地獄先生ぬ〜べ〜連載中 ロウソク2本目

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8931/3 ミエナイアラスジ
#91 反魂の術 の巻

リュックを背負って一人で学校を出るぬ〜べ〜。
サラ金に追われて夜逃げするのかと思ったが、遠足の下見に出かけるだけだった。
ぬ〜べ〜にとって、それはのどかな初夏の一日になる筈であった…

遠足コースを散策し、下見を一通り終えて納得し、ここを遠足の場所に決定した。
 「…助けて…」 崖の下から不意に聞こえた助けを求める声。だが、生きた人間のものではないようだ。
声に導かれて崖の下に下りてみると、廃坑の中に遭難者と見られるハイカーの骸骨を見つけた。
供養してやろうと骸骨に近づくと、崖崩れが起こりトンネルが崩落してしまった。
入り口まで20Mはある。自力での脱出は無理だと判断し、救助を待つ事にした。

こうして、ぬ〜べ〜のサバイバル生活が始まった。
平常心を保つ為の座禅、雨水から飲料水を確保、適度な運動…
リュックの中身の非常食やトンネル内に生えるキノコのお陰で食糧には困らなかったのだが、
助けはいっこうに来なかった!普通、こういう暗闇の閉鎖空間で70時間以上過ごすと人間は
発狂するという。ぬ〜べ〜はその数倍もの時間をよく耐えた!しかし、ついに…

助けを求め、入り口を塞ぐ岩を叩いて声を張り上げる。とにかく、誰かと話がしたくてたまらない。
ぬ〜べ〜は側で横たわる骸骨に目をつけた。
その昔…西行という僧が高野山で修行中、孤独に耐えかね死者を蘇らせる忌まわしき秘術を
編みだしたという。人骨をとりあつめ、人につくりなすためし…神を神とも思わぬ禁呪…
─反魂の術─
今まさにぬ〜べ〜は孤独に耐えかね、西行と同じ精神状態にあった。
8942/3 ミエナイアラスジ:2007/02/01(木) 23:01:01 ID:???
骸骨の周りを火で囲み念仏を唱えると、骸骨には徐々に肉がついてきた。
ここでぬ〜べ〜は我に返った。命を弄ぶ行為など許される筈がないと苦悩していると、
なんと術を施した死体が人の形を成して動き出した!それはぬ〜べ〜と変わらない年代の女性だ。
だが、先程まで死体だったため気が弱っており、肉体が透けて今にも消え入りそうだ。
こんな難しい術がまさか成功するとは。

ぬ〜べ〜は蘇った女性の持ち物をチェックしてその身元を確認した。杉田琴美、22歳。
持ち物の中に、一通の封筒を見つけた。それを見たぬ〜べ〜の表情がにわかに強張る。
ぬ〜べ〜はその封筒を自分のズボンのポケットにしまった。
琴美に水を与えると、その肉体に生気が戻ってきた。これを見てぬ〜べ〜は気がついた。
反魂の術で肉体は戻ったが、それを安定させるには正への気力が必要なのだと。
西行もこの術を使ったが、蘇ったのはただのゾンビでそれもすぐに死んだという。
だが、俺は違うぞ…たとえ神への冒涜だろうとも、この娘を生かす事をぬ〜べ〜は堅く誓った。

トンネル内で元気に戯れるぬ〜べ〜と琴美。正への気力:体を動かす事、食べる事、寝る事。
生きてて良かったと思うことが彼女の体を安定させる。
また、彼女のお陰でぬ〜べ〜の孤独も消え、正常な思考を取り戻した。
琴美が捕まえてきた蛇をぬ〜べ〜が捌く。
ぬ〜べ〜が色々知っているのを見て、琴美は自分が何も知らない事を気にする。
生きてる頃は自分も色々知っていたと思うのだが。生まれ変わったのだから思い出す必要はないとぬ〜べ〜。
でも、ちょっとだけ思い出して実行した。名前は思い出せなかったが、それは頬へのキス。
人間が一番生きてて良かったと思うこと。その先は… 赤面し、汗を流すぬ〜べ〜。
その先は…忘れた…
8953/3 ミエナイアラスジ:2007/02/01(木) 23:01:51 ID:???
琴美のお陰でぬ〜べ〜も助かった。外に出られたら妹という事にしよう。
そんな事を考えていると、トンネル内にイタチが侵入しているのを見つけた。
蛇の時にもおかしいと思ったが、イタチを追っていくと外に通じる穴を見つけた!
狭いので琴美に尻を押してもらいながら外に出る。
そんなぬ〜べ〜のズボンから、封筒がはみ出ているのを琴美が見つけた。

無事に外に出られた。ぬ〜べ〜は琴美を誘うが、琴美は洞窟の出口で一緒に行けないと言う。
 「ありがとう、とても楽しかった。少しの間の命でも…」
そう言って涙を浮かべる琴美の手には、ぬ〜べ〜が隠していた封筒、彼女が書いた遺書が握られていた。
琴美は思い出してしまった。長く愛した恋人に死なれ、自ら命を絶った事を。
見る間に、琴美の肉体から生気が失われていく。
ぬ〜べ〜は必死で彼女を生かそうと呼びかける。生まれ変わったのだから過去を忘れろと。
だがその甲斐もなく、琴美は元の骸骨に戻り、その場に崩れ落ちた。

人が命を与えてはいけないのか!ぬ〜べ〜は神に向かって吼えた。
背後から、自分を探す生徒達の声が聞こえる。気力を振り絞り、そちらへ歩いてゆくぬ〜べ〜。


 「俺は…生きるぞ…」