ミッキーアンチスレ 2

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580全5レス
第二十七話 願い

フロリダ

ハンギョドン「き、緊張するでごわす……」
鬼帝「とりあえず、あの子は今もお前が見えるのだろうか?
    もし見えないのならば空間を切り替えないとならんぞ。
    他の人間の目につかないようにせねばならんな」
ハンギョドン「そんでごわすな。……人間界は久しぶりになるばい」
鬼帝「来た」
まだ誰にも見えないのになんとなくノリで隠れている二人。
鬼帝「親と一緒か……私がおびきだそう」
ハンギョドン「い、いんやぁ! 鬼帝様にそげなことまでしてもらっちゃ恐れ多い」
鬼帝「なに、気にするな。部下の面倒を見るのは上司として当然のことだ」
ハンギョドン「鬼帝様……」
鬼帝「遠慮するな。私とお前の仲だろう? 行くぞ」
そう言うと鬼帝は人差し指を突き出し、少女のかぶっていた帽子を念力で飛ばす。
少女「あ!」
風に乗って視界の外に出ようとする帽子。
少女「取ってくる!」
母親を先に行かせ、少女は帽子を追い掛けた。
しなやかな体で走りに走り、少女はとうとう帽子を捕まえる。
そこはいつかの浜辺だった。辺りに人はいない。
581全5レス:2008/05/11(日) 20:26:29 ID:???
鬼帝「空間を閉じた。もはや誰にも邪魔は出来ん。安心して行け、ハンギョドン」
ハンギョドン「鬼帝様……感謝するでごわす」
鬼帝に向かって礼をし、ハンギョドンは少女に近付いた。
案の定、彼女はもうハンギョドンの姿が見えなくなっていた。
空間を切り替え、幽霊のようにスーッと人間界に現れていくハンギョドン。
ハンギョドン「……。ご、ご機嫌ようでごわす」
少女「あ、この間のおじさん!」
幼い彼女はハンギョドンのことを覚えていた。
少女「この間はありがとう、おじさん。まだ着ぐるみ着てるの?」
ハンギョドン「これを……」
その問いには答えず、ハンギョドンはブレスレットを差し出す。
少女「あ、それ! おじさんが持っててくれたんだ。
    なくしたと思って諦めてたの。一番気に入ってたやつなんだ。
    本当に本当にありがとう!」
ハンギョドン「…………」
笑顔の少女を見下ろし満足そうなハンギョドン。
しかし、次の瞬間何かを決意したような顔をする。
ハンギョドン「お嬢さん、実はおじさんは……着ぐるみなんかじゃなかと」
鬼帝「ハンギョドン──!」
ハンギョドンの突然の告白に、鬼帝は警告を発する。だがハンギョドンは気にしない。
鬼帝「どうなっても知らんぞ」
ハンギョドン「…………」
鬼帝は表情を硬くし、その場を離れた。
少女「おじさん、なに言ってるの? それどういうこと?」
ハンギョドン「言葉の通りじゃよ、お嬢さん」
582全5レス:2008/05/11(日) 20:26:51 ID:???
少女「冗談でしょ?」
少しずつ浮かぶ恐怖の色に、ハンギョドンは何かが脳裏に浮かんでいた。

『化け物! 近寄らないで!』
乱れた服で泣き叫ぶ女性。ボサボサになった髪を更に振り乱す。
気絶した男の頭を掴んでいるのは巨大な青い物体。男の手から地面に落ちるナイフ。
『ち、ちが……おいどんはそんな気は……』
『お願い、助けて……いや、こっちに来ないで!』
女性は後ずさりをする。その後ろには切り立った崖が。
青い生き物は男を地面に放り投げ、女性に手を伸ばす。
『そっちに行ったら危ない! ほら、早くこの手に……』
『触らないで! ……え?』
ガクッ
『!!!』
『キャアアアアアアアアアアアアアア』

ハンギョドン「…………」
目を閉じ、ゆっくりと首を横に振るハンギョドン。
突然のことに少女は戸惑っていた。しかし、徐々に落ち着きを取り戻す。
少女「おじさんは海で溺れていた私を助けてくれた……
     それに今も大切なブレスレットをわざわざ返しに来てくれた。
     だから私、おじさんはいい人だと思うの……」
ハンギョドン「……おじさんは、一体何だと思うでごわすか?」
583全5レス:2008/05/11(日) 20:27:11 ID:???
少女「おじさん? おじさんは……」
ハンギョドンの問いに、なんと答えればいいのか少女は考えた。
しかし、すぐに答えを見つけてハンギョドンを見返した。
少女「わかった! おじさんは海の妖精さんね! そうでしょ?!」
ハンギョドン「妖精……」
意外な答えにハンギョドンは少し迷ったが、すぐにニコリと笑う。
ハンギョドン「そうでごわすよ」
少女「やっぱり! ありがとう妖精さん、さようなら!」
輝くような笑顔で手を振りながら、少女は浜辺を去って行った。
その小さい後ろ姿にいつまでも手を振るハンギョドン。
鬼帝「……どうだった?」
様子を見て戻ってきた鬼帝。ハンギョドンははにかみながら答える。
ハンギョドン「ヒーローとは呼ばれなかったけんど、別の呼び方をされたとです」
鬼帝「ほう。なんと?」
ハンギョドン「海の妖精さんと呼ばれたけん」

鬼帝「妖精? ……お前が?」

鬼帝は爆笑した。



サンリオ軍本部の近くにあった喫茶店の中に入り、
もんきち達三人はジャックから話を聞くことになった。
584全5レス:2008/05/11(日) 20:27:33 ID:???
気を利かせたポコポンは厨房を拝借して飲み物を持ってくる。
しかしジャックはそれには一口も手を着けずとつとつと語り出した。
ジャック「全部、僕が悪いんだ……僕が軽率だったから。魔王を甘く見てた……」
もんきち「飲み物でも飲んで、落ち着くでござる。一体、何が起こったでござるか?」
ジャック「僕の裏切りが魔王に知られた。……いや、別に裏切った訳じゃないんだ!
    だって僕は元々彼等の味方って訳じゃなかったんだから! 
    でも魔王はそうは思わなかった。僕が世界中を旅していて、
    ハロウィンタウンからいない間にそれは起こった……」
真っ白な顔には、元より血など通ってはいない。
それでも彼の顔から血の気が引いているのがわかる。
彼は戦慄していた。
ポコポン「つまり、魔王に報復されたってことだね?」
気が引き締まったからか、口調が変わるポコポン。
罰丸「んでー、一体何されたんだ? おネズミさまによ」
ジャック「……にされた」
喉から絞り出した蚊の鳴くような細い声で、ジャックは話す。
罰丸「あ? 聞こえねーよ」
もんきち「こら、罰丸!」
そんな二人のやりとりなどまるで聞こえてないようにジャックは再び言った。
ジャック「町のみんなを……にされた」
罰丸「だーかーらー、もっとデカい声でハッキリ……」
ジャック「町のみんなを、バラバラにされた」