#47 怪談・木登り幽霊 の巻
猛暑である。サウナ同然の教室内ではチョークもふやける。こう暑くては授業にならない。
風を入れようと窓を開けるが、裏の童守寺の工事がうるさく、これはこれで授業にならない。
童守寺の住職は金持ちらしく、駐車場やマンションの経営で儲けているらしい。
その住職から、ぬ〜べ〜にお呼びがかかった。
切ろうとするたびに事故が起きる、一本の木の除霊を頼みたいそうだ。坊さんなんだから自分でやれよw
この木には伝説がある。
この木の下には、400年前にこの地を治めた大名、北条氏の愛妾 佐々姫の墓があった。
姫は政略結婚で輿入れしてきたのだが、若い侍と恋に落ちてしまった。
怒った殿は姫を斬り殺し、侍も七日七晩のむごい拷問の末殺されてしまったという。
それからというもの、毎年二人が殺された7月の終わりの満月の夜、
若武者の霊が恋しさのあまり姫の骨を掘り起こしに来るという。
しかしどうしたわけか骨は見つからず、若武者は泣きながら帰って行く…こんなことが毎年繰り返される。
その証拠に、この木の根元にはいつも穴が掘られていて、いくら埋めてもすぐ元通りになってしまうのだ。
ぬ〜べ〜は霊視で、木からどろどろした怨念を感じる。ぬ〜べ〜自身もどろどろだ。
400年を経ても消えない怨念、ぬ〜べ〜はちゃんと供養するように住職にアドバイスするが、
住職は面倒がってぬ〜べ〜に任せる。
結ばれぬ恋の怨念。この話を聞いて、生徒達は今夜ここでの肝試しを企画している。
が、ぬ〜べ〜は大反対。小学生が夜中に遊び歩くとは何事か!
生徒達は、自分達が小学生である事を忘れていた。そして、霊の恐さも忘れているようだ。
だが、ぬ〜べ〜の忠告もお構いなしに肝試しを強行することにした。
広・郷子・克也・美樹の4人は一度美樹の家に集合し、夜中に童守寺に侵入した。
日頃霊を見慣れ幽霊グルメになった一行は、ちょっとやそっとの霊では恐がれない。
せいぜい恐い霊が出てくる事を期待しよう。
木に登って待ち構えていると、鈴の音が聞こえてきた。
見ると、木の下に時代劇に出てくるような棺桶が運ばれてきた。
何が始まるのかと見守っていると、中から何かが出てきた。これが、穴を掘る侍の霊か。
「会いたや…恋しや…会いたや…恋しや…」
涙を流しながら穴を掘る侍の手は、400年も掘り続けた為か骨が露出している。
叫び声もまるで地の底から響いてくるようだ。
もう充分涼しくなったところで、迂闊にも克也が大きなくしゃみをしてしまった。
侍はこれに気づき、一行の方を振り向く。
眼球をはじめ顔中に刺さった釘、裂かれた舌、皮を削がれた顔面。その顔には拷問の跡が見て取れた。
見つかった。ここは木の上、逃げ場はない。
「会いたや…恋しや…会いたや…恋しや…」 侍は木を登ってきた。上へ逃げるしかない。
克也と美樹は自分が助かりたい為に醜い言い争いをしている。広が侍を説得するが聞き入れられない。
木のてっぺんまで逃げてきて、今度こそ逃げ場はない。ここに来て、美樹が木から滑り落ちた。
パンツ全開で尻から侍に突っ込んでいく美樹は、必死で木にしがみつく。
その力で木に穴が開き、中から姫の白骨が現れた。美樹は失神したが、侍は姫と共に成仏した。
400年の間に死体が木の上に押し上げられていたのだ。いくら掘っても会えない訳だ。
やっぱり霊は恐ろしい。
翌日、ぬ〜べ〜が除霊の為改めて童守寺を訪れるが、一晩あけたら霊気がなくなっている。ま、いっか。
ケチな住職からのお礼はスイカ1個。危険もなくなったし、先生付き添いで肝試しでもやるか。
いえ、もうお腹一杯です。広達は全力で逃げ出した。
事情がわからず一人???なぬ〜べ〜でした。