・レッスン』
の真っ最中だった。そのため、緊急事態に気付いてない。
「おうどうしたんでい相棒、今度は主人とヤっちゃうのか?」
「そんな事より逃げますよ、リップさんも急いで!」
リップが口を開こうとした時、窓がブチ破られた。ゴーレムの拳が唸りをあげ、浅間山荘事件の鉄球のように叩きつけられ
壁が壊される。状況を理解したリップは『ハルケギニアにおけるフタナリの定義・著者=みさくらなんこつ』と書かれた本を
懐に仕舞い、マスケット銃を掴んで廊下に飛び出した。セラスはルイズを降ろすとデルフを背負い、ハルコンネンと弾薬箱を
持って後に続いた。
階段を降りると、そこも危険な状態だった。傭兵の一団が玄関を塞ぎ、内部に向けて矢を打っている。隅に目を向けると、
キュルケ達がテーブルを盾にして隠れているのが見えた。リップは飛んできた矢をマトリックス風に避け、セラスは矢を腕に
喰らって悲鳴をあげる店主にE缶を投げ付け、走って飛び込んだ。
ちょっwし、支援ダァーッ
「大丈夫ですか皆さん、怪我は無いですか!?」
「今の所は平気よ、でも長くは耐えられないわ」
セラスの言葉に、キュルケが何時もの調子で答える。外からゴーレムが歩く音を認めると、ギーシュは軽く舌打ちする。
「ゴーレムまでいるのか、これじゃ僕のワルキューレでも対処出来ないよ。どうするんだね、このままじゃ敗北だ」
「私に良い考えがある、みんな聞いてくれ」
ギーシュの隣に座っていたワルドに、全員が耳を傾ける。
「これから僕とルイズは裏口から桟橋に向かう。その間に君達は、派手に暴れて奴らを引き付けてほしい」
「ちょっと待って下さいワルド様! 傭兵は腕利きのようですし、向こうにはフーケのゴーレムもいるんですよ」
「それは大丈夫、僕に良い案がある」
そう言うと、ワルドはタバサに耳打ちする。タバサが黙って頷くと、ワルドはルイズの手を掴み低い姿勢で歩き出した。
その後ろを、セラスとリップが追う。通用口を出た時、大きな爆発音が店を揺るがした。
月明かりに照らされた道を、ルイズ達は全力で走って行く。建物の間の階段を駆け込み、上がり始める。とてつもなく長い
階段の最上段を踏み締め、丘の上に出た。そこに見えた光景が、セラスとリップの目に飛び込んだ。
「コレは・・・」
「凄いわね、流石は異世界」
そこには『日立の樹』など比べるまでも無い程に巨大な樹が君臨しており、四方八方に枝を伸ばしていた。目を凝らして
見ると、枝の先に船がぶら下げられている。見上げていたセラスに、ワルドが声をかける。
「もう少し登ってもらうよ、着いて来てくれたまえ!」
ワルドは樹の根元に向けて駆け出した。顔を拭い、後を追う。根元の穴に入ると、中は空洞になっていた。
幾つもある階段の一つを確認し、ワルドは駆け上がる。勢いをつけて踏み締めるからか、階段は何度となく軋む。
背中に背負われたデルフが、口を開いた。
「相棒、後ろから誰か来るぜ」
「え、後ろ?」
振り返ると、白い仮面を付けた男が駆け上がって来ていた。フーケと一緒にいた奴だと気付いたセラスは、ハルコンネンを
構え『元婦警』として警告を発した。
(いろいろ)凄いことになってきた支援
コレが「支援」だ、小娘
お前らサーバー側にスナゼロをさるさんさせる事は不可能だ
「止まれ、それ以上近付くと発砲する!」
だが白仮面は警告を無視して、どんどん近付いてくる。頭部に狙いを定め、引き金を引いた。
ドン!と言う音と共に、劣化ウラン弾が仮面を撃ち抜いた。そのまま足を踏み外し、地上へ落下していった。
「急いでセラス、早く上がってきなさい!」
上からルイズの声が響く。急いでハルコンネンを背負って弾薬箱を持ち、全速で駆け上がった。
わずか数秒で、セラスはワルド達に合流した。そのまま階段の頂上に着くと、一艘の船が係留されているのが目に留まる。
小走りで船に乗り込むと、ワルドが振り返った。
「君達は休んでいてくれ、僕は船長に話をつけて来る」
そう言って、船員がいる所へと走って行った。それを見届けると、ルイズは座り込んだ。セラスとリップも座り込む。
弾薬箱を置き、セラスはルイズに尋ねた。
「マスター、アルビオンにはどれくらいで到着しますか?」
「そうね、今は夜中だから・・・え〜と?」
そこへ、大きな声で『出港だ!』と声が聞こえた。帽子を被った男が船員に指示を出している、どうやら彼が船長らしい。
ワルドが戻って来て、近くに座った。
「港のスカボローに到着するのは明日の昼過ぎ頃だ、それまで眠っておきなさい」
リップは黙って頷くと、舷側に寄り添って横になった。睡眠に入るのに僅か2秒、ノビのび太に挑める記録だ。
ワルドはルイズを引き寄せると、並んで横になった。何時の間に追い付いたのか、グリフォンが傍で眠っている。
セラスも遅れて、仰向けになって目を瞑った。そんな時、デルフがボソリと呟く。『ゆっくり休めよ、相棒』と・・・。
一心不乱の大支援
まるでカバー裏のようじゃないか支援
支援
「セラス、起きて・・・起きなさい」
眩しい光に目が眩んで、セラスは目を覚ました。青空をバックに、リップが顔を覗きこんでいる。傘をクルクルと
回しながら、空中を指差す。その方角に視線を向けて、セラスは自分の目を疑った。横にいたルイズが説明を始める。
「浮遊大陸アルビオン、あんな風に大洋の上を回ってるの。国土面積はトリステインと同じくらいで、月に何度か
ハルケギニアの上にやってくるのよ」
「凄いですね、あんなの初めて見ますよ」
『まるでラピュタみたいだなぁ・・・』などとセラスが想像した時、見張りをしている船員が大声を上げた。
「右方向より黒い船が接近、旗を掲けず。空賊の可能性アリ!」
右に目を向けると、確かに黒い船が近付いて来ていた。自分達が乗る船より数倍は大きく、船体には大砲をズラリと
並べている。セラスとリップは同時に銃を構える。
「く、空賊だって!? 取り舵いっぱい、逃げるんだ!!」
ワルドと共に船の操縦の指揮を取っていた船長が、撤退の命令を出す。だが進路を変えようとした瞬間、大砲を一発
進路方向に打ってきた。双方との距離は、どんどん狭まっている。
「駄目です船長、これでは逃げ切れません。我が方には移動式の大砲が三門のみ、追い払うのも無理です。もはや、停船する
しかありません」
副長の言葉に、顔を青くした船長はワルドを見た。だがワルドは、顔を横に振った。
「この船を浮かべるのに精一杯、交戦は無理だ。ここは副長の言う通り、大人しく停船した方が良いよ」
首をガクリと落とし、溜息をつく。
「くそ、これで破産だ・・・裏帆を打て、停船だ」
船長の悲痛な命令を受け、船は止まった。黒船が横に止まり、弓やフリント・ロック銃などで武装した男達が乗り移って
来た。ルイズは小さな声で、背後に佇む二人の使い魔に命令する。
エスキモー支援は冷凍支援
オレによーし、オマエによーし、みんなによーし♪
中尉何読んでんだww支援
なんという走狗共、この後どうなるのかとても心配ですなぁ〜(棒読み)
「セラスは直接火砲支援、リップは間接狙撃支援・・・用意」
「「ヤー」」
返答の声と弾を込める音が、同時に重なる。男達は斧や曲刀などで船員達を脅しながら、何やら尋ねている。ワルドの隣に
いたグリフォンは、頭に青白い雲に覆われて眠ってしまった。どうやら空賊の中には、メイジもいるらしい。
その時、空賊の一人がルイズに気付いた。汗やグリースで真っ黒になったシャツを着て、ぼさぼさの長い黒髪を赤い布で
乱暴に縛っている。ご丁寧に左目に眼帯を付けている、どうやら彼が空賊の頭らしい。
「おやおや、こんな所にも貴族様がいらっしゃったか。それに美人の付き人を二人も従えるとは驚きだ、武装までさせて」
数人の男達を従えて、頭がルイズの前に立つ。顎を手で持ち上げ、品定めするかの様な目で見つめた。
「お前も付き人も揃って別嬪だな、俺の船で皿洗いでもしないか?」
男達は下品な笑い声をあげた。ルイズは頭の手を叩くと、怒りを込めた目で睨みつける。
「下がりなさい下郎、汚い手で触るな」
「下郎だと、こいつは驚いたな!」
男達は大声で笑った。セラスがハルコンネンを構えようとしたが、デルフに呼び止められる。
「止めとけ相棒。ここで空賊に危害を与えたら、報復に大砲を打ち込まれちまうぜ」
「でも、マスター『おい女、それは何だ?』・・・え?」
セラスの言葉に、頭の言葉が重なった。キョトンとしているルイズの右手を掴み、顔を近づける。そして、目を見張った。
「これは・・・水のルビー!? 君は、アンリエッタ王女に派遣された大使なのか?」
頭が急に言葉遣いを丁寧にしたため、ルイズとセラスは不審な目で頭を見る。リップは興味深そうに、頭を見ていた。
ルイズは顔を引き締め、腰に手を当てて答える。
「そ、そうよ。私はトリステインから派遣された、王党派への使いよ。この指輪は貴方が言った通り、アンリエッタ姫殿下
から預かった水のルビーよ。それがどうかしたって言うの?」
すると頭は自分の右手から指輪を外し、水のルビーに近づけた。二つの指輪が共鳴し、虹色に輝き合う。
「私が持つ指輪は、アルビオン王家に伝わる風のルビーだ。この指輪の持ち主はアルビオン皇太子、ただ一人」
指輪を右手に戻すと、頭はルイズから一歩離れた。
「いやいや、大使殿には大変に失礼な事を言ってしまって申し訳ない。まさか滅亡を間近にひかえた我が国に見方する者が
現れるとは、予想外だったものでね。ちょっと待ってもらって良いかな、今から正体を明かすよ」
そう言うと、頭は頭に巻いた赤い布を取り、黒髪を掴み取る。どうやら、カツラだったらしい。眼帯を外し、顎の髭を
取り去る。そこに現れたのは凛々しい金髪の若者、なんと言う劇的ビフォーアフター!
「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官。アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ!」
足を開いて左手を腰に当て、右手の人差し指をビシッと空に向ける。ちょっと時代遅れの決めポーズにルイズ達が引いて
いると、ウェールズは居住まいを正してポーズを止める。
「アルビオン王国へWELCOMEだ、大使殿。さて、御用は何かな?」
ニコリと魅力的な笑みを浮かべ、ルイズ達に尋ねる。だがルイズとセラスは脳内フリーズしており、理由を述べる事が
出来ない。リップは薄笑いを浮かべ、主人と同僚を見ている。三人の表情を見て、ウェールズは理解した。
「その顔は『どうして空賊に身分を偽装していたのか?』と言った顔だね、そうだろ。実は我が本国艦隊には、我々が使用
してる『イーグル号』しか無くてね。この一艘だけで、貴族派の船と戦わなくてはならない。と言っても、正面から責める
事は出来ない。あっと言う間に大砲で蜂の巣さ。だから空賊に偽装して、敵の補給路を断とうと日夜奮闘してるって訳さ」
ウェールズの説明を何とか理解すると、ルイズは御用の理由を説明する。
「実はですね、アンリエッタ姫殿下より密書を預かっておりまして・・・」
胸のポケットから手紙を取り出し、一礼してウェールズに手渡す。ウェールズは愛しそうに手紙を見つめると、右手を
上げて『アハトォウン!!』と叫んだ。周りに控えた空賊達が、一斉に直立する。花押に接吻して、封を開く。
便箋を取り出し、読み始めた。途中で顔を上げた、寂しそうな顔だ。
支援あるのみ
γ  ̄ ̄ヽ
| ,r:v:、ツ
| lリ0_ゝ0リ いやぁ、助かりましたねぇ〜
|/ .<v>l
ヽ_ヽ.::l>
l,゙イ_T_l、)
し' J
γ;;;;;;;;;;;;ヽ
l;;;;;;;<0>;;l
リvト゚∀゚リ 助かっちゃいましたねぇ〜(主に皇太子殿下が)
/;;;;;;;T;;ヽ_
/;;;/;;;;l;;;;l;;;lつ
ι/;;;;┬;l
し' J
あと数秒遅れていたら、海賊船に扮した船が沈む所だった……ルイズの痛い娘ぶりが見れないのは彼らの安全のためだったか。
「姫は結婚するのか? アンリエッタが・・・私の可愛い従妹は・・・・・・」
ルイズが無言で恭しく頭を下げると、ウェールズは再び手紙を読み出す。最後まで読むと、手紙を懐に入れた。
「姫が私に授けた手紙を、受け取りに来た事を了承した。姫の望みは、私の望みだからね。しかし残念ながら、今すぐには
返せない。手紙は、ニューカッスルの城にあるんだ。大事な宝物を、四六時中持ち歩く訳にはいかないんでね」
笑って言うと、ウェールズは部下にニューカッスル城に向かうよう命令した。ルイズ達は、やっと緊張を解く事が出来た。
今日はここまで、どんどんリップが調子に乗ってる。だが、変更はしない!
取り合えず、セラスはリップの嫁と宣言。次回の投下は、水曜か木曜ぐらい。
スナゼロ殿、乙であります
なんだか とっても人情紙風船www
乙です。リップいいぞもっとやれww
作者様GJ、そしてお疲れ様でした。投下予告期待の極み…
しかし初期のセラスに悲鳴をあげておどおどしていたリップがリバースを
かけるとは、これからはそちらの方も目が離せない…というか既にワルド
との対決よりもそちらの方が期待大だったり…
これはもうワルド君に味方になってもらうしかないな
乙です
みしゃくら先生の教えは世界を超えるのかw
なんてこったい
セラスはリップの嫁
ロリカードは誰の嫁ですか
俺
グールにもなれない
>>296 や、そっちのが幸せか?
死に掛けか、病気の熱でぐったりしたシュレが
体力回復のために無理やり口に切った指先を突っ込まれて血を飲まされる場面がみたい
ロリカードが拘束制御術式開放した時って
拘束衣着てる状態なんかな
激しく見たい
俺は誰の嫁ですか
ゾーリン中尉の100人いる妾の一人です。
1000人の吸血鬼から少佐引いて999人いるカンプグルッペの中に
少佐のファンは全員だとして・・・
ゾーリン中尉の妾はどの位いるのだろうか?
リップ中尉のファンはどの位いるのだろうか?
ドクと一緒に少佐の料理と食材を作る奴はどれ位いるんだろうか?
なんつーこと考えてたら「世界がもし百人の村だったら」を思い出した。
世界がもし1000人の吸血鬼だったら?
こんなロリ旦那ならわんこに食われてもいいわ
ひゃあたまんねぇ!!ああ右手の位置が憎い
ロリカードも発情して主を襲えばいいのに、雌犬なんだから
黒犬×雌犬とな
なるほど
年末が楽しみです
パソコンが故障してしまった、バックライトが壊れて画面が映らない!
修理に2週間は掛かるため投下が遅れます、しばらくお待ち下さい(><)
>>295 ジョジョの作者
今月号は休載。しかしそれでも吹いたw
>>313 究極生物が相手では納得せざるを得ない。
ミストバーン
キルバーン
リップバーン
いや何でもない…
つーかなんで荒木?
凄み
夏でも白スーツなのかねぇ、隙無さすぎだろ…
手袋ははずさないのねw
ってか吸血鬼って暑さ寒さは感じるのかね。
体温からして冷たさそうだけども
白スーツを脱いだら代わりに何を着るのか…問題はそこだぜ
>>325 ニーソ
ところで、旦那の
おまえはおれだ!!
おれもこの通りの有様だった
俺もこの通りの様だったんだ
って台詞、どんな風に解釈してる?
>>324 ロリカードを抱きしめて涼をとるルイズを想像しちゃったんだぜ、エロいんだぜ。
>>328 その頭を別の方向に使えれば、多分お前世界盗れるよ
>>
>>325 麦わら帽子+ワンピース(下着なs(グシャ)
2015より第5話投下
サイト活躍予定
やって来ましたな血まみれのカメラーダ
院長室に入る四人の中で、アンデルセンは頭を下げることもせずにオスマンの所へ進む。
ルイズが慌てて止めようとするが、間に合わない。机の上に銀の箱を置く。
「これを一体どこで手に入れたので。」
オスマンは白い髭をいじりながらいう。
「何?これを知っているのか。」
アンデルセンは言外に圧力を込めて言う。顔つきは険しい。
「これは我々ヴァチカンの、カトリックの物だ。それが何故異世界にある?」
オスマンは驚きアンデルセンを見上げる。そしてその口から出た言葉に異界の二人は戦慄する。
「もしやそなたはイスカリオテか?」
アンデルセンの顔に驚愕が、アーカードの顔に狂喜が浮かぶ。オスマンは話始めた。
三十年程前に近隣の村に吸血鬼がいると聞き討伐に向かった。この世界の吸血鬼は先住魔法と呼ばれる
強力な魔法と一人だけ忠実なグールにするという能力を持つ。だがそこにいた吸血鬼は違った。確かに魔法は
使わない、グールを操り人も騙さない。しかしオスマンは死にかけた。その吸血鬼の身体能力と
無限に現れるグールに。なにせオスマンが呪文を唱えようとしても一瞬で間合いを詰められる。
氷の矢を放っても避けられる。ゴーレムを作るも上に飛び移ってくると散々だった。しかし、オスマンに
一人の男が助太刀に来た。その男は強力な銃器と正体不明の方術であっさりと吸血鬼を倒した。
だが、男はすでに何者かの手により致死の傷を負っていた。いまわの際に彼は自分が異世界から来たこと。
ヴァチカン13課イスカリオテ機関という組織に所属し、銀の箱の奪還任務を受け。果たしたこと。
この銀の箱を同じ世界から来た人間に託してほしいこと。遺体をグールにならぬよう燃やしてほしいことを告げた。
「じゃからそれはお主に渡そう。」
アンデルセンはじっと箱をみる。これがあるならヴァチカンの戦力は強大なものとなるだろう。
(帰る理由が出来たな。)
「さて、皆御苦労であった。しかし、この件は学院自体の件なのでわしのできる範囲の報酬しか与えられんが。」
そこでキュルケは休みを、アーカードは弾薬を錬成してもらうこと、アンデルセンはその機関員の他の遺品を、
それぞれ要求した。ルイズはおずおずとオスマンに尋ねた。
「あの平民はどうなるのでしょうか?」
「あの子か……。さての……。」
「ではあの人をここで預かり、帰る方法を探して下さい。」
ヴァリエール家の三女として命の恩人に何もしないことはありえない。オスマンは笑って頷き、
「もちろんそのつもりじゃ、それに異世界なんてものに興味津津の男に心当たりがあるしの。」
四人が退出した後、例の興味津津の男がやって来た。
「異世界の住人、実に興味深い。」
予想通りの回答にオスマン老は目を細める。コルベールは我に返り、本来の報告をする。
「ミスヴァリエールの使い魔の胸にあるルーンですが、各属性の兆候がないのですよ。そして、似たルーンも無い。
いくら古い書物を漁っても。」
オスマンは笑って言う。
「のう、普通魔法は失敗すると魔力が拡散し何も起こらん。だがミスヴァリエールは爆発する。おかしいの。」
「は、はあ。」
オスマンは笑って言う。
「まあ、ルーンの件はこの際置いておきなさい。それよりあの少年じゃ。もしもあの子がおらず、
そのままミスヴァリエールが死んでおったら偉い事じゃったぞ。」
コルベールは身震いする。管轄外とはいえ、この国で最も強大な権力を持つ公爵家の三女
が死亡する。
責任は必ず問われる。おまけに現公爵家当主は大の家族思いという。言葉のとおり首が飛んでいたかもしれない。
「あの子は我々にとっても恩人じゃ、丁重に扱う様に。」
「は、はい。」
コルベールは青ざめた顔で頷いた。
昼間、目を覚ました少年とアーカードを除いた三人で話をする。アーカードは曰く眠いらしい。
とりあえず自己紹介をし、状況を説明する。異世界、魔法についてはキュルケの実演で理解した。
しかし、もう一方は彼の許容量を超えた。
「吸血鬼がいるってことはわかる。すげーよくわかる。ファンタジーやメルヘンには付き物だからな。」
サイトはわなわなと震える。
「けどそれが俺の世界から来たってのはどういうことだ?そんなもんいたら人類なんてとっくの昔に絶滅してるっつの。」
「本当だ。」
アーカードが現れた、壁から。サイトはベッドの上から転がり落ちた。
「ん、んなわきゃ「ハルヒ」」
「…………」
「ドラえもん、クレヨンしんちゃん、明日のナージャ、セイバーは俺の嫁…。」
「もういい…。」
その言葉にはっとした後なぜかサイトはつっぷした。二人の少女がアンデルセンに聞くが、
彼もジャパニーズアニメに関する知識は持ち合わせてないらしい。
「じゃあ、その人は何だよ。」
アンデルセンを指して言う。
「神父だ。」
「嘘つけーー!!」
サイトは立ちあがる。
「どこの世界に傷が瞬時に治って傷を治して笑いながら人の首を刎ね飛ばす聖職者がいるんだ!!」
「お前がもと居た世界だ。」
「ちょっと黙ってろあんた!」
最強の吸血鬼にアンタ呼ばわりする少年に二人の少女は無知の怖さを見る。そんな少年にアンデルセンは穏やかな笑顔で、
「それはあれが化け物だったからです。いいですか?暴力を振るっていいのは悪魔共と異教徒だけです。
逆に言えば悪魔共と異教徒には暴力を振るっていいのです。」
と言う。笑顔で。サイトは口を開け呆けたが、何かを諦めたかベッドに膝を抱え座る。そして仕切りに、
「異教徒でもダメだろ、異教徒でもダメだろ。」
と呟き始めた。
支援ダァーッ
「とにかくあなた暮らす当ても無いし、帰る方法もわからないんでしょ?だから学院で働いてなさい。
その間に先生方が帰る方法を探してくれるわ。」
その提案はサイトにとってかなり魅力的だった。断る理由もなく頷いた。
「全く、私が学院長に掛け合ったんだから感謝しなさいよ。」
その言葉にキュルケがジドっとした目で見る。アンデルセンは「汝欺く勿れ」とポツリと呟いた。ルイズは横を向いて言う。
「あー……助けてくれて、ありがとう。」
サイトは笑って言う。
「あー別にいいよ。何か夢中でやったことだから。」
ルイズは息を吐き出し、駆けて行った。サイトは戸惑い、アンデルセンに尋ねた。
「俺なんか悪いことしました?」
アンデルセンは首を横に振る。サイトはアンデルセンとアーカードに頭を下げ
「すいません気が動転して、何か変な言葉使って。」
と謝った。アーカードは欠伸をし退室する。キュルケは投げキスをして出て行った。残ったアンデルセンを
サイトはまじまじと見据える。穏やかな顔だがその実顔には傷が多い。聖書を捲る手はごつく、自分の倍はあるように思えた。
「助けてくれてありがとうございます。」
「別段気にすることはありませんよ。あなたを巻き込んだのは私ですから。」
アンデルセンは彼を無視して戦い、その存在を忘却した自分が感謝されるのをむず痒く感じた。サイトは彼に構わず質問する。
「あの…回復法術ってなんですか。」
「神に仕える者が行使できる技術です。」
サイトはカトリックの神父は凄いんだなあと感心した。無論色々間違っている訳だが。
「じゃあ、僕でもカトリックになれば使えるんですか。」
アンデルセンはサイトの目をみる。サイトはその眼に幾分か真剣なものを感じとった。
「回復法術を行使する為に神を信ずる。それは神の力に仕えることだ。神に仕えることとは違う。」
サイトは強い物言いに驚いたが、そこに幾ばくかの悲しみを見、押し黙った。アンデルセンはしばらく遠くを見ていたが、すぐに優しい神父の顔に戻り、
「まあ、興味が湧いたら私に言って下さい。信者でなくとも迷える者が居れば救うのが本来の神父の仕事ですから、」
と言った。それは以前まで本来とは違う仕事をしていたのかと少年は思ったが、あえて言わなかった。
一心不乱の大支援
ごもっともがが、き@がい神父に言っても聞きはしないだろう支援。
サイトは独りベッドの上で呆けながら、改めて偉いことになったと頭を抱えた。
「まあ、吸血鬼になるよりマシか。」
頭の中で最大限譲歩した後、昨夜の光景を思い出す。切られても貫かれても突き進む男、
それに対する自己の恐怖と驚き以外の感覚に気づく。
少年はその正体を疑問に思い自問したが、すぐに検討がついた。
それは子どものころに持っていた、今まで忘れていた気持。
力への羨望、欲求
ふと現れた己の野心に気づき、胸に手をあて、確認した。それは幸せだが平凡な日常の中で忘れていた、愛しい感覚だった。
結局、俺は学院でマルトーさんの元、下働きを始めた。異世界からきた俺に皆分け隔てなく接してくれたし、
コルベール先生には特に気に入られ、異世界の話をしては感心される。度々ルイズが来てはちょっかいをかけてきたが。
適当にあしらっていると怒り出し意味が分からない。そんなに平民平民言うんなら来なきゃいいのに。
そしてその話をマルトーさんに相談すると、「お前は大した奴だ」と肩を叩かれる。意味が分からない。
アンデルセン神父は時たま聖書の話をする。こっそりと。何やらブリミル教以外の宗教は弾圧されているらしい。
正直道徳の時間に習うようなことばかりだが、それでもこの世界の多くの人たちにとっては凄い事らしい。
さらには算数、理科の話もするから公教育なんて理念の無いこの国では人気にもなるというものだ。
あと、これは俺自身の変化だが、体を鍛えるようになった。朝早く起きて走り、プッシュアップなどで筋肉をいじめる。
原因は、俺の中で燻っている憧れだ。もっとも普通にやってたんでは、あんなんにはなれないとはわかってる。
というかどうやっても成れない気がする。
支援、一心不乱なる支援
サイトが男前になってるぅー!ガビーン
一週間程経った日、いつものように厨房に行くとマルトーさんがあたまを抱えている。
「どうしたんですか?」
「おお、サイト!実はな、すぐ北の町から野菜が来るはずなんだが昨日から来てねえんだ。今夜分はなんとかなるが…お前ちょっと見て来てくんねえか?」
「はあ、でも…」
俺は自分の格好を見る。麻布のシャツに継ぎ接ぎだらけのズボン。旅に耐えられるだろうか。
「まあ、馬で六時間の距離だから大丈夫だろうが、ちょっと軽装だな。」
そこにアンデルセン神父がやって来た。
「ふむ、それならいいものがある。」
そう言いしばらくして戻ってくると、何やらコートらしきものを持ってきた。
「それは?」
「同僚の遺品です、使ってもらった方が彼も喜ぶでしょう。」
無骨で機能性を重視したデザインが気に入った。お礼を言って貰う。自分の世界の物に親近感が湧く。ちょっと大きめだが。
「あとは剣かな、この辺は魔法学院の近くだから治安はいいが……。」
アンデルセン神父は懐から一本の銃剣を取り出し、俺に手渡した。結構重い。
「んじゃあ、シエスタと一緒に行ってくれ。夕方には着くだろう。」
「なあ、シエスタ。」
「はい?サイトさん」
馬で駆けながらシエスタの腰にある物に目を向ける。
「それ何?」
「剣ですけど、何か?」
サイトはその湾曲した形と柄に見覚えがあった。
「ひいおじいちゃんの形見なんです。」
「もしかしてそれ日本刀って言って、ひいおじいさんは異世界から来たっておっしゃってませんでしたか?」
「?なんで知ってるんですか?」
降って湧いた手掛かりに喜びつつも、今最大級の懸案事項を口にする。
「もっとペース落としてくれ。尻が……」
尻に手を当て、ふとコートのポケットの中に何かを見つける。
「それパイナップルですか?カワイイですね。」
サイトは黙ってそれをポケットに戻した。やはりあの神父もその同僚とやらも普通ではないらしい。
シエスタを支援すた
厨房の休憩時間、アンデルセンが皆に話をする。
「イエス様は嫌われものの貴族にも優しいんだな」
「ええ、なぜなら。」
言いかけた時急に扉から男が入って来た。息を切らしているが顔色は蒼白だ。マルトーが駆け寄る。
「おいどうした?」
「化け物だ…」
その言葉にアンデルセンが反応する。
「詳しい話をお聞かせ下さい。」
男の話を要約するとこうだ。村で以前から変死体が発生していた。その死体はもれなく首に穴があり、枯れて死んでいた。
殺された時間はいずれも夜、領主は吸血鬼の仕業としてメイジを派遣した。怪しいのはブリミル教の神官だとして、尋問に行った。
その神官は昼間外に出なかったからだ。時刻はご丁寧に夕方。
「メイジ様が殴られただけで弾け飛んだんだ!スイカみてえに!村の皆は逃げたけど何人生きてることか。
おまけに死んだ奴は片っ端からゾンビになっちまった。」
「場所はどこですか?」
「北に馬で六時間。」
マルトーが声を震わす。
「サイトとシエスタが…」
アンデルセンは駆けて出た。顔には焦りがある。
「おい、待てよ!アンタが行ってどうなる。」
「オスマン氏に連絡を。」
聖書のページが空を舞う。さっきまでと違う重圧ある声で言う。
「きっとそれは私の世界の吸血鬼です。私の専門で我々の獲物です。」
アンデルセンの姿は掻き消え、光る紙の群れは北の空に消えた。その姿を見たマルトーが呟く。
「イエス様を信じるとあんなことも出来るのか。」
マルトー親方ー違うからーそれは違うからー支援
支援!支援殿!代行殿!支援代行殿!
「すっかり遅くなりましたね。」
「ゴメンなさい…」
「いえいえ」
サイトは腰に手をあて謝る。サイトの為に休憩を多くとったからだ。もう辺りはどっぷり暗い。馬を置いて村に入る。
「まあ元から泊りですからね、べつにいいですよ。」
「しかし道中は何も無かったけど何で野菜が来ねえんだ?」
村を見ると何人かが道にいる。
「ん?歓迎されてるのか。」
サイトは彼らに近づく、二つの月の月明かりはサイトに彼らの状態をいち早く視認させた。サイトは止まる。
「どうしたんです……か……」
シエスタも見た。肉が崩れ、蠢く人だったものを。
「食人屍(グール)」
ここでアンデルセン神父に憧れを持つ高校生平賀才人が行った行為は当然かつ最善の物だった。それは逃走。
シエスタもまたあっさりと従った。彼らが乗って来た馬に駆け寄る。しかし馬に群がるグール達に二人は毒つきながら横をすり抜ける。
「シエスタさん。本当にゴメンナサイ!」
「いえいえ!」
グールの足は速くない。というか走らない。よってサイトは想像した最もありがちかつ最悪なケースを叫ぶ。
「シエスタ!絶対コケルな?ゆっくりでいいから絶対コケルなよ!」
「はい!!」
彼らは足元に注意しつつ走った。
支援こそ我が本懐、支援いたす
眼前をグールの群れが襲う、サイトは銃剣を払い、シエスタは抜刀により血路を開いた。
「意外とやるね。」
「サイトさんも。」
おぞましい外見だが所詮は生ける屍、動きは遅く、たいしたことはなかった。そのまま逃げようとする彼らの前に一人の男が現れる。神官だろうか。
「やあ、こんばんは。」
二人は立ち止った。後ろから迫るグールの群れより目の前の男が危険と判断したからだ。サイトはその正体に気づく。
「吸血鬼か。」
「その通り、あきらめたまえ。グールに喰わせるには惜しい。特にそちらのお嬢さんは。」
震えるシエスタの前にサイトが立つ。なんとしても彼女を逃がす。それは学院への恩義であり、女の子を守るというポリシーの為である。
「あきらめる?いやだね!」
シエスタを抱きよせ、耳元で囁く。シエスタは非常事態にも関わらず顔を赤らめる。
「時間は稼ぐ。」
吸血鬼が襲いかかり、サイトの首筋に食らいつく。シエスタが悲鳴を上げる。しかし吸血鬼は顔をしかめる。
食らいついたのはサイトの左腕だった。激痛に顔を歪めながら、唯一一度きりのチャンスに銃剣を心臓に向け突き刺す。
だが、左腕の痛みと掴まれた右肩によって外してしまう。渾身の一撃は脇腹を貫くに留まった。吸血鬼は木の枝まで退き、血の塊を吐き出す。
「なんだ、これは?この剣は?傷が治らんぞ!無敵の体の筈じゃないのか?」
サイトは立ち上がり、挑発する。
「は!こんだけ殺しておいて!こんなことしやがって!脇腹切られたくらいでピーピー泣くんじゃねえよ、甘 えん 坊!」
左腕は折れて骨が見える、右肩は砕けたように痛い、足は震えた。しかしシエスタを逃がす為に下手な挑発をした。
怒りの顔を見せる吸血鬼、その顔が少女の背に隠れる。
「シエスタ!!逃げろよ。」
「嫌です。サイトさんがあんなのになるなんて嫌。サイトさんがあんなのに殺されるなんて!サイトさんを見捨てるなんて絶対嫌!」
なんか、シエスタがかっこいいぞ!!支援
支援だ支援が足りない、もっと支援を
わずか一週間ほどの付き合いだったが、シエスタはサイトを仲間と思っていた。
見ず知らずの貴族の少女を、命がけで救った勇敢な少年を尊敬していた。
サイトは彼女の啖呵を嬉しく思うも、状況の最悪さは変わらない。吸血鬼は激昂しシエスタに飛びかかる。
サイトはシエスタを右に突き飛ばした。代わりに押し倒されるサイト。吸血鬼は舌打ちをするもサイトを睨みつけた。
「まあまずはお前でいい、訂正しろ!甘えん坊だと?ただの人間が!私は吸血鬼だ!
不老不死の、最強の生物だ!お前らとは違うのだ!あきらめておとなしく食われろ!」
「うるせえ!人間舐めんな元人間!不老不死?最強生物?笑わせるぜ!
好き勝手暴れて人殺しまくっておいて、脇腹刺された位で喚くんじゃねえ!
俺達と違う?そりゃそうさ!俺はただの人間だ!人間を舐めんな化け物!
さあ戦ってやるぞ吸血鬼!戦い尽くしてやる!」
蒼くなる吸血鬼。サイトはシエスタに叫ぶ。彼の一連の行動は全てシエスタを生かす為にあった。
「ふせてろ!!」
そして右ポケットから、パイナップルを取り出し、ピンを抜く。
「何だ?それは?」
「人類の叡智だ。」
サイトは手榴弾を転がした。最後の力を振り絞り吸血鬼が壁になるよう身を捩った。
その手榴弾を何者かが、蹴飛ばした
手榴弾は飛んで行く、グールの群れに。弾ける死肉と轟音にその場にいた全員が振り向く。そして胴体に突き刺さる無数の銃剣に吸血鬼はよろめいた。
「体が……崩れる!」
けたたましい叫び声を完全に無視し、乱入者アンデルセン神父はサイトを抱え、震えたと思うと、突然仰け反って笑い始めた。
「ははははははは 聞いたかシエスタさん!聞いたかフリークス!雲霞の如きグールに迫られ、吸血鬼に圧し掛かられ、
喚くな?戦ってやる?
ゲァハハハハッ!よく言った!取った行動が自爆でなければもっとパーフェクトだったがな。」
その顔は優しい神父ではなく、イスカリオテの鬼札の物だ。彼は呻き声を上げる吸血鬼に嬉しそうに近寄る。
「く。くるな。」
「五月蠅い!!死人がしゃべるな!!」
「た、助けて。」
「死人が命乞いをするな!!」
首を刎ねる。ゴロリと落ちたそれを一瞥し、今だ向かってくるグールに視線を移す。
(主が死んでなお動くか、天然ではなくナチのインスタントか。)
「今日は機嫌がいい。藁の様に容赦無く殺してやろう。」
そう言い、笑いながらグールに突撃する。死にぞこないが宙を舞い、死んで行く。シエスタはサイトに駆け寄る。
彼女はその光景を畏怖の念を持って見ていたが、サイトに宿ったのは別の感情だった。羨望、驚嘆、力への欲求。それらが溢れ、口を突いて出た。
「かっけえなあ。」
「?」
我等は熱心党、支援
俺を強くしてください、と土下座と言う(確か由美江がマクスウェルに休暇を乞う時やっていた。)ポーズをする少年を見、思案する。
どんどん布教したいが、主人が快く思っていない。
主人はこの少年に好意を抱いている。
ピンと来た神父は少年の肩を叩く。
「いいですか主は……。」
「全くもう!あの使い魔何処行ったのかしら。強いのはいいけどちゃんとご主人様の側に居なきゃだめでしょう。」
ルイズはそう言いながら中庭を歩き回ると神父の姿を発見する。叫んで呼ぼうとするも、シエスタに止められる。
「今神聖な儀式の最中らしいです。」
「……はあ?」
アンデルセンがサイトの頭に水をかけている。アンデルセンの体が少し光った気がした。その後なにやら話をして終わった。その間ずっとサイトは手を合わせていたが。
「何してたの?」
「ええ、サイト君に洗礼を。」
「え?なんで?」
「いやあ、本当は司教でないと駄目なんですが、略式でね。」
「いや、そうじゃなくて。」
サイトが答える。
「あ、ありのまま起こったことを話すぜ、『神父みたいに強くなるにはどうすればいいか』と聞いたら、
いつのまにか洗礼を受けていた。」
「何を言ってるか分からないわ。」
カトリックという宗教自体は良いが、アンデルセンの性質に不安を抱く。
「アンデルセンはそれでいいの?そんな理由で。」
「神の兵が増えるのはいいことです。」
さらっと重大なことを言ってのけた神父に頭を抱えた。シエスタの方を見る。
「仕方ないですね、男の子って。」
サイトもまあいいかと呑気な顔だ。
みんなだめだ…とルイズは諦めた。
教皇庁13課イスカリオテ残存兵力 2名
投下終了です。支援、まとめいつもありがとうございます。
これからも再生者サイトとアンデルセンの活躍にご期待ください。
ブラボー、おおっブラボー
狂信者さんGJっした、サイトが良い漢になりそうで楽しみです
乙です
サイトが漢になっているwwww
最後、サイトの頭がイバラになったら笑える
作者様お疲れ様でした、そして良い作品をありがとうございます。
いままで化物VS化物って感じの「虚無と狂信者」にサイトが入ったことで
「戦う人間」の要素が加わってこれからどうなるのか、楽しみにしています。
364 :
マロン名無しさん:2008/07/31(木) 23:47:52 ID:VJP3hne6
アンデルセンだってもとは人間だから、才人みたいに弱いときがあったんだよな…。想像できんが。
となる才人もいつかああなるのかな?
あれほどの人になると、生まれながらの狂信者って言われた方が納得出来る
普通の人間であっても、信仰心さえあればあそこまで鍛え上げる事が可能なイスカリオテ式訓練法が確立している――とか無いですよね?
イスカリオテにはハートマン軍曹を上回る鬼教官がいるのでは
熱心党の一般兵まで神の兵たる覚悟の塊ですぞ
死をもいとわぬ覚悟こそが熱心党の強さ也
彼らは人にして人に非ず、彼等は神の武器也
アンデルセン「ふむ、このハートマン軍曹という人物、好きにはなれませんが教育方針はすばらしい。……ハインケル、由美江、今日のトレーニングを始めましょう」
卑猥な歌ではなく、賛美歌を歌いながら魔法学園の校庭を耐久マラソンする平民の群れに恐怖を感じる貴族達――
>>366 そうだったらアンデルセンクラスが量産されてるはず
法術と再生能力にも才能や素質がいるんだろうね
超人アンデルセン>>>達人由美江>>強者ハインケル≧武装神父
こんな感じするな…
373 :
マロン名無しさん:2008/08/01(金) 20:22:54 ID:i53DFsrK
>>367 想像できねぇ。
聖人君子なのにハートマンより鬼な教官って…。
間違っても「聖母マリア様でもクソ垂れたくなるくらいピカピカにしておけ!」なんて
言わないだろうし。
一体どんな訓練が行われているんだ。
378 :
マロン名無しさん:2008/08/02(土) 14:57:49 ID:Mv8s2TW7
379 :
マロン名無しさん:2008/08/02(土) 19:07:21 ID:ld1jDC8j
「異教徒共の血でも汚されないくらいピカピカにしておけ!」
>>379 マクスウェルがアンデルセンと連絡とっている時に
「マルタ騎士団、聖ヨハネ騎士団、ホスピタル騎士団、聖ゲオルギオ騎士団及び
スイス傭兵団(ヴァティカナンガーズ)の本営もこちらに移動させた。
聖遺物管理局第三課(マタイ)も行動を始めた、対吸血鬼戦術専門に想定した武装を準備している」
って台詞があるが、恐らく彼らの教官クラスはそんなステッキーな方々ばかりじゃなかろか
ふう…
抜いても賢者モード抜けないな
灰は灰に、塵は塵に
神父様格好良すぎるお
>>373 軍曹はシゴいて一人前の兵隊にしてやるのが結局彼らのためになるとしっててやってるだけだから
イスカリオテの教官も「イエス様のために一人前の狂信者の兵隊にしてやるのが彼らにとって幸福」と考えたりしててもおかしくはない
今思えば憲兵少尉はいい死に方したな
ペンウッドのところへ行った2Pカラーはあんなにへタレたのに
明日にでも投下を計画(ーωー)
スナゼロキター!!楽しみにしてます!
2215から6話目投下
注意として回復法術捏造なので本気にしたりしないで下さい。
風のアルビオン編への繋ぎのため長いかつ新キャラ多いです
「これは?」「黒鉄」「これは?」「陶工」
サイトは中庭で聖書と格闘していた。アンデルセンの手でハルケギニアの言語で直されたそれを読んでいく。
一度単語の意味さえ知れば以後意味がずっと解る様になる為、読むこと自体は簡単である。便利なものだ。
アンデルセンからは他にも祝福済みの銃剣二本と13課のコート、ロザリオが与えられた
「回復法術を使うにはどうすればいいんですか。」
「神に祈ればいいのです。」
(え?そんだけ?)
「瞬間移動や結界もですか?」
「ええ。」
(んなわきゃねえよな……。)
サイトは昨夜の神父とのやりとりを思い出し、溜息をついた。もしそれが本当なら地球人の内10億人が超能力者だ。
(きっと修行とかするんだ。)
と自分に言い聞かせ、とりあえず聖書を読むことから始める。そしてそんな彼に言葉を教えてくれる少女を見る。
青い髪の、小学生ともとれる小柄な少女。タバサと言う名前らしい。アンデルセンに紹介された少女は
彼の隣で本を読みながら、サイトが質問するたび答えてくれる。ふと、その無表情な少女が気になった。
「なあ、アンデルセン神父とどんな関係だ?」
「知り合い。彼に文字を教えた。」
「なんで協力してくれるんだ?」
サイトはここでの生活の中で貴族が自分やアンデルセンのような平民の言うことなど聞くことはないと感じていた。
「アンデルセンは私の目的に協力する。これはその対価。」
淡々と答える。
「目的?」
今度は答えない。気には成ったが、これ以上問い詰めるのは無粋と判断した。
「それに、あなたには義理がある。」
「え?何の?」
その時、昼時を知らせる鐘が鳴り、タバサは立ちあがる。多少引っ掛かりはしたが、自分も昼食を摂るために厨房へ向かった。
「また困ったことがあったんだよ。」
その人はこの前吸血鬼が出た村の配達員だ。彼はマルトーに話始めた。
「村に竜が出たんだ。青くて図体がこの厨房位あるんだぜ。皆怖がって仕事にならねえ。」
その話を聞きながらマルトーは首をかく。
「そんなこと言われてもなあ、竜なんてメイジが束になっても勝てねえしなあ。」
「そもそも話を聞いてすらくれねえのよ。なあ、あの神父様に頼んじゃくんねえか。」
マルトーは考える。たしかにあの神父様は強い。けれども、竜相手ではさすがに分が悪いだろう。(実際はそんなことは無いが。)
いくらなんでもシエスタの恩人である彼にそんなことは頼めない。サイトは男に聞く。
「その竜?って何か悪いことするんですか?」
「いや、そんなことは無いんだが…。」
「じゃあほっとけよ。」
「でもあんなことがあったばかりでな。」
吸血鬼事件の後、散り散りになった住民が戻って来た所にドラゴンである。村を出ようとする人間が出始めていた。
「このままじゃはしばみ草採りができなくなっちまうよ。」
はしばみ草はその近辺の山々で採れる。最近はそれを採取するのも皆怖がってできない。正直サイトはあまり好きでは無いが、
肉料理には合うし、マルトーが作るサラダは結構美味かった。
「けどアンデルセン神父は街に買い物に行ったよ。」
今日はあのルイズとかいう子と一緒に朝方出かけて行った。自分もあの子に誘われたが、悪いので断ったら何故か機嫌を悪くしていたっけ。
配達員は残念そうに俯いた。その時厨房に誰かが入って来た。
「タバサ」
「タバサの嬢ちゃん。」
彼女は無駄の無い動きで男に近づくと、彼の肩に手を置き、
「協力する。」
と言った。マルトーが怪訝そうに言う。
「そりゃ、タバサ嬢ちゃんはこの学院随一のメイジだが、相手は竜だぜ。そもそも何だってそんなことするんだ?」
サイトはマルトーの評価に驚いたが、タバサはその表情をいくらも変えず言う。
「何も倒す必要は無い。おそらく迷い込んだだけだから少し驚かすだけでいい。それに…。」
タバサは厨房を出る。
「はしばみ草がない食事は…味気ない。」
支援だ…っ
支援はまだかっ!!
「で?どうやって行くんだ?馬は?」
サイトとタバサは中庭に居た。タバサはじっとサイトを見る。
「ついてくるの?」
サイトは、ドラゴンというファンタジーの中のファンタジーを是非見たいと思った。それは強くなりたいからと、
あの狂信者に弟子入りするほどの冒険心の持ち主(命知らずとも言う)ならある意味当然と言える。
「戦績は?」
「えっと…一応吸血鬼に引き分けそうでした。」
タバサは黙考する。話半分に少しは相手になったレベルとしても学院のお坊ちゃん達よりは使えるだろう。
「分かった。けどドラゴンは普通の吸血鬼など問題にならない存在。間違っても戦おうとしないで様子を見ること。」
サイトは真剣な顔で頷く。タバサは続ける。
「私の使い魔で行く。空を飛べば一、二時間程度でいける。」
そう言われ、サイトは目の前の少女の使い魔を想像する。グリフォン、ペガサス、もしかしたらこの子もドラゴンかも知れない。
少しワクワクして来た。タバサが後を見る。
「来た。」
その姿を見て彼は拍子抜けした。
それは一組の男女だった。
男の方は長身に長い茶髪を結んでおり、左目に眼帯をしている。女性は金髪であり、アホみたいに巨大な大砲を背負っている。
二人ともどこか軍隊を思わせる格好をしている。しかし、サイトの最も注目したところは女性の一点。顔。
(ちょ…超美人)
その女性の美貌は彼の美人という概念を塗り替えてしまった。おもわず見とれる
「タバサ嬢ちゃん。準備できたぜ。」
男の声で正気に戻り、とりあえず彼女に聞く。
「2人?使い魔って一人一体じゃないのか?」
「始祖ブリミルは四人の使い魔を使役した。二人でもあり得なくはない。」
そういうものか。そしてタバサはそれだけ凄いメイジと理解した。
「男の方はピップ・ベルナドット、女性はセラス・ヴィクトリア。」
「どうぞよろしく。」
「あ、どうもヒラガサイトです。」
そう言い男と握手する。優男に見えたが、その実サイトよりも全然力がある。おまけに近くでみると背が高い。
そして隣の女性と握手しようとする。よくよく見ると本当に美人でどこか愛らしさがある。おまけにスタイルも抜群であり、
思わず目を逸らしてしまう。しかしそこであることに気づく。女性の目に戸惑いがある。セラスは彼の胸のロザリオを凝視する。
「プロテスタントですか?」
「NO NO NO」
「東方正教ですか?」
「NO NO NO」
「カトリックですか?」
「YES YES YES」
「もしかしてアンデルセン神父の仲間ですか〜?」
「はい、そうです。」
瞬間彼女は悲鳴を上げ、逃げ出した。
「レビテーション」
彼女の体が浮き、じたじたと暴れる。タバサの魔法だ。
「逃げない。」
「アンデルセン神父と知り合いなんですか?」
サイトが宙でもがくセラスに訊ねる。セラスは話し始めた。
「実は私、元居た所では吸血鬼を狩る仕事をしてまして、その仕事でアンデルセン神父と鉢合わせ、いきなり7本いや8本だったかな?
の銃剣を突き刺されて殺されかけ、一時期なんとか怖くなくなったけど、こっちきて何か布教してるし、
マスターとしょっちゅう喧嘩してるし、やっぱり神父は怖いですありがとうございました。」
言っているうちに自分で落ち着いてきたようだ。そしてサイトは彼女の正体に見当を付けた。
「ああ、つまりあなたは吸血鬼なんですね?」
サイトの言葉にまたパニックを起こすセラス。
「ななななな何でわかったんですか?」
どこの世界に銃剣を10本近く刺されて死なない人間がいるのだろうか。とにかくパニックを起こす使い魔。なだめるベルナドット。
その主人はじっとサイトを見ている。サイトは頭をかいた。
「まあ、タバサには世話になっているし、特に人を襲ったりしなければ戦う気はないし、そもそも俺一人では勝てないですし。」
その言葉に静止するセラス。しばらく沈黙し、徐に口を開く。
「あなたもしかして…常識人?」
「常識あっちゃ悪いですか?」
セラスは泣きながらサイトの肩を叩く。
「そのまま大人になってね。おねがいよ。」
頷きながらもこの人はかわいそうな人だな(頭の中身的な意味で)と思ったサイトだった。
「おい、そろそろいこうぜ。」
ベルナドットが三人を呼ぶ。その手に持たれている巨大なものを見る。
「……籠?」
確かにセラスの周りは常識人が少ないwww支援
セラスが体を翼に変え、飛んで行く。彼女は籠をロープで吊るし、その中にサイト達は居た。意外といい乗り心地と、いい景色にサイトは喜んだ。
かなり早いスピードだが、タバサの魔法で風圧はほとんど感じない。その中でサイト達は互いのことについて話し合った。
特にロンドンの話にサイトは驚いた。表向きはテロ事件で処理されていたが、あの世紀の大虐殺が吸血鬼のものとは初めて知った。
「オカルトっすね。」
「まあその時に俺は死んでセラスに血を吸われてな…、まあ意識はあったんだが一つになってた。
それがだ、こっちの世界に呼ばれてからなんだか知らねえが体が復活してな、ほんとタバサ様々だぜ。」
そう言い笑いながらタバサを撫でるも、彼女は表情を変えないで本を読む。
ふと、サイトはアンデルセン神父も死んだ筈なのに召喚されたことを思い出した。一体どういうことかとしばし空を見て考える。
ふと空を飛ぶセラスを見て重大なことに気づく。
(あの人…スカートじゃん!)
首を横に振り煩悩を振り払う。葛藤している所、ベルナドットが視界に入る。
彼は凄く頑張っていた。その姿は、
(ああはなるまい)
とサイトに思わせるには十分な無様さだった。何かを悟った様な心境になる。
ふいにタバサは立ちあがった。眼下にはあの村があった。タバサは小さいが通る声で言う。
「セラス、あなたは翼人。」
無用な混乱をさけるためだ。その後サイトと自分を指でさし、「チーム」と言った。その後ベルナドットとセラスをさし、三人は頷く。
「絶対単独で戦わないこと。無用な刺激はだめ。知能が高い竜なら交渉できるかもしれないし、ダメでも四人なら追い出すくらいはできる。」
作戦は決まった。
村に降りる彼らに、村人達が何事かと寄ってくる。サイトは事情を説明する。ふと、村人達が女性と老人、子供ばかりなのが気になった。
「男の人達はどうしたんですか?」
村長らしい老婆が困り顔で言う。
「皆竜を追い出しに鍬持って行きましたよ。」
サイトはタバサを見やる。タバサはぽつりとつぶやいた。
「面倒。」
「銀の武器はありませんか?」
トリステインの城下町の武器屋、長身の神父が居る。その隣には桃色の髪の少女。ルイズはアンデルセンに武器を持たせることにした。
正直アンデルセンは乗り気ではなかったが、どうせ貰えるならと対吸血鬼用に銀の武器にしようと決めた。しかし、主人は首を横に振る。
「なんでも大陸中で吸血鬼が出るってな噂でね?実際に村が消えたり人が消えたりってな事件がそこいらであるから、
銀の武器ってのはもうそりゃ、飛ぶ用に売れている訳で今品切れなんですよ。」
その言葉に二人は顔を見合わせる。
「確か、この辺でも出たんじゃないですか。まあ、それは三人組が退治したって話だが。」
「三人組とは?」
「何でもコートを着たガキとメイド姿の剣士、それにバーサーカーって言うんでさあ。笑っちゃいますぜ。」
アンデルセンは苦笑する。自分でも的を射ていると感心する表現だ。
「こまりましたね、では銃剣はありますか?」
「?いや無いですが。」
「そうですか…。」
「は、武器選んでる暇が有れば腕鍛えろ木偶の坊。」
声のした方を見る。誰もいない。
「こらデル坊、客に喧嘩売るんじゃ無え。」
ルイズは剣の山にあるひと振りを掴みだす。
「へえ。インテリジェンスソード?珍しい。」
アンデルセンがそれを取り、見つめる。錆びだらけだが、切れ味を失っていないそれはなかなか良いと感じた。
「?……おまえ、四番目だと?!」
「ちょっとなんだっていうのよ。」
突然騒ぎ出した剣にルイズが抗議する。
「いいか、よく聞け嬢ちゃんこいつの胸のルーンはな!!……………」
「何よ?!」
「何だっけ?」
その言葉にルイズがずっこける。
「あのねあんた……。」
「いや忘れたんだよ。こちとら六千年前から生きてんだぜ?」
ふむ…とアンデルセンは唸る。普通の剣よりはこういう霊的な物の方が奴らには幾分か有効だろう。
「これにしましょう。」
「ええっ、こんなの?」
「なかなか名刀なようですし。それに見た目と性能は別ですよ。」
「いいこと言うじゃねえか。まあ使われてやってもいいぜ。」
さっきまでと打って変わり友好的な剣。100エキューと安かったこともあり渋々ルイズは承諾した。
「半分も残っちゃったわ。」
「………嬢ちゃん。200エキューじゃ銀のは買えねえよ。」
アンデルセンの溜息は宙に消えた。
シイィィィィエエェェェェンン
男達の悲鳴が聞こえる。捜索を始めていたサイトとタバサは急いで声のする方へ行く。みると男たちが竜に対峙していた。
サイトは竜の方を見る。男たちに怯えたようにずり下がっていく竜を見て、サイトは拍子抜けた。
「何だ、恐がってんじゃん。」
タバサも頷く。しかし男たちも怖がっており、さらに、止せばいいのに武器を構え近寄って行く。このような状態の時、人は突拍子も無いことをする。
男たちの中の一人が銃を構えた。そして、爆ぜる音と共に銃弾が竜の横を掠める。その瞬間、それは起こった。
竜が翼を広げると巨大な風が巻き起こった。塵のように吹き飛ぶ男達。
「余計なこと。」
タバサが頭を掻きながらぼやいた。
「人間来ないで!人間来ないで!」
サイトはその声に驚く。その声は青い竜から発せられていた。
「タバサ!あれ何だ?!」
サイトは丈夫そうな木の影に隠れるタバサに聞く。
「韻竜、言語能力を持ち、先住魔法を操る竜。」
「先住魔法?この風のことか。」
「そう」
サイトと会話をしながら、タバサは懐から本を取り出し、読み始めた。
「おい、何してんだ?この非常時に?」
「どうしようもない。」
随分割り切るんだな、と思いながら、サイトは考える。あの竜だってそんなに怖いならとっとと逃げればいい。
ってことはこの竜は逃げられないってこと。
ってことは……。
サイトはコートを脱ぎ捨て、竜の元へ向かった。
支援
こちらはただいま支援の真っ最中〜
「虚無と狂信者」を楽しく閲覧させて頂いちゃってま〜す
最初は彼がなにをしようとしたのか、解らなかった。彼はあの嵐の中を進んでいく。
一歩一歩、
向い風にさらされながら。
飛んでくるものに傷つきながら。
風の刃にさらされながら。
肩口に大ふりの枝が突き刺さる。
それでも歩みを止めない。
そして風は止んだ。
彼は韻竜の頭を優しく撫でている。彼は振り向き私を呼び寄せる。
「魔法で治療してやってくれ。やっぱり翼を怪我してる。」
どう見ても治療が必要なのは彼のほうだろう。切りキズは無数で、出血は命に関わるように思える。
「私では、韻竜は治せない。」
本当は他のことが言いたかった。彼は肩に刺さった枝を引き抜き、呟く。
「まじか…アンデルセン神父を呼ばなきゃ。」
そこにぞろぞろと村人達がやって来る。手に武器を携えて。本当に余計なことばかりする。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
彼は慌てて村人達を押しとどめる。
「なあ、あいつ怪我してるんだ。頼む!助けてやりたい!」
そう言い彼は膝を付き、村人達に頭を下げた。その姿を見て彼らも戸惑う。
何で見ず知らずの竜の為にそこまでするのだろう。
そう思いながらも私は彼に習い、頭を下げた。
規制くらいましたすいません
「神父!アンデルセン神父!」
帰路の途中、上空からの声にアンデルセンとルイズは振り向いた。空から大きな籠を持った、羽の生えた女が下りて来る。
彼はその姿に覚えがあった。
「セラス・ヴィクトリア!!!」
大量の銃剣を、大声に怯む吸血鬼に対し投げつけようとするアンデルセン。それを走って来た少年が止めに入る。
「待って下さい!神父!大変なんです!」
少年はかいつまんで事情を説明する。アンデルセンは銃剣を構えたままだ。
「事情は分かった。」
アンデルセンはタバサを見る。
「吸血鬼が使い魔だったのだな。」
「…あなたが怒ると思った。」
アンデルセンは小柄な少女と、すがる少年と、逃げ腰な吸血鬼、ジド目の主人と順番に見る。
「ドラキュリーナ」
「ハ、ハイ!ナンザンショ??」
アンデルセンは溜息をつきながら籠に乗り込む。
「急ぎなら急げ。」
喜ぶ彼らを見て、(俺も微温くなったな…。)と独り思った。
以上で投下終了です。途中規制食らいましたすいません。
ちょっと長かったので二つに分けます。
7話目水曜辺りに投下します。
支援ありがとうございました。
作者様GJ&お疲れ様でした、そして支援遅くなり申し訳ありませんでした。
どんどん男らしくなるサイト、徐々に「狂信者」から「神父様」っぽくなる
アンデルセン、シルフィにかわって登場したセラス、これからどうなるか、
楽しみに待っています。
この分だと少佐も登場しちまいそうだな・・・怖い怖い。
野生のシルフィが現れた!って感じですな
むしろここはイルククゥと呼ぶべきか
409 :
マロン名無しさん:2008/08/04(月) 00:23:18 ID:tnmm1pDc
>>406 少佐がでるとな?
一心不乱の戦争開始?
サイトのフラグ
・ルイズ
・シエスタ
・シルフィ(イルククゥ)
サイトだけ別の世界になっている気がしますが、普通の神父らしくなっていく
アンデルセン、アンデルセンとの出会いで旦那好みの人間に成長していくサイ
トに目が離せません。
投下57分前、予定。
スナゼロ氏に支援を!
一心不乱の大支援を!!
宜しい支援だ
支援!支援!支援!
浮遊大陸アルビオン、その岬の突端。ニューカッスル城の最も高い所に位置する皇太子の部屋で、ルイズ達はウェールズと
向かい合っていた。ウェールズから手紙を受け取るルイズを、ワルド達は黙って見つめている。
「目的の手紙、確かに返却したよ。大使殿」
「ありがとうございます、殿下」
「明日の朝、イーグル号と捕獲したマリー・ガラント号に女性や子供を乗せて出港する。それに乗って、国に帰りなさい」
手紙を懐に入れるが、ルイズはウェールズから目を放さない。しばらく見つめていたが、決心をして問いかけた。
「殿下、無礼を承知で聞かせて下さい。殿下は、トリステインに亡命する気は御座いませんか?」
ワルドが驚きの表情を浮かべ、ルイズの肩に手を置いた。あっさりと、ウェールズは答える。
「申し訳ないが、その要望には答えられない。我が軍は三百の兵士で、五万の敵軍と戦わなくてはならない。その総司令官が
逃げ出すなど、考えられないからね。万が一にも我が軍が勝ち、私だけが生き残ってもだ」
「殿下は、勇敢な死に様を・・・貴族派の者達に見せ付ける気なのですね」
床を見つめながら、ルイズは小さく呟く。目の淵に、小さな涙が光っている。リップがポケットからハンカチを出し、
ルイズに渡した。涙を拭うルイズに、ウェールズは100万$の笑みを見せた。そして机に置かれた時計に目を向け、時刻を
確認する。
「そろそろパーティーの時間だ、君達も出席しなさい。なんと言ったって、我が王国が迎える最後の客人だからね」
ルイズが使い魔を連れて、廊下に出た。ワルドは残り、ウェールズに願った。
「恐れながら、陛下にお願いしたい事がございます。よろしいでしょうか?」
「なんだね子爵、願い事とは?」
「明日、私はルイズと結婚を行いたいのです。ですので殿下には、その式に立会いを願いたいのですが」
ウェールズは満面の笑みで、ワルドに了承の意思を示す。
「それは喜ばしい事ではないか、この私に任せておきたまえ」
ウェールズは椅子から立ち上がり、ワルドを連れて部屋を出た。廊下で待っていたルイズ達に、軽くウィンクする。
支援
もっと支援を
「会場まで案内するよ、着いて来てくれ」
そう言って、ウェールズは先頭をきって廊下を歩き始めた。ワルド達が、後に続く。後ろを歩いていたセラスが、リップに
こっそり話しかける。
「リップさん、私達もパーティーに参加した方が良いんですかね?」
「参加したくないなら、先に部屋で待ってていいわよ・・・昨日の続き、してあげるから♪」
◇
「あぁ疲れた〜」
「随分とお疲れのようね」
割り当てられた使い魔用の部屋で、セラスはベットに仰向けになっていた。リップは自分のベットに座り、ワインをグラスに
注いでいる。それは真っ赤な色をした、血のように赤いワインだ。一気に飲み干し、唇に付いたワインをペロリと舐め取る。
「当然ですよ、明日には死ぬかもしれないのに・・・皆あんな楽しそうに騒いでるんですから」
セラスが思い出すのは、ホールで行われたパーティー。明日には滅びる運命である貴族や臣下が集まった、華やかな
パーティーだった。参加した者達は園遊会のように着飾り、テーブルに様々な料理が並べられていた。
「確かに、とても楽しいパーティーだったわね♪」
リップが思い出すのは、パーティーでの騒ぎ。ジェームズ一世が王座に座ってブルブル震えながら『ぶっちゃけあれだ、
私だけでいいから皆は逃げなさいよ』と言って部下から『何時も通り座ってて下さい、仕事の邪魔ですから』と言われたり、
ルイズ達に料理や酒を勧めようとした貴族がセラスの胸に仰天して『アルビオン万歳! バストレボリューション万歳!』と
大声を上げたり、変な化粧を施したウェールズがギターを振り回して『レコン・キスタをSATSUGAIせよ!』と
喚き散らしてホールがデスメタルライブ化したりと、ハチャメチャな状態だった。
「なんで皆、名誉や誇りのために死ぬんですかね?」
「なんで? そんなの、答えは決まってるわ」
足を組み替えながら、リップは振り向いた。顔が赤くなっており、足元には殻のワインが何本も転がっている。
「理由はただ一つ、王家の義務だから。王家に課せられた、最後の義務だからよ」
納得出来ないのか、セラスは不満気な顔だ。それを見たリップは、クスクスと笑いだす。
「警官の貴女には分からないでしょうね・・・軍人の私には、分かるけど」
リプタソが言うとどこか怪しい。
支援
乙女に支援だ
そう言ってワインの残りを飲もうとして、リップのワインを持つ手が止まった。セラスの顔を、じ〜っと見ている。
そして何かを思いついたのか、ニヤッと顔を歪めた。セラスは危機を感じ取り、上半身を起こす。
「な、なんですか一体? そ、その妖しい笑みは?」
リップはワインの残りを口に含むと、ベットを立ち上がった。そして、ゆっくりとセラスに近付いて行く。
「え、な何なんですか!? ちょ、それ以上近付かないで下sむぐぅ!?」
セラスをベットに押し倒し、唇に喰らいついた。頭を掴み上げて気道を広げ、無理矢理に口を開かせ、ワインを流し込む。
唾液とワインが混じり合った液体が、二人の唇から垂れ落ちる。床に落ちた液体はHELLSINGの文字には変化しない。
全てを飲み干し、唇が離れる。二人の間には、赤い糸が薄っすらと輝いていた。
「始まったようだな、僕のルイズ」
「始まったようですね、ワルド様」
使い魔の部屋の隣では、ワルドとルイズが揃って壁に耳を当てていた。ワルドなどワインを飲むために使っていた
グラスを使っての念の入れようだ。グラスを使ったからと言って、良く聞こえるとは限らないのだが・・・。
「女の使い魔同士が恋仲になるなど初耳だよ、僕のルイズ」
「褒められてるのか褒められてないのか分かりませんわ、ワルド様」
手で鼻を抑えながらも、ルイズは耳に全神経を集中させる。その横でワルドが懐から、茶色い板らしき物を取り出した。
それを四角形に広げ、床に置く。不可解な物に、ルイズは両目をパチクリさせた。
「ワルド様、それは何ですか?」
帽子とマントをベットに置き、迷彩柄のバンダナを額に巻く。先折り煙草を咥えて、ワルドは振り向いた。
「これはダンボール箱と言ってね、入ると人気付かれずに廊下や部屋を移動する事が出来るんだ」
「そんな凄い物があったんですか・・・それで、それに入って何処へ行くんですか?」
「勿論、隣を覗きに行くため・・・どうしたんだい僕のルイズ、杖を僕に向けて何を・・・ウボァー!」
大佐『ワルド? どうしたワルド!? 応答しろ! ワルドー!!』 WALD IS DEAD
・・・■ 『CONTINUE』 EXIT
このワルド、裏切り者にするには惜しすぎる。
伝説の傭兵支援
ちょっwww
このワルドの駄目っぷりはスカッと爽やかな何かがwwwww
スナゼロさんGJ&お疲れ様っした
今までこんなに駄目なワルドが居ただろうかwww
ご立派様のラストで開き直ったワルドに匹敵する駄目っぷりだ……
「やるじゃないか僕のルイズ、良いセンスだ」
「仮にも婚約者であろう者を犯罪者にする訳にはいきませんわ、ソリッド・ワルド様」
口元に付いた血を拭い、ワルドはニヤリと微笑む。隣から物音がしなくなったのを確認すると、ルイズはベットに入る。
「ワルド様、どうやら隣は終わったようです。私達も眠りませんか?」
「そうだね、そろそろ眠ろうか・・・明日が楽しみだ」
「何かおっしゃいましたか、ワルド様?」
「いや別に、なんでも無いよ。お休み、ルイズ」
台に置かれたランプの火を消し、二人は眠りについた。ルイズの寝顔を見て、ワルドは恐ろしげな笑みを浮かべた。
◇
翌朝、セラスとリップは鍾乳洞の中にいた。ニューカッスルから疎開する人達がイーグル号とマリー・ガラント号に
乗り込む所を警備するよう、ルイズに命令されたからだ。その際、ワルドと結婚式を行う事も伝えられた。
「何でこんな時に結婚なんですかね、ウェールズさんも攻防戦で忙しいのに・・・」
「面白かったわね、アタフタするルイズの姿♪」
セラスの質問を無視するように、リップは口元に手を当ててクスクスと笑う。
ワルドから結婚の旨を伝えられたルイズは、慌てまくっていた。『急に結婚なんて言われても困るわ、影武者でも立てて
逃げようかしら!』などと騒いでいたくらいだ。だが結局はワルドとウェールズに引っ張られる格好で断れなかった、
今頃は礼拝堂で結婚式が行われていることだろう。二隻の船が鍾乳洞を出航したのを見届けると、デルフが口を開く。
「避難民の警護が済んだら次は城門の監視だったわな、そろそろ行こうか相棒」
「そうですね、じゃあ行きましょうかリップさん」
「敵の攻撃は正午ごろ、か。何事も無ければ良いんだけど・・・」
左手の人差し指でアホ毛をピンと弾きながら、リップはセラスの後ろを歩いて行った。
`;:゙;`;・(゚ε゚)ブッ!!終わって無かったのかww真剣に支援だ!
>>426 ワルド『まだだ、まだ終わっちゃいない!』
フォックス…ダイ…
よかろう、ならば支援だ
◇
ウェールズは七色の羽が付いた帽子と明るい紫色のマントを身に着け、ワルドとルイズが現れるのを待っていた。
周りには誰もいない、戦闘の準備で出払っているからだ。始祖ブリミルの像を見上げていた時、扉が開き二人が姿を現す。
ルイズは新婦の冠を被り、下を向いている。ワルドは何時もの魔法衛士隊の服装で、威風堂々と仁王立ちしていた。
準備が整ったのを確認し、ウェールズが二人の真ん中に立った。
「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、
そして妻とすることを誓いますか?」
「誓います!」
重々しく頷き、ワルドは力強く宣言する。ウェールズは満足げに頷くと、新婦に顔を向ける。
「新婦、ラ・ヴァリエール三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール・・・・・・」
ゆっくりと、ウェールズが誓いの詔を読み上げる。ルイズは呆然としたような様子で突っ立ち、まるで無反応だ。
そんな新婦の様子を、ワルドは肯定の意思表示と受け取っていた。
そのため、ウェールズとワルドは気付いていなかった。新婦が下を向いて、顔を伏せていること。腰を屈めて、
姿勢を低くしていることに・・・。
◇
「城門の監視だけなら簡単だわな、でもアレを目の前にすると緊張しちまうわなぁ・・・」
セラスとリップが見ている物を見て、デルフは呟く。二人の視線の先、城門の上に設置された警備所からは、アルビオン
空軍本国艦隊旗艦レキシントン号がハッキリと見える。ドーンドーン!と轟音を響かせ、ニューカッスルの城に砲弾を放つ。
命中した箇所で火災が発生し、水メイジが集まって消火活動を行っている。
「砲撃で城壁に穴を開け侵入箇所を増やし、火災を発生させて水メイジの疲労を増大させる。典型的な嫌がらせね」
マスケット銃で肩を叩きながら、リップは何でも無さそうに言った。日光を遮る傘を差し、空を見上げている。
セラスはフードを眼深に被り、巨大戦艦を見つめた。無数の大砲が舷側から突き出ており、艦上にはメイジを乗せた
ドラゴンが離発着を繰り返している。
このウェールズ、サタニックエンペラーの締めでクラウザーさんが披露した
「下ネタの向こう側(仮)」でレコンキスタを撃退しそうだ。
燃えるニューカッスル城を背に風の魔法の応用で戦場全域に歌を流す化粧を
したウェールズ。撤退を始めるレコンキスタを見て
リップ「これが音楽の力・・・」
ルイズ「これよ!私が求めていた音楽(もの)は!ベースもっと気張りなさい!」
ワルド「あ、ああ・・・」
無言でドラムを打ち続けるセラス(昔の私は封印したのに・・・封印したのに・・・)
魔乳ばスレイヴ支援
「敵の攻撃は正午か・・・リップさん、正午まで後どのくらいですか?」
ベルトに引っかけた時計を確認し、リップは答える。
「あと1時間30分、その時が待ち遠しいわ」
「それまでに娘っ子には結婚を終わらせてもらって、急いでアルビオンから撤退だな」
そう?気な声でデルフが言う影で、リップは懐から本を取り出し読み始めた。それを見たセラスは赤面し、慌てだす。
「リップさん、その本ってまさか!?」
「静かにしなさいセラス、周りが見てるから」
城門を警戒しているメイジや兵士が、二人を見ている。ゴホンと咳をして、セラスは小さい声で尋ねた。
「それってラ・ロシェールの宿で読んでた本ですよね、なんでこんな時に読むんですか?」
リップは異常な程に嬉しそうな笑みを見せた。背中に氷の棒を差し込まれたかのような感覚に、セラスは後ずさる。
本を開いた状態で口元を隠し、リップは小さく笑った。
「別に、ただ暇だから。あとは貴女との関係を、もっと深めたいな〜と思ったからよ♪」
この時、セラスは思った。自分の操が危機に瀕していると!
その時、背後の扉が勢いよく開いた。二人が振り向くと、そこにはルイズの姿が有った。
「二人とも礼拝堂に行くわよ、急ぎなさい!」
◇
「新婦、どうかしたのかね?」
「ルイズ?」
二人が怪訝な顔をして、ルイズを見る。ルイズは俯いたまま、首を左右に振った。
「ワルド、私は・・・貴方とは結婚できません」
突然の急展開に、ワルドはスタープラチナの如く全身を硬直させた。ウェールズは首を傾げながら、ルイズに尋ねる。
「新婦は、この結婚を望まぬのか? 本当に良いのかね・・・後になってドッキリだったなんてオチでは困るんだが」
「いいえ、これは真の言葉です。私は、この結婚を望みません」
ワルドの顔色が、みるみる真赤になっていく。それに気付かず、ウェールズは空気が読めない発言をしてしまった。
「子爵、申し訳ないが式は中止だ。花嫁が望まぬ式を、これ以上続ける事は出来ないのでね・・・」
「ちょ、ちょっと待って下さい殿下・・・なあルイズ、ただ緊張してるだけなんだろ? 何も急ぐ事は無い、気分でも
悪いのなら日を改めるよ!」
必死に説得を試しみようとするが、ルイズは下を向いたままワルドを見ようとはしない。
「何故だルイズ、なぜ僕と結婚してくれないんだ!?」
「私は、貴方を愛していない。そしてまた、貴方は私を愛していない・・・それが理由よ」
その言葉にワルドはショックを受けたのか、片膝を屈した。ワルドの肩に、ウェールズが手をかける。
「子爵、君はフラれたのだ。ここは潔く、諦めたまえ・・・」
そう言うと、ワルドは立ち上がった。天を仰ぎ、溜息をつく。
「分かったよルイズ、君との結婚は諦める。殿下、この旅は貴重な時間を取らせてしまって申し訳ありません」
ウェールズの方を向いて、恭しく頭を下げた。苦い顔をしながらも、ウェールズは慰めの言葉を探し出す。
「花嫁の都合が有るのだ、仕方がないよ」
「はい・・・ですので、目的の一つは諦める事にします」
「目的? それはどう言うことだね子爵?」
「それはですね、殿下・・・こう言う事ですよ!」
一瞬で杖を引き抜き、一瞬で詠唱を完成させる。レイピアを青白く光らせ、まるでフェンシングのように
ウェールズの心臓を貫いた。
「貴様・・・レコン・キスタ・・・・・・」
その言葉を最後に、ウェールズは倒れた。傷口からは、多量の出血をおこしている。
「貴方、レコン・キスタだったのね・・・どうしてトリステインの貴族である貴方が?」
「なに、月日な数奇な運命の巡り合わせだよ。では君にも死んでもらうよ、ルイズ」
楽しそうに、ワルドは杖を構えた。ルイズは、ゆっくりと顔を上げる。その瞬間、ワルドは構えを止めた。
ギャフン支援
ズルして無敵モード支援
何があったんだっワルドォォォォ
「君は・・・ルイズじゃ無い!」
一瞬で目を吊り上げ、表情を強張らせる。後ろに飛び去り、ルイズだと思っていた相手から距離をとる。
「その顔、それに背の高さ・・・君は誰だ、いつルイズとすり替わった!」
花嫁は冠を掴み取り、天高く放り投げた。長い桃色の髪が揺れ、美しい声が礼拝堂に響き渡る。
「私の名はシェリル・ノーム、マクロス・ギャラクシー船団出身のTOPアイドルよ!」
◇
「どうしたんですかマスター、礼拝堂で結婚式してたんじゃなかったんですか!?」
ルイズの後を追いながら、セラスとリップは礼拝堂へと伸びる廊下を走っていた。セラスの問いに、ルイズは前を
向いたまま答える。
「私が朝に言ってたでしょ、『結婚なんて困る、影武者でも立てて逃げようかしら』って。だから銀河の妖精に影武者を
頼んで、礼拝堂を隅で覗いてたのよ。そしたらワルドが殿下を殺しちゃうし、レコン・キスタだって分かったし・・・
だから貴女達を呼んだって訳!」
「それと影武者の救助もね」
リップの付け足しの言葉に、ルイズは振り返らず走り続ける。そして礼拝堂に辿り着こうとした時、爆発音が響いた。
セラスが窓から外を見ると、礼拝堂の壁に穴が開いているのが見えた。その後、その穴から戦闘機が飛び去って行く。
「マスター、あれってもしかして影武者さんのですか?」
同じ窓から外を覗いたルイズは、空を仰ぎ見る。別の窓からは、リップも空を見上げた。
「あれはVF−25だわ。シェリルは逃げたみたいね、急いで突入するわよ!」
ルイズ達が礼拝堂に踏み込んだ時、ワルドはグリフォンに乗って逃げ出そうとしている所だった。左腕の肘から先を
無くし、右手で傷口を抑えている。床にはウェールズが仰向けに倒れ、胸を赤く染めていた。
カオス過ぎる
このルイズの交友関係が非常に気になる。
字楽式黒魔術〜支援
これは・・・まさか後書きか?後書きモードなのか!?
「ワルドさん・・・奴らに、奴らに一体何を!?」
セラスが叫び、リップはマスケット銃を構える。ワルドはグリフォンに跨ったまま、ルイズ達を見下ろす。
「奴らに何を・・・だと? 捕えられ仲間にさせられ 洗脳させられて哀れにも婚約者に杖を向けられさせて
いるのですよ・・・とでも答えれば、満足かね? ミス・セラス」
残忍な笑みを浮かべながら、ワルドはルイズを睨みつける。眼光で殺すかのような勢いに、ルイズは後ずさった。
「私は皇帝に命を受けここに立っている、私は私として立っている。ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドとして、
ここに立っている!」
杖の先が、じょじょに青白く光きだす。危険を感じたルイズは、右手を上げる。
「私は皇帝の命を以って、この場所で殿下を抹殺したのだよ・・・ルイズ」
「セラス、リップ、撃ちなさい!」ルイズが右手を振り下ろす
「だが遅い!」杖をルイズ達に向けた
二人が引き金を引く前に、ワルドは杖を振った。ルイズ達の足元の床が爆発し、煙に撒かれ視界が奪われる。
その隙にワルドは右手で手綱を握り、翼を広げたグリフォンで壁に開いた穴から逃げ出した。
「さらばだルイズ、それに使い魔君。近い内に、また会えることを願っているよ!」
そう捨て台詞を残し、ワルドは姿を消した。煙が晴れた礼拝堂には、三人の息遣いだけが残る。
「逃げられたわね、と言う事は帰還するしか無いけど・・・どうする?」
さっきまで敵と睨み合っていたとは思えない口調で、リップが言った。ルイズは腕を組んで、セラスに視線を向ける。
「セラス、貴女たしか左腕を翼に変化させられるのよね。私とリップを背負って、滑空とか出来る?」
「人を乗せて飛んだ事が無いんで、分らないですけど・・・たぶん墜落しますね」
「吸血鬼の相棒でも、何でも出来るって訳じゃないんだな」
そうデルフが呟いた時、ルイズのすぐ横の床が盛り上がった。ビビった三人は、思わず後ずさる。
クリーク!クリーク!クリーク!支援
盛り上がったってグールかも支援
トリステインBINGO団
コヨーテ支援
「な、なに!? まさか、また敵?」
ルイズがビビる中、セラスは床に耳を当てる。そこからは『モグモグ・・・モグモグ』と、生物の鳴き声が聞こえてくる。
「この声って・・・もしかして」
その瞬間に床が割れ、UMAが姿を現した。その生物は尻餅をついたルイズを見つけると、右手に鼻を近付け嬉しそうに
モグモグと声をあげる。
「このモグラって・・・確かギーシュって人の使いm『こらヴェルダンテ、お前はどこまで穴を掘る気・・・ってアレ?』
「何だ君達、こんな所にいたのかい」
「ギーシュじゃないの! なんでアンタがここにいるの!?」
ルイズの怒鳴り声にギーシュが返答しようとして、横からキュルケが顔を出した。
「タバサのシルフィードよ!」
「キュルケ、アンタまでいたの!?」
「そりゃ一緒にいるわよ・・・それで理由だけど、フーケとの戦いを終えた後に急いでアルビオンに飛んで来たのよ。
それで貴女達をどうやって探そうか考えてる時に、ヴェルダンテが穴を掘りだしたの。それで後を追って、
感動の再会って訳」
「ヴェルダンテは宝石を探す事に関しては一人前だからね、しかも姫様が持っていた一級品ときた。君達と再び
出会えたのも、僕の可愛い使い魔のお陰なのさ。所でヴェルダンテ、どばどばミミズは沢山食べておいたかい?」
モグラに頬擦りするギーシュの姿を、ルイズ達とキュルケは苦笑いしながら見ていた。まさか巨大モグラによって
合流出来るとは思っていなかったのだから、無理も無い。
「相棒、敵がすぐそこまで来てるぜ。早く逃げた方が良いじゃないか?」
「に、逃げるって? なんで?」
「相棒の相棒さんよ、いま何時だい?」
デルフの言葉に、リップは時計を見る。長針と短針は、すでに12を超えていた。
「正午を超えてるわね、確かに逃げた方が良いわ」
「じゃあ撤収するわよ二人とも、落し物や忘れ物は無い?」
リップに抱きか上げられた状態で、ルイズは二人に確認する。二人は装備を確認し、同時に頷く。
そして穴に入ろうとした時、セラスは足を止めた。振り返り、ウェールズの元へ近付く。
エンジェル・ダスト支援
作者はシェリル派支援
「何してるのセラス、早く逃げるわよ!」
「ちょっと待って下さい、すぐ戻ります!」
傍に座り、状態を見る。胸は上下しておらず、瞳孔は開ききっている。死亡を判断すると、亡骸を抱きかかえた。
その場を移動し、始祖ブリミルの像の下に置く。近くの窓からカーテンを外し、上から被せた。
外からは戦艦が砲撃したり壁が崩れたり音、魔法を飛ばしたり泣き叫んだりする声などが、混ざり合って聞こえてくる。
城が制圧されるのは、もう目の前にまで迫っている。
「王子様、私達は城を離れます。貴方のことは、決して忘れません」
両手を合わせ、深く一礼する。そして薬指に嵌めた風のルビーを抜き取り、ポケットに入れた。
「待っていて下さい・・・必ず、敵は取りますから」
そう言って、セラスはルイズ達の元へ戻った。そして穴に飛び込んだ瞬間、貴族派のメイジや傭兵達が扉を打ち破った。
今日はここまで、だいぶカオスになってきた。これからも、かなりカオスになっていくよw
これからワルドは、土ノコを捕まえたり車椅子のタイヤを狙撃したりするかもしれません。
乙です いいぞもっとやりなさいww
スナゼロさんGJ&お疲れ様っした
カオス上等電脳研っよ
ゼロ魔クロス最駄目ワルドに期待しまくりですwww
良い意味でヒドいなw
タバサを視姦しながら
食事に誘うにはオルレアンの許可がいるかな・・・
460 :
マロン名無しさん:2008/08/04(月) 23:12:44 ID:WvYGSgoF
ワルドの活躍に期待!
_ ∩ ワルド!
( ゚∀゚)彡 ワルド!
⊂彡 駄目ワルド!
影武者が誰か直前までまじめに考えていた俺に謝れw
なにはともあれ乙です
2115より7話目投下します
支援
四円
ミスロングビル、真の名を土くれのフーケと呼ぶ、は悩んでいた。あの破壊の杖の使い方が分からない。
学院の連中を誘き寄せようかとも思ったが、あんな化け物がいるのでは下手に動けない。というか動きたくない。
そもそもあの吸血鬼共とは酒場で知り合った。明確なギブアンドテイクの元に手を組んだだけだ。
しかし、その強さは明らかに異常ということは分かった。それをあんなにもた易く倒す吸血鬼と神父。
どうもオスマンの話だと奴らは吸血鬼を狩るものらしい。
その話を聞いた時、奴らの話に乗り吸血鬼と成らないでよかったと思ったものだ。
そしてこれからの身の振り方を考える。はっきり言ってこの秘書の仕事の収入は悪くない。
ただ、盗賊の仕事ほどでは無い。
考え事をしていると何かにぶつかった。それにフーケは悶絶する。
赤いコート、帽子、サングラス、そして眼。吸血鬼を狩る吸血鬼。アーカード。
フーケは平静を装ったが内心は気が気で無い。
自分の正体に気づいているのでは?
やつは笑って自分を見ている。そして何事も無いように去って行った。
彼がどこまで知っているのか分からなかったが、裏の道はもうやめようと思った。
あんなのがうろつき始めた世界に居てはもはやいけない。
自分は死ぬ訳にはいかないのだ。
たった一人の家族の為に。
「……何故あんなことを?」
サイトはいきなり問われ焦った。おそらく竜のことを言っているのだろう。
「うーん、まあ可哀そうだったからかな?」
「……それだけ?」
「?それ以外になんかある?」
タバサは続けて問う。
「村人達に頭を下げたのは?」
「そりゃあ、頼みごとがあるからな。それに無駄な諍いは謝っても避けたほうがいいだろ。」
セラスはその会話を聞き、アンデルセンに問う。
「あの、もしかしてサイト君って、………凄くいい人じゃないですか?」
「いや、凄くいいって程じゃ。」
「だって無駄な諍いを避けるって……ねえ?」
「え、何で?普通の人はそうでしょ?」
その言葉にセラスの顔色が悪くなる。アンデルセンも固まる。
「サイトさんって天使?それとももしかして私たちがおかしい?」
「うろたえるな、キリスト教徒はうろたえない。」
明らかにうろたえている二人にサイトが聞く。
「ど、どうしたんですか?」
「い、いやすいません。そういう思考の人が全くいない世界から来たので…。」
「あの、同じ世界ですけど…。」
会話をしながら(ヨーロッパ怖ぇ…)と思うサイトだった。
置いてきぼりをくらったベルナドットはボケっと竜の側に座っている。周りには村人のほとんどが集まっていた。
「居辛えなあ。」
不意にその中から一人の少女が飛び出した。その手には大きな魚が持たれている。村人達の制止も聞かず少女は竜に近寄る。
差し出されたそれを食べると、竜は嬉しそうにお礼を言った。その平和な様子を見て、村人達にざわめきが起こる。
「全くどっちが化け物か分からんわい。」
先程の老婆が現れ、辺りを見回して言う。
「確かにあんなことがあって不安になるのはそうじゃ。だがそれで必要以上に怯えてどうする。
ましてそんなことで暴力を振るっておったらわしらが化け物になってまうわい。」
竜は不思議そうにベルナドットを見る。彼は笑ってその頭を撫でた。
「これでいいでしょう。」
アンデルセンの回復法術は竜の怪我を治した。竜は喜んで彼の顔を舐める。
その穏やかな笑顔にセラスとベルナドットは顔を見合わせる。
(演技ですかね?)(擬態だな。)
彼らは神父が普段は孤児院で働き、子ども達に好かれていたなどということは想像だにしなかった。
「どうもありがとうなのね。」
「これでどこでもいけるな。」
しかし、韻竜は首を振ってサイトに言う。
「お願い、一緒に連れてって欲しいのね。」
その言葉にサイトは戸惑う。犬猫とは訳が違うのだから。しかし、タバサが、
「学院なら大丈夫。それに居たいならこの森にいてもいいと思う。」
と言い、村人達の方を見やる。
「恩人達の頼みなら仕方ねえや。」
「割と可愛いじゃない。」
そしてタバサは、韻竜は貴重ゆえに貴族に知られるとアカデミーが危ないことをするから言いふらさないで欲しいとも告げた。
この頼みも村人達は受け容れてくれた。
「きゅいきゅい、しっかり掴まってるのね。お兄さま、お姉さま、神父さま。」
澄み切った夕焼けの中、四人をのせ、青い竜は飛ぶ。
「ちょっと竜!何で私は入ってないのよ!」
「あなた何もしてないじゃない。それに私にはイルククゥっていう立派な名前があるのね。」
イルククゥはえへんと胸を張る。
「イルククゥって?」
「私たちの言葉でそよ風って意味ですわ。」
「人間たちの間では、それでは目立つ。」
タバサはしばし黙考し、口を開く。
「シルフィード。風の妖精。あなたの名前はそれ。」
「シルフィード!きゅいきゅい!」
「よろしくな!シルフィード!」
サイトの言葉に嬉しそうに鳴くシルフィード、歌うように今つけられた名前を復唱する。
「わかった?おチビ?今度から竜じゃなくてシルフィードって呼ぶのね。」
「誰がどチビのへちゃむくれだってーーー!」
「そ、そこまでは言ってないのね。」
笑いながらサイトはふとわいた疑問を口にする。
「なあ、何であんな所で怪我してたんだ?」
サイトの問にシルフィードは悲しげに話し始めた。
風韻竜はもともと人のほとんど入れない危険な森の奥地に居た。今ではシルフィードとその両親しかのこっていないが。
しかしある日、黒髪で長髪の女がやってきた。その女は、長い銃を使ってシルフィードと両親を瞬く間に撃ち落とした。
そしてシルフィードは命からがら逃げ出したのだ。
「凄かったのね、あの銃。風の障壁でも止まらないし、おまけに弾がギュインギュイン動いたのね。」
「そんな銃あるの?本当に。」
アンデルセンには心当たりがある。あの吸血鬼の、あの狂った大隊の中尉、魔弾の射手。
そして、頻発する吸血鬼絡みの事件。
(まっすぐ帰るという訳にはいくまい。)
「だから…シルフィード独りぼっちなのね。」
「大丈夫だって。」
サイトは沈むシルフィードを撫でてあげる。
「俺にタバサに神父、他にも学院に行けば仲間がいるから、な?」
振り向きながらサイトはタバサに同意を求める。タバサは少し下を見て、頷いた。
シルフィードがまた、嬉しそうに鳴いた。
「黙ってて御免。」
図書室にてタバサがアンデルセンに話す。
「構いません。」
正直言ってむず痒い。このような年端もいかない少女に気を遣わせるとは。
それより、アンデルセンは懸念する。
「私の回復法術では母上の病を治す可能性はほとんどありませんよ。」
病気も気休め程度のものである。しかしタバサは首を振る。
「構わない。」
アンデルセンは分かっていた。彼女が欲しいのは希望だと。
母親が治る。ほんのわずかな可能性。それだけが彼女を繋いでいる。
だから魔法以外の回復を行う自分はその希望なのだ。
「ねえ。」
タバサが聞く。
「あなたやサイトの世界なら、かあさまの心を治せる?」
普通に考えたら、難しい。だが地球の科学ならあるいはエルフの魔法を解決できるかもしれない。
無論金は馬鹿のようにかかるが。
「そう。」
無表情で彼女は去って行った。
その後、気付くとアンデルセンはただ祈っていた。
(異教徒のために祈るか……)
彼は自身の変化に驚いたが、別段悪い気はしなかった。
アンデルセンが普通の神父してる・・・支援
サイトはアンデルセンに頼みこみ、稽古をつけてもらうことにした。
用いるのは銃剣二本、対するアンデルセンは銃剣一本。
しかしサイトの攻撃は全くといっていいほど当たらない。
「何故だかわかるか?」
考え込むも、いっぱいありすぎて分からない。アンデルセンの答えはシンプルだった。
「お前に力がないからだ。」
「それは分かってます。」
「速度を出すにも技を使うにも銃剣一本まともに持てないお前では無理だ。
だからまずは力だ。力が無ければ拳銃一つまともに使えん。」
アンデルセンは続ける。
「そして力をつけるより前に、戦わなければならない状況が来たなら。」
「なら?」
「前進あるのみだな。」
その言葉の意味はよく分からなかった。
「はあ、全く人使いが荒いですね。」
トリステインの城下町、黒髪の女性は裏町の一室で寛いていた。眼下にはこの部屋の住人だったものがみえる。
「泥棒の次は竜退治、そんで次は待機ですか…。あ、それグールにならない様処理して下さい。地下水さん。」
言われた男は手に持ったナイフを振り呪文を唱える。死体は燃えだし、しばらくすると今度は水で消火された。
「ったく、お前も大概だぜ…。」
地下水の今度の体は水のトライアングルメイジの吸血鬼だ。
吸血鬼になった代わりにナイフに操られる哀れな者。
ふと、部屋の外から何者かが入って来る。二人だ。
一人は黒いローブを身に纏った女。表情は窺い知れない。
もう一人は分厚いコートに身を包んだ長身の男。襟を立てているので口元は読めない。
ただ、その眼光は驚くほど鋭く、深い。
リップバーンは目を細め挨拶する。
「お久しぶりです。大尉。」
そして一月後
どこだろうここは?
四角い城の群れの中で何かと対峙している。見たことも無い景色だ。そこにおぞましい量の兵士達がいる。
そしてそれらの奥にいる男、知っている。キュルケの使い魔だ。あの化け物が笑っている。
「どうする?どうするんだ?化け物はここにいるぞ。キリスト教徒、倒すんだろ?勝機はいくらだ?
千に一つか万に一つか
億か兆かそれとも京か。」
私は答える。
「それがたとえ那由他の彼方でも
俺には十分に過ぎる。」
その声は私のものではない。
だがそれは私のよく知った声だった。
「ちょっとルイズ何ぼけっとしてんのよ。」
キュルケの言葉にまどろみから覚める。女王陛下の行幸の為学院の生徒達は押し並んで女王を出迎えている。しかしルイズは呆けていた。
今朝見た夢は何だろう。おそらく私の使い魔の記憶ではないか。
そういえばアンデルセンとアーカードの因縁はよくわかってない。
そう思い隣にいる使い魔を見るが、彼はいつもの調子の笑顔で行列を見ていた。
ふとルイズはグリフォンに跨った貴族を発見し、顔を赤らめる。
「知り合い?」
後ろからタバサに話しかけられ、軽くビビるルイズ。
「あ、あんたには関係ないわよ。」
次に思い浮かんだのは、自分の使い魔を尊敬するあの少年だった。
有田しえんでありますぅ〜
ついにミレニアム大隊が動き出した!
支援!(ウンターシュテュッツング!)
支援!(ウンターシュテュッツング!)
支援!(ウンターシュテュッツング!)
「まずは体を鍛えろ。」
そうアンデルセンに言われたサイトはとりあえず中庭でトレーニングを始めた。銃剣を使って素振りしたり走り込んだりだ。
一月ほどのトレーニングの甲斐あって、それなりの運動能力は身につけた。平ぺったかった体に少なからず筋肉がついてきた。
そして今日も中庭で銃剣を振るい、汗を流すサイト。一息つけて持ってきたコップに卵と牛乳を入れ、かき混ぜ、飲み干す。
「うんめえー」
その後、ストレッチをする彼の眼に人影が映った。その人はこそこそと辺りを見回しながら女子寮にはいろうとする。
気になったサイトはトレーニングの為の上半身裸姿のまま、十三課のコートを手にその人に近づく。
「どうしたんですか?」
振り向き様にその人は呪文を唱える。杖の先から突如出現した濁流は、
彼に悲鳴を上げさせることもなく押し流した。
「ご、ごめんなさい。」
その可憐な声はもはやサイトの耳に届いていなかった。
支援!支援!支援!
有田しえんでありますぅ〜
だくりゅう こうかは ばつぐんだ
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。
次回からはアルビオン編です。
規制くらってて終了宣言おそくなってすいませんでした
作者様お疲れ様でした。そしてグッジョブ!
特に
>>467の固まったアンデルセン神父は見物でしたw
なぜだか一般的で当たり前のはずの事が
とても素晴らしい事のように思えてくる
アンデルセン、アーカード、インテグラ達を見ていると確かにサイトが天使に見える。
天使? 天使だと?
その通り 我らは死の天使の代行人である!!
これより宗教裁判の判決を行う!!
判決は 死刑!! 死刑だ!! 死刑死刑死刑死刑死刑死刑!!
マクスウェルはある意味、一番人間らしいキャラだった。
>>486 なんかあれだ
ふわふわの羽やキラキラした輪っかよりもくすんで赤い染みの見えるボロボロの羽とところどころ欠けて赤く染まった輪っかを頭に浮かべる十三課ご一行が見える
>>488 ハインケルが天使の格好して孤児院にやってくる絵が浮かんじまったw
すんげーダルそうなハインケルが浮かんだ
やっぱアーカードは凄いな、と漫画を読みつつつくづく思う
やっぱヒラコーは遅筆だな、と外伝を読みつつつくづく思う
・・・本編終了後本誌で描くよね?
外伝連載誌が休刊になったあとにヘルシング読み始めた俺にとっては
外伝書き上げて単行本出してもらわないと困る
外伝のロリ旦那やショルター、少佐にドクに大尉にリップの魅力を知らないわけか。
あと棺桶と若アーサー。
ああ読みたい<外伝
8話目2130より投下開始
狂信者殿!!
支援はどうしましょう?
「何でアーカードと戦うの?」
寝そべりながらルイズは自分の使い魔に聞く。彼は何事かと少女を見る、その瞳が真剣さと憂いを宿していたため、アンデルセンは答えた。
「私がイスカリオテであり、奴が吸血鬼であるからです。」
ルイズは続けて問う。
「それだけの理由であんな化け物と闘うの?」
アンデルセンは黙って頷いた。ルイズは、今度はあの少年を思い出す。
「サイトもあなたの様になるの?」
彼は考えた。あの弱いただの子どもを。優しさと勇気しかその身に持たない少年を。
「彼は私とは違う。彼は自分の意思を神と同等に信仰しています。自分の心に沿っています。
私は神しか信じていません。それがイスカリオテですから。」
そうなのだ。あの少年が信仰しているのは己でしかないのだ。
ふとあのプロテスタントの、怨敵の主たるあの女を思い出す。
絶望の中であっても心の中に闘志と、人間としての矜持を持ったあの宿敵。
あいつが吸血鬼に囲まれた時、あの女と同じ目をしていた。
あいつはあいつの心に反したモノに立ち向かうだろう。
たとえ吸血鬼でも軍勢でも。
実際にあいつはそうやって幾度も死に掛けている。
「あなた馬鹿よ、それにあいつも。」
涙ぐみながらのその少女の言葉を否定できなかった。
ふいにドアがノックされた。
>>499今回長いのでありがたいです。
「大丈夫ですかサイトさん!どうしたんですか!?」
シエスタが中庭にやってきた時、サイトが水浸しの半裸姿のまま中庭で気絶していた。サイトは頭を振って起き上がる。
「シ、シエスタ…大変だ!侵入者だ!」
シエスタの顔色が変わる。ここトリステイン魔法学院には貴族の子女が多数在籍している。メイジの巣窟ゆえに危険は高いが、
それでも誘拐するならば相応の旨みはある。さらに辺りの惨状を見るに侵入者のメイジは水のトライアングルはあるだろう。
「シエスタはオスマンさんに!俺はアンデルセン神父を呼ぶ!」
「そうですか、アルビオンに…。」
深夜の来訪者、アンリエッタ王女の依頼は、かいつまんで言うと内戦状態のアルビオンへ行き彼女の恋文を奪還することだった。
はっきり言ってブリミル教の連中が何人死のうと何兆人しのうとこのアンデルセン神父にとってはどうでもいいことだ。
たかだかラブレター如きで国家間同盟がどうこうなることも彼には分からないところであるが。
そして内戦状態の国に親友たる少女を送り込む、この王女の頭の中身はそれ以上に理解不能だった。
そんなことをするのは親友と装いながらその実利用し尽そうとする悪党か、何も分かっていない愚か者だろう。
彼女はおそらく後者であり、そんなのが王女とはいかがなものだろう。
「すいません、このようなことを貴女に頼むなど、しかし私が頼れるのはあのおぞましい吸血鬼を打ち倒した貴女しかいないのです。」
その言葉に合点がいった。オスマン老だろう。おそらくこの女王に懇願された彼は自分のことを言ったのだ。
自分達が吸血鬼を狩ったと知っているのは彼とコルベール位のものだ。それならせめてルイズを含めてではなく自分のことだけ言えばいいのに。
自分だけならともかく、敵だらけの所へ行き、この少女の命も無事に事を終えるのは困難を極める。
「わかりました、このルイズ。一命に替えてもその任務果たしましょう。」
アンデルセンは溜息をついた。もしこの任務の危険性を解って受けているのなら自分やサイトと同じく大馬鹿野郎だろう。
しかし、この少女はおそらく分かっていまい。
「おお、ありがとうルイズ!あなたは私の大切なお友達ですわ。」
じゃれあう二人の少女を神父は内心冷やかに見つめていた。
支援
支援
シエーン カムバック!!
くしゃみをしながらサイトはルイズの部屋のある階まで来た。ルイズの部屋の前に一人の男が座っているのを見つけた。
「何してるんだ?」
こっちを見た男の顔に見覚えがある。確かギーシュとかいうやつだ。二股をかけては女の子に引っ叩かれている彼は色んな意味で有名人なのだ。
その彼は口に指を当てながらサイトの口を覆った。
「今女王陛下がおわすのだ。みだりに騒ぐな。」
その言葉にサイトははっとする。
「それだ、メイジの侵入者がいる。俺も気絶させられた。」
ギーシュはサイトを見る。体中がぐしょぐしょに濡れている。
「水か。まずいぞ!水メイジは人の精神状態を操れる!女王陛下をお守りせねば!」
そう叫びギーシュは扉にアンロックをかけ突撃する。
「女王陛下、お逃げ下さい!」
しかし二人の少女が見たのはギーシュでなくもうひとりの男だった。
サイトはトレーニング中の上半身裸のままで部屋に入って来たのだ。
男性に対する免疫のほとんどない彼女達はとっさに魔法をかけた。
爆発と濁流にサイトはまたも流された。
ギーシュをも巻き添えにして。
濁流は窓ガラスを突き破り、サイトは地面に激突した。
そして自分目がけて降って来るギーシュを見て(これは死んだな)と思った。
結局女子寮は大騒ぎになり、彼らは学院長室に集まった。
「あ、そう。その密命とやらのためにね。ブエックショーイ!!」
シエスタがタオルでサイトの体を拭く。アンリエッタは顔を真赤にして俯いた。ルイズはそっぽを向いて言う。
「そりゃあんたの汚い体見せられたらだれだってそうするわよ。」
「嘘だ!この人振り向きざまに攻撃してきたぞ!あとそうだとしてもお前はもっと悪びれろ。」
アンリエッタは謝罪するが、ルイズはサイトの方を見ようともしない。なおもかみつく彼をアンデルセンがたしなめる。
「こらこら、左の頬を打たれたら?」
「…右の頬を向けよ、ですか?」
「そうです。まあ異教徒と化け物相手だったら別にいいですけどね。」
「じゃあいいじゃないですか。」
とんでもないことを言い出したアンデルセンを遮ってルイズが話を戻す。
「とにかく。話を聞かれたからには協力して貰うわよ。」
「おお、姫殿下、このギーシュ・ド・グラモン!彼らと共に殿下の為に身命を捧げる所存!」
その言葉に今度はサイトとシエスタが青くなる。
「ちょっと待て!俺は嫌だぞ!そもそもそっちが勝手に話すすめたんだろ?!」
「私も…ただの平民ですし。」
「そうでもないじゃろ。」
オスマンが口を挟む。
「サイト君はほれ、自己再生能力を持ち、風竜を手懐けておるではないか。」
アンリエッタがサイトを羨望の目でみる。風竜を手懐けるということは竜騎士並の能力を持つということだ。
さらに見ればルイズの爆破でうけた傷がもう塞がっているではないか。
「そしてシエスタ君の曽祖父は、メイジ殺しと呼ばれた剣士じゃろう。」
その言葉に一同ははっとする。メイジ殺し、戦闘能力においてメイジ以上の能力をもつ戦士の総称。
「あやつはよくそなたの話をしておったよ。飲み込みが早いとな。」
サイトは思い出す。吸血鬼騒動の時のシエスタの動きを。確かに凄いものがあったように思う。
件のシエスタは部屋にいる一同を順番に見ていき、最後にサイトを見て言った。
「サイトさんが行くなら。」
「俺?!」
戦力が充実しているな支援
サイトは悩んだ。そりゃ危険だろう。それにシエスタまで巻き込んでしまう。
しかし、仮にも一国の存続がかかった事件であり、おまけにその結果は自分にも降り注ぐ。
さらに王女様直々の頼みともなれば気分もいい。藁にもすがっているのだこの姫様は。
そこでアンデルセン神父を見る。彼がいるなら大丈夫という考えと彼の足手纏いになるという考えが同居する。
「足手纏いじゃないですか?」
その問に神父はいつもと違うニタリとした笑みで言う。
「お前を助けねばならないならば、そうだな。」
その言葉にサイトはハッとする。確かに自分は彼よりも弱いだろう。
だがそれは大した問題じゃ無い。
彼は見捨てる。自分を。
であるならばあとは自分の気位の問題なのだ。
彼に助けを求めるか。否か。
自分で責任をとるか、とらないか。
震えが起こる。
上等じゃないか。
アンデルセンの言葉はサイトの自尊心を大いに刺激した。
「えーと、とりあえず報酬は?」
ルイズとギーシュは不快そうな顔をするが知ったことでは無い。
曰くアンリエッタのポケットマネーだが、とりあえず平均的平民の一年分の年収はもらえるらしい。
流石にタダで人の為に戦うのは嫌だった。おまけにこっちは仕事を休んで行くのだから。
「もう一つ。これはオスマンさんに頼みたいんですけど。」
アンデルセンはそんなサイトを笑って見ていた。
アンデルセンが普通っぽい
学院の宝物庫。そこには予想通りマジックアイテムの他に明らかに異質なものがあった。
手榴弾、ピストル、ショットガン。ショットガンは弾が無いのでつかえないが。ピストルは弾がケースであったので、
ありがたく使わして頂く。スナイパーライフルなんてものもあったが、さすがにそんな技術は無い。
「シエスタはついて来なくていいよ。」
俺はシエスタに言った。
「私分かりましたよ?神父様の言いたいこと。自分の身は自分でってことでしょ。」
次はシエスタがサイトに問う。
「どうして行くんですか?」
俺は思い出す。あのパラディンの戦いを。あの、この世のものでは無い戦いを。
「憧れだよ…。」
全く以て下らない理由だ。
まあ、それで充分だ。
タバサの部屋の前、壁にもたれ毛布だけで寝るベルナドット。百戦錬磨の傭兵隊長はこちらの方が落ち着くらしい。
彼を揺する。ベルナドットは起きて目の前の少年を見る。
「ん?どうしたサイト?」
サイトはオートマチックを彼に見せる。
「ちょっと一時間程でこいつの使い方教えて欲しいんです。」
「マチルダ・オブ・サウスコーダ。」
ロングビルの部屋にその男はやって来た。金色の髭をした仮面の男。
「我々に協力してくれ。」
ロングビルは恍けて言う。
「私はロングビルと」
「誤魔化すな。土くれのフーケ。無駄な話は嫌いだ。」
フーケは背中から杖を取り出す。そこまで知られていたら生かしてはおけない。
杖を振ろうとした。しかしそれより早く懐から男は何かをつきつけた。それは便箋だった。
フーケはそれを開け、しばらくして驚愕の表情を浮かべる。
そして敵意と殺意を持った、泣き出しそうな顔で仮面の男を睨んだ。
「……協力する。」
仮面の男はフーケに聞いた。
「何が書いてあった?私はしらんのだが。」
「…あんたたちの組織の名はなんて言うんだい?」
一拍置いて答える。
「レコン・キスタ」
「そうかい?」
フーケは仮面の男を見ない。
「……地獄へ落ちな。」
胸革命人質に取られたな。
死円 受け取ります
学院の門の前で皆が集まる。アンデルセン、ギーシュ、ルイズ、シエスタが待っている。
「サイトさん遅いです。」
「時間は守ったぜ。」
皆動きやすく目立たない格好をしている。サイトはいつもの十三課のコートだ。
「きゃあ、何すんのよ。」
見るとルイズが何やらデカイモグラに襲われている。服がはだけるルイズを、ギーシュとサイトはしっかりと凝視する。
ふいにモグラが吹っ飛んだ、何事かと見ると。幻獣に跨った一人の男が現れた。
ギーシュが攻撃しようとするも、風の魔法であっさり跳ね除けられる。
「待て!僕は味方だ、魔法衛士グリフォン隊隊長ワルド子爵。」
そいつは辺りを見回して言う。
「いつも婚約者がお世話になっている。」
その言葉に一同はポカンとするが、サイトはにっこりと肩を叩き、ワルドにドンマイと声をかけた。
「はあ、行っちゃったな。馬で追いかけるのかしんどいな。」
ワルドはルイズを乗せてグリフォンで駆けて行く。ぼやくギーシュを尻目にサイトは指笛を吹く。シルフィードがご機嫌でやって来た。
「きゅいきゅい」
「こらくすぐったいよ。」
ギーシュがあんぐりとした顔でこちらを見ている。
「はは、何だ。この高貴な僕を騎乗させる権利をその竜に与えても。」
「さあ、行こうか。」
「待ってくれ!」
ギーシュは頭を下げる。なかなか好感が持てる態度である。
「シルフィードに頼めよ。」
半信半疑といった顔でシルフィードに頭を下げると、彼女は頷いた。
「いいってさ。」
「随分賢いんだな。素晴らしい」
そう言い頭を撫でるギーシュ、乾いた笑いがつい出てきた。
四円だ
「タバサ!大変よ!」
タバサの部屋にキュルケがやって来る。タバサはナイトキャップをかぶったまま親友の話を聞く。
「今朝方ダーリンとルイズがどっか行っちゃったわ。あなたの使い魔で追って頂戴。」
「ダーリン?」
タバサは首を傾げる。キュルケのダーリンでは示す人数が多すぎる。
「決まってるじゃない。あの勇敢なるアンデルセン神父よ!」
タバサは溜息を付き、今起床したセラスは異質なものを見る目で彼女を見る。
「だって格好いいじゃない?私のアーカードと素手で殴り合ったのよ?渋いし優しげなオジサマよねー。」
セラスは(うわぁ…この人見る目無いな…)と心の中で呟いた。
タバサはアンデルセンにキュルケがアプローチをかけた場合をシミュレーションする。一秒で結果が出た。
「おのれ神に仕える私をかどわかす悪魔め。ズバン!AMEN」
「…リアルね…。」
親友の創った寸劇に顔を蒼くするキュルケ。ふと疑問が湧く。
「あんた最近明るくなったわね。」
彼女は答えない。しかしキュルケは至極嬉しそうだった。そこにベルナドットが頭を掻きながら入って来る。
「そういや昨日サイトの奴が銃の使い方聞きに来たぜ。自分がブッ飛ばされなくなっただけだけどな。」
その言葉にタバサの顔色が変わる。それがわかったのはキュルケだけだが。直に状況が読めたタバサはセラスに命ずる。
「出発用意」
キュルケもついてくる気らしい。
「オッケー!アーカード連れてくるわ。」
その彼が果たしていい方にことを運ぶかは疑問だったが、止める前にキュルケは出て行った。
一心不乱の支援
「全くなによ。あいつら、一緒に竜なんか乗っちゃってさ。そんなにメイドがいいかしら。」
上空ではシルフィードが四人を乗せて飛んでいる。
「ほう、あの中に好きな人でもいるのかな。」
ルイズは真赤になって首を振る。だが次にサイトに抱きつくシエスタを見て歯ぎしりした。
(いいもん、私にはワルド様がいるもん。)
「きゃあ、高いです!」
そう言いサイトの背中に胸を押しつけるシエスタ。しかしサイトが着ている13課のコートは厚手の為、あまり効果は無い。
「しっかりつかまってろよ……ん?」
サイトが前方の異変に気づき、シルフィードに合図する。
崖の上から矢の群れが襲いかかった。シルフィードは矢の届かぬ高度まで退避した。
しかし、ワルドとルイズの乗るグリフォンはそうする前に止まってしまう。ワルドが風の壁を作り、矢を防ぐがいつまでもつだろうか。
「どうしますか?アンデルセン神父!……神父?」
見ると風竜の上に彼の姿は見えない。彼を探すと、どうも右側の崖の上に飛び乗ったらしい。
敵の群れは、上から降って来たアンデルセンによって恐慌状態に陥る。なにせ人を紙のように切り裂き薙ぎ払い、
傷を受けても瞬時に回復し、さらに悪鬼のような笑みを浮かべているのだから当然だ。
一方はもはや良いだろう。それではともう片方側の敵の群れを狙う。しかし、そちらもどこか様子がおかしい。
見ると敵はこちらも逃げまどい、中には自分から崖下に飛び降りる人間までいる。
そんなことができるのは一人しかいない。
上空を見ると籠をぶら下げた翼人が見えた。
そして崖の上には赤ずくめの服の狂人が、口から血をたらして立っていた。
戦闘の気にあてられ闘争本能が剥き出しとなったアーカードと、アンデルセン。
二匹の獣の睨み合いに一同は戸惑う。その対峙を止めることができる、ある意味最重要キーパーソンである二人は、
「ななななによキュルケ!こんどは人の使い魔に手を出そうって言うの?この色狂い!あなた本当に人を愛したことがあるの?」
「あーら、あなたに婚約者がいたなんてね。じゃああたしがどうしようと勝手じゃない?独占欲だけは一人前ね。」
と、喧嘩している。お互いに油を注ぎ合うような激しい喧嘩だ。
そのためあの男二人は心置きなくおっ始めようとしている。
しかもこの二人結構主人思いであるからさらに悪いことになっている。
サイトはタバサにあの少女二人を落ち着かせるよう目配せした。
ほぼ同時に化け物二人が武器を取り出す。それと同時に意を決しサイトが間に入る。
「まあまあ二人ともおちつい…。」
「「あ」」
ドン!! ズシャ!!
銃声と共にサイトの眉間に穴が空き、背中に二本の銃剣が突き刺さる。
サイトの体が力を失い手足がだらりと垂れる。
唖然とする一同。
ベルナドットだけがかろうじて彼の名を叫ぶことができた。
烏合の衆支援
「いいですか皆さん、任務に大事なものは個人の力ではありません。それはチームワークです。わかりますね。」
少年は皆が見ているなかを歩き回りながら話している。背中に銃剣を刺したまま。
眉間から取り出した銃弾をいじりながら。
「どんなに強くても、チームの和が乱れている集団は失敗するものなのです。分かりますね?
特に そ こ の 大 人 二 人!!!ちゃんと聞け!!」
サイトはアーカードとアンデルセンの方を指差す。神父は優しい神父様モードのほほ笑みをし、
アーカードはなぜか幼女の姿になっていた。
「誤魔化すな!あんたら一体いくつだ?」
「60ちょいです。」
「500歳から数えてないぞ。」
「よしその人生の大先輩に一言、もっと大人になってください!」
「「すいませんでした」」
一同は化け物二人を押しているサイトにびっくりした。次にサイトは少女二人を睨む。
「あのさ、この人たちこうだって分かってんじゃん?じゃあなんで喧嘩するの?ちゃんと止めろよ!」
「すいません。」
「何よ…、平民のくせに。」
その言葉にサイトはルイズを冷たい敵意の籠った眼で睨む。ルイズははっとしたが、横を向く。
サイトはそんな彼女を見て、舌打ちしてそっぽを向いた。
「ギーシュ!」
「な、何だね?」
「…これ抜いてください。お願いします。」
サイトがギーシュに背中を向ける。二本の銃剣が刺さっており、血が染み出ている。
ギーシュは恐る恐る銃剣を掴み、抜こうとするが力が足りず抜けない。
こまったギーシュは横にぐりぐりしながら、釘を手で抜くようにじっくり引き抜こうとする。
痛切な悲鳴が辺りに響いた。
サイトTUEEE
なんという回復法術の恩恵。
着実に化け物への道を歩んでいるサイトに支援せざるを得ない。
SIEEEEEEEEEEEEEEEEEEENN!
「であああアホかお前は!痛いだろそんな風にしたら!」
「い、いやしょうがないだろ!?こんなことしたこと無いんだから!」
「常識で考えてよ!それくらい!もおー…」
あまりに痛かったのかサイトはその場に崩れ落ちる。
「常識なさすぎるよみんな!主にアーカードさんと神父―!」
「そうか…そんな馬鹿げた回復力を持ってても、痛覚はあるんだな…すまなかった。」
「…いい…許す。」
ベルナドットが思いっきり銃剣を引き抜いた。一瞬呻いたあとのサイトに、タバサがヒーリングをかける。
「ありがとうございます。」
「立てるか?」
よろよろと立ち上がりシルフィードによじ登る。そして一向は旅を再開した。
「いや、彼は凄いメイジだな!なんという回復力だ、おまけに風竜まで操るとは!」
そうか、そんな風に見えるのだな。と思いながらルイズはさっきのサイトの目を思い出す。
命を助けてもらっておいて
自分のせいであんな目にあわせて
あんな言い草したら怒るに決まってる
彼は竜の上でメイドやタバサやキュルケと楽しそうに話している。
その光景に沸々とした怒りを感じていることに自分で自分が許せなかった。
サイト、シエスタ、キュルケ、タバサ、ギーシュ、ベルナドットがシルフィードに乗って行く。
セラスの持つ籠の中にはアーカードとアンデルセン。中の状態は言うまでもない。
(ベルナドットさん、置いていかないでください〜〜)
一番ババを引いたのがセラスであった。
セラスはこういう立場が似合うな。
サイトスゲェ
「なんたる差別!!こっちは50スゥの安宿一部屋に三人で泊まるってのに!」
豪勢な貴族用の宿に泊まる彼らに文句をつけるベルナドット。
「まとまるのは危険」
「経費に限りがあるのだ、すまない。」
「十分でしょ。」
「そーですかー」
憤懣冷めやらぬベルナドットはサイトとシエスタの方を向く。
「お前らも何か言ってやれ!」
彼らは黙ってある方を指差した。見ると、アーカードとアンデルセンが不穏な空気を流している。
ベルナドットは納得した。この空気に一晩は耐えられないだろう。特にサイトは。
セラスやギーシュは置いてかないでという目で見ている。ベルナドットは全力で無視した。
「んじゃいこうぜ」
彼らは早足で宿に向かった。シエスタはサイトの腕を組んで。
その姿にルイズは「うー」と唸った。
その様子を遠くで見ている女性がいる。気配を殺し、笑いながら。
「かくして猟場は猟師の手の中に。
有象無象の区別なく 私の弾道は許しはしないわ。」
そしてその横では熱帯用オーバーコートに身を包んだ長身の男が静かにアーカードを見ていた。
wktk支援
以上で投下終了です。支援、まとめ、ありがとうございました。
サイトはまあこんな感じのポジションで。
次回は戦闘書きます。
これだけのキャラを動かすのは大変そうですが頑張ってください。
吸血化したわけでもなく、アンデルセンの同類とは言え一応人間なサイト
サイトの言葉に
自分でいる事を諦めたわけじゃないので聞く耳を持つロリカード
神以上に自分を信じている事に不満があるが一応同胞なので話を聞く気が有るアンデルセン
…再生者って胃の穴も再生するのかな…狂信者殿乙!
サイトの良識が凄まじい威力を発揮しているww
狂信者の人乙っした!
うむ、ここのサイトはスーパーだが、胃の負担もスーパーだ。
9話目投下2300
投下日の間隔早すぎすぎますかね?
C
「ルイズ、僕と結婚しよう。」
一体なにを言っているのかわからなかった。そもそも彼にはアンデルセンを御せなかったことと、サイトに嫌われたことを相談していた。
それがいきなり求婚されてしまっては訳が分からない。確かアンデルセンが何者かが解らないという話だったか。
「いいかい君の使い魔は凄い!山賊を一撃で薙ぎ払い、吸血鬼とも互角に戦ってのけたじゃないか。」
それはそう思う。しかし、ではその吸血鬼を召喚したキュルケやタバサは一体何者であろうか。
「それに君の失敗魔法!あんな威力僕だって出せやしない!火系統のスクエアメイジに相当する威力じゃないか。」
魔法の話をしていただろうか。でも確かにネガティブなことを言ったかもしれない。
「君は素晴らしい、偉大なメイジとなりうる可能性を持っている。断言しよう。だからお願いだ。
どうか君の伴侶と成る資格を僕にくれないか。もちろん僕も君に相応しくなるよう努力するから。」
その言葉に私は仰天した。魔法衛士隊の隊長がゼロたる自分に頭を下げて求婚する。凄く嬉しい。しかし、
「あの平民の少年かね?」
私は答えない。
「彼が何者かはしらないが、ただの平民の少年が君と交際してみたまえ、冗談抜きで彼は死ぬぞ。」
そう、私はゼロとはいえ公爵家の令嬢、下級貴族でさえ不釣り合いである。ましてやただの平民、しかも異世界人。
交際どころか私が好意を持つだけで、玉の輿に乗らんとする貴族に殺されるかもしれないのだ。
貴族は平民のことなど虫の命程も思っていないのだから。
って違う!そうじゃなくて!
「別に!ただ命の恩人だからちょっと感謝してるだけよ。」
ワルドは驚いた顔をした。
「何!君は命の危機にあったのか?吸血鬼の件か?」
その時のことを思い出す。ふとあの血だまりの光景を思い出す。
「ゴメン、思い出したくないの…。」
そう、サイトはあんな目を背けるような怪我を負って私を助けてくれた。
なのに私は…。
俺、シエスタ、タバサ、キュルケ、ベルナドットさんは、安宿のなかでトランプをしていた。
俺は当然のようにいる二人の少女に疑問が湧いた。
「タバサ、キュルケ。こんなところで遊んでていいのか?お前ら貴族だろ?」
「ルイズじゃあるまいし、別に普通よ。ねえ?」
キュルケの問にタバサが頷く。そこにワルドがやって来た。
「ちょっといいかな?サイト君だっけ。」
女神の杵亭にて何故かワルドは俺にメシを奢ってくれた。なんでだろう?
「君は僕の婚約者を救ってくれた。こんなので済むとは思わないが。せめてものお礼だ。」
俺は慌てて首を振る。
「いや、そんな…。俺はただ何が何だかわからなくてやったことで。お礼は…。」
「はは、では君のような素晴らしい人間と友達になれたお祝いということにしてくれ。」
それ以上断るのも悪いと思い、食前の祈りをして食べ始めた。
「本当に君は凄いことをしたんだよ。もし君が貴族なら領地をもらって然るべきだ。」
「へえ、そうなんですか?」
「婚約者の僕から謝らせてくれ、彼女は君に失礼なことを言ったね。」
そう言われ、ああ、あのことかと見当をつける。さっき刺された件だろう。
「いや、まああれはあいつがやった訳じゃないから。」
「怒ってないのか?」
「うーん、ごめんなさいの一言ぐらいあってもいいかな?」
(可愛いし…)
あんなことを言われても呑気なことを考えるもんだな、と俺は俺を苦笑した
「それでいいのか?」
俺が頷くと何故かワルドは笑いだした。
「君はなんというか!本当いいやつだな。」
こっちに来てからいい人認定されることが増えた気がする。
支援
しばらく食べていくと、お互いの話を始めた。
「そうか、君の国には貴族がいないのか…。」
「ええ、まあ。」
「羨ましいな…。」
「あなた貴族でしょ?」
「ああ、だが王宮では老人どもばかりが権力を握る。若い貴族は出世する隙がない。
おまけに出世しようとすれば、おべっかに権謀術数。賄賂に癒着。
さらには仁政を施せばあの連中は平民に媚びているとまで言うのさ。
やっていられないよ。」
ワルドはワインを煽る。結構飲んでいるが酔っているようには見えない。
「まあ、僕はマシだな。平民に比べたら、平民というだけで一生搾取され、差別されるよりは…。
だからゲルマニアは繁栄するんだな。皆が頑張れば報われ、頑張らなかったなら報われないのだから…。」
「まあ、古今東西そういう国が繁栄しますね。」
「なあ、君はどうだね?何か苦労してやっても誰も見ない、報いない。生まれた時の身分が全てを決める。
この国をどう思う?」
俺は向こう側の壁を見て言う。
「普通に考えたら滅びますね。」
ワルドは大笑いする。
「随分はっきり言うな!」
「まあ事実ですし。」
俺は笑ってジュースを飲む。何のフルーツかは分からないがとても美味い。
「僕だからいいが、あまり他の連中には言うなよ。ハハハハハ」
支援
ルイズは月を見ていた。そこにアンデルセン神父がやってきて隣に立つ。
「元気がないですね。どうしました?」
ルイズは答えない。月明かりを黙って見ている。
「サイトのことですね。」
「どうしよ…。」
「仲直りできる呪文をおしえましょうか?」
素早く振り向き、ルイズはアンデルセン神父に教えるようせがんだ。
「それはですね。」
彼女は期待して言葉を待つ。
「『ごめんなさい。』」
彼女は呆けた。アンデルセンは笑って肩を叩く。
「気づきませんか?あなただけですよ?彼に謝っていないの。」
彼女はボケっと床を見る。そういえばそうだ。アーカードもアンデルセンもギーシュでさえ謝った。肩を震わせて言う。
「許して…くれるかな?」
「大丈夫。彼は優しい人ですから。」
背中を押しながらアンデルセンは彼女を導く。しかしその歩みが止まる。
なぜか月明かりが何かで遮られている。後ろを振り向く。そこには巨大なゴーレムが立っていた。
「生きてまた逢えたら…。」
「…そうですね…。」
巨大な腕が振りかぶられた。
「あれ、タバサ?戻らなくていいのか?皆飯食いに行ったぞ。」
どうやらシエスタと食べにいくようだ。ベルナドットと準備している。急に地震が起きたように部屋が揺れた。
突然の爆音に窓を見ると、巨大なゴーレムが女神の杵亭に攻撃している。彼らは飛びだした。
「ベルナドットさん早く!!」
ベルナドットはバッグから銃を取り出し、弾を込めている。
「覚えとけ!男も大人になると出かけんのにいろいろ準備がかかんだ!先行ってろ!」
サイトが彼を尻目に指笛を吹きながら外に出ると、青い翼が舞い降りた。
紫煙
「大変です!!ゴイスーなデンジャーが迫ってます!」
一階の酒場にセラスがハルコンネンを抱えて駆け降りてくる。キュルケ、ギーシュ、ワルドが食事をしていた。
「一体なんでまた。」
「ハルコンネンの精が言ってました。」
空気が止まる。
「はは、またそんな」
言ったギーシュの鼻先を弓矢が掠め、壁に突き刺さる。
セラスとワルドが机を倒すのと矢が大量に飛んでくるのが同時だった。
「昼間の傭兵どもだな!」
セラスがハルコンネンを外に向け放とうとする。しかし彼女の眼は厄介なものを捉えた。
人間には不可視な速さで動く、その銃弾は唸りながらキュルケに当たろうとしていた。
セラスは咄嗟にそれを素手で掴む。キュルケには何が起こっているか分からない。
遠く三百メートルほど向こうにその銃弾を撃った狙撃手がいた。ハルコンネンは火を噴き、彼女を狙う。
リップバーン・ウィンクル中尉はあっさりとそれを回避し、次弾を装填する。
「皆さん行って下さい。邪魔です!」
その言葉にキュルケは同意した。全く以て自分達では介入不可能な戦いが繰り広げられているのだ。
そして退避しようとした時、彼が起きて来た。己の使い魔アーカード。
「命令を我が主人。」
「あの傭兵たちと狙撃手を適当に追っ払った後、私たちと合流。」
ルイズとアンデルセンが降りてくる。
「土くれのフーケが!」
キュルケが頭を抱える。
「…及びフーケを討伐すること。とどめは無理にささないで、敵を全員殺すことより味方を全員助けることを優先なさい。」
キュルケはアーカードにとって最も困難な命令をくだしたが、吸血鬼はニヤリと笑った。
「了解した。」
アーカードが悠然と、突き刺さる矢をものともせずに突き進む。
「ハリー!!」
「了解した。」
すぐさま飛び掛かり、化け物が敵を屠りに向かった。
闘争開始支援
「さて、私は邪魔にならないところに待機してるわ。ルイズ。あんたは先行ってなさい。」
「で、でも。」
「何か知らないけど重要な任務なんでしょ。とっとと行きなさい。それに私には彼がいるから。」
アーカードを制御する必要がある。彼は両刃の剣なのだ。
セラスがいるなら後から追いかけることも可能だろう。そう思いキュルケは厨房に身を潜めた。
降りしきる矢が止まっている。かわりに悲鳴が聞こえてきた。
ワルドとルイズは眼前の敵に突撃しようとするアンデルセンを抑え、裏口へ向かう。
それをギーシュが追いかけた。その姿を見届ける。
カウンターを見ると酒場の店主が首に矢が刺さって倒れている。
その光景にキュルケは今自分が命の取り合いの場にいることを実感した。
アーカードに咥えられている仲間を見て、傭兵たちは恐れをなして逃げて行く。
追い掛けようとしたが、キュルケの命令のため、追撃を止め、次にリップバーンに狙いを定めた。
彼は人外の速度で走り、あっという間に距離をつめる。
彼女はその姿を見ると逃亡を始めた。アーカードも追いかける。
「狙撃兵なら明日のために、その1すごく見晴らしのいいところでうんと離れる。
その2近づかれたら死を覚悟。」
「覚えてますよ。アーカード」
彼女と彼は話しながらチェイスする。
リップバーンは不敵に笑った。
「ねえセラスヴィクトリア。」
支援
初めキュルケは一体なにが起こったかわからなかった。
燃え盛る炎にいきなり包まれたセラス。
魔法がはなたれた先には首に矢を受け明らかに絶命したはずの店主。
店主、改め地下水の右手にはナイフが握られている。それを振るいさらに呪文を唱えようとした時、
セラスの左手が変化したと思うと、床から黒い刃が続々と生えてきた。
しかし、地下水はそれを飛び越え、セラスに飛び蹴りをくらわせる。
キュルケは意識を取り戻し、ファイアーボールを地下水に食らわせる。しかし、火をまるで意に解さぬかのように、
地下水はセラスを締め上げナイフにブレイドの魔法をかけた。ナイフの周りに魔力がかかる。
それはまるで長剣のような長さになった。
「首を刎ねたら死ぬんだろ?化け物。」
青白い剣がセラスの首を刎ねようとする。だが、セラスは間一髪逃れた。この場にいた三人は驚愕する。
セラスの首には店主の左腕がぶら下がっていた。切断されたのだ。
地下水は横を向く、そこには剣を持った娘がいる。
「島原抜刀術、秋水。」
シエスタというおとなしいメイドはそこになく、眼光鋭き剣士が立っていた。
フーケのゴーレムに対し、サイトとタバサがシルフィードに乗り戦っていた。その横をルイズ達は通り抜けた。
「シエスタは!?」
「そっちに行ったよ!」
サイトは発砲するも、昨日銃を触ったばかりの少年には荷が重かった。
「会ってないわよ!?」
「何だって?!聞こえねえよ?!」
ルイズは走りながら空を飛ぶサイトに毒づく。
「あとで来なさいよ!!」
「ああ!今忙しいから後でな!」
サイト達にゴーレムの腕が襲いかかり、シルフィードが旋回しそれを避けた。
ダイレクト・カノン・サポート
シエスタは剣を鞘に納め、それを縦に構えて対峙した。互いに隙無く横に動き、円を作る。
その姿にキュルケもセラスもあっけにとられる。
だが、地下水の左腕が瞬時に再生されるのを見て闘志を取り戻す。祝福された武器ならともかく、
ただの鉄では吸血鬼たる体にはダメージが与えられない。
セラスが発砲、キュルケがフレイムボールをそれぞれ行おうとした時、
セラスは左腕の掌底で吹き飛ばされ壁を突き抜け、炎球は風の障壁で跳ね返され、キュルケに返ってくる。
そして地下水は体を回転させ、蹴りをシエスタに見舞う。
生身の人間である自分がこれを食らえばたちまちバラバラになるだろう。
しかしシエスタに恐怖はない。
あるのはただ、戦っているという自覚だけ。
自らの意志で助太刀したのだ。
後悔は無い。
彼女は日本刀の鞘で蹴りを受け、体を回転させその衝撃をいなした。
そして回転中に刀を縦から横に変えて抜刀を敢行する。
「首を刎ねたら死ぬんですよね?」
だが地下水は難なく右手のナイフでそれを受け止めた。
口ではルーンが唱えられている。
急激にシエスタに死の実感が沸き起こった。
火球が完成される。
しかしその時地下水の右手が吹きとんだ。
その瞬間地下水は己の戦略ミスを悔いた。
狙撃手たる敵を彼方に吹き飛ばしたことを。
ハルコンネンの集中砲火が地下水の体をバラバラに吹き飛ばした。
ヘタンと座り込むシエスタにセラスとキュルケが駆け寄る。この戦士をどう称えたものかと見る。
シエスタはボケっとしていたと思うと、キュルケに手を伸ばす。
「腰ぬけちゃいました…アハは……。」
スプラッタと命の危機を同時に味わったのだ。無理もない。
キュルケは彼女をひっぱり起こすとその胸で彼女を抱きしめた。
支援
魔弾を取り逃がした。まあ、射程距離を遠く離れたし、捨て置いても良いだろうと、
アーカードは辺りを見回す。
遠くでゴーレムとサイト達が格闘していた。彼は嬉しそうに笑い、駆けだした。
「立てますか?」
そう言ってセラスがシエスタの肩をつかもうとした時、ゾクりとした感覚が奔った。
「逃げて!!」
叫んだセラスが何かに吹き飛ばされた。
シエスタとキュルケはまたもや何が起こったか分からない。
しかし、次の瞬間彼女達はへたり込んだ。
見るとそこに男が居る。
厚手のコートと帽子を被った長身の男。
彼を目の前に彼女たちの思考が止まる。
突然目の前でドラゴンが口を開けていた以上の感覚。
彼はハルコンネンをまるで鉛筆のようにへし折り、店主のナイフを拾い、
彼女らを一瞥した。
彼女達は意識が遠のくのを感じる。
キュルケは悟った。
今目の前に居た男がアーカードやアンデルセンと同じ次元の力を持っていると。
そして己の使い魔達は今まで本気の闘気を纏ったことなど一度も無かったことを。
男は彼女達を無表情で見下ろす。
己の任務はアンデルセン及びその他危険人物とルイズ・ヴァリエールとの分断。
アーカードというでかすぎる不確定要素の為に大尉は彼女達を見逃した。
支援はクールに
そうだね兄ちゃん
γ  ̄ ̄ヽ .γ;;;;;;;;;;;;ヽ
| ,r:v:、ツ l;;<0>;;;;;;;l
| lリ0_ゝ0リ リ∀゚ イvリ
|/ .<v>ヽ l;;T;;;;;;;`l
l、_(つ/´ ̄ ̄ ̄ / l;;;l;;;;;l;;;;;l
 ̄ ̄ ̄\/Valentine/ ̄ ̄ ̄ ヽ_) ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄
支援
0時超えれば復活できるか?支援
シルフィードのブレスがゴーレムの頭を吹き飛ばす。タバサの氷の矢が右手を吹き飛ばす。
しかしゴーレムは瞬時に再生する。
「畜生!しぶといな!」
シエスタはルイズの護衛に行かせたが大丈夫だろうか。まあ、この巨大なゴーレム相手に、
自分やシエスタができることは皆無だったからだが。一応ポケットには手榴弾があるけれども。
サイトはこのままシルフィードのブレスやタバサの魔法を駆使すれば勝てるだろうと思った。
あちらの攻撃は空飛ぶ自分たちにはとどかないのだから。そう考えていた時、
ゴーレムが宿屋に手を突っ込んだ。タバサが叫ぶ。
「危ない。」
次にゴーレムは腕をこちらに向けて振る。すると宿の木の板や家具が雨あられと散弾のように振り注いだ。
シルフィードを急降下させそれらをかわす。そしてゴーレムの射程距離に入った自分たちにもう一方の腕がおそいかかった。
シルフィードはさらにスピードを上げ、なんとか腕よりも下に高度を下げる。
しかし、上に乗っていたサイトはその腕に当たってしまった。そしてそのまま建物の壁に腕ごとめり込む。
フーケはやったか、とそちらを見る。だが次に彼女が見たのはとんでもない映像だった。
今仕方、壁に激突し死んだと思われた少年が、銃剣を己のゴーレムの腕に突き刺し、よじ登った。
その姿は血塗れだったが、目には爛々とした闘志が込められフーケを見据える。
そのままこちらに腕を渡って突撃してくる少年に彼女は舌打ちし、杖を向ける。
不意に後ろからの冷気に気づき、フーケはゴーレムの一部から鉄の壁を錬成し、それを防いだ。
タバサのウィンディ・アイシクルだ。しかしその一瞬が命取りだった。
サイトは彼女が後ろを向いた隙に駆け寄り、フーケの後頭部に銃口を、首筋に銃剣を当てる。
観念した様子でフーケが手を挙げる。
「あんた、何者だい?あいつらと同じ吸血鬼か?」
サイトは答える。
「いや、人間だよ?ただ、ちょいと丈夫なだけさ。」
「アハハハハハ、同じだよ、化け物。」
フーケは急に笑い出した。サイトはむっとする。
「そうかい、それなら……遠慮はいらないね!!」
フーケがゴーレムの魔法を解除した。引き金を引く間もなくサイトは三十メートル上空から落ちて行った。
支援
ゴーレムの魔法を解除すれば自分は落ちる。自分の考えの至らなさにサイトは唇を噛んだ。
シルフィードがサイトをキャッチする。フーケは予備の杖を取り出しレビテーションをかける。
地面に降り立ち、フーケは駆けだした。もう魔力はほとんど無い。路地裏に逃げ込もうとした。その時。
ダン!!
フーケは転倒した。見ると足が撃たれている。立てそうにない怪我だ。後ろを見ると、
そこには赤い服、赤い目、馬鹿げたデカサの銃を掲げた狂気の代弁者が立っていた。
フーケが降参の意を示す両手を挙げる。するとアーカードにその手を掴まれ、引き寄せられる。
その瞬間、彼女の生存本能が重大な危機を察知した。
(マズイ!!!)
その牙が首筋に到達する前に、フーケは杖にブレイドをかけ、アーカードの首に突き刺した。
しかし、アーカードは手を離したものの、すぐにフーケのもとに歩み寄る。
フーケは必死になって逃げ出した。様々な考えが脳内をまわる。
あいつがいるなんて聞いてない!
杖が落とされ、乾いた音が響く。
まだ死ねない死にたくない!
足音がする。
死ねない!
すぐそこまで来ている。
ティファニア!
髪の毛をつかまれる。
ティファニア!ティファニア!ティファニア!ティファニア!ティファニア!
銃口が突き付けられる。
「ティファニア……。」
マチルダは泣きながら虚空に手を伸ばした。
支援
支援
ドッ
ボトリと落ちた。
腕が。
アーカードが不思議そうに自分の無くなった左手を見ている。
突然解放され、地面に倒れたフーケは、恐れを持って振り返る。
黒髪に、厚手のコートを着た少年が立っていた。アーカードは呑気な口調で聞く。
「…なんのつもりだ?」
「それはこっちのセリフだ!!」
サイトはこれまでにない程に激昂して叫び、アーカードを睨んだ。サイトはフーケを指し示す。
「もうケリは着いただろ!」
アーカードは圧力を込めてその言葉に答える。フーケはその威風に脅えた。
「それがどうした?闘争の契約だ。そいつは来た
殺し打ち倒し朽ち果てさせるために
殺されに打ち倒されに朽ち果たされるために
それが全て
全てだ!」
凄しい迫力に降り立ったタバサやシルフィードも怯む。
しかしサイトは汗を流すも、一歩も退かない。
「それがどうした!闘争の契約?知ったことか!
あんたのような化け物が戦いを止めた人間を殺そうとしてる。
そんなのは俺が許さねえ!」
少年の声が響いた後、張り詰めた静寂が辺りを包んだ。周囲は呆気に取られている。
少年の勇気と、無謀に。
急にアーカードの顔に笑みが浮かぶ。
「では…やるか?」
その言葉にサイトは銃剣を構える。
「あんたがこの人を殺そうとするならな!!不本意だけどしょうがねえだろ!!」
アーカードは嬉しそうに、サイトの眉間に照準を合わせた。
支援
サイトがマジで漢だw支援
以上で投下終了です。支援、まとめ、ありがとうございました
当方今週帰郷しますので、しばらくできません。
その前に一回できたらいいですが…
どうもありがとうございました
GJ、素晴らしい。
サイトが主人公だw
GJ
サイトが主人公すぎるw
アンデルセンの影がないw
作者様GJ&お疲れ様でした
今回は一日で読むのが勿体ない位濃く長い話になってる…
じっくり読み返しながら続きも待ってます。
しかし誰かが止めなければサイトは確実に死亡だ
サイトがえらくかっけえな。
ん〜皆GJばかりで悪いんだけど
サイトでしゃばり過ぎでイラつく
もうちょい読みやすくしてほしいな〜
改行少なかったり変な所で切れてたりするのがちょっと
やめてサイト! 貴方のライフはもうゼロよwww
きれいなワルドがあらわれた!!
いくら止める為だとはいえ、いきなり、説得もせずに
アーカードの腕をぶった切っちゃって良いわけだ
化け物だから、治るから、元に戻るから、なるほどなるほど
捕まえたのにまた襲ってくるような奴はきっちり殺しとくべきだろうJK
ヘルシングなら普通だな
とりあえず殴る→説得が基本だから
そもそも説得なんて最初にしたらそれ無視してマチルダさんが死んでるぜ
アーカードならやる
神父でもやる
セラスなら戦ってる相手による
戸田恵子との間に入るなり、剣の刃以外で殴ってズラすなり出来るな。
そんで、ヘルキャラがどうするかは分かったけど、サイトはどうするんだ?
相手が化け物だからって腕を切り落としちゃうサイトの心も化け物になってきてる感じ?
懲りずに殺しに来た敵を守る為に、再生能力があるとはいえ味方の腕を切り落とすか……
殴っていいのは異教徒とバケモノだけです。
ああサイト、君は忠実にアンデルセン神父の教えを守っているのですね――具体的にはアーカードの左手。
旦那のストックが減るのって、心臓潰した時だけか?
元々命が無数にあるからわかりづらいが、首を落としたり頭を潰したりしても、本当の吸血鬼なら再生するのだろうか。
刃牙キャラが麺類をすする時みたいな音をしながらくっつくんじゃね?
吸血鬼でも問答無用で死ぬダメージを負うとストック1消費じゃないか?
首を落とされたり腕が切られたぐらいじゃストック1すら消費しないかも
心臓以外は場所に関係なくダメージ量でストックが減るってこと?
別に決まっちゃいないんだし、こんな話してると書きにくくなるだけかも
まぁ元々とんでも量のライフストックある旦那はどっちに転んでも問題ないし、
足折れたら戦えないとわかってる半端吸血鬼の中尉連中はいいとして、
セラスは書きにくいかもね。
ライフストック能力は旦那直系の吸血鬼だけなのかな?
どうだろうね
本編って旦那とセラス以外は全部インスタントだよね
旦那直系というよりは、なるべくしてなった吸血鬼じゃないか?改造とかじゃなくて。
少佐も化け物になるか、人間として生きるか選んだみたいだし。
シュレの誕生秘話やってくれないかな
他の量産型見てる分だと博士製でもない天然物っぽいし
少佐も化け物に成ってれば、ドイツ軍を納めた最小の王国が出来てたのか……
デブだから一日三人は喰うんだろうな
間違えてシュレ喰って勝手に消えたら笑えるなw
最早サイトではなくsaitoになっておる楠
最初の神父ってインスタントなのか?
>>592 正直退場が早すぎて参考にならない・・・
忘れがちだが、ルークは体のど真ん中打ち抜かれても立ち上がった。
インスタントでも防御力と再生力はかなり高いと思われ
細々とした事件がインスタント吸血鬼連中
バレンタイン兄弟はちょっと手の込んだ吸血鬼もしくはひょっとしたらヴェアヴォルフの一員?
とりあえず最初の神父は「自由意志のドラキュリーナなんぞつくりたくもないが」とか言ってたが確か後でインテグラが「明らかに処女・童貞であろうものまでグール化していた」と発言してたから多分吸血鬼に関して知ってはいるが自分を知らないインスタント?
手元に原作無いからわからん、各自で確認してくれ
あれでも尉官ですぜ
シュレとは別格程度の階級だろうけど
ちょっと気になったんだが、処女はわかるとして童貞の判別ってどうやるんだ?
明らかに精通していないであろう子供とか?
匂いで分かるんだよ!
それにほら、類友って言うの?だから分かるんだよ多分
吸血鬼的には魂に他人の情報とか魂の欠片がひっついてない状態なのかもしれない
セックスすると他人の要素が混ざるから不協和音起こしてグールになるとか
じゃあどこから脱童貞なのかってのは気になるが
男も性病に感染するように、脱童貞したらなんか混ざるんじゃね?
旦那や少佐(未遂)みたいに諦めを踏破して成るタイプは既に自分の魂の全てを支配下に置いてるから童貞とか関係ない、とかそんなのかな
少なくとも確認出来る限り旦那は非処女なんだがw
前の方もアーサーによって貫通済みだったりしてな
ショタウォルターの菊門処女は俺のもの
しかし逆に菊門から鋼線ぶっ刺されてマリオネットにされる
>>604であった
ヒラコーのショタ絵はマジでエロいので困る
607 :
マロン名無しさん:2008/08/12(火) 20:54:51 ID:uZ1O434h
アーカードはそこにいる。とロリカードを待ち続けること数十年。
スレの初期作品で未完のまま行方不明になった人はそのまま帰らぬ人となる場合が多々…
>>607-608 やっぱ諦めを踏破して二次元とかに入る方法を見つけたとかそういうことなのかな
>>603 主によって無理矢理に犯されるロリ奴隷…
これは破廉恥だ
猫耳准尉のあの余裕を取っ払って二面性出させたい
老人に少佐が吹っ飛ばされた時は途中で収まったし
投下します、お待たせしました。
アルビオンとトリステインの決戦から三日。
学院では授業も再開され、つつがない日常が戻りつつあった。
「いやあ〜スゴかったね!まさに奇蹟の光だったよアレはッ!!さすがはアンリエッタ女王陛下、聖女万歳!」
「ふゥ〜ん、そんなに凄かったんだ?まあ奇蹟でも起きない限り、トリステインが勝てるわけないわよね〜。ルイズとアーカードも見たんでしょ?」
キュルケの言葉にルイズはしどろもどろに頷く。
「へ?・・・ぁ・・・う・・うん。凄かったわよ・・・・・・うん」
「私は敵旗艦で暴れてたからなぁ・・・直接は見ていない。というか聞いている限りだと、件の光のド真ん中にいたことになるな。んむ、確かにアレは眩しかった」
広場に集まっているのは、ギーシュ、キュルケ、ルイズ、アーカード、そしてタバサである。
「敵旗艦で暴れてたって・・・何やってたのよ」
「敵艦を奪って騙撃を敢行してた」
フフンと鼻を鳴らしアーカードはVサインをする。
「あの敵艦対敵艦の。わけのわからない状況は君の所為だったのか」
ははぁと、ギーシュは唸り驚きアーカードを眺める。改めて喧嘩を売った自分、よく生きていたなぁと。
「さっすがね〜、フーケのゴーレムを瞬殺したのも伊達じゃないわ。ルイズは何やってたわけ?」
いきなり自分に向けられた質問にルイズはドキリとするも、平静を装い答える。
「私は・・・姫さまと一緒にいたわ」
ルイズは悩んでいた。生まれて初めて成功した魔法、さらにはその系統が『虚無』だったということ、そして自分がもたらした戦果の大きさに。
あれから何度か、ちょっとだけ使おうと試しで詠唱をしたものの、きちんと『エクスプロージョン』を唱えきれたのは戦争の時の一回のみである。
それ以降は詠唱途中で必ず失神してしまう。恐らくは精神力が足らない為の結果だろう、それでも半端にでも発動するのは『虚無』ゆえか。
しかしコモンマジックなら、失敗なく唱えられるようになったのは嬉しかった。自分の中で、何かが変わり始めたのは確かであった。
待っていたぞ!!職人!!
ゼロリカよ!
投下して見せろ!!
このスレにどよめきを巻き起こしてみせろ!!
500スレ前のように!!
100レス前のように!!
支援!!
「なんかさっきから変な態度よね、よそよそしいというかなんというか」
「べ・・・べべべっ別になんにでもないわよ!」
そんな様子を見てルイズ以外全員の目が細まる。
「まぁいいわ。話が変わるけどさ、この後はやっぱアルビオン大陸まで攻め入るかしらね」
「えっ?」
「へっ?」
思わずルイズとギーシュは揃って声をあげた。
「今トリステインは勢いに乗ってる。その可能性は低くない」
タバサが静かに口を開く。
「そうよね〜。戦争下手とは言っても、ここで戦をやめる愚行は流石にしないだろうし。侵攻かしらね〜、包囲する手もあるけど」
「私は断然侵攻がいいな。ふっふっふ・・・今から血沸き肉踊る、やはり戦は攻めてこそだ」
タバサ、キュルケ、アーカードはさも当然といったように話していた。
しかしルイズとギーシュは呆然としていた。
(そ・・・それもそうよね。敵の空戦主力はなくなったわけで、同盟国のゲルマニアもきっと正式に参戦してくるはず・・・。こちらから向こうに攻め入る可能性だって・・・)
(ぁぁああぁあああ、また僕は戦場に行かなくちゃならないのかぁぁあああ・・・・・・。この前はたまたま生き残れたけど次も助かる保証なんて・・・)
「まっ、私は面倒だから戦争なんてゴメンだけどね」
「タバサは・・・・・・ん、興味ないだろう」
アーカードは思わず言いそうになったことを訂正して適当に流す、それにタバサは無言で頷いた。
タバサがガリア出身ということ、そして定期的に与えられている任務のことを思い出したのだ。
キュルケ達が話してる中、ルイズとギーシュは心の中で慟哭を上げていた。
(まずい・・・もうタルブの時のような『エクスプロージョン』は唱えられない・・・。折角メイジとしてこれから役に立てるかと思ったのに・・・うぅ・・・・・・)
(ぁぁあああぁああぁぁぁぁああああああぁぁあああァァァァアァアァアアアアアアァァアア嫌だぁあああぁぁあぁあああああ)
ルイズとギーシュ、二人の苦悩は続いた。
うん、支援しろ
SS投下者だ
◇
「女王陛下か」
アーカードは部屋に招かれて開口一番そう言った。
「あはは・・・」
アンリエッタは少し困ったように苦笑いを浮かべる。
今部屋にいるのは、アンリエッタ、アニエス、ルイズ、アーカード。
アルビオン軍を撃退して一週間。戦争後のゴタゴタも少しずつ収束し、改めて話す機会を設けるために二人を呼んだのである。
タルブでの決戦。トリステイン軍はアルビオン軍をくだし、見事勝利を収めた。
城下はこれ以上ないほどの賑わいを見せ、アンリエッタは聖女と崇められた。
トリステインの民の誰もがアンリエッタ女王の即位を望み、そしてアンリエッタはその期待に応える形で戴冠した。
ゲルマニア皇帝との婚約も正式に解消となり、アンリエッタは女王として政をおこなっている。
「・・・こうして顔をつきあわせるのも、なんだかとても久し振りな気がします」
「そうですね。姫さ・・・いえ・・・陛下、とても忙しそうでしたから」
「やめてちょうだいルイズ、私がどのような立場になろうとあなたは大切なお友達です」
「ふふっ、わかりました。姫さま」
アンリエッタとルイズは互いに微笑み合う。
「そ〜れ〜で、まだまだ忙しいのだろう?無理に時間を作ってまで我々に構わなくてもいいのだぞ、のうルイズ?」
「はい、・・・姫さま。アーカードの言う通り、私たちの事ならお気になさらなくても結構です」
「確かにまだまだ忙しいです。心労も日に日に溜まっていくばかりで、とても大変です」
そこでアンリエッタは一拍置いた。
「しかし、先の戦での・・・二人の英雄に恩賞を与えないといけませんからね」
アーカードは眉を顰める。ルイズはアニエスへと目を向けた。
「二人?」
疑問を抱いたアーカードは思わず口に出た。
「はい、勿論あなたがた二人です」
あぁ、とアーカードは思った。使い魔の功績は当然主人であるルイズの功績だと。
「示威行動中の敵艦隊を落とし、レキシントン号を奪って援軍にきてくれたのはアーカードさん、あなたなのでしょう?」
「まあ、な」
「そしてタルブ上空に位置した、アルビオン艦隊を落としたと思われる謎の光球。あれはあなたね、ルイズ」
そう言われるもルイズは何も言わず黙ったままであった、しかし視線はアニエスへと向いたまま見つめている。
「申し訳ない、ラ・ヴァリエール殿。貴方に口止めされていたが、私は陛下直属の騎士だ。陛下に直接問い質された以上、言わないわけにはいかなかった。
それに・・・貴方がしたことは賞賛されることこそあれ、非難されるような事は何一つありません。心情もお察しするが、無理に隠すことではないと思った判断ゆえです」
ルイズは改めてアンリエッタを見つめる。
「あなたなのね、ルイズ」
「・・・・・・はい」
観念したのかルイズはそれを肯定し、アーカードは目を丸くしてルイズを見つめた。
「なに・・・?」
ルイズは少し恥ずかしそうに顔を下に向けていた。
「あれは・・・・・・そうか、主がやったのか。んむ、聞いてないぞ」
「そりゃ言ってないもの。なんというか、一回話すタイミングを逃しちゃったから今更言いづらくて・・・。
それにその・・・一旦落ち着いちゃったら、なんだか実感が湧かなくて・・・・・・まるで白昼夢を見ていたようで、まだはっきりと信じられないの。」
ルイズはゆっくりと語り始めた。
水のルビーのこと、始祖の祈祷書のこと、そこに書かれていたこと。
自分が魔法を使った時の状況、そしてその結果。
貴様らご自慢のゼロリカ!
定期的にレスして
支援してやったぞ?
「なるほどのう、虚無か。私がガンダールヴであったのは至極当然の帰結だったというわけだ」
「あら、アーカードさんはガンダールヴだったんですか?」
アンリエッタの質問に、アーカードはうんうんと頷く。
「ふむ、凄いじゃないかルイズ」
ポンポンと、アーカードは素直に褒めてルイズの頭を撫でる。
「ちょ・・・ちょっとやめてよ、姫さまの前なんだから」
アンリエッタはその仲睦まじい様子を見て穏やかに笑う。
「あぁ、そうそう。裏切り者のワルドは殺しておいたぞ」
突然思い出したかのようにアーカードは口を開き、その内容にアンリエッタの顔が一瞬強張る。
「犬の餌になった、だからウェールズの時のように話すことは出来んのであしからず」
「・・・・・・そう、ですか」
沈んだ表情を見せたアンリエッタだが、すぐに気を取り直す。
ワルドの裏切りの件は既に殆どの決着がついている。
残っていたのは本人に対する粛清のみであったが、アーカードが殺したというのなら最早言うべきことは何もない。
「それで・・・恩賞の件なんですが、虚無は一国ですら持て余す非常に危険な力です。王宮内部も信用できる人間ばかりではありません。
故にその功績を白日の下に晒せば・・・・・・ルイズ、あなたに危険が及んでしまう可能性が多分にあります。だからその・・・――――――」
ルイズはアンリエッタの言いたい事を察して、首を振った。
「構いません、私の身とこの力は全て姫さまに捧げます。そこに見返りなんて求めていません、大切な友を助けるのは・・・当然ですから」
ルイズは笑ってそう言った、微塵の打算もない心からの言葉。
そんな純粋なルイズは、王宮内で揉まれるアンリエッタにとってこれ以上ない、何者にもかえがたいものであった。
「本当にありがとう、ルイズ」
ルイズとアンリエッタはゆっくりと抱き合い、その絆を確認する。
支援した?
それだけか?
「な…に?」
「アーカード殿」
アニエスが口を開く。抱き合う二人に向いていたアーカードの視線がアニエスへといく。
「本来ならば貴方の功績も隠匿すべきことなのだが・・・・・・その・・少々目立ち過ぎた」
ルイズとの絆を確認し終えたアンリエッタが、そこに付け加える。
「人の口に戸は立てられません。あなたを目の前にして逃亡した、と言うアルビオン兵士が多数いまして・・・」
「まあ、大分殺して回ったからの」
穏やかではないその言葉に少し緊張が走った。
殺すことになんの感慨も見せないようなその声色に、少女が化物なのであると改めて認識させられる。
「・・・えぇ、ですからアーカードさん。あなたには、『シュヴァリエ』の称号を授与します」
「実力で以って認められる騎士の称号だったな、ひいては貴族になるということか」
身近な存在としてタバサが挙げられる。目の前のアニエスもそうである。
「その通りです。破壊の杖奪還と、今は脱走してその所在が掴めないのですが『土くれ』のフーケ捕縛の件も含め、アーカードさんにはそれだけの資格がありますから」
「脱走したのか。まぁしかし異世界の吸血鬼が、名誉ある騎士の称号など・・・いいのか?」
「えぇ、問題ありません。そのことを知っているのは極一部だけでなのでしょう?」
アーカードは一瞬だけ考える、今現在に於いて自分を吸血鬼だと知っている者を頭の中で羅列する。
「そうだな、今のところ知っているのは一応信頼できる者だけだ。レキシントン号を旗艦とした艦隊の人間は皆殺しにしたしの。
タルブでは一応、人間の常識の範囲内で暴れまわったに過ぎんから、多分大丈夫だろう。銃を振り回し、嬉々として殺しまくってた程度の認識の筈だ」
「そ・・・そうですか」
アンリエッタは苦い顔をする。
とりあえずさしあたって問題は無いようなので、予定通りシュヴァリエを授与することにする。
ただ支援するだけではもはや足りない!!
GJを!!
支援が終わればGJを!!
一方ルイズはポカンとしていた、自分の使い魔がシュヴァリエを授与されるなんて・・・・・・でも当然といえば当然であった。
元々平民だからどうとか、吸血鬼だからどうだとか、そういう見方はルイズにはなかったし、なによりもとても名誉なことだ。
ルイズは素直に喜ぶことにした。略式だが叙勲式が行われる。アーカードにとっては手馴れたものなのか、滞りなくそれは終わった。
「ルイズ、あなたは私直属の女官とします。もしかしたらあなたたちにしか頼めないような事をお願いするかもしれません。不便がないよう、これを」
そう言うとアンリエッタは許可証をルイズに渡し、説明した。
「『始祖の祈祷書』もあなたが持っていて。・・・・・・本当は話したい事がまだまだあるのだけれど、女王になってからやる事が多すぎて・・・ごめんなさい」
「いえ姫さま、お気になさらないでください。また時間が出来た時に、昔のようにお話ししましょう」
ルイズの笑顔にアンリエッタもつられる。
目の前の大切な友人がいるから、様々な思惑が渦巻く王宮でも、つらい仕事が積まれても、自分は頑張れるのだと。
zero
「ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール、シュヴァリエ・アーカード。あなたがた二人で、非公式ですが『王立虚無騎士団』をここに設立します」
◇
「王立虚無騎士団、通称『ゼロ』機関・・・ね、ははっ」
学院へと戻る馬車の中、アーカードは一人何かを思い出し笑う。
「しかし・・・この格好にマントは似合わんのう」
喋るアーカードの言葉も耳に入らず、ルイズは押し黙っていた。
「まぁ必要な時にだけ、出して着ればいいか」
なんのレスポンスも返ってこず怪訝に思ったアーカードはルイズへと目を向ける。
俯いたままずっと何かを考えているようであった。
「お〜い」
「・・・」
「あるじ〜」
「・・・・」
「ますた〜」
「・・・・・」
「ルイズ〜」
「・・・・・・」
全く反応のないルイズに対し、アーカードは思いついたかのようにキスをした。
俯いた顔に潜り込むような形で、素早くルイズの唇に己の唇を合わせる。
「んっむぐぅ・・!!??」
支援しちまおうぜ!
アーカードが押さえ込もうと手を伸ばした瞬間、ルイズは反射的に素早く身をよじらせて回避した。
それは過去の経験からか、本能からか、反射か、無意識か、いずれにせよルイズとアーカードの距離が開く。
暫しの沈黙が流れたが、ルイズはただ溜息だけをしてその様子にアーカードは首を傾げた。
「なにか反応してくれないとつまらないではないか、主に私が」
「ふぅ・・・、残念だけどもうキスくらいじゃ狼狽えないわよ。・・・・・・それに今はそんな気分じゃないの」
「何か悩んでいるのなら相談に乗ってやるぞ、私は主の使い魔なのだからな」
一転してアーカードは真剣な目でルイズを見つめた。
ズルイ。普段はおちゃらけたりからかったりする癖に、いきなり真面目になって。
変な包容力があるし、と思えば平然と人を殺す面も持ち合わせているし。
つくづく読めない使い魔である。雲のように霧のようにのらりくらりと・・・、掴めない性格だ。
(私が虚無の担い手でも、これからどれだけ修練を積んでも、きっとこの使い魔を御する日は永遠にこないんだろうなぁ・・・)
ルイズは心の中で一人ごちる。でも、今の関係も悪くないと・・・どこかで思っている自分がいた。
「そう・・・ね、話せば少しは楽になるかもね。アーカードに隠していても・・・・・・しょうがないし」
憑き物が落ちたようにルイズは気の抜けた顔を見せる。次いでゆっくりと『虚無』のこと、そして自分の胸の内を語り始めた。
(・・・ちょろいもんだな)
アーカードは一応真剣に聞きながらも、立ち直ったルイズをどうやって弄るかを考え始めた。
支援
以上で投下終了です、ご支援ありがとうございました。
Wikiまとめの人もいつもどうもです。
これで第二章終了です、今回はまとめ的なお話なので薄味です。
多分・・・次はタバサ外伝書きます。時系列が大幅にズレますけど・・・。
ではまた。
GJ!!
2章終了か…
なかなかそこまで話を進められる人も多くない所を
よくぞ書き上げてくれたもんです
お疲れ!!
作品も面白いが支援も面白い
ロリカードちゃんはけしからんキス魔である
そして慣れはじめたルイズもエロい。
てか、ここのルイズはツンデレのテンプレに嵌めたようなツンデレじゃないから、
結構妙な人間味っていうか、そういうの感じられて好き。
>>612 なまじ死ぬ事が無い分
気に入った人間がどの程度で死ぬか分からず
多少の怪我で驚くほど狼狽しそう
うおおおゼロリカが投下されている
遅ればせながら乙&GJ!!
これではロリカードがお姉さん的なポジションではないか、主人より小さいのに
>>637 そりゃそうだろ、500超えてるん・・・だ・・・か・・・r
狗の餌になりますた
>>637 それがいいんですよ、そんで時たま見せる隙に萌えるのだ
>>633 まったくもうね、けしからんね!エロいね!
そういえば、いの一番に描かれてもおかしくないキスシーンって絵にされて無いのな、流石の変態も躊躇すると見える
>>640 俺に絵心があったらとっくに描いてるっつーの、バカ!まんこ!
>>635 「だからよわっちくてキレエなんだよ、人間は…」
>642
とらと流の最後の戦いが、アーカードとアンデルセンの戦いに重なって脳内に再生された。
>>644 GJ!じゃあ次は逆だな、ルイズがロリカードの(re
>>645 ルイズ的にけっこう勇気が必要な行為かもしれない
投下24時間前、あくまで予定ですので期待しないように(・∀・)
ではこの隙に投下してしまいます。
……同じ時期に書き始めたゼロリカさんが第二章を終えたというのに、なんという体たらく。
確かにリアルな事情でペースアップはしんどいんですが。
現在ですら四日後にレポート三つ挙げなければならないというw
完全に死亡フラグワロタwww
それはさておき、今回は日常編――言い換えれば背後設定固めです。
召喚者全員分やる予定ですが、今回はタバサ。
理由?タバサが好きだからに決まってるじゃないですか。
生粋のアヤナミストですよ僕ぁ。
ということで行きます。多分規制には引っ掛からないはず。
六レス+2(この予告とあとがき)予定です。誰もいないと思うけど、
(だからこその投下予告ではなく投下宣言だったり)
行きます。
HELLOISE それぞれの一日
タバサの場合〜或いは彼女を取り巻くフクザツなカンケイについて〜
「……」
朝方、まだ学院の指定する起床推奨時刻より三十分は早い時間。
まだ大人たちや使用人しか活動を始めていない時間に、蒼髪の女子生徒は目を覚ます。
タバサ――シャルロット・エレーヌ・オルレアンである。
彼女は夜毎、夢を見る。
彼女がまだ幸せだったころの夢を。
そして、幸せが奪われた時の夢を。
そうしていつも、涙を流すのだ。
彼女は起床すると、まず窓を開け、朝の静謐な空気を吸う。
そして、夢の中で流していたのであろう涙を拭うと、
跡が残っていては親友に心配されてしまうので、顔を洗いに洗面所へ向かう。
こんな時間に起床するのは、今日が特別な日だからというわけではない。
彼女はいつもこうなのである。
雪風のタバサの朝は早い。
特殊な事情により夜中や明け方に眠る事も少なくない彼女だが、それでも毎日この時間には起きている。
何故か。
実はこの習慣、彼女の飽くなき欲望によって支えられているのである。
つまりは読書欲と、食欲だ。
当たり前だが、寝起きではおなかいっぱいに食べることはできない。
そして、それでは授業中におなかが空くし、彼女の本懐にも支障が出る。
空腹に耐えつつ退屈な授業を受けるという拷問が嫌ならば、何らかの対抗策を打つしかないのだ。
しかし、何もせずに早起きするというのは苦痛である。というか、そもそも不可能だ。
二度寝という悪魔に連れ去られてしまうのがオチである。
そこで、彼女は読書欲で睡魔に対抗することにした。
するとどうだろう。
もともと活字欲と好奇心にあふれる彼女に、この目論見は大成功だった。
おかげでいつもハシバミ草のサラダを思う存分食べることができる。
まあ、本に熱中しすぎて遅刻しそうになったり、
寝不足+おなかいっぱい=睡眠の方程式が授業中に証明されたりもしたが、
そもそも初めから起床から朝食までをギリギリの時間で組んでいるようなのよりはマシだ。
某公爵家の三女には見習わせたいくらいである。
閑話休題。
ともあれ、いつも通りの一日となりそうだと櫛を通し終えたタバサが思い始めたころ、それは来た。
いつの世でも、予想というのは裏切られるためにあるのである。
――手紙を持った小鳥が、窓を叩いていたのだった。
草原を、影が走っていた。
影は黒い風となり、矢のように走って行く。
高く茂った草を薙ぎ払いながら奔るその影には、しかし一点、鮮烈な蒼が彩られていた。
蒼と黒の影が、驀地に走る。
それは、怨敵へと突き立てられる一本の剣のようにも見えた。
切っ先が向く先には、ガリア王都、リュティス。
――そして、その東端にある、ヴェルサルテイル。
影は魔法使いタバサとその使い魔、人狼のハンス・ギュンシュ大尉だ。
何人も追従させはしない、とばかりに駆ける二人だったが、しかしヴェルサルテイルに着く少々前、
不意に騎乗のタバサが速度を落とせと要求した。
ある程度速度が落ちると、大尉の背中に顔をうずめ、唇を動かさぬよう、小声で呟く。
「……城に着いたら、いつも通り、その姿で待っていて」
それは、人狼だと知られないため。
速度を落とさせたのも、力を隠すためである。
巨躯の凶暴そうな狼だ、と思われれば、それで納得されれば、タバサの勝ちだ。
立派な狼、というだけでも誇っていい結果だが、それでも人狼とただの大きな狼では、雲泥の差なのである。
こういった小細工が、いざというときに役に立つはず。
少なくとも、タバサはそう考えていた。
ヴェルサルテイルへと着く。
しっかりと地を踏みしめ、杖を握り、行ってくる、と頭を撫でる。
そして、
ジョーカー
「あなたは、私の鬼札だから」
…だから、期待している。
そう言い残し、タバサは大尉を置いてプチ・トロワへと向かった。
さて、時間は少し戻って、タバサと大尉が黒い風となっている頃。
二人の目指す先、プチ・トロワでは、とある少女が柳眉を釣り上げていた。
いや、釣り上げて見せていた。
「……ガーゴイルはまだ来ないのかい」
ガリア王女、イザベラである。
せっかくの美人を粗野な仕草で台無しにする王女は、パチン、と扇を机に叩きつけて、
いつも通りの台詞を呟いていた。
三度目となるこの発言。
ピリピリとした空気を感じ取って、侍女たちが慌て始める。
……とはいえ、何が出来るわけでもない。
タバサ――シャルロットが来なければいつまでもこの不機嫌は続くわけだし、
常識的に考えれば、トリステインの魔法学院からこのプチ・トロワまで、まだ半刻ほどはかかるのだ。
(ああ、もう、……あの子は何をしているんだい)
順調に行けば、今はガリアの森の中。
それも、トロル鬼が出る危険な地域である。
くい、とブドウから作った飲料をあおり、溜息をつく。
なお、言うまでもなく地球で言うワインではない。一種のブドウジュースだ。
真昼間の公務時に飲んでいられるほどイザベラは豪胆な性格ではない。
そんなに強くないので、アルコールで判断を誤ると大変だ、というのがその理由だ。
もちろん、そのまま正直に話すのは恥ずかしいので「酒臭い息が嫌いなんだよ私は」と主張しているが。
結構バレバレである。
そして、実はそういう点では周りからの評価も悪くない。
本人は全く気付いていないが。
「シャ……北花壇騎士七号様は、まだお見えになっていません」
「そうかい」
分かり切った答え。
シャルロット、と言わなかったのは、学習の成果か。
なるほど、ガーゴイルと言うのは避けつつ、自分の機嫌を損ねないように配慮したわけだ。
ふん、と息を吐き、ふと思い至る。
いいかげんただ待つのに飽きが来た。
少なくとも、周りからはそう見られたはずだ。今の返答で。
それに、あと半刻ほど――ちょうどいい時間。
ならば、歓迎の準備をしなければならないだろう。
シャルロット・エレーヌ・オルレアンを疎むイザベラ王女として。
さて、今回はどんな趣向を?
あの子はどんなことをされたら腹が立つだろうか?
母親関係――は、真っ先に却下。
そんなことをしたら折れてしまう。
怪我をさせるようなこと――以ての外だ。
それが原因で死んでしまっては何の意味もないではないか。
精神的肉体的に、苦痛ではなく――そして自分のことを嫌うような。
そんな趣向というのは、案外少ないものである。
なんでこんなことをせねばならないのか、と、イザベラはもう一度嘆息した。
ああ、早くあの子に……
――あの子に、殺されてしまいたい。
この、「ともだち」の資格を失った愚かな女を。
早く断罪してほしい。
他ならぬ、あの子によって。
しかし、それは逃げだ、という事も分かっている。
自分はさっさと殺されていいような、そんな軽い罪しか背負わぬ咎人ではない。
苦しんで、苦しみぬいて死ななければならない。
何より、自分を殺してあの子が幸せになれなければ意味がない。
そう、たとえばシャルロットが自分に弓引いた時、誰もが自分ではなくシャルロットに味方するような。
そして、シャルロットが無事にその本懐を全て成し遂げられるような。
そんな死に方でなければいけないのだ。
だから私は仮面を被る。いつもの仮面を。
厭味ったらしい、無能な王女という仮面を。
…しかし、イザベラは気づいているだろうか?
いつも、何だかんだと言ってタバサを待ち焦がれる自分を、侍女たちが見ていることに。
タバサが去った後、妙にさびしそうな表情の自分の様子を、近衛たちが窺っていることに。
そして、振る舞いの割に大事な部分で存外と自分に甘い、とタバサが見切っていることに。
タバサを取り巻く複雑な事情は、今もこじれている途中のようである。
以上で終了です。
存外に短い。
前述したように日常パートです。
虚無の曜日のデルフ購入話を登場人物順に濃くしたものと思っていただければ。
ちなみに、タバサの任務中に関しては、他作品との差別化が図れないと思ったので語りません。
原作に描写されているので必要でない、あるいは他の作品と共通理解が図れている
と思った部分についてはバッサリ切ることにしました。
たとえば、イザベラの説明とか容姿とか。
これが基本方針ということをご理解いただきたいと思います。
ではでは。
次はキュルケと使い魔のウォルターの関係あたりでしょうか?
多分難航するだろうギーシュとセラスは後々でしょう。決闘したら殆ど語るところなくなってますので。
楽しみにしておられる方がいらっしゃれば、拙作をよろしくお願いします。
これは素晴らしいイザベラ王女
実にGJ!
このイザベラなら使い魔でペンウッドをよべる!!
「彼女は無能だ だが 彼女は王女の中の王女だ」
>>656 >>657に同意、自罰的な――でいいのかしらん?――イザベラ様格好いいよイザベラ様。GJでした。
そろそろか・・・
「ルイズ、トリステイン城が見えてきたわよ!」
タバサの隣で地上を見下ろしていたキュルケが、後ろにいるルイズに大声で伝えた。翼に捕まりながら下を見ると、城内を
警備するマンティコア隊の姿が確認できた。ルイズは前に移動して、本を読むタバサに説明する。
「中庭に降りると騒ぎになるから、正門の前に着陸してちょうだい」
「・・・分かった」
タバサはウィンドドラゴンに降りるよう命じ、降下させた。いきなり竜が現れたため、検査を受けていた平民達から
驚きの声があがる。すぐにマンティコア隊のメイジ達が集まってきた。
「お前たちは何者だ、王宮の上空は飛行禁止だぞ」
「待って下さい、私達は怪しい者ではありません。私はルイズ・フランソワーズ、ラ・ヴァリエール公爵の三女です」
「ルイズ・フランソワーズですか? ちょっと失礼・・・隊長、来て下さい!」
隊員が大声で呼ぶと、マンティコアに騎乗した男がルイズ達の前に現れた。
「貴女が、ルイズ。フランソワーズ殿ですかな?」
「そうです、姫殿下に取り次ぎを願いたいのですが」
「分かりました、少々お待ちを」
隊長は部下の一人に命令し、王宮に走らせた。アンリエッタにルイズ達の到着を知らせに行ったようだ。
隊長は振り向き、ルイズ達に向きなおる。
「私はマンティコア隊長、ド・ゼッサールです。母上であるカリン殿のことは、良く知っておりますよ」
そう言ってド・ゼッサールは、ルイズに対し頭を下げた。セラスとリップは、その様子を後ろから見守っている。
「私の母を知っているのですか?」
「勿論ですとも、何せカリン殿は『烈風のカリン』と呼ばれたマンティコア隊の前隊長でしたからな」
そう言うと立派な体躯を揺らし、大声で笑い出した。その豪快さと迫力に、ルイズは圧倒された。ひとしきり笑った後、
ド・ゼッサールは真剣な顔をする。
「所でラ・ヴァリエール殿、貴女にお聞きしたい事があるのですが・・・よろしいですか?」
「は、はい・・・なんでしょう?」
ド・ゼッサールはズボンを下ろした。女性人達は目を見開く。
「私の○○○○を見てください、こいつをどう思いますかな?」
ルイズは無言で○○○○を蹴り上げた。セラスは悲鳴を上げ、キュルケとリップは笑い、タバサは無視した。
支援v
「そうでしたか、ウェールズ様は戦死を・・・」
王女の部屋でアンリエッタは椅子に座り、机に肘を付いてルイズと向かい合っている。
セラスから受け取った風のルビーを左手の薬指に付け、アルビオンで起こった事実を聞いていた。
ラ・ロシェールでの仲間との合流、空賊に扮したウェールズとの遭遇、皇太子に亡命を薦めたが失敗、
ワルドがウェールズを殺害・・・そしてワルドは裏切り者であり、レコン・キスタに属した事も。
取り戻した手紙を握りしめながら、アンリエッタは涙を流した。
「手紙に亡命するよう書いたのに、死んでしまわれるなんて・・・ウェールズ様は、私を愛していなかったのでしょうか?」
「それは違います姫様、皇太子様は姫様は愛しておられました!」
両手を机に叩きつけ、ルイズは反論する。
「皇太子様は言っておられました、『部下と共に闘う』と・・・決して、愛していなかった訳ではございません」
「愛よりも、国を選んだと言うことね。勇敢さを示しに立ち向かって行って、残された者はどうすれば良いと言うのかしら」
寂しげな親友の姿に、ルイズは何も言えなくなった。まるで鏡に映るかのように、自分まで寂しくなってしまう。そんな
二人を、セラスは黙って見つめていた。リップは壁に背を預け、目を閉じて話を聞いている。
しばらく時間が経って、アンリエッタは立ち上がった。ルイズの手を握り、ニコリと笑う。
「貴女のお陰で、無事にゲルマニアとの同盟を締結できます。礼として、水のルビーは貴女に授けます」
「指輪をですか!? ですが、こんな高価な物を頂く訳には・・・」
ルイズはポケットからルビーを取り出し、返そうとする。だがアンリエッタは、手の平をルイズの前に出した。
異論は認めないらしい。
「忠誠には報いなくてなりません。それに、私にはコレがありますから」
薬指に通された風のルビーを見せられると、ルイズは頷いた。アンリエッタは微笑むと、セラスとリップに顔を向ける。
「お二人にも、感謝を申し上げます。私の大事なお友達を助けていただいて。ありがとうございます」
「いや、別に大した事してないですよ。ただルイズさんの後ろに付いてただけですし・・・ね、リップさん」
セラスの問いに、リップは目を開く。そして薄い笑みを浮かべ、首を縦に振って肯定を示した。
´ ̄ ̄ ̄``ヽ、
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「ですが貴女達は、裏切った子爵からルイズを守ってくれました。それだけで、使い魔として十分な働きです」
実際に子爵を追い払ったのはアイドルシンガーなのだが、言わない事にした。言ったら混乱させてしまう。
そんな風にセラスが考えていると、扉がノックされた。扉が開かれ、マザリーニ枢機卿が顔を出す。
「殿下、そろそろ会議の時間です」
「もうそんな時間ですか・・・分かりました、すぐに行きます」
扉が閉められると、ルイズは席を立つ。
「お忙しいようなので、そろそろ帰ります。学友の者達を、待合室に待たせたままにはいきませんので」
「そうね、遅くなると学園にも迷惑がかかるでしょうし。ではルイズ、道中に気をつけて」
ルイズが使い魔を連れて退室するのを見届けると、アンリエッタは風のルビーを見つめながら呟いた。
「ウェールズ様が勇敢に死んだのなら・・・私は、勇敢に生きてみましょう」
◇
ルイズ達がアルビオンから撤収して、二日後。瓦礫の山と化したニューカッスル城、その礼拝堂が有った場所に
ワルドとフーケは居た。左の袖を風で揺らしながら、ワルドは直径1メイルほどの穴を覗きこんでいる。
「どうやらルイズとガンダールヴは、この穴から逃げたようだな」
「風が入って来てるって事は、空に通じてるっぽいね」
溜息をつくと、ワルドは立ち上がって周囲を見回した。
周りはレコン・キスタの兵士達によって埋め尽くされている。宝物庫を無理やりに開けるメイジや、王党派のメイジの
死体から装飾品や武器を盗む傭兵などで、とても騒がしい。そんな情景を見つめていると、遠くから声が聞こえた。
振り向くと、手を振りながら男が走って来ている。その人物に、ワルドは見覚えがあった。
「こんな所に居たのかねワルド君、随分と探したよ。何をしてるんだね、それにこの穴は一体?」
二人の前に現れたのは、クロムウェルだった。ズレた帽子を被り直しながら、ワルドに尋ねる。
「申し訳ありません閣下、手紙を奪い取る任務に失敗しました。私のミスです、弁解の仕様も御座いません」
そう言って頭を下げるワルドに、クロムウェルは爽やかな笑顔を見せ、肩を叩く。
} ヾ ゙' {!li;:, ,, -" , " i__|_|_|_|
ゞァ''ゥ゙_,,..-" ,, - " - |_|__|⊥|___ や ト 帰 そ
ヘ , -''_ , エ","┴ .|__|_|_|_|_ っ リ り ん
i_,7i= |E エ ┴ |_|__|⊥|___ て ス 道 な
E||=E|E エ ┴ [fj] .|__|_|_|_|_ 来 テ .に わ
E||=E|[8]ェ ┴ _ |_|__|⊥|___ た イ あ け
E||=E|E エ ニ.._ |__|_|_|_|_ の ン る で
-,-='.'┷|E エ ニ.._ |_|__|⊥|___ だ に
ーニ_゙、゙ー.┷エ ニ.._ |__|_|_|_|_
ニニニ゙、゙、 _ ゙ 、 ━ |_|__|⊥|__
ニニニニー、゙ 、 \ ー-----|_|_|_
支援w
「何を言うんだね子爵、君は敵軍の将を討ち取ったじゃないか。それに比べれば些細な物だ、君を責める気は無いよ」
慈悲の言葉に、ワルドは再び頭を下げた。クロムウェルは、フーケに顔を向ける。
「子爵、隣にいる女性を紹介してくれないかね」
フーケは目深に被ったフードの下から、クロムウェルを見つめる。
「彼女はソリトンレーダーと無線機システムの開発者、メイ・リンです」
「は?」
明らかに自分とは違う名前に、フーケは言葉を失う。
「あの画期的な軍事技術の開発者かね!? こんなに綺麗な女性だったとは、驚きだよ」
「ちょwwちょっと待ちな、私はメイ・リンなんて名前じゃ無いよ!」
思わず足を踏み出し、ワルドとクロムウェルの間に割って入る。
「私の名はフーケ、土くれのフーケだよ。トリステインの貴族共を部屋の隅でガタガタ震えさせたメイジさ、聞いたこと
くらいあるだろ」
「ああ、噂は何度となく聞いているよ。初めまして、土くれのフーケ。レコン・キスタ総司令官を務めている
オリヴァー・クロムウェルだ、よろしく」
握手を交わしながら、フーケはクロムウェルを見つめた。服やローブの隙間から漂う妙なオーラに、嫌な気分を感じる。
「閣下はただの総司令官ではありません、今やアルビオンの頂点に立つ皇帝です」
ワルドの言葉に、クロムウェルは小さく笑った。そして笑いを抑えると、ワルドに厳しい目を向ける。
「ワルド君、君を仲間に選んだのには理由が有る。トリステインに属するスクウェアメイジなら、他にもいる。だが私は
あえて君を選んだ、何故だか分かるかね?」
「閣下の深いお考えには、凡人の私には分かるはずもありません」
ワルドは、首を左右に振った。フーケはクロムウェルの言葉に、じっと耳を傾ける。
「それは君だけが、自分の過去から目を反らさずに生きているからだ。他の者は皆、それぞれ己の力や富に
目が眩んでいると言うのに・・・」
『過去』と言う言葉に、ワルドは無意識にペンダントを握った。その様子を、フーケは不思議そうな顔で見つめている。
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|支援ワルド|/
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「つまり君は、我々が確保すべき人材のモデルケースとして、うってつけだったのだよ。だから君を選んだ。事実、
これまで君は我々の提供する情報を進んで受け入れ、命令を乞い、言われた通りに動いてくれた。任務は、成功だ」
まるで演説のような口調で、クロムウェルは話し続ける。
「君の経験や、君のメイジとしての力量なども、産物の一つだ。それらを持って、仲間であるかを確かめるのが目的だった。
金と時間はかかったが、この結果に比べれば、極めて些細なことだ」
「つまりアンタは、ワルドにウェールズを暗殺させて『どれほど使える男か試した』ってことかい・・・嫌な男だね」
フーケはクロムウェルに、挑発的な台詞と拒絶的な視線を送る。クロムウェルは気にした風も無く、嬉しそうに笑った。
「はっはっはっはっは・・・そう言う事だ、ミス・サウスゴータ」
「な!?」
過去に捨てた貴族の名を出され、フーケは驚いた。
「では、話は終わりだ。そろそろ次の任務を説明しておこう。ワルド子爵、ソリダsでは無くて、トリステインを倒せ」
「・・・認識しました、我が皇帝」
ワルドは地面に膝をつき、頭を下げた。その上からクロムウェルは話しかける。
「安心したまえワルド君、レコン・キスタは鉄の結束によって繋がった軍団だ。アレを見てみたまえ」
そう言うと、クロムウェルはある方向を指差した。フーケと立ち上がったワルドが、その先に視線を向ける。
そこには瓦礫に登り、『アルビオン万歳! 神聖皇帝クロムウェル万歳!』と叫ぶメイジや傭兵の姿が見えた。
その近くでは死体と化した王党派のメイジを運ぶ、槍を背負った少年兵の姿も見える。
「我々には国を愛する『愛国者達』と、死を恐れない『恐るべき子供達』が居る。決して君一人だけでは無いのだ。
だから安心して、任務に全力を尽くしてくれたまえ」
喋り終えると、クロムウェルは二人の場から去って行った。
┃ ━━┃┃ ┃
┣━━ ━┳━ ━┳╋
┃ ┃ ┏┛┃
┗━━ ┛ ┛ ┛
「随分と自信満々な皇帝様だね、まるで聖地を奪い取るのは未来の必然みたいじゃないか」
「そりゃそうだろう・・・なにせ皇帝は、虚無の力を始祖ブリミルより授かった、と言ってたからな」
「・・・なんだって?」
ワルドの『虚無』と言う言葉に、フーケは聞き返す。
「聞いたことくらいあるだろう。始祖ブリミルが用いたと言われている零番目の系統、真実・根源・万物の祖となる系統だ」
フーケは唖然とした。虚無とはすでに失われた物であり、歴史の闇に埋もれてしまっているのだから。
あの皇帝は、その虚無を操ると言うのか?
「だから貴族議会の連中は、一人の司教にすぎぬ男に総司令官の大役を任せたんだ。一応は投票で決めたらしいが、
形だけだろうな」
「因みに聞くけど、その虚無ってのはどんな魔法なんだい?」
「俺も詳しくは知らんが、なんでも『死者を蘇らせる』とか・・・」
フーケの背筋が凍りついた。
「死者が、蘇るだって? そんなバカなことが・・・」
「もちろん本当かどうかは分からんよ、風の噂を耳にした程度だからな。だが本当なら、この目で死人が生き返る所を
見てみたいもんだね」
「本気で言ってるのかい? よしてくれよ、気持ちの悪い」
フードで口元を覆い、僅かばかりの嘔吐感を抑える。それを見たワルドは、頭を下げた。
「嘘だよ、軽いジョークさ。所で、トリステインとは近い内に戦争になるが、君はそれまでどうする気なんだ?」
「サウスゴーダに知り合いがいるから、しばらくそこで厄介になるよ。アンタはどうなんだい?」
ワルドは顎に手を当て、しばし考える。
「そうだな、取り合えず兵士のテントで寝泊まりするよ。遠くに行ってて戦争が始まったのに気付けませんでした、
なんて事になったら大変だからな」
「ふ〜ん・・・所でちょっと聞きたいんだけどさ。それ、何?」
フーケの視線は、ワルドのマントの内側に向けられていた。そこから見えるのは、茶色い板のような物。
何時かルイズに説明した、段ボール箱だ。
「これは段ボール箱と言ってな、室内などで被れば人に発見されるのを防ぐ事が出来る優れ物だ」
「へ〜、マジックアイテムみたいな物かい?」
「あぁ。それにこれを被ると、安らぎのようなものを感じられるんだ」
思わぬ台詞に、フーケの頭の上に?マークが浮かぶ。
「・・・・・・?」
「分からないか?」
「えぇ、分からないね」
「ならお前も被ってみろ、そうすれば分かる!」ワルドは段ボール箱を押し付ける。
「分かりたくないよ、そんなもん!」フーケは段ボール箱を押し返した。
「全くアンタと言いクロムウェルと言い、どうしてレコン・キスタには変な奴しかいないのさ!」
フーケの絶叫が、ニューカッスル城の跡地に響き渡った。
◇
太陽が沈みかけた頃、ルイズ達は王宮から学園に戻って来た。そのまま真っ直ぐ学園長室に向かい、オスマンに報告した。
オスマンは『お主たちの活躍でトリステインの危機は去った、胸を張りなさい!』と発言し、知らない内にルイズとタバサ、
そしてリップの心に深い傷を付けた。三人が落ち込んでる事にオスマンが気付く事は、残念ながら無かった。
そして学園長室から退室し、その場で解散となった。もうすぐ夕食が始まる時間のため、ルイズ達は食堂に向かった。
ギーシュだけはモンモランシーに耳を引っ張られ、引き摺られて行った。その場に残るは、魔乳と乙女の二人。
「私は夕食に行くから、二人とも部屋に戻ってて。なんなら先に寝て良いから」
そう言い残して、ルイズはキュルケ達の後を追って廊下を曲がって行った。セラスは横目でリップを見る。
しえん
「じゃあ、部屋に戻りましょうか」
「そうね、そうしましょうか・・・」
肩を落としたリップを支えながら、セラスはルイズの部屋に戻った。セラスは棺桶に座り、リップはベットに寝転がる。
「駄目ですよリップさん、マスターに見つかったら怒られますよ」
「良いじゃない。マスターは今いないんだし、少し横になるぐらい良いでしょ・・・」
手を振りながら言うと、すぐに寝息が立て始めた。マスターが帰って来るまでに起こせば良いか、と思いながら、
セラスは洗面器を持って窓から飛び降りた。
メイドが洗濯などに使っている水場に、セラスは居た。ベルトを外して上着を脱ぎ、濡らした布で体を拭いている。
夕食や入浴のためか、周りに生徒の目は無い。
「んーふふ〜ふーふ〜ん♪」
鼻歌を歌いながら洗面器に水を溜め、頭から被る。布を濡らして絞り、ガシガシと髪を拭いた。
「あ〜サッパリしたっと」
薄っすらと見える二つの月を見上げながら、両腕を上げて背を伸ばす。上着を着てベルトを巻き、勢いよく立ち上がる。
「リップさんの分も、用意していこっと」
洗面器に水を入れて右手に持ち、歩いて水場を離れる。ルイズの部屋の真下に着くと、人がいないか周りを確認する。
そして左腕を翼に変形させ、一気に飛び窓辺に降り立った。
部屋に入ると、まだリップは眠っていた。洗面器を置き、肩を掴んで揺すってみる。
「リップさん、水を持ってきましたよ。起きて体を拭かないと、臭いが付いちゃいますよ」
起きる気配は無い。どうしたもんかな〜っとセラスが思った時、突如リップが起き上がりセラスの右手を掴んだ。
「へ!?」
「スキあり!」
そのままセラスをベットに仰向けに倒し、リップはマウントポジションを確保する。上着と手袋を脱ぎ、床に落とす。
部屋に入ると、まだリップは眠っていた。洗面器を置き、肩を掴んで揺すってみる。
「リップさん、水を持ってきましたよ。起きて体を拭かないと、臭いが付いちゃいますよ」
起きる気配は無い。どうしたもんかな〜っとセラスが思った時、突如リップが起き上がりセラスの右手を掴んだ。
「へ!?」
「スキあり!」
そのままセラスをベットに仰向けに倒し、リップはマウントポジションを確保する。上着と手袋を脱ぎ、床に落とす。
「ちょ、リップさん!? いきなり何を?」
セラスの問いに、リップは悪魔のような笑みで答えた。
「さーさくーーっと抱いて、さくーーっと犯っちゃいましょう♪」
リップは玩具を手に入れた子供のようにハシャぎながらセラスに覆い被さり、唇に吸い付いた。即座に舌を侵入させ、
唾液を流し込む。セラスは抵抗するが、両手で頭を掴まれているために引き離せない。
「ご主人様のベットで押し倒される御感想はいかがかしら、セラス?」
「感想も何も・・・こんなの、タダの強姦ですよ。お願いですから、止めて下さいよ」
「ゴメン、それ無理♪ 性行為を無理強いされて、敵軍の兵士に犯されてる気分はどうよ、セラス?」
「どんなって言われても・・・あんっはうんっ!」
「あッそう♪」
聞きたい事を聞くと、リップはセラスのスカートに右手を入れる。乱暴と繊細を交互に繰り返し、
動かし続ける。 何かに取り付かれた様に、リップは一心不乱にセラスを泣かせ、悶えさせ、感じさせる。
「や、ダメ・・・もう・・・・・・」
「イッちゃいそう? じゃあこのままイキなさいセラs」
「ラ・ラ・ラ、忘れ物〜・・・・・・あ」
扉を開けたルイズの目に見えた物、己のベットで交わる二人の使い魔。理由、百合による性行為。
ルイズは左腰に右手を回し、刀を抜くかの如く杖を抜いた。その時のルイズ、まさに山崎九郎右衛門!
「うぬか、ベットを汚すはうぬか」
トリステイン魔法学園に、二人の吸血鬼の悲鳴が轟いた。めでたく無い、めでたく無いww
今日はここまで、くそみそ&MGSによる支援ありがとうございます。
あとwiki保管庫のお絵かき提示版に支援絵が投稿されてて驚き、感謝いたします。
この話はどこへ向かうのだろう
GJ
お美事にございまする
敵軍もどんどんいろいろ混ざって来とるw
本当にこれからどんな方向へ話が行くのか楽しみすぎる
HELLOISEもスナゼロもGJ!
しかし、ほとんど同じ題材で書いてるとは思えんwww
かたやせっせと不安定な足場を固め、
かたや足場がないなら飛べばいいじゃないとばかりにブッ飛ばすw
ここは色んな職人に恵まれてるなw
隊長は覗いているのがばれたらセラスに吸収されそう。
丘へと上る!
ヨーロッパ!
ヨーロッパだ!!ヨーロッパの灯だ!!
訳:
丘(=胸)を上ろう(揉もう)としたらヨーロッパの灯が見えました(ハルコンネンで迎撃されました)
anime3鯖落ち・・・ッ
と思ったら復帰してたわ
分類してみた
虎眼:ゼロ砂ルイズ
百合:ゼロリカ旦那、ゼロ砂リップ
最強の良識人:狂信者サイト
普通の神父化:狂信者アンデルセン
蛇:ゼロ砂ワルド
黄金化:狂信者トバルカイン
ゼロ砂の蛇ワルドはどんな環境でも生き残れそう。
無限バンダナ…
唐突に発射したミサイルごと魔弾でぶち抜かれるワルドの画像がw
>>691ワルドが受けそうなダメージは
ゼロ砂ワルド:なぜか軽傷で生き残りリップに感心される。次の攻撃は段ボール箱で回避、撤退に成功。
ゼロリカワルド:瀕死の重症で原形を留めない殺され方をする。
狂信者ワルド:撃たれたワルドは偏在だった。本体を吸血鬼の超感覚で捕捉され惨殺。
ゼロ砂ワルドは死ぬ画像が想像できない。
いや、俺のスネークのように、きっとつまらんミスであっさり死ぬんだ
見た瞬間開いた口がふさがらん様なシチュで
崖に向かってローリングだな
セラスとリップの百合百合な場面に出くわし
セラス「り、リップさん。敵です敵です」
蛇ワルド「お邪魔だったようだね。失礼する事は…出来そうに無いね。待たせて貰おう」
リップ「OK!手短にするわ」
セラス「ちょっ、むぐぅ(何かに口を塞がれ水音を立てる)」
リップ「ふっふっふ、見られながらは燃えるわね」
セラス「だ・だめぇ・・・」
魔弾に周囲を旋回されている蛇ワルド「性欲を持余す」
唐突に頭に浮かんだ。憑かれているのかな。
明石大佐なシュレ
社交界に混じって情報収集したり
反体制派の橋渡し役に飛び回ったり
シュレのフリーハンドは見てみたい
目的だけ言って任せとけば奇抜な方法を取りそう
とんでもなく外道な手も使いそうだが
シュレは無邪気に外道な手を使い指示した”目的だけ”は達成するだろうな。
シュレに向いてそうなのは
諜報と、後はスコルツェニー的な撹乱作戦とか?
敵軍の制服着せて少数人数で補給線潰したり、標識弄ったり、虚報流させたりしたら凄くいい働きしそう
嬉々として地図書いたりしてしそうだな
少し大規模な悪戯感覚
ふと思ったけど、シュレも風呂嫌いなのかな。
各人のイメージ
大尉=時々、狼モードで水浴び
トバルカイン=主人の手前、嫌悪感を押し殺し我慢して入る
リップ=メガネが曇るとか言って嫌がる
ゾーリン=漢らしく拒む
シュレ=風呂時は、いつも居ない
少佐=命令なら防水を気にしつつ漬かる
バレンタイン兄弟=難癖付けて拒むが無理矢理に肩まで漬けられ100まで数えさせられる
>>702 シュレはばたばた暴れるも
二人がかりで手を引っ張られて、離せー
とかなんとか叫びながら引き摺られていくイメージ
風呂の中に放り込まれても暴れるけど
頭からお湯かけられたりしていくうちに、段々ぐったりと無抵抗になっていく感じ
絶対拒否、しかし大尉ににらまれてしぶしぶだろう
>>704 屈強なゾーリンに引き摺られていく様が見えるようだ
明らかに苦痛だろうにキッチリシャワーで流してから平然と湯船に浸かり100カウント後サウナも満喫するゾーリン
ゾーリンに手の届かないとことか手伝ってもらう大尉(わんこ)
二人にガッチリ押さえ込まれてキレイキレイされるシュレ
シュレに書類を持たせてはいけない直ぐになくすから
洗濯とか裁縫とかを一生懸命に主の為にやってあげるロリカードとか想像すると超ステッキー
大尉をキュルケが召喚、ヒゲカードをルイズが召喚した場合で考えてみた。
ヒゲカード「・・・(黙々とルイズの衣服を洗う)」
大尉「・・・(黙々とキュルケの下着を洗う)」
シエスタ「あの・・・お手伝いしましょうか」
ヒゲ「そろそろ終わるので必要ない」
大尉「・・・(身振りで必要ないと合図)」
シエスタ「そ、そうですか・・・(誰かこの空気何とかして下さい…)」
昼食時、大尉とヒゲカードはシエスタに水場を教えて貰ったお礼にデザート
配りを手伝う。
眼鏡中尉って貧しそう
徴兵対象になる前は毎食野菜の切れ端のスープでしたって感じの
だからリップは、発育不全(これはこれで良い)なのか。
リップは悪い男に騙されそうなイメージ
少佐の下で戦っているのが証拠
ヴァチカンもミレニアムもヘルシング機関もどこも似たような感じだし…うーん
ヴァチカン:人格が増える(ブーさんと被る?)
ヘルシング:ヘタレは割と新鮮?
>>709 ヒゲカードにすると途端にイメージがガラッと変わり世話焼きお父さん娘を傷つける奴は皆殺し仕様に
……これもこれでアリか。
むしろタバサに喚ばせたいな
投下、58分前です。
wktk
∧_∧ +
(0゜・∀・) ワクワクテカテカ
(0゜∪ ∪ +
と__)__) +
「私が、巫女をするんですか? 始祖の、祈祷書を持って・・・?」
「そうじゃ。これは大変に名誉な事じゃぞ、なにせ一生に一度有るか無いかじゃからな」
学園長室で、ルイズは椅子に座ったオスマンと向かい合っていた。
午前の授業中、コルベールによる『愉快な蛇くん講座』が行われていた時に、急な呼び出しを受けた。
何だろうと思って行ってみると、『姫殿下の結婚式で巫女の役を受けてほしい』と言われてしまった。
しかも『結婚式が始まるまでに、詔を考えておくように』と来たもんだ。ルイズは困ってしまう。
「でも、私が詔を考えるなんて・・・詩とか苦手ですし」
困った顔で、オスマンに向ける。
「そう難しく考える必要は無いぞい、なにせ草案は宮廷の連中が推敲するからの。形だけ出来とれば、後は勝手に
直してくれるだろうて」
「そうですか・・・では、引き受けさせていただきます」
オスマンは大丈夫と言ってるし、姫殿下の頼みだし、やっても良いか。そんな感じで、ルイズはオスマンから国宝である
『始祖の祈祷書』を受け取った。作られてから長い時間が経っているためか、全体的にボロボロだ。破れたりしないよう、
慎重に両手で掴み取る。
「結婚式で友に詔を読み上げてもらえるんじゃ、姫もさぞ喜ぶことじゃろう」
オスマンは両手を広げて立ち上がり、ルイズの決意を労う。だがルイズは始祖の祈祷書を開いたまま、動こうとしない。
ゆっくりと顔を上げ、ページを指差す。
「あの、オスマン校長・・・ちょっと聞きたいんですが」
「なんじゃね?」
「これって、なんで中身が真っ白なんでしょう?」
開いたページには、何も書かれていなかった。パラパラとページをめくってみるが、文字が書かれているページは一枚も
見当たらない。
「それはワシにも分からんのじゃ。持って来た者に聞いても『私には分かりません』と言われての」
「そうですか・・・」
腑に落ちないが、分からないのなら考えても仕方が無い。
「安心しなさい、始祖の祈祷書は持っているだけで良い。何も問題は無いぞい」
「そうですね、では失礼させていただきます」
ルイズは一礼し、部屋を出た。胸に手を当てて、大きく深呼吸する。
「姫様の結婚に出席か、ヴァリエール家の者として失敗は許されないわね!」
拳を握り締め、ルイズは教室へと続く廊下を戻って行った。
教室の入口前に辿り着くと、一旦立ち止まった。始祖の祈祷書を服の中に隠し、扉を開ける。
「ヴァリエールです、いま戻りまし・・・あれ?」
中を見ると、みんな好き勝手に雑談などをしている。教壇にコルベールの姿は無く、黒板には『実習』と書かれている。
自分の席を見ると、セラスとリップが居ない。ギーシュとお喋りをしているモンモランシーに、声をかけてみた。
「ねぇ洪水のモンモランシー、ミスタ・コルベールは?」
『洪水』と言う言葉に、モンモランシーは眉間に皺を寄せる。
「授業をほっぽり出して、何処かに行っちゃったわよ」
「どこに行ったの?」
「それはボクが説明するよ」
ギーシュが会話に割って入る。
「君が教室を抜けた後に、ミス・セラスが『私が住む世界では、すでに『愉快な蛇くん』は実用化されてます』と先生に
言ったんだよ。そしたら先生がミス・セラスを連れて、出て行ってしまったのさ。もう一人の使い魔さんも一緒にね」
そう言うと、ギーシュは薔薇に模した杖を口に挟む。急な事態に、ルイズは困惑する。
「すぐには帰って来そうに無いわね・・・」
「ま、授業が潰れてくれたから有難いけどね」
微笑を浮かべながら、モンモランシーは言った。ルイズは自分の席に座り、昼食の時間を待つ事にした。
さて、その頃セラスとリップは何処に行ったかと言うと・・・
「えっとですね、私は技術者とかじゃ無いんで、詳しい事は分からないんですよ」
「同じく、私も知らないわ」
本塔と火の塔の間にあるボロい掘っ立て小屋の中で、二人はコルベールに事情を説明していた。教室でのセラスの言葉を
聞いたコルベールは、二人が『エンジン』に詳しいと勘違いした。だが実際には二人とも知らず、目論見は外れてしまった。
コルベールは肩を落とし、椅子に座る。
「そうでしたか・・・すいません、つい興奮してしまって」
「いいんですよ、私が誤解されるような事を言ったのが原因ですし・・・」
コルベールのハゲ頭に噴き出すのを堪えながら、セラスはハゲました。リップはニヤニヤと、口元を歪めていた。
正午を過ぎても、コルベールは教室に戻って来なかった。セラスとリップも、まだ戻らない。仕方が無いので、ルイズは
食堂に向かった。昼食と食後のデザートを食べ、アウストリの広場に向かった。ベンチに座り、始祖の祈祷書を開く。
周りで他の生徒が遊んでいる姿を横目で見ながら、白紙のページを眺めた。
(姫様の結婚式なんだから、完璧な詔を読み上げなきゃね・・・)
傍から見ると、明らかに肩に力が入り過ぎていた。リラックスしていれば絵画のように見える姿が、今は台無しである。
初夏の日差しを浴びながら詔を考えていると、いきなり両手で視界を塞がれた。
「だ〜れだ!」
後ろからバカにしたような声が響く、こんな事をするのは学園で一人のみ。相手が誰か分からないほど、ルイズの目は
節穴では無い。
「何か用なの、乳お化け」
「あら、分かっちゃった?」
予想通り、正体はキュルケだった。嬉しそうに笑いながら、隣に座る。
「ねえ、それ何?」
「始祖の祈祷書よ」
「始祖の祈祷書って、確か国宝でしょ。なんでそんな物を、貴女は持ってるの?」
「さっき私、授業中に呼び出しを受けたでしょ。あれ、オスマン校長からだったの。それで行ってみたら、姫殿下の
結婚式で巫女の役をするよう言われちゃってね・・・それで、この本を授かったって訳」
「ふ〜ん、大役を任されちゃったわね。因みに聞くけど、ちゃんと巫女を出来るの?」
ルイズは言葉が詰まった、出来ると断言は出来ないが、プライドの所為で見栄を張ってしまう。
「姫様からの願いだもん、やってみせるわ・・・多分」
ハッキリしない言い方に、キュルケは小さく笑った。
「引き受けた以上、失敗は許されないわよ。もしミスったりなんかしたら、独房に入れられちゃうかもね」
「バ、バカなこと言わないでよ! ヴァリエール家の名に賭けて、必ずや巫女を演じてみせるわ!」
立ち上がり、ガッツポーズを決める。固く握り締めた拳が太陽に重なり、光り輝いていた。
「なるほど、つまりルイズは詔を考えるのに忙しくて、外出する暇は無いって訳ねぇ・・・」
そう言うと、キュルケは胸の谷間から羊皮紙の束を摘み出した。ルイズが見ているなか、それをベンチに並べる。
「なに、これ?」
「宝の地図よ」
「宝?」
確かに、それは宝の地図だった。道や山、家などの絵柄が描かれている。中には、宝の在処を示す×印も示されている。
「なによ貴女、これから宝探しにでも行くつもり!?」
「えぇ、そうよ」
あっけらかんとしたキュルケの返事に、ルイズは言葉を失う。
「王女様が結婚式を披露してる間、学園は休みになるのよ。生徒や平民の中には、故郷に戻る人もいるみたいね。
因みに私は親と顔を合わすのが嫌だから、宝探しで暇潰しって訳」
キュルケは楽しげに語る。地図を見つめるルイズは、怪訝な表情を浮かべている。
「これって本物なの? 見るからに怪しげなんだけど・・・」
「そりゃあ魔法屋、情報屋、雑貨屋、露天商、およそ怪しげな店を訪ね歩いて掻き集めたんだから当然よ」
「止めといた方が良いよ、どうせ偽物だ。適当に『宝の地図』を作って売り歩く商人を何度となく見てきたからね、
破産した貴族の二の舞になるよ」
二人が振り向くと、何時の間にかギーシュが一枚の地図を持って立っていた。
「あら、いたのギーシュ。どう、貴方も宝探しに行かない? 因みにタバサも一緒だけど」
「ふん、宝なんか見つかりっこないよ」
ギーシュは吐き捨てるように言った。だが、キュルケは気にした素振りを見せない。
「そりゃ見つかる可能性は低いけれど、見つからない可能性も低くは無いわ。もし宝が見つかったら、姫様にプレゼント
したらどう? きっと貴方を見直すはずよ」
「よし、その話のった!」
即座に意見を翻したギーシュに、キュルケは心の中で舌を出す。そしてルイズに顔を向けた。
「あと、ルイズの使い魔さんも連れて行きたんだけど。良いかしら?」
「私に言われたって困るわ、本人に聞いてみないと・・」
「今どこにいるの?」
「さぁ・・・」
◇
「ええか、ええか、ええのんか〜♪」
「リップさん、こんな朝っぱらから・・・んぁ、あん」
コルベールが退室した研究室の中で、今日も元気に百合の花が咲き乱れていた。
◇
「私は、その案には反対です」
アルビオンの首都、ロンディニウム郊外。空軍の工廠ロサイスに停泊しているアルビオン空軍本国艦隊旗艦
『レキシントン号』の下で、一人の男が呟いた。両の手を強く握りしめ、顔は青ざめている。
その男の前に立つのは、アルビオンの皇帝であるオリヴァー・クロムウェル。右隣には秘書のシェフィールド、
左隣にはワルドが立っている。何時もの羽帽子にマントでは無く、右目に眼帯を付け、額にはバンダナを巻いている。
「アルビオンの長い歴史の中で、他国との条約を利用して戦争を起こした例は存在しません。皇帝、貴方は祖国を
裏切るつもりなのですか!」
『レキシントン号』の艤装主任であるサー・ヘンリ・ボーウッドは、脇目も振らず想いをブチまけた。それほどまでに、
クロムウェルが計画した『親善外交の陰謀』は常軌を逸していた。
「口を閉じたまえ、ミスタ・ボーウッド。これは議会と皇帝である私によって決定したのだ、変更する事は出来ない。
それに君は軍人であり、政治家が決めた事に従う義務がある。それとも何かね、君は文民統制を破る気かな?」
指揮系統の最高位に存在するクロムウェルにそう言われ、ボーウッドは肩を落とした。
祖国の忠実なる番犬が飼い主に牙を向ける事は、決して許されない。
「アルビオンは、卑劣な条約破りの国として認知される事になります・・・それでも良いのですか?」
クロムウェルは微笑みながら答える。
「君が気にする事では無い、軍人はただ黙って命令を遂行するのみだよミスタ・ボーウッド。それに考えてみたまえ、
エルフ達との戦いに勝利し、聖地を奪い返した時・・・些細な外交の問題など、誰も覚えてなどいないよ」
ボーウッドは顔を上げると、クロムウェルにつめよった。
「条約を破り捨てるのが些細な問題ですと、貴方は何を考え・・・うぐッ!?」
突然、背後から首を絞められる。振り向くと、そこにはワルドの姿があった。左腕で首を巻き、右手には
サプレッサーが装着されたベレッタM9が握られていた。ボーウッドの頭の上に『!』が現れる。
「う、撃たないでくれ・・・ぐわ!」
バシュッと言う音と共に、ボーウッドは倒れた。だが、撃たれた箇所からの出血は見られない。
「安心しろ、麻酔弾だ」
ワルドはボーウッドを抱きかかえ、近くに置かれているロッカーに放り込んだ。アイドルのポスターが貼られていたが、
気にせず扉を閉める。スライドを引いて、銃に次弾を装填する。ホルスターに戻し、葉巻を銜えた。
「流石は『不可能を可能にする男』だねワルド君、良いセンスだ。いや、ここは『英雄』と言うべきかな?」
拍手をしながら、クロムウェルはワルドに話しかける。
「私は英雄などではありません、ただの傭兵です・・・」
ライターを着火させ、葉巻に火を付ける。
「子爵、君を竜騎兵隊の隊長に任命する。先頭に立って、レキシントン号に乗りたまえ」
「了解だ大佐、任務を続行する」
『大佐』と言う言葉に、クロムウェルは首を傾げる。
「うん、まぁ細かい事は任せるよ。因みにボーウッド君は気にしなくて良い、頑固で融通は効かないが信用は
出来るからね・・・所でワルド君、ちょっと聞きたいんだが」
「なんでしょうか?」
クロムウェルは、ワルドの腰を指差した。そこには細長い布袋がベルトに引っ掛けられている。
バンダナの下の、ワルドの左目が光った。袋の口を開け、中身を取り出す。クロムウェルと横にいるシェフィールドは、
思わず後ずさった。
「あ、貴方・・・なんでそんな物を持ってるの!?」
シェフィールドの悲鳴にも似た問いに対し、ワルドは楽しげな顔で答える。
「これはワニキャップと言う物で、見ての通りワニの形をした帽子だ。水中で装備すると、敵兵などに見つかっても
怪しまれない特性が有る。単なるマヌケアイテムなどと、侮られては困るね」
喋りながらワニの帽子を被るワルドに、二人は揃って引いている。勿論、心情的にだ。クロムウェルはハンカチを
取り出し、額を流れる脂汗を拭いた。
「な、なるほど。確かに、良いアイディアだね・・・マネはしたくないが」
「使い方次第では、有効な武器になるわね・・・マネしたくないけど」
皇帝と秘書がジリジリと、その場から離れていく・・・その時、『ピルルッピルルッ』と言う独特の音が流れだした。
ちょっと失礼、と二人に言い残し、ワルドは左手を耳に当てる。
『私だよ、フーケさ。いきなりで悪いけど、ちょいと体を見てくれない?』
『体?』
目線を下に向けた、足と足の間を。
『今日も元気だな』
『そこじゃ無いよ、バカ!』
フーケの大声に、ワルドは鼓膜の心配をする。
支援を!一心不乱の大支援を!
『じゃあ、どこを見れば良いんだ?』
『脚だよ、脚』
視線を脚に移すが、特に変化は無い。
『言い忘れてたけど、アルビオンと違って大陸側にはヒルがいるんだ。知ってた?』
『昼?』
『昼じゃなくてヒル、血を吸う生物のことさ。もし沼や川に入る時が有ったら、虫ジュースを使いな。噛まれた時は、
葉巻をヒルに押し付けるんだよ』
テキパキと対処法が伝えられる。
『うん、まぁ注意する事にしよう』
『そうしておくれよ・・・あぁそうだ、もう一つ聞きたいんだけど』
『なんだ?』
『貴方、タバコ吸ってないかい?』
『煙草は吸ってない、葉巻は吸ってるが・・・それがどうかしたか?』
無線機の向こうで、フーケが溜息を漏らす声が聞こえた。
『煙草は体に悪いって事くらい、貴方も知ってるでしょ。悪い事は言わないから、今の内に禁煙しな』
『官能的とすら言える濃厚な香り、この誘惑からオサラバするのは、辛いものがあるんだが・・・』
『肺ガンになって、この世からオサラバしたいのかい?』
声のトーンを一段下げたフーケの声に、ワルドはビビる。
『分かったよ、これから先はヒルに吸わせる事にしよう』
『そうしな、じゃあ切るよ』
スイッチを切り、無線機を戻す。ポケットからオロシャヒカリダケを取り出し、口に放り込んだ。即座に、バッテリー
が回復する。
「失礼しました皇帝、相棒の話が長いもので」
「別に謝る事は無いよ、女の話は長いと言うしね、ハハハ・・・」
適当に返事をしながら、クロムウェルは秘書に流し目を送る。シェフィールドは居住まいを正すと、少し大きな声で
ワルドに状況を伝える。
「では子爵には、このままレキシントン号に乗り込んでいただきます。のちほど風竜を連れてきますので、それまで待機を」
「分かりました、では行ってまいります」
雨除けのために巨大な布で覆われた戦艦に、フライの呪文で乗り込んで行く。姿が見えなくなると、皇帝と秘書は
赤レンガで出来た空軍発令所に向かった。ロッカーから鼾を響かせるボーウッドを、その場に残して・・・。
今日はここまで、次回くらいに『竜の羽衣』を登場させる予定です。
もはやワルド=スネークの方程式は公式となってしまったようです。
ワルド=スネーク
フーケ=パラメディック
クロムウェル=キャンベル大佐
シェフィールド=?
メンヌヴィル=?
アニエス=?
こんなところでビックボスに会えるとは思わなかったw乙ー
ゼロ砂がワルド(スネーク)に乗っ取られていく・・・
ワルド、マチルダのコンビの活躍に期待w乙
「あの作品のキャラがルイズに召喚されました@ウィキ」から来たんだけどこのスレはss投下がないといつもこんな静かなのか?
それとも偶々過疎ってるだけ?
たまたまと言いたいところだが最近は結構過疎ってるな
前はロリカとちゅっちゅしたいとか大尉ともふもふしたいとか賑わってた
盛り上がる時は盛り上がります。
ログ見ればわかるけど、変なところで盛り上がるからね。
だからある意味統合とかできないw
ロリカードとちゅっちゅしたいと言うか、させたい
おれはロリテグラ様とチュッチュッしたいお
>>737 ロリでもインテグラ、潰れるほど踏まれるぞ。
ロリテグラに「私をなめるな従僕!!」とか「うるさいバカ!!さっさと帰ってこいバカ!!」とか言われてみたくない?
俺は言われてみたい、想像しただけで股座がいきり立つ。
むしろ言いたい
変態の巣窟かここは
紳士の社交場
つまり変態の巣窟ということだな
そうとも言う
>>739 回想シーンの、本を両手で抱いてる頃の局長に言われたら絶頂を覚えるな
ロリカードちゃんに性教育を施されたい
>>749 案外何らかの報酬を払えばさせてくれるかもしれん
ドク
設備なし
どこで召喚されても食事を家畜の餌呼ばわりして農業、料理革命を起こす。
ジョゼフが召喚:野良作業の傍ら重工業を支援しガリアの銃、大砲のレベル
を急激に上げ、量産体制を整える。
設備が漂着していた
人工メイジ、強化亜人、改良型吸血鬼を量産し鉄火を撒き散らす。
>>750 旦那が興味を持つ「何か」を提供することができれば、やってくれるだろうな。
人生をかけた喜劇を演じるか、あるいはどん底からの大逆転劇を実現するか……
俺、この七万の軍勢を一人で殲滅出来たらロリカード様に「あっ、犬語じゃないとわからないか?ワンワンワーン♪」って言われながら踏んで貰うんだ。
俺はロリテグラ様よりも今のインテグラ様の方が好きだ
>>753 七万の軍勢殲滅したらさすがのロリカード様も一目を置くだろ。
…たぶん。
いや、もしかしたら「朝飯前だな。もとい、朝御飯だな」って言われるのか…。
ロリカード様は、むしろ「あきらめない奴」が大好きだから、
何があってもそれを目的に頑張っていれば、そのうち認めてもらえるんじゃね?
最後は狗の餌にされます
むしろ望むところです。
七万の軍勢倒しちゃったらもう仲間だよお前・・
>>756 つまり毎日頼みにいけば罵ってもらえて
かつ最終的にはしてくれるということか!
>>760 もちろん、毎日頼みに生き続けると、途中からお邪魔キャラが出てきますが。
それにも負けず、毎日頼み続ければ大丈夫でしょう。
>>761 戦鍋旗(カザン)やワラキア公国の旗を掲げたお邪魔キャラの皆さんですね わかります
ぶっちゃけ、七万人撃退の方が楽そうな気もするな>お邪魔キャラ
あ…あぁぁぁぁぁぁぁ!しまった!!
お邪魔キャラを出したらロリカードじゃなくなっちゃうじゃないか orz
でも、そんな特殊なプレイも…
数百万のロリカード親衛隊(アイドル的な意味で)か…
つまり、お前らですね
撃退と言うのは塵殺でなく
何割かがばらばらになるのを見て指揮崩壊したり
指揮官が肉片にされて敗走するのも含むのかしら
七万に短期特攻して、何割か殺して撃退したのなら、十分認めてくれそうな気がする。
なんのかんの言いつつ、ロリカード様はお優しいからね。
>>765 その零号解放の亡者共、全員が表紙裏補正かかってそうで嫌なんだけど
ワラキア公国軍がご奉仕するにゃん!
走らないでくださーい!!
亡者に見守られながらロリカード様に調教してもらうと。
>>773 むしろ逆に調教したい
「だめぇ…家臣や民達が見てるよぉ」的な
という同人誌を執筆中の
>>774の背後に黒いワンちゃんが!
そういやロリカードの同人ってまったく持って見たこと無いなぁ
もったいない
ちんこ生やしたロリカードがセラス掘ってる本なら…
やな事件だったね……髪の毛一本見つかってないんだろ?
>>774 「マスター、受けだったんですね。受け」
という言葉を思い出した。
>777
節子それロリやない、ショタや
まあでも外見がロリカードだったらちんこ生えててもいいや、俺
最終回か…
たしか、ロリカ×ショルターの同人誌ならあったぞ
需要を考えれば、ロリ旦那に攻められたい人のが多いだろ、常考。
ロリ旦那は掘る方だろうjk
普通の旦那は掘られた方だが
ロリ旦那に掘られる旦那とな
アーカードは、犬やコウモリを体から分離させることができる。
つまり。
ロリっ娘を分離して――何故か男のほうが掘られるとか。
最近は特に迷走してるなこのスレ
来月の今日にはもうヘルシング終わってるからね。
原稿落としたりしない限り。
最終話は前編、中編、後編で三ヶ月持たせます
マジで最終回でもおとしそうで困る
つーか10年近くやってたのな
蛇ワルド(潜入中)
ロリカード「ん?何だ段ボールか・・・」
ルイズ「アンデルセンあの箱は?」
狂信者アンデルセン「段ボールと言う物を整理する時に使う紙の箱ですよ」
ルイズ「へー」
ゼロ砂リップ「あんな所に有ったかしら(一瞥して前を向く)」
狂信者サイト(解っていてやっているのかッみんなッッ)
お久しぶりです 帰郷してきました つ赤福
2300より十話目投下します
しえーん
アンデルセン達が桟橋へと到着した。その大木にさすがのアンデルセンも驚いた。
そして階段を上り、踊り場にさしかかった時、後ろからそいつは現れた。
仮面をつけた男、男の発する気配から、そこそこはできる印象を受ける。
神父は、構えるルイズ達を制し、先に行くよう促した。その彼の前にギーシュが躍り出る。
「あはは、女王陛下の望みのため、このギーシュ・ド・グラモンが、グボア!」
仮面の唱えたエア・ハンマーにより、ギーシュは昏倒した。
その後、男にゴミを捨てるように、階段から落とされる。
アンデルセンは興味なさそうに一部始終を見ていた。
アンデルセンにとっては久し振りのまともな戦闘である。
ルイズも行ったようだし、心置き無く楽しめる。
「いい月だな」
アンデルセンはそう言うと、懐から大量の銃剣を取り出し、仮面に投げつけた。
仮面は風によってそれを防ぐ、その風をものともせず、アンデルセンは飛びついた。
しかし、男はフライで飛び交い、空中で静止する。そのまま仕掛けてこない。
(妙だな…、)
攻撃の意思が感じられない。このままではルイズ達はまんまと逃げ遂せるだろう。
(私の足止めだけが目的か)
おそらくあの傭兵たちも、魔弾も、
自分たちをルイズから引き離す為だけに用意されたのだろう。
乗ってやる必要は無いなと、アンデルセンは感じた。
アーカードはサイトの眉間に照準を合わせている。それに対し、サイトは真半身になった。
何も持たない左手を前方につきだし、ガード。
右手の銃剣は切っ先をアーカードに向けている。
腰は浅く落とされた。アーカードは感嘆する。
左手はこの場合、盾。
盾という名の左手を犠牲に、右手で刺す。
再生能力を持つこの少年にとって、この捨て身は最大級の攻撃力と必殺性を持つ。
良く練られた策だ。
しかし、アーカードをそれ以上に感激させたのはサイトの表情だった。
私への恐怖はある。
死への恐怖はある。
しかし、殺意がある。
私に対する敵意がある。
そしてなにより、諦めが無い。
ただの人間のくせに
ただの餓鬼のくせに
まるであの男たちのようだ
まるであの男のようだ
あのただの老人のような
こいつは人間だ
ヴァン・ヘルシングと同じ人間だ
アンデルセンと同じ人間だ
「素敵だ
やはり人間は素晴らしい」
アーカードのどこか羨ましそうな笑みとともに、トリガーが引かれようとしていた。
自分の心臓に銃剣を突き立ててくれるかもしれない少年に、アーカードは歓んだ。
喜ぶアーカードとは対照的にサイトの心の中は恐怖で満杯だった。
もしアーカードが今仕方考えていたことを知ったなら、勝手なことをいうなと怒っただろう。
一応あの女性は逃げたらしい。よってこれ以上続ける必要は無いのだが。
「退いてくれるわけ無いですよね。」
「ああ、無理だな。」
「ですよねー」
片腕を切り落としておいてごめんなさいで済むと思うほど彼は馬鹿では無い。
逃亡も確実に不可能。もはややるしかない。
拳銃、手榴弾、祝福儀礼済みの銃剣、そして再生能力。
しかし、それらの悉くが、この目の前の男には意味を為さない。
それほどまでにこの吸血鬼は違う。自分とも誰とも、アンデルセンですら違う。
ドラキュラ
しかし、逃げる気にはならなかった。
(見ろ!!)
恐怖を無理やりどこかに追いやり、全神経を一点に集中する。
引き金に当てられた、人さし指。それだけを見る。
鼓動は高く、呼吸は小さくなる。冷や汗が垂れた。
敵の指に力が込められる。体が反応した。
サイトは左に銃弾をかわす。右耳が吹き飛ぶ。
そしてアーカードの喉に銃剣が突き刺さる。
アーカードは倒れない。
銃口が再度自分に向けられる。
「そう甘くは無いか。」
解っていたさ、それ位。
サイトは来るべき銃撃に警戒態勢をとる。
その動きが止まる。
突然、アーカードの頭が何者かに吹き飛ばされた。
倒れるアーカード。
彼の後には一人の、長身にオーバーコートを着た男が立っていた。
スーパー支援タイム
あまりの展開にサイトも、タバサもシルフィードもついていけない。
その長身の男は、彼らを一顧だにせず、アーカードに攻撃を加える。
踏みつけ、蹴りつけ、アーカードの体が原型を留めなくなったところで
ナイフを取り出し、それを振り、アーカードを燃やしつくし、つぎに氷を張った。
サイトはそれを見ながら、考えを巡らせる。
何者だ?
魔法を使ったならメイジ?
でも明らかに人間のパワーじゃなくね?
味方?
あれ?でもアーカードさんは一応今味方だから
そこまで考えたところで男はサイトに銃を突き付ける。
「あ、やっぱり敵ですよね?」
銃弾を喰らいサイトは派手に吹っ飛んだ。
大尉は次に銃口をタバサ達に向ける。風の障壁を張り、何とか銃弾を逸らす。
男はずんずんと近づいてくる。
実戦慣れしたタバサの振る舞いが彼の闘争本能を震わせてしまった
ふと彼女の視界にもう一人現れた。眉間から煙を出しているサイトだ。
(女の子には優しくしろってパパとママに習わなかったのか?……どいつもこいつも!)
能天気なことを考えながら、サイトは気取られぬように銃剣を構える。
そして後ろから銃剣を突き刺そうとした。
だが男は既に察していたのかサイトに後ろ蹴りを叩きこむ。
嫌な音と共にサイトは壁に叩きつけられ、呻きとともに血溜まりを形成する。
内臓が何個か破裂したらしい。
タバサはウィンディ・アイシクルを唱えるも目の前で全て男の手によって砕かれる。
彼女の眼に、冷たい目で自分を見下ろす怪物が映った。
男のこめかみに何かが辺り、吹き飛んだ。
タバサとサイトは男が飛んだ反対側を見る。
「人の女に」
ベルナドットが歩きながら銃弾を撃ち込む。大尉はよろめきながら後退さる。
「手を出すなって」
全弾撃った後、ワルサーからマシンガンに持ちかえ、銃弾の嵐を撃ち込む。
「言ってんだろうが!!」
大尉は派手に吹き飛ぶ。しかし、ベルナドットは口惜しげに叫んだ。
「化け物め!」
大尉は何事もないように立ち上がり首をならした。
見ると男の体に傷は全くと言って良いほどついてない。全てナイフによっていなされていた。
こめかみから垂れた血がおそらく唯一のダメージだろう。
「イッテー!!!!」
何かが叫んだ。タバサはその正体に気づく。
「インテリジェンスナイフ?」
「お前らものを大切に大事に扱え!!大体!こんな所で油売ってる場合か?」
ナイフは男に言いつけている。男は無表情のまま、敵を見据える。
そして屋根へと信じられない跳躍で飛び移り、どこかへ向かった。
「タバサ嬢ちゃん!大丈夫か?」
「私は大丈夫。それより彼」
「生きてるか?!」
ベルナドットはサイトに肩を貸す。
「ええ、まあ…」
サイトは自分の体に意識を巡らせる。いくら生物工学と回復法術による再生能力でも限界はある。
二度の内臓破裂と、右耳と眉間への銃弾は彼を死のギリギリまで追いやった。
タバサは残った魔力でヒーリングをかけてやる。
サイトはシルフィードに上空を旋回し待機するよう命じた。あとから追って来る仲間を運ばせる為だ。
三人はよろよろとルイズ達の後を追った。
一心不乱の大支援
「お前なんで旦那に刃向かった!?勝てるわけねえだろ!」
ベルナドットはサイトに肩を貸しながら怒鳴った。サイトは呆けた。
「……もしかして……怒ってます?」
「たりめーだ!!」
ベルナドットが声のトーンを増す。サイトは少し黙った後、口を開いた。
「…泣いてたから」
「…………はぁ?」
「なんか人の名前を……言ってて………この人にも大切な人が…居るって思うと…助けなきゃって……」
「………」
「俺も……家族……離れ離れになっちゃったけど………いるから…親近感が…」
ベルナドットは黙って聞いている。サイトは口調を明るくして続ける。
「まあ、でも……よく分かんないです。ホラ、助けちゃうでしょ…目の前で困ってる人がいたら。」
今までしんみり聞いていたベルナドットがずっこけた。
「お、おま、限度があるだろ!限度が!」
「いや、まあでもあの人逃げたみたいだし、良かったじゃないですか」
サイトはベルナドットの肩から離れる。話しているうちに回復したらしい。
「もう大丈夫です。神父たちを追いかけましょう」
そう言って駆けだした。
走りながら、ベルナドットに訊ねる。
「置いてきたけど…アーカードさん大丈夫ですかね?」
「死にゃしねえよ。旦那を殺すには数万回殺さなきゃなんねえんだ。
ほっときゃその内追いかけてくる。」
その言葉にサイトは改めて実感する。自分は何て化け物と闘おうとしたのだ。
だが、それ以上にサイトの頭を占めたのは、自分のせいでアーカードがあの男に後れを取った事実だった。
自分の我儘で皆に迷惑をかけ、挙句の果てにタバサまで巻き込んだ。
この少女が自分の為に死ぬ所だった。そう思い至り唇を噛んだ。
「何がチームワークだよ…馬鹿野郎」
そう自分に向けて毒ついた。
ライトニング・クラウドが、雷撃が放たれようとしたとき、
アンデルセンはデルフリンガーを抜いた。そして凄まじい速度で投げつける。
「ちょっと待ってくれ相棒ぉぉぉぉぉお」
悲鳴を挙げ、仮面へと向かう大剣。剣が雷撃とぶつかる。すると雷撃が吸収され、仮面の男がたじろいだ。
「なるほど、そんな特性があったか。」
「へへへ、そうそう…うん?」
アンデルセンは既に敵との距離を超人的な瞬発力で詰めていた。
そして、魔法との衝撃で一瞬静止した剣の柄に拳を叩きこむ。
デルフリンガーは真っ直ぐに仮面の男へ向かう。激痛に叫び声をあげながら。
「いってええええええぇええぇえ」
あまりの行為とその飛んでくるスピードによって、一瞬止まった仮面の男に大剣が突き刺さる。
アンデルセンが至福のもとに張付けられた仮面の男の首を刎ねんとした時、異変が起こった。
死体が、消え去った。
目の前の現象に唖然とするアンデルセン。その彼にデルフが冷静に解説する。
「ああ、こりゃ風の偏在だな。自分の分身を作りだす風のスクウェアスペルだ。」
「スクウェア…成程。」
スクウェアメイジともなると、ここまでのこともできるのかと素直に感心した。
しかしここで一つ疑問が湧く。
「なあ、確かワルドは…。」
「神父!」
下の階段から、サイト達がやって来た。
「ルイズ達は?ギーシュは来る途中伸びてたんでほっときましたが。」
起こそうとしたが、タバサに「邪魔」と止められた。
「ええ、先に行きました。今から向かいましょう」
そう言って上を向いた時、階段を降りてくる男に視線が集まる。
三人にとっては今しがた見た敵
一人にとってはとても懐かしい敵
長身に、熱帯用オーバーコート、ドイツ軍の規格帽
「大尉……!」
彼が所属していた組織の階級名。それだけで彼を表す。
あの狂った指揮官、少佐の切り札
最後の大隊の最高戦力
そして………
「早く行け!こいつは俺が引き受ける!」
そう叫び、デルフリンガーをサイトに投げて寄こした。
とは言っても彼が立ちはだかっているのではどうにもならない。
アンデルセンは大量の銃剣を投げつける。
そのマシンガンのような銃剣の群れが、大尉の拳によって全て粉々になった。
だが神父は距離を詰め、二本の銃剣を突き立てる。
鈍い音が響く、突き刺さったかに見えた。
だがそれは大尉の手によって刃を握られ、刀身が耐えられず、砕けた。
それに構わずにアンデルセンは顔を思いっきり殴りつけ、吹き飛んだ大尉に銃剣を突き刺す。
「殺った!」
「いや、殺ってねえ」
喜ぶサイトにベルナドットは冷静に答える。大尉の体が文字通り霧散した。
銃剣が刺さった大尉の体は霧となり、アンデルセンと距離を取った所に現れる。
呆気にとられるサイトとタバサ、苦々しげに睨むベルナドット。
そして次の大尉の変貌にさらに驚愕した。
大尉の顔が、牙を剥き、獰猛な獣のものとなる。
そして全身が巨大な、白銀の犬となる。
それはまさに、狼、大きい神。
その雄大な、残忍な、気高い獣にサイトが口を開く。
「狼男…。」
ベルナドットは溜息をつく。
「俺達の国ではこう呼ぶ。」
それは吸血鬼をも屠り去る化け物。
「人狼(ヴェアヴォルフ)」
これにて投下終了です 支援ありがとうございました
実家にて十回分程書き溜めたので、推敲、追筆しつつ
コンスタントに投下していく予定です
ええい全部投下してスレを埋(ry
支援!
>>811 そういう事じゃなくて、狂信者の今回の投稿でセラスに関する描写がなくね?って言いたかったんだ。
>>807 乙 あとでゆっくり読むぜ
っていうかアンタ同郷かよ
乙、次回は今回描写されなかったセラスの活躍に期待。
ダイレクトカノンサポート
トリステインの某所。かつて開拓民が森を切り開いて作り、今は誰一人として住む者が居ない村。
その中に、廃墟と化した寺院があった。普段は明るい日差しに照らされ、牧歌的な雰囲気が漂う場所だ。だが今は、
そんな雰囲気は霞のように消し飛んでいる。なぜなら今、その場所は
「ぷぎっ、ぴぎぃ、んぎぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」逃げ惑うオーク鬼達の悲鳴と
「あはははは、ブタのような悲鳴をあげろ〜!」追掛ける魔弾の射手の歓声が
ゴチャマゼに入り混じった、まさに混沌と呼ぶに相応しい状況となっているから。
「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪」
どこぞの撲殺天使みたいな歌を響かせながら、リップは手にしたシャベルに力を込める。寺院に辿り着く時に拾った、
先が尖った物だ。一頭のオーク鬼に追いつくと、飛び上がってシャベルを振り払う。切断され、オーク鬼は頭と胴体が
オサラバした。
即座に次の標的を捉え、一気に間合いを詰める。横合いからオーク鬼の脇腹に目掛けて、シャベルの先を叩きこんだ。
数本の肋骨が折れ、オーク鬼はその場に倒れた。その直後、振り上げられたシャベルによって頭を叩き潰され、絶命した。
仲間が次々と殺されていく非常事態に、生き残った二頭のオーク鬼達はパニック状態となった。もはや縄張りに
入って来た人間を喰い殺すなどと言う考えは吹っ飛び、黒髪の女から逃れようと、森の奥へ向けて走り出す。
シャベルを地面に突き刺すと、リップは一本の木に向かって叫んだ。
「セラス、直接火砲支援!」
木の上に隠れていたセラスは、ハルコンネンを構えた。逃げるオーク鬼の二頭の内、一頭に狙いを定める。
「ヤー!」
返答の叫びと同時に、徹鋼弾を発射した。背後から腰に直撃を受け、オーク鬼は上半身と下半身が引き千切れる。
数秒ほど呻き声をあげ、絶命した。
即座に薬莢を排出し、弾薬箱から劣化ウラン弾を取り出す。薬室に装填し、残りの一頭に照準を合わせる。最初の一頭を
仕留めるまでの間に、かなりの距離が開いている。だがそんなものは、吸血鬼には大した問題では無い。
支援を
一心不乱の大支援を!!
「距離500・・・600・・・・・・今!」
発射された弾丸は木や枝などを容易に貫通し、標的の心臓を撃ち抜いた。オーク鬼はうつ伏せに倒れ、生い茂った
雑草の中に血溜まりを作り即死した。
魔法の援護を受けず、リップとセラスはオーク鬼の群れを殲滅した。微塵の躊躇も、一片の後悔も無く・・・。
上空を旋回していたウィンドドラゴンが地上に着地する。背中からキュルケが降りると、驚きの顔を二人に向けた。
「凄いわね二人とも、流石は吸血鬼だわ。私達の出番が無いのは、ちょっと残念だけどね」
「全くだよ。僕のワルキューレの出番が無いのは、とても残念だ」
そう言いながら後から降りてきたギーシュは、ホッとしていた。キュルケは即座にツッコミを入れる。
「なに言ってるのよ、さっきまで怯えながらオーク鬼を見下ろしてた人がよく言うわ」
「キュルケ、出来ればその話は止めてほしいんだが・・・」
言い合いをする二人に気付かれないよう、セラスは口元を抑えて小さく笑った。リップはオーク鬼の血と脂で汚れた
シャベルを、ポイッと野原に捨てた。背中に布で縛り付けていたマスケット銃を手にし、弾丸を銃口に入れた。
「えっと、あの、その・・・や、やっぱり吸血鬼って強いんですね。凄かったです、本当に・・・・・・」
キュルケの背後で震えていたシエスタが、リップを怯えた目で見ながら呟いた。リップは黙ったまま、シエスタを見返す。
セラスに背負われているデルフリンガーが、口を開く。
「そりゃそうだろ娘っ子、なんてったって黒服と相棒はハルケギニアの吸血鬼より強いんだからな」
「心臓を貫かない限り、死なない・・・」
デルフの説明に、本を読んでいたタバサが補足を加えた。セラスが歩み寄り、シエスタに頭を下げた。
「すいませんシエスタさん、本当は出会った時に言うべきだったんですけど・・・この世界じゃ、吸血鬼は恐れられる存在
だと聞いたんで」
「そんな、セラスさんが謝ること無いですよ! 立場が逆だったら、私だって正体を言ったりしなかっただろうし・・・」
シエスタは両手を左右に振りながら、ペコペコと頭を下げる。そこへリップが近づくと、軽くウィンクをした。
「これからも貴女と友好な関係を続けたいんだけど・・・よろしいかしら、シエスタさん?」
「あ、はい。これからも、宜しくお願いします!」
握手をしながら今後の交友を確かめ合うシエスタ達に、寺院の入口の階段に足を乗せたキュルケが手招きする。
「三人とも、早く来なさい。もうすぐ日が暮れるわ、さっさと宝物を確認しましょう!」
走って来る三人を見ながら、隣に立つギーシュが尋ねる。
「所で、この寺院にはどんな宝が有るんだい?」
「えっとね、『炎の黄金』で作られたと言われる首飾りが有るらしいわ。場所は、祭壇の下みたいね」
その言葉に、ギーシュは唾を飲み込む。
「これで七件目なんだ、今度こそ宝を見つけて姫殿下に・・・」
◇
二つの月によって照らされる、村の寺院。キュルケ達は入り口の階段に座り、燃え盛る焚き火を眺めていた。
ギーシュは薔薇の造花を指先で揺らしながら、毛布に仰向けになって溜息をつく。
「キュルケ、確認のため聞きたいんだが・・・『炎の黄金』で作られた首飾りとは、それかね?」
ギーシュが見つめる先には、キュルケの手に握られる色褪せた装飾品。それは、安物の真鍮で出来たネックレスだった。
足元に置かれたチェストと呼ばれる宝箱には、耳飾りや銅貨が入っていた。
キュルケは黙って首を縦に振ると、ネックレスをチェストに入れる。そして懐から化粧道具を出すと、爪の手入れを始めた。
その様子を、タバサは本から視線を外して見つめている。セラスとリップは、隣り合って階段に腰を下ろしていた。
「どうするんだいキュルケ、これで君の持っていた宝の地図は全て外れたよ。僕はもう、帰った方が良いと思うんだけどね。
他の皆も、廃墟や洞窟で化物や猛獣と戦ったりしたから、疲れてるだろうし・・・」
化粧道具を懐に戻しながら、キュルケは振り向く。
べらぼうに支援だ
存外に支援だ
「そりゃそうだけど、だからと言って手振らで帰る訳にもいかないわ」
「じゃあ何かい、帰りに土産でも買っていくのかい? 銅貨が何枚かあるから、それを使えば良いけど」
「あの〜、それでしたら」
二人の会話に、焚き火でシチューを作っていたシエスタが割り込んだ。お玉を使い、鍋のシチューを器に入れ皆に配る。
「私の生まれ故郷、タルブ村って言うんです。そこはワインの原産地なんですけど、宜しければ、皆さん行ってみませんか?
港町のラ・ロシェールから近いんで、ここからでも近いですし」
それを聞いたキュルケは、ポンと手を叩く。
「ワインか、良いわねそれ。学園に帰ったら一杯やりたいし、どうするギーシュ?」
「別にかまわないよ、何も無しで帰るってのもなんだしね」
「タバサは?」
「・・・問題無い」
「お二人は異論は無いかしら?」
セラスは笑顔で答える。
「良いですよ、ワインは好きですから。リップさん、良いですよね」
「良いわよ」
風に揺れる髪を優しく撫でるリップの姿に、セラスは心臓がキュンと震えた。そんな事に気付く訳も無く、キュルケは器を
持って立ち上がる。
「じゃあ決まりね、明日の朝タルブ村に出発よ! それにしても美味しいわね、このシチュー」
◇
その頃、魔法学園ではルイズが部屋に籠って始祖の祈祷書(以後、始祖本と略する)と睨めっこしていた。
食事と入浴と睡眠、それ以外はずっと椅子に座って始祖本と睨めっこ。このルイズ、とても頑張り屋さんである。
「う〜ん、なかなか良いのが思いつかないわね」
腕を組んで、素晴らしい詩を思い浮かべようとする・・・その時、ルイズに電撃が走った!
「そうだ、何かの文面を書き換えて詩っぽくしちゃえば良いんだわ! そうと決まれば図書室に直行!」
始祖本を掴んで扉を開けて、廊下を全力で疾走。階段を駆け降り、図書館へ突撃。図書委員は不在のため、勝手に入る。
すると、そこで見知った人物に遭遇した。
「オスマン校長?」
そこに居たのは学園長のオスマンだった。椅子に座って、何やら分厚い本を読んでいたようだ。ルイズに気付くと、席を
立った。
「誰かと思えば、ミス・ヴァリエールじゃったか。何か調べ物かね?」
「はい。詔の詩を考えるのに苦戦してまして、何か参考になる資料が無いかと。オスマン校長は何を?」
「君と同じじゃよ。姫様や偉いさんの前で、喋る事になっておっての。そのために、良い言葉が見つからないかと図書室に
来とる訳なんじゃ」
ルイズは関心した。普段は秘書に対するセクハラしかしないエロジジイだと思っていたが、やる時はやる人らしい。
学園長が頑張っているのだから、生徒である自分も頑張らなくてはならない。
始祖本を持たない左手を握り締めていると、オスマンに肩を叩かれた。顔を上げると、オスマンが優しい目で自分を
見つめていた。
「ミス・ヴァリエール、ちょいと肩に力が入り過ぎておるようじゃぞ。肩を回して、リラックスしなさい」
「あ、すいません。姫殿下の事を思うと、つい力んでしまって・・・」
両型を交互に回すルイズに、オスマンは笑顔を浮かべる。
「それは、お主が友達を大事にしておる良い証拠じゃ」
そう言うと、オスマンは机に置いてある本を持って図書室を出て行った。残されたルイズは、ボソリと呟く。
「頑張ろう」
始祖本を机に置き、本棚の前に移動する。フライが使えないため、上の方には手が届かない。下にある本に出来る限り目を
通し、詩に使えそうな材料を集める。
「さて、いっちょやりますか・・・あ、面白そうなの発見」
目の前にあった『ロードス島戦記』と書かれた本を、ルイズは手に取った。
シチューを食べた次の日の朝、キュルケ達はウィンドドラゴンに乗ってタルブ村に向かっていた。
シエスタの説明によると、タルブ村で生産されているワインは位の高い貴族や軍人も好んで飲んでいるらしい。
魔法学園の食事に出されるワインより値が高い一品と聞いて、キュルケのテンションは2〜3倍に高まった。
「楽しみだわ、着いたら真っ先にワインを味見させてもらうわよ」
子供みたいに騒ぐキュルケに、シエスタはコッソリと笑う。前に座って地表を見下ろしているタバサが振り返った。
「見えてきた・・・」
キュルケ達は、前方に目を凝らす。その先には、整然とブドウ畑が連なる村が有った。その中の一つの家を指差して、
シエスタはタバサに尋ねる。
「あれが私の家です、近くに降りられます?」
「任せて」
タバサはウィンドドラゴンの頭を杖で軽く叩き、シエスタの家に降りるよう声をかける。了承を意味する鳴き声を一声
あげると、高度を下げ始めた。その時、シエスタが呟く。
「あれ?」
「どうかしたの?」
キュルケが問う。
「いえ、自宅の庭に見慣れない物が有ってビックリしまして・・・」
「見慣れない物?」
キュルケに習って、ギーシュやセラス、リップも庭を見る。そこには、大きな布で覆われた馬車ほどの大きさを持つ物体が
有った。
「雨除けのために、馬車を布で覆ってるんじゃないのかね?」
「恐らく違うわね、平民が使う馬車より遥かに大きいわ」
ギーシュの予想をキュルケが否定している内に、ドラゴンは地面に着地した。シエスタは一番に飛び降りると、自宅の
扉を叩く。室内からガタゴトと音がして、扉が開いた。出てきたのは、シエスタの父親であった。
「おや、シエスタじゃないか。予定より早く休みを貰えたのかい?」
「そうなの、だから長く家に居られるわ。あ、お客様を紹介するわね」
「こんばんわ。私、トリステイン魔法学園から来ましたキュルケと申しますわ」
いきなり現れたキュルケに、父親は驚いた。見ると、他にも四人の客が来ている。娘に目を向けると、シエスタは微笑んだ。
「村のワインを購入したいって、わざわざ村に来てくれたの。まだワインは残ってる?」
娘の問いを聞いて、父は急いで家に戻って行った。
布が取り去られた物体を、キュルケ達は取り囲んで見つめていた。
全体を漆黒で覆われた物体を、ギーシュやタバサは不思議そうな顔をしながら、見たり触ったりしている。そんな二人の
後ろ姿を、キュルケはコップにワインを注ぎながら眺めていた。そしてセラスは唖然とした顔で、リップは呆然とした顔で、
その物体を見ていた。シエスタが近寄り、心配そうに声をかけた。
「あの、お二人とも大丈夫ですか? これって、何か悪い物なんでしょうか?」
「・・・・・・」
「おい相棒、質問されてるぜ。どうしたんだよ、ヘンテコな物体にボ〜ッとしちまって」
デルフの声に、セラスはゆっくりと顔を右に向ける。シエスタの父親に向けて、たとたどしく尋ねた。
「あの、ちょっと聞きたいんですけど・・・これ、どうしたんですか?」
キュルケとセラスの胸を交互に凝視していた父親はハッとした顔をすると、思い出すかのように説明を始めた。
「一月ほど前にですね、この物体を馬車に乗せた行商人が村を訪れまして。それで手綱を握る男に『この物体を食糧と
交換してくれないか』と言われたんです。珍しそうな物だったんで、リンゴやワインと交換して・・・そしたら後ろから
狼の耳と尻尾をもった亜人が現われて『何をしとるんじゃ、早くエーブを懲らしめに行くぞ!』と叫びながら男の首を
絞めて言い争いをしまして。それで、あっと言う間に馬車は村を去って行ったんです」
蝶のように舞い蜂のように支援
どこかで聞いたような説明に、セラスは何とも言えない気持ちになっていた。そうこうしている内に意識が戻ったのか、
リップは物体に手を触れる。凹みを掴み、横に引っ張る。ガララララ〜ッと言う音と共に、扉らしき物が開いた。
中を覗き込み、鼻を抑える。
「リンゴと獣の臭いがするけど、異常は無いみたいね。まさか、異世界で『ドーファン』に再び出会うなんてね・・・」
「リップさんは、これが何か知ってるんですか!?」
シエスタに顔を向け、リップは物体の正体を明かす。
「この物体の名はAS365、フランスのユーロコプター社が開発したヘリコプター。ドーファンとは、フランス語で
イルカのことよ」
「えーえす? へりこぷたー? え〜と・・・」
脳内が混乱しているシエスタに、セラスが補足する。
「簡単に言えば、空を飛ぶ機械みたいなものです。所でリップさん、何故ヘリの名前を?」
両腕を左右に広げ、リップは苦笑いで答える。
「理由は簡単、これは私の物だから。ライミーの帝国海軍空母『イーグル』を乗っ取る時に用いたのが、このヘリだからよ!」
「「「「「「な、なんだって〜!?」」」」」」
リップの衝撃の事実に、キュルケ達は大声で叫んだ。
以上です、タルブ村攻防戦まであと少し。原作が来月で終わると
知りました。そうなると、このスレも過疎化するのではと心配です。
乙です
うん、まあその辺は大丈夫だと思うよ
投下してくれる人がいる限りは大丈夫じゃね
まだOVAも残っているし、大丈夫じゃね?
われわれが、原作を何年待ち続けたと思う?
連載にいく度のブランクがあったと思うのかね?
我々は待ち続けることになれている、そうだろう?
>>819 投下乙です。
ただ、砲弾が勿体ねー
セラスが石や木の枝投げれば十分オークなんて倒せるよ!
貧乏性なオレの心の叫びでした
ゼロ砂の人、乙
>>834 その辺はゴルゴと一緒で敵を倒せば自動装填されるから問題無いのじゃないか。
原作でも弾数は適当だし。
コスモガンだもんね
むしろ終わった作品のほうが二次創作は書きやすいと思う
作品が終わって困るのは書き手が居なくなることであって
読み手が居なくなることはめったに無い
11話目投下2215より
大隊総員傾注!!
対ss投下支援!!
集結!!
巨大な狼がアンデルセンに勢いよく噛みつき、壁に叩きつける。
アンデルセンの左腕はメキメキと音を立てた。
血の塊を吐いた神父は空いた右腕で銃剣を突き立てようとするも、素早く離脱される。
サイトは今にも千切れそうな彼の左腕に口を押さえる。
だが、アンデルセンのとった行動はさらに恐るべき行動だった。
彼は己の左腕の袖に噛みつき、無理矢理引っ張り上げた。
そして、あろうことか、大尉に向かって行った。
「神父!!」
サイトが不安げに声をかける。しかし、アンデルセンはサイトの方を一顧だにしない。
ただ真っ直ぐに狼へと立ち向かう。眼には未だに闘志と殺意が湛えられている。
突き進もうとした彼は、不意に思いだしたようにポツリと、おそらくはサイトに向けて呟いた。
「そうあれかしと叫んで斬れば、世界はするりと片付き申す」
その言葉の意味が分からず呆然とするサイトを置いてアンデルセンは突進する。
人の姿に戻った大尉は彼にハイキックを叩きこむ。
だがアンデルセン神父の突撃は、蹴りの根元でそれを受け、衝撃を殺した。
「シイイィイィィィィィィ!」
気勢を上げ、アンデルセンのタックルが大尉を階段から突き落とし、諸共階下へと落下した。
「AMEN!!」
彼の叫びが木霊する。
サイトは手摺りによって下を見る。
落下しながらもアンデルセンが銃剣を大尉に突き刺した。
そのまま暗がりに消えた彼らを見送り、立ちすくんだサイトの肩をタバサが叩く。
「行こう」
その言葉に気を戻し、階段を駆け上る。
少年は一瞬心配したが、まあ大丈夫だろうと思い直した。
ギーシュは、一階のロビーで目を覚ました。
どうやらあのまま転げ落ちたらしい。上空を見ると、
自分が落ちたところは高くて見えない。
「よく生きてたな。」
首を抑えて立ち上がる。体に異常は無い。
「何だかんだいっても体が資本だな。軍人は!」
彼の家系は軍人故に、実際の戦闘というものを想定して、体を鍛えられていた。
それが彼の身を救ったと言える。
「さて戻るか」
そう言い階段を上ろうとしたギーシュの後に大きな音が響く。
見ると、男が二人立っている。
一人はアンデルセン、左腕が凄まじい怪我をしている。
そして銃剣が脇腹に突き刺さった男、その男の体が変化し始めた。
たちまち男の体が巨大な狼となりアンデルセンを突き飛ばす。
だがアンデルセンは狼の鼻先を剣で切りつけ、余勢で治った左腕で喉笛を貫こうとした。
しかし狼の体は白いもやとなって掻き消え、アンデルセンの5メートル先に降り立つ。
そのまま二人は対峙した。
ギーシュは余りの光景に意識を飛ばした。
ルイズ達を乗せた船が出港しようとしていた。
ルイズはワルドに頼んだ!
「待って!アンデルセンが!サイト達が!」
「いや、あの追手達がまた襲ってくるとも限らん、早く出港する。」
「でも………」
そう言い、桟橋を見ると、三人の人影が向かって来ていた。
黒髪の少年と青髪の少女が真っ先に飛び乗り、一瞬の躊躇のあと眼帯の男が飛び乗った。
彼らは甲板を転げる。そして丁度船が桟橋を離れた。
銃剣が大尉の体を貫けば拳が神父のどこかをへし折った。
互いの再生能力も限界に近づく。
大尉がふと空を見上げた、人狼の脅威的な聴覚は出航する船の音を捉えた。
それは即ち己の任務の終了を意味する。
だが、みすみす獲物を逃がすほど大尉は人間が出来ていなかった。
なおも続けようとファイティングポーズをとる。
はたからみればそれはただの無表情だったろう。
だが少佐などからみればこの無表情にとてつもない歓喜を見たはずだ。
アンデルセンもまた嬉しそうに笑った。
二本の銃剣を十字に構える。
しかし、次の瞬間二人は弾かれたように、ある方向に首を向けた。
その先にあるのは夥しい数の蝙蝠の群れ。
それらは一か所に集まり人の形を形成する。
そしてそいつが現れた。
アーカード
三人の獣は一斉に距離を詰める。そして、アンデルセンは首筋に銃剣を、
アーカードと大尉は銃を自分以外の二名に突きつけ、危険な三角を形成する。
しばしの静寂
ふいにアーカードが笑いながら、アンデルセンが溜息をつきながら、
互いに突きつけた獲物を相手に向ける。
銃弾を眉間に二発、銃剣を腹に二本、吹き飛ぶ大尉。
しかし、大尉の姿は霧となって掻き消え、かわりに或る物が現れる。
手榴弾
それを見てアンデルセンはギーシュを抱え、銃剣でくり抜き、壁を突き破る。
アーカードは笑顔で、狼の姿となり逃走する大尉を見送った。
支援
爆音が聞こえた気がして俺は港町を見下ろす。
しかし既に町は遠く離れていた。
そして一連の、この三十分に満たない戦闘を総括する。
俺はアーカードさんに立ち向かった。
そうしないとあの女の人が死にそうだったから。
けれども、それによって呼び出された結果はどうだろう。
あの人狼によってアーカードさんは離脱。
俺は愚かタバサまで殺されかけた。
いや相手が見逃がしてくれただけで本当は全滅だった。
そしてあろうことかアンデルセン神父も人狼を引きつける為に残った。
もし俺が余計なことをしなければ、少なくともアンデルセン神父はこの場にいた。
サイトは横で憔悴しきったタバサを見やる。
「………ごめんな」
タバサはしばらく考えていたが、静かに口を開く。
「あの女の人は生きている。それだけじゃ駄目?」
そう、あの女の人は生きてる。そうだとしても。
俺は弱くて、おまけに我侭だ。
「性質が悪いな……」
あの女の人は言った、俺は化け物だと。
違う、弱っちいただのガキだ俺は。
色々な感情を渦巻かせながら俺は星を見据えた。
星が滲んで見えたのは意識が朦朧としていただけでは無かった。
不意にガツンと頭を殴られ俺は頭を抱える。タバサも頭を抱えていた。
見ると、ベルナドットさんが肩を震わせて拳を握っている。
「この馬鹿共!!あっさり飛び移りやがって!落ちたらどうするんだ!」
俺達は呆然とベルナドットさんを見る。タバサが口を開く。
「心配?」
「たりめーだ!!」
俺とタバサは目を見合わせる。ふと誰かの声が聞こえる。
「痛―よぉ、痛−よぉ」
背中ではデルフリンガーが泣いていた。神父から受け取った剣だ。
「相棒ひでえよぉ!投げつけるし、殴りつけるし」
どうやらこの剣も色々苦労したらしい。けど鬱陶しいから鞘にしまった。
「ひでぇなお前」
「薄情」
二人に言われた俺は何故かおかしくて大笑いした。ふと心が軽くなった気がした。
「ちょっと、あんた達大丈夫?」
ルイズが心配そうに近寄って来た。
「あれ?アンデルセンは?」
その言葉に俺は俯いた。しかし、思い直す。俺が今やるべきことは悩むことじゃない。
「敵が来て、そいつを食い止めた。そんで残った。」
そう、そして俺を行かせた(成り行きだが)。ならその信頼に応えよう。
「かわりに俺が守るよ。神父のかわりに。」
ルイズがそっぽを向いて言った。こころなしか歯切れが悪い。
「な…何よ。あんたみたいな弱っちい平民が、私の使い魔のアンデルセンの代わりになるわけないじゃない。」
そう、まだ自分は神父の代わりにはなれそうもない。
だが、どのみち化け物みたいにならなきゃ化け物になんて勝てるわけないじゃないか。
なら、なってやろう。化け物みたいに強く。
「いや素晴らしいな彼らは。」
王宮の玉座に座り、青い髪の偉丈夫が目の前の箱を見ている。
「そ、あれがアンデルセン、そしてアーカードさ」
目の前の箱には蝙蝠の群れへと姿を変える最強の吸血鬼。
大量の銃剣を無限に取り出す退くことを知らぬ不死身の神父。
狼へと姿を変える、ありえない身体能力を誇る大尉。
左腕を変化させ、強力な重火器を事も無げに使う女吸血鬼。と映し出される。
だが、男が注目したのはそれらよりも一つの映像。
赤ずくめの吸血鬼に銃剣を向ける少年。
「ん、そいつも?」
男の傍らにいるのは異国の軍服を着た少年。
その頭には犬のものであるはずの耳。
「准尉。ポーカーはジョーカーだけではゲームにならん。」
偉丈夫は笑みを湛えて答える。
「アーカードは鬼札、アンデルセンも、大尉も。
ならば鬼札の主人達は?あの赤い女は?あの担い手は?
ではシャルロットは?このメイドは?風韻竜は?
ドラキュリーナはどうだろう?あの傭兵隊長はどうだろう?
そしてこの少年は……?」
彼は立ち上がり、狂ったように叫ぶ。
「楽しい、ああ楽しいなあ、楽しすぎる。」
犬耳の少年はニコリと言った。
「嬉しそうだね、狂った王様」
「ていうかベルナドットさん!アーカードさんと俺の諍い見てたならもっと早く来て下さいよ!」
「馬鹿野郎!!そんなことしたらオレが死ぬオレが死ぬオレやだオレがやだ!!!!」
「チキン」
「は?ちょっとアーカードってどういうことよ?!何があったのよ?!」
言い争いを始める彼らを、ワルドは黙って見ていた。
「いやあ、やられたな宿敵」
ギーシュを抱えるアンデルセンに、アーカードが話しかける。
もはや彼らに遠く彼方に飛び立った船に追い付く術は無い。
アンデルセンは何事か考えている仕草をする。
吸血鬼、貴族派、そして最後の大隊。
これら三つの勢力が密接に関わっているのはもはや疑いは無い。
それがこの世界にどういう影響を与えるのかも。
「……ジロジロ見ている奴らもいるしな……」
気配は掴めても居場所まではわからない。しかし何者かが監視している。
まるで見せ者のように
「気に食わねえな」
これが以前の世界なら、異教徒がどれだけ死のうが知ったことではない。
しかし、ここは異世界。彼らはカトリックに改宗する機会の無かった者達。
ならば自分はやらねばならない。
辺獄に向かう者達を神の国へと導かねばならない。
アーカードは溜息をつきながら、己の掌を見る。
ベルナドットは数万回殺しても死なないと言ったが、それは事実では無い。
今の彼は、アンデルセンと戦った後の、全ての命を燃やされた状態。
これまでの戦いで、命のストックは回復したが、依然ほどの化け物では無い。
もはやクロムウェル零号開放は使えまい。
けれどもアーカードは呑気な物だった。
アンデルセン、若きメイジ達、そしてあの少年。
己を撃ち滅ぼしうる敵達。
それだけで彼には十分だった。
「タバサお嬢様が……離れて行っちゃう」
再起不能かと落ち込むセラス。大尉の攻撃により遥か彼方に吹き飛ばされ、
よろよろと戻っていくと空船が出港していくのが見えた。
溜息をつきながら自分を顧みる。まあ地力では大尉には間違い無く劣っている訳だから
敗れるのはいいとしても、無様すぎる。
「まあ、ベルナドットさんがそばにいるならまあいいですけど」
しかし出血が酷過ぎる。いかな吸血鬼とはいえ回復には時間を要する。
というか自分は今のところ流れる水を渡れないのだから、棺桶に入らなくてはならない。
「なんか私……いいトコ無いなあ、なんでかなあ」
私はサイトを見ながら考える。
吸血鬼並みの生命力、そして優しさ。
まるで物語の勇者のような、勇気と雄々しさ。
その彼に淡い憧れを持つと同時に、ある考えが出てくる。
彼は私の目的を達成する力になるだろうか。
いや……。
己の内に湧き上がる黒々とした計画。
吸血鬼という存在を知った時に頭に浮かんだ計画。
アンデルセンに頼んだものとは異なるもう一つの目的。
疑いようも無く彼はそれの障害となるだろう存在。
ならば……。
桃髪の少女に眠たげに応対する少年を見ながらも、タバサの瞳に冷たさが宿る。
それはさっきまでの、楽しいやり取りとは明らかに違う炎。
ベルナドットはそんな彼女を無表情で見ていた。
少年の決意と、少女の思惑を乗せ、船はアルビオンへと向かう。
投下終了です。支援ありがとうございました。
一息つけて番外編というかティファニアの話を土曜辺りに投下します。
ちなみに私の好きなキャラはゼロ魔1タバサ2サイト3シエスタ
HELLSING1アンデルセン2大尉3ベルナドットですので
そんな感じでこれからも進行していきます。よろしくお願いします。
支援だ!
>>850 相変わらずの素晴らしい出来
一気に読んだよ 乙だ
>>850 こういう発言は悪いかもしれないし個人の趣味とかもあるけどあえて言う
ここの作品の中で一番好きだ!
GJ!
悪いと思っていて何故そういうことを言うのかと小一時間(ry
もう夏休みは終わってんだろ
生暖かく見守ってやろうぜ
タバサが暗黒化、ジョゼフが少佐化、サイトが黄金化している。
狂信者の人、乙!
2215より外伝投下します。
アンデルセン達がルイズ達に召喚された頃。
多くの孤児達を抱え、彼らを年長者として切り盛りする一人の少女、ティファニア。
その容姿は可憐であり、その肢体は女性としての魅力に溢れ、
その心はアルビオンから湧き出る霧のように白い、全てにおいて完璧な美女である。
そんな彼女には一つだけ大事なものが欠けている。
友達
長く麗しい金色の髪から顔を出すその長い耳、エルフを表すそれはハルケギニア全土の
恐怖の象徴である。それは彼女を人との交わりから遠ざけていた。
同年代の友達
それは彼女の最大の望みであり、同時に決して叶わぬものであった。
鬱屈とした願望を燻らせていたある日のこと。彼女を世話するマチルダ、別名土くれのフーケより、
彼女から送られてきた手紙につけられた髪の束。そこに書かれていたのは魔法陣、呪文、注意書き
「サモン・サーヴァント………?」
使い魔を呼び出し、契約する魔法。ティファニアはその意図が分かりクスリとする。
「マチルダ姉さん……、ありがとう。」
友達のいない自分を心配してくれたのだ。そして彼女は想像する。
フクロウ、猫、サラマンダー、スキュア。
どんな生きものが自分の使い魔であれ、それはとても素晴らしい友達になるだろう。
どんな生きものであれ、彼らが見たものは自分でも見れる様になるらしい。
それなら私の代わりに世界を見て貰えるかも知れない。
彼女は期待に胸を膨らませ、準備を始めた。
支援!
一心不乱の大支援
準備を済ませ、彼女に俄かに緊張が走る。
(一体どんな生きものだろう?)
もし怖いものだったら?即座に契約を行わなければならない。
もし可愛かったら?うれしいわ。
「ティファニア姉ちゃん頑張れー」
その言葉に意識を取り戻し、呪文を唱える。
「この世界のどこかにいる私の使い魔よ」
取り巻きの子ども達が静かに見守る。
「私の求めに応じて」
杖を振り上げ、下ろす。
「私の終生の友と……なって下さい」
最後の最後でヘタれたが、呪文は成功した。
光る鏡が現れる。
そこから現れたのは。
「へ?」
黒と赤の塊
いやそう思いたかっただけかも知れない。
黒いものは長い髪と服だった。
赤いものは、血。
それは人のはずだった。
しかし、その体は胴から真っ二つとなり、中から何かが見えている。
それが何かは考えたくは無かった。
ようやく気を取り戻した子ども達は口ぐちに悲鳴を上げる。
阿鼻叫喚の渦となる静かな森。
しかしティファニアはその人間の顔を見た。
眼が僅か、ほんの僅かに動いていた。
彼女はポケットから指輪を取り出した。
サムライシスターか?
支援する
母から受け取ったその指輪は彼女の傷を治し、その鼓動を取り戻した。今はベッドで寝ている。
「……綺麗……」
ティファニアは眠る彼女をみて、そう思う。自分達とは違う黄色い肌、漆黒の髪。
彼女の二の腕は自分と違い太く、逞しく、それでいてソフトだった。
「どんな人なんだろう。」
彼女が持っていた異国の字で書かれた書物、十時の形をした首飾り、そして見たことも無い剣。
彼女は怪我を負っていた、つまり戦っていたのだろう。
そこでふと気づく。
「もしかして…………コワい人?」
ティファニアの顔から血の気が引いて行く。
「ちょ、ちょっと待って!落ち付くのよ!ティファニア!」
彼女から貰った手紙を思い出す。
「そうよ!コントラクト・サーヴァントよ!」
あの執事に斬りかかり、逆に斬られた。
我ながら無様な死に方だった。
天井が見える。そうか辺獄にも部屋くらいあるんだな。
元から神の国にいけるとは思っていなかったから、しょうがない。
黙示の日まで、待つか。
ふと視界に何かが入る。
それは見たことも無いほどの美人だ。
天使か?
はは、まさか天国にいけるとは、神様!太っ腹!
その天使は目をつぶりながら私に近づき
キスした
………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………
「ちょっと待てーーーーーーーー!!!!!!!」
「一体どういうつもりだ!!堕天使!!神様の国で同性愛か?!!ふざけんな!!
それともあれか?!!これは神様を信じて死んだ者に対するご褒美か?!!でっけえ世話だ!!それならせめて男よこせ男!!
ていうかそれなら今日は野郎の方が多かっただろうが!あの世でも男女差別かこの野郎って手痛―――――!!!!!!!!!」
あまりの急展開に取り乱した彼女、何が何だか分からずに怯えるティファニア。
痛みの治まった彼女は壁に掛った愛刀を手に取る。そして抜き放ちティファニアに突きつける。
「冷静に考えたらここってあの世か?何かリアルなんだが………。おい堕天使ここはどこだ?」
獰猛な瞳は真っ直ぐにティファニアを睨み、首筋にヒンヤリと冷たい感触が触る。
その根源的な恐怖にティファニアの顔は歪み、泣き始めた。その無防備な泣き顔に彼女は焦った。
「ちょ、泣くなよ!ここはどこかって聞いただけじゃねえか!?」
剣を突き付けていうセリフでは無い。
「こ…ここは………グスン………アルビオンの………」
「アルビオン!?どこだそこは!!?」
「ヒイ!!浮遊大陸………」
「よし、ちゃんと答えないと喉突く。」
「ヒグ!!………ヒイッグ!!………本当………」
「チクッとするね」
「!ウエッ!ウア!」
どうも嘘を言っているようには見えない。質問を変える。
「ローマ、カトリック、ヴァチカン、イタリア、日本、聞き覚えは?」
「グス……………何それ?」
「まあ、あの世だからしょうがねえか。けど死人の相手したことはねえのか」
ふと窓の外を見る、そこに見えるは二つの月。少し感心した。
「どうやらマジであの世らしいなここは…………」
「あの世って………?」
「いや、あたし死んでここに来たんだろ?」
「グスっ……………ううん、サモンサーヴァントで呼んだの。」
「……………は?」
「…それであなたが来て死にそうだったから、私が治したの………。」
その時、扉が勢いよくあき、子ども達が押し寄せてくる。
「ティファニア姉ちゃんをいじめるなーーー!!!」
子ども達がワラワラと彼女に群がって来る。それにティファニアが慌てふためく。
「お願い!子ども達は…………子ども達は…………ううっ」
その姿はまさに強盗に我が子を殺さぬよう懇願する母親そのもの。
(おいおい…………完全に悪者じゃねえ?なんか話もまとまんなそうだし………
こういう時は………)
由美江は、寝た。
(んじゃ、由美子!あとよろしく。)
彼女の人相が変わる。それはあまりに分かりやすい変化である。
獰猛なものから、じょじょに弱弱しく、目は鋭いそれから丸くなる。
「ふえ!?ちょっと由美江?ズルイ!酷いよ!」
その変化に一同は呆気に取られる。
さっきまで人を殺そうとしていた彼女が急に汐らしくなったのだから当然か。
由美子は恐る恐るティファニアに訊ねる。
「あの………ここはどこなんでしょう。」
ティファニアはその由美子のおずおずとした態度に若干理性を取り戻した。
「ハルケギニアの………アルビオンです。」
「はあ、成程。では次にあなた私を治したと言ってましたがどうやって?」
「ま、魔法で………」
ティファニアは指輪を取り出した。
「この魔法の指輪はお母様から貰ったものです」
「はー、便利ですね。」
「ええ、でも無限には使えないの。この石が段々小さくなっていくの」
「そんな貴重なものを………」
「うん、でもお母さんが困った人は助けなさいって言ってたから。」
以上のことから導き出される結論。
由美江は見ず知らずの少女に命を助けられ、介抱された挙句、
この天使のような少女を脅し殺そうとしました マル
(やっちまったなーー!!)
しばらくティファニアと話をした結果、彼女の境遇、この世界の仕組みをある程度理解した由美子は本題に入る。
「それで、私はあなたに使い魔として召喚された訳ですけど……………。何をすればいいんですか?」
「へ?使い魔になってくれるの?」
「ええ、まあ命の恩人な訳ですし。行くあてもないですし」
(おい、由美子!私は嫌だぞ!こんなめんどいの!)(黙れ!!宇宙一めんどいくせに!いいから寝てろ!)
心の中で言い争いを始める由美子と由美江。それを他所にティファニアはもじもじし始めた。
「わ、私は………。その、友達が欲しかっただけで………。だからお友達になってくれませんか?」
由美子は完全に呆気にとられた。仮にも自分を殺そうとした人間にこうも無防備になるだろうか。
(まあ、何はともあれ、これで寝食に保証はついた訳か………)
どうやらここでこの少女は孤児院のようなことをしている訳で、由美子としては、
バーサーカーの由美江に体を使わせるような血生臭いことから逃れるとあらば願っても無い。
体を貸してたら死んでしまったという理不尽な出来事から救ってくれたこの少女に仕えてみるのも悪くは無いだろう。
無論自分の同居人は不満そうだが知ったことではない。
「それではよろしくお願いします。」
深深と頭を下げる由美子。
「あ、こちらこそ………あの所で。」
由美子の体がピクっとはねる。
「貴女はどんな人なんですか?」
私由美子。教皇庁特務局十三課イスカリオテ機関の仕事人。主な任務は異教弾圧と異教殲滅。
別人格由美江に体をつかわれて、神に仇なす異教徒共をこの刀でばったばったと斬り伏せておりました。
そしてイギリスはロンドンに侵攻するため、吸血鬼どもを狩る名目で軍を出し、その実罪も無い一般市民を
情け容赦無く空爆。その作戦失敗の後、最強の吸血鬼と一戦交えるも敗れ、恩人が執事に侮辱されたので
その執事に逆上して斬りかかったら返り討ちにあい、今に至る。
(パネエ………)
正直言葉にするとこれほどヤバい人物だったのか自分。
一般的な道徳規準に当てはめるならまず間違い無く極悪人及びお近づきにはなりたくない人間。
とりあえず当たり障りのないことから言い、これらの事実はオブラートに厳重に包まねばなるまい。
「ええと………私二重人格というやつでして………。」
「姉ちゃん………。この人危ないひとだよ………。」
やはり受け入れられない。まあ危ない人には別の意味で違い無いし、医学知識が発達している元居た世界でさえ
概ね似たような反応が普通ゆえに、中世レベルだろうこの世界ではまあ御の字である。
「うーん、でも嘘を言ってる様には見えないし。」
しかし、この少女は本当に大物らしい。あんな怖い目にあったのにもう忘れている。
けれどもとりあえずやるべきことはまずはこれか。常識で考えて。
(由美江)(あん?)(謝んなさい!)
人格を入れ替える。それだけなのに一目で解る変化である。人格は外見に影響する好例だろう。
その光景に子ども達もティファニアも彼女の言う二重人格を信じてしまう。
狂暴と狂気の人格、由美江はしばらく目を瞑っていたが、意を決して頭を床につけた。
謝罪のポーズ、土下座。
「此度は命を救われた挙句に斯様な凶行に及んだことを深く懺悔すると共に謹んで貴女の友、
使い魔として行動します。…………だからどうか許して下さい。」
最後の方は若干弱めになる口調にティファニアに思わず笑みが零れる。そして彼女と同じポーズをとる。
「こちらこそ、よろしくお願いしますユミエさん、ユミコさん。」
その後立ち上がり二人で握手する。子ども達も渋々ながら新しい家族に同意したようだ。
「とりあえず…………。ご飯にしましょうか。」
由美江は台所に駆けて行くティファニアを見送り、彼女の愛刀に視線を戻し、首を傾げる
(あれ?確かあの執事に壊されたんじゃなかったっけ?)
まあ思い違いかもしれないし、と思い直しそれをベッドの上に置いた。
それは主人を守る為の力として彼女に必要なものだった。それはこれより少し後の話。
それを行ったのは彼女の信仰する神の御業かブリミルの導きかは誰にもわからない。
パン、シチュー、サラダといった夕食にしては質素な料理。大きなテーブルに皆で座り、
ティファニアの隣には、由美江が座る。
「こらこら、皆、お祈りをしてからよ。」
869 :
マロン名無しさん:2008/09/06(土) 22:47:02 ID:to3qSGre
支援を!一心不乱の大支援を!!
それからされる祈りは思った通り自分の宗教とは違う。とりあえず自分は自分で祈り始める由美江。
シチューを一掬いして口に運ぶ。なかなかウマい。そして彼女の主人に目をやる。
顔、超美人。性格、超優しい。家事、普通にできる。胸、いや、これはマジで凄い。
(なんだ、完璧超人か)
既に女は捨てている由美江は妙に納得して食を進める。ティファニアがそんな由美江をじっと見つめる。
「………おいしいですか?」
「ん?まあな」
「良かった。」
パッと明るくなるティファニア。少しドキリとする由美江。
(こりゃ本気でソドムの使者か?)
しかしこの少女を前にすれば普通かもしれないなと感嘆する。それほどまでに綺麗で、無垢だ。
そんなことをとりとめなく考えながら、彼女は食を進める。しかし、ティファニアの由美江に対する
好奇心は止まらない。そこで一つ質問をしてみる。
「貴女のお仕事ってどんな事だったんですか?」
その言葉にパンを千切って口に運ぶ姿のまま静止する由美江。
全身から嫌な汗が流れる。
沈黙が辺りを包み一同は唖然とその姿に目を向ける。
彼女はパンを皿に置き、呟く。
「………由美子よろしく」
そしてパッチリとした瞳になり、頭を抱え、答える。
「…シスターをしておりましたわ」
「あらそうなんですか」
「「「「「うそつけーーーーーーーー」」」」」
ティファニアは誤魔化しきれたが、子ども達はダメだった。
「どうせ血生臭いことだろ!」
「メシが不味くなることだろ!」
「ソ、ソンナコトナイヨ?」
喧噪と共に夜は更け、そうして奇妙な共同生活が始まった。
時はしばらく流れる。
「マチルダ・オブ・サウスコーダの協力を得るため、ウエストウッド村のティファニアを攫ってくること………ねぇ」
「無論建前さ。」
人質をとって仲間にしたところで、役に立つ訳が無い。
「その子の持つマジックアイテムはね、有効回数がある代わりにどんな怪我も治すんだって。」
犬耳の少年、シュレティンガー准尉は対する人物に言った。低く重厚な女声が却って来る。
「それとってこいって?あんたも大概物好きだね。」
短く刈られた髪、歴戦の戦士らしい鍛えられた体躯。明らかに身の丈を超える長さの大鎌。
そしてそれらが全く印象に残らぬ程異常な右半身。
混然と、肌が見えぬ程の術式が描かれている。
生気を無くした右目が彼女を人成らぬ者ということを雄弁に示す。
「どうせ暇でしょ。そう言わないでよ、ご飯増やすからさ、ゾーリン。」
以上で投下終了です、外伝の続きは風のアルビオン編が終わった後で行います。
それでは、支援ありがとうございました。
支援間に合わなかった・・・!
>>871乙
ゆっくりよんでいくよ!
乙でした
次の話も期待してます!
>>871
相変わらずパネエ・・・
こりゃあ外伝も楽しみだな
犬
外伝の方が楽しみになってしまった俺は
間違いなく紅葉おろしフェチ。
ブースト付き由美江vsゾーリン
トバルカインがアンデルセン相手にあそこまで善戦した事を考えると痛み分けになりそう。
狂信者の人乙!
呼ばれたのは執事じゃなくて由美子だったとは・・・
しかし、HELLSINGに登場する連中が次々に呼び出されるとか、普通に不幸極まる気が。
SSとはいえ、大変にご苦労様な事だ。
アーカードやアンデルセンだけでもめくるめく狂気の世界にご案内なのに更にどんどんと……
ペンウッド卿の様なまともな人間代表(ギーシュ)の存在が必要になるな。
今のところ
鉄の処女=キュルケ
目的の為なら何でも=シャルロット
ムツゴロウ=サイト
真直ぐなマクスウェル=ルイズ
hsy
h ヘタレ
s セラス
y ヤッホォォォォォイ!!
h hell
s sing
y ヤッホォォォォォイ!
2130より12話目投下
h はい
s 支援だぜ
y 野郎共
朝もやの森を疾走する巨大な狼、大尉。
その上では長いマスケット銃を持った女性がぐったりとしていた。
「しっかしとんでもないな!あの吸血鬼は!それにあの男!あれが聖職者って嘘だろ!」
ナイフ、地下水はぶつくさと文句をつける。
はっきり言って大尉にとっては何をいまさらといった話なわけだが。
「おい、嬢ちゃん!何寝てやがる!起きろやとっとと!」
リップバーン中尉はぐったりしたままか細い声を上げる。
「ごめんなさい……もっと寝かして……」
正直彼女は限界だった。
あのアーカード達を引きつける任務。その間に邪魔ものを地下水が始末。
そして大尉がバックアップ。余った面子でアンデルセンも何とかする。
無茶もいいとこの作戦とも言えない作戦だったのだが、アーカード及びセラスの参戦は全く予期せぬことだったので仕方がない。
本当は全力でアンデルセンを討伐する予定だったが完全に狂った形だ。
そして彼女は自分を殺した冗談のような化け物を引きつけるだけで精神的な何かを全て使ってしまったのだ。
大尉が落ち合う場所に来た時、彼女は隅っこで蹲り、心の中の何かに熱心に謝罪していた程だ。
そんな彼我の戦力差の中で当初の予定通りアンデルセンをルイズから分断できたのは、
ひとえにこの自分を運ぶ大尉の力である。実質一人で自己と同等の力を持つ二人を相手に
戦ったこの気高き軍人である大尉を頼もしく思う。
そして彼がアーカードと闘ったのは自分が不甲斐ないからなのだ。
しかし、そんな彼女の感謝の心でもどうしようもなく
この獣の上は、揺れる。それはもう。
「すいません大尉……、吐きそう……。」
それを聞くや大尉は急ブレーキを掛けた。
慣性の法則に従い放物線を描きながら吹っ飛び、木に叩きつけられる中尉。
そして吐瀉物を吐き出した。美人が台無しのその姿に、大尉は目を逸らしてあげた。
「いや、お前のせいだろ?」
ナイフがツッコむも、それは完全に無視された。
世界樹の上で一同は集まった。
キュルケ、シエスタ、ギーシュ、アンデルセン、アーカード、そして
「しくしくしくしく」
泣きながら喚く、棺桶。中に入っているのは吸血鬼セラス・ヴィクトリア。
何事かと通行人は見やるが、アーカードとアンデルセンが怖いため誰も何も言わない。
「どうにかならんかね。」
ギーシュはアーカードに聞くが、吸血鬼は流れる水を渡れないのだからしょうがない。
とにかく、こうしている場合ではない。
「ワルド子爵が裏切り者かもしれない。」
アンデルセン神父により、この疑いが掛けられる。
そう多くはいない風のスクウェアであることも一つ。
また、敵が明らかにこちらの分断を狙ったこと。そして早すぎる出航。
漏れていたこちらの行動がこの疑惑を信憑性の高い嫌疑とした。
「もしそうだとしてもどうやって包囲されているニューカッスルまで行くの?」
キュルケの問も最もだ。王党派はもはや貴族派に完全に包囲されている。
「空からシルフィードを使って。」
「NON 大陸最強のアルビオン竜騎士にこんな大勢乗せた風竜が勝てる訳がない。」
「少数精鋭を持って、中央突破」
「NON 外交問題に発展するし、何より城が私達を入れてくれるかしら。」
「僕のウェルダンテで穴を掘るってのはどうだい?」
一同静止する。
「場所は解るの?」
「水のルビーのある場所なら解るはずだ。」
「それで行こう。」
セラスの棺桶のロープを咥えたシルフィードに、代わりにウェルダンテを咥えさせた。
そして風韻竜は空高く飛び立った。
こちらギーシュ・ド・グラモン、風竜の上の空気が最悪です。
ただでさえアーカードとアンデルセンの仲は悪いと言うのに、自分の命令を無視され、
勝手に退却する敵を殺そうとしたことと、それを邪魔したとはいえサイトを殺そうとした
ことで、キュルケとシエスタが怒っている。女性二人の怒りの余波はギーシュの胃を痛めた。
当のアーカードはどこ吹く風でにやにや笑っている。
「んで、サイトさんを如何したんですかアーカードさん?」
特にシエスタは怒り過ぎてなにやらオーラが見える。恋する乙女は恐ろしい。
「耳が吹き飛んだだけだが。」
アーカードは左手を落とされ喉に銃剣を刺されたのだからあいこにしても不釣り合いなのだが、
シエスタはさらに怒りを強めたようだ。恋慕の力はげに恐ろしい。
「全くパパとママの愛情が足りなかったんですかね?」
シエスタの背後にはもはやなんらかの生き霊が出始めていた。
確かにどう考えても、逃げる敵を殺そうとした味方を止めたサイトに非は無い。かといってアーカードだってそれなりに、
それこそ自分よりは活躍したのだから、そう責めてやることもあるまい。
などとギーシュが色々考えて気を揉むもアーカード自身があまり気にしていない。
でもこのままでは自分の胃の方が危ない。そんなこんなでギーシュは唸った。
そんな彼らを完全に無視し、アンデルセンとアーカードは語る。
「宿敵。あの少年は確かにただの日本の高校生に過ぎんのだな?」
「ああ、戦ったことも、命の危険に遭ったことも無い、ただの子どもだとも」
「くく……そうか、だとすれば何とも面白い男だ、見かけや表面上なんぞよりずいぶんとおもしろい男だ。
双月の輝く空の下で、貴様と伊達男の戦闘の回りで、雲霞の如きグール共と吸血鬼との対峙で、
嵐を呼ぶ風竜の目の前で、あの男は何をし、何を選択したのか。」
アーカードは狂気を孕んだ目でアンデルセンに笑いかけた。
アンデルセンはそれにあの凶悪な笑みで応える。
それがギーシュにはなぜか、息子の成長を喜ぶ父親に見えた。
「あれ?サイトってばそんな凄かったっけ?いやーん惚れちゃいそ」
「な?!ちょっと駄目です!それはダメです!」
じゃれあう二人の少女を見て、話題が変わりほっとするギーシュ。
ふと、シルフィードに咥えられたウェルダンテを見て思い出す。
「何か忘れてないかね?」
「しくしくしくしくしくしくしく」
そのころ港では女性の泣き声が漏れる棺桶に黒山の人だかりができていた。
(ひどいですよ、マスター……タバサお嬢様大丈夫かな……)
今の主君の身を案ずるセラス。少し状況を整理してみる。
向こうにいるのはサイト、ルイズ、タバサ、隊長、そして裏切り者の可能性の高いワルド。
もしアンデルセンの予想通りなら状況はかなり悪い。そしてアンデルセンが予測を外す確率は低いだろう。
せめて自分がいれば、そう思って後悔するのは大尉との戦闘。
はっきりいって彼我の戦力差は拮抗していたはずだ。かなり危なかったとはいえ、
自分は彼に勝利したのだから。そして彼の存在に思い当たる、ベルナドット。
自分は彼の血を吸った。そして命を吸収したはずだ。その彼が今、生きて実体を持ち、存在している。
おかしい気もしたが、別に悪いことではないし、置いておこう。
それにベルナドット自体の有能さは、自分の聊かのパワーダウンよりも大きい。
彼はただの人間であるが、人間に過ぎないゆえの強さを持っているのだから。
(頑張って下さい。ベルナドットさん)
自身の相棒に、彼女は絶対の信頼を持っていた。
土くれのフーケは待ち合わせの酒場で仮面の男を待っていた。
あの男に差し出された手紙に書かれたのは、あの村の詳細な場所。
それだけで彼女を屈伏させるには十分であり、むしろ連中の不気味さを物語っていた。
「ティファニア……」
約束の時間を三時間過ぎても彼はこなかった。水を呷って店をでる。愛しい人の待つ家へ。
「もし、あの子達に手をだしたら、ただでおくかい」
「ん?」
サイトが目を覚ました時、見知らぬ牢屋で、ルイズ、ワルド、タバサ、ベルナドットが、
自分を見ていた。一体どうしたことかと皆に尋ねた。
「空賊に襲われてね……。」
どうも自分が寝ている間に貨物船は空賊に拿捕されたらしい。その間自分はずっと寝ていた事実に愕然とする。
「ごめんな……。神父の代わりに守るって約束したのに。」
そう謝罪するサイトにルイズは真赤な顔で指を立てる。
「別にいいわよ。あんたみたいな只の平民が貴族の私を守れるわけ無いんだから。」
そう言うルイズにサイトはずっこける。
「ただのって……」
「ただのよ!アンデルセンくらいならともかくあんたは普通の人なんだから無茶しなくていいの」
ベルナドットが、ルイズの怒りように困惑するサイトに耳打ちする。
「この嬢ちゃんお前が旦那に立ち向かったって聞いた時無茶苦茶心配したんだぜ。」
「そうそう、わんわん泣いて大変だったぜ。おまけにおめえ起きねえからなぁ」
「うっさいわねボロ剣。爆破するわよ。」
サイトは驚いてじっと彼女を見る。ルイズはさらに顔を赤くする。
「大体あんた無茶しすぎなのよ!聞いたら無謀な戦いばっかして!死んだらどうすんの!?
アンデルセンだってそうよ!なんであんな化け物と闘うの?馬鹿じゃないの?!」
アンデルセンという言葉を聞き、サイトの表情が曇る。そして疑問が湧いた。
「神父はともかく、なんでお前そんな心配すんだ?俺のこと。ただの平民なんだろ?」
その言葉にルイズははっとして横を向く。そして苦しげに口を開く。
「あんたが……命の恩人だからよ!それ以上でも以下でもないわ!」
言ってしまって自分で後悔する。なんでもっと可愛らしく言うことができないのだろう。
しかもサイトはそれで納得行ってしまったらしい。
「そっか…でもいいんだぜ?そんな気にしなくてもよ?」
サイトはそんなことを言って笑った。そして今度は視線をタバサに向け、謝り始めた。
「悪い!俺のせいで危険な目に!」
「あなたのせいじゃない。私が未熟だから」
「でもやっぱり……。」
タバサはしばし考えて人さし指を立てる。
「一個貸し。」
「分かった!絶対返す!」
その後話し合う二人をルイズは嫌そうな顔で見つめる。
「焼きもちか?」
そう言ってくるベルナドットをルイズはぽかぽか殴った。
「んなわけないでしょ!あんな馬鹿に!」
「そうかい?まあ、サイトにはシエスタがいるからいまさらだが。」
その言葉にルイズが頬を膨らませる。彼は頬を指で押し、空気を抜いてやる。
「なにすんのよ!」
「そうそう、そうやって元気よくいきゃ大丈夫だって。まあでも俺はタバサ嬢ちゃんを応援するがね。」
タバサはベルナドットを無視してサイトに訊ねる。
「服まで治っているのは、何故?おしえて。」
「き、禁則事項です(ハート)」
何故か嫌な汗を流しながら、人さし指を口にあてるサイト。しばらくの静寂。
「自分でも解らないのね」
やっちまったとでも言うように俯くサイト。
ふいに空賊の一人が牢にやってくる。
「でな!お頭がお呼びだ。」
船長室にいたのは、浅黒い髭面の男だった。筋肉質で逞しいそのあらくれが聞いた。
「貴族派につく気はないか?」
「誰が汚らわしい連中の仲間になるもんですか!」
サイトは慌ててルイズを制する。しかしルイズは聞かない。
「何よ!こんな恥知らずの言い成りになれっていうの!?」
「時と場合ってもんがあるだろ!」
ルイズは憮然として横を向く。そして重く口を開いた。
「アンデルセンは……退かなかったわ。アーカードにも人狼にも…。私はあいつの主人よ……。
あんたが吸血鬼に退かないのと同じようにね……私も退けないのよ!あいつに胸張って会うために。」
その言葉を聞き、空賊の頭目が大声で笑い始めた。そして自分の髭に手を掛ける。
するとそれがべりべりと剥がれだし、さらにバンダナとカツラを取り外すと金髪の美男子が現れる。
呆気にとられる一同、タバサの表情だけが変わらない。
「アルビオン皇太子、ウェールス・デューター!トリステインの大使達よ、度重なる非礼を許して欲しい。」
呆然とするルイズ達を件の皇太子は見回す。するとタバサを見てハッとした様子を見せた。
「君は……いや。君にも事情があるだろう。」
またもポカンとする一同。ルイズに至っては完全に静止している。
「とにかく遠路遥々御苦労だった。白の国へようこそ諸君!」
「おお硫黄ですか!これで貴族派の連中に目にものを見せつけてやれますな!」
ルイズは部下を労うのを終えたウェールズに訊ねる。
「王党派が勝つ可能性はないのでしょうか?閣下」
「無いよ。我が方は三百に対し敵は五万。万に一つも勝ち目はない。」
その言葉を聞き、ルイズはウェールズに泣きついた。
「ならば閣下、トリステインに亡命なさいませ!おそらく女王陛下もそれを望んでいます。」
ルイズがその言葉を口にした瞬間、サイトは何故かワルドの方を見た。
今まで全く目立たなかった彼の存在感が急に際立ったのを感じたからだ。
「いや、そうする訳にはいかない。亡国の王子が亡命したとあっては同盟締結に問題が生じるだろう。」
その言葉に一同はハッとする。この男は滅びの途にあってもそこまでの情報を手に入れていたのだ。
「あのレコンキスタと名乗る連中は聖地の奪回などという馬鹿げたことを言っている。
それによって流れる民草の血を考えていない。我々はハルケギニアの貴族として彼らに
目にものを見せねばならない。
そして…………。」
ウェールズは向き直った。その眼には悲壮な決意が込められている。
「これは我々ハルケギニアの人間全体、いや知性ある者全体の問題なんだ。
君達に見せよう、そして伝えて欲しい。彼らがこの世界の何を如何しているかを。」
ウェールズに連れられ一同は城の地下に連れられた。
「暗いな。幽霊でもでそうだ。」
サイトが何気なく言った一言にタバサがビクりとした。
「ん?どうした。」
「………」
「ああ、タバサ嬢ちゃんはお化けが苦手なんだよ。」
タバサは杖でポカポカとベルナドットを殴った。その反対の手でしっかりとサイトのコートを握りながら。
才人は聖書の一節を口にし、煩悩を追いやる。
「幽霊か………。それだったらどれだけマシか。」
ウェールズの呟きの後、サイトの鼻孔が捉えたそれは覚えのあるものだった。
「以前貴族派に夜襲を受けた部隊があってね……。生き残りが一人いて彼をこの城に運んだ。
治療も間に合わずに死んでしまう。それだけなら良かった。」
奥に一際頑丈そうな扉があった。ウェールズはそれを開け、明かりをつける。
目の前には牢獄があり、そこには囚人らしき人がいる。
それを見てタバサはふらりとサイトに寄りかかり、ワルドは口を押さえ、ベルナドットは舌打ちし、
ルイズは卒倒しサイトに支えられる。それはもはや人では無い。
ただの動く、肉の腐った、死人。
サイトは歯軋りをし、吐き捨てるように呟く。
「グール」
「知っているのか?」
「俺達の世界の吸血鬼が作る化け物です。グールは吸血鬼によってどこまでも増えます。
そしてグールに殺された人間もまたグールに、そうやって無限に増えるんです。」
ウェールズが嘆息する。
「そうなのか…、これがレコンキスタの吸血鬼どもが生み出すとは知っていたが……。」
サイトは壁に拳を叩きつける。もし、これが大量に出回れば………。
その後、ウェールズに吸血鬼に関する持ちうる知識全てを伝えたサイトは、彼に頼んだ。
「構わんが………。」
ウェールズは牢のカギを開ける。
サイトはその中に入り、襲いかかるグールの心臓に銃剣を突き立てた。
「一度こうなった人間を……元に戻す術は無い。情けをかけては……いけません。」
そう言い、顔を拭った。拭ったのは血か、それとも他の何かか。
「レコンキスタの長、オリヴァー・クロムウェルは一介の司教に過ぎなかった。」
城の一室でウェールズとルイズ達が話を始めた。紅茶を出されているものの皆口をつけていない。
「それが短期間でこれだけの勢力になったのは、我々王家の体たらくもあったが、それだけではない。
どうも三つほど理由があるらしい。」
元々大貴族であるサウスコーダ家を取り潰した辺りから、貴族達の間で危機感が広がっていた。
また、財政難による徴税過多により、領民の不満も高まっていたという。
だが、アルビオンの大多数や他国の貴族までにレコンキスタの信奉が増えたのは他にも理由がある。
「一つは、彼らは他を吸血鬼とする力を持つという。実際に神官や、平民を吸血鬼に変えて見せている。」
そのやり方にサイトは拳を握り締めた。あの哀れな村も彼らの仕業なのだろう。
そこで、ベルナドットがウェールズに質問する。
「なんで貴族じゃなくてそんなどうでもいい奴らを吸血鬼にするんだ?」
その言葉にタバサが代わりに答えた。
「貴族は自分勝手」
成程、吸血鬼にしちゃうと言うことを聞かなくなるわけかと、ルイズを見てサイトは納得した。
「何よ?じろじろと。」
「別に。」
ウェールズが咳ばらいを一つする。
「もう一つ、クロムウェル自身が吸血鬼とはまた違った化け物だという。」
「もしかして人狼ですか?」
「人狼……それが何かはわからんが……。まあ、これは風聞ゆえ信憑性は薄い。問題は次だ。」
ウェールズは一拍置く。
「虚無の伝説はご存じかね?ミス・ヴァリエール?」
「始祖ブリミルが行使したといわれる五番目の系統でしょう?それがどうしたというのですか?」
ウェールズは溜息をついた。
「クロムウェルはその虚無の担い手らしい。なんでも死人を蘇らせるとか。」
一同が静まり返った。そしてサイトはクロムウェルという男を想像する。
曰く吸血鬼を生み出す力を持ち、曰く吸血鬼並の化け物であり、
曰く伝説の系統の使い手であり、曰くその魔法は死人を蘇らせる。
なんという巨大な敵だろう。さらには政治家としての資質もかなりのものと見ていい。しかし、
(あんなものを作りだしておいて、ほっとく訳にもいかない、か)
思い出す、あの哀れなグールの群れ。あんなものが各地で生み出されている。
どれだけの人が死に、死に損なっているのだろう。
サイトの中には、黒い怒りが渦巻いていた。
見るとルイズもまた震えている。それは恐怖だけではないだろう。
「…………許せない。」
消え入りそうな言葉を聞き、サイトは嬉しくなった。この少女をどこか遠い人だと思っていた。
けれど、実際は自分と同じく、憤っている。それだけでこの少女を近しい者に感じた。
「やっつけてやるさ。」
ウェールズはそんなサイト達をみて嬉しそうに微笑んだ。
「これらは僕が残せる最後の情報だ。どうかアンリエッタに聞かせて欲しい。
そしてレコンキスタの野望を打ち砕いてくれ。」
タバサはさっき見たグールを思い出し、虚ろな心境になる。
人として憎むべき相手。吸血鬼。
そして何より、彼らはあれを憎んでいる。
タバサの目的、母を治すことともう一つ。両親の仇。
強大すぎる敵を撃つ力。それを手に入れるということと、その代価。
自分は人ではなくなってしまう。
化け物となり、彼の、彼らの敵となる。
彼女の心は復讐と、それ以外の何かの狭間で揺れ動いた。
以上で投下終了です。支援、まとめありがとうございました。
二日に一回か三日に一回かどっちがいいのか悩む最近。
狂信者さん乙&GJっした
乙でした
タバサ、いい具合にゆれてますね。
サイトに出会わなければここまで迷わなかったろうに。
身近な吸血鬼がセラスですし。
乙
タバサは吸血鬼となり討伐される道を選ぶか、それ以外の道を選ぶか・・・
タバサは身近な吸血鬼がセラスじゃ無ければ吸血鬼になろうとは考えなかった
のではないでしょうか。
遅レスですが乙&GJ!
投稿感覚は個人的には二日に一回の方が嬉しいですけど作者さんのやりやすい方でいいと思います
タバサが呼んだのが大尉だったら
タバサ「・・・」
大尉「・・・」
タバサ「・・・そう、わかった」
ルイズ「タバサは思考も共有できるんだ」
タバサ「ちがう、思考も感覚も共有できていない」
ルイズ「大尉、何にも話していないじゃない!何で解るのよ」
タバサ「なんとなく・・・」
キュルケ「愛の力に決まっているじゃない」
ルイズ「そんなんで納得できるかっっっ」
サイト「またやっているよ。あの三人(大尉をブラッシングしながら)」
狼大尉「・・・(あくびをして寝そべる)」
ロリカードの人まだかなー
聖釘って誰が使っても茨状態になるんかな?それとも神につかえる者が使うからこそ聖釘の力が働くんだろうか?
兵士達は茨で冠を編み、イエスに被せ紫の衣を着せた・・・だから
変化するのは磔から復活までの件にあるイエスに馴染みの深い何かで茨に限らないかも。
聖釘は何となく信徒とか問わず使用者を化け物に変える気がする。
アーカードが使ったら死にそうな気もするがな
13話目2300より投下開始
「パンは肉、ワインは血。」
城の中では最後の晩餐会が行われていた、サイトは今まで見たこともないような豪勢な
食事を喜んだ。
「いや、タンパク質だろ常考。」
そう言い、昨日までで失った血を補充した。ふと目の前に人が来る。なんか輝いてる。
「ベルナドットさん!どうしたんすかソレ?!!」
ベルナドットは全身にアクセサリや指輪、宝石をふんだんに纏い、サンタクロースのような
袋を身に纏っている。おそらく中身は全て宝石だろう。総額で一億円位は軽くありそうだ。
「いやーどうせ貴族派に盗られるならっつうことで気前良くくれたんだよ。
まあ、ここまで死ぬ思いした駄賃ってとこかな。」
心底楽しそうに彼は笑った。
「そういうことだ。君もどうだね?」
ウェールズが正装でサイトに話しかける。その顔はどこまでも晴れやかだった。
「ああ、じゃあ後で。」
サイトは気のない返事をする。そして彼をまじまじと見つめる。
「………死ぬのが怖くはないんですか?」
「怖いよ」
ウェールズはあっさりと答えた。
「じゃあなんで逃げないんですか?」
ウェールズはうーんと唸った。その顔はどこか遠くを見ている。
「僕は王族だ。王と成るべくして生まれ、王と成るべく育った。
逃げず、退かず、名誉と民の安寧を守る為、そう育った。
ここで逃げたら僕は僕で無くなってしまう。誇り高きアルビオン王家ではなくなってしまう
ただの血と糞尿のつまった肉袋になってしまう。そんな気がしてね………」
ウェールズの言葉は勇壮で、心に響き、そしてどこか悲しかった。
「はは、すまないな、汚いこと言って。」
「いえ………」
きっと数か月前の自分なら解らなかっただろう。ただ今なら解る気がする。
サイトは懐から銃剣を取り出し、ウェールズに差し出した。
「祝福された武器です。ただの魔法よりは奴らに効果的でしょう。」
サイトとウェールズはがっしりと握手した。
彼の姿を見て、サイトは思う。
自分が吸血鬼と戦うのは、彼と同じく無謀。それは正しいことだろうか。と。
「ベルナドットさんは彼らのこと、どう思いますか?」
ウェールズが行った後、サイトは彼に聞いてみる。
「ん?べつにいいんじゃねえの?!」
彼はステーキをがっつりといただいていた。その横ではいつのまにか居たタバサがサラダを食べている。
「あの人達はさ、名誉の為にって言ってる。金の為に戦ってる俺なんかよりよっぽどマトモだ。」
そう、ベルナドットは自分と同じ世界、普通にいくらでも働きようのある世界の住人だ。
「まあ、そもそもよ、戦うのにさ、理由なんているのか?」
「……はい?」
サイトはその言葉の理解に苦しむ、それは理由があるから闘うのではないだろうか。
「戦わなくても何とかなる問題じゃねえのか?こんな戦争って。」
それはそうかもしれない。彼に政治の知識はあまり無いが、それでもニュースで言われて
いるようなことは、確かに態々殺し合うまでもないように思える。
「まあ、あいつらはな。そういうようなことでぶっ殺したりぶっ殺されたりしている連中
なんだからよ。お前がいちいち気にしてやるようなことじゃない。」
その言い草はどこか愉快そうで、サイトには理解できなかった。
「そんで俺もよ、お前位の年には学校も行かずに戦場行って殺し合ってたような奴さ。
それも誰に言われるでもなく好き好んでだ。お前の疑問にゃ答えられない。」
「………そうですか。」
ベルナドットはがしがしとサイトの頭を撫でてやる。その手を払おうとしても力が強くてできなかった。
「そう落ち込むな。わかんねえのが普通。解っちまったら旦那や俺と同類だ。親御さんのことも考えな。
勝手にいなくなって帰ってきたら戦争屋になってました。なんて親不孝はねえぞ。」
不死身の男になってましたも充分親不孝だ、という考えをタバサは心の中にしまった。
「俺やあの連中みたいな奴らを思って悩むなよ、サイト。好き好んで行って好き好んで死んだ。
自業自得だ。お前みてえないい奴はあの女の子のことでもきにかけてやんなよ。」
「ルイズ?どうした?」
サイトはボーっとしているルイズに訊ねる。見るとその眼には涙が浮かんでいた。
「何で皆笑って死ににいくの?馬鹿じゃないの?残される人のことを考えないの?」
ルイズの手にはアンリエッタの手紙があった。ふとサイトはルイズが姫から渡された親書を思い出す。
中身は、想像がついた。
「貴族ってのはそんなもんなんじゃねえの?」
サイトの言葉にルイズは彼を睨んだが、暫くして目を伏せた。
「そうね……貴族は………退いちゃいけないんだもの」
サイトは遠くの空を見つめる。
「俺の国ではさ、戦争が起こったら逃げろって言われてる。言われなくても逃げる奴ばっかりさ。」
ルイズは黙って聞いている。
「けどさ、逃げたらだめなんだよあの人達は、だって命より大事なものがあるんだから。」
名誉、誇り、信念、
信仰、そして、自分以外の誰か……
「あんたはあるの?大事なもの。」
彼女のその眼は。どこか不安げで。
「無いよ」
彼のその眼は、どこか羨ましげで。
ああ、そうか
アンデルセン神父に憧れるのはだからだろうか
彼は自分以外に何か大切なものを持っているから
それは勇壮で、甘美で、けどどこか哀しげで、魅きこまれてしまう。
「アンデルセンとあの人達は違うわ」
サイトはその言葉に驚く。
「アンデルセンは……勝つわ……勝つ気で戦うわ。勝機が私たちには見えないけど、彼には見えてる。」
「それが例え本当に僅かな那由他の彼方でも、彼は行く。けどこの人達は、死のうとしてるだけじゃない。」
サイトは少し考えて、頷いた。
「ふーー」
笑って死にに行くウェールズ
それを思い悩むなというベルナドット
泣いているルイズ
何が正しいんだろう。こちらに来てから色んな人達に会って、色んな考えに触れて。
誰もが正しいように見えて正しくないように見える。
俺はどうすればいいんだ。このまま神父について、戦うのか?あんな化け物に。
ふと人の気配に気づく。タバサだ。タバサは俺の横で、星を見上げる。
「悩んでる?」
「うん、まあ。」
「私も悩んでる。」
「お前も?」
そのまま二人は星を見上げる。それは非常に多くて、綺麗だった。
「あの人達は、なんで行くんだ?」
その疑問の呟きは宵闇に掻き消えたようだった。タバサはしばらくして答える。
「あなたは、アーカードに立ち向かった。それは、あの人達以上に、無謀。」
「いや、でもあれは………そうしないとあの女の人が死にそうだった訳で。」
「………あなたはそう戦う、彼らもそう戦う。そうあれば、それでいい。」
「………そうかな?」
「そうあれかしと叫んで斬れば、世界はするりと片付き申す。」
神父が言った言葉。不思議とあの人が言ったというだけで真理のように感じるから不思議だ。
「その時が来たら、あなたはあなたの心のまま戦い、そうあれかしと叫んで、斬ればいい。」
「……………色々問題が無いか?それ?俺が間違ってたらどうするんだよ。」
「あなたは間違わない。」
いや、そんな断言されても、ていうか皆買いかぶりすぎだろう。俺は普通だぞ?
「あなたは、優しいから。」
「ふむ………。」
ワルドは廊下にて背を壁にもたれ、考え込む。
風のトライアングル二人、目覚めていないとは言え虚無一人、不死身の少年に強力な銃を使う平民。
こちらは風のスクウェアとは言え自分一人。
「さて、どうするか……。」
「困ってるね?」
ワルドが急いで振り向くと、そこには犬耳の少年が立っていた。
「貴様は……」
彼の組織の協力者である少年。その正体は知れないが、それよりも驚くべきはどう入ったかである。
この敵地のど真ん中に、どんな魔法を使ったのか。
「そんな怖い顔しないでよ。僕はどこにでもいるし、どこにもいない」
その言葉の意味も解らず、呆然とするワルドに、何かを手渡した。
「スキルニルって奴さ、それ使って何とかしなよ。こんだけ僕らが協力したんだからちゃんとね」
ワルドはそれを弄ぶ。それの使い方は分かっている。問題は無く自己の任務を達成できる。しかし。
「一つ答えろ。あれは何だ?グールなんて聞いてないぞ?!」
「何だといわれても……君みたいな裏切り者にそうホイホイ秘密を教えるわけないだろ?
まあ頑張ってこの任務を成功させたら教えたげるよ」
語気を強めるワルドを軽く受け流し、少年兵はどこかの部屋に入る。
ワルドが後を追い、その部屋に入る。そして驚愕の声を上げる。
その部屋は、もぬけの空だった。
ワルドの背筋に寒いものが流れた。
セラスは港町の牢獄に居た。不審人物として投獄されたのだ。どうしようかと思い悩む。
「何かできないかな……。あ、そういえば使い魔と主人って感覚を共有できるとか、よーし!
こちらセラス、ワルド子爵は裏切り者の危険性あり注意せよ!!繰り返す。ワルド子爵は……。」
傍から見るとそれは怪しさ抜群であった。
そう言われると、むず痒い。そしてふと思う。
その時が来れば。
ルイズや、シエスタや、シルフィードや、あの女の人や、タバサが、
危ない時、衝動的に助け、結果としてうまくいった。後先考えないものであったが。
今、俺は吸血鬼を許せない。人に悲しみを振りまくあの化け物を。
それを作りだし、ばら蒔く連中を許せない。
そいつらのせいで知っている人達や罪も無い沢山の人達が死ぬことは許せない。
だから彼らが危害を加えてきたら、そうあれかしと叫んで、斬ればいい。
簡単だ。ひとまずはこれでいい。
「タバサ。」
青い髪の、小柄な少女が、自分を見上げる。
「ありがとう。考え纏まった。」
その表情の変化はよく分からなかったが、多分喜んでいる。と思う。
「友達」
あ、多分友達だから当然ってこと。凄い、わかるようになった。
「俺もその時が来たら戦う。死ぬのは怖いし、傷つくのは嫌だけど。タバサが危険になったら戦うよ。
ルイズもシエスタも、皆、神父はいらないだろうけど………。皆が危険になったら、死んでも戦う。怖いけど。」
私はサイトの悩みが解決したことを素直に喜んだ。
そしてまたも黒い炎が巻き起こる。
目的を達成可能にする力、それを手にした時、彼は私の敵となる。
そしてそうなった時、この時間が彼を苦しめることになることも。
いや、誰も彼も、賛同する訳が無い。キュルケもセラスもベルナドットも。
知っている。知っていてこうしている。
そこまで考えた時、使い魔の交信により、その思考をそれに集中させた。
ワルドの裏切り、節々に感じた違和感と鑑みて、さてどうしたものかと策を巡らせた。
911と912はあべこべです。失礼しました。
支援!
「ワルドが裏切り者、ねえ?」
「確かか?」
「決め手に欠ける」
ルイズが部屋に入って来る。なぜか真赤な顔でサイトに聞く。
「ん?どうした?」
「………ワルド様が、結婚式を挙げようって………。ここで………。」
三人は顔を見合わせる。ベルナドットはニヤリと笑い、サイトは額に手を当てる。
「で、サイト!あんたはこの結婚についてどう思うの?ねえ?」
サイトは物憂げに溜息をつく、そして一言呟いた。
「ワルド………」
ルイズは予想外のサイトの反応に焦った。
(な、何よ、なんでワルド様なのよ?もしやサイトってそっち?
そういえばいつも神父神父って若干気持ち悪いし、男の方ばっか行くし!)
「完全に黒だな……」
「ええ、完全にマジだわ」
思案するベルナドットと腹を括るサイト、焦るルイズ、読めないタバサ。
「で、子爵どうします?」
「どうするってなによ!ナニするのよ?!」
「罠」
「いいなタバサ、それ。」
「何よ、ワルド様を罠に嵌めて何するのよ?」
「………話についていけてる?お前?」
「そ、そりゃ私はついてないけど、当たり前じゃない!非生産的よ!そんなの!」
「だから何の話をしてるんだ?」
閑話休題
「あ、そうワルド様は裏切り者ってことね?分かってたわよ!」
真赤になりながら逆ギレするルイズにポカンとするサイトと哀れみの目で見るベルナドットだった。
「まあ、とにかくだ。」
ベルナドットの顔には笑み、それはかれが戦地に赴くときいつも見せる心底楽しげな表情。
プロフェッショナルの傭兵団ワイルド・ギースの隊長のものだった。
「喧嘩強い魔法衛士様に、雇われの力、みしてやるか。」
「さて、もうバレている所だろう。」
ワルドの手には、木の人形。
魔法人形、スキルニル。
杖で掌を切り、握りしめ、血をそこに垂らす。
それはむくむくと大きくなり、ワルドの姿そのものとなった。
「罠にかけるのはどちらになるか、お楽しみ。といった所か。」
城ではワルド子爵の結婚式が行われていた。お相手はルイズ。
(何でよ?いや、それはまあ、結婚式を挙げるのがそもそも違うんだけど。)
「ええ、それでは、誓いのキスを。」
二人の前に立つのはサイトであった。ウェールズは一番前の席にて笑顔で式を見ている。
(何であんたが神父なのよ?仮にも私が結婚するのよ!ちょっとは妬きなさいよ!)
むくれるルイズ、ワルドは下を向いている。
突然、タカが外れたように笑いだした。それにつられ才人もまた笑い始める。
しばし、その場には彼らの笑い声のみが響く。
そして、その狂笑はピタリと止まった。
「いつ気づいた?」
サイトは笑いながら懐から銃剣を取り出す。ルイズ含め周りの全てのメイジが杖を取り出す。
「親切な友達が教えてくれました。」
「まあ、使い魔と主人は感覚を共有できるからね。アンデルセンかセラスかは分からないが。」
ワルドは緩やかな姿勢を崩さない。メイジはこの場に10人、さらにサイトもいる。
「何故祖国を裏切った、ワルド子爵。」
ウェールズが無表情で聞く。すでに風の呪文は完成され、もはや解き放たれるのみ。
「裏切った?何故?実際は分かっているのではないかねウェールズ皇太子。」
ワルドは堂々と口上を始めた。
「領民のことを考えもせず、国の存続も考えず、国事よりも恋愛を優先する不幸に酔った姫!
そいつを意のままに操るは骨まで腐った老人どもだ!
マザリーニ枢機卿はまだマシだがたった一人では限界と言ったところ!
沈みゆく泥舟ならいっそ沈めて木の船に乗り換えるだけのことだよ!!」
「そんなことはどうでもいい!」
サイトは口上を遮り叫んだ。ワルドに銃剣を向ける。
「あんなものを生み出しておいて、あんなものを生み出す片棒を担いで、領民?国?笑わせるなワルド!!」
その言葉を聞き、ワルドの顔がかすかに曇った。しかし、その変化はウェールズの言葉で阻まれる。
ワルドは目線をルイズへと戻す。その瞳はどこか優しい様子だった。
「一緒に来てはくれないんだな?ルイズ」
ルイズの返事は彼に杖を向けることだった。
「それで子爵?この状況をどう収める?一対十一だが?」
気を取り直したワルドは大声で笑う。
「ではこんなのはいかがだろう?」
柱の影からワルド達が現れる。そろそろと歩きながら、辺りに散らばる。
サイトも含め、さして驚かない。
「風の偏在だろ?ネタは上がってるんだ。」
「そうだ、私は4体出せる。まあ、それではちょっと厳しい、私が。」
一同は目を疑った。さらにぞくぞくとワルドが出てくるではないか。
「スキルニルというやつでね?親切な友達がくれたんだ。これで十対十一だな。
ちょっと厳しいかな?君たちが」
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。まとめよろしくお願いします。
いい感じにHELLキャラに毒されてるサイトでした。
次回はVSワルドという事でよろしく。多分土曜日に投下できると思います。
ディ・モールト乙
彼はサイトと言う名のオリキャラですか?
狂信者の人乙!
>>920 アンデルセンとアーカードに接すればこんな物でしょう。
朱に交われば赤くなりましたな
あれ?狂信者のまとめの十二話ずれてない?
12話が抜けていたようだな
狂信者サイトの師匠はアンデルセンだから13課の皆さん(マクスウェル除く)
のような熱い漢になるのは当然。
サイトの師匠になりそうなヘルシングキャラ
アンデルセン=元々、孤児院の先生だし武装神父隊の長みたいだし教えるのはお手の物
アーカード=セラスを教えていたし教える相手が吸血鬼なら教師役が務まるかも
大尉=不明
セラス=手加減を間違え保健室送りに度々するだろうけど、ごく普通に教える
ベルナドット=実戦形式で傭兵としてのイロハを叩き込んでくれそう
ドクなら医療系を教えた後に助手兼実験体にしてくれる
ルイズに召喚され野菜作り、料理教室を開くドクですか。
2215より14話目投下します
マリー・ガラント号に乗り込む列に並ぶ、タバサとベルナドット。脱出手段のない彼らは、
戦地での結婚式に出席する訳も無く、先に脱出すると言っておいた。
「まあ、プラフだけどな」
「最高のタイミングで横合いから思い切り殴りつける」
ベルナドットは主人の答えに同意する。彼らは礼拝堂に向かった。
「さあ、始めようか。」
そう言うと十人のワルドは一斉にライトニングクラウドを唱える。
あるものは風、あるものは土で防いだが、ほぼ全員がトライアングル。
スクウェアの偏在達の一斉攻撃で全ての精神力は使い果たされた。
ルイズはワルドの一体にレビテーションをかける。すぐさま弾けるワルドの偏在。
さらにサイトはトリガーを引き、正確にワルドの偏在を貫く。
だがワルドのエアハンマーが二人を吹き飛ばし、ルイズは気絶、銃は彼方に飛んで行った。
「ふむ、君達はやはりやる、魔法にかまけた奴らとは一味違う。」
「ほざくな!」
ワルドは雷撃をサイトに浴びせる。だが、サイトは止まらない。ワルドに肉薄する。
しかしその突きはあっさりとかわされ逆に胸を貫かれる。
サイトはその杖を捕まえようとするも、ワルドは蹴りを腹に喰わせて吹き飛ばす。
メイジ達は各々武器を持って立ち向かうもエアハンマーで悉く吹き飛ばされる。
「さて、任務を果たそう。」
そう言ってウェールズにひたひたと迫る。ウェールズは口惜しげに唇を噛んだ。
突然ワルドが弾け飛ぶ。ルイズはふらふらと立ち上がり前を向いていた。
口元は血と吐瀉物で汚れている。
七人のワルドが近づく。
「ルイズ……やめとけ……」
「うるさいわね……。」
ふらつきながらも明確な敵意を持ってワルドを睨む。籠った声で呟いた。
「姫様を馬鹿にして、裏切って……許さない。」
「それだけの理由で戦うのか?万に一つも勝ち目は無いぞ」
「そんなに無くても充分よ……。私が…貴族が戦うのなんて…勝ち目がほんの僅かでもあれば、そう………」
ルイズは杖を振り上げる。
「那由他の彼方で充分よ!」
叫びとともに爆撃が行われる。ワルドの偏在達は散り散りになりそれらをかわす。
その爆音とは違った音が響いたと思うとワルドの偏在達が吹き飛んだ。
「分身を作り、即死の雷撃を唱え、風を自在に操る…………。ならこんなのはどうだい?」
ベルナドットのマシンガンはワルドの偏在を容赦なく消し飛ばす。
氷の矢が吹きかかり、さらに偏在達を目減りさせる。
不意を打たれた格好のワルドは風の障壁を纏う間も与えられず、もし纏っても、近代兵器
はそんなものを物ともする訳が無かった。最後にタバサの後ろに回ったワルドの喉笛を
ベルナドットの投げナイフが貫いた。
奇襲、不意打ち、挟撃。
ベルナドットの本領のオンパレードと言っていい。
「生きてるか?」
ベルナドットとタバサ。二人の奇襲はワルドをあとかたもなく消し去った。
「全滅だな。」
「あんた達……卑怯ね。」
「こちとら喧嘩弱ぇからよ。軍人さんとまともに喧嘩なんざしねぇぜ」
ウェールズがふらふらと立ち上がる。
「それもそうさ…………まして相手が裏切りものなら尚更だ。」
そこでベルナドットとタバサは辺りを見渡す。
そう全ての偏在は跡形も無く消えうせた。跡形も無く。
残ったのは、木彫りの人形が二体。
「てめぇら気をつけろ!!」
C
ウェールズの後に居たメイジ。その男が杖をタバサに向けていた。
タバサの方に飛び、雷撃をかわりに背中に受け、帯電と共に倒れるベルナドット
後ろに立っていたのはウェールズに使えていたメイジ
その顔が少しずつ霧だ晴れるように変わっていき、ワルドのものとなる。
風のスクウェアスペル、フェイスチェンジ
アルビオンの真下、風竜の上、ウェルダンテが穴を掘り進めている。
急にアンデルセンの視界がぼやけた。
「何だ?」
左目の視界に目の前の景色とは別の映像が浮かんでいる。右目を閉じると、はっきりと
それは見えた。雷撃に倒れる男、伏す少年、青い髪の少女に向けて呪文を唱える男。
ワルド子爵
「どうしたのアンデルセン?もうすぐ開通するわよ?!」
静止を聞かず、アンデルセンは聖書を使い、移動を始めた。
崩れ落ちるベルナドット、雷撃を喰らうウェールズ達。
タバサは呪文を唱えようとしたが、ワルドのエアカッターの方が早く、
鮮血にまみれ、動かなくなった。
ルイズに向け、エアカッターを唱えるワルド子爵。
ルイズの思考が追い付くのはベルナドットが地面に突伏した時だった。
「化かし合いは、僕の勝ちだね。」
ワルドは冷徹に彼女を見下す。そして、呪文を解き放つ。
血しぶきが舞う。
しかし自分には痛みが無い。
ルイズは瞑った眼をおそるおそる開いた。
支援
目の前に立つのは、サイト。
蛇口の様に血を流す彼。
にも関わらず彼はゆったりと辺りを見渡す。
焦げる男たち。勇敢に戦うはずだった彼ら。
ベルナドット。ぶっきら棒で、自分のことを心配してくれた気さくな傭兵。
ルイズ。守ると約束した少女、勝気すぎる彼女が今は倒れ泣いている。
タバサ。無表情で無愛想で、けど悩みを解決してくれた、本当は心優しい少女。
彼らはみな傷を負い、倒れ伏している。
彼の中で何かが切れた。
その足取りはしっかりとワルドに迫る。
「神よ。彼らの口から歯を抜き取ってくださるように」
風が彼を裂く
「主が獅子の牙を折られるように」
雷撃が貫く
「彼らは水のように捨てられ、流れ去るがよい」
偏在が一つ生まれ、杖がサイトを貫いた
「神の矢に射られて衰え果て」
その杖をもろともせず、銃剣を貫く。
掻き消える偏在から興味無さげに視線を外す。
そのままワルドに向かって歩き続ける。
「蛞蝓のように溶け、太陽を仰ぐことのなき流産の子となれ」
ワルドは恐怖した、ありったけの魔力で偏在を生みだす。
「鍋が柴の炎に焼けるよりも速く」
偏在に銃剣を投げつけ、また一つ倒す。
「生きながら、怒りの炎に巻き込まれるがよい」
サイトは銃剣を両手に持ち、彼の様に十字に構えた。
「AMEN」
ワルドは少年によって自己に生まれた恐怖を無理やり押し込めた。
(落ち着け!敵はもはやこいつ一人!こちらは偏在が二人いるんだ。)
同時に二人を襲わせ、一つは心臓、一つは首を、それぞれ狙う。
それで滅ぼす。この少年を。
そして偏在二つは忠実にそれを実行しようとした。
だが、それはサイトの腕でのガードによって阻まれる。
サイトは両腕を使って顔面と首、胸をガードし、突進していた。
(わかってきた…………)
自分はベルナドットのように銃を上手く使い、策を用いることはできない。
ルイズやタバサのように魔法を使える訳でもない。
まして、吸血鬼のようなでたらめな化け物でもない。
ただ真っ直ぐに、彼の様に、
前へ 前へ
心臓目がけて 銃剣を
ウェールズは思った。彼は何故征くのか。
風のスクウェアに、いかな不死身とは言え。
その瞳に逡巡は無く、死の覚悟もなく、ただ生きたものの意志を持つ。
ただ、前へ、前へ、
これは誇り高き貴族そのものではないか。
後ろから、杖が二本、突き刺さる。
メキメキと音を立て,少年の体が悲鳴を上げる。
ライトニングクラウド
瞬時に黒こげとなる彼の全身。
しかし、すぐさまその姿は雷撃を受ける前に戻って行き、彼を睨む。
サイトはポケットから何かを取り出し、自身の後に投げる。爆発と共に偏在達は吹き飛び、
彼はワルドの足元に倒れ込んだ。そのままフラフラと立ち上がり、敵を見据える。
その眼光に気圧されたワルドはもはや動くことができなかった。
タバサは虚ろな目で、サイトの進撃を見ていた。
相手は風のスクウェアメイジ
魔法衛士隊の隊長
どう考えてもこの少年に追随できうる要素は無い筈だった。
彼がリジェネーターだからだろうか。
それだけではない。
神の代理人、神罰の地上代行者だからか。
違う。
明確な怒りと自分の意志で彼は戦っている。
己の心に反したものを、今打ち砕かんとしている。
「イーヴァルディ……」
彼女の口からでたのは、憧れの勇者の名だった。
もはやワルドに魔力はほとんど残っていない。しかし、それを持ってもワルドは退かなかった。
エア・ニードル。己の、おそらく最後の攻撃魔法。あとはフライがせいぜいだろう。
単純な斬り合い。しかし、こうなってからワルドの動きが洗練されていることにタバサは気づいた。
もとより満身創痍の才人に対し、ワルドは魔力を欠いたとはいえ、肉体的には余力十分だからだ。
ワルドの心は不思議な高揚に包まれていた。
吸血鬼、国家、裏切り、聖地
全てがもはやどうでもいいことになった。あるのは戦っているという事実だけ。
どうしたことだろう。魔力も尽き、策も尽き、己の剣術だけが残った時、
どこかでこれを望んでいたような気分。
もはや魔力は飛んで逃げる程しかない。だがその前にこの少年は始末する。
それは魔法衛士隊として、貴族として、男としての意地だった。
ここで逃げてしまっては、私は私でいられなくなってしまう。
がんばれワルド
杖を振るい、彼の首に狙いを定めた。
しかし、それは空を斬る。
少年は倒れ伏していた。
背中の焦げは回復していない。しかし、その眼は変わらぬ戦意でワルドを睨んでいる。
横ではタバサが杖をこちらに向けている。見え透いたハッタリだった。
しかし、そんな状況は関係無しに、ワルドはこの少年にトドメを刺す気にはならなかった。
彼は一昨日、大怪我を負っている。その事実が何故かこびりついていた。
己にはレコンキスタからの援軍。彼には味方の存在。ふとこの場で蹴りをつけるのが惜しい気がした。
ワルドは気丈な瞳でこちらを見るルイズを一瞥した。一瞬、ほんの一瞬だけ、魔法衛士の顔に戻る。
「次は殺す。必ず殺す」
踵を返したワルドはフライの呪文を唱えて飛び立った。ウェールズは気を取り直し、彼らに駆け寄る。
「彼らを避難船に運べ!早急に治療するんだ!」
サイトに駆け寄る皆。意識を保ったサイトはそれを押しとどめる。
「ベルナドットさんを………俺は……大丈夫……不死身ですから。」
そう言われ、それぞれに回る水メイジ。
タバサは立ちあがってそれを固辞した。ベルナドットに治療は専念される。
「すいません………ウェールズさん………苦労をかけて。」
「構わないさ、君らがいなければ僕は彼に殺されていたろう。」
ウェールズはサイトの手を取る。ふとその視線がどこかに向かった。
光る本のページが、そこに集まっている。そしてそれらが増えていく。
その中から男が現れた。警戒態勢をとるウェールズ達。しかし、サイトの態度で警戒を解いた。
「アンデルセン神父!」
彼は黙って回復法術をかける。
「神父、すいません………」
「しゃべるな」
すぐさま傷が治るサイトに驚くウェールズ達。一方サイトはふらふらと立ち上がった。
次いでもこもこと盛り上がる地面。そこからもぐらが姿を表した。
「なんだい?君らは?」
「こいつらの仲間です。」
何故かギーシュが率先して答えた。
「ベルナドット」
タバサが己の使い魔に話しかける。彼の服はほとんど黒こげていた。
「ベルナドットさん!!」
サイトが彼のそばに倒れ込む。
彼の心臓に耳を当てる。それはしっかりと鼓動を立てている。
人を即死させる魔法をかけられてなぜ彼は生きているのか。
ふと、彼の上着の中からカタカタと音が鳴る。
デルフリンガー。
魔法を唱えられた場合防ぐ術が無いベルナドットに対し、サイトが手渡したものだ。
魔法を吸いとる力を持つ魔剣は彼の命を救っていた。
「命、拾ったな………」
ベルナドットがポツリと呟く。
「良かった。」
「男に泣きつかれても嬉しくねえよ。」
いつもの軽口をしたあとベルナドットは立ちあがった。
「さあて、お宝貰ってトンズラこくか!」
サイトは笑って立ち上がろうとした時、彼の視界が暗くなった。
(あれ……?)
なお立とうとする彼の意思とは関係無く、彼の体は地面に倒れた。
「サイトさん!大丈夫ですか?」
「ちょっとダーリン!大丈夫?」
「アンデルセン!こいつを避難船まで運びなさい!」
ルイズに言われ、アンデルセンはサイトを抱え、メイジに案内された方へ向かう。
「仕様がない奴だ、全く………」
ただの甘えの抜けきらぬ餓鬼のくせに、無謀すぎる戦いに平気で挑む。
それでもって自分に好意を抱く女に心配ばかりかける。
自分のことを棚に上げながら、アンデルセンは随分軽くなった少年に心の中で説教をした。
ウェールズはその姿を見送った後、言い争いをしているキュルケ達に向き直り、頭を下げた。
「この滅びゆく王家のために君達が行ってくれた全ての事に、アルビオン皇太子として感謝する。」
皇太子の突然の登場に戸惑いつつ、一向は貴族の礼を持って敬礼する。
シエスタなどは恐縮の余り死んでしまいそうだった。
「最後に頼みがある。」
ウェールズは指から指輪を抜き取った。
「これをアンリエッタに渡してくれ、そして伝えてくれ。この指輪は何があっても手放すなと。」
受け取ったルイズはまじまじとそれを見つめ、謹んで拝礼する。
「報酬としてそれを見せれば避難船に積んだ財宝や書物を好きなだけ渡してくれるだろう。」
その言葉に一同の眼が輝いた。
「ミスヴァリエール」
ウェールズはルイズを呼びとめた。
「本当にありがとう。」
「いえいえ、そんな。」
恐縮するルイズに真剣な顔で聞くウェールズ。
「君は言ったね?戦うには那由他の彼方の勝機で充分だと。」
「はい………」
「君達はそうなのかね?彼らは。」
「…………アンデルセンは少なくとも………」
「………そうか」
ウェールズは虚空を見る。
「閣下は、死にに行こうとしています。」
「………そうだな」
地面に落ちた銃剣を拾い、自身の持つものと合わせ二本、彼は手に持つ。
それは鈍く輝き、無骨なものである。
「私はどこかで……諦めていたのかもな………
生きることを諦めたから………死を甘美なものとしてしまったのかも………」
爆音が響く、攻撃が始まった。彼は行かねばならない。
「彼と………アンリエッタに伝えてくれ。私は行ったと。
私の意志で行き、戦ったと。」
三百の兵を集め、ウェールズは言った。
「このまま座して待ったのでは億に一つも勝ち目は無い。」
彼らは顔を見合わせ、笑った。元より勝ち目など無い。既に負けているではないか。
しかし次のウェールズの言葉でその顔が変わる。
「これより我らは一振りの槍となって敵に突撃し、
天幕で安穏としているクロムウェルに突き立てようと思うのだがいかがだろう。」
それが成功すれば我々は勝利し、
それが失敗すれば我々は敗北する。
ただそれだけのゲーム
さっきまでとは凄い違いではないか。
もはや詰まれたチェスでは無く、
ばらばらの手札の中、全てを捧げてコールするポーカー。
気づけば皆笑っている。誰も彼も。
その笑顔はさっきまでとは違うものだ。
「行きましょうか、閣下」
「ああ、那由他の勝機を!」
三百の熱気はそれを一つの共通意志とする。それは全てを壊せそうな気がした。
彼らは滅びるというのに、滅ぼす気でそこに行く。
なんだ、負け戦ではない。勝てるじゃないか
さあ、行こうかオリヴァー・クロムウェル
サイトをベッドに寝かせ、アンデルセンは溜息をつく。そして後ろのルイズに謝る。
「すいません。遅れてしまいご迷惑をかけて。」
ルイズは沈んだ様子で首を横に振る。
「いいの……。私なんて何もできなかったし、何も…………。」
彼は主の頭に手を置く。
「彼は望んでこうなりました…だから」
「わかってるわ………ただ、私が情けないのは………。」
ルイズは震えた。目には涙がつたう。
「私は………あなたたちみたいに………死を恐れずに戦うなんてできない。貴族なのに……。
ねえ、何で?なんでそんなことができるの?貴方達みたいな平民はできるのに……。」
アンデルセンは溜息をついた。貴族とはいえただの少女が、そんなことできる訳がない。
(お前に毒されてるぞ。サイト)
元凶である自分を脇に置き、彼らを仕方なく思った。
避難船にて私はベルナドットに治療をする。そして、その傍らでサイトに目線を送る。
「いいぜ?あっち行っても」
ベルナドットは悪戯っぽい笑みで私をからかう。無視した。
「今、生きているのは、あなたのおかげ。」
「失敗したけどな。」
それでも、スキルニルで三人となったワルドの十五の偏在たちのほとんどを倒したのはベルナドットの活躍だ。
ただ一つ疑問がある。ワルドが使った魔法、フェイスチェンジは水と風のスクウェアスペル。
風の偏在と同時に身につけることはできない筈だった。そんな疑問をよそに彼はぼやいた。
「しっかしサイトはしょうがねえな………無茶ばっかしやがる。」
その顔はどこか嬉しそうだった。
「あなたも………」
「ん?」
「心配ばかりかける」
ベルナドットは笑ってタバサを撫でてやる。無表情で左右に揺れる彼女。ふいに思い出す。
「「セラスは?」」
「「「あ」」」
アンデルセンは甲板にて、デルフリンガーから事の顛末を聞いていた。
そこでふと疑問が湧く。
サイトの回復法術の強さは自分に匹敵する。たかだか一月前にカトリックに改宗した
少年がである。デルフリンガーに訊ねてみても、唸るばかりで要領を得ない。
「多分……。胸のルーンが……、六千年前も……、うーん……」
その時、ふと空を見ると、戦艦がこちらにやって来るのが見えた。
しばらく時間がたち、皆思い思いの行動を取り始めるも、ルイズはじっと才人を見つめていた。
「まさか、死んだりしないわよね……」
ピクりとも動かずに眠りつづける才人の髪を撫でる。そして溜息をついた。
「まだ、謝ってないんだからね……」
彼女はまだラ・ロジェールでの件を引きずっていた。キョロキョロと辺りを見回すと、
タバサとベルナドットは会話に夢中で、あとは誰もいない。そっと小声で呟いた。
「ご、ごめんね。悪く言って。あんたは確かに平民だけど…、あのワルドをたおしたんだからね…、
凄い功績よ?平民の癖に……、だから…。」
眠る彼の唇にそっと顔を近づける。
「き、貴族にここここんなことされるなんて、滅多にないんだからね…感謝なさい」
その時、ちょうど触れるか触れないか位の頃に、爆音が響いた。
「何!」
突然の衝撃に外に飛び出るルイズ達。見ると、艦船がこちらに砲撃を加えていた。
「避難船を攻撃するなんて!何考えてんの!?」
「いや、普通だろう。」
そこに立つはアーカード、そしてアンデルセン。
「婦警がいればハルコンネンで一撃だろうが、致し方ない。」
どうやら他に方法もなさそうだ。ルイズとキュルケは彼らに命ずる。
蝙蝠の群れと光るページの群れが、それぞれその戦艦に向かって行った。
ちょっとトラぶっただけのことだろう。聞こえてくる悲鳴を聞き流して、彼らは離れていく白の国を見送った。
以上で投下終了です。支援 まとめありがとうございました。
934で才人が言ってるのは聖書の詩篇から、カッコよかったので引用
しました。ワルドは、アンデルセンに倒させようかなとも思ったんですけど
ちょっとワンサイドゲームすぎるからやめました。それでは。
GJ!!
乙、良くやった。
デルフでさえ見せ場があったのにセラスは見せ場が全く無い・・・
GJ!!
相変わらずサイトが熱いぜ!!
乙!
ホントに棚に上げまくりだよなw
俄仕込みでも13課、ウェールズまでサイトの熱さが移った。
次スレについてなんだけど、
他の召喚スレみたいにアニキャラ総合に移動したり、
新設された創作発表板に移動するというのはどうでしょうか。
別にここでいいと思ふのだが
他の召喚スレがあったり、創作系のスレが集まる板に移動したら、
住人の行き来が活発になって良いと思ったんだけどな。
今現在、創作に関心がある奴で、
ゼロ魔クロス関係のスレに興味が無い寸足らずはあんまりいねーんじゃね?
増えるのが読み手だけだとしても、支援や感想が増えて良いんじゃね?
移動することで次スレが見つけられないデメリットも、wikiに次スレを載せるから問題無いだろうしさ。
進歩より現状維持なチキンの俺は
スレがどうなってしまうかと怖くて仕方が無い
アンチやら厨やらが増えそうで怖いというのはあるな
そんなに増えるスレでもないだろうが。
まぁ無理に移動させる必要性も感じない。
ヘルシングのアンチっているだろうけど、あんまり見たこと無いわ。
ところで俺ゼロ魔一回も読んだ事ないんだけど、他にもそんな人っている?
>>958 ノ
HELLSINGも読んだ事なかった
それはSS読んでて楽しめるのか・・・?
某作品→ゼロ魔→ここ、的な
それで、単行本を買った、と
とりあえず現状維持でいいんじゃね?
外伝が終わってないし
クリーク!クリーク!クリーク!クリークぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!クリーククリーククリークぅううぁわぁああああ!!!
あぁ!アハトアハト!ティーゲル!ティーゲル!いい戦車だなぁ…くんくん
んはぁっ!連中に恐怖の味を思い出させてやりたいお!アハトアハト!あぁあ!!
間違えた!戦争したいお!戦争!戦争!凍土で戦争!砂漠で戦争…きゅんきゅんきゅい!!
悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵かわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
露助の機甲師団に滅茶苦茶にされて良かったねナチスたん!あぁあああああ!かわいい!ナチスたん!かわいい!あっああぁああ!
一千人の吸血鬼の戦闘団で世界を燃やし…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!吸血鬼なんて現実じゃない!!!!あ…ミレニアムもヴェアヴォルフもよく考えたら…
最 後 の 大 隊 は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ゼーレヴェー作戦っんんんん!!
この!ちきしょー!やめてやる!!戦争なんかやめ…て…え!?望…んでる?私に付き従う大隊戦友諸君が戦争を望んでる?
千人に満たぬ敗残兵が戦争を望んでるぞ!一千人の吸血鬼の戦闘団が戦争を望んでるぞ!情け容赦のない糞の様な戦争を望んでるぞ!!
三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望んでるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には戦争がある!!やったよアーカード!!ひとりでできるもん!!!
あ、ヘルシングのお嬢ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあアン様ぁあ!!ウ、ウォルター!!アンデルセンっんんんんんん!!!フロイラインっあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよアーカードへ届け!!王国国教騎士団のアーカードへ届け!
これが次のカバー裏にならないかな
狂信者さん乙っしたー。
サイトよりもライアン並の空気の悪さに耐え続けるギーシュの胃に敬礼したいな。
正直、板に移るのは様子見がいいと思う。好きな奴は検索して来るだろうし。
排他的な意見かもしれんが、まだ夏は続いてるしなぁ……
500KBが近いから早急に次スレが欲しい……俺は無理だが
,  ̄  ̄ 、
/ =  ̄== l
// 〃三⌒ ⌒//へ |
| | ノノー─ ー─|l |
/| ( =・= =・= | |
ノノ!<| |>! | 埋め
| |`| ○-○ |´ノノ
/ | || ¨ | ノ
/ .| | |
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| / /ヽ_ _/ \
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⌒ ; |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
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,|||| ノ||||\
(||||、 / ||||| \ るよ
|||||ゞ ‥ 〃|||l \
|| ||| //| ||l \
ll l| _ ll| i
l  ̄ / i
ヽ_ _/ l
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|. ,、 . |
| ,,ゝヽ-´゙"ー--、_,.、 |
|. イ/::::::::::::::::::::::::::::::::;::ヾ. 何 |
|. l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\. 問 も |
| ,,|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゞ. 題 |
| ○ イ|:l:::::::::o::::::::o:::::::::::::::::::::ヘ な は |
| .5 il:l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝい |
| 点 _,--ー―゙:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,`ヽ |
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バレンタイン兄弟召喚されないかなぁ
巻末オマケのバレンタイン兄弟