週刊少年サンデー平成7年38号より「め組の大吾」という漫画が連載された。
この漫画について語ろうじゃないか。
尚、この漫画は作者が天才に追いつくため飯の間も書き続けることにより2日に1話ずつの速度で連載されるようだ。
時々、天才の行動に茫然として合併号になることもあるが気にしないでくれ。
このスレの詳しい事は連載中スレの楽屋裏にて。
今日は何日だぁ? そんなこと今、聞く必要ないだろ…… わからない。こいつが何を考えているのか……
連載中スレの楽屋裏 第25幕
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1193389271/ 初めて参加する方は必ず上記の「連載中スレの楽屋裏」のテンプレに目を通してルールを把握してください。
「連載中スレ」とは、連載終了した漫画作品を第1話〜最終話まで、
順々に『連載されているもの』として語り合うスレです。
漫画が連載されているものとして語り合うのですから、当然先の展開など知りません。
ネタバレ発言はご法度。
現在連載されているまでの情報で予想・推測可能な場合は、それを明記して書き込むといいかと。
でも容易に先が読める時はともかく、安易なネタバレは空気を壊すだけ。
それとメル欄会話も出来るだけ避けましょう。
第88報 朝比奈買います
謹慎のとけた大野が出勤する。さみしげに大吾の机を見つめる大野、その背後には何故か大吾がいました。
そんな大吾の元に、本部からの手紙。そこに書かれていた内容は、『特救研修に参加すること』
わけのわからない通知に、め組は絶叫に包まれていた。そのころ常盤、甘粕の元にも届いた通知、
二人は涙を流して喜びつつ、大吾のこと考える。さらに臨港Rの神田も研修で大吾をシゴク決心をしていた。
そのころの消防局本部、怒った来栖が荒を問い詰める。クビにできないのはともかく特救合格とはどういうことだと。
荒は笑いながら答える、久々に楽しい“オモチャ”を見つけたと考えながら……
「もし、朝比奈が、つまらないやつだったら…お渡ししますよ。クビのでも何でも、お好きにどうぞ。」
やっぱりこういう展開になったか
神田さんが火事場でうろたえまくる姿が目に浮かぶようだ
ともあれ常盤さん合格おめでとう
しかし、大吾、甘粕と2人も一発合格が出てしまうと
落第経験のある神田さんがしょぼく見えてきて困る
第89報 特救研修初日
消防学校に集まる研修生たち、彼の表情はとても明るい。…初日は……
訓練前の身なり検査、教官と助教たちが研修生の前に現れる。荒が教官であり、助教には神田もいたが、
彼の自己紹介はない。たった40日しかないからと…
イチャモンに近い身なり検査が始まり、次々に研修生へ、ペナルティ(腕立て10回)が言い渡される。
俺には続ける理由がない。止めても良いと怒った大吾は助教に言い返す。助教は鋭い目つきで言った。
「やるんだ。どうしても、やれ。」
厳しいなぁ…
怖
こええよww
厳しくしなきゃいけない理由はわかるけど
第90報 新しい仲間
「俺達の命に関わる」鬼気迫る表情の助教たちから、研修生たちはこの訓練の重要性を認識した。
空気が引き締まり、小隊に分かれ本格的な訓練が始まる。
大吾は、甘粕、常盤と同じ第二小隊、助教は神田。その状況にワクワクする甘粕が隣を見ると、大吾は…
ニ重もやい結びができずにロープを地面に叩きつけちゃいましたー。連帯責任でペナルティ、甘粕唖然、常盤わなわな。
大吾は思っていた。誰でもいい「帰れ」って言ってくれよと…
(そうだ! オレは朝比奈大吾と組みたがっている!!!)
「くそっできねえ!!! 何でだよ!!!」
火事場にいない時の大吾は本当にダメだな
連帯責任w
こんなヤツと一緒の隊は嫌すぎるwww
まあ、不運もいいところだな
第91報 同類見つかる
今日も元気な“め組”の面々。「悪い方にキレなければな…」五味が評した荒の人物像は、
普段の穏やかな荒からは想像のできない一面だった。
今日の訓練は“ロープブリッジ渡過”『相沢助教の手本に注目!!』の後、訓練が始まる。
ゴール側で話す荒と神田。荒は言う、ロープが切れたらどうなるのかと。神田の戒めの言葉に、荒は笑って誤魔化した。
大吾の番がきた、荒は胸のジッパーを少し下ろし、構える。開始の笛、大吾が渡る……かと思われた瞬間、
スタートしない大吾はトイレへ行ってしまった。第二小隊、またペナルティ……
出そうとしていたナイフをしまい、荒は思う。やっと見つかったかもしれない、俺と同じ“現場”を欲してやまない奴!!
「もともとそれを“持っている”か“持っていない”か、それだけだろ?」
荒さんも相当アレな人だな・・・
荒さんやばすぎるww
無意識ながら回避した大吾も相当にアレだけど
荒さんと大吾はニュータイプかwwww
甘粕と常盤さん涙目www
もうこれ直感とかそういうレベルじゃないだろw
超能力者だよ、大吾はw
第92報 その日が来た
げっそりとした様子の訓練生たち、その中で大吾だけは生き生きとしていた。研修は安全地帯、そう考える大吾に対して、
荒はとても退屈だった…。そんなさみしそうな目をした荒の元に出火報が届く、
どうやらこの時間帯は消防学校のポンプ車の方が早く現着できるようだ。
荒の目に光が戻る。訓練生の熱気が燃える。大吾は茫然。荒は言った。「第二小隊、ポンプ車へ乗車!!!」
(神田の奴の目も光ってるしな…… ああ…… なんかおもしろいことないかなあ……)
荒さんはホント大吾がお気に入りだな
荒さんは本当にダメだなwww
この人危険ジャンキーだな
冒険家なんて名を残しても更なる土地へ行きたくなって結局いつかは帰らぬ人になる
ってことがあるらしいが、それと似たようなもんか
第93報 破れた温室
現場へ向う、ポンプ車。その車内で、自分の考えと心の昂ぶりその乖離にとまどう大吾、
荒の「現場一番乗り」の声を聞き、大きな声を上げた…。
現場の団地に到着。5階へ火元の部屋へと向かう。静かな5階。バックドラフトの危険があるらしい。
訓練生は少し離れた場所で待機し、荒がゆっくりと扉を開けた……
「訓練中とはまるで別人のようだ。生き返ったみたいだぜ。」
荒さんと大吾が組む…なんという最悪の組み合わせだ
神田さん的に考えて
大吾は荒さんに磨かれて更にやばい方向に進化するんだろうか
第94報 おれは今ここに
開かれた玄関から噴き出した爆炎。荒は現場に戻ってきたことを実感し震えていた。
部屋の奥に黒い人影らしきもの見える。誰もが「あれが人ならば生きてはいない」そう感じていた。
荒が大吾を指名し、神田と三人で室内に入ることになる。大吾は自身の本心に気付きつつあった。
そのころ階下では、これから探索される部屋の住人である奥さんが買い物から帰宅し、燃える部屋を見て驚く。
情報の無い大吾たちは、人のいない現場へと踏み込んで行った……
(極彩色に映っている!!! ギリギリの… 生きている実感…!!!)
待て!
行くな!!
無駄足確定かよ
第95報 充実の瞬間
燃え盛る室内に進入した三人。神田が大吾に様々な指示を出した。
けれども、そんな神田の声は届かない。何かを感じた大吾と荒は、神田の背をゆっくりと押し天井の崩落から救う。
まるで何が起こるのか全てを理解しているように……
“生きている”瞬間、荒は思う、生命がかかっているからこそ実感できるのだと。
大吾もそれを感じることのできる一握りの同類だと、荒は思っていた。
人影らしきもののところへ飛び込んだ三人、その影は椅子に引っ掛かった炊飯器だった。
その頃、外では甘粕の元へ住人から奥さんの無事が伝えられていた。甘粕はその現状を中へ伝え、
それによって荒たちは人命検索の終了を決める。荒と神田は部屋から出ようとしていた。
荒は思う。“生きて還る”破滅へと向かうのではなく生き残る為、だからこそ生命が漲るのだと。
荒は同じニオイを持つ大吾にもその感覚があるのだろう、そう期待し振り向いた。
大吾は言った。
「もうちょっと…… もうちょっとだけ…… ここに… 残ろう… なっ?」
荒さんですら理解不能なのが大吾という人間・・・
荒さんも大吾にはついていけないのか…
大吾化け物すぎるww
大吾はどこに向かっているんだ
こんな奴と一緒に仕事するの嫌すぎるwww
こいつ本当どこまでイッちゃうんだろう・・・
大吾こええええええええええ!
目がイっちゃてるよww
荒さんかわいそうw
>>“生きて還る”破滅へと向かうのではなく生き残る為、だからこそ生命が漲るのだと。
良いこというなぁ
ただスリルを求めるだけの命知らずじゃないわけだな
37 :
マロン名無しさん:2008/03/16(日) 21:09:57 ID:lkiltq4I
荒さん。イタズラ仕掛けて、逆に潰されてしまったのか・・・・。こいつは大物になるな。
第96報 もっと向こう
「“奥さん”じゃねえ」そう言って部屋に残ろうとする大吾の行動が荒には理解できなかった。
ダンナは会社、奥さんは外、その状況で暴れる大吾を神田が抑えようとする。
その光景を見て荒は思った。こいつは… コワれてやがる… 俺とは違う…!!! と。
「いた…… 人だ…」ベランダに出た大吾その足もとには、倒れた男性がいた。
はしご車が到着し、ベランダへバスケットを伸ばす。
荒は、自分とは違う種類の人間、大吾の持つ何かに戸惑い混乱していた……
(五味さん… め組では、コイツを一体どう扱ってるんだよ…!? 五味さん教えてくれッ!!!)
超能力・・・
うろたえまくる荒さんかわいいよ荒さん
ちょっと前まであんなに得体の知れない人だったのに…
どう扱ってるんだと聞かれても
スイッチ入っちゃったらもう誰にもどうにもできないとしか
第97報 死地に生きる
はしご車を使い、なんとか無事脱出した大吾たち。救助された男は会社に行っていたはずのダンナさんだった。
神田と荒は疲れ果てへたり込む大吾に問いかける。なぜ、人がいるとわかったのだと。
大吾は答えた。背広が椅子に掛かっていたからだと。
荒の元へ、ダンナさんが何故、部屋にいたのかが告げられる。
会社の上司へパソコンのディスプレイをあげる為、昼休みに取りに戻り、ディスプレイを持ち上げようとして
ぎっくりごしになってしまい、動けなくなったところを、ガス爆発に巻き込まれたらしい。
大吾のことを理解できない荒は思う。『俺は…… ずっと… マトモじゃないか…っ!!! コイツに比べりゃ!!!』と。
そんな中で大吾は涙を流し思う。落合先生には絶対にわかってもらえないだろう、それでも……
(炎の中のように… あんなに“生きている”瞬間ほかには…ない…!!!)
なんてタイミングの悪いダンナなんだ…
こんなんで死んでたら死にきれん
つうか偶然が酷すぎるw
行く先で必ず事件に巻き込まれるコナン並の偶然だ
消防使いと消防使いは惹かれあう、でセーフ
第98報 狼たちの沈黙
帰還した第二小隊の面々。荒と神田の機嫌は悪く黙ったままであった。
その後、研修は進み、大吾たちは最後の山岳行動訓練が行っていた。へたり込む仲間に見向きもしない大吾。
こんなところでは死にはしない。そう思う大吾にとって、この訓練のゴールは現場と比べ、さして価値のあるものではない。
翌日、消防学校では研修を終えた訓練生に免状が授与されていた。人が変わったようにやさしく、訓練生をはげます荒。
式の後、大吾をアインシュタインに例えた神田の話を聞き、荒は思っていた。大吾は自分とは違う人間であると。
外では訓練生たちが帽子を投げ上げ感動に浸る。大きな歓声が響き渡っていた。
その中で大吾の心は『あの最高に“生きてる”瞬間』その何かを求め“め組”から“特救”へと揺らいでいた……
(あの子は… あれは危ないよ。もう俺は関わりたくない。
奴よりはマトモだ…… まだ俺は帰れる… “普通”の暮らしに………!!!)
あぁ…荒さん…
あんなにギラギラしていた人がこんな隠居っぽくなっちゃって…
大吾はまた別次元へ行っちゃったな
かわいそうな荒さん…
これ、アニメとかドラマにならないかなー
真面目に作れば凄い面白くなると思うんだけど
人のよさそうなおじいちゃんになってるw
第99報 リスタート
マウンテマウンテンバイクで、出張所へと向かう大吾を、突如異変が襲う。
め組では、学校をさぼった純が自作のケーキを持参し、和気あいあいとみんなで楽しそうに騒いでいた。
そこへ現れた大吾。彼の半身は見るも無残に泥まみれでしたー。どぶに落ちる特救隊員がいるのかと笑われる大吾。
純が大吾に落合先生の言葉を伝える。五味も、新聞記者の丘野が研修中の出動のことで会いたがっていたことを伝えた。
翌日、喫茶店で大吾は、丘野と会う。丘野は大吾の雰囲気の変わりように驚いていた。
大吾が丘野に聞いた。特救に行くには移動を待つしかないのかと……
「やっぱり…… 合格(うか)っちゃったのねぇ……」
51 :
マロン名無しさん:2008/03/23(日) 20:04:26 ID:dE43hU2F
ねぇ、ここの住人は結末とか全部知ってて知らないフリしてんでしょ?
それって楽しいの??
お約束とはいえ、大吾とうとう特救隊員かー。
若いのにすげえな。
けど、この漫画のタイトル的に特救隊員になっちゃうとまずいよな
でもいつまでもめ組のまま引っ張られてもあれだし、どうすんだろう
第100報 分かれ道
100回記念カラーで、落合先生は生物の授業中であった。授業をしつつも、大吾のことを考える落合先生。
ふと気付けば終わっていた授業も、何の滞りもないようである。これが経験というものだろうか。
その頃、大吾は丘野に特救への異動方法は無いのかと真剣に聞いていた。
丘野は言う「欠員が出るまではしょうがない」と。本当は本当は励ますつもりだったのに、何故か言ってはいけない気がして…
丘野との会話から、落合先生に自身の「過酷だからこそワクワクする気持ち」を伝えることを大吾は決めた。
出張所からの私用電話で、落合先生が学校を休んでいることを知った大吾は、ジルの散歩のついでに落合先生の家へ行った。留守だった。
隣の住人から落合先生が大きな荷物を持って行ったことを聞いた大吾は、動揺しているようだった……
『特救に行きたい!!』
55 :
マロン名無しさん:2008/03/25(火) 00:06:00 ID:60MP6jHU
>>54 あー落合センセは昆虫の夢に向かったのね
んでインドネシアだかどっか火災の起きるトコに行くのかな?
なんとなくそんな気がする
丘野もいろいろ複雑だな
第101報 追跡
胸騒ぎが止まらない大吾、ジルの鼻を頼りに森へと進んだ。駅とは反対なため途惑う大吾だが、ジルは真剣な様子で吠えていた。
落合先生を探すが見つからない。大吾は途方に暮れ座り込んでしまった。
落合先生がいなくとも死ぬわけではない。ここは火事場とは違う。そう思う大吾だが、何かを感じたのか、
石の下で越冬するテントウムシを見つけた。そしてふと上を見上げると……
大吾は木に昇った落合先生を見つけた。火事場から生還したのと同じような感覚が大吾の胸に広がっていった……
「ウワン ワン ワン」
ラブコメ編始まりすぎだろ…
しかし、今さらながら少年誌で先生がヒロインって珍しいな
社会人が主人公の少年漫画がほとんど見当たらず、年上ヒロインも珍しい世界だからなあ。
第102報 森の周辺
大吾が落合を発見したのと同時刻、森の横の千国街道においてタンクローリー横転事故が発生していた。
虫の観察など大の大人が仕事を休んですることかと怒る大吾。「することなのよ!」と落合は怒鳴り返した。
落合の考えが自分にはわからないと感じた大吾は、自身の気持ちも落合には伝わらないだろうとことわった上で、特救へ行きたいという意思を伝えた。
そんな大吾の様子を見た落合先生は、唇を噛みしめ涙を浮かべながら、SEビル火災での大吾をはたいた本当の理由を告げる。
新種の虫であるヤンバルテナガコガネなどの話を交えながら、学者になりたいという諦めていたはずの自身の夢を語る落合。
何かに突き動かされるような大吾の姿を見て、落合も決心したという。そんな落合を大吾は後ろから抱き締めた。
同時刻森の外、劇薬を積載しているらしい事故車からドブの中へ何かが漏れ出ていた。そのことに気付く者はまだいなかった……
「うわの空で教壇に立っても授業できちゃうのよ! あのゴンドラ事故のときね… 本当は… 君に嫉妬していたのかもしれない……
本心ではね… わたし…悔しかった!! このままでは、あなたに負けてしまうと思ったのよ! 悔しかったのよ…」
落合先生の大吾への思いは強そうだけど
なんだかヘンな方向へ行っちゃってるな
恐ろしいカップルだな
テンションが無駄に高いというか
第103報 風に運ばれて
落合先生を抱きしめる大吾。森の外では今もなお、劇薬がドブへと流れ続けていた。
顔を赤く染めた大吾と落合先生、その二人の口がゆっくりと近づく……
「ゥウワンッ」ジルが吠える。良いところなのに邪魔しやがって。鼻をひくつかせるジルに大吾も何かの匂いを感じた。
自分の匂いではないと怒る先生。大吾の腕は落合先生から離れ、駆け出した。落合先生の伸ばした手は大吾には届かない。
有毒ガスではないのか? と公園へ跳び出した大吾。けれども公園は特に問題はなく子供たちは楽しそうに遊んでいた。
茫然とする大吾の背後の坂を、め組二部のポンプ車がけたたましいサイレンを鳴らしながら登る。大吾も急いでそれを追う。
駆け上がる坂、その横の側溝の中を入れ違いに劇薬が下っているとも知らずに……
「におうな……」
「クン」ヒク「クン」ヒク
「し、失礼ね!!! ちゃんとお風呂にも入って……」
「そうじゃない」
業務連絡:4月に、春休みの暇な大学生から社会人にクラスチェンジするため
不定期になったり、週二更新になるかもしれん。
今のところリタイアするともりは無いので、更新を忘れていても、心を広くしてお待ちください。
先生と恋愛フラグびんびん→毒ガス→先生アボーン
これはまずい
>>64 大吾くん、あなたは…生きて!私のために…ゴフッ
こうですか?わかりません><
純ちゃんの出番クルー!? (`・ω・´)
第104報 坂の上の雨
消防車を追い、現場へと辿り着いた大吾、空には暗雲が立ち込め雨が降り出していた。
タンクに詰まっていた液体は塩化第二すず。水と反応すると目やノドを刺激する塩化水素ガスを発生させるらしい。
大吾は、め組二部と合流した。レッカー車が、事故車を持ち上げる。妙に軽い。事故車が持ち上げられると同時に、有毒ガスが隊員に襲いかかった。
タンクが空になっていて、この程度のハズがない、そう考えた隊員たち。大吾が見つけた。砕けた側溝、坂の下へと続くドブを。
下の公園で、住宅街でガスが大量発生しているかもしれない。大吾は坂の下へと走り出した。
そのころ落合先生は森の木の下でジルと雨宿りしていた。ジルが何かの匂いを嗅ぎながら斜面を下る。落合先生はゆっくりとそれを追った。
駆け降りる大吾についていくのがやっとな二部の小隊長北条さん。毒ガスの待つ住宅街へ走る勇敢な大吾の背中に、
『“バクダン”がデカくなっちまってなければいいけどな……』という今でも理解できない五味の言葉を思い出していた。
勇敢な若者、バクダンだなんて。と考える北条だったが、大吾の背中から些細な違和感を感じていた……
(何か楽しそうにも見える、こいつの背中… まるで… 遊び場に走っていく子供のような……)
おいおい、気付くのおせーよ!
塩化水素ヤバイよー
火事と違って現場で避けようないからな
それでも間違いなく死人は出ないな
大吾がいる時点で
塩化水素ってそんなヤバイの?
そりゃ塩酸の元だからな
それが気体になって飛んでくるんだからたまったもんじゃない
すいません、社会人というのを甘く見てました。
今後、あらすじは水曜夜と土曜夜の週二回更新にさせていただきたいと思います。
本当にすいません。
お前になんかまかせてらんねー
すいません。途中で書き込んじゃいました。
もしもお前になんかまかせてらんねー!
俺がやってやんぜ! と言う方がいらっしゃいましたら、
喜んで変わるので直ちに申し出てください。
次回分は明日の夜に載せます。
ご了承ください。
第105報 今は何よりも
ジルが何かの臭いを嫌がる姿をみて、塩素の匂いに気付いた理科の先生、落合。嫌な予感を感じた落合先生の目に斜面の亀裂が映っていた。
坂の下に辿り着いた大吾たち、そこでは有毒ガスがこれでもかと大量に吹き出していた。大吾たちは面体を装備し、シートで穴をふさぐ。
そんな大吾たちに森の斜面の上にいた落合先生が気付いた。そしてもうひとつ、木の根が切れるプツプツとした音にも。
知らせなければいけない。何かに気付いた落合先生はそう決心した。
シートで穴をふさぎ続ける大吾、非番の俺がここで頑張れば特救へ行けるかもしれない。
そんなことを言う大吾を北条がたしなめる。それでも大吾の心は動かなかった。
斜面の上から大吾たちを見る落合先生。彼女は思う。
(この斜面…… く…… くずれるっ!?!)
ガス発生のみならず、がけ崩れまで併発か
相変わらずこの街の災害危険度は異常だな
こんな街絶対住みたくねえwww
第106報 斜面の下
斜面の上から崩落の危険を“め組”に伝えようとする落合先生。それでも豪雨の中で、作業をする隊員たちには届かなかった。
ガスに触れ変色した大吾の髪、北条は大吾に「退がれ」と令を出すが、大吾はいうことを聞かない。
ダダッ子のような大吾を見て、北条は、五味の言葉を思い出していた。バクダンと評した言葉を。
転がる石ころや、濁った湧き水を見て、ポンプ車からアナウンスを出す隊員たちは斜面崩落の予兆に気付いた。
それと同時に、川まで続くドブが途中で詰まっているのではと大吾は気付く。貢献という言葉が頭に浮かんでいた。
大吾のズボン、その裾がガスによって破れた。ガスの危険さを実感し、塩化第二すずが川に流れようとする大吾たち、
その元に、崩落の危険があることが伝えられた。ドブを塞ぐべきか、退避すべきか、混乱する隊員たちを嘲笑うように、
川へと流れ込んだ塩化第二すずが有毒ガスへと姿を変え噴き出した。
その惨状に頭を抱える大吾。災害の現場で、特救のことを考えていた自分を悔む。
噴出、崩落、雨の中にジルの遠吠えが響く。押さえつけようとする北条の手を振りほどき、大吾は崩れかかる斜面へと駆け出した。
(ちくしょ〜!!! おとしまえつけてやる!!!)
塩化第二すずヤバすぎ!
現実ではな
ごちゃごちゃしてきたな
素早く塩化すず発生源を突き止めて間一髪で土砂崩れに間に合う展開か?
第107報 誰がために登る
斜面を駆け登る大吾。土砂崩れが起こったっていい。先生とジルさえ助かれば、不謹慎な考えを持っていた自分など巻き込まれても良い。
大吾は自分の考えてしまったことに対する後悔の念に押され走っていた。ジルが吠える。先生が叫ぶ。
戻ってきてほしい。そう考え落合先生は大吾を呼んだ。
そのころ斜面下の川では、ガスがさらに激しく勢いを増していた。化学機動中隊が来ても、
指をくわえて見てることしかできない現状。北条は頭を抱え嘆いていた。
大吾が落合先生のもとへと辿り着く。落合先生は自分を助けに来てくれたのか? と問いかけるが大吾の耳には届かない。
木を蹴り、岩を転がし、斜面崩落の被害を広げようとする大吾。崩れ落ちる土砂は雨を含み、一段とその勢力を増していった……
「先生、なんとか… もっと土砂崩れはデカくならねえのか!?!」
土砂崩れ起こすんかい!
押しつぶして発生を止めるのかな?
水もいっぱい来るだろうから結構一か八かになりそう
ガス発生とこうつなげてくるのか
でも人間二人で何の機材もなしにがけ崩れを大きくするとかできるんだろうか
ポンピー2号で突(ry
崖崩れはちょっと衝撃を加えれば起きるんじゃないの?
雪崩なんか大きな声だけで起きるって言うし。
第108報 最後の一歩
ガスの噴き出す川、崩落する斜面、二つの災害になすすべなく固まる北条ら、め組二部隊員たち。
一方、斜面の上では大吾が土砂を次々と落とす。自身が巻き込まれることも顧みず、
止める落合の言葉も届かない大吾。最後の力を振り絞り巨木を蹴り飛ばしたまま、土砂の中へと消えて行った。
茫然と立ち尽くす北条らに一筋の光明が差す。今のまま、崩落が進めば土砂が川を埋めてくれるかもしれない。
もう少し、あと一歩、ダメだ……届かない。彼らが諦めかけたそのとき、斜面を下る大きな木が土砂の積み重なった土手を押しだした。
土砂はガスを噴出する川を覆い埋める。ガスの発生は抑えられ、安堵する北条たち、彼らは思っていた自然災害によって助けられたと。
彼らは気付いていなかった。最後に土手を押しだした巨木に、大吾の靴跡が付いていることを……
「朝比奈――!!! 返事しろ――ッ!! 朝比奈――!!!」
大吾死亡!!……………ってことはないんだろうなあ、どうせ。
実際、これ大吾の蹴りのおかげなんだろうか
第109報 壊れた動機
到着した科学機動中隊。しかし彼らの仕事はこの現場にはなかった。
疲れ果てボロボロの大吾を見つけた落合先生。二人とジルは安全そうな斜面を降り、め組二部の元へと向かう。
また命を顧みず無茶をしてしまった。自身の行動にそう感じた大吾は落合にSEビルのときのように「またぶつかな?」と問いかける。
もうぶたない。そう誓う落合先生。そのあとに続く言葉は、深く大吾の中に影を落とした。
斜面を降りきった大吾が、現場の様子を聞きやってきた五味と顔を合わせる。五味の目に映る大吾は、どこか輝きを失っていた……
「誰かを助けるために自分を投げだせる人なんて、そうはいない。あなたのような人が、特救隊に入るべきなのかもしれない…」
“もっと危険なところに”“あんなに生きてる瞬間”“過酷だと言われればワクワクする”
(誰かを助けるためには? 誰かのために? 特救はサーカスじゃない…… 人を助ける部隊だ……
おれの… 根っこから… 何か大事なことが欠け落ちている!?!)
これ本当に大丈夫なの?
土砂の水分と反応して中から塩化水素発生しないのかな
第110報 来訪者たち
申し送りを行う大吾たち。大吾は昨日の疲れからか、それとも別の理由なのか、精彩を欠いていた。
北条の報告を、植木と話す五味。北条は言っていた。現場へ向う大吾は楽しそうだったと。
五味は言う。大吾がオレンジを着たいというのなら、Rに推薦してもいい。そう五味は言った。
そんなめ組の様子を遠くから見る、煙草を吸う女性。彼女は携帯灰皿に煙草を捨てると、帯同してきた夫婦とともに所内へと向かった。
彼女の名は忍足ミキ。警防部の消防司令補である。
大吾がレスキュー研修中に助けたおじさん夫婦が、研修性にお礼を言う為の案内をしているらしい。
助けられたおじさんは、大吾に感謝の言葉を送る。涙を流し、顔を紅潮させ、大吾がいなければ死んでいたというおじさん。
そんなおじさんの様子に大吾は、あのときの自分の考えを思い浮かべていた。『もっと危険なところへ!!!誰も行けないところへ!!!』
そう考えていたことを思い出した大吾は、「ちがう!!!」思わず声を荒げ、外へと跳び出してしまった。
外へと消えた大吾を見る忍足、煙草を取り出し、彼女は思った。
(フ――ン、あれが… 本部のエラいさんたちのか“頭痛のタネ”、朝比奈大吾か……)
なんか恐そうな女の人キター
おじさんよかったね、おじさん…
って、え?
第111報 事務官のルール
千国市消防局本部、もっさりとした灰皿をよそに、さらに煙草を吸い続ける忍足の元へ、ぼおっとした大吾がやってきた。
忍足の要件は、この間の逃げ出したこと。何故そんなことしたのかと問い詰められるが、
言える筈のない理由に、大吾はただただ謝るだけだった。そのころ廊下を鼻歌交じりで歩く来栖さん。
来栖は、大吾を見つけると踵を返し、壁の影へ隠れるのだった。
さらに尋問は続き、大吾に蹴りを入れる忍足。その様子を周りは恐々と見守るのだった。
なぜなら彼女は警防部のマザーコンピューターと呼ばれる程の人だったから。
外へと出た大吾と忍足。忍足は大吾に特救の志望理由を聞く。大吾は、特救に行くつもりはないと答えその場を去った。
荒、神田、来栖の三人が口を揃えて“あいつはダメだ”という大吾、その様子に興味を持っていた特救人事担当の忍足はため息をつくのだった。
10日後、大吾に辞令が届く。1週間の特救勤務の辞令、大野は感無量の様子で大吾に心持を伝えた。そんな大野をほとんど気にせず、
大吾は怒ってた。本部の人に言ったはずなのに、何故、辞令が来るのかと。
そのころ消防局本部では、来栖から不満をぶつけられた忍足が、Rの参加する防災訓練の立会許可を求めていた……
「俺の見当違いだった… あれは危ないよ、あいつは呼ぶべきじゃない。」
「俺は反対だ。あいつは向いてない。」
「あいつだけは、絶対に特救には入れんッ!!! 呼ぶなッ!!!」
大吾みんなから恐れられ過ぎwwwwww
来栖さんカワエエw
>>95 まあしょうがない、遠くから見る分にはともかく
自分の近くにあんな凄いけど訳分からん奴がいたら恐ろしすぎるw
>>97 でも現場の責任者じゃなければ恐くないような気がする
第112報 初めてのオレンジ
そわそわとする特救隊員たち、そこに出て来たのは、オレンジの制服に身を包んだ大吾だった。
昆布第二小学校に防災訓練に来た特救の面々。元気の良い子供たちを、高所作業車、通称はしご車に載せ、
無事に下まで送り届けるのが大吾の特救、初仕事だ。バスケットに乗り込む子供たち。
その中には、特救試験前夜の昆布山火災で救助した、あの少女がいた。
窓から離れるバスケット。大吾が軽く冗談を言ったら……、アレ? 止まっちゃった。
「ここでしばらくバスケット止めようか? うそだよ、うそ!」
ゴ ゴン… ヒュゥゥー
「あれ? ……止まった…?」
第112報 初めてのオレンジ
そわそわとする特救隊員たち、そこに出て来たのは、オレンジの制服に身を包んだ大吾だった。
昆布第二小学校に防災訓練に来た特救の面々。元気の良い子供たちを、高所作業車、通称はしご車に載せ、
無事に下まで送り届けるのが大吾の特救、初仕事だ。バスケットに乗り込む子供たち。
その中には、特救試験前夜の昆布山火災で救助した、あの少女がいた。
窓から離れるバスケット。大吾が軽く冗談を言ったら……、アレ? 止まっちゃった。
「ここでしばらくバスケット止めようか? うそだよ、うそ!」
ゴ ゴン… ヒュゥゥー
「あれ? ……止まった…?」
これは小学生トラウマ確実w
大吾がなにか感じてマットの下に小学生放り投げる展開になるのかw
整備不良だな〜
担当者叱られるぞ
第113報 空からの帰り道
止まってしまったはしご車のアーム、遙か上空に位置するバスケットは風に煽られぐらぐらと揺れていた。
防災指導を見守っていた忍足は隊員からスピーカを奪い取ると、児童を落ち着かせようと声を出す。
その頭には、荒、神田、来栖たちが声を揃えて言っていた大吾の評価がチラつき、顔から血の気を引かせていった。
バスケットの中で泣きだした少年たち。その涙を見て、大吾は災害を楽しんでいた、待ち望んでいた、自分を悔む。
そんな大吾に、昆布山火災のときの少女は、泣きもせず笑顔で抱きついた。少女は言った、消防士さんがいるから帰れると。
少女の言葉に、少し落ち着いた少年たち。それに呼応するように、はしご車の修理が終わり、地上へと向かってバスケットが降りはじめる。
怖がっていなかった少女を見て大吾は、自分の考えが災害の現場において“ひとりでなくなったときに”変わっていたことに気付く。
“行きたい”ではなく“帰りたい”に変わっていたことに…
バスケットから降りた大吾、その目には涙が浮かんでいた。他人から信じられることで、自分を信じることに気付いた大吾だった……
「消防士さんだって帰りたいんだもん。 ね!!」
変わってたのか。
そういわれるとそんな気もするようなそうでもないような
助けた少女に助けられか
第114報 クロス・カントリー
申し送りが終わり一週間に及んだオレンジ補充要員の仕事を終えた大吾。その表情はウキウキと晴れ、め組に戻ることを心待ちにしていた。
大吾を見送る隊員たち、この一週間さしたる出場もなく拍子抜けだったなと語る。雪でも振るんじゃないのかと笑うのだった…
二日後、大吾の復帰初日。元気に目覚めた大吾がカーテンを開けると……そこは雪国だった。息が白く凍りついた。というか遅刻決定だった。
自転車が使えず徒歩で、め組に向かう大吾は、電車が止まり歩いていた平と出会う。近道だという坂を登ろうとする二人は
その中ほどに、車と相撲をとる植木さんを発見した。何やっとるんや、あのおっさん。
植木の説明によると、どうやら凍った路面のせいで、路駐の車が坂の下へと滑っているらしい。レッカーなんて当分こない
そう判断し、坂の下へゆっくりと降ろすことを提案する植木だが、少しでも早く“め組”へ行きたい大吾は
車を坂の上と押し上げることを独断で決定し、力を入れ始めた。どうやら煙とバカは坂の上が好きだという話は本当らしい……
それから少し経って、め組の五味の元へ、息を切らせた植木から電話が入る。近くを通った人の助けを借りて、車を押し上げることができたと
報告する植木、だが大吾は車を押し上げたあとどこかへ消えてしまったとのことだった。
め組のドアが開く。五味が受話器を、入口の方へ向け言った。
「一週間ぶりの出所だろう、あいさつはどうした?」
「朝比奈大吾消防士、ただいま“め組”に戻りましたあッ!!!」
後ろの人に避けろって言うぐらいなら119番してくれって頼んだ方がいいんじゃないか?
第115報 イン・ザ・ホスピタル
め組から帰宅した大吾は、朝から誰もいない家の居間に置かれた書き置きに気付かず、丸一日爆睡して次の日、出所した。
そんな大吾の元へ母親から電話が入る。どうやら祖母が入院したらしい。慌てふためく大吾に、五味が病院へ行く許可を出した。
太田病院。突然の消防士の登場に入院していたおじいさんたちは驚くが、火事ではないことを知り落ちついた。
ムスーとしたおばあちゃん。大吾が昨日来てくれなかったことにすねているおばあちゃんは、仕事の話が聞きたいと大吾に言った。
ガス漏れ事故、落ちそうになった車、今までの仕事について話す大吾の周りに、少しづつおじいさんたちが集まる。
そして盛りあがった大吾は、枕を抱えてベッドに足を掛けていたところを婦長さんに注意されて、病院を後にした。
そして次の日、大吾はまた仕事の話をしていた。なぜか祖母にではなく、まわりのおじいさんたちにだけど。
おばあちゃんをトイレへと連れて行った帰り、大吾は自分の心境に変化があったことを話した。
ばあちゃんが部屋へ戻ると、そこには熱気冷めやらぬ老人たちがいた。
ばあちゃんは思った。なんだか…退院しずらくなってきた……と。
翌朝、出所した大吾は、慌てる植木たちを目にする。出火報が入ったらしい。その現場は……もずく町、太田病院!!
「おまえも大変なんだねぇ。これからもくじけずにがんばりな。」
「ばあちゃん…… いつもおれ、現場では無我夢中になっちまうけど…
それでも…必ず帰って来ようって思ってるんだよ。要求助者と一緒に…一緒に帰りたいって!!」
「……そうかい。」
トラブルメーカー…なわけじゃないんだけど
どこまでも付いて回られてるな ナム
あの書き置きは酷いな
もっと気付きやすくしといてくれないと
>>111 多分病院から火が出て消防車が何台も来るような大火事になるんじゃないか?
しかも医薬品から怪しげな煙が出たりして。
有毒ガスか。
ってこれはやったばっかだからないか…
第116報 疑わしきは…!?
大吾たち、め組の面々が病院へと辿り着く。けれどもそこに火の気はなく、突然の消防士の登場に驚く看護婦たちがいるだけだった。
誰が通報したのか? その疑問に答えるように大吾のばあちゃんが現れる。病室の中が煙たいような気がし、話し合ったすえ通報したようだ。
ばあちゃんは落ちついて笑っているが、病室の老人たちは婦長にあやまるのだった。
病室へと戻った老人たち、やはり匂いが気になり、外で撤収準備をしていた大吾たちを呼ぶ。煙の匂いがする。ような気がする。
煙を気にする大吾たちに、看護婦の一人が二階の妙に暖かい壁のことを伝えた。
暖房の通っていない壁、もしかしたら中で燃えているのかもしれない。だが病院は市の所有であり、
気軽に壁を破壊することはできない。植木たちは熱画像直視器を準備し中を確認しようとした。
そのとき大吾は、自身が火災にあった経験と、祖母の言葉を思い出し、手に持ったアックスを構え、壁に向かうのだった。
その頭に“ブッ壊しゃあハッキリするじゃねーか!!!”と浮かべながら……
「ムダ足で済むのが、一番なんだよねえ… なーんにもないのが。」
公共の建物って厄介が段違いなんだな
相手が同じ公共機関だと縦割りで更にうるさそうだ。
これは煙の発生源を調べるためにジルを呼んできたらどうだろう。
第117報 何もない証拠
斧を構え壁へと滲みよる大吾に、皆の視線が集まる。植木が注意し、ばあちゃんは心の中で『やっちゃいなっ!』と考えていた。
そして大吾は斧を……植木に預け壁に背を向けた。あれ、やんないの? という物言いたげなみんなに、証拠を見つけてくると良い
大吾はその場から離れた。植木の怒鳴り声は、届かなかった。
病室へと戻った大吾は、シーツに灯油をかけダクトに入る。ダクトを進む大吾、コゲくさい臭いとともに、「いつもの何か」を感じた。
大吾はそんな自分が嫌だった。人が不幸になる災害の現場で高ぶるそんな自分が嫌だった。
けれど、大吾はそんな自分を見つめ直した、だからこそできることがあるのだと。大吾がダクトの上部へとシーツを突っ込んだ。
そのころ二階壁前では、植木と医者が、壁の扱いについて、けたたましく話し合っていた。それをおろおろと見守る患者の老人たち、
彼らは大吾のことを心配していた。自分たちのせいでクビになるのではないかと、自分たちの老い先短い命なんてどうでもいいそう言っていた。
そのとき婦長が怒った。斧を持ち、命よりも大事な壁などないと。植木は婦長を落ちつけ、斧を預かる。そこへ病室から無線が入った。
植木たちが病室の扉を開けると、そこには燃え盛るシーツと叫ぶ大吾がいた。二階の壁は燃えていたのだった……
「どうせわしら、老い先短いんだ。万一、煙にまかれたって、別に…」
「もういいんじゃ、わしらなんて…」
「バカ言うんじゃありません!! “もういい”だなんて、看護婦(わたしたち)の前で二度と言わないで!!!
建物が患者さんより大事なはずがない!! どいて!!! 私が壁を壊しますッ!!!」
看護婦さんなかなかいい人だな
婦長さんカコイイな
婦長が壁を壊せば職員の建物破損ってことで穏便に済ませられるのかな
第118報 本当の顔
大吾と平が壁を壊すと、中からは黒煙が噴き出した。植木の指示を受け、大吾は患者たちの避難を手伝う。
足腰の弱った老人を三人まとめて背負い進む大吾。さらにもうひとりを背負おうとするが大吾の祖母も辛そうだった。
大吾が祖母の顔を伺う。そして決めた身内は最後だと。その声と顔に、ばあちゃんも力を取り戻す。
大吾の姿、表情、現場の喧騒、多くの要素が老人たちにあることを実感させた。
面白おかしく話していた大吾の話は、全て大吾の体験した事実なのだということを。
13時20分、火点はほぼ鎮圧された。大吾は病室へ戻った老人たち、祖母が退院しても、遊びに来ることを伝える。だが、老人たちはそれを断った。
大吾が戻り、冷たく言ってしまったことを少し悔む老人たちだが、ある老人の言った“大吾の過ごすべき時間”それは皆が感じていたことだった。
帰り際、ばあちゃんと話す大吾。身内は後回しだと言ったことについて、怒っているか? と尋ねる。
すぐに「あれでいい」と返すばあちゃん。大吾は笑っていた。
病院を出る救急車を見てばあちゃんは、これからさき大吾が“大きな何か”に相対するのではと感じていた……
「ほかに過ごすべき時間があるんじゃないかなって気がしてな…… それが… できる今のうちに…」
第119報 百年の計
千国市消防局本部屋上、忍足はその日、納入されたヘリコプターを見つめていた。
そこへ現れた偉そうなおじさんたち。彼らはぐちぐちと忍足に不満を言うが、
忍足はそれを受け流すように一言呟くとヘリへと乗り込みテスト飛行へと旅立った。
忍足はヘリの中で先日の病院火災についての報告書を読んでいた。そこには、熱画像直視器等を使い火の気を見つけたと書いてあった。
“等”これはなんだろうと思う忍足。壁の中を調べるのに、それ以外の何が必要だというのか。忍足はその“等”の文字に、
大吾の影を感じていた。
「見えてきましたよ」副操縦士が声を上げ、忍足に呼びかける。その指の先、忍足たちの眼下に広がっていたものは、
『千国沖国際空港(仮称)』である。5年前に決まった千国市始まって以来の大工事、その大きさに忍足は不安を感じていたのだった。
その頃、めだかヶ浜町。「火が出たらどうするかではなく、火を出さない」に意識を向け始めた大吾の姿に、め組の所員たちは
大吾の成長を感じていた。
翌日、居酒屋洋子。特救研修第15期の面々が和気あいあいと楽しく酒を飲みあっていた。
その外には、忍足。大吾に熱画像直視器“等”の説明を実際に確認しようとここまで来たのだった。
忍足が扉を開けると、甘粕が渾身の力を込めて大吾の顔面を殴っていた。
「オレは消防官として絶対に貴様を許さねえ!! ブッ殺してやる!!!」甘粕は本気で怒っているのだった。
「お歴々の皆さま永きにわたってご協力ありがとうございました。5年も。」
「モノを買うよりも、それを使う人間の養成が先ではないのかっ!?!」
「“ヘリ”を使う“部隊”は、ヘリを運用しながらでないと、決して育ちませんわ。
それにしても、時間がかかりすぎた… 間に合うかしら。」
酒癖悪いな甘粕
普通に人的調査により確かめたって書いちゃいけないの?
>>125 相手が大吾だから仕方ないよ
むしろ今までよく我慢したよ
甘粕も熱いヤツだよな…
描写的に見て今回の話は空港でなんかやばい事が起こってそこがメインの舞台になる感じかな
どうだろ
多分そうなる
第120報 それぞれの役割
掴みあい、さらに殴りあいを続けようとする甘粕と大吾の間に、忍足が割って入り理由を聞く。それは今から30十分前のことだった。
「千国市の平和はオレ達が守るぞ――――――ッ!!」と酔っぱらって陽気な常盤さん。大吾たちも酒を手に取り楽しく歓談していた。
その中で大吾がぽつりと呟く。本当は特救も、消防も必要のない世の中がいいのだと。
大吾は語り続ける。高校時代、自分が何の目的もなく生きていたこと。災害を本当にゼロにしたいと考えている、
考えているからこそ、頭に浮かぶ自身の未来。災害がなくなったとき、自分が役に立たない者に戻ってしまうと大吾は言った。
撤回を求める甘粕。大吾はその気持ちを変えることはできなかった。例え口先だけの言葉としても……。
そして甘粕は大吾に殴りかかったのだった。
説明を聞き終えた忍足は、意地を張る二人を見て呟く、うらやましいなと…。その言葉、血が頭に昇ったままの大吾が切れる。
現場に出ない人にはわからない。机の上で仕事をしている気楽な立場の人間にはわかるはずがない。そう大吾は言った。
その言葉を聞き、忍足は寂しそうな顔をする。もう少し遅く生まれたら、女である自分も現場へ出れたのにと言いながら。
忍足は店を出ると、何かを思い出すように、左腕の袖をまくった。そこには火傷の跡。燃え盛る火炎の中から救出された思い出。
その火傷の跡を見て忍足は誓う。戦う場所は違っても、自分も戦い続ける。人々の幸せを奪う災害を許さない。
ヘリだってそのために買ったのだと、忍足は思う。そんな忍足の携帯電話に連絡が入る。その一報は……
「納入されたばかりのヘリが、き、消えたあ!?!」
「甘粕よォ…… おれは怖いよ! 本当に災害がなくなったら… おれは、また、なんの役にも立たない奴に戻っちまう!!!」
「だめだぜ…… それを言っちゃ…」 口先だけでも良いい… 「今の言葉を… 取り消せ!!」 でないと俺は――
「この気持ちはたぶん消えねーよ! 一生!!!」
忍足さん…切ない
甘粕とのケンカはともかく忍足さんにまで切れるなよ酔っぱらいめ
ヘリが消えたか…デービッドカッパーフィールドの仕業だな
ドラマつまらんかった
第121報 市内に消ゆ
ヘリが消えた。その連絡を受け忍足は思う。彼らを、将来の精鋭部隊を乗せるためのヘリを失うわけにはいかない。
忍足は、大吾たちのいる店を一瞬だけ振りかえり、本部へと急いだ。
その頃、店の中では常盤さんが、その場を取り繕おうと頑張っていた。でも大吾は帰ることにした。
その大吾を止める者がひとり。「どけよ!!」とどなる大吾に負けずに、スキンヘッドの彼は言った。
1部の消防員に非番召集がかかったらしい。何か災害が? とどよめく店内だが、彼が続けた言葉を予想外の物だった。
「ヘリコプターを探せって……」
場所は変わって消防局本部。忍足は飛行ルートなどの詳細情報を受け取っていた。ルートは大したものでもない。
操縦士は千国市きっての名パイロット。忍足は何が起きたのかを理解できなかった。そんな忍足が警察へ連絡したのかと来栖に聞くが、
来栖は通報はしていないと答えた。消防局としての体裁が大事、買ったばかりヘリを失くしたなど言える筈もないと彼は言った。
頼ることのできない上層部に呆れ忍足は車でヘリを探しに行くのだった。
そのころ、め組には非番の隊員たちが集まり、各自の分担を決めていた。その中で大野が呟いた「もう助からないかもしれない」
との一言が、各自の緊張を高める。大吾は自転車に跨りヘリの捜索へと飛び出した。
市内を走る大吾、その目がもうもうと上がる白煙を捉えた。ヘリか? と思い現場を見る大吾だが、そこにいたのは
標識のポールに突撃していた車と、悲しそうな顔をしたその持ち主、忍足だった。忍足は呟く。その言葉は大吾に向けられた物ではない。
忍足が怒りに我を忘れ車を蹴り飛ばした。その姿は大吾の心に、言ってしまった言葉に対する後悔の念を浮かばせるのだった……
「必死でがんばったのよ… ヘリの導入… これで多くの人命が救われると思ったから…… 私も頑張った!!
人を助けるためのヘリなのに…… なんでよおッ!!!」
ヘリコプターって管制塔で常時位置を観測してる訳じゃないのか
みんなそれぞれ必死で仕事がんばってるんだな
なんとか無事に見つかってほしい
忍足さん、ちゃんと前も見て運転してくだしあ><
..
これはもうだめかもわからんね
ふるやbitch氏ね
第122報 私の街
忍足を国道まで送り、別れる大吾。自転車に乗りヘリを探すが、忍足に言ってしまった「気楽な立場」という言葉が、
気にかかり頭から離れない。そのころ忍足は、もうタクシーでなくても良いと、国道を走る乗用車を止めようとしていた。
だが、車は止まらない。通り過ぎる車に手を振り続ける忍足の元へ、大吾が戻ってきた。
大吾が尋ねる。どこか心当たりがあるんじゃないのかと。忍足が答える、車さえあればここから遠くないと。
その言葉を聞いた大吾は、道路に飛び出し、車を無理やり止めた。そんな車から怒鳴りながら飛び出して来たのは甘粕だった。
「“おれ達”を乗せてってくれねーか!?」大吾は頭を下げ、甘粕に頼みこむ。甘粕は、「お前とは絶交だ!!」と無下に断るが、
忍足がいることに気付き、その忍足が甘粕に頼むと、しぶしぶ二人を車へと乗せた。
車が走る。向うはバブル期に着工され、途中で計画が頓挫したホテルやビルの外殻だけが立ち並ぶ臨界地区。
不安がる甘粕だが、忍足の鬼気迫る一言に圧倒され黙り込むのだった。
車が目的地に到着する。投げ出された工事の跡がさながら廃墟のように広がっていた。
忍足は墜落したならば、ヘリの隠れそうな様々な遮蔽物を指差す。そして三人は徒歩での捜索を開始した。
その中で大吾は、災害の現場でのみ感じる、いつもの“何か”を感じているのだった……
「私ほど、この千国市のとを知っている人間はいないわッ!!」
ひょっとして建設途中のヘリポートかな?
ここにいそう?
すごいなマザーコンピューター
>>146 まぁどうせ最終的には
大吾…恐ろしい子…
で終わるんですけどね
第123報 大吾の捜し物
見放された造りかけのビル群、その中で忍足と甘粕はヘリの落ちていそうな場所を目指し駆け出した。
だが、大吾がそれに続く気配はない。土管の中を見つめる大吾に、甘粕が怒鳴る。そんなところにヘリが落ちているはずがない、
早く来いと。その声に一瞬は従う大吾だったが、過ぎ去る甘粕の背中を見送ると、またどこかおかしなところを探し続けていた。
ヘリが存在するはずのない狭い場所を探す大吾、ふと気付くと甘粕も忍足もどこかへと消えているのだった。
そのころ忍足と甘粕は、大吾とはぐれていたことに気付く。忍足は溜息を吐きつつ、二人で探すことに決めた。
いくらかの時間が立った。本部では来栖が、警察へ依頼を出していたそのとき、忍足と甘粕はあらかた探し終え、
最後の希望にすがるように、着工途中のビル前に立っていた。滑り込むように一階部分に着陸したかもしれない。
忍足の最後の願望は、甘粕にとって絶望的な物だった。だが忍足は願う。パイロットの辰巳の腕ならばいけるかもしれないと。
結果、ヘリは存在しなかった。へたり込む忍足、疲れと絶望の狭間で、ヘリは海中に落ちてしまったのだとただ叫ぶのだった。
そのころしゃがみ込んで、資材の間を探していた大吾は見つけていた。ヘリの乗員、傷付いているが息のある乗員を一人、見つけていた。
落ち込む忍足と甘粕の前に「救急車を呼んでくれ」と叫びながら大吾が駆け寄る。
状況の理解できない二人に、大吾が息を切らせて言う。このビルは吹き抜けになっていて、上からヘリが入っていると。
大吾がビルへ向うと、二人も続く。そこは吹き抜けにはなっていなかったが、ここは地下になるはずの場所だと、
階段を駆け上がる。そして三人の前にそれは現れた。建築資材の上で、かすかな白煙を上げるヘリコプターの姿が……
「だめだわ!!! やっぱりヘリは海中に沈んだのよッ!!! ヘリはもう見つからない!!!」
いた!!!
なんであんな所に
?
ヘリだったら垂直に降りることができるからな
しかし凄い腕だな
第124報 “等”
いきなり現れヘリを見つけた大吾は、驚き固まる二人を気にも留めず、救急車を呼べと叫んでいた。
ヘリの中をみる。操縦士は血だらけではあったが、生きていた。救急車が到着し、二人のパイロットを運ぶ。
担架に載せられた操縦士の辰巳は、朦朧としているだろう意識の中で、自分の身を案じることなく、ヘリの無事を尋ねるのだった。
トラブルの原因は、燃料が寒さで凍結したとのことだ。そのなかでビルの吹き抜けに、損傷を最小限で、着陸させた辰巳の腕を、
原因を調べていた隊員が神業だと評す。修復が可能なヘリ、忍足は辰巳にただただ感謝するのだった。
大吾が、副操縦士を見送り、戻ってきた。甘粕は、なぜヘリを見つけることが出来たのかを質問する。
大吾は答える、副操縦士がいたからだと。忍足には、理解ができなかった。大吾も、なぜ甘粕や忍足がそのようなことを聞くのかが、
わからなかった。そしてそんな大吾の様子と、この場所に来てからの大吾の行動を思い出し、甘粕は気付いた。
大吾はヘリなんか探していなかったと。ヘリがある可能性のあるこの場所に着いた時から、大吾の頭は、“ヘリの捜索”から
“人命救助”に変わっていたのではと甘粕は言う。それは偶然であり、考えすぎかもしれない。けれど、ヘリを探していた自分は、
人を見つけることはできず、大吾は人を見つけた、それが真実であると甘粕は忍足に説明する。
その説明を聞き、忍足は思った。病院火災の書類に載せられた熱画像直視器“等”という言葉、
通常、許せるはずのない“等”という言葉も、大吾のような者がいるのならば必要なのかもしれないと。
そのころ、現場に操縦士の二人が一命をとりとめたとの連絡が入る。歓声に沸く隊員たち。甘粕はほっと胸をなでおろし
大吾の方を見た。疲れ果て座り込む大吾の表情は、まるで自分が助けられたような顔であった……
「ヘリは… ヘリは…無事か…?」
助かってよかった。・゚・(ノД`)・゚・。
副操縦士はよくヘリの場所説明できたな。
あんなごちゃごちゃした所、とても口で表わしにくそう
甘粕が大吾のとんでもっぷりを翻訳する通訳みたいな役回りだな、
流石に忍足さんとは遭遇回数が違うだけにほんの少しだけ慣れが出たか
辰巳さん、血だらけで顔見えないけど、かっこいいな
第125報 春の再会
AM8:50、業務を終え、申し送りの済んだ大吾の背中を、五味が「おつかれ…」と軽く叩くと、大吾は一瞬気の抜けたように倒れそうになる。
同日、めだかヶ浜高校。仰げば尊しの歌とが流れ、卒業式が行われていた。
「卒業おめでとう」そう、手を近藤の前に出す落合先生、近藤は握手の代わりに賞状の入った筒を落合の手に当てた。
近藤が言う。短大に入って、勉強して、消防官になると。その言葉に落合が返答する。仕事はよく考えて決めた方が良いと。
一瞬、怒るような顔を見せる近藤。だが、落合がさらに続けた言葉は、これから先に続く近藤の人生に対してのはなむけの言葉であった。
そのころ帰り道の大吾たち、明後日に行われる防災フェスティバルの招待状を平が落合と近藤に送ったことに大吾がわめいていた。
防災フェスティバル当日。平からの招待状を、大吾からだと勘違い中の近藤は、るんるん気分で会場を歩いていた。
そういえばと、自分が消防官になることを大吾にバラさないよう落合に頼むのを忘れていたと思いだしたとき、ぶつかった。
落合先生と。そのとき、会場にアナウンスが流れる。レスキュー有資格者によるロープ登はんの演技。
ダントツの速さで、ゴールした者が、壁の上でヘルメットを外すと、それは大吾だった。汗を垂らし、息を切らせた真剣な表情の大吾。
下では、成長したな植木やめ組の隊員が大吾を褒める。壁の上では、「さすがレスキュー有資格者、訓練なのに手を抜かず真剣だ」と
心の中で思いながら大吾を見る者がいた。そんな会場の中で、五味だけが大吾の未来に幾らかの暗雲を感じていた……
「本当にやりたいこと… そうやって選んだ仕事は… 一生あなたを輝かせる!! 卒業おめでとう!」
大吾は訓練でも余裕でできるぐらい凄くなってるんだな
第126報 フェスティバル
センゴクシティ・スカーレッツの演舞、防災服を着る子供たち、防災フェスティバルが続く中、大吾の元に近藤と落合がやってきた。
落合は、大吾の着るオレンジの制服を見て何か言葉にならない感情を感じていた。そんな中で、植木が大吾に「本部へ行け」と声をかける。
表彰だった。大吾の母と祖母も、目尻を濡らしながら、大吾の晴れ舞台を見守る。落合は表彰される大吾を見て、
人のためにあれだけの行動ができる大吾は、この仕事に向いているのだと考えていた。理解はできないのだけれど。
来栖さんが、嫌そうに、文面を読み上げ、すごーく嫌そうに表彰状を大吾に渡した、そのとき、大吾が突如、顔を上げた。
落ちる看板。砕け飛び散る破片。すごいびっくりして、顔真っ赤になちゃって、観客に笑われてる来栖さん。
盛り上がる会場に大吾は決めた。とっておきの一発芸を。
祭りが終わり、夕日に染まる会場は、片付けに追われる隊員たちで、どこかさみしげだった。
そんな中で、大吾に声をかけようと、近づきかけた落合が、大吾と五味の会話を聞いた。
「お前に、一週間、休暇をやる。仕事に出るな!! これは所長命令だ!!」と五味が言う。
大吾は、それを断る。だが五味は引くことなく、大吾に何故休めないのかと問い続けた。
大吾は答える。消防に入るまでの自分は嫌だった。消防に入って、何とか一度のミスもなく、ここまでこれた。
人からも少し認められてきた。だから今は逃げるわけにはいかない。昔の自分には戻りたくない。大吾は五味にそう言った。
五味は考えを変えない。そして言った。「お前、このままじゃツブれるぞ!!」
「ファイヤーマンの、“えふっ”!!」
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ヾ:」 ヾ:」
やっぱいいなあ、来栖さんw
相変わらず大吾は脳みその構造がわからんやつだw
第127報 休養命令
大吾に休暇命令を告げる五味。それを影から聞いていた落合は、数々の活躍をし、表彰までされた大吾がどうして「ツブれる」のか、
五味の言葉が理解できなかった。大吾は五味に反論する。あんたなんかに、やっと居場所のできた人間の気持ちが理解できない。
高校時代の死んでいるようだった自分からずっと抜け出したかったと。
「俺にはわからないというのか? その気持ちが…」五味が言う。大吾はその言葉をただ流し、続けた。
みんなからソンケーされてきた五味にわかるはずはないと。これを続けている内は、昔の自分に戻らなくて済むのだと、大吾は気持ちをぶつける。
その言葉を聞き落合は大吾について思う。身を挺して人を救う自己犠牲、“聖人”に近いとさえ思い始めていた。だけど違った、
大吾は自分のためだからこそ、必死に戦っていたのだと、落合は理解した。
五味は大吾に質問をぶつける。そして返ってきた答えに、大吾の気が変わることはないと、感じた五味は、ただ命令を残しその場を去った。
しばらくして、帰宅しようとした落合の元に近藤がやってきた。自分が消防官になることを言わないでほしいと約束させる近藤。
さらに、近藤は大吾を褒め称えていた。カッコよくてスーパーヒーローのようだと。その言葉が落合の逆鱗に触れた。
大吾はヒーローなんかじゃない。自分たちと同じだと落合は言う。その何かを悟ったような落合のたたずまいは、近藤の怒りに火を点けた。
落合の突き飛ばす近藤、落合もそれにやり返す。「ヒーローだなんて言わないで! 彼に失礼だわ!」
それから数日、大吾は山あいを進むローカル線に乗っていた。送り出された旅行。車内放送が、目的地である「えび谷」への到着を告げるが、
いま、掛かっているかもしれない出場について考えると大吾は落ち着くことはできなかった。
そして電車の扉が開く。「このヒトかーっ!」「このヒトだろ――!!」「本物の消防士!!!」
大吾を迎えてくれたものは、顔を紅潮させ、消防士に期待する子供たちだった……
「…この先、一生… 一度たりとも“失敗”はできないというのか?」
「……できない!! 一度も!!!」
一生一度たりとも失敗出来ないって無茶だろ、
そらそんなテンション維持してたら潰れるわ
しかしそれをやりかねないのが大吾ではある
ただこの質問、人命に関わる仕事をしている人にして「いやー、まあ1回ぐらいなら」とか言われようならシャレにならんな。
厳しい仕事だな
第128報 えび谷消防少年団
民宿のおじさんに連れだって歩く大吾。その後ろからは、消防少年団だという先ほどの子供たちが、ついて来ていた。
旅館についた大吾が、子供たちに消防士になりたいのか? と聞くが「べつに… なりたくねぇよ」と言って去ってしまった。
どういうこっちゃと思う大吾だが、自分のように引き返せなくなるよりは、それが良いと思う。そしてのんびりしている場合ではないとも。
考えこむ大吾に、民宿のおじさんが、熱泉寺に行ってみたらどうかと告げる。そこには子供たちが消防士に興味をしめす理由があるらしい。
そのころ、め組では、植木が五味と世間話をしていた。ただそんな中で、大吾は、えび谷というところに行ったと植木が言うと、
五味は何か思うところがあるように、顔を曇らせた。
お寺についた大吾。そこにでは、子供たちが落ち葉掃きをしていた。燃え易い落ち葉を掃除するのは消防団の仕事なんだと。
大吾もそれを手伝おうと、寺の中をのぞき、掃除用具は借りられないかと声を出す。そんな大吾の目に、黒く焼け焦げた、
火災の後が映った。それはずっと昔に焼けたものだという。消防士さんなら、バケツの水でこの火事を消せる? と子供たちが聞いた。
大吾は無理だと答える。だが、子供たちは納得しなかった。さらに大吾が子供たちに火の怖さを、と無理だと言い続けていたら、
「だせー、ダセー、バ――カ!」と残してどこかへ行ってしまった。そこへ住職が現れた。大吾の質問、住職は笑いだした。
尾ひれがついてはいるが、嘘ではないと言う。そして昔話がはじまった。寺が焼けたても、消防車は30分はこない。
30分もあれば、こんな寺は消えてしまう。消火設備もほとんどない。それでも今、この寺はある。住職は語る。
気付いた時には、見ていることしかできないほどに燃えていた。消火器も役には立たない。あるのはバケツのみ。
誰もが諦めかけたそのとき、男が現れた。野球帽をかぶった小柄な男が叫ぶ。一喝。空気を変える。そして男は言った……
「俺は消防士だ!! みんな俺のいうとおりにしろッ!!!」
このガキどもはw
♪ぼ、ぼ、僕らは少年消防団!
第129報 バケツの伝説
15年前に起こった火災の話は続く。現れた消防士は、119番をしたのかと声を出すが、とっくにされていたし、
消防が来るまでに、30分はかかる。嘆き叫ぶ住民たちに、男が怒声を発す。無いものいくら嘆いても無い。
自分の大切なものは自分で守れと。そしてバケツリレーがはじまった。住民は半信半疑ながら真剣に取り組む。
男の指示は的確で、いつしかリレーの列は人の増加と伴に7本にまで達した。そして火が消え、男は言う。「あんたらが守ったんだ」と。
話しを聞き終えた大吾は、それが五味なのではないかと考え住職にその男の名前を聞いた。だが男は偽名で泊っていたため名は
わからないという。住職はさらに話を続ける。自分や民宿のおじさんや、スーパーの店主の山本さんが組んでいる
この町の消防団はすごいぞとか。でもそれは大吾にとってどうでもいい話だった。お寺からの帰り道で、大吾は明日の芋掘りについて
話す消防少年団の子供たちに合う。カッコ悪い消防士として認識した大吾を、子供たちは適当にあしらうが、
大吾が、子供の夢をソンチョーするとかで、昔の消防士の凄さを認めると、子供たちはうれしそうに笑うのだった。
子供が大吾に質問し、大吾が答えるとみんなが笑う。スゲー消防士になれと大吾が言って、えび谷は笑い声に包まれるのだった。
翌朝、予定を切り上げ、帰ろうとする大吾。どうやら、昔の消防士が五味なのかを確認したいようだ。
列車が駅を出る。大吾は考えていた。偽名でここにいたのが五味ならば、五味にも逃げ出したくなるようなことがあったのだろうかと。
深く深く考える大吾。その後ろから見える車窓の風景では、山がもうもうと黒煙を上げていた……
「消防士になりたくなくて、少年団なんて入るかよ!」
「ねー、たいへんなんでしょー、テストとか受かるの」
「んー、まーどうってことねーよ。おれが受かるぐらいだからな――」
「あははは!それもそーだ」
「どうせなるんならさ… スッゲ――消防士になれよなッ!!」
スゲー、これ当然五味さんなんだよな?
まあこれで別人だったらそれはそれで凄いが流石にないだろう
今回は五味さんの過去に迫るシリーズだったのか
第130報 スゲー消防士
ざわつき始める車内、大吾は山から立ち上る煙に気付いた。乗客の誰かが言った。「えび谷の辺りじゃないか?」と。
大吾はいても立ってもいられず、列車を止めさせ駆け出した。現場までは、かなりの距離がある。大吾は車を探し、見つけた。
配達に向かおうとしている松田米店の車を。配達のおじさんと口論になるが、大吾は無理矢理乗り込み啖呵切った。
言葉を失くし従うおじさん。山のふもとに着くと大吾は車から降り山を駆け上がる。残されたおじさんはこぼす。殺されるかと思ったと。
大吾は走りながら考える。自分は可笑しい。現場へ向うことで解放されてきている。えび谷の人たちは普通のかわいそうな被害者だ。
俺が行って助けなければならない。あの凄い消防士のように。現場が俺の居場所なんだ。大吾は休まず斜面を走り続けた。
その横を消防車が通りぬけた。遅い、遅すぎる。素人の消防団ではどうにもならないはずだ。大吾は怒る。だがその大吾の目に映ったものは、
黒く煤けた煙がみるみるうちに白くなっていく様だった。現場へついた消防車と大吾。そこではえび谷のおじさん達が歓喜の声を上げていた。
消防士の問いに、鎮火したと答えるおじさんたち。15年前は立ちすくむだけだった人たちが、今は変わっていた。変えたのは、
あの消防士だった。その光景は大吾に深い驚きを与えていた。大吾は思う。こんなにも人を変えて、こんなにも人に影響を与えることが
できるのか。“スゲ――”消防士……。大吾の脳裏に浮かぶ人は、頭に火傷を負った野球帽の小柄な消防士だった……
「あの……火災は…」
「もう我々が鎮火したよ」
「“えび谷温泉郷消防団”がねッ!!!」
実際どれくらいすごんだろね?素人の消防団があれぐらいの火災を消すの。
今ひとつよくわからないな
176 :
マロン名無しさん:2008/07/03(木) 08:16:38 ID:LFDgRCEP
あの漫画 絵が嫌いだった
177 :
1/2:2008/07/05(土) 19:19:23 ID:???
第131報 真の英雄
消火後の現場は、消防団と消防少年団の歓声に包まれていた。大吾はその様子を見て思う。十五年前に現れた消防士が何者だったか
なんてどうでもいい。本物の消防士には何かを変える力がある。普通のおじさん達を変えるだけの凄い力が。
昂る大吾。自身もそのような凄い消防士になっるのかと自問する。そのとき大吾の後ろで消防団のおじさん達が言った。
「ガッツあるぜっ!」振り返る大吾。「大川さんガッツありますよ!!」「ガッツあるぜ――」消防団のおじさん達が、
子供のように笑い合うのを見て、消防少年団の子供たちは“ガッツ”なんて言葉は古いよなあと不思議がる。
だが大吾はその言葉に、はたと確信した。十五年前の凄い消防士が五味だと。自分を助けてくれたときと同じように、
その言葉を言ったのだろうと大吾は思った。そして、大吾は消防団のおじさん達に敬礼するのだった。
翌日。め組にやってきた大吾は、五味に休暇はもういいと伝える。五味が所長命令だと言うが、大吾は怯まない。
えび谷には、スゲー消防団があったと大吾が言う。少し表情が変わる五味だったが、すぐに繕いなおした。
大吾は思っていた。自分の居場所がなくなるなどと言うのは小さいことだ。「シゴトに出たいと言ってるんだッ!!!」
大吾が叫ぶ。この仕事はもっともっとデカイことができる。誰かに必要とされたいと怯えるのではなく、誰かを変えることができる。
それは言葉で浮かぶことではないだろうけど、自分の力で誰かを変えることができるような“スゲー”消防士になりたい。
178 :
2/2:2008/07/05(土) 19:19:47 ID:???
大吾の何か吹っ切れた表情に、五味は大吾が明日から仕事に出ることを許した。えび谷か……と少し考えながら……
さらに翌日。久しぶりの消防服に身を包んだ大吾はバズーカのような物をもってきょとんとしていた。なにこれ? という大吾の問いに
植木が答える。「IFEX」…インパルス消火システム。水や消火剤の微細な粒子を高速度で撃ち込むことができ、しかもコードレス。
けれど、なんかなあという表情の大吾が、平が使えば良いと言うが、平はポーズを決め言葉を返した。「筒先のアーティストやさかい!!! オレは」
イマイチ納得がいかない大吾。そこへ五味さんがやってきた。試し撃ち。大吾は燃え盛る訓練ようの炎に向けてインパルスの引き金に力をかけた。
それは広がる水粒子となって当たった、植木さんたちに。どうやら反動がすごいらしい。怒る植木たち。
五味は、大吾の様子に少し安心していた。あのままだったら潰れそうな大吾だったが、今はどこか前を向いていると。
大吾は五味を見た。五味のようになれればいいと思っていた。それは知れば知るほど無謀だとわかる。でも、無謀だと知りつつ、
その気持ちを抑えることはできない。大吾は気持ちを載せるように、インパルスの二撃目を放った……
(おれは、五味さんに…“勝ちたいッ!!!”)
なかなか熱い展開のような気もしないでもないが
勝ちたいって言っても何をどうすれば良いんだ?
>>179 一人で町一つ巻き込んだ大火災を消し止めたりすればいいんじゃないか?
おれは、五味さんに…“勝ちたいッ!!!
無理だなw
182 :
1/2:2008/07/09(水) 21:16:31 ID:???
第132報 新兵器を手に
水弾命中!! 車にだけど……。インパルスが配備されて一週間、大吾はいまだ新兵器を使いこなせずにいた。
平にでも使わせたほうがという隊員たちに、大吾は絶対に自分が使うと言い張る。なぜなら五味さんに命じられたものだから。
これしきのことができなくては五味さんには勝てない。大吾は堅く決心をしながら、インパルスを構えた。
その頃、消防局本部の一室で、忍足さんがゴミ箱に足を掛け、インパルスを構えていた。ばすん! ぶしゅーっ。ばす――ん!! あ…
部屋に部下の宮下君が入ってきた。顔を紅潮させる忍足さんだが、来栖を連れてきたという言葉を聞き表情を引き締める。
来栖はぐちぐちと愚痴をグチった。インパルスなど高価なものが必要なのか? 予算で不満を市長から言われるのは自分だと来栖は騒ぐ。
だが忍足は冷静に、持論を展開した。人口の増加と災害件数のギャップ。災害を起こさない為に備えは必要だと言い、啖呵を切った。
来栖が退出した後で、インパルスは有意義だと褒め称える宮下君。忍足は宮下にお礼を言い、インパルスを見つめる。
あのときにこれがあったらと、自身が巻き込まれた災害を思い起こしながら……。
消防の本部の正面玄関で、たまたまあった陽光新聞の丘野と大吾。どちらもインパルスの説明を聞きに来ていたようだ。
大吾はえび谷のことを思い出し、十五年前の五味について質問した。丘野は驚いたように答える。十五年前には、
千国市立病院火災があったと。それは全国的にも有名な事件で、五味の持つ数ある武勇伝の一つということだった。
丘野が五味さんから学ぶ気になったかと笑う。大吾は呟いた。「勝ちたいんだよな、おれ、五味さんに……」
丘野は絶句するが、すぐに笑いだした。Rの神田でもそんなことは言わない。彼にとっても五味はアイドルだからと。
大吾と別れた丘野は、再び大吾の言葉を思い起こしていた。五味に勝つ。それは言葉にするとかなりのインパクトを持って感じられた。
183 :
2/2:2008/07/09(水) 21:16:53 ID:???
め組に戻った大吾は、隠しながら丘野に貰った本を読んでいた。千国市立病院火災について、死者30名、消防官の殉職者2名。
大吾はその本に書かれた内容から、その火災の怖さを感じていた。ホース展開もままならない屋内、その時代にはインパルスもなかった。
出火報が、鳴った。いまのところは、め組の出場ではないようだ。消防本部にもその報は伝わっていた。インパルスの初陣。
宮下が忍足に、現場への視察依頼があったことを伝える。すぐに準備に取り掛かる忍足は、現場がどこかと尋ねた。
千国市立病院跡地。忍足の脳裏を焼き付いて離れないあの光景が駆け巡った……
「きっといつか私に感謝する日が来ますわ。市長も、来栖消防監(あなた)も!!」
今すぐ感謝する日が来そうなフラグだなw
やっぱ忍足さんかわいいなぁ
来栖さんの方がかわいいな
忍足に感謝してる姿が目に浮かぶw
第133報 因縁の地
出火報に続き、め組にも出場司令が出る。現場はスーパーの駐車場。どうやらインパルスの所持隊を中心に出場がかけられているらしい。
現場へと向かう道すがら、大吾は他の隊員から、現場があの病院火災跡だと知らされる。稀有な偶然に大吾は驚いていた。
忍足と宮下も現場へと向かう。宮下が、現場への道を聞くが、忍足は答えられない。おかしいと少し思う宮下。
警防部のマザーコンピューター、視察をかかしたことがなく、千国市のことなら知らないことはないとさえ言われる忍足が、
この現場だけはわからなかったからだ。忍足は地図を見るが、頭の中ではただあの場所に行きたくないとだけ考えていた。
無機質な時計塔が見守る煙が充満した病院。炎に包まれた母を見て何度も母を呼んでいたあの場所に……。
忍足たちが、現場へ着く。そこはひどいありさまだった。我先にと駐車場から逃げだそうとした、車たちが狭い入口でつまり、
秩序を乱す。到着していた、消防車は火点に近づくことすらできなかった。狂乱とする現場の中で、忍足はあの時計塔に気付いた。
当時と変わらず、ただそこで見下ろすだけの静かな時計塔。忍足の体に震えが走る。遠い昔の記憶。忘れようとしたも忘れられないあの記憶。
忍足の意識が朦朧とし、体がふらつく。そこへ逃げ出そうとスピードを上げる車が突っ込んできた。ぶつかる。忍足の頭に言葉が浮かぶ。
その一瞬、忍足は後ろへと引っ張られ、助けられた。助けたの者は五味だった。五味は植木に呼ばれ、め組の元へ戻る。
今だ、現場は半狂乱。ポンプ車が駐車場へ入ることも、ホースを広げることすらままならない。現場では、各消防署のインパルス
装備者を集めて、インパルス隊が先行消火にあたることが決まる。め組からは大吾が出る。「おれは本番に強いんだ!!」
大吾が気を吐く。そんな血気止まらぬ大吾を、五味が「駄目だと思ったらスグに引き返せ」と諌める。
大吾は五味に言う。出張所へ帰ったら、15年前の病院火災について聞かせて欲しいと。
五味は、答えた。無事に戻ってきたら聞かせてやると。
「約束っすよ!!」大吾はインパルスを構え、火点へと走り出しす。時計塔が見下ろす中で忍足は思った……
(やっぱり……いやだ…この場所… また…悪いことが起きるような……)
本番に強いんだ!って自分で行っちゃダメだろw
もう忍足さんヒロインでよくね?
おk
熟女がエロイな
少年漫画なのに
忍足さん独身だよな?
第134報 至近距離
いまだ混乱が収まることはなく、火点に近づくことができないポンプ車の代わりとして、大吾たちインパルス隊が消火を始める。
ホースが引けないという状況に焦る忍足。いくら最新のインパルスがあるといえども、五、六器では火を抑えることは難しかった。
宮下が、業者に返納予定だったインパルスを車に積んでることを思い出し、忍足がそれを届けるよう言う。
忍足は、勝手気ままに動く車とその所有者をなんとか諌めようと必死だった。けれど、災害の場に置いて冷静な者はほぼいない。
宮下がインパルスに水を込め持ってきた。そんな宮下に声をかける野球帽を被った小柄なおじさん。「ちょっとそれを貸してくれないか?」
五味さんがやさしく指示に従うよう求める。逃げ惑う人たちは誰もが自分のことだけを考え従うそぶりすら見せない。
もう一度五味は丁寧な口調で注意した。言葉は先ほどとあまり変わらない。変わったことと言えば、運転手の顔へと向けられた、
インパルスの射出口ぐらいだった。そして空気が凍った。五味の行動に戦慄した運転手たちは静かに誘導に従う。
「なかなか便利な機械だな」と五味さん。流石、最新精鋭の消防器具インパルス!
五味と宮下は、大吾たちの元へインパルスの予備タンクを届けようとしていた。五味が呟く。あのときこんなものがあったらなと。
そのころ大吾は、本番でもやはり上手くインパルスを扱えずにいた。焦りからか、勇敢なのか、五味への対抗心からか、
大吾は、じりじりと火元へと近づく。一番の下手くそが、一番の火点の近くへと。
「私も手伝います」と忍足。五味、宮下、忍足の三人は予備タンクのつまったカートを運ぶ。
一方、燃え上がる車両ぎりぎりでインパルスを撃ち続ける大吾。激しく炎を立てる車内、その中に。
火気厳禁。有機溶剤が誰にも気付かれることなく存在していた……
「言う通りにしなさい。指示に従うんだ」
便利な機械wそりゃそんなもの突きつけられたらゆうこと聞きます
大吾のピンチを五味さんがインパルスで救いそうな気がしてきた。
インパルスをぶっつけ本番で使いこなす五味さんが見てー
第135報 爆発
どこまでも近づき必死になって火を消そうとする大吾。インパルス隊を指揮する者が、下がれと言うが大吾は従わなかった。
インパルスの予備タンクを運ぶ五味、忍足、宮下の三人。忍足は、15年前を思い出す。火に包まれた母を見て意識を失った。
消防士に抱えられ気付いたとき、何度、「おかあさんは?」と聞いても返事はなかった。自分でも無理だとわかっていた。
宮下が、危険なので下がってはどうかと五味に言った。五味は断る。「ちょっとしたウラミがあってな」五味は呟いた……。
大吾は炎と戦いながら自分の原点を思い出す。自分を助けてくれたスゲェ消防士。五味さんのようになるのが原点だったと。
火元へ近づく大吾は気付いた。火気厳禁と書かれた、有機溶剤のタンクに。「危ない!! 離れろっ!!!」
大吾は、後ろへ下がらせようとしに来た隊員を突き飛ばす。そして火柱が上がった。炎と黒煙が凄まじい勢い吹き出す。
「ア… ア…… 朝比奈ァ―――ッ」炎が大吾の消防服に燃え移った。突き飛ばされた隊員は、インパルスに手を伸ばすが、
動揺し、掴むことができない。大吾は必死に体をはたくが、それでどうにかなるほど易しくはなかった。
大吾が叫ぶ。その声は言葉ではなかった。五味が大吾に駆け寄ろうとした。そのとき大吾が吹っ飛んだ。
大吾を押し飛ばしたものは、インパルスから放たれた水弾。二発、三発。大吾の体を包む炎が次第に蒸気へと変わる。
四発目、炎が消える。その場にいた誰もが、インパルスを撃っていた者を見て驚く。インパルスを撃っていたのは忍足だった。
五味が救急車を要求し、大吾は意識朦朧とした中で呻き声をあげる。忍足はその光景を立ちつくしたまま見下ろしていた……
(五味さんみたいな“スゲェ”消防士になりたい…… それが、おれの原点だった…!!!)
忍足さん!すげー!
なんで有機溶媒積んだ車がスーパー停まってるんだ?
>>198 えー、その手の業界のものとして一言言うならば、なんで停まってちゃいかんのかと(いかんだろ)
深夜だろうが日中だろうが停まってるもんですハハハw
第136報 悪夢よさらば
大吾を炎から助けた忍足。あのときこれがあれば…。インパルスを持った手は震えていた。
五味が「助かった」と忍足に礼を言う。けれど忍足は呟く。たすからなかったのと。
忍足は涙を流していた。いっしょうけんめいさがして…おかあさんはひのなかで…。忌まわしい場所で起こった、
唐突な出来事に忍足の記憶は混迷していた。「しょうぼうしさんはこたえてくれないの……おかあさんはどこってきいても……」
その言葉に五味は、目の前で泣き崩れる忍足が15年前助けた少女なのだと気付く。救急車のサイレンが響いた。
倒れうなされる大吾のもとへとやってきたのだ。大吾はうっすらと前を見る。その目に映った赤い回転灯は、
炎のように感じられた。大吾の脳裏をあの光景が走った。炎に包まれたあの光景が……。
大吾は突如、目を見開いた。抱えていた隊員を突き飛ばす。手にはインパルス。大吾は立ち上がり奇声を上げた。
「やりゃあがったなこのやろう、よくも…… コノヤロ――!!」
止めようとする植木ら他の消防士たちにかまわず暴れる大吾。インパルスの引き金に手を伸ばしたとき、
「おとなしく…ビョーインへ行け!」
五味が大吾の腹に一撃を入れ、大吾を止めた。大吾は朦朧とした意識の中で呟く。五味さんになりたい。
そして五味さんに勝つんだと。大吾は無事、救急車に乗せられ病院へと向かった。
残された五味は、宮下に支えられ帰ろうとする忍足に敬礼する。そして思った。おれはそんな大した消防士じゃないんだよと。
その夜、太田病院。大吾がうなされるベッドの周りには“め組”の面々が立っていた。その中で、植木は思った……
(“五味さんに勝ちたい”その意気はよし! でもな… まもなくおまえは知るだろう。それがいかに困難なことか。
千国市消防局の全消防官が… 伊達に、あの人に畏怖の念を抱いてるわけじゃないんだぜ)
容赦ねーな五味さん
204 :
1/2:2008/07/26(土) 22:00:09 ID:???
第137報 あるエピローグ
太田病院。うなされていたらしい大吾は、ベッドの上でご飯をもろもり食べていた。
その頃、忍足が“め組”を訪ねていた。過去の事例においてインパルスがあった場合の上げられるであろう成果をまとめるという
名目で五味を話す。15年前の病院火災。五味の出場。現着と同時に、最初の人命検索で7人を助けたこと。中学生の女の子の救出。
徹夜していたのか目元を黒く腫らした忍足が五味を見て話を進める。その鋭い眼光に、あのとき助けた少女が成長して話す言葉に、
五味は感じていた。いつかこんな日が来ると思っていたと。
「この時、救出されは……しませんでしたが、女の子の近くに、彼女の母親がいた可能性があります」
忍足の言葉を聞き、五味はあのときの現場を思い返した。
炎だけが目の前にある世界。五味は、援護を待つべき、と止める植木の言葉を聞かなかった。
「まだ確認されていない要救助者がいるとすればこの先しかない… 他は全部見たからな、この目で!!」
五味は進んだ。火かき棒で瓦礫と炎を掻き分け進む。その耳に、「あんなことがあったばかりなのに……」という植木の言葉は届かなかった。
炎なかで五味は思う。以前と同じだ、ガンガンイケるんだ、何もかも… まえと同じようにヤレるぞ!!
倒れこむ少女を見つけ抱え上げる。そのとき、降り注ぐ瓦礫の中で五味は見つけた。人影。生存の可能性は低い。黒く焼けているようだった。
行くべきか…… それとも… 消えていく退路と自らの抱く少女を見てが五味は迷った。
「答えてください。その子の… 母親はッ!?!」忍足の言葉が五味を現実へと引き戻す。
「いました、その少女の母親と思われる女性が… 救出は不可能と私が判断し、そのまま脱出しました」
205 :
2/2:2008/07/26(土) 22:00:45 ID:???
五味の返事。忍足の目が力強く五味を見る。影で話しを聞いていた植木が、忍足を止めようと部屋へ入いろうとしたとき、忍足が言った。
「私がその時の女の子です。倒れていた女性は、私の母です」忍足は話し続ける。
記憶の中に閉じ込めていたあの事件を調べたこと。今、自分が生きていることが奇跡に近いということ。
そして、あの病院火災の前に、生死の境をさまよう程の重傷を負ったこと。奇跡的に息を吹き返し、
それから六週間での病院火災への出場。あそこから少女を救いだしたことが不可能に近い。
「信じられないあれが… 復帰戦だったなんて」
指先を伸ばし、手を額へと運ぶ忍足は、しっかりと前を見つめ敬礼した……
「一消防官として、心から敬意を表します。五味消防司令!!」
すみません。規制に嵌りました。このレスは代行を頼んでいます。
水曜までに解けなければしばらく休んで、ストックを貯めようと思います。
ご了承ください。
因縁がありすぎだろww
15年前に中学生ってことは忍足さんは今さんじうわなにをあwせdrふじこ
いちばんおいしい時……ぎゃあ!
第138報 真っ赤な記憶
炎に包まれた夢にうなされ、起きる大吾。あたりを伺うが、そこは出張所の安全な仮眠室だった。
翌々日。インパルスから飛び出した水弾が、訓練用の火を一瞬で消した。よし、インパルスも使いこなせてきた。
大吾は、調子良く火を消し続ける。絶好調。それなのになんであんな夢を見たのだろうと大吾は考えていた。
「その距離だよ! そこまで下がって発射した水が最高の状態で火を消すんだ」植木が言う。
おかしい。いままでと同じfで、さがってなんか……大吾は考える。訓練を続ける大吾の脳裏には、またあの光景が浮かんでいた。
くじら台出張所。千国沖国際空港についての注意を聞く甘粕たち。また大変なものができちまったと嘆く署員たちが、
甘粕は余裕を見せていた。秘めた思い言葉に出しながら……
夜。大吾は平と五味の額の怪我について話す。伝説と言われる病院火災でついたものなのかなと。
そこへ一喝。トイレに起きた植木さんが、大吾たちのおしゃべりを注意した。そして一言。
「あれは、病院火災でやったんじゃないぞ」と。驚く大吾。それならもっとすごい出場があったのでしょと植木に詰め寄る。
だめだこいつ。植木は呆れた。「とても五味さんには勝てないな」そう言って仮眠室へ戻っていった。タコやのーボン。
大吾はトイレへ。切れかかっているのか蛍光灯がちらつく。そして暗くなった。切れたのかもしれない。
トイレの扉を開ける大吾。明かりが戻る。その一瞬。大吾の頭に、あの記憶が走る。引火と爆発。炎に包まれたあの記憶が。
うおっ。声を上げ飛びのく大吾。けれどそれは、トイレットペーパーのステンレスの台に明かりが反射しただけだった。
ああ、びびった。……えっ、なんで? 自分が何に恐怖したのか、なぜ驚いたのか。理解できない大吾。
混乱を騒ぎ立てるように、出火報が鳴り響いた……
「天才とヤリ合うには、これでも全然足りないんだ……」
大吾はトラウマ刻まれたか?
大吾の才能を認めた上でそれでも負けじと
自分のやり方で食い下がろうとする甘粕が格好良いな
認められた本人はなんかやばそうだが
第139報 海からの風
「火災指令。ひらめ区新ひらめ…千国沖国際空港建設現場にて出火」スピーカが告げる。続いて出場隊。
「くじら台1、2」そして……「めだかヶ浜1、2」急ぎ装備を固める所員ら。くじら台、めだかヶ浜両出張所から消防車が飛び出した。
千国市消防局。私服の忍足が、連絡を聞いて駆け付けた。忍足は思う。消防ヘリ、インパルス、大災害に備えて装備は整えている。
でも、まだ、まだなのよ……私たちはまだ戦闘体勢を……
現着した植木が現状を伝える。出火元は第三セクターの建設塔。火勢は軽微。空港施設への影響はなさそうだった。
植木からの無線を聞き、忍足は机を叩きながら叫ぶ。「ガンガンやりなさい!!! インパルス隊!!!」
大吾はインパルスを構え、火元へ向った。だが、足がもつれて倒れる。起きあがろうとする。でも立てない。
勝負だ。言葉はいくらでも浮かぶけれど、頭にあの映像がこびりついて離れない。炎に包まれたあの記憶は大吾を捉えて離さなかった。
へたりこむ大吾の横に駆け寄った甘粕。インパルスを撃ち続けた。甘粕が大吾に激を飛ばす。大吾もそれに答え立ち上がろうとするが、
目の前まで伸びた炎に、繰り返しあの記憶を思い出し、怯む。甘粕は大吾を突き飛ばし、水弾を放つ。
なんだこいつ、まるではじめて現場に出たやつみたいじゃないか。
甘粕は戦っていた。炎の先にいる、一人の天才を見据えて……
(ったくよォ!!! “天才”はワケわかんね――!!! だから… そうさ!!だからオレはただ、ヤツの2倍も3倍も努力するだけだッ!!!)
インパルス隊って聞くとブルーインパルスを思い浮かべてしまう
第140報 傷ついた本能
甘粕の活躍に対抗しようとするが、大吾はどうしても火に向かうことができない。
やはり心配していた通りになってしまったかと、植木が大吾を呼び戻す。大吾は聞かない。甘粕も、隊長が呼んでいるぞと、
大吾に言ったが、その言葉に大吾はかえって抵抗した。「おれはやるぞ!」無理矢理に体を奮い立たせる大吾、
だが冷静な判断はできていなかった。火に包まれた木材が崩れ落ちる。甘粕が水弾を撃ってなんとか、大吾を助けた。
甘粕の顔元まで伸びる炎、大吾は「こわくねーのかよ…」と甘粕に問いかける。怖いに決まっている。甘粕が怒鳴り返し思う。
何を考えているのかわからない。凡人には理解できないのかもしれない。けれど、歴史上、天才に打ち勝った凡人はいくらでもいる。
甘粕は炎に向かって行った……。
一時間後、火点は制圧され、残火処理が行われていた。覇気の感じられない大吾を見て植木が思う。訓練で使いこなせていたインパルス。
あれは効果を意識してではなく、炎に対する恐怖から来たものだったと。
残火処理を続ける大吾。甘粕も大吾と同じ場所を受け持っていた。甘粕が落ち込む大吾を、自身の経験を踏まえて元気づける。
現状で人が死に、現場で進めなくなったこと。また犠牲者が……そしていつか自分がと怯えていた経験を話す。
それをどうやって克服したのかと大吾が聞いた。「結局、気合いと根性でなんとかするしかねーじゃんか!!! このシゴト続けてーなら!!!」
甘粕の言葉に、「おまえ、えらいなあ……」大吾はただ感心した。大吾の様子に調子が合わない甘粕は、もっとすごい人がいるだろと言う。
それは五味さんだった。伝説の病院火災、あれは復帰戦だった。その前の出場で大怪我し、集中治療室へ運ばれ、家族まで呼ばれた。
だが、そこから五味は復活した。奇跡の復帰からわずか六週間後の病院火災。甘粕が話す、くじら台の所長の言葉。
大吾は、五味の本当の凄さを理解し、自身の矮小さを恥じた。「なんて… おれ… バカだったんだ!!!」
地獄へ還った。あの人はそういう人なんだ……
「ウチの所長、顔真っ青にして話してくれたよ。“あの人が理解できなかった”“なぜ”“地獄へ戻るのだ!?”って……!!」
気合いでなんとかできねーからトラウマなんだろうにw
甘粕、ホントいい奴だなあ…
第141報 真意
大吾は静かに残化処理を続ける。みんなが五味さんに畏怖するわけがわかってきた気がする。生死の淵をさまよい、そして復帰した。
何人救助したとかではなく、“意志の力”……。大吾は自分が抱いていた「五味さんに勝ちたい」という考えがあまりに大きなものだと気付いた。
そこへ到着した五味。「おい。大丈夫かァ…?」と大吾に話す。「大丈夫です、バッチリ!! インパルスにも慣れましたっ」
見透かされてはいけない。大吾はそう考えて、嘘をついた。傍らで聞いていた甘粕くんは噴き出した。
五味の睨むような目に、大吾の足が震える。大吾を見る五味。「おまえも、ここまで来たか…」
五味は踵を返し「空港の様子を見てくる」と去って行った……。
大吾は五味の言葉を思い返す。「ここまで来たか…」これはどういう意味だろうか? いい意味なのか? それとも……、
大吾は「おう、おつかれ!!」と別れの挨拶をする甘粕を無視して考え続けていた。こんなとこで…、ギブアップはしねえぞと。
消防車が鎮火と撤収を知らせる鐘を鳴らす。そのとき、大吾が何かに気付いた。地面が熱い。植木を呼び、そう伝える。
だが、それはおかしいことだった。熱い防火使用の長靴を通して熱を感じるはずがない。下を見下ろす大吾。一方で、大吾の言葉を
聞いた甘粕は、ふと上を見上げる。「これ火の粉じゃないか……?」手を広げた甘粕、その周りを薄っすらとした小さく赤い粒が舞う。
そのころ、空港設備を見回っていた五味が、どこか暗い坑道の奥で、光りを発する何かを見つけていた……
(ああ!! 今にしてわかった。おれは大変なヒトに勝負を挑んじまった!!)
お、この事件まだ続くのか?
第142報 危機発覚
五味が見つけた地下坑道の灯り。それはやはり炎だった。地上では火の粉に気付いた隊員たちが撤収を取りやめ、
現場を探す。そこに五味から通信が入った。北プラント地下で出火を発見。要救助者の有無は不明。それだけを伝え交信は途絶える。
地下からでは電波状況が悪かった。急いで消防車に乗り込み現場へと向かう。その中で甘粕は思った。
アイツは死んじゃいねえ、それどころか前にもまして……!! 大吾の様子に、ただならぬ何かを感じていた。
地下、熱供給施設。通信を試みる五味だが、結果はかんばしくない。そのとき、ゆらぐ炎の向こうからかすかな声が聞こえた。
たすけて。あしが折れて……。あつ…い。弱々しい声。呼びかける五味、そして返事が途絶えた。ポンプ隊の到着と装備時間を
計算する。まずい。今なら炎を迂回して……。五味は植木に人を引きづり出してくると伝えると、装備無しで声がした場所へ向った。
じりじりと忍び寄る炎。五味の脳裏に、かって受けた経験がよぎる。集中治療室へ運ばれたこと、そしてその後の病院火災。
五味は自らを奮い立たせる為に声を出す。自身の胸を叩き、しぼり出したその声は、炎の向こうに待つ要救助者にも届き、
要救助者を元気づける。五味が要救助者の元へ辿り着いた。要救助者は二人。助けに来た五味に僅かながらの笑みをこぼす。
そのとき、崩落がはじまった……
「おいッ、しっかりしろよオッ」
プラント事故かやばそうだな
大爆発の可能性がありか
ここで大吾が五味さんを助けて五味さん越えを果たすってことか?
いや、ここで助けてもせいぜい同じ壁を越えたってところだろう
というか助けること自体無理だって…
第143報 重大な決意
北プラントへと向かい走る消防車。そこへ五味からの無線が入る。「き…気をつけろ… 崩落だ…っ」
なんとか避けることはできた五味だが頭からは血を流がしていた。要救助者を抱え上げその場を離れようとする。
立ち上る煙を見て、嫌な予感が大吾の頭を走る。そのとき、五味も焼ける天井に何かを感じた。
大吾が植木から無線を奪い、五味に話しかける。嫌な予感。いてもたってもいられない。けれど、
五味から返事は戻らない。大吾が握る無線から返ってきたものは、さらなる崩落を知らせる音。建物が崩れ落ちる
破壊音を聞き、大吾が顔を上げると、何かの始まりを告げる狼煙のように、黒煙が勢いを増し噴き出していた。
消防局本部。空港火災がひと段落ついたと煙草を吸う忍足の元へ青ざめた顔の宮本がやってくる。臨港レスキューが出場を話す。
その言葉は、まだ終わってはいないと、忍足に告げていた。
現場へと到着した大吾たちは、ホースやインパルスを駆使して消火を続ける。どこかに侵入口はないのか?
煙を掻き分け、水を放つ。大吾も静かに職務を全うしていた。黙々とインパルスを撃ち続ける大吾の様子に甘粕が違和感を覚える。
いつもならばすぐに激昂しているはずなのにいやに冷静だと。
大吾は戸惑っていた。五味さんに勝ちたいと言った。それなのに足が竦んで動けなかった。自分の考えたことの大きさに気付いた。
そう思っていたら、その人が、五味が炎の中にいる。
困惑する大吾。入口が見つからない。現場には絶望感が漂い始める。平が言った。
「火も出とるし、酸欠もすすんどる。このままやったら五味はんは、五味はんは…死んでまうで――!!!」
死…? 五味さんが? どうすれば中に入ることができる。どうすればブチやぶれる。ブチやぶれねーのかよ!!! ブチ…
大吾の頭にずっと昔の記憶がよみがえる。壁をブチ破り、自分を助けてくれた五味の姿。小さな消防士くん。そう言ってくれた
五味の姿が大吾の頭を揺さぶる。「甘粕…」大吾が甘粕に呼びかける。
「おれはバカだから何も思いつかねえ…… でもオマエなら、アタマのいいオマエなら何かいいアイディアが出るかも……」
甘粕が振り返り大吾の顔を見る。言葉を絞りだす大吾の目には、力が戻っていた……
「考えてくれ。特救は待てない。おれが地下道に入るッ!!!」
そもそも五味さんがあんな状態でこれから最速で行っても間に合うのか?
ここで助けられないとそれこそ超えられない壁になってしまう
この話で連載終了とかありそうだな
第144報 ギリギリの選択
「頼む、甘粕!! 考えてくれ。どうやったら地下道に入れるッ!?!」と大吾の言葉。甘粕はムリだと答えるしかなかった。
大吾が崩落した坑道の入口を見る。おれは何も出来ないのか? 大切な人が死にかけてるのに……!!!
大吾が唇を噛みしめ震える。その目から涙を流していた。見たこともない大吾の様子に甘粕はもう一度、真剣に考えた。
そして隊長達と大吾に話しかける。五味と要救助者の閉じ込められている地下共同溝の下に並行して循環パイプが
通っていたはずだと。本当か? と問われた甘粕は、一瞬の迷いを浮かべるがそれを振り払うように強く答えた。
「たぶん……いや、オレは毎日、休憩のときも仮眠の時間も… 穴があくほどこの空港の図面を見てきましたから!!!」
――って、いまいちオレも自信がねーんだけど。内心は少し不安だった。
特救が到着する。すぐに循環パイプの話が伝わり、神田が縦穴坑から地下循環用パイプへと潜る。
だが、作業が進んでいるようには見えなかった。入口あたりでざわざわと作業する特救に大吾が苛立っていると、
神田が縦穴から出てきてしまった。神田は言う。メタンガスが充満しメーターの爆発限度を振り切っていると。
ここからの侵入は出来ない。今まで通り入り口の掘削を地道に続けるしかないと。
何時間かかるんだ……。神田の言葉は、そこにいた者、全てに絶望を与えた。それは神田自身もわかっていた。
そのとき、植木の無線にノイズが走る。高い音を鳴らした後で「おお…い……」五味の声、そしてまた通信が途絶えた。
空港に鳴り響く消防のサイレン。多数の消防車が集まり、空にはヘリも飛んでいた。
永く記憶されることになる―― “千国市消防局の一番長い日”の始まりである。
その中で――彼の中で“何か”目を覚ます。“任務”を超えた“何か”が……
「オレ達も掘削に…」その甘粕の言葉を遮り、大吾は呟く。「五味さんは来てくれたんだよ……」
6歳のあの日… 火に煽られもう動くこともできなかったあのとき、ジルを抱えて倒れていた大吾を五味は助けに来てくれた。
あのときの光景を思い出す大吾。そして甘粕に言う。
「甘粕、協力してくれ。穴掘ってたんじゃ間に合わない。お前が教えてくれたこのルート……」
大吾は覚悟を決めた……
「循環パイプから―― おれが助けに行くっ!!!」
なんか本当にクライマックスっぽい気がするな
第145報 決断
「バカも休み休み言え!!!」大吾の決断に甘粕が怒る。循環パイプ内にはガスが充満し、いつ爆発してもおかしくはない。
怒鳴る甘粕。それでも大吾の決断は揺るがない。大吾が話す。いまのまま掘削作業を続けていてもとても間に合わないと。
それは甘粕もわかっていた。特救も隊員も誰だってそう思っているはずだと甘粕は思う。
そんなこと許可が下りるはずはないという甘粕に大吾は自身の素直な気持ちを乗せて啖呵を切った。
そのころ共同溝掘削現場では、神田が一心不乱に掘削を続けていた。千国のエース。そんな言葉は手も足も出ない現状において、
ただ惨めで情けない自分を戒める言葉でしかなかった。どうしたらいい。教えてください、五味消防司令。
私は……私はッ、特救としての規範、副隊長として部下を持つ責任、カミカゼアタックはできない。五味さん、生きていてください!!!
神田はただ祈ることしかできなかった。
大吾は縦坑を降り、パイプ内へ進入しようとしていた。それを見守る甘粕。止めないのか? コイツ死ぬかもしれないんだぞ。
迷う甘粕に、声をかける人が来た。どこかの隊員らしき男。甘粕がさぼっているのかと咎める為にマンホールへ近づいてくる。
大吾は見つかるのではと固まる。そして……甘粕は体を張って男を止めた。さらに続ける嘘の命令。敬礼をし男を見送った甘粕は、
ついに覚悟を決めた。パイプをロープ投下してやる。一回で行けると思うな、交代で辿り着いた方が救助を行う。
甘粕が大吾に言う。「てめぇのせいでオレの人生メチャクチャになるかもしんねえ…… いつかは消防局長にまでのぼりつめて
やろうと……思ってたのによ」がっちりと握手を交わす二人。甘粕は思う。許可を求めたら止められる。このままでは死んでしまう。
おエラいさんは動かない。だからオレたちがやる!! ただの命令違反じゃない。目の前で人が死ぬ。あんな思いはもう二度としたくない。
もう二度としたくないんだ……。甘粕はマンホールへと潜る大吾を見送った。
大吾が神田の封じた蓋を開けパイプへ潜る。暗く伸びた循環パイプ。「五味さん――ッ!!!」静かなその中では、大吾の叫び声と
ガス検知器メーターの警告音だけがむなしく響いていた……
「だから下っ端のおれが行くんだ!!!」
これ爆発したら他の隊員達にも被害が及ぶんじゃないか?
今回は甘粕がただの驚き役じゃなく頑張ってるな
暴走に引きずられてるとも言うが
隊員どころか施設の根幹揺るいじゃう事故になるだろ、そんだけガス充満してるんだったら。
「人命優先」であるならば、見捨てる方が選択としては正しい。
出来るかんなことwww
!
第146報 バカ者到着
暗く狭い循環パイプの中を大吾が進む。脳裏には引火爆発の光景がよぎる。検知器がけたたましく警報音を鳴らしていた。
心臓が… 口から飛び出るっ!! あまりの緊張と恐怖に迷いが生まれる。やっぱり引き返そう。そう考え一旦は振り返る大吾だったが、
頭に五味と助けを待つ人たちが浮かび、涙ながらに先へ進んだ。おれが行かなきゃ、五味さんは死ぬ!! 要求助者は死ぬ!!
同時刻、掘削現場にて、神田が削岩機の電気を落とした。循環パイプからの進入命令を…と神田が白石隊長に頼む。
このまま掘れば二時間後には穴は開く。だが人は全て死んでいるだろう。だから行かなければならない。
決死の思いを告げる神田。助かる見込みのある者を見捨てることは敗北につながると神田は言った。
だが、許可は下りない。隊長の白石は神田を宥める。見込みだけで隊員の命を賭けることはできないと。
神田は思う。それでも誰かがやらなければならないのだと……。
循環パイプを進む大吾は、五味達がいるであろう位置の直下まで辿り着いていた。鳴り響く警報音。がれきと鉄骨に抑え込まれていた
五味の耳にその音が届いた。大吾が二重の蓋を一つ開け、五味の元へと近づく。
誰かが来た。鳴り続ける警報の音に五味は思う。だが開けることはできない。周りにはいくらでも火の粉が飛んでいるのだから。
五味はパイプを伝って来た誰かに、警告する。開けてはいけないと。そして思った。
そんなガスが充満するパイプを進んで来たバカがいるのだと……
「臨港Rは負けない!!! 助かる見込みのある要求助者を最後まで見捨てはせんのだ!!!」
「許さんぞ!!! 救出の見込みはあっても…… 見込みがあるだけだ!!! 命のゲームをすることは許さん。
要求助者の命も… お前の命もだ!!」
確かに火が充満してたら開けられないな
開けた瞬間の爆風で消火したりするのかな?
バックドラフトだったっけ?
たとえ火が消えたとしてもみんな死ぬんじゃ…
238 :
1/2:2008/08/30(土) 22:34:14 ID:???
第147報 地の果てで・・・
ついに現場へと辿り着いた大吾は、マンホール蓋一枚隔てた二重蓋のはざまにいた。声は届く。開ければ見ることもできる。
だがそれはできない。「引火する」五味のその言葉に大吾はどうすることもできなかった。
「すまない…せっかく救助に来てくれたのにな… どこの隊の方だか知らんが、あなたのボンベも
尽きる… 戻るんだ… 命をそまつにするな…」助けられる側である五味の言葉、止まることのない警報音が大吾の無力感を煽る。
ボンベ…? その言葉に大吾は沸き上がる怒りを抑え要求助者用のボンベを見た。
空港へとぞくぞくと駆け付ける消防車。忍足も現着していた。けたたましいサイレンの音が五味の耳にも届く。
しかし、地下にあるこの現場では、そのような数の力もまったく無力に五味には感じられた。
忍足に図面を広げた神田が言った。「隊長も進入命令は出せないと言いました。むろん私も特救隊長なら同じことを言うでしょう、
立場上…… 隊長だったらね……」
含みを込めた神田の言葉に、忍足は一瞬の沈黙の後、答える。
「ハッキリ言いなさいな、神田くん… 私に上からの進入命令をとりつけて来い、と…?」
「他に手はありますか? 忍足消防司令補… 5年がかりで消防ヘリを買いつけた執念の女だ。
あんたならこんくらいカルいだろうがッ!!!」
「…簡単に言ってくれるわね…」忍足が軽く鼻を鳴らす。
「10分待って!!!」
「5分だ!! 穴の中の要求助者はもう限界だ、俺が入る!!!」
「わかったわよッ!!!」意地をぶつけ合うような算段が終わった。別れ際に、背中を向けた忍足が言う。
「もっと自由に動けたら、ね…お互い―― 私たちにはしばりのキツい仕事ね、消防官は… “千国のエース”さん!!
「あんたなら信頼できる、頼んだぜ… “マザーコンピュータ”!!!」
239 :
2/2:2008/08/30(土) 22:35:38 ID:???
同時刻、崩落現場。五味の耳には依然、床下一枚のところから響く検知器の警報音が聞こえていた。
早く戻れ、巻き添えを食うぞ。五味が言う。そして……警報の音が止んだ……。これでいい。だがこれで要求助者は……。
五味の中に諦めという言葉が浮かび始める。だが、大吾は引き返したわけではなかった。予備のボンベを開け放し、ガス濃度を薄める。
五味が何か音のすることに気付いた。帰っていなかったのか。しかし警報音が止んでいる。ガスが薄まった? そんなことがあるはずがない。
そして開かれるマンホールの蓋。「やめろッ開けるな、バカ……」五味はとっさに目を瞑る。“バカ”? まさか……
そして開いた目に映った者は、まっすぐと前を見つめる大吾の姿だった。
この…バカ!! そう思うと同時に少し安堵した五味が倒れる。大吾に支えられた五味の言葉を遮って、
大吾は五味と二人の要求助者を確認した。
少し落ち着き、面体を外した大吾は現状を説明する。持ってきた三本のボンベは今の進入で二本使ってしまった。
とりあえず、最後の一本を使い、要求助者を一人、外へ運ぶ。そう説明した大吾は、面体を被りなおし、縦坑へと降りる。
「五味さん!! 必ず戻ってくるよ!!! おれ!!! それまで… 死んじゃやだぜ!!」と大吾。
「ばかやろう… 10年早ぇんだよ!!!」五味は弱った体を引きずり、無茶な部下を抱きしめた。
そのころ地上では、様子を伺う甘粕の元に、鬼の形相の神田と忍足が駆け寄って行っていた……
「ボウズ…… お、おまえって奴は… おま… え…」
「“要求助者三名”確保ッ!!!」
五味さん後回しか
ルールとは言え、これ助からないかもな
それでも大吾なら…大吾ならきっと…
でもやっぱ無理かなあ
きっついな
243 :
1/2:2008/09/04(木) 00:27:57 ID:???
第148報 とっさの閃き
必死の形相で走り寄った神田は、甘粕の胸倉をつかみ「誰かが入ったのだな!?」と怒声を張り上げて問うた。
甘粕は静かに頷く。「貴様らァ…何てことを…」神田が拳を振り上げる。甘粕はその様子に驚くが、逃げるそぶりも見せず、
必死の上で選択した自身の心持ちを伝えた。
「オレは…もう二度と…ひとが死ぬ所を見たくない…… 誰かがやらなきゃ…… あのままだったら……
地下に閉じ込められた要求助者は絶対に助からない!!! そう思ったから、朝比奈を手助けしました」
甘粕の言葉に神田は自身の抱いていた予感めいたものを認める。やはりアイツが、朝比奈がと。
甘粕がさらに言葉を続けた。「あんたたちに任せておいても事態は何も進展しないと思ったから、俺と朝比奈でやりました!!!」
その言葉が神田の激昂を抑えた。さらに忍足が場を収め、神田と山田、二人の特救隊員が循環パイプへと侵入することになる。
縦坑へと向かう神田が甘粕を一睨みし言った。「“あんたたちに任せておいたら進展しないからオレ達がやった”――か…
フン、俺もキモチは、てめえらに近かったさ。いつでもな!!」広く力強い背中を見せて、神田はパイプへと向かった。
空には釣鐘のような蓋を釣ったヘリが飛ぶ。忍足は消防車の無線から、掘削現場からの撤退を支持する。
まさかのときの為の備え。万一引火したときの為に、集まった総員が小さなマンホールにホースを向け見守る。
そのころ大吾は五味の元を離れ、先へ進もうとしていた。ボンベの残圧を確認する大吾。半分で引き返せと言われたが、
そんな状態はとうに過ぎていた。だが、それでもやるしかない。でなければ要求助者も五味も皆死んでしまうのだから。
大吾が覚悟を決めパイプへと降りようとしたとき、足元から音が聞こえた。それはここまで辿り着いた神田たちが発する音だった。
「神田さん、あんた、ボンベは… 予備の空気呼吸器は持って来てんのか?」返答は四本。それは人の数だけで言えば十分な数だ。
そう安心して声を出す大吾に、神田が蓋の下から言った。お前はそこへどうやって入ったのかと。大吾たちの周りにはまだ火が
燻っている。神田たちはガスの充満したパイプの中、進入方法に対する自然な問いだった。
244 :
2/2:2008/09/04(木) 00:28:51 ID:???
予備のボンベ… 四本って言ったな…。大吾は自信の閃いた進入方法を伝える。そして神田たちはボンベ二本を使いパイプと現場の
間の空気を薄めて行った。神田と山田はその閃きに驚く。驚き、そしてそれが大吾の危うさを神田に感じさせた。
神田達が持ってきたボンベを五味と要求助者に付ける。五味所長…よくぞご無事で……。そう五味を見る神田に、五味が声をかけた。
「神田消防士長…要求助者を…頼みます!!」
「はい!!」
神田が威勢よく答え、災害現場からの脱出が始まった。暗いパイプの中、依然として検知器は警報を鳴らし続けていた。
「ここま来たら、信じろ!!! 引火はしないっ!!!」その声に要求助者を背負う山田隊員も奮起する。そして一行はゆっくりと進んだ。
相変わらず…ガス検知器のメーターは爆発限度を超えた値を示している…。アラームが、うるさいぜ!!
山田と神田が止むことのない警報音に恐怖とイラつきのような感情を抱いていた。だがそのとき、五味はその警報音とは別の
音が耳に届くのを感じた。「ボウズ… お前、ボンベの残圧が……」
五味を支え歩く大吾の顔は、面体越しにでもはっきりとわかるぐらい青ざめていた……
(間違いなく長生きできねえよ。こんな…閃きだけで生きているような奴は……!!)
神田さん達辿り着くのはやくねえ?
そこがNo.1の男のすごさってことじゃないか?
247 :
1/2:2008/09/06(土) 22:38:05 ID:???
第149報 深遠なる動機
ボンベの残圧が切れた大吾に五味が気付く。五味は神田を呼ぼうするが、予備のボンベが無いことに気付く諦めた。
左手を後ろに回す。五味は自身の持つ空気を、大吾へと渡そうとした。だが大吾は意固地になってそれを拒んだ。
地上。甘粕が筒先を穴へ向け、大吾たちの帰還を待つ。忍足もただぽっかりと開いた穴を見つめていた。
こっけいなものね…。忍足は思う。最新鋭の消防車両たちも小さな穴の前では何の意味も無さない。結局、最後は『人間力』
それはわかっている。だからこそ、道具と戦略でしか災害に抗えない自分をとても惨めに感じる。
どうか無事出てきて、あなたたちの人間力を見せつけて……。忍足は小さな穴をただ見つめていた。
警報が鳴り続ける。ゆっくりと、ライトに照らされた心寂しいパイプ内を神田たちが進む。今、何かのはずみでガスに引火したら……
俺は、この世から消えて無くなるのか。「山田―― しっかりとついて来てるか―― 朝比奈は!?」
声を振り絞り、後ろに続く二人に問いかける。それは自分がまだ生きていることを確認するためのような声だった。
くるしい… くるし…。大吾の視界が揺らぐ。なんだここ…。どこだっけ。もうヤダよ… なんかおれ、いっつもこんなことやってる。
熱かったり… 苦しかったり……もうヤダ…… 誰……? この人。酸素が足らず意識朦朧とし始めた大吾は、自身が連れる
上司のことさえもわからなくなっていた。ただ要求助者とだけしか思えなかった。なんかおれ… とにかく人を助けに入ったんだ。
「もうすぐ…外に出られるから がんばろ… おじさん…… いや…あれ…おばさんだっけ… と、とにかく… 頑張……って…」
大吾はただ進んで行った。
248 :
2/2:2008/09/06(土) 22:38:57 ID:???
「忍足さんっ!! オレが中に入ります!! 貴重な特救の人より、オレみたいな下っぱが入った方が万一のことがあっても…」
渇いた音が響いた。忍足に喰ってかかっていた甘粕が頬をはられたのだ。驚く甘粕。忍足が言う。
「フザけたことを言わないで。こんどそんなことを言ったら―――― コレでいくわよ……!」
握りしめたこぶしを見せ、忍足は下がる。私は…消防に入った時からずっと… ずっと今の君のような気持でいるんだから……。
「ボウズ… 離せ… 俺の命令が聞けなんのか。ボンベを交換しろ…っ」
五味のその声は、朦朧とした大吾に届かない。なんかしゃべってるけど… 何も聞こえない…… この人… 一体誰だっけ?
おれ、必死になってこの人を助けようとしてたような。いや、この人だけじゃない。いつも現場では必死になって救助に向かってた…。
なんでだ? なんの得にもならないのに…… 他人じゃないか… 他人の命のために自分がこんな……。
危険が好き? 生きてる感じがする? そんなワケないじゃないか? そう思いこもうとしてただけだ! そうまでして何で危険の中へ…。
五味がなんとかボンベを変えようとするが、そのはずみで二人は倒れてしまった。横たわる五味の背中、大吾にはそれが炎の中で
助けを待つ小さな少年に見えた。14年前の…… 6歳のおれ… 『ジル… 死にたくない… 誰か助けて……』
「頑張れ… 泣くなよ… 今おれが助けてやるぞォ…!!」大吾は助けを待っていたかっての自分を抱えるように、五味を抱え上げた。
「でっ… 出口に着いたぞォ――― 脱出だ――!!」神田が声を上げる。その声に大吾も少し意識を取り戻し出口を見た……
出口だ…… 今日もまたメチャクチャやった… 自分でも信じられないくらい… いつもいつもこんなメチャクチャで
自分でもどうしてなんだっていつも思ってたけど… ふっと見えたさっきのマボロシ… 炎の中のおれ……
そうなんだ。現場に入るとき…… いつも見えてたのかもしれない。
おれにとっての要求助者はいつでも… “他人”じゃなかったんだ… きっといつもおれは、おれ自身を救助していたんだ!!!
意識もーろうだな
脳障害残ったりしないかな
250 :
1/2:2008/09/10(水) 23:30:10 ID:???
第150報 第三の手
「朝比奈!!! お前… ボンベの残圧が…!?!」膝から崩れ落ちた大吾の元へ神田が駆け寄る。真上には出口へと通じる縦坑。
地上はすぐそこにあった。
千国市消防局の総員が見つめる小さなマンホールから、要求助者と山田隊員の頭がゆっくりと現れた。
現場に歓声があがる。だがそれを戒めるように、忍足が指示を出す。インパルス隊三名のみ、甘粕達が穴へと近づいて行った。
「神田さん、早く!! 要求助者をっ」要求助者を引きづり出した山田が穴の底にいる神田に呼びかける。
背負う要求助者を見て神田は大吾に言った。「朝比奈、待ってろ!!! すぐに引っ張り上げてやる」
だがその神田の視界が歪む。しまった… 俺のボンベの残圧も……ッ。神田は近づいてくるめまいを感じた。
空でホバリングを続けるヘリ。副操縦士の榎本が辰巳操縦士を呼ぶ。火の粉が舞っていた。
忍足が上空の辰巳から連絡を受ける。火の粉は地上の忍足たちにもわかるぐらい、目に見えて増えて行った。
「早く!!! 全員の引き上げを完了しなくては!!!」忍足が叫ぶ。
マンホール。神田は遠退く意識と戦いながらなんとか要求助者を地上まで運び上げた。そして倒れる神田。山田隊員も同様に、
意識を失ってしまった。
「時間がない!!! あんたらRの二人と要求助者を連れて退避してくれ」甘粕の声にインパルス隊の二人が驚く、
それでも甘粕は続けた。「ま……まだ中にいるだろ!! 二人!!!」甘粕はそう言ってインパルスを静かに置いた。
ゆっくりと縦坑へと入る。そのとき、忍足のはるか後方数百メートルで炎が上がった。火点。そして火の粉が吹きあがる。
「引火する!!! あなただけでも、戻ってきなさい、甘粕君―――」忍足の叫び声が上がった。
同時刻パイプ内。大吾たちはなんとか地上へ出ようとはしごを登っていた。酸欠に震えながらも進む大吾を見る五味。
崩落現場へ現れたあの時―― こいつは、俺と二人の要求助者を見て、こう言った。“要求助者三名確保ッ!!!”と。
251 :
1/2:2008/09/10(水) 23:31:01 ID:???
あの瞬間、こいつにとって俺は―― “めだかヶ浜出張所の所長”ではなく…いや、“顔見知り”ですらなかった。
他の二人と同じ… 今初めて出会うただの要求助者でしかなかったのだ。こういう奴なのだ。相手が誰であろうと、
即座に己の命を懸けられる…… め組に配属されてからずっと… 何がこいつをここまで駆り立ててきたのかわからん、
しかし… 得難い才能なのだ!!! “消防官”としてではなく、“レスキュー野郎”としての……… 何がこいつをここまで駆り立ててきたのか……
大吾は混濁した意識の中で、助けを待っていたあのときを思い出しす。おれにとって“要求助者”はいつだって、“他人”じゃなかったんだ、
だから…… だから、救出したい!!! 大吾は五味を支える腕に力を込める。
この若者をここで、死なせてはならん。五味は眼を見開く。互いに互いを助けたいと強く思う二人、だがむなしくも大吾の手が、
梯子から離れてしまった。そのまま、簡易的に封された中蓋の上に落ちる。だめか力が… ちから…が…。
汗と涙が大吾の顔を伝う。視界が途切れ、霞んでいく。大吾の目にはうっすらとした影だけが映った。はしごから手を伸ばす、甘粕の影が。
危険を顧みず、ここまで降りてきた甘粕。五味は自分のボンベはまだあるからと、大吾を先に連れ出すように命じる。
「五味…五味さん」そう騒ぐ大吾を甘粕が引きずる。
「火の粉が…… 甘粕、早く!!! 引火するぞ」
「早くしろォ――」外から思い思いの怒鳴り声が響く。甘粕は急いで大吾を引っ張り梯子を登る。だが重い。
「朝比奈ァ〜オメえぞ、お前〜〜ッ!!」梯子を登る甘粕に、大吾の体、そして装備以上の重さがある。
大吾は五味の服を掴み、握って放していなかった。地上へ出た甘粕が二人を引きずりだす。そのとき火の粉が降り注いだ……
二人分持ち上げる甘粕ちからもちw
なんか今回無駄に甘粕目立ってる気がすんな
無駄ってゆーな!ヽ(`Д´)ノ
第151報 英雄行為とその代償
「は…走れ。早く…」甘粕が言い、三人はマンホールから急いで離れようと駆け出した。
そして、一瞬の沈黙の後……大きく激しい炎が吹き上がった。
「ほ、放水――」植木の掛け声。各所からポンプ車が一斉に放水を始める。しかし、それは意味を成していなかった。
地下パイプを伝った誘爆がそこかしこに炎を灯し、煙を上げる。目指すべき目標に放水は届かなかった。
その中で、忍足が高らかに手を上げる。上空にはイントルーダ(大型インパルス)搭載ヘリ。
「発射」忍足の命令を受け、ヘリが特殊消化剤を打ち込み続けた。
誘爆がなんとか止まった。落ち着いた面々は、出てきたはずの三人を煙の中に望む。
忍足が思う。大丈夫!!! 火炎は垂直に吹き上がった!! 絶対、彼らは三人とも――い…生きてるわっ!! 三人とも……
そのとき、炎の中に影が浮かんだ。防火服に身を包んだ支えあう二人の男の影。二人…!? 一瞬の不安が忍足の頭をよぎる。
ゆっくりと煙が薄れて行くと、二人から守るように囲まれた五味の姿が確認できた。
「ぶ…無事なの… 全員生きてるの!? 返事しなさいッ朝比奈、甘粕ッ」
忍足の言葉に、甘粕は横の二人を確認する。苦しそうな息をする二人。甘粕は面体を外すと力強く手を天に掲げた。
現場にいた者たちが、め組の者たちも大きな歓声をあげる。神田はその様子を見終えると安心したのか失神した。忍足が涙を流す。
甘粕が大吾に言った。「つい、さっき、火の前で一歩も前に進めなくなったとか、抜かしてなかったか……?
どこがだよ。てめえ、一人でこの中に入っていったんだぞ……」
「そりゃ突っ込むさ……」いつもおれは、あの日のおれ自身を救助してたんだから――「何でもやれたワケだぁ」
そう言って笑う大吾に、甘粕はぞっとした。
ストレッチャに乗せられ、救急車にへと運ばれる神田が、大吾を見る。次に奴に会ったら、俺は奴を殴り殺してしまうかもしれない。
奴の軽率な進入によって、大勢の者が爆死していたかもしれないのだ。これまでとは次元が違う。絶対に許せない!!
しかし、これもまた事実だ… 奴が進入方法を確立していなければ―― 間違いなく要救助者はあの中に……。
神田の目の先では、未だ消えることの無い炎が吹き上がっていた。
大吾は救急車の天井を仰ぎ思う。“地獄へ還った”五味さん… それがどういうことなのか、おれにもわかってきた気がする。
ずっとあの人にはかなわないと思ってきたけど――今日わかった… 要救助者がいるのなら…… おれはきっと突っ込む――
地獄へ還って行くんだ…… 忍足が走り寄るのを見る大吾。もしかして、いつかおれも五味さんのようになれるのかもしれない――
でも…… おれにだってわかってる、今度という今度は… 大吾は胸の階級章を引き千切り、忍足に差し出した……
今度という今度は!!!
五味さん連れてかえってこれたか
いや〜ヤバいかなーと思ったんだが
神田さんは毎回大変だな
第152報 認めたくない言葉
吹き上がる炎。救急車へと乗せられていく大吾は赤く燃え上がる光を見た。やった… おれは… おれはやったぞ!!
要救助者は、助かった… おれの命の恩人、五味さんも助かった!!! ストレッチャーの上で大吾は両こぶしを掲げる。
腕を震わせながら、涙を浮かべながらのガッツポーズだった。
「……う…うお」ようやっと現場へとやってきた来栖が広がり続ける黒煙と炎を見てうなだれる。来栖が忍足に慌てながら問う。
大規模な爆発。市、県、いや国に対して消防としての責任が果たせるのか。空港の損傷は大丈夫なのかと。
忍足はヘリ搭載のイントルーダを使った消化方法について話し、顎が外れそうな程、愕然としている来栖を落ち着けた。
さらに忍足の周りにはインパルスについての指揮願いが集まる。それを見て、来栖は思う。高価な装備が必要なのかと、
忍足に迫ったあのとき、そしてそれが必要とされているこの現場を。
来栖は忍足に謝ろうとする。
「消防ヘリ… インパルス… 私は軽く考えすぎていたかもしれん…… 助かったよ…」
「冗談じゃありませんわ… 私はこんなつもりじゃなかった… あらゆるハードは―― 災いを“防ぐ”ため……」
忍足が言葉を紡ぐ。自分にも調達不可能なものがある。何ものにも代えがたい、人材。幸い千国市消防局には、
彼らが多くいる。忍足は、大吾、甘粕、神田の顔を浮かべ誓った。彼らがいる限り希望は捨てないわ。私も戦うと。
忍足は大吾から渡された階級章を見つめる。今回のことは覚悟の上でのことだったというの? 冗談じゃない!!
千国市の防災史上最悪の国際空港爆発事故。あらゆる反省から、千国市消防局は将来に向け、忍足ミキを中心としたチームにより
大変革されることになる。“積極的な防災”(アクティブ・セーフティー)へ。戦いは、始まる。
数日後、太田病院。呆けて入院中の大吾のもとへいかつい顔の神田がやってきた。握り締めたこぶしを一度、振り上げ、
大吾の前で開く。手の上には大吾の階級章が載せられていた。
「これは一体どういう意味だ? 辞表代わりか?」神田の言葉。大吾は静かに頷いた。
「今度という今度は…」やりすぎてしまった。でも、おさえられなかった。その理由がわかった。大吾は思う。
いつだって自分を救助に向かっていた。人命救助はおれの運命だ。だけどこのまま消防にいたら取り返しのつかないところ
まで行ってしまう。今回はそこまで行きかけた。だから責任を取らなければならない。
自身の心なかで自分の行いを省みる大吾。神田はその大吾らしからない、様子に少し怒り言った。
「悟りきったような面しやがって… フザけるなよ」大勢の人間を危険に晒した行為、それは辞職などでは取り返しがつかないと
神田は言う。さらに続けた。
「俺も本音を言おう。個人的な、だ…」何が起きるかわからない災害の場。論理的思考の作戦での対応には限度がある。
「…ああ… 消防官が全員、貴様のようだったらどんなにいいだろう…って、俺はそう思っているッ…!!!」
しかし、それはありえない。だから消防という組織が存在する。神田がコブシを振り上げる。俺は……一番認めたくない本音を、
一番認めたくない相手に話している……。
「忍足女史の提唱する消防機動隊(ハイパーレスキュー)に甘粕と貴様を推薦しておいたッ。貴様のような男は、
俺の目の届く場所に置いておく!!」コブシを振り下ろし、階級章を大吾の腹へ投げつけた。
「簡単に逃げられると思うなよ!!!」そう言い残し神田は病室を出る。これ以上この場に居たら、きっと俺は奴を殴り殺してしまう。
病室、そのベッドの上で、大吾は神田の言葉を思い出し、そして思う。返された階級章を見ながら……
6歳のあの日から… レスキューはきっと、おれの運命……!
ハイパーレスキューとオレンジは何が違うんだ?
“積極的な防災”の具体的な内容も含めてその辺は今後の説明待ちじゃないか。
しかしまあ、消防官が全員が全員大吾みたいだったらそれはそれで収拾付かなくならないか?
少なくとも組織にはならないよな
264 :
1/2:2008/09/20(土) 21:19:49 ID:???
第153報 会いたいヒト
近藤が大吾の家に行くが大吾はいない。大吾の母親が言うには、わけあって仕事に出ておらず、その辺をブラブラしてるとのことだった。
川原でジルとともに寝ていた大吾。ふと目を開けると、パンツが見えた。
大吾は近藤と話す。クビになるかもしれないと。だが、大吾は妙に明るい。「人命救助は何も消防だけじゃないだろ」
そのころ、ゲームセンター。甘粕は、バーチャで遊んでいた。つまらなそうな表情。ハイパーレスキューに推薦するという
神田の言葉を思い浮かべていた。YOU LOSE。敗北。甘粕が筐体を叩く。ゲームに負けたことが悔しいのではなく、
自身がオレンジを着るしかくがあるのか、そのことにイラついていた。そのとき、隣で怒鳴り声が上がる。
甘粕が台を叩いたことによって積んでた100円玉が崩れてしまったらしい。「拾え」という言葉に、甘粕が返答する。
「うるせえタコ」そしてケンカがはじまる。殴りかかる甘粕。カウンターの一撃。ケンカなどどうでも良かった。
あのとき、大吾にあてられ、命令違反をしてしまった自身に怒っていた。。オレは消防官として守ってきた信念を、
放棄してしまった。あれは…オレの本音だった… もうオレは“オレンジ”を着れない……ッ!
甘粕はボロ布のごとくボコボコにされ、路上に果てた。
265 :
2/2:2008/09/20(土) 21:20:39 ID:???
川原。大吾が近藤に尋ねる。落合先生はどうしてると。近藤の返答。卒業した学校の先生のことなんて知らない。
それはとても、もっともな答えだった。怒る近藤。大吾が言う。「今度デートでもしよっか」
近藤は戸惑った。その言葉だけではなく、いままでと違う大吾様子、雰囲気に……
近藤が去り、大吾は再び川原で寝転ぶ。6歳のあの日、五味さんに会って、おれの人生は決まった。
五味さん…… 会って…… あの日のお礼と、今おれの考えてることを全部話したいよ……!!!
千国短期大学。近藤はスマトラ島南部における生態系関係の講義に単位のため出席していた。
前から回ってくるプリント。それを近藤に手渡したヒトは……「あらー 近藤さん」落合先生だった。
始めたいことのために、知人に講義を紹介してもらったと言う落合。近藤は先生と教え子という関係から、
恋のライバルになったと、前でうきうきと授業に望む落合先生に敵対心を燃やすのだった。
そのころ、いまだ川原にいる大吾が、ジルをなでながら思う。近藤だって結構かわいいし、落合先生もいわずもがな。
それなのに… 「おれってヘンなのかなァ…… ジル。女のコ達よりも五味さんに会いてーなんてさ…… あんなおっさんによお」
ジルは思った……
(へん)
うん、へん
これは今はやりのボーイズラブというやつかw
>甘粕はボロ布のごとくボコボコにされ、路上に果てた。
死んだみたいな形容すんなw
第154報 静かな歩み
「わたしもなりたいものがある」落合は、何故、短大にいるのかと尋ねる近藤に、そう答えた。
大吾や近藤のように、本当に自分がなりたいものを目指す。落合は近藤と固く握手を交わす。
クラスメートとして。落合はその日から、自分を“先生”と呼ぶことを止めるのだった。
数日後、千国市消防局本部。大吾と甘粕はハイパーレスキューの説明を受けた。その帰り道、
甘粕の車の中で大吾が謝る。とんでもないことに巻き込んでしまって、クビを覚悟することを手伝わせてしまってと。
甘粕はそんな大吾の方を見ることなく、ただ「降りろよ、この辺でいいだろ」と車を止めるのだった。
去っていく車、大吾は以前のように話すことのできなくなった状況に少し寂しさを感じていた。そんな大吾のの背後から近藤が登場する。
そのころ、千国短期大学吉田研究室。壁には沢山の虫の標本が掛かる。背後にはそびえる本棚。そんな研究室で、
ひとの良さそうなおじいさん吉田教授が、インドネシア・スマトラ島での昆虫研究旅行の参加者を求めていた。
その中に座る落合。説明が終わるとすぐさま手を挙げ、顔を紅潮させながら、自らの夢を熱く語るのだった。
そのころ、ファミレスの近藤と大吾。私と落合先生のどちらを選ぶのと、心の中で思いながら詰め寄る近藤に大吾はたじたじ。
近藤の提案するデートの約束に、大吾は答える気力もなくただ「はい」と答えるしかなかったのだった。
大吾が帰宅。ちょうど大吾宛に落合から電話が掛かってきていた。子機を片手にダッシュで部屋へと駆け込む大吾。
あさって会いたいという落合の言葉を聞くが、モテモテの大吾はあさってはデートの約束があるため会うことはできないのでした。
デート当日。出かける前の五分だけと落合は大吾の家の前まで来ていた。いまからスマトラへ旅立つ。だから少しだけでもと
やってきた落合だったが、向こうからルンルン気分でやってくる近藤の姿を見て、会うことを止め、スマトラへと飛び立つのだった……
「今から目指すの! わたしも… 本当にやりたいこと! あなたみたいに!!!」
いきなりスマトラw
これどう展開するんだ
271 :
1/2:2008/09/27(土) 20:14:25 ID:???
第155報 同じ…
空港大火災から三週間、大吾は命令違反のお咎めも無く、その上、来年発足のハイパーレスキューに選抜された。
研修は来月から、め組にいる時間も減るかもしれない。すべては夢のようにすぎていく……。
め組で事務仕事をしている大吾に猪俣が話す。五味さんと面会できるぞと。だけど大吾は乗り気にはならない。
会いたいのだけど、でも……と。そんな大吾に植木は胸を張れ、お前が助けた側だと喝を入れた。
ジャカルタ、スカルノハッタ空港。吉田教授一行として落合は、インドネシアまでやってきた。
元気な吉田教授、その姿は蝶を追う少年のように、活き活きとしていた。それを見て、落合も自分とその兄を思い出す。
そんな中で、助手の一人がある注意を言った。スマトラ島森林部での火災、泥炭層と呼ばれる層に火が点き局地的な
火災が発生するというものだ。
一方、近藤とファミレスにいる大吾は、落合がインドネシアに行ったことを聞き仰天するとともに、
動き出したかっての恩師に大して、感慨深い感情を持ったのだった。
め組。植木は大吾にハイパーレスキューの参加書類を渡し言った。甘粕が辞退したらしいぞと。
非番の夜。ある街の屋外飲み屋で、友人たちと飲んでいる甘粕のもとへ、大吾がやってきた。
大吾は友人の紹介も遮り、何故辞退したのかと問いただす。だが甘粕は話さず、酒を勧める。大吾は自分の気持ちを語った。
「おまえとレスキュー行けたらいいなって…」
272 :
2/2:2008/09/27(土) 20:15:13 ID:???
「勝手なこというなよ」
甘粕は自分が辞退した理由を話す。お前と同じだからオレンジは着ないと。オレはどこかでコイツを認めている。
しかし、コイツのような異端は、神田さんたちのような本物が支えるからやっていけると思っていた。
オレも支える側になるという誇りがあった。それが…。あのとき変わってしまった。あのとき、
あの言葉は本心だった。組織も規律も糞食らえと思って、「あんた達に任せておいても……」と言ってしまった。
いつからオレは自分で考えている自分と違ってしまった?
「お前のせいだ。寄るな。これ以上、うつさないでくれ!」
その言葉に大吾は甘粕の胸倉をつかんだ。
「貴様がいなけりゃよかったんだ」
オレはこいつと出会って変えられたのか、それとも… もともとオレはこうだったのか。コイツといると…
「自分がワカんなくなっちまうんだよ!!」
甘粕が大吾を突き飛ばす。そして息を切らせながら言った。
「お前のことは、決してキラいじゃねえ。だが、もう二度とオレの前に現れないでくれ!!」
すべてが夢のようにすぎていく……
「オレはオレンジを着られない。何故なら、オレはお前と同じだからだ!」
レスキューの中でバランスを覚えればいいじゃん
経験を積めばどこまでやっていいかもつかめてくるんじゃない?
大吾と一緒にハイパーレスキュー行ったら結局引きずられちゃうじゃないか
275 :
1/2:2008/10/01(水) 23:34:09 ID:???
第156報 熱き独白
ジャワ島からスマトラ島へと向かう千国短期大学一行はぎゅうぎゅう積めの船内に戸惑っていた。
そんな中で、吉田教授と落合だけが、住民と元気に触れ合っている。落合は生のくだものを大きくほおばって食べるのだった。
日本・千国市。大吾の出動やハイパーレスキューの勉強で疲れたのか、大吾は出張所の机で大いびきをかいて寝ていた。
そんな大吾を多めに見てやるかと植木は大吾を仮眠室に連れて行くように大野に言う。大野は大吾は仮眠室の布団の上に
放り投げた。大吾は眠りながらいろいろなことを考える。道を分けた甘粕のこと、夢に向かって走る落合のこと、
自分が選んだオレンジという道を突き進むと決めたこと。大吾は目を開け、机に戻る。
落合先生… がんばってるかい? 先生はいつか何かに夢中になって生きたいと言っていたけど、
おれも今やっと見つけたんだって気がするよ。だからおれと先生は一緒だ。
別の日、大吾は迎えに来た近藤の車(バイトして買ったらしい右ハンドルの中古車)に乗り込む。おれと先生はきっと今、
一緒のものを見ている。先生が帰ってきたら、おれの研修も終わるころだ。おれもオレンジを着る。そしたら…
車の中で近藤と笑顔で談笑する大吾。その目は遠く別の国にいる落合を思う。そしたら今度こそ言おう…
初めて会った時からずっとあんたのこと、好きだったって。ずっとずっと一生そばに居てほしいって。
スマトラ島南部。暑い日ざしが大きく広がる木々の間を縫って降り注ぐ。落合たちは昆虫の観察を続けていた。
赤い四星の黒天道虫が木から生え広がるキノコの上に集まっている。地面にはルリタテハや他の蝶たちが集まり、
青い羽を休めながらミネラルを含んだ水を、その伸びたストローのような口から存分に吸っていた。
そんな自然の光景に、落合は心奪われ魅せられていた。
276 :
2/2:2008/10/01(水) 23:34:42 ID:???
ランプン州林政局。吉田教授が現地の管理者と今後の予定について話していた。
ムトロのあたりまでは足を伸ばす。それより先は煙害が激しい。どうやらいまでも火が点いている場所があるとのことだった。
自然乾燥や焼畑の飛び火で起こる山火事、今年は雨も少なく拡大傾向にあるらしい。海外からの消防支援も検討中だとのことだった。
吉田教授一行はホットスポットの乗った地図を貰い州林政局を出る。別れ際には、もし山火事を知らずに生活しているような、
山奥の村に住む人がいたら教えてほしいとも頼まれた。
そして続く昆虫観察。そんな合間で、落合は現地の子供にジェスチャーで、なんとか山火事のことを伝えようとしたり
していた。教室の中よりも、野外の方が似合いそうな姿、落合は「さあ行きましょう――!」と大きな声で皆を率いて行った。
そんななかで飛び立つ鳥たち。その様子に吉田教授だけが違和感を感じるのだった……
「きのうからなんともありませんよ。わたし、ここに合ってるのかしら? んっ、おいしいっ!!」
すみません規制に巻き込まれました。今回は代行スレにお願いしています。
もし土曜までに解けない場合は、規制が解けるまで休み、ストックをためようと思います。
申し訳ありませんがお許しください。
ひょっとして落合先生が火事に巻き込まれて大吾が助けにくる展開になるのか?
それだと五味さんの時程切迫感を感じなそうで困る
つうかいくらなんでも時間的に間に合わなさ過ぎだろ
飛行機で何時間かかると思ってんだ
280 :
1/2:2008/10/04(土) 20:23:24 ID:???
第157報 今できること
密林の中。オウゴンジンガサハムシに近い亜種を見つけた落合に、吉田教授は「ほーお…」と唸る。そんな中で、助手の一人が、
遠く西の方で煙を出す山火事を指差し、不安そうに話した。
夜、ホテルに戻ってきた一行。みながげっそりとやせ細るなかで、落合は椅子に座って、大いびきをかいて、ぐっすりと眠っていた。
ホテルのテレビに山火事の映像が出る。それは隣国シンガポールからの映像らしい。現地スマトラではさして騒ぎにはならないが、
気流の関係で煙害をもろに受けるシンガポールの方が問題意識を持っているということだ。
日本、千国市消防学校。鬼の荒教官の講義中に眠る男、それはやっぱり大吾だった。幸せな夢から目を覚ます大吾がいの一番で
目にする荒の顔。何も言わずに見下ろす荒。即座に誤り、姿勢を正す大吾に荒は何も言わずに戻っていった。
普通なら血の雨が降るはずだと周りのものはひそひそと話す。その、荒は思っていた。もうコイツとは係わり合いになりたくないとい。
講義が続く。エルニーニョ現象による雨不足、焼畑農法、森林伐採業者による放火、インドネシアでは泥炭層と呼ばれる、
地下2、3メートルにある見えない層に火が点くと荒は言う。地中で火が木の根に達すると、突然、幹が燃え出す。
地上からは予測できない未知の恐怖。そんな熱弁を奮う荒が大吾の方を見る。真剣な表情。インドネシア、つまり落合が
居る場所と聞き、大吾は鬼気迫る表情で講義を聴く。荒は思う。なんだコイツ……この目は…まるであの団地火災のときの
現場のような…… なんだこの真剣な……アツイまなざしは……と。
281 :
2/2:2008/10/04(土) 20:24:12 ID:???
スマトラ島。落合が焦げ、幹の大部分を焼失した木を見つける。様子から見て、去年のものらしいが、
この下に泥炭層があるのではと危機意識を強める。地図を見る落合。この先、3キロほど西に村落がある。
みなが州林局の人がいった言葉を思い出していた。知らない人がいたら教えてあげてほしいという言葉。
一行は昆虫観察は明日でも、来年でもできると、研究を中断し、村落へ注意を促しに行くことに決めた。
いまなら明るいうちに戻ることができる。そう言って車に乗り込み村へと出発する。そんな様子を草々の影から
兎が眺めていた。そして黒煙を出し始めた木。兎は静かにその場を離れるのだった……
『昨年、一昨年と続いて、今年もシンガポールでは、お隣インドネシアの森林火災による煙害で国際空港を――』
『南端の町では、一部の人々がまた今年も納屋からマスクを取り出すシーズンになったと――』
『ははあー、毎年ですかー、こーなるとまるで季節の風物詩ですね――』
『専門家によりますと、今のところ例年と変わった兆候はなく… 特に心配はないとのことです……』
森林火災か…あの辺は毎年凄いらしいな
海外じゃあ助けに行けないだろうよ
たまたま落合先生がもってたイリジウム携帯電話を使って大吾が電話で指示して火を消し止めるとか
第158報 猶予なき事態
ワタ村へとついた落合一行。起きている山火事や泥炭層の説明をするがイマイチぱっとした反応は得られなかった。
め組。平が大吾に怒こっていた。なぜホールトマトを買ってこなかったのか、自慢の一品だったのに、
平が大吾に怒鳴る。だけど大吾は謝ることもなく、ただ真剣に座学のノートを見続けていた。まるで現場にいるような顔をして。
田中珈琲店。甘粕は女の子とデートしていた。ほっぺをぷにっとされる甘粕。オレが本音で付き合える奴は二人しかいない。
そのうちの一人とは、もう絶交した。だからもうオレにはお前しか居ない、と甘粕が言う。そんな甘粕の真剣な様子に、
彼女が言った。もし私が火事に巻き込まれたら助けに来てくれると。
「ああ! 全部捨てて、今すぐに!!」甘粕は恥ずかしがることなく言い切った。
ワタ村。風向きが変わって煙が村まで靡いて来た。村民たちは避難を決める。そんなとき村人が、この先に何年も外界との接触を
断っている村があるというようなことを話した。村人が走って知らせてくると話す。だがそれならば車を持つ自分たちが行くべきだと、
吉田教授たちは言う。その中で落合だけが火事を甘く見てはいけないと警告した。けれど、それでも誰かがいかなければならない
事態に、不安ながらも落合は車に乗り込んだ。一行を乗せた車が森の中へと消えていく。
朝比奈くん。め組で仕事をしている大吾はふと誰かに呼ばれたような気がした。そして大吾は植木に言う。
「……うえきさん…」
「なんだ?」
「私用電話かけてもいーすか?」
ずっこけ怒る植木を気にも留めず、大吾は千国短期大学に電話をかける。電話から聞こえる喧騒。大吾の脳裏に何かが走った……
「あのっ、吉田教授のインドネシア昆虫研究旅行の参加者と連絡を取りたいのですがっ」
「……い……一行の連絡が途絶えたままなんです。当方も、その対応にずっと…… しかし連絡がつかないのです。ゆうべから……」
落合先生、着々とピンチにはまりつつあるな
いやでも、いくらなんでもこれは遠すぎるだろ……
しかし甘粕と彼女の会話からすると今後の展開は明らかに…
つうか彼女いたのかあいつ、生意気な
この甘粕のセリフは
「二股してたけど、おまえに決めたぜ」
と言ってるように聞こえるなw
保守
291 :
1/2:2008/10/11(土) 22:02:49 ID:???
第159報 逮捕!?!
落合一行との連絡が途絶えていることを知った大吾、電話を置くと、丁度、スマトラのニュースが流れていた。
詳細な人名はわからないが、日本の大学一行四人は、ワタ村に泥炭層の様子を伝え、さらにその先の村まで注意を促しにいったと。
ニュースを見て「日本の消防も現地へ派遣されるかもしれない」と植木が言う。大吾はそんな植木に食って掛かった。
「それはいつなのか?」尋常ではない様子の大吾に「十日かそこらは……」と植木は言った。
「遅すぎるッッ!!」机を叩き大声を上げる大吾。なぜそんなにいきり立っているのかと不思議がる、め組の隊員たち。
そこへニュースが続報を告げた。一行の中に落合先生が含まれていた。め組の中は静まり返った。
夜、千国市消防局本部。忍足や荒、お偉いさん達が話し合う。インドネシアから外務省への要請。国際緊急援助隊の派遣。
東京15、名古屋7、大阪7、千国市からも七名が出るとのことだ。千国市のヒトがいるから。いや、いなくとも要請があるならば
助ける。意識を新たに、覚悟を決めた。それでも、出発は十日後となってしまう。それだけがどうしようもない現実だった。
292 :
2/2:2008/10/11(土) 22:04:14 ID:???
夜中。め組から駆け出す、バズーカ砲を担いだような男の影。のそのそと進む露骨に怪しいその男にパトロール中のおまわりさんが
声をかけた。「なになにラベルが…… 中央消防署めだかヶ浜、これは消防署の備品じゃないのかね?」
声を掛けられた男はもちろん大吾、かつぐバズーカはインパルスだった。言いあいが続く。
「おれは消防官……」大吾の弁明、そんなものは通るはずも無く。「あやしい!! ちょっと派出所まで来なさい」となった。
さらに夜は更けて。仮眠中の北条さん(め組二部の隊長)の下へ目の覚めるような一方が届く。「朝比奈が捕まったって――」北条さんは口あんぐり。
警察の檻の中。大吾は出せと叫ぶ。十日なんて待っていたら、手遅れになっちまうと。それでも消防マニア認定された大吾は、
消防との連絡が取れるまでは出してもらえそうもなかった。
くじら台出張所。出勤して着替える甘粕の耳に、例のめ組の朝比奈がインパルスを盗んだという噂が届いた。
いくらアイツでもおかしいと驚く甘粕。だが冷静に考えると、大吾の行動は常軌を逸っしていても“理由”があったことを思い出す。
“理由”……? そういえばと甘粕はこのまえ見たニュースを思い出した。確か大吾の出身校、その教諭がスマトラでと……
「お、おいキミっ、ちょっと待ちなさいっ。その担いでるものは何かねっ?」
ど――ん 「はっ」 ろこつにあやしぃ
すみません、また規制にひっかかりました。このレスは代行スレに依頼しています。
対応はいつも通り、解けるまで休みます。もうしわけありませんが、ご勘弁ください。
消防士の身分証明書ぐらい持ってないのか?
マニア認定m9(^Д^)プギャー
バスーカ砲w
大吾捕まったw
298 :
1/2:2008/10/15(水) 22:13:54 ID:???
第160報 優しい言葉
千国市立総合病院。植木が空港火災の怪我で入院している五味を訪ねていた。大吾の暴走について、監視不足だと謝る植木。
気持ちはわかる。五味はそう呟いた。
そのころ大吾は消防局本部で偉いさんからお叱りの最中だった。方々からの罵声が飛ぶ。それでも大吾は動じない。
十日もあれば、おれなら落合先生を助け、つれて帰って見せる。大吾はただ睨み返した。
時を同じく、消防局本部。偶然別の用で本部に来ていた甘粕が、近藤に詰め寄られていた。
朝比奈せんぱいはどこ? ケーサツに捕まったって。近藤は有無を言わさず甘粕に恫喝する。
甘粕はとにかく近藤を落ち着かせベンチに座らせると、大吾は今こってりしぼられているだろうと伝えた。
逆に甘粕が質問する。何故、インパルスを盗むような、そんなことまでするのかと。高校時代の恩師なのか?
それにしたってまるで恋人を助けに行くような…… 甘粕は逆鱗に触れてしまった。
近藤は顔を真っ赤にして呟く。「せんぱいにとってはきっと、それくらい大切な人だから…… 」
「えっ」呆ける甘粕。近藤はただ叫んだ。「知らないっ、せんぱいも… あんな女も……」
近藤は思っていた。ニュースを見たときから、大吾は一人でもスマトラに助けに行くだろうと。
「お、女ァ…? あいつに…?」口を広げたままの甘粕。近藤の目にはもう、甘粕は映っていなかった。
近藤は俯いて思う。心配だけど……、せんぱいには行って欲しくない!! 一方、甘粕は、まだ口を開けたまま驚いていた。
大吾が病院を見上げる。五味さんが入院している病院。十日後なんて待っていられない。いま、落合先生が助けを待っているかも
しれない。どうすればいい。大吾は五味に聞こうと病院へやってきた。そして知った。五味が既にここにはおらず……
退院しているということを。どうやら今日退院したらしい。それを聞いて大吾は仕方が無く病院を出る。
299 :
2/2:2008/10/15(水) 22:14:42 ID:???
病院の出口に近藤が立っていた。帰り道、並んで歩く大吾と近藤。日が沈みかけ、空は赤み始めていた。
誰にも言うなよ。大吾が言う。大吾は十日も待っていられない。今日明日には、スマトラにいくつもりだと近藤に話す。
十日間。その言葉に近藤は落合の姿を思い出していた。夢を追って、輝き始めていた姿。胸が高鳴っていくのがわかった。
「朝比奈せんぱい」大吾が振り向く。「わたし… あのヒトのことべつに好きじゃない… だけどこのまま会えなくなるのは
ヤなの! もっと話したい。もっとケンカもしたい。もっと…もっと……。落合先生先生を助けてあげて!!」
目を滲ませながら近藤は思いを伝えた。さっきまで行かないで欲しいと思っていたのに、それでも心の底から本心を伝えた。
「ああ! まかせろ!!! 落合先生はおれが連れて帰る!!! 必ずだ!!!」
夜。大吾の迷いは消えていた。五味さんへの相談なんていらない。どうせオレはバカなんだ。考えていたって始まらない。
大吾は、出張所へと向かう。オマワリだろうと誰だろうと… 誰に見つかろうと殴り倒してでも行く。今度は!!!
出張所へと着いた大吾、インパルスを探すがいつもの場所にない。どこにある。どこだ。クビをきょろきょろと回し、
インパルスを探す。そのとき、大吾の背後で音がした。見つかった。そう思いながらも振り返る大吾は見慣れたあの人を見つける。
GLOBE。赤いキャップを被った小柄な男が、インパルスを大吾に差し出した……
「探しものか? 持っていけ」
インパルスって充填する後方支援部隊がいないとあまり役に立たないのでは?
近藤回かと思ったらラストで全部持ってかれた…
保守
303 :
1/2:2008/10/18(土) 22:14:21 ID:???
第161報 敗者
「ボウズ… コレだろ? オマエの探しものは… 持っていけ、スマトラ島へ。……ただし、俺に辞表を置いていくんだ」
五味がインパルスを大吾に渡しながら言う。睨むような目。大吾はいても立ってもいられない自身の気持ちを語った
後に五味へ質問した。どうして協力してくれるのかと。五味は答える。若くて、所長というような立場でもなく、
同じ様な状況に置かれたら、「おまえと同じことを考えるだろうからな」
「おい――破損したホース、今夜のうちにつくっろちまうぞ――」二部の隊員たちが降りてきた。やばい。
びくつく大吾を消防車の陰に押し込み、五味も隠れる。「このホース、もう限界じゃないスかー、捨てたほーが」
「バカ、税金で買ったもだぞ、カンタンに捨てるなんて言うな」隊員たちはホースを持って上がって行く。
それを確認し大吾の口を押さえていた五味は笑い出した。
東消防署独身寮「朝日僚」同僚とテレビを見ていた甘粕へ電話が入る。本部から、ハイパーレスキューへ
参加しないかとの電話だった。それはもう断ったはずじゃ、甘粕は言う。それはわかっているが、と電話口の向こうは続けた。
辞退者が出たという。甘粕はそれが誰だかすぐにわかった。大吾だ。さらに大吾は十日間の休暇まで願ったらしい。
それが受け入れられないと聞くや大吾は電話を切ったという話だった。インパルスを盗み、警察に捕まり、説教を受けて、
まだ行く気であることに驚く。「よっ、甘粕――カノジョか―? にくいよ、この!」「色男!」
同僚の囃す言葉に甘粕は怒鳴り返す。そのとき、頭に自分が言った言葉が浮かんだ。全てを捨てて彼女を助けに行くと言った
あの言葉が。放心する甘粕。返事は後日で、と電話を勝手に切ろうとする。スマトラ島。これであいつも終わりか。
もう一生、顔を合わせることもない。もう、オレとはなんの関わり合いもない。そう思いながら、切ろうとしていた電話を、
再度、口に近づける。「あの、ところで…… 十日間の休暇って、ムリなもんでしょうかね? オレでも…… ゆーとー生の…」
アレ、何、言ってんの……? オレ……。怒られた。けたたましく甘粕は怒られるのだった。
いま、オレ、一瞬、何を、考えたァ? もう聞きたくないんだ。奴の話なんか。もうこれ以上掻き回すのはやめてくれ。
甘粕はひとりぐるぐるしているのだった。
304 :
2/2:2008/10/18(土) 22:15:16 ID:???
一方、め組。大吾が五味に怪我の容態を尋ねる。もとがもとだから……と五味は答えた。
大吾が話す。十五年前の五味が怪我をした出場。そして生死の境を彷徨う怪我。そこからの伝説の復帰戦。
どうしてそんなに強いのか、どうしたらそうなれるのか。大吾が問う。五味が小さく笑う。
大吾はその姿に自分が笑われたのだと思った。五味のようになるなんて三十年は早い、自分でもそう思っていた。
けれど五味の笑いは別の意味を持っていた。
「俺は勝ってなんかいない。俺は… 十五年前のアクシデントで終わっていたんだよ。俺は敗者だ」
大吾が驚き、何を言っているのかと聞き返す。五味は続けた。
「あのアクシデントがなかったら、俺はもっと踏み込めた!! もう一メートル、もう三十センチ、あの娘の母親も、
きっと助けられた、昔の俺なら!! 俺はもっとヤレたんだ! ヤレたんだぞ……!!」
唇を強く噛み締め、血を流す。皆が語り継ぐ伝説の戦い。それを負けたと思っていた。
震える五味を見て、背筋を凍らせる大吾だった……
どうやら本当に単独でスマトラいく展開になるみたいだな
やっぱすげー人だわ五味さん…
自分でゆーとー生とか言うなw
むずがゆい
五味さんwwww
310 :
1/2:2008/10/23(木) 00:34:30 ID:???
第162報 ある運命(ディスティニィ)
「俺は敗者だ。ついにアクシデントに打ち勝つことは出来なかった。スマトラ島へ行け。おまえは…勝ち続けろ!」
消防車に寄りかかって、五味は語る。あのアクシデントで死にかけたあと、病院火災に出場し、
以前の自分とは違っていることに気づいたこと。そして逃げるように、えび谷へ向かい、お寺の火事に遭遇したこと。
大吾は五味さん指示のバケツリレーで火を消したと言うが、五味はそれを否定した。あれは住民たちが自らの意志で消したのだと。
ケガして以来、地球を一人で背負っているようになってしまった。そして大吾もそのように見えただから休暇を取らせたんだと語る。
「五味さんは敗者なんかじゃない。おれのヒーローです」えび谷の住民たち、彼らをそうさせたの五味さんだ。
だから帰ってきた。五味さんに勝ちたいと思って。大吾は自身の思いを告げた。
「あんたは覚えてなんかいないだろうけど… 数えきれない程、救助した人の中… 十四年前、六歳のおれを救出したことなんか――」
ガッツあるぜ! 小さな消防士君! あのとき助けをまっていた子供だったとき、現れたヒーローを思い出す。敗者なんかじゃない。
大吾は目を潤ませながら五味を見た。そして五味が言う。
「カオをあげろ。小さな消防士クン!! 覚えているぜ。他の誰よりもな!」
成田空港施設外。インパルスをバッグに入れて背負い大吾が走る。頭には五味の赤い帽子。あのあと、五味が話した言葉を思い浮かべながら走っていた。
『えび谷で勇気づけられた俺は最後の力を振り絞って出場していた。年齢、体力的にも限界。それでも敗者のまま退くことはできない。
そんな絶望的ともいえる戦いの中で、六歳の大吾を救出した。子犬。自分の大切なものを自分で守るために炎に飛び込んだ少年。
俺が地球を背負う必要なんてない。戦士はここにもいる』
311 :
2/2:2008/10/23(木) 00:35:17 ID:???
大吾は空港へと着く。その入り口で止められ、荷物検査を受ける。インパルスが引っかかった。警報が鳴り響く。
『ボウズ。バカ言うなよ… 勝つの負けるのって、オマエなァ…… 六歳のガキのくせして俺を動かしやがった奴が何を言うッ!
言ってこい!! それを被ってスマトラの山火事へ!! ホレた女を救うのに理屈もクソもねェだろッ!』
大吾は取り押さえられた。「はなせ… インパルスを持って行かなきゃ。落合先生が……」騒ぎが広がる。
それでも大吾は叫び続けた。こんなとこで引っ掛かってるワケにはいかない。時間がないんだ。落合先生が――
「あの… ちょっといいですか」そこへ現れた一人の男。甘粕が一枚の紙を見せ言った。
「そいつの持ってるインパルス。これが国外持ち出しの許可証です。ご確認お願いします。外務省及び自治省認可、
千国市消防局長発行。これでも不十分ですかね?」
甘粕 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
>ホレた女を救うのに理屈もクソもねェだろッ!
格好良いけど空港の人にはそれじゃ通じないよね、やっぱり
314 :
1/2:2008/10/25(土) 21:46:06 ID:???
第163報 赤の他人
慌しくなる空港ロビー。職員は書類の照会を頼むとともに甘粕に問う。こんな書類を持ってくるキミは何なのだと。
「同じ千国消防局職員という以外は…赤の他人だ」甘粕が答えた。そこへ駆け寄る空港職員、どうやら書類が正式なものだと
認められたらしい。甘粕は大吾を連れてその場を先へ進んだ。大吾は甘粕に尋ねる。どうして、あんなケンカ別れをしたはずなのに、
それに、こんな書類まで用意してくれて…… 「ばーか。偽造にキマまってんだろ。こんなもん」甘粕は舌を出して言った。
驚く大吾。自分が何をやっているのかわかっているのか? なんて大変なことを、と甘粕に言うが、「てめぇが言うな」と
一喝されて、大吾は押し黙る。甘粕は思った。オ、オレは何をやっている…? と。
ANAのカウンター。リュックの中のパスポートを探る大吾。あった。出した。そうしたら航空券を搭乗券に変えろと言われた。
そうかチケットは飛行機に乗るときに見せるんじゃないのかと知る大吾だったが、残念ながら大吾の持つチケットはJALのものだった。
ずっこけ甘粕。JAL側。インパルスの騒ぎが繰り返されて、甘粕はその度、書類を見せ職員に説明する。
「空港施設使用料?」大吾は知らなかった。甘粕は出発の時間を尋ねる。十時五十分。時間も足りない。
こいつひとりじゃ、とてもじゃねーがスマトラまで辿り着けない。よしんば行けたとしても何もできない。
それでも大吾の目は諦めずスマトラを向いていた。
315 :
2/2:2008/10/25(土) 21:47:06 ID:???
甘粕は思う。そうまでして行きたいのか? 職を辞す覚悟で、インパルスを盗んで、
警察に捕まって、海外など行った事もないのに、落合先生というのはコイツの何なんだ? オレにこんなマネができるのか?
甘粕は無言で空港カウンターへ向かう。何を話しているのか大吾にはよくわからなかった。
「ええ…JAL725便の… そう空席を… そうわかりました…… ジャカルタまで一枚!!」カウンターに札を叩きつけ叫ぶ。
落合先生って何なんだ。オレ…あったこともない人物に…… でも、一目会ってみたい。そんな大したヒトなら……
「空港に入るためにパスポートは持ってきてる。てめぇを向こうまで送り届けるだけだ。オレはそのまま日本へとんぼ返りする。
「あ、甘粕… 恩にきる。おれ…本当は心細くて……」拾われた捨て犬のような目で甘粕に感謝する大吾。甘粕はそんな大吾を怒鳴りつけた。
「バッカヤロウ。そんなカオすんじゃねえッ!!」オレ……破滅へ向かってる。
インドネシアへ向かう飛行機の中。大吾は落合のことを思っていた。泣いているだろうか。先生って言ったって普通の女の子だからな。
すぐ行くよ。だから元気出して。泣かないで。大吾は静かに眠りについた。
スマトラ島。森を覆う白煙の向こうから、泣き声と咳き込む声が響く。
「しっかり! 地図で見るとこの先にクレバスがあるわ。風向きからするとそこで二、三日休めるはず!」
落合は泣いてなどいなかった。背には少女を背負い、左腕で吉田教授を支える。誰よりも気丈に、弱りかけの一団を率いていた。
ジャカルタ・スカルノハッタ空港。「着いたぞォ。インドネシアだ!!」大吾が叫ぶ。甘粕もまた、インドネシアの大地を踏みしめていた……
甘粕〜〜〜〜〜〜!
いいヤツだ!!
バカだ!!!
公文書偽造キター
これはヤバいだろ。普通に犯罪者
ダメだよ甘粕、もうお前完全に抜け出せない程泥沼に嵌ってるw
甘粕
320 :
1/2:2008/10/29(水) 22:54:57 ID:???
第164報 邂逅
あのときわたし……何であんなこと言っちゃったんだろ…。大学の授業中、近藤は空を行く飛行機を見て、
大吾を思い出し泣いてしまった。朝比奈せんぱい。無事に帰ってきて、一日も早く…落合先生と一緒に!!
インドネシア首都ジャカルタ。大吾は勢いよくタクシーを呼び止め、「スマトラ島! わかる? 山火事の起きてる…ス・マ・ト・ラ!」と
と急いで現地へ向かおうとする。「甘粕、サンキューな!! ここからは、おれ一人でなんとかなるから……」インドネシアに着き、
俄然、元気を出す大吾。けれども……
「バーカ!! てめぇ、ここからスマトラまで何キロあると思ってんだ! だいたい海の向こうだタコ!」
大吾一人ではやっぱり現地へ辿り着くことは無理そうだった。ムラッ港まで行ってフェリー。行くぞと声を上げる甘粕に大吾は問う。
「一緒に来てくれるのか…?」呆ける大吾。甘粕は怒鳴る。「仕方ねぇだろ、帰りの飛行機は三日後だ、それまでここにいるしか
ねえんだよ。さっき国際電話で頼みこんで休みはもらった!!」
ボ――。ボ――。青空に響く汽笛の音。船が白波を掻き分けて進んでいく。静かに、優雅に、スンダ海峡をフェリーが行く。
ボ――。船首に佇む疲れ果てたような一人の男、甘粕はどこまでも続く海を見て思う。ボ――。ナンデオレハ…ココニイル……。
ボ――。半日前は日本にいて考えもしなかった。ボ――。今、オレはインドネシアにいて、スンダ海峡をフェリーで渡っている……。
寂しげに放心する甘粕に大吾は子供のように売店で買ったちまきのようなものを進めるが、甘粕の目に力がないことに気づき、
謝った。偽造書類や仕事を休ませてしまったこと、日本に帰ったらできるだけ弁護するからと大吾は言う。
「もう、いいから」甘粕の言葉。現地に着いたら向こうの消防へ。片言の英語でどこまで通じるかわからないけど、
そこまでは協力するからと甘粕は話す。そして「今は一人にしてくれ。頼むから」船は進む……。
321 :
2/2:2008/10/29(水) 22:55:46 ID:???
インドネシア・スマトラ島 バンダル・ランプン。バカウフニ港へ降り立った大吾たちの前を消防車が走る。その向こうには煙を上げる山。
山火事の消火に行くんだ、と大吾と甘粕は消防車を追う。ところが、山の麓にも行かずにはるか手前で、消防車は曲がってしまった。
小屋が燃えている。ボヤか。ただ現地の消防はそんなボヤにさえも手を焼いているように見えた。ホースの水圧も物足りない。
「バケツリレーでもしたろかーっ」と大吾が元気に叫ぶ。インパルスを背負った大吾が確かにそう言った。
「オマエ、その、背負ってるのはなんだよ」甘粕のつっこみに気づいた大吾は、現地に消防の驚く顔をよそに一気に火点鎮圧を終えた。
鎮火後。笑顔で話し合う面々。だが山火事には行かずに、このまま帰るようだった。どうして? 甘粕が問う。
拙い英語同士だが、なんとか意味を理解することができた。現地消防が話すには、こういうことらしい。山はあまりに広大すぎる。
ホットスポットの数も所在もわからない。いま、ジタバタしてもしょうがない。そういうことだった。
悔しくねえのかよと大吾が憤る。もしめだかヶ浜が燃えていたら、そう考えると大吾のいらつきは治まらない。
そのとき甘粕ははたと気づいた。煙を上げる山を見て、コブシを握り締める青年に。表情は怒りに満ち溢れ、身体を震わせている。
「バンジャル!!」名前を呼ばれ、青年は消防車へ戻る。その途中、バンジャルと呼ばれた彼は、大吾の足元に転がるインパルスに
手を伸ばした。甘粕が大吾に教える。三人が出会った……
甘粕面倒見よすぎw
どこまで行くんだ甘粕
>そこまでは協力するからと甘粕は話す
いや、こりゃもう日本帰るまでズルズル行っちゃうだろ…
甘粕もう大吾に首ったけすぎw
325 :
1/3:2008/11/01(土) 18:58:10 ID:???
第165報 疎通
夕方のスマトラ島。現地の消防署へと戻った大吾は、スマトラの消防所員らに怒鳴っていた。
「なんでだよ!? すぐそこに山火事の煙が見えるじゃないか!」大吾の叫びに、地元の隊員はなんとか、
かたことの英語で事情を説明した。大吾は英語がわからなかったので、すぐさま、甘粕に聞いた。
彼らの話では、外国の援助チームとの間に取り決めがあるとのことだった。今、山の上を飛び消火作業を
続けるセスナも外国のものらしい。説明を受けた大吾、それでも納得はできなかった。
自分の国を自分で守れなくていいのかよ、大吾は大声を出した。結局、現地消防に頼るのをやめた二人は、
一応、ホットスポットの載せられた地図を貰い、消防署を後にした。去る二人をバンジャルと呼ばれた青年が見つめていた。
Impulse……。その視線は大吾の背負うインパルスを捉えていた。
326 :
2/3:2008/11/01(土) 18:58:58 ID:???
同刻、夜の日本。千国市消防局本部において、ある男が視線を集めていた。神田、忍足、その場に集まった皆が、
その男に真摯な敬礼をする。「着帽のしたままの非礼をお許し頂けますか?」そう言って男は会議室へと進んだ。
「現地に到着するのは十一日後になる。どんなに急いでもこれが我々の限界だった」偉い方が居並ぶ会議室で
来栖が話す。その表情は厳しく辛そうだった。説明は続く。「その時点から山火事を消火しつつ、要救助者を
救出するとなると、並みの指揮官には務まらない。君しか… おらんのだ…… 指揮チームに加わって貰いたい
五味俊介消防指令。引き受けてはくれんかね」五味は返事をしない。重い空気が流れる。その流れを変える為か、
それとも交渉を優位に進める為なのか、来栖は一度溜息をついてから、少し話題を変えた。それは大吾たちの
犯した行為についてだった。インパルスを盗み、偽造書類を用いての空港通過、来栖は一度言葉を切り、そして言った。
「何をしに… 行ったのかねぇ? 彼らは――」会議室がざわつく。犯罪行為。いままでとは違うのだと忍足は思う。
そのとき、五味が重い口を開いた。初動が遅すぎた。村人たちが助かるかどうかも微妙だと。来栖たちが青ざめる。
「しかし…… まだ最後の切り札がある。それが“彼ら”です。私が彼らを一足先に現地へ送り込みました。
私に指揮をまかせて頂けるならご覧にいれましょう。彼らがいて初めて可能になる“逆転満塁ホームラン”を!」
期待で顔を紅潮させる来栖さんらお偉いさん。会議室の熱気はいっきに急上昇した。五味は思う。
とりあえず、この場は凌いだぜ。あとは…俺にだって大した策があるワケじゃねえ、頼んだぜェ。
327 :
3/3:2008/11/01(土) 18:59:46 ID:???
スマトラ、夜もふけ始めた頃。大吾たち二人は4WDのレンタカーを借り、山へ入ろうとしていた。そこで大吾が言う。
「あ、甘粕、おれ…… 車の運転……」
「わかってるよ! 乗りかかったフネだ。“タクシー”やってやるよ!! さあ出発だ」
大吾が感謝の言葉をかけようとしたとき、甘粕は大吾に注意をした。政情不安で強盗や通り魔が出るらしいから
気をつけろと。そして噂をすればなんとやら、日本では見ることのできない拳銃が大吾の方を向いて揺れていた。
「あ…甘粕」大吾が甘粕を呼ぶ。「何だよ!」振り向いた甘粕も拳銃を見つけ唖然とする。銃を構えていたのは、
バンジャルだった。『インパルスを置いていけ』バンジャルが英語で要求した。甘粕がバンジャルを落ち着かせようと、
自分たちがこの国の村人を助けに来たのだと話す。けれど、意味はなかった。『そんなことはこの国の人間が…… オレがやる』
バンジャルが銃を向けたままで言葉を放つ。外国人は本当にピンチになったら見捨てて帰ってしまう。
ボランティアなんて信用できない。本気で山火事と戦う気がないのなら道具を置いて帰れ。
バンジャルがインパルスの入ったバッグを奪い取ろうとしながら叫んだ。『“インドネシア”を… ナメるな!』
「うるせぇバカッ」大吾が怒鳴り返す。インドネシアとか山火事とか面倒見切れるとは思っちゃいない。
ただ好きな女を助けに着ただけだ! 大吾は素直な気持ちを叫んだ。時間がない。説明をしている暇はなかった。
結局、車は三人を乗せて進む。片言の英語で名前を伝え合う大吾とバンジャル。なんでオレが通訳しなかったのに、
こいつらは言葉が通じたんだ? 甘粕はふと、そう思いながら車を山へと進めていった……
五味さんの凄いハッタリキターw
良いのかそんなこと言っちゃって、
肝心の大吾は好きな女のことしか考えられない状態なのにw
でも大した策はないって言い方だから一応考え自体はあるのかな
五味さんかっけー、でも大吾頼みかよw
甘粕はついにタクシーを開業したか
今度はアッシーかよ
健気すぎる(⊃Д`)
ヌヌヌ
甘粕は頼られると弱いタイプ
この人にはアタシがついてなきゃ、ってヤツか…
幸せにはなれんよ早く目を覚ませ!
案外大吾はひとりでも大丈夫そうだけどな
335 :
1/3:2008/11/05(水) 22:46:53 ID:???
第166報 華麗なるデジャヴュ
鬱蒼と茂る森林、これ以上は車では無理だと、三人は車から降りる。大吾は煙の上がる山を見て思った。落合先生…今、助けにいくからと。
山小屋。休んでいた落合一行は休憩を終え、また進行を開始しようとしていた。皆の顔は疲れ暗い。
一方の大吾たち、焚き火を囲んで飲み物を啜る。大吾とバンジャルはまったく会話をしていなかった。
言葉が違うから仕方がないか。甘粕は思う。「出発しよう」バンジャルが甘粕に声をかけた。
そのとき、大吾は眠っていた。うつらうつら。その様子をみて、バンジャルが甘粕に尋ねる。
アマカスにはフンイキを感じるがこのダイゴには感じないと。女の為にスマトラまでなど、信じられないと。
甘粕は、国を思うあんたと同じことだと言うが、バンジャルはイマイチ納得できなかった。三人は立ち上がり山道を進む。バンジャルは思う。違う…オレはコイツとは違う。自分の国のヒトを救うために…
この国の消防士としての誇りだ。女を助けるなどというこいつとは違う。何よりも、さっきから見ていたら、
こいつはアマカスがいなければ何も出来ない半人前じゃないか。まだ信用できない。
大吾と甘粕が地図を確認する。そのとき甘粕が寄りかかる木の幹の熱さに気付いた。見上げると木が煙を上げていた。
こんなところにホットスポットがあるなんて聞いてない。でも泥炭層だから。ルートを変えよう。
甘粕とバンジャルが議論し行動を決める。大吾は英語で行われる話に入れてなかった。
336 :
2/3:2008/11/05(水) 22:48:14 ID:???
道を変えた。少し下っている。それなのに、煙は一向に減らない。むしろ……増えている。
さっきのホットスポットは、もしかしたら下から上がってきたものではないのか。甘粕が呟く。
バンジャルと甘粕はまた地図を見てルート選ぼうとする。大吾はその話にまったく加わらず、木から飛び立つ鳥、
何かを伝えるような地面、響き、煙、空気の色? を確認する。
この感じどっかで、フラッシュバックのように思い出されたのは、東条マート。五階から、要救助者と共に飛び降りた記憶。
337 :
3/3:2008/11/05(水) 22:49:25 ID:???
大吾が甘粕を呼ぶ。早くここから避難しなければ。甘粕は慌てて答える。いま、バンジャルと下山ルートを探しているから。
バンジャルも言う。大丈夫だ、あと三十分ぐらいは煙に囲まれない。
「チガウっ。煙がどうのこうのってハナシじゃない!」大吾が叫ぶ。
何を言っているんだ? 甘粕は思う。いま、こいつ、またバンジャルの言葉を通訳なしで……
慌てふためく大吾、迫り来る何かを確かに感じている。間に合わない。崖下の木々を確認して、
「甘粕、ゴメン。大丈夫だ! ケガしねーよ」返事を待たず、甘粕を崖の下に突き落とした。
ひゅうううう…… ボサァ…… 甘粕が消えた。「血迷ったか」大吾に怒鳴るバンジャル。大吾はそのバンジャルを掴み共に崖下へ飛び降りた。バンジャルが神を叫ぶ。それと同時に、崖が爆発し崩壊した。
崩落したの地面、三人に大きなケガはなさそうだった。それでも、顔は恐怖にゆがんでいた。現状の把握ができず、ただ起こった事実を繰り返すことしかできなかった。土砂崩れ……。
大吾が謝る。時間がなかったからと。その目には強さと光が輝き始める。何だコイツ……バンジャルは、
先ほどまでとは打って変わった大吾の姿を理解出来なかった。
山側。なぜ土砂崩れがわかったのですか、と男が落合に尋ねる。さあ、なんだか嫌な予感がしたの。落合は答えた。
皆が無事で、なんとか土砂崩れからは逃れられたようだ。そのとき、落合は帽子を見つけた。赤くGLOBEと書かれた帽子だった……
土砂崩れは火事とは因果関係ない訳か?
ああそうか、甘粕も流石に大吾の豹変ッぷりに慣れてきたから
新鮮なリアクションが欲しくてバンジャルが投入された訳か
340 :
マロン名無しさん:2008/11/08(土) 00:17:31 ID:RaNzdQCV
ああなるほど
第167報 戻れない道
この帽子どこかで…。どこにでもあるものよね……そう思いながらも落合は大吾が落とした帽子を拾った。
大吾たち三人。崩落、飛び降り、山道を行く疲労からバンジャルと甘粕の覇気がなくなるに反して、大吾は俄然
勢いをましていた。甘粕とバンジャルは思う。この地図が役に立たなくなってからか、奴が引っ張り始めたのは。
いや、イキイキとし始めたのは……。甘粕が大吾の帽子がないことに気付いた。大吾は呟く。
「ほんとだ…いいや……」五味から貰った大事な帽子、それよりも大吾は何かに集中し始めていた。
「いるぞ…この近くに」大吾はこの近くにワタ村の住人達がいると言う。甘粕はそれを否定した。
あの村はずっと煙で遮断されていた。シロートが煙を読んでこんなろことまでこれはずがないと。
「脱出してなきゃ全員死んでる。落合先生が何もしないで、ただ死ぬはずがない。そういうヒトだ!」
落合せん…。大吾が大声を上げようとしたとき、森林の上空をセスナが飛んだ。オーストラリアの消防。
スクランブルで消火しに来たのだとバンジャルが言う。まずい。甘粕と大吾がこれから起きる事態を想定し
「STOP」と叫ぶ。けれど、声は届くはずもなく、放水が降り注いだ。
蒸気が視界を覆っていく。ホットスポットに放水して蒸発したのだ。熱を伴って、逃げる人々を襲う。
何も見えない。落合は子供を逃がそうと突き飛ばす。反動で地面が崩れた。白煙渦巻く奈落のそこへ、
落合は消えていった。
一方、白煙の中から防火服に身を包んだ三人が現れる。バンジャルが要救助者へ着せようと持って来たものだ。
そして、大吾の視界の先に、助けるべき人々が現れる。報告のあった村人全員。バンジャルが歓喜の声を上げる。
それなのに、落合先生の姿はなかった。誰にも気付かれることなく、赤い帽子が落ちていた……
水蒸気熱いよ水蒸気
というか大吾、落合先生に関していってることが前と変わってないか
344 :
1/2:2008/11/12(水) 23:56:44 ID:???
第168報 神聖な順序
「落合先生――」大吾は声を上げてあたりを見回す。落ち着けという甘粕の言葉にも、「ほっといてくれ、
オマエラは先に行け」と落合を探した。落合先生。どこだ。どこにいる。そんな必死の大吾の耳に、
子供の泣き声が届いた。要救助者の声とバンジャル、甘粕の慌てる声も続いて聞こえる。要救助者と会えた。
それは救助できたという意味ではない。これから、火傷や怪我にあい疲れ果てた人々を連れて、
山を降りなければいけないのだ。落合先生……。自分の目的を何度も確認する大吾。それでも……、
大吾は子供を背負って、今、ここで助けを必要としている人と伴に下山することを決めた。
「身内は一番後回しだッ……!!」
345 :
2/2:2008/11/12(水) 23:57:44 ID:???
大吾たちが森の中を、煙の中を進む。大吾は背負う子供に話しかけていた。毎年の山火事、地元の人は諦めている、
そんなことは間違っている。インドネシアの災害なんて知ったこっちゃないと思っていた。落合先生さえ
助けらればそれでいいって。でもハラがたってきた。スマトラの人がこんな怖い目にあうのは山火事があるからだ。
こんなことに慣れちゃいけない。あきらめてる大人なんてアテにするな。どんな方法でもいいから、自分の大切なものは
自分で守るんだ。大吾はそう語った。子供には伝わるはずのない日本語で、そう話した。
子供はうなずき、大吾の服を力強く握り締めた。目は涙ではなく、意志の力で輝いていた。
麓の道までたどり着いた一行。バンジャルは救助隊に連絡する。甘粕は要救助者の様子を確認し、
落合先生の救出に協力できるぞと声を上げた。しかし、そこに大吾の姿はなかった。
煙と炎がうずめく森の中。男の足が、赤い帽子が落ちている地面を力強く踏みしめた。その男の手が帽子を拾い上げる。
落合は崖の下で仰向けになって、もう動けずにいた。目に映るものは、ゆっくりと近づいてくる火の手。
もう一歩も動けない。死ぬのかしら。いつだったか、ずっと前にもこんなことがあった。クワガタを取っていて、
古井戸の底へ落ちた。そのときは、朝比奈くんが助けてくれた。まるでスーパーマンみたいに。
でも、ここは、日本じゃない。ひとめ会いたかった。わたし…あなたのことね……。
煙の奥から火ではない赤いものが見えた。あれ、あの帽子、さっきわたしが拾った……。
大吾だった。ついに、大吾が落合を見つけた……
「落合先生――」
これはタイタニックみたいに危機で高まる恋に発展するのか?
吊り橋効果だっけ。
文字通りのピンチに駆けつけてくれるヒーローだから仕方ないか。
ここまで来て何もなかったら甘粕が可哀想すぎるしなw
え?甘粕と落合先生が恋に落ちるの?
帽子がいいね
第169報 包まれて・・・
名前を叫び大悟は駆けだした。炎に包まれた二人は、やっと出会えた喜びを確かめるように抱きしめあった。
「朝比奈くんなの? どうしてあなたがいるの? インドネシアなのよ、どうしてあなたが……」
落合が涙に顔をくしゃくしゃにして話した。
「何もかも放り投げてきちまった。先生が泣いていると思ったから、好きな女が泣いてたら、どこだろうと飛んでくるものだろ」
大悟はそんな告白をして落合を強く抱きしめた。その言葉を聞くと、張り詰めていた感覚が消えたのか、
額から血を流し、落合は気を失いそうになっていた。早くここから出なければ。大悟は辺りを見回す。
上は火の手が広がっている。崖の下は、煙で何も見えない谷底。どうすればいいのか。大悟は戸惑っていた。
「どうしてだろうなあ、先生…… おれたち、デートの約束したときはいつも…… “嵐の中”だよ」
自嘲気味に笑う大悟。その姿に、もう助からない? ごめんね。と落合が謝り、呟いた。
あなたはわたしのこと好きって言ってくれたけど、わたしはよくわからない… ただね、子供の頃から動じない
かわいくない子って言われて来たけど、あなたの前では泣いたり怒ったり、今もね心の中ですっと呼んでた。助けてって。
泣いて謝る落合に、大悟はまだあきらめるのは早いと言った。煙が少し晴れ、谷底だと思っていた、
クレバスに向こう岸が見えたのだった。ここを渡れば、と大悟。けれど、ここに落ちたら……こんなところは
渡れないと落合は言う。落合の言葉を聞かずに大悟は倒れた木を拾った。そしてその木と自身の体を使って
橋を作った。いつかの旅館でベンチを渡したときのように。
「こんな経験、おれには数え切れないほど、ある。みんな生き残ってきた。それからゴメンだなんていうな。
夢を叶えてここに来たんだろう。そんなら謝るな。」
スーパーマンみたい。大悟の体の上を通り、木を伝って渡ろうとする落合が思い出していた。面談のとき、
照れ笑いを浮かべて、言っていた大悟の夢。スーパーマンがきて……くれた……
大悟が顔を上げ、渡れたかと問うた。クレバスの向こう岸。落合は倒れていた……
確かに大吾はこんな経験ばっかりだよなw
これからもこんなのばっかりなんだろうな。
って、あるのか、”これから”が?
354 :
1/2:2008/11/19(水) 22:56:31 ID:???
第170報 窮地
千国市消防局本部。ニュースを見る来栖さん。驚いたな。五味の奴がたった一言“作戦がある”
と言っただけで、これほど早く出発準備が完了していしまうとは。これが“カリスマ性”というものか。
日本人と村民救出から二日、ニュースは緊急援助隊チームのスカルノハッタ空港到着を伝えている。
五味と神田、その他、日本の精鋭たちがスマトラへ降り立った。
スマトラ島。炎が燃える森の中、落合を背負った大悟が時折、力尽きそうに膝を折りながらも進んでいた。
落合先生が倒れて、丸二日。もう限界だ。ここから脱出しなければ。それでも炎は大悟たちを放さない。
「わたしを置いて逃げて…… 炎に囲まれる前に……! あなた一人ならまだ助かる」
あきらめの言葉を呟く落合。大悟はそれを拒むように落合の腕を引きながら立ち上がった。
「あんたワタ村の50人の命を助けた… 立派だよ。そのあんたが自分の命を簡単に諦めちまうのか? そんなのは許さないぞ」
だが落合はもう歩くことすらできず、倒れるばかりだった。炎が大悟たちに迫る。逃げて。そんな落合の言葉を
掻き消そうとでもするように大悟は叫びながらインパルスの水弾を炎の壁に向け放つ。
けれど、壁は消えることなく、炎に囲まれてしまった。斜面を下ればふもとというところまできたのに……。
大悟は何かを探すように森をかき分ける。落合は仰向けにひっくり返ったコガネムシを拾っていた。
この山火事でいったい何匹の動物が命を落とすのだろう… 大好きな昆虫たちに出会うためにここへ来た。それが、こんな……
355 :
2/2:2008/11/19(水) 22:57:16 ID:???
「くやしい… くやしいよ……」落合の呟きに大悟が振り返る。「ホットスポットの把握さえできていなかった
のでしょう。何日も逃げ歩いて、たくさんのホットスポットを見つけた。全部覚えてる。生きて帰って、
教えられたらこの山火事も…… 朝比奈くん、くやしい…… わたし…生きて帰りたい」
落合の目に強さが戻った。以前、大悟の頬をはったときのように、力強く言葉を出した。
「それでこそ、落合静香だ」大悟が言う。帰ろうぜ、そして山火事をやっつけよう。ふもとに向かって一気に駆け下りるぞ。
この炎の斜面を突っ切るんだ。と大悟は自身の案を伝えた。
どうやって、生身なのに。落合が大悟に訪ねると、大悟は以前やったことがあるのだと言った。ポンプ車で。
「ポンプ車って、そんなものどこに…」
「おれが何も考えずここまで逃げてきたと思うか?」
大悟が草をかき分けるとそこには、土に埋もれかかった車が役目を待ちたたずんでいた。
「行きに乗り捨ててきた4WD――… これがおれ達の“脱出ポッド”だ!!」
おお、車に乗って特攻するわけだな
なんとかなりそうだな。ヨカタ
インパルスの水まだ残ってたんだ
第171報 帰還への意志
車へと乗り込んだ大吾。しかしバッテリィがあがっているのかエンジンがかからない。この車だけが唯一の脱出手段なのに。
業を煮やした大吾は車を押すから乗ってと落合に言った。押して惰性が付いたら、後から乗り込むという算段だった。
同時刻、ランプン空港。スタンバイしているヘリコプターがロータを回している。その空港内、本部にて。
五味さん…豪州チームとの打ち合わせがと、係の者が五味に話すと、五味は立ち上がり言った。
「なにを悠長な… ねぼけんでください。飛んでみんことには、火災の状況は皆目わからん。これより、
第一回の調査飛行を実地する!」
その言葉に、神田ら精鋭たちが立ち上がり身を引き締め声を出した。五味は続ける。
「山中には依然消息不明の日本人女性一名――」そしておそらくは……いや、間違いなく… ボウズもそこに…!
炎燃ゆる山中。車を必死に押そうとする大吾に、燃え上がった木が倒れ込んだ。落合が叫ぶ。大吾は無事だった。しかし足から血が流れていた。
くそ、大丈夫だっ、この程度のケガ… 車を押すくらいなんとか… 「うおおお」と声を上げながら大吾が車を押す。
生きて帰る、絶対… 何があっても! 絶対生きて…めだか浜に帰る!!
車が動き出した。大吾は走り車を追う。あのドアに手が届けば… そこまでさえ足がもてば…
帰れる。
めだかヶ浜に…… 予備ガソリン!
下り始めた車のドアへ手を伸ばした大吾、その目に飛び込んできたものは、後部トランクへ置かれた予備ガソリンだった。
冗談じゃねえぞ、炎のトンネルにガソリン積んで… 火だるまだ! あのタンク、外へ出さなきゃ…
伸ばした手を引き、トランクを開けた。ポリタンクを車から引き出す。そして……
大吾の足は崩れ落ちた。帰る…… めだかヶ浜に…… 大吾は残され、落合だけを乗せた車が斜面を走る。
一部始終を見ていた落合は声を出すことしかできなかった。その悲鳴だけが炎の森で響いていた……
予備ガソリン…どこまでもついてない子
こりゃ流石に詰んだかな
もうクライマックスだろうし、死んでも構わないっちゃかまわないけど、さすがに無いだろう
第172報 放火
斜面を弾むようにして車が走る。叫び声。落合の目には倒れた大吾の姿がありありと映る。ブレーキ。
踏もうと足を出すが悪路に阻まれできなかった。止まるな。ふもとまで、逃げろ――。大吾の言葉に
押されるように、車は炎の壁の中へ消えていった。残されたものはガソリンのタンクとインパルス。
周りには炎が揺れている。大吾は逃げることもなく、あがくこともできず、炎に炙られていた。
インドネシアのヘリコプター上空を飛ぶ。甘粕とバンジャルが乗り込んでいた。
大吾はまだ倒れている。炎はゆっくりと近づいてくる。転がっているガソリンのタンクが見えた。
これに引火したら、黒コゲだ。熱が記憶を呼び覚ます。ジルを抱えて逃げようとしていた記憶。
消防官やって二年…いや……六歳のあの日から十四年…… もう逃げられない…… 今度こそ…
正面から向かい合わねばならない… オマエと!!
大吾は立ち上がり炎に対峙した。その様子をヘリの上から甘粕たちが見つける。三百六十度、炎に囲まれていた。
同時刻。山の麓では、落合の乗った車が消防に発見されていた。落合はうわごとで大吾の心配をする。
炎の燃える上空。ヘリは燃え上がる炎に阻まれ大吾に近づけずにいた。ものの数分で、大吾は飲み込まれてしまうだろう。
「ギブアップだ…… もう抵抗する気もね――……」武装解除。大吾がインパルスを分解し筒の部分を放る。
火事で死にかけたあの日から、オマエは敵… ずっとずっと憎んでいた……
「おれは一生、オマエから離れられない」大吾はガソリンタンクを抱え上げた。自殺をする気か、ヘリの中が慌ただしくなる。
「たまたま公務員試験に受かったから、火を消す側にまわっただけさ… 落ちてたら、そうだな… 火をつける側…
放火魔にでもなってたかもしれないぜ…」大吾は炎を、地面を、見る。
「ホントはずうっとやってみたかったんだ… 消防官が火をつけるってのもいいだろ……
もうオマエの邪魔なんかはしね―― コレで満足か!? 思うぞんぶんガンガン燃えろォ――」
ガソリンタンクを投げ込む。炎が大吾に伸びる。逃げるように大吾はインパルスの部品を抱え、防火服の襟に隠れた。
炎が空高く吹きあがった……
放火犯はあの補充で来たちっちゃいやつの方が向いてそうだ
十本刀の蝙也みたいに爆風に乗って空飛んで逃げるのかな
なんでずっとずっと憎んでいたが火を付ける側になっていたかも知れないんだ?
あれか、嫌い嫌いも好きのうちか
第173報 復讐戦 ――ザ・リターン・マッチ――
空高く飛ぶヘリにまで熱を伝える爆炎、大吾がどうなったのか、見ることすらできなかった。なぜ…なぜなんだ。
確かにあの炎の強さではヘリは近づくことができなかった。だからってなぜ、大吾は自ら死を選んだのだとバンジャルが叫ぶ。
だが甘粕は落ち着いていた。指示をしたらヘリを爆発の中心へ
向かわせて欲しいと言う。あの炎の渦のどこに近づけばいいのだと、大吾はヘリが近づけるチャンスを潰した
のだとバンジャルは叫ぶ。けれど、それは逆だと甘粕は言った。
「何があっても… 自分から命を捨てる奴じゃない。オレが一番よく知ってるッ!」
火の燃える森の上空を日本のヘリも飛んでいた。五味と神田も今の爆発を見ていた。
甘粕たちが乗るヘリ。その下で、何かに吸い込まれるように火の手が収束していった。何が起こったのか。
慌てるバンジャルに甘粕が説明する。急激に起こる爆発的な燃焼で、酸素が食い尽くされ… 一時的な酸欠状態になる。
酸素がないところで炎は燃え続けることはできない……。
「こういう消火方法もあるのさ…… 炎にガソリン放り込むバカヤローは、初めて見たがな……」
眼下には奇跡のように火の消えた山肌が広がる。歓喜の声。これでヘリが近づくことができる。
だがそれでも不安が消えることはない。あの熱に生身で耐えることができるはずがない。何よりも酸欠で
息ができないはずだ。その通りだ。それでも朝比奈なら、朝比奈が呼んでる… 朝比奈は生きている。
甘粕は理由のない確信を持っていた。
穴の中でチューブを口にくわえる男がいる。チューブの先にはボンベがあり、そこには空気ガスと書かれていた。
大吾だった。4WDが埋まっていた穴に隠れ、防火服で火の手を防ぎ、水の尽きたインパルスに唯一残された
ボンベから空気を取り、大吾は生きていた。
生き延びるぞ!!! おれは災害では死なない!! これからもおれは助けを求める人々を助け続ける。
それがおれのオマエへの復讐だ!! 死なない…… 生きて還る。大吾は立ち上がり火の消えた蒸気渦巻くこの場所で
ヘリを仰ぎ見る。「甘粕――」「朝比奈!」抱き合って生き残った喜びを叫ぶ大吾と甘粕。
山火事の中を駆け巡り、スマトラの被災者を全員救出して… 自分の命も決して諦めない…
ジュポンから来た… “ファイアファイター”!! バンジャルは涙を流し感謝の意を込め強く大吾たちを見つめていた……
水が尽きても空気は残ってるのか
はー…………すげ。
甘粕の信頼の深さが格好良いな
というかこのシリーズ甘粕色々おいしすぎ
爆発で火を消すってもの凄く熱いんじゃないか?
373 :
1/2:2008/12/03(水) 22:36:51 ID:???
第174報 戦果
「ご…五味さん。アレ…まさか…」ヘリに乗る神田が指さす先には、インドネシア消防のヘリから垂らされた
縄梯子に捕まる二人の男の姿があった。五味が呟く。「あの帽子… ボウズだ… 朝比奈大吾だよ」
神田はヘリの操縦士に向こうと連絡を取るように促す。どういうことなのだ。巨大な閃光、大爆発があったのか
と思って現場へ急行してみたら、爆発どころか、この一帯だけウソのように消火されている!
そこから朝比奈が引き上げられた。わからん!! 何が起こったのかさっぱり……。
インドネシア消防との連絡が付き、あれが大吾だと確認が取れる。これで、今回のスマトラ森林火災の
被災者全員が無事生還したこととなった。ヘリの中で喜びの声が盛大に上がった。
インドネシア消防のヘリ。甘粕に抱えられた大吾は精根尽き果てぐったりと外を見る。これからすぐランプンの病院に
直行するからな。だが、大吾は病院への直行を望まなかった。「あ…甘粕……頼まれてくれるか?」大吾が声を絞り出す。
「おれは…やっぱり……かんべんならねぇ。炎(コイツ)ら…… おれを…… 落合先生を……
スマトラのヒト達をヒドい目にあわせやがって… かんべんならねえ…」ブッ殺してやる炎ら……!!
大吾が紙とペンを要求した。今なら記憶と地形を照合できる。大吾はそう呟いた。
日本のヘリ。単独で被災者を全員救出してしまった。これじゃあ俺達、何の為にスマトラまで……。
国内でかなり精鋭だっただろう隊員達が弱い言葉を吐く。
「馬鹿野郎」神田がそんな彼らを怒鳴った。「俺達の任務は被災者の救出だけではない。インドネシアの森林火災に関し、
火災状況のモニタリング及びホット・スポットの分布状況を調査することにより消火の助言を行うことだッ!!
これより一旦、空港本部へ帰投しし、赤外線画像装置、熱電対測定器の準備をする」
ぬう…。力強く長い言葉を言い終えた神田に五味が一言ささやいた。
「神田君…… 落ち着きたまえ…」
「これが… 落ち着いていられますかッ!」言葉を吐き出して、神田は自身の状態に気付く。神田は五味に謝るのだった。
これから仕事があるのだからと……。
374 :
2/2:2008/12/03(水) 22:37:48 ID:???
しかし、これより数時間後、さらなる驚愕が日本の派遣隊の元へ届けられる。大吾からのFAXだった。
三日間歩き回って手に入れたホット・スポットの状況が精密に描かれていた。「いつでも出発できます」
ヘリに装備を詰め終えたという連絡も、大きな声に反して空しく聞こえるばかりだった。
病院。ベッドの中で大吾が目を覚ます。枕元で待っていた甘粕が落合先生がこの病院へと収容されていることと、
大吾の描いた地図を送ったことを告げた。だからゆっくり休んでいればいいと。
病室に太った看護婦さんがやってきた。落合からの大吾へ渡してほしいと頼まれたと言う。
渡された紙を広げ甘粕が言った。「さすがオマエの惚れた女だ…… 楽しみだよ会ってみるのが…」
届け物は地図だった。大吾の描いた場所とは違う、さらに奥のホット・スポット分布を描いた地図。
すぐにFAXしなくちゃなあ。甘粕は声を上げた。
甘粕からの追加FAXが届けられた日本派遣隊本部。皆が目を丸くして、地図を眺めていた。
二枚の地図を合わせるとモニタリング予定の半分が記されている。たった二人が……。
「失礼します」神田は込み上げる物を押し隠し、五味に挨拶をして部屋を出た。足取りは怒りを纏い、
足音を響かせる。完全に… 俺達は… 徒労ではないか… いい恥さらしだ…。
一方の部屋に残る五味はひとり笑っていた。これだからたまらねえ… あのボウズ… あのボウズはッ
しんじらんねーっ くっくっくっく。笑っていた……
(最高に恥さらしだ!!!)
なんか神田さんがかわいそうすぎる
下を歩いていながらよくそこまでマッピングできたな
大吾はともかく落合先生スゴス
377 :
マロン名無しさん:2008/12/06(土) 01:04:30 ID:87DnC4da
>>235 白石さんは中央Rの隊長だろ 中央Rは千国沖国際空港の回には出てないと思ったが
378 :
1/2:2008/12/06(土) 20:42:33 ID:???
第175報 成長の果て
日本・豪州・米国・マレーシアの援助隊の大規模消火作戦をニュースが伝えている。この消火作戦は、
日本のある消防士とこれまた日本人の被災女性が逃げながらもホット・スポットを記憶し作成した火点地図を元に行われている。
なお、地図を作成した奇跡の消防士はランプン病院に入院しているらしい。病院入り口には多くの報道陣が詰めかけていた。
病院の屋上。入り口で騒いでいる報道陣を大吾はまるで関係がないものとばかりに、ぼおーっと見つめている。
覇気のないその姿に、奇跡の消防士の面影はない。そこへ車いすに乗せられた落合が看護婦に連れられてやってきた。
「落合先生…」「朝比奈くん」互いに名前を呼び合う二人。太った看護婦は何も言わずに屋上を後にした。
二人きりの屋上。大吾はしゃがみ落合の膝上に身体を預ける。今日からおれもヘリに乗るよ。そう言葉を発した後で、大吾は小さく呟いた。
「おれ、疲れたよ」被災者の救出、自身が死にかけたこと、襲いかかってきた炎、必死になってできた地図も、
来年になったらもう使い物にならないかもしれない。何かやになっちまった…。
大吾の弱気。落合は自身の考えを聞いてくる? と大吾に訪ねる。そうして言った。
「これ……生きてたのよ…」手にはコガネムシの入った瓶を持っていた。
何を言っているんだこの人はと、大吾はずっこける。だが、落合はさらに続けた。種類としてはウスチャコガネの一種で珍しくはないらしい。
「でも…… いい? これからが重要なの……」
同時刻、病院内。甘粕は病院の中へ進入した記者らと格闘していた。
「てめーらマスコミだな!? ここはビョーインだぞ。忍び込みやがって…」甘粕の脇をくぐり走る記者。「待てコラ――」甘粕は戦っていた。
屋上。落合の話を聞いた大吾。的外れだったかしらと訪ねる落合に大吾は言った。
「おどろいたな… あんたすごい…」手には瓶。どうやらこのコガネムシが来年以降のスマトラ森林火災の
消火活動に多大な影響を与えるらしい。
379 :
2/2:2008/12/06(土) 20:43:21 ID:???
そこへ勢いよく甘粕が現れた。屋上のガラス戸が壊れんばかりの音を立てる。
「オマエもうケガはいいんだろ? さっさと空港指揮所へ行け!! マスコミが病院の中まで入ってきてるぞ」
甘粕の背後から続々と記者達が詰めかけた。大吾は落合にこがねむしを返すと自らの心の内を伝える。
「落合先生。おれ…… さっきみたいに…… たまに弱気になっちゃうけど、あんたがいれば…… おれは一生…… おれはあんたと…」
アマカスエルボー!! 「早く行けっちゅーに! このタコ」甘粕が大吾を無理矢理、屋上から追い出した。
ふう、と一息つく甘粕だが、記者達は落合のほうへ標的を代えた。逃避中に生活はどうだったか、記者が訪ねる。
そんなのつらいに決まってるだろ。今は思い出したくもないはずだ。と甘粕はまた記者を追い払おうとする。
そのとき落合が口を開いた。私、歩く練習のために屋上に来ているの。
「手伝ってもらえます?」
ところ変わってランプン空港。ロータをけたたましく回すヘリ。神田ら精鋭陣が居並ぶ場所へ、救援隊の制服に
身を包んだ大吾が現れた。大吾が見る、その先には五味の姿が。「五味さ……」大吾が言いかけたところで五味が呟く。
「とうとう… この俺が… おまえの指示で動くハメになっちまったなあ…」
その言葉に感激したのか大吾が顔を紅潮させる。その背を神田が叩いた。
「ハナシは日本に帰ってからだ。ふんっ。まずはスマトラの山火事、ブッつぶしに行くぞ。ついてこい」
「ハイッ」大吾はヘリへ走り乗り込んだ。
この二日後、スマトラ南部の森林火災はほぼ鎮火、そして―― “明日へとつながる”落合先生の“発見”が発表されることになる。
病院屋上。記者らに支えられて歩行練習をする落合を甘粕が見つめていた。これが……“天才”の惚れた女……
なんともはや…… 「あ、ごめんなさい… 右側の腰、支えてくれます――!?」
甘粕は消火活動に参加するそぶりを一切見せることなく、遠く離れた病院の屋上で落合たちを眺めていた……
コガネムシは金持ちだから売って儲けるのか?
最後まで言わせてやれよw
落合先生もすごい人だったってワケか
384 :
1/2:2008/12/10(水) 23:32:49 ID:???
第176報 帰途
山火事鎮火宣言より四日後――。空港にて、消火活動に尽力した日本チームに対する感謝の式典が執り行われていた。
インドネシアの偉い人が、記念の楯を持ち、五味へと近づく。だが、その視線は別の方……、大吾の方をちらちらと見ている。
それは集まった観客達も同様であった。彼がダイゴ・アサヒナ。そしてその隣がシロウ・アマカス。
毎年、乾季に発生する森林火災は火点の把握もできず、雨季を待つ以外、手の施しようのないものだった。
そこに、日本からやってきた二人の若者が光明をもたらした。特に朝比奈大吾。人命救助、ホット・スポットのモニタリング、
これはひとつの奇跡である。彼は一人でやりとげてしまった。報道陣が大吾を取り囲む。大吾は逃げるように後ずさった。
彼には“価値”がある。カメラマンが息を飲む。シャッターチャンスまで、あと少し。
総人員四十五名・ヘリコプター二機。世界最大級の輸送機アントノフ一機。ヘリテレビ送信装置、GPS。
赤外線画像装置一式…。総重量170トン、本来、今回の活動に投入されるはずだった全装備――
彼にはその価値がある。VALUE OF THE MAN(その男の価値)
いならぶ人員と装備の前に立つ大吾、シャッター音が盛大に鳴り響いた。
同刻、国立インドネシア大学。ここにも報道陣が集まっていた。吉田教授が落合の拾ったコガネムシについて論じる。
“適応”。たとえば高山に住む動植物などの特質的な進化形態を呼ぶ。そしてこのコガネムシもまたある適応をしているのではないかと言っていた。
ホット・スポットに住むコガネムシ。大量発生の地には二十四時間以内に火が出るという仮定を話す。
高温に適応した結果、泥炭層からの離散が遅い種となったコガネムシ、この虫の発生ポイントを調べれば、
出火前のホット・スポットを見つけられるかもしれない。吉田教授の言葉を聞き、会場から歓声があがった。
さらに、このコガネムシは新種らしい。会場には恥ずかしいからと来ていない落合は、吉田に名前を付けさせて貰えるならと、
自身の考えた案を伝えていた。
学名――“Phyllopertha diversa Daigo” ダイゴコガネと……。
385 :
2/2:2008/12/10(水) 23:35:53 ID:???
式典の終わった空港では、アントノフにヘリが積み込まれていた。面倒な式典がやっと終わったと大吾が一息ついていると、
バンジャルと救助した子供がやってきた。
甘粕とバンジャルが敬礼をかわす。大吾は言った。「バンジャル……さんだっけ……」名前もいまいち覚えていないようだった。
あ、そうだと大吾は、黒焦げに煤けたインパルスをバンジャルに渡す。日本に持って帰っても廃棄処分されるだけだから、
興味があるなら使って欲しい、スマトラの為に役立ててくれと大吾は話した。
そんな大吾はそわそわしている。長居は無用。そんな言葉を小さく呟く。きょろきょろ。
「ダイゴ! またインドネシアに来るか!?!」バンジャルの言葉。甘粕が訳して伝える。大吾が答えた。
「わりーなァ、もうこりごりだわ。あんたが日本に来てくれよ。そんじゃな!!」
恥ずかしかったのだろうか、大吾は駆け足でジャンボ機へと乗り込んでしまった。
飛行機が飛び立つ。子供がバンジャルに訪ねた。「もう来ないって言ったの?」
確かにそうだった。だが、言葉とは裏腹に、アイツは来てくれるだろうとバンジャルは思えた。
ジュポンから来たファイアファイター!!! 大吾はインドネシアを後にした、バンジャルにささやかな置き土産を残して。
「ええっ!? 4WDを全損させた奴を探してる?」
大吾が慌ただしく挙動不審に帰っていた理由がこれなのだろう。
バンジャルにレンタカー業者が詰め寄っていた、手に請求書を持って……
レンタカー業者(´・ω・) カワイソス
ダイゴコガネ……
いや、そう付けたい気持ちはわかるんだけど
なんかこううわあああ///ってのたうち回りたくなるw
消防局払えるかなあ4WD代w
389 :
1/2:2008/12/13(土) 20:57:36 ID:???
第177報 悲しき才能
ニューヨーク・マンハッタン。燦々と輝く摩天楼群、その足下では悲傷叫び声とレスキューのサイレンが止むことなく響いていた。
地下鉄7号線延長工事中の地盤崩落事故は既に発生から三十時間が経過している。けれど、NY消防もイーグルレスキュー1にも
どうにもならない現状だけがここにあった。先頭車両にはNY市長と二十名近くの要救助者がいる。だが、そこへ
たどりつく道がない。崩落にあった途中の車両は見るも無惨に潰れ、レール脇の道すらも埋まっている。
いっそダイナマイトでも使えたら、懸命に穴を掘り続ける隊員らはそんな悲観的な言葉を吐くほどに疲労していた。
要救助者の母親が子供の名前を叫ぶ。その声は届かない。そこへ消防車が到着した。車両には日本語。千国市消防局の文字があった。
報道が緊急援助隊の到着を告げる。彼らは、七年前に同様の崩落事故を建設途中の空港で経験した千国ハイパーレスキューだと。
甘粕と神田がNYに立つ。大吾の姿はない。二人の登場に現場は沸いた。しかし……。
「期待されすぎだ……」神田が呟く。あのときの空港の崩落事故に比べれば規模自体は小さい。
だがここはマンハッタン。ライフラインが幾重にも張り巡らされており、もし崩落が広がるようならばその被害は甚大だ。
それでも、行かねばならない。求められるのだから。期待の叫びの中を通って、二人は足を進めた。
イーグルの副隊長と神田が握手を交わす。そして状況を聞いた。地下鉄開業を一週間後に控えた祝賀行事、
先頭車両にはNy市長と子供達が乗っている。その中で起きた事故、レーダーによると二両目のみが大破したらしく、
人の乗っている先頭車両は無事なはずだということだった。天井から土塊が落ちた。削岩の反動が伝わったのだろう。
「掘るのをヤメろ」神田が叫び、隊員達は必要な人を残して外に出た。坑道から脱出した消防隊、その姿はさらなる悲壮感を親たちに伝えた。
無線が入った。「help me… I have a headache…」
まだ生きている。この中で……。まだ……。
390 :
2/2:2008/12/13(土) 20:58:25 ID:???
だがどうすればいいのかは浮かばない。陸軍だって来てくれるというのに、為す術はない。
神田は思った。あの時もそうだった。最新鋭の消防車両が見守ることしかできなかった。あのとき、進入したのは……。
甘粕は思った。一体どうする… もし… もしあいつなら…悪いクセだ… またオレは奴のことを…
「ダイゴ・アサヒナ…… ダイゴ・アサヒナは今どうしているんだ……?」イーグルの一人が言った。
七年前のスマトラの奇跡、北海道のトンネル火災、ワルシャワのビル倒壊事故、同年のグルジア地震…
どこかで大災害が起きるといつもあいつが現れて何とかしてくれた。彼は今どうしているんだっ!?
隊員が神田につかみかかった。
「いや…あいつは……」神田は言葉を濁す。「それにあの男だってどうにもならん。奴は神様じゃないんだぞ」
それに喩え神様だとしても、日本まで呼びに行く時間はない。そのとき、甘粕が呟いた。
「まったくの偶然だが… 今、奴はアメリカにいる」しかもヘリを飛ばせばすぐに連れて来ることができる位置らしい。
あいつが来たって何とかなるとは思えないが、周りを鼓舞する不思議な力がある。だから周りが動く。奇跡が起きる。
「オレがあいつを連れてくる」スマトラ火災から七年が経った。あれから世界中で災害が起こる度に、人々はおまえの名前を呼ぶ。
悲劇の中でこそキラめく。お前の価値に人々が気付くとき、それはすでに悲劇なのだ。悲しき天才。
朝比奈…… またお前を迎えに行くぞ!! 甘粕がヘリに乗り込んだ……
いきなり7年後かよ
いつのまにか大吾は信頼できるレスキュー隊員になっちまって
一気に時間飛んだなあ
いろんな所へ行くようになったんだな
>>391 信頼できるを通り越して神様扱い一歩手前まで来ちゃってるぞ
395 :
1/2:2008/12/17(水) 22:02:17 ID:???
第178報 理解 ――アンダースタンディング――
甘粕はヘリの中で、テレビを見つめる。DAIGO!! DAIGO!! 集まった人々は皆、大吾の名を呼んでいた。伝説のレスキュー隊員の名を。
ヘリが別荘に到着する。ヘリから降りた甘粕は、大吾の元へと歩を進めた。オレがこうしておまえの所へ来たのは、
要救助者のためだけではない。みんながお前に助けを求めるけれど、世界中でオレだけが知っている。いつだって……
本当に“救助”を求めていたのはおまえ自身だったということを。「朝比奈…」甘粕が背を向け座っている大吾に向かって呟いた。
大吾は……「萌ちゃん……」でろ――ん、でれれ〜 赤ん坊を抱いて一人楽しんでいた。「はやくパパってよんでくれ〜」
ぜったいヨメににはやらん、と堅く決心しながら。そして少しして「甘粕!」やっと気付いたようだった。
「何も言わずに来てくれ」「や…ヤダ」大吾は育児休暇中だった。それも無理矢理認めさせた。
なのに、もう二度も呼び出されていることに怒る大吾だった。
それでも、「頼む…みんなが“待ってる”」甘粕の再三の頼みに、赤ん坊を別荘つきのジェシカさんに預けヘリへと乗り込むのだった。
ヘリの中で甘粕が言った。「なんだかんだ言って、迎えに行くとホッとしたようなカオするよな…」
頼まれたから来てやったのにケンカ売ってるかと大吾はつばを飛ばす。だが、甘粕は続けた。
「子供が生まれて… 悲惨な現場から目を背けたままでいたい。それも本音だろう。でもお前、災害から見捨てられるのも怖いんじゃないのか?」
甘粕は忘れられないと話す。レスキュー研修の同期会の席で大吾の放った言葉。
『災害をゼロにしたい。しかし、地球上から災害がなくなれば自分は誰からも必要とされなくなるだろう』
396 :
2/2:2008/12/17(水) 22:03:05 ID:???
ヘリのテレビからは、依然として大吾を呼ぶ声が響いている。大吾は言った。
結構なことだ、災害がなくなるのなら。それに今は、カミさんと萌がいる。あの二人にとってだけはおれは必要なんだ。
昔とは違うぜ、と大吾は言った。けれど、テレビからは、その二人以外で大吾を必要とする者たちの声が響く。
「この人達は“朝比奈大吾”という才能を必要とし評価しながらも… 本心では、出来ることならその才能が
“発揮”される必要のない世の中を願っている」甘粕が呟く。「いつも求められ… 頼られながらも…
本当は“消滅”することを望まれている才能――…」大吾が静かに甘粕の言葉を聞く。
「いろいろなところへ行ったな。シンドかったろう、この七年間。ジレンマの連続だったろう」
大吾の脳裏には災害の現場で見た救助を待っていた人々が浮かぶ。
「才能の輝くとき…… 本来は誰からも祝福してもらえる瞬間のはずなのに、おまえの輝く時は
必ず人々の悲劇だ」耳に届く者はテレビからのコール。災害が起きたときだけ求められる助けを待つ声。
「おまえの才能の発露に…… 祝福は、ない」
大吾はヘリから夜景を眺める、窓には五味が写り、そして呟いた。
『一生こんなもんさ、おれたちは』
大吾は涙を流す、甘粕は友の肩に腕をかけ話す。
「それでもおまえはレスキューをやるべきだ。死ぬまでとは言わない。それを言いにオレは来た」
ヘリが現場上空からゆっくりと舞い降りる。人々は待ち望んだ声を放つ。イーグル1の隊員達が敬礼をし、
大吾が現場の土を踏みしめた……
子供がいるということは落合先生とせっくるしたのか〜〜!!!!
女の子かあ。
そりゃあメロメロだわなw
大吾も親父か。
それでもやっぱり行くんだな。
>世界中でオレだけが知っている。
落合先生にケンカを売っていると解釈してよろしいか。
400 :
1/2:2008/12/20(土) 21:58:50 ID:???
第179報 可能性
大吾が消防服に身を包む。現場は地鳴りのような期待感に包まれていた。レポーターが秘策を期待する。今まで
も幾度となく奇跡を起こしてきたのだからと。その声に、神田は苛ついた。秘策などそんな虫のいい物があるわけない。
「お前が来ただけで現場に生気が戻ってきた。これで十分だ」神田が大吾に言った。
大吾は無言で辺りを伺う。繰り返し大吾の名を叫ぶ聴衆。子供を助けてと涙を流す母。カメラマンが固唾を飲んでいた。
大吾は思う。不謹慎極まりないことだが、この雰囲気はどうだ?
“大観衆”に最高の“舞台”。そこへ天空より舞い降りた主人公。まるでオペラだ。大吾が地下の現場へと足を進めた。
崩落現場。状況の説明を受ける大吾は、絶望的な答えを聞いた。進んでは戻るの繰り返し。先頭車両まで十二時間、そのとき何人生きているのかと。
「甘粕、アックス… 破壊用斧をかしてくれ」大吾が呟いた。そしておもむろに、壁に向かって振り下ろした。
斧が伝える振動によって天井から土塊が落ちる。人の話を聞いていないのか。イーグル1の隊員たちがヤメろと怒鳴る。
だが、大吾は手を止めない。今までの場所は足場が造りやすいが、応力が集中していて崩れやすいという。
「ここの応力は1/3以下だ。崩れないよ」大吾は斧を振り下ろした。秘策でも機転でもない、
カミカゼ特効アタック。アメリカの隊員らはすぐにでも作業を止めさせようと叫ぶ。
けれど、甘粕は一度、ため息を吐いただけで、道具を揃えろと言い、大吾を手伝い始めた。
「クレイジ――!!」現地のレスキューが空しく叫んだ。
作業は続いている。大吾と甘粕は少しずつ穴を掘り進めていた。崩落すれば命がないほどまで。
大吾が甘粕に、いいのか? と尋ねた。さっき、ああは言ったがあれは嘘だと。崩れても要救助者が潰れないだけ、
おれ達はぺちゃんこだと大吾は話す。だが、甘粕は引かない。12時間も待っていたら、助かるものも助からない。
おまえが崩れないというのなら崩れないさ、と削岩機を動かし続けた。二人のエース。外から二人を見る
イーグル1の副隊長は、命を賭して作業を続ける二人を見て、敬意と恐れを感じていた。顔を青ざめさせながら。
大吾が掘り進む。上から落ちそうになった岩くれを片手で支える。大吾は先ほどのヘリの中、甘粕と話したことを思い出していた。
401 :
2/2:2008/12/20(土) 21:59:36 ID:???
“夢”を実現する人間は何が違う? たとえばワールドカップの得点王。彼らはいつの時点で、
そうなれると思ったのか……。ずっと気になっていたと甘粕は言う。
でも、それは違うのかもしれない。さらに甘粕は続けた。あるときに“なれる”と気付くのではなく、
“なれないかも”と考えたことのない奴が、得点王なんかになるんじゃないだろうか。
人は成長して現実を知る。“現実は理想通りにはいかない”、“夢を叶えるのは難しい”、“そうはなれないかも”
そんなことを考えた人間から、“そうなれなく”なっていくのだと甘粕は言う。
「オマエ、『きっと何とかなる』って思ってるだろ?」甘粕の言葉に大吾は頷く。
それが一番の才能なんだ。“信じている”うちは、どんなことだって“可能性”は残されている。
大吾が光り射す穴に手を入れ土を崩す。先頭車両が見えた。全員無事で。
大吾達は重傷な子供達を外へ出そうとした。そんな大吾を引き留めるグリストNY市長。私を誰だと思っている。
私を先に出させろ。出口が崩れたらどうする。左腕が折れているかもしれないんだぞ。
身勝手な言葉を飛ばす市長。大吾は言い返した。市長なんてどうでもいいけど、そんなに言うなら、
「この子達の中には、将来、大統領になる奴がいるかもしれないぞ?」
甘粕が陰で吹き出した。
「ホームラン王だって、スピルバーグだっているかもしれない」自分がそうなれるって信じていれば。
そして最後に呟いた。「ちゃんとあんたも助けてあげるからさ」
大吾は甘粕の言葉を思い出す。死ぬまで続けろとは言わない。――でも、自分を信じる力が消えない限り、
朝比奈、おまえはレスキューを続けられる。甘粕の言葉に、大吾は胸の内で答えを返した……
「ああ、続けるさ!!」
最早大吾の突き抜けぶりにぷりに適応しきってる甘粕と違って
常識を保ってそうな神田さんは苦労してるんだろうなあ…
> 大吾は思う。不謹慎極まりないことだが、この雰囲気はどうだ?
> “大観衆”に最高の“舞台”。そこへ天空より舞い降りた主人公。まるでオペラだ。
ん、これ外の人の感想だと思った俺
うん、観衆のおっさんのモノローグだよねあれは。
え、あれは大吾じゃないの?
自分がオペラの主人公になったみたいって話で。
描き方的に大吾には見えなかったな、
あんな気取った表現する奴でもないだろうし
大吾でしょ、言葉の調子が大吾っぽいよ
どうだ?、とか、歌劇だ!! とかの断定的な部分なんか特に
前の話で、甘粕が言った、大吾の才能が輝くときは悲劇だ
というのにつながって、大吾が悲劇の舞台に舞い降りたって感じたんだと思うが
「この雰囲気はどうだ?」のあたりは大吾っぽくないがでも流れ的に大吾だと思う。
409 :
1/3:2008/12/24(水) 22:34:15 ID:???
第180報 め組消滅!?!
信じられない。子供を抱えて地上へと出てきたイーグル1の隊員達。彼らは、喜びではなく唖然とした表情を浮かべていた。
地上は歓喜の声に包まれていた。報道が色めき立ってレポートする。死者はゼロ。このような規模の崩落事故では奇跡的な数字だと。
止むことのない歓声に沸くマンハッタン。疲れ果てた大吾は、まるで人ごとのように人々を眺める。
甘粕が大吾の肩に手をかけた。「ブッとんでやがるぜ、おまえ。まさか真正面から穴掘っちまうとはな…」
甘粕は今頃になって唇を振るわせていた。緊張がとけ、恐怖がやっと届いたのだ。そしてへたり込んだ甘粕は言った。
「もう二度とゴメンだ。完全に生き埋めになるのをカクゴしてたぜ…」
「おれもだ。さすがにちょっとちびったよ」大吾も座りこんで笑った。
「戻って来ないか、オレたちのハイパーレスキューに」甘粕の言葉に大吾は少し何かを考えていた。
そこへイーグル1の隊員たちが現れた。彼らは礼を言い、その後で提案した。ハイパーレスキューを抜けるのならば、
「オレ達のところへ来ないか、マンハッタンイーグル1へ」と。この騒がしいまでに喜びに満ちた歓声、止める
のなんてもったいがない。ここで一緒にやろう。彼らはそう言って大吾を誘った。
甘粕はふいの言葉に驚き、大吾の方を慌てて見る。朝比奈……。大吾は、黙ったままで何かを決めたように目をつむる。
「あなた!!」
「静香! 萌ちゃん」
突然の来訪。元落合、現在は昆虫博士であり大吾の妻でもある朝比奈静香が赤ん坊である萌を抱いて現場に現れた。
410 :
2/3:2008/12/24(水) 22:35:08 ID:???
「もえちゃんんんん〜〜〜〜〜」大吾が赤ん坊と静香の方へ飛びかかるようにして抱きついていった。
大吾は迷いも決心も見事に吹き消し飛んだようだった。あさっての方向へ……。
そして少し落ち着いて、奥さんの背に手を回しながら大吾が言った。
「今回はたまたまカミさんの出張にくっついてNYで休暇をすごしてたけど、静香の職場は日本の大学なんだ」
大吾は明るい目していた。心を決めた目。赤ん坊は両親に抱えられ幸せそうにすやすやと眠っている。
「日本を離れるわけにはいかない。おれは…千国ハイパーレスキューに復帰するよ」
朝比奈!! と甘粕歓喜。イーグルの隊員は、それでは仕方がないと、子供と嫁さんの大切にと言った。
歓声はいまだ止まない。大吾は喜びを分かち合う人々を静かに見ていた。きっと、おれはレスキューを続けられる!!
“祝福はない”か… 甘粕、おまえはおれに同情してくれるけれど… この光景を見ろよ… おまえが言うほど、
悪くはないんじゃないか? おれのハラは決まったよ。本当に災害がなくなるのならおれは“消滅”したっていい。
自分が“用無し”になるために頑張るのも面白いじゃんか。“祝福”はちゃんとある……!!
消防トラックの陰で、大吾と静香はそっと口付けを交わした。歓声はずっと続いている……。
411 :
3/3:2008/12/24(水) 22:35:55 ID:???
日本。千国市消防局本部のある一室。黒いハイヒールをはいたすらっとしたおみ足を机に載せ、煙草を吹かしながら
防災フォーラム Vol.7 飲料水兼用耐震性貯水槽の設置という本を読む忍足ミキ“消防司令長”の姿があった。
その外、休憩所では、暇そうな男達が忍足のうわさ話を楽しんでいた。彼女が推進したプロジェクトによって、
人口増加に反比例して、災害が減少。女性初の千国市消防局長誕生とまで言われ始めている。まさに女帝。
とても楽しいのだろうマザーコンピューターの噂はそうは止まらない。止めたのは女帝忍足だった。
「人のうわさ話もいいけれど、身体があいてるなら外へ出てみない? きみ達」
めだかヶ浜の方へに視察に行くという忍足。誰かついてくる? と誘ったが、
男どもはめっそうもございませんとでも言うように顔を青ざめさせ首を振った。
「期待してないわよ! フン」忍足は一人、夜の街へと車を出した。
めだかヶ浜…。思い入れが無くもないと車から降りる。
「ああ…本当に、キレイさっぱり無くなってしまったのね…」目の前には平地が広がっていた。
「めだかヶ浜出張所、通称め組」
もうあの出張所はどこにもない。建物はキレイに取り払われ、奥の方に立つ見張りの鉄塔だけが、ここに出張所があったのだと、言っているようだった。
遠くの方で同じくこの平地を眺める老人を忍足は見つける。あれ…… あの人…… もしかして…て…?
話しかけるには遠く、老人はすぐに立ち去ってしまった……
大吾きめえw
変態親父になりそう
次週、感動の最終回!!
あなた 静香 かぁ…うーん
とうとう最終回か。
まあ七年後とかやりだしたときからそんな予感はしてたんだが。
416 :
0/7:2008/12/27(土) 20:55:26 ID:???
来週水曜日の0:00過ぎた辺りでコミックス発売、
楽屋裏とします。それまでは連載中です。では、最終話をどうぞ。
417 :
0/7:2008/12/27(土) 20:56:14 ID:???
アメリカから帰ると、ジルが老衰で死んでいた。庭に造られたお墓には花が供えられている。
静香は赤子を抱きながら、ジルの墓の前で手を合わせる大吾を見つめていた。
人間でいえば100歳を超えていたろう。大往生だ。だから涙は出なかった。…だけど、
最後の瞬間そばにいてやれなかったのはやっぱり残念だった。ジルとは子供の頃からずっと一緒だったから…
ジル。おれに言い残すことはなかったか…?
最終報 そして、再び…
「上島サン!!」
ハスキーで鋭い声が千国市消防局本部に響いた。突然、名前を呼ばれた上島は、驚き机を揺らしながら立ち上がる。
「ハッ…ハイッ!!!」少しつまった返事。額から流れる脂汗が、上島の緊張を物語っていた。
「何? このレポート。先週の小田原防災フォーラム、他の会合で、私はどうしても出席できないので、
あなたに代理を頼んだのよ? 肝心の耐震性貯水槽のスペックが記載もれしてるじゃない。来年度から
ウチでも導入するかもしれないものなのよ。至急、メーカーに確認して!」
一方的に言葉を放つ女は忍足ミキ、その人である。椅子に乗せた身体を捻って上島の方を向いてはいるが、
右手はキーボードから離していない。すぐにでも作業に戻るための癖なのかもしれない。
「は、はいっ」上島が反射的に返事をした。蛇に睨まれた蛙。忍足の眼鏡の奥の眼光は、それほど鋭かった。
だが返事を聞くやいなや、忍足はすぐにどこかと電話を始める。きっと忙しいのだろう、いつでも、どこでも。
「いや――…ずっとまえから、市局の実質的な牽引役は彼女だったけどさ… 市局長補佐になって、
名目上でも忍足女史が市局のリーダーになっちまった」
「おっかねえだけじゃなく、実際50人分位の仕事をやっちまう女だから誰もたてつけねーよな」
「うう…情けね…… まさにそのとーり…」
青ざめたような表情で、男どもが忍足の噂を話す。なんとも情けない。その一言がよく似合う男たちだった。
418 :
2/7:2008/12/27(土) 20:57:02 ID:???
その男たちの間を縫って力強く忍足の元へ進むものがいた。ミニスカートから伸びた力強い足を交互に前へ出す。
手には書類らしきものを持っていた。
「いや、一人だけいたな」
「ああ! あの元気娘…!!」
「忍足さん!」
制服に身を包んだ女が忍足を呼ぶ。近藤だった。制服に身を包み、少々の化粧、目が力強く輝いていた。
「警防部の近藤純です。先日、忍足さんが作成された、来年度の新しい水利配置計画、わたしなりに市局のデータバンクを検索してみたんです」
「またあなた…」忍足が、くわえ煙草を口で遊び、少し気怠そうに近藤を見た。
近藤は、そんな忍足を気にせず、こぶしを握り、持論を力説する。
「それで3か所ほど気になった箇所を補整してみました! ぜひ見てくださいッ!! わたしは生まれた時から、
この街に住んでいるんです! 千国市の災害を無くしたい気持ちだけは、忍足さんに負けませんッ!!!」
額から汗を飛ばすかのような、力強い言葉。最後に一言、
「わたしは使えますよッ!!」
近藤の目は燦々と輝いている。
忍足は近藤のあまりの熱気に観念したのか「あ〜うるせー」と耳をほじりながらぼやきつつ立ち上がった。
「来なさい!! 市内巡回よ。車の中で意見をきくわ!」そういって忍足が部屋を出る。その目は少し意味ありげに近藤を見つめている。
逃がさないから! このオバンっ!! くわっと意志を固めて、近藤は後に続いた。
残された男たちがまた、仕事中の井戸端会議を始める。
「しかし、あれで忍足女史、けっこう近藤のこと気にいってんじゃないのか?」
「ああ、何だかんだいってよく連れて歩いてるもんな。もしかして、二代目“マザーコンピュータ”!?」
近藤は、伝統ある偉大な二つ名を襲名したようだった。
「本当になくなっちゃったんですね…… め組…」
めだかヶ浜出張所跡地。吹きすさぶ風が何もない更地を通り、二人のコート揺らしていた。
「わたし… 学生時代から、め組には出入りしてたから……」
「そういえば近藤さん、あなたあの朝比奈大吾と同じ高校の出身だそうね」
忍足が眼鏡を外しつつ言う。その言葉に、近藤はしばらく沈黙して、「ええ…」と答えた。頬を赤く染めながら。
419 :
3/7:2008/12/27(土) 20:57:55 ID:???
「で、でも、め組がなくなったのも仕方がないことですよねっ。火事が激減してこの地区には出張所が
必要なくなったんだから!!」無理しているように、明るく振る舞う近藤。
その様子に少々の違和感を感じながら、忍足は吐き捨てるように言った。
「“め”でたい、“め”組らしいわっ!!!」
もう消えてしまった出張所、目の前にはむき出しの地面が広がっている。め組は、本当に消えてしまったのだ。
「皮肉なものね……考えてみれば、私達自身、自分達が“必要となくなる”世の中を目指して働いている」
忍足が呟く。非情な現実がそこにある。ただ、言葉はそれで終わらなかった。
「…でもね、め組がなくなった理由はそれだけじゃないわ。老朽化した現本部に変わって、ここに新しい千国市消防局本部が建つのよ!!!」
「ええっ!?! そうなんですか!?!」近藤が驚き、高い声を出した。
「これからは、千国市消防局そのものが、“め”でたい、“め”組ね」
忍足の言葉に近藤は感動した。“め”ったに火がでない、“め”でたい“め”組と。
「そうかっ!! それであのうわさが……」
「新しい千国市消防局長のこと?」忍足の呟き。
「ええ!!! あの人が新消防局長に就任するらしいって…… 本当なんですか!?!」
「そうらしいわよ」
忍足は静かに肯定した。
「残念ですねぇ、忍足さん。消防局長の座、遠のくんじゃないのォ?」
近藤が口元を曲げ、ヒヒヒと嫌らしく笑いながら忍足を見た。忍足は微笑んでいた。
「そうね、でもあの人なら……」
このヒトが……こんな顔するんだ……。近藤は思う。
忍足が言った。
「あの人なら補佐しがいがある。当分、私の出番はいらないわ!!!」
あの人が来る……。あの人が千国市消防局のリーダーに!!!
千国市消防局新局長就任式会場。ホールにはずらりと椅子が並べられ、集まり始めた人が各所で雑談を交わしていた。
「お〜〜ジュンちゃん。ジュンちゃんやないけ〜〜!!」
平が近藤を見つけ声を出し近づいた。
「平サン。植木さん、め組のみなさん」
平の後ろには、植木、大野、猪俣、元め組の者が集まっている。皆、七年前とは少しずつ姿を変え、老けているようにも思える。
「元気しとったか〜〜」
「平サンこそ〜〜」
420 :
4/7:2008/12/27(土) 20:58:45 ID:???
近藤達は再会の喜びを分かち合って、明るく声を出す。そこで、
「おーい、ボン。こっちやこっち。ジュンちゃんおったで〜〜」平が手招きして大吾を呼んだ。
「“ボン”はいーかげんよしてくれよ〜〜 平さん。おれだっていいとしなんだから」
「なーにゆうとるんや。ボンはいつまでたってもボンやっ! エラそーに」
平は口うるさく大吾に先輩風を吹かし続けていた。
「近藤……」ひさしぶり、と近藤の前に立った大吾は、照れくさそうに頭を掻いた。
しばしの沈黙、近藤は懐かしむように大吾を見た後で、いきなり大吾の胸を元気よく叩いた。
「朝比奈せんぱい、萌ちゃん元気〜〜!?! きっとすごい美人になるよぉ!! 落合先生のこどもだもん!!!」
「だろだろ!?! そう思うだろ!?!」
とろとろ、とみっともなく顔を歪ませる大吾。その後ろでは、平と植木が「タコ」、「もえちゃんのこととなるとな〜」と呆れている。
「でも、ぜったいヨメにはやらんの!!! 決心してんだー」なおも続ける大吾。場はわーわーと笑顔に溢れる。
植木がふと近藤の方を見ると、誰にも気付かれないように目元の涙を拭いていたのだけれど。
『それでは、新消防局長から所信表明のお話を――』
アナウンスが会場に響いた。大勢の千国市職員が一斉に拍手し新局長を迎える。
「それにしても、あのおっさんが消防局長とはの〜〜 大丈夫かいな」平が鼻くそをほじりながら壇上を見て言った。
大吾と甘粕も、繰り返し拍手をしながら、壇上を望んだ。マイクの小さなハウリング。壇上の男が言葉を発した。
「この度、新消防局長を拝命しました―― 五味俊介です」着帽のまましつれい…と五味は小さく言葉を付け加える。
五味さん……。大吾は何とも言えぬ気持ちで五味を見ていた。
ゴホン。…………五味の咳払い。少し開いた間に皆が「なんだろう?」と視線を五味の方へと向けた。そして五味は話し出す。
「エ――、私は競馬がスキです。たい焼きとか甘いものがスキです。えーと、それから―― ミナサンの好きなものはなんですか?」
「な…なんやのそれ…」平のツッコミ。植木や猪俣、近藤も顔を蒼白とさせる。神田までもが「おいおい」と呟くほどで、
忍足、甘粕、会場の多くの者が驚いていた。
「ごみさん…」大吾も驚きつい言葉を発っした。
五味は続ける。
421 :
5/7:2008/12/27(土) 20:59:32 ID:???
「“災害”にエネルギーをすいとられる人生なんてまっぴらごめんだ。住むひとが好きなことにエネルギーの
全てをかたむけられる。そんな街にしよう。“めでたい”街に!! 俺も頑張る」
皆の顔に鋭気が戻り、憧れと畏怖の念が場を一旦沈める。そして、
「力を貸してくれ!!! 以上!」
五味の言葉が終わると、会場中が拍手と歓声の渦に包まれた。
名演説だっ。神田感涙。
忍足は「やれやれ」と内心ひやひやしていた。
「私は彼の若いころから目をかけていたんだっ。彼はやる男だと思ってたよォ、私は―― はっはっは」と来栖さん。
陽光新聞の丘野は耳をほじりながら「はいはい」と来栖に返事をしていた。
鳴り止まない拍手、五味は帽子を押さえ皆を見ていた……。
ダイゴ…… ダイゴ。目を覚ましておくれ。
大吾を呼ぶ声。目を開けると、ジルがたたずんでいた。心地いい、もやのようなものが辺りを包んでいる。
大吾はジルの元に駆け寄り、両手を広げて抱こうとした。大吾は心底喜んでいた。
「ジル!!! ジルぅ、おまえ死んだんじゃなかったのか!?! 生きてたのかァ――」
違うよ、お別れを言いに来たんだ。おまえさんはアメリカでレスキューをしていたから――
「ジル……」抱きかかえようとした手は、何故かジルを掴もうとしなかった。
それにしてもダイゴ、ずい分と大きくなったものだなあ。今や世界のヒーローじゃないか。
思えばとても名誉なことだよ。
“伝説のレスキュー隊員”の最初の要救助者は、このわたしなんだからね。
大吾の脳裏に少年の頃の記憶が浮かぶ。ジルを抱いて炎から逃げようとして、泣いていた記憶。
422 :
6/7:2008/12/27(土) 21:00:21 ID:???
子犬のころ、おまえさんにひろわれてわたしはとても幸運だった。
おかげでなかなか素敵なものを見せてもらったよ。
一人の少年が天の啓示にもにた自らの進むべき道を知り、
才能を開花させ、
世界の救世主にまで登りつめていく姿。
“人”がみるみる…… 途方もなく大きくなっていくその姿。
こんなに間近で、
こんなに尊いものを見ることが出来た犬は、世界中できっとわたしだけだ。
「なにいってんだよ……」
おい……。言葉にならない呟き。目に涙が滲む。
「ジル……行かないで!!! ずっと一緒だったじゃないか!!! 一人にしないでくれ!!!」
何を言っているんだ。
おまえさんにはもう、おまえさんの家族がいるじゃないか。
わたしを愛してくれたように、彼女達を愛してあげなさい。
「ジルぅ!!!」
伸ばした手は届かない。ジルはすぐそこにいるのに。
それじゃあな、ダイゴ。
ありがとう。
きみといられて幸せな生涯だったよ。
ありがとう。
ジルは光の中へ消えていった。
423 :
7/7:2008/12/27(土) 21:01:09 ID:???
「ジル…」
目を覚ました大吾はだらしなく涙を溢れさせていた。オレンジ色のツナギ。机に足を載せ、その隣には赤い帽子が置いてある。
待機所には、出場の報がけたたましく鳴り響いていた。
「朝比奈寝てんじゃねえ!!! 出場だぞ――ッ」と甘粕が叫ぶ。
え……。現状を理解できない大吾は涙を垂らしたまま、急いで出場準備をする甘粕見た。
「モタモタしてると、おいてくぞ!!」神田も大吾を怒鳴った。甘粕は外へと駆けだしている。
やっとのことで、大吾は勢いよく立ち上がった。涙を拭い、帽子に手を伸ばす。
心臓の拍動が一つ。大吾は前を強く見つめ、しっかりと帽子を被った。赤い帽子にはGLOBEの文字。
「よォ――――し!!!」
街を走る消防車がサイレンを響かせ街を進む。大吾たちは、現場へと急いだ。
EXCITING FIREFIGHTER COMIC
――め組の大吾 火事場のバカヤロー 完――
なんか五味さんに全部もってかれちゃった感じだなw
乙!
ジル…(´;ω;`)ブワッ
文句のつけようのない最終回だった・・・
ジルが、ジルがかっこよすぎる……
大吾はまだ現場に出続けるんだなあ。
いずれ体力的にも無理になりそうだが。
五味さんもあの年齢まで出たんだ、鍛えればかなりいけるさ
色んなことがあったこの3年10か月でしたが、
この作品を描けて本当に良かったと思う。
『ダイゴよ、まったくお前ほど手のかかる主人公はいなかったぜ。
だけどさ、お前はおれをずっと鍛えてくれてたんだな。
“もっともっと苦しめ!”“そしてスゲーモノ描け!!”って
おかげでずい分マシな漫画家になれたよ。
本当にありがとう。お前と会えてとても幸せだったよ!!!』
読者の皆さん、今までご声援ありがとうございました。
絶対またお会いしましょう!!!
1999.6.30. 曽田正人
以上でお終いです。
以下楽屋裏。適当に人がいなくなったところで放置して、
無理に保守せずスレを終わらせましょう。
お疲れさまでしたー。
乙です〜
大吾は初っぱなからスーパーマンだよな
乙でした。
連載当時の記憶とあらすじで参加してたから
たまにいらんこと言ってて申し訳ない。
この人の話は絵が必要だね。
久しぶりに読みたくなった。
このあと昴、capetaに繋がってくんだよな
なんていうか天才型の人間描かせると上手い
保守
436 :
マロン名無しさん:2009/01/06(火) 22:42:19 ID:nHO06cMY
大吾がくっついたのは落合センセ。
連載の始めっから登場しているので、当然といえば当然だ。
年齢的には近藤もありかなとは思ったんだけど。
年上のオトナの女というのは、少年マンガ的には正道だったのかな。
ま、最後まで引っ張られて、読ましてもらった。
437 :
マロン名無しさん:2009/01/06(火) 23:20:32 ID:eDHGOnAI
だよね
誰かシャカリキ連載中をやってくれないかなと……
昴でもいいけど
シャカリキはチャンピョンだから更に人が減りそうな予感
シャカリキは、自転車板では今でも大人気なんだぜ
曽田先生の作品は何処でもそうだよな。
この人は大吾の続編物描いたりしないだろうな