ずるり、ずるり。
床を這う。
到着したエレベーターに乗るために、月は必死で腕に力を込める。けれど──刺激に目覚めた下半身が、それを裏切る。
「降参するなら……ここ、思う存分、掻き回してあげても、いいですよ……?」
悪魔の囁き。
理性と本能が、月の思考を引き裂いていく。
「ね……痒いんでしょう……? 可哀想に……こんなに震えて……。降参するなら、今すぐ助けてあげますよ……?」
「……や、だ……っ」
かろうじて、拒絶の声を上げる。
閉まりかけたエレベーターの扉になんとか手をかけて、寸前で止めて開かせる。
「でも……ココ、痒くてたまらないでしょう……?」
「──アッ!」
グッと、何かが入り込んだ。──竜崎の指だ。
(やめてくれ、頼むからやめて)
浅く入り込んだ指が、痒みを帯びて震える内壁を軽く引っ掻く。その途端、えもいわれぬ快感が月の中心を這い上がり、手と言わず足と言わず、全身から力が抜けた。
「……気持ちいいんですか? お願いするなら、もっと奥まで……してあげますよ?」
優しげな声。親切を装った言葉。
全部嘘だとわかっているのに、月の身体が溶けていく。遅れて、追従するように思考も溶けていく
「どうするんですか?」
再びの、宣告。
「逃げるのか、降参するのか」
少し冷たい、嘲りの色をした、竜崎の声。
「降参するなら、可愛くおねだりしてみなさい」
くすくすと、笑いの混じる竜崎の声。
「逃げるなら……本気を出さないと、ね?」
──わかっているくせに。
もう、指一本動かせないことくらい、わかっているくせに。
わかっていたくせに。
最初から……月がやがて薬の力に抗えず、逃げられなくなることくらい、わかっていたくせに。
わかっていて、遊んだくせに──。
月の目から、大量の涙が一気に溢れ出した。
◆◆◆
「あああぁあぁぁ……!」
──耐えに耐えて、それでも陥落する時はあっけなかった。
とうとう疼きと痒みに堪えられなくなった月は、竜崎に屈した。
泣きながら助けて欲しいと訴えた月に、竜崎は満足そうに笑みを見せると、エレベーターの中に月を引きずり込み、口淫を強要した。