曇天に遠雷が響く深夜、
トモキたちは廃墟と化したビルの中で眠っていた。
床に一緒に寄り添って眠るトモキと陸王、
そしてひとりデスクの上で丸くなっていたミケ。
彼女は暗いところに独りでいる怖い夢を見て目を覚ます。
寝付かれずにいると、窓ガラスを雨がたたきはじめた。
「そういえば、のぞみに拾ってもらった夜も、こんな雨だっけ」
真っ暗な闇の中、はるか上にかすかに見える暗い空から降ってくる雨粒。
細い空を見上げて、泥だらけの痩せた子猫がかぼそい声を上げていた。
ほとんど中も見えない段ボール箱の中から鳴いている声を耳にして、
のぞみは彼女を見つけた。
のぞみは自分が濡れるのもかまわずに汚い子猫をやさしく抱き上げた。
−−その人間の手は……本当にやわらかくて、あたたかくて………
「うちにおいで、おまえ…。ね…」
その時からずっとあたしは のぞみのものだ……
だが、静かな時間は突然破られる。窓の外を走る物音。
雨の音かと思ったそのとき、雷光がはしった。
巨大な化け物鳥が影となって窓から中を見ていた。
ミケはトモキと陸王を起こそうとするが、
二人とも深く眠っているのか目を覚まさない。
「陸王! ちょっとォ、あんた、番犬の役にも立たないじゃん」
鳥たちは何羽もこのビルを旋回している。
「ねらってるんだ…あたしたちを」
それに思い至ったミケは、ある扉の向こうは天井が落ちかけていて
侵入口になりうることを思い出し、扉の向こうの様子をうかがいに行った。
扉を開け放った彼女の目の前には、
今にも扉を破ろうとしていた鳥の爪があった!
慌てて扉を閉めると、轟音とともに扉がひしゃげる。
ミケは必死で助けを求めた。が、二人は来ない。
扉どころか壁ごと突き破って、化け物鳥は室内に首をつっこんでくる。
巨大なくちばしにくわえられて床にたたきつけられそうになるミケ。
しっかりしなきゃ…のぞみに会いに行くんだから
窮鼠猫を噛む状態で、化け物鳥の顔に噛み付くミケ。
反撃は予想外だったのか、化け物鳥はひるんで口を離した。
ミケは必死で化け物鳥の顔に猫引っかきをくらわすが、
戦意を取り戻した化け物鳥の翼に腹を打たれて吹っ飛ばされてしまう。
あっ、だめ…かも…
のぞみに会いに行けな…
抱き止めるように両手を広げるのぞみの姿が、一瞬うかんだ。
だが、実際に彼女を抱きとめたのはトモキだった。
わざとではないが、彼の顔に力いっぱい肘鉄を食らわしてしまうミケ。
転んでミケの下敷きになってしまうトモキと、
その横を駆け抜けてゆく陸王。
思わず泣き出すミケに、トモキが肩と頬に手を当てて語りかける。
「ごめん、一人で戦って…怖かっただろ」
「さわ…さわ…さわんないでよ。あたしはのぞみにしか…」
ミケは言いながらも、震えてトモキのマントをぎゅっと掴む。
陸王は化け物鳥の攻撃をジャンプでかわし、力強い踵落しを顔面に食らわした。
頭から血を噴出して悲鳴を上げ、逃げ出す化け物鳥。
その光景を見て、他の奴らも逃げていった。
「追い払った! 偉いぞ、陸王!!」
陸王は、トモキの言葉に精悍な顔を崩してにやけ…
「ンン? エライ?」
四足になって崩れまくった笑顔でトモキに駆け寄ってゆく。
「エライ? エライ? エライエライ!? ほめてほめてほめて」
力いっぱい抱きついてくる陸王に呆れながら、
首と頭をゴシゴシとなでるトモキ。
「ホラホラホラ、なてでなでなで! ったく、この甘ったれわぁ〜〜〜」
幻の尻尾をぶんぶんと振り回す陸王を見て、ミケは思った。
バカ犬……
確かにのぞみはいないけど…
あたしにとっては今はここが 一番安心できる場所なんだ…
ふと思った、そのことに自分で照れたのか、
ミケは少し拗ねたような顔をして二人から目をそらす。
フン…しょうがないからこいつらと一緒にのぞみを捜すとするか……
彼女は思う。
いつかのぞみに会えたら…
おだやかに微笑むのぞみがいて、もとの猫の姿の自分がいて、
横から彼女をなでるトモキがいて……
え? ちょっとオイオイ。
なんであんたがあたしの空想の中に出てくるわけ?
うとうとしながらミケは思う。
……まあ、いいか……
のぞみとミケと、トモキと陸王。
四人がそろっている平和な時。
そのうちこんな日もくるだろう。
きっといつか−−きっとね−−
ミケは、トモキと陸王の間で、丸くなって眠りに落ちた。
いつの間にか嵐は去り、雨上がりの空に日が昇る。
ぬおオ、子供のころのミケかわい〜!!
陸王の回があったから、これはミケの回ってやつだな。
意地っ張り可愛いな!
最初離れて寝てたのに最後くっついて寝てるのが信頼関係できたみたいでほほえましい。
真央さんの家で思いっきりトモキの上で寝てた気もするがw
ミケ…(つД`)
早くのぞみに会えるといいなあ、本当に。
前回のボスの話に続きちょっと涙ぐんでしまった。
さりげなく死亡フラグなんじゃないかと思った俺はエルサガで毒されすぎたのだろうか・・・
陸王可愛すぎ
たまらんな
隣町についたトモキたちは、おじさんの家へ行った。
だがやはりここも無人。どこかに避難しているのだろうか。
踏み出す陸王の足元で廊下の板がたわむ。障子もスムーズに開かない。
「ずいぶんボロだぞォ、この家…」
「この家を立て替えるのがおじさんの夢だったんだよ」
トモキのいとこの健はJリーガーになるのが夢だった。
「それぞれの街で、それぞれの人が、いろんな夢を夢見て平和に暮らしていたのに…
どうしてこうなっちゃったんだろう。
あの流星雨はいったい何をかなえたっていうんだ!」
突然陸王がトモキの頬をなめる。
怒るトモキに、陸王は痛いのが治るようにだという。
「トモキ…心が…痛い…」
「まだ町中捜したってわけじゃないんだからさ、元気出して頑張ろうよ、トモキ」
言ってからミケは、のぞみを捜してもらわなきゃいけないから、
いちいち落ち込まれちゃ困るんだ、と顔を赤くしてそっぽを向く。
僕にはまだ…こいつらがいるから…
街を歩く三人は、人の姿を見つけた。相手も三人を見つけ、近寄ってくる。
だが、様子がおかしい。
「よその町の者だなっ。来てもらおう」
古代のような簡素な布の服を着た男たちは、三人を捕らえる。
戦おうかと言う陸王にトモキは事情がわからないからと止めた。
「われらが大王(おおきみ)に会っていただく」
よそ者はみそぎが済んでいないからだ、
などとわけのわからないことを言う男たち。
三人は後ろ手に縛られて連行される。
三人は大勢の人が働いている街角へと連れて行かれた。
男たちと同じような簡素な服を着た人々が、
ビルの廃材や食料を運んでいる。
下に丸太を転がし、大きな板にコンクリのブロックを載せて人力で引く、
そんなピラミッド作りのような古い方法で。
ここでは人には二種類あるようだ。働かせる者と働く者。
何故か誰も彼もが憑かれたような光のない目をしている。
トモキの目の前で一人の老人が倒れた。
重荷を運び続けているのか、その肩は皮がむけて血に汚れている。
思わず駆け寄るトモキだったが、老人は
大王のために早く大神殿を完成させなければと立ち上がって荷を引き続ける。
彼らの目の前には、神社を改造したのか、
高台がそびえ、その周囲にはビルが埋まりこむように寄り添い、
山の頂上に社がある、という異様な光景があった。
人々は誰もが「大王さまのために」とつぶやき、
死んだ目で仕事をし続ける。
大神殿の鳥居をくぐると、
神主のような格好をした男が抜き身の刀を手に立っていた。
どうやらこの男が大王らしい。
三人は神社の片隅に、同じように縛られた人々のそばへ座らされる。
ここで縛られている人はまともなように見えた。
「ここはひどいところだぜ。毎日ここで見せられることといったら…」
大王はひざまづく男の首に刀を振り下ろす。
「この世のどこかに巨大な隕石が落ちたという……
必ず探せと言ったはずだ。
なんの手がかりも見つけられずに戻ってくるとは……おろか者め!」
大王は怒りに任せて何人も斬首した。
「ばかな! なぜ逃げない!? しばられているわけでもないのに!」
ある男は斬首される前にうつろな目でつぶやいた。
「大王のために働き、大王のために死ぬのが私の至福…」
大君は振り向くと、血に汚れた顔で微笑む。
「教えてやろうか? この街に何が起こったのか。
星が俺様の願いをかなえたのだ」
あの大流星雨の夜、男は願った。
世界の支配者になりたい、全ての人々は自分を神とあがめ、
男のために働いて、男のために死ぬのだ、と。
あの時に、いろいろな願いを願った者がいただろう。
「欲のより強い者が勝つのだ!
俺がこの街の連中のくだらぬ夢を食らってやった!」
家を建て替えるのが夢だと笑いながら語った叔父。
レギュラーになったんだと嬉しそうに言っていた従兄弟。
地面には、様々な願いを託された絵馬がいくつも落ちて壊れていた。
それらは全てくだらぬと、大王は断じたのだ。
大王は言う。全ての支配を願ったのに、支配できたのはこの街一つ。
この世界のどこかに落ちたという巨大隕石を手に入れて強く願えば、
今度こそ全世界の支配者になれるのだ。
全ての人々は喜んで大王のためにかしずき、働いて死ぬだろう。
あまりに勝手な言い草に、怒りをおぼえる三人。
うなる陸王、ネコの体のやわらかさをもって縄を解くミケ。
ミケが自由になった手でトモキの縄を解こうとしたそのとき、
トモキは怒りを込めて大王に言った。
「大王さんとやら…言いたいことはそれだけか?」
トモキの怒りに反応してか、星が輝いて彼の縄を焼き切った。
立ち上がる彼の体を星の光が包む。
「そんなに星の力が欲しいなら、見せてやるぜ!!」
友樹かっけえー!
つーか友樹って本当にいい奴だなと思う。
普通の子なんだけど、思いやりとそこから生じる勇気がすごい。
最初の方でも友達を救おうとして危険を冒してたし。
陸王、ミケもええねえ。ミケの縄抜けすごい。
おじさんと従兄弟の夢は切ないよ…。
おじさんたちはどこへいったんだろうな。
奴隷たちの中に発見できないのは幸いか、それとももう殺されたのかな?
トモキは勇者だな。力を得たことで自信がついたのか、どんどん精悍になってくし。かっこいいなー。
陸王も、なめられた方はたまんないけど、二人は二人でトモキを元気付けようとしてるし。いいパーティーだ。
戦おうとしたトモキの目の前に、盾として現れる叔父夫妻と従兄弟。
なんて展開……ネーか。相手はトモキのことなんて知らんもんな。
うおークライマックスきたー
「くだらぬ夢と言ったな…愚民どもの願い…と…」
トモキの左腕が激しく輝く。
「な…なんで、この光は……まさか……あの石……!!」
「人の夢を馬鹿にし……人の意思を奪って…
世界の支配者になりたいだとォ?
てめェの夢こそなんだよ!!」
大王(おおきみ)に向かってゆくトモキ。
大王はタケルヒコという男を呼んだ。
呼び出されたのは体格のいい男だった。
男は大王の命令に従いトモキに襲い掛かってくる。
タケルヒコはかつて格闘王を目指した男。
いくら不思議な力が使えてもトモキが敵うはずがない。
タケルヒコの攻撃を星の力で受け止めたはいいが、
蹴りを頭に食らって倒れるトモキ。
とどめを刺そうとしたタケルヒコに、縄を解かれた陸王が襲い掛かるが、
軽く突きを止められて一撃の下に叩き伏せられてしまう。
「格闘王…を…めざしたほどの男だったら…
なんでそんな奴の命令を聞いてるんだよ!」
立ち上がって問いかけるトモキに、大王が笑って答える。
「人がいかなる夢をもって始め、
いかなる苦労をもって手に入れた技も力も、
すべて私のものだからだ!」
その言い草に怒って大王に殴りかかろうとするが、
タケルヒコが割り込んでくる。
トモキはタケルヒコとは戦いたくないのだが、
阻まれる以上仕方がないと殴りかかる。
しかし、やはり体裁きと格闘センスが違いすぎる。
やられながらも必死で攻撃をかわし、トモキは叫ぶ。
「思い出せよ、あんた自身のことを! 自分自身の夢を!!
あんたがどうやって生きてきて、どうなりたかったのかをよ!」
タケルヒコのみならず大王以外の全員が彼の言葉を聞いていた。
そこに集まっていた人々、食料を運んできた人々……
その間にもタケルヒコの攻撃は続く。
戦うことに慣れた男に、トモキは無茶苦茶ながらも何とかくいついていた。
ミケはかつてのぞみが言っていたことを思い出す。
そうねえ、友樹くんはお調子のりで、おっちょこちょいのとこもあるけど
いざという時、ゆずれない時には…
大王は焦っていた。彼の絶大な力を象徴する男が、子供一人仕留められずにいる。
そのことが、人々の心への支配を緩めつつあった。
また、トモキと戦い続けるタケルヒコもまた迷い始めていた。
思い出せ……? 思い出せだと?
何を言う。俺はずっとこの大王様の下で………
いや、昔こんな戦いをしたことがある。
彼と戦う少年の瞳には絶対に負けないという強い意志があった。
こんな目をした奴らと…
男の脳裏に、リングと観客の姿が浮かんだ。
そうだ、めざすものがあった…俺は…
そのことが一瞬の隙を作ったのか。
トモキの左が顎にクリーンヒット!
タケルヒコは倒れて目を回し、大王は役立たずめと吐き捨て逃げ出す。
「待て、どこへ行く。
大王ィ、あんたと話つけんのが目的だぜ!」
大王は逃げながら、そこに立つ人々を盾にしようと命令する。
だが人々は大王の言葉には従わず、ただ黙って大王を見つめるばかり。
戦いもせず、ただ黙ってたっているだけの人々を邪魔に思ったか、
大王は怒りに任せて刀を抜き放ち、逃げながら人々を斬った。
その行為にトモキの怒りが爆発する。
「てめーは、倒す!!」
トモキの左腕がひときわ強い光に包まれ、
アームターミナルがまたあの輝く銃に変化した。
光の弾丸は逃げながら振り返った大王の背に当たる。
俺の…俺の野望が…
瞬時に大王を貫いて粉々に撃ち砕いた光は、
急激なカーブを描いて天へとはしりぬけた。
はるか遠い地で、その光を目にしていた者たちがいた。
「救世主様、流星が天へ昇って行きます。
あのようなことがあるのでしょうか」
「いや…おそらくは『彼』だろう」
救世主は天を目指す流星を見、うっすらと微笑んだ。
「楽しみなことだ……」
うお〜、なんか少年漫画っぽいぞ!
自分や他のものを守るための咄嗟の行動という訳でもなく、
酷い奴とはいえ人を裁いて殺したな、トモキ。
え?奴は人を切りまくりながら逃げてったから、
トモキは人を守ってるじゃん?
ジャンプっぽかった
ていうか、ようやくガンガンらしい展開になった。
作者はトモキに「倒す」じゃなくて、「殺す」って言わせたかったようにも思えるな。
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
大王と名乗ったあの男が死んだことで、
人々の心への支配は解かれた。
ひょっとしたら、我々の心の弱さに
あの男の野望がつけいったのかもしれない…
人は言う。トモキのような強い心をもって街をたて直すと。
「僕は、強い…わけでは……」
と、そこへトモキの叔父夫婦と従兄弟がやって来た。
彼らもまた意思を奪われていたようだ。
しかし、トモキの父克樹のことは誰も知らなかった。
叔父はトモキにしばらくここにいないかと提案する。
だが、トモキは友達も捜さなくてはならないからと、
陸王とミケを伴い再び旅に出た。
彼の表情はすぐれない。
そんな彼の後姿を、タケルヒコと呼ばれていた男が見送った。
おまえはもっと強くなるはずだ……頑張れ
そして日が暮れた。
おじさんの所に泊めてもらえば良かったんじゃないか、
そう思い始めた頃に、明かりがついた公衆電話が見えた。
明かり、つまり電気が生きているのだろうか。
トモキは携帯電話と公衆電話を試してみるが、どちらも通じない。
だが、通信ならばどうだろうか?
トモキは自分のアームターミナルと公衆電話をケーブルで繋いでみた。
すると、おかしなネットワークにつながった。
掲示板やチャット、データベースなどはあるが、
流星雨のことも一言も出てこない、
まるで別の世界のネットワークを覗いているかのような所。
その中を見ていると、地球の映像のようなものが見えた。
日本の一点に地球全体から線が集まっており、
その集中点には大規模な施設のようなものがある。
そしてそこには「NOZOMI」と記されていた。
おそらく施設内部中央に、コイルのようなもので覆われた球体。
球体……岩……隕石?
誰かがネットワークを乗っ取って勝手に書き込んだのか?
だが、それにしては情報の量が膨大で緻密だ。
突然、アームターミナルの画面が勝手に動き出し、
彼の意思とは関係なくコマンドを打ち込み始める。
新星都市……メサイヤ……メサイヤの予言……
やがて腕に星を帯びし者現れ
東の地よりこの都に訪れて新しき世界……
来たれ腕に星を帯びし者 その者の名は
突如、ウインドウの中から男の顔と手が描き出される。
トモキは知る由もないが、それは救世主と呼ばれている男だ。
男はトモキに向かって手を差し出し、にやりと笑った。
「来い 大空友樹」
トモキは驚いて後ろへ倒れこんだ。
その拍子にアームターミナルと公衆電話をつないでいた
ケーブルが壊れ、通信用のカードも抜け飛んだ。
「僕の名を呼んだ…どういうことだ
この隕石と、この力と……何か関係あるのか……?
誰かがじっと僕を見てるんだろうか…」
不安にさいなまれる彼を、
物陰からサングラスの男が見つめている。
陸王とミケに元気付けられながら街を歩いていると、
行く手に真っ黒な壁のようなものが見えた。
それは、道路を突き破って異常に成長した植物たちの森だ。
ミケが微笑んで言う。
「わかった、きっとアスファルトの上に落ちちゃった種とか
地中に張った根っこの願いがかなって、芽を出したんだねえ。
いいこともあるじゃん、ほら」
トモキは道路を突き破り、ビルを抉って貫く木々を見上げる。
「木々の夢か…人間の夢を壊して…」
「よし、今日はこの森の中で休もう」
だが、陸王とミケはあまり乗り気ではないようだ。
中の様子は良くわからないし、登ったことのない木ばかり。
「でも、電話線来てないみたいだから、いいなーっと思って」
トモキはさっきの不気味な現象を気にしていたのだ。
言い訳を捜すように木々の中に人を見つけるトモキ。
実際、何人か木々の根元の霞に見え隠れしている。
ミケが止めるのにもかまわず声をかけると、
それは眼鏡の男。トモキの父親だった!
「父さん!! 生きてたんだ!」
喜びのあまり駆け寄ろうとするトモキの腕を陸王がつかむ。
「おいっ、ちょっと待てよトモキ!
どうしてこんなとこにいきなりパパさんがいるんだ?
変だと思わないか」
「変? 変なものか。あれは父さんだよ!」
克樹は黙ったまま優しく微笑んでいる。
もしこんなところで無事なら叔父さんに連絡しているはずだし、においがおかしい。
だが、不安な時に捜していた人を見つけたトモキは冷静さを欠いていて、
陸王の言葉に耳を貸そうとはしなかった。
「陸王!! 飼い主を忘れたのか」
ミケは植物を見つめ、この違和感が森全体にあるのに気づく。
そうだ、この森……さっきからこの森全体から嫌な感じがしてた…
全く聞く耳持たないトモキにごうを煮やし、
陸王は正体を暴いてやると克樹に殴りかかる。
「陸王、待て!」
トモキの絶対的な命令に従い、止まってしまう拳。
克樹は目の前の拳にも平然として反応を示さない。
だが、トモキは異常に気づきはしない。
「飼い主に逆らうなんて、どうかしちまったのか陸王! お座り!」
忠実に命令に従ってしまう陸王。
トモキは「そのまま座ってろ」と言い放つと、克樹の方へと歩き出す。
陸王はお座りしたまま、トモキにずっと呼びかけ続けていた……。
お座りしたままトモキを引き止める陸王が可愛いなぁ。
あくまでもトモキには忠実なんだな。
それにしても、この父親って明らかに罠だよね。
ひょっとしてグラサン男が先回りしたか?
不用意すぎだよな、トモキ
まあ本当はまだまだ子供なんだし久しぶりに親に会って気を緩めるなって方が無理なんだけど
トモキヒドス。
そして植物の夢だの何だのいいもののように描いておいて
罠に使う気満々のつっつーもヒドス。
ところでトモキの一人称、いつの間にか「俺」から「僕」になってんだよね。
隕石のある場所は…岐阜県のあたり?
英雄的な強さを見せたすぐ後に人間的な心の弱さを見せるってのがいいね
「父さん…無事で…」
克樹に歩み寄るトモキ。後ろでは陸王が叫び続けている。
「トモキ! そんなヤツのとこなんか行くな! そいつはニセモノだ!」
克樹はトモキを森の奥へと案内する。
森の木々は所々が瘤のように膨れ、
その隙間から窓のように明かりが漏れていた。
中には人影も見える。木の中に家があるのだ。
「自然と調和したすばらしい街だよ。
今日からお前もここに住むんだ。
もう何も心配することはない……」
トモキは安心しきって克樹の言葉を嬉しそうに聞いていた。
焦る陸王が、克樹のニセモノを追い払おうと石を投げた。
はっとして振り向いたトモキは見ていなかったが、
ミケの目にはその石が克樹の姿をすり抜けていったように見えた。
「陸王! なんてことをするんだッ!」
トモキは怒りに任せて陸王の顔を平手打ち、叫ぶ。
「おまえなんて知らない! どっかへ行ってしまえっ!」
彼はきびすをかえすと、克樹と一緒に木の家に入って行ってしまう。
陸王は『おすわり』をしたまま後姿を見送った。
トモキの行動に怒るというより怯えてミケが言う。
「なっ何よあれ。やってらんないわ。
こっちから願い下げよね、あんなやつと旅をするなんて…」
陸王は少し寂しそうな顔をして立ち上がった。
ミケは陸王を気遣うように顔を覗き込む。
「元気出して。これで自由の身ってわけじゃない。
まったく、ペットは人間のケライじゃないってのよねェ」
彼女は、トモキなど放っておいてこの不気味な森を抜けてしまおうと言う。
だが陸王は、トモキが何か危ない目にあったら助けなければならないから
まだしばらくここにいると答えた。
「ちょっとォ、あんなことされてまだ義理だてするわけ?」
「そんなこと……関係ないんだよ」
陸王は行ってしまった。
残されたミケは、一人で歩き出す。
森の中には何人もの人々がいて、笑いあっている。
もともとトモキは飼い主でもなんでもない。
止めても聞かなかったんだからどうとでもなればいい。
ミケはひとりで森を出てのぞみを捜せばいいのだ。
彼女の目の前にはいつの間にかのぞみが立っていた。
だが、優しく微笑み語り掛けてくるのぞみからは
彼女のにおいはしない。
「ちょうどあたしがのぞみのことを思い出した時に…
これって…ひょっとして…」
克樹に案内されて家に入ったトモキは思わず笑う。
新しい家でも父は家中に本を散らかしている。
「これじゃあ前の家と変わらな…」
いや、トモキが今いるのは昔のままの我が家だ。
大きな本棚に山積みの本、見慣れた家具…
克樹は何事もなかったかのように、
トモキが左腕にはめているアームターミナルの事を訊いてくる。
そういえば今少し隕石が光っている。
時々調子が悪いから、そのせいかもしれない。
言葉のままにアームターミナルを外して渡すトモキ。
壊れたなら父さんに直してもらえばいい……
克樹は何か意味ありげな顔をしてアームターミナルを持ち去った。
だが、トモキの意識はもうそこにない。
何しろ、滅びたはずの世界がそっくりそのまま元に戻っているのだ。
家、台所、玄関。扉を開ければアスファルトの道路に見慣れた町並み。
隣の家には今しものぞみが入ってゆくところで……
「のっ、のぞみ! 生きてたのか!?」
「え? 変なの。いったいどうしたの? 今日はちゃんと宿題やった?」
世界が滅びる前は当たり前のようにあった日常の会話。
「どういうことだ? こっちが現実なのか? 流星が降って街がこわれてってのが夢で…
そうだ、陸王…陸王は?」
犬小屋の前には千切れた鎖があるだけだった。
「どういうことだ? こっちが現実なのか? 流星が降って街がこわれてってのが夢で…
そうだ、陸王…陸王は?」
犬小屋の前には千切れた鎖があるだけだった。
「やっぱり違う。陸王は流星の力で人間になって…一緒に旅をして、それで…」
この手で殴りつけた。
はっきりと思い出したとたん、家の中から窓を開けて克樹が言う。
「夢はさめない方がいい 安らかに眠りにつけるようにね」
瞬間、トモキの足がひざの辺りまで液体に浸かった。
街の景色が歪んで消える!
ミケはのぞみの幻の前で、周りの様子もおかしいのに気づいた。
ここに人はたくさんいるが、普通の人間の臭いがするやつとしないやつがいる。
人はお互い懐かしそうにしているが…
もしもこれがワナなら…
心を読み、会いたがっている人の幻影で人を招きいれて…
ミケの頭上で木の家が変形すると、
巨大なハエトリソウのように中の人を潰してしまった。
「食肉植物! しかも人食いの…」
トモキ!
トモキは異常に驚いて父親に呼びかけるが、その姿も消え去ってしまう。
幻影が消えると、彼は街の中ではなく、木の中の空洞にいた。
空洞内には液体が満たされ、部屋は少しずつ狭くなってゆく。
液体に触ったジーパンが少し溶けてしまった。消化液だ。
トモキは悟った。
自分が食肉植物の罠にかけられたことも、
自分を止めようとした陸王のほうが正しかったことも。
陸王は止めてくれていたのに、あんなひどいことを…
彼にひどいことをしてしまった……
液体に触れないように空洞内の瘤に手足を突っ張って耐えるトモキ。
だが、部屋はどんどん狭くなり、液体は無常に迫ってくる。
体にも力が入らなくなってくる。
「もう、だめだ…このまま溶けて死ぬのか
誰か…助けてくれ…陸王…」
「陸王ーーーーっ!」
今更呼んだって来るわけがない。
トモキの頬を涙が伝った。
と、その耳にかすかに声が届く。
彼の叫びを聞きつけた陸王が、トモキのために駆け出していた!
あああああ陸王かわいすぎ。
いやこれ絶対同人誌が出る。確信。
大王ん時とうってかわって今回のトモキはダメダメだなぁ。
でも陸王かわいすぎるぞ! とくにトモキの声聞きつけたときの犬耳w
愛されてるな、トモキは。余程いい飼い主だったのかねえ。
なんかすっごくありふれたエピなんですけど…
陸王が可愛いからいいのか
ありふれた、というか、定石だろ。>信頼再確認エピ