深夜1時、童守町では新しい送電ラインの稼動がスタートしていた。
その送電線にぶつかって困り顔の、天使のような女性。この人は一体…?
#200 偶然の女神 の巻
─「偶然」とは、極めて小さい確率の出来事が起こること。しかし、決して確率0ではないのである…
その日、ぬ〜べ〜クラスの生徒達は揃って趣味の悪い同じシャツを身につけていた。
偶然はそれだけに留まらない。テストの点やコンクール受賞者の名前、2年前に余所で失った指輪が
給食のジャガイモから法子の元へ返ってきたりと、信じられない偶然が立て続けに起こった。
偶然と言えば、世界では次のような例が報告されている。
・聖歌隊員が皆それぞれ別の理由で遅刻したところ、教会での爆発事故から全員が逃れる事が出来た。
・上から落ちてきた赤ん坊が男性にぶつかって助かり、1年後同じ場所で同じ赤ん坊が同じように落下し、
同じ男性にぶつかってまた助かった。
・グリーンベリーヒルに住む人を殺して処刑された犯人の名がそれぞれグリーン・ベリー・ヒルだった。
・映画「タイタニック」を観ていて、タイタニック号が氷山にぶつかった瞬間に屋根を突き破って巨大な
氷が降ってきた。
それにしても、どうして今日に限ってこんなに偶然が重なるのだろうか。まさか妖怪の仕業?
まさかと思ったぬ〜べ〜だったが、確かに校内に強い力を感じる。
外に確認に出てみると、冒頭の天使のような翼を持った美少女が宙に浮いていた。
霊能力のない生徒たちにもうっすらとその姿が見て取れる。「偶然の女神」らしい。
ぬ〜べ〜の心配をよそに、生徒達は面白がって彼女の後を追いかけて行った。
女神の行く先々で偶然が巻き起こる。
どれも他愛のないものばかりで、ぬ〜べ〜が安心しかけた時だった。
不幸な偶然の連鎖で、暴走した飛行船に広・郷子・美樹の三人が吊り上げられて上空に
連れ去られてしまった。
偶然の女神が呼ぶのは良い偶然ばかりではなかった。偶然など続けて起こす物ではないのだ。
女神はこれまで世界を転々としてきた筈なのに、なぜ今回に限ってこの町内に留まっているのか?
そう不満をぶつけるぬ〜べ〜の目の前で女神は町を出ようと試みるが、新しい送電線の高圧電流が
結界となって彼女の移動を妨げていた。
そうこうしている間に、その送電線に広達をぶら下げた飛行船が衝突しようとしていた。
送電を止めなければならないが、電力会社に電話していては間に合わない。
そこでぬ〜べ〜は、近くにいた人からラジコン飛行機を奪い取って送電線に衝突させた。
これにより送電線の安全装置が働き、電流はストップした。
感電は免れたが、まだ安心はできない。飛行船が送電線に衝突した弾みで、ぶら下がっていた三人が
落下を始めたのだ!
ここで女神の偶然パワーが物を言う!偶然事故を起こした縫いぐるみ会社と布団会社のトラックから
積荷の縫いぐるみと布団がこぼれ、落下した三人を受け止めたのだ。三人には傷一つついていない。
三人を救った偶然の女神は、電気がストップしている間に結界の外へ出て童守町を去っていった。
偶然の女神は今日も世界中を旅しているのです。いろんな偶然をおこしながら…