─紫鏡の七不思議─
昔、一人の女の子が自分のお気に入りの手鏡にふざけて紫の絵の具を塗った。
ところが、不思議な事にいくら洗っても決して紫色が落ちなかった。
自分の魂のこもった鏡を紫色に塗る…実はそこには恐ろしい意味があったのだ。
女の子はその後思い病気にかかり、「紫鏡、紫鏡」と呟きながら死んだ。
#136 死を招く紫鏡 の巻
以来、紫鏡の話を20歳になるまで覚えていると死ぬとか呪われるとか…様々な噂が飛び交い、
全国でも有名な学園七不思議の一つとなっている…いったい紫鏡とは何なのか…
図画の時間、生徒達は向き合って互いの顔を描いていた。
コンパクト片手に化粧直しする美樹を描くのは彼女に片思いしている克也。
克也が気合を入れて書き上げたのは、美樹のバストの絵だった。
これに怒った美樹は読者に聞かせられない罵詈雑言で克也を罵る。
完全にグロッキーになった克也は、復讐として美樹の大事にしているコンパクトを紫の絵の具で
塗りつぶしたのだった。
克也の思惑通り、紫に塗られたコンパクトを見つけた美樹は悲鳴をあげた。
洗っても色が落ちず、ラッカーを塗られたと口にする美樹。
克也が塗ったのは普通の水彩絵の具だった筈だが…
「こっちゃこ〜い…」
美樹の胸に挟まれたコンパクトから、不気味な声が響いた。かと思うと、美樹の足に紫色の老人が絡みつく。
だがこの老人は美樹にしか見えていない。もしやと思いコンパクトを開くと、やはりこれが原因のようだ。
思わず投げ捨てたコンパクトは、プールの排水口に転げ落ちた。
祓っても祓っても湧いてくる霊に、ぬ〜べ〜も手を焼いている。
この霊達は冥界の入り口辺りで迷っている亡者で、コンパクトがこれと繋がってしまったのだろう。
紫は色霊であの世を表す色だ。そして鏡は霊界との出入り口である。
長年使って念のこもった手鏡に紫を塗るのは、おそらくその人を冥界へ引き込むまじないとなるのだろう。
この話を聞いて、克也が自分がやったと名乗り出た。美樹は克也に痛烈なビンタを喰らわせた。
フーチでコンパクトを探すと、排水口から流れて地中の土管の中にあるようだ。プールの水を流して
水圧でこれを押し出そうとするが、中で何かに引っかかっているようで一向に動く様子はない。
その間にも霊は続々と美樹に押し寄せ、張ってあった結界も破られてしまった。
集団となった亡者は思いのほか強く、ぬ〜べ〜もてこずっている。
土建屋を呼んで土管を掘り起こそうということになったが、それで間に合うかどうか…
自分の所為で美樹が命の危険に晒されている。責任を感じた克也は、自分が土管の中に潜り込んで
コンパクトを取ってくると名乗り出た。美樹から根性なしの最低男と罵られるが、
好きな女の為に命はるぐらいの勇気はあると、勢いよく水の流れ出す土管に果敢に飛び込んだ。
凄い水圧に押し戻されそうになるが、美樹の為に必死で奥へと進む。
その姿に美樹も克也を見直すのだった。
ついに目的のコンパクトを取り出す事に成功した。
すぐにぬ〜べ〜に渡し、冥道を閉じると美樹に群がる霊は消えうせた。
今回の件で、克也の美樹に対する思いは本人によく伝わったようだ。
克也はめでたく、美樹の奴隷で召使いの犬に昇格(?)したのでした。