16.殺すか殺されるか
「おはよう亜子」
「…おはようアキラ」
あれから和泉亜子(出席番号5)と大河内アキラ(出席番号6)は眠りと見張りを交代してさらに時間を過ごしていた。
ゲームが始まり、およそ8時間。適度に休憩をとりつつ、場所をこまめに変えていた
市街地へと足を向けた二人は、とりあえず地図を見ながら今後の動きを考えようということになった。
地図を広げ、どこか安全な場所を探そうかと眺めている時に銃声が二発。
伏せていた顔をガバッと上げた。
「な、なぁアキラ……今の銃声やね」
「…」
空耳でも幻聴でもなければ、十中八九銃声であることは間違いない。
そろそろこの場所に長居するのも潮時か。
「ここ大丈夫やろか」
「逆に難しいよ。もしかしたら他のみんなも選んでるかもしれないしね、これ以上進むと禁止エリアになるから気をつけよう」
「…そうやよな」
亜子は出発時から異様なほど不安がっていた。
そして今も、地図などと一緒に入っていた選手会役員の名簿と黙ってにらめっこしている。
そうしなければ気がおかしくなりそうだった。何かで気を紛らわさないと今にも発狂しそうな勢いだ。
その点では寡黙で物事を冷静に見届けるアキラは頼りになる存在だった。
「なぁ」
亜子が不意に話しかけてきた。
「何?」
「ウチらが生きて帰る為には、みんな殺さんとあかんのよな…」
それを聞くとアキラの顔が強張る。
「多分、そうだと思う」
「…アキラは殺すん?」
そう問われて、アキラは一瞬ゾッとした。
今、自分は何を考えていた?武器のこと?自分は今誰かを殺すつもりになっていたのか。
「…」
正直、もしもの時は覚悟しているつもりだ…しかし。
「私も死にたくないよ。でも、こんなの間違ってるって思わない?どうして私たちがこんなことをしなきゃいけないの?」
「でも、こんな状況になってもうたで…」
もう、なるようにしかならないんじゃないのか。
「…」
二人はが、急に押し黙った。
「ウチらが生き残ってあの教室に戻れたとしても…もうみんなおらへんのよ…」
その言葉は発した本人にも、聞いていたアキラにも重く響いた。
【残り28人】