同じものが森のそこかしこに無数に発生している。それは晶達や殺人犯の頭上にもあった。
突如、殺人犯の背後に妖気の一つが降りてきた。その妖気には猫の顔が浮かんでいる。
思わず腰を抜かした殺人犯がこれを振り払おうと腕を振る。
腕が妖気に触れた途端、その腕はミイラのように干からびた。生気を吸われたようだ。
晶たちの背後にも妖気が降りてきた。こちらには兎と犬の顔が浮かんでいる。
「ここから逃げろーっ!」
駆けつけてきたぬ〜べ〜が鬼の手で妖気を切り払う。
この妖怪の名は「釣瓶落とし」。樹齢の高い森に死体が埋められると、魂が木に吸い上げられ
古木の霊気を貰って妖怪化する。そして井戸の釣瓶を落とすように降ってきて、人の生気を吸うのだ。
この森の場合、その正体は埋められたペットの魂。
しかも森中ペットの墓だらけゆえ、その数はぬ〜べ〜にも手に負えない程だ。
すぐに森を出たいところだが、そうは問屋が卸さない。殺人犯に気づかれてしまったのだ。
一行にピストルを向け牽制している。そんなことをしている場合じゃないとぬ〜べ〜が諭すが、
ぬ〜べ〜達が生気を吸われるのを待ってゆっくりと逃げる算段のようだ。
自分は釣瓶落としをよけるが、ぬ〜べ〜達にはそれを許さない。
そうこうしている間に、一行の頭上から釣瓶落としが降り注ぐ。面白そうにそれを見物する殺人犯。
殺人犯の頭上からも釣瓶落としが振ってきた。それをよけた殺人犯はその顔を見て驚愕した。
なんと、先程自分か殺して埋めた人の顔だったのだ!
殺人犯はこの釣瓶落としに捕まり、全身の生気を吸い取られた。
この隙に一行は逃げ出した。と同時に、頭上から一斉に釣瓶落としが降り注いだ。
通報を受けて駆けつけた警察により、死んだこの殺人犯の身元が確認された。
ミイラと化していることに疑問が出るが、事情を話しても信じてもらえないだろう。
長い間立入禁止で放置されていた為に妖怪の森と化したことから、あとで祠を建てて供養することにした。
木から垂れ下がる発光体「釣瓶落とし」は、全国に名を残すポピュラーな妖怪である。
地方によっては「サガリ」「ヤカンズル」「釣瓶火」とも言う。
古い木の下を通るときは気をつけたほうがいい。
しかし、ホントこの漫画悪人は容赦なく殺すよな