なんて素敵にジャパネスク連載中 第2帖

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630粗筋中将
昭和61年、花ゆめEPO8月号にて「ざ・ちぇんじ!」という漫画が掲載された。
この漫画について語ろうじゃないか。
本連載は、氷室冴子の集英社コバルト文庫シリーズを漫画化したもので、そちらを既読の方もいるだろうが、
漫画で初読の読者のために、ネタバレは遠慮頂きたい。また、小説対漫画の過剰な比較討論もスレ違いだ。

尚この漫画は、何をしても許される主上の命で、概ね1日に1話ずつの速度で連載されるようだ。
時々、作者が北嵯峨へ取材旅行のため休載になったり、変な時期に合併号になる事もあるが気にしないでくれ。

なお本日は「花ゆめEPO 1986年8月号」の発売日だ。

連載中スレの楽屋裏 第24幕 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1185162487/

※このスレは連載当時に戻ったつもりで進行しています。
あらすじが書き込まれた話から先の展開や、先の時代の出来事は知らない前提で参加してください。
この段階では『なんて素敵にジャパネスク』は連載されていません
初めて参加する方は必ず「連載中スレの楽屋裏」のテンプレに目を通してルールを把握してください。

関連スレ
氷室冴子 6 http://love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1171978309/
【新刊】 山内直実・ジャパネスク 6 【発売】http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/gcomic/1158902745/
631粗筋中将1/6:2007/09/19(水) 22:03:45 ID:???
平安時代は花の頃、ここ三条邸では権大納言藤原顕通卿が束の間の平和を楽しんでおりました…。
それというのもいつもうるさい北の方ふたりがそろいもそろっていらっしゃらないからなのです。
そこへ女房の近江がドスドスドスと足音をあらげ、得意の「大変どすえ」と叫びやってきました。
なんと綺羅の若君が弾正伊宮の若君と決闘なさると言うのです―――

     ざ・ちぇんじ!  〜新釈とりかえばや物語〜

三条邸の西の対屋では、綺羅君が乳姉妹の小百合の見守る中、弓の稽古をしておりました。
そこへ、おもうさまであられる権大納言さまが血相を変えてやって来、女房の近江の話を確認します。
すると、綺羅君は笑い、小百合にちょっかいを出したニキビ面の弾正伊宮相手に明後日、矢を射かけ合う約束をしたことを話します。
けれど権大納言どのは父として大反対。なぜなら、綺羅君は 女 の 子 なのですから―――

権大納言どのは、綺羅「君」が産声からして並ではなかったことを思い出します。
姫なのに琴や貝合わせもせず、蹴鞠や小弓に興味を示し、はては笛や漢学まで習い覚え才を見せました。
男の格好をしたがり、それがまたよく似合っているのを見た時は情けないやら呆れるやら、複雑な思いをしたものです。
今東宮さまが女宮であらせられるご時世とはいえ、それは今上帝に男皇子がいらっしゃらないため、綺羅君とは事情が違います。
女の身で悪タレと評判の弾正伊宮の若君との決闘は危ない、と思い留まらせる権中納言さまの横から近江が耳打ちします。
なんと危ないのは弾正伊宮の若君の方で、綺羅君を怖がり出家するとまで言っているとか。
それを聞いた権大納言どのは開いた口が塞がらず、綺羅君にとにかく決闘を中止するよう言い、頭を抱え部屋に戻ったのでした。
632粗筋中将2/6:2007/09/19(水) 22:05:00 ID:???
そんなこんなで権中納言さまは、自身の結婚について相手が悪かったと振り返ります。
女子は物静かなほうが良いと、源宰相の娘、夢乃さまのもとに通ったのですが、これが妙に迷信深い方でした。
占いはすべて信じる、新興宗教と聞けばすぐに入信する、しまいには神憑かってぶつぶつ言い始める始末です。
そんな妻に嫌気がさし、今度は藤原中納言の娘、政子さまのもとに通い始めました。
これがまた正反対のお方で、物事ははっきり言う、几帳は蹴倒して歩く、火桶を投げつけて夜盗まで捕まえる…
そんな二人の北の方がこの三条帝に移ってからは、互いが互いを牽制し合うもので、権中納言どのの気の安まる時はありません。
ふたりのそれぞれのお子の運命も、生まれ落ちた時から決まっていたのではないだろうか、と思い至ったところで、
もう一つの悩みのタネを思い出しました。
東の対屋、夢乃さまのお子、綺羅姫のことを―――

綺羅姫と、はねっかえりの姫さまが反対だったら、と呟いたのを、帰宅なさった政子さまに聞かれてしまいました。
政子さまにとっては、あのひ弱な姫と逆だったらと言う権大納言どのの言葉は聞き捨てなりません。
政子さまの綺羅さまは弓や蹴鞠も都の若い者の中ではピカ一、声といい姿といい母親から見てもほれぼれしてしまうというのに、
それを夢乃さまの生んだ オ カ マ 息 子 と比べるなど失礼だ、と憤慨し、調度品を蹴り倒しながら去っていきました。
そう、東の対屋に住む綺羅姫こそが 男 の 子 なのでした。
世間では綺羅君(姫)のことを光源氏の再来かと噂しているし、
その綺羅にうりふたつと言われる綺羅姫(若君)はさぞ美しいのだろうとうらやましがっています。
何の因果でふたりの性格が入れ替わってしまったのでしょうか。それを思うと今日も泣けてくる権大納言さまでした。
633粗筋中将3/6:2007/09/19(水) 22:07:17 ID:???
その頃西の対屋では、綺羅君と小百合が権中納言さまと政子さまの騒ぎを遠巻きに聞いておりました。
すっかり男が身についてしまった綺羅君を複雑な視線で見つめるのがここにもう一人。
綺羅君の乳姉妹の小百合は、子供の頃は同じ年の綺羅君を、女と知った時は寝込むほど男だと信じておりました。
弾正伊宮の若君との決闘がなくなりほっとしている小百合とは裏腹に、
綺羅君は恋だの歌だの浮かれて弓も射れない男は腑甲斐ない、日本男児たるものもっと雄々しくあるべきだと力説します。
そんな綺羅君も、「弟」の綺羅姫がよく貧血で倒れるのを心配しておりました。
夢乃さまの西山行きに同行するくらいなら舌をかみきって死んでやると敢然と抵抗なさった話を小百合から聞き、
ホネのある男になったかと見直し、東の対屋に見舞いに行くことにします。

東の対屋では、綺羅「姫」が綺羅「君」も見惚れるかわゆらしい寝顔を見せていました。
人の気配に気付きがばっと起き上がった綺羅姫は、それが姉であることに安堵します。
今、新興宗教の教祖生誕40周年記念式典に出向いている夢乃さまではないかと思うと胸が苦しくなり倒れてしまったのだそうです。
生まれた時から体の弱かった綺羅姫は、呪われた運命をしょっているのだと悲観的に綺羅君に話します。
綺羅君よりも一日遅く難産でお生まれになった綺羅姫は、産ぶ声すらあげられず乳をふくめばむせて吐き出し、
とても育つまいと思われていたのですが、
夢乃さまが、夢に蓬莱山の仙人さまが現れ、姫としてお育てすればつつがなく成人するとお告げを頂いたと豪語しました。
そのため、綺羅姫はずっと自分のことを女の子だと思っておりました。
しかしある日、庭の外を駆け回る童を羨ましく眺めていると、その童が池に落ちるのを目撃します。
その時、衣を脱いで木に干した童のあられもない姿を見て、姫にもついている「あれ」があることに驚愕しました。
夢乃さまに問い、その時初めて自分が男の子であることを知ったのです。
634粗筋中将4/6:2007/09/19(水) 22:08:35 ID:???
男の子なのに姫の姿は嫌だと訴えるも、命を救うために姫として育てたのに、男の子に戻れば死んでしまう、
そうなれば母も死んでしまうと夢乃さまや女房達に泣き落とされると、気力も体力も上な迫力におされ、つい失神する毎日なのでありました。
けれど今でも、綺羅姫はやはり男に戻りたいと思っています。
特に、姉君に初めて会った一年前から特にそう願うようになりました。

夢乃さまと政子さまは犬猿の仲のため、同い年の姉弟がいると聞いても会ったことはありませんでした。
それぞれがそれぞれに悪い噂は聞けど、おもうさまの美人だったというおばあさまに似てそっくりだと言うのは確かでした。
お互い会ってみたいと思っており、それが一年前、綺羅君の蹴った鞠が東の対屋に飛んで行ったその時、初対面を成したのです。
綺羅君の顔を見た綺羅姫は、あっと一言漏らしたかと思うと失神してしまいましたが…。

あれ以来、人目を憚って会ったり文のやりとりをしている二人ですが、綺羅姫はやはり思わずにいられません。
男の子として育っていたら、姉さまのようになっていたのか…と。
一方の綺羅君は、男の自分に満足しておりました。
しかし悩みはひとつ、それは周りの友達のように元服して出仕していないこと。
けれどやはり男の子の姿は身軽です。小百合を連れて東の市に行くと綺羅姫の元から帰りました。綺羅姫の憂い顔に気付かないまま…。
635粗筋中将5/6:2007/09/19(水) 22:09:43 ID:???
さて、花の頃は夏へと移り…
綺羅君は友人の話に激怒しておりました。
それと言うのも先日、長雨の間の主上の無聊をお慰めする若い者の蹴鞠の会で、左近少将が主上を前に友人達を、
綺羅君の名を出して侮辱したと言うのです。
それも、元服前の綺羅君に対し嫌味を言ったというのですから、綺羅君は我慢なりません。
左近少将に中傷されるのはこれが初めてではありませんでした。
3ヶ月前、東の市に行った時、不注意にぶつかられた従者に、やはり元服前の無位の子供だと陰口を言われました。
その者達は、式部卿宮家の御一人子、左近少将の従者だったのです。
その時の屈辱が蘇り、綺羅君は友人の前であるにも関わらず部屋を飛び出し、おもうさまの元へと駆け出しました。
状況の飲み込めないおもうさまを前に、もうこれ以上の屈辱を味わわないために元服させてもらうよう訴えます。
しかしおもうさまは駄目だの一点張り。
それもそのはず、元服、出仕は遊びとは違います。もし綺羅君が女であることがバレてしまえば、主上を謀った罪で死罪もありえるのです。
「死罪」の言葉に、そんな大事になると思わなかった綺羅君は怖気づきます。
しかし、それ以上に左近少将の屈辱が勝りました。
とうとう、元服を許してくれないおもうさまへの反抗で、家出を宣言した綺羅君なのでした。

大見栄きって出てきたものの、北嵯峨にある山荘は暑く、うだる毎日を過ごす綺羅君がおりました。
ロクな供もつけずに2、3年手入れのない山荘に来たことで割りを食っている小百合とも売り言葉に買い言葉で喧嘩をしてしまいます。
そして山荘までも飛び出した綺羅君は、供もつけず一人で、子供の頃よく泳いだ池にやって来ました。
北嵯峨の山荘に行くと宣言して家出したためおもうさまにも心配されず小百合にも憎まれ口を叩かれ、左近少将に八つ当たりをしながら
子供の時のように全裸で泳ぎ回る綺羅君でした。
636粗筋中将6/6:2007/09/19(水) 22:10:45 ID:???
その時、人の気配と鳥の羽ばたきに気付き、一人で裸で泳いでいることに危険を感じた綺羅君は、急いで池のほとりへ向かいます。
水から上がり、冷えた体を早く衣で纏おうとしているところに、一人の公達が現れたのです!

公達も裸の綺羅君も、一瞬絶句したものの、綺羅君が声を上げたことで我に返った公達は、後ろを向きます。
水音を不審に思っただけで決して不埒な思いで来たわけではないと言い訳をするのですが、綺羅君はそんなことより早く立ち去って欲しいのです。
しかし公達は、去りません。何かやんごとない事情でもあるのではないかと背中越しに聞いてきます。
綺羅君としてはそんな事情はないのですが、やんごとない事情を期待しているようなので、早く立ち去ってもらうために考えます。
そこで出たのが、意に染まぬ結婚を勧められ断ることもままならず、いっそはかなく入水してしまおうと思った、というでまかせです。
「入水」の言葉に公達は驚いて振り向いてしまうような公達でしたが、綺羅君の話に心を痛めたようでした。
何やら「死ぬは易いが生くるは難い、しかし生あるものなればなべて生くるが神の御心」などと諌めてくれているようです。
その時、小百合の声が聞こえ、この場を見られてはまずい、とその公達を追い返そうとします。
哀れと思うなら自分のことは忘れて去ってくれ、と言うと、公達は涙声で哀れに思う、と答えてくれます。肩が震えています。
そして、今日の戒めに、と数珠を後ろ手に渡してくれました。
再び死を思うことがあれば、わたしを思い出し耐えて生きるように、そなたのことは忘れないと言い残し、公達は叢に帰っていきました。

間一髪で小百合がやって来ました。一糸まとわぬ綺羅君を見て驚くどころではありません。
自分が来たからいいものの、と顔を真っ赤にして怒る小百合ですが、都の役人が見慣れぬ男を探していると聞かされたのですから、
心配もわかります。山賊がこのあたりを徘徊しているらしいのです。
しかしそんな小百合の話をよそに、綺羅君は先ほどの公達を思い出していました。
衣も着ず入水するという言葉を素直に信じ、高価な紫水晶の数珠をあっさり手渡す…どこの田舎貴族なのでしょう。
先ほどのことを思い出すと、つい顔が笑ってしまう綺羅君なのでした。
637粗筋中将6/6残り:2007/09/19(水) 22:12:00 ID:???
一方数日後の都でのこと。権大納言どのは宮中におりました。
御簾の向こうには、即位されてまだ2年の当今…今上帝があらせられます。
ふとした話のきっかけから、主上が権大納言どのの綺羅君、綺羅姫の元服と裳着の話題になりました。
主上は、14になるふたりの綺羅さまの元服も裳着も執り行われていないことに驚き、たいへん興味を持ちました。
若い者達も噂していることを覚えていたのです。
その評判の子を見てみたいという主上が一言言いました。「出仕させなさい」
突然の話の展開に青ざめる権大納言どのは、綺羅君がまだ無位であることを理由に断ろうとしますが、
主上はあっさり殿上に必要な五位を与えられました。
こうなれば権大納言どのは従わざるを得ません。
綺羅君に、元服を許す旨の文を急遽やり、それを受けた綺羅君は大喜び。
そんなばかなと、ひとり割り切れない不安な小百合なのでしたが…
638相関図中将:2007/09/19(水) 22:14:44 ID:???
      藤権
      原大
夢    顕納    政
乃 〒  通言  〒 子
   綺      綺    小
   羅      羅 ----百
   姫      君    合
  (男)     (女)
639マロン名無しさん:2007/09/19(水) 23:02:16 ID:???
氷室先生と山内先生は相性いいなあ。
原作読んでないけど面白そう。
640マロン名無しさん:2007/09/19(水) 23:39:30 ID:???
女の子に官位てww
「いやあれは男勝りなだけの女の子です」と
早めに知らせる手は無かったのかおとっつぁん。
641マロン名無しさん:2007/09/20(木) 01:02:13 ID:???
筋はとりかえばやっぽいのにノリが面白すぎるww
642マロン名無しさん:2007/09/20(木) 01:15:12 ID:???
はだかで入水てww
そんなの信じ込むなよ
643マロン名無しさん:2007/09/20(木) 09:30:45 ID:???
世間知らず主上、カワユスw
644マロン名無しさん:2007/09/20(木) 13:56:01 ID:???
主上が世間知らずなんて描写あったっけ?
645マロン名無しさん:2007/09/20(木) 15:32:41 ID:???
とってつけたような言い訳をそのまま信じ込むところw
646マロン名無しさん:2007/09/20(木) 17:22:56 ID:???
おもうさまがまるまるコロコロしててカワイイ
647マロン名無しさん:2007/09/20(木) 17:23:56 ID:???
648マロン名無しさん:2007/09/20(木) 18:25:31 ID:???
綺羅姫(弟)カワユス
649マロン名無しさん:2007/09/20(木) 20:53:41 ID:???
おかん達が恐いよー
おもうさま女見る目なさすぎ
650粗筋中将1/5:2007/09/20(木) 22:02:34 ID:???
おもうさま・権大納言さまに元服を許された綺羅君は、御機嫌も良く北嵯峨の山荘から京の三条邸へと戻って参りました。
その頃夢乃さまの東の対屋では読経の声と煙が、政子さまの西の対屋では荒い足音と女房達に指示を出す声が響き、騒然としておりました。
おもうさまの元へ事情を聞きに行ったところ、それもこれも綺羅君が元服することになったからだと言うのです。
そこで初めて綺羅君は、自分の元服が主上のお声掛かりで決まったとこを知りました。これには綺羅君も驚きです。
おまけに、おもうさまの弟君、右大臣と、父上の関白左大臣どの、天下の左右大臣がその加冠役をめぐって争っているらしいのです。
主上のお声掛かりの元服というだけでも都中の注目のマトなのに、思いがけず世紀の一大イベントへと発展してしまいました。
おまけに夢乃さまは、綺羅君だけが元服できるのは不公平だと、綺羅姫の裳着も行なうよう祈祷しているとのことです。
おもうさまはもうヤケクソです。
綺羅君も、元服が出来て嬉しい反面、以前言われた「死罪」が頭をよぎります。まさかこんな大事になってしまうとは…。
それに、裳着の話まで飛び出した弟の綺羅姫も心配です。
小百合の集めた情報によると、2日前から夢乃さまが、裳着の式が決まるための不寝の読経会にお入りになったそうです。
昨夜は焚きすぎた香を火事と間違え、京職や検非違使の役人が駆けつけたほどでした。
当の綺羅姫は、裳着の話を聞いて人事不省に陥ったままだということです。
綺羅君は、今は東北の対屋で寝んでいる弟の綺羅姫を見舞うことにします。

東北の対屋に綺羅君が向かうと、何やら裳着、裳着、ぶつぶつと声が聞こえます。
かと思えば、かすかな気配を察し、がばっと起き上がる綺羅姫。気配の主が姉上であることを知ると、ホッとするのも束の間、
元服の決まった綺羅君に、皮肉たっぷりに祝いを述べます。
好きで元服する綺羅君と違い、綺羅姫は男の身で裳着が決まるかもしれないのに、落ち着いてなどいられないのです。
651粗筋中将2/5:2007/09/20(木) 22:03:53 ID:???
興奮する綺羅姫に、主上の御命令もないのに保身第一主義のおもうさまが折れるわけない、と綺羅君が安心させているその時でした。
女房が足音荒く、おもうさま権大納言どのが綺羅姫の裳着をお決めになったことを伝えに来たのです。
これには綺羅姫も失神寸前。
なんでも、西の綺羅君の加冠役を争った関白さまが右大臣さまにクジで負け、それはそれは悔しがり、
せめてもうひとりの孫の腰結い役をやらせてくだされ、このままでは引退して出家することもできないと主上に泣きついたところ、
ならば姫の裳着も一緒にやるがよいと、 主 上 の お指図で決まったということでした。
それを聞いた綺羅姫は顔を真っ赤にして倒れ、どんどん話が大きくなることに、無事に元服を終えられるのかと不安を覚える綺羅君なのでありました―――。

というわけで、今日はお式の当日です。
元服の加冠役、裳着の腰結い役といえば後々の後見を約束するようなもの。
それを関白さま右大臣さまが自ら名乗りをあげておやりになるというのですから、綺羅姫と綺羅君の将来は並のものではありません。
なかなか元服をおさせにならなかったのはこうして主上の気をひくためだった、
関白さまはお式の後は引退なさるそうで、次期関白は権大納言さまだ、
若君も五位の侍従と決まっており、姫さまも裳着の前から主上の覚えもめでたく都一の后がねだと宮廷人の噂は止まりません。
聞いているだけだととてもめでたい話ではありますが、綺羅君と綺羅姫の事情を知る小百合は素直に喜べないのでありました。

いよいよ元服の儀の始まりです。
その場にいる者たちは、初めて目にする綺羅君の姿に、噂通り美しい若君だと、知らずどよめいています。
その中にひとり、我が姫の婿がねにぴったりだ、と心躍らせる人もいるようです。
そんな周囲の思惑はいざ知らず、綺羅君は、みなの値踏みするような視線だけが気になります。
しかし、その中にひと際イミあり気で物問いたげな視線があることに気付き、ぎくりとします。
まさか、あの北嵯峨の―――…!?
652粗筋中将3/5:2007/09/20(木) 22:06:11 ID:???
元服の準備が忙しくすっかり失念していましたが、家出先の北嵯峨で出会った、口からでまかせをコロッと信じたあの男…。
品の良い直衣を着ていたり、紫水晶の高価な数珠をくれたり、トロく見えたのも、育ちが良いせいかもしれない。
あの田舎貴族がここにいるとしたら?そうでなくても出仕して宮中でバッタリ会ったら―――。
あの時の女だ、とあの男が言えばすぐに真相がバレてしまいます。
そうなれば、主上を欺いた罪で「死罪」…。

元服の儀も終わり、祝宴が始まろうというのに、そのことを思っただけで綺羅君は気分が沈みます。
暗い顔の綺羅君に、盛大な式だったから仕方がないと小百合は慰め、綺羅姫の裳着の様子を伝えます。
何やら、式の途中で何度も倒れそうになり、左右を女房方にささえられての裳着だったとか。
近頃には珍しい奥ゆかしい姫君だともっぱらの評判になったそうです。
その評判を複雑な気持ちで聞く綺羅君のもとへ、おもうさまの権大納言どのが訪れました。
綺羅君は、おもうさまに、式の際に感じた視線の主について聞きだします。庭のあたりに、背が高く顔のいい男がいなかったかと。
するとおもうさまは記憶を手繰り寄せ、それは左近少将だったと答えます。
綺羅君が出仕するとなると良いライバルになると世間の噂、あちらもその気らしく、式の間中睨みつけていたのだとか。
左近少将といえば、綺羅君を“元服前の半人前の坊や”とバカにした憎たらしい男です。
お互いライバル視している左近少将が、もしあの北嵯峨の男だったら、身の破滅です。
元服したのはいいものの、思わぬ悩みの種が出来てしまいました。
明日の初出仕を控え、無事に済むのか、うつうつとしてしまう綺羅君でした。

翌日、綺羅君の宮廷初出仕の時がやってきました。
主上の特別要請で出仕することになり、普通ならばすぐにはお目にかかることの出来ない主上に早くもお会いすることとなりました。
加冠役の右大臣どのの一の姫・弘徽殿の女御に挨拶に行く途中、散策中の主上とバッタリ会うという「シナリオ」があるのです。
綺羅君としては、いつあの北嵯峨の男にバッタリ会うのかと気が気ではない、などと思っているところでした。
シナリオ通り、散策中の主上が目の前に現れたのです。
653粗筋中将4/5:2007/09/20(木) 22:08:29 ID:???
とは言えお声が掛かると、すぐに頭を下げて主上のお言葉を待ちます。
目の前にいる主上に思わず顔が赤くなり緊張してしまう綺羅君ですが、主上から薫る梅花香と思われる香にハッとします。
どこかで嗅いだ…
まさか、と思い、もう一度お声が掛かるのを待ちます。そうすれば、違うということがわかるはず…。
しかし、次の一声で綺羅君の疑惑が確信に変わります。
右大臣どのにせかされ、意を決して綺羅君は顔を上げました。
そこには、驚きで扇を取り落とす、北嵯峨の男がいたのでした―――

時は戻り数日前、宮中の何もかもに嫌気がさして嵯峨野へ抜け出した主上の姿がありました。
嵯峨野には、幼い頃に主上をお育てになった祖母の女院がいらしたのですが、女院は、主上の御忍びの理由がわかっておりました。
出家された身の上とはいえ、情報化時代のこの世にリアルタイムで処理した情報網は完璧だと自負しております。
主上の気鬱の原因は、日ごろから争いの耐えない3人の女御さまたちの事でした。
最初に出家すると言い出したのは麗景殿の女御さま。東宮時代からの仲で、思慮も分別もある方だけに慌てて思い留まらせたのです。
そもそも、お顔がよろしく才がある梅壺の女御さまが、主上より5つ年上の麗景殿さまや、
十人並みの容姿の弘徽殿の女御さまをないがしろにしておられるのが原因でした。
さりげなく梅壺の女御さまに麗景殿さまのことを注意なさると、ならばわたくしが尼になりますと逆上して騒ぎ出し、
そこへいつもはおとなしい弘徽殿の女御さまが、良い坊さんを紹介しましょかとイヤミの応酬。
それに怒った梅壺さまが、弘徽殿さまの呪詛を怪僧に依頼したのしないのと、女房たちまでを巻き込んでの大騒動でした。
654粗筋中将5/6:2007/09/20(木) 22:09:36 ID:???
皇子の一人も孕まずとんでもない女御たちだと、祖母の女院も主上に同情気味です。
姫宮はいらっしゃるし、死産とはいえ皇子も生まれたゆえ、主上に子種がないわけではないのに、
そのため今東宮は、東宮の器ではない妹宮・久宮さまのことも気掛かりで、「つくづく女運がお悪い」と女院も辛辣です。
しかし、この度のお忍びを面白がっているのも女院でありました。
源氏物語の光君のように、素敵な紫の上に出会える最初で最後のチャンスかもしれない、
その女院の言葉を真に受けたわけではありませんが、供の者がやたら早く宮中に帰れとうるさいので、からかい半分に館を抜け出したのです。
そこで、本当に北嵯峨の乙女に出会ったのでした。

そのことを思い出すとつい顔が赤らんでしまいます。
よもやそんな出会いがあろうとは思ってもいまかった主上ですが、水音に導かれるように池畔へ向かうと、衣もつけずにかの人がいたのでした。
息も絶え絶えふるえていたことや、途切れがちに身の上を語るのも哀れが深く思えました。
“哀れと思し召しならば…”と言って泣き伏した姿も可憐で、
結婚を嫌い入水をする程の人なのだから、かよわそうに見えても芯は強く激しい姫に違いない、といたく感動したのでした。

後に館に戻り女院から、2、3日前から権大納言の山荘に誰かが来ているという話を聞きだします。
権大納言には二人の子供がいます。その姫君に違いないと確信すると居ても立ってもいられず都へ戻りました。
若君の話も聞いていたので、その若君をきっかけにして、入内の話を勧めてもよいではないかと心が踊ります。
655粗筋中将6/6:2007/09/20(木) 22:11:12 ID:???
都に戻り、宮廷人を前に権大納言の若君について尋ねました。
宮廷人の評判はすこぶるよく、その若君にそっくりだと言われている姫君を思って権大納言に探りを入れる者もいると言うが、
それに対し権大納言はすごい見幕で、あの姫は尼にするのだ、結婚など考えたこともないと言ったというではありませんか。
これはよほど高い身分の方を婿がねにと考えての牽制かと宮廷人の間では囁かれているようですが、
高い身分とは、自分のことではないかと主上は思わず口元が緩んでしまいます。
しかるべき家柄の貴族ならば、まして次の左大臣とも言われている権大納言の姫ならば后にも立てる身分です。
しかしなぜ権大納言は一度も姫の話をしなかったのでしょうか。
ひょっとしてそれは、入内を勧められて嫌がった姫の入水に繋がるのでは、と主上はひとり愕然とします。
それで権大納言は姫の入内をあきらめてしまったのか…
自らが迂闊に入内を勧めればあの姫のこと、再び命を断とうとするやもしれぬと考えると八方塞がりになってしまい、
頭を抱える主上でした。

そんなおりのことでした、主上の御前で右大臣らが世間話を始めたのです。
気分が晴れない主上は、その話をイヤミたっぷりに返しますが、取り繕おうとした右大臣の口から綺羅の名が出たのをきっかけに、
綺羅君の出仕を決めてしまったのは、
うりふたつとまではいかなくても、北嵯峨の乙女の面影くらいはあるかもしれないと目論んだこともありました。
しかし、今日宮中で見た綺羅君を見て我が目を疑います。
そして、北嵯峨で出会った乙女は、綺羅君の妹君だったのだ、と確信するに至ったのです―――。

一方、御所を退出し三条邸へと帰る綺羅君は真っ青でした。
あの北嵯峨の田舎貴族は、主上その人だったのです。

と、ゆーわけで、

綺羅の侍従は、帝が弟の姫君と自分を都合よく取り間違えているとは知らず、暗澹たる気持ちで帰途に着いたのでした。
そして、時は流れ・・・
656相関図中将:2007/09/20(木) 22:14:36 ID:???
      左関
      大白
      臣
       │
   ┌──┴───┐
   藤権        右
   原大        大
夢  顕納  政     臣
乃〒通言〒 子    ├―┬─┐
 綺    綺   小  三 二 一⌒ 主  麗
 羅    羅----百  の の の弘= =景
 姫    君   合  姫 姫 姫徽 上  殿
(男)    (女)           殿    女
                    女 ‖  御
                    御 梅
                     壺
                     女
                     御
657マロン名無しさん:2007/09/21(金) 03:13:15 ID:???
アッーな展開キボヌ
658マロン名無しさん:2007/09/21(金) 06:35:02 ID:???
本人の預り知らぬところで
物凄い策士になってるおもうさんワロスw
659マロン名無しさん:2007/09/21(金) 10:21:29 ID:???
なんか同じ出来事を経験してるはずなのに、
綺羅と主上で全然違う話になってるのが笑えるw
660マロン名無しさん:2007/09/21(金) 18:44:02 ID:???
主上ーwww
うらやましい程の妄想力だ!!!
北嵯峨の乙女とのラブロマンスは脳内でだけ華麗に展開されるんだな
661マロン名無しさん:2007/09/21(金) 20:14:43 ID:???
あれだけの脳内変換力があると人生楽しそうだなw
662マロン名無しさん:2007/09/21(金) 22:21:20 ID:???
主上いい人だよな〜w
663マロン名無しさん:2007/09/22(土) 10:31:04 ID:???
綺羅姫カワイソス
主上カワユス
664マロン名無しさん:2007/09/22(土) 12:56:09 ID:???
展開早いよなぁ…
時間は結構経ってるっぽいけど
665粗筋中将1/6:2007/09/22(土) 22:08:47 ID:???
侍従の君として初めて綺羅が出仕してから早2年、
女の身とバレる事もなく、綺羅君は三位中将、父上の権大納言様は左大臣へと出世しておりました。
そして、弟の綺羅姫も美しく成長し、今は”和漢朗詠集”などをたしなんでいます。
そこに、直衣姿のりりしい姿の綺羅君がやって来ました。
今日は物忌みで出仕はお休みのようです。
2年も宮中に出入りすると、宮廷の裏側を覗いてしまった綺羅君はこれでなかなか大変だと知りました。
コソコソと噂が飛び交うたびに、女だということがバレたのではないかという心配もしなければなりません。
しかし、出仕が嫌なわけではないのです。なんていったって、主上が良い方なのです。
北嵯峨で会った時はそのトロさにどこの田舎貴族かなんて思ったものでしたが、内裏でお見申し上げると立派に見えるから不思議なものです。
それに、主上は綺羅君を信頼し、お側近くに置いて下さっているのです。
女だとバレたら大変だと言いつつ嬉しそうに宮廷での様子を話す綺羅君を、綺羅姫は苦々しい思いで聞いていました。
綺羅君と比べ綺羅姫は、好きでもない女の格好をさせられしたくもない裳着をやらされ、今や殿方からの文も耐えない日々です。
一生この姿のままでいろというのか、そう綺羅君に詰め寄りそのまま失神してしまいました。
女房たちが慌てて駆け寄る中、綺羅君は部屋の片隅にある文を見つけます。
それは綺羅姫宛ての、宰相中将からの恋文でした。綺羅姫の不機嫌の原因でしょうか。男から恋文をもらって嬉しいはずはありません。
宰相中将はまだ諦めてなかったのか、と文を見て思う綺羅君でした。

その頃内裏では、物忌みで休みの綺羅君がいないと火が消えたようだと騒いでおりました。
主上のお声掛かりで元服出仕をしたとはいえそれを鼻にかける様子もなく万事控え目で身持ちが堅いところが憎らしくもある綺羅君は、
宰相中将と宮中を二分する人気者なのでありました。
666粗筋中将2/6:2007/09/22(土) 22:10:46 ID:???
綺羅君と違って浮気な遊び人と噂の宰相中将とは、かの左近少将であります。
元服前から有名人だった綺羅にライバル意識を燃やし、元服もしてない半人前のボーヤと表面上はバカにしていたのですが、
出仕した綺羅を見てびっくり、思っていた人物像とは違い、
その綺羅そっくりといわれる綺羅姫を射止めるためにコロッと綺羅君に歩み寄る変わり身の早さにみな呆れるほどでした。
今やふたりは主上も認める親友なのです。
しかしそのお目当ての綺羅姫に対しては、左大臣さまのガードが硬いことも有名でした。
宰相中将のみならず綺羅姫の噂を頼りに懸命に文を送る貴族も多かったが、
姫は人並みはずれた恥ずかしがりやで結婚なんてムリだ、尼にさせる、あきらめてもらおうの一点張り。
というわけで求婚者はひとり減りふたり減り…2年後の現在残っているのは宰相中将ただひとりという状況です。
その宰相中将の文も二百通を越え、その情熱に主上も思わず感心してしまいます。
「親友」の綺羅君にも執り成しを頼んだものの、よほど大切な妹姫なのか一顧だにもされなかったので宰相中将は面白くありません。

綺羅君の妹思いは有名でした。
主上も、綺羅君が出仕して間もなくのこと、妹姫のことが忘れられず、「北嵯峨で見た者がいるらしい」と何気なく訊ねたのですが、
その途端に綺羅君は前のめりに倒れてしまったのです。
すぐに意識を取り戻した綺羅君ですが、「北嵯峨」の言葉に、「妹の入水自殺のことを思い出し」と、青い顔になりました。
やはり意に染まぬ結婚を嫌い入水自殺を図った綺羅姫は、今は生きる気力を取り戻し念仏三昧の日々を送っているといいます。
それを聞いた主上は、三条邸から聞こえるという読経はきっと綺羅姫のもので、手渡した紫水晶の数珠もムダではなかったと思います。
667粗筋中将3/6:2007/09/22(土) 22:11:45 ID:???
妹姫の話をする綺羅君があまりに思いつめた様子だったので、以来主上は綺羅姫の話題を出せずにいます。
しかし、綺羅君を見ると主上は、その姫のことさえ忘れてしまえるのですから不思議な心持でした。
綺羅君の物怖じしない表情や軽やかな笑い声が、ふとあの時の乙女は綺羅君ではなかったかとも思わせるのです。
「では、本命は綺羅姫ではなく綺羅君なのでは?」
そんな言葉にぎくりとしてしまう主上でしたが、どうやらこれは今御前に召している宰相中将に向けられた言葉のようでした。
貴族達が昨今流行の“奇しの恋”ではと疑いたくなるほど仲の良い宰相中将と綺羅中将をからかってのことでしたが、
主上もひとり、綺羅君が北嵯峨の乙女に似ているから好ましく思っただけだと顔を赤くして心の中で否定しています。
その時、その場に居た権中将が、主上と宰相中将に取っては寝耳に水、綺羅君の結婚話が浮上していることを口にしました。

どうやら正式に決まったわけではなく右大臣がぜひともこの話を進めたがっている段階のようなのですが、
結婚相手と言われているのは右大臣の三の姫、一の姫は弘徽殿の女御です。
二の姫は権中将を婿に迎えているから単なる噂話ではないと主上は確信しています。
現実味を帯びたこの話はきっと右大臣から左大臣家へその意向が届いているはずなのに、ならば何故綺羅君は自分に黙っているのだ、
“奇しの恋”などではなく、結婚の話が出ているのにその素振りも見せず飄々としている綺羅君が憎らしい、
と自らに言い聞かせるように不機嫌な表情をする主上なのでした。

そんなこととは露知らず、何日かぶりに綺羅君は参内しました。
実は今回の物忌みのお休みは月のもののため、毎月理由をつけては数日休みを取っているのでした。
久々に内裏に姿を現した綺羅君に殿上人はイミあり気な笑顔を向けてきます。
「ま、頑張れよ」と背中を叩いたり「そっちの話が合うようになる」など言ったり、女房達はヒソヒソと騒いだり…
親友の宰相中将に至っては、何も言わず背中を向けて去って行ってしまいました。
668粗筋中将4/6:2007/09/22(土) 22:12:49 ID:???
これには綺羅君もご立腹。
ただでさえ言いたいことをはっきり言わない今時の男に腹を立てているのに、さらに苛立ちが増してしまいます。
おまけに、今までなら綺羅君が出仕するとすぐに主上のお召しがあるのに、ここ数日はなんの音さたもありません。
わけがわからず、何をしたと言うのだと腹立ちついでに物忌みと称したズル休みをした日のことでした。
大変だ、一大事だと、おもうさまが目を剥かんばかりに綺羅君の元へやって来たのです。
それもこれも、右大臣家の三の姫と、綺羅君の結婚話が、ついにおもうさまの耳に入ったのです。

右大臣さまは、綺羅君の元服の時から三の姫の婿がねにと目をつけておいででした。
もちろんおもうさまはとんでもないと無視していたのですが、とうとう、「左大臣もこの結婚を了承した」と都中に触れ回る強硬手段に出たのです。
知らぬは当人ばかりなり、久々に出仕したおもうさまは主上の御前であやうくひっくり返るところでした。
というのも、主上ご自身からこの噂をお聞きしたのです。
しかも、綺羅君の結婚ともなれば内密に済ませて良いものではないだろう、ときついお叱りつきだったと言います。
おもうさまは綺羅君に、今からでも間に合うから出家をしろと涙ながらに訴えます。
そして、出家を、出家を、家を――ケッケケーッケケケと笑ったかと思うと失神してしまいました。
綺羅君は、最近の右大臣の馴れ馴れしい態度を思い出し合点がいきます。
人のいないスキに根も葉もない噂をバラまいて主上の耳にまで入れるそのやり方が許せず、
参内して噂の実態を確かめ、今後の方法を考えることを、すっかり取り乱しているおもうさまに強く宣言します。

というわけで、次の日さっそく参内した綺羅の中将でありましたが、
御前の主上は思った以上にご機嫌が悪く、あの噂を本気にしていらっしゃるからだと綺羅君は困り果てます。
そんな、いつもと違って落ち着かない様子の綺羅君を見た主上は、物忌みの間は、恋しい姫に文でも書いていたのかとカマをかけます。
それを聞いた綺羅君は、あの噂を信じているのだと焦り、そのうろたえをみた主上は、結婚の噂は本当だったのだとショックを受けます。
綺羅君本人の口から聞くまでは信じまいと思ってはいたのですが――。
669粗筋中将5/6:2007/09/22(土) 22:13:56 ID:???
そこで主上は綺羅君を試すかのようにこう言います。
実は、右大臣家の三の姫を女御として迎え入れたいと思っていた―――
突然の話に綺羅君は驚きを隠せません。
主上のもとには三人の女御さま、しかもその一人は三の姫と同腹の姉君がいらっしゃるのですから。
しかし、一向に意に介さない主上のスケベな答えに綺羅君は怒りで震えます。
北嵯峨では偉そうなことを言っておいて姉妹で侍らすなど、結局はただの好色漢ではないか、
三の姫に美人の噂があるわけでもなし、弘徽殿女御の妹ならばどうせ十人並みなのに、それをなんでまた…
そう思い震えている綺羅君が、主上の目には本気で三の姫を心配しているようにも見えます。
そこで、三の姫の入内話は、男皇子のないためでもあるのだと主上は言います。
しかしこれは綺羅君には逆効果でした。男皇子を産むために三の姫を入内させるのか…女は子供を産む道具ではない、と。
すっかり主上を見損なってしまった綺羅君は、毅然と言い放ちました。
「わたくしと三の姫との縁談は以前から双方合意、すでに互いの文も交わしている次第なのです…!」

かくして三の姫の入内話は阻止できました。
自分は主上の恋敵だろうから、もう参内しても声はかからないだろうと思うと寂しいものを感じつつ、主上の御前を後にしました。
主上は主上で、綺羅君があそこまで三の姫を思っていたことに少なからずショックを受けているようです。
三の姫の入内話は、とにかく綺羅君の結婚を阻止したい一心でした。
しかし、元来出世欲のない綺羅君のこと、三の姫の入内を無理矢理押し進めたら出仕しなくなるどころか出家しかねない目を主上に向けていました。
そうなれば、今までのように話すことすら望めず、まして恨みも買ったままになってしまいます。そうなればつらいのは目に見えたこと。
だからこそ三の姫から身を引いたのでありますが…
これでは本当に“奇しの恋”だと、つい顔を赤らめてしまう主上でした。
670粗筋中将6/6:2007/09/22(土) 22:15:03 ID:???
「三の姫と結婚することになっちゃった」
そうあっけらかんと話す綺羅君に、おもうさまは発狂寸前です。かろうじて、なぜそんなことになったのか問い質すと「成り行きです」。
それ以上は何も言わず埒が明かないと踏んだおもうさまは、宮中に出てその真相を確かめます。
しかし、内裏ではお祝いムード一色。主上におかれても、これだけの騒ぎになってしまったのだから結婚は早くした方が良いと仰せられる次第です。
こうなってはもう揉み消すことも出来ません。
おもうさまは出家しろの一点張りですが、綺羅君は綺羅君で、結婚すれば済む話だと言って聞きません。
子供はどうするのかと聞くおもうさまに、女同士だから諦めてもらうしかない、と顔を赤らめて綺羅君は答えます。
おもうさまは、綺羅君が子供を作る「夜のほう」も知っていることに驚きを隠せません。
けれど綺羅君も、一緒に寝ることくらいは知っています。
綺羅君が何もかも承知ならば、おもうさまも腹をくくるしかありません。結婚しなさいと命じます。
その代わり、女と知れたら流刑か死罪。その類は右大臣家にも及び、三の姫は女を婿にした笑い者になることを肝に銘じさせました。

綺羅君の結婚話を聞いた綺羅姫も驚きを隠せません。
夢乃さままで綺羅姫の婿取りを決めてくるのではないかと心配する一方、綺羅君のことも心配です。
何よりやはり男女の間のあれこれです。
しかし綺羅君はそのへんは心配ないと安心させます。
綺羅姫はむしろ、わかっているのに結婚するその無謀さに驚きです。
綺羅君も三の姫には気の毒だと思っていました。しかし、子供が出来ない分、うんと大切にすることを誓います。
それにしても先ほどからおもうさまといい綺羅姫といい、綺羅君だって、結婚した男女がひとつふとんに寝れば、
しかるべき時期に御ややができることくらい知っています。出雲の神様や如来さまが、相談の上授けてくださるのですから。

などと、大きな勘違いをしている綺羅君ですが、それはまわりの者も同じこと。
つつがなく結婚式も執り行なわれることとなったのでありました。
671マロン名無しさん:2007/09/22(土) 22:18:29 ID:???
     ┌───┐
    藤左    右
    原大    大
夢  顕臣 政  臣
乃〒 通 〒子  ├―┬─┐
 綺    綺    三 二 弘  主   麗
 羅    羅 = の の 徽=  = 景
 姫    君    姫 姫 殿  上   殿
(男)   (女)        女       女
              ‖ 御  ‖   御
              権     梅
              中     壺
              将     女
                     御
672マロン名無しさん:2007/09/22(土) 22:33:34 ID:???
この綺羅の天然っぷりが、ある意味ウラヤマシイww
673マロン名無しさん:2007/09/23(日) 00:33:30 ID:???
三の姫のとこ通う時だけ弟と入れ替わるとか
とオモタけど
綺羅君(姉)が結婚の意味理解してないんだからダメか
674マロン名無しさん:2007/09/23(日) 00:34:47 ID:???
>>673
髪の長さが致命的かと…
675マロン名無しさん:2007/09/23(日) 02:39:35 ID:???
すごい勘違い合戦だな
676マロン名無しさん:2007/09/23(日) 10:50:27 ID:???
しかし結婚したら一瞬でバレるんじゃね?
677マロン名無しさん:2007/09/23(日) 11:32:35 ID:???
「あなたが○○歳になるまでは…」とかなんとか
言ってたら誤魔化せるんじゃないか?
誤魔化す必要性を感じてないのが問題だが
678マロン名無しさん:2007/09/23(日) 13:53:08 ID:???
三の姫だって女房や乳母からイロイロ聞いているのは。
手を出さずにばれるのは時間の問題かと思われ。
679粗筋中将1/6:2007/09/23(日) 22:08:01 ID:???
しかし綺羅君といえどももちろん女ですので結婚といっても体面上のこと、ネンネの三の姫を今はうまくごまかしておりますが、
女とバレぬよう気を遣う綺羅君の苦労もまた大変なようでして…
結婚して早3か月という今日も、綺羅君が三の姫の実家である右大臣邸には少し顔を出しただけで左大臣家に帰ることになると知っただけで
三の姫にポロポロと泣かれてしまうくらいです。
けれど、綺羅君といえど今日ばかりは実家である左大臣邸に戻らねばなりません。
なんといっても三位中将ともあろう身で、生理痛に悩まされているのですから…。

それというのも、右大臣家で過ごすことが多くなった分、今までは宮中だけでよかった気遣いも増え、精神的負担が今は拷問のような毎日です。
けれど、綺羅君は三の姫が嫌いではありませんでした。
人形遊びに興じたり、変形折りした微笑ましい文が届いたりなど幼い面もありますが、妹のようにかわいく思っているのです。
それもこれも、すっかり綺羅君を男君として信頼なさっているから…
しかしそれが綺羅君にはとても心苦しくもありました。理由はどうあれ、三の姫を騙していることに変わりはありません。
だからこそ、出来るだけのことはしてあげたいと心から思っています。
けれど、世間の目が二人の仲の良さを認めている以上、右大臣家の方々にも、女だと疑われる心配はありません。
世間の目といえば、綺羅君には今それも結構な重荷でした。
結婚してからは右大臣家での気疲れからか、宮中でもぼーっとすることが多くなりました。
タメ息をついたりあくびをしたり、ついつい「疲れた」などと口にすると、
「毎日頑張るな、体壊すなよ」とか「若いからといってやりすぎはいけない、初めほどほど中どんどんだ」などと同僚に言われます。
そのたび「まだ未熟者で…」と言葉を濁しているのですが、ほんとはさっぱりイミがわからない綺羅君でした。
こういった思わせぶりな話し方が綺羅君は一番お嫌いなのですが、はっきり言われる方が恥ずかしいなどと知る由もありません。
精神衛生上よくないことだらけの毎日ですが、特に あ れ が一番こたえるのでした…。
680粗筋中将2/6:2007/09/23(日) 22:09:05 ID:???
翌日、まだ本調子ではない綺羅君に、参内早々主上からのお声掛かりがありました。
あれが始まるのです。ストレス原因No.1が…。

御簾の向こうにあらせられる主上は、不機嫌なようでした。
綺羅君の体調不良を労いつつも、このところ い ろ い ろ と忙しそうだから仕方ない、と付け足します。
そう、綺羅君のストレスの原因は、主上による新婚生活のあてこすりでした。
毎日毎日こうでした。周りには気を遣い主上にはいびられ…綺羅君はまた胃のあたりが重くなってくるのを感じます。
いつも、結婚してから公務が疎かになっている、公私の区別はつけるように、と新婚生活への皮肉を嫌味たっぷりに言ったあと、
主上と綺羅君の間に流れる沈黙に耐えられず、主上から退がるよういいつけるのでした。
この毎度の展開には主上も後悔しています。
なぜあんなことを言ってしまうのか、これでは綺羅君の足がますます内裏から遠退いてしまうといつも反省しきりです。
綺羅君が変わってしまったのが悪い、自分は悪くないと思いたいようですが…。
681粗筋中将3/6:2007/09/23(日) 22:10:18 ID:???
重い空気で主上の前を退がった綺羅君は、気分直しに麗景殿女御さまのところへ遊びに行くことを思いつきます。
麗景殿女御さまは、主上が東宮でいらした時から添っていらっしゃった方で、お年も三十路近く、
権力争いからは退いていらっしゃるので、わりと気楽に遊びに行けるのでした。
麗景殿女御さまは綺羅君を快く迎えてくれました。今ちょうど綺羅君の話をしていたところだ、と。
すると、几帳の向こうから宰相中将が顔を出しました。
ここ数日主上の御機嫌が悪かったのは綺羅君が出仕していなからだと話をしていたのだそうです。
綺羅君を御前に召して苛められるのも、主上が三の姫に嫉妬しているからだというのです。
口の悪い者達は“奇しの恋”だと噂しているようですが、それはこちらにいる美しい女御さまに失礼だと綺羅君が窘めると、一気に場は和みます。
そんななごやかな雰囲気を宰相中将は嬉しく思っていました。
綺羅君の結婚の噂を聞いて初めは、親友だと思っていた自分にまで黙っていたことに腹を立てていたりもしましたが、
やはり綺羅君は綺羅君だと思うと思わず顔も綻んでくるのです。

ところで宰相中将は綺羅姫に文を出していました。麗景殿女御さまが、未だご執心なのかと伺います。
宰相中将は、もちろんだと堂々と答えます。いろいろと浮名を流してはいるが、本命こそは綺羅姫。
一向に文を取り付けてくれない綺羅君に痺れを切らし、いっそ忍び込んで既成事実を作ってしまおうかとまで口にしたのです。
これは綺羅君も聞き捨てなりません。
思わず宰相中将の胸倉を掴み、そんなことをすれば絶交する、と鬼の形相です。
宰相中将はそんな綺羅君の見幕に押され、もちろん冗談だと言いますが、相手もプレイボーイの中将なので綺羅君も気が気ではありません。
宰相中将にしてみれば、綺羅姫に夜這いをかけてモノにするのは簡単です。
けれど、この勢いでは本当に絶交されかねません。それは避けたい中将でした。
そんな二人のやり取りを、いいコンビだと微笑ましく眺める麗景殿女御さまでした。
682粗筋中将4/6:2007/09/23(日) 22:11:43 ID:???
その時、梅壺女御さまが御機嫌伺いに麗景殿女御さまのもとへやって参りました。
綺羅君と宰相中将がいるというのでやって来たようです。
綺羅君は正直なところ、たいした美人でもないのに気取っている梅壺女御さまがお好きではありません。宰相中将も同じ気持ちなようです。
しかし梅壺女御さまは、綺羅君や中将が自分のもとへ来ないのは遠慮しているからだと思っています。
忙しさに紛れて伺えない、という綺羅君の言葉に、梅壺女御さまは、ではなぜ麗景殿にはよくいらしているのかとお怒りです。
そこを宰相中将が、新婚なのだし、努めに家庭にと忙しくなりこれからはこちらへも度々参れないことを申しあげに来たと上手く取り成してくれます。
しかし、それを聞いた梅壺女御さまは怒りが収まらないようです。
政略結婚だと思っていた綺羅君と三の姫、噂では三の姫はとても子供っぽい人だと聞いているのに、綺羅君はそこが可愛いと言います。
すべての公達が、梅壺女御さまに声をかけられただけで幸福感に包まれるというのに、綺羅中将ともあろう者が、乳くさいガキの方が良いと言うのです。
梅壺女御さまはすっかり御機嫌の悪さが表情に出てしまいました。
それを悟った宰相中将が、綺羅君には美しい妹姫がいるので、かえって子供っぽい方に惹かれるのだろうとフォローしますが、
家の奥深くでいつも題目を唱えている変わり者の姫のことか、と言った梅壺女御さまの言葉は綺羅君には不愉快でした。
妹姫のことを悪く言われ、こんな女が主上の寵愛を受けているのかと思うとついカッとなり、その後は売り言葉に買い言葉、
思い上がった態度は見苦しいと言われ、側に良い手本がいる、と笑顔で返した綺羅君に梅壺女御さまは怒り心頭、
後宮一の勢力を誇る女御さまは足音荒く麗景殿を去っていきました。
683粗筋中将5/6:2007/09/23(日) 22:13:01 ID:???
梅壺女御さまは怒りをそのまま主上にぶつけました。
綺羅君は、新妻がかわいいのでこれからは後宮にも滅多に顔を出さないと言いふらしている、
三の姫のことを考えると何も手に付かないなどと言っており、主上一筋にお仕えするのが誉れの殿上人が妻にうつつを抜かすなど、
主上を蔑ろにしているのも当然だ、とわめきちらします。
主上は、梅壺女御さまの訴えに心当たりがありました。
以前は宮廷生活を楽しんでいた綺羅君が、最近は出仕してもぼーっとしていることが多いことが思い出されたのです。
それが恋しい妻を思ってのことかとつい嫌味など言ってしまうのを反省していたのに、これからは滅多に後宮に来ないということは、
三の姫のために主上にさえ背を向けようとしているのです。
そうするうちに主上の表情は怒りですっかり変わってしまいました。梅壺女御さまも気圧されてしまうほどです。
いつも主上は話半分にしか聞いてくださらないので大袈裟に言ったところもある女御さまは、多少綺羅君のフォローをしますが、
主上はもう信じきっています。
梅壺女御さまのおっしゃったことを、よく考えておこうと言い残し、去っていきました。
主上がまさか全部本気にするなど思わなかった梅壺女御さまは青ざめてしまいました。
謹慎処分にでもなればと思ったくらいで、本当に太宰府に飛ばされたりしたら、宮中の二大勢力を敵にすことになってしまいます。
しかし、もう主上の怒りは止められません。
主上は、綺羅君が三の姫のことなど考えられぬようにしてやると強く誓うのでした―――。

その頃右大臣邸では、三の姫が、今日はこちらにやって来るという綺羅君からの文を何度も読み返しておりました。
そこに、お付きの女房の美濃がやって来て、いとしい人が待ち遠しい気持ちはよくわかる、と頬を赤らめ言います。
最近美濃にも「いい人」が出来たのですが、三の姫は、その話を聞いて不思議に思うことがありました。
美濃のいい人は、逞しくてがっしりしていると言うのです。
三の姫のいい人、綺羅君は、ほっそりしていて絵巻物に出てくる人のようなのに…
684粗筋中将6/6:2007/09/23(日) 22:14:05 ID:???
美濃は変な人が好きなのね、と思ったことを口にすると、美濃も、自分でも不思議だと答えつつも嬉しそうです。
強引に“い”をされたらコロッとまいってしまったことまで話してしまいました。
ここでも三の姫はわからないことがありました。「“い”ってなあに?」
しかし美濃は、姫さまは“い”はおろか“は”までしっかりおやりのくせに、と背中を叩くばかりです。
やはりわからない三の姫ですが、美濃は“いろは”の“い”だとしか言いません。
その代わり、今夜綺羅君にお聞きするといい、とアドバイスをくれました。きっと実地で教えてくれるでしょう、と。
わかったわ、とまじめにうなずく三の姫に、少し美濃は驚いたようです。

綺羅君がやって来ました。
三の姫は、女房達の控えるなか、単刀直入に尋ねます。「“いろは”の“い”ってなんですの?」
綺羅君は、手習いの時の“いろは”ではないのかと答えます。
美濃は“い”をされてコロッときたと言っていたと言う三の姫。きっと綺羅君に聞けば実地で教えて下さると…。
控えていた女房達は顔を真っ赤にしながらコソコソきゃあきゃあと話し出しました。
まったく話が読めない綺羅君は、そんな女房達を見て、同僚達を思い浮かべます。
わけのわからないことでからかわないでほしいと思いつつ、三の姫には、そのうちいろいろきちんと調べて教えてあげますと答えておきました。
それを聞いた女房達は、またどよめき、きっと実地よ実地、などと興奮して鼻血モノです。

さても“いろは”のわからぬ綺羅君、
家では女房達にからかわれながら姫君の子守りをし、宮中では梅壺女御を怒らせさらに帝のお怒りまで買ってしまった様子。
成り行きとはいえ結婚なぞしたばかりに、毎日苦労の絶えない綺羅君なのでありました。
685相関図中将:2007/09/23(日) 22:16:52 ID:???
      ┌────┐
     藤左      右
     原大      大
夢   顕臣   政  臣
乃 〒 通  〒 子  ├―┬─┐
   綺    綺     三 二 弘  主   麗
   羅    羅 =  の の 徽=  = 景
   姫    君     姫 姫 殿  上   殿
  (男)   (女)         女      女
                 ‖ 御  ‖   御
                 権     梅
                 中     壺
                 将     女
                       御
686マロン名無しさん:2007/09/23(日) 23:46:04 ID:???
“いろは”とはもちろん…
687マロン名無しさん:2007/09/23(日) 23:51:13 ID:???
いろは=A.B.C. だな

三の姫がネンネでスグにはバレなかったけど
「は」ねだられたらおしまいだな
688マロン名無しさん:2007/09/24(月) 03:16:33 ID:???
そこは張り型でだな…
689マロン名無しさん:2007/09/24(月) 03:48:55 ID:???
三の姫がここまで無垢(無知?)とは…
救われたなおもうさん。
690マロン名無しさん:2007/09/24(月) 15:12:58 ID:???
綺羅みたいなお子さまより宰相中将が好みだ

691マロン名無しさん:2007/09/24(月) 15:14:51 ID:???
私事だけど三の姫、友達にそっくり…
ABCのA以外を知らなくていろいろと質問してきて困る
とうか綺羅もネンネwww
692マロン名無しさん:2007/09/24(月) 17:00:59 ID:???
ABCとかwwww普通会話にでないだろw
693マロン名無しさん:2007/09/25(火) 00:25:18 ID:???
平安時代の性教育はどうなっているのだろう。
綺羅はアレとして三の姫は母親とか乳母とかに教わらなかったのかな。
新妻の心得、とか。初夜の迎え方、とか。
694マロン名無しさん:2007/09/25(火) 05:57:57 ID:???
男の方は成人の時に教わってたらしいけど
女はどうなんだろうねえ。

てか主上なにをする気だ主上
695マロン名無しさん:2007/09/25(火) 06:42:51 ID:???
“実地”てwww
696粗筋中将1/7:2007/09/25(火) 22:00:32 ID:???
牛車の中で綺羅君は沈鬱な面持ちでした。今から宮中へ参内するのがとても気重なのです。
参内すればまた主上に、三の姫を奪われた腹いせにねちねち嫌味を言われるだろうし、
嫌な女とはいえ梅壺女御さまも、主上の妃ということで御機嫌を取らねばなりません。
婚家では三の姫は“いろは”についてしつこく聞いてくるし、いつ女の身とバレるかもしれずちっとも落ち着けない、
かといって実家に帰ってばかりいられません…。
こんなことなら元服などしなければよかった、とついタメ息をついてしまいます。
もし姫として育っていれば、とまで思ってしまいます。
その時、牛車が大きく揺れました。どうやら猫の屍骸に出くわしたようです。
外出中によくないことに出遭うと、“行き触れ”と言って、家に籠り身を清めなければならないのです。
今日はこれで参内しなくていいと思うと、右大臣家へ戻る道中顔が綻んで仕方ない綺羅君でした。

しかし、右大臣家へ戻ると、義父の右大臣さまからとんでもないことを聞かされました。
なんと、主上が綺羅姫を尚侍として出仕させたい意向を示したというのですから…!

綺羅君は、驚きのあまり開いた口が塞がりません。右大臣さまから聞く父左大臣さまも同様だったようです。
尚侍(ないしのかみ)といえば主上の女秘書、しかしうまく主上の目に留まれば、家柄から言ってもそのまま女御として入内することも夢ではありません。
他の貴族からしてみれば羨ましい限りのこの突然の知らせは、綺羅君を青ざめさせるのに充分です。
なんといっても綺羅姫は姫と言っても オ ト コ なのです。

実家からの使いで、綺羅君は急遽左大臣家に向かいました。
迎えた女房は、左大臣さまが脳の病にかかられてしまったと大慌てです。
どうやら、青い顔をして帰られ、部屋に籠ってあははうふふと笑ったかと思うとコロコロ転がりだして泣いているのだとか。
急いでおもうさまの部屋へ向かうと、どろーんとした目で迎えられました。
697粗筋中将2/7:2007/09/25(火) 22:01:49 ID:???
おもうさまの話によると、今日の会議の終わり、いきなり主上からその話があったそうです。
居合わせた者にもあまりに急なお話だったため、後日に譲ってはと奏上する者もいたものの、主上はギロリと睨まれただけで、
その有無をいわさぬ強引さに誰も反論できなかったということでした。
つまり、綺羅姫が尚侍として出仕することは決定事項なのです。

宣下が下されるのももうすぐだと聞き綺羅君は愕然とします。苦しい結婚生活に耐えて頑張ってきてるのも、ふたりの秘密を守るためなのですから。
主上が綺羅姫(弟)を北嵯峨で会った人だと思っているのなら、
無理やり結婚させられそうになって入水しかけたかわいそーな姫君だと思っているはずです。
なのに尚侍にしようなんて、実務能力を買われての話ではないことはみえみえです。
その時、綺羅君は思うところがありました。
そしておもうさまに、「出家する」と宣言します。
突然発心したことにすれば、三の姫も、風変わりな夫を持ったかわいそーな妻と世間に同情してもらえ迷惑もかけません。
出家してどうするのだと戸惑うおもうさまに、すればいいことなのだ、強く言い、明日主上と話をつける、と決意する綺羅君でした。

翌日、内裏では、綺羅姫を尚侍にというのは良い手を思いついたものだ、とにんまりする主上の姿がありました。
主上の考えはこうでした。
あの妹思いの綺羅君のこと、妹姫が出仕すれば気にかかり毎日様子を見にくることでしょう。
これで綺羅君も三の姫にばかり執心してばかりもいられまい、と笑いが止まりません。
そこへ、綺羅君が殿上したという知らせがありました。
さぞや妹姫のことで落ち込んでいるであろうと楽しみに綺羅君の元へ向かうと…
698粗筋中将3/7:2007/09/25(火) 22:02:51 ID:???
思惑とは大きく外れた、怒りの表情を隠そうともしない綺羅君がおりました。
主上にはその理由が皆目わからず、不機嫌そうだね、とお声を掛けになるのが精一杯でした。
すると、綺羅君から思いもよらない一言が。なんと、出家いたしたいと申されるではありませんか。
綺羅君は、主上の思し召し深い女性を娶ったことを罪だと考えておりました。
仏門に下ることでその罪が償えるのならば、三の姫も主上の元で幸せにもなれましょう、
それにて妹姫の尚侍の話を白紙に戻して頂きたいのです、
罪のないおと…いえ妹に気苦労ばかり多い後宮生活をさせたくない、
物事を思い詰めすぐ人事不省に陥る妹を後宮に召して綺羅君を困らせようなど、あまりに浅ましい御心ではないか、…と主上を詰ります。
最後には、いくら三の姫を奪ったわたくしが憎いからと…と、綺羅君は涙を流されてしまいました。

肩を震わせて泣く綺羅君を見、主上は、三の姫を女御にしたいという口からデマカセを信じ込んでいることに多少驚きますが、
その三の姫を捨て出家してまでも内気で病弱な妹姫を守ろうというのかと思うと、顔がにんまりしてしまいます。
そこで主上は綺羅君を安心させるかのように、真実を話し出しました。
イヤミをたくさん言ったのですぐに信じてはもらえないでしょうが、それは三の姫に執心していたのではなく、
仲の良い二人が羨ましかったとのことです。主上はあまり夫婦仲が良いとは言えないのでした。
そして綺羅姫の尚侍出仕はすべて、女東宮・久宮(ひさのみや)様の御ためでした。

女東宮久宮様が東宮の地位を嫌っているのは周知の事実でした。
周りの者もまた、東宮という立場上久宮様をわがまま放題にさせています。
東宮の位が窮屈なものであることは、かつて東宮だった主上が一番よく知っています。
弓に蹴鞠に狩りにと気散じられた主上とは違い、女の身ではそれも許されません。
東宮には友が必要だと主上は考えています。姉のように威厳をもって接することが出来る…それも東宮自身蔑ろに出来ない身分の姫君が…
今の京中に、綺羅姫をおいてそのような姫君はいない、と考えてのことなのでした。
699粗筋中将4/7:2007/09/25(火) 22:05:24 ID:???
綺羅君はまだ少し疑っているものの、熱のこもったもの言いといい、まんざらウソではなさそうです。
今回の話が三の姫に絡んでのことと考えた浅はかさの非を詫びたものの、綺羅君は、妹姫が結婚を嫌うあまり入水しかけたことを持ち出しました。
いくら東宮の御ためとはいえ、主上の目にかない入内という事態は避けねばなりません。
そうなった場合、また死を考えかねないことをほのめかしました。
主上は、綺羅君のことにばかり夢中になり失念していたが北嵯峨の乙女はそういう人だった、と思い至ります。
東宮のことを思ってと念を押すが、主上が妹姫をご覧になればお考えを変えることもありましょう、と申す綺羅君の口調は強いものでした。
かの姫はそれほどまでに美しく育っているのかと主上は少し心を動かされます。
しかしここは綺羅君の信用を得ておきたいところ。
綺羅君の心配が無いように、綺羅姫には決して会わないことを約束します。
主上の住む清涼殿から最も遠く、東宮の住む昭陽舎に近い宣耀殿に住まいを与える約束をし、東宮のためという気持ちを主張します。
綺羅姫と会う時は綺羅君は同席している時だけ、もしこの約束を違えるようなことがあればその時こそ綺羅君の好きにするといい…

話はどうやら綺羅君が出家しただけではどーにもならなくなってきたようです。
主上の見せる「誠意」に綺羅君は慎重に慎重を重ねますが、
他の殿上人に見られないように、東宮のお守り役に徹すればいいとまで譲歩して下さり、
どうしても心配ならば、綺羅君が毎日様子を見にくれば良い、とまで仰られました。
できるだけ誠意を見せたのだから左大臣家も誠意を見せて欲しい、
これは東宮の、ひいては後々の帝のため、 天 下 の た め ですと言われ、引き下がれなくなった綺羅君でした…。
700粗筋中将5/7:2007/09/25(火) 22:06:44 ID:???
と、いうわけで、綺羅姫が後宮に上がるための条件をここまで下さった主上の申し出を断るわけにもいかず、
綺羅姫の尚侍出仕はもはや動かしがたい決定事項になってしまいました。
それを左大臣家に報告に戻ると、おもうさまは目まいがしてきたと部屋に下がられ、邸の奥からは何かが大暴れしている音が聞こえました。
聞くと、尚侍宣下を聞いた綺羅姫が、政子さまばりのヒステリーを起こして暴れていらっしゃるとか。
何のために自分が苦労しているのだと、綺羅君は綺羅姫の部屋に向かいます。
戸を開けるといきなり碁石が自分に向かって投げつけられました。
目の前には髪が乱れ着物も乱れた鬼の形相の綺羅姫です。
それもそのはず、源氏物語も歴史書も読んだ綺羅姫には、尚侍宣下など、主上の妾になったもいーとこだとわかっているのです。
この体でどこをどーしたら妾になれるというのでしょう。
主上は そ の 気 はないと約束してくださったと綺羅君は言うのですが、
何かの拍子に そ の 気 になったらどうしてくれるのだという綺羅姫に返す言葉もありません。
情けない女装姿を人に見られるのも嫌だと泣く綺羅姫に、主上との約束を伝え安心させようとします。
しかし、「賜るお部屋も後宮の奥」という話は聞き捨てなりませんでした。
話はそこまで進んでいるのか、と目を丸くし綺羅君に詰め寄りますが、もう決まってしまったのだと言います。
ついに綺羅姫はぷっつんとい何かの糸が切れてしまいました。
失神してしまった綺羅姫を綺羅君が抱えたまま、夜は更けてまいります―――。
701粗筋中将6/8:2007/09/25(火) 22:07:46 ID:???
さて
それからしばらくの後、宮廷では管弦の宴が催されておりました。
ここのところ、妹姫の出仕のために毎日奔走されている綺羅君は、少しやつれた顔をしながら物憂げに溜め息をついています。
それは殿上人の誰もが思わず見惚れてしまう美しさでした。
綺羅姫の尚侍出仕まで一か月を切りました。
女房だけでも40人はいる、女御の入内なみの盛大さだ、それもこれも主上を意識してのこと、尚侍というのも表向き…
などなど、世間では噂が噂を呼んでおります。
当の綺羅君のお悩みはというと、綺羅姫のことに違いはなかったのですが、綺羅姫といったら
宮廷での礼儀作法、三人の女御方の政治的背景、地位、勢力分布に始まって、後宮での話し方媚び方えとせとらせとせとら
覚えることは山ほどあるのに、そんな女のマネはできるものかと綺羅君を困らせ、最後には人事不省かヒステリーを起こしてしまいます。
小百合がいるとはいえ、後宮に上がらせる女房も、きちんと秘密を守ってくれそうな人選をしなければならないのに、
綺羅君の苦労は増えるばかりです。
苦労といえば、婚家の右大臣家のこともありました。
右大臣家は弘徽殿女御さまが後宮入りしています。いくら女東宮のお相手だけとはいえ尚侍として出仕する綺羅姫に対し、
口では気にしていないと仰りつつもピリピリした雰囲気が漂っています。
そのため綺羅君は、なるべく右大臣家に通って“その気”のないことをアピールしておりますが、
右大臣家に行くと三の姫に“いろは”について未だに聞かれます。
女房達はそれを見てあいかわらずくすくす笑って見ているだけです。
気苦労が耐えず、嫌になってしまう、と綺羅君は咲き誇る桜も気に留めず溜め息しきりなのでした。
702粗筋中将7/8:2007/09/25(火) 22:08:50 ID:???
そんな綺羅君を遠くから見つめているのは宰相中将でした。
時々、女かとも見紛う仕草をする人だ、と憂い顔の綺羅君を見て思います。
その宰相中将に声を掛ける人がおりました。
視線の先の人が今宵の主役では、宴に華を添えていた月も影が薄くなってしまった、と雅な物腰な兵部卿宮です。
この兵部卿宮は、好みの美形なら男でも女でもモノにしてしまう“すみれ族”で知られていました。
綺羅君にまで手をだされてはかなわない、と宰相中将は
“かつ見れど うとくもあるかな 月光の いたらぬ里も あらじと思えば”
 (月は美しいがその美しさがうとましい、自分以外の所にまでその美しさを見せているのだから)と返します。
遠まわしに、あなたのような目で見られては綺羅君も困るだろうという皮肉です。
しかし、そういう中将は“月光の いたらぬ里こそ あらまほしけれ”(月光の届かない所こそあってほしいものだ)
という心境なのではないか、と兵部卿宮は気にも留めません。
なるほど恋とはそういうものだ、と言い、まるで宰相中将の気持ちを御存知でいるかのようです。
“恋”の言葉に宰相中将は動揺を隠せません。そんな宰相中将に、兵部卿宮が一首の歌を贈ります。
奇しの恋は禁色の深きすみれの色なりき 誇る匂いはなかれども ただに床しく咲き初めて 人知れずこそ散りゆかん…
忍ぶ恋こそ存外本命…歌に込められた意味に宰相中将はまたしてもハッとします。
しかし、どうやらこれは綺羅君のことを歌ったようで…
先ほどからの綺羅君の憂いた様子は、まるで苦しい忍び恋でもしているのかもしれない、と何やら意味深なことを兵部卿宮は口にするのでした。

今宵宰相中将は綺羅君と共に宿直でした。
ひとり宿直所に来た宰相中将は、先ほどの兵部卿宮の言葉を思い出します。
綺羅君が忍ぶ恋…
あれほど三の姫に熱愛しているというのに、何をばかなことをと思いますが、先日“いろは”について聞いてきた綺羅君のことです、
恋の“いろは”から始めたい女性でもできたのではないかという不安がよぎります。
しかしここで、なぜ綺羅君のことを気にしすぎていることに気付き、
世間では兵部卿宮と恋のライバルだと噂されていますが、自分は女一筋だと言い聞かせます。
703粗筋中将8/8:2007/09/25(火) 22:10:00 ID:???
それにしても綺羅君はなかなか宿直所にやって来ません。心配になった宰相中将は、探しに出ました。

夜の内裏を歩く宰相中将を呼び止める人がありました。
振り返ると、夜のお召しで清涼殿に渡る途中の梅壺女御さまでした。
女御さまは何やら自慢げに、先ほど藤壺あたりで綺羅君にお会いしたことを告げます。
その折、梅壺女御さまをご覧になった途端、綺羅君が顔を赤らめ視線を逸らしたことも…。
“忍ぶれど色に出でにけり”といったところかと笑う梅壺女御さまでしたが、それを聞いた宰相中将は気が気ではありません。
まさか、綺羅君はこの梅壺さまに横恋慕しているのでしょうか―――

そんな疑問を打ち捨てるように宰相中将は藤壺のあたりへとやって来ました。
するとそこには、桜の下に見るも美しい綺羅君がおりました。

その横顔に一瞬見惚れ、綺羅君が女であれば即押し倒して…いや、女でなくても、などあられもないことを考えておりましたが、
綺羅君に声を掛けられ我に返ります。
月をなんとなく観ていた、と言う綺羅君に宰相中将は、梅壺女御さまにお声を掛けられたかと聞きました。
綺羅君は、ああいうのはいいね、と何やら意味有り気に答えます。
宰相中将は、梅壺女御さまのような女性がいいのか、と肩を揺さぶらんばかりに尋ねましたが、
そうではなく、女が女の格好をするのがいいという意味で言ったのです。
女が男の格好をするわけではないのだから、と宰相中将は不思議な顔をします。
何か悩み事があるのではないかと心配する宰相中将でしたが、綺羅君は、妹が出仕することになって残念だろう、と話の矛先を向けました。
その時宰相中将は、あれほど執着していた綺羅姫の尚侍出仕の話を聞いても平静だったことを思い出します。
尚侍出仕といえば主上のお手が付いてもおかしくない立場だというのに、綺羅君のことではあれほど動揺したというのに…。
この気持ちはまさか 奇 し の 恋 なのでしょうか。
そう自覚してしまうと、綺羅君が近くに寄るだけで顔が赤らんでしまうのを止められません。
いくら自分のことで忙しいとはいえ、つくづく罪つくりな綺羅君でありました。
704マロン名無しさん:2007/09/25(火) 22:47:46 ID:???
すみれ族ってバイ?耽美?
705マロン名無しさん:2007/09/25(火) 23:12:52 ID:???
ホモ→パンジー→すみれ か…
706マロン名無しさん:2007/09/26(水) 06:52:09 ID:???
すみれは両刀使いの事だよ
707マロン名無しさん:2007/09/26(水) 09:31:56 ID:???
あーあー宰相中将はちゃんとノーマルなのにw
708マロン名無しさん:2007/09/26(水) 15:57:43 ID:???
なんか怪しい新キャラキターーーーーー!!!
709マロン名無しさん:2007/09/26(水) 20:58:26 ID:???
兵部卿宮イイヨ、イイヨー
710粗筋中将1/5:2007/09/26(水) 22:27:53 ID:???
宰相中将くんは、綺羅君が気になってしょーがない。
いつどこにいても目は綺羅君の姿を追い、他の公達と仲良く談笑していようものなら間に割って入る始末。

綺羅君に、この頃少し落ちつかないようだけどどこかに気になる姫君でもいらっしゃるのかと聞かれても笑って誤魔化すしかなく、
このままでは日常生活に支障をきたしそうで、大変困っておりました。

宰相中将は綺羅君のことを、綺羅君が出仕する前から知っていました。
あの頃左近少将だった宰相中将は、いろいろと噂にのぼる権大納言家の綺羅君にライバル意識を持っていたのです。
今考えれば大人気ないと思えるのですが、何かというと引き合いに出されいい加減ムキになっていたところもあります。
蹴鞠会の時も綺羅流だのと煽ったり、元服式の時も気になって見に行ったり…
しかし、出仕してきた綺羅君は宰相中将が思っていたのとは大違いでした。
ほっそりとしたその姿は女性のように雅で、そのくせなよなよしたところがなく元気いっぱいに動きまわります。
頭の回転もはやく、きれいな声で気のきいた冗談を次々にとばす綺羅君。
だからこそ、その綺羅君にそっくりだと言われている妹姫に文を贈り続けていたのですが、
今思うに、綺羅姫を中においての綺羅君との会話を楽しんでいたのかもしれません。

しばらく悶々と考えていた宰相中将でしたが、いくら考えても男同士では話が進展しないことに気付きます。
こうなったら打ち明けるしかない、と決意したのでした。

そうと決まれば話は早い方がよい、宰相中将はすっくと立ち上がると、右大臣家に行くようお付きの者達に言いつけました。
711粗筋中将2/5:2007/09/26(水) 22:28:53 ID:???
しかし、右大臣家に来てみれば、綺羅君は実家からの急な呼び出しで帰ったばかりだと言われます。
せっかく気負ってやって来たのに、すっかり出鼻が挫かれ肩を落とす宰相中将を見かね、
右大臣さまが、綺羅君が帰るまで居てはどうかと呼びとめます。
そうして右大臣家のもてなしを受けていた宰相中将ですが、今度は綺羅君が実家から帰れない旨を伝えられます。
綺羅君が帰って来るものだとばかり思って右大臣家の歓待を受けていたのに、待った分だけ宰相中将の落胆は大きいようです。
少しやけになり、外は闇夜でもあるし、せっかくだから泊まっていけと言う右大臣の言葉に甘えることにしました。

夜もすっかり更け、客人用の部屋に床を用意してもらったものの、宰相中将は眠れず、起きて簾縁に向かい、夜風に当たりました。
浮かぶのは綺羅君の顔ばかり。
それに、先程までの右大臣家の女房達の話が思い出されます。
綺羅君はやはり三の姫一筋の様子。
しかも、三の姫の女房方には ぶ す ばかり揃えていて、見目の良い女房達は綺羅君の側にも近づけないのだとか。
三の姫程度の容姿で綺羅君を一人占めしている、と口さがなく言うものもいますが、
綺羅君は月に数日、具合が悪いと実家の右大臣家に戻るのは、思う女房がいるからに違いない、など聞き捨てないことを言う者もおりました。
そんな話があるというわけではなく、そうでも思わなければ
ネンネでオカメブスの三の姫に綺羅君が夢中だなんて美しい女房達のプライドが保てないからというだけでしたが。

女房達の嫉妬具合からいって、やはり綺羅君はそれほどまでに三の姫のことを思っているのが窺える話でした。
今でも綺羅君は三の姫のことを考え眠れぬ夜を過ごしているのでしょうか、宰相中将のように…。
そうまで綺羅君の心を捕らえる三の姫とはどんな人なのでしょう。
宰相中将は気になって居ても立ってもいられなくなり、一つ屋根の下にいるのだからこの機会に三の姫をひと目見なければ落ち着かないと、
姫が住まうという西の対屋へと向かいました。
712粗筋中将3/5:2007/09/26(水) 22:30:02 ID:???
三の姫の部屋は幸運にも掛け金が外れており、こっそりと中の様子を窺うことができました。
物音がしたような気配を感じつつ、当の三の姫は、綺羅君と“いろは”のことを考えているところでした。
今日もまた“いろは”について綺羅君はなにも教えてくださらず、いつものように尋ねると不機嫌にさせてしまうようなのです。
最近とうとう“は”まで行ったということを話す美濃の様子では、
不安で最初はイタかったとは言うものの嬉しそうで、“いろは”とは良いことのように思えるのに、誰も教えてはくれません。
三の姫は、自分が子供だから誰も真剣に取り合ってくれないのかと思うと少し落ち込んでしまいます。
でも三の姫だって、結婚までした立派な人妻です。
今度綺羅君がいらした時こそ、“いろは”について絶対聞いてみせる、と決意を固めました。
そう思うと綺羅君のお越しが待ち望まれてなりません。
つい、「早く綺羅さまいらっしゃらないかしら」と呟いていました。

三の姫の呟きを、宰相中将は聞き逃しませんでした。
この部屋の人物が三の姫だと確信し、一目でも透き見しようと思ったものの、綺羅君の思い人ならさぞ美しい人に違いありません。
「美人の人妻」に気が眩み、内側からこっそりと三の姫の部屋の掛け金をかけました。
そして、几帳の向こうにいる三の姫の前に姿を現したのです。

三の姫は、突然見知らぬ殿方が目の前に現れ口も聞けないほど驚いています。しかし何が起こっているのかわかっていません。
その姿を初めて見た宰相中将はその場に立ち竦みました。
女房達の言うほどではありませんが、 十 人 並 み のそのお顔に驚いたのです。
しかし、あの綺羅君がぞっこんなのです。子供っぽいところがいいのだと綺羅君はおっしゃっておりました。
それを自分に言い聞かせるように、宰相中将は三の姫の手を取りました。
そして、慣れた口説き文句で、以前から恋こがれていたものの人妻となってしまった三の姫に
ひと目会いたくやってきてしまった旨をすらすらと口にしました。
口からでまかせを言っているうちにすっかりその気にもなってしまった宰相中将は、がばっと三の姫を抱きしめました。
713粗筋中将4/5:2007/09/26(水) 22:31:07 ID:???
…しかし、宰相中将は違和感を覚えます。三の姫が抵抗するどころか無反応なのです。
不思議に思いつつも、ともかく時間もないことだし、と三の姫への思いを語りながら、接吻しようと顎に手をかけました。
すると目はぱっちりと宰相中将を見たままの三の姫。
やりにくいなあ、と思いつつ、やることはしっかりやってしまうわけですが、
接吻をしている間も嫌がるでもなければ応えてくれるわけでもありません。
しかも、あろうことか突然がたんと顔を真っ赤に倒れてしまいました。
突然のことに宰相中将は驚きますが、三の姫は、突然口を塞がれて、息が出来なくなって苦しかったと答えたのです。
接吻の手ほどきをしなければならないなんていったいどういう姫なのだと頭を抱えますが、
ここまできてしまえばもうヤケです。
三の姫の部屋の灯りが消されたのはまもなくのことでした…。

翌朝、美濃は昨夜お泊りになった噂の美形、宰相中将を見かけたことを嬉しげに話しながら三の姫の部屋に参りました。
すると、朝から赤い顔をしてぼーっとしている三の姫がいます。
しかし美濃を見るとまた“いろは”について聞いてきました。

“いろは”が何か、三の姫はわかってしまったのです。
昨夜のことが思い出されます。あれが“い”でこれが“ろ”で…
三の姫も美濃が言うようにとってもイタかったけれど、自分のことをずっと思ってくれていたという宰相中将のことを思うとそれもまた幸せなのです。

三の姫が今美濃に聞いたのは、“いろは”のない夫婦がいるかどうかということです。
“いろは”のない夫婦などいないが、
仲の悪い夫婦ならあるいは…もしくはどちらが一方をとても憎んでいるか飽きてしまった場合ならば有り得るという答えです。
例えば片方が浮気…三日夜の餅を食べ合った人以外と“いろは”をすると、憎まれることもある、と美濃は言います。
それを聞いて三の姫は顔が青くなりました。
昨夜自分は浮気してしまったことを知ったのです。
714粗筋中将5/6:2007/09/26(水) 22:32:13 ID:???
綺羅君以外の人と浮気をしたから、三の姫がそんな人間だから、綺羅君は自分を嫌って“いろは”をしてくれなかったのだ―――
あまりのショックに世間知らずも重なり思考のつじつまが合っていない三の姫の後ろで、美濃が床の片付けをしています。
三の姫が予定外に月の穢れが来てしまったことを知り、精進料理を作るよう厨に向かうのでした…。

その頃、宰相中将も自室で青ざめておりました。
三の姫が未通娘だったことを知ってしまったのです。
宰相中将は頭が混乱していました。主上から注意を受けるくらい仲睦まじいと言われていた綺羅君夫婦なのに、
なぜ綺羅君は何もしていないのでしょう。
そういえば、綺羅君は三の姫のことを「子供っぽいところが可愛い」と言っていました。
ひょっとして、三の姫があまりに幼いから待っていた―――?
綺羅君の性格上、考えられないことではありません。
大人になるのをまつほど大切にしていた姫を…宰相中将のショックは計り知れません。
もしこのことが知れたら、絶交どころか綺羅君は出家してしまうかもしれません。
そうなればすみればかりの坊さんの中に綺羅君を放り込むことになります。
そんなことは絶対にさせられない、と思っているところに、綺羅君が宰相中将のもとへ訪れた知らせが入ります。
宰相中将は追い詰められました。
今は会えないと思うものの、病気になったことにして、綺羅君を部屋に通しました。
715粗筋中将6/6:2007/09/26(水) 22:33:20 ID:???
綺羅君は、昨夜の留守を詫びに来たようでした。
何の用事だったかと聞かれ、本当のことは言えず言い訳するも、その辻褄が合わなかったり、しどろもどろです。
最後は、急に腹が痛くなったと頭を押さえ綺羅君にムリヤリ帰ってもらうという、なんとも情けない有様なのでした。
しかし、宰相中将としても三の姫のことがいつバレるかと思うと気が気ではなく、向き合うこともできません。
なんだって惚れた相手を避けなければならない事態に陥ってしまったのでしょうか。
あの人形みたいな姫も、綺羅君のことがなければ相手にしなかったのに…
三の姫のことを思い出すと、ばーじんだったことが頭をよぎり、ますます落ち込む宰相中将でした。

宰相中将の家を後にした綺羅君は、中将の様子が変だったことを少しいぶかしみますが、
そのまま、昨夜寄れなかった右大臣家に向かいます。また“いろは”について聞かれるのかと思うと暗い気持ちになりますが…。
しかし、右大臣家に行くと、三の姫は綺羅君に会いたくないと言っていることを伝えられました。
どうやら、綺羅さまに二度とお会いしたくない、わたくし綺羅さまに嫌われている、綺羅さまなんて大嫌い、と
朝から泣き叫んでいるようなのです。
どうも月のものが狂って少しヒステリーになっているらしいとのことでした。
その気持ちがわかる綺羅君は、気持ちも軽く実家の左大臣家に戻りました。
弟の綺羅姫のことを考えると頭は重いものの、気を遣わなくてラクだとほっとする綺羅君ですが、
何やら他の方々の御物思いはふえそうで…
716マロン名無しさん:2007/09/27(木) 00:11:03 ID:???
話がとんでもない方向に進行しているwww
717マロン名無しさん:2007/09/27(木) 00:19:48 ID:???
もうばれたよね、三の姫に。
どうか三の姫が内緒にしてくれますよーに。
718マロン名無しさん:2007/09/27(木) 05:10:13 ID:???
ばれてはいないだろ
昨夜から混乱しっぱなしだし
719マロン名無しさん:2007/09/27(木) 05:30:31 ID:???
宰相中将の心配の方向がwww
浮気がバレる→綺羅は出家してしまうかも→坊さんはすみればっか→綺羅いい標的→それはダメ!
なところがもうダメだwwwwww
720マロン名無しさん:2007/09/27(木) 06:01:29 ID:???
ダメな子とアホの子しか出ないのかこの漫画はw
721マロン名無しさん:2007/09/27(木) 08:50:32 ID:???
弟は耳年増なのかww
722マロン名無しさん:2007/09/27(木) 09:38:51 ID:???
宰相中将は「人妻に手を出してバレて修羅場」レベルなら慣れっこなんだろうな。
ためらいもなく人妻の三の姫に手を出したわけだし。

だから心配の対象は綺羅だけにw
723マロン名無しさん:2007/09/29(土) 09:00:26 ID:???
 あれ?全然カキコミがない??
724マロン名無しさん:2007/09/29(土) 15:00:45 ID:???
連載もとまってるね。どうしたんだろ。
725マロン名無しさん:2007/09/29(土) 15:50:51 ID:???
作者、取材旅行か?
726粗筋中将1/9:2007/09/30(日) 22:02:10 ID:???
やがて時は移り、五月
弟君の出仕の式も左大臣家の娘にふさわしく、つつがなく取り行われたのでありました。
綺羅君もやっとのこと肩の荷がおりた心地する今日この頃、ここ内裏の奥の後宮では、
女房達が相も変わらず綺羅君の美しさに見惚れておりました。
主上の御前に伺候されたのちはすぐに尚侍のところに行くのが日課のようになっている綺羅君。
それが女房達には嬉しいことでした。
一方、宰相中将の姿をめっきり見なくなったのが心配ではありますが…

さて、今日も綺羅姫に住まう宣耀殿に、女東宮さまの女房からのお呼びがありました。
綺羅姫に付いて後宮にやってきた小百合は、またかと怒り気味です。
後宮にやって来てわかったのですが、女東宮はとんだじゃじゃ馬でした。
天気が良いといっては「つまんない」、雨が降るといっても「つまんない」
特別注文させた貝道具が出来上がってくれば「飽きちゃったもんねー」と、何かといえばすぐ主上にわめき散らすのです。
しかし、そうは言ってもお呼びがあれば参上しなければなりません。
男君とは思えないほど美しく仕度をした綺羅姫は、女東宮の待つ梨壺へと向かうのでした。

梨壺に行くには、女御方の壺の前を通らざるをえないのですが、各々の女御に仕える女房達は、御簾の前でそわそわしておりました。
今でこそ好意で迎えられる綺羅尚侍ですが、出仕当時は女房方の目の上のコブでありました。
なぜなら尚侍という立場上、いつ何時主上のお手がつくやもしれず、
そうなれば女房方の仕えている女御さま達のライバルとなってしまうからです。
けれど、綺羅尚侍は、梨壺に向かう以外は、居るのか居ないのかわからないほどの大人しさです。
綺羅中将が毎日来ているから、居るのがわかるくらいでした。
727粗筋中将2/9:2007/09/30(日) 22:03:18 ID:???
尚侍が出仕してまもなくの先日、こんなことがありました。
綺羅中将が同席の時以外、尚侍とは会わないと約束してはいたものの、突然現れたら内気な尚侍がどう出るか、
ふと悪戯心を出した主上が、何の前触れもなしに女東宮のいる梨壺に顔を出したのです。
すると、内裏中に響き渡る尚侍の叫び声。
それを聞きつけ、綺羅中将が飛び込んできました。
そして、失神する尚侍を泣きながら抱きかかえ、主上の無体を詰り、兄妹ともに退出することを願い出ました。
傍にいた女東宮にも悪いのは主上だと叱られ、あまつさえ泣かれる始末です。
一連の騒ぎに主上ももう二度としない、と再び約束せざるを得なかったのです…。

その騒動を知った女御方の女房達は、あれでは女御並の40人の女房も、梨壺への几帳を隔てての行列も仕方ない、と納得です。
綺羅尚侍がどれほど美しくても、ライバルになりようがない、と嬉しそうなのでした。

かのように噂されているのを知ってか知らずか、綺羅尚侍は初めて女御方の壺の前を通ったときのことを思い出します。
今思い出しても心臓が止まりそうでした。御簾の向こうからいがみのオーラがだだ漏れていたのですから。
御簾の向こうで几帳を隔てて歩いているとはいえ、女房達の隠すつもりのない嫌味が赤裸々に聞こえてきます。
後宮に上がる前に綺羅君は、人間関係が大事なのだから、笑顔でやり過ごせばいいのだ、と教えてくれました。
しかし、女房達の恐ろしい視線の中で挨拶など出来ない、と思うと、めまいが襲います。
そこを助けたのが小百合でした。
そして、ここで尚侍が倒れでもすれば、今までの綺羅君の苦労はどうなるのだ、と叱咤しました。
綺羅姫のために、ただでさえ忙しい毎日を奔走した綺羅君…その苦労に応えられなければ男ではない、
そして綺羅姫は、にっこりと御簾の向こうの女房達に微笑みかけたのです。
その美しさに女房達はひと目で魅了されました。
やってみれば簡単なことです。それ以来、御簾の前の挨拶は保身のための儀式になったわけです。
728粗筋中将3/9:2007/09/30(日) 22:04:26 ID:???
さて、綺羅尚侍一行は、女東宮の住む梨壺に到着しました。
すると、床には朝の御膳がぐちゃぐちゃにばら撒かれ、朝餉も東宮の位も嫌だと暴れている女東宮の姿がありました。
綺羅尚侍が女東宮に挨拶をすると、呼んでいない、とつっけんどな態度です。
尚侍は気にせず床のものを片付けるように言い、その間ずっと何も言わずに女東宮の傍に座っているだけでした。
その沈黙に耐えられず、女東宮は、なぜ何も聞かないのか、と綺羅尚侍に問います。
聞いて欲しいのかと綺羅尚侍が返すと、女東宮は、自分から大嫌いな馴鮨が出たからだと話し出しました。
そうは言うものの、女東宮のお腹は正直で、話している間に虫が鳴きだしていました。
すると今度は、馴鮨は嫌いだが、一緒に御膳に入ってた栗の甘葛煮は好きなのだ、と遠慮気味に語ります。
綺羅尚侍は、栗の甘葛煮は高価なもので誰でも食べられるものではない、と言うと、自分は東宮だから食べられるのだと嬉しそう。
東宮だから、食べたくないものは食べないのだ、と自信たっぷりに言うと、
綺羅尚侍は、東宮はこれから食事がいらないようだから、女東宮付きの女房にそう言うように、と言い出しました。
それにぎょっとした女東宮は、誰も食べないなんて言ってない、と噛み付きます。
すると尚侍は、ではお食事をなさるのですね、とにこりとします。
女東宮はしまったと思いました。また綺羅尚侍の術にはまってしまったのです。

女東宮は尚侍には勝てませんでした。いつもいつも、怒るでもなくなだめるでもなく見てるだけの尚侍が。
思えば始まりが悪かったと振り返ります。
尚侍なんてきっとおカタイ教育係だろうから、主上の言いつけでも追い出してやろうと思っていたのでした。
そして、尚侍がやって来た途端に、小袋に詰めた小豆を投げつけたのです。
その衝撃で尚侍はなんと倒れてしまいました。
その一件で、女東宮はすっかり綺羅尚侍に謝り癖がついてしまったのです。
尚侍も、女東宮が謝るものと決めてかかっているので、他の者達と態度が違うのでしょう。
729粗筋中将4/9:2007/09/30(日) 22:05:38 ID:???
またこんなこともありました。
小豆の一件を持ち出し、あんなつぶてのひとつやふたつで倒れていては後宮仕えは無理じゃないかと皮肉を言ったときです。
尚侍は、そんなことないと言うでもなく、その通りわたくしには出仕など無理だから、女東宮から主上にお願いしてくれと言うではありませんか。
思わず、退出なんかさせない、とあまのじゃくな性格が出てしまいました。
これも思えばマズかったと今では反省しています。

女東宮は本当は東宮になどなりたくなかったのです。
なのに無理やり立坊され、後宮の奥に閉じ込められて窮屈な毎日を送り、
“東宮らしくしなさい”と言いながらも“女の東宮は好ましくない”という見え見えの態度です。
けれど、綺羅尚侍は違いました。他の者達のようにお世辞を言ったり機嫌を取ったりせず、
ヒステリーを起こしても嫌な顔もせず梨壺に来てくれます。
尚侍なら信頼できるかもしれない、自分の気持ちもわかってくれるかもしれない、と心を開きかけているのです。
それに、綺羅尚侍に見られると胸がドキドキするのでした。きっとアコガレの綺羅中将に似ているからでしょう。

そう考えている女東宮の様子を、綺羅尚侍は「可愛ゆいなあ」と見つめておりました。
同じヒステリーと言っても、左大臣家の夢乃おたあさまとは大違いです。
最初はなんてワガママな娘だ、あんなコのお守をするのかと己が身の不幸を嘆いてはいましたが、慣れればなんてことなかったのです。
一通り騒ぎはしても、あとはそれが恥ずかしかったのか下を向いてふくれている姿が子供っぽくて可笑しくなります。
それに、女東宮の気持ちも少しわかるのでした。
なりたくもない東宮にさせられて窮屈な生活を送っている姿はまるで自分を見ているようでした。
ワガママを言うのは、ただ世間知らずで子供っぽいだけなのです。それを誰かがわかってあげなければ、と思っていました。
730粗筋中将5/9:2007/09/30(日) 22:06:47 ID:???
女東宮の新しい御膳が揃うと、綺羅尚侍は梨壺を退がりました。接する人間を増やしたくないのです。
宣耀殿に戻りしばらくすると、麗景殿のあたりがさわがしくなりました。
それは、綺羅中将がやって来た合図でもあります。一目でも綺羅中将を見ようとする女房達が大騒ぎするからです。
思ったとおり、綺羅中将が元気な笑顔を見せました。
今日の騒ぎは特別で、どうやら弘徽殿のあたりで、後ろから押された女房が転がり出てくるアクシデントがあったようです。
本人も真っ赤な顔で俯いているので、そこを上手く甘い言葉で収めてきたのです。
それを聞いた綺羅尚侍は、すっかりプレイボーイだと感心します。
けれど、綺羅君は最近思うのです。
結婚以来主上の機嫌は損ねるし、気を遣うことは前より多くなる、それもこれも男の格好をしているせいではないかと。
先日の管弦の宴の時も、きらびやかな梅壺女御の一行を見かけ、自分も着飾ればまんざらでもないのに、と思ったりしたのでした。
時々、綺羅尚侍と入れ替われたらと思うのに…

その一言に綺羅尚侍は反応しました。その手があったのに、なぜそれに今まで気付かなかったのでしょう。
しかし、すぐ断念します。
綺羅尚侍は髪を切れば済みますが、綺羅中将の髪はすぐには伸びないのですから。
重苦しい十二単から解放されると喜んだのも束の間でした。
後宮生活の良いところは、おたあさまの新興宗教のお題目が聞こえないことくらいだ、と嘆く綺羅尚侍に、
「女東宮とも上手くいってるしね」と微笑みかける綺羅中将。思わずそれに赤面してしまう尚侍ですが、
どうやら尚侍の“じゃじゃ馬馴らし”の成果のことを言っているようでした。

兄妹の会話を繰り広げているところへ、主上が宣耀殿に渡る知らせが入ります。
731粗筋中将6/9:2007/09/30(日) 22:07:50 ID:???
綺羅達の前に現れた主上はご機嫌でした。
尚侍の様子を見るため、綺羅中将は毎日参内しています。三の姫のいる右大臣家にも以前ほど足繁く通っていないようです。
妹姫を出仕させたのは正解だったのです。
なんという名案だったのだ、とひとりほくほくと笑いがこみ上げているようです。
主上は尚侍に声をかけました。女東宮が尚侍の言うことなら素直に聞くことは、主上の耳にも届いているのです。
出仕して2ヶ月以上になるが、よい折だし梨壺で管弦の宴でも開こうと言うのですが、
几帳の向こうで綺羅尚侍は断固断るように綺羅中将にサインを出します。
それを見て、綺羅中将はなんとか断りを入れようとします。
しかし、その理由が、婚家の右大臣家に寄らねばならないためと聞いた主上は、一気に不機嫌になってしまいました。
いつもの嫌味で、綺羅中将が宴を断ったことを詰るのです。
けれど綺羅君は、今日はどうしても右大臣家に帰らねばならない事情もありました。
それを聞いた主上も、右大臣が今日はそわそわしていたことを思い出します。
当代一の婿を持つ幸せな義父がどうしたのでしょうか。
あらぬ人の恋の恨みでも買っているのかもしれないね、と意味深な一言を残し、主上は宣耀殿から退出しました。

主上が去り、綺羅尚侍はひと安心です。
しかし、いつもながら、お気に入りのはずの綺羅中将に掛ける言葉にトゲがあるのも気になります。
確かに、綺羅尚侍が出仕してからというものあのイヤミもおさまっていたのですが、事が三の姫の話になるとぶり返すのです。
三の姫といえば、綺羅中将は右大臣家に行かねばなりません。
いそいそと立ち上がる綺羅中将を安心させるかのように、
綺羅尚侍が「ぼくはけっこううまくやってるから」と声を掛けるのでした。
732粗筋中将7/9:2007/09/30(日) 22:08:57 ID:???
何かというと失神していた綺羅姫が、言うようになったものです。
それに比べ綺羅中将は、最近悩みが増したような気がします。
というのも、最近三の姫の様子がおかしいのです。
ぼーっとしているかと思うと急に泣き出したり、
気を紛らわせようと宮中でのことや友人のことを話すと、綺羅さまなんて嫌い、あっちに行ってと言う始末。
軽いノイローゼだとは思うのですが、原因はなんなのでしょうか。
右大臣さまも、三の姫を療養させようと言っていたので、今日の呼び出しもそのことかもしれません。
療養先が決まったら、絶対付き添って行こう、と決意する綺羅君なのですが…

綺羅君を迎えた右大臣さまはこれ以上ないほど上機嫌でした。
何か良いことでもあったのかと聞く綺羅君に、満面の笑顔で告げました。
なんと、綺羅君が父親になったというのです。
そう、三の姫に御ややが出来たのです。

これには綺羅君も、言葉を失ってしまいました。
なんと言ってもこの夫婦は女同士なのですから。
絶句している綺羅君は、右大臣にせかされるように三の姫の元へと向かいます。

三の姫の住む西の対屋では、女房達総出で祝いの言葉を向けられました。
綺羅君は、複雑な表情で応えます。
気をきかせた女房達は、綺羅君を三の姫と二人きりにさせました。
二人きりになったと言うものの、三の姫はこちらに顔を向けません。
綺羅君はなんと声を掛けたものかと迷ったものの、三の姫に話し掛けます。
すると、三の姫は開口一番にごめんなさいと謝りました。
そして、三日夜の餅を食べた綺羅君以外の人と浮気をしてしまったことを告白したのです。
733粗筋中将8/9:2007/09/30(日) 22:09:59 ID:???
慌てて後ろに控えていた美濃が飛び出してきました。他に聞かれた女房はいないようです。
美濃にも初耳のようでしたが、三の姫は、綺羅君以外の人と“いろは”をしてしまったと泣きながら吐き出します。
綺羅君は、こんな時にまでわからない言葉を使わないでくれと思いますが、一応、どうしてそんなことをしたのかと叱りました。
すると、綺羅君も誰も“いろは”について教えてくれず、悪いことだとは思わなかったと三の姫。
また“いろは”の壁にぶつかりますが、綺羅君は今度はその相手を聞き出すことにします。
しかし、こればかりは三の姫は答えてくれません。
言えばその人と決闘しかねないし、その人が出家するかもしれない。
もしもあの人に何かあったら生きてはいられない、と三の姫は泣き臥しました。

三の姫は、それ以上は教えてくれません。ただ、一度きりしか会っていないあの人が好きなのだと、それしか―――。

宮中に三の姫懐妊の報は瞬く間に流れました。
主上は、これでまた綺羅君の足が遠のいてしまうのではないかと不安が募る一方ですが、
綺羅君はそれどころではありません。
734粗筋中将9/9:2007/09/30(日) 22:12:01 ID:???
左大臣家では、左大臣さま、綺羅尚侍が集まり、このことについて緊急に話し合っています。
左大臣さまと綺羅姫は、綺羅君が三の姫に何もしてないことを相手の男性が知ってしまったことを心配しています。
下手に探られてしまえば身の破滅なのですから。
しかし、綺羅君は二人の会話がよくわかっていません。
それに、三の姫が相手の男に会ったのはたった一度きりと言っているのも不可解でした。
たった一度で御ややが授かるものなのでしょうか。
綺羅姫はこの「たった一度」に着目しました。
今三の姫は4ヶ月目に入ろうとしています。すると、4月の末頃に会った、おそらく遊び目的の男です。
4月といえば、綺羅君が綺羅姫の出仕の仕度で奔走していた頃。きっとその頃出入りしていた男でしょう。
あーだこーだと左大臣さまと綺羅姫が話し合っている頃、綺羅君も考えていました。
綺羅君が三の姫に 何 も してないとわかるのは、相手の男が 何 か したことを意味します。
でも何をしたのでしょう。それが綺羅君にはよくわからないのですが、
それにしても一回で御ややを下さるとは、神仏もあまりに考えなしってものだと憤っています。

それに、三の姫…
すべてに幼く、いつも“綺羅さま綺羅さま”と慕ってくれていたのに、
「あの方にもしものことがあったらわたくし生きてはいられません。あの方が好きです」と涙ながらに取り乱すほど
姫はその相手が好きなのです。
それに比べ自分は…と、自らを責める綺羅君がいるのでした。
735相関図中将:2007/09/30(日) 22:16:42 ID:???
      ┌────┐
     藤左      右
     原大      大
夢   顕臣   政  臣         _____
乃 〒 通  〒 子  ├―┬─┐   |      |
   綺    綺     三 二  弘  主   麗   女
   羅    羅 =  の の  徽=  = 景   東
   尚    中     姫 姫  殿  上   殿   宮
   侍    将           女      女    ・
  (男)   (女)        ‖  御  ‖   御   久
                 権      梅       宮
                 中      壺
                 将      女
                        御
736マロン名無しさん:2007/10/01(月) 00:34:17 ID:???
パズルのピースがぱしぱしとはめ込まれていくようだ…
うまいね
737マロン名無しさん:2007/10/01(月) 08:42:23 ID:???
女春宮かわいいよかわいいよ女春宮
738マロン名無しさん:2007/10/02(火) 06:40:54 ID:???
中身が小心者でお人好しっぽいあたり良く似た兄妹だな
739マロン名無しさん:2007/10/02(火) 10:16:47 ID:???
今すぐって訳にはいかないが、頑張って髪を伸ばせば2~3年もすれば入れ替れるな。
740マロン名無しさん:2007/10/02(火) 14:04:32 ID:???
>>739
その2〜3年の間をどう誤魔化すがが問題なんじゃね?
でも当時カツラとかなかったのかね?
付け毛とかさ。
741マロン名無しさん:2007/10/02(火) 18:54:04 ID:???
時代的にはカツラはもうあるよ。
当時の天皇でカツラを使ってた人も居るくらいだし。
海の向こうでは権威の象徴として音楽室の写真に有るみたいな
派手で巻き毛のカツラが使われていた。
芥川の「羅生門」でもカツラ売りの婆が出てくるしね。

ただ現代みたいな精巧な出来ではないだろうけど
742マロン名無しさん:2007/10/02(火) 20:53:24 ID:???
>>741
ほほう、じゃあそれつけとけば入れ替りも楽にできるじゃないか。
入れ替わっちゃえばいいのにw
743マロン名無しさん:2007/10/02(火) 21:56:50 ID:???
「和宮様御留」では貴族(皇族)も長かもじをつけていたしね。
この時代はまったくの地毛だったのだろうか。
重いは臭いはで大変だなw
744粗筋中将1/8:2007/10/02(火) 22:50:55 ID:???
綺羅君は心を痛めていました。
三の姫が御ややを授かり実感したのです。今まで三の姫を騙していたことを。
もし自分が三の姫と結婚していなかったら、姫はその男と結ばれていたのかもしれない。
いや、今からでも遅くないはずです。何とかしてその人と幸せにしてあげるのだ…
とは思うのですが、三の姫はその相手の名前を頑として言わないのでした。
おもうさまはもう席を外し、今は綺羅姫がいるだけでしたので、綺羅君は疑問をぶつけました。
どうしても一度で御ややができることが納得いかないのです。
一度会ったきりのふたりにいきなり御ややを授けるなんて、神仏もずい分いい加減です。
これには綺羅姫も開いた口が塞がりません。
まさかとは思いますが、一度聞いてみることにします。どうすれば子供が産まれるのか知っているのか、と。
神仏が相談して、結婚しましたという報告もして…
綺羅姫も心配する回答でしたが、ひとつふとんで寝るという綺羅君の答えに安心しました。
しかし…まさか…
そのまさかです、綺羅君は、寝るとはおやすみなさいと眠ってしまう寝る以外に
何かすることがあるだなんて知らなかったのです。
綺羅姫は驚愕するというか妙に納得すると言うか…三の姫とすんなり結婚した理由はここにあったのです。
昔っから外をかけずり回っていた綺羅君は、女房達の臆面もないウワサ話など聞いたこともなかったので
基本的知識が欠如しているのです。綺羅姫の場合は耳年増と言いますが…。
745粗筋中将2/8:2007/10/02(火) 22:51:57 ID:???
綺羅姫は綺羅君に、御ややは神仏が下さるものではないことを説明します。
これは綺羅君にとっては寝耳に水、ではどうすれば、誰が御ややを授けてくれるのでしょうか。
綺羅姫は言葉につまります。今さらおしべとめしべでもないし…
「契る」という言葉を使って上手く説明しようとします。男女の仲が結ばれることを…
しかし、その結ぶも何を結ぶのか綺羅君はわかりません。
たて結びやちょうちょ結びではなく、男女のある部分同士がくっついて…この先はとても綺羅姫の口からは言えません。
しどろもどろになる綺羅姫ですが、綺羅君が、三の姫はその男ととある部分がくっついて
御ややが出来たのだろうと言ってくれたので安心します。詳しく言われたらどうしようかと思いました。
とにかく神仏ではなく、くっつかなきゃ子供はできないし、一度くっついたらできちゃうこともあるのだと
涙目で訴えます。
わかったようなわからないような、そんな表情をして綺羅君は帰って行きました。

本当にわかったのかいまひとつ不安に首を傾げる弟君ですが、不安と申すならこちらの方とて御同様、
そもそもの事件の発端、宰相中将どののお邸では、三の姫妊娠に青ざめる方がひとり。
あの3ヶ月前の夜以来、綺羅君への後ろめたさから
なんとか綺羅君のことは忘れよう三の姫との過ちも忘れてしまおうと山や寺にも籠もったりしていたのですが、
宰相中将の綺羅君への思いは日々募るばかりで…
そこに三の姫妊娠の知らせです。
これで三の姫が男を通わせたことは綺羅君に知られてしまいました。
手も触れず大切に慈しんできた三の姫を寝取られ、そして妊娠させられたと知れば綺羅君とて黙ってはいないでしょう。
きっとその男を探し出すに違いないと思うと、青ざめるのも当然です。
参内など出来たものではありません。
そんなワケで、物忌みだの行触れだのとウソをこいてズル休みをしてみたものの、
このまま一生家に籠もっているわけにもいきません。
何より、綺羅君に会えないことが、宰相中将には何よりも堪えるのです。
746粗筋中将3/8:2007/10/02(火) 22:52:59 ID:???
その時、中将に、返事を急ぐという文が届きました。
三の姫からのものでした。
そこには、子供を身籠ったこと、綺羅君には責められてはいないが、優しく相手の名前を聞き出そうとしていること、
それが逆に針のむしろのようで、血の涙を流す日々を送っていること、
相手の名前を出してしまう前に、どうか一度会いに来て勇気付けてほしい…
今夜綺羅君が来ないことを記し、その文は締められていました。
宰相中将は、文を読み、綺羅君の優しさと、それが三の姫の責め苦になっていることを知り胸が痛みました。
「あなたさまの名前を口にしてしまう前に―――」これはさすがにヤバいと思い、使いの者に、夜を待つよう伝えたのでした。

辺りがすっかり闇に包まれた頃、宰相中将は美濃に導かれ右大臣家の西の対屋にやって来ました。
そこには、すっかり面やつれしてしまった三の姫がおりました。
姫は中将の姿を見止めるなり、ぽろぽろと涙を流します。
あの幼かった三の姫がやつれる程に心を痛め自分のことを思ってくれていたのだと思うと、中将が抱き締めるのも自然でした。
三の姫は、宰相中将の腕の中で、自分を連れて逃げてくれと言います。
突然のことに言葉が飲み込めない中将でしたが、なんとか綺羅君の名前を出し思い留まらせようとします。
しかし、綺羅君の名前を出すと三の姫の表情は曇りました。
連日姫のもとに通っているとはいえ、今まで何もしないでいたのは、綺羅君が自分のことを嫌っていて、
余所に好きな方でもいるからだと三の姫は言います。
形だけの愛されてない妻で、今はもう中将しかいないと姫は泣きました。
747粗筋中将4/8:2007/10/02(火) 22:54:15 ID:???
三の姫の言葉で、宰相中将は思い出しました。
妻が他の男の子をいうのに、宮中で見かける綺羅君は寝込むでもなくしゃんとしています。
宰相中将も、綺羅君に他に愛する人がいるのかもしれないと考える方が自然なことに気付きます。
なのになぜ姫との仲を後ろめたく思わねばならないのでしょう。だいたい妻にここまで言わせる綺羅君が悪いのです。
そう思い至ると宰相中将は三の姫に、姫を掠び取ることは出来ないが、出来うる限り会いに来て同時に綺羅君とも話し合い
姫を自分のものに出来るよう力を尽くすことを誓います。
今は自分を思い耐え忍んで、健やかな子を産むようにと告げ、接吻をして三の姫のもとから帰りました。
三の姫の元から帰る宰相中将を、陰から見止める人がひとり―――

綺羅君は、実家の左大臣邸へ戻る途中、宰相中将の車が右大臣家の方向へ向かうのを見たのです。
そして、綺羅姫とおもうさまの話を思い出しました。三の姫の男が来たのは逆算して4月の末だと言っているのを。
あの頃来たのは宰相中将だけ、そして三の姫の様子がおかしくなったのも同じ頃、
気になって、中将の車を尾けさせ、三の姫の相手が宰相中将であることを知ったのでした。
この目で見るまでは信じられませんでしたが、一部始終を盗み見た綺羅君は、三の姫が本当に中将のことを愛していることを知るのです。
プレイボーイの中将の言葉は話半分に割り引くとしても、愛し合っていることになんの変わりもありません。
どうにかしてふたりを結婚させてあげるわけにはいかないか、
実は自分は女だから気にせず結婚しちゃってくれと言うわけにもいかないし…

と綺羅君が悩んでいる間にも季節は10月、三の姫のお腹も目立つようになってまいりました。
ぷっくり膨らんだ三の姫のお腹を見て、この中に赤ちゃんがいるのかと綺羅君はそれはそれは衝撃を受けました。
美濃や右大臣さまは、これからもっと大きくなるとか、十月十日経たないと生まれてこないとか気楽なことを言っていますが、
今にも生まれてきそうなのにどうしてそんなことがわかるのかと綺羅君は焦ります。
早く宰相中将と話をつけなければならないと今まで以上に強く思うのでした。
748粗筋中将5/8:2007/10/02(火) 22:55:27 ID:???
宰相中将は、最近綺羅君の物問いた気な視線をしばしば感じます。
最初こそ三の姫のことがバレたのではとあたふたしていましたが、憎んでいるとか、そういった視線ではありません。
一方、三の姫からはまめまめしく文が届くようになりました。
早く綺羅君と話をつけてくれと、涙ながらに綿々と書き綴ってあるのです。
そしていつも美濃が返事が来るまで外で待っているので、人目に立ってはマズいと返事を渡すと、また新たな文を携えやって来る…
どっぷりどろ沼に嵌っているのでした。
宰相中将の今までの恋の相手といえば、遊びと割り切っている人や深追いしたりしないプライドの高い女性ばかりだったので、
三の姫のようなタイプは苦手なのでした。
綺羅君の恋人の話も気になるし、綺羅君が宰相中将に向けるあの視線も、気がかりです。
宰相中将自身、まだ綺羅君のことを諦められていないのでしょうか―――

さてそんな折、宰相中将は宮中で、恋のライバル・両刀使いの兵部卿宮にばったりと出くわしました。
イヤな奴に会ったと苦々しく思っていると、なんと兵部卿宮の口から、
亡き大納言綾子姫が、中将に愛想が尽きたと言っていたことを知らされます。
なぜそんなことを知っているのかと思わず無粋なことを聞いてしまいました。
綾子姫は宰相中将にとって単なる恋人の一人ですが、わりと古い仲で、お互いの気心も知れてると思っていたのに、
よりによってすみれ族の兵部卿宮に横取りされてしまったのです。
受けたショックは大きく、強がりをを言うも顔がひきつってしまう中将でした。
兵部卿宮にとっては、宰相中将ともあろう人がとんだ不手際だと思っており、何かあったのかと疑いたくもなります。
宮も、綺羅君が愛妻が懐妊したにしては気もそぞろで、妙に中将に視線を向けていることが気がかりでした。
二人の仲に何かあるのでは、と持ちかけてみるも中将が否定するので、
欲しいものを眺めているだけでは最近もの足りない、と意味深な一言を言い残し、宰相中将のもとを後にしました…。
749粗筋中将6/8:2007/10/02(火) 22:56:30 ID:???
宰相中将にとってこれは聞き捨てなりません。
綾子姫の話を持ち出して中将を牽制しておいて、兵部卿宮は綺羅君に手を出す気です。
みすみす綺羅君をすみれの毒牙にかけられないと、なんとか阻止したい宰相中将ですが、
男を口説いた経験がないため、その道で争うには宮と中将ではあまりにハンデがありすぎると悩みます。
こうなったら先手必勝しかない、と決意するまで時間はかかりませんでした。
兵部卿宮の言葉からして、綺羅君が自分を意識しているのは間違いないとふんだ中将は、3日後の宿直の夜に勝負をかけます―――。

その夜、宰相中将のいる宿直所に、同じく宿直の綺羅君がやって来ました。
背中合わせに座った綺羅君に、宰相中将はどう切り出すべきか悩んでいました。
話がある、と先に切り出したのは綺羅君の方でした。
前々から思っていたことがある、という前振りは、綺羅君の中将への告白ではないかと期待しますが、その話題は三の姫のこと。
750粗筋中将7/8:2007/10/02(火) 22:57:51 ID:???
予想外の人物の名に、宰相中将は戸惑いを隠せません。
しかし、綺羅君はずべて知っているのです。
それを聞いた中将は青ざめました。
けれど綺羅君は、そのことで中将を責めたいのではないのです。大切な親友だから、中将を失うことはしたくない…
何より三の姫の幸せを第一に考えて、と綺羅君が顔を上げると、そこには怒りの表情の宰相中将がいました。
綺羅君にとって、自分は単なる親友に過ぎないのか…そう悔しさで震える中将ですが、綺羅君は、親友に単も複数もないと思っています。
宰相中将の忍耐もここで限界です。もう忍ぶことに疲れました。

「おまえが好きだ」

とうとう中将は綺羅君に告げました。
突然の告白に目を丸めて驚くも、綺羅君はまず女だということがバレたのではないかということを心配します。
そのためにはまず話を聞いてくれ、と頼みますが、中将は止まりません。綺羅君を壁際に追い込み、
奇しの恋と罵られようと、この恋は遂げるつもりであることを伝えます。
「奇しの恋」の言葉に、これは中将が自分を男だと思っての行動だと知り、女だとバレたのではなかったのだと嬉しいような喜べないような…
しかし、綺羅君のピンチに変わりはありません。
禁中で馬鹿なマネはやめてくれと再三止めますが、思いを告げた中将は止まりません。
ついに綺羅君を抱き締めたのです。

腕の中で綺羅君は必死で抵抗します。
一度その腕から逃れたものの、すぐに捉えられ押し倒されました。
そして、中将の力づくの接吻を受けたのです。
751粗筋中将8/8:2007/10/02(火) 22:58:55 ID:???
その強さにはねのけることが出来ず、唇を咬んでやっと逃れることが出来ました。綺羅君の目には驚きの涙が溢れています。
しかし中将はまだ諦めません。
さらに綺羅君を壁際に追いやります。
綺羅君がもうだめだと思ったその時でした

燭を背けては 共に憐れむ 深夜の月 花を踏んで 同じく惜しむ 少年の春―――
そんな歌と共に、兵部卿宮が宿直所に現れたのです。
壁際に追いやり今にも綺羅君を襲わんとする宰相中将の姿を見、これはこれは…と声を掛けます。
中将が驚きで目を丸くしているその隙に、綺羅君は宰相中将の腕から脱出し、宿直所からもバタバタと走り去っていきました。
遠ざかる綺羅君の足音を聞いて宰相中将は呆然とします。
これからはきっと綺羅君も警戒するだろうに、絶好のチャンスを逃してしまいました。
やっと正気に戻った頭で、三の姫のこともバレていたことにも気付きます。
兵部卿宮は、見計らって来たわけではなく、今夜宿直と聞いた中将と綺羅君と共に酒を交わそうと思って訪ねたようでした。
直衣を乱し呆然と座り込む宰相中将が同好の志だったとは、と嫌味に話しかるのでした。

綺羅君はといいますと、乱れた髪のまま内裏を駆けておりました。
その心はとても困惑しています。
なにせ、中将からの無理矢理の接吻、あれは、盗み見たあの夜の三の姫と同じことをしたのです。
つまり、綺羅君にも
御 や や が で き て し ま っ た !!
綺羅君真っ暗な気分で泣きながら走り去りました。

げに恐ろしきは無知の思い込み
襲うほうにも襲われるほうにも、さんざんな夜でありました。
752粗筋中将:2007/10/02(火) 23:00:05 ID:???
次回木曜更新予定
753マロン名無しさん:2007/10/03(水) 00:15:29 ID:???
>御 や や が で き て し ま っ た !!

違  う  だ  ろ  !!!ww
754マロン名無しさん:2007/10/03(水) 00:41:50 ID:???
さいしょうのちゅうじょうがこわれた
きらはこんらんしている
755マロン名無しさん:2007/10/03(水) 00:43:26 ID:???
毎回、次回が気になる終わりだが今回の引きは凄い
御ややのできた綺羅君が何するか想像できん
756マロン名無しさん:2007/10/03(水) 00:55:59 ID:???
ある部分とある部分がくっついて…どこのことかなあ?
おかあさんにきいてみなくちゃ
757マロン名無しさん:2007/10/03(水) 07:18:38 ID:???
おなかとせなかだよ。
758マロン名無しさん:2007/10/03(水) 09:20:44 ID:???
>御 や や が で き て し ま っ た !!

あるあ・・・ねーよ!wwwwwwwwww
大体「出来ることもある」って弟にも言われたろうに…
早とちりしすぎw
759マロン名無しさん:2007/10/03(水) 12:25:50 ID:???
何から突っ込めば良いのか分からんくらい愉快すぎる展開wwww

すみれの人良いキャラだよな〜。
760マロン名無しさん:2007/10/03(水) 18:21:46 ID:???
最近あらすじの分母がこっそり増えて無くて寂しい
761マロン名無しさん:2007/10/03(水) 20:27:01 ID:???
すみれの人、キワモノキャラのはずなのに、
この中で一番まともに見える
762マロン名無しさん:2007/10/04(木) 09:28:15 ID:???
なんか、弟くんは十二単とか着てるのにちゃんと男の子に見える…
763マロン名無しさん:2007/10/04(木) 10:18:00 ID:???
綺羅姉に早とちりさせない御ややのでき方講座、難しそうだな
764マロン名無しさん:2007/10/04(木) 10:31:08 ID:???
ズバッと言うしかないな。ズバッっと。図解つきで。
765マロン名無しさん:2007/10/04(木) 12:04:32 ID:???
実践するしか
766マロン名無しさん:2007/10/04(木) 18:18:16 ID:???
>>765
相手は誰だ?<実践
767マロン名無しさん:2007/10/04(木) 18:46:58 ID:???
じゃあ事情を明かして今度こそ宰相中将に…
768粗筋中将1/7:2007/10/04(木) 22:26:03 ID:???
後宮・宣耀殿では、綺羅君の乳姉妹にして綺羅尚侍付きの女房小百合が、尚侍のお帰りを今か今かと待っておりました。
やっとお帰りになった綺羅尚侍に小百合は飛びつき尋ねます。女東宮に里下がりのお許しはいただけたのかと。
しかし、尚侍は口ごもって、またお許しを頂けなかったことを報告します。
これには小百合も堪忍袋の緒が切れ、自分ひとりでも里下がりをする意向を伝えます。
男だと隠すのがただでさえたいへんな綺羅尚侍は、事情を知る小百合がいなくなることはとても困るので、慌てて引き止めるのですが、
小百合とて、宮中でじっとしていられるわけではないのです。
それというのも、あの綺羅君が奇病に苦しんでいらっしゃるのですから―――。

綺羅君が突然参内なさらなくなったのは1週間も前のことでした。
大らかに構えている綺羅尚侍とは反対に、小百合はそれが心配で心配でなりませんでした。
綺羅君は、妹姫が出仕されるとき、毎日様子を見に来るからと約束されたのに、なんの御連絡もなしにいらっしゃらないのは、
何かいらっしゃれない理由がある…そう居ても立ってもいられず、左大臣邸に安否を訊ねる手紙を出しました。
すると、綺羅君はその前夜、宿直の役にあったにも関わらず突然牛車からお降りになるなり床に臥せてしまわれたという返事です。
そのお顔は土気色で、女房達さえお側に寄せ付けず、何やら口走っては天井を睨むばかり…。
この様子を不審に思った左大臣さまは、こんなのは初めてだ、とさっそく綺羅尚侍に告げにきました。
どうやら相当困惑しているようです。
病弱だった弟君と違い、綺羅君は病気ひとつしたことがありません。
小百合は、薬師や僧を呼んではどうだと言いますが、綺羅君自身がそれを断っているようなのです。
薬師を呼べば姫とバレてしまうから、という理由ではなく、僧や薬師を呼べば死んでやると泣いて訴えるのだとか。
これには小百合もショックを受けました。あの気丈な綺羅君がお泣きに…。
769粗筋中将2/7:2007/10/04(木) 22:27:11 ID:???
綺羅君がお泣きになるなんて、きっとたいへんな病気に違いない、左大臣さまのお話では詳しいことがわからないからこそ
小百合が帰って綺羅君の様子を確かめよう、側で看病してさしあげようと思っているのです。
なのに綺羅姫は、女東宮が里下がりを許してくれないから、と渋ります。
小百合は怒り沸騰、尚侍出仕の際にあれ程心を砕いてやつれてしまうほど奔走していた綺羅君のために、
女東宮のお怒りを買ってでもお邸に帰ろうとは思わないのか、と詰り、尚侍は女東宮の方が大切なのだ、と涙を流し走り去りました。

小百合が去って、綺羅姫は思います。もちろん、綺羅姫だって綺羅君のことは心配しています。
けれど、女東宮の機嫌を損ねたりしたら降格…下手をすれば後宮追放です。
しかし、ふと綺羅姫は気付きます。自分は出仕を嫌がっていたのでは…?
小百合の言う通り、綺羅君が心配ならば女東宮を振り切ってでも左大臣邸に帰るべきなのだと思います。
なのに浮かぶのは、里下がりの許しをもらいに行った時の、「尚侍に側にいてほしい」と駄々をこねる女東宮…。
ひょっとして、女東宮のことが好きなんだろーか、と初恋に自覚する綺羅姫なのでした。

さてその頃、ここ左大臣家の三条邸では、綺羅君が夜も眠れず苦しんでおりました。
思い出すのはあの夜のこと、宰相中将が「あんなこと」をするとは思ってもおらず、
それ以上に逢引を目撃した時の三の姫と同じことをしたわけで、御ややができたのは確実だと悩んでおります。
部屋に引き籠って1週間、妊娠したことがバレてはと祈祷も薬師も断固拒み続けてきましたが、
お腹が膨らんできたら隠し通すなんてこともできなくなります。
そしてそれを機に綺羅君が女だということがわかってしまったら…
おもうさまは主上をたばかった罪で失脚して遠国へ追放、綺羅君も女装の男君と生涯蔑まれ、三の姫も女を夫に持ったことで笑い者になってしまいます。
誰かに相談しようにもおたあさまは頼りにならず、おもうさまも三の姫の騒ぎでパニック状態、
第一、こんなことは恥ずかしくて誰に相談すればいいのでしょうか。
770粗筋中将3/7:2007/10/04(木) 22:28:14 ID:???
八方塞がりかと絶望している綺羅君に、ある人物が浮かびます。綺羅姫です。
三の姫が妊娠したとわかった時も、おもうさまより落ち着いて状況を分析していたし、御ややのでき方についてもやたら詳しそうでした。
あの子なら、できた御ややをもとに戻す方法だって知っているかもしれません!
一縷の希望をかけて綺羅君は立ち上がりました。
いつお腹が膨らんでくるかもわからないと思っているとことん無知な綺羅君は、御所に向かうよう邸の者に声を掛けました。

綺羅君の長の欠席を気にしているのがここにもひとり、主上は1週間も姿を見せない綺羅君のことを考えていました。
父である左大臣さまに聞いても何かと話をはぐらかされ続けています。
三の姫のことで辛く当たっていただけに、それが原因で出仕しなくなってしまったのでしょうか。
いやいや、それというのも綺羅君に対する好意からしたもので…でもそれは別に奇しの恋などと言うものではなくて…
などとひとりであたふたしているところに、綺羅君が殿上したことが伝えられます。

1週間ぶりに綺羅君の姿を見た主上はぎょっとします。久々に現れた綺羅君は、今にも倒れそうなほどやつれていたのです。
その様子を見て、今日はもう帰った方がいいのでは、と進言しますが、綺羅君は断ります。
病に臥している間も綺羅尚侍のことが心配で、その様子を確かめずにはとても退出は出来ない…そう青い顔をして言うのでした。
このように病をおしてまで出仕するほど綺羅君は尚侍が心配なのかと主上は思い知らされます。
なのに、その妹思いにつけ込み綺羅君を毎日参内させるためだけに無理矢理妹姫を尚侍として出仕させてしまったことに
主上はとても自己嫌悪を感じるのでした。
771粗筋中将4/7:2007/10/04(木) 22:29:33 ID:???
宣耀殿では小百合が今にも泣き出さんばかりに綺羅君を迎えました。
自分が側に付いていればこれほどやつれるまで黙っていなかったのに…と心配する小百合でしたが、
弟と話があるからと人払されてしまいます。
綺羅君の姿を見た綺羅姫は、本当に痩せてしまっている姉君の姿に驚きます。
帰れなかったことを詫びる綺羅姫に、綺羅君は顔を赤らめ言いにくそう御ややのでき方についての話を切り出しました。
あれ以上詳しい話をしなければならないのかと焦る綺羅姫ですが、その話はわかったからもういいんだと言われます。
どうやってわかったのか謎の残る綺羅姫ですが、気にせず綺羅君は続けます。
なお言いにくそうではありましたが、御ややを元に戻す方法はないのか、と思い切って尋ねました。
それを聞いた綺羅姫は、三の姫が浮気したことに腹を立て、その子供をどうにかしようということを聞きたいのかと勘ぐりました。
まさかとは思い、念のため、本気で言っているのかと問います。綺羅君はもちろん本気だと答えます。
綺羅姫はカッとなりました。綺羅君が本気だと言うならなおのこと非人間的なことは教えられません。
いくら十月十日経たねば生まれてこないとはいえ、お腹の中で赤ちゃんは育っているのです。
もとに戻すということは、その赤ちゃんを殺すことなのです。

思わず声が大きくなる綺羅姫の話に、綺羅君は衝撃を受けます。
三の姫が憎いかもしれないが、というその先の綺羅姫の話は既に聞いていません。
自分のお腹の中で赤ちゃんが育っているなどまだ信じられませんが、殺すなど考えてはいけないことを知りました。
生きている生命なのだから、大切にしなければ…
しかし、そうすればおもうさまや弟君はどうなるのでしょう。
自分の御ややのことが知れたら、綺羅君一人の問題ではなくなってしまいます。
772粗筋中将5/7:2007/10/04(木) 22:30:38 ID:???
考え込む綺羅君に、綺羅姫が声を掛けます。
綺羅君は、あんなに簡単に御ややが出来るのだから、出来る前に戻す方法もあるのだと思った、と素直に反省します。
そんな便利で都合のいい方法があるわけないとすっかり思考が男な綺羅姫ですが、三の姫や御ややを見守ってあげるよう力付けます。
その姿を見て綺羅君は、綺羅姫はすっかり男っぽくなってしまったと思います。
けれど、普通の男らしい男はこんな格好はしないと思う、いつになったらこんなバカバカしい状態から抜け出せるのか、
こんな女装姿じゃ好きな姫が出来てもプロポーズも出来やしない、とやさぐれる綺羅姫でした。

その時バタバタと足音がして、女東宮が部屋に入って来ました。先導の女房もつけない自由奔放ぶりに綺羅君は驚きです。
几帳をめくり、顔を晒して綺羅君の体調を尋ねます。
綺羅君は、女東宮にまで心配をかけていたことを詫びますが、女東宮も、尚侍を里下がりさせなかったことを謝ります。
尚侍がいないと寂しくて、と言う女東宮に、尚侍が好きなのですね、と姉として好意を持ってくれたことを喜ぶ一声をかけました。
すると、女東宮の顔は真っ赤に染まりました。
不思議に思って綺羅姫の方を振り向くと、綺羅姫もまっかっかです。
綺羅姫の言う“好きな姫”とは女東宮のことだと綺羅君は気付いてしまいました。

顔を真っ赤にしたまま、女房に怒られるからと女東宮は宣耀殿をそそくさ去りました。
なおも赤面している綺羅姫ですが、女東宮は綺羅姫が本当は男だということを知っているわけではないのでした。
誰が十二単を着た男がいると思うでしょう。それも尚侍として後宮入りしているなどと…
こんな生活は嫌だ、と愚痴をこぼす綺羅姫でした。
773粗筋中将6/7:2007/10/04(木) 22:31:39 ID:???
その夜、三条邸に戻り綺羅君は考えました。
お腹の中の御ややを元に戻すことができない以上、後戻りはできません。
このお腹が三の姫のように膨らんでくれば、綺羅君の妊娠は周知の事実となり左大臣家は終わりです。
弟君は人々の嘲笑の中都を追われるだろうし、地方の荘園で暮らせればまだしも、失脚したおもうさまに荘園や財産が残されるとも限りません。
出家したところで後ろ盾のない身では托鉢をして食べていけるかどうか…

けれど、綺羅君の妊娠が表沙汰にならなかったら?
何も事態は変わらないはずです。おもうさまも宮廷で一の人の地位を守れるだろうし、
綺羅姫も今や体力と気力を持っているから男に戻るチャンスさえあればうまくやれるでしょう。
そして、綺羅姫も三の姫も好きな人と一緒になれるかもしれない…
その時、頭に主上の顔が浮かび焦ってしまう綺羅君ですが、とにかく、
みんなが幸せになるためにも自分が上手くやらなければならないと強く思うのでした…。

翌日、内裏で殿上人は綺羅君の姿を数日ぶりに見止めました。
皆に囲まれた綺羅君は朗らかに話をしています。その様子はまるで結婚前に戻ったかのよう。
今日はあちこちに顔を出しているとのことでした。

宣耀殿に向かうと、小百合が、自分で考えたという献立表を渡してくれました。
綺羅君が二度とあのようにやつれたりしないように…やはり泣き出しそうな表情で言ってくれます。
綺羅君は、その献立表をありがたく受け取り、小百合に言いました。
おまえも、美人なんだから色んな殿上人に言い寄られるだろうけど、へんな奴にひっかかってはだめだ、
小百合に何があっても、もう自分は決闘するわけにはいかないのだから、と。
そう言って尚侍の待つ部屋へ姿を消す綺羅君に、小百合は何か違和感を覚えるのでした。
774粗筋中将7/8:2007/10/04(木) 22:33:00 ID:???
綺羅姫には、お前も気を強く持っていきなければ、と懇々と説きます。
突然のことにその理由がわからず綺羅姫は戸惑うのでしたが、再び元気になった綺羅君に安心するような、しないような―――。

綺羅君は、麗景殿にも顔を出していました。
麗景殿の女御さまもその女房達も、久々の綺羅君の訪問に喜び、いつになく華やかで明るい時間を過ごしたのです。
けれど女御さまは、綺羅君が時折見せる寂しそうな様子が気がかりでもありました。

夜になり、綺羅君は紫宸殿の桜の前におりました。
葉を散らした枝の下で笛を吹き、ふと、去年の管弦の宴のことを思い出しています。
この笛を吹いて、主上から桜の枝を賜ったことを。
思えば一番楽しかった頃です。主上の覚えもめでたく、満開の桜と同じように華やいで…。
今ではこの桜と同じ有様だと自嘲します。
今夜は綺麗な月夜です。つい、かの源氏の光る君と朧月夜の例しが浮かんできます。
朧月夜にしくものぞなき…と呟いたその時、背後から声を掛けられたのですた。
775粗筋中将8/8:2007/10/04(木) 22:34:05 ID:???
振り返ると、桜の陰から主上が現れました。
思わぬ人に綺羅君は、つい殿上人に戻り、主上一人の夜歩きは危ないと奏上します。
けれど、主上は、一人歩きは得意なのだと続けます。
即位してからも、事が知れれば首がとぶと怯える近侍の者をせかして内裏を抜け出し、北嵯峨にまで行ったことがある、と言うのです。
綺羅君はハッとしました。
主上は、今でもあの時のことを覚えてらっしゃるのか…3年も前の、北嵯峨でのことを…。

今さらながら、自分は主上のことが好きだったのだと気付きます。ずっとずっと好きだったのだと。
しかしどうせならお腹の御ややが主上の子なら良かった、
身を隠すにしても好きな人の御ややを身籠ってるほうがまだしもロマンティックなのに、と思います。
よりによって綺羅君を男だと思っているすみれの御ややです。情けない話です。
渡された紫水晶の数珠のことも思い出します。せめてもの主上とのつながりに持っていこう…そう考えていたときでした。
主上は、その北嵯峨で、美しい姫と出会ったと綺羅君に話します。
その姫がもう誰であるかは知っているが、あの姫は綺羅君ではないかと思えてしょうがない、と…。
確かに、あの時会ったのは綺羅君なのです。弟の綺羅姫ではなく、あの時主上と会ったのは…。
しかし、綺羅君はそれを否定する以外ありませんでした。
それは自分ではない、自分は男だから、姫にもなれない…押し出すように話しました。
けれど時々、姫として育ちたかったと思う、とも言いました。
今となってはそれも夢…

その時一陣の風が吹き、主上は顔を覆いました。
目を開けるとそこにはもう綺羅君の姿はなく…

そして綺羅君の消息はその夜から跡絶えたのでありました…。
776粗筋中将:2007/10/04(木) 22:35:46 ID:???
次回、土曜朝更新予定
777マロン名無しさん:2007/10/05(金) 00:27:46 ID:???
せ、切ない…
778マロン名無しさん:2007/10/05(金) 02:04:10 ID:???
ドタバタ勘違い合戦のはずだったのに・・・
なんでこんな感傷的なヒキに

頼りにならん登場人物の中で、弟は役に立つなあ
もう少しでドラえもんになれそうな勢いだ
779マロン名無しさん:2007/10/05(金) 03:38:46 ID:???
出来た御ややを元に戻す方法www
いつお腹が膨らむかわからないとかwww
綺羅君にとっちゃ一大事なんだろーけど、かわいすぐるwwwww

それにしても、なんで御やや出来たのは決定事項なんだ。
780マロン名無しさん:2007/10/05(金) 05:52:22 ID:???
姉弟そろって奇しの恋キターーー!!
物凄い勘違いスパイラルキターーーーーー!!!
家出キタキターーー!!!
分母増えたーーーー!!!!
781マロン名無しさん:2007/10/05(金) 10:40:52 ID:???
>780
>>分母増えたーーーー!!!!

そこかいwww

最後の桜のシーン、いいねぇ。切なすぎる…
782マロン名無しさん:2007/10/05(金) 11:17:40 ID:???
>>768>>774
ドンマイwww
783マロン名無しさん:2007/10/05(金) 15:56:39 ID:???
当の御ややの父親は何をしているんだ?
784マロン名無しさん:2007/10/05(金) 16:40:50 ID:???
>>783
父親てw
三の姫懐妊のときと同様、仮病引きこもりに一票。

個人的には宰相中将と綺羅にくっついてほしかったが、
事態がこうなったらもう無理だなorz
てか綺羅が「主上が好き」と明言しちゃったわけだし。
785マロン名無しさん:2007/10/05(金) 19:53:52 ID:???
覚悟の失踪なのかな<消息不明

でも髪伸びるのに2〜3年はかかりそうだしな
786マロン名無しさん:2007/10/05(金) 21:17:38 ID:???
>>785
なんか周りに顔出したってのが、最後の挨拶って感じだよね>失踪

でもこれで誘拐だったらそれはそれで新展開w
787マロン名無しさん:2007/10/05(金) 23:41:02 ID:???
綺羅、失踪準備であいさつまわり
↓           様子がおかしいと気付いて綺羅を備考する男有り

置き手紙を残し屋敷から失踪のためにこっそり出てきたところを拉致

拉致の際に女とバレ、拉致犯の別邸に連れて行かれ、正しい御ややのつくり方実践講座。

そのまま愛人として別邸で暮らす(パパンや弟等は失踪と思い込んだまま)

ということで、すみれ男に拉致されて愛人コースを考えてみた。
バラすより倒錯愛を面白がりそうだし
788マロン名無しさん:2007/10/06(土) 00:57:33 ID:???
少女漫画でそれはない
789粗筋中将1/8:2007/10/06(土) 09:07:58 ID:???
綺羅君失踪のニュースはあっという間に内裏を席巻いたしました。
何しろ宮中のアイドルが突如消えてしまったのですから、誘拐だ神隠しだとウワサがウワサを呼び大混乱。
しかし綺羅君の文机の上には、愛用していた名笛がふたつに折られ紙に包まれていたほか、身の回りのものがきちんと整理されていたことから、
覚悟の失踪に違いないという見解に落ち着いたのです。

さて、落ち着かないのはこの方々。
左大臣どのは三の姫密通の心配に綺羅君失踪のダブルパンチをくらって寝込み、
右大臣どのは、当代一と思っていた婿どのに逃げられたも同然のお立場上お倒れになり、
密かに綺羅君を慕っていた女房方も、慎ましやかにみなぶっ倒れになったのでした。
そして、世間一般の人々はあれほど未来の明るい方が何の愁いがあって姿を隠したのか、三の姫も心細いだろうと口々に言います。
当の三の姫は、自分のせいでいなくなってしまったのだと自責の念にかられているのでした。

一方主上は、左右の大臣家から捜索願が出されてなお、未だ綺羅君の行方がわからぬことに、苛立ちを感じ初めておりました。
縁の寺や山荘、都のすみずみまで心当たりは捜したと報告がされているとはいえ、手がかりの一つもつかめていないのです。
帝の身では、一貴族の探索にかまけるわけにもいかず、ただ無事でいてくれと願うことしかできませんでした。
790粗筋中将2/8:2007/10/06(土) 09:09:04 ID:???
そして、弟の綺羅姫は…
失踪前夜に綺羅君が宣耀殿にやってきた時、様子がおかしかったことを思い出します。
それに気付いていながら、どうして何もしてやれなかったのだろう、と後悔の念にかられていました。
十四の年に出仕して以来、綺羅君は一度も人を頼ったことはありません。
女の姿は嫌だの出仕したくないだの、不満ばかりぶつけていた自分とは違い、
女の身ではいろいろとつらい事もあっただろうに、総て一人で処理し、誰にも泣き言さえ言わず…
その綺羅君がわざわざ綺羅姫を頼って相談に来たのに、語気荒く綺羅君を叱ってしまったのです。
何もあんな言い方をする必要はなかった、と綺羅姫は自分を責めています。
御ややのでき方すら知らない綺羅君が、単純にもとに戻す方法があると思っても不思議ではない、今ではそう思えるのに、
どうしてあの時もっと親身になれなかったのか…。
自分さえしっかりしていれば、とつい呟いたところを、小百合に聞かれます。
そして小百合は、乳姉妹の自分を遠ざけてまで相談に来た綺羅君の、たった一人の姉君の味方にならなかった綺羅姫を詰ります。
病気の時は女東宮を大切にするあまり見舞いにも帰らず、綺羅君失踪の今でさえ、捜しに行こうとしない綺羅姫を。
今こそ弟君として、草の根を分けても捜し出そうとは思わないのか、と小百合は最後には泣き出してしまいました。

綺羅姫とて、姉君を心配していないわけではないのです。男に戻り、捜しに行くことも考えました。
けれど、あの女東宮が里下がりを許すわけはないでしょうし、無理にでも捜しに行くならば、尚侍まで失踪、ということになります。
そうなれば、おもうさまの心臓も今度こそ壊れてしまうでしょう。
それでも運良く綺羅君を見つけられたとしても、綺羅君が二人居ることになり、
入れ替わるにしても綺羅君の髪がある程度伸びるまで隠れているわけにもいきません。
綺羅姫は考えてはいるのですが、どうもいい方法などないような気がしてしまいます。
そう弱音を吐くと小百合に叱られてしまうのですが。
791粗筋中将3/8:2007/10/06(土) 09:10:11 ID:???
綺羅姫は、女東宮のお召しにより梨壺に上がり碁をうっていました。
しかし、考えるのは綺羅君を探し出す方法、どうしても上の空になってしまいます。
そんな綺羅姫を相手にしていては女東宮も面白いわけはなく、毎日毎日周りの暗く沈みきった雰囲気にも嫌気もさし、
つい几帳を倒しひと暴れしてしまうというものです。
けれど、尚侍は咎めるでもなく、ただ暗い表情で謝るしかありません。
女東宮も、御所中が暗いのは、綺羅君がいなくなったからだとわかっています。
兄上であらせられる主上も、尚侍以上に心配し、胸を痛めているのですから。
それに、今日の主上はずい分とお怒りのようでした。梨壺にまでいらして、とても怖いお顔をしてらしたというのです。
三の姫が許せない、と仰ったとか…。
どういうことかわからず、綺羅姫は訊ねます。
やはり知らなかったのか、と女東宮は綺羅姫に教えることが嬉しそうです。
そして、三の姫のお腹の子は綺羅君の子供ではないらしい、と告げました。

昨夜、盗賊取り締りのために京中に出ていた検非違使が文を拾ったのが発端でした。
中を見ると、綺羅中将が云々と書いているので、何か手掛かりになるのではと思い、内裏に届けたのでした。
ところがなんと、それは三の姫が男に宛てた文で、お腹の子が綺羅君の子ではないことが書かれていたのです。
相手の名は書かれていなかったのでわからないのですが、都中が今この噂でもちきりです。
主上は、綺羅君が妻に裏切られたので失踪したのだろうと仰っていたのだと…。
792粗筋中将4/8:2007/10/06(土) 09:11:15 ID:???
三の姫の密通が知られてしまいました。
相手の男が誰かわからない以上、三の姫は噂の矢面に立たされることになります。
主上は、三の姫の浮気が原因で綺羅君が失踪したと思っていますが、そうではありません。
綺羅君は三の姫のために、相手の男を捜そうとしていたのですから。
綺羅姫は、自分達のような姉弟に関わったばっかりに失踪の原因まで負わされる三の姫こそ被害者だと同情を禁じ得ません。

そう弟君が思案している頃、ここ右大臣家では、右大臣さまが三の姫に激昂しておりました。
当代一と言われた婿どのの何が不満だったのだ、恥知らずだ、世間で右大臣さまが面目を無くしたのはお前のふしだらのせいだと泣いています。
けれど、どれだけ強く言っても三の姫は頑として相手の名前を口にしません。
相手の名前がわかったらその男を成敗し、お前を尼にすると右大臣さまは頭に血を上らせるのでした。

さて、綺羅君失踪と聞いて真っ先にぶっ倒れたのは宰相中将その人でありました。
何しろ三の姫と通じ子まで儲け、綺羅君にまであのようにあらぬ振るまいをしかけたのでうから、
綺羅君の失踪は自分のせいでだ、あの事で世をいといどこぞで出家でもしていたら、とすっかり落ち込んでおりました。
ましてやそれに輪をかけての三の姫の騒ぎに、生きた心地もせぬ宰相中将の毎日なのでありました。
今では都中が三の姫の噂に満ちています。姫の口をついて、自分の名が知れ渡ってしまうかと思うと、思わず背筋が凍るのでした。
確かに
悪いのは自分であることはわかっています。三の姫とのこともこれ以上隠しだてする気はありません。
けれど、綺羅君が失踪している以上、どんな顔で名のりをあげろというのか…思い悩み、眠れない夜の続く宰相中将でした。
793粗筋中将5/8:2007/10/06(土) 09:12:16 ID:lnfHR5Zg
その夜、外は嵐でした。風が強く、雨が激しく、雷が鳴っています。
相変わらず眠れない宰相中将は、自室で写経をして過ごしていたのですが、その時かすかに外に人の気配がしました。
気のせいかとも思われたのですが、声がしたので、まさかと思い戸を開けます。
すると、袿を被っただけで風雨にさらされた三の姫が立っているではありませんか。
宰相中将が駆け寄ると、腕の中に倒れるように抱きつき、声を上げて泣きました。
右大臣さまが、相手の名を言わぬならと、今すぐにでも縁の寺で尼にさせると言うので、逃げ出して来たのです。
お付きの女房の美濃は、文使いをしていたために右大臣さまに遠ざけられました。
けれど美濃にも、こうなっても助けに来てくれない中将は当てにならない、所詮名うての遊び人だからと言い、三の姫は孤立無援なのでした。
この冬の嵐の中、たったひとりで三の姫は宰相中将のもとへ走ってきたのです。
何もしてやれず、ここまで追いつめてしまった、けれど自分を信じ、自分だけを頼ってやって来た姫を、中将はしっかり抱き止めます。
邸の中に三の姫を入れると、姫は安堵と雨に打たれた熱で倒れてしまいました。
宰相中将は、状況を飲み込めていない女房を叱り、薬師を呼ぶよう言いつけます。
そして、真っ直ぐ前を見て言ったのです。「俺の妻だ…!」と―――。
794粗筋中将6/8:2007/10/06(土) 09:13:17 ID:???
同じ夜、綺羅姫の住まう後宮では、何度も落ちる雷に女房達は怖がり叫び、右往左往しておりました。
恐怖に怯える女房達を見て、綺羅姫はふとある人が心配になります。
そして、青ざめる小百合に、梨壺に向かう準備をさせるのでした。

梨壺でも、女房達は嵐の夜に怯えていました。訊ねると女東宮は寝所にいるようです。
行ってみると、寝床はからっぽ。
部屋の隅で涙目で震えている女東宮がいたのでした。
まさかあのお転婆がこわがっているとも思えませんでしたが、日ごろの元気さはどこへやら、
何ともいい格好だとつい意地悪を言ってしまう綺羅姫です。
その時、いっとう大きな雷の音がしました。
女東宮は、思わず尚侍に抱きつきます。
腕の中で震える女東宮をしっかりと抱き締めていると、嵐に怖がりもせず駆けつけ、好きな姫を抱き締めている男の実感が湧きあがります。
すると、つい力が入っていたのでしょうか、女東宮が苦しがりました。
それはまるで女の人のような力ではないようだ、と言われてしまいます。
女東宮にとっては何気ない一言ですが、綺羅姫にとっては大事なことです。正真正銘の男なのですから。
そしてつい女東宮に、もし自分が男だったらどうするか、と聞いてしまいました。
すると、もし綺羅姫が男だったら、北の方になってもいいと色よい返事がもらえました。
そうなれば東宮もやめられるし、尚侍は嫌いではないと女東宮は無邪気に綺羅姫に抱きつきます。

綺羅姫は、告白するなら今だ、と心を決めました。
このまま女で通すなどできっこないことですし、進退極まって綺羅姫まで失踪するハメにならないとも限りません。
女東宮さえ味方になってくれれば、小百合の言う通り男に戻って綺羅君を捜すことだって出来ます。
それに、もし姿を消すことになっても、初恋の姫にくらいは本当のことを知っていて欲しい…
そう思い、綺羅姫はとうとう打ち明けたのです。
綺羅姫が本当は男であることを…。
795粗筋中将7/8:2007/10/06(土) 09:14:19 ID:???
女東宮は、目を丸くして驚きました。
後宮一の美人で、しとやかで、女らしい綺羅姫が男だと言われても、急には信じられずパニックになる気持ちもわかります。
オカマさんだったのかと言われたりもしましたが、これには事情があるのだと説明します。
けれど知ったからには、綺羅姫の北の方にならなければいけないのだ、と条件を出すのも忘れずに。
すると女東宮は顔を赤らめ、大切にしてくれるならなってあげる、と承諾します。
綺羅姫の内心は有頂天です。
決まれば女東宮からの質問攻めでした。
いつから女なのか、左大臣や綺羅君や小百合もグルなのか、どうしてオカマのふりなのか、綺羅姫はビョーキなのか、などなど。

嵐の翌朝は、一面の雪景色でした。
内裏に積もる雪を見、主上は綺羅君のことを思い出します。どこであの嵐を凌いだのでしょう。気がかりでした。
綺羅君と別れた最後の夜、紫宸殿の桜の木、月明かりの下、風の中…どこまでもはかな気だった綺羅君―――
今では遠い夢のような気さえしてきます。
あの時綺羅君は、『時々姫として育ちたかったと思う』と言っていました。
その言葉はきっと三の姫に裏切られた男としての立場に嫌気がさして出たものでしょう。
主上は、自分の心を見透かしていたのではないかと思っていたことを思い出し、自嘲気味に笑います。
その時、殿上の間が騒がしくなりました。
女房に聞くと、どうやら綺羅中将が…宰相中将が…などと噂が立っているようで、
まさか綺羅君の手掛かりがつかめたのではないか、と、急遽兵部卿宮を召し、その話を聞きだそうとしました。
796粗筋中将8/8:2007/10/06(土) 09:15:21 ID:???
主上の御前に召された兵部卿宮も、どうやら噂は耳に入れたようです。
初めは勿体ぶっていましたが、その噂の内容を主上に告げました。三の姫の相手の男がわかったというのです。
産み月間近の身で右大臣家を抜け出し、あの嵐の中をたったひとり相手の男のもとに走ったことまで伝わっていました。
その男の相手は、意外といえば意外、あり得るといえばこれほどあり得る人はいない、宰相中将―――。

その名を聞き、主上は怒りに震えました。宰相中将は、綺羅君の一番の親友だったはずなのですから。
確かに、華やかな分いくらか軽薄なところもありましたが、綺羅君と並ぶ宮廷での人気は、あの人柄の良さにもよるものでした。
それが、親友の妻を寝盗り、その親友の綺羅君を失踪に追いやった…。
半年以上前から山籠りだの病だの出仕も滞りがちだったことも今になれば腑に落ちる、と兵部卿宮は話を続けます。
それにしても解せないのはあの一件、綺羅君にあのような振るまいをしかけたのは、事の露見を恐れての口封じだったのかと
憤っている兵部卿宮の話はもう主上の耳に届いていません。
主上は立ち上がると、側に居る殿上人に言いつけました。
宰相中将の殿上の札を削るように、と。

綺羅君失踪の原因が宰相中将にあると思ってしまった主上の怒りは計り難く、宰相中将は殿上の差し止めを言い渡されてしまったのです。
殿上を許されてこそ一級の貴族として認めれられる社会です。
自業自得とはいえ宰相中将には、最も不名誉で辛い裁断が下ったのでありました。
797粗筋中将:2007/10/06(土) 09:17:22 ID:???
次回月曜夜更新
798マロン名無しさん:2007/10/06(土) 09:47:11 ID:???
きたああああああああああああああ再開北アああああああああああああ http://www.vipper.org/vip634638.jpg


    @@@@@ハンタ大再開祭りは今夜9時になります!@@@@@

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@@@@@その時やることは・・・VIPPER諸君ならもう分かっていますね?@@@@@

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799マロン名無しさん:2007/10/06(土) 12:28:41 ID:???
オカマカミングアウトキターーー!
800マロン名無しさん:2007/10/06(土) 13:34:08 ID:???
何か嵐の夜に、綺羅姫も宰相中将も男を上げた感じw
801マロン名無しさん:2007/10/07(日) 10:44:20 ID:???
すみれの人は普通に重用されてんのね
802マロン名無しさん:2007/10/07(日) 12:47:29 ID:???
宰相中将がやっと覚悟決まったみたいでヨカッタ

すみれの人て皇族だし、主上の従兄とか叔父さんとかなのかね
803マロン名無しさん:2007/10/07(日) 22:06:52 ID:???
すみれの人とかいうと、楽屋裏にすみれ届ける人とかみたいだな、おいw
804マロン名無しさん:2007/10/08(月) 04:44:11 ID:???
紫のすみれの人
805マロン名無しさん:2007/10/08(月) 18:16:42 ID:???
除籍って、プライベートなスキャンダルでそんな重い罰になるもんなのか…
806マロン名無しさん:2007/10/08(月) 18:21:33 ID:???
プライベートとは言ってもみんな公人だからね。
今で言うと
厚生大臣が超仲良しの外務大臣の嫁を寝取って孕ませて
しらばっくれてたようなもんだろ?
立派に処分対象じゃね?
807粗筋中将1/6:2007/10/09(火) 11:30:16 ID:???
都のはずれにある縁の邸で謹慎している宰相中将は、さすがに覚悟はしていたものの除籍の報せはこたえました。
けれど、自分が綺羅君にあのような振る舞いをしなければ、綺羅君とて失踪はしなかっただろう、と思うと、改めて責任を感じます。
三の姫は同じ邸で熱の養生をしていました。
やはり殿上差し止めになった中将を心配していますが、三の姫とて右大臣さまに勘当された身。
宰相中将は、三の姫を労わり、これ以上不幸にしてはいけない、三の姫を幸せにすることが綺羅君への精いっぱいの償いになると思っていました。

さて、この事件で肩透かしを食ったのは都の人々でありました。
何しろ綺羅中将が熱愛していた右大臣家の箱入り娘三の姫と、今をときめく宮中の華の公達宰相中将の密通事件であります。
ましてやそれが原因で主上のお気に入り関白左大臣家の綺羅中将が失踪中ともなれば、
ふたりが悪意の噂の渦中に引きずり出されることは必至だったのですが―――
宰相中将が一言も弁解しなかったことや、産み月間近の身体で嵐の中を走った三の姫たちの思わぬ潔い態度に
非難の追い討ちをかけることもできず、総じて同情的、もしくは冷静な判断が下されたのでした。

それから数日後、三の姫は無事姫君を出産しました。
右大臣さまは孫かわいさに三の姫の勘当を解き、主上は右大臣さま宛てに産養のお祝いをお贈りになりました。
それはつまり宰相中将の除籍も解かれたと言っていいわけです。
宰相中将の還殿上の日、主上は中将を御前に召しました。
参上した宰相中将を見、主上は驚きます。以前の華やかさや多少の軽薄さ、生意気さなどは見られず、すっかり面変わりしていたのです。
宰相中将の苦悩が見受けられる主上でした。
主上に声を掛けられ、宰相中将は本来ならば出家してしかるべきなのだが、三の姫や子のことを思うとそれも出来ず、
今はただ三の姫を一人の人として慈しみ尽くすことが、綺羅君への唯一の詫びになると神妙に応えました。
808粗筋中将2/6:2007/10/09(火) 11:31:37 ID:???
宰相中将の籍も戻り、これで全ては元通りです。いなくなった綺羅君を除いては―――。
主上は、梨壺へと突然向かいました。
梨壺には、少なくとも尚侍がいます。綺羅君そっくりと言われている尚侍が…。

主上はここのところ毎日のように梨壺に来ていました。
御機嫌伺いとは、いったい誰の御機嫌が気になるのやら、とさすがの女東宮も嫌味な口調です。
主上が尚侍目当てで梨壺にいらっしゃることは、宮中でも噂の的。
綺羅姫の後宮での生活も、主上の再三のお越しで危うくなっているのです。
以前もよく梨壺へいらっしゃったとはいえ、どちらかというと綺羅中将とばかりお話をされていたのですが、
今のお目当ては絶対に尚侍だ、と女東宮は綺羅姫に当たります。

その日は特に女東宮の御機嫌は悪く、梨壺に主上がお越しになってすぐ、綺羅姫と主上を二人きりにしました。
主上は、女東宮の機嫌を損ねてしまったことに苦笑し、先ほど宰相中将が還昇したこと、その席で改めて綺羅君に謝罪していたことを伝えます。
そして主上は、ふと感傷的になったのか、尚侍を出仕させた理由について語りだしました。
あの頃綺羅君は三の姫に夢中で出仕の日が減り、その仲を妬んでいたこと、
綺羅君の大切にしている妹姫を出仕させればそれが気に掛かり三の姫にばかりかまけていられなくなるだろう、
以前のように宮中に…主上の下に綺羅君をとどめることが出来ると考えたからだと言うことを。
綺羅君は、そんな主上の気持ちを知ってか知らずか、失踪の前夜、姫として育ちたかったと言い置いていったことも話しました。

突然の話に、黙って聞いていた綺羅姫は混乱しています。
綺羅君は、主上が好きだったのか?主上も綺羅姫を少なからず思っていて―――
けれど、主上の前では綺羅君は男だったわけで、そうすると主上は男の綺羅君を?
綺羅姫は顔が青ざめてしまいます。
809粗筋中将3/6:2007/10/09(火) 11:32:38 ID:???
何も言わない綺羅姫に、主上は本当に恥ずかしがりでいらっしゃる、と言いますが、
綺羅姫としては、迂闊に話すと最近低くなってきた声を悟られてしまいそうで、それを恐れているところもあるのでした。

なお黙っている綺羅姫に、主上は語りかけます。あるところで美しい姫と会ったことを。
左大臣家の子息がその姫に似ているというので元服出仕を急がせたものの、綺羅君があまりにもその北嵯峨の姫に似ていて、
すっかり眩惑してしまったと。
あの時の姫が綺羅君ではないかと思う気持ちが強かったのか、綺羅君を女性のように見ていたふしがある…。
そこまで聞いて綺羅姫は、主上はその姫に似ていたから姉の綺羅君に好意を持っていたのかと思いますが、
当の主上はその後に、綺羅君を通して綺羅尚侍を見ていたのかもしれない、と告げました。
これには綺羅姫も腰が抜けてしまいます。主上が好きなのは北嵯峨の姫…綺羅君で、綺羅姫は…
すると、突然沈黙が訪れました。
不思議に思った綺羅姫が几帳の陰から主上を伺うと―――主上がじっとこちらを見つめています。
綺羅姫は貞操の危機を感じました。押し倒されたら体格からいっても逃げられるはずがありません。
スッと立ち上がった主上に綺羅姫は身構えましたが、どうやら今日はこれで梨壺から帰るようです。

主上が帰られるとすぐさま女東宮が飛び込んできました。
しんみりと話をしていたように見えたのが気に入らないようです。綺羅姫は結婚したら尻に敷かれることが容易に想像できました。
810粗筋中将4/6:2007/10/09(火) 11:33:39 ID:???
綺羅姫は、女東宮にさきほどの主上の話を聞かせました。
すると、どうやら3年前に北嵯峨で理想の乙女に出会った話を女東宮は知っているようです。
御忍びで嵯峨の女院さまに会いに行かれた時、この世の人とも思えない清らかな姫にお会いになったことを聞いたそうです。
3年前といえばまだ元服前で、あの姉さまがどうやったら清らかな理想の乙女になるのだと不思議ですが、
確かに北嵯峨には左大臣家の別荘があり、その乙女が綺羅姫でない以上、綺羅君のことを指しているはずです。
なぜ主上が勘違いをなさっているのかはわからないものの、
とにかく主上はずっと前から姉の綺羅君が好きで、綺羅君も、主上に残した言葉からして主上を好きだったことが推測されます。
じゃあ主上は、綺羅君が女だということをご存じなのでしょうか?そこが今ひとつわからないのですが、
綺羅君が主上を好きなことが事実なら、それが綺羅君の失踪の原因に繋がるのでしょうか。
綺羅君失踪の意外とも思えるロマンチックな原因に思わず笑ってしまう弟君でありました。

―――が、しかし、主上の綺羅君への思いは、そのまま綺羅姫へと向けられたのであります。
尚侍を出仕させたときは、尚侍が目的ではなく綺羅君さえ以前のように側にいてくれればと思っただけで、
その綺羅君はもう帰って来ないのかもしれないのです。
その寂しさにどうすれば耐えられるというのでしょう。
どうしてもう一人の綺羅を求めてはいめないわけがあるのでしょう。尚侍こそがあの北嵯峨の乙女だというのに。
綺羅君と三の姫の結婚の話が出た時、本心を明かして結婚をやめさせるべきだったことも後悔しています。
それを躊躇したばかりに今回のような悲劇になってしまったのですから。
(今度こそ、わたしは意志を通そう)主上は強く思います。
身分・家柄を考えても、関白左大臣の姫尚侍ならば、摂関家の姫として后にも立てます。
あれほど案じていた後宮仕えさえうまくやっているのです。人見知りだろうと恥ずかしがりだろうともう構っていられません。
(わたしは何を望んでも許される身なのだ…!)
811粗筋中将5/6:2007/10/09(火) 11:34:46 ID:???
尚侍女御入内は、その日の内に議題に上げられました。
突然のことに会議の場はざわつきます。
なんとか貴族たちが急なことで可決できないと後日に延ばそうとしますが、主上の有無を言わさぬ表情にそれ以上口を出せなくなりました。
左大臣さまはというと、あまりに突然で無茶な話に、脂汗を流しながら思いとどまってもらおうと進言しますが、
「ただちに入内に良き期日を選ぶように」の一言で切り捨てられました。
入内などとんでもないことです。尚侍が男だとバレてしまいます。
周りの貴族達が、寝耳に水のことながらめでたい話だと左大臣さまを祝福しますが、左大臣さまは、泡をふいてお倒れになったのでした―――。

宣耀殿で綺羅姫が小百合と香合わせをしているところに、主上がこちらに向かっていることが伝えられました。
女東宮のおられる梨壺にはよくいらっしゃっていたもものの、宣耀殿に直接来るなど初めてのことです。
小百合たち女房が総出で主上のお召しをさえぎろうとするのですが、それも甲斐なく綺羅姫の下へと乱暴に入って来られました。
綺羅姫は、几帳を隔て背中を向けて顔を覆っていたのですが、その背中に主上が言いました。
「あなたの、女御入内が決定しました」
綺羅姫は耳を疑いました。
けれど主上は話を止めません。
そして最後に、決して早まった愚かなことをしないように願います。
もしそれを約束してくれないのなら、入内まで待てず、今すぐ几帳を取り除くように命令する、と。
「わたしはそれを許される身だから」
この一言に、綺羅姫はそんな目に遭っては堪らないと必死になって、約束すると答えます。
それを聞いた主上はホッとし、入内する日を楽しみにしていると穏やかに言い残し帰りました。
812粗筋中将6/6:2007/10/09(火) 11:39:43 ID:???
主上の姿が見えなくなって、綺羅姫に改めて震えがきました。
失神するのをなんとか持ち堪えた綺羅姫のもとに、女東宮と小百合が一体何事だったのかと飛び込んで来ます。
そして、綺羅姫の女御入内が決まったことを伝えると、二人とも真っ青になりました。

何がなんだかわからないまま「約束」をしてしまいましたが、
一息ついて落ち着いて考えると、早まるも何も男の綺羅姫が女御入内という何やら悪夢を見ているような弟君ですが、
すでに尚侍が女御として入内する事はゆるぎない決定事項であります。
このまま男同士の結婚と相成るわけですが…
さても進退の極まった綺羅尚侍でありました。
813相関図中将:2007/10/09(火) 11:43:01 ID:???
      ┌────┐
     藤左      右
     原大      大
夢   顕臣   政  臣         _____
乃 〒 通  〒 子  ├―┬─┐   |      |
   綺    綺     三 二  弘  主   麗   女  兵
   羅    羅     の の  徽=  = 景   東  部
   尚    中     姫 姫  殿  上   殿   宮  卿
   侍    将           女      女    ・   宮
  (男)   (女)    ‖  ‖  御  ‖   御   久  ⌒
              宰  権     梅       宮  主
              相  中     壺          上
              中  将     女          の
              将        御          は
                                   と
                                   こ
814粗筋中将:2007/10/09(火) 11:44:04 ID:???
次回水曜夜更新予定
815マロン名無しさん:2007/10/09(火) 11:59:52 ID:???
綺羅姫貞操のピンチw
816マロン名無しさん:2007/10/09(火) 13:02:18 ID:???
「あの姉さまが叶わぬ恋に絶望して失踪」でプッと笑う弟くんの顔が面白すぐるww
817マロン名無しさん:2007/10/09(火) 13:23:53 ID:???
主 上 は す み れ を 覚 え た
818マロン名無しさん:2007/10/09(火) 14:10:23 ID:???
>わたしは何を望んでも許される身なのだ…!

あー、やっかいな人だなー
というか、主上必死だなw
819マロン名無しさん:2007/10/09(火) 23:05:06 ID:???
主上とうとうやらかしてしまったなw
もはやどっちでもいいのかよww
820マロン名無しさん:2007/10/09(火) 23:21:16 ID:???
>わたしは何を望んでも許される身
帝ktkr
821マロン名無しさん:2007/10/10(水) 00:16:22 ID:???
お主上www
暴走してるw

綺羅君が失跡してどれくらい経ってるのかな
822マロン名無しさん
>>821
どれくらいだろうね?
綺羅君失踪前は、秋っぽかったね。いや、あの葉の散り様は冬か…
綺羅姫男カミングアウトの嵐の夜は翌日に雪になったから冬?
そっから先がわからんな…