ネギま!×好きな作品クロス小説スレ4時間目

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1マロン名無しさん
ネギま!と他作品をSSを作るスレです。以下のルールを守ってより良いスレを作りましょう!

1.基本的にはsage進行。落ちそうになったらたまにはageて
2.荒し、煽りは徹底スルー。反応する人も同じです
3.他作品なら何でもコラボあり(ゲーム、映画、ドラマ等)但し全年齢板なのでアダルト作品はご遠慮ください
4.オリキャラは基本的には禁止ですが、物語の都合上やむ得ない場合は事前に知らせてください
5.職人(小説、SSの書き手さんの事)への催促はやめましょう。職人さんにも個人的な都合があります
6.指摘と中傷は別物。指摘歓迎、中傷不愉快
7.なにか質問があればまとめサイトのコメント欄に
次スレは>>980踏んだ人。もしくは容量が480KBになった時

前スレ
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1176289424/

まとめサイト
http://www16.atwiki.jp/amaterasu/pages/6.html

ネタはあっても文章が書けないという人、気にせずに投下してください。腕は書いていくうちに上がるもの。
無限の組み合わせを考えるの皆様です。それでは夢のコラボ世界へどうぞ…。
2マロン名無しさん:2007/10/22(月) 21:39:47 ID:???
その他基本ルール

オリジナルキャラを出す事は致し方ない場合もありますが、オリジナルキャラを主人公にするのだけは禁止です。
こういった行為をされるとこのスレで書く意味がなくなりますので注意してください。

コラボ作品にはこれといった制限(アダルト作品は除く)はありません。
ただあくまでネギま!とのコラボスレです。
ネギま!の登場人物がワンシーンしか出てこず、後は他作品のキャラのみで進むと言うのは問題ありです。
ネギま!キャラと他作品キャラとの配分は良く考えてください。
あとアダルト作品は禁止ですが、例えば18禁作品が全年齢対象作品としてリリースされ直した場合。
全年齢対象となった作品の設定を用いて書くのは……OKかもしれません。
この辺りは住人の方や職人さんと要相談です。
出来れば最初から全年齢向けの作品とのコラボを考えてください。
3マロン名無しさん:2007/10/22(月) 21:40:48 ID:???
出来れば心掛けて欲しいルール

小説の投下開始、投下終了はできるだけ宣言してください。
でないと他の職人さんと投下が被ってしまったり。
何時投下終了するのか分からないと他の職人がいつまでも投下できなかったりする事があります。
被って投下してしまうと若干読みづらくなりますのでこの辺にも気を遣ってください。
あと投下宣言しても宣言してから1時間2時間経ってしまうと意味がないので予告直後に投下開始するように心掛けてください。
それと投下された作品にはコメントをできるだけ付けましょう。
そうすれば今後の作品の発展やスレの発展にも繋がります。
職人さんとしてもその方が嬉しいでしょうし。
中傷は絶対禁止ですし無視ですが、指摘は歓迎です。

上記した事は心掛けてほしいだけで厳守して欲しいわけではありません。
あくまでできればの範囲の事ですので、あまり重く受け止めないでください。
それではネギま!と好きな作品のコラボレーションを存分にお楽しみください。
4マロン名無しさん:2007/10/22(月) 21:45:51 ID:???
テンプレ終了。
5マロン名無しさん:2007/10/23(火) 06:38:26 ID:???
ここは>>1乙と言わせてもらおう
6マロン名無しさん:2007/10/24(水) 00:26:44 ID:???
>>1
乙である。
7マロン名無しさん:2007/10/24(水) 01:30:23 ID:???
>>1
8マロン名無しさん:2007/10/28(日) 01:07:13 ID:???
>>1
乙です。
しかし過疎ってるな。
9薔薇乙女ネギま:2007/10/29(月) 18:12:35 ID:???
>>1
乙です、と言いながら薔薇乙女ネギま24話を投下します。
10薔薇乙女ネギま:2007/10/29(月) 18:13:49 ID:???
Phase 24 「確執のドール」

真紅と水銀燈は初めから仲が悪かったと言うわけではない。
水銀燈は第1ドールでありながら、他のドールたちが作られていく様を見ていった。
自分はローゼンに愛されていないのか。そう悩み、何とかしたい想いから自力で動いた。
そして行き着いた先にいたのは、真紅であった。

その頃からアリスゲームについて疑念を持っていた真紅は、水銀燈を手厚く介抱した。
歩くことすらままならない水銀燈を支え、大人しい彼女の力になれることなら何でもした。
何でも力になってくれる真紅の胸元には、ローゼンから授かったブローチが美しく輝いていた。
現在のような刺々しい性格でもなければ交戦的というわけでもない。
その頃の水銀燈は驚くほど大人しく、アリスゲームの意味すら理解していなかった。
しかし、二人で仲良く過ごしていった日々もあっという間に消え去っていった。
水銀燈はアリスゲームの理由を知ってしまった。
自分を造ってくれたローゼンからローザミスティカを授かり、遅らせながらローゼンメイデンの仲間入りを果たした。
だが、真紅はそれを認めようにも認められない部分がある。
真紅の目には、水銀燈はとある部分が“不完全”でローゼンメイデンを名乗るには至らないと感じていた。
ローザミスティカを授かるなどとは思わなかった真紅は水銀燈に対して同情し、不自由なく生きられるように促そうとした。
しかしその判断も結果的には誤りとなった。
水銀燈は今までのことは哀れみと同情で助けてくれたことで、全くローゼンメイデンと認めない真紅を罵倒した。
怒りのあまり、真紅の大切にしていたブローチを目の前で破壊。
真紅は慟哭し、遂にそれまで見せなかった怒りの部分をさらけ出した。たった一言「ジャンクのくせに」と。
これで二対の友情に終止符が打たれ、互いのローザミスティカを奪い合う結果となった……。


「!?」
長い悪夢を見ていたかのように、水銀燈は鞄から飛び出した。
側ではマスターのザジが小さな寝息を立てて眠っている。
ザジを起こさないように窓を開けて嫌な感じしかしない夜空を舞った。
11薔薇乙女ネギま:2007/10/29(月) 18:14:59 ID:???
「嫌な夢……私は、ジャンクなんかじゃない……!」
傷も癒え、いつでも戦える準備は出来ている。後は真紅が乗るかどうか。


翌日、エヴァの別荘では相変わらず、翠星石と金糸雀の煽り合いがヒートアップしていた。
「うるせーですぅ! 金糸雀の分際で命令するなですぅ!」
「どういうことかしらー!? カナの方が先に造られたからお姉さんかしらー!」
もうかれこれ何度顔を合わせてこんな争いをしているのだろうか分からない。
千雨もエヴァも、果ては茶々丸すらも関わることを躊躇っている。
「二人ともー、喧嘩はだめなのー」
見かねた雛苺が止めに入った。
「ははは、これじゃあどっちがお姉さんか分からねぇな」
千雨の何気ない一言が、翠星石には大いなるショックを与える。
「がーん。金糸雀のマスターにまでバカにされるなんて……ショックですぅ」
「おいこら。それはどういう意味だ!」
「千雨の悪口は許さないかしらー!」
千雨と金糸雀、両面から食らった翠星石は流石に怯んだ。
「うぅ、似たような声で迫ってくるなですぅ。完全にステレオですぅ…」
半ばいじけている翠星石を放っておいてエヴァはようやく目覚めた真紅に問う。

「お前はアリスゲームに勝ち残る気があるのか……」
真紅は黙ったまま紅茶を飲む。そしてしばらく考え込むとそっと口を開いた。
「そうね……勝ち残るわよ、私なりの方法でね」
「それはいつ実を結ぶ?」
「……」
12薔薇乙女ネギま:2007/10/29(月) 18:16:03 ID:???
エヴァの言葉は重く、いつまでも進展のないアリスゲームの存在意義を問いただしてきた。
もう真紅にとってアリスゲームは形だけのものに思えてきているのかもしれない。
自分のためでも誰かのためでもなく、創作者ローゼンのために……。
そう考えていると奥の鏡が揺らいできた。
「蒼星石ですか?」
翠星石は蒼星石が復活したと思って近寄って見た。だがそこから現れたのは……。

「きゃあああっ!!」
鏡から飛び出してきた漆黒の羽が翠星石を襲う。
翠星石のドレスは至近距離から食らったせいでボロボロになってしまう。
真紅はすぐに水銀燈と睨み、鏡に飛び込もうとした。だがそこへ茶々丸が止めに入る。
「いけません。真紅さんはまだ完全じゃないです、下手に飛び込んでまた倒されでもしたら……」
まだ完全に回復していない真紅を気遣うが、真紅は聞かない。
「私は負けないのだわ。水銀燈との決着は私がつける」
茶々丸の言葉も振り切って水銀燈に戦いを挑む真紅。
「おいおい、いいのかよ!」
千雨がエヴァに詰め寄るが、エヴァは何もしない。
知っているから、これが止められることの無い遺恨があることを。

すると夕映とネギがエヴァの別荘へとやってきた。
「何かあったですか?」
千雨はすぐに事情を説明。アリスゲームに否定的な夕映は止めようと模索する。
「翠星石、一緒に来るです。蒼星石はまだ戦うには厳しいです」
「チビ人間の分際で命令するなですぅ!」
翠星石と夕映は互いに煽りあいながら鏡へと飛び込んでいった。
「こっちも行くぞ」
「わかったかしらー。雛苺はどうするしら?」
「ヒナもいくのー」
13薔薇乙女ネギま:2007/10/29(月) 18:17:08 ID:???
続いて千雨に金糸雀と雛苺も飛び込んでいく。
あれだけ騒ぎあっていた室内は、瞬く間に閑散としてしまった。
「全く、あいつらと来たら」
「マスター、確か前に水銀燈について知っていると聞きましたが……」
「あぁ、あの時の話な」
エヴァはだるそうにしながらも、ネギに誰も打ち明けることの無かったことを喋った。


nのフィールドで真紅と水銀燈はぶつかり合い、戦いあっていた。
「今度こそ、今度こそあなたのローザミスティカを貰い受けるわよ!」
「やれるものならね!」
剣を振り回して華麗に舞いながら戦う水銀燈に対して、必要最低限の動きで薔薇の攻撃を行う真紅。
真紅はダメージが残っているために大振りな動きは出来ない。
だが今度こそ二人の間で決着をつける。そのことだけはしっかりの残っていた。
二体の間にはもう修復不可能なほどに悪化してしまった関係。
ずっと二体の心に突き刺さったままの傷。それだけでもう戦う意味として成り立っていた。
「真紅ぅー!」
「――っ!」
ぶつかり合った次の瞬間、別の扉から光が見えたのを確認する。
そして二体がその輝きを認める瞬間――

「真紅ぅー!」
「あぁ!」
追いついた夕映や翠星石らは驚愕した。
一瞬のうちにそこから薔薇水晶が飛び出すや、水晶の剣を使って二人の間に割ってはいる。
そして真紅の右腕を切り落とし、水銀燈を胴体から真っ二つに切り裂いてしまう。
あまりのことに、驚く間もなく呆然とした真紅と水銀燈は、nのフィールドの奥底へと落ちていった。

つづく
14マロン名無しさん:2007/10/29(月) 18:19:07 ID:???
以上で24話の投下を終了します。
いろいろと追加と修正で一気に架橋に入るかと思います。
あと序盤の水銀燈のストーリーはオーベルテューレそのままです。
気になる方は予備知識として見てはどうでしょうか?
15マロン名無しさん:2007/10/31(水) 06:15:39 ID:???
GJ!
16地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/04(日) 12:50:32 ID:???
 すみません、長い事間を空けていましたが、これより第七話の投下をはじめたいと思います。
 急展開、になればなと。
17地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/04(日) 12:51:38 ID:???
 第七話 からからと音を立て

「……は。それは、どういう事ですか」
 今、刹那の顔を見たら、恐らく普通の人間はその威圧感に慄いてしまうだろう。
 京都で、木乃香の父、つまり詠春が何者かの襲撃を受け重傷を負った。
 それが、早朝に学園長室に呼び出された彼女が近右衛門から伝えられた事だった。
 近右衛門は、デスク越しですらも途轍もない恐怖を感じ顔を強張らせる。
「何故、何者かも、分からん。以前、修学旅行の時のとは違う人物らしいがの。あの詠春の歯が立たないところを見ると……」
「…………そうですね」
 近右衛門の言葉を刹那が遮る。それ以上語らなくても、言い様のない危険が迫っているのは明白だ。
 彼程の人物が、只の暴漢にやられる道理などない。
「関西呪術協会が襲われたとなれば……」
「うむ……。前回の夏美君の件と良い近頃妙な事が続いているような気がしてならん。気をつけてくれ」


18地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/04(日) 12:54:06 ID:???
 刹那は、早朝からそんな事があり様々な思案が巡り周囲に対して敏感になっていた。
 故に、教室に足を踏み入れた瞬間にその異変に気がついていた。人だかりの中心にチア部の三人を見つけ、次に木乃香を探す。
 彼女は、怒号の飛び交う教室の中で、怯えるように自分の席に座っていた。同じ図書館探検部ののどかと夕映が心配そうに様子を伺っている。
 駆け足気味でそこに近づく。木乃香は直ぐに刹那の存在を認め、顔を上げた。今にも泣き出しそうな顔を見て、刹那の心が締め付けられる。
 だが、真に彼女に衝撃を与えたのは、木乃香が不意に口にした言葉だった。
「せっちゃん……どうしたん……。そんな怒った顔して……」
 まるで、体を貫かれたような空虚感に襲われ、次に内側から痛みが広がる。無論、刹那の中で堪え切れない怒りがあった訳ではない。
 しかし、結果としてそれが尚更彼女を不安がらせているという事実に、刹那は絶句する。そして、側にいたのどかも、夕映も似たような感情を抱いているのを感覚的に察知する。
 三人から奇異の視線を向けられ、何か刹那が反論しようとした矢先、教室内で最も大きな怒声が響いた。続いて何者課の駆け足が聞こえ、教室に嫌な静寂が訪れる。
 程なくして、ネギが場を取り持ち皆を席に座らせる。
 刹那はこの時、側から聞こえてきた声から、朝早くからチア部三人組が口論をして、ネギが止めようと割り込んだところで桜子が教室から出て行ってしまった事を知る。
 とは言え、その一幕は彼女の思慮の外へと直ぐに捨てられる。HRの間、他の生徒に悟られる程度の警戒を張り巡らし続けた。
「随分と、忙しそうだな」
 HR後、廊下でエヴァンジェリンがこんな言葉を漏らす程に。
 思わず刹那は身震いする。この学園の守衛も勤める彼女が、京都での出来事を知らないはずがない。彼女のこの言葉の真意を察して、その上で刹那は話を切り出した。
「この学園で、妙な気配は……」
「ないな。少しに村上夏美に憑いた悪霊のようなもの以外は」
 エヴァンジェリンに余りにも間髪を入れられずにこう返答され、刹那は沈黙する他なかった。
19地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/04(日) 12:55:50 ID:???
 悪霊の話であれば、全てが終わった後で近右衛門から刹那は聞いていた。そして、この話を思い出すたびに歯がゆくなる。
 強力な助っ人がいたとは言え、この学園、ひいては木乃香を守ると言う責務を持っている自分が、何も知らず、何も出来なかった。
「しかし、その悪霊と言うのも、その助っ人の助言がなければ追い詰める事が出来なかったのだろう。ならば」
 頭の中で様々な感情が入り乱れ、刹那は、本来ならば決して口にしない皮肉めいた言葉を発する。多少、エヴァンジェリンは眉をひそめたかに見えたが、腕を組み、鼻を鳴らした。
「ふん、今回もまたそういう危険な存在が近づいて来ているとでも言うのか。悪いが、余りこちらをなめてもらっても困るな。
前回の失態もあって、この学園の結界は魔法先生どもの協力でより強固になっている。例えば、ほんの少し、呼吸するか否かぐらいの魔力を使用したとしても察知される。……お陰で私にとって余計な手間が増えたが」
 全く淀みなく、エヴァンジェリンは刹那を論破する。
 刹那は、何も言えない。決して彼女は刹那を否定したわけではない。しかし、その言葉の裏には刹那を突き放すものが含まれているのが直ぐに分かった。
 それからと言うものの、刹那はすっかりうわの空になってしまった。授業中でも、何度かぼんやりしていたのをネギに指摘され、珍しがられる。
 そして、数回同じ事が起こった後、刹那は偶然にも木乃香と目が合った。今朝のような重い表情は既になくなっていたものの、微かに不安げな面持ちをしているかに見える。
 彼女は、京都での出来事を聞かされているのだろうか。刹那は不意にそんな事を思った。自分の父が重体であれば、どんな親子でも直ぐに連絡を取り合うのだろうが、今回は魔法が絡んでいる可能性が極めて高い。
 それは言い換えれば危険な事であり、こういった件にまだ疎い彼女がそこまで詳しい事情を知らされる事はないかもしれない。
「やはり……私が」
 心中で刹那は肝に命じる。どちらにせよ、この学園も安全とは言い切れない。もし、木乃香が父の事を知らされていないならば、まず、自分が彼女を守らなければならない。
 それが、約束だからだ。
20地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/04(日) 12:58:38 ID:???
 そう念じると、妙に落ち着けられる。次第に刹那は自分自身を取り戻し、黒板へと視線を送る。
 だが、ふと、刹那はようやく戻り始めた焦点を以って、窓の外を見やった。この時、何故彼女が窓の外を見たのか分からない。
 ただ、何気なく雲の流れ、鳥の群れを見ようと思った程度の無意識さしかなかった。
 しかし、直後、彼女は感じた。殺気、とも覇気とも取れない奇妙な感覚を。それは、彼女の全身を覆い尽くし、意識から闘争本能を呼び起こすのには余りにも強大すぎた。
 視界の隅には木乃香の姿が見える。これ以上余計な迷惑は掛けられない。刹那は湧き上がる激情を押さえ込み、目を細める。だが、眼前には窓に仕切られた風景が広がっているだけ。
「あの……刹那さん」
 そこでネギの何度目かの呼びかけに気付き、刹那は我に返った。流石にこれは恥ずかしいと、刹那は俯いた。 

21地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/04(日) 12:59:38 ID:???
 奇妙な感覚を覚えたのは、刹那に限った事ではなかった。学園の屋上で探りを入れていたあいと、一目連、輪入道もこの感覚を察知する。
「お嬢……」
「一目連、今、この学園で妙な人物は」
「それが居ないんだ。一応一通り見ていたんだけれどな」
 何時もの様に無表情のままのあいだが、一目連と輪入道から見れば微かな焦りが浮かんでいるのが分かる。
 実は、数時間前からこの学園で臨時カウンセラーとして潜入していた筈の骨女から、連絡が途絶えてしまっていた。
 一目連の「目」を使って虱潰しに探したのだが、その姿かたちどころか、気配すらも見つける事が出来ない。
 このような事態は、長い事地獄少女として存在し続けてきたあいでも初めての事であり、非常事態だ。このままでは当初の目的どころか、自分達ですら危うい。
 一目連の調べで、麻帆良学園に魔法の存在がある事は確認できていた。或いは、その力によって拉致されてしまったのではないかとも三人は思案する。
「何かあったとして、藁人形に化けて隠れていてくれれば助かるんだけども」
「……そうね」
 悲観論にも似た嘆きの言葉を一目連は漏らす。
 彼の視線の隅では、一瞬だけあいが、唇をかみ締めたように見えた。 


 

 
22地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/04(日) 13:01:11 ID:???
以上です。

ここからいよいよ地獄少女な展開となってきます。
次回は何とか来週日曜に投下できるよう頑張りますので、宜しくお願いします。
23マロン名無しさん:2007/11/08(木) 00:12:27 ID:???
>>22
楽しみなんだがいつもおバカな3−Aだけに地獄少女的な展開になると思うと怖いな。
とにかく乙。
24マロン名無しさん:2007/11/08(木) 11:40:28 ID:???
とりあえず、前スレ埋めますか。
あっちで、人来なくてスレが過疎ってるとおもわれてるみたいだし。
25マロン名無しさん:2007/11/08(木) 11:43:17 ID:???
こっちも過疎ってるな
26マロン名無しさん:2007/11/12(月) 22:00:53 ID:???
新参だからまとめサイト見ようかと思ったら
全然更新されていないのな
最終更新日が9月11日だしww
27マロン名無しさん:2007/11/13(火) 05:29:38 ID:???
あげるか
28マロン名無しさん:2007/11/13(火) 12:33:21 ID:???
レジェンズとのクロスを考えてるのですが、なかなかネタが纏まりません……

何か良い案はありませんか?

決定事項
世界観は原作+ネギま!?
レジェンズから出演するのはレジェンズのみ
主人公は風のサーガ.ネギ
相方はウインドラゴンのシロン

企画案
ヒロイン
水のサーガ.鳴滝史伽
相方はウンディーネのスフレ(後からビッグフットのズオウ、トリトンのブルーも合流)

火のサーガと土のサーガはまだ未定
29地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/13(火) 18:41:06 ID:???
すみません、遅れましたが、これから第八話の投下を始めます。

30地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/13(火) 18:42:28 ID:???
 第八話 美しき調べ

 久方ぶりの地上の空気を吸い込み、金髪の少年は麻帆良学園一巨大な樹木、世界樹の頂上付近で枝に跨り懐かしさを存分に味わう。
 少年の目には既に眼科に複雑に歪む人間の性が、色濃くなって映っていた。彼が長らく望んでいた状況に、湧き上がる感情を覚える。
 だが、まだその感情を表に出すべき時でないと自制を聞かせる。
 後、もう少しで彼の目的は果たされる。言わば、一歩手前まで来ていた。此処で、嘗て少年自身の味わった屈辱を繰り返してはならない。
 少年の目に映る歪みとは裏腹に、その目は厳しく、力があった。
 ふと、少年は背後に人気を感じ、一瞬警戒心を露にする。だが、その正体を悟ると、視線を後ろに向けず、まるで迷惑そうに怪訝そうな表情を浮かべた。
「大分、調子が戻ってきているじゃないか」
「……何のようだ。まさか、監視と言うわけじゃないだろうね」
 背後から聞こえた声は、穏やかで優しく、少年を包み込むようだったが、少年は更に目を細める。
 背後の人気は少年の思惑を全て知っているのか、嘲るような笑い声を微かに発して言葉を続ける。
「ふん、そんな大層なもんじゃないさ。ただ、病に伏せていた友人が退院したから、調子はどうかと尋ねに来た。そんなところだよ」
「僕と君は、そんな間柄ではない筈だ」
「ハハハ、成る程そうだな。お前程の存在が二度も、同じミスをするわけがないよな」
「僕を、誰だと思っている」
 そこで、少年が語気を荒げた。明らかに苛立ちを見せており、背後の存在はそれ以上余計な詮索をしようとしない。
 やがて、背後の人気は霧のように消えてしまった。
 改めて少年の目は下に広がる広大な敷地に向けられる。その少年の口元には、悪意に満ちた笑みがあった。
31地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/13(火) 18:44:08 ID:???
 第八話 美しき調べ

 久方ぶりの地上の空気を吸い込み、金髪の少年は麻帆良学園一巨大な樹木、世界樹の頂上付近で枝に跨り懐かしさを存分に味わう。
 少年の目には既に眼科に複雑に歪む人間の性が、色濃くなって映っていた。彼が長らく望んでいた状況に、湧き上がる感情を覚える。
 だが、まだその感情を表に出すべき時でないと自制を聞かせる。
 後、もう少しで彼の目的は果たされる。言わば、一歩手前まで来ていた。此処で、嘗て少年自身の味わった屈辱を繰り返してはならない。
 少年の目に映る歪みとは裏腹に、その目は厳しく、力があった。
 ふと、少年は背後に人気を感じ、一瞬警戒心を露にする。だが、その正体を悟ると、視線を後ろに向けず、まるで迷惑そうに怪訝そうな表情を浮かべた。
「大分、調子が戻ってきているじゃないか」
「……何のようだ。まさか、監視と言うわけじゃないだろうね」
 背後から聞こえた声は、穏やかで優しく、少年を包み込むようだったが、少年は更に目を細める。背後の人気は少年の思惑を全て知っているのか、嘲るような笑い声を微かに発して言葉を続ける。
「ふん、そんな大層なもんじゃないさ。ただ、病に伏せていた友人が退院したから、調子はどうかと尋ねに来た。そんなところだよ」
「僕と君は、そんな間柄ではない筈だ」
「ハハハ、成る程そうだな。お前程の存在が二度も、同じミスをするわけがないよな」
「僕を、誰だと思っている」
 そこで、少年が語気を荒げた。明らかに苛立ちを見せており、背後の存在はそれ以上余計な詮索をしようとしない。
 やがて、背後の人気は霧のように消えてしまった。
 改めて少年の目は下に広がる広大な敷地に向けられる。その少年の口元には、悪意に満ちた笑みがあった。
32地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/13(火) 18:46:41 ID:???
 放課後、相変わらず人の居ない保健室で亜子はため息をつく。早朝の喧騒、授業中の刹那の様子。今日一日、教室では生きた心地がしなかった。
 どうも、最近の周囲のクラスメート達の様子がおかしいとは彼女も感じていた。普段から、馬鹿騒ぎの好きな3−Aの人間が、こんなに険悪になる事などありえない。
 しかし、その理由、きっかけが見つからずに頭を悩ます。
 とは言え、自分の身体的コンプレックスを全く気にしないで受け入れてくれた人々の、これ以上いがみ合う光景も見ていられない。
 だが、自分には雪広あやかや、神楽坂明日菜のように積極的に言葉を出せる性格ではないのは分かっている。何より、今の自分にそれを出来るだけの勇気があるのか。
 あの教室の中にいただけで息が詰まりそうになったと言うのに。
「どないしたら……ええんやろうなぁ……」
 机に突っ伏し、再びため息が漏れる。ネギに相談すれば、何かしら状況は好転するかもしれない。しかし、一日見る限りでは彼も狼狽していた。
 彼も、如何すれば良いのか分からないままだろう。そんな時に、そう易々と救いを求めて良いのだろうか。何より、彼はまだ数えで10歳。自分よりも遥かに年下なのだ。
 今、自分自身でさえ。亜子は、どうしてもブレーキを掛けてしまう。
 こんな時、あの人ならどうするだろうか。不意に、脳裏に赤毛の青年の姿が浮かぶ。きっと彼なら、突然やって来て、何でもない様にアドバイスを口にして、そして突然居なくなってしまうだろう。
「ナギさん……」
 吐息のようにその人の名前が漏れた。自分の言葉を、外から聞いている様な空虚な気持ちが彼女を支配する。
「あら、悩み事?」
 その支配を貫くような、女性の一言。脳天を貫くような衝撃に、亜子は慌てて顔を上げた。
 視線の先では、備品のコーヒーカップを片手に日の良く当たるサボテンを眺める源しずなの姿があった。途端に亜子は赤面し、背筋を正す。
 一方のしずなは微笑みながらコーヒーを啜った。一瞬、日の光を浴び、余りにも気品溢れる彼女の姿に亜子は唖然とする。
 流石は、大人の女性だと幾ばくかの賞賛の視線を送りながら。
33地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/13(火) 18:48:28 ID:???

 何の事はない。しずなは放課後になって仕事も特になく、だだっ広い学園内を目的もなく散策していただけであった。
 人気のない保健室で、暇をもてあます亜子は、暫く思案を巡らせた後、彼女に今自分のクラスの相談を持ちかけた。
「そうねぇ……。例えば、チア部の子達で言えば、案外原因は誤解、なのかもしれないわ」
「誤解、ですか」
「ええ。だって、最初はほんの少し、様子が変だな。ってくらいだったんでしょう。多分、きっかけは本当に些細な事よ。
それが、誤解のまま彼女達の中で解かれないで、少しずつ大きくなっていく。それで、今日、その思いがつい……ね」
「その、ウチはどうしたら」
「簡単じゃない。貴方が橋渡しになれば良いのよ。きっと、チア部の子達だけじゃあ上手く話が出来ないはずよ。だから、ね」
 しずなの目が、亜子の顔を覗き込む。穏やかで、それでいて確固たる願いをもったその眼差しに、亜子は後押しされているような気分になる。
 きっと、彼女も嘗て副担任として任されていた3−Aの生徒の事を憂えているに違いない。
「その……ありがとう御座います」
 さほど時間もかからず、自然と亜子は感謝していた。しずなは、静かに微笑み頷く。きっと、こうなる事も彼女は予想していたのだろう。それだけの余裕が、今のしずなから十分感じられる。
 先生は、凄いな。短い時間に、二度も賞賛の意を持ち、亜子は目の前の女性に釣られて笑顔を浮かべた。
「失礼します」
 唐突に、丁寧な言葉と共に、保健室の扉が開く音が聞こえた。
 けが人だろうか、亜子は最初そう思ったが、その声質は明瞭として具合の悪そうなところなど何も無い。そして、良く聞いた事のある声だと思い出して扉の方を見やった。
34地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/13(火) 18:49:46 ID:???
「あれ、どうしたん」
 其処に、円が一人だけ居て、小さな驚きを覚え亜子は気が抜けたような声を出す。
 明らかに彼女は誰かを探して、焦っている様に見えた。
「あの、さ、ここに桜子来なかった」
 二人を一瞥して、円はこう問う。
 彼女の言葉には、様々なものが含まれているようには聞こえたが、亜子にはそれが何か分からない。何か、あったのだろうか。
 その言葉を出そうとして、彼女は自分自身が首を横に振っただけだと言う事に気がついた。
 つい、先程、決意したばかりではないか。彼女の心が締め付けられる。しずなもまた一言詫びを入れてわからないわ、と応える。
 彼女から咎める様な雰囲気は皆目感じられ歯しないものの、尚更それが、亜子に重圧を掛けてしまう。ただ、一言言えれば良いのに、言おうとすればする程重みが増す。
 円が寂しげな表情を浮かべていた。耐え難い辛さを抱え、亜子の中では先程までの勇気が薄れつつあった。
「貴方は、主役なのです。決して臆病になる事はありません」
 だが、完全にその勇気が消える直前、脳裏にナギの姿が、彼の言葉と共に浮かぶ。刹那、消えかけていた蝋燭の火が、莫大な酸素を取り込み猛然と息を吹き返す。
 そうだ、自分は、脇役でない。前に、一歩前に踏み出す事が出来る。
「あの、釘宮。桜子と何かあったん」
 それから、彼女が願っていた言葉を出すのに、大した時間はかからなかった。側では、しずなが、笑顔でコーヒーを啜ったが、亜子がそれに気付く事はなかった。 
 
35地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/13(火) 18:52:53 ID:???
 以上です。相変わらず登場人物の心情を書くのが難しいです……
 兎も角、精進あるのみですね。


>>29
 原作を知らないので何とも言えませんが……
 あえて原作とは真逆のキャラクターで組んでみては如何でしょうか。
 
 すみません、まともなアドバイスが出来ないです。
36地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/13(火) 18:56:50 ID:???
 それと、誤って最初の方を重複で投稿してしまいました。申し訳ないです。
37マロン名無しさん:2007/11/14(水) 07:10:41 ID:???
>>35
ありがとうございます
参考にさせてもらいます。
38マロン名無しさん:2007/11/14(水) 14:34:48 ID:???
作品全然なくて悲しいな
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1187755129/
ここはよく人が来てるのにな
もっと、職人あつまらんかな
39マロン名無しさん:2007/11/15(木) 01:06:29 ID:???
お久しぶりです薔薇乙女ネギまの作者です。
今回11月に色々とプライベートの出来事が詰まっていまして、この月の投下が不可能にないりそうです。
物語りもそろそろ架橋である中での離脱は辛いですが、12月にもう一度再会いたします。
40マロン名無しさん:2007/11/15(木) 16:14:27 ID:???
まずは最終話まで書いてメモなどに保存した上で投下しているんですよね?
あの、るろ剣とネギまのコラボ小説を書こうと思っているのですが…。
いいんですかね?
41マロン名無しさん:2007/11/15(木) 16:18:53 ID:???
まずは最終話まで書いてメモなどに保存した上で投下しているんですよね?
あの、るろ剣とネギまのコラボ小説を書こうと思っているのですが…。
いいんですかね?
42マロン名無しさん:2007/11/15(木) 17:40:51 ID:???
>>41
断る理由がどこにある?がんばれ!
43地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/18(日) 14:36:59 ID:ckmGbzlW
楽しみにしていただいた方がいれば嬉しいのですが。
これから地獄少女 ネギ籠りの第九話を投下します。かなりダークに傾いている気がしますが。
なお、今回はネギサイドのみの人物の登場となります。
44地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/18(日) 14:40:44 ID:???
 第九話 誰が名を呼ぶか

 円の口から、静かに紡がれる言葉を、一語一句聞き逃さぬよう亜子は耳を傾ける。
 そして、円が今、話せるだけを話し終え円の目に涙が浮かんでいた頃、亜子は熱くなる胸の内を必死に押さえながら、彼女の話を丁寧に整理する。
 成る程、しずなの言う通り、原因は些細なものだった。恐らくは、桜子が誤解をした事に起因するのだろう。
 だが、それによる三人のもつれというのは彼女達が想像しているよりも悪くなっていると亜子は考える。
 では、どうするべきか。一番問題なのはそこだ。円がこの保健室を訪れた理由も、桜子を探していたからだった。
 そう。解決の糸口が、見えなくなっていたのだ。
 しずなは、ただ、黙って二人の会話を耳に入れている。
 出来るだけ二人で話をしてほしいという配慮からか、既に腰を上げ、窓際で何の事もなさそうに植物の観察をしていた。
「分かった。ウチも探す」
「え……、でもそれって」
「良いんよ。どうせ今日も保健室に用がある人なんておらんやろうし。ウチも、手伝わさせてな」
 亜子は、そんな彼女の様子を横目に、手早くデスクの上に乗っている道具を手早く片付けると、やや早口で円に自分の意志を伝える。
 円は、微かに怪訝そうな表情を浮かべたが、その奥に言葉に出来ない、今にも溢れそうな感謝の念を覚えると頷く。
「あら、じゃあ保健室の留守番は私がしているわ」
 そこで、ようやくしずなが口を開いた。思わぬ助け舟に亜子も、円も互いに顔を見合わせて、教室を飛び出した。
 既に、円が学園内で普段、桜子が行きそうな場所をあたっていた為、二人は分かれて広大な学園の敷地内をしらみつぶしに探す事にする。
 だが、その寸前、世界寿の下まで来た二人は、突然目の前に現れた刹那の姿に息を飲んだ。

45地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/18(日) 14:44:03 ID:???


 その日、刹那は一日の授業が終わり放課後となり、これから解放されるにも関わらず、落ち着きを全く見せていなかった。
 今日は、木乃香が図書館探検部としての活動を行う日だった。
 当然、その間は刹那と分かれなくてはいけない。
 しかし、刹那にしてみれば、彼女をむざむざ危険に晒す事と大差はなく、同行を願い出たものの、HRでの一件か、断られてしまった。
 あの時、よく狂躁とも取られてしまいかねない剣幕でいかなかったものだと、今更ながら刹那は思う。
 だが、どちらにせよ、刹那にとって今一番の憂いは木乃香の身の安全だ。
 だからこそ、こうして学園内を、取り分け図書館島を中心に警戒しながら歩いている。
 そして、図書館の玄関前で、偶然にもネギと出くわした。両手で分厚い本を抱えていて、表情が上手く見えない。
 大凡、何かしらの魔法の研究目的で持ち出してきたのだろう。
 ネギは初め顔の前まで高く積まれた本によって刹那の姿を確認できずにいた。
 暫し顔を左右に揺らし、そして覗く様に目の前の生徒の顔を見やると、ほんの少し抱えていた本を下にずらした。
「すみません、ちょっと本を多く借りてしまって……」
 これが、ネギの最初に放った言葉であったが、刹那の耳に届いたかどうかは定かではない。寧ろ、刹那はその時正面にいた少年の顔を見て、驚きを隠せないでいた。
 授業中は何でもない様に教鞭を取っていた少年の顔色が、今は青ざめ、目に活力がない。一体どうしたのかと、刹那は言葉を紡ぐ。
「……地獄通信って、知っていますか」 
 ネギは、本を一度強く抱きかかえて、助けを請う様に声を微かに震わせた。一方の刹那は、その言葉に聞き覚えがあった。
 報道部の朝倉和美から冗談まじりに聞いたサイトの名前がそれであった。
 曰く、そこに書き込まれた人は地獄に流されるらしいが、朝倉本人もまさかそんなものがある訳がない、とたかを括っていた。
 しかし、ネギの言葉と、朝倉の言葉が互いに共鳴する様に刹那の中で繰り返し再生される。

46地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/18(日) 14:47:03 ID:???
 まさか、と思い、刹那はネギに詰め寄った。すると、ネギの返した答えは、彼女の想像していた最悪のものとしてかえってきてしまった。
 ネギは、ゆっくり事の顛末を話し始める。数十分前、学園長室で行われた会話の内容を。
 エヴァンジェリンも、近右衛門も、最初は疑っていた地獄通信だったが、タカミチの失踪を境に色濃くなる、恨みとも一概に言い切れない奇妙な気配を察知していた。
 彼女によれば、異界とこの世界とを繋ぐ門のようなものを召還する兆候によく似ているのだという。
 もし、その門の先が地獄だとするならば、タカミチが失踪した事、妙な気配、そして報道部などが調べ上げた地獄通信の情報と殆ど合致する。
 更に悪いのは、再びその門が開くかもしれない、という事だった。この時、ネギにはその心当たりがあった。
 そう、自分のクラスの事である。成る程タカミチがいなくなってから、クラスの雰囲気が悪くなっていた。
 初めは全くこの二点の結びつきなど考えもしていなかったが、こうなってしまえば意識せざるを得ない。
 もし、門が開いたらどうなるのか。今までの話を総括して、その先を想像できないネギではない。
 タカミチ同様、何の前触れもなく、誰かが失踪してしまう。想像しただけで、顔面蒼白となってしまった。
 そして、今に至り、ネギは自分の不甲斐なさを恨み、血の気を変えて対処法を模索している。
 刹那は、大凡の事態を飲み込むも、事態が日を追って悪くなっているのだと改めて実感する。
「僕は……タカミチに頼りすぎていたんでしょうか。だから、今になって、こんなに慌てて……」
 ネギの表情が益々暗く沈み、楠んだ瞳が、刹那の顔を見る。思わず、彼女は言葉を失う。
 果たして、何か言葉を出そうとするが、己もまた眼前の少年と同じような心情であると気づく。
 無力、あまりも無力。故に何ものかに便り、それをつてに生きる。しかし、それがなくなった途端、あまりに脆く足場は崩れ、立ち上がれなくなる。
 と、同時に、刹那はある事に気づく。エヴァンジェリンの言ったという門らしきものが開いた時、その先にあると思われる地獄と繋がった時、自分たちはどうなるのか。

47地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/18(日) 14:48:40 ID:???
 地獄通信に対する情報を、その時刹那が持っていた量が余りにも少なかった事から、幸か不幸か彼女はある仮定に辿り着く。
「……お嬢様」
 そういえば数日前、彼女の身に及んだ危険は何だったのか。
 彼女の脳内に、最悪の事態が映写される。背筋に電撃が走る。
 刹那の独り言を耳にして、怪訝そうな表情をネギが浮かべたその瞬間、刹那は背後に恐怖を感じた。
 驚き振り返る。しかし、その姿は見えない。
「先生……、私には今、先生がどうしたら良いか分かりません。ですが……」
 お嬢様を守れるのは、私だけだ。そう言い切るよりも先に刹那は駆け出していた。
 肩にかけていた夕凪を、袋に入れたままではあるが手に携えて。
 駆ける。とにかく刹那は駆けた。自分の身の丈以上ある得物を手にしながらも軽やかに。本能のまま、恐怖のもとに駆ける。
 しかしながら、其の時、世界樹に脚を向ける刹那が、少しでもまともな判断能力を持っていたのならば、その恐怖が、木乃香と見当違いのところにある事に気づいていただろう。
 だが、幾重にも折り重なる異変によって揺さぶられ、それが出来なくなっていた。思えば、これこそが「あれ」の目論見だったのかも知れないが
 世界寿の太い幹を回り込み、其の先にいた陰に一気に詰め寄る。
 そして、亜子の聞こえぬ悲鳴を聞き、驚愕の表情を浮かべる円の姿を見て、ようやく彼女の中に冷静さが戻っていった。
  
 
 

48地獄少女ネギ籠り 〜偽りの仮面〜:2007/11/18(日) 14:51:31 ID:???
以上です。次回から再び地獄少女メンバーが登場しますので。

なんとかペースを保って投下していきますので、応援してくだされば非常に嬉しいです。
では。


>>41
私は全体の流れを買いてから、本文に入っていますので、時には投下と執筆を平行してやることがありますのね

それと、るろ剣とのコラボ、時代の違う二者がどう絡むのか。とても楽しみにしています。
49マロン名無しさん:2007/11/27(火) 23:42:42 ID:???
保守
50マロン名無しさん:2007/12/01(土) 00:09:11 ID:???
保守
51マロン名無しさん:2007/12/05(水) 12:34:45 ID:???
保守
52マロン名無しさん:2007/12/10(月) 13:23:17 ID:???
保守。
俺がこのスレ立ててから大分経つよな。
まさか4スレ目まで行くとは思わなかったよ。
53マロン名無しさん:2007/12/14(金) 22:40:41 ID:???
保守
54マロン名無しさん:2007/12/16(日) 21:20:22 ID:igMVc0b7
グラップラー葱
55マロン名無しさん:2007/12/17(月) 19:12:50 ID:16FP6xTy
くーふぇVS烈海王

楓VSゲバルかガイア

小太郎VS花山

ネギVS範馬兄弟

56マロン名無しさん:2007/12/21(金) 00:59:27 ID:???
保守
57マロン名無しさん:2007/12/22(土) 16:39:15 ID:???
前に書き込んだ者ですが、また新たな例を考えてしまいました……

今までのクロスオーバー候補

レジェンズ〜蘇る竜王伝説〜
永遠のアセリア〜この大地の果てで〜
FINAL FANTASYW

この三作品です

改めて見ると…迷います……
58マロン名無しさん:2007/12/24(月) 13:21:00 ID:???
保守
59名無しさん@お腹いっぱい。:2007/12/24(月) 19:44:38 ID:???
誰かクリスマスSSを書いてくれ
60マロン名無しさん:2007/12/27(木) 15:49:27 ID:???
デモンベインを招喚しようぜ
61Metal wolf chaos in Mahora:2007/12/27(木) 16:10:32 ID:???
投下しようとおもったが、サンタさんから一足先にプレゼントをもらっていたから
投稿が遅れてしまった。すまない。

消えたorz
62Metal wolf chaos in Mahora:2007/12/27(木) 17:09:19 ID:???
今修復中・・・・前編、後編にわかれるかもしれないから。
心してくれ
63マロン名無しさん:2008/01/03(木) 03:29:26 ID:???
革新
64Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 20:25:03 ID:???
投下よろしい?
なんとか書き上げたが、全体的に悪そうだ・・・
書き直すかもしれない。
65Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:01:42 ID:???
誰も答えてくれないぜ・・・
過疎ってルナ・

投下するよ
66Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:04:09 ID:???

麻帆良学園は、マンモス校である。
当然、朝には通学する生徒や教師やら生徒を明らかに定員オーバーして運んでいる路面電
車やらでいっぱいになる。
あわただしくなる学園通り、その建物の屋上でなにやら巨大な物体が腕を組んでその光景
を見ていた。

「ハハハハハハ!人がまるで豆粒のようだ!・・・おっと、これはキャラが違ったな」

我らが大統領、マイケル・ウィルソンであった。
どういうわけか、肩には「麻帆良警備員隊長!」というエンブレムが書かれている。



なぜ大統領が警備員隊長になったかを説明すれば、話は昨晩の内容にもどる。

学園長である近右衛門は、珍しくあせりを隠せなかった。というのも、1時間前、世界樹が
異常な魔力パターンを検出したためである。
世界樹は膨大な魔力を溜め込んでいる大木であり、あるときは告白成功率100%にして
しまう力を放出したりと、なにかと迷惑な部分もある樹であった。
その世界樹が、異変を起こしたのだ。誰が平静でいられようか?
今回の当番であるタカミチを早々に向かわせている。彼は学園でも有数の実力者であるが。
万一ということもあるため、ほかの魔法教師も応援に向かわせた。だが、いまだに胸騒ぎ
がする。ここ数年感じたことのない嫌なやつだ。
67Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:05:21 ID:???
「はあ、歳のせいかのう・・・・。何事も起こらなければいいんじゃが」

自身の孫のことだけでも精一杯だというのに、これ以上面倒は起こさんでくれ、せめて真
夜中にだけは・・・と、寝不足気味の近右衛門はぼんやりと天井を見上げていた。
ふと、窓のほうを見る。世界樹の魔力は収まったが、混乱に乗じた結界に侵入者がいる可
能性もある。生徒たちに危害が及ばないように、終わった後もあたりを散策するのも教師
の役目なのだ。

「もう、終わったかのう?」

そういいながら、ふと学園長はタカミチが向かった場所が見える窓のほうを向いた。
そう、ここで正しておくのは、単に「向いた」のである。決して何かの気配を察知したわ
けではない。本当に自然な動きで向いたのだ。


窓の外に、「何か」が張り付いていました。
68Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:05:47 ID:???

なにやらデカイ。赤い目がこっちを見てる。あ、とっても硬そう。ウサギみたいな耳して
る。

「ヘロー!ヘイ!あなたがこの学園のトップか?それともUMAか!?もしトップならぜ
ひとも話をさせてくれ!!」

いきなりそんなこと言い出すなにやらわからん奴。

「いやなにちょwwwwwwwwうはwwwwくぁwせdrftgyふじこ!!!」

あまりの衝撃に驚いたらしく思い切り後ろへ下がる近右衛門。さらに机にぶつかって空中
を後方一回転した挙句床に後頭部をぶつける近右衛門。当たり所が悪かったらしく、白目
をむいて泡を吐いている。

「OH!ここの住人は、みんな一回転が好きなのか!?」


お前のせいだよ、と突っ込む者(突っ込もうとする)は、だれもいなかった。

合唱
69Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:06:21 ID:???
Metal Wolf Chaos in Mahora 新任教師は大統領、副担任は子供先生!?作戦 前編


麻帆良学園は、マンモス(ry)。
そのうち、女子高エリアは最深部に位置している。当然、ここを通るのは女子に限られる
というわけだ。だが、正門あたりでは女子高生二人が、少年となにやら取っ組み合いらし
きものをしている。
さて、先ほどは昨晩の内容だが、今回は登校時間をやや過ぎた時間帯から始まる。
学生、神楽坂明日菜はひどく落ち込んでいた。そりゃあもう、“ズーン”という言葉が背後
に現れるぐらいに。
理由はひどく単純だ。女学生にありがちな恋である。
この前知らされた衝撃の出来事。彼女の担任であり、彼女の育て親みたいなものであり、
そして彼女の「恋する男」であるタカミチが入院したことであった。驚いた彼女が授業を
ほっぽりだし、彼の入院した病院へ急行した。そこで彼女が見たものは・・・
70Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:07:17 ID:???
ミイラ男。いや、全身包帯でぐるぐる巻きにされ、右腕両足をつるされていたタカミチの
成れの果てであった。

「嫌、嫌、嫌、嫌アアアアァァァァァーーーーー!!!」


明日菜、病院で暴走する。死傷者はいなかったらしいが。代償として彼女が精神不安定に
なった。その間も、まあ、いろいろあって、今日まで持ってきた。友人いわく、奇跡であ
る。と。

そんな彼女が登校中、親友の木乃香と話をしていたのは、親友の得意な占い。どこにでも
あるような普通の会話だ。明日菜は怪我ぐらい恋の障害ではないわ!と言い切り、久しぶ
りに元気になっていた。

「あの、あなた・・・・失恋の相がでていますよ」

そう。横から出てきた彼女の大嫌いなガキに、親切に説明されるまでは。
71Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:08:05 ID:???
「なんであんたみたいなのがここにいるのよ〜〜〜〜〜!!」

いきなり明日菜の機嫌を反対側にベクトルさせた少年の頭をつかみ、明日菜は涙を滲ませ
て絶叫する。そりゃそうだ。ようやく立ち直ったかとおもったら「失恋」といわれたので
ある。

「あうう〜〜。ただ僕は占いがどうとかこうとか言ってたから、ただ教えただけなのに〜
〜」

確かに、何も知らないなら親切な少年が少し失礼な程度で済んだだろう。だが、明日菜は
最愛の担任が入院という非常にショックな出来事を受けていたため、モロにその影響を受
けてしまっていた。
無論、それが昨晩現れたイレギュラーによるものだというのはだれも知らない。

「あはは〜〜。明日菜もそろそろそれくらいにしとき〜。学校に遅れるで〜」

そんな親友を温かい目で見つめる木乃香。彼女ももう慣れっこだったらしい。

「・・・え?」

ふと、視界の隅に何かが動いているのを見つけた。視線を追ってみると、それは近くのビ
ルの上で仁王立ちする人のようなものだった。
だが、
72Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:08:27 ID:???
な、なんやアレ・・・・・!)

その仁王立ちしている人物に本来あるべき目は一つしかなく、赤い輝きを放っている。全
身がまるで鉄のような重厚感を放っている。
その姿は、高いところにいるためか、はたまた太陽の逆光を浴びているからか、まるで狼
のような雰囲気を出してる。
彼女たちが日常を送る上で、絶対に遭遇しないであろう空間が、そこに存在した。

不意に、そのロボットらしきものが屋上の手すりに乗りかかる。え?とおもうまもなく、
そのロボットはこちらを見据えて、

「オーケー!レッツパーリィイイイイイイイ!!」

イキナリ、屋上から落下した。



(え、えええええええ!?)

あまりの出来事に一瞬頭がおいついていかなくなる木乃香。
だが下を見れば、いまだに言い争いをしている二人の姿が!しかも、ロボットの着地地点
は間違いなくあの二人の所で―――――!!

「あ、危ないで、明日菜!」
73Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:08:55 ID:???
思わず、そう叫ぶ木乃香。しかし、着地するまでの時間はそう長くない。しかも当の本人
たちは自分たちの上に迫っていた危機に気づいてなかったようで

「「へ?」」

なんて、二人そろって間抜けな声をよこしてきていた。ああ、もうだめだ。あきらめよう。


ドッカーン!

木乃香の予想通りに二人の近くに落下したロボット。着地の衝撃で小さな二人は文字通り
吹き飛ばされてしまう。

「なななな、何!?」

まるで地震でも起こったような衝撃に、パニックになりながらどこで覚えたか臨戦態勢に
入る明日菜。対照的にネギは頭が追いついていかずただ座り込んでいた。お前魔法使いだ
ろう。

いきなり度派手な登場をした男・・・・我らがアメリカ合衆国大統領マイケルは、事態に
ついていけずただただ呆然とする3人を見つめ、

「ウェルカム トゥー ザ マホラ 麻帆良へようこそ!」

親指を立てて、こうのたもうた。カメラアイがキラーン、と光ったのは見間違いではない。
74Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:09:24 ID:???
「ネギ・スプリングフィールドだな?春の風か。なかなかナイスネーミングだな!」

マイケルは己の身長(ロボットに乗っているが)の数分の一しかないネギの身体を持ち上
げる。埃まみれになった身体を叩いて落とし、頭をなでながら、ネギを見つめる。

「私はこの学園の2−Aの新任教師になったマイケル・ウィルソンだ!これからよろしく
頼むぞ、ハニー!!」



マテ

その言葉に、いち早く反応しなのは明日菜だった。

イマコノオトコ、ナンテイッタ?

「私はこの学園の2−Aの新任教師になったマイケル・ウィルソンだ!これからよろしく
頼むぞ、ハニー!!」
「私はこの学園の2−Aの新任教師になったマイケル・ウィルソンだ!
「私はこの学園の2−Aの新任教師になった
「私は(ry)


「な」
「なな」
「なななな」


「な、納得いかねぇえええええーーーーーーーー!!」

アスナの心の絶叫が学園に響き渡った。
75Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:09:46 ID:???
学園長室に着いた4人。なぜか後頭部を包帯で巻いた近右衛門が部屋の中でおびえていた。

「マイケル君。いい加減あの叫びはやめてくれんか?トラウマになってるんじゃよ」

「学園長!細かいことを気にしていたら人生生きていけないぞ!?ハハハハハハ!」

「・・・・君に言っても無駄じゃったな」

どんよりとため息をつく近右衛門。場の雰囲気についていけない3人はただぽかんとして
いた。

「それよりも学園長先生!」

ただ一人雰囲気など頭の外に追いやり、突然思い切り挙手する明日菜。ずかずかと学園長
に歩み寄り、

「・・・なんで私の担任があいつらなんですか!?」

思いっきり机を蹴飛ばし、近右衛門につかみかかる。

「ま、まってくれ明日菜君。これには深い事情が・・・・」
76Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:11:29 ID:???
ふかいじじょうってなんですかなんでわたしにしつれんいやしつれいなこというがきと
なんでたんにんがたかみちせんせいからあんなろぼっとやろうにかわるんですかなにかわ
たしわるいことしたんですかそれともなにかこれはかみのけいじ」

「まままま、落ち着いてくれ明日菜君!頼むから放してえー!!」



その後、ようやく明日菜から引き離された近右衛門から、聞きだした話とは

この少年は本名はネギ・スプリングフィールドといい、イギリスから来たそうだ。しかも
大学はオクスフォード出らしい。
日本に来たのは何かの修行らしいが、その修行がこの女子高の先生をすること。失敗すれ
ば故郷へ帰らなければならない。
だが、学園長はその話を聞いていなかったらしく、不備で生徒に何かあった場合も考える
と立場上そう簡単に生徒は任せられない。
→そこで、一昨日転入したマイケルを担任にして、ネギを副担任にする。マイケルは警備
員を兼ねているため、あまり授業には参加できない。ネギが担任らしく振舞うことで解決
するということらしい。

最後の最後に、明日菜たちの部屋に泊まることになると小さな声で言っていた。
77Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:11:54 ID:???
得いかない、全く納得いかない!

学園長室から出て、クラスまでの道のりの間、明日菜が考えていたのはこれ一つだった。
この前まではタカミチと愛の授業をしていたというのに、何が悲しくてこんな変な奴らが
担任になるのだろうか?あまつさえこんなガキと同棲など!!

前をどすどすと足音を立てて進む明日菜に、苦笑しながらマイケルが話しかける。もちろ
ん自分が原因だとも知らずに。

「ヘイ、ミスカサクラ。悩んでいても仕方がないぞ?もっと前向きに生きるべきだ!!」

そう励ますマイケルに、明日菜はキッと涙目で睨みつけ、

「確かに!世の中が不条理なのはわかっています!たとえ担任が愛しの高畑先生から頭上
から降ってくる巨大ロボットに代わったとしても、耐えて見せます!け れ ど 私のこ
とを失恋なんて言う失礼な私の大嫌いなガキがなんで副担任になるの!?なんであんたた
ち二人コンビで私のクラスにくるのよ!絶対納得できないわよこんなことぉ!」

・・・と、堂々と宣言した。
78Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:12:18 ID:???
「あとアンタみたいなガキを泊めるだなんて、絶対嫌だからね!というわけで、私たち先
に行ってますからね!先生方!!」

「ネギ君、マイケルさんごめんな〜〜」

言うだけ言った明日菜は木乃香をつかむと、さっさとクラスのほうへ行ってしまった。


「うう〜〜〜〜〜〜〜」

ぼろくそに言われたネギはもう涙目であった。

「ハハハハハ。レディーには優しくするべきだぞ、スプリングフィールド?」
「あれくらいパワフルなのが学生にはピッタリさ」

「ええ、それにとてもいい子なんですよ」
79Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:13:20 ID:???
そのネギを二人が慰める。
3人は慰めたり談笑しながら長い廊下を歩いていく。彼らの受け持つクラスである2−A
についた。
窓から見ると女子高らしくたくさんの女生徒たちがいる。

「うわぁー。たくさん年上の女の人がいるなー」

いくら賢いとは行っても、やはり少年である。緊張しているらしい。

「ハハハハ。緊張しては元も子もないぞ?・・・そうだ、いいことを教えよう!」

マイケルは突然ひらめいた!

「いいか、スプリングフィールド?スクールでもアーミーでも、講師は必ず決めなければ
ならない大事なことがあるんだ。わかるかね?」
80Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:13:44 ID:???
「え・・・?大事なこと?(アーミーって?)」

「そう。それは・・・・・


イ ン パ ク ト だ !!!」


両手を広げて思いっきり主張するマイケル。

「い、インパクト!?」

「イエス!教えるものは第一印象で決まる!そしてその第一印象は最初にあったときに決
まる!これが法則なのだよ!」

間違いなく間違った方向へと持っていっているマイケル。しかも、アスナやこのかには効
かないということをわすれているようだ。しかし、ヒーロースタイルで答えるマイケルに
まだ純真なネギは全く疑いを持たない。

「そ、そうだったんですか。僕頑張ります!ありがとうマイケル先生!」

「フハハハハ。照れるぞスプリングフィールド!」

目を輝かせてマイケルを見るネギ。それに親指を立てて返すマイケル。彼の心の中でマイ
ケルの株がグーンと上がっていった。
81Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:14:12 ID:???
「じゃあ、よーし「ちょっとまて、スプリングフィールド」え?」

今にも教室に飛び出しそうなネギを、マイケルが手で制す。

「君はまだ新任だろう?ならば、私が手本とやらを見せてやろう」

「本当ですか!?」

「もちろんだ。なぜなら私は2−Aの担任なのだからな!」

マイケルはそう言うと、扉の前に立つ。

「本当の自己紹介を、見せてやろう!レッツ パーリィィィィィイイ!!」
82Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/03(木) 21:17:15 ID:???
あとがき

ええ、3ヶ月ぐらいの間空けた登校になりますね・・・(汗

2chアクセスできなくなるわ、ウイルス飲み込むわでいろいろ遅くなってしまい、
申し訳ありませんでした。

後編はなんとか書いておりますので、今度はこんなにあけないように頑張ります。
83マロン名無しさん:2008/01/04(金) 02:11:56 ID:???
私は今、とんでもない物を見てしまったようだ
GJ!まさかここで大統領を見ることができるとは!
84マロン名無しさん:2008/01/04(金) 11:40:03 ID:???
女子高じゃなくて女子校
それといくらギャグ系だからといってネット用語(wwwや(ryなど)は使わないほうがいい
85マロン名無しさん:2008/01/07(月) 01:01:33 ID:???
保守
86マロン名無しさん:2008/01/07(月) 01:02:36 ID:???
GJ!
にしても過疎ってるな。
ネギま!スレ全体に言えることだが。
87マロン名無しさん:2008/01/07(月) 15:41:10 ID:???
さすが大統領だwww
88ネギ戦国作者:2008/01/09(水) 00:38:26 ID:???
これから投下するSSですが…
本来は<ネギま!戦国史(クレしん)>と言うものを予定していましたが、
事情によりこの略称でいきます。
形式上はネギま!×クレヨンしんちゃんと言う事になります。
大筋は考えてそれなりに先行作成した上での投下なのですが、
先の展開ではメインタイトル通り、少なくともネギま!クロスの一線だけは守る
ネギま!と「戦国」そのものの様相を呈する見込みが大です。
考証については正直かじった程度です。特に、
言葉遣いは無知と分かり易さの混在となりそうです。
見苦しくないものを作りたいと思いますが、突っ込みは荒れない程度が有り難いです。
まずは投下、開始します。

「超、さん?」
吹き飛ぶ様な景色の中で、ネギは、なぜかここにいる筈のないかつての…
かつての、何て言ったらいいのか、取りあえず懐かしい顔を見た気がした。

「君に力がないからだよ」

青草の匂い。
ヒバリのさえずり。
澄み渡った青空。
回転しながら落下した杖が頬の横に突き刺さる。
身を起こしたネギは、暫し現実感覚を喪失していた。
メガロメセンブリアのゲートポートで襲撃を受けたあの激痛、まばゆい光に包まれた無力感。
記憶と情景がまるで繋がらない。
89ネギま戦国史:2008/01/09(水) 00:41:40 ID:???
>>88
「たたた…」
「明日菜さんっ?」
聞き覚えのある声に、ネギは即座に反応した。
「どこよここ?」
明日菜が、草の中から尻を撫でながら身を起こした所だった。
「ご無事ですか、お嬢様?」
「いい天気やなーせっちゃん」
「わあー、いい天気ー」
「どこよここー?」
「皆さん無事ですかーっ!!」
ハッとしたネギが立ち上がり、叫び声を上げると他の面々が一斉に立ち上がった。
「えーっと、一緒だったみんなと運動部の皆さん…」
「なんや、夏美姉ちゃんおったんか?」
「ごめん、付いて来ちゃった」
ゲートポートで顔を合わせていた面々+一名の無事を確認し、
ネギがひとまずほっと安堵の嘆息を漏らす。
「で、ここどこなの?」
明日菜がネギに尋ねるが、ネギも首を横に振る。
「ここは、魔法世界なのですか?
その方面に詳しくはないのですが、生物学的に見て日本の草原にいる感覚なのですが」
夕映が言う。
「そう、ですね…そもそも僕も魔法世界は初めてでしたから。
でも、やっぱり何と言いますか、感覚的には一般世界ですねここは。
魔法の気配の空気と言いますか…」
「私もそう思います」
刹那がネギに同調する。
90ネギま戦国史:2008/01/09(水) 00:44:51 ID:???
>>89
「ちょっと、近くを見て来ます…
アーニャ、明日菜さん、付いて来てくれますか。
刹那さん小太郎君みんなを頼みます」
「分かった」
「いいけど」
「おう」
「分かりました」
返事の後目と目で火花を散らす二人を後ろに従え、ネギが出発した。

「取りあえずお嬢様、皆さんがご無事で何よりです。
あの勢いの転移魔法、一時はどうなる事かと思いましたか」
「オイ桜咲」
「私も別方面を見て来ますが」
「オイ!」
「その前に空気も良さそうですし、不審な魔力も感じません。お茶でも頂きますか」
「聞け桜咲!」
ピコンと音を立てて千雨のハンマーが刹那の脳天に炸裂する。
「えっ?…長谷川さん」
「その、空気がうまい事が問題なんだ。よく見ろ」
千雨が指を指す。
「?あれは…」
しかし、そこは刹那、不審を察するのは早かった。
「ああ、ちっと遠いけどあれは世界樹だ。
あんなデカブツがそこら中ににょきにょき生えててたまるか。
それでやたら空気がうまい。
あー、お前ら、携帯見せてくれ」
「何仕切ってるのよ…」
裕奈がブツブツ言っていたが、運動部が携帯を取り出す。
91ネギま戦国史:2008/01/09(水) 00:50:04 ID:???
>>90
「全員、アンテナゼロ。
大体、あそこに世界樹があってこの辺一帯家一軒建ってないって何だそりゃ?
いや、ここはどう見ても日本だが、こんな広い野っ原の周辺に全然そんな気配が無い」
「ねえ、何言ってるの?」
まき絵が心底不思議そうに言う。
「長谷川さん、もしかして…」
アキラが慎重に口を開く。
「いや、しかし、そんな事は…でも、まさか…
いや、そもそもあの空港からああやって…」
「あ、大河内、少し考えるの待て、お前の疑問の半分は多分説明出来るし
しないと収まり付きそうにないから」
「どうやら、長谷川サンの考えている通りみたいネ」
「うん?…超?」
「超さん!?」
「超りん!?」
超鈴音がのっそりと姿を現し、一同から感嘆の声が上がる。
「私たちもいますよー」
「何?超りんにハカセにさっちゃんに龍宮さんって、ちょっ、何なのよこれーっ!?」
裕奈が頭を抱えて悲鳴を上げた。
「わー、超さんやー」
「超りん帰ったんじゃなかったのー?」
「どうやら、再会を喜んでいる場合ではない様でござるな」
楓が言った。
92ネギま戦国史:2008/01/09(水) 00:53:14 ID:???
>>91
その視線の先には、ヨレヨレの胴着、或いは半裸の上に胴を着け、抜き身やら錆槍やらを抱えた
髭もむさくるしく汚れきった一団、どう見ても野伏りの姿があった。
「んー、女だぜ女ー」
「負け戦のくたびれ儲け、いっちょうやるかぁ」
「おおっ、やる事やって叩き売ってでもやらねぇと、路銀も出ねぇからよぉ」
「まずいっ!桜咲、ガチモードだっ!!」
千雨が叫ぶ。
通常の意味における凶器を剥き出しに目を血走らせて殺到する男たちに、
まずカタギの娘達は本能的に恐怖を覚え身をすくめる。
「うらあっ!先手必勝っ!!」
「何だガキいっ!!」
早速仲間を一人ぶっ飛ばされた二人の野伏りが槍を振り回して身軽に逃げる(引き付ける)
小太郎を追う。
「な、何よあんた達っ!」
「下がるネッ!」
現実感覚の追い付いていない裕奈が亜子まき絵の前に立って叫び、更にその前に超が立って
数人の野伏りをぶちのめす。
「いやあっ!せっちゃあんっ!!」
ビキッ
「…“殺害”モードでよろしいでしょうか、千雨さん…」
お星様になった野伏りに目もくれず刹那がぼそりと言う。
「何だガキゃあああっ!!」
ドカドカと押し寄せる野伏りの足下にはノーパソがあった。
「一寸刻み五分試しで頼む桜咲」
「な、何なんだよ、こいつら…」
93ネギま戦国史:2008/01/09(水) 00:56:21 ID:???
>>92

喧嘩を売った相手を間違ったらしい事に気付き始めた野伏りの一群に、
とどめを刺す様に炎の飛び蹴りと雷の爆発が叩き込まれる。
「ば、ばけものおぉおーーーーーっ!!!」
「ネギ先生!」
「ネギ君!!」
「ネギ坊主っ!」
「皆さん、無事でしたかっ!?」
「こっちもなの?いきなりサムライが集団で襲いかかって来て、やっぱり日本って怖い所ねー」
「な訳ねーだろっ!!」
「じゃあなんなのよっ!?」
野伏りが這々の体で逃げ去った後、怒鳴り合う千雨とアーニャを余所に、ネギと超が頷き合う。
「ねえねえ、何、何、なんなのっ!?ねえ、何なのよおおっ!!」
「ラス・テル、マス・キル、マギステル。
大気よ霧よ…」
涙を浮かべて詰め寄る裕奈まき絵の前で、ネギがこほんと一つ咳払いをして詠唱を始めた。
運動部+1が熟睡した所で、改めてネギパーティーが集合する。
「一体どう言う事か、聞かせてもらおうカ?」
超の問いに、ネギが経緯を話す。
「で、ハカセ達は?」
94ネギま戦国史:2008/01/09(水) 01:02:56 ID:???
>>93
「はい。私たちはあれから超さんが残してくれたデータ、材料を元に
カシオペアの研究を続行していました。
夏休み中に世界樹の根を調査していた私は、根のコブの残留魔力を検査していました。
検査では、ほとんどの場所で研究の価値はあってもそれほどの魔力ではなかった。
だから私は、油断をしてカシオペア試作器、
もちろんこれも動く筈がないとたかをくくっていたものです。
それを、稼働実験のために大きなコブに直結させると言う愚を侵してしまった…
その、私の失敗に、お弁当を運んでくれた五月さんと、
場所が場所ですので護衛を依頼していた龍宮さんも巻き込んでしまいました」
葉加瀬が顔を伏せて首を振った。
「カシオペア、持ってるネ?」
「はい、手放し難くて」
ネギがカシオペアを取り出す。
「なるほど…どうやら、推定通りらしい…」
カシオペアを操作していた超が言う。
「どう言う事なんだよ?」
千雨が言う。
「天文学的確率で条件が揃った誤作動ネ。
強力な魔力による転移魔法を引き金に、魔法世界のターミナルに渦巻く
機械や人々、特に膨大なものを秘めた二人の魔力、ねじ曲げられた空間、
それらのものが恐るべき確率で相まって
カシオペアに設計上の計算のらち外となる大暴走を発動させタ。
そして、帰る途中だった私、本来発動する程の条件下にはいなかったハカセ達、
皆々、ネギ坊主を中心に発生した時空乱流に呑み込まれ、
母なる世界樹を中心に時空に引っ掛かり落下した…」
ネギがぺたんと座り込む。
「ねえっ、それで、それでどうなの?私たち、元の時代に戻れるのっ!?」
明日菜が超に詰め寄った。
95ネギま戦国史:2008/01/09(水) 01:11:31 ID:???
ミスった、予定投下数の前に規制掛かる可能性大…では続き

>>94
超の首は、残酷に横に動いた。
「ネギ坊主のカシオペアは完全に焼けている、
そもそも学園祭最終日の戦いで動いた事自体あり得ない損傷。
ハカセに至てはガラクタの山。
私とて、それ程の力は残てはいない。
この時代、どう見ても江戸時代以前…」
「そうですね、恐らく江戸時代ではない、室町時代、その辺りでしょう」
転がる刀の中子を外していた刹那が言う。
「ハッ、ハハハ、ハハ…」
千雨が、額に手を当てて乾いた笑い声を上げた。
「なんだよ、それ?
おいガキ、なんだよそれ?
普通の中学生だった私が、魔法だなんだ、てめぇらのファンタジーに巻き込まれて、
挙げ句の果てに室町時代、もうこの先あれか、親にも学校にもおさらばして
訳分かんねぇ遠い遠い昔で野垂れ死に…なんだよ、それ?
なんとか言えよガキイッ!!」
「ちょっとおっ!!」
涙を拭おうともしない千雨とアーニャの怒鳴り声が交錯する中、
座り込んでいたネギが地面に手を着いた。
「Japanese Dogeza?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
「待てよ、おい。
分かってる、分かってんだよ。私が勝手に付いて来た、先生のせいじゃない、
分かってる、分かってんだよ、先生、なあ、ガキ、おいっ、
なあ、だからさ、だから手上げてくれよ、頼む、頼むから手ぇ上げてくれよぉ…」
千雨が頬を濡らしたまま、膝を着いて座り込んだ。
96ネギま戦国史:2008/01/09(水) 01:16:41 ID:???
>>95
「…取りあえず、時代を確定したいですね」
夕映が、失神していた野伏りをゆさゆさ揺さぶり始めた。
「て、ててて…」
「聞きたい事があるです」
「なんだ、てめぇ…」
目覚めた野伏りの首筋に夕凪が向けられる。
「歴戦の猛者とお見受けするです。
最近も戦に赴かれたのですか?」
楓が、指先ほどの金の粒を野伏りに渡す。
「ちょっ、楓ちゃん…」
明日菜が息を呑む。
「んんっ、まあな、ここしばらくは戦続きだったからな…
デカイ戦って言えばなぁ、大藤式部様の下で遠江まで、
ああ、信玄坊主の…鳥井四郎左衛門を討ち取れたのも俺様が一番槍でだなぁ…
途中で死んだりしなけりゃ…ああ、去年の話だ…」
「よく分かたよ、ありがとう」
超が、にっこり笑って野伏りを再び当て落とした。
「出たぞ」
幸い機能に支障の無かったノーパソを千雨が操作していた。
「天正2年1574年って事だな。
まあ、ゲームだけどその辺の知識は正確な筈だ。
あーあっ、とんでもない所来ちまったもんだ」
「ごめんなさい…」
「二度と言うな、いいな」
しゅんとしていたネギの胸倉を千雨が掴んでドスをきかせた。
「12年カ」
超が呟く。
97ネギま戦国史:2008/01/09(水) 01:21:59 ID:???
>>96
「?」
「世界樹の発光ですね」
夕映が言い、超が頷く。
「今のは正確に計算した訳ではありませんが、超さんが認めるのならそうなのでしょう。
次の世界樹の発光は12年後です」
「だとしても、私のカシオペアに皆を元の時代に引き戻す程の力は無い」
重苦しい沈黙が辺りを包む。
「すぐには、解決出来ないんですね?」
「うむ」
ネギの問いに、超が応じる。

今回はここまでです。
賽は投げられた、と、言うのが正直な心境です。
ネギま!は非常に面白い作品です。
これで二次を作った場合、彼ら彼女たちはその世界でも実に生き生きと動き出します。
それを見ながら、プロット、シナリオと言った海図で舵取りをしていく感じになります。
そして、まだ登場していないもう一方のクロスのお相手…
震えが来ています。繊細にして重厚な傑作、
包丁の入れ方一つで台無しになると言う恐れが今でもあります。
それでも、美味しい相性に出来上がると信じるからこそ始めました。
些か長いお付き合いを考えています。スレから叩き出されない様に頑張ります。
しばらくはサクサク投下とはいかないかも知れませんが、続きは折りを見て。
98Metal wolf chaos in Mahora:2008/01/09(水) 01:24:09 ID:???
うおおおおおお!
新たな作者様が!乙!
しかもあの伝説の名作とは・・・・
いじりとネギの立ち居地が気になるぞおおおおおっ!
99ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/01/09(水) 19:38:49 ID:???
ちょっと命名に手間取りましたが、>>88と同一人物です。
では、今回の投下、入ります。

>>97

「お願い、もう一回、何?」
「ですから、僕は、魔法使いです」
ネギの携帯杖の一振りで、周囲に風が巻く。
「何?ちょっと待って、ネギ君が魔法使いで超さんが火星人の未来人の、
それでタイムスリップして私たちが戦国時代にいる…」
「うむ、綺麗にまとめてくれてありがとうネ」
術を解かれ、ネギの説明を受けた裕奈に超が言う。
「やだなー、ネギ君も超りんも、さすがギャグのクオリティーが違う…」
裕奈がカラカラと笑った。
「…マジ?…」
裕奈の問いに、先ほど誠実に説明をしたネギとその隣の超が頷く。
「どうやら、本当らしい」
アキラがぼそりと言った。
「アキラまで」
裕奈が振り返って言った。
「学園祭からあのよく分からない世界、そして今まで、私たちが見て来た事から、
信じられないけど今の説明が冗談でも妄想でもないと言う事は十分考えられる」
アキラが言った。
「いや、でも、ちょっと待って、魔法使い?ねえネギ君魔法使いとか言った?」
「悪いが嬢ちゃん達、魔法使いにタイムスリップ、そろそろ現実認識した方がいいぜ」
「あーっ、オコジョがしゃべったーっ!」
素っ頓狂なまき絵の叫び声と共に、アキラはくらりと傾いた裕奈の体を支える。
「えーっと、タイムスリップって事は、タイムマシンとかあるんだよね?
タイムマシン、ね、それで元の時代に帰れるんだよねっ!?」
まき絵の言葉に、裕奈と亜子もキラキラ瞳を輝かせて超に詰め寄る。
「完璧に壊れた、修復不能ネ」
超はすっぱりと言った。
100ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/09(水) 19:40:04 ID:???
>>99
「嘘や…こんなん、夢や…
…そうや、夢なんや、又、うち夢見てるんや…」
頬をつねった亜子が、手近な立木の前に立つ。
「ちょっ」
「亜子?」
「そうや、これ、みんな夢なんや、又夢なんや、
うち悪い夢見てるんや又ナギさんが助けてくれるんやっ!!」
「やめて亜子っ!!」
猛烈なヘッドバッキングを展開していた亜子がアキラに引きはがされ、
自らの流血で赤い視界を自覚した亜子がすとんと意識を失う。
裕奈が刀を拾った。
「つっ…本物の、刀、カメラもない、撮影じゃない…
帰れない…もう、お父さんに会えない、クラスのみんなに会えない…」
木乃香が裕奈の手を取る隣で、裕奈がぺたんと座り込む。
「ごめんなさいっ!」
ネギが深々と頭を下げる。
「これ全部僕の責任なんですっ!
僕が、僕がみんなを巻き込んで、だから…
謝って済む事じゃないのは分かってます。でも、でもっ…」
「ごめんネギ君っ!」
その目の前でまき絵が頭を下げた。
「ごめんネギ君。私、付いて来るなって言われてたのに私…」
「まき絵、さん?」
ネギが顔を上げる。
「ごめんなさいっ!」
頷き合った裕奈と亜子、アキラ、夏美も深々と頭を下げた。
「あーっ、じゃあ、その辺にしとこうか」
「せやなー、いい加減うっとうしいだけや」
明日菜と小太郎が言う。小太郎の表情にはどこかうきうきとしたものすら見て取れた。
101ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/09(水) 19:41:37 ID:???
>>100
「で、取りあえずどうすんだ?
どっかでキャンプか、それとも、天下統一でもおっ始めるか?」
基礎知識検索のためしぶとくゲームを続けていた千雨が言う。
「うむ、それもありかもネ。
このメンバーならば、最新鋭のオーバーテクノロジーと異界の能力をフルに活用シ、
手始めに戦乱に疲弊した日の本を統一して後、
行く行くは乱れ切った世界に正義の遂行、新たなる世界の秩序を打ち立てる新世界の神とシテ…」
「いや、超さん、それ別の漫画てか別のスレだし」
「…あんまし、乗りたかねぇな」
突っ込みの声を聞きながら、千雨がぱたんとノーパソを閉じて言う。
「私も、何かすっごくやな予感するしねさよちゃん」
「でござるな」
「こんな時代や、おもろそうやけどなぁ」
小太郎が詰まらなそうに言う。
「まあ、後先考えずに歴史に介入するのは最悪自分が危なくなるネ」
「ですね。当面、衣食住の確保を優先するのがよろしいかと」
夕映の結論に取りあえず一同頷いた。

今回はここまでです。続きは折りを見て。
102マロン名無しさん:2008/01/09(水) 23:53:09 ID:MlmjC96w
これ、小太郎が渡瀬恒彦か渡部篤郎やるって事か?
103マロン名無しさん:2008/01/10(木) 00:47:08 ID:???
もしかして暗黒史の方ですか?
104マロン名無しさん:2008/01/10(木) 17:40:48 ID:???
>>102
その場合
ついてく可能性のある奴:超一味、ゆーな、パル、夏美

ただし、渡瀬バージョンで全裸美女とか集め出したら夏美一発離脱w
105ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/01/10(木) 22:48:26 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>101

「うわー、水きれーっ、
こんな綺麗な川だったんだー」
夕闇の迫る中、遙か未来には麻帆良大橋の真下となる川の中で、
顔を出したアキラが珍しく大声を上げた。
「ごめんね」
河原に上がったアキラが、手づかみした魚を拾い物の桶に入れる。
「おーっ、こっちも捕れたでー」
「これだけあればいいかな?」
競泳用水着の上にローブを着用したアキラの後ろで、小太郎と明日菜が引き揚げの用意をする。
三人が集合場所の廃村に入ると、そこに杖に乗ったネギが着地する。
「どうだった?」
明日菜が聞き、ネギが首を横に振る。
「いくつか集落はありましたが、どこも人気はありません。
龍宮神社も祠があるだけでした」
「見た所、この一帯は水害で逃散、あるいは全滅と言った所でござるな」
「その様ネ、色々痕跡が残てたヨ。この川、この時代は随分な暴れ川だたらしい」
楓と超が言う。
野草を前もって灰を溶かした水に浸し、鍋に移して石造りの即席の竈で煮る。
それとは別の焚火の周囲に、串刺しにした川魚を突き立てる。
「なんかー、キャンプみたいだねー」
まき絵のはしゃぎ声は見事に不発だった。
「いや、塩だけでこれだけって、マジ天才なんだな」
千雨の視線の先で五月がぺこりと頭を下げる。
106ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/10(木) 22:51:32 ID:???
>>105
「…取りあえず、廃村で却って良かったかも知れないです…」
「ですね、この時代の人達に見つかったらどんなトラブルになるか分かりませんでした」
夕映と刹那が言う。
「じゃ、当面は山にでも籠もってサバイバルか?」
千雨が言う。
「それも一つの考えです」
「それじゃ、一生こそこそ逃げ回ってろってか、冗談じゃない」
「千雨さん…」
「悪い」
夕映と千雨の言い争いの様相を呈して来た所に、ネギが悲しそうに声を掛け千雨が頭を下げる。
「私たちは、この世界ではエイリアンにも等しい存在です。
まともに表を歩けばトラブルは避けられません。しかも、時代が時代です、
命のやり取りになるです」
「めんどいなぁ、こんな時代や、どっか城の一つ二つぶん奪ってそこに居座りゃええやんか。
俺らの実力やったら命とるまでも無いやろ」
「小太郎君」
「いえ、私もそれに近い事を考えていました」
ネギがたしなめる先から夕映が言った。
「取りあえず、私たちの実力をトップに見せつけて戦意を喪失させます。
こちらに敵意が無い事を示して庇護者となってもらう。
これが、当面考えられる穏健なやり方です」
「誰を庇護者とするかだな」
真名が言った。
107ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/10(木) 22:56:08 ID:???
>>106
「信長!」
バッと手を上げた裕奈が言った。
「この時代だったら信長でしょ、武田信玄も逝っちゃったみたいだし」
「問題は、接触したとして彼が私たちの事をどう理解するかです。
彼の合理的な理解の範疇で認めてもらえばよし、もし、ペテン師だと思われた日には…」
「その場で首が飛びますね、物理的な意味で」
夕映の言葉に刹那が応じる。
「織田信長と言う男、忍びを嫌い用いなかった事でも知られている。
得体の知れぬ者がその能力を誇示して近づくのは逆効果となる危険性が高いでござる」
「ほな、太閤さんは?大阪城行って…」
「今石山に行けば死ぬです、確実に。
そうじゃなくても、この時点の羽柴秀吉は織田家の一武将として転戦を繰り返している最中。
私たちの様な者が落ち着いて接触するのは困難です」
亜子の提案を夕映が却下する。
「それじゃあ、後は家康…」
アキラが言った。
「ここで長生きするならそういう事になるな…ああ、悪い、棘があった」
千雨が言った。
「そうですね。徳川家康は既に東海地方に勢力を持つ大名です。
性格的にも賢くてエキセントリックな要素も少ない。この作戦には悪くない。
但し、問題は地理です」
「だよなぁ、麻帆良から静岡まで徒歩って事だろ?しかも、隠密行動で」
夕映の言葉に千雨が言う。
「ネギ先生か刹那さんが先乗りして説得すると言う手もありますが、
説得に成功したとして、まさか私たちを引き取るために出兵させる訳にもいきません」
夕映が言う。
108ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/10(木) 22:59:12 ID:???
>>107
「…静岡まで行かないと、駄目かな…」
アキラがぽつりと言った。
「?」
「ここは麻帆良、その事に違いはない。
超さんのタイムマシンは世界樹で動く。バラバラにタイムスリップしたみんながここに集まった。
ここが一番時間とか空間が不安定なのかも知れない。
そんな事より何よりも、ここは麻帆良、ずっと帰れないかも知れないけど、
だから、あの世界樹がある麻帆良…」
「アキラ…」
顔を伏せたアキラの肩にまき絵が手を置く。
いくらしっかり者だと言っても、今まで通りの役割で運動部のフォロー役を
こんな時に続けていて、中学生の少女に重くない筈がない。
「まあ、静岡は話の流れでしたから…」
夕映が言う。
「この辺は北条氏の支配って事だよな」
取りあえずゲーム知識で千雨が言う。
「そのゲーム、もう少し詳しくなっていませんか」
「ああ」
夕映がノーパソに向かい、千雨の助けを得ながら自身の知識と摺り合わせる。
「時期が悪いですね。確かに、武蔵国は現在北条氏政の支配下にあります。
関東八州大体がそうです。
しかし、形式上は侵略者である北条氏に対して、
関東管領上杉謙信が何度となく領国の越後から雪解けを待って討伐の出兵を繰り返している。
今はその最後の時期です。
それに、基本的には北条氏の支配下ですが、北条側、上杉側、双方の下に就いている
豪族氏族がうじゃうじゃしている、かなり不安定な状況です」
「そう…」
アキラががっかりした様に言う。
109ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/10(木) 23:00:39 ID:???
>>108
「しかし、北条と言う線は悪くありません。
ここを乗り切れば、武蔵国は織田信長にも屈せず豊臣秀吉の時代まで北条の天下です。
簡単に言って、北条の庇護を受ければ、
最悪秀吉が小田原に攻め込む情勢になれば逃げ出せばいいです。
それまではかなりの間があるです。
麻帆良を守るにしても、北条氏に話を通す事が出来れば色々とやり様があるです」
夕映に視線を向けられ、アキラが小さく頷く。既に、その頬には赤い涙の筋が走っていた。

「休みましょう、長旅になるかも知れません」
夜も更けた頃にネギが言った。
「せやな。何や、ビクビクすんなて、あんな連中束で来たって指一本触れさせんわ」
そう言う小太郎と目が合った夏美が、にっこり笑って頷いた。
「その事なのですが、ネギ先生」
「?なんですか、夕映さん?」
「状況が状況です、他の皆さんにも仮契約をしていただくと言うのはいかがでしょうか?」
「仮契約?」
亜子がきょとんとして言う。
「あのゲートポートの事件、そしてこの情勢を考えた場合…」
「自分の身は自分で守れってか」
夕映の言葉に、千雨が言い難い事を言った。

今回はここまでです。続きは折りを見て。
110マロン名無しさん:2008/01/11(金) 00:54:50 ID:???
乙です
111ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/01/11(金) 01:26:58 ID:???
間隔短いですが今回の投下入ります。

>>109
「ねえ、仮契約ってなんなの?」
裕奈が尋ねる。
「魔法使いの従者になるって事さ、仮にだけどな」
顔を出したカモが言った。
「契約して(中略)
血行促進勢力倍増!!
お肌もツルツル!!
肉体的にも精神的にも大幅パワーUPで
いいコトずくめって訳っすよーーー」
カモは、一番最初の仮契約未遂(のどか)の際の
ネギへの説明をそのまま繰り返していた(はい、そうです、手抜きです、ごめんなさい)。
「ふーん、いいコトずくめなんだねー。
それで、その仮契約ってどうするの?」
裕奈が言う。
「簡単っスよ、軽い気持ちでブチューっとやりゃいいんスよー」
「ふーん、ブチューって」
「それって、キス?」
アキラがやや緊張した口調で聞き返した。
「まあ、そう言う事っスね」
「わあー、ネギ君とキスするんだー♪」
「…仮契約は複数可能って、もう誰かと?」
まき絵がはしゃぐ横でアキラが静かに核心に迫る。
ネギパーティーが視線で会話し、従者達が静かにカードを取り出す。
112ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/11(金) 01:30:30 ID:???
>>111
「ひゃー」
「ちょっとネギくーん」
アキラが言葉を失い亜子が間抜けな声を上げる横で、裕奈がガッキと小脇にネギの頭を抱え込む。
「あ、あぶ、おぶ、うぷっ」
「なーにネギ君、いつの間にこんなみんなとキスしてたわけー?
オマセさんー」
裕奈が窒息しそうなネギを余所に更に締める腕に力を込める。
「ご、ごめんははい、き、緊急事態で色々、その…」
「で、どうすんだい嬢ちゃん達」
カモがぴょんとうつむくアキラの肩に飛び乗る。
「嬢ちゃんも、まあ、ここのみんな、見所あると思うんだけどなー」
「いいよー、なんかみんなしちゃったみたいだしー、ネギ君ならー」
まき絵が真っ先に返答した。
「事情は、分かった。そう言う事ならその、ネギ先生がいいのなら、
身を守る力ぐらいはないといけないみたいだしそのごにょ…」
アキラが言う。
「うちも…ネギ君なら…かわええし…」
「んじゃ、私もしちゃおっかな」
運動部4人の意見は一致したらしい。
「よっしゃ、決まりだ。兄貴!」
カモが魔法陣にネギを促す。
「じゃ、誰がいく?」
113ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/11(金) 01:33:40 ID:???
>>112
裕奈の言葉に四人は顔を見合わせていたが、一歩踏み出したのはまき絵だった。
「えへへ…」
「お願いします」
「よっしゃ、パクティオーッ!!」
「きゃっ!」
他の面々がまぶしさに悲鳴を上げる中、まき絵がネギと唇を重ねた。
「んー、なんか気持ちよかったー、ありがとねー」
まき絵がカードを振り振り魔法陣を出る。
「あっ」
亜子が声を上げ、アキラがすっと動き出した。
「あの、ごめんなさいアキラさん…」
うつむくネギに、魔法陣に入ったアキラはにっこり笑ってネギの頭を撫でる。
静かに目を閉じたアキラが目を開くと、目の前では爪先立ちしたネギが
真っ赤な顔でプルプルと痙攣していた。
くすっと笑ったアキラが、軽く移動し顔を横に向ける。
“…ネギ先生綺麗な顔…ホントだ、気持ち、いい…”
少しうっとりしていたアキラだったが、我に返るとカードを手に、
ぺこりと小さく頭を下げて魔法陣を出た。

「…私も、しといた方がいいのかな…」
少し離れた所で、夏美が言う。
「そやなー、勝手に付いて来てもうたのはもう仕方無いし、
さすがにヤバイ時代やからな。イザとなったら俺が全力で守うたるけど…」
夏美がチラと視線を向けると、亜子がはにかんで魔法陣を出る所だった。
114ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/11(金) 01:38:46 ID:???
>>113

「じゃ、私もお願い」
裕奈がすとんと魔法陣に着地した。
「はい、お願いします、ゆーなさん」
「私のファースト・キス。心して受け取りなさいよ」
「…ごめんなさい、こんな事に…」
「そのお相手がネギ君、最高かもね」
裕奈がうつむいたネギの顔を掌で挟み、唇が重ねられた。
夏美がチラと小太郎を見るが、小太郎は何事も無い様にそっぽを向いている。
「ああ、夏美さん、ちょっと」
小太郎の近くで持参の紙パックジュースにストローを刺していた夕映が夏美に声を掛ける。
「何?」
「仮契約に就いて、いくつか確認しておきたい事が」
「何やねん今更」
手を頭の後ろに組んだ小太郎が言う。
「あのですね…」
夏美が夕映に近づき、ヂューッとジュースを吸った夕映が歩き出す。
「この事なのですが…」
「世界図絵」を開いた夕映が、もう一度夏美にいくつかのレクチャーをした。
「…と、言う事です」
「何やねん今更」
手を頭の後ろに組んだ小太郎が言う。
「うん。ありがとう夕映」
夏美がネギの元へと歩き出す。
夕映もジュースを飲みながら歩き出した。
かなり不自然に前に伸びた夕映の脚が夏美の脚にぶつかる。
「あっ」
「とっ」
115ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/11(金) 01:42:03 ID:???
>>115
小太郎が、目の前に現れた夏美の体を抱いた。
「…あっ、ごごめんっ!…」
夏美が、小太郎の唇に重なっていた自分の唇をパッと離して叫ぶ。
「これは、とんだ粗相を、ごめんなさいです」
夕映がぺこりと頭を下げる。
「何やってんねホンマに」
夏美の肩を掴んで立たせた小太郎が呆れた様に嘆息して言った。
「じゃ、行ってくるね♪」
夏美の声は、少し軽やかだった。
「…ありがとね…」
その声は、夕映にだけ聞こえた。
魔法陣に夏美が迎えられる。
「あの…私も、お願い…」
「分かりました」
観客に見えない隙間の存在しない、唇と唇が触れ合うキス。
それは、可愛らしい程の頬に焚き火が照り返し暖かな不思議な光に包まれながら。
「じゃ、私もやっとこっか」
「朝倉さんもですか?」
「なにー?私じゃ不足だって訳?」
「いえ、その、お願いします」
和美がにかっと笑い、この夜最後の仮契約が取り結ばれた。

今回はここまでです、続きは折りを見て。
116マロン名無しさん:2008/01/11(金) 19:48:52 ID:???
新連載age
117マロン名無しさん:2008/01/11(金) 20:37:25 ID:???
>>116
ageんな…と言いたいところだか気持ちは分からんでもない
118ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/01/12(土) 01:43:10 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>115

「ゆえー、そろそろ寝た方がいいんじゃない?」
「アルヨー」
割り当てられた小屋でのどかと古菲が言う。
村に丁度いい規模の寝床がなかったため、武闘派とそれ以外に分かれ、
このかと刹那、小太郎と夏美以外は恨みっこなしのくじ引きで宿舎を決定していた。
「すいませんです、一通りの事は頭に入れておきたかったもので」
「世界図絵」を開いていた夕映が言う。
元々は魔法教本だが、何しろ図書館一つ分の知識の宝庫、
魔法世界の知識の中には一般世界の裏側の側面もある。役に立つ事も多い。

「こんな事なら、もっと色々入れとくべきだったな」
割り当てられた小屋でノーパソから手持ちのデータを確認した千雨が舌打ちする。
「取りあえず、バッテリーが保つ内に使える知識みんな引っ張り出しとかないと…」
「それなら、いいものがあるネ」
超が言う。
「ん?」
「超高性能汎用性手動充電器とバッテリー、データベース。
このデータベースは、簡単に言えば2003年において閲覧専門設定で
インターネットと接続するのとほぼ同様の効果が期待出来る。言てる意味は分かるネ?」
「…あんただけは、二度と敵に回したくないって痛感してる…」
119ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 01:44:45 ID:???
>>118

「お母さん…お父さんお兄ちゃん…」
口に出して少しは気が楽になるかと思ったら、完全に堰が切れてしまった。
小屋の中に啜り泣く声が静かに流れる。
肩を震わせて必死に泣き声をかみ殺す亜子の頭をまき絵が撫でる。
まき絵の目から溢れる涙を見ても、明日菜には掛ける言葉も無い。
こう言う時、自分に欠けているものを痛感してしまう。
麻帆良と言う所は、明日菜の傷も亜子の傷も受け容れる、本当に暖かな所なのだと。

「すごいね」
スケッチするハルナにアキラが声を掛ける。
「うん、向こうが軍勢ならこっちも軍勢、準備ぐらいしておかないとね」
ニヤッと笑ったハルナがページをめくりペンを走らせる。
落書帝国から尾の長い鳥がバサバサと飛び出す。
「くえっ」
笑顔で迎えるアキラに、肩に止まった鳥が一声鳴いてみせた。

「でもさー」
床にシートを敷き、毛布を被った裕奈が口を開いた。
「魔法使いって本当にいたんだね、それも、こんな身近に。
びっくりしちゃった」
裕奈の言葉に、ネギが苦笑いした。
120ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 01:46:24 ID:???
>>119
「…てか、寒いでしょそれ?」
「いえ、僕は平気ですから…」
サバイバル仕様のネギが丸腰で付いてきた裕奈に寝具を提供した結果、
ネギはローブを布団代わりにしていた。
ばさっとネギの身が毛布に覆われる。
「ゆーなさん、僕の事は…」
裕奈の吐息に耳をくすぐられながらネギが言う。
「いいの、ネギ君。
分かってるんだ、本当は私が悪いんだって。
最悪タイムスリップだけでもこんな足手まといばっか抱え込んじゃって、
ネギ君真面目な先生だから絶対見捨てたり出来ない、だから大変だって。
ごめんね、なかなか素直に言えなくって」
「いえ。僕がハッキリしなかったから、皆さんを巻き込んじゃって」
「もう、お父さんに会えないのかな…
あ、ネギ君お父さん探してたんだっけ。無神経だよね私。
でも、夏休みにお父さんと一緒に、楽しかった。最後になっちゃった…」
「会えますよ」
ネギが言った。
「きっと、会えます。又、元の、みんなの所に戻る事が出来ます。
来たんですから、きっと…」
「そうだね」
裕奈が指で瞼を拭った。
「さっきさ、ネギ君とキスして、ちょっとドキドキしちゃった。
ネギ君可愛いし、学園祭とかなんとか、すっごく格好良かったよネギ君。
本屋とかまき絵とか、ちょっと分かる。明石裕奈のファースト・キスにはいい感じ。
お休み、ネギ君」
裕奈が、ちゅっとネギの頬にキスをした。
121ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 01:47:36 ID:???
>>120

ちゅんちゅん(刹那鳥)
「は、はわわわ…」
「ゆーな…」
亜子とアキラが目を見張る、それは、
「裏切り者ーーーーーっ!!!」と棍棒を振りかざしてもおかしくないシチュエーションで、
しかし二人の後に続くまき絵は目をキラキラ輝かせて目の前の情景を眺めていた。
「うーん、お姉ちゃーん…」
いまだ夢の中のネギは、寝巻代わりのシャツにすりすりと頬摺りをする。
「あーあ、やってもーた。柔らかそうやもんなー」
木乃香が頬に手を当てて笑っていた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴコ…
「うにゃ?」
裕奈が指で目をこする頃には、明日菜とアーニャの手、と言うか脚で、
天井を突き破ったネギは朝空にお星様として輝いていた。

今回はここまでです。続きは折りを見て。
122ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/01/12(土) 23:24:54 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>121
覚醒した裕奈は、写真を取り出していた。
「お父さん、ちゃんと起きたかな?
私がいないと駄目なんだから。いっそ、ドネットさんと再婚してれば良かったよね、
もう、私頼れない、かも知れないんだし。
あ、でも、あの時ドネットさんも一緒だったっけ?…」
「ゆーな、そろそろごはんにしよー」
入口で明日菜とアーニャを前にぺこぺこしているネギの向こうから
亜子の声が聞こえた。

「これは、いいものを見付けたでござるな」
アーティファクトのラジコン偵察機からの映像をモニター付きコントローラーで見ていた
和美の後ろで楓が言った。

雑兵らしき十人程の集団が荷車を押し、縄がけされた女達を引き連れている。
その前に楓と刹那、アキラ、裕奈が立った。
「んだ、おめぇら?」
「勝ち戦の帰りでござるかな?なかなか豪気に分捕ったものでござるな」
楓は、つかつかと頭らしき雑兵に近づき、金の粒を見せる。
「これで、まとめて譲っていただけまいか?」
「こりゃあ」
掌に乗せられた金を見て頭が目を見張る。
「あんたら、どっかの家中かね?」
「いや、詳しい事情は申せないのだが…」
雑兵達が一斉に鯉口を切り、60数える間もなく、雑兵はまとめて地面に伸びていた。
「慰謝料代わりに持ち帰ってもいいのでござるが、薬代が必要なのはそちらの方らしい。
余り事を荒立てるのは得策ではないでござるからな」
楓が、頭の頬の横に取り上げた金をぽとりと落とす。
123ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 23:27:58 ID:???
>>122
「その代わり、ここであった事は他言無用、適当に話を作る事だ。
もし、誰かに漏れていたら地の底まででも追い込んで
み、な、ご、ろ、し、だ」
その金の側に、夕凪が突き立てられた。
その夕凪が一閃し、女達の縄が地面に落ちる。
「女ばかりの道中故、買い取っても仕方がない。達者を祈るでござる」
「…奴隷、って奴?」
ぺこりと頭を下げて去っていく女達を見て、裕奈が言う。
「そう言う時代でござる。敗れた土地の物も人間も分捕られて売り物買い物
珍しくもない」
「奴隷…」
アキラが、何故か悪寒を感じてぶるりと身を抱いた。

「あっ、来た来た」
麻帆良の廃村で待っていたパーティーの元に、
村に向かった三人がガラガラと荷車を押して現れた。
「ごめんねー、私も行けば良かったんだけど」
中心で横棒を押していたアキラに明日菜が言う。
「明日菜殿は些か目立つでござるからな。あれから村も見付けて
なんとか粟、麦、味噌、その他仕入れて来たでござる」
「結構色々あるな。流石に白米って訳にはいかないかこの時代」
荷物を見た千雨が言う。
「この人数で長期戦も考えねばならないでござるからな」
「に、しても、さすが忍者、用意がいい」
「んー、何の事でござるかなー♪
しかし、金はどこでも通じるでござるからな」
「ああ、だからこそ大事に使わないとな…始めっか」
石を抱えた明日菜が横を通り過ぎ、楓と喋っていた千雨も動き出した。
124ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 23:31:02 ID:???
>>123

干飯を作り焼き結びを作り薫製を作り、
その他諸々一日がかりの旅支度に心労も加わり戦国時代二日目の夜を熟睡した一行は、
些か後ろ髪引かれる思いで世界樹を見上げていた。
「必ず、戻って来る」
アキラが呟く様に言い、運動部四人組が先に待つネギま部・超一味に向けて歩みを進めた。

「何か、来る」
小田原に向けて南下する一行の中で小太郎が言った。
「何、これ?」
偵察機の映像を見て和美が言う。
「どうしたんですか?」
ネギが言う。
「これって、馬?」
「は?」
そうこうしている内に、もうもうたる土煙が近づいてきていた。
「うまーっ!?」
「馬だ」
「馬や」
裕奈が絶叫し、アキラと亜子が呟く。
「そう言えば、漫画で見た事ある」
ハルナが言う。
「何か、戦国時代の関東平野にはバカデカイ馬がボスで野生の馬の大群がいたって…」
「そのものズバリあれじゃないのっ、って、危ないってっ!!」
「退避いぃいーーーーーーーっ!!
明日菜と裕奈が叫び、パーティーが避難を始めた。
「夏美姉ちゃんっ!」
小太郎が半獣の腕で夏美を投げ飛ばし、そのまま跳躍した。
125ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 23:34:06 ID:???
>>124
「あーーーーーーうーーーーーー」
「ふーっ…皆さん、無事ですかっ!?」
どうやら通り過ぎたらしいと安堵したネギが、青い顔で叫ぶ。
とっさに飛翔していた刹那が夏美を抱えて着地し、周囲の視線にハッとする。
「わー、きれーな羽ー、それもアーティファクトなん?」
亜子が感嘆の声を上げた。
「え、ええ、まあ、その様なものです」
刹那がほっと息を吐いて言う。
「だあぁああーーーーーーっ、止まれ、止まれっ、止まらんかいぃいいっっ!!」
馬の大群は、とっさに飛び越えようとして背中に着地した小太郎の絶叫と共に
遠い土煙となって消えていく。
「…私が行って来ます。皆さんは小田原に向かって下さい。必ず戻りますので。ネギ先生…」
「はい、このかさん…皆さんの事は」
ネギが言い、開き直った刹那が小太郎を追って羽ばたいた。

「駄目でござるか?」
「ええ」
バッジの発信器機能を使っていたネギが楓に言う。
「こちらも、駄目です」
茶々丸が言った。
「一斉に位置確認機能が飛んだカ。時空乱流の影響と考えるのが自然カナ」
超が言う。
「ちょっとー」
偵察機のモニターを見ていた和美が言う。
「良さ気な水場はっけーん」
126ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 23:39:18 ID:???
>>125

「なんか、ちょっとしたオアシスねー」
雑木林を分け入って泉に辿り着いた明日菜が言った。
「水きれい…冷たい」
アキラが泉の水をすくい、一口飲んだ。
その近くで、まき絵がくんくんと腕に鼻を近づけている。
「あー、ネギ先生に茶々丸さん、
ちょっと水浴びするんで見張っててくれますか?風呂なんていつ入れるか分からないし。
てか、覗くなよ。覗いたら殺す」
「は、はい、分かりました。イギリス紳士として…」
「なにー、混浴じゃないのー?ネギ君またピカピカにしてあげたのにー」
裕奈が笑って言った。
「はいっ!見張りにつかせていただきますっ!!」
ネギがぴゅうと林の中に消えた。
「つまんないのー」
「(バカピンクが…)お前らなぁー…」

「気持ちぃーねー♪」
「まあな…またデカくなってんな」
泉に浸かり、調子に乗って背泳ぎを始めた裕奈の隣で千雨が呟く。
水の中から顔を出し、ぶるぶると頭を振ったアキラの表情は清々しかった。
だが、物音に目を向けたアキラの顔からは、その爽やかな美しさは影を潜めていた。
「おいおい、天女様の行水かー?それも団体さんで(絶対こんな言葉ないだろうな…)」
また、野伏りの集団だった。
「おいっ、何だか知らんが年頃の娘ばかりこんな所で群れてんだ、
痛い目遭いたくなきゃあ大人しく水から上がって付いてきな」
野伏りの先頭で、口元に傷のある鋭い雰囲気の牢人者が刀の柄を叩いて言う。
その隣では、大男の野伏りがドンと鬼の様な金棒で地面を突く。
127ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 23:42:26 ID:???
>>126
その時には、岸に寄っていたアキラはカードを水に浸していた。
アキラが両手で水面を叩く。それと共に、泉の水が大波となって野伏りを襲った。
「な、なんだっ!?」
何人もの野伏りが思わぬ勢いの大波にぶちのめされ、
兄貴格らしい口傷の牢人者が刀に手を掛けて周囲を伺う時には、
アキラの姿は太陽と共にあった。
大波と共に回転しながら泉を飛び出したアキラは、青緑色のコスチュームで
野伏りの中心に着地していた。
「アクア・スプラァーーーーーーッシュッ!!」

小太郎を乗せた野生馬は、林を抜け野原を抜け再び林に入った辺りでようやく速度を落とし、
足を止めた。
「ふーっ」
小太郎が一息ついて馬を下りる。
「大丈夫でしたか?」
側に着地した刹那が言う。
「こんなん何て事あるかい」
「そうですか」
雄叫びを頼りに降下した刹那が言う。
「それより、今、なんか通り過ぎた様な…」
「しっ」
刹那の目は既に仕事モードだった。
周囲に、チラホラと雑兵らしき姿が見える。気配からしてその何倍もの人数がいる筈だ。
二人が元来た道を戻ると、野原には幕が張られ床机に掛けた大将を中心に
鎧武者や雑兵が配置していた。
128ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 23:45:30 ID:???
>>127

「おいっ、あんまし調子に乗るなよ」
口傷の牢人者の抜き打ちに、アキラの黒髪が一筋二筋はらりと落ちる。
既に、野伏りの徒党は強烈な水流に全滅同然となっていた。
「げっへっへっへ…」
大男が金棒を振り上げた。
「アデアット!」
水を上がり野良着の帯を締めた明日菜が兄貴格の前でハリセンを一振りし、口傷が飛び退く。
そのまま、口傷の刀とハリセンが二度、三度交わる。
「結構、やるわね」
「何モンだ、てめぇ…」
口傷の目に鋭さが増した。

「赤備え?徳川、いや、武田?…」
陣中を見渡し、大将の周囲を観察した刹那が呟く。
「…うぬら、大蔵井高虎が巻狩りと知っての狼藉か?」
大将が青筋を浮かべて口を開いた。
「そんなん、馬に言うて…」
「これは、大変ご無礼いたしました」
小太郎の口を押さえた刹那が深々と頭を下げる。
「何じゃ、面妖な者ども…」
「申し訳ない、我ら、ただ道に迷った者にて、これにてご無礼を…」
「ああっ!」
二人が立ち去ろうとした時、雑兵の一人が悲鳴を上げて腰を抜かした。
「どうした?」
家老が言う。
「こ、こいつら…」
刹那のこめかみに嫌な汗が浮かぶ。
129ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/12(土) 23:46:40 ID:???
>>128
「怪し気なる術を使う忍びの者だそうだな」
近習らしき赤備えの鎧武者が低い声で言った。
「いえ、何の事ですか?」
「暴れ馬を装い陣中に入り込まんとしたか?」
近習は素っとぼける刹那を完全に無視する。
「刹那姉ちゃん、こりゃ…」
小声で囁く小太郎の声は、しかしどこかうきうきとしていた。
「うぬら、三ツ者か?それとも風魔党、軒猿か?
暴れ馬を装い白昼堂々陣中に乗り込みわしの首を取りに来たか?」
高虎が握る軍配を震わせて言い、槍襖が二人を囲む。
「引っ捕らえいっ!手に余らば斬り捨ていいっ!!」
「チイッ!」
刹那が夕凪を抜き、槍隊が風の壁に弾き飛ばされる。
「やむを得ません。小太郎君、作戦を前倒しします」
刹那が、背後の小太郎に呟く。
「おっ」
「私が大将の身柄を取ります」
「おうっ、雑魚は任せとき…来いやっ!!」
「秘剣、百花繚乱っ!!」
舞い散る花々と共に気の流れに断ち割れた軍勢のただ中を刹那が突っ切る。
“…いける”
高虎を射程に捕らえた、そう思ったその時、刹那は目の前に赤い彗星を見た。
次の瞬間には、刹那の夕凪が間一髪鋭い刃を受け太刀していた。

今回はここまでです。続きは折りを見て。
130マロン名無しさん:2008/01/13(日) 00:09:33 ID:???
アクアスプラッシュでちゃったwww
131マロン名無しさん:2008/01/13(日) 12:19:55 ID:???
泉にいると思われるメンバー(一部)

ネギ
アスナ
忍者
古老師
パル

隊長
茶々丸
アーニャ

・・・秒殺だろ、一人で相手しても
132マロン名無しさん:2008/01/13(日) 12:59:18 ID:???
何で超がいるんだ?
133マロン名無しさん:2008/01/13(日) 17:20:46 ID:???
>>132
>>94参照。
つか何を今更…
134マロン名無しさん:2008/01/14(月) 13:35:39 ID:???
>>133
あってないような説明だと思ったから飛ばしてたww
サンクス
135マロン名無しさん:2008/01/14(月) 13:51:45 ID:???
彦蔵?レベルでこれだったら、
鬼井尻なんかと戦ったらネギパーティー全滅ジャマイカw
136ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/01/16(水) 11:53:58 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>129

「うらあああっ!!」
泉のほとりで、アキラが、ブンブンと振り回される金棒を交わしながら後退する。
その大男が、野良着を引っかけ、
自分の横を這々の体で逃げようとする亜子を目敏く見付けていた。
間一髪、アキラに抱き付かれた亜子が大男の左手をすり抜けアキラと共に地面を転がる。
「うがああっ!!」
そこに、金棒が振り下ろされた。
「う、うっ…」
大男は、かつてない恐怖を覚えていた。
金棒を掴んだアキラは、そのまま大男ごとぶん回し、アキラの手を放れた大男は
激突した立木を我が身でへし折るまで金棒ごと低空飛行で林に消えた。
明日菜と口傷がじりっじりっとにらみ合いを続けている。
その間に、何人かの野伏りが頭を振って立ち上がろうとしていた。

刹那の目の前で、先ほど刹那を低く問いただした赤備えの近習が鍔元を握った長巻きで
ギリギリと刹那の握る夕凪を力押しにしていた。
飛び退いた刹那に奮われた長巻きの鋭い斬撃が刹那の首を刈らんとし、
刹那は間一髪地面を転がる様に低くそれを交わした。
「アデアット!」
とっさに呼び出された小太刀が刹那の左手に逆手に握られ、三撃目の長巻きを受ける。
束ねを失った刹那の左の髪の毛がバラリと流れ、長巻きがギリギリと小太刀を押しきろうとする。
刹那は気力を振り絞り、一瞬、小太刀の鍔で長巻きの動きを封じ目の前の赤備えに夕凪を奮う。
退く赤備えに攻勢に出ようとした刹那の夕凪と長巻きの刃が正面からぶつかる。
刃が弾け、刹那が飛び退く。
137ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/16(水) 11:58:41 ID:???
>>136
「やるな、あいつ…とっ!」
赤備えの太刀筋に感心した小太郎が、襲い来る刃をひょいと交わして気で相手をぶっ飛ばす。
「出来る…」
刹那が呟く。
「出来るな、到底おなごとは思えぬ」
「さぞや名のある武者とお見受け致す」
「大蔵井家馬廻り衆真柄太郎左衛門直高、殿には指一本触れさせはせん」
「神鳴流桜咲刹那、参る!」
「応!!」
「おいおい、名乗ってええんかいな…」
呆れた小太郎が襲い来る白刃をひょいと交わす。

「裕奈」
泉の中央付近で、防衛班に囲まれている裕奈に夏美が声を掛ける。
「顔、青いよ。やっぱり怖い?」
裕奈は、思い返していた。ここで捕まると言う事を。
あの時罪人の様に惹き付けられていた女たち。
女と言っても、よく見ると自分達とはそう変わらない年頃だった。
少しは想像が付く。この先、どんなに嫌らしい事をされても我慢しなければならない、
そのためだけに生きていかなければならない。
頭では分かっても、今まで女子校でのんびりと暮らして来た。
極端な話、同性の目だけを気にしていれば良かった、それは漫画の中、
素敵な思い出になるべき僅かな妄想としてしまっておけば良かった自分には
やっぱり想像の付かない世界。
そんな世界に自分はいる。文明社会の元気が役にも立たない剥き出しの暴力、
アキラは本当に強い、考えるだけで震えが止まらない。
でも、そんなの嫌だ、それで役に立つのなら、本気でネギに教わろう。
138ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/16(水) 11:59:48 ID:???
>>137

「!?」
水音に泉を見た野伏り達は目を見張った。
巨大な水柱が上がり、その中からやはり巨大な蛇が姿を現していた。
「水神様はお怒りだ」
泉からわあんと声が響いた。
「水神様はお怒りだ。
この泉の守護たる我、ミズチの名において、これ以上の狼藉、許しはしない」
ミズチの甲高い鳴き声と野伏りの悲鳴が泉に交錯した。
「退け、退けっ!」
口傷の叫びと共に徒党は逃走した。
アキラが泉を見ると、ハルナが親指を立てていた。
アキラが、少し照れ臭そうに親指を立てる。

「どうしましたか?大丈夫ですか?」
「おせーよロボ子」
駆け付けた茶々丸に千雨が毒づく。
「すいません、反対側を見張っていたもので…」
「ああ、そうか。ったく…あのガキ何やってんだ…」
野良着を着た千雨が舌打ちして林に入る。
「おいっ…おいっ、どうしたおいっ!?」
叫び声を聞いて、指示により泉の中央に身を伏せていた面々が一斉に走り出した。
139ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/16(水) 12:01:24 ID:???
>>138

「あ、相手は二人ぞっ!鉄砲、てっぽーうっ!」
高虎が軍配を振り上げた。
太郎左に押された、あるいは押されて見せた刹那と小太郎の背中がぶつかる。
「ちぃとキツイな。俺、本気出すか?」
「いえ、そこまでは」
前に出た刹那と太郎左が刃を合わせる。
その内、続々と鉄砲足軽が姿を現して来た。
「しゃあないっ!」
小太郎が地面に手を着いた。
「なっ!?」
「犬っ!?」
「おのれっ!!」
黒犬が縦横に陣地を駆け巡り、暴発が続発する。
「おのれ、何をしておるっ!!」
「殿っ!」
太郎左が将机へと走り黒犬、つまり狗神の一頭を叩き伏せた。
刹那は陣の崩れを見て取った。
「決着は何れっ!」
「応っ!!」
140ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/16(水) 12:02:36 ID:???
>>139

“…あれ?千雨さん、呼んでる…明日菜、さんも?…”
ネギは、意思の力を振り絞り、目を開きピントを合わせる。
“…呼んでる…ゆーなさん、ハルナさん朝倉さんがいる…”
「ネギ君、ネギ君っ!」
「しっかり、ネギ君しっかりっ!!…」
ぼやける視界が肌色に塗り潰される中、大事な生徒の呼びかけに応えなきゃと言う
ネギの奮戦虚しく瞼は重くなる。

ふわふわと体が浮いている。
かぽっかぽっと地面から聞こえるのと一緒に、リズミカルに体が揺れる。
何かを抱いた状態で手が縛られているらしい。
目の前に柔らかな黒髪。温かくていい匂い
「お、姉ちゃん…」
再びネギは眠りに落ちた。

今回はここまでです。続きは折りを見て。
141マロン名無しさん:2008/01/17(木) 02:20:23 ID:???
今週号は笛クロス作家が挫折しそうな内容だったなw

能力がもろかぶりorz
142マロン名無しさん:2008/01/17(木) 18:22:39 ID:bWCMKr4Q
ぼちぼち役者がそろって来たな。
後は井尻と野原一家も出るのかな?

てか太郎左強ぇwwwww
143マロン名無しさん:2008/01/17(木) 19:29:10 ID:IUqNSpm+
ネギまの売りはやっぱりこれだよねw
http://4server.sakura.ne.jp/comics/pc/img.php?src=../src/844-4.jpg
21巻はエロスゴらしいけど…行ってみ
144ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/01/19(土) 01:17:49 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>140

「君に力がないからだよ」
「あの学園で平和に楽しく日々を送っていればいいものを」
「そんな中途半端な力で…」

「気が付いたか?」
見知らぬ天井、それは、木が香る様だった。
ネギが首を声に向けると、額から生ぬるく濡れた手ぬぐいが落ち、
“…綺麗な女性(ひと)だなぁ…”
二十代ぐらいの若い女性がネギを見ていた。笑顔ではないが自然な優しさの感じられる所作で、
長い黒髪と派手ではないが柔らかい彩りの和服がネギに和風美人を感じさせる。
畳の匂い、畳の上に直接延べた床に就くのは修学旅行以来だ。
「あ、あの…」
女性は、ネギの額に手を当てた。
「熱が高い、まだ休んでおれ」
凛とした、しかし優しい口調。ネギは素直に従った。
「姫様」
「吉乃」
部屋に、年かさの女性が現れた。
「その様な事、私たちが」
「よい、私が連れて来たのです」
「しかし、もし流行り病などでしたら」
「かかっておるのはネギ一人だ」
「姫、様?」
ネギが頭を回転させる。この状況だ、お姫様の一人や二人いてもおかしくはない。
「春日康綱が娘、廉だ…だから、寝ておれ」
布団の中でテレビで見た通りの土下座をするネギに、
思わず噴き出しそうになりながら廉姫が言った。
145ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/19(土) 01:18:55 ID:???
>>144
「ネギ・スプリングフィールドです」
「うむ、はるかとっくに、エゲレスからはるばる来たそうな」
「はい」
そう言うネギの息は、既に切れていた。
「だから、寝ておれ」
「姫様」
吉乃が止めるのも聞かず、廉がネギの肩を掴み、ネギは布団の中に体を伸ばす。
“…いい、匂い…いい、匂い…いい、匂い…ハッ!?”
ネギが再びガバリと跳ね起きた。
「みんな、みんなはっ!?アスナさんこのかさんのどかさん夕映さん…」
「大丈夫、皆無事だ、だから今は休むが良い、そなたが一番心配だと皆申しておる」
廉姫の声は、既に眠りに落ちたネギには最初の結論しか聞こえていなかった。

「…柿崎さん釘宮さん桜子さん…」
ネギが次に目を開いた時には、チア三人組がネギの顔を覗き込んでいた。
「…あれ…夢…」
しかし、額から再び生ぬるい手ぬぐいが落ちて、木の香の和室が現実を認識させる。
「皆さん、どうしたんですか?…皆さんも…」
切れ切れに言葉を発するネギに円が頷く。
「イギリスで何かヤバそうだったからゆーな達連れ戻そうと思って、
そしたら何か光って空港みたいな所に来たと思ったら今度は爆発したりとかなんとか、
それで、又なんか光ったら広い野原にいた」
美砂が言う。
「よく見たら遠くに世界樹見えて、全然訳分からなくて、
夜が明けてから、取りあえず誰か探そうって桜子に着いて歩き出したんだけど、
そしたら、荷車が…」
そこまで言って、円が口を押さえて部屋を飛び出す。
「どうしたんですか?」
ネギが心配そうに言う。
146ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/19(土) 01:20:50 ID:???
>>145
「死体。
荷車の周りにうじゃうじゃ死体あったの。時代劇の、戦国時代の兵隊みたいなの。
なんか、荷車が襲われて襲った方も襲われた方も全滅したみたい」
美砂が青い顔をして言った。
「でも、それで食べ物には困らなかった。
桜子が近くで無人の小屋見付けて、そこに運べるだけのもの運び込んで…」
美砂が言っている所に円が戻って来た。
「あの、釘宮さん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫…もう、肉食べられないかも…」
円が青い顔でネギの側に座る。
「その小屋に泊まってたんだけど、
信じられないけどタイムスリップしたとしか思えないし、ずっとここにいても仕方ないって。
それで、町でも他のみんなでもなんでも見付けられないかって事で、また出発した。
そしたら、桜子が、ネギ君おんぶして馬に乗ってるお姫様見付けて」
「そうだったんですか…」
美砂の話を聞いたネギが顔を伏せた。
「ごめんなさい…皆さんを巻き込んでしまって…」
「超さんから大体の事聞いた。来るなって言われてたのに勝手に付いて来たの私たちだし、
それよりネギ君ひどい熱なんでしょ?」
円が言う。
「いえ、大丈夫、です…」
言い終わる前にネギは息切れする。
147ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/19(土) 01:21:57 ID:???
>>146

井尻又兵衛由俊は、月を見ていた。
信じがたい闖入者に振り回された騒がしい一日だったが、
その騒動の源も今は大人しく寝息を立てている。
その寝顔は、子を持つと言うのはこう言う事かと思わせる。
何となく寝付けず、月を見ていた。
住処を出て、寝巻の単衣に用心の右手差しだけを差した姿で坂を上る。
坂の上から、美しき笛の調べが流れて来る。
誘われる様にその調べを追って歩みを進める。
坂の上、本丸の門の向こう、流れる笛の源、又兵衛は知っている、違える筈も無い。
だが、この武骨者には、その調べに沈む物悲しい響きのなんたるかまでは分からない。
ただ、その音色に聞き入り、笛を吹くその女人の面影を思い浮かべ
僅かに憂いを浮かべた又兵衛の目は、今、武人のそれとなった。

「出て参れ」
開門させ、途中で六尺棒を手にした又兵衛が、本丸中庭で建物の陰に向けて言葉を発する。
「出て参れ、この方より参ろうか?」
次の瞬間、又兵衛の棒が地から鋭く振り上げられ、又兵衛の目の前で黒い影が飛び退いた。
やはり、先ほど塀を乗り越えるのを又兵衛が察知した者だった。
二度、三度と棒の突きが繰り出される、黒い影は見事な敏捷さでそれを交わす。
小柄で動き易そうな相手だった。
影は再び又兵衛の懐に入ろうとしたが、その前で斬り上げられた棒が空を切り、飛び退く。
そこを狙っての突き、敏捷な影も辛うじて身を交わす間断無き鋭さ。
「ふんっ!ふん、ふんっ!」
豪快で、それでいて鋭い突きを前に、黒い影は大きく飛び退いた。
黒い影が地面に手を着く。
「!?」
夜闇から湧き出す様に、黒い影の周辺から黒い犬が群れとなって又兵衛に一斉に襲いかかった。

今回はここまでです。続きは折りを見て。
148マロン名無しさん:2008/01/19(土) 20:52:47 ID:VWv8ROe2
キツイの手ぇ出したなってのが正直な感想だな

クレしん、それもアッパレとネギま!、戦国ヲタとネギヲタの客層がどんだけ被ってるか未知数だし
アッパレは時代考証もすごい昔の男女微妙な表現も多いガチで名画
ネギま!で「戦いと死」入るアッパレとコラボ、これシリアスでやるとまともに書き手の力量問われる
長編だったら特にな、相当な書き手じゃないとかなり厳しい

この作者マジメな人なんだろね、このクロスがどんな世界かしっかり書き込もうとしてるみたいな
落ち着いてるっていえばそうだけど、そっからどんな勢いになるかだな

色々書いたけど今ここ職人さん貴重だし、両方のファンとしては期待
149マロン名無しさん:2008/01/21(月) 21:30:09 ID:???
保守
150マロン名無しさん:2008/01/21(月) 21:37:15 ID:???
どうやらしんちゃんは出ないみたいね
151マロン名無しさん:2008/01/22(火) 10:32:22 ID:???
『ネギ君がデモンベインを招喚したようです』を発見
ttp://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1200886233/1-100
152マロン名無しさん:2008/01/24(木) 10:11:18 ID:???
相変わらず書き込みが少ないな
153ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/01/26(土) 01:18:24 ID:???
間が空きました、と、言うか正直結構手こずってますが、
では、今回の投下、入ります。

>>147

気が付いた時には、小太郎の背中は地面を滑り、
小太郎は地面に鉄の味に満ちた唾を吐き出した。
小太郎が又兵衛の前に走った時には、又兵衛は瞬時に狗神を叩き伏せた後。
その予想外のスピードに、棒で顔に一発いいのを貰ってしまった。
ニッと険悪な笑みを浮かべた小太郎が体勢を低くして突っ込んだ。
振り下ろされた棒を気を込めた左腕で受け、その瞬間に右手で掴む。
「うらあぁああ…あああああっ!!」
そのまま両手で棒を掴みブン回してやろうとしたのだが、
又兵衛が棒を手放すと共に小太郎だけが独楽の様に回転していた。
その小太郎が、間一髪回転を止めて飛び退く、
その前で又兵衛が抜き打ちした右手差しが空を切っていた。
「峰打ち、返しの一瞬がなければ斬られとったか…」
小太郎がゴクリと息を呑み、不敵な笑みを無理やり浮かべて前を見る。
「いずこの忍びぞ?
神妙に縛につけ、さもなくば、斬る」
「やってみぃやっ!!」
性格上、他の返答は存在しなかった。
又兵衛は、鋭い突きを出した。目の前で大量発生した小太郎が消滅し、
一人の小太郎が辛うじて身をかわす。
「まだ余裕かぃな」
小太郎が鋭く裂けた学ランの袖に目をやった。
「かなうなら吐かせたい、それに、貴様は惜しい」
「ぬかせっ!」
154ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/26(土) 01:19:30 ID:???
>>153
「神鳴流奥義・百烈桜華斬!」
突っ込んだ小太郎が、次の瞬間気の壁に弾き飛ばされ辛うじて受け身を取る。
その小太郎の目の前では、刹那が左逆手に握った小太刀と右手差しがギリギリと押し合っていた。
「何をやっているんですか小太郎君っ!!」
刹那の怒声は小太郎が震え上がる程だった。
「わ、悪い、めんどいから一発入れれば早い思うたんやけど…」
刃が弾け、刹那は両刀を地面に置いて平伏する。
「ご無礼の段、平にご容赦の程を。
さぞや名のある武人とお見受けいたす、
拙者桜咲刹那と小太郎、信じ難きは当然なれど只道連れを探すのみ、
仇なすつもりは毛頭ございません。
改めて、詮議の事は当然と存ずる、ここは無駄な血を流さずに曲げてお頼み申す」
ギロッ
小太郎がぶしょうぶしょうそれに倣った。
「頭を上げよ。
もしや、お主らもヘイセイとやらから来た未来の人間か?」
二人が顔を見合わせた。

翌朝、刹那は薄暗い座敷牢で粟飯と香の物を頂き、合掌した。
「ほんまに良かったんか?こんな牢屋…」
「ここは仮にも本丸です。向こうにはあの井尻なる侍もいる。
穏便に済ませないと血を見る事になります」
その井尻又兵衛が格子戸の前に姿を現した。
「出よ」
指図と共に牢番が鍵を開けて二人を促す。
又兵衛が刹那に夕凪を渡す。
155ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/26(土) 01:20:48 ID:???
>>154
「預かっておいた脇差しが姿を消した。その代わりこの様な札が残っていた」
「それでいいのです」
「面妖な。全く、どいつもこいつも…」
「これから吟味ですか?」
刹那が尋ねる。
「いや、姫様の客人がその方らの身元を保証した。ご無礼仕った」
「いえ、無礼はこちらの方、当然の仕儀にて。
それより、姫様の客人と言うのは…」

「刹那さん!」
「アスナさんお嬢様皆さんっ!」
「控えよ、姫の御前なるぞ」
「よい」
案内された姫の部屋で一驚する刹那をたしなめる又兵衛を廉姫がたしなめる。
「その方が桜咲刹那と村上小太郎か?」
「はっ」
廉姫の問いにこの手の所作になれている刹那が即座に片膝を着き、
小太郎がおずおずとそれに従う。
「おなごの身で、この又兵衛を唸らせる剣の使い手と聞く」
「とんでもございません、いささかかじったに過ぎぬもの」
「あの…いいですか?」
明日菜が口を挟む。
「これ…」
「よい」
廉姫が吉乃を遮る。
「ネギが…」
156ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/26(土) 01:21:57 ID:???
>>155

「でも、よくここが分かったね」
廊下で、明日菜がひそひそと小太郎に言う。
「ああ、匂いたどってきてこの辺や言う所までは分かったんやけどな、
そんで、様子見てる最中に見つかってもうた。あのおっさんなかなかやるで」
「鬼の井尻、春日切っての武勇の士です。
わっぱやおなごを相手に戯れにも程があります」
吉乃が言う。
「何や、聞こえてたんか」
「いや、この娘御、些か信じられぬが、立ち合えばそれがしとて分かり申さぬ。
小太郎もなかなかのものぞ」
小太郎が指で鼻をこすった。

ネギの伏せる客間に一行が入り、看病の侍女が平伏する。
「どうだ?」
廉姫の問いに侍女が首を横に振る。
「一向に熱が下がりませぬ」
「失礼」
刹那がネギに近づき、額に手を当て、瞼の中を覗き込み寝巻の中を覗いて胸に耳を当てる。
「うちも試してみたんやけど、うちの、あれもケガにしか効かないみたいで…」
このかが泣き出しそうな顔で言い、小太郎が何か言いかけるのを目で制して刹那が口を開く。
「これは、狐憑きですね」
「は?」
刹那の言葉に一同ぽかんとした。
「方々、箸と手拭いを用意して下さりますか」
刹那の言葉に廉姫が頷き、侍女が取りに戻った。
「ネギ先生」
「刹那、さん…コタロー君…良かった…」
ネギが薄目を開け、苦しそうな息の下で笑みを見せた。
157ネギま!戦国史(クレしん):2008/01/26(土) 01:23:05 ID:???
>>156
「少し、我慢を」
刹那がネギに手拭いを巻いた箸を咬ませ余った手拭いで頭を縛る。
「アスナさん、ハリセン用意、お願いします」
「えっと、狐憑き?」
「ええ、ですからハリセンを」
「分かった」
怪訝そうに言った明日菜だが、一度廊下に出て、ハリセンを手に戻って来た。
その頃には、小太郎が掛け布団を剥がしてネギをうつぶせに引っ繰り返していた。
「ここで、ネギ先生のお尻を思いっ切りひっぱたいて下さい」
「はぃ?」
「十回も叩けば狐は離れる筈です」
「刹那さんがそう言うなら」
「誰か、手足を」
「よっしゃ」
「では、私が」
又兵衛がネギの腕を、小太郎が脚を押さえた。
「さあ」
「うん」
「…んんんーっ!」
バシッと言う音と共に、くぐもった悲鳴が部屋に響いた。
「続けて下さい」
「うん」
「んー…」
そこはネギ、明日菜の躊躇を見て取ったのか、彼女を困らせる事は極力控えようとしていた。
ネギが力一杯箸を噛み締めて痛みをこらえる中、
明日菜は容赦ない程にハリセンをネギの尻に叩き付けた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
158マロン名無しさん:2008/01/26(土) 18:09:40 ID:???
GJ!
そして支援age
159マロン名無しさん:2008/01/29(火) 08:26:26 ID:???
保守
160マロン名無しさん:2008/01/29(火) 08:53:43 ID:???
まとめサイトがまるで更新されていない
どうにかならない?
161マロン名無しさん:2008/01/29(火) 09:12:47 ID:???
wikiだから誰でも編集できるぞ。携帯では無理だが
162マロン名無しさん:2008/01/30(水) 20:25:28 ID:???
複数の作品とのクロスオーバーってあり?
ネギま!×ギアス×カービィとか、ネギま!×荒木作品×戸塚作品とか
(これはあくまで『例え』で、これをやるってわけじゃないけど)
163マロン名無しさん:2008/01/31(木) 04:40:36 ID:???
いいんじゃない?
とにかく作品に飢えているので、なんでもいいから読みたい
164『女子高生ハンターしまだ!』:2008/02/01(金) 01:06:17 ID:???
「失礼します」

学ラン姿の少年は引きつった表情のまま小声で挨拶を発し、開いたままの入り口から中の様子を見渡した。
職員室では何人かの教師達が中央の丸机に集まり、マグカップを手に談笑に花を咲かせている。
その中にいる教師の一人に眼を向けると、少年は後ろ手に引き戸を滑らせキッチリと閉ざした。

「ん、何だい?
 もう下校時間は過ぎているはずだが……」

引き戸とサッシのぶつかる音に気付き、教師達が何事かと振り向いた。
その内の数名は瞬時に顔色を変え、あまつさえ一人は椅子を飛ばす勢いで立ち上がった。
三十前半のまだまだ若さを保った肉体は、無様にも震えていた。

「そ、そろそろ『ごっつええ感じ』の再放送が始まるから、これで失れ」
「待てよ」

ガクガクと震え出す教師の肩に手を置き、少年がドスの効いた声を発する。
誰も声を発せず、古びた空調の機械音だけが嫌に静かに響いていた。
やがて少年が教師の背中を軽く押すと、教師は震える足を不器用に動かし、背後の少年と共に職員室を後にする。
ピシャリと引き戸が叩きつけられ、その音を合図に若手教師がおずおずと年配の教師へ話しかける。

「いや、だ、大丈夫ですかね……」
「だ、大丈夫じゃないですかね……。
 島田先生は空手をやってましたし、昔は鉄拳制裁も……」
「で、ですよね。
 ……私はそろそろ失礼します」

若手教師がカバンを掴むと、それを皮切りに他の教師達も次々と帰宅の準備を始め出す。
あの少年―――――『佐藤十兵衛』は転校早々暴力事件を起こしたとされる、悪魔の化身のような奴だ。
しかもその発端は生徒間のイザコザではない、『ヤクザ』相手の返り討ちである。
数週間前のような惨劇の目撃者にはなりたくはない……そこにいる誰もがそう思い、『島田武』を見捨てた。
165『女子高生ハンターしまだ!』:2008/02/01(金) 01:10:14 ID:???
「な、何だろうな……こんな時間に……。
 先生、早く帰らなきゃいけないんだけどな……」
「『ごっつええ感じ』、宇都宮じゃ再放送やってねーだろ」

言い訳は一瞬で看破され、島田は観念して覚悟を決め進学相談室に入った。
傾いた長机を十衛兵との間に挟み、島田はパイプ椅子に腰掛ける。
そんな島田を見ることなく、少年は懐からDVDケースサイズの厚紙を取り出す。
島田は訝しげに視線を映し、やがて十兵衛の手が震えていることに気がついた。
十兵衛の表情は島田と同じように固く、そして青ざめた唇から驚愕の告白が告げられる。

「実は……お見合いをすることになりました……」
「いや、その件については……って、ハァ?
 十兵衛、お前がお見合いだって?」

不意を突いた発言に仰天した島田だが、十兵衛の家族関係を思い出し納得した。
彼の父親はエリート財務官僚、そして母親は栃木県知事の佐藤亜由子なのだ。
まだ多感な十代とはいえ、今のうちにこういった慣習に慣らそうという狙いなのだろう。
何はともあれ、島田は十兵衛の目撃が殴りこみではなかったことに安堵し吐息を漏らした。

「で、何だって俺に話すんだ?
 まさか、相手はビクトリア級のスゴイ不細工で困ってるってか?」

島田は震える十兵衛の手から見合い写真を取り、さっそく覗いてみる。
観音開きの見合い写真は和紙を基調とした仕上がりで、見合い相手の品格が見て取れる。
見るもおぞましい不細工であろうと予想していた島田だが、その予想は裏切られることとなる。
166『女子高生ハンターしまだ!』:2008/02/01(金) 01:13:49 ID:???
「……メッチャ可愛いじゃないか!」

「……しかも中学生なんだよ……どうしよう、『しまぶー』。
 まだオレ童貞で……しかも『包茎』だし、見合いとか初めてで……」

担任の名前を間違えるほどカチコチに緊張している十兵衛。
見合い写真には上品な微笑みを浮かべた可愛らしい女の子が映っていた。
============================================================================
時間軸は『喧嘩商売』は五巻終了時。
『魔法先生ネギま!』は修学旅行が終わった辺りです。

<『喧嘩商売』サイドの登場人物紹介>
【“宇都宮ラッパー”佐藤十兵衛】
ヤングマガジンにて好評連載中、『喧嘩商売』の主人公。
余裕で東大を狙える高い偏差値に加え、喧嘩テクニックを兼ね揃えた文武両道の男。
自らを『妻吹木くん似』と称するイケメンだが、性格は最悪。
童貞で仮性包茎であることをコンプレックスにしている。

【“女子高生ハンター”島田武】
行座宇都宮高校の教師で十兵衛の担任。
その裏の顔は、公称・5,6人の女子高生と関係を持った女子高生ハンターである。
実践的な性知識を十兵衛に伝授し、十兵衛からは師匠のように尊敬されていた。
                                         ・ ・
当然だが彼は『架 空 の 人 物』であり、モデルなどは存在しないさー。
167マロン名無しさん:2008/02/01(金) 02:09:38 ID:???
遅れましたが、投下終了です。
ネギまキャラの出番は次からです。
168ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/02/02(土) 01:15:23 ID:???
新作も始まった様で、なかなか順調な投下とはいかずすいませんが、
では、今回の投下、入ります。

>>157

「お、お主、大丈夫か?」
又兵衛が大汗を浮かべて言う。
布団の上で、うつぶせになったネギが尻を突き出したままヒクヒクと痙攣している。
その後ろで、明日菜がふーっと息を吐き腕で汗を拭っていた。
「て、手加減無しやな…」
小太郎が言う。
「だって、そうやって言ったでしょ」
明日菜が少し心外だと言う感じで言った。
「う、うーん…」
「おう、ネギ、気ぃ付いたか?」
「うん、コタロー君」
「きっつかったからなぁ。でも、楽になったやろ?」
「?うん、そう言えば」
ネギがにこっと笑った。
「お嬢様、外傷の治療を。今は熱が籠もりますから痛みが引く程度に加減して」
「分かった」
木乃香がぱたぱたとネギの尻を扇ぎ、
ネギが気持ちよさそうにふーっと息を吐くのを見て、又兵衛と廉姫は思わず顔を見合わせた。
「ん、んっ」
又兵衛が咳払いをしてそっぽを向き、ハルナの眼鏡がキラーンと光を帯びる。
169ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/02(土) 01:18:37 ID:???
「これは…その方、狐を祓えるのか?」
又兵衛が言う。
「ええ、まあ、多少は」
嘘ではないだろうから明日菜が苦笑いして言った。
「廉姫様、でしたね。ご迷惑をお掛けしました」
「よい」
頭を下げるネギに、廉姫は凛とした風情で返答する。
「…何から話せばいいでしょうか?」
ネギの言葉に、廉姫は袂で口元を多いくすりと笑った。
「あの泉のほとりで、倒れているそなたとその周りで心配しているこの者たちを見付けてな」

(回想)
「ネギ君、ネギ君っ!」
「ネギ、ネギッ!?」
泉のほとりで野良着を引っかけた一同が駆け寄る。
その中心で、ネギは荒い息を吐いて意識朦朧としていた。
「ひどい熱だ」
額に手を当てたアキラが言った。
「いかがした?」
一同が顔を上げると、そこには馬に跨った廉姫の姿があった。
「あっ、あのっ…」
言いかけたのどかを夕映が目で制する。
だが、馬を下りた廉姫はさっさとネギの前に腰を下ろしていた。
「…変わった風体…」
「彼は海の向こう、遙か遠い国、あなた方が南蛮と呼ぶ所から来た者でござる」
仕方がないので楓が言う。
「酷い熱ではないか」
視線を向けられたのどかが頷く。廉姫の声からはきびきびとした誠実さが伝わっていた。
170ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/02(土) 01:21:39 ID:???
「そなたら、何者だ?」
「はい、旅の者なのですが…」
夕映が言い淀む。
「…もしや、ヘイセイなる未来から来た者か?」
一同、ぎょっとして顔を見合わせた。
「で、あればこの状況では猶予はあるまい」
姫の言葉に一同頷いた。
この面子この時代なら大概の危機は乗り切れる。何より、廉姫の言葉には誠実さがあった。

「ひどい熱や…」
その後刹那たちと再会した本丸の一室で床に就いた時には、ネギは返答も出来ない有様だった。
「酷い熱や…」
亜子が泣き出しそうな声で言った。
「薬湯を用意した」
「ありがとう、ございます」
廉姫の声に、ネギが身を起こした。
だが、碗はするりとこぼれ落ち薬湯は寝具に吸い込まれる。
「ごめん、なさい…」
廉姫が抱き留めたネギは目を閉じてふうふうと息をするだけだった。

明日菜たちはくるわの一つに案内されていた。
「幸い、当分の糧食は用意しているらしいですね。
まずは落ち着くまでここに留まるがよい」
「有り難うございます」
廉姫の言葉に明日菜たちは深々と頭を下げる。
「あのお姫様、ヘイセイって言ったな」
廉姫の背中を見送ってから千雨が言った。
「まさか、平成15年の平成?」
裕奈が言う。
171ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/02(土) 01:25:22 ID:???
>>170
「平成なる未来から、他に解釈の仕様が無いネ」
超が言う。
「取りあえず、今はあのお姫様の善意に甘えるしかないです。
ここでこじれたら厄介な事になりかねないです」
「ネギ先生が人質かよ」
夕映の言葉に千雨がギリッと歯がみし、のどかがぶるっと震えて下を向く。
「イザとなったら、この程度の構えであれば奪還は可能でござるが…」
楓が言う。
「病人抱えてイクサか?いくらこっちがバケモノじみてるって言ってもそれはきっついぞ」
千雨が言い、楓が頷く。
「今はあの人を信じよう、あの人は信用出来る、と、思う」
アキラの落ち着いた言葉に、皆も気を鎮めた。

(回想終わり)
「お姫様は、僕たちが平成の未来から来た事を知っていたんですか?」
驚きを隠さずに言うネギに、廉姫は頷いた。
「ど、どうして、ですか…」
「ドウドウドウ」
体力が戻りきらず、詰め寄ろうとしてよろけたネギを廉姫が支え、
今にも炎の拳が飛び出しそうなアーニャの前でハルナが笑って言う。
「他にもおる」
又兵衛が言った。
「他にも?他にも平成から来た者がいると言う事カ?」
超が尋ね、廉姫が頷いた。
「それは、それは誰なんですかっ!?」
廉姫の優しい仕草で床に戻ったネギが再び声を上げた。

いっつも付けてるアンカは忘れるは>>170で「ひどい熱や…」は一つ余計だわorz
余計なのは前の方ですので失礼しました。
今回はここまでです。続きは折を見て。
172マロン名無しさん:2008/02/05(火) 00:11:33 ID:???
保守
173マロン名無しさん:2008/02/09(土) 02:38:38 ID:???
保守
174マロン名無しさん:2008/02/13(水) 23:32:40 ID:???
保守
175マロン名無しさん:2008/02/16(土) 15:49:31 ID:???
保守
176マロン名無しさん:2008/02/19(火) 02:29:12 ID:wI7c+cAB
保守
177マロン名無しさん:2008/02/19(火) 02:41:30 ID:???
もう誰もこねーし落とそうぜ
178ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/02/21(木) 02:10:57 ID:???
結構間が空いてしまいました、すいません。
元ネタからまんま丸写しになる部分はかなり省きましたのでご了承下さい。
では、今回の投下、入ります。

>>171
「童です」
廉姫が言う。
「童?子供ですか?」
刹那が聞き返した。
「そうです、そなたらよりも幼い、五つと申しておった」
「五つ、子供、平成から子供が一人でこの時代に来たと言うカ?」
超が言う。
「うむ、そう言う事になるが、物怖じもせずなかなか肝が据わっておる」
又兵衛の言葉に、一同顔を見合わせた。
「その子に、会えますか?」
ネギが言う。
「今日、私と会う事になっている。だが、そなたはもう一日休んだ方がよい」
廉姫が言った。
「そうですね、今は私たちに任せて下さい」
刹那が言った。

ネギを床に残し、
ネギ・パーティー(当面は一緒に飛ばされて来た3‐Aの面々)の面々が廊下に出た。
廊下を歩きながら、夕映がしきりに首を傾げている。
179ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/21(木) 02:14:02 ID:???
>>178
「前から気になっていたのですが…」
「どうしたのゆえ?」
のどかが聞き返す。
「ええ、あの廉姫様、どう見ても二十歳は超えていますね」
「そりゃそうでしょう、綺麗な人だけど」
美砂が言う。
「いえ、この歳の適齢期は十代、大体私たちの一昔前から考えると十歳ぐらい上乗せして
丁度いいぐらいなのです」
「じゃあ、三十路超えてるって訳かー」
美砂が言う。
「そう言う事になるです。特にこの時代、領主の娘の婚姻は外交の一環、
あの歳まで居残るのは些か不自然です」
「まあ、あれで私らと同い年とか言われたらそれこそバケモノ…」
口を開いた千雨と夏美の目が合う。
「いや、待てよ、世の中そうとばかりは…」
言いかけた千雨が、何かゾクリとするものを感じて口を閉じた。
「ゆえ吉くん」
ハルナがニヤッと笑う。
「どうしたですかハルナ?」
「いやぁー、そうなんだよねー、でもねー、やっぱこういう時代だとねー」
「不気味な事言わないで下さいですハルナ」

「それで、どうする?」
くるわに戻ったネギ・パーティーの中で明日菜が言った。
実はこちらに来てからずっとそうなのだが、皆、城で買い受けた(無理にでも支払った)
飾り気の無い部屋着の小袖姿だ。
180ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/21(木) 02:17:13 ID:???
>>179
「相手は五歳児、この人数は些か大仰でござるな」
楓が言う。
「こーゆー時ちづ姉がいたらなぁ」
夏美が自分の言葉に下を向いた。
「私はパス、ガキ苦手だし」
明日菜が言った。
「随分変わった思うけどなぁ」
「変わってないわよっ」
木乃香の言葉に、明日菜がふんっと鼻を鳴らす。
「よっしゃ、じゃ、私が行こう」
和美が手を挙げた。
「インタビューはジャーナリストの性ってね。きっちり聞きたい事聞いとくからさ」
愛用のカセットテープレコーダー片手に和美が言った。

「んんー」
廉姫の部屋で、上座に座る姫の脇に控えた和美がチラと姫を見る。
やはり、脚を崩せる雰囲気ではない。
横には、くじに当たった美砂と亜子が座っている。
「姫」
吉乃が待ち人の到着を告げる。
「よい」
「入れ」
ガラリと障子が開き、確かに平成の五歳児が姿を現した。
“…じゃがいも…”
赤いシャツに黄色い短パンは明らかに現代人の服装だが、髪型はやや古風なイガグリ頭。
ちょっとじゃがいもを思わせるやんちゃな雰囲気だ。
だが、そのじゃがいも小僧は、上座に廉姫の姿をみとめると、両手の人差し指をちょんちょんと
触れさせて顔を伏せる。
181ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/21(木) 02:22:18 ID:???
>>180
「しんのすけ」
廉姫が声をかけ、じゃがいも小僧は真っ赤になっていた顔を上げた。
「ちこう」
「え?」
「こっちにおいで、ってお姫様言ってるんだよ」
和美が言った。
「ほーい」
「これっ」
「よい」
片手を上げてたったっと駆け寄ろうとするじゃがいも小僧を吉乃がたしなめ、
じゃがいも小僧が足を止め廉姫が寛容な言葉を発する。
「あー、ボク…」
「どったの?」
インタビューに進み出ようとして、
両脚の急性血行障害で畳に額を激突させた和美にじゃがいも小僧が言った。
「アハハハ…で、僕、お名前は?」
体勢を立て直した和美が尋ねる。
「オラ、野原しんのすけ、五歳」
「どこから来たの?」
「春日部から来たの」
「ふうーん」
「そっかー、春日部から来たんや、近くやなー」
「おねいさんお笑いの人?」
亜子は目をぱちくりさせたが、にっこり微笑み返した。
「違うよ、出身があっちなん」
「ふうーん」
しんのすけは、にこっと笑った亜子をまじまじと見る。
182ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/21(木) 02:25:29 ID:???
>>181
「でも、コスプレネタやるんでしょ、エ○ァン○リオンの」
和美と美砂が凍った。
「違うよ」
だが、亜子はにっこり笑って否定した。
「これは地毛、お目々もね、こう言う色なの。
日本人でもたまに素でこう言う人いるから覚えてたらええよ」
「分かった」
どうやら根は素直なお子ちゃまらしい。
「君、しんのすけ君って言うんだ」
美砂が風向きを変える様に口を挟む。
「オラ野原しんのすけ、五歳」
「元気だねー」
「えへへー、おねーさん髪長いねー」
「どうもー、しんのすけ君もイガグリ坊主ってレトロでいいかもねー」
「えへぇへー、でも、オラに惚れちゃいけないぜ。
オラ、恋愛対象は高校生以上って決めてるから」
「あはははー」
“…な、なに、このマセガキ…”
美砂の笑みが引きつるのが和美と亜子の笑いを誘う。

「ブヨブヨ三段腹アターック!
あー、まいったー!
みさちゃん許してー
オレが悪かったこの通りだ!いくらたるんでてもいいから!」
「ちょ、ちょっ、しんのすけ君しんちゃん、あんた、あんたの方が百倍お笑いやて」
爆笑に包まれる室内で、腹を抱えた亜子が一人二役七転八倒のしんのすけに窒息寸前の声で言う。
「アハハハハ、いや、これ、ちょっとたまらんて」
何をしようとしたのか、和美が立ち上がろうとする。
183ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/21(木) 02:27:04 ID:???
>>182
「たっ!」
「おっ?」
「って、ちょっ!?大丈夫しんちゃんっ!?」
ずっこけた和美の下敷きになったしんのすけを前に、亜子が真っ先に正気を取り戻した。
「つー、脚つったー…ごめんねー大丈夫?」
「オラ、平気だぞ」
「元気だねー」
和美がぐしゃぐしゃイガグリ頭を撫でる。
「えぇへぇへぇ、おねいさん、おムネ大きいね」
「ひへへへ、こぉら」
一瞬パッと目を開けた和美が、すぐに狐顔になって
きゅっと乱れた小袖の前を直しぐいぐいとしんのすけの脳天に掌を押し付ける。
「ちょwwwwwwwww
五歳児押し倒すってぇwwwwwwwどんだけもういいんちょ以上wwwwwwwww」
美砂は完全にツボにジャストミートしていた。
「あははは!」
「あっはっはっはっは!」
「姫様、又兵衛殿」
愉快そうに笑い声を立てる二人を、こちらもようやく立ち直った吉乃がたしなめ
ようやく場が切り替わる。場をわきまえた姫と謹厳実直の鑑の又兵衛がこの有様なのだから
この笑いに抗し得る者などいなかった。

今回はここまでです。続きは折を見て。
184マロン名無しさん:2008/02/21(木) 07:11:11 ID:???
乙 亜子との件がいい
185マロン名無しさん:2008/02/21(木) 11:48:08 ID:???
つまんね
186マロン名無しさん:2008/02/21(木) 12:43:38 ID:leUG8T4k
>>178->>183
乙 おかえりなさい。今後も期待しています。
187マロン名無しさん:2008/02/22(金) 16:56:49 ID:???
もう投下しなくて良いよ
188マロン名無しさん:2008/02/22(金) 17:18:58 ID:???
>>178
久しぶりに来てみたら…GJ!
気が向いたらで良いからまた投下してくれよ!
189ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/02/23(土) 12:37:02 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>183

『オラ野原しんのすけ、五歳』
くるわでこの声を聞いた千雨の眉がぴくりと動いた。
『えへぇへー、でも、オラに惚れちゃいけないぜ。
オラ、恋愛対象は高校生以上って決めてるから』
『あはははー、丁度良かった。
私も数え年一桁対象外だから十年経ったらまたおいで』
「美砂分かり易過ぎ」
円が言う。
『でも、そんな古ネタよく知ってるねー』
好奇心を抑えきれないらしい和美の声だ。
『不潔。
センパイ、センパイ、センパイ、センパイ、センパイ…あっ』
『オオーッパチパチ』
『クリーンな心の持ち主高橋覗、高橋覗をよろしくお願いします。
ご声援ありがとうございます。
こういった非常自体にも動じない高橋、高橋覗をよろしくお願いします。
当該管区における非常事態発令に伴い緊急車両が通ります
って、行き止まりですよー。
いやぁー、もう止めてぇー』
『キャハハハ、まんまやんっ』
「…そろそろ、話、進めませんか?」
夕映が言う。
190ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/23(土) 12:38:07 ID:???
>>189
『大蔵井高虎殿が私を嫁に欲しいと言って来た』
ピクリと反応した小太郎を刹那が目で制する。
テープは回り続ける。
『だったら何でオラの夢ん中に出て来たのさー!
ね、廉ちゃーん!』
ネギ・パーティーのくるわで和美がテープ再生を止める。
「ある程度、分かたネ」
超が口を開く。
「野原しんのすけの言葉が嘘ではないとすると、
この時代で自分で埋めた文箱を自宅の庭で発見、
そのままここまでタイムスリップした事になるです。
余り私たちとは関わりなさそうですが」
「あるいは、その過程で何らかの時空の乱れが発生したのかも知れないガネ」
「なんか、ややこしいね、つまり、自分で埋めてそれを後で自分で見付けて…」
円が言う。
「そうですね、タイムパラドクスと言いますかなんといいますか、
しかし、元々タイムスリップ自体が未知の領域ですから」
聡美が言った。
「それからもう一つ、近々廉姫様は結婚すると言う事ですね、
隣国の大大名大蔵井家の者と」
「大蔵井高虎、恐らく大蔵井家の当主です」
夕映の言葉に刹那が言う。
「知っているですか?」
「ああ」
小太郎が言う。
191ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/23(土) 12:39:17 ID:???
>>190
「話していませんでしたが…」
刹那が事情をかいつまんで説明した。
「どの様な人物でしたか?」
夕映が質問を続ける。
「偉そうな奴やったな」
小太郎が言う。
「まあ、一国の主ですからね、野心家の戦国大名と言った雰囲気の、
周辺にも強者を配していました」
「そうですか」
刹那の返答に夕映が言う。
その間、美砂が何か浮かない顔をしていた。

「柿崎」
流れ解散の後、ハルナが庭で美砂に声を掛ける。
「お姫様、遠くにお嫁さんに行くんだよね…
気が付いた?あの二人…」
「あの部屋にいなよ、一分で分かる」
美砂が言う。
「って言うか、あのオヤジ…」
怒気を見せた美砂がしゅんと下を向く。
「あのオッサンも、辛いんだろね」
美砂の言葉にハルナが頷いた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
192ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/02/25(月) 01:14:22 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>191

「空気が美味しいねー♪」
親友二人と共に斜面に寝転がった桜子が言う。
「あれ?」
円が身を起こした。
「あれ、姫様?」
二人がそちらを見ると、確かに馬に乗った廉姫の姿が遠くに見えた。
「美砂?」
美砂は立ち上がり、駆け出していた。

「お姫様行っちゃった…」
「行っちゃった、は、いいけどさ、美砂…」
円が言い、一同周囲を見回す。
周囲は木々の茂る林の中だった。
「ここどこ?」
「ちょっと待って、ここって…」
「あれ?あれって…」
美砂の言葉を遮った桜子が指さした木から、パイナップルを思わせる髪の毛が覗いていた。

「何やってんの?」
「おおっ!いやー、アハハハ…」
「お散歩ネお散歩」
不意に近づいたしんのすけに指さされ、のけ反る和美の側に超が現れた。
「ほうほう」
「お友達カ?」
後続を見て、超が腰をかがめて言う。
193ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/25(月) 01:15:36 ID:???
>>192
「うん、風間君にマサオ君にネネちゃんにボーちゃん」
「おらぁ、かずまだぁ」
「オオマサ様だって言ってんだろっ!」
「ねね。いやぁ!うさぎこわい、助けて!助けてっ!」
「おらぼうしち」
「そうカそうカ」
「何か今日は妙な奴ばっかだなぁ、こんな所で何してる?」
オオマサが言った。
「だから、お散歩ネ」
にこにこ笑って答える超には威圧感とも違う妙な説得力があり、
オオマサはこれ以上の追及はやめにした方がいいと察した。
「…誰か来た隠れろっ!野伏りかもしんねぇ!」
蹄の音にオオマサが反応し、一同草むらに隠れる。
「ありゃあ姫様だ」
茂みの中でオオマサが言った。
「何だ、廉ちゃんじゃん」
「知ってるのか?」

馬を下り、ばさっとうつぶせに倒れ込む廉姫。
その切ない表情は、木陰で覗くチア三人組の胸にも迫る。
「ちょっ」
桜子が小さな声で言う。
「?」
「これ、まずくない?」
円の声も小さく、切迫したものだった。

「春日部防衛隊、廉ちゃんを守れーっ!!
ファイヤー!」
「しまっ!」
超が止める間もなく、しんのすけを先頭に子供達が飛び出してしまった。
194ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/25(月) 01:16:42 ID:???
>>193
その先では、以前にも泉の周囲で超たちが出会った、口傷と大男の牢人を頭とする
野伏りの一団が廉姫を取り囲んでいた。
「そのバッチイ手を放せっ!」
しんのすけが一喝し、大男が金棒で返礼する。
オオマサを先頭にきびすを返して逃走するが、
しんのすけが背負っている荷物に目を付けた野伏りが追走を始めた。
「ぐあっ!」
先頭を切った野伏りが、超の回し蹴りに吹っ飛ばされる。
「何だてめぇっ!?」
「逃げろッ!」
その超の前後を、口傷と大男が挟み、口傷が背中に背負った太刀を抜く。
「…か弱き乙女に二人がかりカネ」
か弱き乙女の口元には不敵な笑みが浮かんでいた。

「ちょっ、あれ、まずくない!?」
「美砂、どこに電話する気?」
「あわわわー、桜子戻ってみんな呼んで来てっ!」
「分かったっ!」
携帯電話をしまった美砂の言葉に桜子がきびすを返した。

「がはっ!」
金棒を交わして懐に踏み込んだ超の肘が大男の腹を一撃する。
そのまま、超は組んだ両手で大男の首筋を一撃した。
振り返った超の前で口傷が刀の棟を肩に欠ける。
だが、気配にチラと後ろに視線を向けた超の顔から血の気が引く。
後ろでは、何をどう間違ってか一回りして戻って来たかずまが大男にとっ捕まっていた。
「グッ」
刀の柄で肩口に一撃を入れられ、超が膝を着く。

今回はここまでです。続きは折を見て。
195マロン名無しさん:2008/02/25(月) 01:56:44 ID:???
乙です
196自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/26(火) 00:01:26 ID:???
つまらん
197自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/26(火) 00:15:01 ID:???
乙、次も待ってるぞ
198ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/02/26(火) 02:20:35 ID:???
まずは訂正です。
>>194本文下から五行目、「刀の棟を肩に掛ける。」が本当です。
では、今回の投下、入ります。

>>194

オオマサは牢人者に抱え上げられ、残りの子供たちも別の牢人に刃を向けられている。
口傷の牢人が、抜刀して超を隙無く伺い、一同が廉姫を取り囲む。
しんのすけがするりと抜け出し、バッと廉姫の前で両腕を広げた。
「…面白ぇ…」
口傷が言い、野伏りたちが嘲笑を漏らしたその時、蹄の音も高らかに騎馬武者が乱入した。
「おい、取り込み中だ!けぇれ!」
「お又のおじさん!」
「殺すな!」
下馬し抜刀した又兵衛に廉姫が叫び、まず、オオマサを捕らえた牢人がぶちのめされた。

「おのれらあっ!!」
木陰で見守っていたチア二人は、又兵衛の怒声に身震いした。
「かっこいい…」
美砂がぽつりと口に出した。
「こっちにもいたぜっ!」
乱戦を逃れて来た牢人がその二人の元に駆け寄って来た。
美砂の事は死角になったのか、牢人は散り散りに逃げた二人の中でも美砂には目もくれず
円目がけて一直線に走っていた。
199ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/26(火) 02:21:42 ID:???
>>198
「ちょっ、やあっ!」
「このおっ!」
「てめえっ!」
こちらに来た牢人は二人、一人は円に、もう一人は石を投げた美砂に抜き身を下げて駆け寄る。
「やだあっ!」
「さあ、捕まえ…」
「うらあああっ!!」
円の襟首を捕まえた牢人が不意に体をくの字に折る。
その腹の下から響いた気合い、そこから、ひょいと小太郎が姿を現す。
「コタロー君?」
「おう、円姉ちゃん、ケガないか?」
「うん、美砂っ!」
「ああっ」
小太郎が頷き駆け出そうとする。
「何をしてるっ!?」
木々の向こうから別の凛々しい声。
「出たあっ!」
美砂を捕まえようとした牢人が、その声の主、アキラの姿に悲鳴を上げる。
「コタロー君、助かった」
美砂が言う。
「ああ、丁度アキラ姉ちゃんと水くみに向かってたら桜子姉ちゃんが走って来てな」
美砂から離れた牢人が後ろを見ると、既に仲間は又兵衛と超にぶちのめされた後だった。
ボキボキと拳を鳴らす小太郎とズンズンと無言で接近するアキラを前に、
その牢人も土下座を決めた。
200ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/26(火) 02:22:54 ID:???
>>199

「おたわむれが過ぎますっ!」
撃退された野伏りが逃げ去った後、
子供たちも、超も和美もチアも小太郎もアキラも、バッと平伏する又兵衛と
それを寂しげに見下ろす廉姫の姿に、ただ言葉を失っていた。
子供たちがザクザクと手で地面を掘り始める。
「あれが、文箱ダネ」
超が呟き、背後の木陰の和美に視線を走らせる。
「…わあっ!」
「どうしたネ!?ムッ!?」
「おおっ!」
デジカム片手の和美の悲鳴と共に一同がそちらに視線を向けると、
明らかに時代考証を無視した乗用車が一台そこに停車していた。

「コタロー君、代わろっか」
「ああ、悪い」
円が言い、水桶を満載してアキラが引く荷車の尻押しをチアと交代した小太郎は、
野原一家と共に車で走り去った廉姫に取り残された馬上の又兵衛に近づく。
「やっぱ強いな」
「お主もなかなかのものだぞ」
「ありがとな」
頭の後ろで手を組み、体を反らせたまま小太郎が答える。
「やっぱり、実戦経験、場数ちゅう奴か?」
「…そうだな、物心付いた頃から戦場(いくさば)に出ていた、
親も兄弟も戦場で死んだ、一族の中で俺だけが辛うじて生き残っている」
201ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/26(火) 02:24:05 ID:???
>>200
「強いんやな」
「この歳まで必死で戦って来た。戦場で戦いを覚え、天運も味方をした。
俺はその様に生きて来た男だ。
だが、しんのすけに聞く所では、お主たちの世界は平和な世の中。
故に、既に侍もいないと聞いた」
「まあ、俺はそんなに平和な育ちやないけどな。
けど、戦場のど真ん中で生き抜いて来たおっさんとは比べられへんやろ」
「侍の要らぬ穏やかな世の中。姫様はそれを嬉しそうに聞いておられた」
「あんた、さっきの姫さんの話よう聞いてなかったんか?
姫さんは、あんたが死なないのが嬉しい、そう言ってるんやないのか?」
「無論、死にとうはない、幾度いくさを重ねてもこうしてだから生きて来た」
「ああ、俺もまあ、何遍も死ぬ目おうて来たけど、
死ぬ気ぃなかったさかいこうして何とか生きてるわ」
「死ぬ時は死ぬ、生きる時は生きる、戦場でそれは随分と見て来た。
そうして生きて来た俺一人、いくさも侍も無き世ではどうしたものか」
「ま、こっち来て俺もちぃとは血騒いだけどな、
平和な、優しい世の中言うんもまあまあいいモンやで。
けど、そんな事ここじゃ当分無いやろ」
「ああ、まだまだこの世この国は武なくしては成り立たぬ、
自分で言うのも何だが、俺の槍働きなくしては全てが奪われる。
飢えて死ぬ事となる故向こうも必死こちらも必死」
「なら、迷う事も無いやろ、好きなんやろ?」
「ああ、この春日の地春日の人、親兄弟も妻も子も無き俺が守りたいもの。
これまで大勢殺めて来た俺だ、今更迷うても仕方がないか、
なれば、地獄に行くまでは我の愛したもの、守り抜きたいものよの」
「やっぱ、俺なんかとか全然違うで、やっぱり俺は俺一人で手一杯さかいな」
「何、この様な事を言っても、所詮は己一人生き抜くための方便、
いくさで生き抜くとはその様なものかも知れぬがな」

今回はここまでです。続きは折を見て。
202自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/26(火) 11:00:57 ID:???
203自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/29(金) 01:52:19 ID:???
過疎かな
204ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/02/29(金) 11:31:18 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>201

「そ、いっきなし出て来たの、車がぽんって」
くるわに戻った和美が力説した。
「やはり、野原一家のタイムスリップは文箱がキーだったんですね」
葉加瀬が言う。
「この一帯、この時代の武蔵国、特に平成の埼玉県には時空を歪めて引き付ける
何かがあると言うノカ…」
超も首を傾げている。
「でも、取りあえず一家揃って良かったなー」
木乃香が言う。
「いや、戻れなかったら洒落ならんだろ」
「でも、離れ離れよりはええやろ、帰れへんかったら余計や」
木乃香の説得力ある言葉に、千雨は嘆息した。
「大丈夫だって」
「うん」
裕奈が沈む亜子の肩をぽんと叩き、亜子はにこっと笑って頷いた。
「でも、うちもほんま良かった思う。
だって子供やし、おとんおかんいない言うて泣いてるのしんちゃん似合わへんもん」
「言えてるー」
美砂が笑い、亜子もくすっと笑った。
205ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/29(金) 11:34:21 ID:???
>>204

「よう」
手水場を出た刹那は、千雨に声を掛けられた。
「長谷川さんですか」
「こっち来てから、地が出てるな。近衛の周囲を見る目が違う」
「こう言う時ですから」
刹那が無理に笑みを作って言った。
「いや、嫌みを言いたい訳じゃない。そんな桜咲だから話しとく事がある」
千雨にノーパソの画面を見せられた刹那の表情が険しくなる。
「これは…」
「ああ、日本史的にはほとんど価値がない田舎のいくさらしいな、
郷土資料レベルでようやく出て来た。
野原しんのすけが一族もろとも出て来たって事さ。
いつでも動ける様に準備だけはしといた方が良さそうだ」

到着せし野原一家は井尻家で休息の後春日領主春日康綱との対面の儀の運びと相成り、
廉姫はそれを確認した後ネギ・パーティーのくるわに足を運んでいた。
「何か不自由は無いか?」
「いえ、お陰様で」
くるわで、そこに残っていた一同が頭を下げる中、尋ねる廉姫に夕映が答える。
「うーん、そろそろお風呂入りたいかなー」
「ゆーなさん」
そう言った裕奈を、夕映がたしなめた。
「申し訳無いです、聞かなかった事にして下さいです」
「いや、ちょうどよい、支度をさせていた所だ」
206ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/29(金) 11:37:35 ID:???
>>205

「風呂の支度が出来ました」
「だって」
裕奈が笑顔で立ち上がる。
くるわに残っていた裕奈と夕映、和美、アキラ、ハルナ、チアが
使いの者の案内で館の離れを訪れる。
案内されたのは白木で出来た広めの一室で、奥にもう一つ木の引き戸がある。
「あの奥がお風呂ですか?」
「はい」
「では、皆さんこれを腰に巻いて入って下さいです」
夕映が、使いの者に渡された白い布を皆に配る。湯文字と言われる入浴用の下着だ。
夕映と使いの者に促されるまま、
一同は腰に湯文字一枚巻いた姿で引き戸の向こうの風呂殿に入った。

「うへぇー、きつー」
吐き気すら覚えた裕奈が、一度風呂殿を出て、
先ほど着替えをした洗い場で体を曲げていると、誰かに肩を支えられた。
「あ、ども…」
顔を上げた裕奈は、目を見開き、土下座していた。
「よい。湯に当たったか?」
「あ、いえ、大丈夫です」

「これは姫様」
夕映の言葉とともに、風呂殿で布を敷いた上に座っていた面々が頭を下げる。
もうもうと湯気の立ちこめる小部屋で、皆の全身からは、
汗とも湯気ともつかぬものがびっしょり滴っていた。
湯帷子姿の廉姫の後ろから裕奈が現れた。
火傷防止もかねて湯帷子と言われる浴衣の原型を着用するのが元々の入浴作法であるが、
この時代にはそれが簡略化される形で湯文字での入浴が一般的となっている。
207ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/29(金) 11:44:17 ID:???
>>206
「大丈夫ゆーな?」
アキラが言った。
「うん、水被ったらすっきりした、もうちょっと入りたい」
「えーと、つまりサウナがお風呂って事?」
円が言う。
「私たちの言うお風呂が本格的に登場するのはもう少し後の話になるです。
この時代はこうしたサウナ形式の蒸し風呂、それも、手間の掛かる大層なもてなしなのです」
「すいません、どうも」
裕奈が恐縮して頭を下げる。
「よい、私も今日は些か汗を掻いた、そなたらと風呂を共に出来るのは嬉しい」
廉姫も腰を下ろし、くつろいだ表情を見せる。
「夕映」
「はい」
「そなたらの時代の風呂とはどう言うものだ?」
「人間が丸ごと浸かる事の出来る桶に火傷をしない程度のお湯を張って、
その中に浸かってから体を洗うもの。この時代では湯と呼ばれていたと記憶しています。
奈良東大寺や阿弥陀寺のものなどが有名だそうですが」
「そうだな、寺でその様なものを行っている。それだけの湯も薪も用意するのは難しい。
そなたらの時代では簡単な事なのであろうな」
「はい、遠い未来の話ですので」
「姫様」
「なんだ?」
「嫁がれるそうですね、おめでとうございます」
最初にそう言ったのは、意外にもアキラだった。
「聞いたか」
和美がぺこりと頭を下げる。
廉姫はふっと静かな笑みを浮かべていた。
208ネギま!戦国史(クレしん):2008/02/29(金) 11:46:06 ID:???
>>207
「…お嫁に行くのって、嬉しいんですか?」
美砂が尋ねる。夕映は目で制していた。
「嬉しい、か」
廉姫は少し遠くを見る目をした。
そして、目の前のアキラを見る。
すーっと和美、裕奈、ハルナを見て回す。
「そなた達の時代、国は豊かな所なのだろうな」
「…少なくとも、食べるに不自由はしないです」
夕映が言う。
「そうか。我らはなかなか難しいもの。元々豊かとは言えない土地、飢饉も続いている。
その年まで育たぬ子、大人とて力尽きる者も少なくない。
いくさに出て僅かな作物、銭、人すらも奪う事で己だけでも命繋ぐ事となる。
攻める側攻められる側共に命懸け。
それがこの時代、我を育み我が愛する春日の家、土地、人と言うもの。
我も我の愛したものがためのこの縁組み、嬉しいものとしてみせようぞ」
清々しい言葉に、美砂は「あなたはそれでいいのですか?」と言う言葉を呑み込み
何も言えなかった。

今回はここまでです。続きは折を見て。
209自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/29(金) 16:09:34 ID:???
210自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/29(金) 16:44:37 ID:???
乙、次も頼むよ!
211ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/01(土) 01:07:03 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>208

風呂殿の湯気で体の汚れを十分に蒸し上げ、
それを笹の葉で叩いてから洗い場に用意した陸湯(おかゆ)で洗い流す。
「すまぬな」
「いえ、とんでもない」
つんつるてんの湯帷子を着たアキラと廉姫が言葉を交わす。
「私はこのまま戻らねばならぬ」
小袖を着た廉姫が言う。
「有り難うございました」
湯帷子姿で風呂場を出て、廉姫と分かれた一行が離れからくるわに向かった。
「結構すっきりしたねー」
裕奈が体を慣らす。
「戦国時代って覚悟が違う…」
美砂が小声で言い、ハルナが頷く。
「えーと、何してるのかな?」
庭の木の枝にぶら下がる異なるものを見付けた和美が大汗を浮かべて言った。
「なまけものごっこー」
「ハハハ…」
和美が苦笑いしている間に、
しんのすけは猿としか思えぬ敏捷さでくるりと木の幹の後ろに回っていた。
「忍者ごっこー」
次に現れたしんのすけは紫頭巾姿だった。
「ニン、ニン、ニン、ニ、ン…」
「オオー」
くるくると枝から枝に器用に動き回るしんのすけは、
拍手喝采に調子に乗って次の木にジャンプした。
212ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/01(土) 01:08:10 ID:???
>>211
「はい、捕まえた」
「おねいさん、大きいね…」
アキラに抱っこされたしんのすけが、頭巾を取って照れ笑いを浮かべて言う。
「君がしんのすけ君かー」
「へぇー、イガグリ頭じゃん」
ハルナがひょいとしんのすけを取り上げて抱き締め、裕奈がくしゃくしゃと頭を撫でる。
「はい、チーズ」
「おっ」
飛び移った裕奈の腕の中で、しんのすけは和美のカメラを前にピースサインを出した。
「あっ、いたいたっ」
「おーい、しんのすけー」
そこに、ひろしと、ひまわりをおぶったみさえが現れた。
「何やってるのしんのすけー、ごめんなさいねー」
「いえいえ」
みさえが裕奈からひょいとしんのすけを下ろして頭を下げる。
「お殿様にも呼ばれてんだしうろちょろするなっての、
いやー、どうもどうも」
「野原さんですか?」
夕映が尋ねる。
「ああ、君たちももしかして…」
「はい、平成から来ました、何れゆっくりお話をしたいです」
「そうですね」
みさえが言った。
「さ、行くわよ、しんのすけ」
「ほーい」
ひろしとみさえが一同にぺこりと頭を下げた。
213ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/01(土) 01:09:16 ID:???
>>212
「じゃーねー、しんのすけくーん」
「ほーい」
裕奈とハルナの声にしんのすけがひらひらと手を振る。
「父ちゃん父ちゃん」
「なんだしんのすけ?」
「あのおねいさんたち、結構おムネ大きいよ」
「バカ、しんのすけっ!」
ひろしがぎょっとして振り返る。
「…ヒソヒソヒソヒソ…」
「たはは、どーもー…」
「でもオラー、高校生未満対象外だしー」
「でも、ありゃどう見ても高校生以上だろ、あのロングヘアの大きなおねいさんなんて」
「おっきなおねいさん優しいの、おムネもおっきかった」
「そうかそうか…ハッ!?」
グワンッ(効果音)
「犯罪ですわよ、あ、な、た」
シュウウウ…
「ケッ」
吐き捨てて横を向くひまわりであった。
「…ヒソヒソヒソヒソ…」

庭を歩いていた千雨は、「異臭」に気付いてそちらに足を向けた。
その香りの源から声が聞こえ、得心した。
“…なんだ、カレーなんか持って来たのか…食いたくなるじゃねぇか…”
214ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/01(土) 01:10:24 ID:???
>>213
「私の知る限り…」
明らかに平成の男性の声を聞くだけで、千雨の耳はダンボとなって縁側の障子に向かう。
「…春日という名は歴史の表舞台に…」
縁側を近づいて来る足音を聞いた千雨は、なぜか縁の下に入っていた。
“…何やってんだ、私は…”
「奥や息子達を亡くしたわしにはお前しかおらぬ。
今しばし、わしの元にいてくれ」
「はい」
「ひろし、おぬしの話を聞いて腹が決まった。
かたじけない」
その少し後、庭では千雨が髪の毛から蜘蛛の巣を取り払っていた。

縁側を歩いていたのどかが、控える侍に会釈をして障子を開ける。
そこでは、ネギが一人床について寝息を立てていた。
のどかはネギの傍らにちょこんと座った。
「汗掻いてますー」
のどかがハンカチを取り出し、ネギの汗を拭う。
そして、きょろきょろと周囲を見回す、が、今は誰もいない。
のどかはネギの額に自分の額を当てた。
「まだ、少しお熱がありますね…」
間近にネギの顔が見える。
ネギの唇がすぐ側に見える。温かい思い出が蘇る。
のどかがふわっとした気持ちで目を閉じる。
「ん、んー…」
ネギの声に、のどかはぱっと離れる。
「ア、スナ、さん…」
ハッとしてのどかが後ろを見ると、ヒタヒタと足音が近づいていた。
215ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/01(土) 01:11:34 ID:???
>>214
障子に影が映り、障子を開いた明日菜がドンと盥を畳に置き、その後ろで侍が目を丸くしていた。
「あー、本屋ちゃん」
「アスナさん」
「うーん、大分熱下がったねー」
明日菜がネギの額に掌を当てて言った。
「はい、お陰様で」
ネギが笑顔を作った。
「んじゃ」
明日菜がネギの身を起こし、寝間着の上を脱がせる。
明日菜は、盥のぬるま湯を絞った手拭いで、ゴシゴシとネギの体を拭い始めた。
「あっ、アスナさん、自分でやりますよー」
「だーめ、ずっと汗掻いてたんだから、ちゃーんと拭いとかないとまた熱出るんだからねー。
やっぱ結構汚れてるわねー、向こう出る前もお風呂さぼったんじゃないのー?
さ、こっちも拭くこっちも」
「あーうー」
「はわわわ」
「来ておったか…よい」
振り返り頭を下げる明日菜と相変わらず床で土下座するネギに廉姫が言う。
廉姫が部屋の隅に視線を向けると、ちょこんと控えたのどかがうつむいていた。
廉姫が、すっとネギの額に掌を当てた。
「大分熱は下がった様だな」
言いながら、廉姫は盥の手拭いを絞り、ネギの背中に当てた。
「お姫様、いいです、私がやりますから」
明日菜が悲鳴に近い声を上げた。
当のネギはと言えば、ぽーっとした顔で下を向いているだけだ。
「構わぬ、風呂の支度が出来た所だ、そなたらも行って参れ」
障子を見ると、縁側からアーニャがちょこんと覗いていた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
216自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/01(土) 18:29:58 ID:???
217ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/04(火) 02:31:06 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>215

「なーによ、デレデレしちゃって」
縁側で、アーニャが言った。
「あれが大和撫子って言うの?男ってああ言うの弱いのかしらねー」
「ああ、いたか」
縁側を歩く明日菜、のどか、アーニャの前に千雨が現れた。
「風呂の支度が出来たから、先入った連中が教えてくれるって」

「んー、結構さっぱりー♪」
蒸し風呂の浴室を出て、洗い場で汚れを落としたアーニャが言った。
「あった?」
「いや…行っててくれ」
「分かった」
明日菜が言い、他の面々がぞろぞろと浴場を出る中、
千雨は多重ハンモックを思わせる脱衣棚を漁っていた。
「っかしいなぁ」
脱衣棚に乗せた衣服全てをバサバサと振った千雨は、そのまま床に這った。
「ほい」
「ああ、サンキュー…どあっ!」
渡された眼鏡を掛けた千雨が尻餅を着いた。
218ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/04(火) 02:32:25 ID:???
>>217
「これ、どうした?」
「そこに落ちてた。おねいさんの?」
「ああ、君は…野原しんのすけか?」
「オラ、野原しんのすけ、五歳」
「そうか」
千雨の顔に、ふっと優しい笑みを浮かんだ。
「ありがとうな」
千雨が、しんのすけの髪の毛をくしゅくしゅ撫でる。
しんのすけは、ポアーンと真っ赤な顔でされるがままにしていた。
「しんのすけっ!」
乱入したみさえが、バッとしんのすけを左腕に抱き右腕で千雨の顔を抱く。
「すいません、もうみんな出たと思ったもので」
「いえ、私が遅かっただけです。しんのすけ君には探し物も見付けてもらいましたし」
「すいませんどうもー」
「サンキューな、しんのすけ」
「えへぇへー」
ひまわりをおぶったみさえが、しんのすけを抱いてすたこらと退散するのを尻目に、
千雨は湯帷子に袖を通した。

「何やってんだしんのすけ」
「お風呂におねいさんがいたー」
浴場を出て庭を歩く千雨の耳に、一度みさえに拉致されていたらしいしんのすけの声が届いた。
「ったく、しょうがないなー。謝っとかないと、どんなおねいさんだった?」
「綺麗なおねいさん」
千雨の耳がピクピクとそちらに伸びようとする。
「ほおーお、綺麗なおねいさんだったか?」
「うん。綺麗なおねいさんだった。んーとねー、んーとねー、お顔とかーおムネとかー」
「何をしているですか?」
思わずバッと胸を抱いた赤面する千雨に、通りがかりの夕映が大汗を浮かべて言った。
219ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/04(火) 02:33:32 ID:???
>>218

「のどか」
うつむいて一人縁側を歩いていたのどかは、その声にハッと顔を上げた。
「よい」
思わず土下座しそうになったのどかに廉姫が言う。
「いい天気だな」
言いながら、廉姫は縁側に腰掛けた。
「構わぬ」
廉姫に促され、のどかも姫の隣に腰掛ける。
「好いておるのか?」
「え?」
「あの者、ネギの事を?」
「…はい」
威厳の備わった声でストレートに問われ、のどかは小さく返答していた。
「そうか」
「変、ですか?」
「いや、そうは思わぬ。
病ゆえ僅かなやり取りではあるが、男として引けを取るものとは思わぬ」
「はい」
のどかは、小さくしかし嬉しそうに答えた。
「しんのすけが言っていた。
そなたたちの時代、恋をするのは当人同士が好きおうていればよいと」
「それはかえって辛い事なのかも知れません」
「?」
220ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/04(火) 02:34:46 ID:???
>>219
「上から押し付けられる決まりは少なくても、
そう言う分かりやすいのじゃない決まりはいっぱいあります。
それに、恋愛が自由だと言う事は、選ばないのも自由、
その時は、愛する人に自由に選ばれなかった自分を思い知らされます。
それはとても辛いです、怖いです」
「そう言うものか」
「ごめんなさい、こんな事、贅沢なのかも知れません」
「いや、よい。聞いたのは私だ。それに、恋に夢見るおなごの性と言うもの、
昔も今もその先そなたらもさほど変わりはないものかも知れぬ。
いにしえより、恋を夢見、焦がれ叶わず、身を病み心を病み、
その心が物の怪と化す事すら物語とされている」
「…源氏物語ですか」
「知っておるのか?」
「はい、私たちの時代にも残っていますから」
「そうか。私は聞いただけだ。この東国の小国、写本とて容易には手に入るものではない。
やはりそなたらの時代と言うもの、想像を絶して豊かであり容易に全てが伝わるものの様だ」
「それが本当にいい事か、
見えるものが全て伝わる聞こえる見える事がいいなのかは正直分かりません。
でも、源氏物語でしたら、もしかしたら私たちの道具で手に入るかも知れません」
「そうか、それはよい。そうであれば、頼んでいいか?無理にとは言わぬが」
「お約束は出来ませんが、試してみます。私も好きですから」
「有り難い」
「んんー」
ネギが薄目を開けると、廉姫とのどかが向き合ってくすくすと楽しそうに笑っていた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
221ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/04(火) 02:38:29 ID:???
すまん訂正、
>>220の最後、

「お約束は出来ませんが、試してみます。私も好きですから」
「有り難い」

「んんー」
ネギが薄目を開けると、障子の隙間から
廉姫とのどかが向き合ってくすくすと楽しそうに笑っているのが見えた。

になります。すいません。
222自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/04(火) 09:53:49 ID:???
223自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/04(火) 13:28:58 ID:???
乙、これからも楽しみにしているよ
224自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/05(水) 18:01:08 ID:???
なんか、千雨のキャラ違くね?
映画のLじゃあるまいに
いきなし「実は子供好き属性」とか出されてもな
225マロン名無しさん:2008/03/08(土) 17:24:09 ID:???
ま、あってもいいけどツンデレだしw
226マロン名無しさん:2008/03/09(日) 12:57:46 ID:???
ここってクロスだから他作品のキャラがまったく出ないというのはアウトか?(世界観だけを他作品にし、他作品のキャラをネギまキャラに差し替えたみたいな形式)
227マロン名無しさん:2008/03/09(日) 19:08:39 ID:???
ザジスレの三国志みたいなのか?
228マロン名無しさん:2008/03/09(日) 20:48:50 ID:???
>>226
内容にもよると思うけど、もう少し詳しく説明してくれないとわからん
取り敢えず>>1を念入りに読んで大丈夫だと思うならいいんじゃね?
229マロン名無しさん:2008/03/10(月) 03:02:22 ID:???
>>226
クロスというよりスピンオフに近いからザジちう向きじゃね?
230マロン名無しさん:2008/03/10(月) 16:06:18 ID:???
過疎ってるからっていちいち遠回しにザジちうスレ宣伝すんじゃねーよ
あんなカススレ誰もいかねーよ
231マロン名無しさん:2008/03/14(金) 13:53:58 ID:???
それで、できそうですか?
232ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/14(金) 20:08:11 ID:???
随分間が開いてしまってすいません。
では、今回の投下、入ります。

>>220

「はーい、あーん」
「あーん」
千雨が、ネギ・パーティーにくるわに代わる仮住まいとして貸し出された屋敷に戻ると、
囲炉裏端に座ったみさえが木の匙に取った粥に息を吹いていた。
「美味しい、ひまわり?」
「たー♪」
「ありがとうございます、助かりました」
みさえの言葉に、五月がにっこり笑ってぺこりと頭を下げる。
「たー」
「うん?おや、どうしたネ?」
しっかと服を掴まれた超が、苦笑いしながらひまわりを抱き上げた。
「あらあら、すいません」
「超さん、気に入られたみたいですね」
「いやいや参ったネ」
満更でもない表情の超だった。
「うむ、見事な」
「あ、お姫様」
「よい、二人に頼みたい事がある」
233ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/14(金) 20:09:18 ID:???
>>232

「ご心配お掛けしました」
「お帰りーネギくーん!」
「快気祝いだーっ!」
「ええーいっ、うるさーいっ!!」
「やかましいーっ!!」
明日菜と千雨が同時に叫ぶ。
そう言う訳で、ネギは、夕食前に仲間のいる屋敷に戻っていた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ネギも五月から椀を受け取り、雑炊を口にし、ちょっと微妙な顔を見せた。
「あ、美味しいです」
「無理しなくてもいいって、分かってるから」
思い切り笑顔を作るネギに明日菜が言った。
「さっちゃんは病み上がりぐらいお米使おうって言ったんだけど、
ネギも喜ばないだろうって私が」
「いえ、美味しいです、有り難うございます」
明日菜の言葉に、ネギが素直に応じる。
「聞くだけだけど、やっぱり、お米って難しいの?」
箸でちょこんと粟稗野草雑炊を持ち上げた裕奈が言う。
「武士ですら普段はそうそう米を食せなかったのがこの時代です。
先が見えない以上、備蓄の米を粟稗に替えて食いつなぐ必要が出て来るかも知れません」
そう言って、夕映がずるずると雑炊をすすった。
234ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/14(金) 20:10:25 ID:???
>>233
「この人数でこんな時代に放り出されてんだ、
コワモテの物資調達担当に天才料理人がいるだけ物凄くマシって言うか奇跡だ」
「だよねー、私らマジで生米ボリボリしてたし」
千雨の言葉に円が笑い、五月を見た。
「それは良かったですね、早めに我々と合流して。
後の世に同じ事をして死ぬ目に遭った石田治部少輔三成と言う人物がいますから」
夕映の言葉にチア三人が肩をすくめた。
「千雨さん」
「ん、何だ?」
箸の止まっていた千雨がネギの声に気付いて答える。
「いえ、どうかしましたか?」
「なんでもねぇよ、っつーか、この状況で考え事の一つもするなって方が無理だろ」
「あれー?」
裕奈が言う。
「長谷川、ネギ君とこんな仲良かったっけー?名前で呼んじゃってー」
「いいだろ、イギリス人なんだから」
「てかさー、意外だよねー、長谷川がこんなグループにいる事自体ー」
美砂が言う。
「な、成り行きだ、異議は認めない」
「あははー、照れてるー」
美砂は手を緩めない。
「なっちまったモンはしょうがねーだろっ」
「だよねー」
桜子が言う。
235ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/14(金) 20:11:33 ID:???
>>234
「こーなったらもう運命だにゃー」
「あんたが言うと物凄く説得力ある」
円が言った。
「お前が言うんなら、それは凄く大当たりを引き当てたって事だな私たち。
ま、どうせ非常識なら当たったのがバトロワとか凌辱エロとか怪しいノートの争奪戦
なんかじゃねーだけマシか」
「長谷川ポジティブ杉だってー」
円が大笑いした。
「ま、でも、何とかなりそうな気して来るね」
裕奈が言う。
「だって、みんな一緒で、魔法使いまでいて、ポジティブでいいんじゃない」
「そやそや、もー、しんちゃんたちまで来てもうたし、
なる様にしかならんやろ、ほならみんないるだけ最高や」
無理やり盛り上がる亜子の言葉を聞き、また、千雨がふっと下を見た。

「俺のビール…」
フクロウを聞きながら、ひろしはゴミ箱と化したクーラーボックスを
井尻家に駐車した車に戻していた。
「あのっ」
「?」
ひろしがそちらを見ると、そこには息を切らせた千雨が立っていた。
「あのっ、あなたは、しんのすけ君のお父さん、ですよね?」
「ああ、そうだけど」
「ここを、早くここを離れて下さい」
「えっと、君は?…」
236ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/14(金) 20:12:44 ID:???
>>235
「私は長谷川千雨、あなたと同じ平成の人間です。
だから、だから早くここからっ!…」
「…知ってるのか…?」
真面目な表情で尋ねるひろしに千雨が頷いた。
「しんのすけ君、ひまわりちゃん、奥さんを連れて、早くこの春日を離れて下さい」
「ああ、分かってる。そのつもりだ。
だけど、闇雲にここを出ても行く所が無い。ガソリンや食料にも限りがある」
「でも、ここにいたら…」
「ああ、イザとなったらこれで何とかする。
それに、あの泉で元の時代と繋がってるって事もあるし、心配ありがとう」
ひろしが車のボディを撫でて言った。
「いえ…みんな、しんのすけ君、ひまわりちゃん、みさえさん、
みんなの事…」
「ああ…まあ、何とかするさ」
頼りない返事だったが、ひろしはしっかりした表情で頷いた。
「さあ、やっぱり大昔だな、もうこんな真っ暗だ」
「そうですね、お休みなさい」
「お休み」
千雨が、とぼとぼと帰路につく。
「あの生意気なクソガキと赤ちゃんと…冗談じゃねぇ…」
「時代によっては珍しくもない、ここはそういう時代だと言う事ネ」
「超っ!?
冗談じゃねぇ…平成で生まれたあの生意気なガキ、五歳児と赤ちゃんだぞ。
それがいくさでた?…あんな家族が、冗談じゃねぇ…」
「幸せな家族の未来が簡単に摘み取られる、ありふれた悲劇ネ。
…幼な子の亡骸、親を喪った子子を喪った親、見たくはないものダガネ…」

今回はここまでです。続きは折を見て。
237ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/15(土) 13:28:09 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>236

「あの、千雨さん」
翌日、朝食を終えてから、千雨はのどかに声を掛けられた。
「ん?」

ネギ・パーティーが城郭内に借りた屋敷、
通称ネギ屋敷の一室で、のどかと千雨がノーパソに向かっていた。
「このページなんていい感じかな」
「はい、ありがとうございます」
「後は、これを…」
そこで、二人の言葉がはたと止まった。
「プリンターはあるけど、紙は無い…」
「当然、プリントアウトに使える紙はありません、紙自体が貴重品です」
「おおっ、綾瀬、いたのか」
振り返った千雨がのけ反った。

「いずれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらう…」
廉姫が姿勢を正して聞いているので、付いて来た千雨もそうせざるを得ない。
刹那が、ノーパソを見ながら朗々と物語る。
上座で聞き入る廉姫、その側で吉乃が筆記をしている。
刹那の隣にのどか、千雨、夕映が控えている。
「…上局に賜はす。その恨みましてやらむ方なし…
いかがですか?」
「よい。いや、見事です」
一区切りして言う刹那に廉姫が誠実に応じた。
238ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/15(土) 13:29:14 ID:???
>>237
「の、吉乃」
「はい、聞き惚れました。おや、これはこれは」
恥じらう吉乃に廉姫が笑みを浮かべる。

「たたた…」
廉姫の部屋近くの廊下で、千雨が脚をさすりながら歩いている。
「すいませんです、妙な事をお願いして。古文をそのままとなると刹那さんの方がいいかと」
「いえ、廉姫様にはお世話になっているのです。このくらいの事は」
「刹那さん」
のどかが声を掛けた。
「はい」
「今度、機会があったら私に教えて下さい」
「分かりました」

「ヨッ」
グキッ、ベキバキッ、ゴキッ
「どうカネ?」
「おお、動く動くっ!」
城下の百姓家、超が汗を拭う前で、中年の百姓男が体を動かした。
「まあ、休む暇などないと言うのは分かるガ、とりあえずズレは戻しておいたヨ」
「あんたぁ」
「それでは」
五月が何か書き付けたものを取り出す。
「えーと、読みますね、分からない所があったらお願いします」
そう言って、五月がつらつらと献立を読み上げる。
「聞いた範囲で、なるべくお乳が出る様に組み立てさせてもらいました」
「鯉かぁ、何とかするか」
亭主が言った。
239ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/15(土) 13:30:23 ID:???
>>238
五月と超は、ぺこりと頭を下げて次の家に向かう。
その後を、廉姫が付けた被官が追う。
「姫様のお客人、腕のいい薬師だそうで」
「いや、大したもんだぁ、粟粥でもあれだけ変わるだよ」

「どうだった?」
一度城に戻り、廉姫との拝謁を済ませた超と五月に、ネギ屋敷でチアが声を掛ける。
「主食としては雑穀中心に色々炊き込んでいますから、
バランス自体は私たちの時代よりもいいかも知れません」
「絶対量が不足していなければの話だがネ」
「確かに、ヘルシーではあるからね」
円が言う。
「豆や動物性タンパクを取り合わせる方向でやってみました」
「いくさですね」
夕映が言う。
「いくさはこの時代、色々な意味でお百姓の臨時収入なのです。
戦うために奪い、奪うために戦い、戦うために食べ、食べるために戦う。
それで埋め合わせているのです」
「なんか、怖いね」
円が言った。
「そう言う時代である事は確かネ。だけど、廉姫様や春日には世話になてる。
穏やかでも健やかである様に、姫様の望みに多少でも近づけて見るヨ」
「一休みしたらもう少し回ってみます。土地の産物も詳しく知りたいですし…」
「私も行くか?」
「おお、千雨サン、戻てたね」
「記憶装置があった方がいいだろ、色々な意味で」
千雨はクールに言うが、五月がにっこり笑って頷くとぽりぽり頬を掻いた。
240ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/15(土) 13:31:30 ID:???
>>239

「はひぃー」
「何や、もう降参か…おうっ…」
「何やってんだお前ら?」
五月と超の巡回中、ちょっとその辺りを見ていた千雨が、
畦にへたばるしんのすけと小太郎の姿に大汗を浮かべる。
「風間君のお手伝いしてたのー」
「おらぁ、カズマだぁ」
麦畑の中から声が聞こえる。
「あのなぁ、こっち生活かかってんだ。現代人がそんな中途半端に手ぇ出したら却って迷惑だろ」
「いいえぇ、助かりました」
「あ、おっかぁ」
「コタロー君がほとんどやってくれましたから」
「ま、どんなモン、や…」
ピキイィイン
高笑いして体を伸ばそうとした小太郎が硬直した。
「はーい、お待たせー」
夏美が桶の水とお椀を持って来た。
「ぷはーっ、これだなぁーっ(×2)」

「ちょっと小太郎ら見て来る」
「分かた、これは預かるネ」
一通りの巡回を終え、五月と超は千雨からノーパソを預かって城へと向かう。
「あれ、ここは…」
千雨は、いつの間にか見慣れた景色の中にいた。
泉で一口喉を潤した千雨は、小さな気配に気が付いた。
241ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/15(土) 13:35:47 ID:???
>>240
「何やってんだ?」
「晩飯の足しだぁ」
千雨の問いにオオマサが言った。
周囲の草むらではぼうしちとねねも摘み草をザルに集めている。
「ここらが穴場なんだ、誰にも言うでねぇぞ」
「言わねぇよ」
程なく、子供たちが引き揚げた後、千雨はきょろきょろと周囲を見回した。
「こう言うの、根っこから採ったらまずいんだよな…」

「ああ、お帰りなさい」
千雨がネギ屋敷に戻ると、玄関前でネギが箒を掛けていた。
「ほう」
台所に千雨がザルを置くと、超は、ザルに積まれた摘み草を眺めた。
そして、二つのザルを用意すると手早く摘み草を選り分けていく。
千雨が持ち込んだザルが空になり、五月がちんまりと摘み草の積まれたザルを持って行く。
持って行かれたザルの十倍ほどの摘み草が残ったザルに刹那が近づき、一つ摘んでかじる。
「…暗殺を疑われるに十分な量ですね。埋めておきます」
「………」

今回はここまでです。続きは折を見て。
242マロン名無しさん:2008/03/15(土) 16:37:27 ID:???
243ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/18(火) 02:55:48 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>241

「よっ」
「こんちわーしんのすけー」
井尻家に顔を出したチア三人組がしんのすけに出くわした。
「又兵衛さん、こんにちわ」
先に庭に入った美砂が頭を下げる。
「こんにちわー」
「おうっ」
円と桜子も挨拶し、肩脱ぎで稽古槍を振るっていた又兵衛がそれに応じる。
「こんにちわ、みさえさん、ひまわりちゃんこんにちわー」
「こんにちわ」
「たー♪」
「えーと、これ超さんから、何か作ってたみたい」
「あー、ありがとうございますー」
円がどさりと置いた布オムツの山にみさえが言った。
「いやあーっ」
「熱心ですね」
又兵衛の気合いを聞きつけたかの様に千雨が言う。
「あ、長谷川も来たんだ」
「ちょっとな」
「おー、千雨おねいさん、またお会いしましたなぁ」
「ご近所だしな。見事なものですね。さすがは侍、我が世界の絶滅危惧種てか絶滅種」
「だよねー」
美砂が言う。
244ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/18(火) 02:56:54 ID:???
>>243
「平和な世ゆえ、不要になったと聞く」
「まあね。でも、何て言うか、そう言う凛々しいって言うか逞しいって言うか、
そう言うのはあるから。まだ子供だけどネギ君とかコタロー君もちょっと、ね、円」
「なんで私に振るかなー」
美砂の言葉に円が苦笑する。
「うむ、あのわっぱらはいい目をしている、
我らと同じ世の者であればいい武士になったであろう」
一休みして、柄杓の水に喉を鳴らす又兵衛の隣に千雨がちょこんと座った。
「いくさでもあるんですか?」
「なぜだ?」
「いえ、何となく、備えあれば憂い無しって言葉もありますから」
「確かに、不穏な流れではある、いくさになるやも知れぬ。
いついくさになっても存分の働きが出来る様、槍働きしか知らぬ男ゆえな」
「なーに世界作ってるのよー」
千雨が振り返ると美砂が仁王立ちしていた。
その向こうでは、部屋で円と桜子がみさえやひまわりと戯れている。
「そう言やしんのすけは?」
千雨がきょろきょろ周囲を見回す。
「ほれたね?」
「どわあああっ!」
「何してるのしんのすけ?」
千雨がのけ反り、大汗を浮かべた美砂が尋ねる。
「みのむしごっこー、ほれたねおねいさん」
千雨と美砂が顔を見合わせた。
「でもー、オラ恋愛対象は高校生以上って決めてるしー」
「それは丁度良かった、私もガキは対象外なんだ」
千雨が立ち上がる。
245ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/18(火) 02:58:07 ID:???
>>244
「えー、でもでもー、おねいさんも年下のお兄さんと仲良さそーだったよー」
「そーなの、最近急接近でさー」
「テキトー言ってんじゃねーぞ柿崎ぃ!」
「ほうほう、それで年下の男を騙くらかしてゴールインですか。
オラの知ってる長電話のオバチャンもですなぁ」
「だからてめぇしんのすけっ」
「アハハー、いいねー、目指せ逆光源氏計画ー」
「オオーッ!」
「しんのすけえっ!柿崎いいっ!!」

「たっ、たたた…」
「はい、これで終わりや」
「つー…」
「何やってんだか…」
諸肌脱いで囲炉裏端にうつぶせになり、
亜子に草を潰した湿布を貼ってもらっていた小太郎に千雨が言う。
「ち、ちぃとな、普段使わん筋肉使こうたさかい、慣れん事で油断しただけや」
「油断多いねコタロー君」
「なんや、とぉ…お、おお…」
「素でとどめ刺してどーすんだよ」
わたわたするネギの横で千雨がはあっと息を吐く。
「これ、稽古とはまたひと味違うでホンマ」
「僕も行った方がいいのかな?」
「ま、長引くみたいだったら考えた方がいいだろうな」
言いながら、千雨は頃合いと見て台所に向かった。
246ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/18(火) 02:59:12 ID:???
>>245

「おっ、美味しそう♪」
夕食時、美砂が声を上げた。
「千雨サンがいぱい野草を採ってくれたからネ、翡翠風のヤキメシね」
「へぇー」
超の不敵な笑みを前に、千雨が意味ありげな咳払いをする。
「そう、しんのすけ君元気やった」
「ああ、元気有り余ってたよ」
亜子の言葉に千雨がはあっと息を吐いて応じる。
「ほな、明日にでもうちもしんのすけ君の所に行こうかな」
「ほなうちも」
「あー、桜咲、近衛から片時も目を離すなよ、
あいつの行動に対応できればお前、達人になれる」
「はあ」
千雨の言葉、何となく聞いている刹那に美砂がくすっと笑った。
「いっそ、みんなで行ってみよっか。この時代に平成から来て別々なの自体余所余所しいし」
「さんせー」
明日菜の言葉に、お祭り好きが一斉に叫んだ。
「ですね、直に伺いたい事もありますし、ネギ先生の事などで少しごたついていましたから」
夕映参謀が静かに言う。
「そうですね、一度きちんとご挨拶しませんと」
ネギが言った。
247ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/18(火) 03:00:20 ID:???
>>246
「…長瀬さんよ」
千雨が口を開いた。
「何でござるかな?」
「金、どんくらい残ってる?」
「今少し、この時代にすぐにどうこうなる事は無いくらいの蓄えはあるでござる」
「じゃ、酒用意出来ないかな?」
「なになにー、長谷川なにー?」
「言っとくが私らが呑むんじゃねーぞ、
向こうには又兵衛さんやひろしさんもいるんだ、そんぐらい手土産あった方がいいだろ」
身を乗り出す裕奈に千雨が言う。
「てな訳で、酒と、それに米も用意した方がいいな。何食ってるか分からんし」
「おっしゃー、宴会だー酒盛りだーっ!」
「おおーっ!!」
「あううー、駄目ですよー」
「分かってる分かってるってネギくーん♪」
「ホントに分かってるのかてめーらあっ!?」
「では、拙者は明日にでも」
「ああ…じゃあ、パーティーは明後日だな。
そこらのコンビニでって訳にもいかないんだから」
「だねー、じゃあ、バッチリ用意して驚かせちゃおうよー」
千雨の言葉にまき絵が反応した。
「さんせーっ!」

今回はここまでです。続きは折を見て。
248マロン名無しさん:2008/03/18(火) 11:14:47 ID:???
249ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/21(金) 02:43:14 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>247

アキラは、月を見ていた。
アキラにも家族がいる。生まれてから今までの全てと断ち切られ、
いつ戻る事が出来るかも分からない。
正面から考えると芯の強いアキラでも気が狂いそうになる。
今を生きるしかない、大切な人は向こうにも一杯いるけどこっちにも一緒にいる、
掛け替えのない親友たちが。
アキラはしゃがみ、盥のぬるま湯に手拭いを浸ける。

「?」
夕食後、ネギが縁側を歩いていると、庭に奇妙なものを見付けた。
庭の中に四本の柱が立って幕に囲まれている何畳も無い一角。
そして、足下では、縁側に腰掛けたまき絵が、口元からヨダレを一筋垂らして
気持ちよさそうに寝息を立てている。
ネギがその幕に近づき、めくって中に入ると、
物思いにふけっていたアキラが、
ぬるま湯を絞った手拭いを胸の膨らみに当ててこすり始めた所だった。
思わずのけ反ったアキラの、月明かりに照らされた白い肌を
思わず上から下まで眺めてしまっていたネギがわたわたと踊り出し、
顔の前に掌を掲げて首を横に振るネギの頭を、笑顔のアキラの拳骨がこつんと突く。
幕の向こうから聞こえる声に、ネギがぎょっとしてのけ反る。
委細構わず幕をめくって中に入り、さっさと小袖をスノコの地面に落とした所で
裕奈はアキラの死角に入っていたネギの姿に気付く。
ペコペコ頭を下げてピューッと走り去るネギを前に、
裕奈は両手を腰に当ててカラカラ笑っていた。
250ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/21(金) 02:44:54 ID:???
>>249

アキラと裕奈が盥を手に庭の一角に出向くと、
そこでは丁度、超が別の盥の湯から焼石を取り出している所だった。
アキラと裕奈が持って来た盥をそこに置き、新しい盥を受け取ってまた二人がかりで運び始める。
二人が幕の中の行水場に盥を置いて表に出ると、
丁度、縦帯状に涙を流すネギの襟首をむんずと捕まえぶら下げた明日菜が
左手でアキラと裕奈に感謝を示して幕の中に入る所だった。

「おおー、巫女さんよー」
翌日、巫女姿で道を行く楓とアキラに雑兵風の男が数人声を掛ける。
「これから一いくさあるからよー、ちょっと来てくんねーか?」
笠の下でアキラが楓に視線を向け、楓が頷いた。
「アキラ殿」
雑兵が離れているのを見計らい、楓がアキラに囁く。
「この時代の歩き巫女、この場合、兵士相手の売春婦と見られているでござる」
「ばっ…」
「巻き込んですまないでござるが、手を出させはせぬ。事態を掴み隙を見て逃げ出す故
無駄な抵抗はせぬ様に」
アキラが小さく頷いた。
251ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/21(金) 02:46:00 ID:???
>>250

「どうやら、村の争いの様でござるな」
粗末な陣中に引き連れられ、楓が言った。
そして、楓は、笠を外すとシナを作りながら長らしき男の隣に座った。
「ほうほう、なるほど…つまり…そこに案内してくれぬか?」
「何?」
「いや、神のお告げでござるよ」
楓がふっと笑みを浮かべた。

まるで分身でもするかの様に、と、言うより、
分身して「用水路跡」をそこここと飛び回る楓の姿を、村の衆は目を丸くして見守っていた。
「ここでござるな」
岩土の小山の中心付近で、楓が杖を突き立てる。
同じ場所にアキラが立った。
「臨兵闘者皆陣…」
「アデアット、シム・トゥア・パルス…
アクア・スプラァーーーーーーーーッシューーーーーーーッ!!」
楓が、手を下にかざしていたアキラの身を抱いてさっと横っ飛びする。
小山が音を立てて崩壊し、大量の水が流れ出した。
地響きが収まり、二人が不要となった陣に戻った頃には、
この村から臨戦態勢にあった隣村まで打ち揃い平伏していた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
252マロン名無しさん:2008/03/21(金) 03:12:44 ID:???
253サム:2008/03/23(日) 19:53:32 ID:cFS38OHy
ネギま×ワンピースはないのでしょうか?
254マロン名無しさん:2008/03/23(日) 20:48:20 ID:???
乙、次も待ってるよ

>>253
今はないよ、無いなら自分で書けばいい
255マロン名無しさん:2008/03/23(日) 21:29:02 ID:???
今までのジャンプ漫画の何かとのクロス置いてあるとこある?
256ネギま!×GS美神:2008/03/23(日) 21:42:17 ID:???
「ネギま!×GS美神」を投下します。
257ネギま!×GS美神(第1話):2008/03/23(日) 21:59:52 ID:???
ある朝、麻帆良学園に一人の女が現れた。女の名は美神令子。腕利きのゴーストスイーパーだ。

学園長「明日から女子中等部の3年A組で副担任をしてくれるかのぅ」
美神「なぜです?」
学園長「学園に幽霊のいる場所はない。3億円は出す。それに担任が子供じゃ。」
美神「わかりました。引き受けましょう」
学園長「そうか。引き受けるか。助かった」
美神「どうして私の情報が伝わってるの…」
学園長「ネギ君、来なさい。それではわしは出張に行く。ネギ君をよろしく。」
ネギ「明日から僕のクラスで副担任をしてくれる美神令子さんですか?」
美神「そうよ(どこかの馬鹿とはえらい違いだわ…)」
ネギ「実は僕、魔法使いの修行のためこの学校で教師をしてるんですよ」
美神「大変ね…」
ネギ「あ、授業開始のチャイムです。また明日会いましょう。」

本日はここまで。第2話に続く。
258ネギま!×GS美神(第2話):2008/03/26(水) 11:08:24 ID:???
そして翌日、美神はネギとともに3−Aの教室へ向かった。

ネギ「こちらが今日からこのクラスで副担任をしてくれる美神令子さんです」
美神「はじめまして。美神令子です。美神先生って呼んでくれたら嬉しいです」
3−A生徒「はじめましてー!!」
まき絵「美神先生はネギ君の事をどう思ってますか?」
あやか「ちょっと、まき絵さん!」
美神「ま、かわいいし賢いしどこかの馬鹿とえらい違いよ」
桜子「どこかの馬鹿って誰ですか〜」
美神「私の知り合いよ」

こうして美神の授業初日は無事終了したのであった…
(第2話おわり)
259マロン名無しさん:2008/03/26(水) 11:18:01 ID:???


ところでネギま×バッカーノとかはないのかな?
ないなら需要ある?
260マロン名無しさん:2008/03/27(木) 19:47:33 ID:???
ネギま×LIAR GAMEが良いな。
と言ってもネタ無いけれども。
261マロン名無しさん:2008/03/27(木) 19:57:38 ID:???
>>260
桜子が大儲けする可能性大だなw
262マロン名無しさん:2008/03/29(土) 15:25:18 ID:???
ageてみるか
263マロン名無しさん:2008/03/30(日) 09:20:50 ID:???
age
264ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/30(日) 23:05:42 ID:???
お久しぶりになります。
では、今回の投下、入ります。

>>251

「おお、ネギ殿」
又兵衛がネギ屋敷を訪れたのは、楓たちが出立した翌日、陽も随分高くなってからだった。
「こんにちわ」
「そちらの者たちで、昨日辺りから姿を見ぬ者がいる様だが」
「ああ、食料調達に出ています、今日じゅうには戻る予定になっているです」
夕映が答えた。
「左様か」
「大丈夫かなー」
ネギが呟く。
「明石さんには小太郎君、楓と大河内さんが一緒なら滅多なことはないでしょう」
刹那が言う。
「コタロー君一緒言うても、強いの分かるけど…」
亜子も不安な表情を見せる。
「ああ、それなら大丈夫だ、見ての通りまんま野生児、
おまけに、あれで女は絶対見捨てない性格してるしな」
「それはねー、そう言う方面ではすっごい頼りになるからさー」
「だって、円♪」
明日菜の言葉に美砂が言った。
「なんで私に振るかなー」
「確かに…結構掛かってんな。どこまで…どわっ!?」
265ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/30(日) 23:08:40 ID:???
>>264
振り返った千雨が、立ち歩く猪の姿にのけ反った。
「いやー、すごいなーゆーな姉ちゃん。
鳥でも撃てればって思ったらこんなん仕留めよった」
小太郎の言葉と共にアキラがどさっと猪を置き、その後ろで裕奈が鼻の下をこすっていた。
「にゃははー、ちょうど帰りにアキラに会ってさー」
「楓さんは?」
夕映が尋ねる。
「近くまで一緒だったんだけど、村でいい野菜あったから買い取る約束しといたから
今取りに行ってる」
「実際、鳥も撃ったけどな」
「山鳥ではないか」
小太郎が差し出した鳥に又兵衛が言う。
「凄いですねー」
ネギが言う。
「今夜、そちらにお邪魔していいですか?」
「いいねー」
ネギの言葉に裕奈が言った。
「こんだけあったらさー、しんちゃん達と一緒に鍋パーティー出来るよ。
ね、さっちゃん」
裕奈の言葉に五月がこっくり頷いた。
「無論、いや、大歓迎だ、ありがたい。実に見事なシシだな」
又兵衛が言う。
「ああ、モツもあったんやけど運べへんからな、
山ん中で味噌ぶち込んで鍋で食うてもうた」
「いや、それがくっさいのなんのって、マジ窒息死するかと思ったって。
でも、慣れたらたまらないんだこれが」
「うむ、あれは酒でもないとたまらぬが、実にたまらぬ。
では、拙者はこれにて」
「支度が出来たら行きますからー♪」
美砂が手を振る。
266ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/30(日) 23:11:53 ID:???
すいませんが訂正です。
>>264
「ああ、それなら大丈夫だ、見ての通りまんま野生児、
おまけに、あれで女は絶対見捨てない性格してるしな」
千雨が言った。
「それはねー、そう言う方面ではすっごい頼りになるからさー」

になります。では続き

>>265
「…見張られているですね…」
又兵衛が去った所で、夕映が呟く。
「まあ、これ以上怪しい奴もいないだろーからな、向こうにしてみりゃ」
千雨が小声で言う。
「未来人などと言うもの、怪しくないと考える方がどうかしてイル、
戦国のただ中とあっては特にネ」
超の言葉に皆が沈黙する。
「仕方がないですね。でも、これからパーティーですから」
ネギが笑顔を見せて言った。
「そうそう、みんなでお鍋でパーッと楽しめばオッケーでしょ、
私の獲物でさー」
裕奈がニカッと笑った。
267ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/30(日) 23:13:01 ID:???
>>266

「こんにちわー」
「どうもー」
ネギ・パーティーが井尻の屋敷に次々と上がり込んだ。
「こんにちわー」
囲炉裏端で笑顔で出迎えるみさえの腕の中で、ひまわりの目がキランと光った。
「たあーーーーーーーっ♪」
「ひまわりちゃん、こんにちわ」
「へっ」
明日菜が言うと、ひまわりはぷいっと横を向いた。
「こんにちわ、ひまわりちゃん」
「タタタタタタタタタ!」
その隣でネギが笑顔で挨拶すると、ひまわりが両腕両脚を伸ばす。
「気に入られたみたいネ」
「いいですか」
「どうぞー」
ネギが、うっとりとした表情のひまわりを抱き上げる。
「ひまわりちゃんー、こんにちわー…」
ビクッ
ひまわりに近づいたのどかが、ギラッと光ったひまわりの目に思わず後じさりする。
「たーっ♪」
「あははは」
ネギが苦笑いを浮かべながら、縋り付くひまわりを両腕で抱く。
そんなひまわりに、のどかがそーっと近づく。
「べー」
ひまわりは、巧みにネギの死角を利用しつつ、舌を出した。
「ゼロ歳児にして修羅場…末恐ろしい…」
ハルナが呟く。

今回はここまでです。続きは折を見て。
268マロン名無しさん:2008/03/30(日) 23:18:41 ID:???
乙!
269ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/31(月) 00:58:28 ID:???
慌ただしいですが、引き続き投下行きます。

>>267

「もう一丁っ!」
「おおっ!」
井尻家の庭で、諸肌脱いだ又兵衛と小太郎が正面からぶつかり、組み合っていた。
「頑張れーコタローくーん」
「負けるなー」
「くおおおおっ」
「そらっ!」
縁側からの声援虚しく、うっちゃられた小太郎が地面に転がる。
「ふーっ、やっぱおっさん強いわ」
「いや、その歳でやはり強いわ」
又兵衛がカラカラと笑った。
「おーし、次はオラの番だ」
「おっ。おーらおらっ」
小太郎に飛びかかったオオマサを小太郎がブン回す。
「あー、オラもオラもー風間くんもー」
「おらぁかずまだぁ」
「わーい、私も私もー」
「ぼー」
「ほうほう、これ伸びますなー」
「だーっ、邪魔やーっ!」
群がる子供たちが飛び散るのを縁側の少女たちが笑って見ていた。
270ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 01:00:40 ID:???
>>269
「僕も、いいですか」
「おおっ!」
合掌して頭を下げたネギが、又兵衛の前で構えを取った。
「そらっ!おおっ」
突っ込んだ又兵衛の体がするりと交わされる。
だが、ネギが又兵衛を捕まえる前に、又兵衛がネギの小袖を掴み地面に転がした。
「あたたた、参りました」
「おう」
「ネギせんせー」
「すっかり元気みたいねー」
のどかと明日菜がネギに駆け寄る。
「おなごの様な優男にも見えるがなかなかどうして、ああして向かい合うと漢の顔になるものよ」
カラカラと笑った又兵衛がパタパタと掌で顔を扇ぐ。
「そうやろ、こいつ、大人しい面して結構熱いんや」
「どうぞ」
「おっ」
そのすぐ側に、美砂が水を満たして手拭いを掛けた桶を置いた。
「すまんな」
「ありがとうございます」
「おお、悪いな」
「コタロー君たちのはこっちにもあるよ」
円がもう一つ桶を運んで来た。
「ごめんね柿崎、まどかー」
明日菜が口を挟んだ。
271ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 01:04:17 ID:???
>>270
「全く」
仁右衛門が縁側からその様を眺めて嘆息する。
「今頃、あの様な嫁御や若様がいてもいい年頃だと言うに、
嫁御も来ぬうちに子供ばかり」
美砂と円が顔を見合わせる。
「もしか、嫁御って私たちの事?」
円が言う。
「年齢的には全く不思議ではありませんね、時代考証として」
夕映が口を挟んだ。

本丸奥で、膳を前にする康綱を前に裕奈と、その後ろの夕映が平伏していた。
「これは、そなたが?」
「はい、これなる明石裕奈がうち取りし鳥獣、
ししは野菜と共に煮物に山鳥は汁に仕立ててございます」
夕映が言った。
「これは、勇ましい事よ。廉も相当なものだが、そなたは鉄砲も使うか」
カラカラと笑った康綱が箸を付ける。
「ふむ、裕奈、これを作ったのもそなたか?」
「はいっ、廉姫様のお計らいにより、お勝手をお借りいたしました」
裕奈が平伏したまま舌を噛みそうな勢いで言う。
「…美味である」
裕奈がぐんにゃりと脱力し、夕映が咳払いをする。
「ありがとうございます」
「お主を嫁とする者は果報者よ」
幸せ者よの」
「いやだー…」
夕映が咳払いし、裕奈は畳に額を擦り付けた。
その様を見て、ふっと笑みを浮かべた康綱が杯を空ける。
272ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 01:05:22 ID:???
>>271
「裕奈」
「はい」
「ちこう」
「はい」
康綱が銚子(現代と違い、超大ざっぱに言って小さなヤカンに近い器)から杯に酒を注ぐ。
「杯を取らす。これも、お主らからの贈られものだがの」
裕奈がチラと後ろを見る、夕映が小さく頷く。
「では」
裕奈が杯を空けた。
「うむ、もう一献いかがか?」
「いえ、未成年ですから…
あ、でも、この時代だと、15歳ぐらいでお酒呑んでましたか?」
「十五と言えば立派なおなごよ。廉などは困ったものだがの。
お主の様に見目良く気だてもよき娘、放ってはおくまいぞ」
「いやだー…
せっかくですが、ネギ先生にも怒られちゃいますから」
咳払いを聞きながら裕奈が苦笑いして言う。
「左様か」
「あの、お注ぎいたしますか?」
「おお」
康綱が杯を手にする。
銚子に裕奈の白い手が添えられ、杯に酒が注がれる。
いつも通り束ねた黒髪が小袖の上にうなじを覗かせる。
「うむ、旨い」
莞爾と笑う康綱を前に、裕奈が一歩下がって平伏した。
「夕映」
「はっ」
「お主も杯をとらそう」
「はっ」
夕映が進み出る。
273ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 01:06:39 ID:???
>>272
康綱は裕奈を手で制し、杯に酒を注ぎ、夕映に渡す。
「では、頂戴致しますです」
夕映が、両手で顔を隠す様に杯を空けた。
「一献だけが良いのだな?」
「せっかくですが、そうさせていただきます」
「うむ、大儀であった」

「いや参ったよさっちゃん、人が悪いんだから」
井尻家の台所で裕奈が五月に言う。
「私が獲ったものだから私が作るのがいいってさぁ、
下手したら手打ちだよ手打ち」
裕奈が、にこにこ笑っている五月の前で首に手を当てて言う。
「まあ、あのお殿様はそう言うキャラクターではないですから。
信長に同じ事をしろと言われれば迷わず出奔しますが」
夕映が言う。
「当代随一の庖丁人が首を刎ねられそうになったと言う逸話がある人ですね」
五月が言い、裕奈の全身にどっと汗が噴き出す。
「でも、裕奈さん、本当に料理お上手なのですね」
夕映が言う。
「まあ、なんだかんだで作ってたからね。
でも、さすがに今回はきつかったよ。
肉は使った事ない肉だし砂糖とか醤油とか、材料も調味料も制限きついしさー。
なんとかかんとかやっては見たけどさ」
「裕奈さんのお料理、美味しいです。材料の持ち味がシンプルに味わえて」
「さっちゃんに言われるって光栄だね。他に方法無いからねこの場合」
裕奈が苦笑する。
「私にもそれ教えてくれるかなー」
そこに現れたのは、手拭いでポニテに束ねた美砂だった。

今回はここまでです。続きは折を見て。
274マロン名無しさん:2008/03/31(月) 01:24:29 ID:???
ミシャーktkr!!
続き待ってますー
275ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/03/31(月) 11:04:19 ID:???
立て続けですが、今回の投下、入ります。

>>273

「はーい、出来ましたー」
五月の声と共に、アキラが鉄の味噌鍋を囲炉裏の五徳に乗せる。
五月の運ぶ皿に刻んだ肉や野菜が並ぶ。
「おおっ、旨そうだなっ」
ひろしが声を上げた。
「ご飯炊けましたー」
「うわぁ、米だぁ」
美砂がお櫃を運んで来た。
「おら達までいいんですかぁ?」
かずまが言う。
「体を張って姫様を助けんとした事、聞き及んでおる。
姫様から皆の家にも褒美の米が下された筈、遠慮はいらん」
「いただきまーす」
米の飯に狂喜する子供たちを前に、ネギ・パーティーはつくづく時代を実感する。
「お鍋おいしー♪」
「井尻殿、まずは一献」
徳利を手に申し出たのは楓だった。
「おお」
「野原殿も」
「すいません、どうも」
「ケッ」
どう見ても女の子と言うより若い娘の楓を前にひろしが恐縮し、
みさえとひまわりが呆れた声を出す。
276ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 11:07:27 ID:???
>>275
「ほう、これは…よもや江川か?」
「旨い酒ですねー」
「幸いにも手に入れる事が出来たでござる。では、拙者は」
「うむ、勝手にやらせてもらおう、のう、ひろし」
「はい、楓さんはお友達と、こんな美しいお嬢さんと離れるのは名残惜しいですが…ハッ!」
グワンッ
“殺気!”
楓に向けてキリッと親指を立てたひろしがさーっと血の気を引かせる。
ドゲシッ
「ケッ」
ひまわりが声を出して顎を反らした。

「結構、手に入ったな」
クラスの輪に戻ろうとする楓に千雨が声を掛けた。
「途中でちょっとした臨時収入がござってな、それを米と酒に替えて来たでござる」
「で、外の様子は?」
「いくさになるでござるな」
楓の目が、薄く開いた。
「そうか」
「大蔵井の城下ではそのために品物、人、様々な動きが静かに始まっていたでござる」
「もちろん、あんたは飲まないよな?」
「一応未成年でござるからな」
「どう見ても見た目無理あるけどな…もう一つ頼まれてくれないか?」
「んー?何でござる?」
「もしもの時、もしもの時だ、野原一家の安全、
特にあのガキ二人、しんのすけとひまわり、あの二人を最優先で安全に逃がして欲しい」
「分かったでござる。しかし、千雨殿からの頼み事とは、
珍し過ぎて何か恐ろしいものがあるでござるがな」
「ま、蜂の巣になるって事はないだろ」
277ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 11:10:33 ID:???
>>276
「なーに世界作ってるのかなー、千雨ちゃーん」
背後から、和美がガバッと楓と千雨の首に抱き付く。
「いや、何でもねぇよ」
「うん、旨い旨い、シシ鍋なんて久しぶりやからなー」
「おいしーアルネー五月ー♪」
「ほらー、こそこそ密談してる暇あるのかなー♪」
和美がニッと狐の笑みを浮かべた。
「こら犬!バクバク肉ばっか食ってんじゃねぇっ!」
「おおーっ、千雨ちゃん参戦ーっ」
その傍らで、アキラがお鉢の小ハヤと山菜の煮物に箸を伸ばす。
そして、口に入れたまま硬直した。
「ちょっ、それ持ってっちゃった!?」
美砂が慌ててアキラに駆け寄る。
「ごめん!それ私の失敗作っ!はい水、水っ!」
美砂が瓶子(へいし)と椀を差し出す。
奪い取る様に手にしたアキラが、瓶子からなみなみと注ぎ、喉を鳴らして飲み干した。

「あ、ヤッ○ーヤ○ター○ッターマーン、はいご一緒にっ」
「○ッターヤ○ターヤッ○ーマーン、オーッ!」
「オーッ!」
「の、ノリノリね美砂…」
円がこめかみに汗を浮かべる。
「古ネタどっから持って来た…」
千雨がぼそりと言う。
「カッコイイー、キレイなおねいさぁーん♪」
「よーしよしよし、ホントの事をありがとーねー」
美砂がしんのすけの頭を撫でる。
278ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 11:16:08 ID:???
>>277
「えへぇへぇへぇ。
アクションビーム・ビビビビビー、
カンタムパーンチ」
先ほどから、井尻家ではしんのすけの飛び入り歓迎ワンマンショーが展開されていた。
「おおーっ、やるねやるねー、やっぱ、男の子はアクシ○ン仮面だねー」
「おおーっ、アーク○ョーンーかーめーんせーぎのかーめーん」
ハルナがおだてるままに独唱の末再びお馴染みのポーズで高笑いするしんのすけであった。
「分かってるねぇおねいさん。」
「んー、やっぱり男の子はア○ション仮面、女の子結構色々あるよねー。
結構振り回されるってちづ姉ぇがさー」
夏美が少し懐かしそうに言う。
「ミラクルミラクルくるくるりん、純情変身マリー♪」
「そうそう、うまいうまい」
夏美が笑って拍手する。
「でもー、おらシーラお姉様の方がー。
くるくるミラクルくるくるりん、お色気変身シーラ・バトルモード!」
「オオーッ」
パチパチパチ
「あ、もえもえPPPもえPPP♪魔法少女もえPー♪」
「やるじゃねぇか」
くるくる動き回るしんのすけを前に千雨がぼそりと言った。
「いやー、風間君には叶いませんよー」
「女のアニメだろ、よう知っとるなぁ」
小太郎がぼそりと言う。
「あれ、でもコタロー君確かビブリオン…」
「んなもん見てへんわっ」
ネギの言葉を小太郎がさっと遮る。
279マロン名無しさん:2008/03/31(月) 11:16:33 ID:???
ひまわりやるなw乙です。

>>259
バッカーノは俺も思ってたw
でも結構難しそうだな。キャラ数多いし。
280ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 11:19:16 ID:???
>>278
「え、違った?日曜日早起きして見てなかったっけ?」
「ばっ、夏美姉ちゃん、ライダーやライダー、だーかーらー、たまたまチャンネルをやな…」
「ほうほう、ビブリオンですか、なかなかお目が高いですなコタロー君は」
「だーっ、見てへん言うてるやろっ!…ん?…」
ズズンズンズズン、ズズンズンズズン…
オーラを放ちながらぬおっと中央に移動するアキラに、小太郎は思わず硬直した。
アキラは、突如直立し、右手を垂直に掲げた。
「大河内アキラ、魔法少女ビブリオンやります」
ズズンズンズズン、ズズンズンズズン…
「わーい、私も私もー♪」
「待てーバカピンクーッ、絶対変だろーっ!」
「世界の本を守るため」
拍手喝采の中虚しく響く千雨の突っ込みと共に、アキラはビシッとポーズを決めた。
「悪の組織と日夜戦う」
「二人合わせて魔法少女ビブリオン」
オオーッ、ヒューヒューッ、パチパチパチーッ
「ビブリオ・スパイラルシュート」
「ビブリオ・アクアラプソディー」
「ビブリオ・ファイナルシュート!」
「うわーいうわーいうわーい」
拍手喝采の中、飛び跳ねて全身で喜んでいるしんのすけの前で、
アキラはビシッと両腕を斜め上に向けて高笑いを始めた。
「ウワッハッハッハ、ウワッハッハッハッ、
さあ、しんのすけ君っ」
「おおっ、アキラおねいさんやりますな。
ウワッハッハッハ、ウワッハッハッハッ」
「ウワッハッハッハッ、ウワッハッハッハッ…
きゅうー…」
281ネギま!戦国史(クレしん):2008/03/31(月) 11:21:24 ID:???
>>280
「ちょっ!」
明日菜が、慌ててぐらりと横倒しになったアキラの背中を支えた。
「えへらえへらえへら…」
明日菜に抱えられたアキラは、そのまま寝息を立ててしまった。
「でもでもー、おらー、やっぱりドジッ子ルーランルージュがいいなー」
「通だねー、敵幹部でブラックなのにドジッ子の萌え萌えストライクゾーンだもんねー。
よーし、ここはお姉さんが一つ、14話伝説のポーズッ」
「あれ、パル、それ違くない?」
美砂が言う。
「え、どこ違うって?」
「確かこうじゃなかった?」
「何で知ってんのよ美砂」
円が問う。
「雑誌の毒男get特集でやってたのよ」
「あれー、違うよそれー」
「まきちゃん知ってる?」
明日菜が言う。
「結構癖になるからさー、確か、こうだよこう」
「だから、こうだって」
「違うって、この角度がこうで」
「いやだからー…」
イライライライライライライライラ…ブチッ…

今回はここまでです。続きは折を見て。
282マロン名無しさん:2008/03/31(月) 11:59:08 ID:???
続き!続き!
283マロン名無しさん:2008/03/31(月) 16:50:53 ID:???
ちう様くるこれ!!w
待ってますー
284マロン名無しさん:2008/04/01(火) 01:32:22 ID:???
285ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/02(水) 00:48:10 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>281
シャキィィーーーーーーーン!
「パケット・フィルタリングッ!」
首が一斉にそちらを向く。
「わたし…ご…ごめんなさい…」
ぽわあーん…
全員、髪の毛に大きな汗の滴を浮かべた。
「…えー?こうですかー?分かりませーん」
チュドォォォーーーーーン
ズシャアアアアアアッッッ
スライディングの土煙の中、どっと拍手喝采が沸き起こった。
「いいっ、千雨ちゃんいいっ!」
「いいよいいよーちうちゃーん!」
「ちがーうっ、私はネットアイドルちうなんかじゃねーっ!」
「まだ言ってる」
「てか誰も言ってない」
「いやー、ちうちうちゃん、お見事ですなー」
「だぁからーっ、ネットアイドルちうちうなんかじゃねぇって言ってるだろーがーっ!」
ぽんと肩を叩いたしんのすけに千雨が絶叫した。
「往生際悪っ…」
夏美が呟く。
「まあまあ師匠、風間君・バレバレ知らぬは本人ばかりと言いますからちうちうちゃん」
「だぁからぁーっ…」
286ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/02(水) 00:49:42 ID:???
>>285

「あははー、可愛いねー」
「たー♪」
「桜子、私もー」
桜子から手渡された円がひまわりを抱き上げる。
「た?」
ひまわりの目がキランと光り、小袖の胸に手を突っ込む。
「ちょっ、何?」
ひまわりが引っ張り出したのは、鎖を通した指輪だった。
「いやー、ひまわりちゃん、お目が高いねー」
円が自慢げな笑みを浮かべる。
「…じー…へっ…」
ひまわりはぽいと指輪を放り出した。
「お子ちゃまには早かったか」
円が苦笑いする横で、超がモノクルを右手に摘んで放り出された指輪を左手で摘んでいた。
「ふむ、微妙に刻印が違うネこれ」
「マジ?…」
そっぽを向いていたひまわりの目がキランと光った。

「お疲れ様です、ちうさん」
ゲシッ
「あううー…」
頭を押さえ、右目から大きな涙の滴を垂らすネギの前に千雨が座る。
「でも、みんな凄いですねー」
「ああ。ったく、つくづく馬鹿騒ぎな連中だ」
「タタタタタタタタタタタ!」
「おわっ!」
千雨がのけ反る前で、ひまわりがネギと千雨の間に突進して来た。
「どうしたんですかー、ひまわりちゃん」
ネギがひょいとひまわりを抱き上げる。
287ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/02(水) 00:51:04 ID:???
>>286
「たぁー♪えへぇえへぇえへぇ」
千雨が、そーっとひまわりの髪の毛に手を伸ばす。
グワンッ
バチバチバチバチ
ネギの気付かぬ内に、空中に視線の火花が散る。
“…こ、このガキ…”
千雨の眉がひくひくと震える。
「ひまわりちゃーん」
「たあー♪」
「あははー、可愛いでしゅねー♪」
「たあぁー♪」
ひまわりがちらっと千雨を見る。
「へっ」
くるりとネギの方を見る。
「たあー♪あはぁあはぁあはぁ」
「あははー♪」
“だまされんじゃねええぇっ!!”

「いやー、皆さん元気ですなー」
「君もな、しんのすけ君」
「色黒トロピカルなおねい様、引率の先生と言うのも大変ですなぁ」
「あいにくだが、私も同級生だ」
「ほうほう、年齢詐称ですか」
ベベンッ
「大丈夫、おらとおねい様だけの秘密にしといてあげるから」
「しんのすけ君、お遊戯の時間だ」
ジャキッ

今回はここまでです。続きは折を見て。
288マロン名無しさん:2008/04/02(水) 01:09:14 ID:???
289マロン名無しさん:2008/04/02(水) 20:54:29 ID:???
しんのすけ死亡フラグwwww
290マロン名無しさん:2008/04/02(水) 20:56:51 ID:???
しんちゃんが死ぬ訳無いじゃないかw
291マロン名無しさん:2008/04/02(水) 23:09:47 ID:???
投稿します。
まず冒頭のプロローグだけ。
これが終わったら、本格的にストーリーは進行します。
二本立てでいきます。

途中、休み休み投稿していくので、気長に読んで下さると幸いです。
よろしくお願いします。
292ネギまin......:2008/04/02(水) 23:11:33 ID:???
街の片隅に、ひっそりとその映画館はある。
築何年経っているのだろうか?
漆くいの壁はところどころが剥がれ落ちてむき出しになっている。
床のタイルやカーペットには、煙草の焦げ痕らしき黒いシミも数箇所ある。
トイレはペンキの剥がれた板で仕切られたトイレだ。
女性ならまず利用はしないだろう。
身なりを気にしない男性なら、使うかもしれない。
それほど汚いトイレだ。
売店は時代錯誤なポップな電光看板が誇らしげに掲げられている。
だが、売っているのは塩味のポップコーンと今時ビンのコーラだ。
誇らしげにする程でもない。
ロビーから劇場へ足を踏み入れると、そこはすでに映画の世界だ。
それも、かなり低俗でマニアックな…。
かつては生まれたての赤ん坊のような真っ白だったスクリーンも、今や色褪せて、所々に染みを作っている。
赤ん坊はすでに人間の欲や業を知る、スれた大人になったという事だろうか。

この映画館が建てられたのは、私がまだ生まれても居ない頃だったらしい。
妙にハイカラな外観は設立当時の世相を反映していたからだろうか?
父に連れられ、私は物心付かない頃から良くここに通っていた。
塩味しかないポップコーンとコーラを父にねだると、人もまばらな劇場の席に自由に座った。
そして私は読めない字幕を必死に読んで、映画に見入った。
巨大な画面で映し出される非現実的な物語に、物心付かない頃の私は夢中になった。
ハンフリー・ボガートやジェームズ・ギャグニー、そしてスティーブ・マックィーン。
彼らの映画を通して、私は世間を知った。
物心付いて少し大きくなった私……正確にはいつ頃だったか忘れたが、多分、中学か高校生になった頃だ。
私の心臓を捕らえて離さないヒーローが現れた。
アメリカ中心の西部劇の中に突如として稲妻のようにその男がスクリーンに映し出された。
荒野をボロのテンガロンハットにポンチョを着て葉巻を吸う無精ひげの男……クリント・イースドウッドだ。
その渋くてカッコいい姿に夢中になり、虜になってしまった。
何度も通い、何度も観た。
セリフも一緒に口ずさみ、口調まで真似して覚えてしまった。
293ネギまin......:2008/04/02(水) 23:14:18 ID:???
その頃だろうか…この映画館で上映される映画が変わりだしたのは。
いや、完成されていったのだろう。
……いやいや、そうじゃない、違う。
この姿になるべくしてなった、そういう事なのではないだろうか?
人間は生まれたては、どんな人間になるかわからない。
だが、どんどん成長し、人格形成され、経験を積む事で、ある種の人間になる。
芸人になる人間もいる、バスの運転手になる人間もいる、売店で叩き売りをする気風のいい人間にもなる。
……そして、この私のような……。

ロビーの劇場入り口の立て看板に、今日の上映する映画のタイトルが張り出されていた。

『雪広あやかinヒッチャー』

『ネギまのはらわた キャプテン・スーパーマーケット』

B級映画の匂いがプンプンする。
だが、それが逆に楽しみだ。
今回も二本立てだ。
294ネギまin......:2008/04/02(水) 23:14:49 ID:???
売店で塩味しかないポップコーンとコーラを買う。
もう店員とは何十年もの顔なじみだ。
両手にポップコーンとコーラを持ち、劇場のドアを開ける。
煙たくてお世辞にも綺麗とは言えない劇場の空気。
シートの頭には、後ろの座席の人間が押し付けたのだろう煙草の焦げ痕がある。
もう、私が最初に連れて来られてから何十年と経ったのだ。
いや、それ以前からずっと、この麻帆良の地元民に娯楽を提供し続けたのだ。
ハッキリ言ってボロボロだ。
だが、ここに来たら、私はいつも懐かしい気持ちになる。
ここは、私の心の故郷なのだ。
シネコンが街を覆い尽くしても、私はこの劇場が好きだ。
私は比較的損傷の酷くない席に座った。
しばらくして、劇場が暗くなっていった。

……さて、今日はどんな映画が私を楽しませてくれるのだろう。
295ネギまinグラインドハウス:2008/04/02(水) 23:16:02 ID:???





―――――『ネギまinグラインドハウス』―――――





to be continued......
296マロン名無しさん:2008/04/02(水) 23:20:42 ID:???
ここで冒頭は終わりです。
次回、ようやくネギまとのコラボ作に突入します。
まずは、いいんちょ主演のサスペンススリラーです。
拙い所はあるかとは思いますが、暖かい目で見ていただけたら幸いです。
精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。


                              グラインドハウス支配人
297グラインドハウス支配人:2008/04/03(木) 00:56:49 ID:???
冒頭の文章にある、「真帆良」の文字は取り消しでお願いします。
地名不詳の映画館という設定に直したいので、申し訳ございません。

                             グラインドハウス支配人。
298マロン名無しさん:2008/04/03(木) 15:39:37 ID:???
何かよくわからんがwktkして待ってる。
299グラインドハウス支配人:2008/04/04(金) 14:33:33 ID:???
それではお待たせしました。
一本目を上映致します。
チャプター毎に分けて上映致しますので、最後まで気長にのんびりとご覧ください。

それでは、上映致します。
300ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:34:57 ID:???
あの日、空港から出た時は、なんてことのない、いつもどおりの日常だと……そう思っていた。
勝手にそう思っていただけだった。
でも、そうじゃなかった。
日常はある時、何の前触れも無く、不条理に、一方的に壊されていく物だと悟らされてしまった。
アスファルトのハイウェイが荒野を一本の線のように伸びて、奥へと連なっていっている。
西部開拓時代、人は馬に乗って荒野を駆けていた。
だが、今は違う。
荒野はアスファルトを敷かれ、馬の代わりに車で駆けていく。
永遠に続くようなそんな気持ちにさせてくれる、長くて無常なハイウェイ。
夏の蒸し暑さが今更になって、肌で感じている。
汗はさっきから出ていた。
でも、夢中だった。
さっきまで起きていた、非現実的な出来事が嵐のように感じられていて。
今は、過ぎ去った嵐の後の空虚な廃墟のような気分だ。
SUV型の警察車両は、さっきの「嵐」のせいで、エンストして動かない。
わたくしは「嵐」の痕を視界から背けるように、視線をかえた。
夕陽がアメリカの荒野に沈んでいく……。
そして、アメリカに来てから今までの事を思い出した。
ジム……ごめんなさい。
……ごめんなさい。
……ごめんなさい。
…………ごめんなさい…………。
301ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:35:28 ID:???




―――――『ヒッチャー』――――――

主演:雪広あやか




302ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:36:41 ID:???
Capter1「二人だけのドライブ」

日本からアメリカに向かって何時間経ったのだろう。
眩しいばかりの晴天のアメリカ大陸にジェット機が着陸した時は、日本との時差に困惑してしまう。
何度も来たことはあるし、子供の頃我慢したけど涙がこぼれ出て仕方が無かった耳鳴りの痛みも慣れたし、大体いつも通りのバカンスの筈。
別荘がある州やその近隣には幼い頃から何度も着ている。
……なのに、何故だろう。
この嫌な胸騒ぎは。
出発前に何か変な物でも食べたのだろうか?
お世辞にも美味しいとは言えない機内食を食べたせいだろうか?
英語のアナウンスで、客員は降りろという放送が流れ、客室乗務員に挨拶しながら、乗客は次々と空港へと降りて行った。
わたくしも行かなければ……。
理由もなくわたくしを襲った胸騒ぎは、今や胸焼けへと変化し、さらには頭痛まで加わる始末。
わたくしは今更ながら、たった一人でアメリカに向かってしまった事に後悔し始めていた。
本当なら、わたくしが懇意にしている恩師……といってもわたしより4つも下なのですけれど……、その恩師と一緒にこのアメリカの地を踏みたかった……。
わたくしは自分の短気と余計な思いっきりの良さに、嫌気が差してしまう……。
乗客が次々と降りていくが、わたくしは気分が落ち着くまで席に座っていた。
そして、勢いでお供も連れず、一人で来てしまった成り行きを思い出していた。
そう、あれは出発の前夜、学校の寮で、わたくしの腐れ縁とも呼ぶべき幼馴染と口論していた夜だった……。
303ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:38:26 ID:???
その日、わたくしはルンルン気分で寮の廊下を歩いていた。
スキップはレディとしてはしたないので、ダンスのステップでも踊りかねないぐらい上機嫌だった。
わたくしはこの日をどれだけ心待ちにしていた事か……。
あの小猿娘はわかっていないのですわ!
今思い出しただけでもイライラする……。
とにかく、わたくしはある部屋の前まで、ステップを踊りかねない程上機嫌で向かっていたのだった。
その部屋の中には、わたくしの腐れ縁とも呼ぶべき幼馴染と、そのルームメイトで学園長先生のお孫さん。
そして……わたくしがお慕い申し上げている……ね、ネギ先生……。
あぁ、思い出しただけでも、おでこは湯気を上げる程熱くなり、身体も火照ってしまう……。
部屋の扉の前で、どれほどの間、悶絶したことか……。
わたくしは押さえ切れない心の昂ぶりをぶつけるように、扉を開けた。

「ネぇギ先生ぇ〜〜♪♪♪」

「ふ、ふぇ!?い、いいんちょさん!?」

あぁ、私の視界に飛び込んでくる愛らしい姿……。
倫理観など吹き飛んでしまいかねない程愛くるしさに、わたくしの顔はメロメロ状態になってしまった。
わたくしの突然の訪問に驚いてるその姿も愛くるしい……。
わたくしのテンションは高まる一方。
メロメロ顔をキリッ!っと爽快なガムを噛んだような爽やかな顔で、レディらしく振舞った。

「ネギ先生、夏休みのご予定は?」

「え?え〜と、実は「一緒に私の別荘に行きましょう〜〜〜♪」
304ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:40:42 ID:???
「え、別荘?そこってどこなん?」

ネギ先生の横で訛りのある言葉を話す黒髪の少女は、近衛木乃香。
学園長先生のお孫さん。

「アメリカ・ネバダ州……砂漠の真ん中に突如生まれた黄金の宮殿……ラス・ベガスでございますわぁ〜〜♪♪♪」

「あ、アンタの家って、もうなんでもアリね……。」

「そこ、チャチャを入れないでくださいまし。」

チャチャを入れたのは、見た目はおサルさん、頭脳もおサルさんの、腐れ縁の幼馴染、神楽坂明日菜。
余計なチャチャを入れたおサルさんを一蹴すると、視線も思考もネギ先生の方へと戻した。

「わたくし……雪広家はラス・ベガスにホテルを所有しておりますの。ぜひネギ先生へ、日々の重労働から解放し、憩いの地で安らぎを提供したいと思いまして……。」

「あ、あの…実は「ネギ先生!先生はラス・ベガスには行った事ございませんものね!?さぁ、いざ黄金の舞う享楽の地へ共に行きましょう……♪」

わたくしは燃え盛る情熱のあまり、勝手にダンスのステップを踏み、ネギ先生に猛アピールしてしまっていた…。
しかしその燃え盛る情熱を吹き消したのは、小憎らしいおサルさんの一言だった。

「ムリよ、それ。」

「…………は?」
305ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:41:36 ID:???
「だから、無理だって言ってんの!M・U・R・I!ム・リ!」

「何故アスナさんが勝手にネギ先生のスケジュールを決めているんですの!?保護者か何かのつもりですの!?」

「理由はコレよ!」

燃える情熱を吹き消したと思えば、次におサルさんはわたくしの前に、プリント用紙を突き出していた。
そこにはこう書かれていた。

『夏休み補習授業日程表』

ま、まさか……。

「そういう事。ネギは夏休みの補習授業をしなくちゃならないから、アンタとのバカンスはムーリ。」

「補習授業に出るメンバーは……いつもと同じ、バカレンジャー5人組やで♪」

「言わなくていいわよぉ!」

驚愕の事実を突きつけられ、怒りがこみ上げて来た。
彼女二人はネギ先生をよそに、私に追い討ちの言葉を浴びせる。

「補習授業はちゃんと出席しないと意味ないからね〜、一日も外せないのよ。」

「ネギ君の教員審査も兼ねとるし……ネギ君も頑張っとるんよ。10歳の教員なんて、PTAとか教育委員会とか、何かと厳しい目ぇで見よるし…。ここは補習授業で心証良くせんとあかんのよ。」

「そういう事。私もネギも夏休みは一日も外せないってワケ。」

「そういう訳なんです……。すみません、いいんちょさん……せっかく誘って下さったのに…。」

「残念ねぇ〜♪い・い・ん・ちょ♪おっほっほ〜♪」
306ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:44:28 ID:???
『残念ねぇ〜』『残念ねぇ〜』『残念ねぇ〜』……。
その言葉が、何度も頭の中でこだました。
そして……その言葉を切っ掛けに、わたくしの中の何かが、音を立ててプッツン!と切れた。

スパコーン!

と、いう小気味のいい音が部屋中に響いた。

「い、痛ッ!?な、なにすんのよ!!」

わたくしは思わず、履いていたヒールを手にして、アスナさんという名の憎たらしい日光のおサルさんの頭を叩(はた)いた。

「あ、あなたのせいで……。あなたがおバカさんなせいでネギ先生は補習授業なんかにぃ〜〜〜〜!!」

「わ、私だけのせいじゃないわよ!!」

「い、いいんちょさん落ち着いて!ぼ、暴力は駄目です、暴力は!!」

「せめて、踵の尖った部分では殴らんといて!?多分シャレにならん程痛いと思うわ。」

「こ、このか!?そっちの心配!?いいんちょを止めてよ!!」

怒り狂い暴走したわたくしは、金髪の長髪が逆立つ程だった。
後で聞いた話によると、ネギ先生は私を抱きしめて必死で止めようと健気に奮闘していらしたとか。
今思えば、非常に申し訳ない事……。
とにかく、その時はネギ先生の奮闘に気づかず、怒りに身を任せていた。
307ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:45:51 ID:???
「このおバカさんのおサルさんのせいでネギ先生は…ネギ先生はァ〜〜!!せめて、ネギ先生の心労が減るように、補習用員を今ここで減らしますわ!!!」

「ちょっ!?バカ!!!やめてーっ!!!」

「みんな!こっち来て!いいんちょが大変やーっ!」

後で聞いた話によると、ネギ先生のお部屋は忠臣蔵の松の廊下状態(※注一)だったらしい。

「いいんちょ!殿中でござる!殿中でござるぅ〜〜!!」

「な、ならぬ!武士の…武士の情けじゃぁ〜〜!!」

……思わずそう口走っていたらしい。

「いいんちょ、落ち着いて。どうどう、どうどう。」

「馬じゃありませんわ!」

怒りが頂点に達しても、突っ込みは忘れられなかったようだった…。
とにかく、松の廊下と化したネギ先生の部屋は、クラスメートが総出で集まって、なんとか場を…というかわたくしを沈めたようだった。
わたくしを止めに入らなかったクラスメートは、ただの野次馬のようだ。
荒い息を必死で抑えると、持っていたヒールを床へ落とし、履きなおすと、

「もういいですわ……。別荘へは一人で参ります……。悪しからず!!」

と、啖呵を切って、ヒールの高い音を立てて足早にその場を去っていった。

(※注一 参考資料:http://jp.youtube.com/watch?v=C3TMBGBLwus
308ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:46:50 ID:???
やり場を無くした怒りはヤケとなり、私は荷物を纏めて、アメリカへと向かった。
勢いに任せて、家の者には誰一人にも言わず、実家に帰る妻のように足早に日本を去っていったのだった。

(そうでしたわ……。なんて愚かな事を……。)

ふと気が付くと胸焼けや頭痛は無くなり、一気に現実に引き戻された。

「お客様、ご気分がすぐれないのですか?」

客室乗務員がわたくしに声をかけてきた。
もちろん、英語。
日常会話はもちろん、幼い頃から欧米各国を廻って来た私は、すんなりと当たり前のように返事をした。

「い、いいえ……心配など無用ですわ。」

後悔はいくらでも出来る。
だが、現実は変わらない。
怒りという名の勢いで来てしまった為、ネバダ州への便などなく、隣のカリフォルニア州の空港の便しかチケットは無かった。
カリフォルニアからネバダのラス・ベガスの実家まで、国内便で行くしかない。
わたくしは荷物を棚から降ろし、さっさとジェット機から降りて行った。

さっそく入国手続きを済ますと、ネバダ州のマッカラン国際空港かリノ・タホ国際空港行きの便を探した。
だが……わたくしの行く手を阻む事態が既に起きていた。
……国内便が……無い。
309ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:50:12 ID:???
(そ、そんな筈は!?)

だが、何度見ても同じだった。
アメリカン航空もユナイテッド航空もパンアメリカン航空も……。
それどころか、いつのまにか国際便まで無くなっていた。
わたくしはわけがわからず、受付まで急いで向かった。

「どういう事ですの!?国内便が一つも無いなんて!それどころか…国際便まで無くなるなんてどういう事ですの!?」

わたしの捲くし立てる英語に、受付の女性は「やれやれ、まただわ。」といったような顔をした。

「あちらをご覧下さい。すべてがお分かりになりますよ。」

受付の女性が指差した方向に、テレビの画面があった。
ニュースが流れており、リポーターがリポートをしていた。

『○○空港の職員達が大勢でストライキを行っています。上は操縦士から、下は掃除のオバチャンまで、待遇の改善と向上を求めてストライキを起こしています!
もう、職員全員が死ぬ程エキサイトしまくってます!下手に刺激をすると暴動なんて起こりそうな感じですよ、マジホント!』
『ねぇゲイブ。このストは、どのくらい続きそう?』

キャスターがリポーターに質問している場面に移った。

『当分無理ですね!時間は少なくとも3〜5時間はどの飛行機も飛びそうにありませんよ!
…まったく、掃除のオバチャンはともかく、なんで操縦士までストライキを起こすんですかね?』
310ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:51:18 ID:???
スト……スト……。
目の前に突きつけられた現実に、その後のリポーターとキャスターの話は耳に入らなかった。
リポーターが告げていた空港の名前は、よりにもよってこの空港だったのだ……。
勢いで来てしまった結果がこれだ。
わたくしは思わずその場に座り込んでしまった。
もう、バスで向かうしか……。
と、そう思った時、誰かがわたくしを呼ぶ声が聞こえた。

「……お嬢様!あやかお嬢様!」

若い金髪の男性が駆け寄ってきた。
執事の格好をしたその男性が誰なのか、最初は分からなかった。
だが、執事の格好をし、わたくしをお嬢様と呼ぶその男性は、確かに雪広家の従者……。
あ……。

「あやかお嬢様。ご無事で何よりです。」

「ジム……。ジム・ハルシー……?」

「覚えていて下さったんですね。光栄です…!」

「覚えておりますとも……。」
311ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:53:46 ID:???
ジム・ハルシー。
彼は去年、ベガスの別荘に来たときに、新しく雪広家に入った新米執事だと紹介された。
そしてその年のバカンスは、彼が付きっ切りでわたくしの面倒を見てくれた。
あの時は初々しかったのに……。

「すっかり……立派になって……。」

「い、いえ……そんな。まだまだ未熟者です……。」

赤面してはにかんだしぐさは去年と変わり無いのに、たくましい顔つきになって……。

「本当に……立派になって……。」

ジムが来てくれた。
そう安心出来た途端、わたくしは感極まって、人目もはばからずジムに抱きついて泣いてしまった。

「じ、ジムぅ〜……わ、わたくし……不安で…不安で…。」

「お、おおおおお嬢様…。お、落ち着いて下さい…。」

「ジムぅ〜〜〜……。」

「あらやだ。あの男の人、彼女を泣かせてるわよ!酷いわねぇ〜!」

「別れ話でも切り出されたのかしら?あの男も罪よねぇ〜!」

「ち、違います!誤解です!この方は、私が仕える家のお嬢様で…!」
312ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:56:43 ID:???
落ち着いて、泣き止むとジムはこう切り出した。

「日本のルームメイトの方から、あやかお嬢様が日本を飛び出してベガスの別荘に向かったと聞いたものですから…。」

「グス……なぜ、この空港だと?」

「情報を聞いて、日本からアメリカへの国際便を全て調べました。ネバダ州への便はなく、カリフォルニアの便しかないのを見つけて、ここに来るのではないかと思ったんです。」

「さすがですわ……ジム。」

「い、いえ……大したことではありませんよ。さぁ、用意した車で別荘へ向かいましょう。」

空港を出ると晴天だったはずの空が雲で茂っていた。

「この様子じゃあ、降りそうですね……。早く、車に乗りましょう。」

ジムが駆けていく先に、ダークブルーのBMVがあった。
後部座席を開けると、先にわたくしを乗せ、荷物をトランクへ、そして運転席へとジムは座った。

「疲れているのでしたら、お眠り下さい。ハイウェイの旅はつまらないだけですよ。」

「そんなことありませんわ。ジムがいるのですから。」

「あはは……光栄です。さぁ、行きましょう。」
313ヒッチャー:2008/04/04(金) 14:57:17 ID:???
BMVは空港からハイウェイへと向かって走り出した。
ハイウェイに向かう途中、雷らしき音が、ゴロゴロと鳴り出していた。
わたくしは日本からここまでの疲れを癒すように、シートにもたれかかってまぶたを閉じた。
雷はまだ鳴っている。

「……あ、降り出してきましたね。」

わたくしに声をかけているのか、それとも独り言なのか、ジムはそう言った。
また雷が鳴った。
雨音と雷が支配する世界で、わたくしを乗せた車は走り続けた。
だけど、今思えば、前兆だったのかもしれない。
これから起きる、不吉な前兆の……。
314グラインドハウス支配人:2008/04/04(金) 14:58:45 ID:???
以上でCapter1の上映を終了致します。
次回Capter2の上映の時にまたお会いしましょう。
ご感想・お批判、お待ちしております。

                    グラインドハウス支配人
315マロン名無しさん:2008/04/04(金) 15:04:56 ID:???
ドリフwwww
316マロン名無しさん:2008/04/04(金) 20:30:17 ID:???
317マロン名無しさん:2008/04/04(金) 21:33:43 ID:???
あなたの作品でまたこのスレが活気づくといいな〜
ともあれ乙です
318ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/08(火) 01:28:42 ID:???
間が空きましたが今回の投下、入ります。

>>287
「イロハ・オエー♪イロハ・オエー♪」
オオーパチパチー
「いや、もう芸じゃねぇし」
ケツ出しフラダンスの後ろで二挺拳銃をSMGに持ち替える真名を見て
千雨がぼそっと呟く。

「んー、むにゃむにゃ…」
「くかー…」
「ほらー、帰るよー」
「ったく、余所ん家で馬鹿はしゃぎしやがって」
まき絵裕奈を揺する明日菜の隣で千雨が嘆息する。
「んんーっ、あついー、あっついー…」
「大丈夫ですか、アキラさん」
「ネギ、水持って来て」
明日菜の言葉にネギが台所に向かう。
「ごめんねー、アキラー」
美砂が心底すまなそうに手を合わせる。
「あついー、あついー…」
「アキラっ、家まで我慢して、はい、服着て服着て」
「お水持って来ました…」
明日菜がアキラの腕を小袖に通す前で、
床ではアーニャの跳び蹴りを食らったネギがコマの様に回転しながら遠ざかる。
319ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/08(火) 01:32:41 ID:???
>>318
「部屋も空いている、泊まって行っても構わんぞ」
ネギの回転が止まった所に現れた又兵衛が言う。
「ご迷惑では」
ネギが身を起こして言った。
「いや、馳走になったのだ、それぐらいの事は当然であろう」
意識のある者が、めいめい沈没した者を寝床に運び始めた。

「ん、んーっ」
「あ、どうも」
半ば意識を失った桜子を揺り起こしていた美砂が、傍らに立つ仁右衛門に頭を下げる。
「この様に賑やかなのは久しぶりじゃったわい。
これでも昔は、少しは賑わっておったからのぉ」
「家族の人がいたんですか?」
美砂が尋ねる。
「父君も兄君、ご舎弟様もいくさで亡くなられた。せめて、
若にいい嫁御が来て跡取りを作ってもらわにゃあ、井尻家が耐えてしまうからのぉ」

千雨は、ふらりと表に出ていた。
足は、表に駐車された自動車に向く。
そこには、ひろしの姿があった。
「よっ、千雨ちゃん」
「ああ、野原さん、今は乗らない方がいいですね」
「まあな、大丈夫だとは思うけど」
「世の中自分で酔っ払いって言う酔っ払いはいませんよ」
「きっついなぁ、千雨ちゃんはー」
明らかに出来上がっていた。
320ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/08(火) 01:33:48 ID:???
>>319
「今は、乗らないで下さい」
千雨が、真面目な声で言った。
「最悪ん時は、こっちで何とかします、だから、慌てて車で逃げたりしないで下さい」
「千雨ちゃんが?」
「ああ、私には無理ですけど、私の…友達、
あいつら、ちょっと非常識に強い連中ですから、大概の事があっても、
野原さんの酔いが覚めるくらいまでなら間もたせられます。
少なくとも酔っぱらい運転で家族もろとも田んぼ突っ込まれるよりは遙かにましです」
「ああ、分かった、有り難う」
ひらひらと手を振るひろしだが、その声には誠実さがあった。
「…ホント、元気なお子さんですね、しんのすけ君もひまわりちゃんも、
何かこう…にくったらしくなるぐらい」
何かを思い出したのか、千雨がぐっと拳を握った。
「そうだなー、いやー、もう俺もみさえも振り回されっぱなし」
「…でも…ちょっと羨ましいですね…」
千雨は、自分でも思わぬ事を口にした。
やはり、この環境が柄にもなくセンチメントを誘っているのか、
あるいは妨げのない星空のせいかも知れない。
「こんな状況でも、それでも、家族一緒なんですから。自分らに比べれば、ですけど」
「…そうかもな…家族と離れ離れでタイムスリップなんて、辛いよな。
それでも、あんなに楽しそうで、それで強い友達と一緒ってのも、ちょっと救いなのかな」
「そうかも知れませんね」
自分がいつになく素直なのが、千雨には不気味だった。
それは、千雨が気付かなくても、ひろしが思いの外誠実だったからかも知れない。
「しんのすけ君もひまわりちゃんも、逞しいですからね、半端じゃなく」
「千雨ちゃんもしんのすけに気に入られてんじゃないのかなー」
ひろしがへらへら笑って言った。
321ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/08(火) 01:34:57 ID:???
>>320
「私が?」
「しんのすけ、おねいさんを見る目は確かだからなー、
こんな可愛いお嬢さんほっとかないでしょー」
“…こ、このセクハラ酔っ払い…”
だが、何か憎めないものがひろしにはあった。
「お上手ですよ、野原さん」
「いやいや、綺麗なお嬢さんですよー、うん、十年後が楽しみだ、
綺麗で面倒見がよくて優しくて、いやー、僕も後十年若ければ…」
ゲシッ
「はいはい、しんのすけとひまわりが待ってますよパパ」
にこやかにひろしを引きずり戻すみさえを前に、千雨が大汗を浮かべる。
「…おい忍者、頼むなマジで…」
「んー?何の事でござるかなー♪
頼みの筋は聞き届けたでござるよー、ニンニン♪」

「ん、んーっ、あれー?ここはー?」
「又兵衛さん家」
朝日の差し込む部屋で、目を覚ました桜子に円が言う。
「あれ?美砂は?」
桜子が言うと、円がくすっと笑った。

「戻って休んどれや」
仁右衛門が、木陰で木の幹に背中を預けて脚を伸ばす美砂に言う。
「ごめんなさい、自分で言っておいて」
322ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/08(火) 01:36:03 ID:???
>>321

ネギは、井尻家の庭でうろうろ歩き回っていた。
「…あっつー…
今日はまた、朝っぱらからあっついなぁー」
「ああ、いたいた、柿崎さん」
「もう、べったべた…」
ネギが角を曲がった先で、井戸水を張った桶を用意した美砂は、
野良着の諸肌を脱いで絞った手拭いで胸から脇腹を拭っている所だった。
「あわわわっ!ごめんなさいっ!!」
「つっ、とっ、ネギ君ごめん…」
ピキイィィーーーーーーーーン
「どうしたのネギっ!?」
明日菜が駆け付けた時には、角で木乃香と刹那が硬直していた。
その向こうでは、ネギが、正面を向いて自分に向かって倒れ込み、
顔面を硬直させた美砂の体を支えている所だった。
「こ、こ、こ、こ…」
バキッと手を鳴らす足下で鶏に脚をつつかれている明日菜の後ろで、
そのままグリルドチキンを作れそうな炎がこおおと上がっていた。
「こぉのブァカネギィィィーーーーーーーーーッ!!」
「アーニャ・フレイムバスターキィィィーーーーーーーーックッッッ!!!」

今回はここまでです。続きは折を見て。
323マロン名無しさん:2008/04/08(火) 01:48:28 ID:???
324ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/08(火) 12:12:03 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>322

「ヨッ!」
グキバキゴキッ!
「あー、そこそこそこっ、あいたぁーっ!でも効くうぅーっ!!」
縁側で床に伸びる美砂の傍らで、超がパンパンと両手を叩く。
「ごめんねー、ネギくーん」
「いえ、よくある事ですから、ハハハ…」
うつぶせのまま手を合わせる美砂に正座したネギが笑っていい、アーニャがふんと鼻を鳴らす。
「おおーっ、尻に敷かれてますなー、とうちゃんとおんなじだ」
「そぉーなのしんのすけ、このお兄ちゃんもってもてだからー、
もーかわいー女の子側にいるとアスナとかアーニャちゃんにギッタギタでさぁ…タタタ…」
「あううー、柿崎さーん」
「ちょっとミサお姉さんっ!」
「テキトー言ってんじゃないわよ柿崎いっ!!」
「ご飯出来ましたよー」
五月の声が聞こえ、囲炉裏端に大量の食膳が用意される。
325ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/08(火) 12:13:11 ID:???
>>324
「Oh!モーレツ」
桜子が隣で思わず呟くのも構わず、美砂がかて飯を猛烈にかき込む。
「でも、柿崎さん畑のお手伝いしてくれて」
ネギが口を開く。
「おお、スタート三分でダウンしとったがな美砂姉ちゃん」
「コタロー君。本当なら僕もしなきゃいけないんですが」
ネギがたしなめる様にしながら言う。
「いや、マジきっついから、ネギ君なら出来るかも知れないけど…アタタ…
体力には結構自信あるつもりだったんだけどねーっ、
やっぱ、私に農家の嫁は無理だわ」
「いやいや、初めてにしてはなかなかの腰つきだったぞい」
「あんた」
「畑なんかあったんだ、お侍さんの家に」
明日菜が言った。
「裏に麦と野菜の畑があったでござるな」
楓が言う。
「武士と言うものが厳格に分離されるのはもっと後の時代、東国では特にそうですから」
夕映が言った。
「まあ、やっと食える程度のものじゃ。若がいくさ上手じゃて、それでようやくな」

昼近く、畑で総出の草取りが終わり、ネギは井尻家の居間で一息ついていた。
「ネギ君」
「あ、釘宮さん」
ネギが振り返ると、チア三人娘が揃っていた。
ネギが立ち上がる前に三人がその場に座る。
326ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/08(火) 12:14:20 ID:???
>>325
「ねえ、ネギ君、聞いたんだけど、仮契約ってしたんだって?」
円が言う。
「え、ええ」
ここまでおおっぴらにやってしまった以上、
生き死ににも関わるのだからもう隠す筋合いでも無い。
「じゃあ、私たちもやっちゃおっかー」
桜子が言う。
「うん、こんな時代だし、やっといた方がいいかなって」
円が言った。
「…柿崎さんは?」
聞かれた美砂は、がっしとネギの両肩を掴む。
「やる」
鼻からシューッと息を噴出しギラギラした目で言われてネギはたじっとなった。
「よっしゃ、パクティオーッ!!」
「タッ?」
ちょん、ちょん、ちょんと言う感じで、座ったままの仮契約が滞りなく終わろうとした時、
闖入者が割り込もうとした。
「たぁーーーーーーーーーっ♪」
「のわっ!」
丁度仮契約を終えたばかりの円が、猛スピードハイハイで間に割り込むひまわりにのけ反った。
「たーっ♪」
「アハハハ、ひまわりちゃんこんにちわ」
ネギがひょいとひまわりを抱き上げる。
「たぁーっ♪」
丁度、ネギがひょいと横を見たため、ひまわりの唇はネギの頬に吸い付いた。
「おーっ、吸ってる吸ってる♪」
美砂が笑った。
327ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/08(火) 12:16:00 ID:???
>>326
「いたーっ、もーっひまわりネギお兄ちゃんにご迷惑でしょー、ごめんなさいねー」
「たぁーっ」
みさえがひまわりを抱き上げてぺこりと頭を下げる。
「いえいえ♪」
「たぁーたぁーたぁー」
みさえが、手足をネギに向けて伸ばすひまわりを連れ去る。
「ばいばーい♪お兄ちゃん、ですかー」
ネギが頬を撫でてやに下がる。
「スーパー競争率のネギ君に、しっかり眼中入ってるよゼロ歳児…」
美砂が呟く。
「ほらのどか、ここは一発ブリブリ妹系いってみよーっ、それゆえ吉の方がいいかなー♪」
「あうあう」
「ハルナ」
「なんであんたはそう全方位にモテモテなんだ…」
千雨がぼそっと呟いた。
「痛っ」
「どうしたんアスナ?」
「いや、何か今、頭がズキッて、気のせいかな?」
「では、そろそろ引き揚げの支度に入りますか」
刹那が言った。

今回はここまでです。続きは折を見て。
328マロン名無しさん:2008/04/08(火) 13:02:27 ID:???
329マロン名無しさん:2008/04/08(火) 14:08:24 ID:???
乙でした。続きもよろしくです。
330グラインドハウス支配人:2008/04/09(水) 02:25:02 ID:???
お待たせいたしました。
それでは、Capter2の上映を開始致します。
最後までごゆっくり楽しみ下さいませ。
331ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:27:53 ID:???
Capter2「ジョン・ライダー」

どのくらい時間が過ぎたのだろう。
雨が窓ガラスを叩く音で、わたくしは目を覚ました。
窓から見えるカリフォルニアの地は、暗く、建物が何もない、無の世界だった。
車はカリフォルニアの街からすでに砂漠のハイウェイへと走っていたのだ。
ジムがいなければ、本当につまらない旅になっていただろう。

「あ、お嬢様。ご気分はいかがですか?」

「そこそこ……といったところですわ。」

「もうすぐカソリンスタンドがありますので、そこで給油します。……ついでに何か食べていきますか?」

「結構ですわ。ガソリンスタンドで買い食いなんて、はしたないですわ。」

わたくしは正直なところ、その時は本当にお腹が空いていた。
でも、レディとしての振る舞いと、ジムに対するメンツから、その好意を拒否してしまった。
本当はありがたいのに……。
すると、わたくしの本音を告げるかのように、……恥かしい事に、お腹のお虫さんが鳴いてしまった。
わたくしは顔から湯気が出る程恥かしかった。
それでも、ジムはいつものはにかみ顔で、こう言ってくれた。

「気にすることありませんよ。ご無理でもなさって体調を崩されることが心配です。……ここは僕とお嬢様の秘密ということで。」

「……そこまで言われてしまっては、返って断るのが無作法になってしまいますわね。よろしいですわ。ここはジムの言う通りに致しますわ。」

「そういう事にしておいて下さい。」
332ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:29:00 ID:???
ジムの笑顔。
従者としての顔を持ちながらも、敬いつつ対等に接してくれる人。
この人柄が、わたくしは気に入っていた。
車の中の空気はジムが作り出した楽しい雰囲気に包まれていた。
……けれでも、その雰囲気は一瞬にして吹き飛んでしまった。
車の前……ハイウェイの上に人がいる……!

「危ない!!!」

わたくしは思わず叫んでしまった。
ジムもフロントガラス越しから見えるその人影を見て驚いた。
次の瞬間、わたくしは後部座席を揺らされて、横に倒された。
ジムの運転する車がブレーキをかけ、おそらく人影を避けようとしたのだろう、ハンドルを切ったために車が横滑りをしたのだ。
まるで遊園地の絶叫マシンのような重心移動に、肝がつぶれる思いだった。
タイヤが擦れる高い音が鳴り、景色は横に流れていく。
そして、車は横滑りした後、止まった。
わずかな間だったが、本当に肝が潰れるような思いを味わった。

「だ、大丈夫ですか?お嬢様……。」

「へ、平気ですわ……。」

車は人影を避けるように半円を描き、人影の反対側へと廻っていた。
人影はジムが覗き込んだバックミラーに映っていた。
すると人影は、さっきのスピンをまるで何もなかったかのような仕草で、こっちに近づいてきた。
暗い闇に包まれた黒い人影。
最初に見たときはライトの反射で見えなかった。
まったくの謎の人物だった。
その人影が近づいてきた。
不気味な影を背負っているように、わたくしには見えた。
333ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:30:38 ID:???
「お、降りて怪我がなかったか聞いてきます……。」

ジムはそういうとシートベルトを外し、ドアを開けようとした。
けれども、わたくしは急に一人になる事が不安になってジムが降りようとする手を止めた。

「お、お待ちになって……!ジムがそんな事をする必要はございませんわ……。」

「しかし……。」

「ハイウェイの上に突っ立っていらしたのよ!?しかも、わたくし達の車を避けようともしませんでしたわ!」

「……お嬢様。」

わたくしは怖かった。
きっと変な人なんだわ。
バックミラーに映る暗い人影が寄り一層そう思えて仕方がなかった。
そしてその影はどんどん近づいてくる……。

「ジム、早く車を……!」

「は、はい…!」

ブレーキで止まったエンジンを、ジムはキーを捻って動かそうとする。
だが、エンジンはかかるかと思ったら、……かからない。
ジムは何度もキーを捻ってエンジンをかけようとする。
恐ろしい人影は、その間にもどんどん近づいてくる……。
わたくしは、ただ祈るばかりだった……。

(はやくかかって……。お願いですから……早く……!)
334ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:31:17 ID:???
何度も祈った。
すると、何度目の祈りかはわからないが、その祈りが届いたのか、エンジンが大きな音を立てて始動した。
安堵すると、わたくしはジムを急かした。

「ジム、早く…!」

「はい…!」

人影は、車が遠ざかるのと同時に歩みを止めた。
バックミラーに映る闇の人影は、どんどん小さくなり、やがてハイウェイの向こうへと消えていった。
はっとため息をついて胸に手を当てると、心臓の鼓動が早くなっていた。
気がつくと、額から汗が流れていた。
わたくしはそれをハンカチで拭いた。
するとジムがこう言ってきた。

「大丈夫ですよ、お嬢様。……別荘に着いたときには笑い話になってますよ。」

ジムの細かな気遣いが嬉しかった。

「そうですわね……。あんな思いしたのは初めて。」

「僕もですよ。……初めてスピンしましたよ。」

そう言って、ジムはスピンした事を笑いながら話す。
さっきまでの事を笑い話にして終わらせようとする彼の気遣いだ。
わたくしも、それにのることにした。
335ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:32:17 ID:???
それから程なくして、ガソリンスタンドが見えた。
スピンした位置から遠いか遠くないか、微妙な場所だった。
砂漠の真ん中に位置するガソリンスタンドは、ハイウェイを運転する人にとっては欠かす事の出来ない場所なのだろう。
ジムは車を給油機の横に止めると、こう言った。

「中で何か食べる物を買ってきます。……といっても、お嬢様の口に合うかどうか……。」

「心配無用ですわ。まともな物なら、文句など言いませんわ。……それに、気分転換でもしたいですから、一緒に参りますわ。」

そう言って、自らドアを開け、雨など気にせず、スタンドの中へと向かった。
ジムは慌ててわたくしの後をおいかけてきた。
その様子がおかしくて、わたくしは思わず笑みがこぼれた。
入ると、スタンドはそれなりの広さを持った店で、日本でいうコンビニのような感じだった。
レジではバーベキューが焼かれており、少し柄の悪そうな男性が、顎を引いて上目遣いで入ってきた私たちを見た。

「よう、ひどいな、ずぶ濡れだな。」

「わかってらっしゃるのなら、タオルでも持ってきて下さいまし?」

「ここはホテルじゃないぜお嬢ちゃん。そういうのは、悪いがセルフサービスだ。ウチでタオルでも買って使いな。」

「ジム。わたくしはタオルを探しますわ。あなたは何かいい食べ物がないか探してくださいまし。」

「はい、お嬢様。」

わたくしはそういうと、商品棚の奥へタオルを探しに向かった。
336ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:34:25 ID:???
「『お嬢様』ぁ?あの子はどっかのお金持ちの娘なのか?」

「そうです。『雪広家』ですよ。」

「……ふ〜ん、知らねぇなぁ。」

「なら、お休みの日にでもベガスにでも行ってみて下さい。ホテルを所有してますから。」

ジムと店員の男は、わたくしが場を離れた後も話を続けていた。
それでも、ジムは店内を見回して食べ物を探していた。

「悪いが、店には俺一人だけなんだよ。滅多な事がない限り、空けるわけにはいかねぇんだよ。」

「……そうですか、残念です。」

ジムの発音からして、さして残念そうでも無さそうだった。

「なぁ、アンタ達の車ってアレか?あの高級車。」

「えぇ、それが何か?」

「へぇ〜、いいねぇ……。女とヤレる車だ。あの車なら、女の方から寄ってくるぜ。」
337ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:35:13 ID:???
店員の下品な物言いを、ジムは受け流したようだ。
だが、店員は勝手に話を続けた。

「俺の車はカマロだ。まぁ、兄貴のお下がりだけどよ。今は車庫で改造中よぉ。女を釣れるようにビシッ!と決めるんだよ。ハイウェイもぶっ飛ばずぜ……!」

「あ……。そういえば、ここに来る前にハイウェイに人がいたんだけど……。」

「近いのか?」

「えぇ、車で数分程……。」

「なら、心配いらねぇよ。ここには歩いても来れる距離だ。それに、どっかのだれかがここまで乗せて来るかもしれねぇし。」

タオルの入ったビニールの商品を手に取ると、わたくしはジムの元へと戻っていった。
途中、店員が親指を店の外に指した。

「ほら、あんな風によ。」

外を見ると、大型のトレーラーがスタンドに入ってくると、助手席から黒に近い紺色のトレンチコートを着た男が出てきた。
トレーラーの運転席に礼の代わりに手を上げると、襟を立てて、駆け足で店内に入ってきた。
……その時、わたくしの心臓は鷲掴みされたように、胸が苦しくなった。
ふぅ、と息をつくと、襟を広げてその顔をはっきりと見せた。
30代頃の金髪の男性……彫りは深く、ワイルドな顔つきをしている。
ダンディーな中年男性好きのアスナさんなら喜ぶような、そんなタイプをしている。

「あの、もしかして……さっきハイウェイにいた人ですか?」

ジムがおそるおそる聞いてきた。
わたくしは、もしかしてではなく確信していた。
338ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:36:15 ID:???
「……あぁ、あの車は君だったのか。」

あのハイウェイの真ん中にいたあの男だ。

「すみません。動転して思わず……。」

ジムは男を置き去りにした事を謝った。
そんな必要はないのに……。

「いや、いいさ。私だって、君と同じなら、……同じような事をするさ。」

男は笑って、ジムにそう言った。
だが、わたくしにはその笑顔がとても浮ついた……表面上だけものにしか思えなかった。

「ここから、一番近いモーテルまでどのへんかね?」

男が店員にそう言った。

「モーテル?だいぶ東の向こうだぜ。歩いていったんじゃ日が暮れちまうぜ。……もう夜だけどよ。」

店員の寒いジョークを受け流して、男はジムにこう言った。

「君は、どっちに向かうんだい?」

「僕ですか、僕は……東に行きます。同じ方向ですね。」

「……よかったら、乗せていってくれないか?モーテルまで。」
339ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:37:29 ID:???
その言葉を聴いて、わたくしはたまらず二人の間に入った。

「ジム、この方は?」

わたくしはわざと知らない振りをしてジムにたずねた。

「この方は、さっきハイウェイにいて、轢きそうになった人で……。モーテルまで乗せていってほしいそうです。」

「同じ方向?」

「みたいです。」

店員が間に口を挟んだ。

「こんな天気だし、他の車は滅多にこねぇよ。悪いけどアンタ、ここに泊まろうなんて考えるなよ?ベッドは俺の分しかねぇからよ。」

常識的に考えれば、ここは親切で乗せていってあげるべきだ。
ジムの様子からして、この男に負い目があると思っているようだ。
本当は不気味な見ず知らずの人を乗せたくはないのですけれど……。

「どうでしょう、同じ方向ですし……。」

ここで拒否したら後味悪い。
わたくしも、ジムと同じように、置き去りにしてしまったこの男に、少なからず負い目があった。
だから、こう答えてしまった。

「よろしいですわ。モーテルまで、お連れしますわ。」
340ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:38:34 ID:???
男はその言葉を聞くと、ニヤリと頬を歪ませた。
愛想を浮かべてるつもりだろうが、嫌らしくて不気味にしか思えない。
男は手を差し出して、こう名乗った。

「ジョン・ライダーだ。」

わたくしは手をとり、同じように名乗った。

「雪広あやかでございます。お見知りおきを。」

それを聞いた男――ジョン・ライダーは愛想笑いをすると、

「『お見知りおきを』、か。ハハハ……。」

と言って笑った。

給油をし終わったジムがスタンド内に入り、ホットドックを口にしているわたくしと、スタンド内を物色しているジョン・ライダーに、出発の用意が出来たと言ってきた。
わたくしは最後の一口を食べると、雨が降りしきる中、急いで車に向かって駆けていった。
わたくしが後部座席に座ると、ジョン・ライダーは助手席に座った。
塗れたコートの雫がシートやカーペットに付く事などお構いなしといった様子だった。
ジムが運転席に座ると、ようやくして、ガソリンスタンドから出発した。
出発してから沈黙が車内を支配していた。
わたくしは沈黙に耐え切れず、ハンドバッグに入れていたペーパーバッグの洋書の小説を取り出して読み出した。
沈黙に耐え切れなかったのは、ジムも同じようだった。
341ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:40:39 ID:???
「生まれはどこですか?」

どうでもいい世間話で空気を和ませようとしていた。
だが、ジョン・ライダーの答えも、つまらない答えだった。

「あっちこっちだ。」

ジムは小さなため息をついた。
すると今度はジョン・ライダーの方から話しかけてきた。

「あんたたちはどこへ行くんだ?」

「え?あぁ、ラス・ベガスへ。別荘のホテルがあるんですよ。」

「へぇ、いいじゃないか……。」

暫く間を置くと、こう言った。

「かわいい娘じゃないか……。彼女か?」

ジムは苦笑いしながら返答した。

「いえ、そういうのでは……。」

だが、その言葉をさえぎるようにジョン・ライダーは耳を疑うような事を言った。

「何発ヤった?」
342ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:42:54 ID:???
ジムは驚いて、

「……えっ?」

と、聞き返す事しか出来なかった。
わたくしだって驚いた。
おかげで本を読むのに集中できなかった。
なんて下品な男……。
嫌な男を乗せてしまった……。
場の空気が一気に悪くなった。
それでも、ジョン・ライダーは構わず聞いてきた。

「簡単な質問だろ。……何発ヤった?」

ジムは答えられない。
当たり前だ。
わたくしを前にして、どう答えをするというのだ。
ジムはしばらくして、意地になったのか、こう切り替えした。

「奥さんとは何発?」

奥さん……という単語が出てきた。
この男は結婚しているのか?
343ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:43:36 ID:???
「……いない。ひとりだ。」

「それじゃあ、なんで左手の薬指に指輪を?」

ジムが切り返した言葉の根拠は、男の指にしていた指輪だったようだ。
ジョン・ライダーは嫌らしい笑みを浮かべながら、こう言った。

「コレか?……コレを付けていたら、誠実な男だと思われるからな。」

その言葉がきっかけで、わたくしは本をバッグにしまい込むと、二人の様子を伺った。
男……ジョン・ライダーの意図がまったく読めない……。

「誠実……じゃあないんですか?」

ジムが怪訝そうにそう言った。
すると、男はカップスタンドに置いてあったジムの携帯を手に取った。

「おい、アンタ!?」

携帯を開くと、男は両手に持ち、こう言った。

「あぁ。……そうだ。」

その言葉が終わると同時に、携帯は音を立ててへし折られてしまった……。

「何するんだ!!」

ジムは激昂した。
当たり前だ。
当たり前の反応だ。
こんな事をされれば……。
344ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:44:17 ID:???
「頭にきた……。もう、ここで降りてくれ!」

ジムは速度を緩め、路肩に止めようと、ハンドルを右に切った。
だが……。

「……っ!?」

男がジムのハンドルを持つ手を押さえ、ハンドルを戻した。
そして、次の瞬間、わたくしは思わず口を押さえて息を呑んだ。
コートのポケットからナイフを取り出し、柄のボタンを押してナイフの刃が飛び出た。
そしてハンドルを押さえていた左手を、ジムの右ひざに置き、力強く抑えた。
アクセルを踏んでいるその足はどんどん力が入り、速度は増していった。

「そのまま運転を続けろ……。」

目の前をモーテルが通りすぎる。
泊まりたいと言っていたモーテルだ。
だが、それが目的ではないのは、わかってしまった。

「な、何が望みなんだ……?金か……?」

ジムはおそるおそる、恐ろしい男に変貌したジョン・ライダーに尋ねた。
声には震えが入っていた。
わたくしには、ジムの恐ろしい気持ちがわかっていた。

「いいや……金はいらん。」

男は冷徹に、淡々と答えた。
ナイフには赤黒い模様が付いていた。
それは明らかに……乾いた血が付着していたものだ。
男はそれを剥がすようにイジっていた。
345ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:45:01 ID:???
「じゃあ、この車か……?」

ジムは震えながらも、男に尋ねた。

「いいや……。車もいらん。」

わたくしは恐ろしい男に悟られないように、ハンドバッグに手を差し込んだ。
その先は携帯電話がある。
警察に助けを求めなくては。
わたくしは、恐る恐る、番号の「9」を押した。

「じゃあ、何が望みなんだ!!」

ジムが叫んだ。
そのジムを、男はあの嫌らしい笑みで笑った。
わたくしは、続けて「1」の番号を押した。

「望みか…?望みは……。」

そして最後の「1」を押した。
これでコールを押せば警察に繋がる――。
そう思った瞬間、急に髪を引っ張られ激痛が走った。

「あぁっ!」

悲鳴が口から飛び出した。
目を開けると、男がわたくしの髪を鷲掴み、左目の近くにナイフの刃先を近づけていた。
ほとんど密着状態で、目の下からそのまま刺そうと思えば刺せる位置だった。
わたくしは恐ろしさのあまり、震え、目から涙がこぼれた。
男はその涙をすくい、ナイフの刃に伝えさせた。
346ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:46:02 ID:???
「お嬢様に手を出すな!」

ジムはわたくしの方へ体を向けて叫んだ。
わたくしは声にならない声を上げて、ジムに助けを求めた。

「俺の望みは何かって聞いたな?……こう言えばいいんだよ。」

男の次の言葉に、わたくしは、そして恐らくジムも、戦慄したに違いない。

「たったの四文字だ。"I want to die. "(死・に・た・い)」

「……え?」

耳を疑った。
この男はジムに死ぬ事を求めている……!

「ほら、言えよ……。ガールフレンドの目玉がえぐれるぞ?……I(死)……?」

「あ……I(死)……。」

男の脅しと促しに、ジムは恐る恐る、続けて言った。

「ジム……駄目……。」

わたくしは溢れる涙を流しながら、ジムを止めようとした。
だが、男に強く髪を引っ張られた。
347ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:46:47 ID:???
「……want(に)……?」

「……want(に)……。」

ジムは震えながら、男に続けて言う。
わたくしは、必死に祈った。

「……to(た)……?」

「……to(た)……」

ジム……駄目……。
言っては駄目……!

「……die(い)……!」

「…………。」

ジムは震えつつも最後の一言を言わない。
最後の一言を言ってしまえば……殺されてしまう……。

「ほら、言えよ……?……die(い)……!」

ジムは限界を迎えたかのように、叫んだ……。
348ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:47:20 ID:???
「……死にたくない!!!」

そう言うと、車は急ブレーキがかかり、重心が一気に前へと移った。
わたくしの眼球を刺そうとしていたナイフは離れ、男の頭部はフロントガラスに打ちつけられた。
フロントガラスはヒビが走り、そして車は止まった。
ジムは不意を突かれた男を足の裏で何度も蹴った。

「この野郎!このサイコ野郎!!」

ジムは叫びながら蹴り続けると、私にこう叫んだ。

「お嬢様!ドアを開けて!コイツを叩き出します!」

わたくしは答える間もなく、シートとドアの隙間に手を入れ、ドアノブを手探りで探した。
そしてドアノブの感触を確かめると、躊躇わず引いた。
ジムの蹴りが男に当たると、そのままドアは開き、男は車外へと放り出された。
それを確認すると、ジムは急いで車を発信させ、ドアを閉めた。
恐怖を運んできた男は、わたくしたちの車から消えうせたのだ。

「お嬢様、大丈夫ですか!?」

「……これが大丈夫に思えまして……?」

わたくしは涙交じりの鼻声でジムに答えた。
恐ろしくて恐ろしくて……涙が溢れ出て止まらなかった。
ハンカチで目を押さえると、気丈に振舞った。
349ヒッチャー:2008/04/09(水) 02:48:56 ID:???
「わたくしは……大丈夫ですわ。ジムのほうこそ、大丈夫ですの?」

「ぼ、僕は大丈夫です……。」

ようやく落ち着いたわたくしは、ハンカチをバッグに戻すと、ある事に気がついた。
……携帯電話が……無い!

「どうかなさったんですか?」

「携帯が……無くなってしまいましたわ。」

まさか……あの男と一緒に外へ……?
わたくしは意気消沈してしまった。
これでは警察や家族に連絡が出来ない……。
わたくしはバックミラーを見た。
あの男の影がないか、不安だったからだ。
幸いにも、あの男の影はなかった。
ようやく、安堵できた。

恐怖の出来事は、これで終わった。
その時は、本当にそう思っていたのだ。
350グラインドハウス支配人:2008/04/09(水) 02:51:51 ID:???
以上でCapter2の上映を終了致します。
次回はCapter3の上映です。
それまで、もうしばらくお待ちください。

ご感想・お批判、お待ちしております。
次回またお会いしましょう

                 グラインドハウス支配人
351マロン名無しさん:2008/04/09(水) 02:53:10 ID:???
352マロン名無しさん:2008/04/11(金) 00:36:39 ID:???
353グラインドハウス支配人:2008/04/13(日) 05:53:59 ID:???
お待たせいたしました。
それでは、Capter3の上映を開始致します。
最後までごゆっくり楽しみ下さいませ。
354ヒッチャー:2008/04/13(日) 05:54:37 ID:???
Capter3「助けて!」

あの恐怖の時間からどれくらいの時間が流れたのだろう。
わたくしは心身ともに疲れ果ててしまった。
ジムも同じようで、フロントガラスの亀裂を何度も見ていた。
いまだにあの男――ジョン・ライダーの恐怖が脳裏を支配している。
早く忘れよう、忘れてしまおう。
そう思う事に専念した。
ジムは車をハイウェイの横の砂漠地帯に車を止めた。
ハンドブレーキを引くと、エンジンを切ってこう言った。

「もう遅いですから、今日はここで眠りましょう。」

ジムの顔にも心労の様子が見て取れた。
わたくしも、さすがに車で寝たくないなどとわがままは言えない。

「そうですわね。……今日は本当にいろんな事がございましたから……。ゆっくり休みましょう。」

「はい。」

ジムはそう言って、運転席のシートを少し倒して、目を閉じてもたれ掛かった。
わたくしは、ガソリンスタンドで買っていたミネラル・ウォーターをハンドバッグから取り出した。
本当に疲れた……。
わたくしは、ドアと座席のくぼみにもたれ掛かった。
ボトルのキャップを開け、ミネラル・ウォーターを口に流し込む。
早く忘れよう、そう言い聞かせながら飲んだ。
だが……
355ヒッチャー:2008/04/13(日) 05:55:24 ID:???
バリン!

っというガラスの割れる音が、突然車内に響き、ガラスの破片が飛び散った。
そして、男の手がわたくしの首を絞めるかのように伸び、わたくしの首に絡めた。

「……ここに居たのか……お嬢ちゃん……!」

「……!!!いやぁああああっ!!」

叫び声を開けずにはいられなかった。
突然あの男……ジョン・ライダーが現れたのだ。
ジムは目を覚まさない。
唯一助けになる人がいない……!

「こいつを忘れてたからな……?」

わたくしの首を右腕でしっかりと締め上げると、左手のポケットから、あの血のこびり付いたナイフを取り出した。
そして、逆手に持つと、わたくしの心臓めがけて、ナイフを振り下ろした―――。

「いやあああああああっ!」
356ヒッチャー:2008/04/13(日) 05:56:12 ID:???
「お嬢様!?どうなさいました!?」

ジムの声で、ようやく私の身の回りの状況を把握できた。
わたくしは後部座席で横になっており、車の窓から陽の光が注いでいた。
蒸し暑さに包まれた車内で、ジムがわたくしを心配そうに見つめている。
……そうか、夢だったのか……。
あの男が突然現れ、襲ってくる夢を見てしまったのだ。

「だ、大丈夫ですわ……。」

強がりを言ったが、わたくしは寝汗で身体中がびっしょりと濡れていた。
ワンピースなんて着なければよかった……。

「ご気分が優れないようなら、外に出て気分転換でもいかがですか?」

「そうですわね……そういたしましょう。」

車を降りると、まばゆいばかりの朝日が、カリフォルニアの砂漠を照らしていた。
その美しい光景を見ている私の傍に、ジムがやってきた。

「……もう、帰りたいですわ……。」

「……大丈夫ですよ、お嬢様。旅のいい笑い話になります、最後には。」

「……自慢したいだけなのでしょう?私を守った、って。」

「ち、違いますよぉ!」

「ん?本当ですの…?」

わたくしはジムをからかった。
ジムは顔を赤くしながら、観念したように、あのはにかみ笑顔で言った。
357ヒッチャー:2008/04/13(日) 05:57:10 ID:???
「……そうです。お嬢様を守れたんですから、誇らしい気持ちになりますよ。」

「ふふ……正直でよろしい事ですわ♪」

そう、旅のいい笑い話になる。
あんな危ない男の話なんて、別荘に着けば、笑い話になる。
……そう自分に言い聞かせた。

「そろそろ行きましょう。」

「えぇ、そうですわね。」

早く別荘に行きたい。
たったのそれだけが願いだった。
わたくし達は車に乗ると、再びハイウェイを走り出した。
何の変哲もない、眩しいばかりの砂漠が続くハイウェイ。
その光景を見つめながら、わたくしはあの男の事を忘れようとした。
車はラジオのカントリー・ミュージックを哀愁たっぷりに奏でている。
荒野の光景と、ラジオの曲がとても調和のとれた美しい絵になっていた。
しばらく車を走らせていると、後ろから古いミニバンの車がやってきて、私達を追い越した。
仲のよさそうな夫婦と小さな子供達が乗っていた。
追い越す際に、夫婦はわたくし達に笑みを浮かべながら手を振って挨拶をした。
わたくし達もならって挨拶をした。
後部座席では、見えるだけで子供が2人いて、可愛い笑顔でわたくし達に手を振っていた。
そして、おそらく3人目なのだろう、大きなテディベアのぬいぐるみに隠れて、テディベアの手を動かして、手を振っていた。
無邪気で可愛い。

「ジムは…子供が欲しいなどと、思った事ござませんこと?」

「僕はまだまだ先の話だと思ってます。……でも、えぇ、欲しいですね。」
358ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:05:51 ID:???
ジムははにかみながらそう言った。
やはり、子供はいいですわ……。
幼い子供を見ると、思わず脳裏に浮かんでしまうのは……生まれるはずだった、わたくしの弟……。

「お嬢様……。」

「……大丈夫ですわ。」

わたくしは溢れる笑みで、3人目の子に手を振った。
すると、テディベアに隠れていた子が姿を現した。
……が、その姿を見て、わたくし、そしておそらくジムも戦慄した。
昨日何度も見たあの嫌らしい笑みを浮かべた……ジョン・ライダーだったのだ……。
わたくし達の笑顔は一瞬にして消え去り、凍りついた。
どういうわけなのかはわからないが、わたくし達と同じように、ヒッチハイクをして乗り、ここまで来たのだ。

「まずい……!」

「止めて、知らせなくては……!」

ジムは車の速度を上げると、対向車線に車線変更をし、家族連れのミニバンの横に並んだ。
助手席に座っていたわたくしは窓ガラスを開け、力のかぎり叫んだ。
ジムはクラクションを何度も鳴らして、ミニバンの家族にわたくし達を注目させようとした。
359ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:06:28 ID:???
「止まって!止まって下さいまし!」

運転席と助手席に座っている夫婦は、何事かと、苦笑いしていた。
わたくし達が馬鹿な事をしている変な連中だと思っているのだろうか。
しかし、わたくし達がどう思われようとも、今すぐ彼らに伝え、あの男が危険だと知らせなくてはいけない。

「後ろに乗っている男は危険ですわ!」

車の駆動音で掻き消されそうだったが、わたくしは何度も力の限り叫んだ。
車内から身を乗り出して、何度も何度も叫んだ。

「わたくし達をナイフで脅しましたわ!早く後ろの男を降ろしてくださいまし!危険な男ですわ!」

わたくしがそう叫んだ途端、腕を引っ張られ、車内に無理やり戻された。

「お嬢様!危ない!」

そしてわたくしが目にしたのは……対向車線から真正面に、私達の車に今にもぶつかりそうな、トラックが目の前に迫っていた。
ジムは急いで、左にハンドルを切り、クラクションを鳴らすトラックを避けた。
だが、避けた先は、ハイウェイを外れた、荒れた砂漠の谷間だった。
次の瞬間には、車は弧を描くように空を飛んだ。
胃がひっくり返るような気分が一瞬したが、それよりもその直後の着地の衝撃が激しかった。
ボンネットは衝撃でひしゃげ、外れてしまい、フロントガラスを太い木の枝が貫いた。
木の枝はフロントガラスの真ん中あたりを貫いたので、幸いにもわたくし達の顔面や身体を貫くような事はなかった。
着地の瞬間に、砂漠の砂埃が舞い、車内に充満した。
わたくしたちは、恐怖と埃で、何度も咳き込んだ。
360ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:08:18 ID:???
「ケホッ…ケホッ……お嬢様、大丈夫ですか?」

咳き込みながら、ジムはそう言った。
だが、私はなにも言えず、咳き込むだけだった。
ジムはドアを開けようとするが……着地の衝撃でひしゃげたのだろう、ドアが開かなかったようだ。
ジムはそのまま開けた窓から身体を出し、砂漠の砂地に倒れ落ちた。
わたくしも、開けた窓から身体を出したが、バランスを崩して尻餅をついた。
ジムはわたくしを気遣うより先に、あの家族が乗ったミニバンを確認しに行った。
ミニバンは何もなかったかのように、ハイウェイの奥へと走り去っていった。
ジムは悔しそうに頭を抱えた。
そして、ほとんど廃車と化した車に拳を叩きつけた。

「何で!何で止まってくれないんだ!!!」

わたくしは目に入る煙に目が染みて涙があふれ出た。
何度も何度も咳をしてむせると、悔しさを表面に出しているジムをなだめた。

「ジム……。ジムの責任ではありませんわ……。」

「お嬢様……。」

ジムはわたくしを見ると、顔を歪ませ悔しそうに震えていた。
ジムは何度か深呼吸をして、廃車になった車のトランクからわたくし達の荷物を取り出した。
車は、レッカー車を呼ばなければ回収は不可能だろう。
どっちみち、保険を掛けているのだから構わない。
だが、この荒野の砂漠……一筋のハイウェイしかない砂漠を徒歩で歩くには過酷すぎる。
しかし、文句を言っても変わらない。
どっちが先だったかわからないが、わたくし達は歩みを進めた。
荒野に降り注ぐ暑い日ざしが、ハイウェイの上をゆらゆらと陽炎を作っていた。
何分……何十分歩いたかわからない。
水分補給をお互いしながら歩いたが……お互い、口を開かなかった。
耐え切れず、わたくしのほうから口を開いた。
361ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:09:17 ID:???
「……あの家族……大丈夫かしら……?」

「大丈夫ですよ……きっと……。」

何が大丈夫なのだろう。
ジムは何の根拠も示さず、そう言って口を閉ざした。
恐らく、ジムも根拠など無く、そう言ったに違いない。
わたくしの不安や疑問を払拭するためについた嘘なのだろう。
それを知ってしまったら、わたくしはそれ以上掛ける言葉などなかった。
途中、一台の赤いSUVがハイウェイの奥の対向車線から向かって走って向かってきた。
わたくし達と反対側だが、乗せてもらいたかった。

「おーいっ!乗せてくれーっ!」

ジムは必死で叫ぶ。
だが、SUVは無常にもわたくし達の傍を通り過ぎてしまった。

「誰も……ヒッチハイカーなど、乗せないのですわね……。」

「お嬢様……。」

いったい、なぜこんな事になってしまったのだろう?
砂漠を歩きながら、何度も自問した。
あの男を乗せてしまったから?
それともヤケでアメリカに来てしまったから?
不条理だ……。
わたくしは何も悪い事などしておりませんのに……。
362ロビンスレの41:2008/04/13(日) 06:10:29 ID:???
「……!お嬢様……あれを……。」

突如、ジムが動揺した声色でわたくしに声をかけてきた。
ジムのほうを見ると、右手の人差し指でハイウェイの奥を指していた。
その先には……あの家族のミニバンが路肩の砂漠に止まっていた。
ジムはわたくしが声を掛ける前に、駆け出した。

「ジム!お待ちになって!」

わたくしも急いでジムの後を追いかける。
ジムはミニバンの近くにくると、歩みを緩め、恐る恐るゆっくりと近づいていった。
ジムに追いついたわたくしが近づくと、ジムは手でわたくしを制止した。

「お嬢様……ここでお待ちになってください。」

ジムはそういうと視線をミニバンに戻し……中の様子を伺った。
わたくしは遠巻きに見ていたが……それでも、ミニバンの中が異様な事になっている事はわかった。
人の気配などまったく感じない、それどころか……窓ガラスに赤い斑点が付着していた。
わたくしは想像し……震えが止まらなかった。
あの家族の行く末を、何度も頭から振り払おうとした。
ジムは恐る恐る近づき、車の中の様子を伺っていた。
そのジムの表情が、曇り、歪んでいった事から、どんな事態になっているか想像出来てしまった。

「お嬢様……お願いですから……車には近づかないで下さい……。」

それはわたくしに言い聞かせているつもりなのか……それとも、ジム自身に降りかかろうとしている恐怖を紛らわせる為に言った言葉なのか。
そんな言葉を、わたくしは耐え切れずにこう返してしまった。
363ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:39:15 ID:???
「なぜですの……?一体、何がどうなっているんですの……?」

わたくしの問いかけに、ジムは、

「お願いですから…近づかないで下さい。……お願いですから……近づかないで下さい。」

そう何度も何度も繰り返し呟いた。
ジムが口を押さえ、恐怖なのか悲しみなのか、両方とも受け取れるような表情で中の様子を伺っていると、ジムが運転席を覗き込んだ途端、血まみれの手が窓ガラスにビタッ!と張り付いて現れた。
その時は、思わず、わたくしも、そして恐らくジムも驚いたに違いない。
ジムは慌てた様子で運転席を開けた。
わたくしは思わず、ジムの言葉を無視して、車に近づいていった。
そして、その時初めてジムが制止させた意味を理解した。
車の中の様子は……凄惨……残虐……そんな言葉が当てはまる程、悲惨な光景だった。
血まみれのシートに、血で汚されたぬいぐるみ、そして生気のない顔をした幼い子供達。
腹部は血まみれで、衣服に数箇所穴の開いた形跡がある。
どのようにして幼い命が失われたのか、想像したくない。
けれども、想像せずにはいられない。
特に……幼い子供が命を落としてしまう……そんな状況を知ってしまったら、わたくしは正気ではいられなくなりそうだった。
わたくしが幼い頃……生まれる前に命を失ってしまった弟……。
一生消えないわたくしの心の傷を、再びナイフで切り開かれたかのような心の痛みを感じた。
心臓の鼓動が聞こえるぐらい大きく早く鼓動し、呼吸が困難になってしまった。
砂漠の土に手をついて倒れこむと、涙が溢れ出て止まらなかった。
なんてひどい……。
涙で歪む景色の中、ジムは必死に運転席から人間の身体を砂漠の床へ降ろしていた。
364ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:40:21 ID:???
「……ハァ……ハァ……助けて……助けてくれ……。」

「大丈夫ですか!?しっかりして下さい!」

溢れる涙を何度も手で拭い、現状を見据えた。
生きている人がいる……!
わたくしも急いで、ジムと生き残っている人の傍へ寄った。
中年男性で、手と胸が血まみれになっており……胸にナイフが刺さっていた。
ナイフの刃はすべて男性の肉体へ刺さっており、柄だけが胸に垂直に伸びていた。
だが、なによりも恐ろしいのは……そのナイフの柄が、あの男……ジョン・ライダーの持っていたナイフの柄と同じだという事だった。
もう何もかもが明白だ。
あの男が……ジョン・ライダーが、この家族を皆殺しにしてしまったのだ。
何の罪も無い、親切で乗せてくれたこの家族を……。
……けれど、まだこの男性は生きている。

「……こ、このナイフは抜かないでおきましょう。抜いたら、出血が酷くなります……。」

わたくしは何も言わず、その意見に賛成した。
何かで聞いた話だったが、刺さったナイフは、そのナイフ自身が蓋となり、出血を抑える効果になるとか。
けれども、刺さったままだという事も恐ろしい事だ。
わたくしとジムは何も言わないまま、家族の乗っていたミニバンの後部座席の荷物を地面に捨て、空いた所に男性を寝かせた。
男性は震えながら、こう呟いた。
365ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:40:55 ID:???
「家族は……家内や子供達は……?」

わたくしは助手席に、奥さんらしき女性を発見した。
シートに眠るようにもたれかかっていた。
喉を横にかき斬られていなければ、本当に寝ていると勘違いする程に……。
わたくしの様子を察したのか、ジムは目を閉じて悔しそうに震えていた。
わたくしだって、泣きたい……。
怖くて……怖くて……これが夢ならどれだけマシか……。
でもこれは現実なのだ……。
人間の死という……変えられない現実なのだ……。
床に捨てた子供達の、血まみれの絵本が目に飛び込んだ。
題名にこう書いてあった。

『WILL I GO TO HEAVEN ?(天国へ行けますか?)』

えぇ……行けますわ……。

「お嬢様、この男性を診ていてください……。わたくしが運転して、早く警察か病院へ……。」

ジムはそう言って血まみれの運転席に座った。
横に、血まみれになって生気を失って死んでいる女性の死体を見ると、悔しそうな悲痛な表情をした。
そして意を決するように、エンジンを始動させた。
ミニバンは路肩からハイウェイへと戻り、そのまま発進していった。
わたくしは、男性の胸に刺さっているナイフから溢れ出る血を手で押さえた。
手は、男性の血でどんどん真っ赤に染まっていく。
こぼれた血が、わたくしのワンピースに赤い染みとなって付着していく。
だが、もうそんな事など気にする余裕はなかった。
せめて……せめてこの男性だけでも助けなければ……。

「家族全員を襲うなんて……。」

むご過ぎる現実に、わたくしは心を押しつぶされそうな苦しみを味わった。
366ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:41:55 ID:???
……すると、突然、大きな衝撃を車全体が襲った。
わたくしもジムも、何事かとあたりを見回した。
そして後部を見ると……わたくしは恐怖で固まってしまった。
……赤いSUV……さっきわたくしたちを無視して走り去ったあのSUVが……後ろから追いかけ、わたくしたちが乗っているミニバンに激突してきたのだ。
そして最も恐ろしい事に……そのSUVに乗っているのが……あの恐怖の男、ジョン・ライダーだった……。

「あの男ですわ……。」

わたくしは震える身体を止められず、恐怖に狩り立てられた。
その恐怖はジムも同じようで、車を加速させていった。
だが、SUVはそれをものともせず、再びミニバンへ激突していった。
その瞬間、わたくしはジョン・ライダーの顔が……あの不気味な嫌らしい笑みに歪んでいるのを見てしまった。
そう思った瞬間再び、ミニバンへ激突してきた。

「車から放り出した仕返しですの……!?」

「なら、あのまま殺されればよかったんですか!?」

そんなのわからない……。
わたくしは恐怖で叫びたくなった。
叫んで……叫んで……狂ってしまいたかった。
この恐怖から逃れられるのなら、どんなことでもしたい……。

「いや……いや……!……死にたくありませんわ……!」
367ヒッチャー:2008/04/13(日) 06:42:36 ID:???
わたくしはジョン・ライダーの視線から逃れるように、血まみれの男性の傷口を押さえ、屈みこんだ。

(神様……助けて……助けて……!)

何度も祈った。
この時程、初めて真剣に神に祈った事はなかった。
……すると、来る筈のジョン・ライダーの激突が……来なくなった。
思わず、身体を起こすと、ジョン・ライダーの乗ったSUVがハイウェイから離れ、砂漠の向こうへと消えていくのが見えた。

「な、なんだったんだ!?今のは……!何がしたかったんだ!!!」

ジムは恐怖からか怒りからか、怒号を上げた。
その気持ちは、痛い程わかっていた。
わたくしも同じ気持ちだ。
恐怖を煽るだけ煽っておいて、わたくし達を殺そうとはしなかった。
……それでも、わたくしは恐怖だけで、死にそうだった。
明らかに精神的に追い詰められたのは確かだった。
そんな精神状態を落ち着かせられる事もなく、狂騒状態のまま、車は一軒のダイナーに近づいていった。
ここなら、電話があるはずだ。
ジムが車を止めると、わたくしはいてもたっても居られず、車から飛び出した。

「ジム!警察か病院へ電話しますわ!あなたはあの男性を診ていてくださいまし!」

「お嬢様!?」
368ヒッチャー:2008/04/13(日) 07:01:37 ID:???
ジムを制止を振り切り、ダイナーの扉を開けた。
落ち着いてなどいられなかった。
その前に警察か病院に連絡するのが先だ。
扉を開けると、ウエイターの女性がわたくしを驚いた目で見ていた。
わたくしは間髪入れずに、

「警察か病院に電話を掛けてくださいまし!あ、あとタオルはございませんこと!?」

「た、タオルならトイレのペーパータオルが……。」

「感謝致しますわ!」

昨日の夜、ガソリンスタンドで購入したタオルは、既に男性の傷口を押さえる為に使ってしまった。
だが、それでもなお、男性の出血は止まらなかった。
わたくしは、店内を見回し、トイレを探した。
男女共同のトイレが個室であるだけだった。
わたくしは駆け込むようにトイレに入ると、洗面所のシンクの横にあるペーパータオルを、何枚も引っ張って取り出した。
トイレから出ようと振り返った……その時、わたくしの目に恐ろしい物がうつった。
……赤いSUV……あのジョン・ライダーのSUVが窓ガラス越しに、ダイナーの外に止まっていたのだ。
あの男が……ジョン・ライダーがここにいる……!
トイレの扉を見ると、扉の下から人間の足らしき影が伸びていた。
こっちに近づいてくる……!
わたくしは扉の古い鍵を掛けると、後ろの洗面所の壁まで後ずさりした。
口を手で押さえ、呼吸の音が聞こえないように、ぐっと抑えた。
影はちらちらと動き、そして……ガタガタと扉を開けようと動かした。
369ヒッチャー:2008/04/13(日) 07:03:19 ID:???
目を閉じて、恐怖から目を背けたかった。
だが、一旦閉じてしまったら、死んでしまうような気がした。
何が起ころうと、目を開けていなくてはならない。
こんな所で死にたくない……。
恐怖はどんどん増し、わたくしの心を犯していく……。
扉を激しく乱暴にガタガタと動かす音。
それはまるで、わたくしの心の領域を侵すかのようだった。
わたくしは、必死に耐えた。
恐怖と戦い、疲弊し気を失わないよう努めた。
どのくらい時間がたったのかわからない程、扉を開ける音との戦いは続いた。
そうしてやっと、諦めたかのように、扉を開けようとするのを止めた。
わたくしは恐る恐る、扉の隙間からダイナーの店内を覗いた。
……あの男の姿はなかった。
窓から外の様子を見たら、あの赤いSUV……ジョン・ライダーの車はなかった。
ようやく安心して、わたくしは扉の鍵を開けると、店内へ飛び出した。
ウエイターや客は、わたくしを怪訝な顔で見つめていた。
わたくしは改めて自分の姿を見た。
手やワンピースを血で染まった姿だった。
そんな姿を見て、変だと思わない人などいないだろう。
それでも、そんな事を気にする余裕などなかった。
370ヒッチャー:2008/04/13(日) 07:03:57 ID:???
「電話はかけてくださいました?」

「え、えぇ、かけたわ。」

ウエイターのその言葉だけ聞くと、わたくしはペーパータオルの束を持って店内を飛び出した。
急いで、ミニバンの後部座席に駆けつける。
後部座席には、ジムがタオルを男性の傷口に当て必死に抑えていた。
わたくしは声を掛ける間もなく、ペーパータオルをその上に重ねて、ジムと一緒に傷口を押さえた。
ジムもわたくしも、服を血まみれにしながら、男性の命が助かる事を願っていた。
男性は瞳孔の定まらない目をしながら、うわ言のように呟いていた。

「……主は我が牧者なり……たとえ死の影の谷を歩いても……私はどんな悪も恐れない……。」

溢れ出る血、全身の痙攣、そして口から吹き出る血……。
わたくしは祈った。
わたくしは敬虔な神の従者ではないけれど、この時ばかりは神様がこの男性を救ってくれるように、祈った。
……けれども、男性は大きな吐血を、わたくし達が抑える手に浴びせるように噴出すと、そのまま痙攣がなくなり……目を開いたままピクリとも動かなくなってしまった……。
……死んでしまった……助けられなかった……。
絶望がわたくし達を包んだ。
後悔と自責の念……そして不条理な現実に、わたくしは涙が止まらなかった。
口を開いたら、声を上げて泣いてしまいそうだった。
……だから、わたくしは……必死に声を出さずに、泣いた。
どれほど泣き続けたのだろう、しばらくするとパトカーのサイレンの音が鳴り響きながら近づいてきた。

(今更……手遅れですわ……。)

わたくしは泣きはらした顔を上げた。
すると、信じられない光景が広がっていた。
警官が二人、パトカーから降りていて……わたくし達に銃を向けている。
371ヒッチャー:2008/04/13(日) 07:04:39 ID:???
「動くな!……両手を挙げて見えるようにしろ!車から降りろ!」

わたくしは訳がわからなかった。
わたくしは、警官の言う通りに、手を挙げながら車から降りた。

「違いますわ!警察を呼んで欲しいと言ったのはわたくしですわ!」

「黙れ!連行する!」

警官はわたくしをミニバンから引き離すと、パトカーのボンネットにわたくしを押さえつけて、手を後ろに組まされて、手錠をはめられた。
それはジムも同じようで、ジムはミニバンのボンネットに押さえつけられて手錠をはめられた。

「君には黙秘権がある。発言は不利な証拠となり得る。」

「わたくしではありませんわ!!」

わたくしは警官によってパトカーの後部座席に座らせられた。

「彼女は無実だ!信じてくれ!」

「弁護士を雇えない場合は、国選で弁護士がつけられる。……さぁ、来い!」

ジムはわたくしを見つめていた。
わたくしもジムを見つめる事しか出来なかった。
……どうしてこんな事に……。
372グラインドハウス支配人:2008/04/13(日) 07:07:53 ID:???
以上でCapter3の上映を終了致します。
次回はCapter4の上映です。
それまで、しばらくお待ちください。

上映の途中で、私、支配人の別スレでのコテハンが表示されました。
不手際をお詫び申し上げます。

また、別スレでの私のコテハンを知ってらっしゃる方。
お久しぶりです。

それでは、次回の上映の時にまたお会い致しましょう。

                               グラインドハウス支配人
373マロン名無しさん:2008/04/13(日) 10:33:50 ID:???
374マロン名無しさん:2008/04/15(火) 17:32:47 ID:27rFVunl
サウスパークのスタン カイル ケニー カートマンが交換留学で麻帆良学園に
来たってSSって書いても大丈夫?
375マロン名無しさん:2008/04/15(火) 17:38:05 ID:???
そしてケニーは死ぬ

まあ、大丈夫じゃね?
376マロン名無しさん:2008/04/15(火) 18:33:30 ID:27rFVunl
日本の成田空港にアメリカから来た飛行機が付く、「ああっやっと着いたよ」
「ああ、飛行機って最悪」「ユダヤは飛行機に弱いって聞いたからな」「ユダヤは関係ないだろ!」
「(ボク飛行機からエチケット袋もらって来た)」4人の少年が飛行機のゲートからでる
この4人の少年達の名はカイル・ブロフロフスキー エリック・カートマン スタン・マーシュ ケニー・マコーミック
サウスパーク小学校から、交換留学の為に日本に来た子供達だ。
サウスパーク シーズン12 スペシャルエピソード
スタン達は迎えが来てる入り口に着いた「やあ、君たちかい?留学生は?」アメリカ英語でスタンに話しかけるのはタカミチだった
「こんにちは、ミスタータカミチ」「ミスターはいいタカミチって呼んでくれ、じゃあ行こう」
4人はタカミチのクルマに乗る、高速に乗り2時間高速を降りてクルマは小さな道路に入る、「ここですか?麻帆良学園って?」
「ああ、そうだよまずは学園長の所に行こう」タカミチのクルマは学園長室がある女子中等部に向かう
スタン達は、窓から見える景色を眺めていた、その時ケニーはデカい木がある事に気付く
377マロン名無しさん:2008/04/15(火) 20:37:42 ID:???
何?反応待ってるの?
378マロン名無しさん:2008/04/15(火) 21:27:31 ID:???
まさかとは思うが書き途中というのなら
一区切り付いてからまとめて投下することをお勧めする
379グラインドハウス支配人:2008/04/15(火) 22:32:05 ID:???
お待たせ致しました。
Capter4の上映を開始致します。
プロキシ規制で上映の遅れが生じるかと思いますが、最後までごゆっくりお楽しみください。
それでは、上映いたします。

                                              グラインドハウス支配人
380ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:33:41 ID:???
Capter4「保安官事務所」

「その男は名乗ったのか?」

「ジョン・ライダーだよ!」

ジムは警官に階の下に連れていかれる途中に、警官とそういう会話をしていた。
わたくしは、取調室に連れていかれた。
壁の一部が鏡になっている。
おそらくマジックミラーに違いない。
そのマジックミラーの手前には、ビデオカメラが設置してあり、ランプが赤く光っている。
初老の警官……というより保安官だろう。
その保安官が、わたくしに座るよう促した。

「すわりなさい……。」

わたくしは緊張を解かずに、その通りに従った。
取調べにどのくらいの時間がかかったのだろう。
一向に埒があかなかった。

「その男は名乗ったのかね?」

「えぇ、ジョン・ライダーですわ。」

「その男をどこで乗せたのかね?」
381ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:35:00 ID:???
「ここから東へ……どのくらいの距離かはわかりませんけれど、ガソリンスタンドですわ。」

「なんていうガソリンスタンドだね?」

「そんな事、いちいち覚えてませんわ!目印になるようなものもありませんでしたわ!」

初老の保安官は、やれやれといった顔で調書を書いていた。

「その男を乗せたのを証言できる人間はいるのかね?」

「えぇ、ガソリンスタンドの店員が知ってるはずですわ。」

「そうかね……。」

わたくしの話を信用しているのかしていないのか。
どちらなのかわからないが、まともに相手にしていないといった様子だった。
だんだん、腹が立ってきた。

「わたくし達の事より、早くあの男を捕まえて下さいまし!あの男は危険ですわ!何度も言ってるように、あの家族を殺したのは、私でもなく、ジムでもなく、ジョン・ライダーですわ!早く捕まえなければ、また犠牲者が増えてしまいますわ!」

わたくしの訴えを、保安官はやれやれといった様子で聞いていた。
どうしてわかってくれないの……?
わたくしは、頭を抱えながら、保安官に聞いた。

「……ジムは、今どうしてますの?」

「地下の留置所にいるよ。『僕はやっていない』、『お嬢様と話をさせてくれ』、そう叫んでいたよ。」

「……ジム……。」

わたくしは責任を感じていた。
わたくしのせいで、ジムがこんな目に……。
382ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:35:37 ID:???
そう責任に悩まされていると、若い保安官……ジムを連れて行ったあの保安官が初老の保安官に何かを告げるた。

「ちょっと席を外すよ。しばらくくつろいでてくれ……。」

取調べ室でくつろげるわけがない。
気休めの言葉を受け止められる筈もなく、わたくしは憮然とした態度のまま、安っぽいパイプ椅子に座り続けた。

初老の保安官が出て行ってからどのくらいの時間が過ぎたのだろう。
まるで時間が止まっているかのような気がした。
マジックミラーの奥だけがひときわ存在感を出しているような気がした。
わたくしを監視しているのだろうか?

「ごめんあそばせ……。そこにいるのはわかってますわ。はやくわたくしを解放してくださいまし!そこにいるのでしょう!?」

返事がないのはわかっていた。
けれども、言わずにはいられなかった。
永遠とも、止まっているとも言える無のような時間。
わたくしは重い空気の支配する取調室に取り残されたのだ。

しばらくすると、ガチャ、というドアノブが回る音がして、取調室のドアが開いた。
不思議だった。
鍵は掛けてあるはずなのに……。
わたくしはおそるおそるドアを開いた。
……そこは、まるで無人の館だった。
人の気配がまるで無かった。
どういう事なのだろう……?
わたくしは急に不安になった……。
……嫌な予感がする。
廊下に出ると、一匹の警察犬が通り過ぎて奥へと駆けていった。
そして、奥で、何かを舐めていた。
何事かと、わたくしはゆっくりと足を進めた。
無線だけが、無の支配する空間で、音を鳴らしていた。
383ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:36:48 ID:???
『○○保安官事務所へ、定期報告がないという連絡を受けた。至急、応答されたし。○○保安官事務所へ……。』

その繰り返しだった。
わたくしは恐る恐る犬に近づいていった。
……わたくしは旋律した。
思わず後ずさりして、机の上に倒れこんでしまった。
……あの初老の……わたくしを取調べしていたあの保安官が……顔を血まみれにして倒れている。
顔はぐちゃぐちゃになっており、どんな死に方をしたのか、わたくしにはわからなかった。
その血まみれの顔を、警察犬は、甲斐甲斐しく舐めているのか、それとも血を味わっているのか、わからないが何度も舐めていた。
わたくしは過呼吸に陥った。
今日は一体何度死体を見たのだろう。
わたくしはこみ上げそうな物を口で必死に押さえた。
早くむごい光景から目を逸らしたかった。
だが、そうしたら、再びむごい光景が目に飛び込んでしまった。
ジムを留置所に連れて行った若い保安官が、喉をかき切られて死んでいた。
保安官事務所は、血の池で溢れていた……。

(神さま……なぜですの?なぜこのような事に……。)

何度目の涙かはわからないが、わたくしは口を押さえながら、涙を流した。
何度も漏れる嗚咽。
ここは地獄だ。

『誰かーっ!ここから出してくれーっ!お嬢様と話をさせてくれーっ!』

扉の奥から、ジムの声が響いて聞こえた。
ジム……!
わたくしは、ようやく気を落ち着けると、嗚咽を漏らしながら、鍵を探した。
留置所の鍵だ。
鍵棚から、留置所らしき名前のラベルが付いた鍵を探す。
……だが、無い。
留置所の鍵だけが、鍵棚からひとつ、ぽっかりと無くなっていた。
384ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:37:53 ID:???
(……そんな……!)

わたくしは、死んでしまった保安官が持ってるのではないかと、推測した。
おそるおそる、死んだ初老の保安官の傍にやってきた。
血の池に膝をつき、舐め続けている警察犬をやさしくどかすと、ズボンのポケットに手をいれまさぐった。
……ない。
わたくしは無残な状態になっている初老の保安官の頭部を見ないようにしながら、後ずさりした。
と、その手に、拳銃を握り締めていた。
……明らかに、誰かに襲われたのだ。
だから、拳銃を抜いていたのだろう。
しかし、その前に殺されてしまった……。
わたくしの動悸は強くなっていった。
保安官の拳銃を、わたくしは恐る恐る手に取った。
力の抜けきった手は、あっさりとわたくしに拳銃を渡した。
銀色のリボルバーは持ち手がべったりと血に塗れていた。
わたくしは次に、喉をかき切られて死んでいる保安官の元に近づいていった。
初老の保安官よりむごたらしい死に方はしていないが、それでも恐ろしい事には違いない。
視線を傷口に向けないように、必死にズボンをまさぐった。

(……!……あった!)

ようやく留置所の鍵を手に入れると、わたくしは留置所へいく扉を開けた。
中は真っ暗で、光がなければ何も見えない。
わたくしは中に入る前に、懐中電灯を探した。
懐中電灯は棚に置いてあり、すぐに見つけることが出来た。
ライトを点け、ゆっくりと留置所へ扉を開け、地下へ伸びる階段を下りた。
385ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:38:52 ID:???
「ジム!大丈夫ですの!?」

しかし、わたくしの問いかけに、ジムの返事はなかった。
わたくしは不安になった。
ジムに身に何かが起こったのではないか?と。

「ジム!返事をしてくださいまし!」

返事はない。
わたくしはライトを照らしながら奥へと降りていった。
ライトを照らしても、奥までは光が届かず、どうなっているのかはわからない。

「ジム!返事をしてくださいまし!ジム!」

わたくしは不安で何度も叫んだ。
留置所の階につくと、ようやく鉄格子の中のジムを見つける事ができた。

「ジム!!」

わたくしは泣きそうになりながら、鉄格子に寄り添った。

「お嬢様!」

ジムもようやく安心した顔をしてくれた。

「今すぐここを開けますわ!ライトを持って、わたくしの手元を照らしてくださいまし。」

「は、はい!」

古い鋼鉄の鍵を、鍵穴に入れようとするが、手元がわずかなライトの光しかないので、難儀した。
何度目かの挑戦で、ようやく鍵穴に差し込むと、鍵がまわり、施錠が外れる音がした。
鉄格子の扉が開いた。
386ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:39:28 ID:???
「ジム!」

「お嬢様!」

わたくしはジムに飛びつき、抱きしめた。
ジムもそれを受け入れるように、わたくしをだきしめてくれた。
自然と涙が溢れ出た。

「ジム……ジム……上で、保安官が……。」

「お嬢様……。」

わたくしはなんとか説明しようとした。
けれども、恐怖と、ジムの元へたどり着いた安心感から、わたくしは声は言葉にならなかった。

ガチャン!

という音が、突然、背後で鳴り響いた。
と、同時に、何かプラスチックのケースが床に落ちるような音も聞こえた。
ジムがわたくしを抱きしめる力を強めた。
痛い程抱きしめるその腕は、わたくしをジムの後ろへとまわしていた。

「お嬢様……僕から離れないで下さい……。」

「ジム……?」

ジムはわたくしを後ろに隠すと、ライトを前方へ照らした。
その瞬間、わたくしは何度も味わったあの戦慄を感じた。
黒に近い紺色のトレンチコートがうつると、ジムはだんだんライトを上にあげていった。
そしてうつったのは……ショットガンを持つ、ジョン・ライダーだった。
387ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:40:14 ID:???
「……泣けるな。感動の再会ってやつだ……。」

わたくしの嫌な予感は的中してしまった。
ジョン・ライダーがこの保安官事務所の保安官を全員殺してしまったのだ。

「何が目的なんだ……?なんで僕達を付け回す!?」

「目的……?わからないのか……?」

ジョン・ライダーの嫌らしい笑みが不気味に闇を背にうつっていた。
わたくしは怒りに駆られた。

「ジム、どいてくださいまし!」

「お嬢様!?」

わたくしはジムをどかすと、持っていたリボルバーの銃口をジョン・ライダーに向けた。

「〜〜♪」

ジョン・ライダーは余裕な態度で、口笛を吹いた。
そして、

「どうする気だ……?」

そう、挑発的な言葉を吐いた。

「あなたを撃ちますわ……!」

「そうかい……?」

その瞬間、目にも止まらない早さで、ジョン・ライダーはショットガンの銃口をわたくしに向けた。
388ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:41:21 ID:???
「勝負といくか……?俺とお前……どっちが生きるか……死ぬか……。」

わたくしは震えが止まらなかった。
銃口はガタガタと揺れ、定まらない。

「そのリボルバーはダブルアクションだ。引き金を引くだけで弾は出るが……力の弱いお嬢ちゃんには無理だ。狙いが外れる。」

「……おだまりなさい……。」

「そんな時は、撃鉄を降ろしたほうが、引き金は軽くて済む。……やってみろ……。」

「……おだまりなさい!!!」

わたくしはリボルバーの撃鉄を降ろした。
その様子を見て、ジョン・ライダーは笑った。

「ハハハ……。それでいい!……さぁ、撃てよ。」

わたくしは必死で震える手を押さえ、銃口をジョン・ライダーに定めようとした。

「ココだ……。さぁ、撃てよ……。」

ジョン・ライダーが左手の人差し指で自分の額を指した。
わたくしは無意識に従うように、ジョン・ライダーの額に銃口を向けた。

「お嬢様……。」
389ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:42:49 ID:???
声をかけるジム。
しかし、その後の言葉がない。
ジム自身、なんて言葉をかけていいのかわからないのだろう。
ジムがわたくしをとめたら……おそらく、ジョン・ライダーはジムをショットガンで先に撃ち殺してしまうはずだ。
それをわかっているのか、止めるに止められないのだろう。
これは……わたくしとジョン・ライダーの勝負になってしまったのだ。

「ほら……俺が憎いだろう……?あの家族を殺し、保安官も殺した……。おまけにお前らは、殺人の濡れ衣まで着させられた……。この俺が憎い筈だ……。違うか?」

「憎いですわ……。殺したくて仕方がありませんわ……!」

「ハハハハ……!なら撃てよ……!ほら……チャンスだぞ……?」

わたくしは、溢れる涙を抑える事が出来ずに、ジョン・ライダーに銃を向けていた。
引き金に指を掛けている。
いつでも、撃つことができる……。

「さぁ、撃てよ!」

「うるさい!!!!」

ジョン・ライダーの構えるショットガンの銃口が、わたくしの顔を捉えていた。

「なら、こっちからいくぞ……?カウントの後に……俺は撃つ。3つ数える間に、お前は俺を殺せるチャンスを与えてやる。死にたくなかったら、さっさと撃て……!」
390ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:43:41 ID:???
「…………。」

「3………。」

「…………。」

「2………。」

「…………。」

「1………っ!」

その瞬間、わたくしの中の『何か』が切れた。

「あああああああああああ!!!!」

ガチッ!

金属を打つ、虚しい音が留置所内に響いた。

「ハハハハ……!どうだ?初体験……。人を殺す快感は……?気持ちいいだろう……?」

わたくしは、放心状態のまま、その場に座り込んでしまった。
……わたくしは……引き金を確かに引いてしまった……。
弾はリボルバーから出ず、ジョン・ライダーは余裕で生きている。
391ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:44:10 ID:???
「弾はここだ……!」

そう言うと、ジョン・ライダーはコートのポケットから弾丸を取り出して、それを床にばら撒いてこぼした。
わたくしの持っていたリボルバーは弾が全て抜かれていたのだ。
ジョン・ライダーはわたくしに近づくと、わたくしの同じ目線まで、しゃがみこんだ。
ジムはショットガンを向けられ、身動きが取れない。
わたくしは放心状態のまま、ジョン・ライダーに問うた。

「一体……何が目的ですの……?あなたは……何がしたいんですの……?」

ジョン・ライダーは意外にも、わたくしの右頬を左手でやさしく撫でると、こう言った。

「……お前は頭のいいガキだ。……自分で考えろ……。」

そう言うと立ち上がり、一階へあがる階段を上り、わたくしたちに背を向けて立ち去った。

「お嬢様…っ!」

ようやくジムがわたくしを後ろから抱きしめた。

「お嬢様……!」

わたくしは放心状態から立ち直る事が出来ずに、うわ言のようにつぶやいた。
392ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:45:12 ID:???
「ジム……わたくし、人を殺してしまいましたわ……。未遂とはいえ……銃の引き金を引いて……人を……。」

「お嬢様……!」

すると、サイレンのけたたましい音が聞こえた。
ジムはわたくしを抱き起こすと、地面に散らばった弾丸を拾い集め、わたくしを抱きかかえながら階段を上った。
窓からは、パトカーが何台も、保安官事務所の前に止まって、警官が降りてきていた。
ジムはわたくしを連れ、裏口から保安官事務所を出た。
沢山の警官が入れ違いに保安官事務所へ突入していくのが見えた。
わたくし達は、裏口から丘の上へ上っていった。
その時になって、ようやくわたくしは気を持ち直すと、一人で歩けるようになった。

「お嬢様……銃を。」

「え……?」

「銃を僕に……危険です。」

「差し上げますわ、こんなもの……。」

わたくしは押し付けるように、リボルバーをジムに渡した。
苛立っていた。
その時のわたくしは身勝手にも、ジムを責めていた。
393ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:45:56 ID:???
「あの時……帰っていれば……。」

「僕のせいですか……?」

「してませんわ!」

「してますよ!」

「……なぜ、あんな男を乗せたんですの?」

「あ、あの男が乗せて欲しいって言ったから……!あの店員だって!」

「あんな危険な男ですのよ!?」

「仕方がないでしょう!僕だって、わかってれば乗せませんでしたよ!……お嬢様だって、賛成したじゃないですか……。」

険悪な空気が漂っていた。
その空気を作ってしまったのはわたくしだ。

「えぇ……賛成しましたわ。」

わたくしはジムから視線を背け、前に進んだ。
……すると……、

ガシャンッ!

という音と共に、頭上から何かが降ってきた。
巨大な鉄の塊が降ってきたのだ。
わたくしはおもわずしりもちをついてしまった。
鉄の塊は赤い塗装をしていた。
……よく見れば、あのジョン・ライダーの乗っていた赤いSUVだった。
あと数センチ前に出ていたら巻き込まれ、潰されていた。
394ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:47:19 ID:???
「お嬢様っ!」

ジムが傍に駆け寄ると、わたくしを抱き起こし、降ってきた頭上方向へ、銃を向けた。
ジョン・ライダーらしき人影はなかった。

「……畜生っ!」

わたくしたちは、何かに逃げるように岩肌の露出した丘を歩いた。

わたくし達が丘へ逃げている間、保安官事務所は現場検証が行われていた。
若い白髪の男が、現場の凄惨さに苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

「エスターリッジ警部補、資料です。」

若い警官が、エスターリッジと呼んだ白髪の男に資料を手渡していた。
その資料は、わたくし達が保安官事務所で取らされた写真と調書があった。

「男のほうは21歳……。女のほうは……まだ14歳か。ムリだ……。この二人には殺れない。ホシは他にいる。」

エスターリッジ警部補は、銃器棚を見た。
棚から二つ銃がなくなっている。

「犯人は銃を持っている……危険だぞ。周囲に検問を張れ!手の空いてる者は周囲を巡回しろ!」

そういうと、一人の若い警官を呼んだ。
395ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:48:02 ID:???
「おい、状況が知りたい。男の方は留置所にいたんだな?」

「はい。」

エスターリッジ警部補は歩いて、取調べ室のマジックミラーの内側に進んだ。

「女のほうは、ここで取り調べを受けていた。そうだな?」

「えぇ。」

それを聞くと、マジックミラーを指さした。

「……それじゃあ、コレは誰が描いたんだ?」

エスターリッジ警部補が指したところには、絵が描いてあった。
血で描かれた、恐らく指で描いたのだろう、女の絵だった。

「ヘリを飛ばしてホシを探せ……。奴はまだこの周辺にいるぞ。」

わたくし達は一軒のトレーラーハウスにたどり着いた。

「開けて!開けてくださいまし!」

ドアを叩いて必死に懇願した。
けれども、ドアが開くどころか、人の気配すらない。

「クソッ!無人か!!」

ジムが悪態を着く。
わたくしはジムの悪態にはかまわず周囲を見回した。
……すると、遠方に……紺色のトレンチコートの男、ジョン・ライダーが見えた。
手に、今度はショットガンではなく、ライフル銃を持って……こっちに近づいていた。
396ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:48:45 ID:???
「ジムっ!」

「え?……!!」

ジムもジョン・ライダーの姿を確認したのか、慌ててわたくしの手をとって走り出した。
走る先に、金網があり、その向こう側には古い黒のスポーツカーがあった。

「あの車に……!」

ジムはそう言って、金網を登り始めた。
だが……、どこからともなく、猛犬が走って近づいてきた。

「ジム!離れて!」

「う、うわあっ!?」

黒い猛犬……恐らくドーベルマンだろう、金網に近づくわたくし達を吠え立てた。
金網がなければ、おそらく、襲われ、噛み殺されただろう。
ジムは金網から慌てて降りると、わたくしの手を取り、トレーラーハウスの横の古びた納屋に入り込んだ。
埃と、蜘蛛の巣が張り巡らされている古い納屋の扉を閉め、わたくし達は息を潜めた。

「逃げ道はありませんの……?」

「無い……ありません……。」

わたくしは壁になっているトタンの穴から、外の様子を伺った。

「やつは!?」

「……見えませんわ……。」

ジムはリボルバーを取り出すと、弾を詰め、装填すると、外へ向け銃を構えた。
397ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:49:15 ID:???
「ヤツが入ってきたら……撃ちます!」

わたくしは何も言えなかった。
おそらく、それが正しい選択なのだと、本能的に悟ったからだと思う。
わたくしは穴を覗きこみ、周囲を見回した。
ジョン・ライダーの姿はない……。
すると、しばらくして一台のパトカーが近づいてくるのが見えた。
中から警官が出てきた。
……ダイナーでわたくし達を捕まえたあの警官の一人だった。

「ここから出て、あの人に保護してもらいましょう……。」

「よして下さい!またつかまるだけです!」

「でも、あの男に殺されるよりマシですわ!せめて、話だけでも……。」

ジムは悩んでいるようだった。
わたくしの考えている事は、ジムも同じようだった。

「……僕が話してきます……。銃を持っていて下さい……。」

ジムが銃を差し出す。
わたくしはそれをおそるおそる受け取った。

「ここから、見張ってて下さい……。」

ジムはゆっくりと納屋から出ると、辺りを見回しながらパトカーへと近づいていった。
……すると、どこからか警官が現れ、ジムに飛び掛り、地面へ押し倒した。
398ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:49:50 ID:???
「!?僕は何もしてない!!」

「もう逃がさないぞ……!」

そう言うとジムに手錠を掛け、無線を取った。

「こちらSO-258。男の方の容疑者を確保した。……女の方はまだだ。」

ガチリ!

という音で警官は音の鳴った方へゆっくりと振り向いた。

「お、お嬢様……!」

わたくしは、撃鉄を降ろし、銃を警官の方へと向けていた。

「ジムをお放しなさい。」

警官は固まったままだった。

『すぐ応援がそっちへ行く』

無線がそう告げていた。

「早くジムをお放しなさい!早く!」

警官は慌てて、ジムの手錠を外した。

「手を挙げて……。言う通りになさい……!」
399ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:50:22 ID:???
「落ち着け……冷静になれ……。」

「冷静ですわ……!早く手をお挙げなさい!」

警官は手を挙げた。
だが、すぐに右手がゆっくりと下ろされ、携帯している拳銃に伸びるのが見えた。

「手を降ろさないで!」

そう一喝すると、警官はすぐに手を戻した。

「お嬢様……そんな真似はおやめください!」

「ジム……銃をお取りなさい。」

ジムは動揺しながらも、手を挙げている警官の銃を抜き、奪い取った。

「すみません……。」

「逃げますわよ……ジム。あなたは車にお乗りなさい!」

わたくしは警官に一喝した。
手段を選ぶ余裕などなかった。
はやく逃げなくては……あの男から……!
ジムはわたくしの傍に立って、同じように警官に銃を向けていた。

「お嬢様……無茶ですよ!」

「例え無茶でも……逃げるのです!後ろをお向きなさい!」

そう言われると、警官はしぶしぶ後ろを向いた。
400ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:51:07 ID:???
「ジム、あなたは早く車に乗って……。」

ジムはわたくしの言葉に従って車に乗ると、エンジンを始動させた。

「あなたも……車にお乗りなさい!」

「銃を寄こしなさい……。それは子供のおもちゃじゃないんだ。」

「わかってますわ……。」

銃を寄こすように促すと、警官は手を伸ばした。
わたくしはそれを拒否するように、警官の顔に銃を突きつける。

「今すぐ、ここから逃げないといけませんの……。早く車にお乗りなさい!」

わたくしがそう叫ぶと、パンッ!という破裂音が響いた。
と、同時に、警官の頭部に穴が開き、パトカーに血が飛び散った。

「っ!!!!」

そんな……わたくしは撃っていないのに!?
わたくしは慌てて回りを見回した。
すると、金網の向こうの廃車になった古いバスの中から……あのジョン・ライダーがライフル銃を向けていた。
ライフル銃の銃口から煙が立ち込めていて、ジョン・ライダーはあの嫌らしい笑みでニヤリと笑うと、ライフル銃を仕舞い込んだ。

「お嬢様!なぜ!?」

「わたくしではありませんわ!」
401ヒッチャー:2008/04/15(火) 22:51:45 ID:???
すると、奥から別の警官が現れた。

「動くな!!」

そう言うと、わたくしに向かって発砲してきた!

「きゃああ!」

弾は幸い当たらなかったものの、いつ当たってもおかしくない。

「お嬢様!早く乗って下さい!逃げるんです!」

わたくしは転びそうになりながらも、急いでパトカーの助手席に乗り込んだ。
警官はなおも発砲し、パトカーに当たった。
ジムは急いでパトカーを発進させ、荒野を降りてハイウェイに向かった。
パトカーの無線が鳴り響いた。

『こちらSO-265!警官が撃たれた!警官が撃たれた!女が撃った!パトカーで逃走した!』

わたく達はパトカーで必死に逃げた。
警察から……そして、あの男から。
402グラインドハウス支配人:2008/04/15(火) 22:53:01 ID:???
以上でCapter4の上映を終了致します。
次回はCapter5を上映致します。
それまで、しばらくお待ちください。

ご感想、お批判、お待ちしております。

                 グラインドハウス支配人
403マロン名無しさん:2008/04/16(水) 17:50:08 ID:???
うおおおGJ!
もぅいいんちょ無事に麻帆良に帰れるかも分からんね。
404マロン名無しさん:2008/04/16(水) 19:05:36 ID:???
405マロン名無しさん:2008/04/16(水) 19:27:54 ID:???
ぞ、ぞくぞくするぜ!!
406マロン名無しさん:2008/04/16(水) 20:34:28 ID:eb6F2E6G
サウスパーク×ネギま 02
麻帆良学園に着いた4人は学園長室に居た、「君たちが留学生君達か、はるばるアメリカから
きてくれたのー」「はい、これから一ヶ月間宜しくお願いします」スタンは近衛学園長に、礼儀正しく
答える、一方カートマンは学園長の頭を見て笑おうとするがカイルとケニーがカートマンのケツを抓っている
「もし笑ったらもっと強く握るぞカートマン!」とカートマンの耳元で小声で言うカイルだった。
「所でなんで君たちが交換留学をする事になったのかサウスパーク小学校が教えてくれんのじゃがースタン君は知ってるかね?」
「えっ!えっーとそれは・・・」言えない!カートマンが上級生のビリーを裸にして学校のど真ん中の柱にくくり付けた罰として来たなんてスタンの口が裂けても
言えない「遅くなりました!学園長!」そこに丁度良くスタン達の入る教室の担任ネギ・スプリングフィールドが来た
「おお、ネギ君」「君たちが留学生さん達ですね、一ヶ月間よろしく」「いやぁ、こちらこそ」大して身長の変わらない2人が握手する
しかしネギを見たカートマンは「ぶーーーーーきゃっははははははぎゃははははあはは!」
麻帆良学園にカートマンの笑い声が響く
407マロン名無しさん:2008/04/16(水) 21:02:54 ID:eb6F2E6G
サウスパーク×ネギま 03

「スイマセン!先生!このデカッ尻がとんでもない失礼を!」
カイルはネギにネギを見て大笑いしたカートマンはケニーに殴られていた「(今度笑ったらこの程度じゃすまないからね!)」
ケニーは久々に大激怒した為にカートマンはかなりボロボロになったいた「わかったよケニー」
「なっ仲がいいんですね」「まっまあコイツとはいろいろやってきましたからもう慣れましたよ」
「そう言えばまだ名前まだ聞いてませんでしたね、貴方は?」「俺はスタンリー・マーシュ、長いからスタンでいいよ」「スタンさんですね」
「ボクはカイル・ブロフロフスキーです」「こいつはユダヤです」「黙れ!デカッ尻!」「ははは・・あの、そのやり取りは他の生徒の前でやらないでくださいね、年頃の女の人達がいっぱい居ますから」
「はい、分りました先生」「オレンジのパーカーを来た貴方は?」「(ボクはケニー・マコーミック ケニーって呼んで)」「っえ?なんて言ったの?」
パーカーのせいでケニーの声がよく聞き取れないネギが聞く「こいつはケニーって言います」「ケニーさんですね、あの、パーカーは脱いで下さいね」
「(それは嫌です)」ケニーはきっぱり答えたもちろん何を言ったのかはネギには分らない「え〜と、水色の帽子を被った貴方は?」
「オイラはエリック・カートマン、他の生徒達にはオイラにデブって言わないようにしといてくれよな」「分りましたボクの生徒達に言っておきます」
「それで貴方は?」スタンがネギに名前を聞く「僕はネギ・スプリングフィールド、ネギ先生って読んでくださいね!」
408マロン名無しさん:2008/04/16(水) 21:07:35 ID:eb6F2E6G
サウス×ネギまの作者です
続きはネタが浮かび上がった次第で書きます。
ちなみにケニーはこのSSでは死にません 
409マロン名無しさん:2008/04/16(水) 21:10:27 ID:???
乙 楽しみに待っているよ
410グラインドハウス支配人:2008/04/17(木) 05:55:03 ID:???
それでは、お待たせ致しました。
Capter5の上映を開始致します。

最後までごゆっくりお楽しみ下さい。
411ヒッチャー:2008/04/17(木) 05:56:19 ID:???
Capter5「カーチェイス」

わたくし達を乗せたパトカーは、荒野からハイウェイへと飛び出た。
その後を、わたくしに向かって撃ったあの警官のパトカーがぴったりとくっついて来た。
運転するジムに、わたくしは問いたかった。
どこへ向かっているのか……。
わたくしは、先ほど撃たれそうになった動揺を必死に抑えようとしながら、ジムに問うた。

「一体、どこに向かっているんですの?」

「どこか遠くですよ!どこでもいいから、早く逃げ切らないと……!」

ジム自身、走ってるハイウェイがどの町へ、どの方角へ向かっているのか、わかってはいないようだった。
ただひたすら……、警察から逃げている。

「お嬢様……さっき一体何があったんですか!?」

「あの男ですわ……あの男が、あの警官を……!」

「クソッ!とことんやる気だ……!」

ジムの悪態にはもう慣れた。
悪態をつきたい気持ちはわたくしだって同じだからだ。

「えぇ……。」

そう、返事するのがやっとだった。
わたくしはひとつにして最大の疑問が浮かんだ。
あの男……ジョン・ライダーの目的はなんなのだ?
412ヒッチャー:2008/04/17(木) 05:57:21 ID:???
「あの男……わたくし達を陥れるつもりなのかしら……?」

「なら、保安官まで殺さなくても十分ですよ!」

「なら、なぜ!?」

「知りませんよ!!」

追跡のパトカーが近づいてきた。
警察無線が、警察の状況を述べていた。

『容疑者は銃を所持。繰り返す。容疑者は銃を所持……。』

バックミラーを覗くと、いつの間にか追跡のパトカーは2台に増えていた。

『警部補。○○号線で容疑者の車を追跡中。』

今度は3台に増えた……!

『容疑者は銃を所持している。ヘリから見えるか?』

『こちらからは見えない。』

わたくしは窓から上空を見上げた。
だが、窓からはヘリの姿を見つけることは出来なかった。

「お嬢様。その無線で、奴の居所を知らせては!?」

「え、えぇ……。」

わたくしはパトカーの無線機を取ると、スイッチを押しながら、無線が通じる事を祈りながらおそるおそる口を開いた。
413ヒッチャー:2008/04/17(木) 05:58:53 ID:???
『もしもし……。誰か、聞こえますの?』

わたくしがそう言った途端だった。
上り坂のハイウェイから下りへ降りようとわたくし達のパトカーが走っていると、坂のほうからギリギリ見えない位置からヘリが現れた。
上り坂で隠れて見えなかったのだ。
ヘリはわたくし達のパトカーをかすめるように上を通り過ぎた。

「わっ!?」

「きゃっ!?」

わたくし達は突然現れたヘリに驚いて、悲鳴を上げてしまった。
だが、ヘリはかまわず、無線でこう告げていた。

『ヘリから本部へ。容疑者の車を発見。』

事態はますます悪い状態になっていった。
バックミラーで見えるだけで……追跡してくるのは、パトカーが5台、そしてヘリだ。
この状況下で、ジムは必死でアクセルを踏んで、ひたすらハイウェイを走っていた。
ジムの心境を察するにあまった。
すると、無線の応答が違うものへと変化していた。

『雪広あやかとジム・ハルシー。私はカリフォルニア州警察のエスターリッジ警部補だ。大丈夫か?』

大丈夫か、ですって!?
わたくしは思わず、無線に向かって叫んでいた。

『どこを見たらそう思えますの!?大丈夫どころではありませんわ!』

『…………。』

無線の相手――エスターリッジ警部補と名乗った男性は、わたくしの怒鳴り声に言葉を失ったようだった。
414ヒッチャー:2008/04/17(木) 06:00:27 ID:???
『……落ち着きなさい。はやく車を止めて、投降するんだ。』

『警官を撃った男は、保安官事務所の近くにあるトレーラーハウスの付近にいますわ!』

『目撃者は、君が撃ったと言っている。いいか、今すぐ車を止めれば、話を聞いてやる。』

わたくしは迷った。
止まって、警察に身を預けるべきなのか。
それとも逃げ続けるか――。

『いいから、聞いてくださいまし!わたくしは警官を撃ってなどおりませんわ!あの家族も殺してなどおりませんわ!何度言えば信じてもらえるんですの!』

『どうするかは、私が決める。だから、手遅れになる前に車を止めるんだ。』

いや、止めるわけにはいかない。
わたくし達は、警察にだけ逃げているわけではない……。

『止められませんわ……。あの男が……あの男から逃げないと……。』

『いいか、言う通りにしないと力ずくで車を止めるぞ!』

『車は止めませんわ!』

『話し合い』は決裂に終わった。
今、止まるわけにはいかない。
あの男から逃げなくては……。
415ヒッチャー:2008/04/17(木) 06:17:06 ID:???
『警部補!車は停止しません!』

『なら、さっさと車を止めろ!』

バックミラーから、パトカーが2台、間に挟むように並行して近づいてきた。
助手席の警官が、窓からライフル銃を取り出して構えるのが見えた。
そして次の瞬間には、発砲してきた……!
最初の一発目はフロントガラスに当たり、警官は続けて何発も撃ってきた。
サイドミラー、ボディ、サイレン、ありとあらゆる所から弾けるような音がした。
本当に撃って、止める気だ……!
このままでは、あの男に捕まるより先に、警察に殺されてしまう……!
わたくしは慌てて無線で答えた。

『待ってくださいまし!止まりますわ!止まりますから撃たないで下さいまし!』

無線から口を離すと、ジムに止まるよう促した。

「ジム!早くお止まりなさい!」

「は、はい!」

ジムは慌てたように、ブレーキとクラッチを同時に踏んだ。
すると、左右横に並行に進んでいた2台のパトカーがわたくし達の車の前方に飛び出た。
そして、お互いが、お互いのパトカーのフロントタイヤを撃ち抜いた……!
本来ならば、わたくし達のパトカーの左右のフロントタイヤを撃ち抜くはずだったのだろう。
前方に飛び出た2台のパトカーはそれぞれ、撃ち抜いたタイヤの方角へバランスを崩した。
そして……おそろしい事に2台はバランスを崩して、空中できりもみ回転した。
416ヒッチャー:2008/04/17(木) 06:18:03 ID:???
まるでコマのように、転がるようにスピンした。
それは壮絶な光景だった。
ジムは目の前に迫る、コマと化してスピンする2台のパトカーを、なんとか避けようとハンドルを大きくきった。
まず、右斜め前から迫る1台目を避けようと左へ大きくきった。
重心が右に寄る。
すると、車は横滑りを始めた。
明らかに曲がりきれていない……。
すると、今度は右へハンドルを切った。
タイヤが悲鳴を上げながら、景色は左から右へ、重心は右から左へと移っていった。
そして車の右横をコマと化したパトカーが通り過ぎた。
だが、今度は右向きのまま横滑りの状態で、左斜め前から2台目のパトカーが迫っていた。
ジムはそれも避けようと、急いでハンドルを左へきった。
今度は、景色は右から左へ、重心は右から左へと移っていった。
2台目のパトカーは、わたくし達の車の鼻先をわずかにかすめると、フロントガラスからは右から左へと流れるように通り過ぎていった。
2台のパトカーを避けると、わたくし達の車は、バランスを取り戻すように、ゆらゆらと左右に揺れながら、次第にハイウェイに向かって真っ直ぐ進んでいった。

「はぁ…はぁ…お、お嬢様、大丈夫ですか?」

「は、はぁ……あぁ……。」

わたくしは腰を抜かし、間抜けなあえぎ声を出してしまった。
それほど、さき程の出来事は怖かった。
わずか数秒ほどの出来事だったが、わたくしにはまるで時間の流れがゆるやかになり、数十秒にも感じた。
バックミラーを見ると、あの2台のパトカーはハイウェイを転がるようにすべった。
417ヒッチャー:2008/04/17(木) 06:19:30 ID:???
『2台大破!2台大破!』

後ろのもう3台も、なんとか転がる2台を避けたようだった。
すると、無線がまた何かを告げた。

『……警部補!後方から車が1台接近中!……黒のトランザムです!』

まさか……!?
わたくしは身体ごと後方を見入った。
黒いスポーツカーが接近している。
車は、あのトレーラーハウスの近くにあったものと同じ車種だ。
そしてそれに乗っているのは……。
わたくしは思わず涙声で喘いでしまった。

「……ジム……。あの男ですわ……!」

……ジョン・ライダーだった。
ジョン・ライダーの乗る黒のスポーツカー……トランザムはわたくし達の後方で並行して走行している2台のパトカーの左側に並んだ。
そして……拳銃らしき物を取り出すと、パトカーに向かって発砲した……。
2台の内、左側のパトカーのフロントガラスが真っ赤に染まると、バランスを崩したように右側のパトカーにぶつかっていった。
右側のパトカーは左側から来る重心に耐え切れず、転がるように回転してスピンした。
そして、バランスを失った左側のパトカーは、回転してスピンする右側のパトカーに巻き込まれるように、スピンした。
2台は転がるようにスピンし、車体をグシャグシャに変形させながら止まった。

『2台大破!2台大破!なんなんだあれは!?』
418ヒッチャー:2008/04/17(木) 06:21:12 ID:???
無線から悲痛なまでの困惑と恐怖の声が聞こえてきた。
恐ろしいのはわたくしだって同じだ……。
昨日の夜から……ずっとあの恐怖に追いかけられているのだ……。
ジョン・ライダーは、今度は拳銃をヘリに向けて、発砲した。
何発もの銃弾がヘリのボディを傷つけた。
そして、その後の数発の発砲で、ヘリのフロントガラスは真っ赤に染まった。
想像したくはないが、ガラスを貫通し、ヘリの操縦士に命中したのだろう……。
ヘリは失速しながら、わたくし達の前方へ墜落し、炎上した。
突然の燃える障害物に、ジムは慌ててハンドルを切り、紙一重で避けた。
だが、わたくし達の後ろの最後の1台となってしまったパトカーは、避けきれず、燃え盛るヘリの残骸に正面から衝突、そのまま爆発して炎上した。
わたくしには、その断末魔が聞こえるようだった。

『チクショーーーーッ!』

エスターリッジ警部補の怒りの叫び声が、無線からけたたましい音として鳴り響いた。
ハイウェイの上には、わたくし達のパトカーと、ジョン・ライダーのトランザムの2台だけになってしまった。
すると、次第にトランザムが近づいてきた。

「ジム!急いで!早く!」

「駄目です!これが限界です!」

パトカーは白い煙をボンネットの内側から出ると、大きな音を悲鳴のように数回出して、減速していった。
すると、ジョン・ライダーの乗ったトランザムが、それに合わせるかのように、わたくし達の横に並んだ。
わたくしは、この時、あのパトカーの警官のように、撃たれて殺されるものと思った。
おそらく、ジムも同じだったに違いない。
だが、わたくし達の顔を見ると、あの恐ろしくて嫌らしい笑みを浮かべて、わたくし達の前方へと走り去っていった。
わたくしは恐ろしくて、わけがわからなかった。
わたくし達を好意で助けたわけではないことは明らかだ。
だが、何のつもりで警官を殺し、パトカーやヘリを排除したのかわからない。
419ヒッチャー:2008/04/17(木) 06:22:09 ID:???
ジョン・ライダーは、いつも……いつも……わたくしに恐怖と疑問を残して姿を消す。
まるでわたくしに謎解きをさせるかのように……。
わたくしの脳裏に、あの時の言葉が蘇った。

(……お前は頭のいいガキだ。……自分で考えろ……。)

パトカーは煙を上げながら、ゆっくりとハイウェイの上で止まった。
辺りはすっかり真っ赤な夕焼けに染まっていた。
けれども、その夕焼けの美しさも、まるで残酷な世界の一風景にしか見えなかった。

「お嬢様……。」

ジムの問いかけに、わたくしは無言のまま頷いた。
車を降りたジムは、助手席のドアを開けると、わたくしに手を差し伸べた。
わたくしはその手を取ると、車から降りた。

「……行きましょう、お嬢様。」

わたくしは、また無言のまま頷いた。
先の見えない逃避行。
生き延びる、たったそれだけが目的の逃避行だった。
車から降りて、わたくし達は荒野を歩いた。
わたくしとジムは、去年以上の絆で結ばれている気がした。
……生き延びる、絶対最後まで……。
手を握りながら、わたくし達は荒野を歩き続けた。
420グラインドハウス支配人:2008/04/17(木) 06:35:17 ID:???
以上でCapter5の上映を終了致します。
次回はCapter6を上映致します。
それまで、しばらくお待ち下さい。

ご感想、お批判、お待ちしております。

                グラインドハウス支配人。
421マロン名無しさん:2008/04/17(木) 18:57:39 ID:zj6ICvz6
サウス×ネギま 04
とりあえずスタン達は麻帆良の学生服に着替える「どうだい?スタン」「ドュードゥ!いいじゃん、カイル似合っているよ」
「スタンもね!」「(二人とも早いね)」制服を着ているがパーカーを取らないケニーが出て来た
「おい!カートマン早く出ていよ!」「この制服きついなあ」カートマンの制服はギリギリの状態だ、ワイシャツから腹が少し見える学園長はカートマンを見て少し噴出しそうになる
「じゃあ、スタンさん達ボクのクラスに行きましょう」「ああ、ちょっと待ってください、ミスタースプリングフィールド」「はい?何ですか?」
「貴方が年上なのに年下の俺たちに敬語使わないでくださいよ気持ち悪くてしょうがないですよ」「えっ、でっでも・・」ネギは麻帆良に来てから今までタカミチとカモとコタロー
にしかタメ口を聞かなかったネギは困る「頼みますよ、ミスタースプリングフィールドこのままじゃ授業に集中できませんよ」「じゃっじゃあ、スタンくんって呼んでいい?」早速ネギはスタンにタメ語を話す
「それでいいよ」「いいの?これで」「いいんですよそれで、その調子でお願いしますよ」 
422マロン名無しさん:2008/04/17(木) 19:31:09 ID:zj6ICvz6
サウス×ネギま 05
その頃3−Aでは、「そういえば今日のはずやな留学生が来る日って、なあ明日菜」「留学生?ああ!ネギが前に言ってたわねアメリカから4人くらい来るって」
教室では主席番号13番の近衛木乃香と8番の神楽坂明日菜がその話をしている「アメリカから、大丈夫なんですかね?アメリカ人は暴れん坊って言ってましたから、お嬢さまに何かあったら私はどうすれば」
刹那が不安げに言う「せっちゃん、アメリカ人にもいい人はおるはずや見かけで判断したらアカンえ」「失礼しましたお嬢さま」留学生が来る話は3−A中の話題になっている
「ネギくんはイギリス人だけど留学生はアメリカ人かー、ネギくんアメリカ人との接し方分るかな」佐々木まき絵が泉亜子に話す「大丈夫やろ、アメリカ人でも女の子ならネギくんだって大丈夫やろ」
教室の隅では双子の鳴滝姉妹が長瀬楓といたずらの計画をしている「ネギ先生が来たとき見たいな仕掛けにするです〜」史香がイタズラの仕掛けを話す「でもそれではネギ坊主も巻き込まれてしまうでござるよ」
いかにも忍者口調の長瀬楓が答える「そうですか〜困ったです〜」
「だったらこれはどう?」史香の姉、風香が自分の案を話す、「それで行きましょう!お姉ちゃん!」教室の窓の付近にエヴァンジェリンと茶々丸が立っている「マスター今日は」「ああ、分っているアメリカから留学生が来るんだろ?」
「マスター、私はアメリカ人とどう接すればいいのですか?私は今までにアジアやヨーロッパ人とは面識がありますがアメリカ人とは面識がありません、」「知らん、そんな事は自分で考えろ」
「承知しました」「アメリカか・・・イギリスを出た移民が作り上げた国の人間を見るのも初めてだ」
423マロン名無しさん:2008/04/17(木) 19:38:50 ID:???
424マロン名無しさん:2008/04/17(木) 20:11:59 ID:zj6ICvz6
サウス×ネギま 06
「皆さん今日は留学生が来ます仲良くしてくださいね」ネギに惚れている雪広あやかが立つ「勿論ですわ!ネギ先生、ネギ先生のお望みなら私はどんな国の留学生達でも仲良くいたしますわ〜!」
「イヤ!つーか、もう居るだろ留学生みたいな奴らなら!」長谷川千雨が心の中でそう叫ぶ「では入ってきてください」
スタン達が教室に入る為ドアを開けるそこで鳴滝姉妹が仕掛けたトラップが発動する引っかかったのはカイルだ、まずドアの上から黒板消しが落ちてきてカイルの帽子に当たる
次にはタライ最後には矢が飛んできた「ぎゃあ!ぶほ!メソッド!」カイルは見事に全てのトラップに命中した、後ろからスタン達が入ってくる
「大丈夫か?カイル」「うん大丈夫だよスタン、手荒い歓迎だね」「オイラが先に入らなくて良かったぜ」「(本当だね)」
スタン達を見て唖然とする3−A一同しかしスタン達は気にせず黒板に立つ「初めまして日本の皆さんオレはスタン・マーシュです」スタンが自己紹介する
「ボクはカイル・ブロフロフスキーですヨロシク」「オイラはエリック・カートマン」「(ケニー・マコーミックです)」とケニーが紹介を終えた瞬間「キャー!カワイイーーー!!」
生徒達がネギが最初に来た時と同様に4人に抱きついたり触ったりする「皆さん!ちょっと!」「スタンくんだっけ?どこ州から来たの!?」まき絵がスタンに聞く「コっコロラド州ですけど」
「コロラドってどこ!?」「アメリカ南部・・・」スタン達は今までこんな経験をした事がなく困っていた
ケニーは特に人気が高かった「ねえ?このパーカーってどうなってんの?」明石裕名がケニーのパーカーを触る「(ちょっちょっと触らないでくださいよ!)」
「皆さん4人とも困っているじゃないですか!落ち着いて下さい!」そこへカートマンが来る「ミスタースプリングフィールド!どうにかして下さいよ!」
「わっ分りました・・・はっはっ」「ネギーーー!我慢してーーー!」このパターンを分っている明日菜はネギに近づくが
「ハークション!」バリバリバリ!ネギのクシャミで風魔法が暴走しカートマンの服が破ける「ギャアアアアアアア!!」カートマンの悲鳴が響く
425マロン名無しさん:2008/04/17(木) 20:13:20 ID:zj6ICvz6
サウス×ネギまの作者です
とりえず続きはネタが出来次第書きます
426グラインドハウス支配人:2008/04/17(木) 22:07:13 ID:???
お待たせ致しました。
ただいまから、Capter6を上映致します。
ごゆっくり、お楽しみ下さい。

                  グラインドハウス支配人
427ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:08:07 ID:???
Capter6「モーテル」

どのくらい歩き続けたのか……。
夕日はすでに、荒野の中へと沈み、暗闇が辺りを支配していた。
わたくし達は無言のまま荒野を歩いていた。
会話など必要なかった。
不思議な事に、たった一日でわたくし達の絆は深い物になっていた。
言葉など要らない、要るのは互いの存在だけ。

岩肌の露出した丘を登ると、明るいネオンのモーテルが見えた。
明らかに安宿だが、文句を言える余裕などない。
以前のわたくしならば、あんな安宿など死んでも泊まりたくないと、駄々をこねていただろう。
けれども、今のわたくしには、やっと訪れた安らぎの場に思え、有難かった。
モーテルには、何台もの大型のトレーラーが駐車しており、ハイウェイを通るトレーラーの運転手が良く利用するのだろう。
わたくし達は各々が持っている銃を見られないように隠しながら、モーテルまで近づいていった。
管理人らしき人物は場を離れているようだ。

「今がチャンスです。無人の部屋に忍び込みましょう。」

文句があろう筈もなかった。
ジムは、窓から部屋の中を見て、無人かどうかを確かめていた。
いくつか見て回ると、どうやら無人の部屋を見つけたようで、部屋の窓に近寄ると、窓を開けた。
窓は簡単に開いた。
……ここの経営者は、このモーテルの警備システムを把握しているのだろうか?
簡単に入り込めたら、いくらでも不審者が侵入してしまう。
だが、そんな心配はいくらしても無駄だという事はわかっている。
わたくしは銃を持つ手を硬く握りしめた。
自分の身は自分で守れ―――ここに来て、イヤという程教わった教訓だった。
ジムは窓から部屋に侵入すると、ドアの施錠を外し、ドアを開けてわたくしを中に招き入れた。
428ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:09:07 ID:???
「お嬢様。部屋の電話で、別荘のホテルに電話を……。」

言われなくても、わたくしは既にベッドの横に備え付けてある古い電話機に向かっていた。
受話器を取ろうとした瞬間、わたくしは意気消沈してしまった。
怪訝に思ったのだろう、ジムが声を掛けてきた。

「……お嬢様?」

わたくしはジムの疑問に答えた。

「この電話……フロント専用ですわ。」

「……そんな!?」

ジムの落胆する声が部屋に響いた。
わたくしだって同じ気持ちだ。
けれども、物は試し、と受話器を取った。
電話機のたった一つしかないボタンを押すと、受話器からコール音が鳴った。
けれども、いつまでたってもフロントは電話を取らない。
やはりフロントには誰もいないのだ。
再び落胆すると、受話器を置いた。
わたくしは無言で首を振った。

「……クソっ!」

ジムは荒い息を立て、怒りを部屋の壁にぶつけた。
何度も何度も、拳を壁に打ち続けていた。
ジムは荒い息をようやく落ち着かせると、わたくしにこう言った。
429ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:10:21 ID:???
「お嬢様はここで休んでいてください。僕は近くに電話がないか探してきます。」

「ジム……。」

わたくしは急に不安になり、ジムの胸に飛び込んだ。

「ごめんなさい……。わたくしのせいで……こんな事に……。」

ジムは暖かい笑みでわたくしを向かえると、優しく頬を撫でてくれた。

「お嬢様のせいではありませんよ……。責任を感じる必要はありません……。今は……前だけを向きましょう。」

ジムの添える手を、わたくしは握りしめた。
自然と涙を嗚咽が漏れた。

「ジム……!ジム……!」

わたくしの心は崩壊寸前だった。
アメリカに来てから、恐怖の連続だった。
およそ中学生が味わう事のない恐怖を、突然不条理に味あわされた。
それでも……それでもジムがいてくれたから……わたくしは生き延びる事が出来た……。
ジムがいなかったら、わたくしは既に心身ともに死んでいたはずだ。
……既にわたくしにとって、今やジムが唯一の心の支えだった。
そんなジムがわたくしの傍から離れようとしている。
そう思っただけで恐ろしくなった。

「大丈夫ですよ、お嬢様……。」

そう言って、ジムはわたくしの溢れる涙を手で拭ってくれた。

「……15分で戻ります。……待ってて下さい。」
430ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:11:29 ID:???
ジムはそう言うと、わたくしを身体から離すと、ドアノブに手を掛けた。

「……ジム……。」

ドアを開けると、ジムは振り返り、わたくしを見つめ返した。
気丈にも、爽やかで朗らかな笑顔で……。

「大丈夫ですよ……お嬢様。」

……わたくしは、その時の、ジムを笑顔を忘れる事が出来ない。
ジムはわたくしを励ますように、笑顔のまま部屋を出た。
急に部屋にひとり取り残されたわたくしは、やり場のない不安を胸に抱えたまま、ベッドに倒れこんだ。
そして、ひとり部屋の中で、泣いた。
わたくしはひたすら心の中で自分を責めた。
ジムはわたくしに、責めることはないと言ってくれたけれども……。
わたくしには、自分を責める事しか出来なかった。
短気でアメリカに来なければ、ジムを巻き込まずに済んだ……。
あの男に付け狙われるような事もなかった。
そして、いつものように、あの賑やかな学校のクラスメイトと、愛らしい先生と、楽しい笑顔に満ちた生活を送れたはずだ。
……それを捨て去ったのは、わたくしなのだ……。

(ごめんなさい……ごめんなさい……。)

ふと、目に砂埃が入った。
その時ようやく、わたくしの身体が誇りまみれになっていることに気付いた。
わたくしは身体を起こすが、まるで甲冑を背負ったかのように重く感じた。
それでも、わたくしは身体を起こし、シャワールームへと向かった。
ベッドの横に置いたリボルバーを手に取り、洗面台の前に立った。
……酷い顔をしている。
何度も泣きはらした顔をしており、涙の跡や、埃に塗れた汚い顔になっている。
……こんな顔でジムに抱きついたのかと思うと、恥ずかしくなった。
431ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:12:13 ID:???
涙をぬぐい、鼻をすすると、洗面台にリボルバーを置き、シャワールームの扉を施錠した。
ワンピースを脱ぐと、それを手にとって見つめた。
汗と砂埃……そして血に塗れ、すっかり美しさを失っている。
靴とキャミソールとショーツも脱いで、身に纏う物を一切排除した。
バスタブに入ると、ノブをひねって、シャワーからお湯を頭から被った。
バスタブの排水溝に泥の濁った水が流れていく。
……わたくしはただ、バスタブの上に突っ立ったまま、頭からお湯を浴びるだけだった。
何を考えるでもない、ただ虚しい気持ちを胸に抱いたまま、亡霊のように立っていた。
……はやく帰ってきて欲しかった。
……ひとりになることが、これほど孤独で、恐ろしく感じたのは初めてだった。
もう二度と戻ってこないのではないか、そんな気すらしていた。
わたくしは、怖そうな心を必死に奮い立たせて、自分に言い聞かせた。

(あやか……ジムを信じるのです。ジムはいつだって……わたくしの味方でしたわ。)

ジムを信じる他はない。
たったそれだけの事なのに、それを信じればいいだけなのに、今にも心が折れそうな程不安だった。
わたくしは思い立ったかのように、バスタブから出ると、濡れた身体のまま洗面台に向かって対峙した。
雫が滴るわたくしの裸体は、まるで痩せ細って今にも死んでしまいそうな程、貧相に写っていた。
ロングの髪が肌に張り付くのも構わず、わたくしは洗面台に置いたリボルバーの上に手を置いた。
そして祈った。
さながら、リボルバーは聖書か十字架のようでもあり、頭からお湯を被ったわたくしはバプテスマの洗礼を受けた巡礼者のようでもあった。

(信じるのです……ジムを……信じるのです……。)

何度も……何度も……自分に言い聞かせた。
432ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:14:56 ID:???
そしてリボルバーを手に取ると、鏡に写った自分の額に銃口を向けた。
鏡に写ったわたくしも、銃口をこちらに向けている。

「…………バン…………。」

わずかに漏れるような声で、そう呟いた。
リボルバーを再び洗面台に置くと、汗で汚れたショーツとキャミソールとワンピースを着た。
そしてすっかりくたびれた靴を履いて、洗面所から出た。
洗面所から出ると、ベッドの横の時計を見た。
……それを見て、わたくしは急に不安に駆られた。
必死に自分に言い聞かせていた事が崩れそうになった。
あの時……ジムが部屋を出てから……すでに15分以上経っていた。
約束の15分が過ぎても……ジムは戻ってこなかった。

「…………ジム?」

たったひとりきりの部屋で、わたくしはジムを求めた。

「…………ジム?」

なぜ戻ってこないの……?
わたくしは、嫌な予感が脳裏に浮かぶのを必死で消そうとした。

(そんな事……ジムは必ず戻ってきますわ……そう申していたでしょう……!)

さっきまでそう言い聞かせていた事が、まるで現実味の無い絵空事のような気になっていた。
わたくしは待ち続けた。
けれども、どんなに待っても、ジムは戻ってこなかった……。
どんなに待っても……ジムは戻ってこない……。
433ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:17:18 ID:???
「……ジム……。……ジム……!」

とうとう、不安が心を支配した。
不安と恐怖に駆られ、わたくしはリボルバーを持って部屋を飛び出した。
部屋を飛び出すと、大型のトレーラーが目の前を横切っていた。
とっさに、後ろに銃を隠した。

「…………ジム?」

トレーラーが並ぶ駐車エリアと、それを囲むモーテルの部屋の間を、わたくしは彷徨った。
ひたすら、ジムの名を呼びながら。

「…………ジム?」

すると、1台のトレーラーが駐車エリアから出て行った。
……その時、わたくしの目に信じがたくて恐ろしい光景が姿を現した。

「ジムっ!!!!」

わたくしは思わず叫んだ。
ジムが……あのジムが……二台のトレーラーに、鎖で両手両足を繋がれ、宙吊りになっていた……。
まるで橋のように、二台のトレーラーの間に、ジムの身体が引っ張られ、揺られているのだ。
ジムは苦悶の表情でわたくしを見つめていた。
恐ろしい光景だった……。
あの鎖で繋がれている2台が離れた瞬間……ジムの身体は……。

「ジムっ!!!!いやぁあ!!!!!ジムっ!!!!」

急いでジムの元に駆け寄った。
ジムはハンカチかバンダナのような物で口を塞がれ、満足にしゃべる事も出来なかった。
434ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:18:25 ID:???
「お、お嬢様……!」

「ジム……!いやぁ……!ジム……!」

自然と涙と嗚咽が漏れた。
涙で揺れる視界に構わず、ジムの両手を縛りあげている鎖を解こうとした。
けれども、鎖は鋼鉄製で、何重にもジムの両手両足を縛りあげている。
おまけに、南京錠で鎖が外れないように施錠されていた。
わたくしの力では、到底ジムを解放することなど出来なかった。

「ジム……ジム……。」

涙で顔を歪ませ、ジムの身体に寄り添うことしか出来なかった……。
……すると、ジムの足の方に繋がれているトレーラーが、けたたましい音を立てた。
そしてエンジンを吹かす音がすると、わずかにトレーラーが前に進んだ……。
次の瞬間には、ジムの身体は跳ね上がり、しなった。

「ヴゥ……ウウウウウウアアアアッ!」

ジムの悲痛な声が上がった。

「いやあああああああああああっ!」

……その時、わたくしはジムの身体が引き裂かれると思った。
だが、すぐに、トレーラーは停止した。
ほんのわずか前に出ただけだった。
だが、さっきより、より一層ジムの身体は張り詰められていた。
わたくしは、動き出したトレーラーの方を向いた。
……トレーラーのサイドミラーに……ジョン・ライダーの顔が写っていた。
435ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:19:24 ID:???
わたくしは、ジムをしばらく見つめると、トレーラーに身体を向け、歩みを進めた。
……ジムを助けるには、あのトレーラーを止めなくてはならない。
……それはつまり、あの男と対峙するという事なのだ。
リボルバーのグリップを持つ手に力が入った。
わたくしと……ジョン・ライダーは、サイドミラーを隔てて顔を向けあっていた。
トレーラーの助手席のドアに近づくと、わたくしは勢いよく開けた。

「止めなさい!!!!」

そう言うのと同時に、銃をジョン・ライダーに向けた。
その時、改めてジョン・ライダーの姿を見た。
あの何度も見せたあの嫌らしい笑みは消え去り、顔中を汗で滴らせていた。
いつもとはまるで違っていた。
あのジョン・ライダーが、何かに追い詰められているかのように、冷や汗をかいて、緊迫した顔をして前方のフロントガラスを見ているのだ。

「出来ない……。」

目を見開いてわたくしに振り返るジョン・ライダーは、余裕のない声でそう言った。

「エンジンを止めるのです!!!!」

ジョン・ライダーは汗を滴らせながら、自分の足元を見た。

「……この車のクラッチは気難しくてな……。」

そういうと左膝を小刻みに上げ下げした。
そのたびにエンジンはうなり声をあげ、わずかにトレーラーは前に進んだ。
そして、……ジムの悲痛な声があがった。

「……半クラッチだ……!」

ジョン・ライダーの額に流れる汗が、顔を伝わり、顎から滴り落ちた。
436ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:20:30 ID:???
「撃ちますわよ!!!!」

わたくしは、おそらく、生涯でこの時より前に、こんなに気性を荒立たせ、ヒステリーのような怒鳴り声を上げた事はなかった。
だが、ジョン・ライダーはわたくしの脅しに、まったく変わらない態度で、こう切り替えした。

「……足が離れてトレーラーが動き出すぞ……?」

それは、ジムの死を意味していた。

「……乗れよ。」

ジョン・ライダーはそう促した。
余裕などない……切迫した表情だった。

「……乗れよ!!!!」

わたくしが躊躇しているのを見て、ジョン・ライダーも気性を荒げ、吠えた。
それに気圧されて、わたくしは震える足で段を上り、トレーラーの助手席に座った。
その際に、何度も何度もジムを振り返った。
ジムの悲痛な声を上げる度に、わたくしは心が張り裂けそうになった。

「……閉めろ。」

ジョン・ライダーの促しに、今度は躊躇なく従った。
トレーラーは密室となり、わたくしとジョン・ライダーだけの世界になっていた。
そしてもはや、ジムの命は、ジョン・ライダーの気持ち次第……一挙手一投足次第だった。
437ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:21:22 ID:???
「エンジンを止めて……。」

「…………。」

「お止めなさい!」

ようやく、ジョン・ライダーは笑みを浮かべた。
だが、それは眼球を見開き、顔を引きつらせた、今まで見た一番恐ろしい笑みだった。

「できない……。」

その言葉に、わたくしの声は力を失っていった。

「できますわ……。」

「ムリだ……。できない……。」

わたくしの声は、もうほとんど懇願に近かった。

「異常ですわ……。」

わたくしのその一言に、ジョン・ライダーは過敏に反応した。

「異常だと……?まだ何もわからないのか……?」

わかるわけがない……!

「一体何が望みなんですの!!!!」
438ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:22:32 ID:???
わたくしは叫んだ。
すると、ジョン・ライダーは、こう答えた。

「銃を突きつけろ……。ここだ……。」

そう言って、右手で自分の額を叩いて指した。
わたくしは促されるように従った。
すると、目にも止まらない早さでリボルバーの銃口を掴むと、自分の額に押し当てた。
わたくしは思わず、悲鳴を上げた。

「……チャンスだぞ……?泣き虫の恋人を助けられるぞ……?」

「やめて!!!!言わないで!!!!」

涙が溢れ出て止まらない。
本当は、この男を殺したい……。
殺したくてたまらない……。
しかし、そんな事をすれば……。

「俺を止めてみろ……。俺を止めてみろ……。俺を止めてみろぉおおお!!!!」

ジョン・ライダーは叫んだ。
それは悲痛なまでの叫びだった。
挑発しているようにも聞こえるが……わたくしにはまるで『自分を止めてくれ』、と懇願しているようにも思えた。

「"I want to die. "(死・に・た・い)」

ジョン・ライダーに押し付けている銃口が、額を何度も歪ませている。

「さぁ……やれっ!!!!」

ジョン・ライダーの悲痛な叫び声が上がった。
439ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:23:46 ID:???
その時、外からサイレンの音が鳴り響いた。
警察のサイレンだった。
わたくしはフロントガラスから外を見た。
何台ものパトカーがモーテルに入ると、わたくし達のトレーラーを囲むように停止し、何人もの警官が降りてきた。
おそらく事態の異様さに気付いた、管理人か部屋にいる人間が通報したのだろう……。
警官達はパトカーから降りると、ジムの処刑場となってしまっているこの状況を把握したのか、わたくし達に銃を向けていた。

「警察だ!!銃を捨てろ!!」

トレーラーの中で銃を持っているのは……わたくししかいない。
だが、わたくしは銃を捨てることなど出来なかった。
今、銃を捨てたら……。

「……あんな奴ら、ほうっておけ。」

何人もの警官が、銃を捨てろと口々に叫んでいた。
……もうわたくしには、懇願することしか出来なかった。

「……お願い……エンジンを止めて……。」

「……なら、早く撃てよ……。さぁ、早く……!」

「できませんわ……。」

ジョン・ライダーはまるで脅すかのように、またクラッチを少し戻し、トレーラーを前進させた。
ジムの悲鳴があがり、……ついにわたくしの心は折れた。

「……お願い……彼を傷つけないで……放してくださいまし……。」

たったその一言だけ言うと、わたくしは力を失い、銃を座席に降ろした。
わたくしは、座席に手をつき、……ほとんど土下座の状態で懇願していた。
440ヒッチャー:2008/04/17(木) 22:25:52 ID:???
「……お願い……彼を……傷つけないで……お願い……。」

ジョン・ライダーは、わたくしのその姿を信じられないといった表情で見ていた。
こんな顔をするジョン・ライダーを見たことがなかった。
そしてみるみる……失望と怒りの表情へと変わっていった。

「クソぉぉっ!」

わたくしは、その怒号を全身に浴びるしかなかった。

「……役立たずめ……。まるでカスだ……。失望したぞ……!?」

そう吐き捨てた。
…………そして、ギアを動かし、エンジンを吹かした……。

「いやああああああああああああああああああ!!!!!!」

トレーラーが前進し…………ジムの悲鳴が上がり…………そして…………肉の引き裂かれる音がした。

「いやああああああああああああああああああ!!!!!!あああああああああああああああああ……!!!!!!」

それが何を意味するのか…………わたくしは想像もしたくなかった。
441グラインドハウス支配人:2008/04/17(木) 22:28:36 ID:???
以上でCapter6の上映を終了致します。
次回は……いよいよLastCapterの上映です。
この恐ろしい物語に、ついに決着の時がおとずれます。
次回上映まで、しばらくお待ち下さい。

ご感想、お批判、お待ちしております。

                     グラインドハウス支配人
442マロン名無しさん:2008/04/17(木) 22:50:27 ID:???
い、いやぁぁぁ!!
443マロン名無しさん:2008/04/17(木) 22:58:07 ID:???
444マロン名無しさん:2008/04/17(木) 23:36:22 ID:???
乙、どちらも最悪の状況になったな
待ってるよ
445グラインドハウス支配人:2008/04/19(土) 15:58:42 ID:???
お待たせ致しました。
ただいまより、LastCapterの上映を開始致します。

最後まで、ごゆっくりお楽しみください。

                    グラインドハウス支配人
446ヒッチャー:2008/04/19(土) 15:59:18 ID:???
LastCapter「ヒッチャー」

どのくらいの時が過ぎたのだろう。
わたくしは医師の診察を受けていた。
医師はわたくしの眼球にライトで当て、瞳孔をしらべていた。

「とりあえず、問題はないが……あとでちゃんとした病院で検査したほうがいい。」

わたくしはその言葉を、無言で、無表情で、ほとんど放心状態で聞いていた。
医師はわたくしが何も言わないのを見て、それ以上口を出さなかった。

「……彼の事は残念だ。気の毒にな……。」

エスターリッジ警部補が声を掛けてきた。

「何か出来るか?」

わたくしは無言のまま首を横に振った。

「我々にも、どうする事もできなかった……。」

……それは、わたくしも同じだった。
447ヒッチャー:2008/04/19(土) 15:59:51 ID:???
監視モニターが、留置所から警官に連れられて出てくるジョン・ライダーを写していた。
あの後警察によって、わたくしは保護され、ジョン・ライダーは逮捕された。
そして、別々の車に乗って、カリフォルニア州警察に連れて行かれたのだ。
そこで初めてエスターリッジ警部補に会った。

「あの男は何者ですの……?」

エスターリッジ警部補と共に監視モニターの映像を見ていたわたくしは、問うた。

「わからん。入獄記録、運転免許証、出生証明書、社会保障番号すらない。指紋もデータベースから弾かれる。名前すらわかっていない。……奴はまるでゴーストだ。」

そして、ジョン・ライダーと名乗った正体不明の男は、わたくし達の目の前にある取調室に連れて行かれた。
わたくしとエスターリッジ警部補は、取調室のマジックミラーの内側から、その様子を見ていた。
取調室の内側には警官が数人と、私服の男性がいた。
私服警官なのか、弁護士なのか、どちらなのかはわからなかった。
ジョン・ライダーはあの紺のコートを脱がされて、手錠をはめられ、腰縄を付けられていた。

「気分はどうだ?」

私服の男が聞いてきた。

「……疲れた……。」

ジョン・ライダーは、まるで今までの暴走がストップしたかのように、冷静な態度で答えた。

「あの男には、我々は見えない。」

エスターリッジ警部補は、当たり前の事を、まるで安心して聞かせるかのように、わたくしに言った。
わたくしはマジックミラーに近づいて、こう言っていた。

「あの男と……話をさせてくださいまし……。」
448ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:00:29 ID:???
私服の男が、ジョン・ライダーに聞いてきた。

「名前は?」

ジョン・ライダーは答えなかった。
まるで自分の存在は無であるかのように。

「さぁ、名前を言うんだ!」

私服の男は痺れを切らしたかのように叫んだ。
その質問を代わりに答えるかのように、わたくしの口は自然と開いた。

「……ジョン・ライダー。」

エスターリッジ警部補が怪訝な顔でわたくしを見た。

「……今、なんて言った?」

取調室のジョン・ライダーが、わたくしの言葉を、まるで呼ばれたかのように、見えないわたくしの方に顔を向けた。

「あの男の名前は……ジョン・ライダー……。」

わたくしとジョン・ライダーはマジックミラーを通して見つめ合っていた。
449ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:01:19 ID:???
私服の男が別の事を尋ねてきた。

「逮捕歴は?」

ジョン・ライダーは、顔を私服の男の方に戻すと、

「調べたんだろ?なら……それが答えだ。」

と、挑発的な言葉を吐いた。
エスターリッジ警部補はしばらく悩んでいた様子だった。
14歳のわたくしを、殺人犯と会わせていいものか、そんなところだろう。
だが、意を決したかのように、こう言った。

「……いいだろう、着いて来い。」

わたくしは頷いた。
取調室での取調べは続いていた。
私服の男は、次にこう聞いてきた。

「出身地は?」

ジョン・ライダーは首を傾げながら答えた。

「あの娘から、何も聞いてないのか?」

私服の男は首を横に振った。

「なら教えてやる……。」
450ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:06:38 ID:???
ジョン・ライダー少しだけ前に身を乗り出すと、

「…………ディズニーランドだ。」

そう答え、あの嫌らしい笑みを浮かべた。
私服の男は顔を赤くさせて怒りに震えていた。
エスターリッジ警部補は取調室のドアを開け、ノックした。

「ちょっといいか?」

ジョン・ライダー以外の全員がエスターリッジ警部補の方に向いた。

「……入れ。」

エスターリッジ警部補の促しで、わたくしは取調室に入った。
ジョン・ライダーはわたくしの姿を見ると、驚いた様子でこっちを見た。
まるで、二度と会えないと思っていた友人に会えたような。
そして、懐かしそうに笑みを浮かべ、口を開いた。

「…………よう。」

わたくしはジョン・ライダーの方へ歩み寄った。
襲ってくるとは思わなかった。
手錠も腰縄もしてあるし、今この場でそんな事をするような男だとは思っていなかった。
わたくしは傍までくると、ジョン・ライダーに左手を差し伸べた。
ジョン・ライダーはそれを手錠のはめた両手で握り締めた。
そして、愛しげに、わたくしの手を優しく撫でた。
それは、まるで恋人にする仕草のように、優しくて心がこもっていた。
わたくしはジョン・ライダーに顔を寄せた。
ジョン・ライダーも身体を起こすように、顔を近づけてきた。
451ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:07:36 ID:???
そして、

スパーン!

、という音が、取調室に響いた。
わたくしの右手の甲が熱くヒリヒリと痛んだ。
それは、ジョン・ライダーの右頬も同じだろう。

「止めろ。……連れて来たのが間違いだった。」

エスターリッジ警部補は、わたくしがジョン・ライダーの顔をはたいたのを見て、すぐにわたくしの腕を掴んで、わたくしを取調室から追い出した。
わたくしは、追い出されるまで、ジョン・ライダーを見つめていた。
ジョン・ライダーは、叩かれた頬を愛しげに擦ると、嬉しそうな笑みを浮かべた。
エスターリッジ警部補は、取調室の椅子に座ると、ジョン・ライダーと対面した。

「……お前はイカレてるな。あの若者を……あんな殺し方をして……。さぞや快感なんだろうな?」

ジョン・ライダーは何も答えず、うわの空で聞いていた。

「捕まると分かっていたはずだ。……なぜあんな真似をした?……なぜだ?」

ようやくジョン・ライダーは顔をエスターリッジ警部補に向けると、呟くように答えた。

「…………悪いか?」

エスターリッジ警部補は、帽子を机の上に置いた。
452ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:08:34 ID:???
「……今までに何人殺した?」

ジョン・ライダーはしばらく考えた後、答えた。

「…………覚えてない…………。」

「……まぁ、いい。……カリフォルニア州には死刑があるぞ。…………平気そうだな?」

「…………悪いか?」

その言葉に、エスターリッジ警部補は鼻で笑った。

「……手錠はきつくないか?」

ジョン・ライダーは手首にはめられた手錠を擦りながら答えた。

「……きついな。」

「そうか、やっぱりな。新品だからな。」

エスターリッジ警部補は立ち上がると、ジョン・ライダーに近寄った。

「だんだんなじんでくる。」

そう言うと、ジョン・ライダーの手錠を掴み、硬く締め付けた。
手首に手錠が食い込み、ジョン・ライダーはわずかに、苦悶の表情を浮かべた。

「俺を見ろ……。」

ジョン・ライダーはエスターリッジ警部補の方へ顔を上げた。
453ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:09:06 ID:???
「俺の管轄であんな真似をしやがって……。一日も早い死刑を望んでるぞ……。」

エスターリッジ警部補は帽子を拾って被り、取調室のドアを開けた。

「法廷で会った時は……もっと仲良くしようや。」

そう言うと、取調室から出て行った。
ジョン・ライダーはその言葉を、あの嫌らしい笑みを浮かべて聞いてた。

ジョン・ライダーの移送が始まった。
衣服を青の囚人服に着替えさせられ、胸に防弾チョッキを着せられた。
そして、両腕をそれぞれ警官が抱えられ、廊下を歩き出した。
わたくしはエスターリッジ警部補に連れられ、外に出た。
日は傾き始めていた。
あの夜から、わたくしは警察の医務室で治療を受けていた。
だが、もう一日が終わろうとしているとは思えない程、時が立つのが早かった。
出入り口の門には、報道陣が詰め掛けていた。
わたくしの知らない所で、メディアは注目していたのだろう。
出てきた時、フラッシュの光を浴びた。

「あの車に乗るんだ。」

エスターリッジ警部補は止めてある警察車両のSUVを指した。
警部補は運転席に乗るが、わたくしが車に乗らないのを怪訝に思ったのだろう。

「どうした?」

そう言った。
454ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:09:51 ID:???
「もう少し……お待ちくださいまし。」

わたくしは、待った。
あの男が現れるのを。
報道陣のフラッシュが再び激しくたかれた。
フラッシュの光の中から、ショットガンやライフルを持った警官達に囲まれながら、ジョン・ライダーは出てきた。
両手両足に手錠をはめられ、無表情で報道陣の前を横切った。
そして、護送車に乗せられた。
…………その時、ジョン・ライダーはわたくしの方を見た。
そしてそのまま、護送車の扉は閉じられた。

「……行くぞ。」

エスターリッジ警部補の促しに、わたくしはようやく従った。
助手席に座ると、エスターリッジ警部補はエンジンを掛けた。
そして、護送車の後を追いかけるように、外に出た。

空は赤く染まり始めた。
護送車とわたくし達の乗るSUVは荒野のハイウェイを走っていた。
エスターリッジ警部補は漏らすように口を開いた。

「まさか本当に現れるとは思わなかった……。ただの都市伝説だと思ってた……。」

「伝説……?」

わたくしはその言葉が気にかかり、口を開いた。

「……ハイウェイに現れて、乗せた相手を殺して回るヒッチハイカー……。『ヒッチャー』の伝説だ。」

「……ヒッチャー。」

「だが、奴は伝説の存在じゃない。撃たれれば死ぬ人間だ。」
455ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:17:35 ID:???
エスターリッジ警部補はわたくしを一瞥すると、声を弱めた。

「……あやか。すまなかった……。もっと早くに気付くべきだった。」

エスターリッジ警部補の言葉を、わたくしは静かに聞いていた。

「……ジムはもう戻ってはこないが……本当にすまなかった。」

心からの謝罪だと、声でわかった。

「ここからは法廷が奴を裁く。ジムの仇は取れるはずだ。」

わたくしは口を開いた。

「……ムリですわ。あの男は素直に裁きを受けるような人間ではありませんわ。」

エスターリッジ警部補はわたくしのその言葉に、むきになって切り返した。

「いいか……!もう君は関係ない……ただの被害者なんだ。奴にこれ以上関わることはない。わかったか……?」

わたくしはその言葉を受け入れる事が出来なかった。
……もうそういう問題ではない。
自然とエスターリッジ警部補の銃が目に入った。
あの何度も手にした銀色のリボルバーと同じ銃だった。
……その瞬間、わたくしの心は決まった。
456ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:18:18 ID:???
「……窓を開けてくださいませんこと?」

「あぁ、いいだろう。」

エスターリッジ警部補の視線が窓ガラスに向けられた。
左手をハンドルから離した。
……わたくしはその隙に、エスターリッジ警部補のリボルバーをベルトから抜き取ると、銃口を頭部に向けた。

「……車をお止めなさい。」

わたくしに銃を向けられた事に気付いたエスターリッジ警部補は冷静に答えた。

「……やめるんだ。馬鹿な真似は止せ。」

わたくしは撃鉄を降ろした。

「……車をお止めなさい。」

SUVは速度を緩め、路肩に止まった。
護送車はハイウェイの奥へと遠ざかっていった。

「分かった。……何を考えてる?」

わたくしはしずかに答えた。

「……お降りなさい。」

エスターリッジ警部補はわたくしの考えがわかったようで、こう答えた。
457ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:19:02 ID:???
「馬鹿な真似は止せ……。君が殺されるぞ……。およそ中学生がやる事だとは思えない……。」

「……これは、わたくしと……あの男の問題ですわ。あなたを巻き込むわけにはいきませんわ……。」

「君は分かってない……!」

「……いいえ、分かってますわ……。」

エスターリッジ警部補は沈黙していた。
そして、そのままシートベルトを外すと、運転席から降りた。
わたくしは運転席に、席を移動した。

「……そんな事をしても、ジムは戻ってこないぞ……?」

「……それも、……分かってますわ……。」

シートベルトを装着して、クラッチとブレーキを踏みながら、キーをひねった。
エンジンが掛かると、ギアをローに入れた。

「……それでは……御機嫌よう……。」

クラッチを戻して、ゆっくりと車を発進させた。
エスターリッジ警部補と別れ、わたくしはハイウェイを進み続けた。
458ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:20:01 ID:???
そしてひたすら、奥へと消えた護送車を追いかけた。
護送車を見つけると、わたくしはリボルバーの弾丸を確認した。
……すべて入っている。
……わたくしは決意した。
…………もう迷わない。
護送車に近づくと、突然銃声が聞こえた。
一発……二発……。
そして三発目で、護送車のドアに無数の散弾の穴が出来た。
ドアが開くと、ショットガンを手にしたジョン・ライダーが姿を現した。
わたくしを見つけると、嬉しそうにあの嫌らしい笑みを浮かべた。
わたくしもジョン・ライダーに向かって、リボルバーの銃口を向けた。
すると、勢い良くジョン・ライダーはわたくしの車に向かってジャンプした。
その瞬間、護送車は横転し、転がった。
ジョン・ライダーはわたくしの車のフロントガラスを割り、車の中へと入ってきた。
ガラスの破片が足元に散らばる。

「…………よう。」

ジョン・ライダーはショットガンを再装填すると、銃口をわたくしに向けた。

「……さぁ!止めてみろ!」

わたくしはアクセルを踏んで加速させると、一気にブレーキペダルを踏んで急ブレーキをかけた。
重心が前に移動し、ジョン・ライダーの身体は車外に放り出された。
459ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:20:56 ID:???
エンジンは停止し、沈黙が辺りを包んだ。
わたくしは身体に食い込むシートベルトの痛みに、顔を歪めた。
そして、前方を見た。
前方には、倒れているジョン・ライダーと、横転した護送車だけがあった。
すると、ガラスの破片で切ったのだろう、頭から血を流したジョン・ライダーは、ゆっくりと身体を起こし、立ち上がった。
地面に落としたショットガンを拾うと、わたくしに銃口を向けた。

「……っ!」

わたくしはとっさにフロントガラスから身体を隠した。
次の瞬間には、ショットガンの散弾でフロントガラスは撃ち抜かれ、バラバラになった。
隠れなければ、その一撃で絶命していた……。
わたくしは、フロントガラスから身を乗り出さないように隠れながら、クラッチを踏みエンジンキーを捻った。
だが、なかなかエンジンはかからなかった。
その間にも、ジョン・ライダーはショットガンで車を撃ちぬいて来た。
ボンネットやランプを撃ち、徹底的に破壊しようとしていた。

「……早く……!早くかかって!」

破壊された車のボディが破片となり、何度もわたくしの身体に降り注ぐ。
何度もクラッチを踏み、エンジンキーを捻った。
……そして、何度目かの挑戦で、やっとエンジンが始動した。
エンジンが唸りを上げる。
わたくしは身体を起こし、クラッチを戻した。
フロント越しに、ジョン・ライダーの姿を見た。
腕を広げ、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
460ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:21:55 ID:???
「……さぁ!来いっ!」

「うわああああああああああああああああ!!!!」

わたくしは叫びながら、アクセルを踏んだ。
アクセルを一気に踏むと重心は後ろに引っ張られ、勢い良く車は前に進んだ。
そして、車はジョン・ライダーを跳ね飛ばした。
大きく弧を描き、ハイウェイに落ちると、転がって止まった。
車は再びエンジンを停止して止まった。
ジョン・ライダーは、震えながら身体を起こそうとするが、力を失い倒れた。
……そして、呼吸が止まった。
わたくしは銃を持って車を降りると、ジョン・ライダーに近づいていった。
傍に立ち、見下ろすが、ピクリとも動かない。
461ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:23:06 ID:???
……本当に、息絶えたのだ。
そう思うと…………なぜか涙が出てきた。
どうしてかわからなかった……。
なぜか悲しくなった……。
憎い男なのに……。
わたくしはハイウェイに膝をつくと、左手でジョン・ライダーの髪を撫でた。
……この男は、わたくしにとって恐怖そのものだった。
……それでも、この男とは……絆が生まれていた。
それを認めると、涙が出て止まらなかった……。
……この男に出会わなければ、何も変わらなかっただろう。
だが、わたくしは出会い、変わった……。
何があっても生き延びようとする意思を持った。
この男は、わたくしを強くしたのだ。
決して恐ろしいだけの存在ではなかったのだ。
わたくしを鍛え、強くした。
……そうか。
……わたくしはこの男を尊敬していたのだ……。
わたくしの心の中で大きな存在になっていたのだ。
決して普通ではない方法で、心を通わせていたのだ……。
だから……涙が出てきたのだ。
その存在を失ったから……。
462ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:23:45 ID:???
わたくしは今までの出来事を思い出した。
日本を発つ前の事。
アメリカでのトラブル。
ジムとの再会。
……そして、ジョン・ライダーとの出会い。
すべての出来事がまるで長い年月を掛けて作り出された思い出のように蘇った。
そして、隣には、息絶えたジョン・ライダーがいた。
最後に、わたくしは惜しむようにジョン・ライダーの髪を撫でると、立ち上がった。
ジョン・ライダーを背に、車に向かった。
……後ろから音がした。
そして、荒い息遣いが……。
……もう、何も言わなくてもわかっていた。
わたくしは振り返った。
荒い息で、ジョン・ライダーは立ち上がっていた。
まだ……死んではいなかった。

「……どうした?……もう終わりか……?」

弱々しいが、あの嫌らしくて……温かみのある、あの笑みを浮かべた。
すると、銃声が荒野に響いた。
……ジョン・ライダーが前のめりに倒れた。

「……ジョン……!?」

わたくしは思わず叫んでいた。
……初めて、あの男に向かって名を呼んだ。
ジョン・ライダーは膝をつき、立ち上げって、後ろを振り返った。
背後に、横転した護送車の運転席から、ドアを開けて身を乗り出した警官が、頭から血を流しピストルを構えていた。
463ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:24:51 ID:???
「この……化け物めっ!」

再び警官は発砲し、ジョン・ライダーを撃った。
だが、二発ともジョン・ライダーの着ている防弾ジャケットで防がれていた。
ジョン・ライダーは後ろによろけ、倒れながらも、懸命に立ち上がろうとしていた。
地面に落としたショットガンを拾い、立ち上がって構えた。

「……邪魔を……するなぁああああ!」

ショットガンの弾は護送車の真下に放たれた。
すると、地面が燃え出した。
おそらく、護送車の燃料タンクからガソリンが漏れ出て、それが引火したのだろう。
ジョン・ライダーはショットガンを捨てると、わたくしの方へ身体を向けた。
次の瞬間、引火したガソリンの炎が護送車を襲った。

「う、うわあああああああああ!!!!」

警官の悲鳴が上がり、護送車は爆発炎上した。
爆発の炎の熱気に、身体が焼けそうな痛みを感じた。
だが、それにも構わず、ジョン・ライダーは炎上する炎を背に、わたくしに向かって歩き出した。
そして、おもむろに口を開いた。

「……俺の名を呼んだか?」

「えぇ…………ジョン・ライダー。」

嬉しそうな笑みを浮かべると、ジョン・ライダーは防弾ジャケットを脱ぎ捨てた。
464ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:25:42 ID:???
「……こんな物を着ていたらフェアじゃない。」

そして、ズボンに挿していたピストルを抜いて手に持った。

「……西部劇を観たことがあるか?」

「いいえ……。」

「……なら、簡単に教えてやる。……ただの早撃ちだ。……銃を床に置け。」

わたくしはそれに従った。

「……撃鉄は降ろしておけ。」

床に置いたリボルバーの撃鉄を降ろした。
ジョン・ライダーの持つ銃も、撃鉄を降ろして、床に置いた。

「後ろに離れろ……。遠くにだ……。」

わたくしはジョン・ライダーを見つめたまま、後ろに下がった。
足元に置いたリボルバーとの距離はどんどん離れていく。
ジョン・ライダーも、自分が置いた銃から後ろへ離れていった。
遠距離に対峙したわたくしとジョン・ライダーは、二挺の銃を挟んで向き合っていた。

「決闘だ……あやか。……俺を止めてみろ。」

「えぇ……。」
465ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:33:44 ID:???
荒野を静寂が支配した。
時折吹く風が、肌を刺激した。
荒野に立つ、二人。
命を賭けた決闘が始まった。
お互い、まだ動かなかった。
相手の出方をうかがっていた。
いつ、何時、ジョン・ライダーが銃を取りに走るかわからない。
それより遅れたら、わたくしの負けだ。
ジョン・ライダーより先に銃を取らなくてはならない。
わたくし達は沈黙に包まれた。
ヒリヒリとした緊張感が心を支配した。
指先がピクピクと痙攣し、汗が額から滲んで来た。

ほとんど同時だった。
わたくしとジョン・ライダーは、ほとんど同時に、銃に向かって駆け出した。
銃に近づくと、飛びつき、銃を掴んだ。
そしてそのまま前転とジョン・ライダーに銃を向けた。
二発の銃声がほとんど同時に、荒野に響き渡った。

気が付いたら、わたくしはハイウェイに倒れていた。
そして激しい痛みが、左肩を襲った。
今までに味わったことの無い、強烈な痛みだ。

「あ、あぁ……ああああああああああ!!!!」

苦痛に顔が歪み、涙が溢れ出た。
肩は異常な程熱くなっていた。
苦痛に耐えながらも、左肩をみると、穴が開いて血が溢れ出ていた。
銃で撃ち抜かれたのだ。
……わたくしは覚悟した。
二発目が来るに違いない。
そう思い、目を閉じて、覚悟を決めて、その時を待った。
466ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:34:19 ID:???
……だが、二発目が来ることはなかった。
わたくしは目を開け、苦痛に耐えながら身体を起こした。
そして……ジョン・ライダーを見た。
……そこには、完全に動きを停止したジョン・ライダーがいた。
膝立ちのまま、胸を撃ちぬかれ、胸の穴と、口から血を吹き出していた。
目は見開かれ、遠くを見ていた。

「……雪広……あやか……。」

ジョン・ライダーが口を開くと、その度に口から血が吹き出た。

「……やっと……俺を止めてくれたな……。」

そう言うと、ハイウェイに座り込み、後ろに倒れた。

「……ジョン……。ジョン……!」

わたくしは這いつくばって、懸命にジョン・ライダーの傍まで近づいていった。
ジョン・ライダーの身体を起こし、膝に頭をゆっくりと乗せた。
……彼は虚ろな目をしながら、全身を痙攣し、口からこぽこぽと音を立てながら血を吹き出していた。

「……ジョン……。ジョン・ライダー……。」

わたくしは彼の名を呼び続けた。
……今にも、彼の命は消えかけていた。

「……あやか……。俺は……臆病だった……。死にたかった……だが、自分で死ぬ勇気が無かった……。誰かに止めて欲しかった……。」

彼はうわ言のようにそう呟いた。
それは……死を目前にして、自分の胸の内を伝えたかった懸命で一途な思いだった。
467ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:35:36 ID:???
わたくしは再び涙を流していた。
そして、彼の髪を優しく撫でた。

「……わかってますわ。あなたは……自分で自分を止められなかったのですわね……。はやく……あなたの事を理解していればよかった。」

「俺は……お前に会えてよかった……。」

彼は、足元に転がっている自分の銃を拾うと、わたくしに差し出した。

「さぁ……とどめを差してくれ。」

わたくしはそれを受け取ると、彼の身体を抱き起こし、抱きしめた。
そして、銃口を彼のこめかみに押し当てた。
嗚咽を漏らしながら、銃の引き金に指を掛けた。

「……さようなら……ジョン。」

荒野に一発の銃声が響き渡った。
ジョン・ライダーは力を失い、わたくしの身体にもたれかかった。
頭部を撃ち抜かれたジョン・ライダーは目を見開いたまま、口から大量に血を吹き出し、力を失ってた。
完全に……ジョン・ライダーの命の炎が消えたのだ。
彼をハイウェイに寝かせると、左肩を押さえた。
わたくしはジョン・ライダーの死を確認すると、涙で溢れる目をぬぐった。
そして、わたくしは立ちあがった。
荒野のハイウェイはわたくし一人だけになった。
468ヒッチャー:2008/04/19(土) 16:36:18 ID:???
わたくしは歩き続けた。
撃ち抜かれた左肩をおさえなか、それでも懸命に歩いた。
ただ、一人、ハイウェイを歩き続けた。
それはまるで永遠に続く道を歩くような……そんな気がしてた。
夕陽が沈む太陽の光を浴び、歩き続けた。

……すべて終わったのだ。

そして、わたくしは力を失って、ハイウェイに仰向けに倒れた。
生きるか、…このまま死ぬか、それはわたくしにもわからなかった。


――― THE END ―――
469グラインドハウス支配人:2008/04/19(土) 16:41:21 ID:???
以上で映画「ヒッチャー」の上映を終了致します。
次回は「メイキング・オブ・ヒッチャー(所謂楽屋落ち)」をお送り致します。
撮影秘話など、本編の裏側をご紹介いたします。

また、次回は原作作品の販売も開始致します。
併せて、原作作品の予告編も上映致します。

その後、公開予定の作品の予告編も上映致します。

肩の力を抜き、リラックスしてお楽しみください。

そして、最後まで映画「ヒッチャー」をお楽しみ頂きまことにありがとうございます。
みなさまの励ましのお言葉で、いままで上映する事が出来ました。
まことに、ありがとうございます。

                                グラインドハウス支配人
470マロン名無しさん:2008/04/19(土) 20:36:43 ID:???
乙、そしてGJ、次回も期待して待っています。
471マロン名無しさん:2008/04/20(日) 13:07:55 ID:???
おお!乙でした!次もwktkして待ってる。
472マロン名無しさん:2008/04/20(日) 22:39:26 ID:BjfPNDUj
サウス×ネギま 07 今日は1本だけです
「へぇー、さすがアメリカの小学生ですねしずな先生」スタン達にいろいろな事がありながらも
何とか授業を終えたネギは職員室で英語の小テストの採点をしていた、スタン、カイル、ケニー、カートマン
の得点は100点だった、因みに最下位はバカレンジャー達だった、「私も驚きましたわ、まだ小学4年なのに中学生の学力についていけるなんて」
「だけど・・・明日菜さん達が相変わらずですね・・・」ネギは明日菜達の得点を見た得点は明日菜4点 楓6点 夕映9点 クーフェイ5点 まき絵 3点だ
「生きた英語でも教えてあげれば、ボクじゃ力不足ですし・・・」その時しずなは思いついたように言った
「そうですわ!ネギ先生、私にいい考えがありますわ!」「は・・・?」その頃ネギのクシャミにより制服が破れてジャージを着たカートマンは、スタンと一緒に廊下を歩いていた
「畜生!何だよ、さっきのは!」「オレだって分んないよ、イキナリお前の制服が破れるなんて」「(ミスタースプリングフィールドがクシャミした瞬間にだよね、カートマンの服が破れたの)」
「もう、元気だせよカートマン!でも、イキナリ小テストをやったけど簡単だったね」「当たり前だあんなオレたちの学校で小1の奴らでも出来そうな問題を出来ねーなんてどうかしてるぜ!」
「全くだな」「おーい!スターン!」「あ、ミスタースプリングフィールドだ」「どうしました?ミスタースプリングフィールド?」
「ねえ?一つ頼まれてくれないかな?君たちの力が必要なんだよ」「俺たちの力」スタンはネギの言葉の意味が分らなかった
473ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/21(月) 02:28:50 ID:???
お久しぶりです。間が空きましたが今回の投下入ります。

>>327

「姫様」
大宴会の翌々日、ネギ屋敷の庭で廉姫と又兵衛の姿を見たネギが片膝をつく。
声を聞きつけて表に出た刹那の顔に緊張が走った。
「マジか…」
千雨が、又兵衛の具足を目にして息を呑んだ。
「いくさでござるかな?」
一同が楓を見る。
「左様」
又兵衛が言う。
「大蔵井の軍勢がこちらに向かっているらしい、
今出て行くのは却って危険、野原一家や領内の女子供と共に
いちのくるわに逃れよ」
廉姫の言葉が、一同を緊張させた。
「来やがったか…」
千雨がぼそりと言った。
「どうやらもっと前から支度をしていたが、最近になって
大蔵井高虎殿が巻狩りの最中怪し気な忍びに命を狙われたとかで、
しばらくはそちらの探索を優先していたとの事だ」
又兵衛が言い、刹那と小太郎が顔を見合わせる。
「分かりました、用意してすぐに向かいます」
ネギが答えた。
「うむ」
又兵衛が言い、又兵衛と廉姫が引き揚げる。
474ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/21(月) 02:30:08 ID:???
>>473

ネギ・パーティーがいちのくるわ一階の広間に入ると、
そこは既に避難して来た女子供がひしめいていた。
「結構いるね」
円が言う。
「籠城の時、女子供はこのいちのくるわに避難するのが決まりなのだ」
廉姫が言った。
「籠城、ですか」
夕映がぽつりと言う。
「すいませんが、用意があるので一度屋敷に戻るです」
夕映が続けた。
「今、戻るのか?」
廉姫が言った。
「ご不審ならば屋敷の外まで見張りを付けていただいても結構。
仮に我らが敵方に捕まったとしても、その時は死んだものとして扱って下さって結構です。
その上で、余裕があれば、戻って来た時に受け容れて頂ければありがたいです。
我々は、こんな所では死にません」
「あいわかった」

「いくさ…戦争になるの…」
戻ったネギ屋敷の居間で、円が青い顔で言う。
「そう言う事らしいな」
千雨が言った。
「どうなるんだろう…」
夏美が言う。
「まあ、イザとなったら力ずくでも脱出するけどな…
けど、それこそ力ずくでやめさせた方が早いんと違うか?」
小太郎が言った。
475ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/21(月) 02:31:32 ID:???
>>474
「それは論理的にも倫理的にも最悪の結果を招く事になるです」
夕映が言う。
「我々がこの時代のいくさに介入すると言う事は、
極端な話、核兵器の独占を宣言するに等しいものがあります。
この乱世、あらゆる思惑の中に巻き込まれて収拾の付かない事になるです」
「そうです、魔法使いとしてもそれは許されません。
魔法使いである事を知られない様に、自分の身を守るギリギリの所で押さえるべきです」
ネギが言う。
魔法使いとして当たり前の事を言うネギ。少し浮かない表情を見せる美砂を
円は見ていた。
「戦況はどうなんだ?」
千雨が言う。
「この話をしたかったんだろ?あの状況で戦況云々したらマジで斬られるからな」
「厳しいでござるな、探った限り、大蔵井と春日では国力に大きな差があるでござる」
楓が言う。
「その状況で籠城線と言うのは得てしてじり貧、
余程強い仲裁が入らなければどこまで条件闘争が通じるか、
或いは踏み潰されるかと言う事になるです」
「じゃあ、負けるって事?」
美砂が詰め寄る様に言った。
「但し、又兵衛殿は近隣にも聞こえたいくさ巧者、過去にも様々な武勲を立てて
小国春日にあって容易に攻め落とせぬものとの評判を勝ち得ているでござる」
「そうだよね、又兵衛さんいるんだよね」
美砂がほっとした様に言う。
「ああ、あのおっちゃんは強いで」
小太郎が言った。
476ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/21(月) 02:32:58 ID:???
>>475
「籠城線」ではなく「籠城戦」ですごめんなさい。
では続き

>>475
「桶狭間が成功すれば最高ですが、
又兵衛さん達が向こうの戦略にヒビを入れる程の効果を上げる事が出来れば
敵側の撤退を誘う事も出来るです」
夕映が言う。
「じゃあ、ぼちぼち戻るか?」
千雨が言う。
「外は見張られてる、この状況で余所者が城から出ようとして見ろ」
「スパイ容疑で即銃殺、って事だね」
和美がなるべく軽い口調で言った。
「それに、又兵衛さんが言った通り、今から出てったらそれこそスパイでもない限り
ドンパチのど真ん中に突っ込む事になりかねない」
千雨が続けた。
「で、ござるな、余り夜も更けぬ内に戻るでござるか」

今回はここまでです。続きは折を見て。
477ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/21(月) 02:40:19 ID:???
>>476
訂正続きですいませんが、
「又兵衛さんが言った通り」ではなく「廉姫様が言った通り」になります
ごめんなさい
478マロン名無しさん:2008/04/21(月) 02:55:19 ID:???
どちらも乙
479ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/21(月) 22:02:45 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>476

「行ったり来たりご迷惑をおかけするです」
「よい、よく間に合った、無事で戻って来てくれた」
「はい、ちょっとごめんちょっとごめん」
ネギ・パーティーが改めて避難所のいちのくるわ広間に入り込む。
「何だね、あんたら?」
「ああ、あん時の薬師の人」
「ドウモドウモ」
「♪」
「おや、コタロー君に夏美さん、この間はしんのすけ君とどうも」
「いえいえ」
「おうっ、カズマか」
「あはは、コタローさん…」
「騒ぎ終わったらまた相撲でもとろうか」
「おらぁ…」
「遠慮すんなや」
「そうだぞー風間君」
「おらぁカズマだぁ…」
「いたかしんのすけ」
美砂が言う。
「おっ、美砂おねいさん」
「しんのすけーっ」
「ほら、呼んでるよしんのすけ」
「ほーい、またねー」
480ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/21(月) 22:04:19 ID:???
>>479
「懐かれてんな」
千雨がぼそっと言った。
「とうとうそこまで対象年齢引き下げたか」
「あははー、ちうちゃんも好かれてるよーしんのすけにー」
「だーから、私はネットアイドルちうなんかじゃねぇーっ!」
「まだ言ってる」
「てか誰も言ってない」
「どう、どうどうどう」
注視の中で和美が言い千雨が咳払いをする。
「ねぇ母上、敵は強いのですか?」
「たいした事ありません、安心なさい」
「いつまでここにいるの?」
「父上が敵をやっつけるまでのしんぼうです」
その中で、まき絵がきょろきょろと何かを目算し、運動部で何かひそひそ話をしている。
「大丈夫?」
「ちょっと狭くない?」
「楽勝♪」
「はい、ちょっとごめんちょっとごめん」
「はーい、スペース空けてーっ、て、分からんか」
運動部が広間の中心にスペースを作り始めた。
「何を始めるつもりですか?」
「アデアット」
ネギが言う間に、まき絵は準備を済ませていた。
481ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/21(月) 22:05:42 ID:???
>>480

「それにしても不思議…」
避難所の広間と奥座敷との間の敷居近くで、野原一家を前に廉姫が口を開く。
秋田生まれのひろしと熊本生まれのみさえ、その二人が、
この時代関東の一城下町に過ぎない江戸で出会い、
この春日、廉姫の最も愛する場所に共に暮らし子をなし家族を作る。
つまらぬ妨げのなき人の出会い人の絆に廉姫はただ素直に感嘆した。
「だからこそ、あなた達家族はそんなにも仲睦まじく幸せなのだと思いたい」
「ま、いろいろ言えない事もありますが」
「おい」
茶々を入れるしんのすけ突っ込むひろしとみさえ。
「だとしたら私は嬉しい…本当に…
何やら賑やかですね」
廉姫が広間に眼差しを向ける。

「おおーっ」
広間の壁に押し付けられるぐらいに下がった避難民から歓声が上がる。
ネギが振り返ると、レオタード姿のまき絵が棍棒のジャグリングを始めていた。
それに、華麗な舞が加わると、おーっと一声上がった後に一気に静まりかえる。
限られたスペースをほっそりと小柄な体が精一杯躍動し、
着地と共に完璧なタイミングでまき絵の両手が棍棒を拾いポーズを決める。
運動部が手を叩くとそれは割れんばかりの拍手に変わった。
拍手をしながら、観衆の視線はまき絵の全身を生き物の様につーっと這い回る
ボールの動きを追い掛けていた。
ポーンポーンポーンと跳ね上がるボールをトン、トン、トンと前進しながら手足でキャッチし、
床運動でポーズを決める。
拍手喝采の中、今、自在にたゆたうリボンを手にした桃色のアホウドリが羽ばたいた。
482ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/21(月) 22:06:53 ID:???
>>481

「廉姫様」
優しい微笑みを浮かべ、
まき絵とそれを囲む皆々を奥座敷に繋がる入口で立ち見していた廉姫に、
夕映が声を掛けた。
「お願いがございます」
「なんだ?」
「姫様の見事な笛の音、聞かせていただきとうございます」
姫の前に、図書館四人衆が平伏した。

「あれ、まき絵泣いてる?」
運動部の取り巻きに戻ったまき絵に裕奈が言った。
「だって、こんな時にさ、みんな喜んでくれるって…
私、一生忘れない」
指で瞼を拭ったまき絵が、澄んだ龍笛の音に気付いて顔を上げた。
「姫様だ」
「姫様だぁ」
「綺麗…」
亜子が呟いた。
「あれ、アキラは…?」
まき絵が周囲を見回す。
シャン、と鈴が鳴った方を見ると、巫女姿のアキラと真名が鈴を鳴らしていた。
龍笛を基調に鈴が鳴り響く中、美しき白拍子が白扇を手に進み出る。
483ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/21(月) 22:08:01 ID:???
>>482
「このか?」
「このかだ」
「よっ!」
刹那の鼓と共に、木乃香の舞が始まる。
水を打った様な一時、美しきしらべ優美な舞に一時皆々は言葉を忘れ見入っていた。
一差し舞い終えた木乃香が一度平伏し一礼する。
ふーっと深呼吸した廉姫が、再び龍笛を口にした。
予想外だったらしく、即興一座の他の面々もハッとそちらを見るだけだった。
「みねのしらゆき」
一拍おいたあとの笛に、のどかが謡を入れ始めた。
区切りに刹那が鼓を入れる。
「いりにしひとのあとぞこいしき」
のどかの謡と共に龍笛が一区切りし、それを見て、真名が鈴を振った。
アキラもそれに倣う。
木乃香も立ち上がり刹那も構えを取った。
廉姫が、再び龍笛に口を寄せた。
「しづやしづしづのをだまき…」
「何か、哀しい歌…」
美砂が呟く横で、夕映がうつむいた。
「パル、知ってるの?」
「まあね…」
明日菜の問いにハルナが小さく答えた。
「くりかえしむかしをいまになすよしもがな」
曲が終わると共に木乃香と謡、演奏の麻帆良一座が平伏し、わっと拍手喝采が上がった。

今回はここまでです。強いて言うならアーティファクト補正って事で
雅楽、白拍子の技術論で甘い所はご勘弁を…
続きは折を見て。
484マロン名無しさん:2008/04/21(月) 22:19:30 ID:???
485ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/22(火) 02:01:49 ID:???
引き続き、今回の投下、入ります。

>>483

「きっと…きっと帰れます。
あなた達に不幸は似合いません」
皆の活躍で少しでも不安が和らいだ事に安堵を滲ませながら、
退いた奥座敷の縁側に野原一家と並んで座った廉姫が言った。
(原作で同じ台詞がありますが場所設定が若干変わっています)
「ありがとう」
「廉ちゃんにも不幸は似合わないぜ」
キザな台詞に照れ笑いを浮かべるしんのすけの横で、廉姫が静かに微笑む。
「千雨さん?」
「!?」
縁側で、そんな廉姫達の様子を離れて伺っていた千雨の顔を、
ネギが下から覗き込んでいた。
「浮かない顔ですね…」
「あ、ああ、この状況でノーテンキじゃいらんねぇだろ」
「そうですよね…でも、千雨さんは僕が守ります」
真顔のネギに、思わず千雨の頬が発火した。
「千雨さんも、皆さん、僕の生徒、僕について来てこんな事になったんですから、
先生として、命に代えても…」
ガコンと拳の振り下ろしがネギの脳天に炸裂する。
「タイムスリップは想定外だとしても、少なくともネギま部は好きで付いて来たんだ。
あんたも生きるんだよ、生きて帰る義務があるんだ分かったか?
てめぇ一人で軽々しく命に代えてもとかほざいてんじゃねぇ」
胸倉を掴んだ千雨の言葉には異様なまでの凄みが籠もっていた。
486ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/22(火) 02:03:12 ID:???
>>485
「ごめんなさい…」
「たあーっ!」
「お姫様のお呼びだぜ」
千雨がふっと笑みを浮かべ、ネギがそちらに歩み寄る。
「恐ろしく察しのいい赤子でござるな」
「のわっ!」
背後の楓に千雨がのけ反った。
「そ、そうか、頼んだの私だったな」
「ニンニン♪」
「ああ、ネギ君か」
ひろしが言い、ネギがぺこりと頭を下げる。
「座るがよい。まき絵、このか、皆々には助けられた、感謝する」
「有り難うございます」
「たあーっ!」
廉姫とネギが頭を下げる間にも、ひまわりが四肢を一杯にネギに伸ばす。
「すいません」
みさえが、ネギが伸ばした腕にひまわりを預ける。
「こんばんわ、ひまわりちゃん」
「たあー♪えへぇえへぇえへぇ」
満面の笑みのひまわりを抱きながら、ネギも優しい笑みを浮かべて頭を撫でた。
「…大丈夫ですよ、ひまわりちゃん。
大丈夫、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも一緒なんですから」
「たっ、たあーっ♪」
ネギの優しい言葉に、ひろしとみさえは少し心打たれながら小さく頷いた。
487ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/22(火) 02:04:45 ID:???
>>486
「そうです、ふつつかな妹ですが、オラの妹です」
「へっ」
仁王立ちで胸を張ったしんのすけの前に、ひまわりが顎を反らした。
「…もしかして、ふつつかって分かってます、ひまわりちゃん?」
ネギが乾いた笑みと共に言う。
「はい、しんのすけ君」
「たあっ!」
「お兄ちゃんといい子にしてるんですよー」
首を横に振っていたひまわりが、紳士的なスマイルと共に優しく語りかけるネギを前に、
ぽわーんと真っ赤になってしんのすけの腕に抱かれた。
「おおっ、ひまわりが…」
「さっすが、あんなお子様でもジェントルマン♪」
驚くひろしの横でみさえが赤い頬の両手を当てていた。
「あ、相変わらず全方位無自覚女殺しかよ」
千雨と隣の楓がコメカミに汗を浮かべながらその様子を眺めていた。

「ネギ」
少しうつむきながら庭を歩くネギが顔を上げると、明日菜と木乃香が立っていた。
「戻ろっか」
「はい」
にこりと笑みを交わす明日菜とネギ、縁側から奥座敷に入る野原一家を千雨は見比べる。
「…そうだよな…お父さん、お母さん、お兄ちゃんか」

「…」
避難所に戻った千雨は、響く歌声に大汗を浮かべた。
そして、中心で手を組んで歌い終えた美砂に歩み寄り、ぽんと震える手で肩を叩く。
「いや、柿崎、ゴスペルは洒落んならんだろこの場合…」
「本格的な切支丹禁制は大分先の話ではありますが…」
夕映が言う。
488ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/22(火) 02:06:00 ID:???
>>487
「いや、そう言う事じゃなくて…」
「まあいいネ、こうして皆の歌声が聞けるだけデモ、違うカ?」
よいしょと立ち上がった超の言葉には、重々しい程の説得力があった。
「経験者は語る、って事なのかね?」
その場を離れる超の背に、千雨がぽつりと呟いた。

厠の帰り、超はひまわりを抱いたみさえとすれ違った。
「たあーっ♪」
互いにぺこりと頭を下げて行き交おうとすると、ひまわりが声を上げて超に両腕両脚を伸ばす。
「どうしたの、ひまわり?」
「たあー、たあーっ♪」
「おやおや、どうしたネ」
超が苦笑してひまわりに近づく。
「どれ?」
「すいません」
「たあっ♪」
超がひまわりを抱くと、ひまわりがぎゅっと超に抱き付いた。
優しい笑みを浮かべてひまわりの髪の毛を撫でる超の姿に、みさえが首を傾げる。
「すまないガ、そろそろ」
「ああ、すいません」
「たあーっ♪」
「またネ、ひまわりちゃん」
「たっ」
にこにこ笑って手を振る超に、ひまわりがみさえの腕の中で右手を挙げた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
489マロン名無しさん:2008/04/22(火) 21:16:46 ID:???
490ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/22(火) 22:52:43 ID:???
少しですが今回の投下、入ります。

>>488

「裕奈殿、明石裕奈殿」
避難所を訪れた具足の侍に名前を呼ばれ、裕奈が自分を指さした。
「明石裕奈殿、殿がお呼びです」
「殿様が」
「はい」
「では」
夕映と刹那が立ち上がろうとする。
「お連れするのは裕奈殿としか伺っておりません」
「いえ、しかし…」
「いいよ、私行ってくる」
迎えの侍に言い募ろうとする夕映を前に裕奈が言う。
「いかなる用向きぞ」
「これは姫様、それがしは明石裕奈殿をお連れせよとしか伺っておりませぬので」
「裕奈、わたくしから父上に尋ねようか?わたくしが他の者の同行も許すが…」
「いえ、大丈夫です。
こんな時にお呼びなのですから、お父さん…殿様にもそれなりの事情があると思います」
裕奈が廉姫にぺこりと頭を下げ、侍と共に避難所を出た。
491ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/22(火) 22:53:51 ID:???
>>490

「おもてを上げよ」
ズカズカと無人の本丸座敷に現れた康綱が平伏する裕奈に声を掛けた。
「はっ」
裕奈が顔を上げ、犬居、榊を両脇に立つ正面の康綱を見る。
何度か会った事があるからこそ、具足姿の武人の姿に裕奈は息を呑んだ。
「かような折じゃ、前置き抜きに尋ねる。
そなたも忌憚なく答えよ、とがめはせぬ」
「はっ」
「明石裕奈、そなたの技量、今、わしに、この国に貸してはくれぬか?」
「それはつまり…」
再び顔を伏せた裕奈の口の中はカラカラだった。
「いくさに加わり敵を討ち取って欲しいと申しておる」

避難所で目を閉じじっと座っていた刹那が、
鋭く薄目を開き夕凪を手元に引き付けた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
492ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/24(木) 14:25:12 ID:???
少ないですが、今回の投下、入ります。

>>491

「それだけはお許し下さい」
小姓が用意した床机に掛ける康綱を前に、深々と頭を下げて裕奈が返答した。
「無論、そなたとその朋輩への恩賞は手柄に応じ相応の用意はするぞ」
「いえ、そう言う事じゃなくて…
助けていただいて申し訳ございませんがそれだけはっ」
一度顔を上げた裕奈が、再び顔を伏せ深々と頭を下げる。
「では問う」
康綱が続けた。
「やるやらぬは置く、出来るか出来ぬか、それを問う」
「分かりません」
「分からぬか?」
「私の能力(ちから)であれば、敵の間近まで迫って銃を向ける事は出来る、かも知れません」
「なれば…」
「しかし、それで私が相手を、人を殺せるかどうかとなったら話は別ですっ!」
口を挟もうとした榊の目を、声を震わせてはっしと見た裕奈が慌てて顔を伏せた。
「それが出来れば何十、あるいは何百の春日の兵、引いては春日の民、
姫やわしの命が助かると言うてもか?」
「お許し下さい」
康綱の問いに、裕奈はひたすら平伏し懇願した。
「あい分かった。何れにせよ、その有様で無理強いしても役には立たぬ」
「申し訳ございません」
「そなたは正直者よ、出来ぬと一言申せば済む事を。
そなたが誠をもって応えたる事、よう分かった。
無理は承知で尋ねたもの、約束通りとがめ立てするつもりはない。
羨む程の穏やかな国の、それもおなごに尋ねる事こそ酷な事。あいすまぬ」
493ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/24(木) 14:26:26 ID:???
>>492
「殿っ」
榊がたしなめる横で康綱が頭を垂れ、裕奈はひたすら平伏する。
「しかし殿、今までこのうろんな者達を我が領内にて…」
「これまでこの者達には相応の返礼も受けておる。
そなたの馳走も美味であったしの」
康綱が榊の言葉を遮る。
「えへへ…ははあっ!」
思わずはにかんだ顔を見せ、また畳に額を擦り付ける裕奈に、康綱は高笑いした。

「…ちゃん…せっちゃん!」
「は、はいっ!」
「どうしたんせっちゃん怖い顔して?」
「あ、いえ、この様な折ですので忍びの気配など探っておりましたが、
どうやらここは大丈夫の様です」

「…どうだ、出来るか?…」
「私一人では…仲間の協力があれば、出来る、かも知れません」
「そうか、では、やってくれるか?」
「やってみます」
「これ」
「よいよい、そもそも、我が家臣にすら出来ぬ事を頼んでおるのだ」
裕奈をたしなめる榊を康綱がたしなめる。
「裕奈」
そして、康綱が一礼して立ち去ろうとする裕奈の背中に声を掛けた。
「後は、そなたたちの意のままにせよ、仮に戻ってこずともとがめはせぬ。
せめて、敵側にだけは付かずにいてくれたら有り難い」
振り返った裕奈が深々と頭を下げた。

細切れですいませんが今回はここまでです。続きは折を見て。
494マロン名無しさん:2008/04/24(木) 20:52:59 ID:???
続きまってるze
495マロン名無しさん:2008/04/24(木) 21:37:30 ID:???
496グラインドハウス支配人:2008/04/25(金) 19:57:43 ID:???
おまたせ致しました。
それでは、原作作品の販売を致します。
このご機会にご鑑賞くださいませ。

ヒッチャー(リメイク版)

予告
http://jp.youtube.com/watch?v=7_xSLPWsex8

公式サイト
http://www.hitcher.jp/


ヒッチャー(オリジナル版)

予告
http://jp.youtube.com/watch?v=0psb2oKEfUc
497メイキング・オブ・ヒッチャー:2008/04/25(金) 20:32:34 ID:???
「メイキング・オブ・ヒッチャー(いわゆる楽屋落ち)」

・配役の問題

まず、単身アメリカに行けるキャラクターを探していた。
どのキャラも簡単には行きそうにはない、ある一人を除いて。
そう、雪広あやかを除いては。
こうして、主役は雪広あやかに決定した。

・他の出演者について

このジム・ハルシーや悪役のジョン・ライダーについては、ノンクレジットにすることになった。
それは観客の皆様が自由にどんな姿の人間か想像してほしいという配慮に他なりません。
過去にオリジナル版はジム・ハルシー役をC・トーマス・ハウエル、ジョン・ライダー役ルトガー・ハウワーが演じ、
リメイク晩はジム・ハルシー役をザカリー・ナイトン、ジョン・ライダー役をショーン・ビーンが演じました。
今回は、原作の雰囲気を抱きつつも、自己流で物語を楽しんで貰えたら幸いです。
あなたの好きな俳優はいましたか?

・主役の出演交渉

当初・雪広あやか嬢は映画の主役という話を聞いて狂喜乱舞していたが、
映画の内容がサスペンス・スリラーと聞いて態度を一変。
「ネギ先生とハートフォーミングなラブストーリーがいいですわ〜♪」
と言っていたが、「あなたしか出来ない!」という粘り強い交渉で、出演の承諾をもらった。
498マロン名無しさん:2008/04/25(金) 20:51:12 ID:???
ぁあ、ようつべ見て大体思い出してきたw
うん、よくできてたぞ。GJ!
499メイキング・オブ・ヒッチャー:2008/04/25(金) 20:58:29 ID:???
・撮影時のエピソード1

役者には、銃器などの扱いを慎重にレクチャーした。
その為、未成年の雪広あやか嬢以下、他の役者達も自然と演技に取り入れることができた。

・撮影時のエピソード2

カースタントを多用する撮影だった。
一度、車の外側でスタントを撮り、搭乗者の姿を、カメラ付きの車で運転し、表情を入れた。
また、最後の雪広あやか嬢の運転シーンは、すべてカースタントの運転である。
雪広あやか嬢は車内で運転の仕草のみを別撮りで行った。

・撮影後のエピソード1

本作品はPG-12(12歳未満鑑賞禁止)になってしまった。
そのため、出演しておきながら試写会に呼ばれなかったネギ・スプリングフィールド氏。
その事を憤慨したあやか嬢だったが、自身のヌードシーンがあると聞いて一変。
「わたくしの柔肌を、あの純粋無垢のネギ先生に見せるわけにはいきませんわ!もっと関係を深めて…」
以後、ネギ氏トークが続いた。

500メイキング・オブ・ヒッチャー:2008/04/25(金) 21:12:03 ID:???
出演者インタヴュー

雪広あやか

Q「今作を振り返ってみて、どんな感想をお持ちですか?」

A「全編、泥まみれですわね(笑)わたくしの望んだラブストーリーではないですけれど、なかなかの当たり役だと思いますわ。
 普通の中学生では体験できない恐怖の出来事で、わたくしは日常を壊され、非現実的な悲劇に見舞われるの。
 主人公はある程度のスキルはあるけど、本当に危ない事態になったら何もできない普通の女の子ですわ。
 けれども、あのジョン・ライダーに出会った事で変わっていくの。確実に生き延びる術を見出していくの。
 そしていつの間にか、敵であるジョン・ライダーに尊敬の念を抱くのですわ。出会う前より確実に生きる事に対して執着を持つ私にこう仰ってるのですわ。
 「いいだろう、次のステップに連れて行ってやる。」そしてわたくしはジョン・ライダーを倒すことで、恐怖とジョン・ライダーに対して別れを告げるのですわ。」

Q「今作をどんな人にお勧めしますか?」

A「同じ中学生ぐらいの女性にお勧めしますわ。もちろん、わたくしも2年後には一緒にネギ先生と観ますわ♪」
501メイキング・オブ・ヒッチャー:2008/04/25(金) 21:18:15 ID:???
出演者インタヴゥー

ジム・ハルシー役

Q「ヒッチャーという作品で伝統となっている被害者の役ですが、どう演じられました?」

A「雪広あやか嬢の従者という設定になってるのが、他作と大きな違いですね。
 だから何よりも、雪広あやか嬢の事を心配し、大事に思ってる。
 行動のすべては雪広あやか嬢のためさ。」

Q「共演した雪広あやか嬢の事をどう思いますか?」

A「中学生とは思えない程、大人で素敵な女性だよ。男がいっぱい寄ってくるんじゃないのかな?
 え?女学校?そうなんだ……もったいないなぁ……。それほど素晴らしい女性だよ。
 共演できて最高だったよ。お嬢様だっていうのに、行動的でカッコいいしね。
 お嬢様ぶった嫌味もないし、ホント、共演できてよかったよ。」
502ヒッチャー:2008/04/25(金) 21:41:36 ID:???
出演者インタヴュー

ジョン・ライダー役

Q「本作の主役ともいえるヒッチャー、ジョン・ライダーを演じてみてどう思われましたか?」

A「最高だね。オリジナル版がルトガー・ハウワー。リメイク版がショーン・ビーン。
 どちらも最高のジョン・ライダーを演じている。
 じゃあ、僕はどうするか?何日も悩んだよ。
 そして答えに行き着いた。自分は獣になるんだってね。
 獣はね、自分で自分を殺そう、自殺しようとは思えないんだ。死にたくてもね。だから、自分が死ぬまで他の獣を捕食し続ける。
 僕のジョン・ライダーはまさに獣さ。自分で自分を止められない。破滅的な行動をして、誰かに止めて欲しかった。
 そんな時、二人に出会う。行きの良い二人さ。まさに運命だよ。
 この二人に付きまとうことで、『もしかしたら止めてくれるかもしれない』そう思い始めるんだ。
 二人に付きまとえば、自分自身も楽しめるしね。
 僕の演じるジョン・ライダーは自分で自分を止める事の出来ない暴走した殺人マシーンさ。
 そいつを殺すことしか、止める方法はない。
 そんなキャラクターを演じたよ。
 このジョン・ライダーを気に入ってくれたらうれしいよ。」

Q「本作の目玉とも言える、トラックによる引き裂きシーンについてですが。」

A「あれは僕も緊張したよ。ジョン・ライダーの内面が浮き彫りにシーンだからね。
 異常な緊張感が辺りを包んでたよ。あの冷や汗……本物なんだよ、実はね。
 たぶん、雪広あやか嬢もすごく緊張してたと思う。現場全体がピリピリしてたね。」
503メイキング・オブ・ヒッチャー:2008/04/25(金) 21:52:25 ID:???
スタッフインタヴュー

監督

Q「ネギま版ヒッチャーを製作しようとおもったきっかけは?」

A「当たり前だけど、ネギまシリーズが好きなだからさ。
 楽しい日常の中、笑いありのラブコメのキャラクター達が沢山いるけど、ふと思ったんだ。
 『このキャラクターを恐怖のどん底に陥れたらどうなるんだろう?』ってね。
 そこで非現実的な恐怖に簡単に対処できそうもない雪広あやか嬢に決めたんだ。」

Q「ネギま版ヒッチャーを製作する上で気をつけたことはなんですか?」

A「恐怖が追いかけてくるような物語にしたかった。不条理で無常な恐怖。
 楽しい筈の旅が恐怖の逃避行になってしまう。そんな風に気をつけたね。」

Q「心残りなどはありますか?」

A「ある。ひとつだけ。オリジナル版のヒッチャーにあるんだけど、ガソリンスタンド炎上シーンがあるんだ。どうしてもそれを入れたかった。
 でも、基本的に二人で行動しなきゃいけないだろ?だから、やむなくカットしたんだ。」

Q「最後にネギま版ヒッチャーをご覧になった観客の皆様にメッセージを。」

A「最後までネギま版ヒッチャーを楽しんでくれてうれしいよ。みんなの中でどんな印象を残しているのかとおもうと監督冥利に尽きるよ。ぜひ、また堪能してほしい。ありがとう。」
504予告編:2008/04/25(金) 22:22:15 ID:???
――――予告――――

私の名前は朝倉和美。
2011年春、大学卒業まで、あと2ヶ月とうところで、退学処分になった。
私は失った何かを求めるように、姉の住むイギリスに渡った。
そこで人生忘れられない出会い……ピート・ダナムと出会う。
そして……大学では学べない勉強をする事になる。

ピート「勉強させてやる。」

和美「サッカーの?」

ピート「外れだ。もっと別の勉強。……それに二度と言うな!サッカーじゃねぇ、フットボールだ!!」


―――――『フーリガン』―――――


ピート「人生で一番大切な物。それは?」

子供達「フットボール!!」


近日公開
505予告編:2008/04/26(土) 00:54:47 ID:???
―――――予告―――――

ニューヨークの摩天楼。
タクシーを運転している男に、一人の女性の客が現れた。
「タクシーを一晩貸しきりたい。5箇所回る。名前は?」
「マックス。」
「私は真名だ。」

―――――ひとりの殺し屋――――ー

「……あんたが殺したのか?」
「いや、撃った弾が殺した。」

―――――5人のターゲット――――

「お前は運転だけ。命は保障する。」

506予告編:2008/04/26(土) 00:55:28 ID:???
―――――完璧な仕事―――――

「簡単に殺して……。」
「60億人いる内のたかが一人だ。……挨拶しろとでも?」

―――――しかしー―――――ー

「殺すなんて……。妻子もいただろうに。貴様には人間の根本的なものが欠けている。

―――――二人の運命が変わる―――――

「遊びじゃないんだ……!」

―――――龍宮真名、悪役初挑戦―――――

「証人は殺される。次はあんただ。」

―――――主演:龍宮真名―――――
―――――共演:ジェイミー・フォックス―――――

「私の仕事をなめるな!」

―――――交錯する運命―――――

「……真名!」

―――――『コラテラル―――――

近日公開
507ヒッチャー:2008/04/26(土) 00:57:32 ID:???
以上でメイキングと予告編の上映を終了致します。
次回は二本目「ネギまのはらわた キャプテン・スーパーマーケット」を上映致します。
暴力描写や残酷描写が過剰なまでに表現されておりますので、苦手な方はスルーをしてください。

では、次回またお会いしましょう

                                    グラインドハウス支配人
508ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/26(土) 12:15:35 ID:???
少ないですが今回の投下、入ります。

>>493

それは、明け方の事だった。
「敵じゃー!敵が見えたぞー!」

「何、してるの?」
ネギ・パーティーの押し寄せたいちのくるわ三階の縁側で、
領内に攻め寄せた大蔵井勢の動きを見た夏美が言う。
「あれは、刈り働きですね。稲や麦の穂を刈り取って自らの兵糧とすると共に
こちらの兵糧を削ぎます。挑発する意味もあります」
「くそっ!」
小太郎が吐き捨てるのを夏美が悲しそうに見る。
「これは、予想以上でござるな」
楓が言う。
「種子島が意外と多い、ここにいては危険でござる」

「始まったみたい」
「えっ?」
明日菜の言葉に亜子がそちらを見た時、立て続けの銃声がハッキリと皆に聞こえた。
地が鳴り、ただ事ではない叫び声、唸り声が絶え間なく響き渡る。
アキラの腕が、頭を抱えて震える亜子を横から抱く。
509ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/26(土) 12:16:46 ID:???
>>508
階段の方から、何やらドタバタと騒ぎが聞こえて来る。
「しんのすけ!バカ!戻れ!」
超がガバッと立ち上がり、駆け出した。
その後をネギ、明日菜が追う。
立ち上がろうとする美砂を円、桜子が取り押さえる。
「あいつらに任せとけ、死ぬぞっ!」
美砂の前に回った千雨が叫ぶ。
「こっちの最強メンバーにラスボスにあのすばしっこいガキだ、殺したって死ぬもんか」
千雨が吐き捨てる様に言った。

しんのすけを追うひろしの背中を追う様に、
明日菜とネギ、超が慌ただしい城の屋外を走り回る。
「抜けられたっ!」
「おうっ、女がいるぞっ!!」
くわっ!
明日菜本人が気付いた時には、大剣一閃躍りかかっていた敵兵は吹っ飛ばされていた。
「何だ小娘えっ!」
「ネギ、超さん、ここは任せてっ!」
大剣を肩に掛けた明日菜が叫ぶ。

細切れですいませんが今回はここまでです。続きは折を見て。
510マロン名無しさん:2008/04/26(土) 18:16:48 ID:???
>>483
歴オタが細かい事いうと選曲が微妙

気持ちは解るけど戦でみんな不安な中でやる曲じゃない
映画の廉姫ならやらない希ガス、ラブラブメッセージ出すキャラじゃないし

てか、これ即座に理解できてるのどかとパルの方がどんだけオタなんだよw

あ、あくまで「細かい事」気になっただけだから
511マロン名無しさん:2008/04/26(土) 18:34:50 ID:???
どちらも乙
512マロン名無しさん:2008/04/26(土) 22:49:12 ID:???
ヒッチャーさん『投稿図書』に投稿してみてはいかがですか
なかなかに良かったですし、評価されると思いますよ
513ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/04/28(月) 15:00:58 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>509

「しんのすけ君っ!」
「しんのすけ、どこにいるネッ!?」
ネギと共に、超が悲鳴に近い声を上げていた。
「いたっ!」
駆け出そうとするネギを超の腕が制する。
「あの状況で保護されたなら、あそこに割り込むのは却って危険、と言うか邪魔ネ。
戻れる内に戻るヨ、アスナサンを回収して」
「はいっ!」
超のイニチアチブでキビキビと行動していた。
「こんのおおっ!おりゃあっ、ていりゃあああっ!!」
既に死屍累々の様相を呈する中、懸命に大剣をブン回す明日菜の姿をみとめた
ネギがブンと杖を振り、超がバッと摺畳扇を広げる。

「な、何、今の?」
「花火、じゃないよね?」
「焙烙火矢でござるかな」
桜子と円の震える声に答えた楓の声も硬いものだった。
「焙烙火矢?」
美砂が聞き返す。
「早い話が爆弾です」
夕映が答える。
514ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/28(月) 15:03:16 ID:???
>>513
「そんなの、又兵衛さんがいくら強くたって…」
「鎌倉後期から使われている武器です、
構造も原始的ですから歴戦の猛者ならば対処も分かっている筈です」
青い顔で言う美砂に刹那が言った。
そこに、転がり込む猛者三人。
「ぜえっ、ぜえっ…」
「お帰りなさいうネギせんせー!」
避難所の広間に滑り込み、息を荒げるネギにのどかが言う。
「どうだった!?」
美砂が超に詰め寄る様に尋ねる。
「しんのすけとひろしさんは向こうで又兵衛サンに保護された、これ以上深入りは出来ない、
無事戻るを祈るしかナイ」
「あの馬鹿っ」
千雨が吐き捨てる様に言う。
「入って来た敵はあれだけ、何かの間違いだったみたい。
又兵衛さんたちが何とか食い止めてるみたいで、他に敵はいなかった」
明日菜が言う。

「炊き出しをいたします!お手伝い下さりませ!」
「私も行った方が?」
「いえ良いのです」
いちのくるわ奥座敷から、廉姫がみさえを止める声が聞こえた。
美砂が手拭いで髪を束ね立ち上がる。
515ネギま!戦国史(クレしん):2008/04/28(月) 15:04:23 ID:???
>>514
「柿崎さん」
「桜咲さん?」
刹那は、しゅるしゅると美砂の小袖にタスキを掛けた。
「有り難う」
「せっちゃん、うちもええ?」
「はい、お嬢様」
「どうやるの?」
「ここをこう縛って…」
「じゃあ、僕はそろそろ、後はお願いします」
ネギが言い、明日菜と刹那が頷く。

「ひゃっ!」
野良着で男装した裕奈が、揺れに驚いて思わず前のネギに抱き付く。
「一応認識阻害はしていますが櫓が見えたもので。でも、落ちませんから」
「えへへへ、ごめん、ネギ君」
いくさの真っ最中に空を見上げている青空侍はそうそういるものではない。
それでも櫓などの目に付かない高度を、杖に跨ったネギと裕奈が飛行している。
その近くでは狗神に乗った小太郎が飛行し、小太郎の脇ではハルナがせっせと羽を描いては、
近くを飛行している大きな菰(コモ)包みに張り付けていた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
516マロン名無しさん:2008/04/28(月) 23:34:19 ID:???
517マロン名無しさん:2008/05/01(木) 00:23:33 ID:???
保守
518ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/05/02(金) 18:54:47 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>515

春日城本丸近くの広場で、刹那が夕凪の柄に手を掛けた。
一瞬、僅かに残った夕日にきらめいた刀身が鞘に戻ると、
その僅かな空気の震えと共に塊がバラバラと解体される。
刹那の側に、何畳分かと言う広さで薪が敷かれ、その上に藁が敷かれていた。
明日菜と木乃香が塊を藁の上に運ぶ姿を見て、刹那は思わず割って入ろうとしたが
ふっと静かに笑みを浮かべた。
「お嬢様、そちらを持って下さい。こちらはわたくしが」
「うん、せっちゃん」
塊を積み終え、桶の水で一度じゃぶじゃぶと手を洗った後、
その上に更に薪を山と積み、その上に藁を被せる。
「…リリス・リリオス…」
詠唱と共に、被せられた藁をオレンジ色の炎が嘗めていく。
「ラ・ステル、マ・スキル、マギステル…」
炎が全体に回り、しばらく様子を見ていた五月が頷くのを見てネギが杖を振るった。
広場に突風が巻き、風が収まると、中心で真空となっていた焚き火が鎮火していた。

別のくるわの庭では、アキラと小太郎が水桶を運んでいた。
中の水を更に巨大な桶に移すと、近くで焚き火をしていた楓が、
新しい薪を器用に使って焚き火の中から石を取り出し桶に沈める。
そこに、青い顔をした夏美がよろよろと戻って来た。
519ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/02(金) 18:55:57 ID:???
>>518
「大丈夫か、夏美姉ちゃん」
小太郎がちょっと呆れた様に言う。
「だ、大丈夫」
「はい、お水」
「有り難う」
アキラから受け取った椀の水をゴクゴクと飲み干した夏美が、もう一度手の甲で唇の端を拭う。
「山ん中でも洗っては来たけど、並の臭さやないからな、
無理せんでも肉の方回ったらええで」

「これは…」
陽も落ちて、又兵衛以下の選抜隊が本丸近くの広場を訪れると、
巨大な熾火が赤々と輝いていた。
その側では、五月がじっとその熾火を見ている。
五月が右手を掲げると、明日菜とアキラが熾火に鋤を突っ込んだ。
鋤で掘り出された塊が、次々と用意の戸板に乗せられる。
何と言っても、先ほどからの得も言われぬ煙の芳香を前に
猛者ともは喉を鳴らす唾を止められなかった。
「皆々がため、見事この大鹿を撃ち取りし明石裕奈よ」
上座で床机に掛ける康綱が言い、隅に控えていた裕奈が一礼して戸板に近づく。
巫女姿の真名が祝詞をあげ、同じ姿の五月が両手に細身の包丁を握る。
右手の包丁を、こんがりと焼けた肉塊に入れると、
その腿の付け根辺りを切り取り両手の包丁で器用に押さえ、挟み込む。
五月は、その切り取った一切れを、脇に控える裕奈が捧げ持った皿に乗せる。
そして、乗せられた肉の端を一つだけ食べ易く小さく切り分けておく。
裕奈は、皿を三方に乗せておごそかな程の所作で運び、康綱の前で片膝をつく。
「献上いたします」
「うん…美味である」
「ははっ」
裕奈が芝居がかった仕草で平伏した。
520ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/02(金) 18:57:06 ID:???
>>519
「又兵衛、許す」
「はっ」
又兵衛が戸板に近づき、そこに用意された小刀と皿で肉を切り取り置かれた塩を掛けた。
五月と又兵衛が頷き合う。
「皆さん、一切れずつどうぞ、お塩で召し上がって下さい」
五月の呼びかけに、ヨダレに溺れかけていた兵士がどっと動いた。
「はーい、向こうでよーく焼いた猪も来ましたよー」
広場はたちまちバーベキューパーティーと化した。
「うむ」
瓶子からかわらけに、裕奈に注がれた酒を飲み干し康綱が笑い、裕奈が一礼する。
「どうぞ、又兵衛様」
「ああ、美砂、すまぬな」
「とっておきの江川です」
「いくさの最中ですから一杯だけですよー」
「モヤシのサラダもどうぞー、お肉だけだとお腹にきついですから」
チアや裕奈が瓶子を手に兵士たちの間を回っていた。

「何だぁ。この臭いはぁ?」
異臭と言ってもいい臭気に、別のくるわに集結した春日の軍勢が顔をしかめた。くるわの庭には、大きな桶が幾つも用意されていた。
「はーい、モツ雑炊おまっとさーん。粟飯やけどこれ食うたら精が付くでー」
小太郎と夏美が手分けをして椀に煮物を取り分ける。
それは、桶に水を張り、焼石と味噌と粟稗と鳥獣の内臓のブツ切りをぶち込んだものだった。
「こりゃうめぇ」
「うめえなぁ、ちっとくせぇがなぁ」
「当たり前や、運んで来るだけで死ぬかと思ったでホンマ」
小太郎がカラカラと笑う。モツと言っても量的に限度があるので、
ここで振る舞われたのは軍勢の中でも中枢近くだった。
521ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/02(金) 18:58:14 ID:???
>>520

「うん」
又兵衛が、五月に渡された椀を傾けて頷いた。
「この、大蒜の汁、これがまた肉とよう合うわ」
「大蒜は精がつきますが、生だと胃腸を焼きますのでスープ…汁にしました」
「おう、これで酒盛りが出来ぬのが益々惜しい」
又兵がカラカラと笑い、五月もちょっと寂しそうな笑みを浮かべた。
「本当は…戦場に送り出す料理と言うのは少し、辛いです。
何れ、ゆっくりお酒を楽しめるお料理を作りたいです」
「おう、楽しみにしておるぞ五月」
豪快に言う又兵衛、優しく微笑む五月、共にその心は通じていた。

「美味しい」
「おっかぁ、あったかい」
「うめぇなぁ」
「うん、美味しい」
「美味しいですね」
避難所で、明日菜と刹那が言う。
「山鳥のトリガラで作たパイタンスープね。雉のもあるガ、
肉は皆兵隊向けの粥にしてしまたからね。
何れ、麦が手に入ったら、又ゆーなさんに頼んでラーメンでも作るネ」
二人に椀のスープを渡した超が笑った。

今回はここまでです。続きは折を見て。
522マロン名無しさん:2008/05/03(土) 14:42:45 ID:???
乙でした。
523マロン名無しさん:2008/05/03(土) 16:44:43 ID:???

524マロン名無しさん:2008/05/05(月) 11:52:29 ID:???
525グランドハウス支配人:2008/05/07(水) 13:23:54 ID:???
お知らせ

本目、当支配人は病気療養のため、病院に入院する事になりました。
二本目の上演が無期延期になってしまい大変申し訳ございません。

グランドハウス支配人
526マロン名無しさん:2008/05/07(水) 17:37:30 ID:???
>>525
ちょ、大丈夫か?無理せず休んでくれよ…。
527マロン名無しさん:2008/05/07(水) 20:19:13 ID:???
無理せずゆっくり静養してください。
528ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/05/09(金) 02:11:27 ID:???
>>525
くどくど言うのも何ですので、お大事にして下さい。
久しぶりですが今回の投下、入ります。

>>521

「では姫様、持場に戻りますゆえこれにて」
「うむ、武運を祈っている」
「はっ、では後刻」
一礼した又兵衛が、いちのくるわ奥座敷庭をスタスタと立ち去る。
「ほっ?」
庭を駆け出したしんのすけは、曲がり角の壁に背中を張り付かせていた美砂が、
だっと駆け出して姿を消すのを首を傾げて眺めていた。

「なあ、夏美姉ちゃん」
いちのくるわ三階の縁側に立った小太郎が、
赤々と宿場を呑み込む炎を見下ろしながら口を開いた。
「俺ら、本当にここで黙って待ってればいいんか?
手ぇ出さないのがほんまに正しいんか?夏美姉ちゃん」
「分からないよ…」
ギリッと歯がみした小太郎の背後で、床に座った夏美が震える声で言った。
「私だって、知らないみんなじゃない。
悔しいよ、辛いよ…
でも、私たちが何かしたら、それで歴史が変わって元の時代、
私たち自身がなくなるかも知れない。
嫌だよ、怖いよ、帰りたいよ。
お父さん、お母さん、ちづ姉いいんちょ、みんなの所に、私たちの時代に、帰りたい。
こんな怖い時代嫌だよ…」
529ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/09(金) 02:12:36 ID:???
>>528
「すまん、夏美姉ちゃん」
「こ、コタロー君」
ハッと気付いた夏美はかあっと真っ赤になったが、
小太郎の本能が、今の夏美は抱き締めなければならないと告げていた。
「すまん…俺が余計な事…夏美姉ちゃんに怖い思いなんてさせん、俺がさせへんさかい…」
夏美は、ぎゅっと小太郎を抱き締め、啜り泣いた。

「あれ?」
元々がこの人数で相当の量を自己調達していた事もあり、
廉姫が渡そうとした路銀食料を丁重に断り、逆にネギ・パーティーが自分達の調達品を
多少なりとも寄贈しようとして廉姫に丁重に断られる
そんなやり取りに結構な時間を費やしてからいちのくるわを出ようと言う時、
周囲を伺って明日菜が言った。
「うん?」
「いない?」
「えーっと、こんな時にさ、すっごく非常識だっての分かるけど、
ちょっとだけ、お願いだから待って」
言ったのはハルナだった。
「お願いします」
千雨が舌打ちする中、ぺこりと頭を下げたのはのどかだった。
530ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/09(金) 02:13:43 ID:???
>>529

「又兵衛様っ!」
物見櫓を降り、僅かな準備のため次の無いかも知れぬ我が家に向かっていた
又兵衛がそちらを見ると、坂の途中から美砂が叫んでいた。
「私たちはこれから出立します。その前に…
その前に、お姫様に何か言づてはありませんかっ!?」
又兵衛は黙って前を見た。
そして、美砂を向く。
「…息災に、と、お伝え下され…」
それだけ言って、又兵衛は足を進めようとし、再び美砂を見た。
「美砂」
「はいっ」
「美砂、そなたも、そなたたちも、息災でな」
「はいっ!」
美砂が大声で返答し、又兵衛が頷いて美砂に背を向け、また、足を動かす。
「…御武運をっ!!」
美砂の叫びに、又兵衛は腕を掲げた。
又兵衛と仁右衛門の姿が段々と見えなくなる。
「あはは…私、何時代劇やってんだろ…」
美砂が瞼に指を当てて笑う。
時代劇はいい、だけど、涙は似合わない。
所詮自分は余所者、これから命懸けで戦う又兵衛、それを見送った春日の人々、廉姫、
それを考えると、自分に涙を流す資格は無い。
見送るのなら、柿崎美砂らしくしなければならない。
531ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/09(金) 02:14:50 ID:???
>>530
「Go go Let’Go Let’Go KASUGA!」
「Go Go Let’Go Let’Go KASUGA!」
親指を頬に、小指を前に向けて叫んだ美砂がハッと振り返る。
「Go Go Let’Go Let’Go KASUGA!」
後ろで、円がザッザッと歩を進め、桜子が飛び跳ねていた。
三人は頷き、パクティオ・カードを取り出す。
「アデアット!
Go Go Let’Go Let’Go KASUGA.
Go Go Let’Go Let’Go KASUGA!
Go Go Let’Go Let’Go KASUGA!!
オオーーーーーーーーーーーッ!!!」

「若」
「うん?」
「何やら、負ける予感が失せて参りましたな」
「おう、何やら凛々としたものが伝わって来よるわい」

美砂が、二人の肩の上からぴょんと飛び降りた。
円が、美砂の肩をぽんと叩く。
美砂が小さく頷き、円に抱き付く。円は、自分の胸に顔を埋めた美砂の背中を静かに撫でた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
532マロン名無しさん:2008/05/09(金) 15:24:10 ID:???
チア(゚∀゚)イイ!!
乙でした
533マロン名無しさん:2008/05/09(金) 17:38:12 ID:???
534マロン名無しさん:2008/05/10(土) 17:48:30 ID:???
乙。
535マロン名無しさん:2008/05/13(火) 13:25:41 ID:???
保守
536ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/05/14(水) 01:28:24 ID:???
では、今回の投下入ります。

>>531

いちのくるわ敷地内門前。
動き易い様に、この時代に来た時の服装のネギ・パーティーと野原家が待っていた。
ネギ・パーティーはローブを着用している。
そこに、チア三人が駆け込んで来る。
「ご、ごめんネギ君みんな…」
美砂が言うが早いか千雨が美砂に掴み掛かる。
「ちょっ…」
飛び出そうとする明日菜をネギが腕で制する。
「ふざけんな…色ボケすんのも大概にしろ…今どう言う状況だか分かってんのかてめぇ…」
「…ごめん…」
両手で胸倉を掴み震える声で言う千雨に、尻餅を着いた美砂がぽつりと言った。
千雨は、鼻を鳴らして背を向ける。
「ごめん」
「ごめんなさい」
円と桜子が深々と頭を下げた。
「外が手間取っている。今少し待って下さい」
廉姫が言った。
537ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/14(水) 01:29:39 ID:???
>>536
「ねぇねぇ」
「?」
まき絵が、足下で言うしんのすけを見た。
「おねいさん、中で踊ってたおねいさんだよね」
「そうだよ。すっごく上手なんだから」
裕奈が言った。
「ふーん、オラよく見えなかったから」
「そうなんだー、ちょっと待ってね」
まき絵が、ばさっとローブを脱いだ。
そして、すとんとバック転すると、しんのすけと裕奈がパチパチ拍手する。
ピースしたまき絵が、ぐにゅーっと地面に大きく脚を広げる。
そのまま、道具もなしに、素晴らしい柔軟性と躍動感だけをフルに発揮して
次々とポーズを決めていった。
“…綺麗な星…”
ストンと着地したまき絵は、そのまま夜空を見上げ、独唱で歌い始める。
「では、そろそろ」
一斉に沸き起こった拍手が収まった頃、廉姫が言った。
「おねいさんとはマタどこかでお会いしそうですな」
しんのすけがまき絵を見上げて言う。
「そーだね。マタどっかで会うかもね。六年後ぐらいに一緒にお空飛んでたりして♪」
まき絵が明るく笑って答えた。

「くしゅん」
「あら、あやか風邪?」
ベッドに腰掛けていた千鶴が言う。
「いえ、きっとどこかでオサルさんが私の悪口でも言っているのでしょう」
「それにしてもみんな、夏美ちゃんも何処まで行ったのかしら?」
「全く、あれ程付いて行くなと…」
二階の窓からのどかなウエールズの通りを眺め、あやかが嘆息した。
538ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/14(水) 01:30:47 ID:???
>>537
「日本に帰ったら、今度は又みんなで、どこか温泉でも行きたいわね」
「そうですわね、熱海にあるわたくしの別荘にでもネギ先生をご招待…」
「あらあらあやか」
千鶴がハンカチを取り出して、
ダクダクと鼻から流血しベッドにバッタリ倒れるあやかに駆け寄る、
2003年の夏のある日の出来事であった。

天正二年、春日城いちのくるわ。
「のどか、そなたと物語を聞いた事、けして忘れぬ、楽しかったぞ」
廉姫に頭を下げ、平成の一同は出立した。
「色々と、ありがとうございました」
井尻屋敷から出て来た又兵衛に、ネギ・パーティーの先頭に立ったネギが深々と頭を下げ、
後続もそれに倣う。
「うむ、我々こそ、色々とためになった。超鈴音」
「ハイ?」
虚を突かれた超が素の声を上げた。
「そなたの力を借り、豊かな国が作る事が出来れば、そう姫様も仰せであった。礼を申す」
「いえ、大した事ハ…」
「あんたとは決着付けたかったな、っつーか、いつか決着付けたるさかいな」
「コタロー君」
「おお、待っておるぞ」
ネギがたしなめる中、小太郎と又兵衛が笑みを交わす。
群れの中で美砂がぺこりと小さく頭を下げ、又兵衛が小さく頷く。
又兵衛、仁右衛門の背後から、野原家の車も出て来る。
「今日は晴れそうだ…」
539ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/14(水) 01:31:55 ID:???
>>538

又兵衛を先頭とした選抜隊の横、野原家の車の後ろで、
ネギ・パーティーは顔を伏せて立ち尽くしていた。
又兵衛の堂々たる激の下、横の軍勢からはビリビリとしたものが伝わって来て口も開けない。
「早足、前へー!!」
軍勢が音を立てて前進し、城門へ向けて駆け足をする。その先に広がるのは敵兵、いくさ場。
「いましばしお待ちを!」
平成組の先頭となる乗用車が門近くで制止される。
敵方が混乱したら、戦闘が始まったら、そちらに注意が向けられている隙に脱出する算段だ。
「頃合です!どうぞ!」
遠くから聞こえる尋常ではない罵声怒号絶叫、そこにエンジン音が一際高く割り込む。
「ほっほーい、きれーなおねいさんたちぃ、まったねーっ」
「あぶねえっ!ハコノリしてんじゃねぇガキっ!!」
千雨の絶叫と共に、しんのすけが車内に引きずり込まれ一瞬車内に星が見えた気がした。
「行きます!」
ネギが凛々しいぐらいの声で言い、皆は一つ頷いて彼に従った。

「今度はなんじゃ!?」
「妙な奴ばらが春日の城から?」
「放てぇーっ!!」
当然見た事もない鉄の箱が戦場の脇を通り過ぎたその後を、
又しても妙な集団が駆け抜けようとしているのを大蔵井勢力が見逃す筈も無く、
「風よ我等をっ!」
ネギの魔法が、辛うじて矢玉の第一陣から皆を防御する。
「ご無事でしたか?」
「あ、ありがとうせっちゃん」
「やっぱりきれー…」
たった今真っ白な繭と化していた刹那が、亜子の呟きの中、
腕に抱いた木乃香を放し、羽をたたむ。
540ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/14(水) 01:33:03 ID:???
>>539
「ラ・ステル、マ・スキル…
風花旋風風障壁っ!」
「何じゃっ!?」
「ふ、風神の化身かっ!?」
ネギの魔法で時間を稼いでいる間に準備を進め、
ネギ・パーティーを取り巻く竜巻が鎮まるのと共に一同前へと走り出した。
「放て放て放てぇーっ!!」
「ひいっ!」
「大丈夫、あの距離では当たりませんっ!」
銃声に悲鳴を上げる亜子に、刹那が、「そうそう」と言う言葉を省いて叫ぶ。
「何だっ!?」
「増えよった!?」
そして、ネギ・パーティーは、ゴーレムと狗神の大群が併走する横を必死に走り続けた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
541マロン名無しさん:2008/05/14(水) 02:17:33 ID:???
GJ!!
そろそろクライマックス間近ですね!期待しています
542マロン名無しさん:2008/05/14(水) 07:00:34 ID:???
543マロン名無しさん:2008/05/14(水) 17:13:05 ID:???
wktkwktk。
544ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/05/17(土) 03:01:12 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>540

ネギ・パーティーの横で、狗神が甲高く鳴き、ゴーレムが煙に化ける。
ネギとアーニャが、空き加減になって来たゴーレムの隙間から少しでも防壁を飛ばすが、
何しろ走りながらなので勝手が違う。
一瞬、運動部戦闘グループの横ががら空きになった。
「ゆーな大丈夫っ!?」
目の前を切れる風にアキラが叫んだ。
「にゃ、にゃははははっw本物の鉄砲玉ってこんな音立てて飛ぶんだにゃーwwwww」
「今行くっ!」
ハルナがスケッチブックに念じるが、さすがのパル画伯も走行中の作成は難しい、
作り置きも少なくなっている。
「…弾数、減ったか…」
真実が呟く。
「で、ござるな」
「…こっちに構ってる場合じゃなくなったって事か…」
千雨が言い、横を見る。
「走るよっ!」
叫んだのは、ぎゅっと拳を握った美砂だった。
「又兵衛さんたちが命懸けでっ、私たちのためでもあるんだからっ!!」
「はいっ!」
ネギが叫ぶ。
美砂と目が合った千雨がしっかりと頷き、美砂が頷き返した。
545ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/17(土) 03:02:22 ID:???
>>544

気が付いた時には、ネギ・パーティーの大半は、高々と草の茂る野っ原で
大の字に転がっていた。
「蚊?」
寝っ転がってパチンと頬を叩いた美砂が言う。
「気を付けるネ、無闇に刺されるとこの時代の蚊は恐ろしいヨ」
それでも息を切らせて座っている超が言った。
「逃げ切った、のかな?」
裕奈が言う。
「何とか、いくさ場から離脱する事には成功したみたいですね」
刹那が周囲を見回して言った。
「こっちが逃げ切ったって事は、あっちも脱けたかな?」
千雨が楓に言う。
「そうでごさるな」
「春日を離れさえすれば何とかなるか…まあ、こっちも死ぬ目見てる訳だけど」
「拙者もお役御免でござるか」
千雨が、ふっと笑って座り込む。
「?」
「どうしたの、コタロー君?」
表情が険しくなった小太郎に、隣に座っていた夏美が言う。
「血の臭いや」
小太郎の呟きに、場に緊張が走る。
「…おい、どないした?大丈夫か?…」
小太郎が草むらが引きずり出したのは、農夫風の野良着の男だった。
アキラが、その姿を見た瞬間に卒倒した亜子の体を支える。
546ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/17(土) 03:03:30 ID:???
>>545
「ちょっと待ってな」
「変身」した木乃香が駆け寄り、男を白扇で扇ぐ。
「どや?」
「お腹の傷、時間経ってるみたい」
小太郎の問いに、木乃香が泣きそうな声で答える。
「離れるでござる」
楓が低い声で言う。
「え?」
「ああ、そうした方がええ」
小太郎が同意し、戸惑う木乃香を刹那に引き渡す。
次の瞬間、刹那と楓が左右に展開し、そちらから鋭い金属音が響いた。
「ここを動かないで」
夕凪を八双に構え、木乃香の前に立つ刹那は凛々しかった。
その木乃香の周辺で刹那の姿が分身し、
楓がネギ・パーティーの周辺を跳び回る後を金属音が追跡する。
「夏美姉ちゃん、ここ動くなや」
小太郎が言い、狗神が離れた草むらに殺到する。
そこから飛び出した、行商人風の男二人が小太郎に駆け寄る。
小太郎の拳が、脚が空を切り、飛び退いた二人は小刀を手に着地する。
「風楯っ!」
「このっ!」
明日菜のハリセンとネギ、アーニャの魔法防壁が、新たに飛来した手裏剣を叩き落とした。
547ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/17(土) 03:04:40 ID:???
>>546

鋭い、鳥の鳴き声の様な音と共に、周辺に展開していた僅かな気配と殺気が消滅する。
例外として、背の高い草むらの一つからガサガサと音が響いた。
ネギと明日菜を戦闘にそちらに走る。
そこでは、仰向けに転がった行商人風の男が天に向けて小刀を握った腕を掲げ、
その腕を左脇に抱えた小太郎が男の喉を右手の全ての指で掴んでいる所だった。
「死ん、でる?」
明日菜が言った。
「ああ、殺らなこっちが殺られてた、こいつらプロ、それも凄腕や」
「どうしたの?コタロー君?」
「ああ、何でもない何でもない」
夏美の声を聞いた明日菜が素早く反応し夏美の前に笑顔で立ちふさがる。
「敵がいたみたいやな、ま、片は付いたみたいや」
学ランの上のローブをパンパンと払いながら、
小太郎は嘘ではない範囲で口を開き立ち上がる。
「お主は助からぬ、拙者は只の旅の者、名前だけでも聞いておこう」
「あ、ああ…」
農夫風の男の口に耳を寄せていた楓が、瞬時に男の口に手を突っ込む。
そして、聞き出した名を素早くのどかに伝える。
「助からぬと言うのはまことの事。もう少し、長らえるでござる」
指を噛み千切らんばかりの激痛に、一瞬顔を歪めた楓が言った。

今回はここまでです。続きは折を見て。
548ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/05/17(土) 03:26:08 ID:???
>>544
訂正
「…弾数、減ったか…」
真実が呟く。

お分かりかとも思いますが、真名の事です。
549マロン名無しさん:2008/05/17(土) 10:14:32 ID:???
550ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/05/17(土) 12:15:16 ID:???
>>544
度々すいませんが訂正です。

一瞬、運動部戦闘グループの横ががら空きになった。

→運動部先頭グループ

です。
あの面子だと、なんかマジでありそうなので、訂正入れときます。すいませんでした。
551マロン名無しさん:2008/05/19(月) 01:50:33 ID:???
まとめ更新遅いよ!
何やってんの!?
552マロン名無しさん:2008/05/19(月) 06:02:30 ID:???
面白い作品多いのに何でこんなに過疎ってるんだよ・・・
553マロン名無しさん:2008/05/19(月) 18:11:02 ID:???
銀魂とネギまのクロス小説検索してみたら意外に少ない…。
Wikiにすら一つだけか…。
554マロン名無しさん:2008/05/22(木) 16:12:39 ID:???
保守です
555マロン名無しさん:2008/05/24(土) 22:28:22 ID:???
age
556マロン名無しさん:2008/05/25(日) 01:16:15 ID:???
ジャンプ漫画とネギまのクロスって何々ある?
557ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/05/27(火) 02:45:19 ID:???
お久しぶりですいません。では、今回の投下、入ります。

>>547

「本屋、何か分かったか?」
千雨がのどかに声を掛ける。
「読めた所をまとめるです」
のどかの代わりに夕映が口を開く。紙の様に真っ白な顔色だ。
「この男は風魔の間者です。
常陸に逃れている太田三楽を支持する国人衆が春日の南で挙兵しました。
彼らの狙いは、形式上は北条氏からの養子に支配された現在の太田家を打ち破り、
再び三楽を岩付の領主として迎え入れる事です。
その手始めとして、この戦乱に乗じて、
北条に与して現在の太田家と結んで来た大蔵井を落としそこに拠点を作る気ですが、
大蔵井との関係は別にして春日もまた北条方として領土を安堵されているです。
通過路に当たる春日でのいくさは避けられません」
「人数は?」
楓が尋ねる。
「現時点でおよそ三千」
「三千人…」
美砂が青い顔で言う。
「今、その方角なら、千人いれば春日はもちろんいくさ疲れした大蔵井を落とす事も可能です。
攻め落とすだけなら、ですが」
刹那が言う。
「その通りです。これは魁けに過ぎません。
その後を追って武蔵、関東の反北条勢力が春日、大蔵井、そして岩付に集結する予定です。
背後には太田三楽、その庇護者である常陸の佐竹、安房の里見、
そして、既に関東入りしている上杉謙信の軍勢が合力すれば万を超える数になるです。
上杉の軒猿がそのために入念に情報を収集、連絡を密にして
春日大蔵井の両者がいくさに疲弊するこのタイミングを伺っていたです」
558ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/27(火) 02:46:24 ID:???
>>557
「関東の反北条勢力がこのタイミングに糾合すると言う事になれば、
とても持ちこたえられない」
刹那が言った。
「はいです。この企ては、上杉方でも老練な政治家が、
既に決裂したとは言え、一時は北条家と和睦した事で失った
関東の反北条勢力からの支持を取り戻す事も視野に入れている模様です」
「風魔の間者でござるか。この事を北条方に伝えて…」
楓の言葉に、ノーパソを操作していた超が首を横に振る。
「今から報せたとしても、援軍が到着する頃には国は蹂躙された後ネ」
「そう言う事です。元々、春日は歴史の表舞台にすら登場しない小国。
ここで、関東の大国の間で歴史に呑み込まれるです…」
言いかけた夕映の体が吹っ飛んだ。
「やめなって美砂っ!」
夕映を張り飛ばして胸倉を掴んだ美砂に、円が後ろから組み付く。
「あんた、あんたにとっては教科書にも載ってない只の昔の人でもさぁ、
又兵衛さん廉姫様殿様村の子供たちみんな、みんなみんな、私、私話して一緒にいて、
少しの間だけど一緒に寝泊まりして一緒にいて…」
「分かってる、夕映だって分かってるからっ!」
「いえ、申し訳なかったです」
円が叫び、夕映が頬を押さえて立ち上がる。
ううっと嗚咽する声が聞こえた。そちらを見ると、意外な事にと言うべきか、
運動部の中で真っ先に裕奈が顔を覆って泣き崩れ、亜子もまき絵もかける言葉を探していた。
「ちょっ!」
和美の声に一同反応する。
「しんちゃん、野原さんの車、引っ返してる、真っ直ぐ戦場に向かってるうっ!!」
「あのバカッ!!」
「いやああああっ!!」
「うあああああああっ!!」
559ネギま!戦国史(クレしん):2008/05/27(火) 02:47:30 ID:???
>>558
千雨の怒号、美砂の悲鳴と共に、地を揺るがす様な小太郎の拳が地面に叩き込まれる。
「ネギ、夏美姉ちゃんたち頼む」
「コタロー君?」
「ちぃと、ネコババ野郎ども蹴散らしてすぐ戻るさかいな、頼むわ」
「無茶ですっ!」
葉加瀬が叫ぶ。
「元々大した喧嘩やない。出端で転けたら後で控えてる連中も引っ込むやろ」
「そうじゃなくって、そんな事したら歴史が…」
「おっちゃんが命懸けて守り抜こうとしたモン、そんな横から持ってかせるかっ!」
超が、右手にリュック左手に茶封筒を持って真名に差し出した。
「ちょっ、あれ、お金万札札束?」
「この場面においてだけは死ぬ程無駄な紙切れだな」
桜子の言葉に千雨が呟く。
「好きな方を選んで欲しい」
「仕事か?」
「そうダ、国人衆を鎮圧する、手伝て欲しい。
それを断るなら、ネギ坊主やみんなを頼ム」
「超さん…」
夕映が超を見て呟く。
「超さんっ!何を考えて、そんな事したら、歴史、が…」
聡美が言いかけ、真っ直ぐ聡美を見る超の目に何かを思い出したかの様に言葉を呑み込んだ。
「過去でも、未来でも、どこでも、歴史よりも、そして我が身よりも大切な人がイル、
それが私の生き方ダ」

今回はここまでです。続きは折を見て。
560マロン名無しさん:2008/05/27(火) 21:19:39 ID:???
超カッコヨス。乙した。
561マロン名無しさん:2008/05/27(火) 21:24:39 ID:???
562マロン名無しさん:2008/05/30(金) 01:14:22 ID:???
保守
563マロン名無しさん:2008/05/31(土) 02:12:22 ID:???
ほしゅ
564マロン名無しさん:2008/05/31(土) 15:10:01 ID:???
保守
565マロン名無しさん:2008/06/02(月) 01:47:46 ID:???
6月最初の保守
566マロン名無しさん:2008/06/05(木) 21:44:22 ID:???
>>537>>538
元ネタやっとわかった
567マロン名無しさん:2008/06/07(土) 02:49:31 ID:???
デスノスレ落ちた?
568マロン名無しさん:2008/06/08(日) 22:46:59 ID:???
でも復活した
569マロン名無しさん:2008/06/09(月) 00:11:40 ID:???
みたいだね
570ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/06/09(月) 03:26:28 ID:???
やっと戻って来る事が出来ました。お久しぶりですいません。
早速ですが、今回の投下、入ります。

>>559
「いいだろう、後で存分にあんみつを頂こう」
真名が茶封筒を受け取った。
「私も行く」
ハルナが立ち上がった。
「ハルナ」
「だって、ほっとけないでしょ春日のみんなの事」
声を掛ける夕映にハルナが言う。
「しかし…」
「…迷てる様ダネ…」
「迷うでしょ普通っ!」
叫んだのは明日菜だった。
「では、このまま行けば何が起きるかを話しておこう。
それで、迷いがなくなると言う保障はないガネ」
「超さんっ!」
「超っ!」
葉加瀬と夕映、そして千雨が同時に叫ぶ。
「聞かせて」
明日菜が言う。
「上杉謙信の関東出兵は、あくまで足利将軍家より任じられた関東地方の管理者、
関東管領の職務として行っている、本人はそのつもりネ。
だけど、この当時、関東を含め地方地方の実力者にとって、
足利将軍家の権威などと言うものは、それなりに名目が立つと言う以上のものではない。
今回のいくさで言えば、春日大蔵井に隣接する岩付城を
本来の城主である太田資正=太田三楽斎に奪い返す事。
571ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/09(月) 03:27:36 ID:???
>>570
武蔵における反北条勢力の一角を占めていた太田資正は、
名将とうたわれたいくさ上手であり、
名目上の関東支配者である関東公方を押し込め関東全域に実力で支配権を確立して来た
北条氏にとっては武蔵に居座る厄介な相手、足利将軍家より任じられた関東管領として
そんな北条氏の強奪を打破しようと奮戦して来た
上杉謙信にとっては頼もしい関東の味方であたが、
その名将太田資正は北条氏に内応した嫡子氏資によって追放されている。
その氏資も北条軍に加わったいくさで戦死、現在の岩付は北条の直轄領となってイル。
北条一族の源五郎が太田氏資の娘を娶り形式上太田家を継ぐのは来年辺りの筈だから、
綾瀬サンは先ほど些か先入観で説明したのではないのカナ?」
「急ぎましたので、自分の知識を加えて掻い摘んだです」
「どの道、元の城主から奪われている状態である事に違いはナイ、
実力がなければそうなるのは、戦国の世であれば当たり前の事ネ。
しかし、上杉謙信はそうは考えない。足利将軍家が関東に使わした管領職として、
関東で勝手に切り取られた領土を元の持ち主に戻す、
そのために越後から山を越えて関東まで出張って来る。
そして、春日大蔵井のいくさに乗じて岩付を奪い返し、太田資正を再びその城主として迎える。
関東管領として、足利将軍家より認められて来た城主を正しい地位に戻す。
それが今回の目的、それ以上の事は考えてないネ。
そして、その準備のため、現在北条方である岩付の隣国春日大蔵井を攻め落とし服従を誓わせ、
現在北条の支配下にある岩付城を攻略する足がかりにする。それが狙いと言う事になる。
だが、直轄領である武蔵の重要拠点である岩付城を、
それも城なくしても秀吉の北条攻めに至るまで反北条を貫き通した
頑固な難敵太田資正を擁して攻められて、
それで関東で強大な覇権を握る北条氏が黙っている筈がナイ」
「つまり、関東を実際に支配している北条と春日、大蔵井の戦争になる」
和美が言い、刹那が頷いた。
「春日、大蔵井にしてみれば前門の狼後門の虎ネ。
今両国の間で行われている春日合戦、それによって疲弊した両国には
これから攻め寄せる上杉勢を防ぐ余力はナイ。
572ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/09(月) 03:28:41 ID:???
>>571
そのまま、上杉の本軍が到着して駐屯されてしまう見込みが高い。
越後から来た上杉の大軍が居座ってしまえば、春日大蔵井はそちらに味方せざるを得ない。
だからと言って、そこから岩付城を攻められて現在の城主である北条氏が黙っている道理も無い。
近隣諸国下手をすると関東中から援軍を募ってでも、
攻撃拠点である春日大蔵井を攻め落とそうとする。
もっと問題なのは、上杉謙信自身に領土欲が無いと言う事ネ」
「ならいいんじゃない?無欲なら別に」
美砂の言葉に超が首を横に振る。
「つまり、支配する気が無いと言う事は経営するつもり、
維持するつもりもないと言う事になるネ。
北条氏の場合、関東の覇者としてそこに君臨しようとするから、
領有している土地の民政にはそれなりに、いや、当時としてはかなりのレベルで心を砕いてイル。
だが、上杉謙信の場合は、
北条氏から奪った領土を足利将軍家より伝統的にその地位を認められた元の領主に
そのまま戻す、それだけの事。自分で領有し経営しようと言うつもりはナイ」
「無責任な話って事か」
千雨が言った。
「しかも、上杉謙信の本来の領土は越後、
この当時の事ダカラ兵隊の大半は農民からかり出されている。
だから、雪が降る前に山を越え、地元での農作業に備えなければならない。
そのために関東から越後に引き揚げ、三国峠が山が雪に閉ざされ雪が溶けるまでの間、
北条氏から領土を奪い返した実力部隊である、
関東管領様の巨大な直轄軍は関東に物理的に存在しない事となる」
「北条が春になるまで指をくわえてみている、訳がなかろうな」
楓が言い、超が頷いて続けた。
「元々の領主も北条に対抗するだけの実力が無かったからこそ北条に領土を奪われた。
そして、北条に対抗出来るだけの主力部隊は山の向こう。
北条は当然これを奪い返そうとする。
北条が奪い返して、それから春が来たら、
また上杉謙信が関東に出兵して来て奪い返された領土をまた奪い返そうとする。
573ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/09(月) 03:29:48 ID:???
>>572
そのたびそのたび、打ち続く飢饉の中、
足軽として出兵しいくさで奪う銭で辛うじて自分と家族の命を繋いでいる関東の百姓衆は、
いくさの度ごとに踏み荒らされる敵地で作物を奪い家財を奪い、
女を奪い子供を奪い、モノとして奴隷として商人に叩き売て、
それでようやく日銭を稼いで自分と家族の年越しの見込みを立てる。
春日でも大蔵井でもそれが繰り返される事にナル。
当時の村々百姓衆にもそれ相応の武力、自衛手段があるとは言ても、
巨大勢力同士の争いが続けばそれても限度と言うものがアル。
終わった頃には歴史から綺麗サッパリ消えてなくなると言うのも道理の事ネ」
「嫌だ…」
ハルナがぽつりと言った。
「嫌だ…そんなの嫌だ、春日のみんなが、そんなの嫌だ嫌だっ!!
やっぱ私行く、私が行けば、何とかなるかも知れない、こんなの見過ごして先行けないっ!」
「ハルナっ!」
叫ぶハルナに夕映が叫び返した。
「落ち着け早乙女っ!」
千雨が割って入る。
「私も、行く」
裕奈がぽつりと言った。
「私が、私があの時引き受けてれば、あの時逃げなかったら、
もっと早く決着付いてたかも知れない。
それで、こんな結果になるなんて、私だって、そんなの嫌だ…」
「おい明石っ、学園祭でロボ相手に射的やるのと訳違うんだぞっ!」
「分かってるっ!だから行くって言ってるんでしょっ!!」
「やめてよっ、ゆーなも千雨ちゃんもっ!!」
まき絵が絶叫する。
「せっちゃん…」
「はい」
「みんなケガ、するんかな?一杯血ぃ、出るんかな?みんな、あそこで会ったみんな、
みんなみんな、死ぬんかな?」
574ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/09(月) 03:30:55 ID:???
>>573
「お嬢様…」
「とにかくハルナ、落ち着くです。この時代、この時間の異邦人である我々、
匹夫の勇を起こしては、無理に割り込めば取り返しの付かない…」
「分かってる、私だってド○え○んぐらい読んでるんだから夕映の言いたい事くらい分かってる。
でもさ、本当に、本当に私たち、只の異邦人なの?ただ、あの人達の前を通り過ぎた、
それだけでいいのゆえっ!?」
「ゆえ…」
「おい本屋っ!」
そんなハルナと夕映を見て呟くのどかの肩を、千雨が掴む。
「おい本屋、妙な事考えんじゃねぇぞ。
私たちとあの人達、そりゃ他人じゃないってのは分かる。
けどな、このまま突っ込んだら殺るか殺られるか、命のやり取りになる、
あの人達にそんだけの義理があんのか?な?腹くくって考えろよおい本屋っ!」
「義理、ですか」
不穏な眼差しがいくつか千雨に注がれる中、ネギが口を開いた。
「僕は、皆さんと出会って、一年も経っていません。
でも、僕にとっては掛け替えのない、大切な生徒であり友達であり仲間、
心からそう思っています。
春日の人達もそうです。ほんの何日かだったかも知れない。
でも、あの人達と過ごした事は忘れられない、ただの通り過ぎた過去だとは、とても思えない。
僕は、先生としてしなければいけない事があります。
僕は、皆さんの先生です。先生として、皆さんを安全に送り届ける義務があります。
ですから、このパーティーを最高速度で安全な所に進めたいんです」

今回はここまでです。続きは折を見て。
575マロン名無しさん:2008/06/10(火) 00:23:14 ID:???
GJ!!
このスレも何気にしぶといよな
576マロン名無しさん:2008/06/10(火) 10:47:54 ID:???

577マロン名無しさん:2008/06/11(水) 21:45:11 ID:???
578マロン名無しさん:2008/06/13(金) 23:03:59 ID:???
保守
579マロン名無しさん:2008/06/13(金) 23:46:35 ID:???
ここのローゼンてどうなった?
580マロン名無しさん:2008/06/14(土) 00:31:48 ID:???
そういえば地獄少女とかもあったよね
581マロン名無しさん:2008/06/14(土) 04:01:22 ID:???
メタルウルフカオスもあったな……
俺としては狂喜だったんだがな……
582ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/06/14(土) 17:55:02 ID:???
毎度変わり映えもしない昨今の常連ですがw、おまけに遅れ気味ですいません。
では、今回の投下入ります。

>>574
一同が、じっとネギの次の言葉を待った。
「出来得る限りの総力を挙げて、最小限の被害で上杉勢の割り込みを鎮圧、引き揚げさせます。
コタロー君の言った通り、タイミングが合わなければこの挙兵は無意味です。
それが、このパーティーの最高速度、そう判断しました」
千雨がすとんと膝を着き、パーティーがわっと沸き上がった。
「もちろん、無理強いは出来ません。それに、戦闘力の関係で待機してもらう人もいます。
死ぬかも知れない、殺さなければ自分も他の人も危ない戦場に行く事、
その事を自分で、自己責任で了解出来る人、そして、それだけの能力がある人。
それ以外は連れて行く事は出来ません。じゃないと本当に全滅してしまう。
それだけは避けなければいけない。先生として、絶対に」
ある者は力強く、ある者は怯えを見せながら、沈黙と共に前を見る。
「…和泉、大丈夫か?…」
千雨が震える亜子に声を掛けた。
「血ぃ見る所の騒ぎじゃなくなるかも知れないぞ、無理すんなよ」
「分かってる。でも、ネギ君信じる、それに、みんなの事も」
「そうか」
「千雨さん」
ネギが、千雨の前に立ち、声を掛ける。
「有り難うございました。色々言い難い事言ってくれて」
「私が、戦争が、死ぬのが怖かったんだよ」
そっぽを向いた千雨が、震える声で言った。
「千雨さんは、凄く優しくて、情の深い人です。
だから、みんなが勢いで突っ走って後悔しない様に、自分が嫌われてもきつい事言ってくれた。
有り難うございました」
ネギがもう一度頭を下げると、千雨はくずおれた。
583ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/14(土) 17:58:24 ID:???
>>582
「…ん、じまう…」
「?」
「あいつら…しんのすけも、あいつらもみんな、みんなみんな死んじまう…
死んじまう、それが運命、それが、歴史…」
「ちょっと…」
震える声で言う千雨に、美砂が言いかける。
「…けど…先生、お前らなら、歴史にだって、勝てるかも…
…す…けて…」
「千雨さん?」
「…けて…助けて…
助けて…助けてくれ、しんのすけひまわりひろしさんみさえさん、春日の人達…
頼む、助けてくれ…
手伝う。私に出来る事だったら何だって手伝う、だから、だからみんな助けて…」
「だよね」
地面に突っ伏した千雨の肩に、美砂が手を置いた。
「ちうちゃん、しんのすけお気に入りのお姉様だもんね、ほっとけないよね」
「だーから…」
「さ、班割りですっ!」
「聞けぇぇぇぇっっっ!!!」

昨今の常連=昨今の常連作者=私の事です、念のため。
今回はここまでです。続きは折を見て。
584マロン名無しさん:2008/06/14(土) 18:31:48 ID:???
乙、じゃなきゃ誰だってんだwww
585マロン名無しさん:2008/06/14(土) 18:35:51 ID:???
586マロン名無しさん:2008/06/17(火) 01:34:22 ID:???
保守
587マロン名無しさん:2008/06/19(木) 22:19:27 ID:???
マダー
588マロン名無しさん:2008/06/20(金) 20:45:30 ID:???
保守
589ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/06/21(土) 20:59:23 ID:???
しばらくです、一週間過ぎてましたね。
早速今回の投下入ります。

>>583

「あんまり時間無いのですが、取りあえず能力別で分担してみました」
ネギが言い、一同ネギの開いたノートの前に集合する。
「まず、武闘派チーム、アスナさん、茶々丸さん、古老師、ハルナさん、刹那さん、超さん、
楓さん、あと、僕とコタロー君、アーニャ」
「詰まり、即戦力ちゅう奴や」
小太郎がぶんぶん腕を回して言う。
「次に、バックアップ。朝倉さん、夕映さん、このかさん、葉加瀬さん、千雨さん、のどかさん」
「こいつは幅が広いな、参謀から特殊能力、いたら役に立つかもまで、
取りあえず攻撃以外で役に立ちそうなメンバーちゅう事や」
小太郎が付け加える。
「そして、残りは亜子さん、美砂さん、円さん、まき絵さん、桜子さん、夏美さん、五月さん、
安全な場所で待機していただきたい人達なんですが、保留が二人います。
アキラさんとゆーなさんです」
590ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/21(土) 21:02:55 ID:???
>>589
「武闘派!」
裕奈が、しゃきっと挙手して睨み付ける勢いでネギを見る。
「お二人は武闘派に加わるだけの攻撃力、能力は確かにあります。
しかし、お祭りは別にして実戦は未知数です。
それに、アキラさん凄く優しい人です。だから迷ってます」
「お願い、私も武闘派チームに入れて」
「明石、もっぺん言うが祭りでロボ相手にしてんのと訳違うんだぞ。
わざわざ好きこのんで戦場に人殺ししに行く気かお前?」
千雨が言う。
「だって、このまま行ったら春日の人達がみんな死ぬって言うんでしょ?」
「だから、急ぐんだよ。
一人一人バケモノじみてるって言ってもこいつらだってそんなガチの戦場なんて経験無いんだ。
そこで血ぃ見てテンパッたりして見ろ、脚引っ張るどころか全滅だ」
「迷惑かけない、ヤバかったら見捨てても何しても構わないからっ!」
「ざけるなっ!このガキにそれさせるつもりかお前はっ!?
それともブチギレた雑兵共にズタボロにマ○されまくって売り飛ばされてぇか、ああっ!?」
自分で言いながら悪寒を覚えつつ千雨が怒鳴る。
「急ぐんでしょ!?だったら、使えるんなら戦力は多い方がいい!
見てるだけで後悔するなんて嫌だっ!」
「こいつらが後悔させると思うか?」
「分かるけどっ…」
591ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/21(土) 21:04:07 ID:???
>>590
「あー、待て待て、今のはあれや、チームの分布図作っただけやから、
朝倉のねーちゃん、どや?」
「うん、居場所は大体分かってる、
悪い事に事故も災害も食中毒も無く着々と目的地に向かってる」
スパイゴーレムのモニターを見ながら、和美が苦い声で言う。
「食中毒か…何とか食事時に向こうの陣地に紛れ込んで
変なもの食わせて太田派国人衆壊滅す、なんて出来ないかなさっちゃん」
「食中毒ですか…難しいですね…」
ハルナの言葉に五月が首を傾げて応える。
「難しいでござろうな、大体、こう言う場合の食料は大体が持参の保存食、
仮に煮炊きするにしても自分の陣笠を鍋にしているものに
一度に毒物の大量投与と言うのは難しいでござる」
「駄目か…こっちも揉めないで手っ取り早いと思ったんだけどな…」
ハルナが嘆息する。
「朝倉サン、引き続き位置の確認ヲ。
話は後、可能な限り接近するネ。既に、方針は決まてるのだろうネギ坊主?
では、小田原評定の間に相手との距離が離れては元も子もないネ」
超がすっぱりと話を引き取った。
「そうですね、とにかく相手を逃がさない、目的地に付けない事を先決で」
刹那が言う。
「分かりました、そうしましょう。よく考えておいて下さい。僕もよく考えますので」
ネギが言った。

今回はここまでです。あんまし進まず少しですいません。
と、言うか、見てて分かるかも知れませんが、
今回の作品クラスの大半にして全員ではない人数がまとまって動いてますので、
今回投下で改めて作者の頭の整理を兼ねた部分もあると言うのが実際でして…
続きは折を見て。
592マロン名無しさん:2008/06/23(月) 02:29:39 ID:???
593マロン名無しさん:2008/06/23(月) 16:13:08 ID:???
乙、少々待ちくたびれかけてた所だ
594ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/06/24(火) 03:02:55 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>591

「国人衆は麓の林を進んでいるですね」
丘と言ってもいい山林に移動したネギ・パーティーの中で、
和美のモニターを眺めながら夕映が言う。
「やると決まった以上、時間は余りありません。
このまま行けば早々に春日は横から狙われて大混乱、
仮にこの事を伝えたとしても対処する人員も時間も無いです」
「やるか?」
夕映の言葉に小太郎が犬歯をむき出して言った。
「このまま攻め下って隊列の横っ腹を急襲する。それが一つの手です。
我々が総力を挙げれば、混戦になってもこちら側に死傷者を出す事無く退散させる事は出来ます。
こちら側に死傷者を出す事無く、言っている意味、分かるですね?」
夕映の言葉に、緊張した表情の裕奈が小さく頷いた。
「混戦の中、敵大将の身柄を拉致して安全な場所まで引きずり出すのは不可能に近い、
決着を付けるには首にするしかないです」
「首に、って」
明日菜の言葉に、夕映は、手刀で自分の首に示した。
「夕映さん、方法がそれだけだと言うのなら、僕は決断します。
やっぱり裕奈さんアキラさんは居残り、担任、隊長命令です。
少しでも、僕が少しでも迷っている以上加えられません」
「いえ、もう一つ、策があるにはあるのですが…」
夕映が、少し苦い顔で言う。
「聞かせて下さい」
ネギに言われた夕映は、チラと夏美に視線を走らせた。
「?」
595ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/24(火) 03:04:01 ID:???
>>594

「…と、言う作戦です…」
スパイゴーレムの映像を広範囲なものにしつつ説明する夕映を前に、
一同が息を呑んだ。
「バックアップはお願いするにしても、リスクが高い作戦です」
「おい、チビ助、それちょっと洒落ならんて、
あー、夏美姉ちゃん、連中俺らで片すさかい、さすがにこれは…」
青い顔で震えていた夏美が、すくっと立ち上がった。
「私、やる」
「どんな状況で何やるか分かってて言ってんのか村上?」
千雨が静かに問う。
「分かってる…主役なんてやった事ない、端役の私が何やるのか、
命懸けだって、分かってる。夕映」
「はい」
「その作戦、配役、今言った通りでいいんだよね?」
「私はそう考えています」
「…私、やる」
「では、コタローさんは?」
「そう言う事なら」
「じゃあ、ネギ先生」
真名が口を開いた。
「立って」
「はい」
促されるまま、ネギが立ち上がる。
カモがささっと動いたかと思うと、思い切り体を曲げた真名の唇がネギの唇に触れていた。
「準備完了だ」
ぽーっとしたネギの前で真名がカードを手に言った。
596ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/24(火) 03:05:08 ID:???
>>595

「?」
国人部隊の一角で、彼らは何やら騒がしい音を聞いていた。
「馬っ!?」
「馬と山犬ぞっ!」
部隊の横合いから現れたのは、犬の群れに襲撃された裸馬の群れだった。
しかも、その獣の群れが小荷駄の横っ腹を直撃したため、
口取も浮き足立つ駄馬を抑えきれない。
そして、その内の一頭が犬に追い立てられる様に林の中に逃走する。

「おいっ、お前らっ!」
駄馬を追い掛けた雑兵が、縄を切って俵を奪取する野良着の二人組を目にした。
二人組は、俵を抱えて走り出す。
だが、内一人がつまずいて転倒、俵も投げ出される。
「お前らあっ!」

「こいつらが、ドサクサに紛れて米を持ち出そうとしていました」
「なんだ、わっぱか?」
雑兵に引きずり出された二人を前に、国人衆の小荷駄奉行が言った。
「こいつは女です」
「何?」
奉行が立ち上がり、地面に座らされた、薄汚れた顔の夏美の胸を掴む。
「確かに、おなごの様だな」
夏美は思わず悲鳴を上げそうになり、隣で小太郎もギリッと歯がみして夕映の指示を思い出す。
“楓さん、龍宮さん、ネギ先生がバックアップに就きますがギリギリまで我慢して下さい。
そう簡単には殺されない筈です。年齢的に殺すよりも使い道があると考えるですから。
無論、命の危険や、
女性として取り返しが付かなくなるほど本当に危険だと言う場合は話は別です。
その時は夏美さん、本気で助けを求めて下さいです。判断は任せるです”
597ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/24(火) 03:06:33 ID:???
>>596
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」
夏美が深々と頭を下げ、小太郎もそれに倣う。
「食べ物が、食べ物が必要なんです、今、食べ物を持って行かないとおとうおかあ弟たちが
殺されてしまうんですっ」
「殺される?」
奉行が聞き返した。
「は、はい、おら達の村に、殿様とお侍が百人だか二百人だか、逃げ込んで来てるんです。
なんでも、いくさで不意打ちされて逃げて来たとかなんとか。
それで、食べるものを用意したら後で褒美を取らす、
さもないとみんなぶった斬って火ぃかけると」
夏美が地面に額を擦り付けて哀願した。
「殿様なんだな?」
「はい、おら達山向こうの村のモンです。
大蔵井の殿様が逃げ込んで来たんです。
おら達も知ってる鬼井尻にまんまとしてやられたと言ってました」
「そうか」
奉行は、何か算段をしている様だった。
「この事、他に誰かに話したか?」
「いいえ、おら達の村の辺りは春日様ですから、
何事もなく早くお帰り頂かないと村でいくさになってしまいます」
「なるほど」
奉行が目配せした。
次の瞬間、小太郎が夏美の体を抱いて地面を転がり、二人の上を刃が通り過ぎる。
「逃げるぞっ!」
小太郎が夏美の手を取って走り出した。
598ネギま!戦国史(クレしん):2008/06/24(火) 03:07:45 ID:???
>>597

「待てっ!」
「逃がすなっ!」
二人の姿を追って林に入った足軽が、近くの藪が動くのに目を付ける。
足軽の一人が藪に槍を突き刺し、先ほどの野良着の二人が這々の体で転げ出る有様を鼻で笑う。
「なっ、なつっ、ねっ、ねえちゃんっ!」
その、弟の方が、立ち上がろうとする姉の前で両腕を広げるのを見て、
足軽は遠慮なく弟の胸を槍で抉る。
「ぐがあっ!」
「こっ、こたっ、こたっ…」
くずおれて呻く弟を前に腰を抜かした姉の姿は、足軽達の口元に笑みを誘わずにはおれない。
足軽達が、瀕死の体で地面を這っている背中に、次々と刀を突き刺していく。
「…あ…が…」
姉に向けて伸ばした手がぱたんと地面に落ちる。
足軽は、それを呆然と眺めていた姉を引きずり出す。
地面に引きずり倒されても野良着を引き裂かれても、自分の体の上で足軽たちがどう動こうと、
全裸にされて足軽たちにのし掛かられたそばかす顔の少女は
惚けた様にほとんど反応を見せない。
数人の足軽がそれを終えると、うっすらと膨らんだ白い胸の下の方に刀を突き立てる。
「悪りぃなぁ、本当だったらこのまんま連れてって売っ払って銭にしたいんだけどよぉ、
絶対に命取っとけってきびしぃーお達しだからよぉ、精々あっちできょうだい仲良くしてな」
足軽たちは先ほどまでせっせと貪っていた白い体にざくざくと刃を突き立て、
ぴくりとも動かなくなった二人の側に座り込み、その首に刃を向けた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
599マロン名無しさん:2008/06/25(水) 03:28:17 ID:???
ウッホw
続きwktk
600マロン名無しさん:2008/06/25(水) 16:12:06 ID:???
601マロン名無しさん:2008/06/26(木) 18:07:23 ID:???
序盤ののどかの位置が何かと似てる気がしていたが
あれだ、元祖キワもの魔法少女の黒魔法少女サディスティック妖子に近かったんだ
もしのどかが実はああいうキャラだったらネギまはどうなってただろうか
602マロン名無しさん:2008/06/26(木) 18:36:27 ID:???
早く続き書いてよー
バトロワスレが作者無き今、あなたの連載だけがマロンの楽しみなんだよー(ToT)
603マロン名無しさん:2008/06/28(土) 14:09:24 ID:???
保守
604マロン名無しさん:2008/06/30(月) 13:29:58 ID:???
保守
605マロン名無しさん:2008/07/02(水) 19:01:16 ID:???
保守age
606ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/07/02(水) 22:28:33 ID:???
お久しぶりです。相変わらず間が空いてすいません。
では、今回の投下、入ります。

>>598

「あんな連中に追い付かれるかってぇの」
林の中で、鼻の下をこする小太郎の隣では、
半ば獣化した小太郎に抱えられ超特急で運ばれた夏美の頬からまだ赤さが引かない。
「グロッ、でも、そんだけ上出来って事だね」
スパイゴーレムのモニターを見て、和美が言う。
「大変だったんだよ、動物図鑑並の馬を団体さんでとか、
あそこまでリアルなの作って念力込めてバレない様に維持するのって。
死体ごと木っ端微塵に大爆発なんて作戦にしてくれたら楽だったのにさぁ」
そんな皆の側でハルナが落書帝国片手に笑った。
「確かにネ、いっそ空でも飛ばせてパーッと花火になってもらた方が話が早かたね」
超もにやっと笑う。
「それは、さすがにこの時代では無理がありすぎるですから」
「あれ?でもさー、
信長ってザビエルの火薬で本能寺ごと木っ端微塵で骨も残らなかったんじゃなかったっけ?」
ハルナが言う。
「そもそもザビエルではないですし、その説は当時の火薬原料の貿易実績を考えても
無理があり過ぎるです」
「ほな、ボチボチ行こか」
飛行狗神に乗った小太郎が言い、和美が不敵な笑みを返した。
607ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/02(水) 22:29:38 ID:???
>>606

「百姓娘を捕らえました」
「又か」
国人衆の行軍の中、奉行の前に引き出されたのは、野良着姿の和美だった。
「この様な所で何をしている?」
「食い物探してるだよ、お侍さんこそ、大蔵井の殿様をお捜しで?」
和美は、臆するでもなくぶっきらぼうな程の口調で言った。
「知っておるのか?」
奉行の言葉に、和美は指を一本突き出した。
「米一俵」
「貴様あっ!」
「いいだろう、ただし、偽りであればその分には捨て置かんぞ」
奉行が、近習を手で制して言う。
「へっへっ、大蔵井の殿様、おらの村に隠れてたども、
春日様の軍勢が近づいてるって聞いてこっそり村ぁ抜け出して隠れてるだ」
「ほう、それで?」
和美が掌を差し出す。
鼻を鳴らした侍が小粒を乗せ、和美がその掌をぎゅっと握ってにっと笑みを浮かべる。

「あそこにおるのか?」
「ええ、あそこに隠れてますだよ」
奉行の率いる一隊を案内して来た和美が言う。
山林が開けた一角に立つ大きなお堂の様な建物。そこは、言わば村の砦だった。
本来、いくさが起きた時、下の村の者はそこに避難する事になっている。
「大蔵井を見知った者はおるか?」
「はっ」
「見て参れ」
国人衆から、幾人かの物見が砦に接近する。
608ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/02(水) 22:30:49 ID:???
>>607
物見がそっと中を覗くと、十数人と言った武者が囲む土間で、
鎧を外してどっかりと床几に掛け、
単衣姿の若い娘に囲まれてかわらけを手にする高虎の姿が見えた。
娘の一人が手にした瓶子から濁酒をかわらけに注ぎ、高虎がぐっとそれをあおるのが見える。
「くぁー、良いかぁー、立ち戻ったら春日の輩など鎧袖一触じゃあ、
その方らにも存分の褒美をとらすぞぉ、んーっ」
物見には、高笑いした高虎が手近な娘を引き寄せ、単衣の前を開いて唇を寄せる姿が見える。
「こ、殺すか?」
「いやいや、まずはお報せして」

「そうか」
山林に隠れた侍大将が立ち上がる。
「では、ご褒美を」
片膝を付いていた和美が言う。
「ハハハハハ」
「ハハハハハハハハ…」
奉行の目配せを受けた侍が抜いた刀を振り上げた。
「おい、何をしている?」
奉行が怪訝な表情で言う。
「か、体が動かない…」
その間に、和美はしゃかしゃかと逃走する。
「はあっ、はあっ…」
固まっていた侍がようやく硬直を緩めて荒い息を吐く。
「待てえっ!おっ!?」
林に風が巻き、巻き上がった木の葉や木の枝、もがれた木の実が
一斉に宙を舞って和美を追う追っ手に叩き付けられる。
609ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/02(水) 22:31:57 ID:???
>>608
「追えっ…」
逃走した和美と入れ違う様に、立て続けの銃声と共に部隊の足軽が次々と倒れる。
「殿っ、お逃げ下さい軍勢があっ!」
離れた場所から怒声が響く。
「くそっ!高虎、高虎ぞっ!」
「又かっ!気を付けろっ!かなりの数の鉄砲が潜んでおるぞっ!!」
「伝令っ!高虎が逃げるぞっ!!」
部隊に怒号が渦巻き、砦を総攻撃に掛かる。
「はあっ、はあっ…」
そのお陰で瞬時に忘れてもらえた和美が膝と両手を地面に着いていた。
「お疲れ様でした」
夕映が言い、和美に竹筒を渡す。頬から溢れさせて竹筒の水を飲む和美の側で、
魔法拳銃を手にした裕奈が周囲を伺っている。
「ケガないん?」
「私は大丈夫、龍宮大丈夫かな?」
木乃香の問いに和美が答えた。
「あいつなら大丈夫だ。お疲れ様でした」
刹那が言う。
「はあ、はあ…」
「私よりもさ、ありがと、さよちゃん」
「はあ、はあ…はい、お役に立てて、嬉しいです」
ニッと笑った和美の側で、さよもにこっと微笑んだ。

今回はここまでです。続きは折を見て。
610マロン名無しさん:2008/07/02(水) 22:43:37 ID:???
611マロン名無しさん:2008/07/03(木) 10:34:42 ID:???
GJ!
続き期待してます
612ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/07/03(木) 23:33:01 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>609

「こっちだーっ!」
「いたぞーっ!」
「高虎ぞーっ!!」
「さすがですね早乙女さん…」
林の中で、刹那が汗を浮かべて呟いた。
「私達が教えた特徴だけであれだけ精密なゴーレムを描き上げるとは、しかもあの数…」
「あれも一種の達人だな。で、このまま時間稼ぎか?」
千雨が、隣の夕映に尋ねる。
「いえ、高虎殿が僅かな供回りと共にいると分かると、
ここに大軍を呼び寄せられる恐れがあるです。そろそろ次の手を…」
言いかける夕映の目の前では、刹那が指を立てて唇に当てていた。
その仕事モードの目に、千雨の身にも冷や汗が伝う。
次の瞬間には、刹那は手近な樹木を切り倒していた。
切り倒された樹木の陰から、具足を外した足軽風の男が逃走する。
「お、おい、桜咲っ!」
夕映、茶々丸と共に取り残され、千雨が思わず声を上げる。
「何何、どうしたの?」
そこに運動部四人組が現れて、千雨は正直ほっとする。
613ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/03(木) 23:34:08 ID:???
>>612

足軽が林の中の祠に飛び込み、刹那がその後に続く。
飛び込んだ刹那がハッとする。祠の中には先客が二人、笠を外した雲水がいた。
次の瞬間ここに逃げ込んだ足軽が振り返り、刹那はさっと飛び退くが、
一瞬遅れた刹那の左腕に鋭い痛みが入る。
ガクッと膝を着いた刹那が、苦無を振り上げた足軽を全力で一刀両断にし、
左腕の傷にかぶりついて吸い出した血を床に吐く。
雲水が刹那に殺到し、次々と振り下ろされる錫杖の仕込み刀を
刹那は床を転がり辛うじて避ける。
夕凪を手に身を起こし、次なる攻撃を弾いて立ち上がった刹那がくらっとふらつく。
「うああああっ!」
夕凪の切っ先で床を突き、辛うじて身を支えた刹那が殺到する刃を弾き
威嚇する様に叫びながら夕凪を大振りに振る。
振り回していた夕凪がすっぽ抜け、壁に突き刺さる。
勢い余った刹那が不規則に足踏みし、床に転倒する。
“…まずい…息が、詰まってきた…酸素、空気、美、空さ、ん…”
苦しい息の下、刹那が床に転がる。その頭の横に仕込みの切っ先が突き刺さる。
刹那は、何とか振った腕から気弾を放ち、僅かに雲水を牽制する。
“…私は、死ぬのか?…”
既に朦朧とし始めた刹那の脳裏に、辛く、冷たい過去が浮かび上がる。
そして、それは時を経るにつれ、優しく、温かいものになっていく。
「冗談、じゃ、ない…」
自然に出ていたカポエラキック紛いの動きで雲水を牽制した刹那が身を起こそうとするが、
その体を持ち上げようとする肘もガクッと崩れ、床に伏した刹那は懸命に呼吸をしようとする。
「冗談、じゃ…ネギ、先生…この…ちゃん…」
再び、震える右手を床に着く刹那の周囲で、仕込みを逆手に持った雲水が
振り上げた仕込みの切っ先を刹那に向けていた。

短くてすいませんが今回はここまでです。続きは折を見て。
614マロン名無しさん:2008/07/04(金) 03:05:38 ID:???
乙っす
空気・・・美空さんてひどすぎだろw
615マロン名無しさん:2008/07/07(月) 13:18:12 ID:???
保守
616ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/07/09(水) 00:37:05 ID:???
間が空きましたが今回の投下、入ります。

>>613
全力を振り絞り、刹那は這いずる腕を上げようとする。
“いやだ逝きたくない!!…死にたくない!!…”
「逝きたく、ない…」
霞む意識の下、刹那は扉からバンと大きな音を聞く。
目の前で雲水が一人吹っ飛んだ。
「あ、かし、さん?」
抱き抱えられ、仕込みが突き刺さる床を共に転がりながら刹那が切れ切れに言った。
「桜咲さん!?大丈夫っ!?」
「あぶ、ないっ!」
刹那があらん限りの力で裕奈を突き飛ばし、その上で刃が空を切る。
「…あんたらあああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
617ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/09(水) 00:38:13 ID:???
>>616

運動部の残りのメンバーを先頭にネギ・パーティーから何人かが駆け付けると、
祠の中ではザンバラ髪の裕奈が銃を握った両手をだらりと下げ、荒い息を吐いていた。
踏み込んだ超が倒れる二人の雲水の脈を取り、首を横に振る。
「私、夢中だったから、殺されそうだったし…」
「こいつら、忍びだな」
骸の近くにしゃがんだ真名が言う。
「恐らく軒猿。事が上杉の本隊にでも漏れたら綾瀬の策も危なかった。口を塞いで正解だ」
「わ、私、そんなつもり…」
「ん?私は既に二、三十人は仕留めているが」
真名は表情を変えず続けた。
「そ、そうだよね、これ、戦争なんだよね」
裕奈の両肩が掴まれ、ビクッと震える。
「ああ、そうだ。良かったよ。
お前も、桜咲も殺されないで、お前らが生きてて本当に良かった」
裕奈の肩を掴んだ千雨が言い、裕奈の目の前でアキラが目に光るものを浮かべ頷く。
「申し訳ない、全て私の傲りと軽率…」
うずくまっていた刹那が立ち上がろうとして、ガクリと膝を着いた。
「せっちゃん!?」
その側では、楓が険しい目で床に落ちる苦無を拾っていた。
「恐らく神経系の植物毒ネ」
超が言う。
「アデアット!」
ハッとした木乃香が仮契約を発動させ、ハエノスエロの使用を開始する。
618ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/09(水) 00:39:22 ID:???
>>617

「せっちゃんっ!?せっちゃあああぁぁぁんんんんんんんっっっっっ!!!」
施術が終わり、祠に、ぐったりとした刹那の体を抱く木乃香の絶叫が響き渡った。
「んーん、んーん、んーん…」
「…毒とそのダメージが消えて生死の境は超えたガ、些か魔力の出力が強すぎたみたいネ」
真っ赤な顔で呻く刹那をぎゅっと抱き締める木乃香を見下ろし、超が苦笑いする。
「何、すぐに抜けるヨ。だが、少しの間は動けマイ。
その間、私が着いてイヨウ」
「超さんお願いします」
ネギが申し出を受け容れる。
「せっちゃん、ごめんなせっちゃんごめんな…」
「いやー、愛だねぇー♪」
「では、そろそろ仕上げにかかるですが、準備の方は?」
後ろでカラカラ笑うハルナに夕映が言う。
「バッチリ、コタロー君なんかがしっかり護衛してくれたしさー、
キッチリ観察して来たよー」
「では」
「オッケー、畳み掛けるよーっ♪」

今回はここまでです。続きは折を見て。
619マロン名無しさん:2008/07/11(金) 01:59:05 ID:???
保守
620マロン名無しさん:2008/07/11(金) 16:55:13 ID:???
621ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/07/12(土) 12:30:13 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>618

「まだ見付からぬかっ!」
国人衆の軍勢の中で、奉行の一人が苛立ちを募らせて言った。
隊列は明らかに混乱している、混乱しているどころではない。
本来、最後の標的と予測されていた大物中の大物大蔵井高虎本人がひょんな事から発見され、
それが僅かな供回りと共に逃げ回っている。
春日大蔵井のいくさに乗じ、北条氏の勢力下で息を潜めていた太田三楽一派の国人が蜂起した。
だから、元々がまとまった領地を持っている訳ではなく、
言わば後払いでかき集めた人員も少なくない。
それが、千載一遇の恩賞の機会に、我先にと浮き足立ち、
賞金首を探して我こそがと山林を狩り回る状況になっていた。
確かに、今、この一帯を支配する春日大蔵井はそれどころではないと言うのは分かるが、
それでも、この状況で何かまとまった相手と戦闘状態になれば大変な事になる。
長引く混乱にキリキリとしたものを覚えていた奉行は、山林からきな臭い叫び声を聞いた。
奉行が足軽を率いて山林に分け入ると、少し先で、
大蔵井の赤備えが数人、他でもない国人衆の総大将を追い回していると言う
洒落にならない光景が展開されていた。
「うおおおぉぉぉ…」
「…討ち取ったりいいぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!」
奉行が止める間もなく、総大将はその場に転倒。
赤備えが一斉に鎧の隙間に刀を突き立て、切り落とした首を振り上げ絶叫していた。
622ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/12(土) 12:31:18 ID:???
>>621
「お…おのれえっ!?」
我に返った奉行が突入指示を出そうとした次の瞬間、銃声と共に次々と足軽が倒れる。
銃声が丸でやむ事なく、奉行は辛うじて木陰に逃げ込む。
「これは…謀られたか…」
首を奪い返そうとした勇者はことごとく銃弾に倒れ、
異常な数の鉄砲と認識した奉行は赤備えが首を持ち去るのに為す術が無かった。
「…お討ち死にっ!…」
「…お討ち死にいいっ!!…」
そして、周辺から、総大将のみならず侍大将その他の将の名が次々と聞こえ、
この突拍子もない事態を現実と認識した奉行は、心臓が止まりそうな程の恐怖を覚えた。
ここは、間違いなく敵地だ。
それどころか、現代で言うゲリラ戦のまっただ中に飛び込んでしまった可能性すら出て来た。
このまま、国人部隊の存在を春日、大蔵井が察知し軍勢が差し向けられたら、
指令塔を失った外地の部隊に勝てる見込みはない、全滅する。
それどころか、国人部隊がいくさ疲れした春日、大蔵井の不意を突き制圧する
と言う前提で動いている、国人部隊の盟主たる太田三楽斎、その庇護者常陸佐竹家、
反北条で同盟している安房里見、越後から関東入りしている上杉本軍。
その前提が崩れた状態で攻め込めば、近隣から押し寄せる北条方の援軍を前に大損害が発生する。
「これは、最早他日を期するより他なし。
これを佐竹の陣の三楽斎様に、我らの先鋒なしに佐竹が動けば大変な損害、
引き揚げ、引き揚げえええっっっ!!!」
忠臣に文を託した奉行が声をからして絶叫した。
623ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/12(土) 12:32:27 ID:???
>>622

「電話すら無い時代です。
一度肉筆で発せられた文書の情報は容易に訂正は出来ない。
一つ間違えば国一つ滅びるのですから。
賭ですが、生き残っている部将クラスからの文書により、
先発隊の大将のことごとくが不意打ちで死亡したと思い込めば
後に控えた本隊の動きは止まる筈。
死んでいないと後から気が付いても文字通り後の祭りです」
先ほどの祠に潜んだ夕映が言う。
「まあ、死んだ事にされた大将も、ゴーレムの猿芝居にまんまと騙された奉行部将も
どの道この不始末で腹切りだろうがな」
真名が言う。
「猿芝居はひどいなーっ、あれ作るのにどんだけ…」
「春日が気がかりです。戻りましょう」
ネギが言った。

春日城近郊では、選抜隊が凱旋帰国の途についていた。
意気揚々と言う風ではないが、思いがけぬ程の確率で生きて帰る事が出来た、
じわじわとその事が実感され、一仕事終えたと言う安堵と充実が沸き起こり始めていた。
「おーい、廉ちゃーん!
ほっほーい、
オラとおじさんと父ちゃんと母ちゃんで
大ぐらいをやっつけたぞー!」
タアァ―――――――――――――――ンッッ――――――………………………………

………今回は……………ここまでです……………
……続きは……………折を見て…………………………
624マロン名無しさん:2008/07/12(土) 13:01:50 ID:???
乙です
って、え、え?
作者さんどうしちゃったの?w
625マロン名無しさん:2008/07/14(月) 20:20:46 ID:???
保守age&GJ!
このスレってなんだかんだで落ちないよな
他のSSスレは軒並み落ちているのに
是非このまま頑張って貰いたい
626マロン名無しさん:2008/07/16(水) 23:27:16 ID:???
保守
627ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/07/18(金) 03:13:26 ID:???
それでは、今回の投下、入ります。

>>623

「?おお、お前さん方、どうして?」
井尻家に駆け込んだネギ・パーティーに、仁右衛門がぼそりと言う。
「それは後で、それよりも…」
「又兵衛さんはっ!?」
言いかけるネギを追い越し、美砂は叫んでいた。

「おや、お前さん方」
奥に進んだネギ達に、お里が優しい笑顔を向けた。
「若、ネギが戻って来ましたぞ、美砂殿も、小太郎も」
十も老け込んだ様な仁右衛門がのんびりと言い、先に進んだネギが立ち尽くした。
明日菜も、刹那も立ち止まる。
重苦しい沈黙が支配する。
「野原一家の助太刀もあってのぉ、若はわしらを引き連れ敵本陣に斬り込み、
敵大将大蔵井高虎を生け捕って兵を退かせたもんじゃ。
あの矢玉槍衾かいくぐってもピンピンしとったもんが、
帰り道に一発だけ、流れ弾が当たってそれっきりじゃ、
誰とも分からぬ、鬼井尻の手柄首すら取ろうとせなんだ、そんなつまらん流れ弾一発じゃ、
ほんに、いくさなどと言うものは、あっけないもんじゃ」
「ふざけるなや…」
ぼそっと言った小太郎がつかつかと近づいた。
「おいコラおっさんっ!起きんかいボケッ!!
自分何勝ち逃げしてんねん!?起きいちゅうとるやろがっ、ケリ付けたるわっ!!」
「コタロー君っ!」
夏美が叫び、小太郎の揺すぶる手が止まる。
「コタロー」
肩に手を置いた楓に静かに言われると、小太郎は顔を上げられなかった。
628ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/18(金) 03:14:41 ID:???
>>627
「死んだ人は生き返らへんのやな」
「はい」
カードを手にぼそっと言った木乃香に、刹那が答えた。
「どんな魔法でも、死んだ人、生き返らへんのやな…」
「そうです。だから、人は、命は尊いのです」
振り返り、刹那の胸に顔を埋めた木乃香の髪の毛を、刹那は優しく撫で続けた。
「私たち、あんなに頑張って、
でも私、何の、何の役も立たなくって…」
「美砂?」
「美砂っ!?」
円と桜子がその場に倒れ込んだ美砂に駆け寄る。
小刻みに震えながらそれを見ていた千雨が駆け出した。

「私は…怖かった…」
表で、握った拳を震わせながら千雨が言う。
「私は、怖かった、死ぬのが怖かった、戦争に巻き込まれるのが怖かった、フツーそうだろ。
あの、あんなノーテンキな連中が死ぬのも殺すのも、そんなの見たくなかった。私が嫌だった。
だから、迷った。いや、ギリギリまで関わらない様に、それだけ考えてた、
私は、私は只の平成の中学生、フツー、そうだろ…」
「分かってる、分かってるから千雨ちゃん」
明日菜が、目の前で泣き崩れた、本当は誰よりも情の深い、
だから、自分の心が痛くない様にいつも遠くで眺めている、そんな優しい友達の肩に手を掛ける。
「おっさん、言うてたな…」
表に出た小太郎が、震える声で言う。
「愛するものを守りたかった、大勢殺した自分が地獄に行くまで、
それまで、愛するみんな、自分の槍で守りたかった、そう言うて…」
「哀しいよ」
明日菜が、ぽつりと言った。
「神楽坂?」
629ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/18(金) 03:17:17 ID:???
>>628
「そんなの、哀しすぎるよ…
愛する人、大切な人、守ってもらって、それで、その人が死んで、
愛する人に守られて、自分だけ、残されて…そんなの、哀しすぎる…」
「神楽坂…」
「あれ?なんだろ?私…」
ひとりでにあふれ出る涙に、明日菜自身も戸惑っていた。
千雨は、泣き崩れた明日菜を抱き締め、自らも頬に伝う涙を止めようとしなかった。

「そうか…その様な事が…」
ネギと夕映、刹那から報告を受け、康綱が言う。
「はいです。向こうにとっては千載一遇の機会で足並みを乱し、撤退に追い込みました。
仮にこちらの情報操作だと分かったとしても、
北条の勢力下にあるこの武蔵国で改めて足並みを揃え大軍を動員するのは先の事となる筈です。
あれだけの事をした以上、何れ、某かの話が伝わって来る筈です」
夕映が言う。
「うむ。そなたらの言う事じゃ、嘘はあるまい。
この春日を救うてくれた、そなたらにも恩賞を取らせぬとな」
「待って下さいっ!」
ネギは、立ち上がらんばかりに色をなして言った。
「ここに戻って来るまででも、攻め滅ぼされなかったと言うだけで
村も城下も見るからに酷い状態でした。
僕達は自分たちで何とかします、そんなお金があるのでしたら…」
「うん、あい分かった」
ネギと、その両脇で頷く二人に康綱が言う。
「それだけの働きの後、疲れた事であろう。屋敷はそのままの筈、まずは休むがよい」
康綱の隣の廉姫の言葉に、誰もが「それはこっちの台詞だ」と言いたくなった。
630ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/18(金) 03:18:28 ID:???
>>629
「遅ればせながら、井尻様の事、他にも大勢の春日の人々、お悔やみ申し上げます」
夕映が言い、後の二人も頭を下げる。
「うん」
「そなたらが春日を、又兵衛が、皆が命懸けで守ろうとしたものをそなたらも又守ってくれた。
それ以上の供養はない」
廉姫の言葉に、ネギ以下一同改めて頭を下げる。

「あの…」
陽も落ちた頃、戻って来たネギ屋敷の庭で五月が超に声を掛けた。

「気晴らしだな」
ネギ屋敷での談合を聞きながら、千雨が言った。
「いいんじゃねーか、おっさん、そう言うの好きそうだったし。
なあ、柿崎」
不敵に笑った千雨に、病人の様にやっとそこに座っていた美砂は、
一瞬の沈黙の後小さく、しかししっかりと頷いた。
「どうでしょう超さん?」
ネギが、目を閉じ腕組みして聞いている超に声を掛ける。
「…時間が無いネ…
天候等を考えてもタイムリミットは精々二日、やるカ?」
片目を開いた超の言葉に、ほとんどのメンバーは力強く頷き、千雨はやれやれと嘆息した。
「ネギ・パーティー…ファイトッ!」

今回はここまでです。続きは折を見て。
631マロン名無しさん:2008/07/20(日) 13:19:11 ID:???
GJ!
632マロン名無しさん:2008/07/23(水) 00:10:47 ID:???
633ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/07/24(木) 23:40:34 ID:???
間が空きましたが、今回の投下、入ります。

>>630

「………」
朝焼け映る江戸川で、明日菜と亜子の浮かべる汗が段々大きなものになって来た。
「ちょっと、ヤバくない?」
明日菜の言葉に亜子も震えながら頷く。
「アキラ、アキラっ!」
明日菜が現代のTシャツショートパンツに草鞋履きでばしゃばしゃと流れに走って行くと、
その流れがザバーッと音を立てて盛り上がり、競泳水着に水中眼鏡のアキラが姿を現す。
「アキラ、すっごーいっ!」
岸で待っていたまき絵が叫び、明日菜もほーっと嘆息する。
「!?まきちゃん袋早くっ!」
「うんっ!」
634ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/24(木) 23:41:37 ID:???
>>633

時間は飛んで夕方近く、ネギ屋敷の庭。
「ただ今ー」
「お帰りゆーな、どーだった?」
「おっ」
「見ての通り」
ネギと共に鶴を担いだ裕奈がにかっと笑って親指を立てる。

翌日の陽も高くなる頃、ネギ屋敷の庭では、アキラと明日菜が井戸水を満たした盥を運んでいた。
「はい、ごめんねー」
アキラが、違う盥の中で泳ぐ大鯉をもらい受けた古着の布でガバッと掴み、運んで来た盥に移す。
「一時間おきにやってるけど、いけるかな?」
明日菜が、袖で汗を拭いながら言う。
「流水のイケスが無い以上、これが最善。それも余り長い時間だと味が抜けるネ」
「ごめんね」
超が言い、アキラが煮粟を盥に入れながら言った。
「鶴もちょうどいい熟成になる筈ダガ…」
超が言い、皆も何となく腕時計を見る。
「さすがに、無理があったか…いや、悪い」
千雨が言いかけ、近くにいた五月に頭を下げる。
「あれ?」
明日菜が指した方向から、一羽の鳥がくえーっと鳴いて庭に飛来した。
635ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/24(木) 23:42:46 ID:???
>>634

ネギ・パーティーがそちらに向かうと、荒れ地に小太郎とハルナが不時着していた所だった。
その近くには、藁を被せた盥が二つ三つと置かれている。
「間に合うたみたいやな」
小太郎がぜぇぜぇ荒い息を吐きながら言う。
「コタロー君、ハルナさん、お疲れ様でした」
ネギが言う。
「お疲れはこのか、
このかから充電しまくりで富士山からほとんどノンストップでぶっ飛ばして来たんだからさぁ」
「ただ今、せっちゃんふにゃあぁー」
「お疲れ様でした、お嬢様」
刹那が抱き留めると、木乃香は刹那の胸の中ですーすーと安らかな寝息を立てていた。
「取りあえず、これ、持ってってよ、もう駄目ぇ」
ハルナが座り込み、一同手分けして盥を運び始めた。

細かくなってすいませんが今回はここまでです。続きは折を見て。
636マロン名無しさん:2008/07/26(土) 12:16:40 ID:???
保守
637ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/07/29(火) 02:05:59 ID:???
では、今回の投下、入ります。

>>435

翌日午前、刹那と小太郎、真名が徹夜で烏、野犬と死闘を展開していた河原に
しつらえられたテーブルの上にまな板が置かれ、
その側で五月がぺこりと頭を下げ、両手に包丁を握る。
まな板の上に下ごしらえの済んだ鶴が置かれ、五月は、片方の包丁でその身を抑えながら
もう片方の包丁で手際よく解体していく。
裕奈が解体された鶴の肉を引き取り、木乃香、美砂と共に近くに作った竈でそれを調理する。
その間にまな板と包丁が別のものに交換され、
まな板の上に、アキラと明日菜が盥に入った大鯉を乗せる。
まな板に跳ねる鯉に超が針を打つと、その動きはぴたりと止まる。
アキラが目を閉じて小さく頭を下げ、明日菜がそれに倣う。
五月は、片方の包丁で鯉を抑えながら、器用と言う以上の包丁さばきで苦肝を抜き取り、
その身を手際よくしかし丁寧に解体していく。
解体された鯉の身は、氷水と言うか雪水の入った小鉢に移される。
それ以外の部分は、やはり裕奈が引き取っていた。
ネギ・パーティーの綺麗所が、床几に掛ける康綱、隣に控える廉姫以下、
陣幕を背景とするお歴々に完成した料理を乗せたお膳を運び、酒を酌する。
「いくさ働きお疲れ様でした。お約束の酒肴です、
いくさの無き席でゆるりとお楽しみ下さい」
又兵衛の傍らに白木のお膳を置き、かわらけに酒を注いで五月が頭を下げる。
「あの、本当に僕でいいんですか?」
「よい、今日春日、この席があるもそなたらのお陰ぞ」
ネギと廉姫がぼそぼそとそんな会話を交わす。
638ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/29(火) 02:07:05 ID:???
>>637
「えー、あのー、僕は、そもそも、皆さんが南蛮と言う国の人間ですので、
言葉が変でしたらごめんなさい。
えー、略式ながら、内々に、勝ち戦のお祝いに、一献献上いたします。
四葉五月と明石裕奈、近衛木乃香、柿崎美砂が作った鶴と鯉の焼き物、煮物。
四葉五月の作った鯉の洗いです。どうぞご賞味下さい。
では、まずはお殿様より、勝ちどきを」
「うん」
康綱が立ち上がり、居並ぶ重臣、ネギ・パーティー、野原一家が立ち上がる。
「エイ、エイ、オーッ!」
康綱に続き、重臣達、そして、美砂、刹那、楓、超、他何人かが勝ち鬨を上げる。
それに倣い、最後は全員が勝ち鬨を上げた。
「それでは、ご賞味を。
洗いは蓼酢味噌でお召し上がり下さい」
五月が言い、康綱が箸を付ける。
「うん、旨い、流石ぞ。
かように、又、お主らの心づくしを味わえる、こうして皆と顔を合わせる事が出来る、
それも、お主ら、皆々のお陰、又兵衛ら皆のお陰ぞ」
しんのすけ、ひまわりを除き、一同が頭を下げた。
「それでは、いただきましょう」
刹那が言い、他の面々も箸を付け始めた。
「ほら、しんのすけ、美味しいわよ…ホント美味しい」
「いや、ホント旨いなぁ、ちょっとした料亭並だぜ」
「そんなあなた行った事あるの?」
言いながらちょっと下を見るが、大人しい息子と言うあり得ない姿に、顔が曇る。
美砂が、かわらけを手にし、又兵衛の唇を湿す。
「とっときの江川だよー♪又兵衛さん大好きだったもんねー」
その側で裕奈がにかっと笑みを作った。
639ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/29(火) 02:08:10 ID:???
>>638

静かな宴の後、白拍子姿の木乃香が、河原で一礼した。
真名とアキラの振るう鈴の音、刹那の澄んだ鼓と共に披露される舞を、
床机に掛ける康綱と脇に控える廉姫、春日の重臣、又兵衛の郎党、
そしてネギ・パーティーと野原一家が厳かに観ていた。
一差し舞い終えた時、廉姫の前で残る図書館三人衆と美砂が頭を下げていた。
「凄く無神経な事を言ってるんじゃないかって、そう思う。
斬られても仕方の無い事を言っているのかも知れない。
でも、姫様、どうか、どうか最期の願いを…お願いしますっ!」
美砂が深々と頭を下げ、残りの面々もそれに倣った。
「もうよい…美砂、すまぬ。そなたの気持ち…吉乃」

三つ指をついた木乃香が立ち上がり、少し、下を向いて目を閉じる。
河原の風と共に流れ出した龍笛の調べと共に木乃香は目を開いた。
澄み渡り、そして、どこか物悲しい笛の音に合わせて鈴が鳴り、鼓が響く。
積まれた大量の薪に火が投じられ、赤々と炎が広がるその前で、
木乃香は再びの舞を披露していた。
美しく澄み渡り、琴線に触れずにはおれない響き、
みさえ、お里がうつむきひろし、彦蔵、儀助、仁右衛門が次々とすすり上げる。
大胆な程に体一杯に、それでいて優美にしてどこか切ない舞を続ける木乃香。
パチパチ、ごうごうと音を立てて爆ぜる薪、純白に包まれ舞い踊る木乃香の背後で
赤々と上がる炎が名残の形を呑み込む。
かの者豪勇無双にして心優しく、
数々の豪勇を謳われしその身が愛するその地に還るがために無垢の炎に清められる時、
彼を愛し、悼む多くの者に見守られ、
その魂も又、白き煙となりて何処までも高く澄み渡った青き空へと還るもの哉。
「おい、青空侍」
640ネギま!戦国史(クレしん):2008/07/29(火) 02:09:21 ID:???
>>639

「お嬢様」
「えへへ、せっちゃん…」
小袖姿で戻って来た木乃香が、とんと刹那の胸に正面から体を預けた。
「お嬢様っ?」
「うち…なんか、疲れてもうた…」
「ご立派でした、お嬢様」

美砂は、ぐいぐいと裾を引っ張る手に気が付いた。
見ると、ネギ・パーティーが引き揚げを始め、円と桜子が美砂を見ている。
「行こっか、しんのすけ」
「うん」
裾を掴むしんのすけに、美砂が笑顔を見せて言った。
「偉いな、しんのすけ、火葬なんて見た事なかったでしょ?」
「秋田の爺ちゃんのお兄さんが」
「そうか。私も昔教会で…」
「柿崎ー、行くよー」
「うん、今行く」
呼びかける明日菜に美砂が手を挙げた。

今回はここまでです。続きは折を見て。
641マロン名無しさん:2008/07/29(火) 19:39:27 ID:???
642マロン名無しさん:2008/07/31(木) 22:11:34 ID:???
保守
643マロン名無しさん:2008/08/01(金) 22:05:13 ID:???
次スレ立てました
ネギま!×好きな作品クロス小説スレ5時間目
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1217595809/
644ネギ戦国作者 ◆raYx/0UWuQ :2008/08/03(日) 00:22:57 ID:???
では、今回の投下、入ります。
続きは次スレで。
645マロン名無しさん:2008/08/05(火) 22:51:59 ID:???
もうそこまできたか
646マロン名無しさん:2008/08/10(日) 20:58:15 ID:???
よくここまで持ったもんだ
647マロン名無しさん:2008/08/16(土) 17:35:43 ID:???
次スレ新作始まってるね
648マロン名無しさん:2008/08/22(金) 17:53:56 ID:???
テスト
649勘違いシリーズ:2008/08/26(火) 18:11:43 ID:???
チンピラ「てめぇが最強の維新志士、緋村抜刀斎か」
楓「だから拙者は…」
650マロン名無しさん:2008/08/30(土) 12:31:05 ID:???
ハットリか
651マロン名無しさん:2008/09/01(月) 03:52:55 ID:hKpUinhR
新スレ落ちた…?
652Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/01(月) 18:29:26 ID:???
ありゃりゃ・・・ほんとだ落ちてる。
仕方がない、新しいのたててきます。
653Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/01(月) 18:32:30 ID:???
ありゃりゃ・・・ほんとだ落ちてる。
仕方がない、新しいのたててきます。
654Metal Wolf Chaos in Mahora:2008/09/01(月) 18:44:11 ID:???
いつの間にか二つ投稿してる…orz
たてておきました。

ネギま!×好きな作品クロス小説スレ6時間目
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1220262133/
655マロン名無しさん:2008/09/04(木) 22:40:12 ID:???
乙です
656名無しさん:2008/09/05(金) 12:38:20 ID:???
「ネギま!」と「ドクター秩父山」の田中圭一先生の最低漫画シリーズを合体させてください。
657マロン名無しさん:2008/09/10(水) 00:13:28 ID:???
右京さんと紅茶を語って欲しい
658マロン名無しさん:2008/09/13(土) 01:23:41 ID:???
英国趣味なら工藤新一で
659マロン名無しさん:2008/09/14(日) 22:27:09 ID:???
こなた「貧乳はステータスだ、稀少価値だ」
アーニャ「悪かったわね、貧乳で」
660マロン名無しさん:2008/09/16(火) 22:02:40 ID:???
それならまほろさんと仲間で
661マロン名無しさん:2008/09/18(木) 12:28:54 ID:???
織部悠がネギのスーツを仕立てる話を読んでみたい
662マロン名無しさん:2008/09/20(土) 21:13:33 ID:???
表の仕事でマホラの生徒に売り込む近藤静也

鬼州組に雇われた龍宮真名と死闘を
663マロン名無しさん:2008/09/23(火) 00:55:40 ID:???
文久2年8月21日の生麦村にタイムスリップするネギ
664マロン名無しさん:2008/09/25(木) 16:35:39 ID:???
そばかすしか共通点が無いのにキャンディと間違われる夏美
665マロン名無しさん:2008/09/27(土) 00:37:33 ID:???
保守
666マロン名無しさん:2008/09/29(月) 18:07:46 ID:???
埋まりそうで埋まらない
667マロン名無しさん:2008/10/02(木) 03:38:14 ID:???
>>664
赤毛のアンに続く、なんとなく
668マロン名無しさん:2008/10/04(土) 00:34:10 ID:???
テスト
669マロン名無しさん
武闘派執事一族の楓

ドジッ子メイドロボと以下略