「にぎやかな旅路になりそうですね。」
「ええ、全く。」
三人でシャトルに向うと、すでにリツコとケーコは座っていた。
聞いた話によると、リツコが来ることをしならなかったケーコが叫び声を上げそうになり、
キタガワによって抑えられたということもあったらしい。
「・・・聞いてなかったんだもん。・・・普通驚くでしょ・・・。」
そういって拗ねてブーたれているケーコをよそ目に、アンとスーはいたって涼しい顔だ。
「まー、あの二人は特別かもしれんがね・・・。」
そういって笑いながら隣に座って慰めるマダラメ。
「さて・・・このまま順調にいけばいいんだが・・・。」
『シャトル発射10分前です。皆様、席に座りシートベルトの着用の方を・・・。』
俺の予想は悪い方にはよく当たる、と少し自嘲気味に笑うマダラメであった。
「さて、今後はどう動くつもりだね?」
隣のケーコに今後の予定を尋ねるマダラメ。
皆聞きたかったようで、耳を傾ける。
「あ、とりあえずね、タナカさんとこにいって、クガヤマさんと合流。」
「え、あいつらに会うのか。」
「うん。移動用のトラックとか、護衛用のMSとかね、借りにいくの。」
そういって、取り出した手帳・・・なぜかかわいいシールなどがついている・・・
を見ながら楽しそうに語るケーコ。
「ふーん・・・元気なんかねー。」
メールはもらっていたが、やはり実際会うとなるとそれなりに気になるものだ。
「みたいだよー。」
「カナコ元気かな。楽しそうなメールはよく届くんだけど。」
「・・・シアワセナラソレデイイ・・・。」
「・・・タナカさん・・・はあの技術士官の?」
おずおずと声を出したリツコにマダラメがえる。
「そうですよ。そうか、整備は大概タナカがやってたんでしたね。」
「ええ・・・何か一方的にあなた方のことを知っているのというのも妙な感じですね。」
そういって微笑むリツコ。それを見て少し気が緩むマダラメであったが・・・。
急にシャトルがゆれる。
「なんだぁ!?」
「隊長さん、外外!」
窓際に座っていたケーコの声にケーコの座っている上に体を乗り出し、
窓から外を覗くとそこには数機のリック・ドムが移動していた。
「・・・テロリスト?・・・・・・違うな。動きから見て・・・例の海賊って奴らか・・・。」
「あの・・・。」
「なに?」
ケーコの声に気付いて下を向くと、思いっきり胸のうえに手を付いていたことに気付く。
慌てて手を離すマダラメ。
「・・・うわ!ごめんごめんごめん!!」
「いや、事故だしいいんだけど・・・。」
「いやはは・・・。いやね、それよりね。どうにかせんとね。」
かなり動揺しているのか、しゃべり方がおかしくなるマダラメ。
「ちょっと、しっかりしてよ!」
「おおう、わっかてるよ〜、わかってるよ〜。」
ケーコの言葉に急いで席から離れ、操縦室に向うマダラメ。
「おい!勝手に入るな・・・」
「連盟軍士官マダラメ中尉だ!!現状はどうなっている!」
「え、あの、その。・・・荷物の引渡しを迫られています。
あと・・・この艦にある人物が乗っているから引き渡せとも・・・。
・・・あの、何かご存知なのですか。」
「・・・まぁな。ちっ、どこで洩れやがった。」
操縦席にいた副操縦士から話を聞くと、マダラメは舌打ちをする。
「引渡しは不可能ですか。このままでは艦ごと落とされます。」
そういうメイン操縦士である艦長にマダラメはため息をつく。
「・・・ああいう輩が引き渡したからといって無事に済ますとお思いで?」
「・・・まぁ、そうですよね・・・。」
「・・・プチモビぐらい積んでますよね?貸して貰えますかね?」
「ありますが・・・どうするおつもりで?」
「何とか時間稼ぎをする。その間救援信号を送りまくるんだ。
・・・10分。これ以上は無理だと思うが、きっと近くを巡回中の隊がいるはずだ。」
「・・・わかりました。こうなれば一蓮托生ですな。」
そういう艦長に、マダラメは敬礼を送る。
「うまくいくよう願っててくれ。」
「私達も手伝うよ!」
「・・・フフフ、マッカセナサ〜イ。」
気付くと後にアンとスーが立っていた。
「・・・お前ら・・・よろしく頼む!」
プチモビ、というのは作業用のMSで、
・・・いやMSというにはちょっと貧相な二頭身ほどの作業用機械である。
基本的に戦闘能力は皆無に近く、緊急時の補修などに使われるため、
大概の輸送艦には積んであるのだ。
「よし・・・あくまで目標は牽制だ。無理はするなよ。」
「モチロン!こんなので落とそうとは思わないよ!」
「・・・ムリハシナイ。」
三機のプチモビに乗り込む三人。
「よし・・・みんな、生きて帰るぞ!」
「ヒュ〜、久々に聞いたね!」
「・・・コレヲキカナキャハジマラナイワ。」
「・・・なんか恥ずかしいな。まぁいい、いくぞ!」
宇宙に三機のプチモビが出撃する。
「ふいー、地球圏は重力影響が弱くて操作しやすいな。」
「やっぱ木星は大変?」
「まあなぁ。重力影響は半端じゃないよ。事故でたまに木星に持ってかれる事もあるからな。」
「重力ニ魂ヲヒカレタモノヨ!」
「それ使い方違うような・・・。まぁいいか。よし来るぞ!」
前方にドムの編隊が広がる。数にして三機。多くはないが。
「ま、数の上じゃ同じでも、性能差が大きく違うしね。」
そうぼやきつつ、スイッチを操作する。
「さて、どの程度慌ててくれますかねっと!」
そういうと、プチモビのボディから一本のアンカーが飛び出す。
それはそのままドムに張り付いて・・・。
「作業用のマグネットアンカーのお味、いかがかなっ!」
そのまま、回転を開始し、ドムは慣性のまま回転を始める。
同時にアン、スーの機体もマグネットアンカーを射出し、同様に回転を始めた。
「そのままどこかへ飛んできな!」
ボタンを押した瞬間、電磁石になっている先端から磁力がなくなり、
その勢いのまま、遠くへ飛んでいくドム。三機とも、遠くへ飛んでいく。
「ひゃー、奇襲だっただけにうまくいったな。」
『でも次はうまくいかないでしょうね。』
そういいながら通信越しにアンは少し笑う。
「さて、残りは・・・二機?」
『意外と多いわね!』
編隊構成は普通4機で行うものである。
大概そのうち一機は情報収集タイプ
・・・EWACなどがついている機体であるのが一般的である。
しかし、この襲撃隊はドム5機による編成なのである。
「まぁ・・・軍隊の常識が通じるとは思っちゃいねえけどな。」
『センソウハカズダヨ!アニキ!』
「・・・兄貴って誰やねん。」
そうスーの言葉に突っ込みを入れつつブースタを点火させるマダラメ。
「さて・・・あとは動きまくっときますかね。」
ドムからビームバズーカの光が迸る。
「ビーム兵装かよっ!安定感不足であまり配備されてないんじゃなかったのかよ!」
ビームの処理というのはデリケートであり、
皇国軍は最後までビーム兵器を量産させることが出来なかった。
ゲルググは確かにビームを標準装備していたが、
一般兵が多く使っていたのはリックドムであり、
リックドムはビームの扱いに長けてはいなかった。
三機のプチモビは移動を繰り返しつつ砲撃を避ける。
「やれやれ、安定してるじゃねえかよっ。」
ビームの迸りをギリギリで交わしつつも、だんだんと追い詰められていく三機。
「さすがにビーム兵装はつらいな・・・。」
普通のリックドムの武装は実弾兵器であるジャイアント・バズ。
これは単発で出てくるため、数発よければ後は弾切れである。
しかし、ビーム兵装はそれよりも発射数が多い。
「あと・・・数分・・・早く来てくれ・・・。うおっ!?」
乗機の片手が吹っ飛んだのがわかる。
「く・・・。大丈夫か!」
『何とか・・・ね。』
『マダダ、マダオワランヨ!』
その瞬間である。
一筋の閃光が宇宙を奔る。その元には、大きな影が。宇宙用戦艦である。
「来たか?・・・なに?あれは・・・うちの軍じゃない!?」
このあたりを巡回している巡洋艦であれば、見覚えがないものはない。
仮に新造艦があったとしても、そう大きく様相を変えるもんでもないはずである。
しかし、その艦は明らかに異質であった。
『帆』があるのである。
「おいおい、こりゃ何の冗談だよ・・・。」
『こいつが噂の・・・宇宙海賊って奴かしら!?』
「ならおかしいだろ・・・じゃあこのドムたちは何者だよ・・・。」
ドムは明らかに挙動がおかしくなっていた。
襲い掛かっていた二機に、先ほどぶっ飛ばした三機が戻ってきて、
共に逃げようと後退を始めた。
「なんだ・・・??」
すると、海賊船から二機のMS・・・。一方は白く、一方は黄色の・・・。
見たこともない所属不明の機体が飛び出してきた。
すぐさま、その黄色い機体は変形し飛行形態になったかと思うと、
ドムたちの前に立ち、ビーム砲を打ち放つ。
これによって二機が致命傷を負い動けなくなった。
残りの三機が地理尻に逃げようとしたところを、
白い漏斗・・・が打ち落としていく。まるでその純白の機体は・・・
堕天使とよぶにふさわしい姿であった。
「ファンネル!?あれが噂の・・・本当の宇宙海賊か・・・。」
しかしなぜ宇宙海賊はドムを倒しているのだろうか。
『え〜・・・お騒がせしました・・・シャトルにご搭乗の皆様。』
女の声だ。マダラメはどこかで聞いたことがある・・・気がした。
『このたびは私どもの脱走兵がご迷惑をおかけしました。
私どもは一般市民の乗っている艦は襲わないよう心がけているのですが、
モラルのないもの達が逃げ、このような結果になってしまいました。
それではよい航海を。』
そういって通信をきる。どうやら、白いMSに乗っている女性であるようだ。
「なんなんだ・・・こいつら・・・皇国の敗残兵なのか?」
『そのようだね・・・。』
その時である。ようやく駆けつけた連盟の巡洋艦が、MSを展開してきた。
『またせたな。マダラメ。』
「お?ヤナか?もう大丈夫だぞ、終わった。」
『は?何を言ってるんだ、目の前にいるじゃいか!はよ逃げろ!』
「いやぁね・・・。」
『ごちゃごちゃ言ってないでぶちかましたりましょうや!』
そういって、ヤナ機後から巨大なランチャーを構えたジム・カスタム
・・・色がピンクなのが目もあてられない・・・
が、それを構え、白いMSを打ち倒そうとする。
搭乗者は・・・先ほどのヤブザキ准尉である。
『おちろやぁ!この海賊がぁ!』
シュウウウウウウウウウウウウウ・・・・。
収束音が通信越しにも聞こえる。
「ちょ、おま、それ、やば、だろ!」
声にならない声を上げ、マダラメが講義するも。
バシュウウウウウウウウウ!!
光の迸りが宇宙を駆ける。
しかし、二機はあっさりそれを交わし、
光はそのあたりを漂うゴミを焼いたに過ぎなかった。
『慌てんでも、今度相手になってやるさね。』
『なんだと!かかってこいやぁ!』
白いMSのパイロットとはもはや顔見知り状態らしく、
罵声を浴びせかけるヤブサキ。
『・・・では、ごきげんよう。』
そういうと、二機は艦船に引き返す。
『く、追いかけますわ!』
『バカヤブ。無駄弾撃った上に無駄な追い討ちもしようとするのか?』
『カトウ少尉・・・。でもですね!』
『ばかですにゃ〜。』
『お前にだけは言われたくないわ!』
『・・・あ〜みんな落ち着いて・・・帰るぞ・・・。』
騒ぐ三人の部下に、おずおずと声をかけるも、完全無視されるヤナ。
「・・・大変だな。」
『・・・うん。』
事の顛末をヤナに伝え、シャトルに戻ってきた三人。
「おつかれさん〜。」
ねぎらいの
「本当だよ。全く・・・前途が多難だぜ・・・。」
ふう、と息をつきつつ、椅子に座るマダラメ。
「・・・あの方々・・・いえ、あの方・・・。」
「え?白いのに乗ってた奴かい?」
リツコが、何か思い出したようにマダラメに語る。
「声、聞いたことあります。あれは、あの基地にいた・・・最後の相手だったはずです。」
「なにぃ?じゃあ、あの兵器使おうとしてた奴かよ・・・。
妙に紳士的になりやがって・・・。」
不満ありげに鼻息をふかすマダラメ。
「よくは分かりませんが、今度は違った方向で戦うつもりなのでは?」
「ふーん・・・。しかしまぁ・・・。とりあえず当面の航海は大丈夫かな・・・。」
『当機は、もうすぐ大気圏に突入します。』
振動と共に、機体が地球へと降下していく。
久々の、地球という重力を感じながら、マダラメは少しの眠りについた。
前編 終わり
地上の降りた一行を待つのは希望か、絶望か。
それは・・・誰にもわからない。
いや・・・それがどうなのかを・・・
決めるのは、自分自身なのである。
第801小隊アフターストーリー『リツコ・レポート』【地上編】
お楽しみに
というわけでいまさら感ありありのアフターストーリーいかがだったでしょうか。
楽しんでいただけたら幸いです。
後編も投下可能なのですが、今日はこの辺で。
あ・・・【地球編】だってばよ・・・ orz
461 :
マロン名無しさん:2007/01/13(土) 04:47:07 ID:mDrgIyrV
>801小隊リツコ・レポート
まずは、待ちに待ってた番外編、お疲れ様でした。
忘れるもんかね、SSスレの代表作を!
リツコレポート、ずっと楽しみにしてたのです。だって、マ(略
キタガワさん、カスカベさんとコーサカ、ケーコ、アンとスー、ヤナ、漫研女子。
そして「精神体」として会ったことのあるリツコ。
そうやって登場人物が出てくるたびに懐かしい気持ちが広がりました。
げんしけんの、というよりも、「801小隊の」という思いで。
後編に超期待しつつ投下を待ってます。
>リツコ・レポート
ゲームについては門外漢なんで皆にまかせるとして、久々の続編というか外伝というか、先ずは前編GJです。
やぶへび3人娘参戦、ほとんどパトレイバーの太田状態のヤブサキ准尉、ここでも問題女子に囲まれて必殺苦労人状態のヤナ、そしてここでも微妙にハーレム状態のマダラメと見所満載ですな。
後編にも期待してます。
あとスーの台詞って全部元ネタありそうだけど、分からんのもあるので後書きで元ネタ一覧表希望。
463ですが追記。
あと後編も前編と同じぐらいかそれ以上の分量なら、次スレの用意が要るかも。
>まだメモ@恵子
早ッ!原作で接点少ないキャラは描写減りがちですからねえ。恵子なんてノゾキイベントあるからあそこから一気に愛情を育ててっ、なんて構想してましたがこいつは大変だw
大丈夫!きっと長いシナリオがどこかに隠れてるから!
>『801小隊リツコ・レポート』
久しぶりの登場お待ち申し上げておりましたっ!
まずは面々のご健勝をお喜び申し上げます。ハルナちゃんは末恐ろしもとい将来が楽しみです。
そして謎のっつーかアイツラじゃん海賊!無茶な武器振り回すピンクのジム!気苦労の多いヤナ隊長!
宇宙(ソラ)の上でもまだお話かけるじゃないすかw
でも先に地上の人たちですね。彼らも元気でやっているのでしょう。
こちらも待ち遠しいです。
そしてそして、パラグラフアドベンチャーと言えば『Deathtrap Dungeon』(PSソフトではなく書籍の方)をやったのが最後っつう俺ですが、みんながあんまり楽しそうなんで『まだメモ』参入するっすよ。
大野さんシナリオでプレイしましたが、ちょっとドラマチックな展開があったのでリプレイノベルに仕立ててみました。
まだメモ@恵子作者氏、801小隊作者氏、間隔空けずに投下でまっこと申し訳ない。時間かけて書き込みできるチャンスが今しかないのです。
>>464 いま467kbですな。俺のが今から15kb程度ですよん。
13レスでGo!よろしく〜。
アメリカから帰国したわたしが入学した椎応大学には、わたしを受け入れてくれる場所がありました。その名は現視研。
同学年でも半年遅れとなるわたしが、向こうでも特殊な趣味だと微妙な距離を持たれていたわたしが現視研に溶け込むことができたのは、同期のみんなや田中さん、そしてあの人が、この場所にいてくれたからだったのです。
まらだめメモリアル リプレイ
『幸せであるように』
コスプレ写真の横流しが失敗した夜、わたしは斑目さんを居酒屋に呼び出しました。
あのときの失態を謝罪したかったのと……わたしはどうしても、彼が何を望んでいるのかを聞き出したかったのです。
咲さんはもうあと数日で卒業してしまいます。斑目さんと違い、都心で自分の店を持つという職業を選んだ彼女は今後、部室に顔を出すことはほとんどないでしょう。
斑目さんが、咲さんとお話をする機会はもう、わずかしか残されていないのです。
「斑目さん、ほんとごめんなさい!まさか咲さん本人に見つかるとは思っていなかったんですぅ〜」
「いやいや!いいんスよそんなの。それより大野さん、いいの?田中放っといて」
「今日は田中さんの学校の追いコンなんですよぉ。縫製のお師匠様っていう人がいて、そっちにお付き合いしないとならないんです」
「へー、確かに学校行くようになってからあいつ、ますます腕を上げてっからな」
「ほらほら斑目さん、とりあえず乾杯」
強引にジョッキをぶつけますが、斑目さんはあまり乗り気ではないようです。
「いったい何にスか」
「えーと、じゃ……」
わたしはちょっと考えました。斑目さんは今日のことを、どう思っているのでしょう。
「斑目さんの秘めたる想いに」
「ぶっ!?」
漫画みたいに泡を吹き飛ばし、斑目さんはむせ返りました。
「ああもう!なにやってるんですか斑目さんたらぁ」
「げほげほっ、そっ、それはむしろこっちのセリフだっつーの!」
あわてておしぼりで彼の服を拭きます。涙目になった彼が、こちらを見つめました。
「昼間といい、なんだってんだよ大野さん。俺は別に――」
「――『別に春日部さんのことなんか』って、言うつもりですか?」
斑目さんの瞳の色が変わりました。
「『春日部さんのことなんか好きになってない』って、そうやって自分に嘘をつくつもりですか?斑目さん」
斑目さんは何も言わず、わたしの顔を見つめています。わたしも言ってしまった以上あとには引けず、彼の眼鏡の奥に視線を送り続けました。
「斑目さん、斑目さんが咲さんのこと好きだって、わたし知ってました。たぶん他の女の子たちも知ってると思います、咲さん以外は」
斑目さんは、ふと視線をそらしました。居酒屋のカウンターで手元のジョッキに目を落として、でも彼は何も見ていないのでしょう。角度の加減で、眼鏡にカウンターの照明が映り込んで彼の表情は見えません。
「咲さん、自分のことにはなんかニブいんですよね。でもわたし、斑目さんのその想いをどうこうしようとは考えてなかったんですよ……この間までは」
「……この間?」
「わたしがコスプレの衣装を部室に運び込んだとき、斑目さん、咲さんと二人きりでいたんですよね」
十日くらい前のこと。逃げるように帰ってしまった斑目さんとどんな話をしたのか、咲さんからはそれとなく聞いていました。
「斑目さんが咲さんにお別れめいたこと言ったって聞いて、もう我慢できなくなったんです。斑目さん」
わたしは斑目さんに詰め寄りました。
「咲さん、もう卒業しちゃうんですよ?いいんですか、このままで?」
……でも、どうして。
「斑目さん!自分の心を告げないままで、好きって言わないままで、咲さんを行かせちゃっていいんですか?」
どうしてわたしは、斑目さんのことにこんなに一生懸命になっているのでしょう。
「ちょ、ちょっと待ってよ大野さん、なんで大野さんが俺のことにそんなに入れ込むの?」
ちょうど彼もそこに思い当たったようです。
「あのさ、春日部さんには高坂くんという彼氏がちゃんといるわけでさ、それをどうして大野さんが二人の間に波風立てるようなことしてるのさ?」
斑目さんの表情にも困惑交じりの焦燥感が見て取れます。
「これは俺の問題であって、大野さんには関係ないでしょ?俺が俺の感情にどんな決着をつけようが、それは全部俺に跳ね返るわけで、大野さんには損も得もないはずだよ、そうじゃない?」
「それは――」
「……あ、それとも大野さんは面白がってるのかな?今の俺の状況」
自嘲気味の光が、彼の瞳に宿りました。
「俺は今勝ち目のない勝負にハマり込んで、進むも地獄、引くも地獄だ。それなのに大野さんは、俺に進めと言ってくる。どうしたいんだよ、俺が春日部さんの目の前で玉砕するのを見たいってのか?」
「そ……そんな」
「大野さんには解らないんじゃないの?いま自分は田中とうまく行ってるし、そもそも付き合い始めも自然だったじゃんか。タダでさえ恋愛経験ゼロの俺がこんな高度な三角関係に手を出せるはずがないでしょ?」
さっき飲み損ねたビールを思いだしたのか、ジョッキに口を付けて一気に飲み干します。
「あはは。こんな感情の引きずり方してるオタなんざさぞ珍しいんだろうな。そうか、おおかたアレだ、アンジェラあたりと俺がどうなるか掛けてるんじゃないの?」
「斑目さん!?何を――」
「そうだな、きっと大野さんは俺が告白する方にベットしてるんだ、そうだろ?ひょっとしたら玉砕するオプションもついてるかもな」
今飲んだばかりのお酒がすぐさま脳まで回るわけがありません。斑目さんは酔ったふりをして、わたしが触れてしまった逆鱗を鎮めようとしていました。
わたしが言った余計な一言に腹を立てて、それでも直接わたしを攻撃することができなくて、こんな回りくどい方法で胸の内を明かす彼を……。
もう卒業してるのに、ただの後輩に刺された図星を打ち消すことができないでいる優しい人を……。
多分わたしと同じように現視研を愛していて、そのあまり自分の真実さえ後回しにしようとする不器用な人を……。
そんな斑目さんを見ていて、わたしはようやく悟りました。
わたしは、斑目さんが好きなのだ、と。
「オッズはどうなのかな?俺から見ても鉄板レースだろ、低いよな。うっかりしたら0.9倍とか――」
「斑目さんっ!」
私は居酒屋の椅子を蹴り、斑目さんを抱き締めていました。
わたしは田中さんを愛しています。アメリカ帰りというだけで誤解されがちな腰の軽い女でもありません。
でも、わたしは斑目さんが好きだったのです。……たった今気付いたことですが。
田中さんを好きなのとは多分まったく違った次元で、今わたしの腕の中で息を飲んでいる人のことが、わたしは大好きだったのです。
「そんなのじゃ……ありませんっ!」
わたしの行動は結果的に良い方に転んだようです。考えてみれば、斑目さんに口で勝てるはずがありません。彼は驚愕のあまり、我に返ってくれました。
「……大野さん?」
「そんなのじゃ、ないんです」
「大野さん、人が見てるよ」
居酒屋の全てのお客さんが……正確には従業員の人たちまでもがわたしたちに注目しているのに気付いたのはその後でした。
代金を支払って早々に居酒屋を出て、わたしたちは近くの公園に移動しました。わたしにはまだ話したいことがあったし、斑目さんももう少し付きあうつもりになってくれたようです。
「大野さん、どーぞ」
「あ、すいません」
向かいのコンビニで買って来たビールを二人で取り分けます。
「ふう、今日のわたし、なにからなにまでダメですね」
「まーまー。さっきのはホラ、俺も悪かったしさ」
今度は何も言わず、二人でビールのタブを上げて缶の縁を合わせます。
「斑目さん、もう言いかけちゃったんで全部言いますね。わたしは、やっぱり斑目さんには咲さんに告白して欲しいと思います」
「ええー、その話続けんの?」
「ふふ、続けますよぉ。斑目さん、咲さんのこと、いつから好きだったんですか?」
彼はまだ少し躊躇しているようでしたが、やがて心を決めたようです。わたしが座っているベンチの向かい側、ウサギの遊具に腰掛けて、こちらを見ました。
「……初めはさ、『なんだよあのドキュン女』って感じだったんだぜ?春日部さんのこと」
「あはは、オタクの対極にあるような人ですもんね」
「そもそもウチがどんなサークルかって知らないで来たんだよ、高坂くんに付きあって覗きに来ただけで。それが高坂くんが居ついちゃったもんだから」
「ああ、聞きました。わたし来た時も、まだ全然こなれてなかったんですよね、咲さん」
缶ビールをちびちびと飲みながら、斑目さんは咲さんの思い出を語り続けます。その年月が自分の一生分ほども重いとでも言いたげな話し振りで。
「……みんなで海行くちょっと前かな、春日部さんと部室で二人っきりになったことがあったんだよね、ちょうどこないだみたいに」
「え、え、え?それはなにかすっごいイベントが」
「ねーよ、ないない!俺は彼女に何も話しかけられなくて、結局挙動不審で気持ち悪がられて泣きながら撤退。……でも」
「でも?」
「その時に感じたんだよ。あ、俺、春日部さんのこと好きなんじゃん、って」
今の、表情。
斑目さんの今の顔つきが、全てを物語っていました。
海に行ったのって、2年の夏です。その前からっていうことは、ほとんどまる3年間。
「それ以来、部室に来るたんびにまず春日部さんの姿探して、卒業してからもなんだかんだ理由つけて部室に顔出してさ」
斑目さんは、総受けタイプの人間です。これはオタクかどうか、腐女子の趣味がどうとかとは別の話で、彼は人間の性格自体が受動的に出来ているのです。
自分からは動くことなく、降りかかってくる刺激はうまいこと受け止めて人生を生きてゆくタイプの人間です。そうやって社会や人間関係をコントロールしてゆく人なのです。
自分の趣味にしか興味を示さず、その他のことは他人事。巻き込まれた時は小器用に脱出して、また普段通り生きてゆく。
そんな斑目さんがオタク趣味以外で、能動的にアクションを起こした数少ない相手が咲さんでした。
「こないだのことさ、春日部さんから聞いたんでしょ?お別れめいた、ってのは言いすぎデスヨ」
部室から離れたくなくて就職活動を後回しにして。いよいよ進退きわまったのかと思ったら大学の近所の会社にちゃっかり内定受けて。
「彼女と同じ空気を吸っていられた4年間を、春日部さんに感謝したかっただけ。でも『ありがとう』とか『さようなら』なんて言ったらきっとびっくりされるだろうから、『お疲れさま』ってさ……って、大野さん!?」
「あ、はい?」
「どっ、どうしたの?」
斑目さんが、驚愕の表情でこちらを見ています。え、と思って、そのあとで自分の頬を流れる温かいものに気付きました。
「……あ、れ?」
わたしは泣いていました。
「あらら、ごめんなさい……ひくっ」
「ちょっとちょっと、ごめん俺なんかマズいこと言ったかな?あ、えーと、ほらハンカチ」
慌てて立ち上がり、わたしに近づいてズボンのポケットからハンカチを渡してくれます。
「すみません……斑目さんの話聞いてたら、つい泣けてきて」
「ええ?俺ってそんなに悲しい?」
「いーえー。感動してるんです」
「……は?」
「咲さん、幸せ者だなあって」
斑目さんの匂いのするハンカチを目に当てながら、なるべくしゃくりあげないように喋ります。だってわたしが泣いたら、斑目さんが困りますから。
「ほら、斑目さんみたいな人に好きになってもらえて。高坂さんとお付き合いしてるのも幸せなんでしょうけど、それに加えて斑目さんがそばに居てくれて」
顔は笑顔を作れましたが、涙が止まりません。
「大野さん……」
「あーあ、くやしいなあ」
「えっ?」
「わたしが咲さんだったら、斑目さんのことこんなに苦しめないのに。わたしが咲さんだったら高坂さんなんか放っといて、何も言われなくたって斑目さんの心を解ってあげられたかもしれないのに」
だめだって思っても、表情を留めておけませんでした。斑目さんに見せちゃいけないって思っていた、泣き顔に変わってゆきます。
「ひくっ」
鳴咽を止めることもできません。おろおろする斑目さんに申し訳ないと思いながら、わたしはふたたび彼に抱きつきました。
「!?」
「まっ……斑目さん……ごめんなさい、ちょっとだけ、肩、貸して、ください」
彼が何も言わないのは、わたしを思いやってでしょうか。それとも、処理能力がオーバーフローしてるのかもしれません。
黙ったままわたしを支えてくれる斑目さんに少しだけ甘えることにして、わたしは彼をぎゅっと抱き締めました。
「大野さん……なんか、ごめんな。要するに俺が不甲斐ないから大野さん、泣いちゃったんだろ?」
腕に力を込めるわたしに応えるように、彼もわたしの背中に両手を回してくれました。ぽんぽんと軽く叩いてくれる手のひらから、ほんのりと温かさが伝わってきます。
「田中といい笹原といい、俺の回りでオタクどもが急に色気づきやがってさ。ぶっちゃけ乗り遅れた感じは抱いてたわけよ、俺も」
わたしの背中に手を当てながら、話し始めます。
「俺自身もその頃には好きな人がいて、でもその人には大切な人がいて。俺にはその人が幸せであることの方が大事だったから、そうなるように行動したんだ」
……『その人が幸せであるように』。わたしもそう思います。わたしは、斑目さんに幸せであって欲しいのです。
「漫画やアニメみたいに、たとえば強引に彼女を奪うとか。男らしく告白して、正々堂々とフラれるとか。どれもこれも俺らしくないし、だいいち彼女が困るって思ったんだ」
でも、そのやり方を、わたしは勘違いしていたようです。わたしはわたしの経験の中で、好きならそれを相手に伝えるべきだと信じきっていました。でも、斑目さんの方法論は、わたしのものとは違っていたのです。
「だからこないだも、『お疲れさま』ってさ。今はこれが精一杯、ってわけですよ。……大野さん」
「……ハイ」
「俺のこと気に掛けてくれて、ありがとね。俺一人で墓の中まで持ってくつもりだった秘密を喋る羽目になったけど、今はちょっとすっきりしてる」
「わたしも、打ち明けていただいて嬉しかったです。ちゃんと秘密は守りますから」
いつの間にかわたしの涙は止まっていました。
「頼むぜ、ホントに〜」
「斑目さん、それじゃ、鍵掛けてください」
「へ?カギ?」
「わたしの口が、余計な事を言わないように!」
「え?」
唇を付き出して、目をつぶります。
「わ!?お、お、大野さん、ちょっとちょっと!」
「は・や・くぅ!」
「いっいやいや待ってよ!大野さんには田中というやつが、それにほら、俺もさ」
「俺も?」
「その……ハジメテは心に決めた人と……」
あーあ。
やっぱりダメでした。でもこれは、予想の範囲内です。わたしはすねた表情を作って目を開けました。
「斑目さんのいくじなしー」
「えー?」
「それに斑目さん、心に決めた人って咲さんじゃないですか!それって一生ムリってことですよ?妖精さんになっちゃいますよ?」
「妖精さんとか言うな!あーいやその、ほれ、いつかどこかできっかけがさ」
「ありませんよそんなの!もー、わかりました!」
わたしは、斑目さんが好きです。
もちろん田中さんも愛しています。今しがた少しだけ心が揺れましたけど……いさぎよく身を引きましょう。斑目さんの心の中には咲さんが陣取っていますし、事態が変わる公算は万に一つもありません。
それに……。
それに、わたしは斑目さんが幸せであることの方が大事です。
斑目さんたら、今の状況を幸せだと思っているじゃありませんか!これじゃ、わたしにはなにもできませんよね。
「鍵がどうとかはもういいです!その代わり、今日は飲み明かしますから付き合って下さい」
「えええ?マジですか?」
「マジですよ、田中さん今晩はこっち来ないんですから」
「ハイハイ。でも大野さんの酒の相手か、正直体力不安だ」
「斑目さぁん?寝たら言いふらしますからね、さっきのこと」
「ウワそんな縛りアリかよぉ〜」
「ふふ。さ、そのビール空けちゃって下さいよ。次のお店行きますからね」
「なんかハメられた気がする」
「気のせいですって。ほらほら乾杯」
「またかよっ!」
わたしは構わず、缶ビールを派手に打ち鳴らしました。
斑目さんの幸せに乾杯……と、胸の内で願いながら。
おわり
【リプレイ後記】
……バッドエンドですたorz
クライマックスで2ショットに持ち込めた上、居酒屋から公園に場面転換した時はシメタと思ったんですけどねえ。原作展開を重視するあまり田中との関係構築に時間を掛けすぎたのかもしれません。
4週間連続のコスプレデートとかこなしてるうちに(このコンボにはまり込むと交際発覚イベントまで斑目が登場しません)ゲーム画面に出てないところで斑目→咲ラヴ度が育ちすぎてしまいましたw
他にも何パターンかやってみたんですが、大野さんシナリオの特徴は二つある様子。
ひとつはムードメーカー的スキルとでも言いましょうか、大野さんがいるだけでその場のキャラクターの親密度が勝手に上乗せされてるみたいです。細かくバイタリティチェックしてなかったんでウソだったらすいません。
原作通りに展開しなくても笹荻がくっついてたり、全然関係ないところでクッチーが恵子と付き合ってるような描写があったりで、基本的にバッドエンドでも誰かしら幸せになるシナリオみたいです。
もうひとつはアメリカ仕込みのハグの威力の凄いこと凄いこと。リプレイでは割愛しましたがこの時の展開、田中もハグで落としてます。それに荻上さん登場直後までならコレを活用して笹原と交際することも可w
まあ攻略対象キャラではないので描写は淡白ですし、この場合荻上さんが大学中退してしまうので笹荻派としては許せない。なおエンディングで、編集者になった笹原の担当作家として漫画家荻上さんが再登場します。
大野さんが田中と付き合わない状態で斑目にハグで流れを持って来れるかもしれません。あーでもあんまり早いと斑目が心開いてくれないしなー。
かたやツルペタ、こなたヒゲハゲデブと属性の重なりが全くないだけに予想通りとでも言うべき困難さです。でもプレイしててけっこうホンワカする!これは中毒性高いですよ。
……問題は斑目なんだよなあ……どうしたらいいんだ実際。
また新展開あったらご報告にまいります。では。
>まだメモ@大野
何か普通にいい話にまとまりましたね。
特に斑目の総受け体質の解説とか、キス迫る大野さんと拒む斑目とか。
GJです。
>まだメモ@大野
一人称形式はけっこう読んでて感情移入しそうになります。
はまりこみそうw 原作を読み込んでますよね。GJでした〜。
以下 恵子バージョン2 間に合うかな スレの容量・・・。
プレイヤー主観スタイル なお、プレイヤーの選択、嗜好、品位人格は
作者とは一切関係ありません。いや、本当に・・・。
よーし、これが今話題の『まだメモ』か・・・ 何々?
よってたかってヒロイン斑目を落としましょう?
ムフフ、そうか、複数の主人公を逆に選ぶなんて斬新だな。
どれどれ、邪道だがエロシーンから・・・。あれ? 見れない?
なっなにい? 『このゲームはストーリーを重視している作品です。
グットエンドにならないとピーは見れません。』
ちっ、しょうがない・・・。ええと選択できるキャラはと・・・。
『春日部 咲 難易度 S or C』
何だ、この難易度 S or Cってのは? 何々?
『このキャラはヒロインの本命中の本命ですが、
ヒロインのこのキャラの第一印象はとても悪いので
ストーリーの展開で非常に難易度が高低します』
ひっひでえ・・・。俺には難しいな・・・。別のキャラは、荻上はどうかな?
『荻上 千佳 難易度 A』
『序盤はかなり攻撃的な発言しかしません。ツンデレの
ツンツンです。上級者向け。秘密兵器でヒロイン
を失踪させかねません。』
うわ、これも難しい・・・。やっやっぱ俺には大野さんだな! うんうん。
『大野 加奈子 難易度 B』
『比較的難易度の低いキャラです。ハゲ好き、レイヤー等の
嗜好をヒロインが受け止められるかにかかってます。
しかし選択を誤ると、ダークモードに突入し暴走します。』
うっ・・・。初心者の俺にもできるキャラは・・・。恵子? C? 意外だな!! よし・・・これなら。
エロシーンも簡単に・・・ムフフ。
ゲーム、スタート!!
おっ、笹原に金を借りるシーンだな・・・。くっ口悪りー。キタキタ、斑目登場!! この辺は
オリジナルストーリーなんだな・・・。ほうほう斑目に一目ぼれ・・・。よしよし、愛想
良く・・・。なっ!! ギャル系の化粧に斑目ドン引きしてるー。
@ここは本心を明かさず本命を高坂と思わせておく
A積極的にアタック!!
Bここは引いてチャンスを待つ
うーん、第一印象悪そう・・・。これで本当に難易度低いのか?
引いても接点少ないしなー。ここはイケメン好きという原作のシナリオに
沿って進めてチャンスを待つか・・・。
@・・・と。
ぐはー、イベント少くねー。中々二人きりになれないなー。
おっ、海水浴!! ここは斑目に迫るチャンス!!
おお、元カレ登場!!
@高坂に助けを求める
A笹原に助けを求める
B斑目に助けを求める
ははは、ここは決まってるだろ、B・・・と。
ちょっちょっと待てーーーーー。斑目、他人の振りしてんじゃねーーーーー。
くっ・・・・。ここでもチャンス逃した・・・。ええと、ああ、試験に落ちた・・・。
恵子・・・不憫な子・・・(涙)。斑目卒業しちゃうしー。合宿は笹荻一本で
無理だこりゃ・・・。
しかしまだチャンスはあるぞ。あの男、卒業しても部室に入り浸りだからな・・・。
昼時を狙えば・・・。やはりいた!! しかも一人だ!
恵子「あれー、斑目さん、また今日もきてたんだー」
斑目「またはないだろう、または。恵子君だって部外者なんだし。」
恵子「あたしは違うよー。れっきとしたげんしけん部員だよ。
卒業した斑目さんとは違うよー」
斑目「ははっ、違いない。でも高坂は今日は来てないよ。」
恵子「うん・・・。でもいいんだ。斑目さんに会えたから・・・」
よし!! よし!! いいぞ 恵子!! 可愛いぞ(涙)
斑目「え? またまた!」
@「斑目さん・・・ねーさんの事、好きでしょう?」
A「いやー、お世辞バレバレ?」
B「そんな事、無いって!! 斑目さんに会えて嬉しいよ」
むむ、これは難しい・・・。Aはせっかくのチャンスを照れで逃しそうだし
Cが無難か? いやしかし斑目の性格を考えると・・・ここはリスクを覚悟
で@を選んでみよう!!
斑目「え!! いやだなあ!! 」
恵子「バレバレだって。みんな気付いているよ。」
斑目「そっそうか・・・。みんな知ってたのか・・・。」
恵子「せつないよね。好きな人をそばでずっと見てるだけなんて・・・」
斑目「ははっ。・・・恵子君もつらいだろう・・・。高坂の事・・・。」
恵子「あたしは・・・本当は・・・」
斑目「え?」
恵子「ううん」
斑目「俺と同じだね。」
いいぞ!! いいぞ!! 共感できる立場で親近感と好意が急上昇!!
さあ、恵子、もう少しだ。
恵子「ねーさんはきっと高坂さんと別れられないよ。」
斑目「・・・分かってる。」
@「ねえ、兄貴もめでたくオタップル成立した事だし、あたしらも付き合ってみない?」
A「わたしって・・・ねーさんより魅力無いかな?」
B「ねーさんじゃなくてあたしじゃ駄目かな・・・」
くー、恵子、可愛いぞーー!! お前なら大丈夫だ!! うーん、@は直接的過ぎる
か・・・。Aは慎重すぎるか・・・。ここはBでいこう!!
斑目「え?あのその○×△ 恵子君、さっ笹原とそっくりだよねー。
やっぱ兄妹だよねー。」
ギリギリ(怒) こっこのやろう・・・。ここまで言わせて、それしか言えんのか・・・。
恵子のどこが不満だと言うんだ、可愛いじゃねえか、このやろう。
ふっ不憫な・・・(涙)。はっいかん、いかん。
@ああ、もう面倒くさい。押し倒せ。
A泣け
B殴れ
ああ、もう面倒くせー @だーーーーーー
斑目「おわーーー、恵子君?」
おっ、やけくそに選択したら、何かいい感じ。偶然、恵子が下敷きになって、
斑目の手が恵子の胸に・・・。二人が見詰め合って、顔真っ赤にしちゃって・・・。
こりゃ、グットエンドか?やったーーー。カモーン、カモーン、エロシーンwww
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
( ⊂彡
| |
し ⌒J
ガチャ
笹原「まっ斑目さん・・・。俺の妹に何してるんですか・・・。」
咲 「ありゃゃゃゃ。あんたら場所わきまえないとー。ササヤン
顔面蒼白になっちゃって」
斑目「さっ笹原!! 春日部さん!! これは違うんだ・・・。」
恵子「ちっ、いいとこだったのに。」
斑目 部室出入り禁止
恵子 強制退部
BADEND
(゚Д゚)・・・・・・・・・・・・。
以下、プレイヤーが暴れだしたので、実況はここまでにしたいと思います。
さよなら さよなら
スレの容量間に合った〜 選択肢の数字一部間違ってました
軽くスルーしてください
9巻読んで、斑目の余りの切なさに泣きました。斑目、切ないよ、斑目。
で、思わず、書きました。初の投下になります。お目汚し、失礼。
53話の補完。会社抜け出して、部室行くまでの斑目さん。
●
もし俺が「フツー」の奴だったら。
斑目晴信はふと考えた。足を止めて目を空に泳がせる。手を顎に当てようとしてやめた。わざとらしいポーズに思えたのだ。
冬は終わり、春も近い。
異常なほどに冷え込んだ空気も今は若干の暖かさと湿気を含んでいる。乾いて軽かった冬の空気を斑目は懐しんだ。空気が肌の表面を舐めているように彼は感じた。
汗がこめかみから頬を伝って首へと落ちた。肌着の中に入り込んだそれに気づいて彼は顔をしかめる。手で軽くつかんで服を二三度揺さぶった。しかしそうして送り込まれた空気もやはり重たく肌に吸い付いてくる。眉間に皺寄せて彼は天を仰いだ。
太陽の光は圧倒的だった。
降り注いでくる光線はアスファルトの上で弾けて四方に跳ねている。
頭上から降り注ぐ光の雨。粉々に砕けて身体を打つ。その眩しさに文字通り目が眩む。健康的に過ぎる。そう思って再度彼は顔を顰めた。
悪い酒を飲んだような気分だった。不透明な酩酊感に支配されていくのを彼は感じていた。きらめく光の刃に身が苛まれる。そんな錯覚さえ抱く。あながち錯覚にも思えなかった。
再び天を見る。そして太陽に向かって舌打ちを漏らした。
太陽は嫌いだ。
立ち止まったまま、周囲を見渡した。
公園を人の群れが泳いでいる。群れはあるいは一人であったが、多くは番いを成していた。
彼らは手を絡め、あるいは腕を取って歩いている。口に出す声は喜びを含み、目は親愛の情を伝えている。
一組の男女が横を通り過ぎた。そして彼のことを見た。
視線を感じたのは一瞬だった。
彼は通り道に立っていた。女は身を引いて彼を避けた。道の中に立つ彼を胡乱げに眺めて通り過ぎる。それはただの反射であり機械的な反応にすぎない。
彼が女の進路上にいた、だから避けただけ。
そこに特殊な意味はない。
だからそこに「意味」を読み取るのは彼自身だ。視線に自己卑下を重ねて俯いた。アスファルトの向こうに池の水面がある。水面の向こうに見えたのはやはり男女の嬌声だった。
何がそんなに楽しい。
僻みだ。自分でもそう思う。しかし黒色の感情は心を浸して犯す。それは今、身を包む陽光の激しさにも似た感情だった。
もし俺がフツーの奴だったら。
もう一度考えた。あるいは違う姿もありえたのだろうか、と。
そして首を振った。
そんな仮定に何の意味がある。そう思ったのだ。仮定は仮定であり、現実は現実だ。仮定に蓋然性があるのならば思いを巡らせる価値もある。しかし、斑目晴信は明らかに「フツー」ではない。
――俺は「オタク」だ。
自分の姿を省みる。
おざなりな格好だった。一枚千円のワイシャツ、数百円のネクタイ、セールで買ったスーツにダッフルコートを羽織っただけ。見るものが見れば、どの程度の品物かはすぐにわかるだろう。そう、例えば、春日部咲が見れば。
頭の中に浮かんだ顔は斑目の心を揺らす。本来ならば、春日部咲は自分のような人間とは触れ合うはずのなかった人間だ。
数学の時間に習った「ねじれの位置」。
自分と春日部咲はあの関係だと斑目は思う。決して交わることがない。
彼女の整った顔立ちを斑目は思い出している。嫌味ではない程度に施された化粧がはっきりとした目鼻立ちを際立てている。黒めがちの瞳を斑目は濡れているようだといつも思う。
――もし俺がフツーの奴だったら。
詮無き仮定を再び心に思い浮かべた。
そして可能性を否定する。オタクではなかったとしても自分は随分と冴えない人間だっただろうと思ったのだ。春日部咲の恋人高坂に勝てる見込みは万に一つもない。
今自分を動かしているのが願望であることを斑目は自覚している。しかし、それは心を灼く願望だった。
だから彼は足をとめられない。再び大学へと足を動かし始めた。
目指しているのは、椎応大学サークル棟304号室。現代視覚文化研究会部室。
そこに「彼女」がいる。
そう思って、彼は足を急がせる。いるかもしれない、会えるかもしれない、それだけで十分なのだ。
斑目晴信は恋をしている。
打ち明けるつもりはない。ただ彼女と会うために昼休みに会社を抜け出し、部室へと足を急がせる。
手元でコンビニの袋が音を立てた。カップルとすれ違う。自分と咲があのように一緒に歩くことはないだろう。斑目は思う。それでも、あの部室でならば、一緒に空気を吸い、一緒に話すことができるのだ。それでいい。
――春日部さんに言わせれば、やっぱオタってキモイねーってところか。
斑目は苦笑を頬に浮かべた。確かに我ながら随分と気持ち悪いと思ったのだった。その「キモイねー」という彼女の声を聞きたい自分がいたからだ。
百万分の一の「もし」を心に思いながら、彼は歩を進める。
―もし俺が「フツー」の奴だったら、高坂抜きでも、春日部さんの友達くらいにはなれたのかな。
そんなことを思っていた。
hoshu?
>まだメモ@恵子
これで現視研女子は全員出揃いましたな。
しかし斑目をハッピーエンドにする道は険しいですな。
今までの中では1番いいとこまで行ったのに…
さてこの後はこの面子で別パターンが出てくるか。
それとも「やぶへび」の面々とか中島とかの参戦があるか。
あるいはいっそ男衆も参戦するか。
まだまだこのシリーズ続きそうですな。
>斑目、歩く
シクシクシク…
あっ失礼、あまりにも悲しい斑目に泣いてしまいました。
初めてですか。
いやいやなかなかどうして、いい話ですよ。
もしも俺がオタクじゃなかったら、これ1度は斑目考えたことあると思います。
でもオタクであるが故に春日部さんに出会えた、悲しいけど現実はこうなんですよね。
そんな斑目の自己矛盾の迷宮に泣けました。
もうじきSS完成するのですが、40レス近くあります。
(1レスあたり25行前後あります)
投下しても大丈夫でしょうか?
えっと、あと容量があと3kbなので、新作は次スレへどぞ〜
感想ありがとうございます。
>>461 いやはや、覚えていただいたなら恐縮です。
後編は、もう少し内面に突っ込んでいくつもりです。
>>463 >パトの大田巡査
そういえば似てますねwwヤブサキさんはいつもぶっ放してはカトウさんに
なじられるひびです。
スーの台詞は・・・大半はそれっぽく書いてるだけで元ネタはないと思うんです・・・。
でも、昔見たのが自然と出てるかもなのでよく分かりません・・・。
あ、「マダダ・・・」はクワ(ry ←誰だって知ってる
>>465 そう、海賊は彼らなのです。ヤブザキさんとは(一方的な)ライバル関係になっているのです。
海賊vs宇宙警備隊 というのも面白・・・はっ!
では、後編は次スレに投下しておきます。
前編のような投下ミスはしないようにしないと・・・。
あ、上は第801小隊のものです・・・。
>>まだメモ大野編
うは、大野さん積極的!ほかのストーリーより全然いけそうだっ!
こりゃ大野さんならやってくれるかも・・・。
>>恵子編2
めんどくさがっちゃったwwwww
もうちょっとじんわり進行すれば何とか・・・。
再挑戦期待ww
>>斑目、歩く
あ〜葛藤わかるなぁ・・・。こう一人で色々考えちゃうんだよね。
これがオタクか・・・。泣ける・・・。
最近の投下の多さ&ほとんど斑目話で胸がはちきれんばかりに嬉しい。
感想が追いつかねエエーー(汗)
>まだメモ大野さん編
いやー、すごい!原作の「田中と付き合ってる」という状況に折り合いをつけつつ、
話が展開していくのがすごく良かった。斑目にガンガンせまる大野さん。
大野さんのせまり具合にタジタジになってるヒロインに笑ってしまいました。
でも、斑目のセリフがあまりに切なくて…ナミダデガメンガミエナイヨ
大野さんはすごいおせっかいですが、相手を思う気持ちをいっぱいに内包してるので嫌味じゃないんですよね。
最後斑目の気持ちが軽くなって、読んでてすごくほっとしました。
>恵子編
うはw恵子編もなかなか一筋縄ではいかないですねwww
プレイヤーも恵子さんっぽいwwwww
しかし、この話もきっと、すごくいい方向に転がる可能性を秘めているので
またがんがって進めて下さいw
>斑目、歩く
初めての投下、お疲れ様です。いきなりクオリテイ高っ!
こうしてもやもやとしたものを吐き出せずにいるのが、読んでてすごく切なくなりました。
>確かに我ながら随分と気持ち悪いと思ったのだった。その「キモイねー」という彼女の声を聞きたい自分がいたからだ。
ここが泣けました。まさしく茨の道だなあ…。