火の玉先生つっき〜 #1 科学の力で妖怪退治! の巻
地獄先生ぬ〜べ〜は前回で終わりました。今回からは私、大月先生が主役です。
な〜んてウソウソ。 地獄先生ぬ〜べ〜 #44 夜鳴るピアノ の巻
「プラズマです!!霊はすべてプラズマです!」
私は5年1組の担任の大月です。科学の力で霊現象の解明に挑んでいます。
今夜は、子供たちに頼まれて夜な夜な音楽室でピアノを弾く霊…もとい、プラズマを退治しに来ました。
この世に霊など存在しなません。私の発明品「プラズマ除去装置」でそれを実証してみせます。
音楽室に入ると、確かにプラズマがピアノを弾いていますね。
いざプラズマ除去!と身構えたとたん、プラズマは消えてしまいました。
あのプラズマは泣いていた。まるで私に何か訴えかけるように。かわいそうに、何か事情でもあるのだろうか。
なにを馬鹿な。プラズマに事情などあるわけがない。この世に科学で解明できない事などないのです!
しかしながら昨夜から一睡もせず考えても答えが出てきません。誰か答えを教えてくれ〜〜〜!
人が真剣に悩んでいる横で、3組のインチキ霊能力者ときたらまた子供たちにでたらめを吹き込んでいます。
あのプラズマがピアノの発表会に行く途中に死んだ子で、苦労が報われずに死んだ事を未練に思い
泣きながらピアノを弾いているのだなどと大嘘を。
私が制裁を加えると、鵺野くんは左手の「鬼の手」とやらを私に見せつけてきました。
これは…紛れもないプラズマです!プラズマの除去も済んでいないのに、鵺野くんは行ってしまいました。
手にプラズマをつけたままでは危険だというのに。
3組の教室から声が漏れてきます。鵺野くんの弁によれば、その子はピアノが好きで、その才能を認めた
音楽教師が熱心に個人指導をしていたそうです。かなりのスパルタだったようですが。
しかし、その成果を試すコンクール会場に行く途中で事故に遭い、音楽教師もろとも亡くなったのだとか。
それが未練で化けて出るだなんて、くだらない。霊など存在するわけありませんよ。
しかし、あの涙は…わからん、なぜプラズマが心を…
──大月先生は科学の万能性を信じる根っからの科学者だ。
しかしまた、子供たちの味方でもある。生徒達の期待を裏切る事はできなかった。
おまけに凄い努力家である。頑張れ大月先生、科学の力で霊現象を解明するのだ!──
なぜ感情があるかは後で考えるとして、まずはプラズマがどんな感情を持つかをに調べる必要があります。
プラズマは今夜も律儀にピアノを弾いています。
おや?もう一つプラズマが見えたような…気のせいでしょうか?
プラズマの感情を調べるにあたり、植物の心を調べる為の実験機材を用意しました。
微弱な電流の変化である程度感情が推測できます。それによると…
ひどく悲しんでいますね。プラズマ相手にバカバカしいとは思いますが質問してみましょう。
「君はコンクールに出られなかったのが心残りで毎晩ピアノを弾いているのですか?」
プラズマが首を振ったような仕草をしました。それにこの機材の反応は…
! 「違うのですか!?ピアノを弾きたくないのか。ではなぜ?」
パソコンのモニターに文字が表示されていきます。ピアノを弾くのと同じ要領でプラズマが打ったようです。
「 ムリヤリ センセイ 」
「無理やりとはどういう事です!?君は誰かに無理やりピアノを…!?」
私が言い終わる前に、突然ピアノが私に向けて飛んできました。
すんでのところで鵺野くんに救われましたが、彼は先程の現象をポルターガイストだと結論付けたようです。
鵺野くんに続いて、彼の生徒と私のクラスの生徒が音楽室に入ってきました。
鵺野くんが何事かを唱えると、ピアノの前に少女が姿を現しました。どうなっているのでしょうか。
プラズマの未練を解くためにこの場でピアノの発表会を催すつもりだそうです。
「やめなさい!このプラズマはピアノを弾きたくないんだ」
しかし鵺野くんは聞く耳を持たない。おまけに彼の生徒はいちいち上げ足を取ってくる。
結局発表会は開かれました。プラズマは嫌々ピアノを弾いているようです。
いや、非科学的な。プラズマに心などあるはずがありませんよ。
だから、無理に止めれば霊という非科学的な存在を認める事になる。
しかし…今この子の気持ちをわかってやれるのは私だけなのだ。
いつまでも成仏しないプラズマを鵺野くんは訝しがっています。
私は力ずくで発表会を止めさせる事にしました。
「君は霊能者のクセに霊の気持ちもわからんのですか。
この子は…こんなこと望んではいない!誰かにムリヤリ弾かされているのですーっ!」
鵺野くんは左手でプラズマに触れ、このプラズマが一緒に死んだ音楽教師のプラズマに
ピアノを弾かされていると理解したようです。さっきのポルターガイストもそのプラズマの仕業だと。
鵺野くんがピアノに触れると、彼の背後から音楽教師と思しきプラズマが現れました。
どこかのミュージシャンのような恰好のそのプラズマは鵺野くんに向かっていきます。
「プラズマ拡散〜」 私のプラズマ除去装置が役に立ちました。
鵺野くんも左手のプラズマで応戦しているようです。
教師のプラズマは消滅し、女生徒のプラズマも嬉しそうに消えていきました。
あの子は教師の霊に取り憑かれて成仏できなかった。霊が霊を縛る呪縛霊だったと
鵺野くんは結論づけたようですが、今回は科学の勝利を認めざるをえないようです。
鵺野くんが、私が自説を否定しただなどと言っていますが、そんな覚えはありません。
あれはプラズマです。たまたま心を持ったプラズマなんです!
「科学は万能です。未だに解明できない事があっても、それは時間の問題なのですから。
それから、あの0能力教師の言う事はやっぱり信じちゃいかんぞ」