始まりはささいな事だった。
給食の焼売が一つ余っていた。そこへ疾風の速さで集う三人の男子生徒。
#134 妖怪・舞い首 の巻
木村克也・立野広・金田勝 この三名が一つだけ余った焼売を巡って醜い争いを繰り広げる。
途中で目的の焼売が失われたが、それでもなお争いは止まない。
もはや焼売が食べたいとかの問題ではなくなってしまったのだ。
一度は叱るぬ〜べ〜だったが、かといって自分の焼売を差し出すつもりもなく、三人は喧嘩を続行した。
それからというもの、この三人は事あるごとに喧嘩し、それは日に日に酷くなっていった。
見かねた美樹がこの事態を収めようと、喧嘩ばかりしてて悲惨な結果になった話を聞かせる事にした。
西暦1200年頃の桃山人夜話に出てくる話。新月の夜、関東のある浜で小三太・又重・悪五郎という
三人の武士が口げんかを始めた。喧嘩はエスカレートして斬り合いとなり、遂には三人は互いに
首を切り落として死んでしまった。以来、関東地方の浜辺で新月の夜に小三太・又重・悪五郎の
名を呼ぶと海から喧嘩して絡み合う、空飛ぶ生首が現れるという。妖怪「舞い首」という、有名な話だ。
死んでも喧嘩し続けるなんて結果になりたくなければ喧嘩をやめろと言ってみるものの、今の三人には
火に油を注ぐ結果となってしまい、丁度今夜新月だからやってみようという話になってしまった。
というか、美樹わざとだろ。
その夜、三人は童守港に集まり、それぞれに小三太・又重・悪五郎の名を叫んだ。
すると話の通りに喧嘩する三人の生首が現れた。これを見て広達は逃げ出したが、舞い首は
これを追いかけ、決着をつけるためにその体を貸せと迫る。
同時刻、三人が11時を過ぎても帰ってこない為ぬ〜べ〜の元に保護者から電話があった。
ぬ〜べ〜が郷子に連絡を取ると、心当たりがあるから美樹を連れて来ると言う。
港では広が憎しみを募らせ、金田に大きめの石を投げつけていた。
これを受けた金田は、もうどうなってもいいと本気の殺意を持って克也に鉄骨の雨を降らせる。
辛くも逃れた克也は、ブチ切れて広に向けてガソリンを流し、火を放った。
この爆発がぬ〜べ〜達の目に留まり、三人の所在を知らせた。
三人は喧嘩の枠を越えた殺し合いを繰り広げている。
霊視すると、三人にはそれぞれに舞い首が取り憑いているのがわかった。
憎しみに同調して妖怪に操られていることを訴えても、三人は今決着をつける、妖怪は関係なく自分達は
本気で憎みあっているのだと聞く耳を持たない。各々がツルハシやバールなどを構え、殺し合いを再開した。
このままでは全員死んでしまう。舞い首が取り憑いた目的は、生きた体でもう一度決着を着ける為なのだから。
三人が武器を振り下ろす真っ只中に、ぬ〜べ〜が割って入り、血だらけになりながら生徒達を説得する。
これを見て、ようやく三人は正気に戻った。
憎しみ合うのをやめたので、舞い首は三人から離れて相変わらず互いを罵り合っている。
ぬ〜べ〜の体を張った説得で、ようやく三人は反省した。
永遠に争い続けてさまよう舞い首をはたから見ていると、喧嘩の醜さがよくわかる。
そして…相変わらず余った給食に群がる三人は、今度は秤を使って細性格に三等分しようとするのだった。
が、見てる方がイライラするので外で喧嘩して来いと言われる始末であった。