理性のかけらもない時間。行為。行動。
喘ぎ続けた喉が痛い。狂ったように振り続けた腰も痛い。
身体が重く、微弱だが痺れている感覚がある。疲れきり、呼吸することすら辛い。
なのに──薬の効果はとっくに切れているはずなのに、身体の奥深くが、鈍く疼いている。
快楽を知らなかった肉が初めてそれを知って、忘れられないというように内部で蠢いている。
「……っ、…………っ…………」
視界が滲んで、目尻から何かが滑り落ちた。
あぁ、泣いているのだな、と月は思ったが、涙を拭うために指を動かすことも出来ず、嗚咽をあげる体力すらなく、ただ静かに涙を流し続けた。
ただ、この朝、竜崎はめずらしく月の元を訪れなかった。
無茶なセックスは、強いる側にも負担だったのだろう。
ここに捕らえられて初めて、朝から夕方まで竜崎に怯えることなく過ごせたのは、月にとって唯一の幸運だった。
◆◆◆
ひんやり。
冷たく湿ったものが額に触れたので、月は意識を浮上させた。
重いまぶたを少しずつ開いていくと──目の前に、今一番顔を見たくない男がいた。
「気分はいかがですか?」
穏やかな声に、月は何も答えなかった。
気分がいいはずがない。わかっていて聞いてくるのだから、本当に性格が悪いと月は思う。
答えなければ機嫌を損ねるかもしれないと思ったが、どうしても答える気になれなかった。
「少し熱があるようですね」