ドアの向こうは東京ドームの5倍くらいの広さはあるただっ広い空間であった。
自然の公園のような起伏のあるなだらかな野原がはるかかなたまで広がっている。
その想像もつかない広い広い空間に大小様々なフィギアがびっしりと立っている。
あまりの壮大な光景に招待されたものは皆唖然としてその場に立ち尽くす。
「ここにおいてあるフィギアのうち、好きなものは持っていってかまわないよ。
全てのフィギアに札がつけてあるからほしいフィギアに名前を書けば後で家に送ってあげる。」
ウォンカさんの言葉が終わるか終わらないうちにワッと皆、それぞれ好きなフィギアを
手に入れるために散っていった。
スーも「ゲットダゼ!!」と言いながら一緒になって自分の欲しいフィギアを探しに散る。
その中で一人だけポツンと残っている人がいるのにウォンカさんは気づいた。
春日部咲である。
「どうしてキミはいかないの?」
とウォンカさんは咲に尋ねる。
咲はつまらなそうな興味なさそうな顔をして答える。
「あたしゃおたくじゃないんだよ。それにこーんなものほしがるやつの気がしれないね。
おたくって気持ち悪いよね。こんな人形ほしがるなんてね。頭おかしいんじゃないのかね。」
といかにも嫌そうな顔をしてケラケラと笑い暴言を吐きまくる。
ウォンカさんもさすがにムっとして言葉を返す。
「・・・きみの連れの高坂くんもおたくじゃないか。」
ウォンカさんがそういうと
「あ コーサカはいいの。あの人は別。」
「ふーん。高坂くんだったらいいんだ。」
「どーんな変態プレイを要求されても応える覚悟はしてあるの。されたことないけど。」
とあははと笑う。
「ふーん・・・どんな変態プレイでもねえ・・・。」
ウォンカさんの目が怪しく光ったのを咲は気づかなかった。
他の招待された人たちはわずかな時間も惜しいかのようにそこらに立っている
フィギアに次から次へと名前を書きまくる。
晴信じいさんと完士くんも必死で次から次へとフィギアに名前を書いていく。
「いやぁ どう選んだもんだか悩みます」
「そんなもん何も見ずにあるもん全部名前を書いていきゃいいんだ。」と晴信じいさん
「ああ〜・・・やべえ・・・・何かが・・・何かが開きかけてる・・・頭のてっぺんあたりが」
「いいぜ・・・いけるところまでいってやる・・・神の領域へ・・・
・・・ヤバイな自分でも何言ってるかわからん」
と そこに突然
「かわいー。」
中島の声が聞こえ、皆が中島の方を見た。
中島が指差した方を見ると遠くで小さな少女がせっせとフィギアを回収していた。
少女は髪を筆のようにくくって立てている。
(あ・・・あれは・・・・)
完士くんは思い出した。道で拾った1万円札を渡した少女だ。
(あの少女だ・・・とすると・・・僕にフィギアをくれたあの人は・・・ウォンカさん?)
皆がみていると、また一人、同じ姿形をした少女が現れて作業を手伝い始めた。
どうやら少女は一人だけではないらしい。
と よく見るとあちらにもこちらにも少女の姿が現れる。次から次へと少女の姿が増えていく。
どの少女もせっせとおいてあるフィギアを回収する作業をしている。
みな自然にフィギアに自分の名前を書く作業を止め、少女の姿をよく見るように
中島のところに集まりはじめた。
「あれはオ・ギウ・エーといってね・・・」
皆が振り向くと後ろにウォンカさんが立っていた。
「僕が東北の隠れ里で見つけたコロボックルの一族なんだ。
お金の代わりにイクラを大事にしていて働いたお礼にイクラを払ってるんだよ。」
みんなウォンカさんの話を聞きながらオ・ギウ・エーの作業風景を見ていた・・・とその時
「があっ!!」
朽木くんの声が木霊する。
(なんだ なんだ?)
皆 声のした方を見ると朽木くんが何か水溜りのようなもののところでもがいていた。
「どうやら接着剤を踏んだらしい」
接着剤の入れ物が会場のあちこちにおいてあり、フィギアに名前を書くのに忙しく
足元に注意していなかった朽木くんが接着剤の入れ物を踏み倒し
接着剤が流れ出たところにそのまま倒れこんだようだ。
地面に流れた接着剤が身体にくっつき朽木くんの身体は地面にくっついてしまっている。
地面からはなれようともがいているのだがどうやってもはなれない。
むしろもがけばもがくほど体に接着剤がくっつき更に体の自由が奪われるという悪循環に陥っている。
そのもがく朽木くんの姿を見てスーが叫ぶ。
「タテ タツンダ ジョー!」
そのほかの人たちはみなその姿を見て どうしよう?と頭をひねっている。
と突然、グアガガガという機械の音が聞こえたかと思うとスチームボーイに出てきたような
巨大な機械の手が天井から下りてきた。
そして朽木くんを地面ごと掘り下げ、持ち上げる。
「オー!ノー!」
朽木くんの叫び声が聞え、朽木くんは掘り起こされた地面と共に機械の手によって空中に持ち上げられる。
みな、その光景を固唾を呑んで見守っている、
その時、虎革のビキニに頭に角をつけたうる星やつらのラムちゃんのコスプレをした
沢山のオ・ギウ・エーがどこからともなく現れる。
「?」
なんだなんだという感じでみんなオ・ギウ・エーを注視する。
オ・ギウ・エーは空中に持ち上げられもがく朽木くんの下に集まって輪を創り回りながら歌い踊りだした。
うる星やつらの替え歌である。
あんまりソワソワしないで♪ あなたはいつでもきょろきょろ♪
よそ見をするのはやめてよ♪ 自分(の趣味)が何よりいちばん♪
好きよ...好きよ...好きよ...♪
星達が輝く夜更け♪ TV見るの アニメの全て♪
注意しても あなたは知らんぷりで♪ 今ごろは アニメに夢中♪
ああ オタクの人って♪ いくつもクセを持っているのね♪
ああ あちこちにバラまいて♪ 周りを悩ませるわ♪
あんまりソワソワしないで♪ あなたはいつでもキョロキョロ♪
よそ見をするのはやめてよ♪ 自分(の趣味)が誰よりいちばん♪
ああ オタクの人って♪ どれだけ好きなものがほしいの♪
ああ 自分(の趣味)だけ愛してる♪ いつでもひとりだけね♪
あんまりソワソワしないで♪ あなたはいつでもキョロキョロ♪
よそ見をするのはやめてよ♪ 自分(の趣味)が何よりいちばん♪
自分(の趣味)がいつでもいちばん♪ 自分(の趣味)の全てが♪
好きよ...好きよ...好きよ...♪ いちばん好きよ! ♪
オ・ギウ・エー達が歌い踊っている間に朽木くんはそのまま機械の手と供に
天井に姿を消していく。それと同時にオ・ギウ・エーたちもどこへともなく姿を消す。
皆、呆気にとられて見ていたが一人スーだけがウォンカさんの方を振り向き
手をまっすぐに差し出し親指を立てて「グッジョブッ!!」と叫んだ。
沢崎がおそるおそるウォンカさんに尋ねる。
「朽木くんはどうなったんですか?」
「うーん・・・この上はフィギアの製造工場なんだよね・・・。
だから多分、型にとられて等身大の朽木くんのフィギアができるだろうね。」
「・・・それ、店で売るんですか?」
「誰も買わないだろ?」
沢崎の裾を引っ張る者がいる。オ・ギウ・エーである。
「その娘についていきなさい。朽木くんがいるところに案内してくれるから。」
沢崎がオ・ギウ・エーについて違う方向へいくのを見ながらウォンカさんは
皆をうながした。
「次の部屋に行こう。」
野原には川が流れており、その川に宇宙戦艦ヤマトの小型版といった格好のボートが
多数のオ・ギウ・エー達に漕がれてやってきた。
「さあ乗って」
ウォンカさんに促され、船に乗り込む完士くんたち
船は川を下り、洞窟を通り地下へと向かう。
完士くんはおそるおそるボートを漕いでいるオ・ギウ・エーたちを見ていた。
(あの時の少女は誰だろう?)
みな、双子のように同じ顔・姿で区別がつかない。
すると船を漕いでいる一人のオ・ギウ・エーが完士の方を見てウインクした。
ウインクしたオ・ギウ・エーはすぐにもとの表情に戻りなにくわぬ顔で船漕ぎを続ける。
(やっぱり あの時の女の子は・・・オ・ギウ・エーの一人だったんだ)
完士は一人、納得した。
今回は以上です。
続きは また今度
>完士とおたく工場
2話連続で拝見しました。
31〜36
スーVS中島キター!
こういう原作に無いマッチメイクこそSSの醍醐味!
やはり中島みたいに理詰めの手練手管で攻めてくるタイプは、スーみたいな何考えてるか分からんタイプは苦手みたい。
それにしてもクッチー、やってることは原作と変わらんなw
でもVSオギーの場合と違い、VSスーだと微妙にスイングしてるな。
もし春日部さんが放って置いたら、どつき漫才に発展したかも。
37〜45
オギーの軍団キター!
絵的に凄く面白そうw
どなたか絵心ある方、描いてみて下さいな。
さて果たして次回、クッチーはフィギュアになってるのでしょうか?
(30センチぐらいの蝿みたいな人形になって、勝手に実況し出すのではと考えた人は特撮オタです)
>>63 ”こういう原作に無いマッチメイクこそSSの醍醐味! ”
そーすね。各キャラがぶつかりあうのもSSの楽しみの1つですね。
作者がもうちょっと想像力が豊かだったら
もっといろんなマッチメイクを考え出せたかも・・・。
がんばりまーす。
”絵的に凄く面白そうw ”
描いてる本人も頭の中で想像するに面白いと思います。
ホント 誰か描いてくれないかにゃ〜。
まだこれから絵的に面白いシーンが出てくるかも?
ちょっと下がりすぎてるみたいだからあげますね。
さーて続きいきます。
65 :
完士とおたく工場46:2007/08/15(水) 21:11:04 ID:NPbKDe/i
「この部屋は漫画やアニメのキャラクターの食玩を開発する部屋だ。」
ウォンカさんに連れられて入った部屋には様々な装置・機械や器具がしつらえられ
開発中の様々なキャラクターの食玩がおいてあった。
「これは僕の開発した商品の1つ 北斗の拳風船ガムだ。」
そういってウォンカさんは商品の1つを手に取った。
「これを噛んで膨らませると膨らませた風船が爆発するとき、『グワシ』とか『ヒデブ』とか
叫んで爆発するんだ。」
ウォンカさんは1つ風船ガムを膨らませて爆発させるとそのガムは『アベシ』といって爆発した。
みんな興味深げにウォンカさんの話を聞いていると 突然、
「スー!」
アンジェラの叫び声が聞える。
見るとスーが口をもぐもぐさせている。
「だめでしょ!!スー!勝手に他人のものを食べたら。」
「ノビタノモノハオレノモノ オレノモノハオレノモノ」
「何を食べたの?」
スーの立っている横には様々なキャラクターの小さな飴が入った箱がおいてあった。
「ああ・・・だめだよ。それを食べちゃ・・・今、実験中なんだ。」
「アワテナイ アワテナイ ヒトヤスミ ヒトヤスミ」
「これを食べたらどうなるんですか?」
「食べたキャラクターに変身するんだ。」
アンジェラの顔が青ざめる。
「スー あなた何のキャラを食べたの?」
するとスーの身体がぷっくりと膨らみ始めた。
「どうやらドラミちゃんみたいだね。」
スーの顔は変わらないものの身体が真ん丸くなり手足も丸くなって
その姿はまるでドラミちゃんである。
「まだ完成してないからね。変身も中途半端なんだ。」
どうやらまん丸で偏平足の足では慣れないのかバランスがとりにくいらしく
スーは滑って転んでしまう。
滑った拍子に頭を床にぶつける。
「ウグゥ」
しかも身体も丸いものだからそのままコロコロと床の上を
あっちへ転がりこっちへ転がり目まぐるしく動く。
「ジタイハサラニアッカシツツアル・・・」
コロコロと転がりながらあちこちの角に頭をぶつけ、スーの目が渦巻状に変化した。
スーが喚く。
「ゼツボウシタ!!ウォンカサンノハツメイニゼツボウシタ!!」
するとセーラームーンのコスプレをした沢山のオ・ギウ・エー達がどこからともなく
現れ集まり輪をつくって踊って歌いだした。
ごめんね 素直じゃなくて♪ アニメのセリフなら言える♪
思考回路はショート寸前♪ 同人誌買いたいよ♪
逝きたくなるよなエロ同人♪ 正視ができない18禁♪
だって純情 どうしよう♪ ハートはマンダラケ♪
日本のサブカルに導かれ♪ 何度も来日する♪
買った同人誌の数数え♪ 失うお金のゆくえ♪
同じおたくに生まれたの♪ ミラクルロマン スー♪
もいちどコミケでウィークエンド♪ (コスプレの)神様 かなことハッピーエンド♪
現在 過去 未来も♪ アニメにくびったけ♪
(日本のアニメに)出会ったときの なつかしい♪ ときめき忘れない♪
幾千万の同人誌から♪ ヤオイを見つけられる♪
なんでもアニメのセリフに変える♪ 生きかたが好きよ♪
不思議な奇跡クロスして♪ 千佳と巡り会う♪
買った同人誌の数数え♪ 失うお金のゆくえ♪
同じおたくに生まれたの♪ ミラクルロマン スー♪
信じているの♪ ミラクルロマン スー♪
ウォンカさんも歌に合わせてのりのりで踊っている。
歌い終わると同時に決めポーズをつくるがそのウォンカさんを
アンジェラが鬼のような形相で睨む。
「スー!」
アンジェラはすぐに視線をスーの方に向ける。
スーはそのままごろごろと転がり、階段のところまで転がって
階段を一直線に落ちていく。
「マダダ マダオワランヨー。」
スーのけなげな叫び声がだんだんと小さくなっていく。
アンジェラが必死で追いかけて階段を下がって姿が見えなくなった。
「まあ階段はやがて終わる。そうすればスーも止まるよ。」
呆気にとられている皆をウォンカさんが促す。
「次の部屋に行こう。」
次の部屋にいたる長い廊下を歩く途中、原口がウォンカさんの横につきまとい
ずっとウォンカさんを褒めちぎる。
「いやー!!すばらしい発明の数々っ!!堪能させていただきましたっ!!」
「私、原口ともうしまして、こういったおたグッズを販売しているものです。」
「ウォンカさん あなたは天才ですっ!!是非、私と組みましょう。大もうけできますよっ!!」
「どうです?ウォンカさんの発明した新しいおたグッズを私が独占的に販売するというのは?
私独自の販売ルートをたくさん持っておりますから・・・
任せていただけるなら他の業者よりもたくさん販売できること請負ですよ」
「利益の取り分もウォンカさんにとってプラスになるように考えさせていただきますから」
原口はうざいくらい饒舌に喋る。眼鏡の奥の目がぎらぎらと光っている。
ウォンカさんは聞いているのかいないのか原口の喋りには一切、返事をしないし、反応もない。
無表情に前を見ているだけである。
「あ・・・遅れましてすいません。これ私の名刺です。」
そういうと原口は名刺を取り出し、丁寧にお辞儀してウォンカさんに手渡した。
再び正面を向いた時、ウォンカさんが名刺を原口の見えない背中側にポーンと放ったのは
誰も見ていなかった。
部屋の前でウォンカさんが立ち止まる。
「ここはやおい漫画・同人誌の製作部屋なんだ。」
そこに入ると大きな丸い空間になっており、その丸型の部屋の壁にあわせて
巨大なドーナツ型の机が置かれていた。
巨大なドーナツ型の机には沢山のオ・ギウ・エーが並んで座り、原稿用紙に流れ作業で漫画を描いている。
部屋の真ん中には穴が開いており、描く傍からその穴に原稿用紙が放り込まれていく。
流れ作業を見物するようにしつらえられた出っ張り部分に完士たちはいた。
部屋との間には腰までの高さの鉄柵があるばかりでまたげば部屋の中に入ることができる。
「この部屋は漫画の製作がメインの仕事だ。」とウォンカさんが言う。
「オ・ギウ・エーに描いてもらってるのだが、没原稿は全て真ん中の穴に捨てられる。」
みんなは原稿をせっせと描くオ・ギウ・エーを見ていた。
少女が手足を振りながら作業をする姿はとても可愛い。
そしてオ・ギウ・エーを見る中島の目がいつしか爛々と輝き始めているのに誰も気づかなかった。
と、突然、中島が叫ぶ。
「原口さん。オ・ギウ・エーほしいっ!!」
中島が後ろを振り向いて原口に言った。
原口は
「ふふん」
とツチブタのように鼻を鳴らしてウォンカさんの方に向き直り
「どうだろ?中島がこういってるんだ。一人わけてくれないかね?」
「オ・ギウ・エーはものじゃないよ。」
「お金ならいくらでも払うよ。」
「オ・ギウ・エーは人間なんだ。」
「ねえ。お願いウォンカさん。だめ?」と媚びた視線を送る中島。
「ダメだね。」
ムッと怒った顔をする中島
「オ・ギウ・エーちょうだいっ!」
「だ・め・だ」
中島にあわせて怒った顔をするウォンカさん。
「どうしてもほしいならオ・ギウ・エーに聞いてみればいい。オ・ギウ・エーがOKしたら
反対しないよ。」
「そうね。」
中島はそういうと柵を乗り越えて中に入る。
「あたしはほしいものは何でも手にいれてきた女なんだ・・・」
中に入り作業で夢中のオ・ギウ・エー達を一人一人丁寧に観察する。
そして一人を選ぶと突然、手を伸ばし抱きかかえた。
「決めたっ!!おまえにするっ!!」
選んだオ・ギウ・エーを思いっきりギュッと抱きしめ頬すりする中島。
すると周囲にいたオ・ギウ・エー達が次から次へと中島に群がり始めた。
「なに?」
中島に群がったオ・ギウ・エー達は中島を叩いたり蹴ったりしはじめる。
「いたたたたた」
中島がすべって転ぶとみんなで手足を押さえ真ん中の穴に向かって運びはじめた。
と赤・白・青の様々な色のプラグスーツのコスプレをしたオ・ギウ・エー達が
たくさん飛び出てきて輪をつくり歌い踊り始める。
残酷な天使のように♪ 少女よ 腐女子になれ♪
やおい風がいま♪ 胸のドアを叩いても♪
私だけをただ見つめて♪ 微笑んでるあなた ♪
そっと触れるもの♪ イラストを描くことに夢中で♪
運命さえまだ知らない♪ いたいけな瞳♪
だけどいつか気づくでしょう♪ その胸中には♪
はるか腐女子 めざすための♪ 種子(タネ)があること♪
残酷な文芸部のテーゼ♪ 窓辺からやがて飛び降りる♪
ほとばしる熱いジェラシーで♪ 友達を裏切るなら♪
この空を抱いて輝く♪ 少女よ 腐女子になれ♪
ずっと眠ってる 私の腐女子の揺りかご♪ あなただけが校長室に呼ばれる朝がくる♪
細い首筋を冷や汗が流れてる♪ 世界中の時を止めて閉じこめたいけど♪
もしもふたり逢えたことに意味があるなら♪ 私はそう やおいを知るためのバイブル♪
残酷な文芸部のテーゼ♪ 悲しみがそしてはじまる♪
抱きしめた命のかたち♪ やおいに目覚めたとき♪
誰よりも光を放つ♪ 少女よ 腐女子になれ♪
人はエロをつむぎながら同人誌をつくる♪ 女神なんてなれないまま 私は生きる♪
残酷な文芸部のテーゼ♪ 窓辺からやがて飛び降りる♪
ほとばしる熱いジェラシーで♪ 友達を裏切るなら♪
この宇宙(おたワールド)を抱いて輝く♪ 少女よ 腐女子になれ♪
中島は歌が終わると同時に穴に放り込まれた。
「キャーッ」
「な・・・中島ぁ。」
原口が叫び穴にかけよる。
おそるおそる中を覗きこんだ原口のケツをオ・ギウ・エーが思い切り蹴る。
「あーっ。」
原口も穴の中に吸い込まれて消えていった。
沈黙があたりをおおう。
「あの穴はどこに向かっているんですか?」
沈黙を破ったのは高坂だ。
「焼却炉だよ。ゴミを焼くためのね。」
一瞬緊張が走る。
「大丈夫だ。ゴミを燃やすのは火曜日だから。」
「今日が火曜日ですよ。」
高坂はニコニコ笑いながら言う。
咲ちゃん晴信じいさん完士くんはエッと驚いた顔をする。
「あー・・・そうそう。確か焼却炉は壊れていたはずだ。うん。」
ウォンカさんはそういうと
「だから心配する必要はないよ。次にいこう。」
エヴァの曲を聴きながら投下してました。
ああ・・・やっぱエヴぁはええなあ・・・
今回はここまで 次回をお楽しみに
どうやらお盆のせいか夏コミ前のせいか、ここは開店休業状態のようだな。
しょうがない、遅ればせながら俺が投下しますかと来てみれば、わっ、増えてた!
>完士とおたく工場
今回は替え歌2曲ですか…もはやSSスレでニュージカル展開があろうとは思わなんだ。
でも選曲センスのせいか、ありありとイメージ出来るので無問題。
個人的にはドラミスーに萌えました。
(ちょっぴりぽっちゃり型がタイプなのです)
続きお待ちしております。
今回はまだ
>>41さんの望むようなとこまでは行かないですが、12レスほど投下します。
第4章 笹原恵子の合宿
国松「岸野君、このビデオカメラってデジタルだよね?」
岸野「そうだよ。買った時で発売から3年ぐらいだから、当時としては新型の部類に入ると思うよ」
日垣「買ったのが3年前だから、6年前発売の品か。それにしちゃでか過ぎるんじゃ…」
岸野「そうか?昔、親戚の叔父さんがVHSのビデオのカメラ持ってたの見たことあるけど、あれに比べりゃかなりコンパクトになってるぞ」
国松「VHSって…」
日垣「そりゃあれは、カメラと別に小さいビデオデッキがある代物だからな…」
一同がカメラの大きさを話題にする中、別な観点から食い付いた者が居た。
「AG-DVX100じゃねえか、それ!」
大声を上げたのは浅田だった。
何時に無く目が輝いている。
国松「浅田君、知ってるの?」
浅田「有名な名機だからね、プロ仕様として」
一同「ぷろしよう?」
浅田「そう。こいつはね、テレビ局とか小さい映画会社とかで広く使われている、業務用の高級品さ」
豪田「よく知ってるわね」
沢田「その割には反応が遅かったような」
浅田「まさかこんなもんが出て来るとは思わなかったから、一瞬頭ん中真っ白になって固まってたんだよ」
岸野「そんな凄いカメラだったんだ、これ。親父も物好きだなあ」
浅田「物好きってレベルじゃないと思うよ。家庭用にこんな高いの買っちゃうんだから」
岸野「そう言や確かにこれ買った時、親父怒られてたな、お袋に」
台場「あの、高いってどれぐらいなの?」
浅田「発売が2000年なんだけど、当時で40万から50万はしたと思うよ」
一同「50万?!」
浅田「中古でいいから買いたいと思って、前に値段調べたことがあるんだ。中古でも14万から18万ぐらいはしたよ」
値段を聞いて会員たちのビデオカメラを見る目が変わった。
容器を触っただけで感染しかねない病原菌というか、ショックを与えると爆発するニトログリセリンというか、とにかく危険物を見る目だ。
だから自然と腰が引け、岸野とビデオカメラから微妙に間合いを遠ざけた。
そんな中、ただ1人浅田だけが岸野に向かって前進し、ビデオカメラを掴んだ。
「なあ、こいつは俺に任せてくれないか?頼むよ!」
堅いマジ顔で迫る浅田に対し、岸野はあっさり答えた。
「いいよ」
「うっしゃ〜!」
普段冷静で斜に構えたような態度のことが多く、ツッコミ役の時ぐらいしか感情を露にすることのない浅田が雄叫びを上げたので、驚く会員一同。
豪田「えらく嬉しそうね、浅田君」
巴「あんな熱い浅田君、初めて見た」
神田「浅田君、そんなにそのカメラ好きなの?」
浅田「好きっつーか、憧れてたんだよ。俺将来は映像系の仕事やりたいからさ」
神田「それじゃあ何で椎応に入ったの?」
浅田「入試の頃になって目覚めたんだよ。勉強しないで映画ばっか見てたから」
一同『よくそれで受かったな。浅田君、案外賢いのかも…』
沢田「うちの大学、映研あったと思うけど、何で現視研に入ったの?」
浅田「行ってみたけど、あそこは見る方中心で、作る方はここ数年作ってない開店休業状態だったからやめたんだ」
沢田「それで現視研に?」
浅田「まあ撮影対象としてコスプレにも興味あったしね。だから将来のことは別口でやればいいと思って独学で勉強してたんだけど、まさかここでこいつに出会えるとはな」
浅田は愛しげにビデオカメラを撫でた。
豪田「うわー浅田君、目に狂気の光が…」
巴「て言うか、ありゃ狩る者の目だよ」
日垣「それにしても贅沢な話だね。8ミリで撮った映像がメインで、そんな高級なビデオカメラで撮った映像がサブだなんて」
荻上「まあ確かに保険とは言え、ある意味無駄使いね」
スー「押忍!お言葉ですがセンセイオギウエ、それは違うであります!」
荻上「と言うと?」
スー「押忍!映画とは無駄使いの土台の上に成り立つ、総合芸術だからであります!」
一同「そうなの?」
アンジェラ「スーの言う通りあるよ。古来より映画ってものには、無駄な金が使われてきたあるね」
荻上「例えば?」
アンジェラ「例えば…みんな、ギネス公認の制作費世界一の映画って何だと思うあるか?」
国松「うーんと…『インディペンデンス・デイ』かな?」
沢田『『ウォーターワールド』じゃなかったっけ?」
アンジェラ「確かに両方とも、公開当時はナンバーワンだったあるね。でもインフレを考慮すれば、おそらく今でも世界一は『クレオパトラ』あるね」
一同「くれおぱとら?」
アンジェラ「そう、『クレオパトラ』。制作費は当時の金額でざっと3000万ドルあるね」
「さんぜんまんどる?!」
台場が大声を上げた。
台場「アンジェラ、『クレオパトラ』って何時の映画?」
アンジェラ「確か60年頃(正確には62年)あるね」
サーっという血の気が引く音が聞こえそうなぐらい、一気に台場は青ざめた。
荻上「どうしたの、台場さん?」
台場「あの当時の3000万ドルって、今の3億ドルぐらいはあります。つまり今の日本円に換算すれば、ざっと300億円ぐらいです」
一同「さんびゃくおくえん?!」
(参考)
2007年現在では「スパイダーマン3」の方が上かも知れない。
(制作費3億ドル、日本円で約357億円)
アンジェラ「でもその金額以上に問題なのは、本来制作に必要だったのが、当初の予算通りだとすれば300万ドルぐらいってことあるよ」
荻上「と言うことは、全制作費の9割ぐらいは無駄金ってことなの?」
国松「何でそんなに無駄使いしたの?」
アンジェラの説明によれば、次のような理由が複合的に招いた事態ということだった。
・2度に渡る撮影スタジオの変更
・ヒロインのエリザベス・テーラーが病気でダウン
・シナリオの完成を待たずに撮影開始
・監督の途中降板
・それらの理由によるスケジュール変更の為、ヒロイン以外全員途中降板
・それに伴なって撮っていたフィルムの殆どが没
・エリザベス・テーラーがロマンス発覚&パパラッチ出没でスタジオ入り拒否
アンジェラ「とまあこんな具合に、映画というものは多くの無駄の上に成り立っているあるね」
国松「でもやっぱり、無駄使いは良くないわね」
国松はこのひと言で、アンジェラが長々と述べた映画論を一蹴した。
日本の特撮の歴史は、ある意味倹約の歴史でもある。
特撮の技術は、戦時中の戦意高揚映画の戦闘シーンを作ることで発達してきた。
本物使って撮影したらいくらかかるか分からない、戦闘シーンをミニチュアで再現して安く仕上げる、そういう発想から日本の特撮は始まっている。
その遺志を引き継ごうとする国松にも、当然そういうコスト意識があった。
映画を作る為なら金をいくらかけてもいい、そういうアメリカ的な映画制作観とは対極的な考え方である。
「安心しなさい。無駄にはならないわよ」
そう声をかけたのは台場だった。
国松「どういうこと?」
台場「せっかく8ミリとビデオの2種類の素材があるんだから、最大限に使うわよ」
荻上「使うって?」
台場「何も学祭1回きりの使用で終わらせることもないと思うんです。作品の出来次第では、学祭とは別の上映会とかコンクールとかにも出してみたらどうかと思うんです」
絶句する一同。
台場「それに8ミリとビデオの2種類素材があれば、それだけ参加出来るイベントも増えますし、ビデオも撮ってあれば、撮影途中でプロモーションビデオ作れますし」
荻上「プロモーションビデオ?」
台場「スポンサーの新規開拓に使うんですよ」
国松「まだ集める気なんだ、スポンサー…」
台場「予告編としても使えますし、それにサンライズと交渉してDVD化して販売したいですから、そん時のプレゼン用にも使えますし」
荻上「ちょっと台場さん、いくら何でもそれは大風呂敷広げ過ぎじゃ…」
台場「何を弱気なこと仰ってるんです!自分の金じゃないとは言え、それなりの金つぎ込んで何か作って、それを金取って客に見せるんですよ、それぐらいの気でやらないと!」
豪田「うわー何か晴海も、目に狂気の光が…」
沢田「どっちかと言うと、浪速の商人(あきんど)の目ね、あれは」
巴「て言うか、こっちも狩る者の目になってる…」
金銭至上主義のハラグーロ的なヤバい空気が漂い始めたので、荻上会長は話題を変える意味もあって、先程岸野が言ったことの意味を確認した。
荻上「でも最後の花道ってのは大袈裟じゃない?だってカメラ使えるんでしょ?」
岸野「使えなくなるんですよ、もうすぐ」
少し沈んだ顔になる岸野。
荻上「どういうこと?」
岸野「来年の春ぐらいに、シングル8の製造が終わるらしいんです」
荻上「しんぐるえいと?」
岸野「8ミリのフィルムには、シングル8とスーパー8の2種類があるんです」
岸野の話によれば、シングル8フィルムの製造元のフジフィルムは、販売を2007年3月に、現像サービスも2008年9月で終了するという。
荻上「つまりそのカメラはシングル8専用で、スーパー8は使えないと?」
岸野「その通りです。フィルムはどちらもビデオのようにカセットに入ってますが、シングルとスーパーじゃ規格が全然違うんです。そして当然、カメラの構造も違います」
ちなみにシングル8のカセットを残しておき、スーパー8のフィルムを入れ替えれば使って使えなくはない。
ただフィルムの厚みが違う為に不具合が起こる危険性が高いし、何と言っても手間だ。
その為、在庫が無くなり次第シングル8用のカメラは、事実上お役御免と考えていい。
岸野から以上のような説明を聞いた荻上会長は、笑顔で岸野を励ました。
「事情はよく分かったわ。頑張ってね、カメラマン」
「はいっ!」
岸野も笑顔で応えた。
(なお、映画関係者によって結成された「フィルム文化を存続させる会」の活動により、この決定は2007年1月になって一旦撤回され、販売を3〜5年延長することになった)
国松と日垣は、再び着ぐるみ制作についての相談を始めた。
日垣「やっぱ問題は材料だね」
国松「ケロロたちの皮膚って、リアルにはカエルさん風のヌルヌルみたいなんだけど、そういう質感って映像では出しにくいし、もし出せても逆にそれっぽくない気がするの」
日垣「まあアニメで見る感じだと、柔らかそうだけどツルンとした感じだもんね」
国松「ケロロのおもちゃ見ても、プラスチック製か縫いぐるみ系かのどっちかだしね」
日垣「本来ならウルトラマンみたいにウェットスーツをベースにするべきかも知れないけど、あれは高そうだからやっぱラテックスで作る?」
国松「うーん…でもケロロの場合、リアルなモンスター風に作るより、縫いぐるみ感タップリのチープな作りの方が、逆に作風に合ってるかもとも思うのよ」
日垣「うーむ…」
そこへスーが話に加わった。
「押忍!ケロロの着ぐるみでしたら、元祖カエルキャラのケロヨンみたいな感じで、縫いぐるみ風のほうが可愛いし愛着がわくと思うであります!」
国松「何でスーちゃんケロヨンなんて知ってるの?『木馬座アワー』なんてビデオ化されてないし、再放送も無いと思うけど」
日垣「何なの、ケロヨンって?」
国松「昔『木馬座アワー』っていう、着ぐるみ劇の番組があったのよ。ケロヨンはその番組のスターで、カエルさんキャラなの」
日垣「昔って、何時頃の話?」
国松「えーとね、確か66年ぐらいかな。初代ウルトラマンと同じぐらいに始まったと思うけど」
日垣『40年前って言うと、国松さん本人が生まれてないのはもちろん、親御さんが当時いくつって次元の話だな。それを再放送も無いのに知ってる国松さんって…』
国松「でもスーちゃんの言う通りかも。何と言ってもケロヨン、初代ケロちゃんだしね」
日垣「初代って?」
国松「ケロヨンは元々の名前はケロちゃんだったの。でも演じてた声優さんが『ケーロヨーン』って口癖連発してる内に、何時の間にかそっちの方が名前として定着したらしいの」
日垣「てことは、軍曹は2代目ってことか」
スー「押忍!正確には3代目であります!2代目は薬屋のキャラのケロちゃんであります!」
国松「だから何でそんなの知ってるの?!」
この場合の薬屋とは興和(コルゲン)のことで、2代目ケロちゃんとは、古い薬局の店先によく置いてあるカエルのマスコットのことである。
日垣「まあそれはともかく、着ぐるみは縫いぐるみ風味でいいかな?」
国松「そうね。布をベースに、表面をウレタンかスポンジみたいなので仕上げればいいわ。クランクインは9月の頭ぐらいだから、まだ暑いだろうし、中身女の子だし」
日垣「今からじゃチト遅いから、明日材料買いに行こうか?」
国松「そうね、あちこち回って見るかも知れないから、朝から出ましょう」
ふと嫌な気配を感じて振り返る2人。
2人が見たものは、生暖かい目で2人を見守っている会員たちの姿だった。
何時の間にかスーは2人から離れ、話に夢中になるあまり2人は最初よりも接近し距離を詰めていた。
そのことに気付き、滝汗赤面で慌てて距離を取りつつ弁解する2人。
「ちっ、違うから!そういうんじゃないから!」
日が落ち始めた頃、恵子は3回目の「ゴジラ」観賞を終えた。
それに合わせるように、会員たちも帰り支度を始めた。
国松「あの恵子先輩、よろしかったらうち来ませんか?」
恵子「お前んち?」
国松「この近所です。先輩んち遠いでしょう?ここで夜明かしってのも何ですし、それにうちなら眠くなったら寝れますし」
浅田「あのう、よろしかったら寝袋お貸ししますけど…」
国松「あんたたちと一緒にしないの!恵子さん、女の子なんだから!どうです?」
恵子「(しばし考え)わりーな、そんじゃあ頼むわ」
アンジェラ「HEYセンリ!私たちもお邪魔していいあるか?」
国松「私たちって言うと、スーちゃんも?」
スー「押忍!自分たちは今朝一番の便で急遽来日したので、ホテルの手配が出来なかったであります!」
恵子「大野さんには連絡しなかったの?」
アンジェラ「カナコは電話がつながらなかったあるよ」
荻上「今思い出したけど大野先輩、確か昨日から田中先輩と旅行に出かけたらしいわよ」
国松「大野先輩って、確かもうじき就職ですよね?いいんですか、この時期に卒業旅行なんて?」
荻上「実は大野さん旅行代理店の内定、蹴っちゃったらしいのよ」
一同「何ですと?」
荻上「何でも内定もらってから土日休めないのに気付いたんですって」
恵子「もしかしてコスプレのイベントに参加出来ないから?」
コクリとうなずく荻上会長。
恵子「マジかよ…」
アンジェラ「仕方ないある。カナコにコスプレするなっていうのは、息するなっていうのと同じあるね」
国松「で、大野先輩これからどうするんです?」
荻上「4月入社に向けて就職活動再開するって」
国松「マイペースだなあ、大野先輩」
アンジェラ「それはそうと、よろしいあるかな、お邪魔して?」
国松「まあそういう事情なら仕方ないわね。えーと、私のベッドと、予備のお布団と、寝袋かあ…」
恵子「あたしの寝るとこの用意はいいよ。どうせ今夜は寝ないつもりだし」
荻上「3人泊めるんじゃきついでしょ。スーちゃんたちは私んちで引き受けようか?」
国松「1人泊めるも3人泊めるも一緒ですよ。大丈夫です、うちのアパートおんぼろだけど、四畳半二間ありますから」
恵子「2DK?千里って1人暮らしだよな?」
国松「実家から持ってくるものが多過ぎて、どうしてもワンルームじゃ収まらなかったんですよ。だから古アパートで二間あってもワンルーム並みの家賃のとこ探したんです」
こうして恵子、スー、アンジェラの3人は、国松のアパートにやって来た。
途中のコンビニで買ってきた夕食を食べつつ、4人は再び「ゴジラ」を見始めた。
恵子にとっては今日4回目の「ゴジラ」観賞だ。
この回からは、国松とアンジェラが細かい点について解説しながらの観賞だ。
そしてスーは、映画と一緒になって台詞を暗唱する。
「イヨイヨ最後、サヨウナラ皆サン、サヨウナラ!」
「イインダヨ恵美子サン、コレダケハ絶対ニ悪魔ノ手ニハ渡シテナラナイ設計図ダ」
「アノごじらガ最後ノ1匹ダトハ思エナイ。モシ水爆実験ガ続ケテ行ナワレルトシタラ、アノごじらノ同類ガ、マタ世界ノドコカヘ現レテ来ルカモ知レナイ」
スーは過去に何度か「ゴジラ」を見ていたせいか、台詞をほぼ完璧に丸暗記していた。
一方国松は、台詞はうろ覚え(でもほぼ覚えている)なのだが、カットのひとつひとつを異常なほど覚えていた。
それもそのはずで、実は彼女は「ゴジラ」の絵コンテを丸暗記していたのだ。
そしてもちろん、特撮のトリックは知り尽くしており、そのひとつひとつを見ながら恵子に解説する。
「ゴジラの声、今の有名な声と違いますよね。この時のゴジラの声は、コントラバスの弦をこすった音を加工して作ったそうなんですよ」
「この高圧線の鉄塔が放射能光線で溶かされるシーンですけど、これ鉄塔は蝋で出来ていて、それに撮影用のライトを当てて溶かしているんです」
さらには撮影裏話みたいなことまで言い出す。
「このゴジラ対策について話し合ってる新聞記者さんたち、こっちが中島春雄さんでこっちが手塚勝巳さんなんですけど、実はこの2人、特撮パートではゴジラの中の人なんです」
年頃の女の子が4人も集まったにも関わらず、今ひとつ色気の無い合宿風景。
果たしてその先、何が恵子を待ち受けているのか?
そして次回、さらなる試練が現視研に迫る。
今日はここまでです。
やはりこの時期、みなさん忙しいようですな。
まあアニメが始まったら、もう少し人も戻って来るだろう。
それまでは、俺みたいにヒマな奴がここ守ってりゃいいさ。
そんな訳で、続きを投下します。
今日は9レスほどの予定です。
第5章 笹原恵子の覚醒
ゴジラが今日(厳密には2日に渡っているが)7回目の白骨化をして海に沈む頃、50レス近くにも及んだ恵子の長い長い回想は終わった。
とは言っても、7回目のゴジラを見ていなかった訳では無い。
さすがにうんざりして多少よそ見をしつつも、何故か画面から完全に目を外すことは出来なかった。
それは必ずしも義務感だけでは無かった。
かと言って、この歳になっていきなり特撮に目覚めてハマったという訳でも無い。
自分自身でも分からない「何か」に引き寄せられるように、恵子は見続けていた。
一方外人コンビは時差ボケのせいもあってか、さすがにウトウトとし始めた。
2人ほどでは無いが、国松も眠そうだ。
眠そうながらも押入れから予備の布団を出して敷く。
「はいはい、スーちゃんはベッドね。そしてアンジェラは、ベッド小さいから布団で我慢してね」
言いながら2人を誘導する。
恵子「お前も寝ていいぞ、千里」
国松「私はもうちょっとご一緒して解説しますよ」
恵子「いいから寝な。もう4回も聞いたから解説はいいよ。こっからはあたし1人で、あれこれ考えながら見るから。それにお前、明日朝から出かけるんだろ?」
国松「…分かりました」
納得した国松、押入れから寝袋を出した。
恵子「よくそんなの持ってるな。お前も登山か何かやるのか?」
国松「これは防災用ですよ。阪神大震災があった時に、父があれこれ防災用品を買ってきて家庭用の防災セットを作ったんです」
恵子「で、それをこっちにも持って来たと」
国松「そうです。あっ、もうひとつ出しときますから、恵子さんも眠くなったら使って下さい」
恵子「ふたつもあるのか?」
国松「スリーシーズン用と耐寒用です。私耐寒用使いますから、恵子さんスリーシーズン用使って下さい」
恵子「冬用じゃ暑いだろ?」
国松「チャック閉めずに前開けときますから大丈夫ですよ」
恵子「いいよあたしは寝ないから。暑くない方使っとけ」
国松「でも…」
恵子「いいから!どうしても眠くなったら、座布団全部借りるから。あとはでっけえバスタオルでも出しといてくれりゃいいよ」
結局恵子に押し切られる形で、国松はバスタオルを出して恵子に渡し、スリーシーズン用の寝袋で床に就いた。
早朝、国松は目を覚ました。
高校時代、柔道部のマネージャーをやってて朝練に参加してたせいもあって、国松はオタクには珍しい朝型人間である。
普段はこの時間、ランニングするのが習慣になっていた。
だが今朝は4人分の朝食を用意しなければならないので、さすがにそれは中止する。
そして朝食を用意すべく台所に向かおうとしたが、ふと恵子が気になって見に行く。
「ひっ?!」
思わず悲鳴を上げてしまう国松。
恵子は毛布代わりのバスタオルを肩から被り、テーブルに突っ伏していた。
だが眠ってはおらず、目は見開いていた。
ただしその目には黒目が見えず、白く光っているように国松には見えた。
国松の声に反応して恵子が声をかける。
「よっ、おはよ。もう起きたのか」
「おっ、おはようございます。朝御飯の用意しようと思って」
「すまねえな」
「あの、恵子先輩、10回見たんですか?」
「見たよ。もっとも10回目のはあんまし覚えてないから、ひょっとして寝ちまったかもな。そんで念の為もう1回見といたよ」
国松は自らの背筋がザワッと音を立てるのを感じた。
「1回余分に見たんですか?」
「まあ完全にじゃないけどな。気になるとこ中心に飛ばし飛ばしでな」
「…」
「いやあ久々にやると、徹夜も何か気持ちいいな。まあ昔は徹夜でカラオケとか渋谷徘徊とかやったけど、またそれとは違う気持ち良さだな」
「…」
「それにしても変な感じなんだよな。頭ん中いろんなシーンがずーと動き回ってて、なかなか止まんねえんだよ。受験勉強の時だって、こんなに頭動かんかったのにな」
「…朝御飯、用意しますね」
『何だろう、この感じ?もうDVD止めたのに、頭ん中じゃずっと再生されっ放しだ。それも多分、全部の場面がいっぺんに…』
恵子自身は気付いていないが、彼女の脳内では今、猛烈な勢いで脳内麻薬エンドルフィンが分泌されていた。
エンドルフィンは人間が苦痛を無視して運動や苦行を続けると、その脳内で分泌されて苦痛を快楽に変えてしまう。
俗に言う、ランナーズハイとか悟りを開くとかがそれである。
恵子の場合は、エンドルフィンが脳そのものを活性化させたのだ。
ただ脳を使い慣れていない為に上手く制御出来ず、脳の回転に思考や感情が追いつかない状態なのだ。
「なあ千里、お前んちにはケロロ軍曹のビデオ、全部あんのか?」
4人で朝食の食卓を囲む中、恵子が切り出した。
国松「ありますよ。途中から見出したんで、最初の方の分はDVDですけど」
恵子「全部で何話ぐらいあるんだ?」
国松「えーと、確か今で2年と半年足らずぐらいだから…」
スー「押忍!次の放送で123話であります!」
国松「だからスーちゃん何で知ってるの?大野さんリアルタイムで送ってるのかな?」
恵子「んなことより123話っつーと、全部見るのに何時間かかる?」
国松「えーと、まともに見れば60時間ぐらいですけど、CMやオープニングやエンディング飛ばせば50時間ぐらいで見れると思いますよ」
恵子「ざっと丸2日ちょっとか…次の制作会議って2日後だったな」
アンジェラ「ひょっとしてケイコ、ぶっ通しで見るつもりあるか?」
恵子「時間が無いんでね」
スー「ナリフリ構ッテランナイノヨ!」
国松「そんな…恵子先輩、昨夜寝てないんでしょ?」
恵子「でーじょーぶだよ。これでもあたし、最高で5日連続で徹夜したことあんだから」
国松「恵子先輩…」
恵子「そういう訳で、スマンけどあと2日ばかし泊めてくんないか?まあビデオ借りてってもいいんだけど、かさばるし行き来する時間がもったいないからな」
国松「(笑顔で)分かりました!」
珍しくマジ顔の恵子のお願いを国松は快諾した。
朝食後、スーとアンジェラは帰国の途に着き、国松も出かける準備を始めた。
今日は日垣と一緒に、ケロロ小隊の着ぐるみの材料を探しに行くのだ。
その為かリュックは、いつも使ってる小さなものではなく、やや大きめのものだった。
その中にスケッチブックやノートやペンケースを入れた。
さらに「ケロロ軍曹」の単行本も持って行こうとして、途中で手を止める
国松「これ持って行っちゃまずいですね。恵子先輩も読みながら見るかも知れないし」
恵子「いいよ、持って行きな。こちとらアニメの方を片付けるのでいっぱいいっぱいだから、漫画の方まで読んでる余裕なんてねえよ」
国松「よろしいですか?でもケロロって同じ話でも、漫画とアニメで微妙に違うから、見比べた方が…」
恵子「安心しな。アニメ全部見たら漫画の方も読むからさ。ただ、いっぺんには出来ねえから今は読まねえだけだよ」
国松「上手く今日材料買えたら、今晩からでもいろいろ試してみようと思います」
恵子「ここでやるのか?それならテープ持ってどっかにふけるけど」
国松「多分日垣君のうちでやると思います。おそらく大半の荷物は彼が持ってくれるでしょうから、うちまで運んでもらうのも気の毒ですし」
恵子「そうか…(ニヤリと笑い)何なら泊まって来てもいいぞ」
国松「(無邪気に微笑み)まさか、今日はまだそこまで本格的にはやりませんよ。材料が上手く見つかるかにもよりますし。夕方には戻って晩御飯作りますから」
恵子『こいつらお互いに意識はしてるみたいだけど、まだそういう方にまでは考えてないみたいだな。敵わねえな、無邪気なやつらには』
こうして国松は、恵子の昼飯と合鍵を残して出かけた。
国松は近所で日垣と待ち合わせをし、電車で都心に出た。
行き先は池袋の東急ハンズだ。
今日のところは、先ずは材料をいろいろ見て回るつもりだ。
そうなると専門的な店に行って、あれこれ見せてもらうのもチト気が引けるし、第一あちこち回ると時間がかかる。
そこでとりあえずハンズで広く浅く見て回ろうという訳だ。
2人は素材売り場であれこれ見て回り、結局ウレタンや布地を数種類買い込んだ。
先ずはそれで試作してみて、使えそうな分を次回は大量に買い込んで本格的に着ぐるみを作ろうというのだ。
2人の間で、ケロロ小隊の着ぐるみの大体の構想は出来ていた。
体は長袖のシャツとタイツをベースに、手足は薄くウレタンを貼り、胴体は厚くウレタンを貼り、全体を着色する。
頭部は古いヘルメットをベースに、ウレタンを貼って着色する。
ある程度頭を大きくしてケロン人ぽくする為と同時に、安全確保の為である。
今回の着ぐるみは単なるコスプレではなく、殺陣を前提にしたスーツだからだ。
それに何と言ってもケロン人に入るスーツアクターは、全員平均より小柄な女の子なのだ。
嫁入り前の娘たちを傷物にする訳には行かない。
ただ、その嫁入り前の娘に自分はカウントしてない(あくまでも気持ちの問題で、自分の分のスーツにもヘルメットは入れるつもりだが)ところが、国松の国松たる所以だ。
ひと通り素材を買い、引き上げようとした2人は、人混みの中に見慣れた人影を見つけた。
田中だった。
国松「こんにちは、田中先輩」
日垣「ちわっす」
田中「ああ君たちか。えらい大荷物だね、今日はどうしたの?」
国松も日垣も、ともにリュックは大きく膨れ、手提げ袋も持っていた。
日垣「見た目は大荷物だけど、実は大半はウレタンなんで案外軽いですよ」
田中「ウレタン?」
2人は田中に、映画のことについて説明し、着ぐるみの材料を買いに来たことを説明した。
田中「前に聞いた話より本格的になってるね。何か困ったことや手伝って欲しいことあったら相談しろよ」
日垣・国松「ありがとうございます!」
国松「そう言えば田中先輩、帰ってらしたんですか、旅行から?」
田中「今日東京に戻って来たとこだよ」
国松「(キョロキョロし)ひょっとして大野先輩もご一緒で?」
田中「うん、今トイレ行ってる」
その後3人は映画の内容について詳しいことを30分近く話し込んだ。
だが大野さんは戻って来なかった。
田中「遅いな大野さん。途中で買い物でもしてるのかな?」
国松「(反射的に腕時計を見て)いけない、もうこんな時間!帰らなきゃ!」
田中「何か他にも用事あるの?」
国松「恵子先輩の夕食の用意しなきゃいけないんです」
田中「あっそう言やさっき泊まってるって言ってたね、恵子ちゃん」
日垣「(腕時計を見て)えーとうちに寄って荷物置いて、軽く材料いろいろ試したら、まあそんな時間だろうね。そんじゃ田中先輩、俺たちはこれで」
国松「大野先輩によろしくお伝え下さい、それじゃ」
立ち去る2人を優しい笑顔で見送る田中。
不意に背後に殺気に似た気配を感じ、素早く振り返る。
そこには全身から妙なオーラを放ち、陽炎でぼやけそうになった大野さんが立っていた。
田中「(一瞬怯え)おっ、大野さん、どこ行ってたの?遅かったじゃない」
大野「ごめんなさい、実はだいぶ前から田中さんの後ろの物陰に居たんだけど、つい話を聞くのに夢中になっちゃって…」
大野さんの放つオーラが、闘気に似たものに変わった。
田中「あの、大野さん?」
大野「私たちが旅行に行ってる間に、こんな面白そうな話が進行していたなんて…フフッ、フフフフフフフフ…」
どうやら現視研の映画制作プロジェクトは、大野さんのコスプレ魂に火を点けてしまったようだ。
野球の漫画、それも特に高校野球を描いた漫画って、ひとつの大会が凄く長いよね。
まあ普通主人公のチームって決勝まで勝ち残るから、週刊連載でも大会ひとつで軽く1年や2年費やしてしまう。
それを月刊誌でやろうってのは正気の沙汰じゃない。
「おお振り」って確か、夏の地方大会始まったの去年の頭か一昨年の末ぐらいだったと思う。
でも今日久々に読んだら、4回戦だか5回戦だかをやってた。
西浦がもし決勝まで残ったら、県大会いつ終わるんだろう…
それはさておき、何か俺のSSも「おお振り」並みに長期化の様相を帯びてきましたな。
まだ去年の夏コミ済んでから、1週間かそこらしか時間経過してないし、そもそも映画まだクランクインしてないし。
果たして学祭の季節までに完結出来るのでしょうか?
そんなことより次回の予告。
(長いなあ前フリ、と思わず自己ツッコミ)
遂に内なる監督回路が作動し始めた恵子。
果たして彼女が仕切る、次回の制作会議の行方は?
そしていよいよ、不死身のあいつが帰って来る!
本日はここまでです。
>『完士とおたく工場』
オ・ギウ・エーの妖精ミュージカルになってきとるw ミラクルロマン・スー笑かしていただいたwww
ドラミになったスーは少し前の絵板の「オギえもん」シリーズでしょうか。
漫画工房のシーンは吾妻ひでおを思い出したがまあそんなことはあるまい。
おそらく映画が下敷きとなってる各シーンも、相当なフィルターがかかってて大層面白いことになっております。
ほいで悪役二人組はとうとう退場ですか。俺はほのぼの好きだからオケなり。
ところで
>「大丈夫だ。ゴミを燃やすのは火曜日だから。」
>「今日が火曜日ですよ。」
この掛け合いGJ!
そろそろ完士くんの淡い恋心の行方も気になるが、いろいろな工房も見てみたい。
引き続きよろしくです。
そそるぜw
>『30人いる!』
読んでる!読んでるぞ!!
俺もまんがまつり行けなかった口なのでオタク的には日々つまらんのだ。あなたの作品はそんな退屈を吹き飛ばしてくれるさながら一杯の清涼飲料。
当分楽しませていただくので引き続きよろしくよろしく。
そろそろ『連作を除く過去SS最長作』達成したころあいだと思うが(ざっと見たところでは『スザンナの消失』『はぐれクッチー純情派』『26人いる!』あたりがトップ3、ってあれ?作者氏……?)軽快に読み進められて気持ちがいい。
そしてお話。脳内麻薬エンドルフィンキター!恵子はけっこう一途なタイプだと思うので、ともかく何かの方向性を与えてアクセル踏んじゃえば爆発スタートすると思います。
ぶっちゃけ洗脳に近いビデオ学習の効果激大だぜ!
だがしかし!
>ただ脳を使い慣れていない為に上手く制御出来ず、
失礼だwww
回想シーンも終わったし材料集めも進んだし(ついでに陰謀が増えてるようだがw)、近いうちに制作編とクランクインが見えてくるかな。
まだまだ行けるぜ。引き続き楽しませていただきます〜。