放課後、女子生徒が一人で教室に居残っていると背後から物音が聞こえた。
振り向くと、廊下の壁が人の形に盛り上がって動いていた。
#198 壁の中に潜む者 の巻
翌朝、この4年生は行方不明になっており、廊下には壁にめり込んだシューズだけが残されていた。
噂では、壁の中にいて人を引きずりこむ「壁男」の仕業らしい。20年前に殺人事件があり、校舎の改築で
壁に埋め込まれた人がいて、その霊が無差別に人を襲っているというのだ。
生徒が一人消え警察も来ているという事で、今日は授業は取りやめ生徒達をすぐに家に帰した。
警察は日中校舎内を調べたが、夕方には誘拐の可能性から捜査を町内に移した。
しかしぬ〜べ〜は、これが校内にいる霊の仕業である事を確信していた。
相手の霊気が強いので追跡も簡単だ。これは早々に解決できる…と思ったが、向こうから近づいてくる
霊気を感じるものの相手の姿が見えない。どこだ?
ぬ〜べ〜の背後から忍び寄る人影はやはり壁から盛り上がっている。
不覚を取ったぬ〜べ〜は壁男に背後から抱きつかれ、そのまま壁の中に取り込まれる。
身動きの出来ないぬ〜べ〜がなんとか繰り出したのは陽神の術。
気を練って分身を作り出す、ぬ〜べ〜の奥義だ。
壁男はぬ〜べ〜の体を何処かへと持ち去ってしまった。
なんとか陽神の術で脱出したぬ〜べ〜だが、困った事にこの状態では霊能力は何ひとつ使えない。
おまけに気を練る時間が充分でなかった為、出来上がった分身は小学生バージョンである陽神明
となってしまった。この不自由な状態で連れ去られた本体を取り戻さなければならない。大ピンチだ。
その時、背後の廊下に二人の生徒が侵入してきた。隠密行動のようだが、携帯したたまごっちがうるさい。
侵入してきたのは広と郷子だった。不意に再会を果たした明に#189での礼を言うと共に、いったいどこの
組の生徒なのかと疑問をぶつける。
話をそらしたい明は事件のことがあるからさっさと帰れと二人に注意するが、広はぬ〜べ〜が解決
してくれると言って反発。これに答え、明はぬ〜べ〜が行方不明だと口を滑らせてしまった。
これを聞いた二人が黙っている筈もなく、明と三人でぬ〜べ〜を探す事となった。
だが今の状態の明にとっては少し有難かったりもする。
壁男を見つけるにあたって、明は簡単な罠を用意した。空き缶を吊るした糸を廊下に張り巡らせ、
壁男が現れたら音がするように仕掛ける。そして現れた壁男にはアラームウォッチを取り付けた
ペーパーナイフを突き刺す。3分後に音がするようにセットしているので、これで壁男の巣がわかるだろう。
この明のアイデアに郷子は感心しきり、ずっと前から知っているような感じがすると頼りに感じている。
この様子を見ていた広はジェラシーを感じていた。1年しか違わないのに到底かなわないものを感じ
郷子も明の方に惹かれているのではと思い始めていた。
暫く待っていると、2階から空き缶の音が鳴り出した。壁男が現れたのだ。
2階に駆けつける明と広。明は下で郷子を守れと広に指示するが、広は意地になって明と張り合う。
2階に着いても何もいない。その時壁男は罠を裂けて外側の壁を移動していた。
階下から郷子の悲鳴が響いた。郷子はあっと言う間に壁男に連れ去られてしまった。
郷子を守れなかった事を広は激しく悔しがった。余計な意地をはったばかりに守れなかった、
明がカッコよすぎる為意地になって調子が狂ってしまったと後悔している。
その時、どこかからピーピーという電子音が聞こえた。郷子のたまごっちのようだ。
音を辿っていくと行き止まりに行き当たった。
壁を壊してみると、現れた空洞にはさらわれた三人が眠っていた。
物置だったものが設計ミスにより校舎の建て増しで入り口が塞がれた空間だろう。
郷子が意識を取り戻したところで、壁男が襲い掛かってきた。
ぬ〜べ〜の本体は壁男に遮られ、簡単には戻れそうにない。
明は郷子の守りを広に任せ、本当に郷子を守れるのはお前だけ、自信を持てと声をかけた。
急いで本体に戻りたい明だが、壁男が素早く思うようにいかない。
そこで一度やられたフリをしてその隙をつくことにした。
広達の眼の前で吹き飛ばされる明。残された広は覚悟を決め、郷子を守るため啖呵を切って身構えた。
スコップを振りかざして応戦するが、やはりかなわない。やられると思ったその時、ぬ〜べ〜が復活して
壁男を成仏させた。後に残されたのは人一人分の骸骨。
どうやら噂は本当だったようだ。殺人事件に巻き込まれた男が建設中の隙間に死体を埋め込まれたのだ。
警察に知らせなければ。
生徒達のお陰で助かったぬ〜べ〜は広達に礼を言うが、広は全て明のお陰と殊勝な態度。
対して郷子は頼りになる広にラブラブだ。
ところで、またしてもいつの間にか消えている陽神明を不思議がる二人。
でも、きっとまた会える。そう予感する郷子だった。