ハーメルンのバイオリン弾き連載中 第10楽章

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第139楽章「パンドラ」

その肉体を魔に変え、一撃に全てをかけケストラーを砕いたハーメル
(よくやったなハーメル…たとえその身が魔族じゃろうと…お前は…間違いなく人間じゃよ…)
涙を流しながらハーメルと抱擁するオーボウ
そこに、ギータを倒したトロンが合流する
「大丈夫かあーー!!なんか凄まじい荒れようだったけど…どうなったあー!!」
ケストラーを倒したのかと聞くトロンに微笑むハーメル
「おのれ魔族めーーー!!シーザースラッシュ!!」
「ギャアアあああああああ!!!」
一回り成長したトロンの、父と母の想いをのせたシーザースラッシュがハーメルを斬り裂く
「どうだこれが超新感覚なシーザースラッシュだ!どうだ痛いか!命乞いしろ!どっちみち助けんがなあーー!!」
母の剣でハーメルが串刺しにされていたその時、上空からサイザーとライエルが現れる
「無事かいハーメル!!」「ハーメル!!」
ケストラーの光線から間一髪で上空に逃れて生き残っていたのだ
2人の無事を確認し胸をなでおろすハーメルとオーボウ
(ハーメル…よかったな…お前が…守ろうとしていたものが…今…)

「ああ!こんな所に魔族がいる!」「あのれバケモノめ!!」「シーザースラッシュ!!」
「ケエエエエエエエ!!!!」
超新感覚なシーザースラッシュと赤い羽根の天使の鎌で斬り裂かれるハーメルだった

「それはハーメルじゃ!!ケストラーの戦いで…魔族化してしまっただけなんじゃ!!」
必死に訴えるオーボウの姿に気付き驚くライエル
「なんだこの魔族!!体が半分しかねーのにまだ生きてるぞ!気持ち悪りィ!!」
どこまでも空気の読めないトロンとサイザーによってたかって攻撃されるオーボウだった
「このバケモノめ!『ボクは愚かで醜い…何もできなかったダメ男です』と言え!!」
32/4:2007/06/11(月) 21:06:55 ID:???
ライエルの説得により、ようやく半身の魔族がオーボウだと理解するサイザーとトロン
しかし、オーボウは既に天に召されかけていた
(パンドラ様…オカリナ…わし…立派に戦ったよね…)
「わーー!オーボウが天に召される!!」「オカリナが迎えに来とる!!」「来るなオカリナ!!」

なんとか一命をとりとめたオーボウとライエルたちだったが、ただならぬ気配に気付く
それは、怒りに身を任せて邪悪な気を充満させるハーメルの魔気
ハーメルが今…ケストラー化しようとしている…大魔王が誕生しようとしている
「何っ!?私らがどついたりしたからか!?」「そんなアホないざこざでか!?」
そんなんなられては困ると、ハーメルの頭に刺さったままの剣を引っこ抜くトロン
頭から魔の血が抜けたことにより、我を取り戻すハーメルだった


何はともあれ、ケストラーを倒したことを知り、喜ぶライエルたち
ハーメルは、命を懸けて仲間を勝ち得たのだ
仲間に囲まれ、共に喜ぶハーメルを見ながら、微笑むオーボウ
(終わったな…お前の長い…長い戦いが…お前の子供の頃より続いた…)

その時、水晶が砕け、パンドラが解放される
「……!!か……母さん!!!!」
駆け寄り、抱きとめ、叫ぶハーメル
「母さん!!母さ…ん!!母さん!!母さん母さん!!!!」
悲痛な叫びをあげながら、泣きながら、15年という歳月を冷たい水晶の中で過ごした母を呼ぶ
「ハーメルだよ!!母さんに会いたくて…ここまで来たんだよ!!色々あったよ!ここまで…大変だったんだよ!!」
でも、母の言ってた通り、信じあえる仲間ができた
「オレ…見た目は魔族かも知れないけど…人間らしくなれたんだよ…!!だから…」
動かない母に呼びかけるハーメルの体に、異変が起きる
翼が、両対の角が消え、人間の姿に戻る
「目を覚ましてくれよ!!母さん……!!!死なないで……!!」
43/4:2007/06/11(月) 21:07:48 ID:???
「どうしたの…?ハーメル…また…泣いてるの…?村の子に…いじめられたの…?」
目を開き、ハーメルに微笑みかけるパンドラ
「あんな小さかった子が…よく泣かされて帰ってきた子が…こんなに…大きくなって…」
これまで幾つもの苦しみや悲しみがあっただろう
自分のせいで、辛い仕打ちを与えてしまった
そう言って涙を流すパンドラに、笑顔で答えるハーメル
「母さん…オレ…そんなこと…気にしてないよ…だって…オレ…母さんの子…だもの…」
ハーメルを抱きしめ、その名を呼ぶパンドラ
「ハーメル!ハーメル!私の…坊や…!!」
魔の手によって引き裂かれた運命の母子が…永き時代を経て今ようやくその手に…

(お母さん…)
おずおずと、パンドラの前に立つサイザー
「サイザーね。いらっしゃい」
微笑むパンドラに、転ぶように抱きかかる
「前に抱きしめた時は…腕の中に収まる赤ちゃん…だったのに…」
サイザーの悲しみは、水晶を通してパンドラに伝わっていた
それでも、何もしてあげられなかったことを謝るパンドラ
「本当にごめん…でも、あなたも…大切な…大切な…私の…子なの」
サイザーの瞳から、涙が零れる
「……!か…母さん!!母さん!!お母さん!!お母さん!!」
オカリナの教えてくれた通り、母は、温かかった

ライエルに話しかけ、変わらず友達でいてくれていることに礼を言うパンドラ
照れるライエルの横で、ライエルとサイザーの仲をチクるトロン
慌ててトロンを制止するライエルとサイザー
その光景を見て、もうハーメルは一人ぼっちじゃないのだと喜ぶパンドラ
(そして…ずっとずっと…守り続けて…くれたのね…)
オーボウの横にいき、抱きしめる
「オーボウ…あなたは…いつもそうやって…傷だらけになって…私たちを…」
涙に濡れるその顔を見ながら、祝福するオーボウ
「良うございましたな…パンドラ様…」
54/4:2007/06/11(月) 21:08:42 ID:???
その時、何者かの腕が、オーボウの左胸を貫く
「コラコラ、オーボウ…私の后に手を出すとはいかんな…しかし随分と…にぎやかになったではないか」
肉が集まり、形を成す
「歓迎するよ…主賓として…この私の…復活祭のなーー!!」
それは、砕かれる前と変わらない姿で立つケストラー
自分の胸から生えた胸を見ながら、戦慄するオーボウ
(ワザとなのか?ワザとやられて…ハーメルに血を浴びるほど飲ませて…!いかん!ハーメル!このままでは…)
父を殺すだなんてやはりハーメルは魔王の子だと笑うケストラー
「ただまだ分かっていない…まだ愛だの情だのにほだされている…このオレがそれを…断ってやろう」
オーボウが粉々に砕け、地面に散る
その生首を掴みあげ、血を飲むケストラー
「どうだハーメル?お前を永きに渡って守り続けた、親父と思って親しんでいたヤツが砕け散って死んだんだあ!!」
オーボウの首を投げ捨て舌なめずりするケストラーの目の前に、パンドラが立ちはだかる
「卑怯者!!」
そう言って、ケストラーの頬を叩く
ケストラーのせいでみんなが傷ついている
「あなたのせいで!あなたのせいで!私は…あなたを…許さない!ケストラー!!」
その腕を掴み、口付けするケストラー
「お前はなんていい女なんだ…そしてね…!どこまでもオレに利用される…馬鹿で愚かで可愛い女…なんだろうねェ!!」
パンドラの首を刺し、その血を飲む
パンドラこそ最高の聖杯、最高の道具だったと喜ぶケストラーに魔力が漲り、右腕が生える
「最高だ!!最高に気分がイイッ!!!ハハハア!!」
ミイラのように痩せ細ったパンドラを、吸いカスだと言って捨てるケストラー
その光景に、サイザーが悲鳴のように吼える
「ウワアアアアアアアアア!!!!!」
舌なめずりしながらそれを見るケストラーだった
「娘か…」