「あのーワタクシ、てっきり次スレ立ては自分だと思ってたのデスガ…」
「それはない(笑)」
なくては困ります、高坂君。
そんな訳で、連載終了しても「まだだ、まだ終わらんよ」SSスレ。
遂に到達第10弾。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。
☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評のうちに連載終了。
☆単行本第1〜7巻好評発売中。8巻は8月下旬発売予定。
☆作中作「くじびきアンバランス」今秋漫画連載決定&アニメ放映決定!
前スレ
げんしけんSSスレ9
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1150517919/
>>1 禿同
ところで話は変わるけど、ヘリで飛び立って30分、南方の空は真っ赤に燃えていた。
中国・朝鮮連合軍は、既に佐世保市内へ侵攻したらしい。
状況は著しく不利だった。山崎部隊長が怒鳴り声をあげる。
「みんな、生きて帰るぞ!全員で帰ってくるぞ!!」
俺達は互いの頬をぶん殴りあって気合をいれた。
絶対に生きて帰る!!みんなで!!一人も死なせやしない!!
と、貨物室の片隅で座り込んでる今岡2等陸士の姿が目に入った。
手には黒いPSP。その機能美あふれるデザインは、高性能の銃器に通じる美しさだ。
「おい!今岡!!なにボケッと見てんだ!!」今岡はハッと驚き、照れ笑いした。
4.3インチワイドスクリーンには、素朴な田舎娘のあどけない笑顔。
480×272、1,677万色の表現力で、色白い肌が透き通るような鮮やかさだ。
「なんだ?ああ?もうやったのか?弾撃ちこんだのかあ?」
山崎部隊長の下品な冷やかしに、さっきまで武者震いしてた一同は爆笑した。
今岡の顔が真っ赤になる。もう戦闘前の緊張などふっとんで皆で笑い転げる。
「実は・・・」今岡もデレデレと締まりのない顔で自慢をはじめた。
「今度の戦争が終わったら結婚しようて約束したんすよ、えへっ・・・」
オメデトウ!!みんなで今岡のヘルメットをぶん殴った。
「よ〜し、今岡のためにとっとと戦争を終わらせるぞ!!」「よしきたっ!」「おうっ!」
ヘリは山の稜線をこえ降下しはじめた。佐世保市街地は紅蓮の炎に包まれている。
よ〜し、生きて帰るぜ!!みんなで!!持っててよかったPSP!!
4 :
さらに追加:2006/08/14(月) 02:59:10 ID:???
皆々様、どうもご迷惑をお掛けしました。
ムダに長い話書いて、前スレに止め刺しちゃいました。
「17人いる!」の続きを投下します。
荻上「どしたの?随分疲れてるみたいだけど」
神田「みたいじゃなくて、ほんとに泳ぎ疲れました」
台場「蛇衣子とマリア、メチャメチャ速いんですよ、泳ぐの」
荻上「(意外そうに)へー」
ソフト出身で怪力の巴の力泳はともかく、肥満体の豪田が速いのは意外に思えた。
でもよく考えれば、全身を脂肪というフロートで覆われたその体は浮力の塊だ。
そうなると腕力と脚力(両方ともかなりの怪力だ)の殆どが推進力に使えるのだから、速いのも道理だ。
国松「ほんと速かったですよ、豪田さん。まるでツインテールみたい」
一同「ツインテール?」
日垣「国松さん、今時ツインテールって言うと、女の子の髪型の方だと思われちゃうよ」
荻上「それ以外のツインテールってあるの?」
日垣の説明によると、この場合のツインテールとは「帰ってきたウルトラマン」に登場した怪獣のことだそうだ。
最近新シリーズの「ウルトラマンメビウス」で再登場した際には、水中を高速で泳ぎ回っていたのでこういう例えに使ったのだ。
もともと特撮オタである国松は、特撮オタ特有の言葉を使って周囲をまごつかせることが時折あった。
荻上「それにしても国松さんはともかく、日垣君が何故それ知ってるの?」
日垣「いやー国松さんから勧められて、最近特撮もぼちぼち見てるんで…」
国松「メビウスにはリメイク怪獣が多いんですけど、日垣君元ネタ知らないって言うから、昔の作品のビデオ貸して上げてるんです」
荻上「そうなんだ。ところでみんな、今からどうするの?」
神田「ゴムボート出そうと思います」
浅田「俺と岸野は、みんなの写真撮りますよ」
日垣「えっ?岸野君も?」
岸野「ボートは2台だし、1台に3人乗るには狭いから、お前さんはとりあえず先発でボート漕いでな。俺たちは午後から乗るよ」
こうして浅田と岸野は、デジカメを持って海に向かった。
彼らは海などの水辺での撮影にはデジカメを使用していた。
万が一水をかぶった時の為だ。
(ちなみにデジカメは一応生活防水仕様だが、もろに海にドボンすればアウトだ)
彼らの本来の愛機であるフィルム式カメラは、今ではデジカメよりも高価なのだ。
一方日垣と国松は、ゴムボートを出して空気を入れていた。
その様子を見た神田が台場に囁く。
神田「ねえあの2人って、何かいい感じじゃない?」
最近はヤオイにも進出し始めたものの、基本はノーマルなカップリング中心の神田らしい感想だ。
台場「そうかなあ…確かに仲いいけど、2人ともオタ初心者だからじゃない?(浅田と岸野の方を見て)それよりも私は、あっちの2人の方が怪しいと思うけど」
それに対し、台場は男女の仲には今ひとつピンと来ず、ヤオイの方は妄想全開だった。
そんな様子に苦笑しつつ、荻上会長は海に向かった。
少し歩き出してから、ふと荻上会長は考えた。
「何か大事なことを忘れてるような気がする…」
沖の方に見慣れた人影が見えた。
豪田と巴だ。
こちらを見ながら手を振り、何か叫んでいる。
遠くてよく聞こえないが、多分「荻様〜!」とでも叫んでいるのだろう。
彼女たちの居る辺りは足の着かない深さだ。
荻上会長の泳力では、浮き輪無しでは近付けない。
無視するのも何なので、皇族の人のように控え目に手を振って応えた。
波打ち際の少し後方で、浅田と岸野は泳ぐ2人をデジカメで撮影してた。
浅田「さすがはゴッグ(男子の間で定着した豪田のあだ名)だ。1時間近く泳いでも何ともないぜ」
岸野「それにしても巴さん、もったいないよな。ビキニ着て欲しかったなあ」
浅田「台場さんだって、胸は物足りないけどスタイルいいよ。本来ビキニってのは、ああいう子が着た方が似合うんだぜ」
岸野「胸と言やあ神田さん、意外と巨乳だったよな」
荻上会長が不意に2人の背後から声をかけた。
「写真係ご苦労様」
浅田「わっ、会長!」
岸野「見回りご苦労さんス!」
女子会員についてあれこれ批評してるのを聞かれたと思ってやや慌ててる2人を見て、クスリと笑う荻上会長。
不意に先ほどまで忘れていた「何か」を思い出した。
荻上「ねえ朽木先輩と斑目先輩知らない?」
浅田「先輩たちなら、あっちの方に行かれましたよ」
浅田が指差したのは、海水浴場の1番端っこの方の桟橋だった。
荻上「あっちの方って、どうなってるの?」
岸野「桟橋の向こうも砂浜みたいですけど、遊泳禁止らしいですよ」
荻上「んなとこで何やってんだか…」
海から戻って来た巴と豪田が口を挟む。
巴「えっシゲさん(斑目の愛称)とクッチー先輩が2人っきりで…」
豪田「前々から怪しいとは思ってたけど」
2人揃って赤面する。
荻上「(顔の前で掌をヒラヒラさせて)怪しくない怪しくない」
彼女のヤオイ妄想にクッチーの入る余地は無かった。
荻上会長は桟橋の方に向かった。
護衛するかのように、浅田、岸野、豪田、巴の4人も付いて行く。
近付くに連れて、向こうから「にょにょにょ〜!」という聞き慣れた絶叫が聞こえてくる。
荻上「何やってんだか…」
桟橋の向こう側も砂浜だった。
だがすぐ沖が深いらしく、遊泳禁止区域になっていた。
だから当然海水浴客はいない。
その砂浜で、クッチーはサッカーボールを蹴っていた。
ちなみに下は海パンだが、上は袖のちぎれたTシャツという格好だ。
大波が来るのを待って、その波に向かってボールをぶつけるように裸足の足で蹴る。
当然ボールは波の壁に押し返される。
そしてシュートの直後、1本足になっているクッチーは波を被ってひっくり返る。
そこで竹刀を持った斑目が砂浜を叩き、檄を飛ばす。
「どうした朽木君!そんなことではブラジルゴールは割れんぞ!」
ちなみに斑目は、海パンにゴム草履のラフなスタイルだ。
外回りの仕事が増えて元々日焼けしてるせいか、今回は以前のように日焼けにはこだわっていないようだ。
その足元には、数個のサッカーボールが転がっていた。
クッチーは急いで立ち上がり、海岸線から5メートルほど離れる。
そして大波の到来に合わせて、海岸線沿いに斑目がボールを蹴り出す。
そのフォームが不思議とさまになっている。
案外少年時代はサッカー経験があるのかも知れない。
あるいは「キャプ翼」に影響されて、1人でリフティングやドリブルの練習をしていた口かも知れない。
スピードは無いが、クッチーの前方5メートルの地点にボールはピタリと止まる。
そこでクッチーは「にょにょにょ〜!」と奇声を上げつつボールに突進する。
クッチーは走るのが遅い。
足を出す角度やリズムが微妙におかしいので、消費したエネルギーに見合う距離や速度が生じない。
案の定、走ってきた勢いの殆どは、ボールの前に着いた時には消えている。
これでは何の為に走り込んで来るのか分からない。
そして大波に向かってシュート。
空手をやっているだけあってキック力はなかなかのもので、意外とそのシュートは速く威力はありそうだ。
だがそれでも、さすがに大波を突き破るまでは行かない。
そしてボールは再び海岸に帰ってくる。
斑目はそれを小まめに拾って集め、またパスを出してやるという流れだ。
荻上会長たち5人は、そんな様子をしばし呆然と眺めた。
大体何をやってるかは見れば分かるが、それでも荻上会長は2人に近付いて訊いた。
「何やってるんすか、こんなとこで?」
朽木「おお荻チン、見ての通りタイガーショットの特訓だにょー」
荻上「海水浴場でやらないで下さい!」
朽木「何をおっしゃる!荻チンは日本が予選リーグで負けて悔しくないのかにょー?」
荻上「???」
朽木「4年後の南アフリカでは、僕チンが仇を討つにょー!」
どうやらクッチー、すっかりワールドカップ熱にやられたらしい。
走るのが遅く長時間走るスタミナの無いクッチーが考えたワールドカップ対策とは、強力な必殺シュートを身に付ければいいという単純な結論だった。
朽木「僕チンは常に相手ゴール前に待機し、残り全員で守る。これならあまり走らないで済むし、守備は完璧だにょー」
荻上「で、斑目さんまで何故?」
斑目「1年の子たち、出来るだけ自由に遊ばしてやりたいからさあ。俺はどちみち泳げんから、今日は朽木君に付き合うよ」
荻上会長は悪いと思いつつも任せることにした。
荻上「…それじゃあお願いします。お昼になったら戻って下さいね『何で4年生の方が1年生より手間かかるのよ』」
立ち去る荻上会長の背中に、竹刀で地面を叩く音と共に「こら立てクッチー!そんなことではアジア予選すら勝ち抜けんぞ!」という斑目の叫びが聞こえてきた。
どうやら彼もいつの間にかノリノリのようだ。
海でタイガーショットの特訓というのは、男オタの琴線に触れるものがあるらしい。
4人のところに戻ると、相変わらず呆然としていた。
ただ、巴だけは何か考え込んでいるように見えた。
荻上「さあ戻りましょう」
みんな呆れているだろうなと思い、敢えて何も言わずに戻ろうとする荻上会長。
4人は彼女に続いて歩き出したが、意外な感想を述べた。
岸野「朽木先輩って、凄いっすね」
荻上「えっ?」
岸野「いや普通ああいう特訓って、4年生なら後輩にやらせるでしょう?それを自分でやっちゃうんだからなあ。なかなか出来ることじゃないっすよ」
荻上「いや普通やらないって」
浅田「そうでもないっすよ。うちの高校のOBに、やたらと後輩に特訓やらせる人が居ましたよ」
豪田「特訓って、何の?」
浅田「千本ノックとか、マラソンとか…」
岸野「あと毛布に包まって階段を転がり落ちる特訓もあったな」
豪田「…あんたらって確か写真部だったよね?」
浅田「そういう写真部だったんだよ」
岸野「まあ、あれはあれで楽しかったけど」
豪田・荻上「…(2人の意外な体育会系体質に声も出ない)」
突如、巴がクッチーたちの居た方に戻り始める。
荻上「どしたの?」
巴「ちょっと気になることがあるんで…」
豪田「何すんのよ?」
巴「すぐ戻るから、先戻ってて」
走り出す巴。
その後巴は、昼飯の直前まで戻らなかった。
昼飯の時間になり、再び全員集合する。
野外調理用の大型コンロを3台並べ、田中・大野コンビが次々と肉や野菜を焼き、1年生たちは恐縮しつつも次々とたいらげる。
神田「すいません、何か食事係にしちゃって。代わりましょうか?」
田中「いいよいいよ、俺らも焼きながら適当に食ってるから」
大野「そうですよ、さあみんな、遠慮しないで食べてね。あっ朽木君、その海老まだ早いから置いといて。肉先に食べちゃって」
朽木「イエッサー!」
田中「伊藤君、魚ばっかり食わないで野菜も食べて」
伊藤「はいニャー」
どうやら鍋奉行ならぬバーベキュー奉行を楽しんでいるようだ。
食事が終わると、デザート代わりとばかりにスイカ割りを始める。
わざとやっているのか、バットを持って海に入っていく者や、みんなの居る方にやって来る者などの爆笑シーンも交えて、次々とスイカが割られていく。
ただ最後の1個を、巴が怪力で木っ端微塵にしてしまい、しかも金属バットをくの字に曲げてしまった時だけは、一同ドン引きした。
さらに彼女のお詫びのひと言が、追い討ちをかけて場の空気を凍り付かせた。
「ごめん、手加減したんだけど…」
全力でフルスイングでやってたら、どうなったことやら…
午後になると、一部例外を除いて各自ポジション総入れ替え状態になった。
さすがに泳ぎ疲れたか、巴と豪田は日光浴を始める。
クッチーは再び必殺シュートを身に付けるべく、桟橋の向こうへ特訓に出掛ける。
さすがにクッチーの相手に疲れたらしく、斑目は助手役を伊藤と有吉に任せる。
荻上「あの2人ですか?大丈夫かなあ」
斑目「2人居ればボール拾いとパスを分業出来るから、さほど疲れないと思うよ。それにさあ…」
荻上「それに?」
斑目「午前中に巴さんが朽木君の走るフォームいじってたから、だいぶマシな走り方になったよ。だからタイガーショットとまでは行かないまでも、けっこう満足出来るシュートが打てるんじゃないかな」
荻上「巴さんが?」
斑目「凄かったよ巴さん。仮にも先輩相手にビシビシしごくんだもんな」
荻上「それを我慢出来たんなら、朽木先輩も丸くなったもんですね」
斑目「彼は割とマゾっ気あるから、女性に命令されるの好きなんだよ。巴さんのことも『監督』とか呼んで敬語使ってたし」
荻上「…仮にも4年生が1年生相手に監督って」
斑目「もっとも最後の方はトモカンって呼んでたけどね」
荻上「トモカン?」
斑目「巴監督の略らしいよ」
荻上「相変わらず、人を勝手な愛称で呼ぶのが好きな人だなあ」
呆れる荻上会長を背に、斑目は浅田と岸野のデジカメを握って歩き出す。
写真係2人は、午後からはボートで沖に出るのだ。
2人と一緒に乗るのは恵子と沢田だ。
ちなみに太陽光線に弱い沢田は、麦藁帽子に加えてサングラス装着という重装備だ。
台場、神田、日垣、国松はビーチバレーに興じる。
大野さんと田中は、また今年も砂の城を作っている。
どうやら「ハウルの動く城」らしい。
呆れるほど細かく、よくもまあ砂でここまで作れるものだと見る者を感心させる。
そんな様子をボンヤリと見ていた荻上会長に気を使ったのか、ビーチバレー組はひと区切り付けて彼女を泳ぎに誘った。
神田「会長、せっかく来たんだから少し泳ぎませんか?」
台場「そうですよ荻様。失礼ですが、ひょっとして泳げないんですか?」
荻上「泳げないことはないけど、私肌弱いから日焼けが…」
国松「曇ってきたから今ならそんなに焼けないですよ」
荻上「それに私、あんまし遠くまでは泳げないし…」
日垣「みんなも付いてるし、浅瀬で浮き輪持って行けば大丈夫ですよ。」
何時の間にか起きた豪田と巴が突進して来た。
豪田・巴「荻様〜私も参ります〜!」
荻上「ちょっ!ちょっと待…」
まるで捕獲した宇宙人を連行するように、荻上会長の腕を持って海に向かう巴と豪田。
日垣「おーいちょっと、浮き輪浮き輪!(浮き輪を持って追う)」
あとの3人も追おうとするが、荷物番に想定していた2人が行ってしまったので迷う。
3人の背後から不意に声がかかる。
斑目「行っといでよ」
驚く3人。
神田「シゲさん!」
台場「いつ戻られたんです?」
斑目「今さっきだよ」
どうも現視研というところは、長く居座ると気配を消す術を自然に覚えるらしい。
斑目「そんなことより行っといでよ。荷物は俺が見てるからさ」
天然ボケの気のある国松は、素直に好意に甘えた。
国松「ありがとう、シゲさん!」
神田・台場「すいません、お願いします」
2人もそれに続く。
そんな調子で、泳ぐ予定の無かった荻上会長も少しだけ泳いだ。
日垣の言う通り、彼女が小柄であまり泳ぎが得意でないことを考慮して、浮き輪装着の上であまり沖まで行かずに浅瀬で泳いだ。
幸い午後はずっと曇っていたので、太陽光線をあまり気にすることなく海水浴を楽しめた。
沖に出てたボート組も合流し、終盤にはかなり賑やかな状況になった。
波打ち際では砂の城作りを終えた田中と大野さんが、元写真部コンビのデジカメを借りてその様子を撮影していた。
(田中は自分のカメラは持って来てたが、殆ど大野さんの撮影に使い切ってしまった)
みんなの楽しそうな笑顔を見て、荻上会長は内心ひと安心していた。
『夏コミのネタ論争の時は、ちょっと険悪な空気になったけど、みんな基本的には仲良しだから何とかなりそうね』
そろそろ帰りの時間が近付いてきた頃、桟橋の向こうから「にょにょにょ〜!!!」という絶叫が轟いた。
先程までに比べ、格段に声が大きい。
絶叫に続いて、何かを吹き飛ばすような音と、何かが風を切る音が轟く。
次の瞬間、桟橋の先から沖に向かって、何かが高速で飛んで行くのが見えた。
その「何か」は沖に浮ぶ漁船の甲板に飛び込み、微かにガラスの割れる音が響いた。
どうやら窓ガラスを割ったらしい。
荻上会長が双眼鏡を向けてみると、船室からサッカーボールを抱えた漁師さんが出て来て、周囲を見渡して首をかしげていた。
急いで桟橋の向こうに向かう現視研一同。
途中で青い顔をした有吉と伊藤に会った。
有吉「あっ会長!」
伊藤「たいへんですニャー」
荻上「何があったの?」
桟橋の向こうに着くと、クッチーが寝っ転がっていた。
彼の足元の砂浜には、長さ30センチほどの深い溝が掘られていた。
荻上「朽木先輩、何があったんですか?」
朽木「おう荻チン、遂に必殺シュートが完成したにょー」
荻上「タイガーショットをですか?」
朽木「いやそれが、僕チンのサッカーセンスが凄過ぎて、一歩先を行ってしまったにょー」
荻上「どういうことです?」
有吉「朽木先輩、最後のシュート打つ時に軸足がカックンしちゃって…」
伊藤「それで思い切り砂浜蹴っちゃいましたニャー」
朽木「で、蹴り足が止まんなくてそのままシュートしたもんで、タイガーショットを完成させる予定が、雷獣シュートになっちゃったにょー」
こける一同。
朽木「でもねえ荻チン、やっぱり雷獣シュートが足首への負担が大きいってのは本当だったにょー。何かさっきから足首痛くて、上手く立てないにょー」
荻上「足首?(クッチーの足首を見て)ひへっ?」
青ざめる一同。
クッチーの右足は、爪先が後ろを向き、踵が前を向いていた。
朽木「やっぱちょっと挫いたかな?」
荻上「それどころじゃないです!思いっきり脱臼してます!」
朽木「にょ〜!!!」
結局クッチーは、巴に怪力で足首の関節をはめてもらった。
幸い靭帯には損傷は無かったので、テーピングでガチガチに固めることで何とか歩けた。
つくづくタフな男である。
帰りの車の内の1台の車中にて。
運転手は沢田、助手席には恵子。
そして後部座席には巴、荻上会長、クッチーという面子だ。
恵子「いやー今日は楽しかったね、姉さん」
荻上「まあ最後のあれが無ければね」
朽木「いやー面目ないにょー」
沢田「クッチー先輩、大丈夫ですか?」
巴「靭帯はやってないみたいだから大丈夫よ」
朽木「いやートモカンのおかげで助かったにょー」
一同「トモカン?」
朽木「でももう雷獣シュートは、やめた方がよさそうですなあ」
荻上「当たり前です!」
恵子「まあまあ姉さん、それより夏コミ済んだらまた合宿やんねえ?」
沢田「あの去年軽井沢行ったってやつですか?」
巴「いいですねえ。あと冬もスキーなんかどうです?」
恵子「ほんとに体育会系になって来たな、現視研。どう、姉さん?」
荻上「夏は恵子さんに任せます。冬の方は冬コミが当選するかによるけど、多分正月明けてからですね」
朽木「雪山で修行ですか。よし、今度はイーグルショットの特訓ですにょー」
一同「全然懲りてねえな…」
以上です。
昔から「オールスター映画に名作無し」ってなことを、いろんな人が言ってます。
これはつまり、何人かのスターが共演して、それぞれに目立つ見せ場を作ると、物語進行上のメリハリが作りにくくなるからです。
だからいわゆるオールスター映画で名作と言われる作品では、もったいないような名優がチョイ役を演ってたりします。
前置きが長くなりました。
夏の日のありふれた日常を書く積りが、キャラそれぞれにそれなりの見せ場作ろうと欲張った結果、やたらダラダラ長いだけで面白くも無い話になっちゃいました。
おまけにスレの止めまで刺しちゃって、皆様方にもご迷惑をお掛けしました。
どうもすいません。
ゥフフフ
やたらめったらリンク貼り付けてんの誰だよ
とりあえず
>>1乙!
祭明けに大台突入なんて美しいじゃないか。次は単行本発売日に11スレ突入を(ォ
>>18 水着キター。あなたのシリーズは読み応えがあっていい(はぐれクッチーもあなたですか?)。
多人数ドラマは俺も苦手です。しかし17人?SS最多じゃないのか?
なんか謙遜されてますがなかなかどうして。新入会員も含めてみんな楽しそうでした。クッチーも必殺技開発するし後輩が育っていて安泰くさい。恵子も知らんうちに現視研に溶け込んでw そして斑目……初代会長化しとる……激ヤバ。
このぐらいの大所帯だとピックアップの仕方でいかようにもドラマ動かせるから楽しいかも知れません。夏合宿に向けてwktkしているとしようか。
ついでに言えばスレのとどめなんて誰かが刺すもんです。気にしなさんな。
まずは
>>1乙です。よっしゃキター!スレ番フタケタ!!
むしろ「17人いる」の人GJですww
>前スレの「かなしいライオン」
「かなしいライオン」、この童話って実際にあるんですか?この話自体がよくできてますね。
罪は消せないけれど、だからってそれをずっと引きずってはいけないということを、
笹原が荻上さんに説くところが良かった。
>……そうさ、物理法則だって塗り替えてみせる。
ササヤンが少年漫画の主人公になったよーだwwwカッコヨスwww
>「17人いる」!!
面白かったですよw作者の方の中で、独自のげんしけんの話が息づいてるのを感じました。
…むしろ1年に食われてる、頑張れ元メンバーwww
シンスレ!シンスレ!
>>17人の人
あなたには、私が言われてとても嬉しかった言葉を捧げます。
カオスwww
…とりあえず、某所でSS書いてたら勝手にこちらの方々が登場したので、
それのこちらバージョンをお伝えします。
ちなみに、単品でも楽しめます。
小品なので、2レスくらい。
就職活動といえど、毎日あるわけではない。
つまりは毎日スーツを着なくても良いわけであって、
今日は笹ヤンにとってはそんな日であった。
「あー、暑いっすねえ…」
「朝のニュースでは最高気温35度だとさ」
相手はスーツを着ているが、これは社会人なのでむしろ当然。
正直、社会人がなぜ大学に居るのかの方が問題なのだが、
まあそこは流せ。
…流してあげよう。
「前期は結構深夜アニメ、豊作だったな」
「ええ、まさかあの漫画があそこまで映像として再現できるとは思っていませんでしたよ」
「『兜蟲氏』…か。悪い目の付け所ではないが、まだオタクとしては覚悟が足りんな」
「ええー、そうですか〜?結構俺、ああ言うのが好きなんですよ」
「おまえはどうせ『工学機動隊SWAT』とかが好きなクチだろう」
「ええ、まあ」
「そこが足りんと言うのだ。オタクたるもの、萌えを意識せずしてどうする!」
「ええ!でも、俺結構、アレの中ではマチコマ萌え〜って感じですが」
「うむ、動作に声もあいまって、確かにマチコマは萌える。だが、オタクはもう少し踏み込むべきだ」
「幼女…とかですか?外見だけで言ったら、そもそもマチコマ萌えは成立しませんよ」
「まあそれだけではないがな。萌えは正直難しい」
「んー…でもあんまりあからさまに『萌え』に特化してると、逆に『引き』ませんか?」
「ふーむ、確かに。…俺を論破するとは、お前も成長したもんだな」
「ええ…おかげさまで」
…成長しているというより、むしろダメ曲線をスパイラル落下しているように思うのは自分だけだろうか。
「暑いな」
「…ええ。ここまで来ると、もう『熱い』っすね」
「今度アキバで扇風機でも買うか」
「そうしましょう」
すると、ドアの外から人の気配がしてきた。
「…から、…なさい」
「…って、…待てよ」
どうやら、声の調子からして男女の高校生らしい。
…待ち人来たらず…だな、斑目よ。まあ今日は雨降りでもいつの日にか。
「誰か来ましたね」
「ああ」
すると、そのドアが「ばーん」という効果音付きで…のような気がして開いた。
ショートカットの美少女と、そのお供。
笹ヤンの第一印象としてはこんなところだった。
ただしショートカットの方の雰囲気に、なんとなく荻上を思い出したのは、他には言えない秘密だ。
しかし、そのショートカットの女の子(以下ショートと略す)は引いていた。
そりゃそうだろう。これだけアニメのポスターやら販促物やらフィギュアが満ち溢れていたら、
普通の人間は引く。…つーか入り口のポスターは見なかったのだろうか。
「お、見学か?」
それを察したのかそうでないのか、斑目は軽〜く、フレンドリーに声をかけた。
やはり斑目はこの4年間で、相当に進化している様だ。
「い、いえ…何ていうか…」
しかしながら、その心遣いが届くはずも無く、ショートは引きまくっていた。
あたかも「やわらか○車」の様に。退却開始だ。
すると、そのお供が、意外にも男らしく、前に出て聞いてきた。
「ここって何をしてるところなんですか?」
…案外このカップルの主導権を握っているのは、こっちの方なのかもしれない。
そう笹ヤンは思った。コーサカと咲を見てきた経験則もあるのかもしれないが。
さっきは気が付かなかったが、胸に「見学章」とデカデカと書いてある。
そういえば、今この学校はオープンキャンパスの日だ。
なるほど、で見学に来たというわけか。
ならば先輩としての威厳を見せろ、我らが笹ヤン!
「えーと…何ていうのかな…オタク?の集まるところだよ」
…ダメじゃん。
「そ、そうですか…で、では失礼します」
まだ呆然としているショートの手を引っ張ると、お供はドアを開けて、連れて行った。
ラブラブだな。今のこの二人には目の毒だぞ。
…まあ笹ヤンはこの後直ぐ報われるんだがな。
「いやー…」
「なんか、『飛び出せ青春』って感じでしたね…」
「…やっぱ、もう少し掃除しとくか?」
「でも、『お盆の一大イベント』が終わったら、また元の木阿弥ですよ」
「…そうだな」
「…ですね」
…ジーワジーワ…
蝉の声が外から響く。
そして強くなった照り返しがやたら明るく部屋の中の『それ』を映し出す。
「じゃあ、俺そろそろ会社行くわ。就職活動、頑張れな」
「ええ、それじゃあ、また」
「うぃ」
それにしても、今日は荻上さん来ないのかなあ…そう思う笹ヤンの午後であった。
終わり。
すいません、数勘定間違えたw
新スレだー。二桁めバンジャーイ∩(・ω・)∩
とりあえず短い時間で読めたのだけ感想をば。
>>かなしいライオン
冒頭の童話がかなり好みなんですが、自作っすか?
些細なことで涙してしまう荻上をはげます笹原っていうパターンは
この二人の基本的な関係って感じがしていいですね
>物理法則だって塗り替えて
ここ、かなりグッときました。
ヘタレを自称していた笹原がここまで変わるとは。
>>げんしけんオープンキャンパス
斑目と笹原の二人が世間話をしているだけで満足ですよ。
こういう日常を切り取っている作品は大好きです。
高校生の目からは、スーツ姿でオタク部屋にたむろするメガネの人はさぞかし異様に写ったんだろうなぁ……w
>げんしけんオープンキャンパス
いいですねえ〜日常いいですねえ〜。
ていうかもう、斑目が出てきたらもう!
こういう何気ない日常話でSSスレ、まだだ、まだ終わらんよ!!
31 :
ライオンの人:2006/08/15(火) 08:31:09 ID:???
>>1には乙とか言っときながら生涯初立てスレが役目を終えるのは寂しいもんがありますな。いやいや我々は未来に向かって進まねば。
9スレは個人的に永久保存、っと。
>>22 >>29 童話ウケててうれしい。こんなおあつらえ向きの話が一般書店にあるはずもなく、自作でございます。
オギーのトラウマに関しては俺自身がこのように、つまり「自ら傷を克服する」のではなく「自分の生き方を受容してくれる人物に出会う」というふうに解決しているのだと解釈しております。
笹原にはそのぶん課題解決能力が期待されるところでありますな。オギーに襲い掛かる艱難辛苦を笹原が乗り越えさせてゆく。なんかICO(ゲームね)思い出した。
>>げんしけんオープンキャンパス
『天使たちの午後』を思わせるまったりと気軽に楽しめるお話で気分いい。オープンキャンパス、仕事がらみでたまに立ち会うけど高校生と大学生はかくも違うのだなあ、と昔を懐かしんだりします。
アレかつまりショートとお供が主役のSSをどっかで書いたってことだな?面白そうだ。縁があったらどこかで出会えるかな。
なぁ、このスレの住人でSSアンソロ本買った椰子どのくらいいる?
>>17人いる!
久々の続編、面白かったです。夢が広がりますね。
事前の解説も良かったです。前回、元ネタわからないのも有りましたので。
>>げんしけんオープンキャンパス
ショートの子とお供の男子の二人組みの元ネタも気になりますね…。
待ち人来たらずの二人の日常として、しみじみおもしろかったです。
>>32 僕はアンソロ参加なので…そしてコミケ不参加なので買ってません。
ここでは、ほぼ「住民=感想の書き手≒SSの書き手」っぽい感じ
なので、SS書いててアンソロ不参加で、コミケには行ったよ…
って人は少なそうですね。
こんちゃ。
みなさん祭りの余韻に浸っているのか次作が待ち焦がれる今日この頃であります。
前スレにあった『斑目放浪記名古屋編』、大変に琴線を刺激されたのでちょっくら人のふんどしで相撲をとってみた。
この作者氏の行動範囲は日本の西側のようなので、俺の唯一住んでたことのある地方都市・札幌へ、斑目を行かせてみました。今回もパートナーはクッチー。もうそれだけで斑目がかわいそうなのが明らかだがw
前振りはこんなもんで。言い訳はあとがきで書きます(言い訳すんのかw)
『斑目放浪記札幌編』、本文14レス+おまけ1レス。それでは参る〜。
7月も後半にさしかかったある週末の晩、斑目晴信は現視研のドアを施錠しようとしているところだった。本来部室の鍵を持っていてはいけない身分だったが、まあこういうことはよくあることだ。
昼間に食事をとりに部室に来て、夜も何をするでもなくしばらく腰を落ち着けてから、一人家に帰る生活。昼間は現メンバーの荻上千佳と世間話をしたが、今の時間は誰にも会うことなく夕焼けを眺めることとなってしまった。
「はー、こういう日が続くと我ながらナニやってんだって気になるわ。なんかこう、どっか旅行でも行きたいねー、できればタダで。ははは」
ぶつぶつ独り言を言いながら鍵をかける。ボーナス時期は一般家庭からの修繕依頼が増え、忙しい日が多い。彼も営業課からの膨大な伝票整理に追われ、つい柄にもないセリフが口をついたと言ったところだった。
が、運命の女神はけっこうこういう言葉を聞いているものだ。
暗くなった廊下の向こうからバタバタとあわただしい足音が聞こえてきた。何事かとそちらを見た斑目の目に入ってきたのは……なにやら決死の形相の朽木学だった。
「斑目しぇんぱ〜い!会いたかったにょー!」
言うと同時に見惚れるような大ジャンプ。美しい弧を描いて彼めがけて跳んでくるのを、斑目は華麗にスルーした。廊下に長いブレーキ痕を残し、朽木は顔で着地する。
「朽木君……どうしたの一体」
「その前になぜボクチンの思いの全てを込めた抱擁を避けるのでしゅか!」
「あたりまえじゃあんなもん。で、どーしたんだ」
「そうなんですよ聞いてくだしゃい斑目先輩。そしてボクチンを助けてください」
「助けるかどうかはともかくまず内容を話せ、そんなら」
「実はですね。親戚の叔父さんに就職の世話を頼んだんですが……」
彼の話によると、こうだった。受ける会社受ける会社ことごとく不採用となっている朽木は、母方の叔父に就職の斡旋を依頼した。叔父からはもちろん楽な道筋は示されなかったが、少なくとも面接から入ることだけはできると知人を通じて会社に口を聞いてくれたそうだ。
「なんだ、よかったじゃない。エントリーシートパスできるだけで相当楽だろ?」
「そりはそうにゃんですが……会社が身の丈を超えてるのですよ」
朽木は携帯電話を取り出し、叔父から来たというメールを見せた。
「……おー。すずらん銀行にハマナス乳業にエア・ディー?うわ、超大手ばっかりじゃん。……あれ、しかも3社とも明日?」
「しょうなんでしゅ。クッチーいくら物怖じしない性格とは言っても、こんな恐ろしい企業の面接を1日に3社もブッキングされたら足の震えがおさまらないのです」
「いいじゃねえか。これも経験だ、どーんと当たって砕けて来い」
「斑目しゃんはカンタンにおっしゃいますがね。親戚に紹介されたとなればいつもみたいに入室即不採用コースとは行かないわけで。せめて叔父さんの人格を守るだけの印象を残さないとならないにょ」
「キミいつもは一体どういう……」
「そこで斑目しぇんぱいに、ゼヒ付き添いをお願いできないかと」
「はあっ?付き添い?」
「別に会社の中までついて来て欲しいとは言わないにょですよ。せめて尊敬する斑目しぇんぱいが近くで見守ってくれていると思えれば、ボクチンの空気読みスキルも上乗せされて、採否はともかくきっちり挨拶ぐらいできると思うですにょ」
「小学生かね、きみは」
「後生ですにゃ斑目しぇんぱい!この不肖の後輩クッチーを助けると思って、明日一日ボクチンに預けてもらえないかにょ?」
とはいえ朽木の切迫感は解らなくもない。斑目自身も大手の面接を前に動悸がおさまらなかった記憶がある。それに実際明日の日曜日にはすることもなく、秋葉原あたりを流そうにも夏コミ前の追いこみ時期のため、同人誌ショップにめぼしい品物があるとも思えなかった。
「ま、まあ明日は休みだし、特に予定も入ってないからな、近所の喫茶店で時間つぶすくらいでいいんなら」
朽木の瞳が輝く。
「斑目しぇんぷぁあい!」
再び全身全霊の抱擁が迫ってくるのを間一髪で避ける。ピザ生地をシンバルにたたきつけるような音とともに、朽木の顔全体が現視研の鉄扉に貼りついた。
「だから襲いかかるなって!」
「……斑目しぇんぱい、そんなに身のこなし良かったでしたかのう?」
「人間、身に危険が迫ったときはいかなる動きでも可能なのだよ」
「まあいいですにょ。斑目しぇんぱい恩に着ます。叔父さんにお願いしてあるので交通費と食事代や諸経費は全部こっち持ちでOKっすよ」
「おお、ラッキー」
「ではボクチンはこれから就職課に寄って面接先の下調べをしてくるでアリマス。しぇんぱいは明日の朝7時半に駅の改札で集合っちゅうことで。では失礼しますにょ〜」
脱兎の如く走り去る朽木の背中を見送る。
「7時半?面接3件も掛け持ちすると大変だなあ」
まあメシも出るそうだし、話のタネにはなるか。そう呑気に思う斑目だった。
****
翌朝、斑目が駅の改札に着くと、朽木はすでに緊張の面持ちで彼を待っていた。リクルートスーツを着ているが、フレッシュな感じや落ち着いた印象は微塵もない。
「しぇんぱい!しぇんぱいなら来てくれると信じてたにょ!」
「すっぽかしたら呪い殺しそうな顔してたもん、朽木君。今回はタダメシにもありつけるし、大手企業の門構えくらい眺めても楽しいだろ」
「なんにせよありがたいでゴザイマス。さあ、まずは空港ですぞ」
斑目の登場に勇気づけられたと見え、颯爽と改札口へ歩いてゆく。斑目もあわてて後を追った。
「あ、エア・ディーからだっけ。しかし今の就職活動は日曜日も面接かー」
「今年は去年に引き続きけっこうな売り手市場なのです。企業側も積極的に動いてるし、おかげでボクチンみたいなのがもぐりこむチャンスもあるというわけで」
「ふーん。なんでキミはその売り手市場でこんなに苦労してるんだ?」
毒にも薬にもならない話をしながら歩いてゆく。
****
……そして3時間後、『機内シートベルト着用』のランプが消えた。同時に機長からのアナウンスが流れる。
『ただいまシートベルト着用のサインを解除いたしましたが、安全のためご着席の間はシートベルトをお締めになりますようお願いいたします』
「……な……」
『本機ADO709便は順調に飛行を続けております。新千歳空港への到着は11時35分の予定となって……』
「なぜ俺はこんな所にいるーっ!!」
「斑目しぇんぱい、声が大きいですにょ」
ジャンボジェット機の広い機内は、乗客でいっぱいだった。今週から全国的に夏休みなのだ、家族連れがたくさん乗っている。朽木はたった今配られたお茶とお菓子をほおばりながら斑目をたしなめる。
「なんでお前そんなに落ち着いてるんだ!俺は北海道まで行くなんて聞いてねえぞ?」
「あれ?言ってませんでしたか?まあでも全部札幌本社の会社じゃないっすか、斑目しぇんぱいならご了解済だろうと」
「東京採用ぐらいにしか思ってませんでしたともよ、ああ!」
1社目の面接が航空会社なのだと油断していたのがよくなかった。
空港でチェックインしたときにあれっと思ったのだが、朽木に「ちょっと手続きしてきますにょ」「連絡取るんでここで待っててくださいにょ」などとはぐらかされ、気づいたときには二人で搭乗口に並んでいたのだった。
面接地が全て札幌だと聞かされたときにはすでに機内で、朽木の情けない期待顔とこのハイシーズンにチケットを出してもらっている負い目も手伝い、斑目は結局同行に応じてしまった。すでに7回ほど繰り返されている先ほどの叫びが、彼の精一杯の抵抗だった。
「なあ、この『拉致って飛行機でGO』ってシチュエーション、きみから借りたDVDで見たような気がするぞ?まさか向こうの空港に降り立った途端、サイコロ振って全国飛び回らされるようなことにならんだろうな?」
「ご希望とあらばそういうパターンもご用意してるでしゅが」
朽木が鞄の中の厚紙のボードを見せる。『深夜バス』とか『謎のまち・臼杵』とかいう文字が見えた。
「でも今回はボクチンの面接が最優先ですにょ」
「ならなぜそんなフリップを持って来るんだ!ああまったく、こんなことならちゃんと準備してくりゃよかった。カメラとか」
「持ってきてマスよ?」
「あっちのガイドブックぐらい読んどきたかったし」
「さっき売店で買ったにょ。どぞ」
「……きみ何しに北海道行くの?朽木君」
「言ったじゃないスか。大企業の面接ですがな」
「そうは見えんぞぉっ!」
「しぇんぱい声が大きいですって。回りに迷惑じゃないっしゅか」
ぶつくさ言い続ける斑目と必要以上にリラックスしている朽木を乗せ、飛行機は一路北の大地へ飛んで行った。
****
二人が札幌駅に到着したのは12時半を回った頃だった。駅を出て、大通公園まで歩きながら話す。
「おー。北海道だ。俺生まれて初めてだよ」
「ボクチンもでアリマス。空港からほとんど外に出なかったですが、夏だっつうのにサワヤカな陽気ですな」
「ああ、噂には聞いてたが日影に入ると涼しいくらいだな。朽木君、面接はいつからなの?」
「13時半ですな。ほら、あそこのビルがそうです」
「うわ近っ!街のスケールが本州と違うというが本当だな、東京駅から霞ヶ関まで10分で歩いたみたいだ」
「さらにまっすぐ10分歩けば魅惑の街・ススキノですにょ。霞ヶ関から歌舞伎町までも10分で歩くようなもんですなあ」
大通公園が妙に騒がしいのに二人は気付いた。機内で読んでいたガイドブックの写真とは違い、公園中が祭りのような飾り付けになっている。
「お、おい朽木君、こりゃあ……」
「しぇんぱい、特集ページに載ってたヤツでは」
「ビアガーデンか!」
「我々ツイてるでありますっ!」
大通公園ではこの時期、公園の大半を利用したビアガーデンを催すのだ。5丁目公園から西へ、10丁目公園までの全てに各ビール会社ごとのブースが居並ぶ風景は、北海道の夏の風物詩とも言える。
公園に入ると、祭提灯が並ぶ芝生に屋台がいくつか出ているのが見えた。
「お、朽木君、北海道名物『とうきび』だぞ」
「コッチではとうもろこしとは呼ばないんですにゃ。斑目しぇんぱい、ここでなんか腹に入れて、昼メシあとでもいいでしょかの?申し訳ないんですが時間がちょっと」
「おう、かまわんとも」
一番手前の屋台で焼きとうきびを買い、さっそくかじりながらブラつく。札幌の夏の日差しは思ったよりは暑いが、湿度が低いせいか風が吹くと不快感がぬぐい去られるようだ。と、そのとき朽木が声を上げた。
「しぇんぱい!小生オモシロ食品発見したでアリマス!」
朽木が斑目に指差してみせる先には、一見普通の『じゃがバター』の屋台。
「ん?どこが面白……え、塩辛?」
二人の前では先客のカップルがひとつ購入していたが、スチロールのトレイに載った巨大なふかしジャガイモの上に、イカの塩辛が山盛りになっていた。
「ジャガイモに塩辛ですよしぇんぱい!」
「うわ、あんなの見ちゃったら食わないワケに行かねーじゃねーか。よし朽木君、ソッコー買ってきたまえ!」
「ラジャ!」
飛んでいった朽木は、両手にトレイを持って帰ってきた。
「なんで2個も買ってくるんだぁっ!」
「えー、1個は普通のじゃがバターでしゅよ?」
「ソフトボールほどもあるじゃんか、コレだけで満腹になってしまうわ。まーいい、食ってみっか」
二人で同時に塩辛ジャガイモを口に入れる。
「……おや、うまい」
「うまいスけど……塩辛はごはんで食いたいですなあ」
「うーむ、それも解る」
地元産のジャガイモ、バター、塩辛の渾然一体となった味は絶妙なバランスを保ったまま二人の胃袋に収まった。朽木が時計を見て、ネクタイを締めなおす。
「おおぅ。集合の時間でゴザイマス。しぇんぱい行ってまいります」
「よっしゃ、頑張れ、俺はこの辺ブラブラしてるよ。終わったら電話してくれ」
「しぇんぱいビール飲んでてもいいっしゅよ?」
「なに気ィ遣ってんの。全部終わってから盛大に打ち上げよーぜ。だいたい朽木君がスポンサーじゃない」
「斑目しぇんぱい、イイ人ですねえ」
「後輩にだまくらかされて北海道にまで来ちゃう程度にはな。行って来い!」
「イエッサ!」
朽木の後姿を見送り、手近のベンチに腰を下ろした。太陽がかんかんに照り付けるのに、すがすがしいくらいの風が通り過ぎてゆく。目の前を通り過ぎてゆく人々の顔つきも、心なしか東京より穏やかに見える。
「はー、落ち着く。さて」
ふと思い立ってガイドブックを開く。有名な観光スポットが公園のそばにあったはずだ。
「お、あった。時計台」
地図を見ながら歩き出す。目的地へはものの数分でたどり着いた。道路の向かいがわに、手元の写真と同じたたずまい。
「……なんか……小っちぇえな」
札幌時計台の観光写真が全て同じアングルから撮影されているのには理由がある。もともと広大な敷地に経っていたわけでもないこの建物は、そのものの保存は継続されているもののすぐ隣地に普通のビルが建っているのだ。
たとえばカメラを普通に構えて横長の写真を撮ろうとするだけで、周囲に最新の建造物が映りこんでしまう。間近から見上げたアングルの、青空にそびえる時計台の文字盤という絵面は、幾多の写真家の苦労の末に完成されたものだった。
「まあいいか。記念に1枚」
携帯電話のカメラで自画撮りする。その写真もやはり、観光ガイドのものと同じアングルになった。
せっかく来たのだからと内部を見学して回り、そろそろ公園に戻ろうかという頃、携帯電話が鳴った。朽木からだ。
「もしもし、朽木君?終わったの?」
「しぇんぱい、大変であります」
「どうした?」
「また……入室即不採用コースに……」
「お前いったい何をしたーっ?」
公園に急いで取って返し、肩を落とす朽木に会って理由を聞く。
「しょれがですね……エア・ディーって航空会社じゃないっスか」
「うん」
「だから航空業界に興味を持っているってことをアピールしようと、入室でバックフリップからコーク720のダブルエアーを決めたんでしゅが、着地するなり審判がボクチンの書類にでっかいバッテンを……」
「そのエアーはモーグルの技だ!そして審判じゃなく面接官だー!」
****
気を取り直して2社目に向かう。大通公園から札幌駅の向こう側にタクシーで移動し、北大近くで降りる。時間が少しあるので、ここで昼食をとることにした。
「朽木君……今度はハマナス乳業か。くれぐれも余計なことしないでくれよ、俺がついててコレじゃあ、何しに連れてこられたかわかんないじゃない」
「申し訳ないっス!小生北国に来てハッスルしすぎておりました。でももう大丈夫っスよ、もう普段のボクチンですから」
「それは心配だ……ものすごく心配だ」
「それよりメシっスよメシ。タクシーの運ちゃんが言ってたとおりならガッツリ食える店でごじゃいます」
二人は移動に使用したタクシーの運転手に、『疲れているのでばっちり元気になれそうな定食屋を教えてくれ』と頼んだのだ。面接場所に近く、美味しくて腹いっぱいになること請け合いと案内された店は、大学近くの『宝来』という中華料理屋だった。
こぢんまりした店内は東京で見るラーメン屋と大差ない。平日なら学生でにぎわうであろうこの店も、休日のため空いている。
「おっちゃーん、チャーハンとあんかけ焼きそば各1コ、お願いするにょー」
朽木は入店するなり声をかける。
「お、おい、メニューも見ないで」
「大丈夫っしゅよ、運ちゃんお墨付きの二品じゃないスか。元気出るスよー」
運転手が請け合ったのは、実は『腹いっぱい』の部分だった。数分後テーブルに運ばれた二皿は、それぞれがパーティ料理かと見まがうばかりの大皿に盛られてきた。
「しぇんぱい……大当たりっスよ、ある意味」
「それはそうかも知れんが……この店はナニか、客の胃袋を破壊するのが存在意義なのか?」
大学近隣と言う場所柄もあるがこの店、盛りのいいので有名である。チャーハンを注文するとライスを茶碗に山盛り三杯炒めるような店で、これで普通の値段なのが信じられない。食べればうまいが、もともと細身の二人はこれをたいらげるのに大変な労力を要することとなった。
「しぇ、しぇんぱい、クッチー北の地にて胃下垂で果ててしまうかも知れましぇん」
「コレで死んだら浮かばれねーし、胃下垂だけじゃ死なん。頑張れ。まだ時間あるんだろ?腹ごなしに歩こうぜ」
北大キャンパスに足を踏み入れる。ガイドブックには、有名な『ポプラ並木』があると書いてあった。
「ほほう、これが北の帝大」
「いまどきそんな言い方するヤツいないっスよ」
「うわ、クッチーにツッコまれた」
「いま身体能力の大部分を消化に費やしてるんで面白いこと考えられないんでアリマス。ポプラ並木こっちみたいっスよ」
ポプラ並木の観光写真が全て同じアングルから撮影されているのには理由がある。でもその理由は時計台と大差ないので省略。
「しぇんぱい……意外と短いっスね、並木道」
「100mねーな、こりゃ……ところで朽木君」
「はい?」
「きみさっき『身体能力の大部分を消化に費やしてるんで面白いこと考えられない』って言ったよな?」
「ええまあ」
「ならば行け」
「は?いずこへ?」
斑目は朽木の両肩をつかんだ
「面接だよメ・ン・セ・ツ!腹ごなしなんかしないで今スグその状態で行って来い!」
はたして面接はおおむねうまく行ったようだった。3社目の時間が迫るまで彼は戻って来る事はなく、それはとりもなおさず『つまみ出されなかった』ことを意味したのだから。
****
「さあ3社目は超大物ですぞしぇんぱい。銀行なんてそもそもボクチンの進路のどこにもなかったでアリマス」
「すっかり元気になってしまったみたいだな、朽木君……俺はまた不安になってきたよ」
「ご安心めされい!さっきの面接でコツをつかんだにょ。ボクチンにも道産子気質が読めてきた気がするにょ〜」
二人は大通公園に戻ってきていた。最後の面接先はいま彼らの目の前にそびえ立っている。
「頼むぞ、地元大手の破綻で漁夫の利とか軒貸して母屋を取られかけてるとかしょせん無尽上がりだとか余計なこと言うなよ?」
「しぇんぱい……なんでボクチンにそんな素敵なフリを?」
「フリじゃねえっ!」
「大丈夫ですにょ。なによりコイツが終わればビアガーデンが待ってるであります。どうせ酒盛りするなら敗残者の気分でいたくはないっしゅよ、さしものボクチンも。きっちり採用ブン取るつもりで行ってまいるでゴザル」
「……よし、その心意気、買った!もう何も言わん、今日のうちに頭取まで会ってくるつもりで行って来たまえ!」
「サー!」
意気揚々と歩いてゆく彼を見送り、斑目はベンチに腰を下ろした。まあ、地方銀行とはいえ北海道最大級の企業だ。一次面接程度の縁故でどうこうなるわけはないし、本人もそれを解ってのさきほどの大口だろう。
気楽に待って、彼が中でどんな大技を披露してこようが酒のツマミにしてやればいい。叔父さんには悪いが、彼は甥っ子を買いかぶりすぎているとしか言いようがない。
近所のメイド喫茶『プリムヴェール』で一服していると、朽木からの電話が着信した。慌てて店外へ出て通話ボタンを押す。
「もしもし、どうした?」
「しぇんぱい、大変であります」
「……」
胃のあたりにいやな重みを感じる。
「……朽木君、今度はナニやらかしたの?」
「しょ、しょれが……二次面接に進んでしまいまして」
「何ィッ?」
斑目の声が狸小路に響き渡る。
「すごいじゃないか朽木君!なんだ人間並みのことできるんじゃねーか」
「しぇんぱい、褒めてるようでむしろ酷い事言ってるでござるよ」
「おおう、すまんつい本音が」
携帯電話を持つ手が汗ばむ。
「よしッ、燃えてきた!燃えてきたぞ朽木君!我らが現視研から上場企業の社員が出るなぞ快挙もいいところだ!いいかクッチー」
「ハッ!」
「君の任務は北海道札幌の市中・すずらん銀行に単独潜入、役員面接を確保して内定を奪取することだ。夏休みが終わる前に内定を取得しなければ大変な事になる」
斑目の脳内にはミッション遂行もののゲーム音楽が流れ始めている。朽木にもそれは伝わったようだ。
「……!斑目しゃんは耐えられるのかにゃ?」
「俺ののどの乾きを考えてもタイムリミットは数時間。順調にいけば数十分で終るミッションだ」
「乾杯までには帰れそうだにょ」
「鳥になって来い!幸運を祈るっ!」
「行ってくるにょ!」
通信、いや通話は途切れ、斑目は店内に戻った。メイドたちが迎えてくれるがそれどころではない。ほとんど強制連行ではあったが、ついて来てしまえば気分は彼の保護者も同然だ。
結局、斑目は朽木を憎めないのだ。とんでもない人格を装備したダメオタだが、朽木の人付き合いの不器用さは斑目にそっくりだった。……ヤツは俺の縮小コピーだ。ヤツが大きく羽ばたけるなら、俺は喜んで彼を送り出そう。
「ひょっとしてひょっとしたら、現視研札幌支部?そして支部長がクッチー?……うわーダメそう……だがそれがいい!」
わずかな期待とちょっとした野望と、そしてそれらよりはるかに大きい不安が胸に渦巻く斑目であった。
何分が経過したろう。陽が落ち始めた窓の外を眺める斑目の視線が、見覚えのある不審な影を捉えた。
「お!クッチー?」
「斑目しぇんぱぁい!」
朽木が窓越しに駆け寄り、ガラスにべったりと顔を貼り付ける。店内ではメイドたちがどん引きだ。
「朽木君、そーゆーことをするな。本州のオタクがみんなこうだと思われたら困るだろ。……てゆーかナゼここがわかった?」
汚れた窓ガラスを拭きつつ、朽木は店内に入ってくる。
「いやもうカンっスよカン。朽木学、無事任務を果たして参りましたッ!」
「え、もう結果出たの?」
「ああいや、次は電話来るそうっス。電話が来なきゃご破算ですな」
「ちゃんとこなしてきたんだろうね?面接。……いや、今は聞くまい!最大の賛辞をもって君を迎えよう。よくやったぞクッチー!」
「ありがとーございます斑目しぇんぱい!」
「そうとなったら打ち上げと行こう。さ、ともかくビアガーデンだ!」
「ラジャー!と言いたいとこですがしぇんぱい」
「ん?」
「大変残念なお知らせがございますんですが」
「なんだよ、残念な……って……え、まさか」
はっと気づき壁の時計を見る。朽木はばつの悪そうな顔をしてみせる。
「タイムリミットでございます。千歳から出る飛行機で帰るには、札幌駅までダッシュして30分後の電車に乗らねばなりませぬ」
「何イィッ?」
明日は月曜日で、この時期に会社を休むわけには行かない。今日中に東京に帰るためにはその飛行機を使うしかなく、そもそもこんな時期に他の便の空きが期待できないのは考えるまでもなかった。
「な……」
呆然とする斑目をよそに、朽木はカフェの代金を精算している。釣銭と新規入会したメンバーズカードを右手に持つと、左手で斑目の手を引く。
「行きますぞ斑目しゃん。我々の光り輝く未来をこの胸に抱いて、あの懐かしいふるさと八王子へっ!」
「……なんて……」
言うが早いか走り出す。斑目は勢いに負け、半ば宙を舞うように朽木に引っ張られてゆく。
「……なんてこったあああぁぁっ!!」
斑目の叫び声は、薄暮の札幌の空に細く長く響き渡っていった。
****
帰りの機内。二人はあらためて缶ビールで乾杯した。
「カンパーイ!」
「はいはい乾杯っと」
「しぇんぱいもちっと気合入れて欲しいにょ」
「はは。ワリ」
空港までの列車の中でもヤケ気味の酒盛りをこなして来ていたが、北の大地を離れてようやくひと仕事終えた実感がわいてきたのだ。
「なあ朽木君。昨日きみがこの話持ってきた時にさ、俺ちょうど『旅行行きたいなー』って思ってたんだよね」
斑目が朽木に言う。
「んで今日のコレだ。いま俺は確信したよ、運命の女神はたしかに居るのだと」
「そりゃまた……ボクチンが言うのもなんでしゅが、ずいぶん乱暴な女神しゃまですな」
「いーや違う、違うぞ朽木君。乱暴なのではないのだよ」
「と言うと?」
斑目は朽木に顔を寄せる。
「俺の運命の女神はな、『ちょっぴりドジっ娘』なのだ!」
「斑目しゃん……あんた本物のダメオタですな」
「お前に言われとうないわあっ!こうでも思わにゃやっとれんのだ」
「あ、でもあながち間違ってないっすよ、たぶん」
「は?」
「飛行機が出る直前に、今度は父方の伯母からメールが来たんですが、来週の土日に福岡で面接を7社ブッキングされまして」
「……知らん……俺はもう知らんぞ」
どうやら彼のドジっ娘女神は着々と活動しているようだ。二度と余計なことなど言うものか……と、心に誓う斑目なのであった。
おわり。
【その1】
「あっこんにちわ、斑目先輩」
「や、荻上さん。お?笹原もいるのか、どうしたんだ月曜なのに」
「振替休日とれたんです。やー久しぶりっスよ、休めたの」
「そか、ご苦労さん。ちょうどいいや、これやる」
「……とうきびチョコ?斑目さん北海道行って来たんですか?」
「そのチョコは羽田空港で買ったヤツだがな、ハハ」
「?」
【しょにょ2】
「それで朽木君、例の会社のほうから連絡は?」
「1社目はもちろんのこと、2社目も3社目もナシのつぶてでございます」
「ありゃ、やっぱ無理だったか」
「まったくガッカリっスよ!」
「まあ、そんな気を落とすな」
「せっかくプリムヴェールのメンバーズカード作ったのに」
「そっちの話かぁっ!」
札幌は独身時代に転勤で4年ほど住んでました。俺が唯一描ける地方都市(っつうほど描けてないなw)で、自分的には第二の故郷。
半年間雪に埋もれて経済活動も凍りつく以外は人柄も街柄も良く、とてもいい街だと思います。リタイヤ後北海道で第二の人生なんて人がいるのもわかる。行けるもんなら俺もそうしたい。
名古屋編の作者氏には「斑目が名古屋楽しめずにかわいそう」なんて言っときながらこちらでも彼はメインイベントを逃しております。ああ、斑目はかわいそうが似合う。
札幌にはまだまだしゃべりたい場所やイベントがあるけど、まあ1作にはコレが限界かな。プリムヴェールは行ったことないけど宝来は実在。チャンスがあったら是非行ってみて頂きたい。
俺もほかの人が書いた放浪記が読みたくなりました。本作も斑朽で書いたけど、ほかの人との組み合わせでも広がりが出ていいな。アンスーと組めば海外だってOKだw
ま、そんなわけで。本日はこんなもんで失礼いたします。
くは〜、一気に読んじゃったです。
なんかこう、一緒に旅行している気分になれるとっても面白いお話でした!
とにかく、お疲れ様です!
52 :
札幌編の人:2006/08/20(日) 17:37:27 ID:???
うわ、てゆーか投稿見直してる間に?反応早っ!
スピード感想ありがとうございます。チャットかw
札幌いいとこですよ。もうビアガーデン終わってるけど、チャンスがあったら是非どうぞ〜。
>>斑目放浪記札幌編
名古屋編書いた者ですが、続けて頂きありがとうございます!
率直に、面白かったです。
そして「俺の運命の女神はドジっ娘」。
まさに!そしtwドジっ娘なのにSですよwww
北海道行った事無いですが、楽しめました。西日本編でまた書きます。
54 :
札幌編の人:2006/08/20(日) 22:54:02 ID:???
あ、おおもとの作者氏だ。ありがとーございますー。
楽しんでいただけたなら光栄っす。こういったシリーズものでもほかの人のあとを受けて書くのってけっこうドキドキものですな。
ドジっ娘女神はきっと斑目を幸福にすることができるのでしょう。紆余曲折の末にw
西日本は俺はほとんど知らないので、彼がそっちのほう旅すると楽しいと思います。
さっきテレビで由布院やってたけど温泉いいな。あとなんだろ、尾道三部作?
夢は広がりますなw俺もなんか思いついたらまた書きますね〜。
>>斑目放浪記札幌編
やーなんつーか…なんつーかね…。ニヤニヤ
むしろ斑目、今回はなかなかいい思いをしてますな。タダだし。いいなあ北海道。一度行って見たい。
クッチーに振り回されつつも皮肉を忘れない、そんな斑&朽が大好きだ。二人の掛け合い漫才、最高でしたにょ。
…あああ、書きかけのSSが進まん!!仕事とかが忙しかったりして中々…。
くそう!ワシもまた頑張らねば!!
56 :
札幌編の人:2006/08/21(月) 06:56:08 ID:???
>>55 むう、斑目がいい思いをしてはまずかったな、たしかに(オ
斑朽はTEAMダメオタで相性いいのかもしれませぬ。他のSSでもちょこちょこ絡んでるし。
>くそう!ワシもまた頑張らねば!!
楽しみにしてます〜。ただお体もいとうてくだされ。
こちとら盆休みの間1週間1歳児の相手をしたらカラダがガタガタにw
もうすぐ8巻発売ですが、暑い日々が続きますね。
絵がド下手なので、暑中見舞いのつもりでSS書きました。
では6レスでいきます。
荻上会長の下、無事に終了したコミフェス後のこと、お盆も過ぎて
日暮れとともに涼しくなるかと思われたが、暑い日々が続いていた。
「予約していた9人っすけど……。あと、焼き網も2つお願いします。」
「お待ちしておりました、テーブルこちらになりますので、ご案内いたします。」
半袖カッターにネクタイを外した姿で、斑目を先頭にゾロゾロと歩いて
案内された席に向かうのだった。屋上にテーブルと椅子が並んだホールには
少し時間が早いのか、まだ斑目たち以外は2組ぐらいしかお客は来ていない。
荻上さんが斑目のすぐ後ろを付いていく。
「斑目さん、ココはよく来られるんですか?」
「あー、まぁ、先月会社で来てネ――。ところで笹原遅れるけど来れるって?」
「ええ、あと1時間ぐらいで来られるそうです。」
「集合時間を遅くしても良かったかねぇ。」
「いえ、仕事が終わる時間も確定して無かったそうですから。」
そんな斑目と、荻上さんの後ろから歩いてきてた春日部さんも話に入ってくる。
「平日の夜だし時間も早いし、最初に言い出したアタシの都合だかんねぇ。」
「俺はだいたい定時に帰るから良いけどサ。コーサカも休みだって?」
「遅い盆休みなんだよ。後ろで歩きながら寝てっけど(苦笑)。」
椎応大にほど近いデパートの屋上のビアガーデン。コミフェスで顔を
会わせたりしたが、飲み会では久しぶりに集まる現視研の旧メンバー達だった。
「お料理お飲み物、バイキング形式でセルフになっております。
こちら焼き網になりますので、肉とお野菜もあちらにございます。
それでは閉店22時まで飲み放題になりますので、ごゆっくりどうぞ。」
暑い中かっちりと洋食のウェイトレス姿をした店員の説明を受け、
各自まずは料理やビールを取りに行くのだった。
朽木はビールを皆の分まで注いできたが、泡が半分以上だったので
春日部さんは自分で注ぎ直しに行こうとしている。
「あぁ、俺が注いで来るよ。朽木君も教えてあげるからおいで。」
そう言って田中がビールサーバーの方へ向かった。
二人で運んできたジョッキには、綺麗な泡の比率が出来ていた。
「こういうサーバーだと本当はあんまり難しくないんだけどなぁ。」
「ありがとうございますっ!感謝感激にょ〜。勉強になりました。」
そこへ大野さんと荻上さんがサラダや点心、焼き鳥などを。恵子と斑目が生肉を
持って戻ってきた。高坂は枝豆や刺身を確保していた。
2往復ぐらいでとりあえずは乾杯となる。
「ゴホ…、我々は一人の英雄を失った!―――。」
思わず左手を胸に当て、右手を掲げた演説ポーズを取りかける。
「おいおい!早くしないと呑めないぞー。」
田中から素早くツッコミが入る。
「いやいや、じゃなくって……(苦笑)。んじゃ、まぁ、
OB会?の開催とお互いの残暑見舞いの為に、乾杯―――。」
「「「乾杯〜〜〜。」」」
現会長の荻上ではなく、斑目の音頭でそれぞれジョッキを掲げるのだった。
カルビやハラミ、ウインナーやイカなども焼き始め、しばらくして肉の臭いと
煙が立ち昇ってきた。だんだんと周りの席も騒がしくなってきた。
「あー、今日は適当なシャツ着てきて良かったよ。なんか風向きで
煙がこっち来るかんね。屋外だけど。」
「咲ちゃん、席変わろうか?」
そんな二人の様子を目の端に映しながら、荻上や恵子と話す斑目だった。
「で、最近どうなの?現視研は?俺はたまに昼休み行くのと
朽木君や笹原から聞くぐらいなんだけど。」
「部員は2人入ってきましたけど、それよりもうすぐスーが来るのが
心配というか、不安というか―――ですね。」
「アメリカの子だっけ?あたし初めてだけど、なんつーか 向こうにも
オタクって居るんだねぇ。しかも女の子って…やっぱホモ好きなの?」
「なんでそこに直結するんですかっ!」
「えーーだってそうじゃん。あたしだって読むしさぁ。」
「スーが引っ越して来たら歓迎パーティーしましょうね!」
テーブルの向こうから大野が言ってくる。地獄耳か。
「ん?大野―――。その左手の包帯、どうした?」
「え?まあこれはおいおい話しますぅ。」
そう言ってジョッキを一気に空けるのだった。
しばらく呑み進み、焼き網に焼き過ぎた肉の成れの果てである炭の塊が
数個出来てきた頃になって、春日部さんが立ち上がって提案した。
「さてそれじゃあ、皆はコミフェス?行って会ってるだろうけど
アタシは久しぶりだから、近況報告と暑気払いも兼ねて、最近有った
涼しくなるような話か怪談でも一人ずつ言ってみようか?」
「はーーい、じゃあワタクシめが一番槍でっ!」
「あー、クッチー=(イコール)寒い芸風だもんねぇ。」
春日部さんのツッコミで既に出オチ状態だ。
「朽木学ことクッチー、現視研の風物詩と言いますか毎年恒例ですが
また、就職が決まっておりませんっ!」
「………名前とあだ名の『こと』の前後が逆じゃねぇか?」
「彼の中ではクッチーが真の名なんですよ、きっと(笑)。」
「勝手に風物詩にしないで欲しいですね。人聞きの悪い。」
「うーん、なんかキレが無くなったような気がするね。最近どうなの?」
「知りませんよ。私も最近会ってませんでしたから。」
数秒の沈黙の後、皆口々に就職出来ていないことそのもの以外について
批評し始める。すごい滑りっぷりだ。
(うわーーー僕チンの心はブリザードですぅ〜〜〜。)
一応、クッチー自身の納涼は果たされたようだ。
その後、春日部さんが近くの峠の古寺に深夜ドライブに行って
一人減った話や、恵子がトンネルでの人柱と血の手形の話など、
生暖かい夜の風と焼肉の中、屋上ということで少し雰囲気が
有るような無いような感じで、定番の怪談を披露した。
そしてビールや黒ビール、酎ハイなど呑み進み、だんだんと一同ともに
酔いが回ってきた。
斑目の寒い話もダブルオチが効いている。朽木に負けていない。
「えー。ネタがマジで何もアリマセン………。」
「うそー?」
「空気読めよ。」
「で、オチは?」
皆のツッコミの冷たさもかなりのものだ。
「あ、そういえば、誰も久我山呼んでねえの?俺も忘れてたけど………。」
その斑目の一言で、予定調和的な滑り芸の域を一気にブッチギリだ。
どうやら今日は本当に誰も久我山に連絡してなかったようである。
斑目は灰になったジョーのようにテーブルの端の席に座ってしまい、
横目で少し心配そうに荻上さんがチラ見している。
そこへ田中が話し始める。
「あー、じゃ、じゃあ次は俺ね。洋裁でミシンを使ってるとね、色々と―――。」
「ストップ!!もうオチは判ったから!」
今日も春日部さんはツッコミに大忙しだ。
「ん?俺はわからねぇけど?」
「ほらほら、聞きたがってるよ。えー、指の爪をね…。」
「だからヤメロつってんだろ!」
立ち上がって春日部さんのチョップが炸裂する。
「おおーーっ、久しぶりに見たっ。」
男子諸氏の歓声が上がる。
「あつつ。こういうのって斑目や朽木君の役回りじゃないか?」
「俺かよ!しかしお前の話もう俺もわかったぜ。痛い話はゾクっとするからなぁ。」
「おい、斑目。なんか羨ましそうじゃないか?」
「馬鹿かおめーわ!俺がドMみたいな事言うんじゃねーよ!」
そして殴られた田中をジト目で眺めていた大野さんが立ち上がった。
「では私の話を。コミフェスのあと、山に撮影に行ったんですけど
田中さんたら『クヌギの樹液の匂いがする』とか言い出して、
どんどん林に入っていったんですよ。それで本当にクワガタを
見つけたのは良いんですけどね―――。」
話が始まるやいなや、田中は新たにビールを注ぎに席を離脱してしまった。
「私は知らなかったんですけど、樹液ってスズメバチも居るんですね。
それで何故か私だけ襲われて…。それでこの左手ですよっ!
あとから『黒いものが襲われるから』とか 『香水の匂いに寄るらしいよ』
とか、知ってるなら先に言って下さいって話ですよ!」
そこへ冷や汗なのか暑さなのか、汗を流して田中が戻ってきた。
「だから埋め合わせはするって―――。ま、まあ呑んでよ。
ハーフ&ハーフ作ってきたからサ。」
そう言われて田中からジョッキを受け取ると、グビっと呑んで座る大野さんだった。
「あうー。そう言ってから何日経つんですかぁ。」
「……なんだこの夫婦漫才。」
今日、何回目かわからないツッコミを入れる春日部さんだった。
そこへ遅れてやってきた男が登場した。
「お待たせ―――。荻上さんに、みんなも。しかし暑いねぇ。」
「あぁ、笹やん久しぶり。」
「えーと、春日部さんだけ久しぶりかな。こないだコミフェス有ったから。」
当然のように荻上さんの横の席に移動するかと思いきや、まず田中の方へ
歩いていく笹原だった。荻上さんだけが少し不思議がる。
「田中さん、この荷物ですか?例の。やー楽しみですね。
俺も少し恥ずかしいですけど―――。」
「任せてよ。これは俺自身の為でもあるからな。」
「「何の話をしているんですか??」」
大野さんと荻上さんがハモって疑問を投げかける。
「え?俺が蛍野先輩のコスプレしたら、荻上さんが鍬形ハサミの
コスプレしてくれるって聞いて来たんだけど。」
「言ってません!!!」
0.5秒で否定する荻上さん。
「いえ、是非やってください!田中さんGJ!」
その否定に0.5秒で被っていく大野さんだった。
「えーーもう、早く二次会のカラオケボックスで披露しましょうよ〜。」
ジョッキを空けながら笹原は少しのんびりしている。
「もうちょっと呑んで食べて良い?俺まだ腹ペコなんだけど。」
「あーもう、笹原さん弱スギ!!そんなの一気に詰め込んでください!
それよりも荻上さんをもっと詰めて下さいよ!見たくないんですか!」
「え―――?『きっと可愛いヨー。俺も見たいなー。』こんな感じ?」
相変わらずのヘタレっぷりが健在なようで、それを見て少しホッとする
斑目と朽木であった。希望の星でありながら身近な存在であって欲しい。
複雑な男心とともに、残暑の夜は更けていくのであった。
>>57「暑中見舞い」じゃなくて「残暑見舞い」ですねorz
すんませんでした。
>>終わらない夏
>希望の星でありながら身近な存在であって欲しい。
このフレーズ素敵。笹原の立ち位置はまさにこうでしょう。斑目や久我山のように安定を求めるのではなく、高坂のように超人でもなく。
ところでコス計画、大野さんも知らなかったのがスゲエw ハーフ&ハーフのくだりといい、このフットワークの軽さはなんか昔の田中を見ているようだ。
よい残暑見舞いでございました。ゴチ。
>>げんしけんオープンキャンパス
これは(目欄)SSスレのやつですね。
>終わらない夏
いいですね。夏の一コマ。すごい和みます。
田中がクッチーにビール泡についてレクチャーする場面、初期の良い先輩ぶりを思い起こさせたり、大野さんとの夫婦漫才がとてもいい味だしてます。
個人的には田中が影の主役かも。
>あとから『黒いものが襲われるから』とか 『香水の匂いに寄るらしいよ』とか、知ってるなら先に言って下さいって話ですよ!
ここ爆笑!
たしかに「黒いものが襲われる」。
大野さん黒いから、いろんな意味で。
8巻の発刊がいよいよ明日ですよね。
それまでには1本SSをと思っていたので、仕事サボって大急ぎで書きました。アラが目立つし面白くもない導入部でスミマセン。
先刻現視研の決着をつけようと思っていたのですが、タイムトラベルが主ではなくなっていて、もはや「先刻」の「現視研」とした意味がないは、どうかご勘弁いただきたいです。
甲子園の「思いで作り代打」みたいなもんだと思ってください。
この後7レス投下します。
【2006年2月某日/現視研部室】
昼下がり。
部室の「会長席」に大野が一人で座っている。
彼女は先日、咲と2人で撮影した卒業記念のコスプレ写真を整理していた。厳選された写真のセットを咲に渡すためである。
机の上には、あられもない姿の咲が、インデックスプリントされて広げられている。
大野は時折、インデックスの1枚を手に取って眺めては、「うふふ」と満足そうな微笑みを浮かべた。
作業を始めてからしばらく経ち、大野は、「ふう…」と一息ついて、窓から階下の広場を見た。
サークル棟に囲まれた中央の庭木は、ついこの間まで冬枯れの寂しいたたずまいを見せていたのに、次第に芽吹いて、新しい葉を広げようとしていた。
もうすぐ、春が来る。
1年前、咲の胸で泣いた頃に比べると、不思議と哀しみを感じない。
現視研の会長として、やるだけのことをやり、荻上の件を含めて、多くの喜怒哀楽を皆と共にした。
去年ほどの涙が出ないのは、充実感が満ちているからだと、大野は自分の心に言い聞かせていた。
ガチャリ。
不意にドアの空く音がした。
大野が振り帰ると、そこには高坂がいた。
「やあ大野さん。今日は一人なんですか?」
「はい。高坂さんもお一人ですか?」
「うん、咲ちゃんは開店の打ち合わせがあってね。僕は自分の荷物を取りに来たんだよ」
「そうですか」
会話はこれ以上は続かなかった。
大野は再び咲に渡す写真の整理を続け、高坂はロッカーを開いて、私物の同人誌を2つ3つ取り出していた。
無言のまま時間が過ぎていく。
沈黙を続けるうち、大野は(苦手だな)と思った。
(考えてみたら、高坂さんと2人だけというのは初めてじゃないかしら。そうでなくても、話題がないのよね……)
単純に「この人とはそりが合わない」という問題ではなかった。
アメリカで生活していた大野だからこそ、他のメンバーよりも分かる感覚があった。
他人と向き合う時、日本人は最初から「自分」を見せることはない。オタクならなおさらだ。
大野自身も、比較的オープンな欧米人との付き合いには苦労したものだ。
それでも、現視研の仲間たちのように、長く付き合えば、やがてその人のパーソナリティが見えて来るはずである。
大野が田中と愛し合うようになったのも、「コスプレ好き」という共通点の奥に見える人柄を見い出し、認め合えたからだろう。
(でも、この人には何もない。いや、何も見えない…)
容姿端麗で完全無欠。プログラミングの勉強も1か月でマスターしたというまさに「超人」の高坂。
でも、その奥にあるはずの「人間味」を、誰も見たことがないのではないかと、大野は思った。
(もしかしたら咲さんでさえも、高坂さんの内面にふれたことがないんじゃないかしら?)
ふと、咲の写真インデックスに目を落とす大野。
再び上目使い気味に高坂の方を見た。
(高坂さん、咲さんのコスプレ写真には興味ないのかしら?)
机の上、大野の周りにはインデックスプリントが数枚無造作に置かれているのだ。
「これ咲ちゃん?」と、関心を持って話掛けてきてもおかしくないはずだ。
それなのに高坂は、棚の整理に黙々と時間を費やしている。
(そういえばあの時も……。コスプレ、嫌いってわけじゃないハズなのに……)
大野は、咲が初めて本格的なコスプレ衣装に身を包んだ学祭のコンテストを思い出した。
※ ※
【2003年10月某日】
「きょう3人目の律子・キューベル・ケッテンクラートさんです!」
場内アナウンスと共に会場中からフラッシュが焚かれ、注目を集めた咲の晴れ姿。大野はその時、舞台袖からその姿を感激の面持ちで眺めていた。
お立ち台インタビューの最中には、大野は袖から会場内にいるはずの現視研の面々を探した。
久我山、斑目、笹原は会場後方で顔を赤らめながら見物しているのが見て取れた。
だが、高坂は……。
大野はその時のことを思い起こして背筋がゾッとした。
あのコンテストで、咲が最前列の盗撮者を発見してシバいた騒動もあって、今まで忘れていたのだ。
高坂の目を。
コンテストの最中も時折(それは咲と視線が合った時なのだろうが)いつもの笑みを見せるものの、大野は、感情の表れを感じない高坂の無表情の瞳を見たのだ。
大野はさらに記憶をまさぐる。
咲が盗撮犯を見つける前に、咲の側に近付きはじめていた高坂のことを。
(北川さんたちが収拾に動いた時、高坂さんはすでに舞台近くまで来ていた。後方の混雑からすれば、何かが起きることを予見して動いていたとしか……)
※ ※
【2006年3月某日/現視研部室】
「大野さん、大野さん?」
「……っ、ひゃい?」
ビックリして思わず間抜けな返事をしてしまった大野。高坂が覗き込むような視線でこちらを見ていた。
うろたえる大野を優しく見守りながら、高坂は話し掛ける。
「これ、咲ちゃんのアレ……?」
高坂はインデックスを一枚取り上げて笑顔で眺めた。
大野は少しホッとした。
さっきのコトはただの杞憂だと思った。
高坂はちゃんと咲のコスプレ写真に気付き、興味を持って話し掛けてくれたじゃないか。
「そうだ。高坂さんにも写真を1セット差し上げますよ。咲さん燃やしちゃうかもしれませんから、記念に持っていてください!」
「うん。ありがとう!」
しかし、高坂は続けて、意外なことを口走るのだった。
「大野さん、もう一人、咲ちゃんの写真を見せたい人がいるんだけど」
「へ?」
高坂は、自分のカバンからiPodを取り出して、大野に差し出した。既に動画がスタートしている。
ディスプレイには、見慣れた景色が、見慣れないアングルで映り込んでいた。
そこは現視研部室。
本棚の上あたりから見下ろすようなアングルで、広角レンズが部屋全体を映し出していた。
テーブルの一角に、咲が一人タバコをくわえながらマンガを読んでいた。
大野はディスプレイから一瞬顔を上げて高坂を見た。
「コッ、高坂さんコレは一体?」
「初代会長の……置きみやげとだけ言っておきます」
(初代会長って……何をしていたの?)
自分が学祭や新人勧誘のたびにこの部屋で着替えをしていたことを思い出し、軽く動揺する大野。
(そういえば咲さん、部室での着替えに凄く神経使ってたような……)
大野は判然としないながらも、ディスプレイに目を向けた。
すぐに、広角で歪んで映し出されたドアが開き、リュックを重そうに抱えた斑目が入ってきた。
斑目は、読書に熱中する咲に声を掛けてはシカトされ、ジュースを買って来ては断られる。
その挙動不審ぶりに、大野は見入っていく。
やがてディスプレイの中では、「何か(←実は鼻毛)」に気付いた斑目が、咲に近付いて殴られた。
斑目は謝る咲を不自然なくらいに穏やかになだめながら、やがて姿を消していった。
斑目の一人芝居を俯瞰して見てみれば、まるで気になる女の子に自分の存在を気付いてほしいと動き回るいじらしい姿に映っていた。
「……斑目さん、まさか……」
大野は呆気にとられながらも、ディスプレイの中の意外な展開に目が釘付けとなった。
そして動画が終了すると同時に高坂の方へと向きなおり、「高坂さんは、いいんですか?」と、いぶかしげに尋ねた。
高坂は、いつもの笑顔で事も無げに応える。
「僕も初めてコレを見せてもらった時は驚いたよ。でも、咲ちゃんが卒業しちゃう今、斑目さんにも悔いのないようにしてもらいたいと思ったんだ」
高坂の答えに、(……スゴイ自信。なのかしら……)と驚かされる大野だった。
数日後のサークル棟。
大野は、マスクにサングラスという怪しい姿で廊下の陰に立っていた。
斑目を待ち伏せて、咲のコスプレ写真を渡そうとするが、残念ながら、斑目の拒否と、咲に見つかったせいで受け渡しはかなわなかった。
同じ頃、プシュケの事務所内には、作業に追われる高坂の姿があった。
ふいに手元の携帯電話が振動する。
『斑目君は写真を受け取らなかったよ』
電話先からはその一言だけが聞こえてきた。
「そうですか。では卒業式が『最後』になりますね。はい。よろしくお願いします」
高坂は、静かに通話を切った。
椎応大学の卒業式は、間近に迫っていた。
<つづく>
えーと、最終回前の回で、大野が斑目に「咲コスプレ写真」を渡そうとした裏付けを、先刻現視研の形でやってみました。
真意は次に、ということで、真意考えなきゃ(汗
咲の学祭コスプレの際(例の見開きコマ)、高坂は他のみんなの盛り上がりとは一線を画して冷静な視線を送っていました。
その回の挙動でも不審な部分があり、それでまあ、ちょっといじってみたくなりました。
ではまた次の機会に。
お目汚し、失礼いたしました。
終わらない夏、感想ありがとうございます!
>>65 >フットワークの軽さはなんか昔の田中を見ているようだ
そりゃもう、喧嘩して機嫌を損ねたらいきなり俊敏になりますよね?
ってそれは自分自身n(ry
>>67 田中にスポットを当てまくりは無意識でしたが、最近集中して田中×大野の
SSを読んだ影響でしょうか。
>大野さん黒いから、いろんな意味で。
思いもよらない解釈に、僕も爆笑ですwww
>先刻現視研ZZ-1
サスペンス&ミステリ!続編にぞわぞわしながら期待です。
高坂オソロシス…
>終わらない夏
コミフェスの後キター!時期的にいいですねこういうの!!
相変わらずなクッチーとマダラメも含めてほほえましかったです。
「大野さんは(色んな意味で)黒いから」にワラタwwwww
>先刻現視研ZZ
……うわーーー、ちょっとちょっと(汗)こりゃすごい展開だ!
高坂の行動(咲会長コスのとき)の洞察、思わずなるほどと思ってしまいました。
…高坂のあの目、確かに違和感ありますよね。ただ個人的には、「高坂が無表情=素で驚いたとか、感情の揺れ」を表してるんじゃないかと思ってるんですが…。
>咲が盗撮犯を見つける前に、咲の側に近付きはじめていた高坂
確かに言われてみれば!高坂ニュータイプか(汗)
あと、大野さんが斑目の気持ち知ってた理由とか、写真渡そうとしてた理由がSSの中できちんと説明されてて、とてもよかった。
今後の展開が楽しみでなりません。早く読みたい!…長文スマソ。
皆々様、感想ありがとうございました。
>>21 この話と前作「11人いる!」の基本的なコンセプトは、忙しくて気苦労も多いが賑やかで楽しい荻上会長奮戦記です。
こう言っては何ですが、11人の1年生はその為の状況設定とか舞台装置みたいに考えてます。
だからこの11人は基本的にはバラでは使わない積りです。
ただ今後は、書き進める内にキャラが勝手に動き出すかも知れません。
ちなみにはぐれクッチーも私です。
>>22 食われてましたか、旧メンバー?
自分としては逆に、全員はさすがにキャラ立て切れなかったかなと反省してたのですが…
>>23 カオス…最高の褒め言葉ですな。
ありがとうございます。
>>33 パロディの元ネタばらしみたいなのは野暮かなとも思ったのですが、思い切って書き込んで今回は正解でしたね。
前スレでは感想サボり気味だったのを反省して、まとめて感想
>げんしけんオープンキャンパス
元ネタが分からんので訪問者の男女が誰なのか分からん。
だけどオタサークルの部室にスーツ男2人のシュールな絵に呆然、という状況はよく分かった。
まあこれで訪問した2人も1つ学んだことでしょう。
オタクと言っても、必ずしもみんな「電車男」みたいな格好じゃないということを。
(当たり前だ!)
>斑目放浪記
作者違うみたいなんでまとめて感想は何だけど、いいなあこのシリーズ。
「オタクはつらいよ」シリーズみたいに、シリーズ化してあちこち行かせてみたいね。
それにしても「ちょっぴりドジっ娘」の運命の女神ですか…
ちょっぴりじゃねえよ!
命に関わりそうなドジっ娘じゃねえか!
次はこんな感じかな。
朽木「斑目先輩、今度は海外の会社で面接ですにょー」
斑目「で、どこの国の、何の会社なの?」
朽木「レバノンの警備会社ですにょー」
斑目「朽木君、それ仕事傭兵じゃねえか?(冷や汗)」
感想の続き。
>終わらない夏
やっぱりこういう後日談的な話っていいなあ。
こちらでは新人さんは2人ですか。
その2人も連れて来て欲しかったな。
それにしても斑朽コンビのスベリ芸、もはやここまで行くとアートだな。
>先刻現視研ZZ
ZZキター!
有りそうで無かった高坂VS大野のマッチメイク。
(まあ別に戦わないと思うけど)
そして初代会長と高坂の怪しい関係。
これは興味深い。
つづき、お待ちしてます。
ちょっと!
「9巻」ってどういうコトよ!
すんません誤爆です。
買って来たよ8巻。昼休みっつーか昼飯の時間犠牲にしてアキバの虎まで行ってきたよ。俺昼遅いのね。いま帰ってきた。
もう解禁なんだろうけどネタバレはしないでおこう。ただコレだけは言える。空腹を抱える価値はあった!
コレだけだとスレ違いみたいなのでSSがらみの独り言も書いとく。
_| ̄|○ ネタカブッタ...
ゆうべ書き上げて今晩から推敲しようと……
でもメゲない。素敵な燃料が手に入ったから〜。
書いたやつは近いうちに投下します。
じゃ、俺仕事に戻るからみんなも早く買いに行けよ。今日は定時退社なw
久我山乙
……いや、「職場がアキバに近い」ってだけのネタなんだが、スマン。
8巻買って来ました。
俺もSS絡みでチト感想。
いやーまさか9巻まで続く上に、新キャラ3人も登場するとは思いも寄りませんでした。
嬉しい誤算です。
実は「17人いる!」の続編(今年の夏コミの話)を秘かに考えていたのですが、もう企画段階でメインキャラ全員出す積りだったんで、登場人物23人ぐらいいるんですよ。
でも8巻で初登場の漫研腐女子3人組、キャラ立ちまくりで捨てがたい上に、今後9巻でも荻上会長との絡み有りそう。
うーむ「26人いる!」で書いてみようかなあ…
(俺書くの遅いから完成は秋頃だな)
昨晩は駄文にご感想をお寄せいただきありがとうございます。
>>77>>78>>79>>81の皆様ありがとうございます。
本来ならば1件1件にお返事を書きたいところではありますが、誠に申し訳ありません……ご無礼承知でひとことだけ、
「大野さん、単行本になってから『そんな事だから……!』とか『不発弾を炸裂させる』 とか、斑目の気持ち知ってるなら連載中に言って下さいって話ですよ!」
……まさか咲以外、暗黙の了解的に知っている(ように見える)とは……。
ショック&テラオモシロス。すげーよげんしけん
ちょっと構成のやり直しだなZZ。……9巻が恐い(笑
「終わらない夏」の感想、引き続きありがとうございます。
SS書こうにも、8巻の内容を知ってないと再構築多そうですね。
まだ入手できてないので血涙ものですが、まだまだ戦えるようで
嬉しい限りです!
>>78 朽斑萌えですか〜。掘り甲斐がありますよね!
>>81 新入部員を登場させるとすると、本気でキャラ作りしないと…。
滑り芸は僕自身がデフォで搭載していますのでお手の物ですorz
早速、漫研女子を入れたSSを書いてみようと思った夏の夜。
うお、どうしよう(汗)
明日にならないと買えない方がいるのか…。
…実は8巻書き下ろしのネタを使ったSSをさっき書いたんだけど、明日まで待ったほうがいいのかなあ…。
まあ…九州の人は25日らしいし、公式日も過ぎてますから、おkでしょう…
92 :
84:2006/08/24(木) 18:11:14 ID:???
8巻ショックのあまり感想すっ飛ばしてました。
>>先刻現視研ZZ-1
うわ、なんだこのハードボイルド感。確かに大野さん−高坂という組み合わせは珍しいっすね。
真意を!真意を早く!
……って言ってみたりしてるが
>>87見る限り作者氏にもイバラの道がw
でもSSのドキワク感に加えて大爆笑もできました。申し訳ないけれどありがとう。
さらに
>>86も大変そうです。俺のショックなぞてんでキャワイイことが判りましたよ。
そんなわけで推敲・レス分け終わった。週末まで日を空けるとイキオイがそがれそうな気がするんで今から投下する。
今から30分、会社の人が誰一人帰って来ませんように(>人<)。
それと
>>90氏、コレ読んでたら錯綜しないようご注意ください。
『勇者の祭典』本文10レス+おまけ1レス。ちなみにバレはないので(っつうかぶっちゃけ無関係)ご安心してお楽しみください。
あ、もひとつ。
>>85 なっなに言ってんだよ、く、久我山じゃねーよオレ。
っつうかきっとクガピーなら何をおいてもメシは食うんだろうな、こんなときもw
天高く馬肥ゆる秋。椎応大学は大学祭の初日を迎えていた。
毎年3日間開催される大学祭は椎応の学生ばかりでなく、近隣他大学の学生や中高生も覗きに来る大きなイベントだ。模擬店やフリーマーケット、アイドルやお笑い芸人のライブなど盛りだくさんで、この時期このキャンパスはお台場や浦安に負けないテーマパークになる。
現視研の面々も今年は張り切っていた。まあ張り切らざるを得まい。会員数の減少が深刻なこのサークルは、次の春に新入会員を集めなければ存続の危機が訪れるのだ。この大学祭は、彼らの知名度を上げるラストチャンスというわけだった。
斑目晴信が現視研の展示会場に姿をあらわしたのは昼を少し回った頃だった。会場入口に立っている笹原完士を見つけ、声をかけた。
「よう笹原。どうだ?入りのほう」
「ああ斑目さん、こんちわ。今日はスーツじゃないんスね」
「バカヤロ、祝日じゃねえか」
「あー。スーツで弁当食ってる絵ヅラしか浮かばないんですよね、斑目さんって」
「ハイハイ毎日部室に来てて悪うござんした」
今年の展示は去年までのコスプレ撮影会と、数年振りに新たに書き起こしたパネル展示の二本立てだ。なるべく広い層に展示を見てもらい、在学生受験生にかかわらず来年へ向けての勧誘を図るのが今回の最大の目的だった。
気合の入ったメンバーたちはそれぞれの持ち場で実力を遺憾なく発揮し、結果満足の行く展示物が大量に揃った。
OBながら駆り出された久我山光紀は荻上千佳とともに大量のイラストやカットを描き上げ、高坂真琴はその神の手でもって各種ゲームの最速クリア動画、斑目も仕事中に会社のパソコンで力作の文書を叩き出した。
田中総市郎と大野加奈子のコスプレ班は例年にも増して気合の入ったクオリティと数量の衣装を制作し、自分もコスプレやりたいとゴネる朽木学をなだめすかしてMC役に徹させて、毎日3回それぞれ違ったテーマの撮影会を催す企画を立ち上げた。
そしてこれらを、笹原が修行中の編集技術と春日部咲の店舗ディスプレイノウハウでもってスタイリッシュな展示会場を作り上げたというわけだ。その成果はこれまでの現視研の展示とは明らかに一線を画す完成度を見せていた。
会場に一歩足を踏み入れ、斑目は息を飲む。
「はー……すげえじゃん」
「よ、斑目。今来たの?」
入口の内側の壁に寄りかかっていた咲が彼を見付け、挨拶する。隣にはいつものようにニコニコ笑う高坂の姿もあった。
「ああ、ちょっと漫研でヤナにつかまってた。……春日部さんの言ってた飾りつけ?これ」
卒業後は自分で店を出すと言っている咲は、今回のディスプレイを自分から買って出ていた。彼女なりに試したい事があったのだと言う。
「うん。やっぱ洋服とは勝手が違うね、100%イメージ通りとは行かなかったけど、でもどう?」
「いやいやスゴイっすよ。手前から奥に向かってせり上がる感じ?あ、じゃなくて入口が球体の中心なのか」
部屋は二つに仕切られている。入口側がパネル展示、奥の半分が撮影会場だ。
入口に立ってみると、展示物がどう系統分けされているかが一目で判り、自分の興味のあるコーナーへ歩いて行けばいいようになっていた。
入口側には既製のテーブルより低い展示台を作ってケースに入れたフィギュアやモニタが並び、奥側の壁や撮影ブースとのパーティションには巨大なポスターやタペストリーが天井まで貼られている。壁と床で切り取られた球体の内側に立っているように感じられる作りだった。
「解ってくれるねー。スペースの空きを丸く確保できるから意外と広く感じるし、あとこれはやってみて実感したけどオタグッズに包み込まれてる感じしない?」
「ん、それじゃ春日部さんには居心地悪いんじゃないの?」
「まーね、と言いたいとこだけど、そうでもないよ。コーサカに聞きながらあたしなりに『好きなものに囲まれてる空間』を演出してみたんだけど、うん、手直しすればいろいろ応用ききそう」
確かに、過去やっていた迷路のようなパネル展示よりはるかに見やすいし、現に入口を通りかかる通行人が雰囲気に惹かれて中を覗いてゆく。入口脇にしつらえた受付テーブルから、人が切れたタイミングで千佳が歩み寄ってきた。
「こんにちわ、斑目先輩。これ完成品です」
「おー。これはなかなか」
千佳が持ってきたのは入場者に無料配布しているサークル紹介誌だ。『現視研の歩きかた』と題された小冊子は千佳のアイデアで、過去のサークル誌からアピール度合いの強いページを抜き出して、端的に現視研を解ってもらおうという趣旨だった。
千佳はこの本に表紙イラストと数ページの漫画を書き下ろしており、この学祭に関しての彼女の仕事量はサークル最大となっていた。
「いいじゃない、荻上さん。イラストとかものすごい量描いたんだよね、お疲れ」
「やおいじゃない絵こんなに描いたのはじめてですよ、はは……あ、久我山先輩もいらしてます」
千佳のセリフと同時に、撮影会ブースの出入口から巨漢の影が現れた。タオル地のハンカチで汗を拭きながら、こちらへ歩いてくる。
「よ、よう斑目、久しぶり」
「おー久我山。仕事忙しいのか?」
「ま、毎日死んでるよ。見てくれよ、こんなに痩せちまった」
「……自分の体をジョークに使えるとは成長したな、お前。ちなみに俺が見る限りむしろデカくなってるぞ」
「ん……夏バテかな?」
「11月だぞ、おい」
久我山の出てきた方から加奈子の大声が聞こえてきたのはその時だ。
「ええー!田中さんカウボーイハット置いてきちゃったんですかぁ?」
「しまった!こっちの箱明日のヤツだったのか」
「もうっ、ロープと帽子はデキシーのレゾンデートルなんですからねー」
何事かと斑目たちが撮影会場のほうに移動すると、舞台袖の更衣室から田中が走り出てくるところだった。
「ごめんごめん、すぐ部室行ってくる」
「場所判りますかぁ?あ、キャ」
カーテンの隙間から、加奈子が顔だけ出し、ギャラリーが増えているのに気付いて小さく声を上げた。斑目が声をかける。
「なにごと?大野さん」
「あ、こんにちわ斑目さん。いえ、衣装の取り違えがあって」
「え、大変じゃねーか」
腕の時計を確認する。次回の撮影会まで20分くらいか。
「お前、衣装の着つけやってるんだろ、俺が代わりにとってこようか?」
斑目の提案にしばし思案するが、田中は残念そうに首を振る。
「いや、説明してる時間が惜しいな。あ、春日部さんと荻上さん、すまないんだけど中で大野さん手伝ってもらってもいい?」
「ん、オッケ」
「あっはい」
二人が更衣室に入ったのを見届け、田中は部室へ走っていった。
「コスで忘れ物か。田中ともあろうヤツがなー」
「でも今回すごいんですよ、今日の3回戦で15ポーズって言ってましたし」
斑目のつぶやきを笹原が隣で受ける。加奈子は午前中に『FFファウンデーション』と題した撮影会で、ファンタジーゲームがテーマのコスプレを、早変わり込みですでに5種類こなしていた。
「気合い入ってんなー。……あれ、受付いないんじゃないか?いま」
ふと入口が気になる。撮影会の受付や展示物の番をしていた千佳が、加奈子の手伝いでカーテンの向こうに行ってしまっているのだ。これには久我山が軽く手を振ってそちらへ向かう。
「あー、じゃあ俺行ってるよ。立ってるの、疲れたし」
「あっ、久我山先輩すいませえん」
更衣室の中から千佳が声を張り上げた。
「……なんか……活気あるな」
感慨深げに斑目がもらす。
確かにいつもの現視研らしからぬ活きのよさだ。いつもなら、単なるパネル展示や加奈子の撮影会をメリハリもなく行ない、適当に時間が来たら居酒屋で打ち上げをして終了する大学祭が、まるで違うもののように生き生きして見える。
「そうですね……俺たちってこんなにやる気ありましたっけ、はは」
笹原も少し違う雰囲気に苦笑している。実際にはこのテンションを引っ張ってきたのは笹原と咲だったが、本人にもここまでの完成度は予想できていなかったようだ。
「でも、みんないい顔してるね。全員が主役って表情してる」
高坂も満足げだ。
「僕たちも大学最後だし、いい感じじゃない。最後にみんなで、自分の趣味の集大成を出し切ったみたいでしょ」
更衣室の中でも女子3人できゃあきゃあやっているが、あれはあれで同じように楽しんでいるのだろう。
「ところで」
斑目が言った。
「この状況、去年のこと思いださないか?」
「去年?ああ、荻上さんのコス」
去年の学祭で、ちょうど同じように加奈子の着替えを咲と千佳が手伝っていた。少し事情は違うが、あの時は咲のセールストークに乗せられた千佳が生涯初のコスプレを経験していたのである。
「蓮子コス、ちょっと見てみたかったなー」
「……そーっすね」
遠い目で1年前に思いを馳せる二人に、高坂は笑いながら言った。
「でも笹原くん、これからは荻上さんにいっぱい見せてもらえるんじゃないの?」
「え……は?」
「コスプレ。お願いしたらいいじゃない」
「高坂君……きみ何言ってるの」
赤くなる笹原、冷や汗が止まらない斑目。
「見たいんでしょ?コスプレ」
「う……いやまあ、その……」
と、その時。
「ちょっと!どうしてまたこんな衣装が出てくるんですか!」
更衣室の中からひときわ大きく聞こえてきたのは、千佳の声だった。
「えー、どうしてって言われてもー。だから田中さんの新作ですってば、荻上さん用の」
「たはは、お前らは毎年毎年」
千佳の声にかぶせるように加奈子の声、そして咲の苦笑が続く。どうやら千佳は今年もコスプレの誘いを……いや、強要を受けているらしい。
「……うわー」
「あははは、まるで僕たちの声が聞こえてたみたいだねー」
「笑い事か?」
カーテンの外のギャラリーをよそに、咲と加奈子の包囲網は徐々に狭まっているようだ。
「いいじゃんもう。荻上、お前すでに何回もコスプレやってるんだし」
「だっ、あれはそういうことじゃなくてぇ」
「そうですよ、ついこないだもベレッタやってくれたじゃないですかぁ」
「それとこれとは状況がちがいますっ!」
なんと言っても2対1では分が悪い。加奈子は徐々にテンションが上がっているし、咲も自分に矛先が向かないように会話をコントロールしている。
「ちょっ、さ、笹原さんっ、そこにいるんなら大野さんなんとかしてくださいよっ!」
「あ……っ」
たまりかねたのか笹原の名を呼ぶ。笹原もそれに反応するが、加奈子が着替え中の更衣室には近づきあぐねている。
「あ、あのー大野さん?時間もあるんだしその辺でー……」
「えっでも笹原さんも見たいですよねー?」
「う」
「んもおっ、黙んないで下さぁいっ!」
恐る恐る声をかけても図星をさされる始末。そうこうするうちに加奈子はしびれを切らしたらしく、強硬手段に出たようだ。カーテンの内側の空気が変わった。
「そういえば咲さん、わたしコツつかんだんですよ。荻上さんはココをこう押さえてこう」
「やーっ?」
「おやま、大野あんた武術のエキスパートみたいな動きだね」
「今からの回は『ランブルロード・ラッシュ』ですからね。レイヤーはその時それぞれのキャラになり切るのが重要なんですふふふ。そーれぃ」
「ああッ!ちょっとやめてください大野さぁん」
更衣室の外では聞こえる声に笹原がハラハラしている。
「いいのか笹原、助けに行かなくて?」
「あああ、斑目さん俺どうしたら」
「俺に聞くな」
「う……そりゃそうですよね」
「やんっ、ちょ、ちょっとそこは……っ……きゃっ、笹原さぁんっ!」
中からふたたび、千佳の叫び声。
「……よしっ」
笹原は意を決し、立ち上がった。つかつかと歩を進めながら着ていたジャケットを脱ぎ、薄紅色のカーテンをオーバーにくぐり抜ける。中の三人に目をつぶっているところをアピールする。
「ちょっとごめんね!」
「キャッ」
「わ、笹原?」
流れるような体の動きでもう一歩踏み込み、仕切りの中心で棒立ちになっている千佳にジャケットをかぶせた。
実は入りしなに薄目で確認していたが、幸い千佳はまだ上着を脱がされ、ブラウスのボタンが外された程度で、ほとんど服を着た状態だった。内心胸をなでおろしながら彼女の肩から下を上着で覆うと、彼はそこで目を開いた。加奈子が頬を染めてガウンの前をかき合わせる。
「あ……ごめん」
「いっ、いえ」
「大野さん春日部さん、ホントごめん!今日のところはカンベンしてね」
返事も聞かず、千佳の肩を抱いて脱出する。千佳はあっけに取られたまま、笹原のエスコートに従っている。仕切りの内側の二人も、鳩が豆鉄砲といった風情で笹原たちを見送るばかりだった。
「荻上さん、とりあえず服直してもらっていいかな?」
「あ……はっはい」
壁に向かって立たせた千佳に笑いかけ、さらに今帰ってきたらしい田中のほうに視線を向ける。
「田中さん、そろそろ準備しないと」
「あ、おう、そうだな」
更衣室の方に走る田中と入れ違いに、頭をかきながら咲が出てくる。斑目はその光景を、ぽかんと口を開けて見ていた。
「(うあー笹原……かっこえー)」
服を整えた千佳が返してきたジャケットを羽織り、笹原はようやくひと息ついた。
「……ふぃ〜。ドキドキしたぁ」
「ドキドキしたのはこっちのほうですよ!大野先輩ガウン一枚だったんですからね!」
千佳も落ち着きを取り戻したようで、いつもの口調で笹原を叱責する。
「うひゃー、ヤバかったー。場合によっては俺ノゾキ大魔王じゃん」
「ノゾキどころか突入してきたじゃないですか……でも……あ、ありがとうございました」
「とか言いながら、ササヤン」
近寄ってきた咲が笹原の肩に手をかける。
「あんた実は薄目あけてたんじゃないのかぁ?」
「え!いや、いやいやいやそんなっ」
「まあいーか、今日のところは。さっきのナイトっぷりが見事だったから突っ込まないでいてやる。やるじゃん笹原」
「いやほら、大野さん常々言ってたじゃん?嫌がる人に無理やりコスやらせるのは邪道だって。俺は大野さんが悪の道に染まったら田中さんが悲しむと思ってね」
「いーからいーから。荻上、いーなお前の彼氏カッコよくて」
「えっ、いえ、そんな……っ」
「あたしなんか同じ状況でコーサカに助けを求めたら『コスやらなきゃダメ』って言われたからね」
「それは同じ状況じゃなかったでしょ、咲ちゃん」
「あはは。……荻上ゴメンなー。ちょっと熱が入っちまった。大野もたぶん気合入りすぎただけだから許してな」
すまなそうに千佳に詫びる。
「だっ大丈夫です、解ってますから」
「笹原も、ごめん」
「うわ、よしてよ春日部さん」
「あんたのこと試したつもりはなかったけど、上出来だったよ。あんなんされたらあたしでも惚れるね」
「もうしないでください。オネガイシマス」
そうこうするうちにコスチュームに着替えた加奈子も現れた。一着目はデキシーのようだ。カウボーイをアレンジした白いウェアが眩しい。
「荻上さぁん、ごめんなさい。わたしったらちょっと興奮してしまって」
両手を合わせ、平謝りする。
「もういいですから。みんなしてそんなに謝らないで下さい」
「笹原さんも」
「いいって、ほんとに。俺こそ着替え中にごめんね。荻上さんのことにしたってちょっと無粋だったかなって思うし」
「でも、荻上さん奪って行った時の笹原さん、素敵でしたよぉ」
恐縮する彼に賞賛の言葉を重ねる。
「あはは。俺でよければ埋め合わせはするからさ」
「あ!笹原さん、そんなこと言ったら……」
照れて言う笹原の言葉に、加奈子の瞳が輝いた。それに気づいた千佳が慌てるが、もう遅い。
「ありがとうございますっ!では早速」
「えっ?って?うわぁっ!」
礼を言うや否や加奈子は笹原の背後に回った。猫科の動物を思わせるしなやかな体さばきで彼の両腕をがっちり極めると、そのまま更衣室へと引きずっていく。
「ああっ!ささはらさーん!」
「耐えろ荻上。あの自己犠牲の精神まで含めて、ヤツは立派な勇者だったよ」
千佳が助けに行かないように肩をつかみ、咲が言う。
「って過去形で言わないでくださいよっ!」
****
ステージの脇に持ち込んだ大型のスピーカーから、心臓を揺さぶるような重低音の入場テーマが流れ始める。
「ウェールカーァムッ、トゥ・ザ、ルルルァーンンブル・ロオオオードォォォッ!」
色とりどりのスポットライトが踊りまわる中、撮影会が始まった。
この回のテーマは女子プロレスのゲームだ。すでに続編の発売も決まっているこのゲームの売りは美しくリアルに躍動する女子レスラーの肉体美であり、コスプレイヤー神無月曜湖、すなわち加奈子を知る撮影会参加者の期待も最高潮に達していた。
「イン・ザ・レェェェッドコーナァァァ! フロォム、アンメェリカァァ、デーェェェクスィ、クゥゥレメーッッッツ!」
Wooooooo!
派手な巻き舌の入場コールとともに加奈子が登場した。投げ縄を肩に担いでカウボーイハットを観客に振ると、ノリのいいカメラマンたちが一斉に大きな歓声を上げる。そしてコールは次の選手の入場を告げる。
「イン・ザ・ブルゥゥゥーコーナァァァ! フロォム、ジャパーァァァンン、ベェェェ・ニィィィ・カァァァ・ゲーェェィッ!」
どこで練習したのか二連の前方伸身宙返りで登場してきたのは、黒い鎖帷子の忍者装束に身を包んだ……朽木学だった。
「ボクチンの時代がやって来たにょ〜〜〜!」
Booooooo!
本人は感無量でポーズを取るが、観客からは怒涛のブーイングが沸き起こる。入場をコールしたレフェリー姿の笹原も、困り顔で冷や汗をたらしていた。
「あああ、私のせいで笹原さんがあんな姿に〜」
「いいじゃんかあのくらい。てゆーかレニーハートのモノマネかます余裕すらあるんじゃねーか」
おろおろする千佳をとりなす咲。高坂はいつもの調子で笑っている。斑目は様子をのぞきに来た久我山と顔を見合わせていた。
「な、なんか現視研、ヘンな方向に進んでない?」
「やっぱそう思うか」
後日、参加者によるアンケートで上位の人気を獲得してしまった現視研に、自治委員会からの魔の手やら学生プロレス研究会によるヘッドハンティングやらが忍び寄ることとなる。ともあれ、今年の大学祭は無事に幕を閉じたのだった。
おわり。
その晩。
「うわっ」
「笹原さん?どうしたんですか?」
「大野さんから『お詫びだ』って渡されたんだけど……中身、相原誠のコスチュームだ」
「もうっ!なに貰ってきてるんですかぁ!」
「でも……俺もちょっと見たいかも……」
「!?」
「あ、ってうそうそ、ごめんね」
「……昼間の……」
「ん?」
「昼間のコール……やってくれたら、ちょっとだけなら着てもいいですよ?」
ほんとにおわり。
『かなしいライオン』に引き続き、笹原カコ(・∀・)イイ!!キャンペーン第二弾作品でございます。……カッコよく書けてるのか俺?
お判りいただけたかもしれませんが、カブったというのは『大学祭ネタ』って部分です。一応執筆スタンスとして、
「できる限り原作世界のストーリーの流れを尊重する」
というのを守りたい方だったので(たとえば「夏コミ初日に荻上さんが笹原に告白しちゃう」なんていう話は、書くとしても心の準備からして違う)、もうないと思ってた学祭話を原作者本人からぶっつけられて目が点でございますよ、もう。
この調子だとクリスマスとかバレンタインとかも今後油断できんワケですが、まーいいか、新作読めたし!メイドオギー見れたし!(あっバレだ)
ハナシ戻しますね。
各作者氏の既存SSでも2005年の学祭エピソードがいくつかありますが、しばし考えた結果俺ん中では「オギーはコスプレしない」んじゃないかと思ったわけですよ。学祭はオマツリではありますが、彼女には彼女なりの表現すべき手段があるわけですから。
てなこと考えながらちょうどライオン書き上げましてね、ああ笹原ってB型だったよなあと。もっともっと自己中にオギーを好いてもいいじゃんかと。自己中じゃないB型の人スマン。
そーいうわけでオギー独り占めテイストの強まった笹原を書いてみました。
この8巻書き下ろしはSS書きには劇薬だなw 俺以上に設定いじらにゃならん皆様頑張ってください。
しかし負けん!要は公式設定が充実しただけだーっ!
ふう。またなんか書いたら来ます。てゆーか仕事に戻りますw ではまた。
>勇者の祭典
>「あたしなんか同じ状況でコーサカに助けを求めたら『コスやらなきゃダメ』って言われたからね」
>「それは同じ状況じゃなかったでしょ、咲ちゃん」
ここがすんごい壷でした。
106 :
マロン名無しさん:2006/08/24(木) 20:50:23 ID:WKaSBOcX
中大出身としては毎回楽しみだったのに何故おわった
>勇者の祭典
ぶはっ!!いい!おもしろかった!!
2005年の学祭は梶先生が描いちゃった(やったーーー!)…ので、ワシは2006年のを書きたいなあとかちょっと思った。
…この前、感想で、「斑目かっこよすぎ」と言われたんで、ワシにも言わせてくれいw
笹原カッコよすぎだろwww
うんでも、すごく面白かった。
個人的には現視研の展示室内の様子とかの描写が目に浮かぶようで、「ああ、いい学祭風景だなあ…このへんはむしろ原作より(ry」
と思いました。自分が実際に客として参加してきたような気分になれたよ。
まえがき
8巻のネタバレSSは25日まで自粛してみる。
他にネタバレなしのSSを書いたんでこっちを先に投下してみマス。
109 :
空と雲1:2006/08/24(木) 23:03:47 ID:???
ちょっと小品を。息抜きに読んでもらえたら幸いです。
空と雲(4回生の秋)
***
今日はすごくいい天気で嬉しいなあ。
朝起きた直後は、ウチで昨日の格ゲーの続きをしたいなと思ってたんだけど、
(ふと思いついた連携技をためしてみたくなったから)
咲ちゃんに「外へいこうよーーー!ていうか朝からゲームはやめよう。マジで。ホント。おねがい」
って泣きつかれたので、こうして外に出てきたんだ。
で、改めて、今日は外に出て良かったと思ったんだ。すごく気持ちいいから。
ふわふわの形のいい雲が空にたくさん浮かんでる。
全く雲のない快晴より、僕はこういう空のほうが好きだなあ。
僕が空を眺めていると、咲ちゃんは「どーしたの?」と不思議そうに聞いた。
「うん、今日はいい天気だなあーと思って」
僕がそう言うと、「そうだねー。昨日は雨降ったじゃん。雨だと靴が濡れるからヤなんだよね」と言った。
「うーん、でも明日はまた雨降るよ」
「え。そうなの?…何でわかるの?」
「何となく。雲の流れ方とか?」
「は?……そんなんでわかんの?あ、でもコーサカ、前にも明日の天気当てたことあるよね。あのときはびっくりしたよ。天気予報では晴れって言ってたのにさ、ちゃんと雨降ったし」
「天気予報は大雑把だからねえ。全国の天気を予想しないといけないし。大変だよねえ」
「…はあ。」
咲ちゃんは眉間にシワを寄せて考え込んでいる。
公園のベンチで、さっきからずっとこうして咲ちゃんと座ってるんだ。空を見ながら。
頭の上の木がわずかに揺れる。気持ちのいい秋風がふく。
今日はすごくいい天気だなあ。
110 :
空と雲2:2006/08/24(木) 23:04:36 ID:???
僕は変わり者らしい。
夏に、内定の決まっている会社で泊り込みで手伝いをやったときに、同じ職場の人に言われたんだ。
うーーん、自分ではそんなに変わってると思ってないんだけどなあ。
というか、そんなコト言ってたら、世の中変わった人だらけだよ。
みんな色んな個性があって、性格があって、思想があって、主義主張があって、一人として同じ人なんていないじゃない。
そしてそれは、すごく素敵なことじゃない。楽しいじゃない。
だから僕は、「変わり者」って、誉め言葉だと思っているんだ。
マイペースだよねって、よく咲ちゃんに言われるんだ。
でも自分のペースを保つのって大事じゃないかな?
ていうか自分のペースを保っていかないと、無理すると、結局どこかで疲れちゃうと思うんだ。
そうすると結局、人に合わせられなくなると思うんだ。人に合わせる余裕がなくなってしまうと思うんだ。
だから僕は、自分のペースを保とうと思うんだ。
好きなことをずっとしている間が一番楽しい。
ゲームをやってて、ここはもっとこうすれば時間短縮になるかな?とか、こうすればカッコいいかな?って、どんどん思いついてくるんだ。
それを納得いくまで練習して、自分の思ったとおりに出来たときが一番楽しい。
…出来たときのことを想像するのが楽しい。
よく、「何でそんなにゲームうまいの?」って聞かれるんだけど、何でと言われても、「うまくなるのが楽しいから」としか答えられないんだ。
何であれ楽しいのが一番じゃない。ねえ?
111 :
空と雲3:2006/08/24(木) 23:05:13 ID:???
…ちょっとの間考え込んでいたようで、気がつくと咲ちゃんに肩をつつかれていた。
「ちょっと、コーサカ。さっきから呼んでるんだけど」
「…ん?あ、ごめん。」
「さっきからずっと空見てるけど、そんなに空見るのが好き?」
「え?ああ、僕空のほう見てたんだ?」
「って、今見てたじゃん」
「でもあまり見てた覚えはないんだよねー(ニッコリ)」
「………コーサカ?」
「あ、でも空見るのは好きだよ」
「…はあ。」
咲ちゃんはまた考え込んでいる。
咲ちゃんは、僕のことをもっと分かろう、理解しようとしてこんなに考えてくれてるみたいだけど、それってそんなに大事なことなのかなあ?
もちろんある程度は大事だと思うけど、全部が全部理解しあうのなんて無理だと思うんだけどなあ。
でももちろん、共感しあえる部分もあって、互いの円と円が重なる部分があって、そんなときには嬉しいと思う。
でも、全部重ならないと一緒にいられないかっていうとそんな事ないでしょ。
こうして今まで4年も一緒にいるんだし。
それでも咲ちゃんは考える。こうして考えて、分かろうとするのが咲ちゃんなんだ。
だから、それはそれでいいんだ。咲ちゃんらしいんだ。
らしさ、ってすごく大事だよね。
112 :
空と雲4:2006/08/24(木) 23:05:46 ID:???
考え込みすぎてパンクしかけてるときは、ちゃんと助けるよ。
できる限りのことはするよ。
「咲ちゃん」
「んー?」
「ちょっと歩こうよ」
「ん。そだね。そろそろお腹空いたし、ちょっと歩いたらどっかのお店にでも入る?」
「そうだねえ。それがいいねえ」
僕らはベンチから立ち上がって歩き始めた。
落ち葉が道に散らばって、歩くたびにカサカサと音をたてる。
「秋だねえ……」
咲ちゃんはのんびりと言った。
「秋は涼しくて、過ごしやすくていいねえ。」
「そだね。まぁ私は春の方が好きなんだけどねー」
「昔からそうだよねー、咲ちゃんは。春が好きだよねえ」
こうしてとりとめのない会話をしながら、ゆっくりと歩き続ける。
あと半年。冬がきて春が来たら、卒業だ。
「こうしてのんびりできるのは今の間くらいかなー…」
咲ちゃんはそう言った。今、同じことを考えてたんだなあ。
「そうだねえー」
「仕事始めたらこうしてゆっくりする時間も少なくなるんだろうね…。会う時間もさ…」
「んー、そうだねえー」
113 :
空と雲5:2006/08/24(木) 23:06:51 ID:???
「コーサカ」
咲ちゃんは僕の手を少し強めに握った。
「…店、ちゃんとやってけんのかな…。今さら不安になってきてさー…」
「咲ちゃんなら何とかやれると思うよ」
「……私らのこともさー…」
僕は咲ちゃんの目を見た。
「大丈夫だよ。」
「…うん、コーサカがそう言うんなら」
咲ちゃんが笑顔になった。僕の手を握っていた力が、少しだけ抜けた。
大丈夫って言い続けて、実際に大丈夫になるよう頑張ったら、本当にその通りになると思うんだ。
だからきっと大丈夫。
まだ未来のことはわからないけど。
好きって思い続けて、実際に付き合い続けられるよう頑張ったら、本当にその通りになると思うんだ。
だからきっと大丈夫。
今日は本当にいい天気だなあ……。
END
高坂視点に初挑戦。なんかものすごいポジティブシンキングな人になりました。
8巻読んでから、再び妄想が止まらなくなったんで、ちょっとだけ吐き出してみた次第です。
…今日はマのつく人に土下座しながら寝ようと思います……orz
>勇者の祭典
これは…シンクロニシティってやつか?
微妙に原作の展開と被ってるな。
(コスプレと展示の2本立てとか、クッチー意外に活躍とか)
書いてからメゲかけるのも無理も無い。
でもまあこちらはオールスター大作だし、笹原カッコイイし、神展開とまでは言わぬが神のコピーぐらいの完成度はある。
セカンドインパクトに気をつけよう。
>空と雲
高坂の内面って、ほんと純粋で無邪気だな。
何か「ウルトラマンメビウス」のミライにオタ知識フル注入すれば、こういう感じになりそう。
やっぱり高坂、他の銀河系から来たのかな?
>勇者の祭典
ほんとに勇者でした!笹原すごいですw
これは良いパラレルですね。なんか8巻が増量したようなお得感が有りました。
>空と雲
高坂ものって難しいのに、こんなに納得いくものが出ようとは。
こんな高坂でも想定の範囲外とか有るんですよねぇ(咲ちゃん泣いちゃった時とか)。
しかしマの付く人に土下座が気になりますw
117 :
祭典の人:2006/08/25(金) 06:59:59 ID:???
各関連スレはどこもまつりあがっていて読むのが大変です。超楽P。
そしてみなさん感想ありがとう。
>>105 人に壷を差し上げられるなんて光栄。やはり学祭でコス話となればこのエピソードを織り込まない手はないでしょう!
>>106 ついでなんで一言。まずはメール欄にsageと書き込むことをお勧めする。そして「毎回楽しみだった」→連載派ならその書き込みは6月中までにしておくべきだったなw さらに単行本派なら終わってないことはもう知ってるだろ?
俺ガッコは違うが仕事がらみで一時期中大に顔出してた。あの学内描写は俺もすごくうれしかったよ。ぜんぜん一言じゃないな。
>>107 おうっ?アンジェラの人ですな?
イエース。あなたが斑目を愛しているように俺は笹荻の成就を愛しているのでございます。二人が一緒の墓に入るまでサポートしてやりたいw
そのためには笹原にはもっとオギーを愛して欲しいし、オギーにはもっと笹原を頼って欲しいと思う俺がいるのです。
ほんで学祭はオマツリ感が重要なので、原作より云々は褒めすぎにしても(ハッ?うちのこと褒め殺そうっちゅう魂胆やな?バーイ藪)楽しめていただけたら幸いです。
空と雲はまた後ほど感想書きます〜。
>>115 なぐさめていただき感謝〜。そうなんすよシチュが「めちゃめちゃ違う」か「予言者並のモロかぶり」ならまだ笑えたんですが。
コピーちゅうほどすごくはないですが(ハッ?うちのこ(ry セカンドインパクトはマジ怖いw ナニ書けば安全なんだ。
>>116 そんなわけで笹原にはもっと頑張っていただきたい今日この頃w
俺もSSスレ自体に「増量したお得感」を感じています。みんながいっぱい妄想してくれて嬉しくてしょうがない。
ほんじゃまた〜。
>>115 >>116 感想ありがとうございますー。
高坂って超人とか二重人格とか色々言われてるけど、原作見るかぎり「見たまんま」の人なんじゃないかと思ってかいたのでした。
あと、高坂ってガンダム占いで「ギャン」ですが、身内にもギャンがいるんですが、かなりの自由人です。そしていつも自分の格言みたいなモンを持ってます。
…だから、高坂もそういう感じかなとおもったのですた。
…さて、ようやく自分的解禁日が過ぎたので、8巻読んで書いたSSを投下しようかと思います。
119 :
まえがき:2006/08/26(土) 02:08:33 ID:???
注意。最初の部分が鬱っぽいけど、基本的にはほのぼの話です。
8レスで投下。
罪と罰 (8巻の書き下ろしの漫画を読んで得た妄想〜)
120 :
罪と罰1:2006/08/26(土) 02:09:41 ID:???
「これは罰です。」
「全部忘れて浮かれてた私への これは罰です。」
もうあれから5年以上ががたとうとしている。
私は何か変わったろうか?
服装や髪型や言葉使いや、周りの環境のことを言ってるんじゃない。
私の中にある「核」のようなもの、本質の話だ。
何も変わっていない。
今でもオタクで。あんな事したのに、身近な人でやおい妄想をする癖が抜けなくて。身近にいる人をひどく傷つけたことを今でも忘れられなくて、心がいつも不安定で。
忘れない、と誓ったのに時折忘れて浮かれるようなおめでたい人間で。
オタクやめる、って何度も何度も何度も誓ったのにやめられない嘘つきで。
…これでも私は冷静に自分を見れてるつもりだ。
そうやって一人で自分を罵って、自分を貶めることに酔ってない?ともう一人の自分が囁く。そんなことはない。
これでも私は冷静に自分を見れてるつもりだ。
思考のベクトルが降下しはじめたら止まらなくなる心の中に拭いがたい嫌な感覚がいつまでたっても消えない
…でも逆に、そんな思いなど忘れて、つい笑ったり喜んだりしてしまうことがあるのだ。
……己の罪を忘れて。
121 :
罪と罰2:2006/08/26(土) 02:10:23 ID:???
笹原さんはどうして私なんか好きになったんだろう?
こんなに変わり者で、根暗な私を。
私はことあるごとに笹原さんに聞く。笹原さんは、ただ照れくさそうに笑う。
好きって気持ちをうまく言葉で言い表すことなんかできない、と、また別の私が囁く。
好きになったから、好きだ、としか言えない。
……わかってるでねか。聞くことじゃないんでねが。自分だってそうなくせに。
好きで、相手も自分を好きで、それだけで体があったかくなって心が軽くなって、この人のために何かしようと思って、
何ができる?と考えて、少しでも笹原さんの好意に応えよう、と思って後ろ向きで攻撃的な自分がなりをひそめる。
うまくいってるときは、本当に穏やかな気持ちで過ごすことができる。
……己の罪を忘れて。
どんどん気持ちが降下していくのがわかる。笹原さんには、本当には理解してはもらえないだろう理由で落ち込んで、困らせる。
そんな自分が嫌いだ。
どうしたら私は変われるだろうか?…自分を好きになることができるのだろうか?
『無理だ。変われない。だって今まで変われなかったんだから。』
『いや、変われるよ。だって現にもう変化が起きてるじゃない。』
…え?変化って何。
『だって今までは、「どうしたら自分を好きになれるか」なんて考え方はしなかったはずだから。』
……それって変化なのかな。
『そうだよ。』
122 :
罪と罰3:2006/08/26(土) 02:10:56 ID:???
私が一人で色々考えている間、笹原さんは黙って私の後ろで、ウチにあった漫画(BLではない)を読んでいました。
ふと笹原さんのほうを振り向くと、笹原さんもこっちに気がついて笑いかけてくれました。
私は…どんな顔で笹原さんを見ていたのでしょう?自分でもよく分かりません。
「…あ、あのさ」
笹原さんはいつもと変わらない困ったような笑顔で私に話しかけました。
「コミフェス落ちたのは残念だけど…。また他にも、今から参加申し込みできるイベント探してさ、そこで本出したらどうかな?
コミフェスはホラ、また来年もあるし、夏もあるし!ね?」
「………………」
「すごく残念なのはわかるけどさ…、ねえ?」
笹原さんにそう言われて、ようやく私は、サークル参加できなかったことが残念でこんなに思考が暗くなっていたのだ、と言う事に今さら気づいたのでした。
そうか。わたすはそんなにがっかりしてたのか。
我ながらオーバーなくらいの落ち込みっぷりだと思いました。
というか、何かあるごとに私は、あの出来事を持ち出してこんな風に思考が暗くなるんだなと思いました。
…これが罰なのかも知れません。自分をいつまでも縛り付ける罰。
わかっています。こんな風に後悔したからといって、巻田君や私が傷つけた、壊した、色々なものはもう元には戻らないんです。ただの自己満足です。
そのことを思うと、自分には笑う資格がないんじゃないかとか、楽しむ資格がないんじゃないかとか、悪いほうへ考えてしまうんです。
123 :
罪と罰4:2006/08/26(土) 02:11:33 ID:???
…だから笹原さんには申し訳ないことをしてると思います。
そうやって私が沈んで、意味不明の言葉を吐き出すのを聞いてなきゃいけないんですから。
私が「これは罰だ」と思って一人落ち込むのは私の勝手。
でも笹原さんまで巻き込むのはどうなんでしょうか。
……また私が思考を急降下させていると、笹原さんはまた私に話しかけてくれる。
「…漫画、もう描かないなんて言わないでよ。」
「え?」
私がびっくりして笹原さんの顔を改めて見ると、笹原さんは口元に笑みを浮かべたまま、真剣な目で言いました。
「俺、荻上さんの漫画好きだから。」
「………………………」
その言葉一つで、私は暗い思考から一気に開放されるのでした。
胸がどきどきして、嬉しくて、うまく言葉にできません。
「…やおい漫画をですか。」
でも私はまた、いつものようにきつい言葉を投げかけてしまうんです。
言った直後にいつも後悔するんです。後悔するくらいなら言わなきゃいいのに。
「…はは。」
笹原さんは困ったように笑います。本当は困らせたくないのに。
124 :
罪と罰5:2006/08/26(土) 02:12:03 ID:???
「いや、ね?やおいっていうか、なんていうか…荻上さんが漫画描いてること自体が好き、って言ったらいいのかな。」
「…ええ?」
「荻上さんが夢中で漫画描いたり、絵を描いたりしてるのが好きといいうか…。
俺は自分が絵が下手なもんだからさ、尊敬…っていうのもあるのかな?」
「えっ、や、ちょっと、やめて下さいよ!」
私は焦って笹原さんの言葉を遮りました。尊敬?こんな私を?
……人を傷つけたことのある、この趣味を?
混乱していると、笹原さんはもっと優しい顔で私に笑いかける。
「…だからさ、漫画描かないなんて言わないでよ。」
……どうしてこの人は、私が一番楽になる方法を知ってるのでしょうか。
描きたいです。描きたいに決まってるじゃないですか。
だって、あんな事があってさえ、やめられなかったんですよ。
何度自分を詰っても、気持ちを抑え切れなかったんですよ。
「…アリガトウゴザイマス。」
ようやくそれだけ言えました。
125 :
罪と罰6:2006/08/26(土) 02:12:48 ID:???
「…じゃ、またイベント情報とか集めなきゃね。」
「そうですね。落ちたからって、落ち込んでるワケにはいかないですね。」
「…荻上さん…、それギャグ?」
「はい?」
「落ちて落ち込むって………」
「……は?」
私は呆れ顔で笹原さんを見ました。笹原さんはちょっと焦りながら私にこう言いました。
「いやー、ギャグだったらどんな風につっこもうか色々考えちゃったよ〜。」
「…何言ってんスか」
「だってさ、つっこみたくても、最近斑目さんがなんだか覇気がなくてさあ…。」
「ああ、この前のくじvアンの対談ですか。『他にやるヤツいなかったんか』って、最後まで文句言ってましたねあの人。」
「そうそう、元気ないように見えて皮肉るトコはきっちり皮肉ってるし。んでまぁ、俺としても色々つっこんでみたけどさ」
「…笹原さんはツッコミがきびしすぎますよ(汗)」
「そうかなーーー?」
「せめて敬語使いましょうよ。タメ口でつっこんだときはちょっとヒヤッとしましたよ。でも、斑目さんも指摘する元気もなかったようですけどね…」
「せっかくつっこんだのにスルーされたね。スルーは駄目だよね。」
「…もういいです。」
「でも何であんなに元気ないんだろう?」
「ああ、それは、もうすぐかすか…………っっ」
私は言いかけた名前を慌てて飲み込んだ。
126 :
罪と罰7:2006/08/26(土) 02:13:44 ID:???
「え?今何て言ったの??」
「…いっ、いや!何でもねっす!!」
(わ、わたすの口から言うのはちょっと悪いっすよね、こういうのは…(汗))
「ええ〜〜気になるなあ」
「あ、え〜〜〜と…覇気のない斑目さんも流され受けらしくていいかな、と」
「はは、そうなんだ?…う〜〜〜ん、やっぱ眼鏡のほうが…」
「いやですから、斑目さんのやおい絵はあくまでキャラとしてなんで」
「いや、俺も眼鏡かけてみようかな、なんて」
「は?…でも笹原さん目悪くないでしょ?」
「う〜〜んでも、このごろゲームやりすぎて目がちょっと………」
「…なんのゲームですか」
「え?え?いや、えっと(汗)」
「…別にいいですけどね」
「いやそういうゲームばっかしてるわけじゃないよ?まぁ、してないワケでもないけど…」
「………………」
「…やっぱイヤ?俺がそういうゲームしてるの」
「別にいいですって。前にもそう言ったでねすか。」
「あ、ならいいんだけどね。」
笹原さんはちょっと照れくさそうに笑う。
私のすぐそばで。
127 :
罪と罰8:2006/08/26(土) 02:15:55 ID:???
………………………
荻上さんが横で寝息をたてている。
この人をみるたびに思う。いつも体を硬くして自分を守っているけど、中身はもろくて、ちょっとたよりなげで不安定で、でもけっこう芯の強い人だ。
荻上さんはよく深刻な顔をして考え込んでいる。そんなときは、後で何故か「スミマセン」と謝られる。
何でだろう?そんなに気を遣うことないのに。というか、そんなに気を張ってたら疲れるだろうと思うのに。
荻上さんはよく不機嫌になる。そんなときは、何で不機嫌かよく分からなくてドギマギしてしまう。
俺が鈍感だからいけないのかもしれない。言ってくれなきゃわからないからかもしれない。
でもそんなとき、荻上さんが照れながら、ツンツンしながら言ってくれる本音が好きだったりする。
『押し付けデートじゃなくて、笹原さんが考えて笹原さんに誘ってほしかったからです!』
…あの言葉に反省したけど、嬉しかったなぁ。
今日のデート楽しかったなあ。荻上さんの貴重な笑顔が見れたし。
…たとえいつもツンツンしてたって、荻上さんはいつもそんな感じだから気にしてないのに。
……いやむしろ、普段そっけないから、デレになったときや、不意打ちの言葉や表情がすごく嬉しいのに。
深刻に考え込んでるときは、心配にはなるけど、何ていうか…。それも含めて、荻上さんなのに。
荻上さんは口元に少しだけ笑みを浮かべた顔で、寝息をたてている。
俺のすぐそばで。
END
すんません、導入部分が重くなりまして。…ネガティブばんざい(ぼそり)
8巻読んだらまた荻上さんのとりこになりまして。
笹原はけっこう包容力がある。
荻上さんはけっこう芯が強い人だ。…と思いました。
…8巻、面白かったですなあ。そして続く9巻!!!我々はまだ夢を見ていられるのだ!!!
…最後の「普通に連載してりゃいいじゃん……。」に爆笑しますた。Mカミさん…www
…連投してすいませんでした…orz
>罪と罰
スレッガーさんかい?
速い、速過ぎるよ!
発売3日目でもう来ましたね、8巻書き下ろしネタ。
しかも俺的に最も求めてたネタだったから2度ビックリ。
もしやテレパシー?
49話でやや落ち込み気味ながらも一応学祭の受付を務め、藪さんという新たな強敵(この場合は「とも」と読みます)を得て、冥腐魔道を進む決意をした荻上さん。
その最後のページの力強い決意の表情が出るまでには、48話の後に笹原がかなりのアフターフォローをしたのだろう。
そう脳内補完していたら、この作品が投下されました。
見事にこの2話を上手くつないでくれてます。
久々にこのフレーズ行きます。
ぐっじょぶ!
SS初投稿でございます。
というか初めて書きました。
お目汚し失礼。
「なあ、知ってるか?今日新しいセンセイが来るんだって」
口から泡を飛ばしながらヤナが聞いてくる。
いつも戦車のマンガとか描いてるばっかりのくせに、
どうしてこういう情報は早いんだろうか。
ハルノブは心中溜息をつきつつ、後ろの席の友人に振り向いた。
「知ってるよ、きょーいくじっしゅーせー、だろ?」
「なんだ知ってたのか。つまんねー」
「知ってちゃ悪いか。」
軽くにらみを効かせつつ、こっそり持参したコミックブンブンに再び集中しようとしたが、
「だーから聞けって!」
ペンシルロケットで首筋をつつかれ、再びヤナに向き直った。
ヤナの話では、じっしゅーせいの先生はしーおう大とかいう都会の大学から2週間だけ
実習にやってきたらしく、職員室でちらっと見た限りではすごい美人のお姉さんだった、ようだ。
・・・全く、こいつはマンガおたくのくせにこういうとこがスゴくフジュンだ。
ブンブン貸してやんねぇぞもう。
熱っぽく語るヤナのトークを聞き流しつつ、なんとなしにハルノブはクラスを見渡した。
某県某市立某田舎小学校6年1組。
といっても田舎ゆえにクラスは1つしかない。
この6年間同じクラス、同じ顔、同じ仲間。
本屋も駅前に1件しかないようなこの地区で、ヤナとハルノブ、そして窓際に座るタナカとクガヤマは
「マンガとアニメがだいすきです」という一点において
数少ない仲間だ。
他の男子とも遊ばないわけではないが、
体力勝負が苦手なハルノブにとって、ドッジや野球はやはり重荷である。
それにクラスの女子はケイタイと恋愛の話ばかり。
カンダムやポトムスの話には付いて来れない。
実際のところは付いて来れないのでなく付き合いきれないのが現実ではあるのだが、アタマの悪い女子なんかにはわからないさと決め付けるハルノブなのであった。
さて、そんな取りとめもない思考に浸っていたのだが。
「ん、みんな集まったかなー?じゃ、HR始めるよー」
担任の所台先生のか細い声にハルノブは現実に引き戻された。
「さて。HRの前に今日は皆にうれしいお知らせがあります。」
「え、カイチョー先生、なになにー?」
「こら、私語はつつしみなさいね。」
軽く生徒をたしなめる。
ちなみにこのショダイ先生、何故か生徒から「カイチョー」と呼ばれているのだが、
生徒はもちろん、他の先生も名前の由来を何故か知らないらしい。
ハルノブは一度教頭先生にしつこく聞いてみたことがあるのだが、
青ざめた表情の教頭に職員トイレに引き込まれ、
「それ以上しゃべったらダメだよ、ね。じゃないとカメ(ry」
などと硬く口止めされ、以来深く追求しないことにしている。
生徒のざわめきが収まったのを確認し、カイチョーは話しを続けた。
「実は今日、新しい先生が来てくれることになったんだよ」
「えー!」「ホントに!」「かっこいいの?」
「はいはい静かにー。それじゃ紹介するね。春日部くーん、入ってきて」
お決まりのやり取りに軽く辟易しつつ、ハルノブは何気なく
入口に目を向けた。
女神様が、そこにいた。
3レスほどお借りしました。
>>カスカベ先生
ちょ、おま!!!!1!ここで終わりはないだろ…
3レスと言わずこのスレ使い切る勢いで続きキボン!
>カスカベ先生
いやあああ、やめないでえええ!
最後までイカせてええええ!!
暑い日が続きますが、皆さんはいかがお過ごしですか?
本誌での連載が終わってから、ずっと放心状態だったのですが、
8巻のおかげで気力を取り戻し、ついでにSSを一つ書き上げてしまいました。
ベタベタの笹荻です。時系列的には本編終了後を想定してます。
楽しんでいただけたら幸いです。
138 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:33:20 ID:???
「あつ…」
夏のとある日、荻上は自分の部屋の床の上で溶けていた。
外から聞こえるかすかなセミの声。
テレビの中ではアナウンサーが「今日も暑くなりそうです」などと、わかりきった事を喋っている。
(そんな事!言われなくても!今現在!ものすごく!暑いのですが!)
(むかつく!むかつく!)
(地球温暖化なんてだいっきらいだ!!)
理不尽に怒る。
だがその怒りも暑さに溶けていく。
恨めしげにエアコンを見上げる。
うんともすんとも言わないエアコン。
故障しているのだから、当たり前なのだが。
139 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:34:06 ID:???
理由はわからないが、エアコンが壊れたのは一昨日のことだった。
大家を通じて電気屋に連絡を取ったところ、この暑さでエアコンの売れ行きが好調で云々、とさんざん言い訳された上に、「3日ほど待って下さい」という一方的な通告をされてしまった。
(忙しいのはわかる。土日を挟むから3日待て、と言うのもわかる)
(でもこっちは客だべ?客のためなら多少の無理をしてくれたっていいでねェか!!)
再び理不尽に怒るが、それさえ暑さに溶けていく。
テレビの中のアナウンサーは涼しげに、「この先一週間はとても夏らしい暑い天気が続きそうです」などと謳う。
(…)
荻上はもう怒る気力も出ないようだ。
「シャワーでも浴びよ…」
よろよろと風呂場へ向かう。
冷たいシャワーで汗と熱を流すと、いくらか気力を取り戻せた。
(だめだ。このままこの部屋にいたら、きっと死んでしまう。何とかしないと)
140 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:34:53 ID:???
荻上は避暑地を検討し始める。
(部室は…あそこは冷房の効きが悪いし…この暑さじゃたどり着く前にやられてしまう)
(某漫画家のようにファミレスで粘る…そんなことできるかー!)
(図書館とかは…近くに無いし…)
(買い物、という名目でショップ巡り…人ごみ嫌い)
そんな中、この前笹原のアパートにお泊りした時のことを思い出した。
『汚い部屋だけど、何かあったら自由に使って』
そう言われて、合鍵をもらったのだ。
財布に大事にしまっておいた鍵を取り出す。
(迷惑かな…でも、鍵をくれたってことは迷惑じゃないってことだよね…)
(それに部屋を片付けてあげて、料理なんか作って、『お帰りなさい、笹原さん』なんて…)
(それくらいやってもいいよね…)
その時の笹原の顔を思い浮かべて、荻上はにへらと笑った。
「よし!決まり!」
そう宣言すると、幾ばくかの荷物と供に、荻上は部屋を飛び出した。
…実は笹原の部屋は、部室以上に遠いのだが。
141 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:35:44 ID:???
買い物袋を携え、荻上は笹原の部屋の前にいる。
高鳴る胸を押さえながら鍵を差込み、回す。
軽い金属音と供に、鍵が外れる。
荻上は一つ深呼吸をすると、ノブを回した。
「お邪魔します…」
小声で呟きながら部屋に入る。
この時間に笹原がいない事がわかっていても、やはり緊張する。
人気の無い部屋はしんと静まり返り、…そして暑かった。
ズカズカと部屋を横切り、エアコンのスイッチを入れる。
かすかな音とともに冷風が吹く。
ほっとした表情でしばらく風に当たった後、買い物袋の中身を冷蔵庫にしまうと、荻上はようやく安堵のため息をついた。
ベッドに腰掛ける。そのまま横になる。
急に眠気が押し寄せる。
(あ…そうか。夕べも熱帯夜でほとんどねむれなか…った…んだ…)
(笹原さん…の匂いが…する…)
(笹原…さん…)
部屋に穏やかな寝息が響きだす。
142 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:36:30 ID:???
「ん…?」
荻上が目を覚ますと、すでにだいぶ日は傾き、夕方特有の赤い日差しが差し込んでいた。
(うわ!寝ちゃった!今何時?もうこんな時間!?)
荻上は飛び起きると、忙しく動き出す。
脱ぎっぱなしの笹原の服を洗濯機に突っ込み、思い切って窓を開け、夕方になってもちっとも涼しくならない空気に不機嫌になりながら掃除機をかける。
そして荻上は、ベッドの下から、いわゆるエロ同人誌を見つけた。
(笹原さんこんなトコに隠してたんだ)
妙に微笑ましく思いながら、とりあえず机の上に置く。
好奇心から2・3冊ほど流し読みする。
(ふうん。こういうのが趣味なのか…んん?)
何かが荻上の脳裏に引っかかった。
全部に軽く目を通す。
机の脇に積まれたゲームの箱を見る。
くじアンのDVDや格闘ゲームに混じって置かれた、いわゆるエロゲーの箱を引っ張り出す。
(…やっぱり)
荻上は確信した。
そこにあったのは、背が高くて巨乳でグラマーでナイスバデーで年上な女性がたくさん。
つまり、自分とは正反対の…
(むかつく)
(むかつくむかつく、ムカツクーーー!!!)
荻上はそれらを机の上にきれいに積み上げると、怒りを胸に秘めたまま、家事の続きを始めた。
143 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:37:53 ID:???
「つかれた…」
家路をたどりながら、笹原は呟く。
今日は定時に帰れたものの、一筋縄ではいかない漫画家とのやり取りは酷く疲れる。
(荻上さんの声が聞きたいな…)
そんなことを思いながら鍵を外し、ドアを開けた。
「ただいま」
投げやりに呟く。しかしその声に答えるものがあった。
「おかえりなさい」
慌てて顔を上げると、そこには微笑む荻上がいた。
一瞬幻覚か?と思ったが、それは間違いなく現実だった。
笹原は疲れが一瞬にして吹き飛ぶのを感じた。
「どうしたの?荻上さん。急に…」
「来ちゃいけなかったですか?」
「そんなことないよ。嬉しいよ!」
「そうですか」
そんな微妙にテンションの違う会話をしながら、笹原は鞄を机に置こうとして…固まった。
ゆっくりと振り返る。そして気付く。
荻上が微笑みながら、その背後に真っ黒なオーラを背負っている事に。
冷房の効いた部屋の中で、笹原の全身に汗が滲む。
「あの…荻上さん?」
「何ですか?」
「見ましたか?」
「見ましたが、何か?」
荻上の放つ圧力がさらに強まる。
144 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:38:48 ID:???
「いや、その、確かにこういうのが好きなのは確かだけど、それは決して荻上さんを嫌いだ、なんて事じゃなくて!」
「…」
「こういうのはあくまで二次元として好きなのであって、二次元と三次元は全然別物で…」
「…」
「でも、前にこういうのの話をしたときには、荻上さんも時間制限つきならいいって…」
「…」
「だから、その…」
「…」
「…ごめんなさい」
笹原は深深と頭を下げる。上目使いに荻上を見る。
荻上は顔を伏せている。よく見ると、肩が小さく震えている。そして。
「クスクス…」
「?」
「アハッ、アハハ!」
「ど、どうしたの?」
「アハハハハハハハ!」
「荻上さん!」
ひとしきり笑った後、荻上は笑いすぎて流れた涙を拭きながら、笹原に話し掛けた。
「ごめんなさい。笹原さんがあんまり必死なんで、ついおかしくなって…」
145 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:39:36 ID:???
「…」
笹原は憮然としている。
「わかりました。許してあげます…って、笹原さん?」
笹原は無表情のまま近づくと、
「そんなに笑いたいなら…もっと笑え〜っ!!」
そう叫んで荻上をくすぐり出した。
「ちょっと、笹原さん!やめてって、くすぐった、あは、あはは、あはははは!」
「もう、調子に乗らないで下さい!それならこっちだって!」
「まだまだ!ここならどうです!?」
笑い疲れ、くすぐり疲れた頃、二人は互いに見つめあうと、どちらからとも無く唇を重ねた。
「「ん」」
146 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:40:15 ID:???
おまけ
「あの、荻上さん。よければこれからもお願いできるかな?」
「何をですか?」
「あの、『おかえりなさい』っていうやつ。本当に嬉しかったんだ。疲れが吹き飛ぶくらいに」
「いいですよ」
「ごめんね、面倒かけて。たまにでいいから」
「たまに、でいいんですか?」
「…できれば毎日」
「わがままですねえ」
「だめかな?」
「そんな訳ないじゃないですか」
おまけ2
大野・咲「「それって遠まわしなプロポーズじゃないの?」」
笹・荻「「あ」」
147 :
あつい話:2006/08/26(土) 14:41:03 ID:???
以上です。お粗末でした。
>あつい話
勘弁して下さい。
うちクーラー無いんです。
21世紀にもなって、扇風機と冷風扇で凌いでるというのに…
熱射病になりそう。
「遠まわしなプロポーズ」にはワロタ。
149 :
祭典の人:2006/08/26(土) 16:39:50 ID:???
点いた!SSスレにも火が点いた!大量投下で俺の顔がニヤニヤしっぱなしです。鏡見たら正直キモかったw
>>空と雲
まったり高咲いい感じ。読んでるこっちもほのぼのしますな。なるほどコーサカ視点はこんなふうに解釈してもいいのかと感心しました。
コーサカはとらえどころがないので咲ちゃんもいつも不安が多いんでしょうな。そんな咲ちゃんをポイント押さえて愛していけるコーサカ、いいね。
>>罪と罰
やはりそこ、気になりますよねえ。48話と49話の間。俺も48話の直後に笹原が何らかのフォロー入れ、そこで原画展示に繋がってくと考えてました。この話とよく似たプロットで1本書こうとしていた(48話のセリフで始まるとこもイッショ)のはもう秘密にしとくガク。
笹原やさしくて良い。笹荻が仲良いとなんかとてもほっとします。どうしても斑目絡めたいとこまでコミで、あなたには感服しますw
>>カスカベ先生
初投稿?初SS?あんた天才だ!
俺も続き熱烈キボンヌ。その女神様との2週間を余すことなく書き綴ってくれえええ!
いやマジで。読みやすいし文体にもよい個性を感じます。続きでも別作品でもいいが、もっと読みたい。ぜひご検討乞う。
>>あつい話
暑いわ!ようやく多少涼しくなってきたというのに体感温度がガンと上がったじゃないかw
ラブラブ笹荻をごちそうさま。笹原の年上きょぬー萌えは今後もことあるごとにオギーの逆鱗に触れるんだろうと思います。
この未来図はありそうでとてもよい。こんなふうに同棲になだれ込んでゆくのだなw
遅ればせながら感想入れますね。
8巻出てからまたまたスゲー盛り上がる脳内。SSでさらにヒートアップ!タノシイヨー!
>勇者の祭典
いいですね、総力結集しての学祭って感じがグー。
>「ああ、ちょっと漫研でヤナにつかまってた。
斑目のこの科白で、“あの”メイド喫茶に汗たらして座ってる斑目と高柳の姿を連想したw
クライマックスのコスプレ。元ネタゲームはプレイしたことがないのと、むかーしプロレスをよく見てた身として、曜湖さんの入場時には頭ん中で「サンライズ(スタン・ハンセンのテーマ)」が流れてました。
……あ、朽木の入場の時? まあ小林旭の「夢の中」かな。古。
>空と雲
高坂視点というのがいいですね。
彼の「読めない感じ」を得体の知れないものと受け止めて作品づくりをした身としては、優しくて、感性の豊かな彼の内面が感じられて感心しきりでした。
でもやっぱ咲は苦労しそうだなー。
151 :
150続き:2006/08/26(土) 16:50:12 ID:???
>罪と罰
切り込みましたね〜荻の内面。それをフォローする笹原のさりげない優しさもヨカッタ。
>……どうしてこの人は、私が一番楽になる方法を知ってるのでしょうか。
おまいらくっついてヨカッタよ本当に。
そして唐突なオチでしたが、……斑目……。
>カスカベ先生
ちょ、寸止め! 続きが読みたいです!
ヤナ子どもバージョンが想像つかん(w
>あつい話
要は笹荻の2人が「アツイ」ってコトですね!
妬けるよドコンチキショー!
くすぐりから「ん」かよチキショーメ!
長文失礼しました。
SSイパーイ楽しいな!!wというわけで感想を。
>カスカベ先生
うん、つづくんですよね?SSスレに投下ってことは、もちろん続くんですよね??w
この話すごい好き。初投稿お疲れ様っした!
>あつい話
あ〜〜〜熱い熱い!!www
笹原のベッドで、「笹原さんのにおい…」って言いながら寝ちゃうとこがすごいツボ。
その後、起きたら外が暗くなってて慌てて片付けはじめるのとかめちゃかわいい。
笹の巨乳属性にむかつくとこも、くすぐりあてるうちに「ん」なとこも。荻上さん大好きだー!
さて、感想ありがとうです。
>>149 コーサカは人間味が感じられないとよく言われるけど、そんなことないんじゃないかなーと思ったんです。ちょっと感性が特殊なくらいで。
「咲ちゃん、誕生日おめでとう!」
「ありがとーー!…って、この白磁の壷は………??」
「これはいいものだよ☆(悪気まったくなし)」
「……………(汗)」
…みたいなんがコーサカかな、と勝手に思ってた。
・笹荻話のほう
>この話とよく似たプロットで1本書こうとしていた
す、すんません(汗)
48話の終わり方ってすごく印象にのこりますね。荻上さんがやけにサバサバしてるとことか。
…でも、「感情の上下動が激しすぎる」自覚のある荻上さんには、こういうことよくあるんじゃないかなーとおもったんで、
笹もそんなに深刻に受け止めてないんじゃないか(いい意味で)と思った次第。
>どうしても斑目絡めたい
8巻読んで書かずにはいられなかったのだ!ウワアアアン
>>150>>151 高坂は芸術家肌だと勝手に思ってるので、こういう感じになりました。
原作でもっと高坂の人間描写があればなーーー。咲ちゃんは苦労スキーなんで無問題。
荻上さんの内面って、なんか、すごく共感できるところがある。自分の感情に振り回されて疲れるトコとか。
オチが唐突ですません(汗)勢いでかいたからなーてへっ
わざわざ斑目出したことについては…薄い目で見守って下さい…orz
4レスほどお借りします。
朝のヤツの続き、これ含めて導入ってことです。
続きは考えてませんが・・・
「なんであたしはこんなとこに居る・・・」
某県某市某田舎小学校6年1組の入口で、春日部咲はぼそりと呟いた。
話は2ヶ月前に遡る。
この春で4回生となった咲は、1年後に迫った卒業を前に忙しい日々を送っていた。
必要単位は既に修得済み。ゼミ、卒論の準備は勿論のこと、
”オリジナルブランドのショップを開く”という長年の夢を叶えるべく、
大学で培った知人友人コネツテカネをフルに活用。
原材料と販路確保にやっと漕ぎ着けるところまできていたのだ。
交渉事は元々得意な咲ではあったが、ここ暫くの断続的なフル稼働に
流石に疲労を隠せなかった。
勿論、目標に向かってひた走る彼女にとっては、その疲労すら心地よいものではあったのだが。
そんなこんなで。
咲がげんしけんに顔を出すのも随分と久しぶりだ。
(コーサカともなかなか会えてないなあ・・・)
知らず漏れそうになる溜息をこらえドアを開けると、ひどく懐かしい(しかし会いたくはない)人物がそこに居た。
「・・・会長じゃないですか。」
「や、久しぶり。」
会長、と呼ばれた男は、奥目を細め薄く微笑んだ。
正直、咲は会長が苦手だ。
当初オタク集団と揶揄していたげんしけんへ彼女が正式に入部したのは、
初代会長の何気ない、しかし痛烈な一言がきっかけである。
今ではサークル自体に不満は無く、むしろ楽しいとさえ思えるようになっていたが、
会長のキャラクターだけは掴めないままであった。
そんな初代会長が久方ぶりに部室に居る、しかも一人で。
咲は何故か言い知れぬ恐怖に襲われ、会長の対面を避けて座った。
「どうしてまた今日は一人で・・?」
「いやね、ちょっと用事があって。やあ、なんだか久しぶりだなあこの部室も」
会長はまるで無感動に感嘆を口にした。
「誰も来なかったらどうしようって思ってたんだけど、丁度良かった。
少し、お話しをしようか。」
「まあいいですけど。なんですかいったい?」
「咲君、小学校の先生になってみない?」
「 は ? 」
「え。いや。何言ってんだアンタ?小学校?はあああ?」
脈絡も拍子もない会長の提案に、先ほどまでの漠然とした不安もあいまって、咲は必要以上に狼狽した。
つうか敬語忘れてますね。
「まあ、混乱するのも無理は無いけど。途中だからちゃんと話聞いてくれるかな?」
うろたえる咲をなだめつつ、会長はつらつらと語りだした。
斑目に2代目会長を任せた彼は、無事に椎応大学を卒業。
元々教育学部で教職免許を持っていたこともあり、地元の小学校に就職した。
大学での人間観察から、今度は実地による未成年の観察へ興味がシフトした、というのが
表向きの理由であるらしい。
まあこの人のことだ、裏に何があるかわかったものではないが。
さてこの小学校。山間にある小学校だけに児童も少なく、
学年に1クラスしかないらしい。とはいえ、小学校教師という職業は
なかなかにハード。心安らぐ間もない日々が続いていたのだ、とのこと。
「そんなときだったんだよ、教育実習生受け入れの話を聞いたのは。」
「はあ・・・。」咲は半ば呆けた様子で、会長の話を聞いている。
「実習生の子が居る間だけでも、僕は肩の力を抜ける、そう思ってね。
でもさ、実習生の子っていっても、どんな子が来るかわからないじゃない。
咲君確か教職の単位ほぼ取ってたよね?」
「いや、取ってますけどね。・・なんで知ってるんですか。」
眇目でにらむ咲を軽く無視する会長。
「それでまあ、咲君ならうまくこなしてくれるんじゃないかな、って。
どうだろう、やってもらえないかなあ?」
正直なところ、咲にとってはそう悪い話ではなかった。
今は別の目標があるとはいえ、会長の話に乗れば単位が揃うわけである。
しかし。
「会長。いくつか聞いていいですか?」
「うん?」
「某県某市ってあたし住んだ覚えも何もないんですけど。そういうのって問題ないんですか?」
「ダイジョウブだよ、僕がなんとかする」
「準備全くしてませんよ?」
「ダイジョウブだよ、僕がなんとかする」
「実習中の住処とか」
「ダイジョウブだよ、僕がなんとかする」
「なんで、あたしなんですか?」
会長は視線を合わさない。咲は会長を見つめている。
「そもそも、すごく不自然ですよね。教育実習生なんかが来たところで、
会長の負担が減るとは思えないし。それに会長が決めるってことも。こういうのって、
もっと偉い人が決めることだと思うんです。」
会長は視線を合わさない。
「あたしは今すごく充実してるんです。そりゃ単位は魅力的だけど、
会長の話に乗ってまで欲しいとは思ってません。」
会長は視線を・・・あれ?会長さっきまでこ「残念だなあ」「うわ!」
突然背後から声をかけられ、咲は悲鳴を上げた。
「いきなり消えないで下さい!ほんとにびっくりした・・」
「僕はすごくいい話だと思うんだけどねえ」
若干肝を潰した咲であったが、なんとかひるまずに切り返す。
「だから!あたしにはその気が無いんですってば!
それに会長の意図も判らない以上、この話は」
「(ピーーー(自主検閲)ーーー)?」
会長の呟きに、咲は一瞬で石化した。
「(ピーーーーーー)だったのに、咲君は(ピーーーー)だよねえ」
「そういえばあのとき(ピーーーーー)は(ピーーーー)」
「(ピーー)」「(ピーーーー)」「(ピーーーーーーー)」
「ヤラサセテイタダキマス」
石化の解けた咲に出来ることは、半泣きで完全降伏することのみであった。
(嫌なこと思い出しちまった・・・)
咲はドアの前で軽く落ち込んだ。
ふるふると頭を振り、気分を切り替える。
「まあ、こうなったからにはやるしかないか!単位も取れるしな!」
室内のざわつきが収まるのをドア越しに感じ、にわかに緊張が高まる。
「じゃ、入ってきてー」
会長の案内を受け、意を決した咲は、ドアを開け教室へ踏み込んだ。
※ここまでです。
すいません4レスどころじゃなかった・・・。
あ、名前が。。
えっと、6年1組、の方で名前オネガイシマス。
2chに書き込みするの3回目ぐらいなので、よくわかりません。
あと、感想いただいた皆様ありがとうございます。
>6年1組
カスカベ先生その2〜〜〜♪
初代の雰囲気とか、咲ちゃんの設定とかすごくちゃんと設定されてて良いですな。
カスカベ先生に出会ってしまったマダラメ君、今後どうなるかすんごい楽しみです。
>6年1組
初代何を言ったんだ?…
164 :
祭典の人:2006/08/27(日) 08:52:00 ID:???
もうちょっと雑談しよ。
>>150 >“あの”メイド喫茶に汗たらして座ってる斑目と高柳
……気づかんかった、そうなるのかw
「ヤナ……漫研、変わったな」
「……あれからいろいろあってねえ」
みたいな会話がw
あとハンセンのテーマは同意。俺もゲームやってないので、カウボーイハットって書いて出てきたイメージは彼でしたタハハ。
>>153 もちろんお気になさる必要なし。48・49話の隙間にはまり込むプロットは選択肢が多くないし、同じ話になるんなら早く読めるほうが俺も嬉しいってなもんですよ。
あの2話って、初めはオギーの心境の変化をダイレクトに連続話で描いたように見えるんだけど、実は彼女の感情の「それぞれの側面」を描写していると解釈するほうがしっくり来るのに気づいた。
>>153の言うとおり48話ラストのオギーは、単に落選して落ち込んで駄々こねてるだけ、49話の自問自答は5年間引きずってる問題への、この時点でのひとつの結論、てな具合に。
いずれにせよ読んで俺もすっきりしました。SSはまた別の話を考えればいいのだ。
>>カスカベ先生
継続感謝!
面白い面白い。描写がなんつうか視覚的で、場面が目に浮かぶようだ。
あんまりせっついてビビられても困るので、まあのんびりでいいんからぜひ続けてください。
ではまた。
>祭典
漫研の喫茶店って会費稼ぎとか言ってたもんなぁ
漫研も丸くなったもんだ
つーかヤナも漫研で斑目みたく入り浸ってるのかしら
もう卒業してるっしょ?
えー、でもヤナ、ラジオげんしけん聴いてるでしょ、
って、それは別のSSか。
やべえ、区別つかんよーになっとる。
ここのレベルが(ムダに)たけ〜、からや。
色々混ざってしまっとる。
わかるわかるココ良スレだからな
>ここのレベルが(ムダに)たけ〜
たしかに、「これ、梶に描いてもらいたい」と思うようなSSもあるし、別の次元へぶっ飛んでても面白いSSも多い。
8巻がアレだっただけに、まだまだ戦えますね!
ラジヲ、新作ができたので投下しまっす。
実は、八巻がでるの待ってたんですよね。
学園祭ネタが絶対載ると思ってたので・・・。
そしたら予想外の燃料が補給されてしまいました。
あはは〜、漫研女子SSスレ初登場はいただいたっ!
なんかごちゃごちゃしてしまいましたが、13レスで投下します。
〜BGM・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』テーマソング〜
〜FO〜
「どうも〜、いつ誰が聞いてるか分からないげんしけんのネットラジオをお聞きの方、
今日も私、神無月曜湖と!」
「於木野鳴雪でお送りします。」
「というわけで学園祭でしたが!」
「私の絵とかも飾っていただけて本当にありがとうございます。」
「なーにいってんですか〜。
部員のやりたいことを出していかなければ意味ないじゃないですか〜。」
「まぁ・・・。ソウデスケド。」
「今年はいつものコスプレ撮影会に加えて、
来ていただいた方にも着ていただける体験コーナーも設置しました!
その場でプリントアウトなどもしたんですよね〜。」
「それがよもやあの方の提案で成立するとは思いませんでしたがね・・・。」
「今回は役に立ったってことですかね?」
「・・・いつもこの放送ネットに上げてくれてるの誰だと思います?」
「え?まさか・・・。」
「そうですよ、あの方ですよ。」
〜大きなヒャホウ〜〜の声〜
「それは・・・いつもご苦労様です〜。」
「でも、なんでああいうPC技術はあるんでしょうかね?」
「・・・あとで話がありますので、残ってくださいね〜。」
「『べ、べつにやましいことなど何もありませんぞ〜!!』
・・・だそうですが?」
「問答無用ですね〜。」
「・・・はぁ。」
〜完全にF.O.〜
「学園祭に関しては大盛況といっていい終わり方でしたね〜。」
「まあ、人はたくさん来てましたしね・・・。」
「どうですか?多くの人に見ていただいた感想は・・・。」
「中には・・・感想とかいってくれる方もいらっしゃいましたし・・・。
いい機会だったとは思いますね。」
「ですね〜。」
「もっと描いてみたいと思うようになりましたし。
冬コミは落ちちゃって少し凹んでましたけど・・・。
他のイベントとかでのんびりやっていってます。」
「げんしけんラジオは、於木野さんを応援していきます!」
「・・・余計なおせっかいはやめてくださいね。」
「お、おせっかいとな!!?」
「コスプレで売り子やります〜とか、別にいりませんから。」
「じゃあ、於木野さんがやればいいんじゃないですか!?」
「却下!って『ソレダ!』じゃないですよ!ベンジャミンさん!」
「でも、少なくはないじゃないですか〜。」
「小規模のイベントじゃダメって所もありますから!」
「OKのところならいいじゃないですか〜。」
「う゛・・・。とにかくダメなものはダメなんです!」
「え〜。もったいない〜。」
「何がですか!」
「於木野さん絶対似合うの多いのに〜。」
「なっ・・・!冗談はやめてください!」
「冗談もお愛想もいいません。コスプレにかけてはっ!」
「そんな胸を張られて言われても・・・。」
「まーその件は後ほどってことで・・・。」
「・・・ぜってーしねー・・・。」
「とか言って学園祭最後にしてくれたじゃないですかー!」
「・・・!!あれは一時の気の迷いで!!」
「フフフ・・・これで二度・・・。もうあなたは逃げられない・・・。」
「・・・逃げたい・・・。」
「於木野さんは「せいばー」やってくれたんですよねー。」
「曜湖さんが「らいだー」でしたからね・・・。」
「これは私達の内々で楽しまさせていただきましたー。」
「で、今日はどういう構成で・・・。」
〜バンッ!と扉の開く音〜
「遅いっちゅうねん!
あんたらな、わざわざ呼んでおいてそれはないわー!」
「落ち着きなさい。そんなに出たがらなくてもいいじゃない。」
「そうですにゃー。」
「だ、だれが出たがってるって言いましたぁ!?
呼んでおいてなかなか紹介しないこいつらにですねぇ・・・!」
「ふむ、なるほど、早く於木野さんと会話がしたい・・・と。」
「難儀ですにゃー。」
「なにいうてますのん!ちがいますぅ!」
「えーと・・・この方々は・・・。」
「あ〜、於木野さんには伝えてませんでしたねぇ〜。
女性向けサークル「やぶへび」のみなさまで〜す。」
この前のイベントで於木野さんのお隣になったサークルさんです。」
「・・・えっと、何で・・・。」
「このヤブがぜひとも出たいと言ってね。」
「ちがいますぅ!このラジオがあまりにもいつもグダグダだから文句の一つでもって!」
「しっかり聴いてるんですにゃー。」
「だぁあああああ!!!」
「というわけで、今日はよろしくお願いします〜。」
「・・・どおりでマイクが多いと思った・・・。」
「・・・・・・勝ったと思うな!」
「意味が分かりませんが・・・。」
「ではでは、本日のお便り紹介でっす!」
「はいはい・・・。RN『イチウリ最強!』さんから頂きました。
『こんにちは!曜湖さん、於木野さん。
ラジオいつも楽しく拝聴させていただいています。
今回、お便りしたのは、最近『メガネ男子』がきてるじゃないですか?
於木野さんはメガネ総受け主義らしいですが、
最近のメガネくん事情を於木野さん的に語っていただけないかなと思いまして!
私は『鰤一』のウリュウが大好きです!』」
「たしかに、一般的にも、メガネ男子、きてますよねー。」
「でも、あれは・・・。」
「あんなん、誰が掛けとってもええっちゅう、本当のメガネ萌えとはちゃう。
メガネくんは、メガネを掛ける必然性がないとあかんのや!」
「えーと・・・。於木野さん的には・・・。」
「反論の余地がないどころか、全く同じことを言おうとしていました・・・。」
「うぇ!?」
「おおー、早速気が合ってますねー。
ヤブさんもメガネ総受け主義ということで・・・。
これも同好の志のシンクロニティという奴でしょうか!?」
「こんなん、一般論や!誰でも言う!」
「言わない言わない。」
「言いませんよぅ。」
「うう・・・。」
「というわけで、今回は、『メガネ男子』について語っていただきましょー!」
「そうですねぇ・・・今で言えば『ハチクロ』のマヤマとか・・・。」
「あれはいいメガネやなっ!一見クールに見えて熱くてわがままな面もある!」
「問題はネタとするには彼自身がリカさんにゾッコン過ぎて考えても違和感があって・・・。」
「それはあるなー。アパートの三人の関係性はおいしいんやけどね。
三人とも好きな相手が明確におるから・・・。」
「でも、思いついちゃったら考えちゃいますよね。」
「そやな・・・って!」
「非常にいい掛け合いだった。まるで長い間共にいた仲間のよう・・・。」
「すごいですぅ。」
「違う!これは違うんや!」
〜『ワルツ』・CI〜
「キリがいい所で。アニメ『ハチクロ』より、第一期EDテーマ『ワルツ』。」
〜『ワルツ』・FO〜
「そういえば、『ハチクロ』のメガネといえばもう一人・・・。」
「ノミヤさんですね。マヤマを大人にした感じの・・・。クールなキャラですね。」
「マヤマとの絡みとか考えるとうまいけどな!
マヤマに感化されて若い思いを取り戻して行く過程で・・・ってな!」
「どっちがどっちで・・・悩むところだけんども。」
「リバ可や!最初マヤマ受で後半はリバや!」
「なるほど!その手があっだがぁ・・・。」
「なんやぁ〜、その程度のことも気付かんかったんかぁ?」
「むっ!・・・マヤマの流され受がうまいかなと思ってたから・・・。」
「うう!それで固定もおいしいなぁ・・・。」
「夢ひろがりんぐね。」
「物語に全く触れない辺りがすごいですねぇ・・・。」
「『メガネ男子』語りですから。」
「そのことだけ話せばええのですやろ?」
「・・・まあ、そうなんですけどねぇ〜・・・。」
「どうした?」
「於木野さんが生き生きしてて・・・。少しジェラシー・・・。
話に加われないぃ〜〜〜〜・・・。」
「こればっかりはしょうがない。」
「うう。いったんCMです。」
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜
「この思いは、なんなんだろう」
「錯綜する思い・気持ち」
「目が離せない『キヅカナイラヴストーリー』」
「アルエ」
「きっと、私は大丈夫」
「好評連載中!」
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜
「いいですよね〜このCMの。」
「ですね。どこで感情が漏れ出すかいまから楽しみです。」
「まぁ〜・・・。面白い話ではあるんやけどね。」
「何かあるんですか?」
「言いたいことは分かる。」
「うん。」
「「メインでメガネ君が出てこない!!」」
「そ、そこなんですかぁ〜?」
「属性的にも一人いてもよさそうなんですけどね。
一人脇でいますけどいまいち・・・。」
「ハルコさんが男やったらええメガネやったろうなあ!」
「そうですね、きっとそういう方面で人気でましたよ。」
「な、なるほどぉ・・・。で、ではほかに最近注目しているキャラは他には?」
「他ですか?うーん・・・。オウラン?」
「キョーヤかぁ。ちょっと微妙やねえ。」
「え、なんでですか〜?」
「・・・攻めっぽいんですよね。」
「うん。メガネは受けじゃないとあかんからなぁ。」
「でも、殿のやんちゃ攻めに流されるっていうのも・・・。」
「うーん、ありやけど、やっぱキョーヤは殿をいじめてるイメージが強いわぁ。」
「そうなんですよね。そこがどうも。」
「ほーほー・・・。」
「飛翔系なら、今はシンパチかな。前もラジオで話しましたけど。」
「シンパチはええねぇ!早くアニメが見たいところですわぁ。」
「まさに総受けって感じで、誰とも絡めそうなのもいいですね。」
「ギンさん、コンドウ組長なんかが多そうやけどもね。
オキタとか、カツラでもいけるんちゃうん?」
「いいですねー、総受け本でも作ってみたいですね。」
「せやなー、となると・・・。
って何こんなフレンドリーに話しとんねん!私はこんなつもりで・・・。」
「うーん、かれこれ10分は普通に会話してた。」
「いまさらって感じですぅ。」
「違う、違うんや!そうやない!」
〜『Planet X』・CI〜
「とまあ、この辺りで音楽です〜。
飛翔祭'05での『ぎんたま』アニメのOPテーマ『Planet X』。」
〜『Planet X』・FO〜
「ヤブ、今日はいいたいことがあってきたんでしょう?」
「う・・・。それ単刀直入にいいますかぁ?」
「・・・な、なんですか?」
「・・・あ・・・今日はもうええ・・・。」
「それじゃ、また私から・・・。」
「だめですぅ!そうやってまた勝手に話を進めようとするんやからぁ!」
「えーと、えーと・・・。」
「・・・・・・あのな、あの時謝りたいっていって言ったやろ、
あれな、嬉しかったんや。
でも、ほかの連中に言ったところでどうしようもない思ったからああ言ってもうたけど・・・。」
「あ・・・。」
「だから・・・なんというか・・・うーん・・・。」
「率直に言うと、一緒に本が作りたいって事ね。」
「率直過ぎますー!なんていうか、途中全部飛ばしとりますやん!!」
「あの・・・。」
「なんや!?」
「なんかよく分からないですけど、分かったんで、一緒に作りましょうよ。」
「ほら、よくわからんて────なんやってーーーーー!!」
「MMR並みの驚き方ですねぇ〜。」
「話する限り、趣味も合うし、問題ないんじゃ。」
「で、でもな、お前、わだかまりっちゅーか・・・。」
「ヤブさんがやりたいっていうなら、別に・・・。」
「・・・わかった。しかし、なあなあでやるつもりはないで!
お前には負けん!」
「・・・何を勝負するつもりなんだか・・・。」
「おー、これは面白い本ができそうですねぇ!」
「ふっ・・・。これでひと段落ね。」
「合体サークルですにゃー。」
「そこでお二人にクイズです!」
「「はっ!?」
「gyugryu調べ、『萌えるメガネ男子ランキング』で、現在第一位なのは誰でしょう!」
「え、っと・・・さっき出てたけどマヤマ?」
「ブー。もっとポピュラーなキャラです。」
「あ、わかったで!ノビタでしょう?」
「ブー。惜しい、二位ですね。」
「ええ・・・ムスカとか?」
「ムスカは、女性票が少なく、11位です。」
「んー・・・。キテレツとか?」
「三位です、残念。ヤブさん、さっきから惜しい!」
「・・・メガネ君ことコグレ先輩!」
「おお、於木野さん自分の大好きなキャラできましたね・・・。
しかし、残念、5位!」
「テニプリで、手塚部長かぁ?」
「むぅー、8位ですねぇ。かなりの長寿アニメです。」
「あ、マスオさん!?」
「ナカジマくんかぁ?」
「二人とも同じアニメからですが、マスオさん4位、ナカジマ君9位です。
そこまでは長いアニメはないですね・・・。」
「・・・そうか!コナン君だ!」
「於木野さん大正解〜!正解は、『名探偵コナン君』より、コナン君でした!」
「くぅ・・・くやしぃ・・・。」
「服部×コナンは王道って言えば王道・・・でしたね。すっかり失念してました。」
「そうかぁ〜、そこかぁ〜・・・。しかしな、漫画じゃ負けんで!」
「・・・どうやって戦うのかと・・・。」
「それでは一旦CMでっす!」
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜
「たくさんのフィルムの中に」
「隠れている思い出・気持ち」
「目に見えるもの以外のものを」
「たくさん含んでいる」
「『Million Films』」
「単行本、近日刊行」
〜ジングル・『曜湖・鳴雪のげんしけんラジヲ!』〜
「私もたくさん写真撮りますから、こういう感覚良くありますねえ。」
「そういうものなんですか?」
「はい〜、写真一枚にしても、そのときの記憶とか、
気持ちとか、見ればすぐに思い出せますからね。」
「写真って、最近は携帯でも良く取れるようになりましたけど・・・。」
「しっかりしたフィルムにするのって、大切だと私は思ってるんですよ。」
「・・・意外にしっかりしたこだわりがあるんですね。」
「というわけで今度一緒にフィルムに・・・。」
「それは丁重にお断りします。」
「・・・むぅ。」
「で、私らはそろそろ帰ってええんかね?」
「あ、もう少々お付き合いください〜。今日はこのコーナーで締めまーす。
『鳴雪さんに聞いてみよう!命短し恋せよ乙女!恋愛相談始めました。』!」
〜BGM・『ゲキテイ』CI〜
〜BGM・『ゲキテイ』FO〜
「こういうのは意見が多いほうが聞いてる側も参考にしやすいでしょうから〜。」
「・・・私こういうの苦手やねんけど・・・。」
「ま、ちょっと聞いてみるだけならいいじゃない。」
「そうですにゃー。」
「この前の相談者RN『黒神千砂十』さんから、再びメールが来ましたので〜。」
「どうなったんですか?結構心配だったんですけど・・・。」
「『お久しぶりです、曜湖さん、鳴雪さん。
アドバイスどおり、少しづつ話題を見つけて、メールをするようになりました。
徐々に親近感を抱いてくれているようで、内容も砕けてきています。
でも・・・この先がなかなか踏み出せません。何かいい方法はないでしょうか?』」
「はぁ〜、なるほど・・・。」
「・・・『黒神千砂十』・・・。そうか、そういうことね。」
「どうされました?」
「いや・・・ちょっとね。」
「はぁ。」
「うーん、こういうのよく分からんわぁ〜・・・。」
「でも、段々親しくなってるわけですし、そろそろ・・・。」
「コクりますか!?」
「だから早いですって!」
「そうね、その方と親しい人とかと、一緒にどこか遊びに行くのもいいんじゃないかしら?」
「なるほど、グループでまず交際するということですね。」
「意外に近くに協力者はいるものよ?まわりを良く見てみることね。」
「なるほど〜。いいアドバイスですねぇ〜。
ってこれじゃ『鳴雪さんに聞いてみよう』じゃなくなってる!!」
「別に構わないじゃないですか、うまくいけば。
私も、この意見には賛成です。いきなり二人は難しいでしょうから・・・。」
「・・・難しいものやねぇ・・・。」
「ヤブさんは、そういうことは何か・・・。」
「ないに決まってるですやろ!?この私にあるようにみえますかぁ!?」
「そんなの、分からないじゃないですか。」
「・・・ううう・・・彼氏持ちがぁ!勝ったと思うな!!」
〜椅子から激しく立つ音 外へ飛び出す音〜
「あらら・・・。」
「と、とにかく『黒神』さん、そうされてみてはいかがでしょうか?」
〜BGM・FI〜
「というわけで、本日のラジオ、終了の時間が近付いてまいりました。」
「ふう、今日もようやく終わりですね。」
「今日はゲストに、サークル「やぶへび」の方々に・・・
って主催者がもういないですけども、来て頂きました〜。」
「・・・本のことはよろしくお願いね、於木野さん。」
「あ、はい。・・・何か触れちゃいけないことに触れちゃいました?」
「あー、いいのよ、気にしないで、ね?」
「ではでは、メインパーソナリティは神無月曜湖と!」
「於木野鳴雪でした。」
〜BGM・CO〜
「驚いたろ、お前。」
「まあねぇ〜。一番荻上さんのこと嫌ってると思ってたから。藪崎さん。」
「まあ、そうなるよなぁ、普通。」
「漫研のなかも結構ガタガタだった時期あったしね。
今は加藤さんがうまくやってくれてるみたいだけど。」
「今回のこと、新たな火種になるんじゃね?」
「その辺りのことは考えてる子だからなぁ、加藤さん。
結構信頼できる後輩だったから。
逆にこれでサークルの中を変えようとしてるのかも。」
「ほー。・・・あー、そうだ、今度の日曜一緒に遊ぼうぜ。
暇なんだよー。」
「すまんね、漫研の方で誘いが来ちゃっててさ。
みんなで遊びましょうって。加藤さんがさ。」
「ああ、そうか・・・。」
(・・・こいつ、まだ気づかねえのか・・・?)
183 :
アトガキ:2006/08/29(火) 03:37:23 ID:???
えーと、薮崎さんがかけて満足です。
以上。
まとめ、ただいま絶賛更新停滞中ですが、明日にでもやろうと思ってます。
スミマセヌ
>ラジヲ
漫研女子(特に藪崎さん)の登場で、すんごい賑やかで面白かったっすw
藪崎さんキャラたってるなあwww
荻上さんとの掛け合いを見て、前のラジヲでの大野さんと荻上さんを思い出しました。
荻上さんも成長したもんだ。
>>ラジヲ
メガネトークにみる藪荻、っつうか作者氏の801への造詣の深さに脱帽。後半リバてw
あと謎の相談者、漫研メンバーの登場で正体があぶりだされかかっております。頑張れ、とりあえずヤナ頑張れ。
久しぶりに『聞けた』感たっぷりでよかった。
あとMillionネタにしてもらってありがとうございます。単行本……?無茶言いなやw
>「このヤブがぜひとも出たいと言ってね。」
>「ちがいますぅ!このラジオがあまりにもいつもグダグダだから文句の一つでもって!」
>「しっかり聴いてるんですにゃー。」
>「だぁあああああ!!!」
キャラ立ってるなあ( ´∀`)
>> ラジヲ
ラージーヲーがーキタ―――――――――!!!!!!!!!!!!!!
発売からわずか五日でこのクオリティ…脱帽します。
ちゃんとやぶへびの人たちのキャラもわかっててすごいですねぇ。
女性票が少なくても11位なムスカがツボでしたw
ていうか何調べてんだギューギュル先生でwww
そしてヤナを殴りたい自分がいる…気付けー!!
>ラジオ
ラジオキター。
今ちょっと忙しいからまた後で読み直すけど、
これだけの人数出てて、発言元の名前を書いていないのに
流れと口調で判断付くのがすごい。
個人的には才色兼備な加藤さんラブだ
まとめの中の人、いつもお疲れさまです。
いつも見させていただいております。
お体にお気を付けて下さい。
ここも楽しみなんだよな〜。たまにリアルタイム投下に出会ったり、感想読むの楽しい(^-^)
>ラジヲ
ほとんどヤブさんの電波ジャック状態の暴走ぶりに萌えた。
実はメガネ論争の元ネタ、いずれも未読なのでさっぱり分からんのに笑えた。
ネガメ2人で受け攻めリバ可って…ヤブさん天才!
あとヤナかいっ、加藤さんの想い人!
ふと思ったが、加藤さんの方がでかくないか?
大野×田中に続く、男性受けのノミの夫婦誕生の予感…
>>190 >「・・・『黒神千砂十』・・・。そうか、そういうことね。」
と納得しておるんだから、加藤じゃないでしょう
これが演技ならたいしたもんだ
うん、それは無いと思う。
加藤さんは於木野さんに恋愛相談しそうな人には見えない。
なにより、ブース訪ねて本買ってたり、あとヤナの直接の後輩でないってのもあったし、
於木野さんの顔見知りでない漫研の娘でしょ。
(あの3人目の娘ならあるかも)
最後に加藤さんがヤナ誘ってるのは、
面倒見の良さからか、好奇心(野次馬とも)からか、
(黒)大野さんの類友なら派閥に引き入れるためって辺りが理由じゃないかな?
>>ラジヲ
久々のラジヲ更新キター。原作の流れを汲みつつ、更に漫研会員まで出演させてくださるとは。
「待たせたのには、ワケがある。」ってことですね。
冒頭の朽木くんや、いじられっぱなしの藪さんなど読んでる間ニヤニヤしっぱなしでしたw本当にキャラを動かすのがうまい。
次回も楽しみにしとります。
アルエの続きが読みたいなぁ…
そんな大真面目な顔で考察されても…
いや、なんとなくイヤだったもんでw
ヤナももちろん嫌いじゃないんだけど、加藤さんにはもっとこう……ねぇ?
初代とか?
にゃー子はクッチーとくっつこう
冗談は顔だけにするニャ
やぶへびの3人娘は、ある意味全員クッチーと合いそうだな。
加藤 脳天唐竹割りでツッコミ
ニャー子 何気に毒舌でツッコミ
藪崎 どっちかと言えばボケ担当の藪さんだが、関西流の洒落にならない手加減無しのツッコミもやれそう
200
咲やん「あーあ・・・ついに卒業だね。大野〜もう泣かないの」
大野 「絶対ですよ 絶対げんしけんに顔だしてください。コスプレの
生地貝に行きますから」
咲やん「わかったわかった。んも〜コーサカ忙しいから今日きてないし
飲もう飲もう。クッチー店押さえといて」(ラジャー!)
ダラさん「・・・や、やあ」
咲やん「あら、どーしたのよマダラメ」
ダラさん「春日部さん・・・ちょちょっといいかな?」
咲やん「?」
ダラさん「卒業おめでと・・・でさ最後ってかまあ、どうなるかわからんだろ
一応言わせてほしいことがあってさ。・・なんだかんだでさ俺たちみたいな
人種ってさ、春日部さんたちみたいなヒトが怖くてこっちの世界に逃げ込んだって
側面もあってさ、だから以前いったように決して無意識にオタクになったというか
ってだけでもないんだよね・・だけど春日部さんみたいな人もいるんだなって
あははは・・何言ってるんだ俺は・・・好きです・・・・
いや・・別に付き合ってとかそんなんじゃなくてコーサカというものがあるのは知っているし
ただ・・・あれ・・・そ、それじゃっ」
咲やん「まちなさいよ!待てっつってるの」グイ
「どうしてあんたたちはこう一方的なんだろうねぇ
そういうトコ直しなさいっつってんの。いっつも自分の脳みその
中だけで会話して解決しちゃうんだから。
告白だけしてじゃってそれじゃ言われてそのまま放置くらう女の子の
身にもなってごらんよ」
マダラメ「ぇ・・・・あぅ」
咲ちゃん「あぅじゃないの。それにアタシだってあんたちに逢えて感謝してるんだから
こんな山奥の大学生活でも結構楽しかったし。ま、オタクってのも
結構おもしろいってわかったし。」
>>201 内容は悪くないと思うよ。
多分書くの初めてで、即興で書いたと思うから、それでこのぐらい書けてれば十分。
斑目もし告白するなら、こんな感じでやりそうだし。
ただこっちに投下し直すなら、書式を読みやすくまとめた方が喜ばれるよ。
(まあたまにはこういう書式があってもいいと思うけど)
それとタイトルも付けたげてね。
まとめサイトの人がまとめやすいから。
ちなみに
>>201の人、本スレに書き込んで「SSスレへ行け!」って言われた人です。
ほんとに来た行動力に拍手。
まあ今回だけで終わらず、たくさん書いてみて下さい。
203 :
マロン名無しさん:2006/09/01(金) 20:58:02 ID:X44vbvvY
>201
斑目!斑目!! 「ダラさん」て呼び方萌えたwww
斑目が一人でガーッと喋って逃げようとする部分とか、すごくありそう。
原作(未来の9巻)でちょっとでもこういうのがあればいいのになあ。
>「いっつも自分の脳みその中だけで会話して解決しちゃうんだから。
告白だけしてじゃってそれじゃ言われてそのまま放置くらう女の子の身にもなってごらんよ」
ここの咲ちゃんのセリフがすごくいいにゃー。姐さん…(惚
ageてもたスマン
>>201 ワンシーンの切り取り、良い妄想です!
GJなので今後も宜しく。
206 :
ラジヲの人:2006/09/04(月) 14:54:24 ID:???
感想ありがとうございました!
>>184 段々と荻上さんは大野さんをあしらう業を身につけつつあります。
>>185 知れば知るほど奥が深いですよ、801・・・。
>>186 キャラ立ってますよね!そこが大好きなのですw
>>187 深夜「メガネ男子」で検索をかけてる自分が少し侘びしくなりましたよw
意外と一般層のキャラが上位でびっくりしましたけども。
>>188 加藤さんは素敵ですよねぇ。
どんな展開にしても彼女が問答無用で〆てくれそうだw
>>189 がんばります〜。ここは楽しいですよねぇw
>>190 書いていると主役が藪崎さんなんじゃないかと勘違いを・・・。
いっそ藪崎さんが主役でいいのか??
>>191-192 おっしゃられてる通りです。
ヤナを想っている女の子は漫研3人衆とはまた別の女の子を想定しています。
にゃー子と同学年になるのかな?
>>193 次は九巻出てからとかじゃダメっすかねw
・・・アルエ私も読みたいなぁw
207 :
ラジヲの人:2006/09/04(月) 14:57:28 ID:???
というわけで感想レスついでなのですが・・・。
宣伝です。
SSアンソロの第二弾を企画したいと思っております。
興味がある方は
>>3のテンプレにあるアンソロ製作委員会のほうに
お越しいただけると幸いです。
第一弾も通販してますので、こちらもヨロシクオネガイシマス。
208 :
祭典の人:2006/09/04(月) 18:29:01 ID:???
209 :
アルエの人:2006/09/04(月) 23:44:21 ID:???
すんません・・・
そのうち再開しますので・・・
ほんとすんません
>>209 気にしないでのんびり書いてください〜
待ってますから〜
9巻の発売もまだまだ先なんだから、長く楽しみましょうよ>アルエの人
お久しぶりです。
ちょっとした思い付きからいろいろ考えて書いてみたら、変なSSが出来てしまいました。
以前にどなたかが書いた「朽木君の優雅な日常」の文体を一部お借りしました。
地の文(登場人物の台詞以外の文)が時々暴走しますが、出たがりのナレーターか、天の声か、クッチーのもうひとつの人格とでも解釈して頂けると幸いです。
約5分後に21レスで投下します。
西暦2006年3月初頭、笹原たちの代の卒業式まで、残り半月を切ったある日のこと。
クッチーこと朽木学が異変に気付いたのは、その日の朝、大学に向かう途中の路上だった。
前方から若い女性が歩いて来た。
けっこう巨乳でなかなかの美人だ。
思わず目を向けるクッチー。
だが彼女の頭上が視界に入った瞬間、驚愕のあまり立ち止まって凝視してしまった。
美人の頭上に小さくて白くて丸い物体が浮んでいる。
その少し上に、それよりひと回り大きい白い丸。
そのまた上に、さらにひと回り大きい白い丸。
そして一番上には、彼女の胴体ぐらいの大きさの、雲に似た白くてモヤモヤした形の物体が浮んでいる。
(以下便宜上「雲」と呼称する)
「にょー??????????」
美人はクッチーに見られてることを怪訝に思ったらしく、険しい表情で足早に立ち去った。
「何だったんだろう、今のは?」
再び歩き始めるクッチー。
今度は前方から、3歳ぐらいの幼女と母親らしき女性が歩いてきた。
2人の頭上には、やはり雲が!
「にょー??????????」
またもや足を止めて2人を凝視してしまうクッチー。
彼の視線に気付いた母親は、またもや険しい表情で娘を抱き上げて逃げるように走り去る。
「まずいにょー、このままでは挙動不審で捕まるにょー」
クッチーはとりあえず道の端に寄って立ち止まり、凝視し過ぎない様に気を付けて、人待ち顔で通行人たちを眺めた。
全員の頭上に雲が浮んでいた。
「いかんいかん、ネットのやり過ぎで目が疲れてるにょー」
デイパックのポケットから目薬を取り出して点してみる。
何度かまばたきして、もう1度通行人たちを眺める。
やはり雲が見える。
「また目が悪くなったかにょー?」
ネットと総称しているが、それはクッチーがネットのヘビーユーザーだからで、彼はオタメディアの殆どをパソコンに頼っていた。
入学時に買って以来、テレビもパソコン、DVDもパソコン、CDもパソコン、ゲームもパソコン、そしてもちろんネットもパソコンだ。
その為、家に帰ってから学校に行くまでの時間の内、風呂とトイレと寝る時間、それに漫画や同人誌を読む時間以外の殆どの時間をパソコンの前で過ごした。
勉強もたまにはした方がいいと思う。
元々クッチーはオタクとしては目が良かった。
大学に入った時の健康診断での視力検査では、検査表のCの字を1番下の段まで見切った。
だが3年生になってからは、下から2段ほどがよく見えない。
まあそれでもオタクとしては相当目がいいことは確かだが、クッチーは悩んでいた。
目がいいことはオタとしては自慢にならないと思うが、実は秘かな自慢の種だったのだ。
「これでは昼間は星が見えないにょー」
いや普通見えないから。
(参考)ゼロ戦のパイロットには、昼間でも星が見えるぐらい目がいい人がいたそうです。
「最近は北斗七星の横の小さい星が見えないにょー」
前は見えてたのか、死兆星?
早死にするぞ。
「晴れてる満月の夜には、月面に立ってる星条旗が見えたにょー」
もういいから!
「調子がいい時には、火星の地表の…」
しつこい!
しばし考えながら歩くクッチー。
やがて眼鏡屋の前で立ち止まる。
試しにショーウィンドー越しに店内の視力検査表を見る。
通常の検査の距離より遥かに後方からにも関わらず、下から3段目より上は完璧に見えた。
「目には問題無さそうだにょー。と言うことは、これはいったい?」
再び通行人の頭上の雲を見る。
「ん?にょにょにょ?」
よく見ると雲の中に何かが見える。
「これは…文字?」
それは日本語の文章だった。
試しに読んでみる。
「急がないと、あと15分しかないわ」
「さて、昼御飯何にしよう」
「おーいまずいよ、早く銀行に着かないと不渡りになっちゃう」
「あーあ、講義かったるいなあ」
「ああもうムカツク!」
「何よ自慢しちゃって、どうせうちの子は公立よ!」
雲の中の文字を次々と読む内に、クッチーは事態を悟った。
「分かったにょー、これはみんなの心の声だにょー」
それではあの雲はいったい?
「心の声を描く時に使う、雲型の吹き出しだにょー。何てこった、漫画の世界じゃあるまいし…」
いや、漫画の世界です。
(厳密にはSSの世界だが)
そしてあなたは漫画キャラです。
でもそれは言わない約束…
クッチーは近くの公園のベンチに座り、何故こんなことになったかと考えた。
そしてある結論に辿り着いた。
「お星様が願いを叶えてくれたんだにょー」
現視研随一の空気を読めない男クッチーは、新人勧誘時の失敗に懲りて日々空気を読もうと努めるようになった。
だがすっかり体質と化した空気読めない病は、簡単には治らなかった。
苦しい時の神頼みという訳で、クッチーは毎晩寝る前に星を見ながらお祈りをすることにした。
「天のお父様、僕チンを空気の読める男にして下さいにょー」
もし神というものが実在するなら、「お前は『リボンの騎士』のチンクか?それに星にお祈りしておいて『天のお父様』は、日本語としておかしいぞ」とツッコまれそうなお祈りを彼は毎晩続けた。
雨天中止だけど。
「うーむ雨天中止にしたせいか、願いが少し間違って伝わって、空気じゃなく心が読めるようになってしまったにょー」
一応合理的(そうか?)な説明が付いて、自分で納得して再び大学へと向かうクッチーだった。
午前中の講義を終わり、学内を歩くクッチーはすっかり憔悴し切っていた。
「疲れたー…人の心が見えることが、こんなに疲れることとは思わなかったにょー…」
大講義室の講義(しかもこの日は出席を取るので、普段来ない学生まで来て満席)が続いたことが災いした。
何しろどっちを向いても、百人ぐらいの学生たちの心が見えるのだ。
最初は面白半分にそれらを読み耽っていたクッチーだったが、あまりにもネガティブな思考ばかりが並び、途中でうんざりしてしまった。
特に知っている学生の心が、自分に対してネガティブな気持ちを持っていることは、内心分かっていたとは言え堪えた。
「2ちゃんねるの荒れたスレ並み、いやそれ以上に酷いにょー…」
内容は書かない方がいいかな?
「やめた方がいいにょー。気分悪くなるのは僕チンだけでいいにょー」
あんた、案外いい奴だな…昼飯はどうする?
「とりあえず今はいらないにょー。食ったら吐きそう…」
まあ空気の読めない男が、急に人の心が読めるようになったのだから無理も無い。
頭上を見ると人の心が読めるので、すっかり伏し目がちになってしまったクッチー、いつか読んだ絶望先生の気持ちを心底理解出来たような気がした。
「知りたくないので知らせないで下さい!非通知でお願いします!」
クッチーにしては珍しく、原作に忠実に台詞を再現してしまう。
「どした、クッチー?顔色が悪いよ」
声をかけられて反射的に顔を上げるクッチー。
春日部さんだ。
しかもその傍らには、荻上さん、大野さん、それに恵子までが揃っていた。
「にょ〜〜〜〜!!!」『まずい!今1番会いたくない人々に会ってしまったにょー!』
春日部さんの卒業間近になって、ようやく大野会長体制の現視研に馴染みかけたクッチーだったが、彼女たちの心の中の、彼に対するネガティブなイメージが完全に消えたとは思えなかった。
朽木「(目を逸らしながら)知りたくないので知らせないで下さい!非通知でお願いします!わあああああ〜〜〜!!(泣きながら走り去る)」
呆然と見送る女子一同。
春日部「変な奴だな、何かあったのかな?」
大野「まあ彼が変なのはいつものことですから、今さら驚きませんよ」
荻上「でも今日は、いつもにも増して変でしたよ」
恵子「大丈夫だよ。とりあえず走れる元気がありゃ、ほっといて大丈夫だろ、あいつは」
荻上「なかなか分かってきましたね」
春日部「(少し気になったが)まあいいか、あとで話聞いてやるか」
恵子「そうそう、それより飯行こう飯」
女子一同は学食に向かった。
夢中で下を向きながら走り続けたクッチー、気が付けば部室の前に居た。
『まずいって!こっちに逃げてどうする!いずれ女子の皆様、こちらに見えるって!』
落ち着け、とりあえず深呼吸だ。
「スー、ハー(数回繰り返す)よし、立ち直ったにょー」
つくづくタフな奴だ。
『落ち着いて考えてみれば、昼休みが済むまでは女子の皆様は来ないにょー。あの方々は僕チンの知る限りでは、昼飯を部室で食べる習慣は無いにょー』
よしその調子だ、冷静に考えろ。
『頭上を見なければ心の中は見えない。絶望先生を見習って伏し目がちにしていれば、心が見えることは無いにょー』
それに気付いただけでも上出来だ。
『それに、幸い現視研には僕チンより背の高い人は居ない。見下ろす視線で相対することになるから、相手を見る時は目より下を見ればいいにょー。よっしゃ行ける!』
考えがまとまったクッチー、意を決して部室の扉を開けた。
朽木「こにょにょちわ〜」
斑目「やー朽木君、久しぶりだね」
例によって、斑目が昼飯を食っていた。
とは言っても毎日来てる訳ではないこともあって、ここしばらくすれ違いになることが多かったので、2人が会うのは1週間ぶりぐらいであった。
朽木「ごっ、ご無沙汰してますにょー」
視線を斑目の首の辺りに合わせつつ、挨拶するクッチー。
斑目の心なら見えても害は無いと思うが、用心に越したことは無い。
それに冷静に考えれば、やたらと人の心をのぞき見るのは失礼だ。
見かけに寄らず、クッチーは礼儀正しい男なのだ。
椅子に座った瞬間に、リュックからゲーム雑誌を取り出して読み耽る。
いや正確には、読み耽っているふりをした。
とても本当に読み耽る余裕は無かった。
幸いなことに斑目は、主に会長が座る上座に座っていた。
この状態でわざわざ斑目の正面に座ることは普通無い。
ドアの前の席は、満席の時の補助席みたいなものだから、斑目たちの卒業以降使われることは滅多に無かった。
だからクッチーはごく自然に、ドアから向かって右側の、斑目から見て左斜め前方の位置に座れた。
これなら少々斑目の方を向いても、雲は視界に入りにくい。
昼飯を食べ終えた斑目、ひと息付くと腕時計に目をやる。
釣られてクッチーも腕時計を見た。
もうじき斑目が職場に戻る時間だ。
斑目「今日は朽木君だけか…」
朽木「そのようですな」
斑目「最近みんな元気?」
朽木「みんな相変わらずですにょー」
斑目「…笹原たちの代のみんなは、最近は来てるの?」
朽木「さすがに来られる回数は減りましたなあ。笹原さんも研修始まってるらしいし、高坂さんは…この1ヶ月ほどお目に掛かってませんにょー」
斑目「…春日部さんは?」
朽木「あの方も時々見えてますが、この1週間ほどは部室でお会いしてませんにょー」
斑目「そう…」
朽木「でも今日は先程お会いしましたにょー。多分学食に行ってらっしゃっると思いますから、もうじき来られるかも…」
斑目「(腕時計見ながら立ち上がり)そう…」
その声にやや寂しげな響きを感じて、思わず顔を上げてしまうクッチー。
朽木「おわっ?!!!」
突然大声を上げて立ち上がり、のけぞってしまう。
斑目「…どしたの、朽木君?」
朽木「いっ、いえ、何でもないですにょー…」
斑目「…そう。俺、仕事戻るわ。みんなによろしく」
クッチーはここはわざと1発ボケをかまして、自分がいつも通りであるとアピールしようと考えた。
朽木「(大袈裟な動作で敬礼して)ご苦労様です!」
苦笑しつつ軽く手を挙げ、斑目は部室を後にした。
1人部室に残ったクッチーは考え込んでいた。
『何だったんだろう、今の?』
先程クッチーが顔を上げた時、不意に目の前が真っ白になった。
それで思わず大声を上げてしまったのだ。
そしてのけぞったことで、その真っ白の全貌が分かった。
部室中央のテーブルの上に、部室中を占領しそうな大きさの雲が現れたのだ。
『部室の中に居たのは斑目さん1人だけだったのに、軽く30人分ぐらいの大きさの雲が見えたにょー。こりゃいったいどういうことだにょー?』
一瞬しか見なかったし、雲が大き過ぎ距離も近過ぎたので、文字までは見えなかった。
しばし考えている内に閃いた。
『これはもしや、斑目さんの心、と言うか想いの大きさなんじゃないか?』
それがどういう想いかは分からない。
ひょっとしたらクッチーに対するネガティブな感情かも知れない。
だが例えそうだとしても、そうでないとしても、もしあれがネガティブな感情なら…
『たいへんだ、何か悪いことが起きるかも知れない!』
クッチーは斑目が好きだった。
いや斑目に限らず、現視研のメンバーはみんな大事な仲間だ。
例えみんなが本心でどう思っていようと。
その仲間が何か大きな問題を抱えている。
放って置く訳には行かない。
だが斑目が後輩、ましてやクッチーに素直に全て打ち明けてくれるとも思えない。
『斑目さん、悪いけどあなたの心、見せてもらいます!』
そう決意したその時、女子会員たちがやって来た。
春日部「あっクッチー、お前さあ…」
朽木「(目を伏せつつ)すいません、急ぎますんで!」
部室を出ようとするクッチー。
だがその腕を春日部さんが捕まえた。
春日部「ちょっと待て!お前今日変だぞ!」
朽木「なっ、何でもありません!」
春日部「何でも無いなら、こっちを向け!」
2人のマジなやり取りに、他の女子3人は固唾を呑んで見守っていた。
クッチーは出ようとする動きを止め、ゆっくりと春日部さんの方を向いた。
朽木『大丈夫、この距離で春日部さんの目にしっかりと視線を合わせれば、雲は見えない』
春日部さんはクッチーの目を見た。
彼は何時に無く澄み切った、強い決意を秘めた目をしていた。
春日部『何て目をしてるんだ?こいつのこんなマジな目、初めて見るな…』
春日部さんは手を離した。
春日部「いい目してるじゃねえか」
朽木「あの春日部さん、お願いがあるんですが…」
春日部「何だい?」
朽木「わたくしに、気合いを入れて下さい!」
春日部「分かった」
パアアアアアアアアアン!!!!!
フルスイングで平手打ちをかます春日部さん。
以前クッチーを気絶させた時より力を込めている。
呆気に取られる他女子一同。
だがクッチーはわずかに顔が動いただけだった。
それを見て春日部さんが微笑む。
春日部「今さら言うことは何も無い、思う存分暴れて来い!」
朽木「(敬礼し)イエッサー!」
春日部さんも敬礼してやる。
そしてクッチーは部室を後にし、決して速くないが全力で駆けて行った。
大野「いいんですか、咲さん?あんなこと言って」
荻上「つーか春日部先輩、今の台詞って…」
春日部「あーあれ?この間コーサカが見てたんだけど、何回も繰り返して見てたんで覚えちゃったんだよ」
恵子「ありゃまあ姉さん、すっかりオタクじゃん」
春日部「ちげーよ。って言いたいけど、そうかもな(苦笑)」
大野「それはそうと朽木君大丈夫かしら?」
春日部「大丈夫だよ、あいつはバカだが悪いやつじゃねえから。上手く言えんけど、あいつはあいつなりに成長してると思うよ」
必死で斑目の後を追うクッチー。
斑目の職場の場所は知っている。
その方向に向かって走ると、例の雲が見えてきた。
さらに進むと、斑目の後姿が見えた。
『よっしゃ、追い付けるかも!』
だが間一髪、斑目は職場に戻ってしまった。
『仕方ない、近くで仕事が終わるのを待つにょー』
桜管工事工業のオフィスから少し離れた所に小高い丘があった。
クッチーはそこを登り、オフィスの上空を見上げていた。
オフィスの建物と同じぐらいまで巨大化した雲が浮んでいた。
雲の大きさに比例して、そこに浮かぶ文字も巨大だった。
「この距離からでも読めそうだにょー。何々…春日部…さん?…何ですと?!」
読み進む内に、クッチーの脳はパニックを起こしそうになった。
「そんな、斑目さんが春日部さんを?そんなバカな?」
クッチーは、リアルタイムでは幾分か丸くなってからの斑目しか知らない。
とは言っても、春日部さんが1年生の時、激しく口喧嘩してたことは話には聞いているし、入学した時の仮入会の際に、その片鱗は見ている。
その分を差っ引いて考えても、斑目と春日部さんは水と油だと思えた。
「これはひょっとして、えらい問題に首突っ込んじゃったかも。こんなのエロゲーに無いし…どうしよう…」
あんたが悩んでどうする?
大いなる力を得た者には、大いなる責任が伴うんだ!
何とかしろ!
「えーいこうなったら乗り掛かった泥舟だ!とりあえず最後まで読んでみるにょー」
沈める積りか貴様?
「どう考えても浮くとは思えないにょー」
…激しく同意
「同意するなよ!」
…とにかく真面目にやれ!
この問題ばかりは他人に振る訳に行かないぞ。
「よっしゃ!こっからは真面目モードで行くにょー!」
さっきまでは真面目じゃなかったのか?
そして斑目の終業時間。
「斑目さん!」
帰ろうと会社を出た斑目、声を掛けられて振り返るとクッチーが立っていた。
斑目「やあ朽木君、どうしたの?」
朽木「ちょっとそこまで付き合ってもらえませんか?」
斑目は改めてクッチーを見た。
月明かりの下ではあったが、今まで見たことの無いマジ顔をしているのが分かる。
斑目「分かった」
2人は近くの公園に入った。
朽木『(上を見ながら)この辺なら明るいから、雲も見えるだろう』
やがてクッチーは街灯の下で止まり、後を付いてきた斑目も止まる。
斑目「明日早いんで、手短に頼むよ」
クッチーは斑目の頭上を見た。
ちゃんと雲が見える。
疲れのせいか、仕事中に散々考えたせいか、あるいは目の前にいるのがクッチーなせいか、雲は他の人のよりも大きいが、先程までの巨大さは無かった。
少し暗くて雲の文字が見づらいので、ちょっとずつ街灯に近付くクッチー。
斑目も釣られて近付く。
文字がしっかり見えるところでクッチーは止まり、斑目も止まった。
『さて、どうしたものかにょー…』
首尾良く斑目を捕捉したものの、クッチーはどう話したものかと頭を抱えた。
日が落ちて雲が見えなくなる頃まで、クッチーは斑目の心を読み続けた。
『斑目さん、仕事の間ずっと春日部さんのこと考えてたな…』
仕事に関する思考は、所々にしか無かった。
後の残りは全部、春日部さんについてだった。
社会人としては問題あるが、今回はそのことは流そう。
問題なのは、延々堂堂めぐりを続ける、迷路のような斑目の心の中だった。
「明日は春日部さんに会えるかな?」
「会ったからって、どうなるもんでもないだろう」
「そんなこたあ分かっているよ!だけどそれならせめて、卒業まで近くで見ていたい」
「だけどこんな生活も、あと少しで終わる」
「そうだな、春日部さんが卒業したら、もう部室に行く理由も無くなる」
「わざわざ大学の近くに就職した意味も無くなるな」
「ちょっと待てよ、それじゃあ結局春日部さんには何も言わないのか?」
「言ってどうする?何を言う積もりだ?『好きだ!』とでも言うのか?」
「わざわざ負けると分かっている戦を仕掛けることもあるまい」
「馬鹿野朗!男には負けると分かってても、戦わなきゃならない時があるんだよ!」
「おいおい、それはお前の都合だろ?向こうは仕掛けられても迷惑だぜ」
「…そうだよな。現状を維持し続けたまま卒業してもらえば、いい友達、いい仲間のまま終われる」
「それにさ、結ばれるばかりが恋じゃないだろ。例え自分と結ばれなくても、相手の幸せを祈ってやるのが本当の愛じゃないか?」
「うわーすげえ綺麗事。色恋沙汰なんて結ばれてなんぼじゃねえか。結ばれる当ても無いのに好きになっても、意味ねえじゃねえか」
「おいちょっと待て。意味ねえわけねえだろ!春日部さんと出会ってからの4年間、何のかんの言っても俺は楽しかったぞ!」
「だな。今までやったどんなエロゲーより面白かった。バッドエンドしかねえのによ」
「おいおい春日部さんとエロゲー一緒にすんなよ。あの人は俺にとって、何つーか、もっと神聖で、大切にしたい、特別な人なんだ」
「コーサカホテルに引っ張って行って、10回やろうって女がか?」
「ああそうだよ!非処女どころか経験豊富過ぎで、神聖なんて言葉と無縁な人だよ!本来ならな!」
「だけど一旦惚れてしまえば、そんなことは関係無くなる」
「ああ、そんなもんは理屈だ。好きになっちまえば、とにかく会いたいんだよ」
「明日は会えるかな…」
回数を重ねるごとに、内容は少々変わっても始めと終わりは変わらない。
「明日春日部さんに会えるかな?」
正確には「明日春日部さんに会いたい」という願望、それで始まってそれで終わる無限の思考ループ。
斑目の中に何人の斑目が居るのかは分からない。
クッチーは最初数えながら読んでいたが、同じ意見の中でも次々分派が現れて、1人で心の中を延々かき回し続けるので、途中からは数えることを放棄した。
『この人は卒業してから今まで、いやひょっとしたらもっと前から、自分の中で延々と「第〜回 春日部さんへの気持ちどうしよう会議」を繰り返していたのか…』
クッチーは丘の上で斑目の心を読んでいる段階から、何を言うべきかいろいろ考えていた。
だがいざ斑目の前に立ったら、かけるべき言葉が分からなくなった。
『4年分の想いを俺に何とかしろと言うのか、天のお父様?無理ですにょー、こんな難しいエロゲー』
エロゲーじゃないってば!
『まったく、僕チンは相談することはあっても相談受けることは無い人なんだから、こんな問題背負わされても…待てよ相談か…』
「朽木君?」
斑目は、自分から誘っておいてトランス状態に入ってるノッポの後輩に声をかけた。
「にょっ?」
考え過ぎてワープしていたクッチーの意識が帰ってきた。
朽木「すんません、どう話したものやらと考え込んでしまいましたにょー」
斑目「(苦笑)で、話って?」
朽木「実はわたくし、好きな人がいるのです」
斑目「えっ?」『おいおい、そういう相談を俺にするかあ?!』
(以下斑目の台詞は、「」の肉声と『』の心の声を併記する。ちなみに一致する場合は『「」』)
斑目の心の声を目で読みながら肉声と対話しているので、クッチーは頭の中で言うことをまとめるのに時間がかかり、結果として一語一語言葉を慎重に選んで喋る形になった。
ちょうど英会話を習いたてで英語で会話する時、頭の中で相手の言葉を日本語に通訳して日本語で考え、日本語の返答を英語に通訳し直して喋るのに似ている。
朽木「その人はわたくしと違って一般人ですし、イケメンで高スペックの彼氏もいます」
斑目「なら、どうしようもないじゃない」『驚いたなあ、まさかあの朽木君が俺と同じようなことで悩んでいたとは…』
朽木『「あの」ってどういう「あの」ですか?』「わたくしもそう思いますけど、ただ、その人もうすぐ卒業してしまうんです」
斑目「えっ、そうなんだ…」『偶然だな、朽木君もそうなのか。まあでも彼の場合は相手が年上だし、自分は大学に残る訳だし、俺と彼とでは状況が違い過ぎるから、一概には比べられんな』
朽木「そこでわたくし、せめて最後に告白しようと思うのです」
斑目『「えっ?」』
朽木「でもその前に、何と言うか、斑目さんの意見を聞きたいなと思いまして…」
斑目「何で俺なの?」『意見ったって、俺もそれ出来なくて悩んでるんだっつーの!』
朽木『そりゃ斑目さんが春日部さんとのこと、どうする気か知りたいからですよ』「それは…いやー最近笹原さんも高坂さんも会えないし、それに彼女持ちにこんなこと相談しても仕方ないでしょ」
斑目「悪かったね、彼女無しで」『朽木君にしては賢明な選択かもな』
朽木『「にしては」とは何ですか!』「…すんません」
斑目はしばらく無言で考え込んだ。
クッチーはその思索をライブで読み続けた。
『彼氏持ちの一般人女子に告白するかどうか、って俺が悩んでることで意見求められてもなあ…』
『でもこうやって俺のとこに来た以上、何か答えてやんないとなあ』
『やっぱり俺に置き換えて考えるべきかな。つーかそれ以外、考えようが無いしな』
『で、どうするんだよ俺?告るの?』
『んな訳ねえよな…今さら告ってどうするよ?』
『だけど、それで本当に後悔しないのか?』
『しねえよ。墓場まで持っていくさ、この想いは』
『だけどそのやり方、朽木君にはどうかな?』
『そうだな、彼は俺なんかと違って強いから、当たって砕けても立ち直れそうだしな。本人の気が済むようにやらせてやればいいんじゃねえか』
『それに俺の場合と違って、彼の場合はひょっとしたらひょっとしてってことも、万が一にも無いとは言い切れないからな』
やがて斑目は口を開いた。
斑目「朽木君がやりたいと思った通りにやればいいと思う。だけどその前に確認しておきたい。話を聞いた限りでは、君に殆ど勝ち目は無さそうだ。それでも告白するのか?それで拒絶されても後悔しないのか?」
『俺の場合は全く勝ち目無いけどな。普通に考えて、俺が高坂に勝てる要素なんて何も無い。そしてもし万が一、春日部さんが高坂と別れて俺と付き合うようになったら、それもまた俺の負けだ。』
『何故なら、俺が好きなのは、オタ趣味を我慢したり、受け入れたり、理解しようと努力したりしながら、とことん高坂に惚れ抜く一途な春日部さんだからだ。どっちに転んでも分の無い勝負さ』
クッチーもまた、しばし沈黙しながら斑目を見ていた。
いや正確には、斑目の上に浮ぶ雲を見上げていた。
自分の悩みを相談するかのように装うことで、こちらの目の前で春日部さんとのことを考えてもらうという作戦は、とりあえず成功した。
だが問題はここからだ。
単に好きか嫌いか、結ばれるか結ばれないか、そんなゲーム的二者択一では済まない、複雑な恋愛感情。
好きになった理由だかきっかけだかが、相手が別の男を一途に愛してるからだという、理不尽な状況設定。
どう転んでもバッドエンドな最悪のシナリオだ。
それに対する適切な答えの持ち合わせなどクッチーには無い。
『これがエロゲーなら、メーカーに文句言ってやるにょー』
だからエロゲーじゃないってば。
『全く天のお父様、何ゆえにこんな不良品のエロゲーみたいなシナリオ書いたのかにょー』
どう考えても斑目ハッピーエンドのルートは無い。
それはもはや動きそうに無い、クッチーにはそう思えた。
『そんな負け戦を強いる権利は、僕チンには無いにょー』
だがそこでふと考える。
『負けたからどうだと言うんだ?戦争じゃないんだから、負けイコール死ではない。むしろこれからの為に、例え負けるとしても、この問題決着を付けておくべきじゃないのか?』
『そりゃ斑目さんは僕チンと違って、繊細でデリケートさ。だけど、それが目の前の問題から逃げていい理由にはならないにょー』
『大丈夫だよ。春日部さんならきっと、キッパリ振るだろうけど、その後も斑目さんと以前と同じように接してくれるさ。斑目さんが恐れているような、今までの関係が壊れることなんて無いさ』
やがてクッチーは口を開いた。
「わたくし、やっぱり告白しようと思います」
斑目「後悔しない?」『やっぱり朽木君は勇敢だなあ』
朽木「どうせ後悔するんだったら、やらないよりやった方がいいです」
斑目「決まりだな、て劇場版かよ!」
『やらない後悔よりやった後悔か…耳が痛いよ』
『こういう場でこういう引用するとは、朽木君も腕上げたな。結局俺にはこいつらだけか…部室は通い続けようかな、春日部さん卒業後も』
朽木『ぜひそうして下さい。わたくしも大野さんも荻チンも恵子ちゃんも、みんな待ってますにょー』「すいません。相談しに来ながら結局1人で結論出しちゃって」
斑目「いいさ、どのみち最終的に決めるのは本人だからな」『そうさ、朽木君は俺みたいなヘタレじゃない。今現在の思いに忠実に行動すればいい。俺は…どうするかな?』
斑目『「そんじゃあ俺帰るから」』
朽木「お疲れのところ、いろいろすいませんでした」
斑目「がんばれよ、朽木君」『俺みたいにはなるなよ』
寂しげな背中を見せて、斑目は帰途に付いた。
公園のベンチに座り、クッチーは沈んでいた。
「結局僕チンには何も出来なかったにょー」
まあそう落ち込むな。
お前さんはよくやったよ、詰めは甘かったけどな。
「リアル恋愛の経験値ゼロの僕チンには、あそこまでが精一杯ですにょー」
でもよかったんじゃないか。
お前さんと話したことがきっかけで、斑目ひょっとしたら告白するかも知れん。
お前さんの話とたばかって、奴自身の問題を真剣に考えたのがきっかけでな。
ああいう奴は、自分のことになると簡単にあきらめるけど、人のことだと真剣に考えてくれるからな。
いい先輩持ったな。
「オロロロ〜〜〜ン!!!(男泣き)」
「さて、これからどうするかにょー。こんな変な力、僕チンには手に余るにょー」
ムダなことと思いつつも、クッチーはしばらく考え込んでいたが、やがて何か思い付いたように顔を上げた。
意を決したように立ち上がって公園を出ると、とんでもないことを言い出した。
「高○陽○先生がおっしゃったという、有名な格言を思い出したにょー」
○橋○一先生が何と?
「それでは伏字になってないにょー」
…あっ間違えた。
それはさておき、先生は何をおっしゃったんだ?
「『困った時には交通事故!』だにょー」
お前、それいろんな意味でヤバいって!
「よし、ちょうどよく車が来たにょー」
クッチーは車の前に飛び出した。
って、やめんかっ!!!
「あ○ち○先生だって、交通事故ネタで手柄立てて出世したんだにょー!」
○だ○充先生まで巻き込む気かー!!
次の日の朝。
大学へと向かうクッチーは、真っ直ぐに前を見て歩いていた。
昨日の後半の伏目がちの彼はもういない。
その代わり頭に包帯を巻いていた。
「クッチー!」
後方から声が掛かって振り返る。
春日部さんだ。
春日部「おはよう」
朽木「おはようございますにょー」
春日部「どしたの、その頭?」
朽木「いやー、バナナの皮踏んで転んでしまいましたにょー」
春日部「お前21世紀にもなって、そんなコテコテのギャグみたいな怪我の仕方するなよ」
朽木「いやー面目ないにょー」
クッチーが言ったことは、必ずしも全てが口から出まかせでは無かった。
結局車の前に飛び出す直前に、本当にたまたま落ちていたバナナの皮を踏んで滑ってずっこけ、アスファルトの道路に思い切りダイビング・ヘッドバットをかます破目になった。
クッチーは額を割って大量出血していたが、クラクラするものの意識はあった。
「そんなバナナ!」
こんな場面でそのギャグを出してくる芸人魂には感服する、寒いけど。
車は急ブレーキをかけて彼の30センチほど手前に止まった。
車を運転していた中年男は、大慌てで彼に駆け寄って来て、大丈夫かと声をかけた。
どうやらクッチーをはねてしまったと思い込んだようだ。
中年男は懐から札入れを出し、かなりの枚数の万札を彼に押し付けるようにして手渡し、早口で一方的に口止めを強要して逃げるように走り去った。
今思うと微かに酒の匂いがしたような気がするから、飲酒運転の発覚を恐れたのだろう。
もしクッチーが車に見事にぶつかって死んでいたら、ひき逃げしていたかも知れない。
クッチーは頭がクラクラしていたので言い返すことも出来ず、その為中年男の目論見はどうやら成功したようだ。
さすがのクッチーもそのまま病院に向かったが、幸い額の傷と打撲と軽い脳震盪だけで済み、入院することも無く徒歩で帰宅した。
さすがは現視研一のタフガイだ。
春日部さんと普通に接していることから分かるように、クッチーは頭を打ったショックのせいか、心を読む能力を失った。
春日部「で、どうよ?昨日の問題は?」
朽木「うーん、無事に解決したとは言えませんが、一応区切りを付けてきましたにょー」
春日部「(笑顔で)そりゃよかった。何だか知らないけど、お前にしちゃ上出来だ」
春日部さんは敢えて問題の内容は、何も訊かなかった。
クッチーの性格なら、言わなきゃならないことや聞いて欲しいことなら自分から言う。
言わないのなら、言う必要が無いか言いたくないかだ。
朽木「(小声で)後は春日部さんにお任せしますにょー…」
春日部「何か言った?」
朽木「何でもありませんにょー」
おまけ
クッチーは昼飯を珍しく学食で取っていた。
なるべく昼飯時の部室を避けて、斑目と春日部さんが2人きりになる可能性を高めようという、彼なりの気遣いだった。
それに、部室で料理をたくさん並べるのも何だし、と思ったというのもある。
あまり大食漢のイメージの無いクッチーだが、本来彼は痩せの大食いなのだ。
今日の彼の懐は暖かい。
昨夜思わぬ臨時収入があったからだ。
中年男が渡した金は、病院で払った分を差し引いても十数万円残った。
それじゃあ当たり屋だよ。
昨夜大量出血したせいか、どうも肉気のあるものが全部美味そうに見えて、10品もの注文をする。
「先ずは前菜からだにょー」
カレーライスに手を出す。
ってお前さあ、それは前菜なのか?
カレーを食べ終わり、ふとクッチーはスプーンを見つめた。
「昔これを念力で曲げる超能力者がいたそうだにょー」
ユリ・ゲラーが流行ったのなんて、お前が生まれる前の話だろうが、何で知ってる?
何気なくスプーンを見つめつつ呟いたその時、異変が起きた。
彼の目の前で、ただ端っこを持っていただけのスプーンが、くの字に曲がった。
「にょっ?」
試しにスプーンをさらに数本取りに行き、もう1度同様にスプーンを見つめる。
数本のスプーンが一斉に曲がって団子になった。
「にょにょにょ、こっ、これは?」
彼はようやく事態を悟った。
「どうやら頭を打ったショックで、今度は念力が出来るようになったみたいだにょー」
もう知らん、勝手にやってくれ。
「天のお父様のバカ〜〜〜〜〜!!!」
学食にいることも忘れて、クッチーは魂の叫びを上げた。
以上です。
以前は本スレで時々見かけた「クッチー空気嫁」という書き込みから始まった、おバカな連想の連続を膨らましていったら、得体の知れないSSになってしまいました。
お邪魔しました。
》空気嫁クッチー
ハゲワラ!GJ!
通勤電車の中でケータイ見てニヤニヤしてるアヤしい人になってしまったW
>>空気嫁クッチー
面白かったス!
実は優雅な日常の文体ひそかに好きだったので、あの文体が帰ってきて嬉しい。クッチーものにはジャストフィットだと思う。
お話自体も面白いアイデアで純粋に楽しめた。なんか春日部さんと友情が芽生えそうなところとか、1レス丸々使って自問自答を繰り返す斑目とかw
そしてユリゲラーてw平均年齢の高いスレで俺も居心地がよい。
いっぱい笑えた。ごちそうさまでした。
237 :
そして:2006/09/08(金) 18:39:59 ID:???
いちおうレス分けた。また1本書き上げて現在推敲中。
今日はまだ仕事してるのでw明日、土曜の午前中にでも投下を目論んでいる。
タイミング的にそろそろ他のSS師たちも動き出してるんじゃないかと思うので、前フリしときます。
20レスくらいになるかな。よろしく〜。
語尾に「にょ」をつけすぎじゃね
実際はそんなに連発してない
なかよしクラブかと思うと、このくらいのことでもこうやって言ってくれる奴がいるからこのスレは侮れない。
俺はこの作者ではないが、やはり以前『クッチー意外と特徴NEEEEE!』ってなった口です。
しょうがなくて『〜ですなあ』『〜ですのう』『〜ゴザイマス』『〜にゅ』(注:『にゅ』は原作でも使われてない)をローテーションしてお茶を濁したんだが、『にょ』の多用に違和感を覚えるヒトがいるのが判るだけでも勉強になります。
>>空気嫁クッチー
やー面白かった。最後のオチとかw
しかし!言わせてもらおう!!
泣けてきますた。斑目………。
いや、でも、気持ちの部分を書いてくれてありがたう。斑目に幸あれ。
自分もクッチーものかいたことあるけど、どーしても語尾に「にょ」とつけたくなる。
素のときは普通の喋り方で、キャラ作ってるときは「にょ」とつける、と使い分けはしてたけど。
文章だけでキャラ表現しなきゃいかんからなー。
241 :
うすじ:2006/09/09(土) 01:16:57 ID:???
オギー「ちょ・・・ちょ・・・・イタタ・・・少し・・待ってください」
(SEXってどうすることも出来ねンだ。男の○○○○が抜けるまで
ただひたすら待つしがねって春日部先輩も言ってたっけ・・)
笹原 「ん・・・・・(んー?んー////
@「は・・・はずめてだから優しくしてけろ」
→ピッ A「も////もっと強くして下さい!先輩は強気責めなんだから
な、なしてこったらこと言わせるの////」 )
じゃ・・じゃwここはあえて強気責めで」
げ し !!
オギー「本当に動かないでください・・・・動いたら殺しますよ」
笹原 「(ん・・・・・んー!・・・・んんーっ)
ロリッ子・・・ツンデレ?・・・・上石神井・・・蓮子タン・・・
だ・・だら・・・・・・ま、まだらめぇぇぇぇーーーーーーーーっ」パンパンパンパン!
オギー「!いおあ「「」あ」」@」g」」あ」
・
・
・
大野 「あら?どうしました」
オギー「フッ・・・これは罰です。一瞬でも普通のカップルでいたいなんて
思った私・・・最近いい気になってたんです」
大野 「あら///どーりで最近漫画の内容が陵辱ものが多くなってきたなと」
クッチー「おっはーでーす」
オギー「ふふふもうイラマチオも断りませんなんでもします」ブツブツブツ
大野 「荻上さん・・・」
242 :
うすじ:2006/09/09(土) 02:36:50 ID:???
ダラさん「あ〜〜〜〜〜んんーーーーーっ春だな(やっぱ俺には
冬だな)飲み物は構内で買うか。ん?」
朽木「こにょにょちわーーーーー!」ガチャ
薮崎「・・・・・・」
荻上「・・・・・・」
ニャー「にゃ?」
朽木「・・・・・・」パサ(漫画読み始める)
ダラさん(・・・・帰るか)
部室に入ることも出来ず会社に戻るまだらめさんであった。
>>238 原作では「うんこにょー」ぐらいでしかつかってないんだよね>にょ
うざい感じの敬語を多用してるイメージのほうがあるかな
みなさんおはよーございます。今日も一日いい日でありますように。
などといい人ぶったところで投下開始します。
笹荻ネタで『マル。』全25レス。
まいります〜。
9月なかばの火曜日、笹原完士と荻上千佳は揃って軽井沢駅に降り立った。朝というより昼に近い時間だが、乾いた高い空から真夏とは表情の違う爽やかな日差しが高原の町に降りそそいでいる。
「到着ー。うわ、なんかもう涼しいね、こっち」
「そうですね、東京ですら早々と秋って感じになってましたけど、格段に違いますね。寒いくらいです」
「さて、時間もあんまりないし、気合い入れてぶらぶらしましょうか!」
「笹原さん……それ言ってることおかしいですから」
二人の記念日に、笹原の体が空いたのは偶然の産物だった。もともと時間も曜日もお構いなしの職場であったが、9月の初旬は年末進行のスケジュール調整を始める割と忙しい時期だ。
今回の幸運は笹原の担当ではない連載作品のアニメ化が決まり、出版社がその雑誌を上げて作品プッシュに躍起になったことだった。当の看板作家とその担当編集者は年末年始の無休が確定した一方、他の作家陣はこの企画に置いてけぼりを食ってしまったのだ。
もちろん制作側としては最前線で活躍できない悔しさもあるが、体が楽なのも事実だ。職場の先輩たちも(休日返上となった編集者までもが)新米の笹原に「休めるときには休んでおけ」というありがたいアドバイスを贈ってくれた。
ちなみに同じ雑誌のライバル漫画に応援コメントのプレゼント用色紙を描かされる羽目となった彼の担当作家は、商業主義のひずみについて笹原にひとしきり愚痴ったあと、妻との正月旅行の計画に没頭することにしたようだ。さすがプロ、と彼は舌を巻いた。
「笹原さん、疲れてるんですからそんなに張り切らなくてもいいんですよ?」
「電車でいっぱい寝たから大丈夫。……ていうか荻上さんつまんなかったよね、ごめんね」
「いえっ……実は……私もほとんど寝てまして」
千佳が笹原からの『無事帰れました。これで明日は大丈夫ですよ』というメールを受信したのは午前2時を回った頃だった。過去に何度も仕事が原因でデートを中止させられている身としてはそれまで寝る気にもなれず、一人ベッドで小さな液晶を見つめていたのだった。
「携帯のアラーム入れてなかったら、二人で長野まで行っちゃってたかも知んないす」
「うひゃあ、あぶねー」
****
二人が付き合うきっかけとなった軽井沢に、1年目の記念日に行ってみたいと言ったのは千佳のほうだった。1年前の昨日、笹原は千佳に自分の胸のうちを明かし、そして翌日千佳は笹原の想いを受け入れたのだ。彼女自身の、笹原への想いとともに。
「思えばぎりぎりまで就職決まらなくてテンパってたんだよな、去年の今ごろ」
「恵子さんが合宿話はじめた時の笹原さん、すごい顔して睨んでましたよね」
「だって殺意めばえてたもん、あん時の俺」
ぶらぶらと歩きながら話す。
去年の夏はあわただしい日々が続いていた。千佳の夏コミ当選、彼女の部屋での販売会議、コミフェス本番ではスーとアンジェラの来訪、そして千佳の心の傷を知る友人との遭遇。
笹原自身も就職が決まらず神経をささくれだたせる日々を送っていた。同期の高坂真琴が目を見張るような手腕で有名ソフトハウスに就職を決め、春日部咲は自ら経営者になろうと意気軒昂だった。
彼はといえば、千佳への想いに自分で気付くも恋愛経験の不足から一歩も踏み出せない焦燥感もあいまって、彼には自分の踏みしめている場所がまったく見えなくなっていた。
「私も、そろそろ就職考えなきゃならないんですよねー」
「俺が動き出したのが3年の後期始まってからだったな」
千佳が言う。3年生の夏休みともなれば、すでに就職活動を開始している同期も多くなっている。
「でも荻上さん、就職する方向も考えてたの?俺すっかりプロ目指すもんだと思ってたよ」
「いやあー。踏ん切りつかないですよ、やっぱり」
「夏休みのうちに持ち込み、やってみたら?受け付けてくれる出版社、探しておくから」
「はあ」
子供の頃から、それこそ物心のつく頃からずっと漫画ばかり描いてきた千佳としても、この世界に飛び込んでみたいとは常々考えていた。しかし、自分にやりぬくことができるのかという疑問に、どうしても答えが出せない。
自分の技量でプロの世界に割って入ってゆけるか。ヒットをひとつ生み出すまでに、体力や才能がもつのか。自分一人生きてゆくだけの金を稼げるか。全ての見とおしが立たない今、千佳は趣味を職業とする覚悟が持てないままでいた。
****
9月に入ったため家族連れの観光客はほとんどいないが、それでも大学生グループや若い二人連れ、そして意外に多い壮年のカップルで避暑地は賑わっていた。
去年は現視研のメンバーで歩いていた陽だまりの町を、二人で歩く。いつもならいらないちょっかいをかけてくるメンバーがいないと、妙に寂しい気もする。
「……そういえば朽木君、まだ就職決めてないんでしょ?」
「朽木先輩ですか?今もスーツで部室来て落ち込んでますよ、毎日」
「いろんなツテ頼って日本全国面接して歩いてるらしいじゃない。これで就職浪人なんてことになったらシャレにならないなー」
「私が心配してるのはそれより、先輩が卒業できるかどうかの方なんですけどね」
「あはは」
雲ひとつない、青く丸い晴れた空の下。あちこちの店でお土産を買い、つまみ食いをし、ゆったりとしたテンポで見物して回る。表通りから一歩奥へ入って『ポモドーロ』で昼食にすることにした。
「どうですか荻上さん、あらためて来た軽井沢は?」
「去年は結局、ほとんど楽しんでませんからね。笹原さん、あの時はホントすいませんでした」
ナイフとフォークを使いながら聞いてくる笹原に、パスタを巻き取る手を休めて答える。去年は旅行の日程のうち1日を千佳は二日酔い、笹原はその看病で費やしてしまっていた。
「謝らないでよ。あのおかげで、今日こうして荻上さんとここに来れたわけだし」
「去年の写真……朽木先輩が撮ったやつ、私ゆうべ引っ張り出して見てたんです」
「あはは、常にフレームが斜めのヤツね。出来上がった写真見て田中さんが激怒してたよねー」
「あのあと1ヶ月くらい田中さんわざわざ顔出しに来て、写真部の居残り特訓みたいになってましたもんね、朽木先輩。……最終日に町を歩いてるときも、笹原さんと私、同じ写真に写ってることがほとんどなかったんですよ」
傍らのバッグを探り、写真を取り出す。
「あれ、写真持って来たの?」
「その、二人とも写ってる写真だけ。この2枚だけなんですけど」
1枚は軽井沢を発つ時に駅員に撮って貰った集合写真。もう一枚は写真係を買って出た朽木学の撮影による微妙にブレた写真で、町を散策しているときのものだった。
「え、この2枚だけ?」
「集合写真だって笹原さんと私、こんなに離れて。こっちに至っては道の両サイドの店で別々に買い物してるってだけです」
「うわ、俺ちっさー。荻上さんよく気づいたね、コレ俺だって」
「この写真、実はすごいんですよ。カメラ持ってた朽木先輩以外、全員フレームに収まってるんです」
「マジで?……あ、これ恵子だ……するとこの横向いてるのが春日部さんで……うわ、こっちが斑目さん?てゆーか、『ウォーリーを探せ』?」
「あはは、私も思いました」
「はは……でも残念だな、俺写真見返してなかったけど、もっと写ってるって思ってた」
写真を返しながら言う。
「今日はいっぱい撮ろうね。カメラも買ってきたし」
「でも、人にシャッターお願いするの、なんか恥ずかしいっすよ」
「大丈夫大丈夫。俺仕事始めてから、初対面の人に無茶なお願いするの得意になったから」
「相手は漫画家でも印刷所でもないんすからね、無茶なのはダメですよ」
聖パウロ教会、犀星記念館、三笠ホテル。雑木林にも入り、初日に散策した木陰の道を歩く。バスを使って小瀬温泉で降りる。
「……入ってく?」
「ここ日帰り入浴不可みたいですよ。……残念ですが」
「え〜」
その先の竜返しの滝では、千佳は大野加奈子からもらったというコスプレの写真を出して笹原に見せた。同じ構図で写真を撮りたいと言い始めた笹原をなだめすかし、ぎりぎり別アングルのツーショットを居合わせた観光客に撮ってもらった。
まだ時間は早いが、頭上に見える午後の太陽は、その色合いをゆっくりと変えていく。バス停へ戻る道を歩きながら、笹原がふと時計を見た。
「そろそろ……行こうか?」
「そうですね」
バスを途中下車し、二人は林の奥のほう、別荘の立ち並ぶ地区へと歩く。目的地はほどなく見えてきた。
「……あ、あそこ」
「うん、あのコテージだったよね。今日は誰か泊まってるみたいだけど……近くまで行ってみる?」
別荘地のはずれ、急なキャンセルがあってあの日、幸運にも予約の取れた貸し別荘。半開きのカーテンが生活感を感じさせる。とはいえ、今の時間なら泊り客も散策に出ているだろう。
建物へ続く板敷きの階段の端に立ち、記憶より若干古びた屋根を見上げてみる。
「1年かー」
「……なんか、全然違う建物に見えますよ私。そもそも去年はコテージなんか見てなかったかも」
「二日酔いで記憶が飛びましたかね?」
「その部分だけは思い出したくありません!」
****
コテージを背にして、あらためて右へ。あの時は無我夢中で、どこをどうしてあの場所にたどり着いたのかまったく思いだせない。二人でぎこちない距離を保ち帰った時の記憶を手繰り寄せながら、ほどなく橋が見つかった。
橋とは言っても、名もない小さなものだ。別荘地に流れる小さな渓流に、人や車の通行のための道を作っただけのものだった。
「ここ……だったね」
二人は橋の上に進んだ。千佳は欄干に近づき、笹原はそれを追うように橋の中央に立つ。
「あらためて見ると……小さいですね。あの時はもう暗くなってて、もっと深くて大きい川だと思ってました」
「俺もー。この時間なら見とおしが明るいけど、暗くなるとすっかり森の中って感じだったよね」
少しの間の沈黙。わざわざ1年かけてここに戻ってきて、互いが互いに言いたいことがあった。それをどう切り出せばいいのか、二人とも躊躇していたのだ。
「……あのさ」
やがて、笹原が口を開いた。
「あの日に言ったこと、俺は今でも時々思い出すよ。『荻上さんを好きだから、守りたいからここにいるんだ』って」
「私、びっくりしました、あの時」
千佳が応えて言う。
「びっくり?」
「笹原さんが、私に『好きだ』なんて言うんですから。びっくりしますよ。……それも、二日酔いでゲロゲロになってるところに」
「……はは、ごめん」
「さすがに混乱して逃げちゃいました。あの時も、転校したクラスメートのこと夢に見てたところだったんです」
「ああ、あの」
「笹原さん、私まだ説明していなかったと思うんですが」
笹原の方を振り返る。
「……その友達、私のこと好きだって言ってくれた人なんです」
彼の表情を探る。今の言葉に少し見開かれた瞳の奥を覗き込む。言わないままの方がよかったんだろうか……それとも……。
「私もその人のこと嫌ではなくて……まあ中学生ですからね、帰りがけに待ち合わせて神社で世間話したり。でもそれから何日もたたないうちに、私のイラストが彼の目に触れて」
笹原は黙ったまま聞いている。その瞳はいつものように優しい光をたたえて、恋人を見つめている。
「私の夢に出てくるその友達は、私のことを責めないんです。夢ではいつも、私が一方的に彼のことを追い落とすんです」
これまでに見た数百の悪夢が脳裏をよぎる。数百回、校舎の屋上から転落する彼と、それを面白半分の冷たい笑顔で見下ろす自分。背中に冷たいものが走った。
「告白される前から、その友達は私の中では『総受け』で……文芸部の友達みんなで小説書いて……私がイラストを……」
連絡もなく彼が学校に来なくなった日。何日たっても登校して来ず、胸騒ぎが止まらなくなったとき。あの日教室に入った瞬間、自分を見つめた文芸部のみんなの視線。
「その人は……それっきり……私は……」
このことを考え始めると、とたんに自分が中学生に戻ったように感じる。あれから数年の経験も全てリセットされ、何をどうしていいのかわからずただ泣いていた日々に。
「私……巻田くんになんにもしてあげれねくて……謝ることもできねくて……そンだのに、私だけまた男の人に『好きだ』なんて言われてぇ……」
笹原が一歩、千佳の方へ踏み出した。反射的に一歩退く。ふるふると首を振る。
「だッだから……私ひとり暢気に色恋に浸るなんか許されねって思ってぇ」
「荻上さん」
ふわ、と風がなびく。我に返ると、千佳は笹原の両腕に抱きしめられていた。
「荻上さん、俺さ、荻上さんのこと、守りたいんだ」
千佳の耳元に、あたたかい吐息。
「1年前にも言ったけどね。荻上さんを傷つける全てのものから、俺はきみを守りたい。夏の暑さも冬の寒さからも。オタクの実態を知らない人たちの誤解からも。本当言えば、きみのことを責めるきみ自身からも」
千佳を抱く腕に力がこもる。
「1年間頑張ってきたけど、どうかな?俺、ちゃんとやれてる?」
「笹原さん……」
彼が身を起こし、千佳の瞳を見つめる。先刻千佳が覗き込んだ時より、優しさの光は力を増したように見える。
「笹原さんは私なんかにはもったいないです」
「ありがたきお言葉」
くすりと笑う。
「もったいないって思ったら、もっときっちり使い込んでくださいね、俺のこと」
「な……そっ、できませんよそんなこと!」
笹原を押しのける。おどけながら大仰にのけぞる彼を睨みつけて、深呼吸し、笑顔で向き直る。
「すいません、パニクっちゃいました。もう大丈夫ですから、続けますね。笹原さんに聞いていて欲しいことがあるんです」
「うん」
「笹原さん、前に『逃げないことを選ぶのは、いつか自分の生き方に折り合いをつけるためだ』って言ってくれたこと、ありましたよね。私、あれでずいぶん楽になったんですよ」
つきあい始めて間もない頃、自分を変える事ができずに落ち込む千佳に彼が言った言葉だった。
「それまでは『変わらなきゃいけない』のに『変われない』自分に思考停止しちゃってて、イラついて回りの人に当たって。まあ、そのあとも大して進歩してないですけど、それはそれなりに整理をつけるのも正しいんだって思えるようになりました」
欄干に手をかけ、川に向かって伸びあがってみせる。笹原は一瞬びくりとするが、思い直したようで彼女を見守ってくれている。
「この下に、1年前の私がいるんです」
あの夜のことがよみがえる。パニックに襲われてコテージを飛び出し、めちゃくちゃに走って息を切らし、立ち止まった場所。背中から聞こえてきた足音、眼鏡をかけていない視界にぼんやりとした輪郭しか見えない人影。
****
『あれ……え?笹原さん、ですか?』
相手の正体が判った時に強まった鼓動は今思えば安堵によるものだったが、その場の主導権を握ったのは今の千佳ではなく、心を壁で防御し、暗い瞳をした当時の千佳だった。
自嘲し、再浮上した罪の意識にさいなまれ、自身がどれほど罪科にまみれた存在であるかを涙とともに吐き散らす。笹原はそんな千佳を、今のような優しい表情で見守ってくれていた。彼女が最も忌み、そうしていてなお離れがたいやおい原稿に対してさえも。
『じゃあそれ、見てみよう』
その言葉で、千佳が二人に別れた。
優しい言葉を……たどたどしく、探り探りではあったがとてもあたたかい言葉をかけてくれた笹原に、千佳は同時に思ったのだ。『笹原さんなら受け止めてくれる』と。『笹原さんでもそんなことできない』と。
笹原に心を委ねようと思った千佳は、その場で嗚咽をこらえながらそれでも笹原が傷つかない方策を探り、……笹原を拒絶した千佳は橋から身を投げたのだ。
「……私、笹原さんがショック受けるくらいなら私が自爆して現視研やめればいいって思ったんです。そのときに先走って飛び降りた『もう一人の私』が、ここにまだいるんです」
千佳の視線の先には、あのときのジャージ姿の自分がいた。小川の真ん中に立って、黙ってこちらを見上げている。
笹原も彼女の隣に来て、欄干から下を見下ろした。もちろん彼には、橋の下の幻など見えていないだろう。
「……浅いねー」
「……ええ。飛び降りなくてよかったですよ。これじゃ怪我もしないし、自爆にならないっすね、はは」
川の中に立つ千佳は、問いかけるように首をかしげた。橋の上の千佳は、うん、とうなずいた。川の中の千佳は笑いこそしなかったが、なにか満足したようにうなずき返した。
****
「いま、その橋の下の荻上さんと、なんか会話してた?ひょっとして」
笹原が千佳の顔を覗き込む。我が事ながらあまりの自己陶酔っぷりに赤くなって、千佳は笹原にもうなずいてみせた。
「えー、あの、はい。なんか、区切りをつけたほうがいいんじゃないかって思ったんです」
区切り。ピリオド。句読点。……マル。
「中三のあのときから1年前の私までが、ひと区切りなんだって思ったんです。漫画なら第なん部かの『完』。文章なら、去年の昨日で『マル』がついたんだって、少し前に考え始めて。それで、今日はここに来たいって思ったんです……笹原さんと一緒に」
下を見下ろすと、もう幻影の千佳はいなくなっていた。
「『荻上さん物語』ってワケですね、先生!自伝の構想まで練っておられたとは素晴らしい」
「茶化さないでくださいよ、もう!」
「あ……ごめんごめん、そんなつもりじゃ」
茶化すつもりでないのは解っていたが、そう言って怒ってみせる。予想通りにうろたえてくれる笹原を見て、心が軽くなるのを感じる。
「去年、『飛び降りなかった方』の私とお付き合いしてくれて、ありがとうございます。これまでも何度も迷惑かけたのに、辛抱してくれてありがとうございます」
隣で笹原は笑顔で見守ってくれている。
「こんな私ですけれど、これからもお付き合い、続けてくれますか?」
「はい。よろこんで」
笹原は千佳の肩に手を回した。千佳は頭を、彼の胸にもたせかける。顔は平静を装っているのに、早鐘のように打つ彼の鼓動が耳に響いてきた。
「俺も、荻上さんにおんなじことお願いしようと思ってたんだよ。『マル』の話も、俺もちょっと考えてた」
胸から耳を離して笹原の顔を見上げる。
「大学入って、『よしオタクやるぞ』って覚悟決めて、会長やってコミフェスもサークル参加して、就職も編集者目指そうって決心して。……現視研に……あのサークルに入ったことで、人生決めちゃったんだよね、俺」
左手の親指と人差し指をあわせ、丸を形作る。片目をつぶり、できた穴から向こうの雑木林を見通す。その手を右へ動かし、こちらを見つめる千佳の目を、丸の中心に捉えた。
「斑目さんや、高坂君や、春日部さんたちでつないできたサークルが、俺にこんなにも多くのものをくれた。で、その中で一番大きいのは、荻上さんだった」
左手を元へ戻し、千佳の肩に置いていた右手も外した。笹原の目は千佳の目を見つめたままだ。ほんの少しの距離をおいて、正面に向き直る。
「現視研に入ったから、荻上さんに出会えました。あそこで俺にたくさんフラグが立って、きみを好きになりました。サークルでいろいろ経験値を上げることができたから、きみに告白できました。まあ確かにいくつかイベントも発生したけど、俺は荻上さんの全部が好きです」
しばしの間。彼の頬が上気しているのが判る。
「なんべん頑張っても強気になりきれないヌルオタですけど、これからも俺と一緒にいてくれますか?」
この1年、彼は何回も千佳を好きだと言ってくれた。そのたびに、自分の幸せを噛みしめていた。
「(私も……)」
私も、笹原さんに幸せを感じて欲しい。私なんかの言葉で、行動で、笹原さんは嬉しいと思ってくれるだろうか。私が今から言う言葉は、笹原さんの心に届くだろうか。
「はい、よろこんで。……あの、笹原さん」
「ん?」
ひとこと目で彼の緊張がほぐれているのが見て取れた。なるべくなんでもないふうを装って、続ける。
「私も、笹原さんが、好きです」
****
「……え」
こちらを見つめる目が点になる。己の耳を疑っているのがあからさまで、笑いをこらえるのに苦労する。
「い……いま……」
「はい?」
「……好きって、言ってくれた?」
1年間、はぐらかし続けた言葉。ほんの2音節のこの単語を、『言わなくたってわかるでしょう?』と勿体をつけてきたこの呼びかけを、千佳は今日の日まで育ててきた。
当初は、『そう言えば私からは言ったことないな』程度の引っかかりだった。それが3ヶ月になり半年になり、いつしか我慢比べのようになった。
笹原が千佳に『好きだ』と言い、『俺のことはどう思ってるの?』と聞く。千佳が笹原に『どうして私なんか好きになったんですか?』と訊ね、笹原が答え、また『それで、荻上さんは……?』と問い返す。感情が高ぶって、自分から言ってしまいそうになったこともある。
千佳はそれを口に出さない。ありったけのボディランゲージで、熱のこもった視線で、おぼつかない指で精一杯応えはするが、その言葉だけは自分の内にしまったままで今日まで来た。
それだけ、千佳にとって大事な言葉だった。
かつてのボーイフレンドにも言うことのなかった、生まれて初めて異性に告げる愛だった。
「あれ?聞こえなかったんですか?」
「いっいや、聞こえたんだけど……」
からかい気味の千佳の言葉に、彼の顔が再び赤くなる。
「聞こえたんだけど、ね……っ」
声が震え……、瞳の光がふいに揺らいだ。
「え……え、笹原さんっ?」
「え、あ、いや」
ぐすりと鼻を鳴らし、片手で目をこする。
「いやその……はっ、初めてだよね?言ってくれたの」
「……はい」
「えーと……嬉しくって、さ。はは、泣いてしまいました」
恥ずかしそうに、幸せそうに、千佳を見つめる笑顔。慌てるあまり思わず駆け寄ってしまった両手のやり場に困り、こぶしを握る。
「もう……バカですね、大の男がこんなことで泣くなんて」
「スイマセン」
「そんなだからいつまでも強気攻めが身につかないんです」
「スイマセン」
「こんなときはむしろ、私の方が泣いちゃってそれを慰めるくらいじゃないとダメなんですよ」
「スイマセン」
「ほらまたぁ!」
「え?うわ」
千佳は笹原の胴を抱き締めた。恐縮の極みの笹原が見下ろすと、千佳が……怒りながら、笑いながら、泣いていた。
「……スイマセン、ほんとに」
ぎゅっと抱き返し、頭をなでる。
「笹原さん、私、笹原さんにお見せしたいものがあるんです。家に置いてあるんですけど」
彼の胸に顔をうずめたまま、千佳は言った。
「あとで帰ったら、見ていただけますか?」
「……もちろん」
****
その晩。二人が千佳の部屋に帰りついたのは7時前だった。笹原が用意していた切符はもっと遅い時刻のものだったが、二人で考えて時間を変更して帰ってきたのだ。
「おー。余裕持って帰るって贅沢でいいねー。なんかもうひと遊びできそうな感じで」
玄関先に荷物を置き、千佳に続いて笹原が部屋へ上がる。
「なんか、ちょっともったいなかったですかね」
「そんなことないさ。あそこでしたかったことは大体してきたんだし」
「……大体?」
「ん……ほら、これからのことまでで1セットだったんでしょ?荻上さん」
「ええ、まあ確かに」
笹原をいつものようにソファに座らせ、キッチンからグラスに麦茶を入れて持って行く。
「とりあえずは、お疲れ様」
「はい」
笑みを交わし、グラスのふちを合わせる。秋の日差しで温まっていた部屋の空気が、エアコンに徐々に冷やされていく。
「……で」
千佳は机の脇のシェルフに置いた封筒を、両手で持ち上げて笹原に見せる。
「これが、例のものなんですが」
「あっはい……って、これ、原稿?」
1年前との相似形。だが、部屋に流れる雰囲気も、千佳の表情も以前とは違う。
「ええ、漫画……なんです。笹原さんに読んで欲しくて描いたんです」
これまでにも千佳から、完成した漫画を見せられたことはある。そんなときには笹原はいつも、創作者に対する敬意と、恋人に対する愛情をもって作品を読んできた。だが、どうも今回は様子が違う。
「……カップリングは?久しぶりに『笹×斑』が描き溜まったのかな?」
「違いますよ!」
前フリのつもりで言ってみたが、案の定そういうものではないらしい。少し機嫌を損ねてしまったようだ。
「あ、ごめんごめん、ちょっと前のこと思い出しちゃってさ……」
「あえて」
笹原の言葉を遮り、千佳が言った。
「あえて言うなら……『笹×荻』です」
「……えっ」
「もういいですから、早く読んでください!……私、ここで待ってますから」
耳まで赤くし、こちらと目も合わせられない様子の千佳を見て、これが特別な原稿だと解った。
「……うん、わかった。じゃ、早速読ませてもらうね」
「はい」
笹原は封筒から紙束を取り出した。
****
漫画は、少女を主人公としたファンタジーものの冒険譚だった。
不用意な言動が元で魔女に親友を殺され、それが原因で他人とかかわり合うこともできなくなった少女が、あるとき立ち寄った宿屋で出会う人々によって次第に心を開いてゆくストーリー。
超然とした皮肉屋だが状況分析力に優れた男性、少々乱暴だが面倒見のよい姐御肌の少女、おおらかな心と知略に富む策謀家の両面を持つ女性、その恋人で手先が器用な優しい目をした青年などが、彼女の凍った心を少しずつ溶かしてゆく。
そして、少女のすぐそばでずっと彼女を守ってくれる少年。ある時は彼女の堅牢な盾となり、ある時は温かく彼女を包み、ある時は力強く彼女を導く指標となる。少女はやがて、少年に強く惹かれてゆく。
後半、魔女とたびたび出会い対決を強いられるが、少年は主人公の少女を助けて戦ったりしない。ともに立ち向かい、守り、知恵を与えて少女に助力するが、彼が武器をとって魔女と対決することはなかった。その理由はクライマックスへの行程で明かされた。
魔女の正体は少女自身であり、それを知った少年は魔女を倒すのではなく、魔女と少女の和解の道を探っていたのだ。
最後の戦いのさなか、少年は言う。
『ぼくはきみの全部が好きだよ。きみの姿も心も、簡単に落ち込むところも。木や花に話しかける癖も、すぐ怒るくせにすぐ泣くところも、全部まとめてきみなんだから』
完成度の高い下書き原稿の見開きページで、少年は言葉を少女と、魔女にも向けていた。戦いの構図は少年と少女が魔女に立ち向かうのではなく、いつの間にか少年が少女と魔女に対峙する形になっているのがこのページで明らかになる。
『だってわたしは……大切な友達を』
彼女は言う。言葉を発したのが少女なのか魔女なのか、定かではない。
『失敗は戻らないよ。でも、だからきみが一生それに引きずられなきゃならないっていうのは間違ってる』
それまでの優しい描写とは一線を画した、毅然とした表情の少年。
『きみは傷つかなきゃならないんじゃない。きみが傷つけた人たちのためにも、きみは、幸せにならなきゃならないんだ』
****
笹原はいつしか、この物語に引き込まれていた。事前に言われなくても、初めの数ページでこれが千佳の物語だと気づいたろう。登場人物は姿も行動も現視研メンバーであると丸わかりだし、少年の顔は1年前に見た『千佳の描く笹原』そのままだった。
いつもの絵より頭身を低く、描線を減らしたキャラクターは読み進むスピード感を考えたためだろうか。あるいは、彼女自身のトラウマという重いテーマで笹原までが気持ちを沈めさせないよう配慮したのかもしれない。
ストーリーの密度と絵柄の受け入れやすさのバランスは、作品に高い完成度を与えていた。千佳がこれまでに描き上げた作品のどれよりも、笹原は夢中になっていた。
最後の戦いは……過去の傷と、その傷に引きずられ続ける心と、それら全てを包もうとする意志とのせめぎあいは続く。
『わたしがどんなに謝っても、たとえわたしが自ら命を絶っても、きっとあの人は私を許さない』
少女/魔女は言う。作画上でも二人はもう描き分けられていない。
『きみを許そうとしていないのはその友達じゃなくて、きみ自身だよ』
少年は言い返す。
『きみがきみのことを許せないんなら、ぼくがきみを許してあげるよ。きみが友達にしたことを、ぼくにもしておくれ。ぼくはきみが大好きだよ。ぼくがきみの全てを支えてあげる。さあ!』
少女/魔女が悲鳴を上げる。涙を流す。全身で拒絶し、震え、そしてそれでもその手には、かつて友人を死なせた魔法の光が輝き始める。
『いやよ……わたしは、あなたを……』
少女/魔女は手のひらを自分に向けた。魔法の光を自分に放とうというのか。
しかし少年は、次のコマでその手を、再び彼に向き直らせた。にっこりと少女に笑いかける。
『安心して。ぼくはきみが大好きだよ』
見開きの白いページ……爆発。
そして……。
そして、笹原は原稿を読み終え、千佳のほうを振り向いた。
****
「あの、読み終わりました」
「……はい」
じっと机の上を凝視していた千佳が、たっぷり数秒の間をおいて振り返った。まだ視線を、笹原に合わせられないようだ。
「それで……どうですか?」
「どう……って言われても……」
どう言葉を紡いだものか、躊躇する。これがなになのか、そもそも説明されていない。「上手だ」と言って欲しくて描いたわけでは当然あるまい。
「……これは」
目をそらしたままの千佳が口を開いた。さすがに説明不足だと気付いたのだろう。
「これは、私の心の中です。形になった私の心です」
「……うん」
「笹原さんのこと好きになって、笹原さんに好きって言われて、笹原さんとお付き合いできるようになって、私は一体なんなんだろうって思うようになりました。自分勝手な妄想で人ひとり不登校にして、自分はといえば自殺未遂なんかしてみて不幸背負ったみたいになって」
笹原が身構えたのに気付いたようで、慌てて手を振る。
「……あ、大丈夫です、落ち着いてます落ち着いてます。それでも自分の趣味捨てられなくって、高校の時は完璧な隠れオタ演じて。地元から離れたら性格変えられるかなって思って東京の大学受けて……でも変われなくって」
視線をひざに落としたまま、ひとつ息をつく。
「笹原さんは去年、私の全部を見ても好きだって言ってくれました。現視研のみんなは、私が問題児だって解っても引かないで相手してくれました。むしろ大野先輩なんか食いついてきて困ったくらいです」
「あはは。大野さんも日本に戻って来るまで、いろいろ思うところがあったみたいだからね」
「そんな……私が、たくさんお世話になった人たちを、私に出来ることで形にしたいって、思って」
千佳の心が決まったようだ。視線をゆっくりと上げ、すこしためらった後、笹原の目を見つめた。
「そうしたら、こんな話の展開が浮かんだんです。さすがにリアルなキャラや実名で描くのはムリだったんで、ファンタジーものにしたら都合もいいかなって考えたら、あとはどんどんキャラクターが……私が、動いてくれました」
「うん。俺も、読んでて引き込まれた」
「『どうですか』っていうのは、おかしかったですね。質問するようなもんじゃないんですから。……笹原さんのおかげで、私はこの漫画を描くことができました。この、マルがつくところまでの物語を。この漫画は、私が、私のやり方で、笹原さんに伝えたかった、私の心です」
一言ひとことを噛み締めながら言う。
その様子に、笹原はたまらなくなる。どうしてこの人は、いつもこうなのだろう。もっと楽な生き方も、もっと簡単な表現方法も、彼女なら容易に編み出せるはずだ。それを、なぜこの人は。
「荻上さん」
ソファから立ち上がり、呼びかけた。言いたいことを言いきった安堵と、自分の行動に対するいぶかしさが同居する表情。
なぜこの人は、わざわざ回りくどい道を生きるのだろう。どうして手間のかかる方の選択肢を選ぶのだろう。……いや、答えは出てる。
オタクだからだ。彼女も、俺も。
以前、妹に説明したことがある。オタクは、なろうと思ってなるもんじゃない。気付いたら、なってしまっているものなのだと。もっとも妹には理解できなかったようだけど。
俺たちはこういう生き方しかできない。こういう自己表現しかできない。逆に言えば、彼女のこの作品は、それだからこそ彼女の真実なのだ。彼女が……俺の大切な人が、彼女自身にできる最大の方法で、俺に心を告げてくれたのだ。
俺はこの人に、なにかができるだろうか。俺の行動は、彼女の力になるだろうか。俺が今から伝えることは、彼女の心に届くだろうか。それともあえなく拒絶され、全てが壊れてしまうのだろうか。
「……笹原さん?」
立ち上がったまま何も言わなかったため、千佳は不思議そうな顔をして笹原に呼びかけた。
笹原は優しく微笑むと、かがみこんで千佳に目線を合わせた。
「荻上さん、俺がこれから言うこと、落ち着いて聞いて欲しい」
「……?はい」
当惑気味の表情ででこちらを見返す。
「荻上さん。……本気でプロの漫画家、目指してみない?」
****
「え……」
千佳の目が大きく見開かれ……これまでの会話を思い返しているのが判る。
「昼間の話。俺、会社の先輩に持ち込み先紹介してもらうよ。アシスタントやって現場経験積むのもいいって聞いてるし」
「え、で、でも……そうじゃなくて……」
どこでこういう話のきっかけになったのか、戸惑いながら探っている。
「わ……私、そんな……そんなつもりでこの漫画……」
「解ってる。この漫画のことじゃないよ。荻上さん、落ち着いて、聞いて?」
ひょっとしたら今の俺は、恋人のプライベートを食い物にして……恋人の心を描いた作品を切り売りして金儲けをたくらんでいるヤツに見えているかもしれない。混乱で泣きそうになっている彼女の頬を、両手で包み込む。そっとキスする。
「ん……っ」
千佳がまばたきをし、その拍子に涙がこぼれる。笹原を拒む様子こそないが、動揺がピークに達しているのが判った。
「聞いて、荻上さん。俺は、やっぱりきみにプロの漫画家になって欲しい」
唇を離し、言う。両手は顔を包んだまま額と額をくっつける。自分の考えていることが、頭蓋を通してそのまま千佳に伝わればいいと思った。
「これ、いままでは俺の単なる希望だった。きみがきみの人生をどんなふうに生きたって、俺はそれを支えていきたいし、それでいいと思ってた。プロはあくまで選択肢の一で、たとえばOLやりながら趣味で描き続けたっていいって考えてた」
千佳の目をしっかりと見つめる。彼女が目を逸らせないように。俺の心が、ちゃんと伝わるように。
「でも今、きみの漫画を読んで、違うって思った。俺は、荻上さんが漫画家になるのを見たい。今の俺みたいに、きみの漫画に勇気を分けてもらえる人を、たくさん作りたい」
****
「勇……気」
ようやく一言、千佳が返した。
「うん。俺が今、きみの漫画から貰ったものだよ」
伝われ。そう思いながら、にっこりと笑いかける。きみに勇気づけられた俺の心、きみに、伝われ。
「『100年に一度の天才だ』とか、そんなそれこそ漫画みたいなことを言うつもりはないし、俺にもそんなことはわからない。だけど、まだ仕事始めて半年の新米編集者でも、荻上さんに才能があることはわかるんだ」
両手を頬から首へ伝わらせ、肩を支える。
「実を言うと、もっと前から感じてた。でも、それを言っちゃうと荻上さんの負担になるんじゃないかって思って、口に出さないでいた。……だけど」
千佳の目の焦点が、徐々に戻ってくる。笹原の全身全霊の言葉を、心かき乱されながらもなんとか踏みとどまって聞いている。
「それは間違いだって、いま思ったんだ。俺は、荻上さんにプロになって欲しい。そのために俺ができることはたくさんあると思う」
千佳の視線が再び笹原を捉える。笹原は両手を彼女の手に重ね、包み込んだ。
「これを言う覚悟を決められたのは、荻上さん、きみの漫画を読んだからだよ。あの漫画の中で……荻上さんの心の中で、俺はきみを見事に支えてみせたじゃない。現実の俺だって、それに負けてなんかいられないよ」
重ねられ、裏返しにテーブルの上に置かれた原稿の束。笹原はその、最後のページをめくってみせる。少女/魔女と少年が全て巻き込まれた、真っ白な爆発の少しあとのシーン。
宿屋のベッドで少女が目覚める。宿のみんながほっとした表情で彼女の回復を喜ぶ。ベッドの少女の横には、同じく今しがた目覚めた少年。
そのさらに隣に、やはりたった今意識を取り戻した魔女の顔。少年を挟んで顔を見合わせる少女と魔女に、彼は心から嬉しそうに語りかけるのだ。
『二人とも無事でよかった。ぼくは、やっぱりきみが大好きなんだ。だってどっちのきみも、きみ自身なんだから』
「荻上さん、俺はきみが大好きだよ。だから、安心して、きみの望む道を進んで欲しいんだ。俺が荻上さんを支えるよ」
「笹……原さん……手、痛いです」
いつの間にか握っていた手に、余計に力が入ってしまったようだ。
「あ……ご、ごめん」
慌てて千佳の手を離す。
「ごめん。なんか俺……アツすぎた?ひょっとして」
青春ドラマじゃあるまいし。ふいに途切れた緊張感の狭間で、笹原は今の自分を恥じた。だめだ、途中から独りよがりになってしまった。俺の言いたいことは伝わったと思うけど……これじゃ、ただの自分勝手ヤローだ。
「あの……」
「あ、荻上さん、ごめん。ちょっと慌て過ぎた、かも」
千佳はこちらを見つめている。
「荻上……さん?」
「あの。ちょっとだけ、考える時間、もらってもいいですか?」
「あ……うん」
「笹原さんにそんなこと言ってもらって、嬉しかったです。私も、プロ目指すことは昔から考えてました」
床を見つめ、ぽつりぽつりと話し出す。
「子供の頃から漫画描いてて、これをお仕事にできたらいいな、って、ずっと考えてました。特に、自分にはこれしかないって思うようになってからは、なおさら。だけど、……昼間もちょっと言いましたけど、いろいろ不安なことがあるんで、踏ん切りがつかないでいたんです」
テーブルの上の、最後のページが開かれた原稿に目をやる。
「この漫画……『そんなつもりじゃない』って言いかけましたけど、ウソです。私、この原稿描いてて、笹原さんだけじゃなく、もっといろんな人に見てもらいたいって心の奥で感じたんです」
笹原の顔を上目づかいでちらりと見る。心が定まらないようで、またすぐ目をそらす。
「いま笹原さんに言われて私、やっぱりプロになりたいって思いました。そのために笹原さんは支えてくれるって言ってくれましたけど、あの、……あの」
視線をあちこちに泳がせながら、口を開いたり閉じたりする。言いたいことがあっても、うまく言葉にできないでいるのだろう。
「……あの。テンパったときの私、けっこう厄介ですよ?」
さぐるように言葉にする。あ、そうか、と思い、笹原は答えた。強気、強気。
「うん、平気だよ」
「……落ち込んでる時なんか、モノに当たったりしますし」
「後片付けなら心配しないで」
「いたたまれなくなると、また飛び降りたくなるかも」
「荻上さんが窓にたどり着く前に、きみのことを捕まえるさ」
「あんまり先回りされたら、笹原さんにキライって言っちゃうかもしれません」
「う、ソレちょっとこたえるかも」
「すいません」
「でも大丈夫だよ。俺が、荻上さんのことを好きでいるから」
「んー、ありがとうございます。でも、……んー、でも……」
「うん?」
まだしばらくきょろきょろとするが、やがて目を閉じ、ひとつ息をついた。
「ふう」
目を上げ、笹原を見つめる。
「……荻上さん?」
にこり。
今までの混乱が消え去った、からりと晴れた秋空のような笑顔。
「笹原さん、私、言うことなくなっちゃいました」
昼間、高原の町で二人見上げた、雲ひとつない丸い青空のような。
「私……持ち込み、やってみてもいいですか?あと、漫画賞の応募とか」
「うん」
その空に引き込まれるように、笹原も笑った。
「うん。俺、応援するよ」
「はい、ありがとうございます。わたし、頑張りますね」
****
前回のマルから1年。どうかな、俺は彼女の物語に、新しいひと区切りをつけてやれたろうか。
正直、不安材料は多い。俺ごときの人間が、荻上さんを支えるなんて偉そうなことを言い放っていいものだろうか。彼女にもっとふさわしい人物が現れたら。男前で、才能があって、金持ちで、……いやいや、ナニ言ってんだ、俺は。
今日のこの日を決めるのに、もう覚悟はし尽くした。前フリも下準備も重ねた。あとは俺の強気が勝負の分かれ目なのだ。
さっき荻上さんの漫画にも、あれほど勇気をかき立てられた。あと、もう一歩。
もう一歩だけ頑張れ、強気の俺。
「……荻上さん」
ゆっくりかがんで、目線を彼女に合わせる。気づかれないようにズボンのポケットに手を入れる。両手を取って、至近距離で笑いかける。
「えっ?……え……あ、……」
千佳は目を閉じ、笹原はその口に自分の唇を合わせた。
いつもより少し長いキス。その間に指の位置を確認し、手の中に隠していたそれを……もうひとつの『マル』を。
……指輪を、一気に押し込んだ。
「んっ!え、なんですか?」
千佳が身を引き、何が起きたのか自分の手を見つめる。もう少しキスしていたかったが、仕方がない。
「え、ええ?これ、どうしたんですか?笹原さん」
「1周年記念のプレゼント。荻上さん、1年間ありがとう。これからもよろしく」
「え、だってサイズとか……あ、恵子さん?先週急に部室来て……」
「うん、あいつ使って聞き出させた。指輪より高くついたけどね、あはは」
自分の手を見つめて目を白黒させる千佳に、重ねて告げる。
「荻上さん、俺、荻上さんのことが好きだよ。1年間一緒に過ごしてみて、もっともっと好きになってる。もしきみがかまわないなら、俺はずっと君のそばにいたい。……どうかな、いいかい?」
千佳の目は指輪の石に注がれている。誕生石のアクアマリン。淡いブルーの光が彼女に瞳に反射している。
「……え、それって……これって」
「うーん……どうなんでしょ」
エンゲージリング。同時に頭の中に浮かんだ代名詞で、互いに照れてしまう。
「いやその……もっとちゃんとしたの、プレゼントするよ、いつか。だからそれは、それまでの整理券みたいなもんってことで」
「……です」
「え?」
「いらないです。いりません」
「え……」
「そのかわり……あの、お正月に成人式で帰ったとき、家族に笹原さんのこと話したって言いましたよね?」
「え?あ、うん」
「両親が今度の連休に、東京に出てくるんです。商工会議所の旅行会だとかで」
「はい?」
「そのときの自由時間に、ぜひ笹原さんと会いたいと……その……父が言ってるんですよね」
ちら、と笹原を見上げる。
「一緒に食事でも、って」
うひゃあ。
「ええ〜。この流れの直後にそんな話持ってきますか、荻上さん?」
さっきまでとは違う汗が、額をつたう。
「……連絡もらったの、おとといだったんです。早く聞かなきゃって思ったんですけど、タイミングがつかめなくて。あ、でも弟も来ますよ、フォローは期待できますし」
「へえ、卒業式んとき以来……って待てよ、つまり家族全員と面談?」
「あ、そか……そう……なりますね」
「……は、はは」
千佳が、こちらを見つめている。ちょっと頬を赤らめて、まあるい瞳で、期待を込めて。
「……ダメですか?」
笹原はごくりと息を飲み、
……右手でマルを作ってみせた。
おわり。
地球温暖化1周年記念SSでございますw 他のSS師の皆さんもこの辺狙いでなんか書いてると思うんだが、どうなんだろう。
プロポーズの話に見えますが、主題はオギーのプロ決意。俺の脳内では彼女は就職せずに漫画家になる(同様に考えてる人多かろう)ので、そのきっかけを話にしてみました。
文中でオギーが自己陶酔とか書いたが、言うまでもなく陶酔してるのは俺でしたorz
イイワケ書き始めたら本文と同じくらいの長さになりそうなのでやめとくw
あっでもひとつだけ。描写主体を前半オギー後半笹原と切り替えたので読みづらかったら俺のテク不足。すんません。
くどい長文にお付き合いいただきありがとうございました。
>>241-242がそれぞれ別のSSだということが、10回読んでようやく理解できました。こないだのダラさんネタの人?
>>241 スレ違いどころか板違いだw 俺もギリギリアウトの投下したことあるけど(感想いっこしか来ませんでした)、やはり性行為を描写しちゃうならエロパロ板だろう。
なお、お話としては実は楽しめたw エロSSというよりは男性向け同人誌の1P漫画みたいだ。
>>242 げんしけん部室が藪ニャーに占拠されてるってわけか。しかも荻藪はまだ『せめぎ合い』中?
居場所を失った斑目、かわいそ過ぎ(´・ω・)
だが頼む!もうちょっと状況を描写してくれ。と地の文が過剰気味の俺からオネダリ。
>>241>>242 多分この人って、パッと思い付いたことを一気にスレに書き込んで送っちゃう、瞬発力型の書き手さんなんだと思う。
だから作品の浮き沈みが激しい。
まあこういうタイプの人も貴重だから、思い付くままにドンドン書いて欲しい。
でもとりあえず1回ワードで書いて、1回でいいから推敲した方がいいと思うよ。
特に5W1Hが分かりにくいようなら書き足した方がいい。
まあそうするとこの人の場合、パッと閃いた1場面をちぎって取り出したような手法を殺すことになるかもしれないから、諸刃の剣ではあるけど。
あと簡単なのでいいからタイトルつけようね。
>マル。
マルと言えば某地球防衛組織の偉いさんの秘書の人を思い出しがちな今日この頃、朝から投下ご苦労様です。
リアルタイムで言えばちょうど合宿初日から1年の今日、この話を投下したタイミングにまずGJ!
(注、原作では、荻上さんが合宿最終日に笹原に送ったメールの日付が9月11日)
商業主義のひずみについて愚痴ってた漫画家先生…もしやその人は普段着物着てたり、太宰ストだったり、ネガティブ思考だったりしませんか?
アシスタントの人が、出会い系サイトや風俗にハマってませんか?
もしそうなら、大変だな笹原。
(でもあの先生嫁さんいたかな?)
まあそれはさておき、丁寧ですなあ笹荻描写が。
まあ地の文も細かいし、こちらは徹底的に作り込んで推敲を繰り返す、持久力型の書き手さんですな。
荻上さんが克服しなければならないのは、トラウマになった事件そのものや、それを起こした連中ではなく、実は自分自身という考え方、意外とありそうで無かった気がします。
そして克服と言っても相手も自分自身だから、戦うとか倒すとか言うのではなく、許して受け入れて再融合する、そういうニュアンスがいいなと思いました。
こういう「その後の笹荻」みたいな話、9巻にもあったらいいなと思います。
長文乙
>マル。
面白かったです。
一気に読めてしまいました。作者氏の技量に兜を脱いでしまう元SS書きでございます。
・・・笹×荻の漫画を他の現視研メンバーが読んだときの反応なんかも見てみたい気が。
275 :
マル。の人:2006/09/09(土) 13:48:17 ID:???
>>272 素早い上に大部の感想ありがとう!俺は書くのも読むのも大好きなので(厚顔にも自作品でも楽しめる)、ご明察のとおり『読んじゃ直し読んじゃ直し』タイプでよかったとつくづく思う。でもさっき読み直したら送り仮名がひとつ脱字してたorz
タイミングのことも褒めていただき嬉しい。9月12日に投下したいところだったが、さすがにド平日は無理だろうと前倒し投下。
>もしやその人は普段着物着てたり、太宰ストだったり(ry
誰だw っつうかリアルでいたんすかそんな作家w 作中の人物は創作キャラだったが、和服で太宰ストは実は想定しながら書いておりました。
>>273 簡潔明瞭な感想ありがとう!今度は短めのヤツも考えるよ!
>>274 いやいやその兜はかぶってかぶって。スレも活性化してることだし元とか言わずになんか書いてください。
>メンバーが読んだときの反応
予想してみる。
大「ひどおい!わたし二重人格扱いですかぁ?」
田「まあまあ大野さん、それだけ貢献したってことじゃない」
春「そうそう、いーじゃんかホントのことだし。あたしなんか常にピコピコハンマー持たされてるんだぞ」
斑「(……俺はここでも片思いキャラなのか……)……あれ、どうしたの朽木君?」
朽「……セッシャだけ悪役でゴザル……」
ちなみに俺的にはコーサカが出演してるかが不安w
>>空気嫁クッチー
確かにクッチーの口調は悩みますよね…。僕も3・4回に1回ぐらい「にょ」使ってるかも。
それはそれとして、面白く読めました!クッチーが解決できんだろうと思いつつ
そして意外性のある超能力(漫画力?)という設定。是非また書いてください。
>>241>>242 すごい勢い…脳内の妄想の切片みたいですね。
もうちょっと落ち着いて書いて欲しいけど、どうなんでしょう(苦笑)。
>>マル。
そして、本当に笹荻SSが完結してもいいんじゃないってぐらい、まさにタイトル通り!
こんな完成度の高い力作が読めて…ありがとうございました。
僕も思わず兜を脱いで戦役引退しそうになりましたがw まだ頑張りますー
今日やっと8巻買ってきた!
コレでこのスレ読める!!
絶対ネタバレあるだろうから自粛してたんだ、辛かった…。
>>マル。
おわああ…めちゃいい。GJ。
1年前においてきた自分、というのが、ものすごくドラマ性を感じさせて、読んでてぞくぞくっときた。いい意味で。
荻上さんの漫画。プロット読んだだけでこれだけ面白いんだ!漫画になったらきっとものすごい!!
…と思った。プロットというよりSSの1部だけど。
げんしけんのファンタジーSS、という形で、いっそ作者さまが書いてみてくれんだろうか。この流れで。すごく読みたい。
>3つのマル
荻上さんの決意、ササヤンの決意。はっきりとした区切り。
こういうのがあったら、荻上さんももう、迷わずに進んでいけますね!!!
自分も荻上さんをSSで救おうとしたことがあるけんど、このSSには適わない。
279 :
マル。の人:2006/09/11(月) 18:12:28 ID:???
_○/\_ 平身低頭〜。
過分なるお褒めにあずかり光栄の極み。ハッホメゴロシ!?
俺は基本的に全ての反応をプラスに解釈する人間なので、こういったレスをいただくととても力になります。
調子に乗ってるときの俺は強いぞ。なにしろスベっても痛くない(つかスベることはスベるんだよな)。
>>276 ハヤマルナ>あわや引退
俺の思う『本当にいい創作』は、「ああ良かった、もう満足だ」ではなく「ああ良かった、俺も書きたい」と思わせるものなのです。特にココみたいな二次創作の場ではなおさら。別に2chでエラソーなこと言うつもりではなくて、俺が読みたいのですみんなのげんしけんSSを!
このスレにも何人かニューカマーがいるようで(コテの人、冗談ぬきで注目してるよ)とっても嬉しい。
そして実績あるあなた方には(いやまあ匿名掲示板なんで誰なのか判らんけどね)、より楽しい作品を心の底からぎみぎみぷりーず。8巻発売以来関連各スレに藪中毒の人が散見されるので、腐女子まんが道シリーズでも始まったら楽しいなあ。
>>278 荻上さんの救い方は人それぞれ。俺はこういう方向で「笹原に彼女を支えていって欲しい」と思ったので、それが形になったわけです。
あなたの作品がどれか明かす必要はないが、まとめサイトで拝見する限りどのSSもそれぞれの方法でオギーは幸せになってると思う。俺に言わせりゃ『サマー・エンド』も『笹荻BADEND』も、それぞれ作者氏が彼女を「作者氏なりの形で」救ったのだと思うよ。
なおプロットが面白いのに超駄作になった作品なんか星の数だようorz
せっかくリク頂いたので考えてはみるが、約束はできません申し訳ない。特にプロットで結末まで書いてしまってるので、どうなんだか。
むしろ俺が読みたいくらいですw
ちなみに荻漫画の元ネタは『棺担ぎのクロ。』+『マンションズアンドドラゴンズ』です。クロは絵板で『棺担ぎのオギー』ってネタがあって買ってみたらハマった。あれ描いた人ありがとう。あなたには力を貰ってばっかりだ。
>>277 長らくの辛抱乙。
あなたがうらやましい。今から20作品近くの「新作が」読めるのだから。いや本気でうらやましい。
>>275 >ちなみに俺的にはコーサカが出演してるかが不安w
高坂=魔王
ラスボスでしょうか…?
やべぇ。だとしたら勝てない。
いろいろご意見ありがとうございました。
>>235 俺の話長いから、電話代余分に使わせてしまいましたな、申し訳ない。
>>236 知ったな!私が(多分)このスレで最年長だと知ったな!うわああああああ(泣きながら走り去る)
それはさておき、正解でしたね斑目の心の葛藤で1レス使って。
実は単純に行数でレスを区切ると、葛藤の半ばぐらいで切れる行数でした。
でもまるまる1レス斑目にあげた方がいいと判断し、あえてひとつ前のレスを行数少な目にしました。
>>238>>239>>243>>276 難しい問題ですにょー…
冗談はさておき、今回の話は読み直してみて、俺自身もちょっと「にょー」入れ過ぎかなと思いました。
ちなみに以前の作品では、短い台詞やマジな台詞では意識的に「にょー」を避けたりしていました。
(例えば「はぐれクッチー純情派」では、刑事としてのクッチーは基本的に普通の喋り方しています)
でも今回は、むしろ意図的にやや過剰気味に「にょー」残しました。
今回のクッチーは、ほぼ全編パニクり、それを克服しようと葛藤し続けます。
彼は「にょー」を意識して言っているので、これが出ることはある意味冷静さを保っている、あるいは冷静になろうと努めている状態なのです。
映画の中でシリアスな場面でジョーク飛ばしてるアメリカ人、あれと似たようなものと思って頂けると幸いです。
まあとは言え、最近「にょー」を便利な記号として乱用していることもまた事実です。
以後自重します。
282 :
だらびぃ:2006/09/12(火) 13:09:49 ID:wL0Uf/P0
『僕が咲ちゃんをエロゲのモデルにすることを辞めるなんてことありえないから』
咲 「そ、そんな〜コーサカ酷いわよ」
高坂「うんでも社長がやれって。彼女いるのお前だけなんだからって」
咲 「ど、どんな社長よソレ」
初代「ボクだよ」
咲 「か、会長!」
初代「うんデータは揃ったんだけどいかんせん時代の流れは速くてね
生のデータが欲しいんだ」
高坂「今度荻上さんと部室で絡んで欲しいんだ咲ちゃんには」
初代「カメラは彼に持っていかせるから」
原口「う〜ん時代はツンデレキャラの初めてのレズビアン。これは弱者のリビドー
を書き立てるね。実写のほうでも春日部さんいけるからそのテープの処遇についても
任せてよ」
咲 「・・・・・・・う、うわーーーーーー」
高坂「あっ待ってよ咲ちゃん」
ドン
ダラ「うわっ・・・って春日部さん(うっ泣いてる)ど・・どーした」
咲 「アタシ、あたし・・・・・もうアンタくらいしか頼れる人うわああああ」
ダラ「(たっ頼られている。頼られているだとおおお ぬおおおおおこの俺が
ジオン帝国開国以来の椿事ではないかあああああ。待ってろリリーナ!)」
春日部「で?話って何よ。こんなとこに呼び出して」
ダラ 「はうあ!(イカンイカンイカンあまりの緊張で妄想してしまった)」
>>201に続く
>>280 対決の構図が浮かんでしまったよ。しかもオギー勝ち目ねえw まずいっスよ魔王は。
むしろアレかね、完全無欠の王子様とでもしてみっかな(考えてみると言った手前ホントに考えてみてはいる)。お忍びで街に来たところ咲ちゃんが惚れるとか。
>>281 俺もひそかに「トシヨリ勝負なら負けねーよ!」と言ってみるテスト。
まあ本スレで雰囲気悪くなったことを考えるとただ何歳とか言ってもつまらないので、今度は俺もトシが知れるようなSS書いてみますかね。
どーします?SS師がこぞって「コマネチ!」とか「三人娘が」とか「力道山の空手チョップが」(さすがにねーか)とかネタになってる話ばっか書いてきたら。
>>282 よしよし、いいぞいいぞw けっこうフツーに笑ってしまった。
SS師に必要なスキルとして
1.オチなりクライマックスなりの場面を創り出すイメージ想起力
2.イキオイ
3.導入部分とクライマックスをつなぐ構成力
4.会話や描写で文章を読ませる表現力
5.イキオイ
の五つがあるんだが、あなたにはほとんど揃っているようだ。
正直あいかわらずエロ同人みたいな話だが、コーサカの会社の社長が実は初代なんざツカミとしては面白いアイデアだ。
それに『贅沢にもハラグーロまで出す』『実は斑目妄想オチ』『しかも
>>201につながる』などベーシックながら効果的なテクニックがうまく織り込まれている。ただし乱用は禁物な。
個性的な短編書きとして見ればちょっとイイ。状況を説明する手法を磨くか、ぱっと見ですぐ判るシーンをチョイスすることをお勧めする。若干(若干?)褒めすぎなのは否定しませんw
なんか知らんうちに文章もこなれてきてるし、いつか
>>201の続き書いてくれないか?気になってしょうがないんだw
えーと、某絵チャットでの会話と、絵師の方のイラストにインスパイア
されて、妄想全開で書いてみました。9レスになります。
ここは関東の地方にある多摩県。夏休み終盤の頃、県の総合体育館に
体格の良い高校生がぞろぞろと集まってきていた。
地域の高校の柔道部が、合同練習を始めようとしている。
会場の観客席の一陣を確保して、柔道着に着替えている一団が居た。
背中のゼッケンによると、現士高校の柔道部のようだ。
部員数は6人、体格のいいのは二人だけであとは細身であり、部員も
かなり少数で5人の団体戦もギリギリのようだ。
一人だけ柔道着に着替えずに、カッターシャツに腕を吊っている者が居る。
その中でキャプテンは意外なことに細身の斑目、3年生だ。
他に3年生には超重量級で昔ながらの柔道体型である久我山と、
がっしりした中量級の田中が居るので、知らない者が華奢な斑目を
キャプテンと思う事は無いだろう。
ついでに2年生はと見ると、金髪で身のこなしが軽そうな笑顔の高坂と
意外とがっしりしているが背は高くない地味な笹原が居る。
笹原は右腕を怪我しているので、暑い中、見学だけの為に来たようだ。
1年生は長身の朽木一人である。さっきから挙動不審で落ち着きが無い。
そこへ同じ学校の女子部員たちも着替えてやってきた。
着替えている選手が3人、マネージャーが1人。
「斑目キャプテン、女子部のほうは揃ったので会場へ降りますけど
監督は今日も見つからないんですか?」
2年生の大野が斑目に話しかける。3年生は居ない。
大野は腰まである長い髪を丸くまとめているので頭が大きくなっている。
「ああ、大野さん。監督は居ないと思ったら居るし、居ると思ったら
居ないからなぁ。皆も見つけたら俺にいってくれい。」
斑目は、2階観客席から下に広がる畳の柔道会場を指差しながら説明し始める。
「じゃあ女子は女子の会場が向かってあっちの2面で、あとの
4面が男子だから。午前は主に補強と各種打ち込み、午後は
2時から5時まで寝技と立ち技の乱取りっていうか基立ちらしい。」
部員たちの顔がうんざり気味…憂鬱になってきた。
「2年生以上は去年もやったから覚えてると思うが、10分×10で
死にそうになるけど、立った奴は頑張って遣り遂げて欲しい…って、
そこ!高坂と春日部さん、話聞いてる?全く……ブツブツ。」
高坂の隣でカッターに紺のスカート姿のマネージャーの春日部さんも
高坂と同様に髪は染めきっている。自由な校風のようだが、公立なので
制服は地味だし、公立の小さな柔道部なので揃いのジャージも無い為、
笹原も春日部も制服で居るし、全員制服でやってきている。
高坂と春日部の二人は付き合っているようで、何やら話しかける春日部に
笑顔で二言三言、高坂が返している。斑目の事は気にせずといった様子だ。
「あと笹原、今日はまあ見るだけだったら暇かも知れんから休んでても
良かったのになぁ。まあ、試合にでもなったら記録頼むわ。」
笹原はタオルを開いた左手で使い汗を拭きながら、苦笑いを斑目に返した。
その様子を見ていた小柄な女子部員が、気まずそうに他所を向いた。
頭を括っているが髪が硬いのでまっすぐ筆のように立っている。
小柄ながら長い柔道暦で期待の1年生、荻上だ。
気まずそうな様子に目ざとく気付いた笹原が、荻上に声をかけた。
「あ、俺の不注意だからホント気にしないで今日は頑張ってよ。大変だけど。」
「そうですね、スミマセンでした。」
かみ合わない会話に横から入ってくるのは、茶髪の一年生、恵子だ。
「兄貴、女の子に腕を折られるなんて情けねぇよなぁ。」
「うるさいな!俺が腕ついたからだつってんだろ。」
「相変わらずの破壊王やな!荻上!」
隣の席に固まって陣取っていた万賀高校は、現士高校と仲が良くもあり
ライバル関係でもある。関西弁で話しかけてきたのは、その1年女子
である藪崎だった。
「私のこの腕が、お前を倒せとうずくんや!その悪行三昧、許さんで…
って、聞いとるんか!無視か!」
立派ないい体格の藪崎は、荻上とは階級が違うので、荻上とはそんなに
関わりも無さそうだが…。
「それはお前の自爆だったらしいな。自分で関節極まる方向に行ったから。」
その背後からツッコミを入れてきたのは2年生の加藤だ。髪で顔が隠れている。
「ちゃうねん!うちはこいつの非道な技で…。」
「弱いから技に掛かった…でしょう?」
「いや、無差別の市民大会でうちはこいつの筆がらみで肘を脱臼して
負けましてん!」
「負けたことを自慢してもしょうがないでしょう…。
脱臼して負傷負けじゃなくて投げ技で1本負けだったって聞いたけど。」
加藤には藪崎も弱いようで、どんどん勢いが削がれていく。
「藪ちゃんドジっ子だから仕方ないニャ。」
「ドジちゃうわ!」
同級生の犬っぽい顔の女子部員にまでツッコミを受けて、藪崎は
それ以上荻上を追うことをやめて撤退していった。
「今日は勝負付けたるさかいな!」
「捨て台詞だニャー。」
ようやくといった風に、横から眼鏡で丸い体型の男が出てきた。
「や、うちのがうるさくてすまなかったね。」
万賀高校柔道部のキャプテン高柳が斑目に話しかけてきた。
「あれでしょ、そちらの1年の女の子、確かに有名だけど気にしないでね。
反則技じゃないんだし、頑張ってもらってよ。負けた方が悪いんだから。」
「うちの部員達は、もうけっこうもう慣れてきたぜ。」
一連のやりとりを半笑いで聞き流すしかない笹原だった…。
荻上は、無表情なような固い表情でたたずんでいた。
そんな騒ぎをよそに、地獄の2日間が始まった。
慈智会大付属高校柔道部が中心となって、号令を掛けて練習メニューを
次々とこなして行く。
やっている者たちは「早く終われ!」と思うが終わらない。
朽木は斑目に「トイレ行って来ます…うんこニョー…。」
と言って出て行ったきり帰ってこない。
田中と大野は寝技派なので、寝技勝ち抜けの時だけは早々に休めて、
体力を温存することが出来ているようだった。
斑目は技巧派だがパワーは無いので、早々に腕がだるくなり、
今では腕がぶら下がっている事すら重く感じていた。
さっきから両手の親指を帯に差し込んでいるのは、その為だったりする。
荻上は右の一本背負い、左の一本背負いとそれぞれ繰り出し、フィジカル面が
まだ弱いのでふらふらになりながらも、技のキレでよく投げて目だっていた。
そんな様子を悔しそうに横目で見る藪崎の姿もあった。重量級の中では
藪崎は体格任せ出なく高い技術力と体力で、こちらも期待の新人といった
ところだったが、軽い方と重い方で分けられているので、藪崎と荻上が
当たることは無いのだった。
2日目の朝、全身ロボットのように筋肉痛でガチガチになってやってきた
各校の部員たちの体が鉛が溶けたように重く鈍くなり、その汗が点々と畳に
落ちる中、午後の練習の後半は、こういう場では恒例の練習試合となった。
練習量が普段から多い慈智会大付属の圧勝で、2日間の合同練習は終わった。
もちろん現士高校女子と万賀高校女子の試合も有ったが、女子の団体は
体重の軽い順に並んだ組み合わせなので、ここでも藪崎は荻上と
当たる事はなく、大野を体落としで投げながらも悔しがっていた。
偉いさんの長い話のあと、じゃんけんで清掃と片付け当番に決まった
現士高校と万賀高校だけを残して他校の生徒たちは帰り始めた。
「この機会を待っとったで!」
ホウキを重そうに持つ荻上の横に、仁王立ちで登場した藪崎。
「掃除の邪魔なんですけど…。」
「あれから1年!うちの努力を無駄にはさせんで!」
「はぁ…(溜息)。軽量級の私を狙ってどうするんですか?」
「柔道の強い弱いと階級なんか関係あらへんわ。」
斑目も、ちりとりを持ってやってきた。
「重いほうの選手が言うと卑怯くさくねぇかな…(苦笑)。」
「また失言…ドジっ子なのに萌えないニャー。」
ぞろぞろと部員たちも集まってきた。
「くっ!だいたいアンタ、今日は筆がらみ使ってなかったやろ!
あーもう、面白う無いな…!!罰ゲームで負けたら下穿き脱いで
ブルマで掃除して帰るっちゅうんはどうや!?」
「……私の得意技は筆がらみじゃなくて左右一本背負いです。」
しかしブルマにどよめく男子部員達。そこへゴミ袋片手に笹原がやってきた。
「荻上さん、やりなよ。勝っても負けても恨みっ子無しで
これから3年やっていく事になるんだしさ。」
爽やかに言っているが、10%ぐらいは下心がある気がする。
流石、男子高校生真っ盛りといったところだろうか。
笹原が藪崎の味方をしたように感じられて、荻上は内心不機嫌になった。
「わかりました!やれば良いんでしょ!」
少しむくれて叫ぶと、荻上は頭の筆をギュっと留め直した。
「じゃあ僕が審判するよ。」
いつのまにかぬらりとした風貌の現士高校監督が試合場の真ん中に立っていた。
「じゃあ疲れてるし、3分で。…はじめ。」
勢いの無い主審の声を合図に、赤畳の外を取り囲む両校の生徒たちが見守る中、
荻上と藪崎の試合が始まった。
これだけの対格差があると、まともに両手で組んでしまうと荻上には
藪崎の技を防ぐことは出来ない。
しかし荻上は2日間の猛練習で、本来のスピードをすっかり失っていた。
藪崎も疲れで本来の動きではないとはいえ、こうなるとますます重いほうが
じっくり攻めると、有利になってくる。
藪崎が袖を、襟を掴むたびに、荻上が必至でそれをずらして外す、
という繰り返しの展開のまま1分半が過ぎた。藪崎は両手が持てないので
足払いを織り交ぜるぐらいで、得意の体落としや大内刈りが出せずに居た。
荻上は片手だけ持って一本背負いが使えるし得意だが、スピードが落ちて、
連続でなく単発の技では全く通用しなかった。
連続で掛けるには、今の荻上の持ち技では両手で持つしか無いのだが、
そうすると藪崎にも両手で組まれてしまう為に危険過ぎるのだった。
「残り時間20秒!荻上さん!」
笹原が声をかけると、それを聞いた荻上は意を決して得意技を仕掛けた。
藪崎の右腕を抱えて、荻上が右の一本背負いに入ると、藪崎は逆の
左前方向に重心を流して耐えにかかった。
その時、荻上は抱えている藪崎の右腕を掴んだまま、絡むように
ぐるりと逆方向に回転したのだった。腕の内側に回る通常の背負い投げ
ではなく、外側に回る、いわゆる逆一本背負い。
角度によっては肘が決まることが有り、柔道ではあまり見ない技だ。
中学時代、周りから筆がらみと呼ばれたこの連続技は、引っ張られる腕を
中心に荻上の筆がぐるりと回る様子からついた通称であった。
右前方向の技に耐えようと藪崎が左前方向に移した重心の方向に
投げ掛ける連続技であり、「これは決まった…。」
横方向から藪崎の右脇に潜り込む荻上を見て、誰もがそう思った時、
藪崎はさらに大きく左方向に体を外し、取られていた右腕で荻上の
上体を後ろに払い飛ばしていた。谷落としでの切り返し。
「技あり。」
淡々とした現士高校監督の判定が聞こえる。
「これを狙うとったんや!」
叫ぶ藪崎だが本人もその場に座り込む状態になり、寝技で追撃は出来ていない。
試合は開始線に戻り、仕切りなおしとなった。
改めて、藪崎の技ありが宣告される。
「荻上さん、それじゃない!思い出して!」
笹原の声が荻上に届いているかは定かではない。
が、組みぎわに荻上が再び仕掛けた。
右足で薮崎の右踵を刈る小内刈りのフェイントを混ぜるものの、
再び右の一本背負い…から逆一本背負いに回り始める。
「ワンパターンか!」
藪崎は再び返し技を掛ける心構えをした。
しかし今度の入り方は違っていた。今まで横方向から潜り込む
ように入っていた逆一本背負いを、一旦大きく後ろに下がって
前傾姿勢を取ってから、真正面に入るように入ってきたのだ。
「それ!立って掛け切って!」
笹原が叫ぶ。笹原はこの入り方の練習に付き合っていて、荻上が低く
投げたために前方に突き出された右腕を脱臼してしまったのだ。
技の理合としては、その場で回るよりも前傾姿勢から縦に回る方が
数倍の威力がある。正しいフォームに修正されたと言って良いだろう。
「技あり。」
ドタン!という音とともに藪崎は投げられ、そのまま押さえ込まれる。
試合時間は終了しているので、押さえ込みの終了時間が試合の終了だ。
「あ、そこは袈裟固めじゃ駄目です!」
今まで黙って見ていた大野が叫んだが時既に遅し。
藪崎は押さえ込みを返していた。
「押さえ込み解けた。有効。試合終了。」
技あり同士に押さえ込みでの有効一つぶん、荻上の勝利となった。
二人ともうつむいて礼をして、試合を終えた。
「薮崎さん、それ別にしなくて良いですカラ!」
「敗者に情けはいらんのや!止めんでくれ!」
うっすらと涙目で、真っ赤になりながら薮崎が柔道着の下穿きを脱ぐ。
その下には、ふくよかな太ももと、紺色のブルマがあった。
そのまま掃除を終えると、藪崎はダッシュで掛け出て行き…。姿を消した。
藪崎は一人走って会場から出ると、隣の湖の湖岸に立っていた。
まだ高いが赤くなっている夕日を眺めて、悔し涙を浮かべる藪崎。
ふと気が付くと、後ろに荻上も下はブルマ姿で立っていた。
それに気付くと藪崎はあわてて涙を袖でぬぐい、再び湖面に向きなおした。
二人は、無言で並んでしばらく立っていた。
「…今日の試合は引き分けみたいなもんや!アンタもそれで
ブルマになったんやろ。次はウチの勝ちやな!」
そう荻上に告げると、藪崎は振り返りもせずに帰っていこうとしている。
「………!!自分で言って一番カッコ悪い台詞じゃないですか!?
優しくしたら調子に乗って!疲れてなかったら秒殺に決まってます!」
柔道着の下がブルマ姿で叫ぶ荻上。青春ドラマのラストシーンのようには
いかない二人だったが、高校柔道を通じた熱戦は始まったばかりだった。
えー…10数年前の某柔道漫画はタイトルとブルマ以外、関係有りません。
たぶん。
うわぁ…なんかすみませんでした(汗)。
>>282 ようやく作品名を書くようになったなと思ったら、本スレでも同じコテハン使ってたから単にコテハン変えただけみたい。
もういいです、あなたの作品は全部「無題」ということで。
(何と芸術的な…)
まあそれはともかく、乗ってきましたね。
高坂コネクションが怪し過ぎ。
初代会長が社長…ある意味リアルだ。
しかしとうとう斑目までワープ落ちですか。
このスレでは、過去に荻上さんのワープがたびたび落ちに使われてましたが、やはりワープはオタの必修科目なのでしょうか。
(余談ですが、春日部さんが女装高坂を見てワープするという内容の四コマ漫画を同人誌で読んだことがあります)
>筆をギュっとね!
朝っぱらからの投下お疲れ様です。
細かいですね柔道描写。
経験者だとしたら、かなりレベル高そう。
(多分少なくとも有段者)
筆がらみ、名前はギャグだが何気に危険な技ですな。
逆一本背負いって、確か佐々木健介か誰かプロレスでやってたような記憶が…危険過ぎです。
あと藪崎さん、原作のイメージに近いけど、ちょっとだけ粘着し過ぎかも。
最後は「勝ったと思うな!」のひと言を残して逃走、ぐらいでよかったかも。
筆ギュ書いた者です
>>295 こんなマニアック風味なものに感想ありがとうございます。
藪崎ブルマが目的のはずが柔道に力を入れてしまって…。
粘着し過ぎは僕個人の粘着気質と、荻上さんが淡白で
なかなか乗ってきてくれなくて…という事でしたorz
あと、一応経験者です…。
>>筆をギュっとね!
こういう細かい描写をされるとシーンがありありと頭に浮かんで楽しい。柔道の合同練習なんてイベント知りませんでした。
しかし筆がらみてw 高1にして二つ名をもつ柔道家オギーすげ。
>>296作者氏が言ってるの聞くと、なるほど藪荻の掛け合いにしようと思うと相当薮崎さんからツッコませにゃならんようですね。
緊迫感のある野試合といい読み応えがあった。サンクス!
そしてコレだけは言っておこう。
「薮崎先パイ、こんなストライクなカッコしてるのにぜんぜん萌えないニャー」
>筆ギュ!
遅ればせながら、経験者ならではの柔道描写の濃密なSSで楽しかったです!
「げんしけん」「奇面組」「帯ギュ」は個人的に学生モノのマイフェイバリット3傑なので、タイトルだけでも大ウケしました。
ぜひ次の機会があれば、男性陣の活躍場面を!
>>筆をギュっとね!
とにかくワラタ。え?ギャグ物じゃないんですか?
高校のネーミングとか細かいとこで噴いてました。
最後の藪崎さんがブルマ姿でべそかいてたら、荻上さんまでブルマ姿になるトコとか、いい話のはずなのに微妙〜〜〜〜!!w
ニヤニヤしながら読んでしまった。さすがはヤブー&オギはオチもひと味違いますネ!www
たくさんの感想、ありがとうございます〜
>>297 薮崎さんはツッコミのつもりですが、傍から見るとすごいボケまくりですw
あと二つ名は柔道やってると多いですよ。ゴーレム背負い・飛脚投げ・ロボ柔道・マニアック柔道etc...
そして、萌えられない薮崎さんの姿に個人的に萌えまくりですっ!
>>298 奇面組・帯ギュ!同じくふぇいばりっとです!
次の機会ですか…良い妄想が浮かんだら、また読んでください。
>>299 もちろんギャグものですよ!
だからこそ、マジに書かないと〜。
ありがとうございましたor2
馬天高く肥ゆる秋、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
こちとら長文病に罹患してしまって大変ですw アンソロ向けのつもりで書いてた奴が書式に乗せたら終わってないのに13P分(目安は6P)になってるのが判明して素で笑ってしまった。
さて、それとは別の奴。書きあがりましたんで置いてきます。
『斑目放浪記(またかよw)軽井沢編』本文9レス+おまけ。
あ、俺『マル。』の人です。そっち読んでいただいてたら少し余分に楽しめるかも。
よろしくペコリ。
朝の光がカーテンの隙間から差し込むと、彼はゆっくりと目を開けた。ゆうべの乱痴気騒ぎの余韻が体に残っている。もう無理のきく年齢ではない。枕元から眼鏡を探し出し、上半身裸のままベッドから起き出した。
高原の貸し別荘は静かで、まるでこの世に彼と、隣でまだ寝息を立てているひとの二人だけしかいないような錯覚を呼び起こす。
酔っ払ったまま人の布団にもぐりこみやがって。ばっちり目ェ覚まさせてやる。彼は……高柳は、眼下の人物に呼びかけた。
「おい、起きろ、斑目。いい天気だぞ」
「ん……」
むっくりと身を起こした斑目はしょぼつく裸眼で声のしたほうを向く。
「なあ斑目よ」
「うー、なんだよ、ヤナ」
「なぜ俺はこんなところにいるんだろうな」
……斑目の血圧が一気に上がった。
「お前が来たいと言ったんだろうがああっ!」
「起き抜けに急に怒るなよ、そんなに。ちょっとしたモーニングコールだ」
高柳は口の端で笑うと、自分の荷物からタオルを探し出した。
「先にフロ行くな。今夜は他人のベッドで酔い潰れるなよ」
「あー行け行け。俺はお前に襲われてないかチェックしなきゃならん」
「襲わねーよキモチワリイ。大野さんや荻上さんの妄想に付き合い過ぎなんじゃないか?」
「バカ、冗談だ」
9月なかばの火曜日の朝。二人はゆうべからここに……かつて現視研の合宿でも使用したコテージに宿泊していた。
斑目もゆっくりした動きでベッドから降りる。彼もジーンズしか身に着けていなかった。
「ご覧のとおりズボンはいてるし、ケツも痛くねーよ」
「そいつはよかったな。ああ、斑目」
高柳は屋外の風呂への扉を開け放ち、部屋の中でチノパンを脱ぎ始める。
「ん、どうした?」
「痛くないからって油断すんなよ。クチの中、ヘンな味残ってないか?」
「!……おっお前……まさか」
「ウソに決まってんだろう。わはは」
まんまとからかわれた斑目を残して楽しそうな笑い声を響かせ、高柳は扉の向こうに消えた。
取り残されたほうはイラつきを抑えながらベッドにどっかりと座りなおし、ひとつため息をついてつぶやいた。
「……『なぜ俺はこんなトコにいる』?こっちのセリフだっつうの!」
****
斑目が高柳から呼びだされたのは先週の日曜日のことだった。池袋で即売会があったのでそこで落ちあい、その後居酒屋であれこれとくだらない話をした。話が一段落した頃、漫研が合宿をするので現視研の去年の合宿場所を紹介しろと相談を受けたのだ。
「てゆーかお前OBだろうが。なんでそんなことやってんだ?」
「アンオフィシャルな話なんでな。加藤さん、知ってるだろ?」
「ああ、貞子ねえちゃん」
「……お前それ絶対本人に言うなよ、命ねえぞ。合宿とは言っても、彼女が気心の知れた数人で遊びに行きたいっていう話なんだ。で、お前たちが去年行った軽井沢のコテージ、第一候補に上がってるんだと」
「はあ」
「大野さん卒業だし、荻上さんはちょっと学内ではコミュニケーション取りづらいしで、俺がお前から情報集めようって話になってな」
「まだ朽木君だって……ああいや、なんでもない。それにしてもお前がなんで加藤さんのパシリやってんだよ」
「うーん、お前を漫研の力関係に深入りさせるのも忍びないんで聞かんでくれ」
高柳は困ったように腕を組んだ。漫研は人間関係が複雑で、現在サークルとして機能しているのが不思議なくらいの状態なのだという。
「説明できる範囲で言えば、加藤さんには漫研の安定運営に尽力してもらってるんだ。元会長として頼られたら協力してやりたいんだよ」
「あーそうかい。まあいい、お前さんがそういう言い方をするんなら評価に足る人物なんだな、彼女は」
「そうだ。それも相当にな」
高柳は斑目が大学に入学してから知り合った人物だが、在学中の4年間で長く深くツルんできた。もともと属性の似たサークルにいたことや、同時期にそれぞれが会長職を務めたこと、実践経験の浅い理論派同士であることなどから互いに互いを学内の一番の友人と思っていた。
高柳が加藤という人物を評価しているように、斑目も高柳になにか頼まれたら断る気は毛頭なかった。
「まあよかろう。俺んちに資料一式残ってると思うんで、お前にやるよ。使った身からするといいところだぜ」
「そうか、助かるよ」
「部屋から行ける露天風呂があってな、コレが笑えるんだ。できることなら先にいっぺん行って欲しいくらいだ」
「そうなのか」
「請け合うぜ。絶対楽しい」
彼はちょっと考え、テーブルから乗り出して口を開いた。
「……なあ斑目、お前平日に休み取れるか?」
「ハイ?」
「実は俺、今月中に休み5日間取らなきゃならないんだ」
高柳は大学を卒業後、都内の印刷会社に就職した。印刷業界は休日があってないような業種で、特に彼のように中小零細に分類される会社の社員は勤務日数が1週間に8日とも9日とも言われている。
「労基署の立ち入りがあってな、簡単に言うと過剰労働がバレたんでつじつまを合わせることになったんだ」
「……ひでえ会社だな」
「このご時世、むしろ正々堂々と休めるんだから御の字だ。まあ加藤さんの旅行の計画も9月だからそっちに二日当てるつもりなんだが」
「お前も呼ばれてるのかよ!それでそんなに一生懸命」
「まだ三日余る。来週にでも覗きに行くってコトをいま思いついたんだが、どうだ斑目?高級別荘地でオタ話して飲み明かすってプランに魅力を感じないか?」
休み明けに斑目が会社に交渉してみたところ、連休は無理だったが単発の有給休暇を1日取得することには成功した。高柳と打ち合わせ、月曜の夕方に東京を出て火曜の夜に帰宅する『一泊1.5日』の旅行計画とあいなったのである。
****
「ずいぶんゆっくりだったな」
相方に続いて朝風呂を使って戻ってきた斑目に、高柳が声をかけた。もう着替え終わり、出掛ける気まんまんと言った風情だ。
「朝っぱらから素敵なモーニングジョークで起こされる方の身にもなれ。酒だって残ってるってのに」
「そんなもんは水を飲め水を。早く着替えて出掛けようぜ。俺、軽井沢初めてなんだよ」
バッグを探り、着替えのポロシャツを引っ張り出す。
「俺も去年そんな話をしていたような気がする。ま、オタクには縁遠い地であることは確かだな。俺たちが落ち着ける場所はないぞ」
「そうか?俺、古月堂には行っときたいんだが」
高柳から出た店名を聞き、斑目は意外そうな顔をする。以前、漫画のモデルになったこともある喫茶店だ。
「『か・ぐら』かよ。……あれ?お前『軽井沢症候群』ダメダメだって言ってたじゃんか」
「ダメなのは『STRIPE』の方だけだ。つうか、無印の方に惚れ直した。盆に郷里に帰ったときに親父のコレクションを見つけてな。二人で話もせずに読みふけってたらお袋に揃って文句言われたよ、この年になって」
「え、親父さんオタクじゃないだろ」
「クルマがらみで目に止まって連載追ってたらしい。そうとう好きだったんだな、あの時期の単行本全部あったよ」
「そいつはすごい」
「もっとすごいことを教えてやる。なにを間違ったか『すくらっち・バッグ』も全巻揃ってた。照れ隠しかもしれんが、キャラクターが同い年だったんで思い入れがあるんだとよ」
「わはは、兄貴の方の漫画じゃねえか。読んだことないが」
「チャンスがあったら読んでみろ。けっこうキュンとくる」
「読んだんかい!」
一般人が聞いても符丁にしか聞こえない会話をしながら、まもなく出掛ける準備が整った。
****
チェックアウトしようとコテージを管理しているホテルに連絡を入れると、次の予約が入っていないので荷物を置いておいてもかまわないという。これさいわいと手ぶらで町に散策に出ることにした。
「そういえばチェックインのときは怪しまれたよなー」
「オタ二人旅だもんなあ。ガリメガネとデブメガネが女も連れずにコテージを借り切りゃあ怪しむか、いくら値段一緒だって」
「しかも予約してたとはいえ到着が夜遅くだぜ。心中すると思われたんじゃないか」
「生きててよかったな、お互い」
とりあえず軽井沢駅前まで出て、オタク的に有名な喫茶店へ入店する。
「軽井沢が舞台の漫画やらアニメって少ねーんだよな、確かに」
「しっかり描いてるのは田神兄弟ぐらいだからだな。最近では『ミリまて』の軽井沢編と近所が舞台の『おねT』シリーズ、他もせいぜい旅行に来るってパターンに陥りがちだ」
「まあ去年も思ったけどな、やっぱり避暑地でしかないんだよ、ことさらオタにとっては。季節限定でストーリーを構築するしかないから1エピソードしか展開できない」
「夏場はドラマ的に盛り上がりがあるが、冬はこの辺も閉ざされ気味だもんな。スキーをネタにするならはじめから苗場やら有名な場所が山ほどある」
「劇空間としての閉鎖性も挙げられるぜ、たとえば海に行く手は使えないし、遊び場も限られてる。それこそ軽ショーみたいに『気軽に東京に足を伸ばせるキャラクター設定』が必要で、もうその時点で学生を主人公にするのは厳しい」
古びた喫茶店のテーブル席で特大パフェをおのおの一つづつ味わいながら明らかに一般向けでない話をする二人のメガネ男に、周囲の客も恐る恐るの視線を送ってはそらすことを繰り返している。もっとも当人たちは気づいていない。
「さて、それでどうする?これから」
話題も一段落したところで、高柳が聞く。斑目から引き継いだガイドブックをポケットから取り出し、赤ペンを持ってやる気まんまんだ。
「むしろこっちが聞きたいところだよ。ヤナお前、加藤さんたちから下調べとか仰せつかってないのか?」
「彼女らも詳しいわけじゃないみたいでなあ。現視研ではどんなとこ回ったんだ?」
「んー、俺たちは森ん中ぶらぶらしたり、最終日はこの近所でショッピングかな。ああ、非オタ組がアウトレットモールまで買い物に行ってたぞ」
「へえ、どこにあるんだ?……駅の向こう側なのか、ウチには春日部さんみたいなのはいないけど、わりと普通のカッコする子もいるからな、参考にしとくわ」
「それから田中と大野さんはコスプレ撮影。コレだ、竜返しの滝って言ってた」
「ふむふむ」
「なあヤナ。ちょっと聞きたいんだが」
「ん?」
「その旅行、もしや男はお前だけなのか?」
「ぶっ!?なんてこと聞きやがる、もう一人後輩が来るよ」
「ああそうか、すまんな、お前以外全部女性のハーレム旅行かと思って」
「そいつはなんていうエロゲだ?」
「ハハ」
斑目はなにか言いかけて、やめた。高柳は気づかなかったようだ。
「よっしゃ、じゃあ民間人用の観光ルート案内と行こう。駅前に戻って、新軽・旧軽歩いて昼飯。別荘地散策したらコテージ戻って荷物取って帰ろうぜ」
軽井沢は新旧のメインストリート沿いに観光ルートができており、歩き始めてしまえば誰もが同じ動きをする。まるで駅前から動く歩道がつながっているかのように、多彩な人々が単調な道すじをたどってゆく。
「……オタ的には物足りんよな、やはりこの王道ルートのみというのは」
「ないんだよ他の選択肢が。ヤナお前原宿行った事あるか?」
「なぜ答えのわかってる質問をする」
「すまん、昔行った事があってココとまったく同じ印象を受けた街だ。観光客にとっては水族館の順路と変わりはないんだよ、この辺はつまるところ、俺たちのような人種には向かない」
「順路を外れると知ってる人しか知らない町になるってわけだな。住めばいいのかもしれんが、にわか仕込みはちょっとキツいな」
「ま、そんなとこだ。逆に開き直れば、ほんの数キロの道のりを把握してしまえば案内人がこなせるってことだ。今回お前はその役目なわけだから、まあ丸暗記しとくんだな」
「ハイハイ斑目先生様」
「春日部さんからの受け売りをしておいてやろう。観光地のご他聞に漏れずここらのメシ屋でまともな店は少ない。そこの『ポモドーロ』かあっち側の奥の『三笠会館』、ちょっと離れるが『メリメロ』あたりがお勧めだ。安くはないみたいだが知ってりゃ自慢できるぞ」
「なるほど、春日部さんさすがだな」
「もう一つ得意になれる情報だが、あのコテージ以外にも実は入れる温泉がある」
「軽井沢にか?」
「竜返しの滝の手前なんだが、ココな。こっちの古い方は外来謝絶だが、ここは予約をすれば日帰り入浴ができる。混浴とは行かないが、女性は喜ぶんじゃないか」
「おー、すばらしい」
軽井沢に来たことがないオタクへの、軽井沢に1回来ただけのオタクによる観光レクチャーは続く。どう見ても周囲から浮いている男二人旅はやがて別荘の建ち並ぶ雑木林を抜け、午後にさしかかる頃にはコテージまで戻ってきた。
「いやー、勉強になったよ。すまんな斑目、いろいろと」
「まーいいって。ただまあ慣れてないコトはするもんじゃないな、結構疲れたよ」
「俺もこころえとくさ。来週は俺の番だからな」
「よっしゃ、荷物まとめたら帰ろーぜ、俺たちの落ち着ける消費至上主義の街へ」
「そうするか。おい、そのカーテン閉めてくれるか?」
「ああ。……お前こんなの気にするヤツだったか?」
「知らなかったのか?まあ、立つ鳥なんとやらだ」
斑目が半開きになっていたカーテンを締め切り、二人はコテージをあとにした。
****
二人が東京に戻ったのは5時を回った頃だった。八王子まで帰る斑目は本当なら大宮あたりで乗り換えるほうが楽だったが、現在は都心のアパートに住む高柳と夕食がてらの酒盛りをしてから帰ることにしたのだ。
車中でもオタ話で盛り上がっていたが、この二人が話を始めると際限がない。帰るのに互いに都合がいい新宿の居酒屋でも大量の酒とツマミを消費しながら、消費至上主義社会における映像メディアのあり方を延々語り続けていた。
「まあそうは言いながらだ、結局アイテムが売れなければ作品として意図を語り得ないというジレンマに陥っているのも事実なワケで」
「だからっつってライダーまで二段変身するってのはどうかと思うがね、俺は」
「昔だっていたろう、バイオとロボとか」
「認めん、認めんよ俺は」
要はテレビ番組がおもちゃ優先になっているのが気に食わないと斑目は言い、高柳は、現代の子供たちのゴッコ遊びにイマジネーションの補助となるおもちゃは欠かせないと主張しているのだ。
もっともこの手の議論は彼らの呼吸のようなもので、二人がこれに結論を求めるつもりがないのも明白だった。数時間にわたる言わば『深呼吸』の末、ようやく東京に戻ってきた気分になったところで彼らの旅行はお開きとなった。
「斑目、本当に悪かったな、無理に休みまで取らせて」
「いつまでも気にすんな。日々のつまらん生活ではここまで深い話をする相手がいないんだ。部室行っても大して面白くないし」
「おいおい、お前らしくもない」
「酔ってるだけだよ。言うまでもなく俺だって楽しくなきゃこんな旅行に付き合わねーよ。お前と二人旅なんてのも初めてじゃねーか」
「そうだな。またどっか行くかい?」
「よし、次の労基署のガサ入れがあったら教えてくれ」
「あはは、そうするわ。じゃ俺こっちだから」
「おう。……なあヤナ」
手を振り歩き出す高柳に、斑目は声をかけた。
「ん?」
「頑張れよ」
「おう。お前もな。それから」
「どうした?」
「お前がそんなこと言うの、気持ちわりいぞ」
「ほっとけ!」
いつものニヤニヤ笑いを残して人ごみに消えてゆく高柳を見送り、斑目は先週のことを思い出していた。
二人旅が決定した後、いつものようにコンビニ弁当を持って現視研の部室へ向かう途中のことだ。卒業間近の大野さんと、くだんの加藤さんがなにやら熱心に話をしているのを見かけたのだ。彼女らはこちらに気づかずに駅へ歩いていった。
「(あれ?ようやく打ち合わせができたのかな?)」
高柳の言葉を思い出してその場は納得したが、あとになって少し違和感を覚えた。確かに大野さんは9月末で卒業だが、考えてみるとそれだからといって忙しいわけではない。笹原や高坂のように卒業前から仕事をさせられる業種ではないし、むしろヒマと言っていい。
それに、旅行の資料集めくらい電話でもメールでもできるではないか。斑目は確信した。
「(なにか……たくらんでやがる)」
田中にも電話をかけてみたが、結局詳しいことは判らなかった。あの時見かけた大野さんの楽しそうな表情(さいわいにもマスクも未装着だった)と、派閥抗争がある漫研で計画された『派閥内旅行』であるという点で、高柳に悪いことは起きないだろうと判断した。
まあ、サプライズで彼の慰労パーティでもやるのだろう。本人が忙しい方が周囲が足場を固めやすいわけだし。
「……さて、俺も帰るか」
きびすを返して、デパートの中にある改札口へ向かう。
何のことはない。会社で目立たない社員をやり、部室に行っても今やツッコミ役がいない斑目は、「遊ばれている」高柳が少しうらやましいだけなのだ。
「(そうは言っても……)」
斑目は思った。
これでまた奴とバカ話をするネタができたわけだ。まだまだツルむ口実は尽きない。
10月に入ったら連絡してやるか。
そんなことを考えながら、足取りも軽やかに帰ってゆく彼なのであった。
【おまけ】
「ここにいたかオギウエぇ!」
「ひゃっ?や、薮崎さんどうして私がここにいると?じゃなくてここ図書館ですから!静かに!」
「あ、ああそやった。おもろいこと聞いたで」
「なんですかもう」
「加藤さんから聞いたんやけどな、うちの高柳先輩とオマエんとこの斑目さん、二人っきりで軽井沢旅行行ったらしいで、こないだ」
「えええっ?」
「声大きいわアホ」
「あわっ」
「どや、なかなかイマジネーション湧くと思わんか?両方とも受け属性のメガネくんや」
「たっ……確かに(ごくり)」
「きっと初夜はなぁ、まず斑目さんが高柳先輩に優しく言い寄ってやな」
「違いますよ!最初は高柳さんが攻めでしょう?で後半斑×柳ですよ」
「いやいや、逆やと思うで。あの高柳さんのモチ肌、解るやろ?」
「いーえ譲れません。高柳さんのあの包容力から考えてもますます斑目さんは受けから入らないと。なにより斑目さんはスロースターターなんですから」
「う、トップギアまでのタイムラグか、それは考えに入れとらんかった」
「でしょう?」
「なるほどなるほど……ん?ちょっと荻上、その左手見せ」
「わ!……え、なっなんですか?なんにもありませんよ?……あいたたっ」
「つべこべ言うなっちゅうねん(グイ)……って指輪?……え?」
「(しまった……部室にも行くつもりなかったし誰にも会わないと思ったのに……////)」
「……え、プ、プレゼント?あの人?笹原さんから?」
「……なんですか。なにが言いたいんですかそうですよそれがどうかしたんですか!」
「勝ったと思うなーっ!」
司書「……きみたち、出てってくれるかな?」
おわり。
『マル。』と平行して練っておりました。
マルがご覧のとおり重ネタなので、バランスをとるために軽いヤツをと。んでまあ、それなら斑目さん出番ですよと(←失礼)。
そうこうするうちに久しぶりにラジヲが投下されて、ヤナフラグがすげえ楽しそうだったんで支援ぎみにしてみたりw ああ別作品として読んでも支障ない程度にしたつもりですんでメーワクならスルーで>ラジヲ作者氏
俺の文法では各キャラ初出時にフルネーム書きたいところですが無理だったので、いつもと微妙にフォーマットが違います(気にならないと思いますが)。
違ってるついでにおまけのフォーマットを例のコテ風味にしてみた。楽しかった。
ではまた。
>斑目放浪記軽井沢編(後書)
すごい勢いで投下されてますな。飛ぶ鳥をナントカ。
斑スキーの自分としては、このシリーズものすごく好き。今回はヤナとセットだしオイシイw
斑とヤナのオタ会話とか、すごく雰囲気あっていいなあ。マジで今後の参考にさしてもらいます。
斑目の心情とか、なるほどなあと思って読んでた。
今でもヤナといい友人でいる、という設定が、こう何つーか…ホッとする。最近の斑目、元気ないからなあ…。
と、いうワケで、面白かったですよ。
>>斑目放浪記軽井沢編
ヤナと交友続いてるのって救われますねぇ。
ヤナに彼女が出来たら斑目は遠慮してしまうんだろうなぁ…
今のうちに遊んどいてください!
軽井沢に行くなんてなかなか良いですね。
田上兄弟やライダー話、僕も加わりたいです。
>斑目放浪記軽井沢編
確かに誤解を招きそう、男オタ2人の軽井沢でのお泊りw
実は話のネタになってた作品全部未読だけど、場違いなオタ話を展開する2人にワロタ。
それにしても斑目、貞子はねえだろ貞子は。
呪われるぞ。
そう言えば斑目放浪記シリーズ、今回のも含めて殆ど連れに誘われての旅だな。
やっぱり総受けなのか、斑目…
>>斑目放浪記軽井沢編
まさか高柳と放浪してくれるとは!
斑目が一番心を許してるのは高柳なんじゃないかと個人的に思ってる身としては嬉しい組み合わせでした。
二人のオタ話もさることながら軽井沢の地理についても詳しく書かれていてお勉強になりました。
そしてやはりどこか寂しさの残る斑目もいいなぁ。
おまけの会話のみの書式もテンポがよく読めておもしろかったです。
受け眼鏡同士の二人旅なんておいしすぎるネタなんだろうなぁ…w
加藤さんは貞子と呼ばれることを狙って意識しているような気がしないでもない。
319 :
うす肉まん:2006/09/17(日) 17:30:12 ID:???
拝啓 母さん 今俺は す・・・好きな子と親友を襲っているわけで
(あーあーあーあーあーあー)北の国からのテーマ
咲ちゃん「はやく!そっち持って!マダラメ!誰か来るからッボサっとしない」
マダラメ「ぁぁ・・ぅ・・・はいっはいっ」
俺は・・俺は何やっとるんだ・・・
高柳 「モガガガガ・・モグッ」
こいつは親友だぞ
咲ちゃん「ほらっそっち抑えて!こら暴れるなって」
スマン ヤナ・・・
高柳 「モガゴア・・ま、まだらめ?」 ボカッ
高柳 「・・・・・・」ガク
咲ちゃん「や、やるじゃん(汗)」
マダラメ「はぁはぁはぁはぁ・・・」キッ
「早く連行しよう!春日部さん!!」
咲ちゃん「ぉ・・・ぉう」
俺は・・・俺は・・・・
320 :
うす肉まん:2006/09/17(日) 17:38:44 ID:???
マダラメ「はぁはぁ・・・ど、ドアの外には誰もいない」
俺は・・・ツルペタ属性だったんじゃないのか
「お兄ぃたま。だ〜〜い好き〜」(ムヒョー)
エロゲだって従順なロリッ子大好きだろ
どうした・・どうした俺
マダラメさん「春日部さん・・・そっち足持って!こいつ重いから腰気をつけてね!」
どっちかっつーと俺Sだろ!ヘビだろ!(ドM認識なし)
いつからだ!いつからだ!・・・!!!
(女「シクシクシク」「元気だしなよ」「ほら笑って」
マダラメ「へ・・・へへ あの日かぁw?」
女 「・・・・・・・」
マダラメ「・・・ビ、ビンゴかぁw?」パシーーーーン)
マダラメ「・・・・・・・あれか」
咲ちゃん「え?」
マダタメ「/////い、いや何でもない!何でもないよwよ、よし現視研も
誰もいない。おkだ」
そっか・・・俺やっぱ・・・・・
321 :
うす肉まん:2006/09/17(日) 17:40:26 ID:???
笹原 「ちわっス・・・・って」
田中 「な・・・なんだいこりゃ」
高柳 「モガガガが・・・」
咲ちゃん「それではどうして現視研の女子がどうして漫研の女子に嫌われているのか〜〜〜!!
ゲストにはマンケンから高柳くんにゲストに来て貰いました〜〜!」
田中 「いいのか・・・これ」
マダラメ(スマン・・・ヤナ 俺ヘビじゃねえわ)
臭劇
うわ、いっぺえだァ。みんな感想ありがとさま。
いつものように1レスづつ返事したいところですがまとめて失礼します。
>>313-318 斑柳トークみたいな会話をする友人が俺にも一人だけいます。それぞれが年に数回しか参加できないサークルの飲み会で、数年に1度ばったり出会うんですが、そん時はもうここぞとばかりに無駄な話をし合う相手です。
親友だのという面映い認識は互いに持ってませんが、多分これからもどっちかが死ぬまでこんな会い方飲み方をするんだろーな、みたいに二人とも確信してた、なんて会話もしたことがある。
そいつのことを考えながら書いておりました。夏コミ後の飲み会(俺は飲みだけ参加)で2年ぶりくらいに会ったから、また当分会わねーんだろーなあ。2ch覗いてないように聞いてるのでここももちろん見てないと思うが、まあ元気でやっててくれ。
小山田・たがみ兄弟は最近いよいよ影が薄いので困るが
>>315、『すくらっぷ・ブック』『ぶるうピーター』『軽井沢シンドローム』『NERVOUS BREAKDOWN』が基本ラインだ。
正直四半世紀も前の作品並べられて迷惑だろうが、漫喫で夜明かしすることでもあったら思い出してくれ。置いてないかも知れんがorz
そして
>>319-321 おまい俺がせっかく友情話書いたのにw マイリマシタ。
一瞬ナニが始まったのかと思ったがそこんとこの話か。やっぱりあんたの発想力はすごいと思うわ、掛け値なしで。
独白が切なく悲しく、そしてあまりにも馬鹿馬鹿しい。GJさしあげる〜。
あっと忘れてた。
>>316 受けですうー!絶対受けですうぅー!
誘い攻め(襲わせ攻め)とか…無いかな…?
325 :
マロン名無しさん:2006/09/18(月) 02:24:20 ID:JSUAuKYT
おもしろいスレだ
困った。
最近になって「ハチクロ」を見始めたのだが、マヤマが出てくると頭の中で「リバ可」コールが起きる。
もう1人の何とかいうメガネ君はまだ登場してないが、2人揃ったら頭割れそうだ…
ほ
>>326 そいつは申し訳ない・・・。
んで、再びリバ可コールは起きましたかね?
頭割れちゃいましたかね・・・?
>>319-312 むふっ ちょっと面白かったw
…最近SSかいてないなあ…そろそろかいとかんとなあ…
絵板で笹原視点2号さんの「様子見ヤブー」を見て、一気に書き上げてしまいました。
キャラが崩れていますが、まあ勘弁してやってください。
331 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:28:27 ID:???
現視研の部室の扉の前で、藪崎は悩んでいた。
本気で悩んでいた。
真剣に悩んでいた。
「開けるべきか開けないべきか、それが問題だ」などと呟きたくなるほどに悩んでいた。
そして決断した。
「それもこれも全部荻上がわるいんや!!」
…なんでさ。
332 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:29:14 ID:???
時間は少し遡る。
漫研では、いつも通りの当り障りの無い会話と、穏やかな笑い声が響いていた。
そんな中藪崎は、会話にも加わらず、一人ノートに向かって絵を描く。
(…けったくそわるい)
藪崎は心の中で毒づく。
(好きを好きと言わんで、嫌いを嫌いと言わんで、気に入らんもんは『無かったことにする』っつー訳や。結構なこっちゃ)
(いつまでもそーやって慣れ合っとれ!)
次第に筆圧が高くなってくる。線が荒れだす。絵が崩れる。
そんな藪崎の様子を前髪を透かして見ていた加藤が、不意に立ち上がると声を掛けた。
「藪崎さん、ちょっと」
二人は揃って漫研を出る。その後を追ってニャー子が駈けて行く。
3人が去った漫研は、明らかにほっとした空気が漂った後、再び穏やかな時間が流れ出した。
その影にどれだけの悪意が隠れていたとしても。
333 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:30:48 ID:???
「何ですかぁ、加藤さん?」
「薮崎さん。例の合作の話はどうなったのかしら?」
「うっ…」
藪崎は言葉に詰まる。そして何か言おうとして言葉が見つからず、言い訳もできず、右を見て左を見て俯いて天を仰ぎ、良い事を思いついたように手を打つと、言った。
「あの話は無かった事に…」
スパーン!!
小気味いい音と供に、加藤がどこからとも無く取り出したハリセンが、藪崎の脳天を直撃する。
「ベタベタだニャー」
「うっさい黙れボケ」
藪崎は頭を抱えながらニャー子に返す。
そんな二人を眺めながら、加藤は軽くため息をつくと、口を開く。
「その様子じゃ、『全然・全く・一つも』進んでいないのね?…まさかあれ以来口も利いていないなんて言・わ・な・い・わ・よ・ね?」
ギクという音が聞こえそうな様子で薮崎が固まる。
「しょうがないわね。それじゃあとりあえず、今から現視研へ行って、荻上さんに謝って来なさい」
加藤はあきれた様子で薮崎に命じる。
334 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:31:33 ID:???
「ちょ、ちょっと待ってェ!なんで私が…!」
「先に無礼を働いたのはあなただから」
「そんなもん、あっちだってやったんやから、あいこでしょうが!」
「それに頼みごとをする立場なのもあなた」
「いや、それは、だったらええな、って話をしただけで、別に決めたわけじゃ…!」
「じゃあやめる?」
「……ヤメタクナイデス」
「素直でよろしい。さあ、お行きなさい」
例の決めポーズをつけた加藤に見送られて、藪崎は肩を落として現視研へ向かう。
「…ニャー子、あなたも一緒に行ってやって」
「なんでですかぁ?」
「逃げないように」
「…信用ないんですねぇ」
「理解してる、と言って頂戴」
ニャー子は加藤の表情を読もうとしたが、前髪が邪魔で出来なかった。
逆に自分が読まれそうな気がして、急いで藪崎の後を追うことにした。
335 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:33:05 ID:???
そして時間は冒頭に戻る。
ちなみに現在藪崎一人なのは、あまりの優柔不断さに、ニャー子があきれて飲み物を買いにいってしまったせいだった。
藪崎は覚悟を決めると、ノブを掴み、一気に扉を開けた。
…なぜか壁に隠れながら。
(何で私が隠れなあかんね!まるで悪い事してるみたいやないか!)
怒りながらもいきなり飛び出す気にはなれず、陰から覗き込むことにする。
中には目を丸くした細面の男が一人。
(む、おらんのか荻上)
(…)
(…)
(…)
(…出直すか?)
そう思い始めた頃、男が口を開いた。
336 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:33:52 ID:???
ところでその男、朽木は驚いていた。
いや、漫画を読んでいたらいきなり部屋の扉が開き、なのに人の姿は無く、さらにその後人影が部屋の中をうかがっていれば、誰だって驚くだろう。
(ヤブー【朽木による藪崎の脳内呼称】?何してるんだ?ああ、オギチンに用かな?)
(居ないっておしえてあげ…)
朽木の思考はそこでいったん途切れた。
なぜなら藪崎の背後に、見覚えのあるアンテナが見えたからだった。
朽木は改めて思考をめぐらせる。
(この状況での最良解は何だ?落ち着いて、冷静に考えるのだ)
(三択だな)
(@ヤブーに声を掛ける)
(Aオギチンに声を掛ける)
(Bボケる)
朽木は悩まずに選択した。Bを。
「志村うしろうしろ〜」
「「(なんや・なんですか)それ」」
ボケ失敗。
「ぎゃ…」
「「ぎゃ?」」
「ぎゃふん」
「「???」」
再び失敗。
337 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:34:49 ID:???
その後。
(まあ、あの時は二人の気を削ぐことには成功したのだから、あながち間違いではなかったのかも…)
朽木がそんな事を思うくらい、現視研の部室には重苦しい空気が漂っていた。
荻上は原稿用紙に向かっている。
藪崎は窓の外を睨んでいる。
二人は互いを無視し続ける。
言葉も、視線すら交わさない。
そのくせ朽木が動こうとすると、示し合わせたかのように殺意のこもった視線で睨みつけるのだ。
(誰か…助けて…)
朽木は祈る。それしか許されない。そしてどこかの気まぐれな神様がそれに応えたのか、扉が開き、一人の女性が現れる。
ニャー子だった。
「失礼しますぅ。はい、先パイ。ご注文のお茶ですよぅ…あ、荻上さんも飲みますかぁ?」
「いりません」
「そんなら私もいらん」
ニャー子の登場でわずかに緩んだ部屋の空気が、このやり取りでまた一気に重くなる。
338 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:38:33 ID:???
「えー、そんなぁ……せっかくだから、飲みますぅ?」
ニャー子の差し出すお茶を、家族以外の女性から物をもらった事が無い朽木は、大喜びで受け取ろうとして、
二人の視線に殺された。朽木は本気でそう感じた。
「ケッコウデス。エンリョシマス…」
名残惜しそうに断る。
「あ、そう?」
ニャー子は何の感情も示すことなく、お茶をひっこめた。
339 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:39:23 ID:???
「ところで先パイ。ちゃんと謝りましたぁ?」
重苦しい空気を物ともせず、ニャー子が切り出す。
「このアホ!!一体何言い出すんね!!」
「いいかげんさっさと謝っちゃいましょうよぅ。私買い物とかしたいんですけどぉ」
怒り狂う藪崎も物ともしない。
「だったら先に帰り!」
「駄目ですよぉ。加藤先パイに言われてるんですからぁ」
「うちと加藤とどっちが大事ね!」
「加藤先パイには逆らえません」
「う」
ここまでのやり取りで、荻上にも大概の事情は知れた。もったいぶって語りかける。
「で、藪崎さん。ご用件はなんですか?」
340 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:40:09 ID:???
藪崎は荻上を睨み、目を逸らし、口を開いては閉ざし、ようやく何かを言おうとした時、荻上の携帯が鳴った。
荻上は携帯を取り出し、通話ボタンを押す。
そして携帯から聞こえた声に答えた。
「笹原さん?」
荻上は瞬時に失敗を悟った。
声を出してしまった。いつも通りの声。ただし二人きりの時の。
すぐさま通話を切る。
横目で薮崎を窺う。
藪崎はニヤニヤ笑っていた。
「いやあ、ええもん聞かせてもらったでぇ?『ささはらさぁん』ってなぁ」
その瞬間、荻上の中で何かが切れた。
「好きな人の名前を呼ぶことがそんなにおかしいか!?」
「な…何や!男が出来たくらいで勝ったと思うな!」
「だったらさっさと作ってみたらええべ!!」
「なんやて!!!」
「何が!!!」
息を切らして睨みあう。
ニャー子はその様を(表面上は)無感情に眺めている。
朽木は胃のあたりを押さえながら突っ伏している。
341 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:40:57 ID:???
再び荻上の携帯が鳴る。
二人は視線を外す。
荻上が携帯に出る。
「…いえ、別に何でもありません。ちょっと忙しかったので。…はい。…はい。…その事は後でこちらから連絡します。…何でもないですから。じゃあ失礼します」
通話を切ると同時に、藪崎が口を開いた。
「…もうええわ」
そう言い捨てて部屋を出て行く。
「あ、待ってくださいよぉ」
ニャー子が後を追う。
「体の具合が優れないので、今日は早退しますね」
胃のあたりを手で押さえながら、背中を丸めて朽木が出て行く。
そして部室には荻上が一人残された。
342 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:41:47 ID:???
「はぁ…」
荻上はため息をついた。
実は荻上も、藪崎との合作には興味があった。
加藤→大野と経由してきた彼女の同人誌は、納得できない部分もあったが、それ以上に良い意味で刺激的だったのだ。
「はぁぁ…」
荻上はもう一つため息をつくと、原稿用紙に向かった。
一方藪崎は漫研の前で頭を抱えていた。
(どうしよう。謝るどころか余計こじれてしもた。なんて言い訳しよ…)
実は加藤はとっくに帰宅してしまっているのだが。
二人が合同サークルを作るのは、まだまだ当分先のことになりそうだ。
343 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:42:47 ID:???
おまけ
「やっぱりうまくいかなかったのね」
「やっぱりって…失敗がわかっていてやらせたんですか?」
「『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』というものよ」
「スパルタですね…」
「あの子は私が見込んだ子だから。あの子は伸びるわよ。自分の気持ちに素直になれば、ね」
「できますか?」
「できるわよ。実際あなたの所の彼女は変わったでしょう?」
「彼氏ができたせいじゃなくて?」
「それはただのきっかけに過ぎないわ。自分を見つめて、受け入れ、乗り越える。これが全て」
「はあ…」
「それがあって初めて人は成長するの」
「…あなたの趣味ってよくわからないんですけど」
「自分ではわかりやすいと思うけどね。『人の成長していく様、そしてその頂点』というだけだから」
「いい趣味してる、って言っておきます」
「ありがとう」
344 :
ヤブーの話:2006/09/26(火) 13:44:17 ID:???
以上です。
藪崎以外の二人は難しいです。
>ヤブーの話
うはーキャラたってますなあ…☆
にゃーこも加藤さんもいい味だしてますにゃ。ハリセン出すとことかいいですにゃ。
クッチー哀れw…まあ、とにかく藪崎さんにはもっと頑張ってもらいましょう、荻上さんのために。
面白かったです。
だがあえて言おう!
「一体何言い出すんね!」←関西弁じゃないような。
「何言い出すんや!」「何言い出すねん!」やないかなーと関西人の自分が言ってみる。
噛んだんだよ
>ヤブーの話
タイトルに思わず「異次元人じゃないんだから」とツッコミ入れつつ、一気に読んだ。
いやいやどうして、しっかり描けてると思いますよ、漫研はぐれ腐女子三姉妹。
個人的には加藤さんの脳天唐竹割りツッコミ好きだけど、関西人相手なので合わせたのかハリセンもグー。
クッチーすら胃の痛くなる木星並みの重力の中、平然としてるニャー子に萌えた。
意外と大物、初代会長と同じ種族なのかも知れない。
そして何と言っても藪崎さんの自爆&ドジッ子&ツンデレぶりに萌えた〜〜〜〜!!!!!
愛してるよ、藪崎さ〜〜〜〜ん!!!!!!!
この3人の影に隠れて目立ってないけど、強気で迎撃する荻上さん、結果的に滑ったけどナイスなボケかましたクッチー、そしておまけで暗躍する大野さん(だよね?)もいい味出してる。
ぐっじょぶ!
>>ヤブーの話
この調子で話を続けてください〜。
荻藪話が読めると幸せです。
>>345 何言い出すんね!(広島弁)
たぶん何言い出すねんの書き間違え…と思いつつ、確かに
「何言い出すねん!」「何言い出すんや!」ですが、関西圏だと「言い出す」
って使わずに「何言いよるねん!」さらに縮まって「何よんねん!」が
一番自然かも知れませんね…とか関西圏じゃない人が藪を書きづらくなる
ような事を言ってしまってすみません(汗)。
僕は東北弁わかりませんしね!!!
確かに
やっぱヤブーはいいねw
荻藪サイコーw
関係のないところで
クッチーの「志村うしろうしろ〜」に吹きましたがw
>>ヤブーの話
うははw 風景が目に浮かぶようなSSです。面白かった。元絵も好きなんで嬉しい。
学生の頃似た状況に居合わせてしまったことがあり、なんつーか空気は存在してても呼吸するための酸素がなくて窒息しそうになったんだがその時のことを思い出したorz クッチーお前はよくやったと思うw 今は休め。
あとおまけの二人が、さながら運命の女神か悪の女幹部(……俺、なんで悪だって思ったんだろう?)のような会話でまだまだ広がりを感じさせる。
ステキな話をありがとう。俺も書いてるがもう少し時間が必要だ。
♪遠く輝くビックサイトで 腐女子が妄想描くとき♪
♪ヤブール人の魔の手が伸びて メガネで決める攻めと受け〜♪
♪いまだ!(バーン!) 変態(「ん」)! ササヤンとオギー♪
意味不明な唄はさておき、最近Macが派手にクラッシュしたのでSSスレご無沙汰してましたが、すげーおもしろいです。>様子見ヤブー
ヤブー、加藤、ニャー子のキャラも立ちまくり。
おまけ部分は加藤さんと大野さんですよね?
にしても、朽木君お気の毒さま……。
……で、絵板も覗いて二度萌えた。
さて僕も書くか〜!
×すげーおもしろいです。>様子見ヤブー
○すげーおもしろいです。>ヤブーの話
すんません、興奮しすぎだ俺。
こんちわ。実はここんとこエロパロ行ってましたw
使用目的が限定されているだけにとても難しいジャンルで往生しましたわ。楽しかったけど。
んでさて、また1本書き上がりました。
いつものように土曜日投下しよっかなーと考えてましたが、今日の仕事が全部明日じゃないと完結しない状況になった(上に上司も帰っちまった)ので、これから投下します。
明日は頑張って都合1.5日分の仕事だorz
タイトルは『はじめてのおつかい』、本文11レスです。よろしく〜。
「戦略会議?」
荻上千佳がすっとんきょうな声を上げたのは、目の前の大野加奈子のセリフが一瞬理解できなかったからだった。
「そそ、そーです。会議です」
加奈子は楽しくてしょうがないという表情をしている。
「第二回・荻上さんのコミフェスデビューを現視研で応援しよう会議〜!」
「なんでそんなコトしなきゃならないですかっ!」
テンションの上がってくる加奈子の声に負けないように、千佳も声を張り上げた。
「私の個人サークルで参加してるんですからご迷惑はおかけしないって説明したじゃないですか。それになんですか第二回って!」
7月はじめのとある午後。いま現視研部室にいるのは加奈子と千佳、そして二人に背中を向けて履歴書を量産中の笹原完士の3人だけだった。
「なーに言ってるんですか水臭い。荻上さんだって現視研の一員でしょう?メンバーがサークルの趣旨に沿った活動をしてるんですから、手伝わないって手はありません」
加奈子が言葉に力を入れる。
「それに第一回はついこないだやったじゃないですか、荻上さんが当選したの教えてくれた日に」
「う」
千佳の動きが止まる。そのことは……思い出したくなかった。
千佳が夏コミの当選を知ったのは6月のおわりのことだった。冬には覚悟を決めて申し込んだ即売会だったが、数ヶ月を経る間に記憶も覚悟も当時の勢いを失っていた。
いざ当選通知をポストで発見してみると、「自分にできるのだろうか」「漫画なんか描けるのだろうか」などと不安と後悔ばかりが先に立ち、翌日顔を出した部室で千佳は加奈子にぽろりと本心を吐露したのだ。
そんな彼女を加奈子は先輩として友人として励まし力づけ、それに千佳も勇気づけられた。それまでギクシャクしていた二人の仲も、わずかではあったが近づいた日だった……千佳が加奈子にコスプレをさせられたこと以外は。
「あの会議、笹原さんも憶えてますよねー?」
加奈子が笹原の後頭部に話しかけると、彼はこの位置でも判るくらい顔を紅潮させた。
「あー!笹原先輩忘れてくださいってお願いしたじゃないですか!」
「あ、あ、ごっごめん」
真っ赤な顔で振り向いて詫びる。が、千佳の顔を見てあの日のことをさらに思い出し始めたのは明らかだった。頭の上に雲型の吹き出しが見えるようだ。
「えーと、いや、なにも憶えてないよ?ホラあの日俺は部室に顔出さなかったんじゃ……」
「荻上さんのベアトリーチェ、かわいかったですよねー?笹原さん」
「ぶ!?」
「大野先輩〜っ!」
笹原先輩に見られた日。あんな恥さらし、一緒の不覚だ、そう思って忘れようとしてるのに。大野先輩のバカ。
「そんなくだらない話ばかりしてるんなら、もう帰りますからね!」
捨てゼリフを投げつけて帰ろうとする。
「荻上さん、からかったのはごめんなさい、でも一人じゃ大変ですよ」
加奈子は立ちあがろうとする千佳を呼び止めた。
「去年の笹原さんたちの話聞いてみて、人手はやっぱり必要だって思ったんです。設営や撤収なんか力仕事もあるし、トイレや食事の間スペース閉めたくないでしょう?せっかく本作るんなら、いっぱい人に見て欲しいんじゃないですか?」
中腰のまま動きを止めて、痛い所を突いてきた加奈子を睨む。
実際、一人で全てをやれなくもないとは思っていた。これまで下調べをして、当日の運営の仕方は頭には入っている。しかし、そもそもサークル参加が初体験の千佳にとっては不安材料も多く、なにより加奈子が言うとおりブースが無人になる時間が惜しかった。
先日の加奈子との話し合いで個人誌を発行する覚悟は決まった。が、どうせ出すなら一人でも多くの人に、自分の作品の出来を見て欲しいのが心情というものだ。
たった数時間の開場時間に、知名度も根回しもない自分の本の前で立ち止まってくれる人が一体どれほどいるというのか、そう思うと、これから制作する作品たちとなるべく一緒に過ごし、目前を通り過ぎる人たちに一言でも自分の漫画をアピールしてやりたいと思った。
食事は最悪、抜いたっていい。だけどトイレは?冬にも思い知ったあの熱気の中で具合が悪くなったら?不測の事態が起こったら?
「わたしたちも荻上さんが頑張ってるの、知ってますよ。だから、ちょっとでいいからお手伝い、させてください。ね?」
火のつきそうな千佳の視線をものともせず、にこにこと笑いながら加奈子が提案する。ようやく汗が引いてこちらを見ている笹原も、千佳を見つめてうなずいた。
「……わかりました。確かに人手があるに越したことはないですから!」
我ながら素直じゃないなと思いながら、根負けした風を装い椅子に座る。加奈子の笑顔が一段と輝いた。
「ありがとうございます!わたし、頑張りますね。笹原さんも頑張りましょうね」
「あ。うん、そうだね」
「いや、お礼言うの、私のほうですし。すいません。ありがとうございます」
詫びるのも感謝するのも慣れていない自分の声が、まるで棒読みのように聞こえる。それでも二人は、にこにことこちらの言葉を聞いている。イヤミでもなんでもないのは、もう解っていた。現視研の人たちというのは、こういう人種なのだ。
「じゃあじゃあ、いつにしましょうか、荻上さんちに行くの」
「え……」
「はあっ?なんで私の家なんですか!」
「いーじゃないですかぁ、リーダーの家に集まるなんて決まりみたいなもんですよ。参加要領とかいろんな資料も荻上さんちなんでしょ?持ち歩くより、自分で保管してるほうが絶対安心ですよ」
「あー。去年やった時にも入場券見当たらなくなって慌てたんだよね、ギリギリで」
「……わかりましたよ!もういいです私の家で」
「荻上さん、そこはもっと明るく『Welcome home,my dear〜』って」
「英語なんか喋れません!」
「Oh,no」
「おーのーじゃねっスよ、いっくら大野先輩だからって」
「ぷっ」
笹原が吹き出した。
「?」
「どうしたんですか?笹原さん」
「あー、あ、ごめん」
慌てた様子で謝るが、笑いをこらえているのが明らかだ。
「いや、大野さんと荻上さんの掛け合い、なんかテンポよくなってきたなーって思ってさ」
「あらまあ」
「そっ……!」
まんざらでもない様子の加奈子と、条件反射的に怒り出す千佳。この対比がまた笹原のツボに入って大爆笑する。
「あっはははは!」
こんなことで笑えるなんて、就職活動でそうとう疲れてんだなァ……そんなふうに思っていると、いつのまにか隣に寄ってきた加奈子が紙片を見せた。
「荻上さん、ここだけよろしく」
「は?」
戸惑う暇も与えず千佳を引っ張って立たせ、今度はなんだと興味津々の笹原に視線を送る。
「曜湖と!」
千佳の脇腹をつつく。紙切れに書いてあった文字。『荻上さんのセリフ→』……。
「あ、あっ……鳴雪のっ」
「「げんしけんシスターズでーす!」」
「ってナニやらせんですかーっ!」
セリフを合わせるばかりかうっかりポーズまでとってしまい、慌てて抗議するものの、加奈子はどこ吹く風だ。
「ノリいいじゃないですか荻上さん。ほら笹原さんもたいそうお気に召したようですよ」
悶絶している笹原を指す。笑いすぎで声も出ないらしい。
「笹原さん笹原さん、今度は咲さんに『ミナミハルオでございます』って言ってもらうバージョン、準備しときますから」
「古いっすよ大野先輩」
「も、やめて……死んじゃうよ俺」
「ほら、笹原さん困ってるじゃないスかぁ」
笹原が楽しんでいるらしいのはありがたい。が、あまり恥さらしな真似ばかり彼の前でしたくないのも本音だった。これまでの千佳の記憶でも、笹原の前では自分はまったくいいところを出せていない。
思い起こしてみれば、1年前の夏コミ準備ではみんなが一生懸命なときに勝手に泣き出し、冬コミでは変装までしてやおい同人誌を買いこんでいるのを見つかり、先日はついに恥ずかしいコスプレまで……。
「ふざけてるんなら本当に帰りますよ!」
「あああごめんなさあい〜!」
まったく、3人が集まれる日付を確認するだけのことになぜこんなに時間を食わされるのか。結局『第二回ナンタラ会議』は本題3分、雑談27分を費やして終了した。
****
「それじゃ来週、よろしくお願いします。ご迷惑かけます」
「だから硬いですよ荻上さん、もっと楽に楽に」
いずれにしても気分がそがれた千佳は、テーブルの上の荷物を片付け始めた。今日はもう講義もないし、自宅で原稿の続きでもしよう。その前にペン先のストックが切れているし、気分転換に買い物でもしてこようか。
「あれ、荻上さん帰っちゃうんですか?」
「ええ、あとは家帰ってやります」
「それじゃ、俺も出るよ。大野さん4限あるんでしょ」
「あ、すいませえん。履歴書書き、はかどりました?」
「ご覧のとおり。ちょっと失敗しすぎちゃったよ、もう少し買ってこなきゃ」
あ。千佳の頭にセリフがまたたいた。『あ、私も生協寄るんで、一緒に行きませんか?』どうせついでだし、さっきの無愛想な態度を詫びるチャンスもあるかもしれない。
「あ……」
口を開くと同時に、笹原の携帯電話が着信を告げる。聞きなれた着メロではない、普通の呼び出し音だ。
「あ、ちょっとごめん……ハイ笹原です……あ、はいお世話になります。先日はありがとうございました」
彼が一気に緊張したのがわかる。たぶん就職の面接先だろう。これまでにも何度か同じ場面に遭遇していた。
「はい、はい……え、ホントですか?」
口調が明るくなった……いいニュースだろうか。同じように固唾を飲んで見守る加奈子と顔を見合わせる。
「ええ、はい、大丈夫ですよ。お願いします、ありがとうございます。15時半に本社ですよね、はい、行けます」
そのあともしばらく会話が続き、電話は切られた。笹原は時計を確認すると、壁にかけてあったスーツを手にする。加奈子が聞いた。
「笹原さん、いいお話ですか?」
「うん、二次面接やるから来いって。福間書房」
嬉しそうに答える。大手出版社の名前に、千佳も心が浮き立った。
「あ……おめ」
「ええー!すごいじゃないですか笹原さん!」
おずおずと発せられた千佳の声はしかし、アメリカ仕込みの加奈子の大声にかき消された。
「あ、ありがとう、でもこの先が長いからね。それにもう出なきゃ。あ、履歴書どうしよ……ここに置いておいて……いや、明日も朝から出ちゃうし……しょうがないな、持って行くか」
「……ぁ、あのうっ!」
「わっ、え、なに?」
勇気を振り絞って出した声は、今度は少々大きすぎたようだ。笹原も加奈子も、目を丸くしてこちらを見ている。
「あ、すいません……私、帰る前に生協で買い物して行こうと思ってたんですが、その」
笹原に目を合わせられない。余計なお世話じゃあるまいか。断られたらどうしよう。
「履歴書、ついでに買っておきマスよ?……それに、その書きあがった分も、笹原さんの家にお届けするくらい、なら」
言ってしまった。お節介に取られないだろうか。お節介だよなあ。
「あ……ありがとう、荻上さん。でも迷惑じゃ……」
笹原が遠慮しそうだと思ったところまでは予想通りだった。が、その声にかぶせて、加奈子の予想外の大声が響く。
「よかったじゃないですかぁ笹原さあん!」
「え?」
「笹原さん、次の会社の履歴書なんか持って歩いたら面接の気迫に欠けますよ!それになにかの拍子に面接先で見られちゃったら大マイナスじゃないですか」
「あ、なるほど」
「せっかく荻上さんがああ言ってくれてるんです。甘えない手はないですよ!」
加奈子が千佳に目配せを送る。千佳も慌てて言葉を重ねた。
「あっ、ほっ、ホントに大丈夫ですついでですから!笹原さんの家の場所も判りますし、あの、ポストにでも入れておきますから」
笹原は千佳を見つめる。そして、ほっとしたように微笑んだ。
「……ありがとう、荻上さん。それじゃ、お願いしてもいいかな」
笹原の役に立てる。それだけで、なぜかは判らないが安堵感が心に広がった。まあこれで、少しは自分のイメージを挽回できる。それだけでもいいではないか。
封筒に入れた履歴書の束と、今から買う分の代金を受け取る。三人で部室を出て、加奈子がドアに鍵をかけた。
「それじゃあ荻上さん、ごめんね、ありがとう。ポストに放り込んでおいてくれればいいから」
「はい、わかりました」
「笹原さん笹原さん。合鍵渡しちゃったらどうですか?」
「……ナニ言ってんの大野さん。それじゃ行ってくるね」
「頑張ってくださいね!ほら荻上さんも!」
「あ、頑張って……クダサイ」
スーツの上着を肩にかけて駅へ急ぐ笹原の背中に、やっとの思いで声をかける。片手を挙げて振り向き、笑ってくれた笹原に、もっと大きな声で言えたらいいのにと思った。
「荻上さん」
もう見えなくなった廊下の先をぼんやり見ていると、加奈子に声をかけられた。
「あ、はい」
「荻上さんも頑張りましょうね!」
顔中に力を込めて自分に笑いかける加奈子に、そこまで気合を入れなくても、と思う。とはいえ、この雰囲気に慣れてきている自分がいるのも確かだった。
「ありがとうございます。原稿描き、頑張りますね」
今のセリフは自然に言えた。自分としては満足だが、……なぜか加奈子の表情は微妙だった。
「……あれ?私なにか変なこと言いましたか?」
「いっいえいえ、なんでもありませんよ。じゃ、わたし講義あるんで失礼しますね」
「はい。じゃ、また」
「さよなら。……荻上さん」
きびすを返して歩き出すが、数歩で加奈子から呼びかけられた。歩きながら振り返る。
「はい?」
「頑張ってください、ね!」
「だーから頑張りますって!」
まったくおかしな人だ。原稿頑張るって言ってるでねェか。
自分の頬が熱くなっているのはあえて無視して、千佳は売店へ急ぎ足で向かった。
****
そして……そして数時間後。
千佳は現視研の名簿から書き写した笹原の住所を見つめながら、夕焼けの住宅街を歩いていた。顔には妙な疲労感が見て取れる。
「……なんだってこんなことになっちまったのか」
もう何回繰り返したか判らない呟きをもらし、ため息をつく。
つまづき始めは生協の売店だった。
文具売り場へ行くなり、学生と店員との話し声が聞こえてきたのだ。
「ええ〜?おばちゃんそりゃないよォ!」
「ごめんねー、さっき来た学生さんが残ってた履歴書根こそぎ買ってっちゃって」
耳を疑い近づいた千佳に、続いて言葉が聞こえてくる。
「明日の朝イチで入るから、それ待ってね、すいません」
「もー。いいよ、コンビニ行ってくるから」
「ほんとごめんねー」
事情は飲み込めた。学内の売店はここしかなく、ようするに手近に履歴書用紙を買う場所がない、ということだった。
「(困ったな。……買っておくって言っちまったし、これで手ブラはねえよなー)」
千佳は立ち止まって考えた。
「(コンビニは……なんか間に合わせっぽくて印象良くねえな……『え?わざわざ街まで出て買ってきてくれたの?荻上さん、俺嬉しいよ(感涙)』……ちょっと行ってくっかな、どうせヒマだし)」
降ってわいたイメージアップのチャンス。それに、言いつけられた買い物くらいこなせないでどうする。モノレールで10分のターミナル駅には大きなショッピングセンターがあるし、行って帰ったって小一時間の散歩だ。
……そう思ってたどり着いた文具店が、なんと改装工事中だった。
「(あー、あー、えーと、町ん中の文房具屋……場所も知らねしこれでまた定休日とかいうオチがついてたら目も当てられねし、そっそうだ、絶対あるトコ!)」
もうこの段階でテンパった千佳の脳には、はるばる特急に乗って新宿に出るしか選択肢がなくなっていた。途中にもターミナル駅や大きなデパートのある街もあるのだが、不運が重なってくると悪魔にでも魅入られたような気分になってしまう。
「(時間がかかるって言ったってここまで来てれば片道30分だし、ほら大きな画材屋だってあるでねェか、そーだそーだちょうど絵の具なんかも見ときたかったんだ、ええい行っちまえ)」
……と、いったことがあって、千佳の帰還がこんな時間になってしまったのだ。
実際買物はスムースに済んだし、ペン先のほかにも以前から使ってみたかった彩色具も買うことができた。さらにせっかく新宿まで来たんだしとばかりにいろいろ他の買い物までしてしまった千佳がようやく笹原の家を探し当てたときには、もう日が暮れようとしていた。
アパートのドアをノックしてみるが返事がない。彼はまだ帰宅していないようだ。
「(まだ帰ってねェのか、まあでも余計な心配させずにすんでよかった)」
紆余曲折はあったがきっちり用事を果たせることにほっとしながら、バッグから文具店の紙袋を取り出す。ドアノブの下の郵便受けを見つめる。
「(コレだけ放り込んで帰ったら、そっけなさ過ぎるかな?手紙かなんか、つけた方がいいだろか……いやいや、頼まれたモン買って来ただけなんだから……でもなにもナシだと、迷惑してたみたいに取られるかな)」
紙袋を見つめながらまた堂々めぐりを始める。知らず知らず、思考が声に出ていた。
「電話かメールでもしとくか……『いま着きました。履歴書、ポストに入れておきますね』……用件伝えるためだけにメールすんのもなァ」
仮想メールの文面を読み上げる声が乙女モードになっているが、これも本人は気付いていない。
「……『面接お疲れさま!頼まれたものと一緒に栄養ドリンクも買ってきました。これで元気だして下さいね』いや買ってねェし……あ、でも今から買ってきて」
振り向いた千佳の目の前に、人の影。
「荻上さん?」
「ひゃあッ!」
そこには笹原が……ちょうど帰って来た彼が、目を丸くして立っていた。
「さ……」
「え、荻上さん、こんな時間にどうしたの?」
「あ……っ、あの、頼まれものを」
狼狽しながら、とにかく手に持っていた用紙を手渡す。笹原は受け取ったものの、新宿のデパートの紙袋に首をひねっている。
「え、あ、ありがとう……って、えっ生協で買うって言ってなかった?」
「それが……売り切れで」
「それでわざわざ新宿まで行ったの?」
「や、ちょ、ちょっと買い物もありましたし」
「それにしたって……」
こちらを見る笹原の目つきが『それにしたってこんな無駄なことを』と言っているようで、いたたまれなくなる。
「あっ、す……すいません、それじゃこれで」
感情が爆発しそうになるのを感じて、笹原の脇をすり抜けようとする。と、笹原がその手を掴んだ。
「荻上さん、待って!」
「は……っ」
「あ……びっくりした?ごめん」
よほど驚いた表情をしてしまったのか、手を離して詫びる。
「……荻上さん、とんだ手間かけさせちゃったね。ごめんね、ありがとう」
「いっいえ……さっきも言ったとおり、ついでですから」
「あの……せっかくだし、お茶でも飲んでく?」
「……え?えええ?」
「あ、あー、いや、きたない部屋だけどまあ掃除くらいしてるし、その……なんだ、お礼……ってほどにもなんないか、えーっと」
目の前の人物が動揺しているのを見て、千佳はようやく我に返ることができた。
「あ、あの、ありがとうございます。でも今日は帰ります。笹原さん、お疲れだと思いますし、明日も朝から面接ですよね」
「え……あ、うん」
「お使い、こんな時間になってかえってご迷惑おかけしました。でも、また何かあったら気にせず言ってください。それじゃ失礼します」
一気に喋って、くるりと体を回転させて歩きだす。今度は笹原は引き止めなかった。
「……あのっ」
その代わりに、こう話し掛けてきた。
「来週、打ち合わせ、よろしくね。楽しみにしてるから」
千佳は体をわずかに回し、顔を彼に向ける。笑えればいいのに、と思うが、今の自分には無理そうだ。
「はい、よろしくお願いします……私も」
せめて、できるだけ普通の顔をして、彼に答える。
「私も、楽しみですから」
「うん。じゃあね」
「はい、おやすみなさい」
彼の視線を感じながらアパートを出て、自宅に向かって歩きだす。笹原のアパートは通路の蛍光灯も暗く、これなら赤くほてった顔は彼に知られずにすんだだろう。
『楽しみにしてるから』笹原の言葉が脳内にリフレインする。とっさに握ってきた手の温もりを思いだす。どうしたことかそれに重なって、加奈子の『頑張って下さいね』という言葉も浮かんできた。
一心不乱に歩く耳に、ようやく笹原が部屋に入る音が聞こえた。充分タイミングを測って、立ち止まり、振り返る。
遠くに見えるアパートのドア。あの奥に、笹原さんがいる。今日は、ちょっとは役に立てたろうか。
ふと、さっきの自分を思い返す。笑顔こそ見せられなかったが、一生懸命、自然な会話をしようとした自分。うん、あの自分は悪くなかったんじゃないかな。けっこういいんじゃないだろうか。あれなら、……ええと、そう、信頼できる後輩。信頼される後輩になれてると思う。
「……あ。あれ?」
ふと気付いて頬に手を当てる。緊張のせいかなんのせいか顔が赤くなっているのは感じていたが、……あれ。笑ってる。
「ふ……ふふっ。うはー、なんだコレ。うふふっ」
頬の筋肉がひきつれて戻らない。えーと、そか、おつかい無事に終えて安心してんだな、私。
笑いかけてくれた笹原の顔が脳内によみがえる。かつて、落書きノートに描いたみたいな強気の、包み込むような笑顔を見せる彼。
ああ、私は笹原さんのことを……ええっと……うん、『尊敬』、してんだなァ。
家路をたどるステップも軽い。大荷物の重さも感じない。時々軽くスキップしているのも、本人は気付いていない。
この先、まだまだ暑くなる初夏の夜を、千佳は踊るような足どりで帰っていった。
おわり
考えてみると成立前の笹荻を書いたのは初めてだ。
書き始めたタイミングが町に盆踊りのやぐらが立ち始めた時期で、「盆踊りねえ……オギーにツンデレ音頭でも踊ってもらおうかなー」てな軽いノリでスタート。まあその『買うたやめた音頭』みたいな、想いの揺れるさまをあらわしたステップとでもw
オギーにしても笹原にしても、相手にビビビッと(古)来た決定的なポイントがぼかされてるので、逆に書き手としてはいろいろいじくれる題材だと感じた。
これまでに書いたSSでもオギーのビビビポイントはもう少しあとだと解釈しているので、この時期の踊りはこんな感じかなと。
以上です。ありがとさまでした。
>はじめてのおつかい
何故かメビウス系のタイトルが続く今日この頃…(注)
時期的には38話(荻上さん部室でコスの巻)の少し後、39話(恵子の爆弾発言で荻上さんご乱心の巻)の少し前の話ですな。
そして40話(荻ルームで作戦会議の巻)の集まりが39話以前に決まってたという設定ですが、見事なつなぎ方だと思います。
実は原作読んだ時、39話の険悪な状況から40話の展開ってチト唐突だなと思ったのです。
でも今回の話のおかげで、何か自分の中で上手く繋がりました。
そして久々に、結ばれる前の嬉し恥ずかしモードの笹荻、堪能させて頂きました。
感謝。
(注)
「ウルトラマンメビウス」に「初めてのお使い」というサブタイトルのエピソードがある。
こちらはトリヤマ補佐官(偉いさんだがコメディリリーフ)が、無機物に取り付くと怪獣化する細胞を落としてしまい、えべっさんの木像が怪獣化して大騒動というお話。
あと「ヤブーの話」については単に語呂の話。
かつて「ウルトラマンエース」のレギュラー悪役だった異次元人ヤプールが、現在メビウスで復活している。
>>はじめてのおつかい
成立前、久しぶりに読みました…というか成立前の新作が読めるなんて嬉しいですw
やー、だんだんフラグが蓄積していったんでしょうねぇ。
乙女モードありがとうございました!
>はじめてのおつかい
読んでて心がほのぼのしました。
いいなあ、この絶妙な距離感。お互いちょっと意識してて、着かず離れずみたいな感じ。
ごちそうさまでしたっ。
…エロパロ板にもかかれたんすか?wktk
まいどお読みいただいてありがとうございます。常連書き手の何人かが充電モードに入ってるみたいでいささかスレがさみしい。まあ保守がわりにでもしてもらえば光栄。
てか今日サンクリか。いいなあいける人。
>>366 『マル。』の時にも長文感想いただいた方じゃないかとお見受けしますが。いっぱい書いてくださって感謝しとります。
あの時期のオギーは木尾センセの構成上も、乙女心を描きすぎるわけにもいかずクリエイターとしての腕の振るいどころだったんではないかと思います。おかげで二次創作屋としてもいろいろ楽しめますね。
てか怪獣化えべっさん見てーw あとで検索してみよう。
>>367 成立前の時期を書いてみたら面白いんじゃないかと思ったのは最近ですが(それまで自信なかった)、同じ流れで笹原側の視線も描けるんではないかと思いつつ。インスピレーションが来たらやってみたいっす。
>>368 エロパロの過疎っぷりを見かねて、って嘘ですパトスが不意に溜まったので2作ほど放り込んできました。1本目なんか直後に雑談がはじまり、いたくハラハラしたw ほのぼのHが好きな人だと自己分析していたが、とんだガチエロ野郎でしたすいません。
御用とお急ぎでなければあちらもぜひどうぞ。昨夜だか勇者が降臨して俺的にはなんか嬉しい。
二次創作屋
二次創作屋
そうですか 二次創作が生きがいの方ですか
頑 張 っ て くださいね
371 :
特報:2006/10/04(水) 00:50:13 ID:???
こういう予告の書き込みって、完成させなければならないって義務感のプレッシャー背負うことになっちゃうから、個人的には好きじゃありません。
だがスレもやや過疎っぽい状況にあるし、SSの続きに行き詰っている自分に喝を入れるべく、敢えて中間報告を送ることにしました。
現在、今年の夏コミを題材にしたSSを書いてます。
夏コミの参加経験が無いこともあり、あらゆる事柄についてデータ検索しながら進めているので、なかなか進みません。
しかも主要登場人物は「11人いる!」のその後の話なので、オリキャラ11人プラス原作キャラ15人で総勢26人いるし。
準備稿の先日書き上がった分だけでざっと30レス、しかもそれは殆ど夏コミの準備の話で、まだ夏コミ始まってません。
完成したら何レスになることやら、いやはや頭痛いです。
でも9巻までには何とかお届けしたいと思います。
今しばらくお待ち下さい。
>特報
wktkしながらのんびり待ってまつ。
自分も書きたいものがあるけどかくひまが…
くそーーう!!もにょるっ!!
想像力不足もあって、このスレに限らずオリキャラが出てくる作品はどうも受け付けないんだな(しかもキミのは11人!)。しかし、予告してまでとは気合い入ってますよね。
その意気に応えて26人の群像劇、しっかり読ませていただきますのでガンガッテ下さい。
>>371 その意気やよし!楽しみに待たせてもらいます。長編も問題なし。このさい1スレ乗っ取っちゃえw
>でも9巻までには何とか
9巻出たら8巻のときのような「重大な既成事実発覚」「ネタ衝突」「新キャラ登場」があるかも知れんのでソコはがんがれ。
っつか9巻あと用の『○○人いる!』も楽しみにしてますねwktk
さて、大物が来る前に小さいの二個投下するよ。
三レス×2だから。
前にあったSSにかぶる部分もあると思うんですけど、
そこは許してください。
376 :
二つの幸せ:2006/10/06(金) 04:53:41 ID:???
きっかけはどうしようもなく小さなことだった。
「・・・え?」
気付くとそこは仙台であった。
荻上は非常に驚いた。駅のベンチに座り、呆然とする。
「あー・・・。そうか。無我夢中で電車に乗ったんだっけ。」
昨日の夜、笹原と喧嘩をした荻上は、そのまま飛び出し、
気付けばここにいた。
先ほどまで電車で寝てたためか、記憶が定かでない。
喧嘩の原因ですら、彼女には思い出せなかった。
「・・・電話・・・。うわ・・・。」
物凄い数の着信履歴。全て笹原だった。
「今日は・・・仕事だって言ってたな・・・。」
段々思い出してきた。
・・・最近構ってもらえなかった私がわがままを言ったのだ。
笹原さんは明日も早いというのに。
・・・でも・・・あんな言い方ひどいと思う・・・。
『あー、もう、いい加減にしてよ。うるさくするなら帰って。』
・・・わかっている。私のほうが悪い。
「あー・・・。もう無理かな・・・。」
いっそ諦めてしまった方が。
「笹原さんもこんなの相手にするの嫌ですよね・・・。」
377 :
二つの幸せ:2006/10/06(金) 04:55:05 ID:???
ブルル・・・・。
バイブレーションにしていた電話が震える。
「!笹原さん・・・じゃない?」
そこに出ていた名前は「斑目先輩」・・・。
「え?どうしたんだろう。」
普段、電話するような人じゃないしな・・・。
「はい。荻上です。」
『おー、荻上さん。出てくれたか。』
「え?」
『いや、笹原から話を聞いてな。
俺なんかに相談してもどうしようもないだろーによ。
あいつ相当凹みやがって。自分が悪いだろうによ。』
「あの・・・。どういうことですか?」
『あん?笹原がキッツイ事言って荻上さんが出て行ったんじゃねーの?
俺はあいつからそう聞いたんだけど。」
「・・・違います。私がわがままを言ったんです。
悪いのは私です。」
笹原が自分を責めるのはおかしい。荻上はそう思った。
『・・・お互い反省してるんだったらもういいんじゃねえか?
会って話をするのが一番さ。』
「・・・いえ。なんか、笹原さんに迷惑かけるのがもうイヤになって・・・。
もうやめにしたほうがいいんじゃないかって・・・。」
『おいおい・・・。それはおかしいだろ。』
「でも・・・。」
378 :
二つの幸せ:2006/10/06(金) 04:56:08 ID:???
『まあ、ちょっと聞いてくれよ荻上さん。』
いつもと違う・・・優しい斑目の声が聞こえる。
『人間、素直になれるのが一番いいんだろうな。
でもよ、それがこうやってケンカの原因なったり・・・。
ま、色々起こるわけよ。それはしょうがないことだと思うんだよ。』
「はい・・・。」
『でもさ、そんなことで欲しいものが諦められるようなら、苦労はしねえよな。
世の中には幸せになる方法は二つあると思ってるんだけども・・・。』
「二つ?」
『ああ。一つは、当然欲しいもの、夢がかなったりすることだと思う。
もう一つはそいつらを全部諦める事。諦められりゃすっとすんだろうなぁ。』
その言葉に荻上はドキッとした。そうか、先輩は・・・。
『でも、大概の奴が諦められず追いかける。
簡単に諦める事が出来りゃ世の中幸せだろうよ。』
「そうですね・・・。」
少し笑ってしまう。
『なんだ、荻上さん。君は手に入れているんだ。手放しても後悔するぞ?
諦められるなんて思わないほうがいい。』
「・・・はい。」
『あ。もうすぐ昼休みおわっちわまぁ。で、今どこいるの?』
「仙台です・・・。」
『せ、仙台?ま、まぁ、早く帰ってきなよ。』
「はい、本当にありがとうございました。」
電話を切る。そうか。
私はいま手に入れたかったものを手に入れているんだ。
諦められる?ううん。一生引きずる自信がある。
そんな自信あってもしょうがない。
戻ろう。あの人の待つ町へ。
またケンカするかもしれない。でも、そのたびに分かり合えるのかもしれない。
「よし。」
立ち上がって、逆方向の電車のホームへ向った。
379 :
一つの嘘:2006/10/06(金) 04:57:26 ID:???
「カンパーイ!」
久々に集まった現視研のメンバーたち。
荻上から上のメンバーたちでの同窓会みたいなものである。
「いやー、久々だなぁ。そうよ、笹原仕事のほうは。」
「あはは。忙しくてやってらんねえす。でも、やりがいはありますね。」
「そっかー。高坂の方はどうなの?」
「この前のゲーム、けっこう評判良かったんですよ。」
「ああ、あれな。俺もやったよ。なかなかいい仕事してるよなぁ。」
そんな感じで周囲の様子を聞いていく斑目。
「で、今現視研どんな感じ?」
咲が荻上に質問する。
「まあ・・・。新会員が色々と面白い事してくれてますけどね。
あまり変わりませんよ、基本的には。」
「そうだなぁ。あまり変わってないよなぁ。」
「ってなんでお前が答えるんじゃい。」
咲の突込みが斑目に行く。
「いやぁ、まだ行ってるからなぁ。」
斑目はばつが悪そうに頭を掻く。
「そうなんですよ、まだ来てるんです、この人。」
大野が酒をぐいぐい飲みながら指を刺す。
「去年一年来ていたのだって・・・。」
「先輩!」
荻上の声に、思わずシーンとなる一同。
380 :
一つの嘘:2006/10/06(金) 05:15:31 ID:???
「ん?ん?どうした、皆?」
思わず咲が状況を読めず声を上げる。
「ん、まあ、なんだ。」
斑目が重そうに口を開いた。
「去年は会いに行ってたんだよ。」
「へ?誰に?」
「春日部さんに。」
「は?」
「は?と言われましても・・・。」
「あ、えーと・・・。」
「まあ、そういう事。今はもうそんなことないけどな。」
そういって笑うと、斑目は酒をあおる。
「よし、笹原、こんど合コン開こう!漫画家の人とかとさ!」
「ちょ、何オタクらしくないこと言い出してるんですか〜!」
「じゃあ、田中の学校の人とかどうよ?」
「おいおい・・・。」
「あはは・・・。」
斑目ははしゃいだ声を上げる。
「お、おい、まだら・・・。」
「咲ちゃん。」
高坂が斑目に声をかけようとする咲を止める。
「・・・ま、今はそんなことないって言ってるし・・・。」
何かが引っかかったが、飲み会の流れを絶つのは気が引けた。
そのまま飲み会は斑目が珍しくぶっ潰れ、そのままお開きとなった。
381 :
一つの嘘:2006/10/06(金) 05:16:12 ID:???
春日部さん━━━━━━
あなたに会えるだけでよかった。
そのためだけに部室に行ってました。
それは確かです、嘘ではありません。
でも━━━━━
俺、一つだけ嘘をつきました。
今でも━━━━━
あなたのことが好きです。
382 :
アトガキ:2006/10/06(金) 05:17:13 ID:???
ふと思いついた様を書きなぐりました。
細かいことは何も考えてないので、
粗ありまくりんぐ。でも久々に投下できたからいいさ。
いや一つ一つは非常に良く出来たSSだと思うのですが…
二つの幸せのほうは無問題。完璧。最高です。恋愛から縁遠いのに他人に説教する
斑目とか、そんな斑目に相談する笹原とか、そんな斑目に説得されてしまう荻上とか。
一つの嘘のほうは…
斑目はヘタレです(個人的に)。絶対にヘタレです。
「わかってない。斑目さんの事全っ然判ってない」と叫びたくなるほどヘタレです。
故に冗談でも本音は吐けません。絶対に。
そのくせ他人には態度からバレバレなのがアイタタタ・・・
面白く読ませていただきました。乙!
>>二つの幸せ
この斑目の「斑目っぷり」がとてもグー。
>>383氏が書いてるとおりで、彼はいつまでもこんな風に頼られ続けるんだろうなあと思った。
「斑目の片恋を認知してるオギー」っつうか他人の想いを気にできるくらいオギーの恋愛感が成長してるのがなんか嬉しくなった。
笹荻ケンカものを何度か考えては自己ボツってる身としては、3レスでこんなの書けるんだと感動。
>>一つの嘘
いきなりネガティヴ感想ついてますが(汗)俺は良かった。
読み手としては「物語上で描写されていない事情」は勝手に補完しちゃうタイプなんですが、今年の秋冬、うっかりすると年末、冬コミ打ち上げくらいの話なんじゃないだろうか。
そしてその間、彼かコー咲になにか変化が訪れたのではないか……あんな振っ切りコメントを(嘘だとしても)自ら言えるくらいの。
ま、作者氏も勢いで書いたみたいなこと言ってますが独白でけっこう酔えた。もし余裕がおありなら10レスくらいの作品で読み直したいな。
嘘の方はもう一つ別の解釈もした。斑目死亡フラグw すいません。
>二つの幸せ、一つの嘘
この二つは斑目さんの話なんだなあ…いや、一つ目は笹荻の話なんだけども。
斑目の心情がすごくよく出てますね。せつねえ…。
>一つは、当然欲しいもの、夢がかなったりすることだと思う。
>もう一つはそいつらを全部諦める事。諦められりゃすっとすんだろうなぁ。』
>君は手に入れているんだ。手放しても後悔するぞ? 諦められるなんて思わないほうがいい。』
この言葉が心にずしんときた。
いっそ諦められるんならなぁ…カナシス…。
一つの嘘のほうですが、短い文でうまくまとまっていると思った。
個人的には「春日部さんに会いに行ってたんだ」って、冗談めかして言うトコ、ないこともないと思う。
ヘタレだからこそ心にしまっておけない、という解釈も。
…その根拠っつーか、斑目が卒業したときの追いコンで、さらっと本音もらしてたりとか>(「春日部さんのコスプレかな」)
ふむ、セリフがもっと遠まわしだとさらにリアリテイ出たかもしれませんね。
…と、斑目スキーが余計なことを言ってみる。流してくださいネ
サボりすぎで季節ネタを1個潰して、新たに今日書きました。
5レスと短いです。それでは書き込みます。
「はわわっ……んんっ!でねくて…!」
夕暮れの中を駅に向かって歩く荻上は、強い風にあおられてよろめいた。
最近見たアニメの影響でオタクくさいリアクションが口をついて出てしまい、
よろめいた事より「はわわ」と言ってしまったことに焦っている。
(誰か知り合いに見られてねぇべな…?)
後ろを振り返り、前方をきょろきょろと見回すと、早足で歩き出すのだった。
上陸こそしなかったものの台風の影響で風は強い。
中秋の名月の翌日のこと、十六夜の丸い月が藍色の空に浮かんでいるが
荻上はそんな事に全く気付いていないようで、一瞥もせず歩き続けている。
今日は土曜日で、さっきまでサークル活動だった。
会長として現視研をまとめ、個人誌や合同誌、ゲストなど同人活動も忙しく
充実した日々を送っている。だからこそ、笹原と会える日は全力で密度の高い
時間を過ごしたいと思い、気が急いているのだった。
(えーと、笹原さんのさっきのメールで、仕事から帰ってきて駅に7時頃に
着きそうって事だったから、今からじゃ家で料理仕込んでる時間も無いし
『外食より二人で家で過ごそうか。疲れてるしゆっくりしたいんだけど』
って書いてあったしなぁ。何かすぐ食べられるもの買って…休むって事だし
何して過ごすべか?ゲーム?DVD?TV番組何か有ったっけか?)
急いで携帯で、今夜のTV番組をチェックすると、特に二人で楽しめそうな
番組が無いので、駅前に着くとまずレンタルビデオ店に駆け込んだ。
(えーと、コメディ?アニメ?恋愛物?あっこれ懐かしい!でも笹原さん
好きかどうかわかんねぇ…決めらんね……あうー…あうーって言うな私!!)
だいぶ混乱しているようだ。急がば回れというが、傍目に非常に効率悪く
棚を行ったり来たりしている。
(録画も溜まってるって言ってたしなぁ。無駄な事してねぇか?
いや、二人で過ごす為にワンランク上を目指さねば!)
迷いに迷った挙句、古典だが荻上は通しで見たことが無かった宇宙戦艦ムサシを
借りてみたのだったが、店を出る頃にはもう駅前の噴水の所に笹原が立っていた
。
ちょうど笹原は携帯を取り出して電話を掛けている。鞄の中で携帯を鳴らし
ながら慌てて駆け寄る荻上。少しハーハー息をしながら
「笹原さんっ、おかえりなさい!」
と呼びかけると、つまらない表情だった笹原の顔にも笑みが浮かび
こちらに嬉しい視線を向け、歩いてきた。
「あー、何かDVD借りたの?」
「ムサシ借りてみましたから、うちで観ましょうよ。」
「うぉっまぶしっ?」
「そっちじゃなくって、宇宙戦艦ですよっ(笑)!」
二人して、肩を叩きあって声高に笑いあう。そのテンションの高さに
周りの人々が少し目を向けるが、気にして無いようだ。
「あー、古典だねぇ。荻上さん女の子だし年齢的にも、あんま観て無い?」
「ええ、そうなんですよね。ところで夕食今から買うんですけど。」
「珍しく呑みたい気分なんだけど…。そこのスーパーで何かつまむもの
買って帰ろうよ。あ、荻上さん呑まなければ何かお弁当でもさ。」
「いえ、私もお付き合いしますよ。少しなら。」
駅前の高級で無いデパート地下で、刺身やサラダ、フライドチキンや
スナック菓子などをカゴにどんどん入れていく。余らせるぐらいの分量に見える
。
酒コーナーでは特売の缶チューハイと発泡酒を買い込む。
軽い菓子などの袋を持った荻上と、重い荷物を手に食い込ませた笹原は
二人で今週有った事の愚痴などを冗談めかして話し、笑いあいながら
疲れた足を騙し騙し、早足で家路につくのだった。
ふと、前方の道端に人が立っているのに気付く。
禿頭の老人が一人、煙草を燻らせながら、酒屋の前に出て、
歩道に立って空を仰いでいる。
笹原と荻上は足を止め、空を見てみた。
丸く白い月が、雲ひとつ無い墨汁のような空のなかに、居た。
本当はすごく遠いと知識では知っているが、すぐ近くに
居るように見えるその存在に今夜初めて気付いた二人は、
しばし月を眺め続けると、どちらともなく
「満月…?」
とつぶやいた。
「満月、十五夜は昨日だったんだがね。」
すぐ近くに立っていた老人に答えられ、びくっとして振り返る。
「今日は十六夜だが、いいお月様だな。」
「あ、そうだったんですね、すっかり忘れてました。」
笹原はそう答えるが、老人は笹原でなく月を眺めながら
煙草を吸い込み、大きく空に吐き出した。
風が強いので、笹原や荻上に煙が掛かることも無く消えてゆく。
会話も続かず、さりとてこのまま立ち去る雰囲気でもない。
「あの、お店、まだ開いてますか?」
笹原は酒屋の店内を見て、老人に話しかけた。
「ああ、まだまだ開いてるよ。何か買うかね?」
老人はやはり酒屋の店主らしく、店内に入っていった。
レジの横の灰皿で煙草を消すと、笹原と荻上に色々と
勧めてくる事も無く、贈答用の包装紙をまとめている。
店内には、大手スーパーよりやや割高なセール品の
ワインや焼酎なども並び、手前の冷蔵庫にはビールや
発泡酒、瓶ビールなどが埋まっている。
二人して焼酎やビールを眺めるが、二人とも焼酎は
得意な味ではなかった。
「これ、瓶が綺麗でラベルも良いですね。」
奥の冷蔵庫に入った、やや小ぶりの日本酒に荻上が目を留めた。
青い瓶に和紙のラベルで「月」と朴とつに書かれている。
「荻上さん、日本酒大丈夫?」
「うーん、呑みやすいのと呑みにくいのが有るんですけど…。」
そんな会話をしていると、二人の後ろに店主が立っていた。
「最近は焼酎が流行ってるんだが、若いのに日本酒かね。」
「あ、いえ、あんまり呑んでないんですけど(苦笑)。
それで全然分からないんですけど、どれがお勧めですか?」
笹原の問いかけに、冷蔵庫を開けながら老人が答える。
「呑みやすい、呑みにくいってお嬢ちゃんが言ってたがね…。」
半分ぐらいになった酒瓶を3本取り出すと、隣の机に
置いてあったお盆から小さな杯を二人に手渡した。
「吟醸酒、中でも大吟醸っていうとだいたい呑みやすいもんだ。」
そう言って注がれて、戸惑う二人。
「さ、味見だから遠慮なくどうぞ。」
少し微笑んで促され、ようやく口に付けた。
口の中に、サラリとした淡い酸味と、木の香りが広がる。
「うん、美味しいですね。」
「これなら私も呑めます。」
「ただこれは、4合瓶で4千円ぐらいするけどなぁ。
兄ちゃん、こんなの買う財布の予定、無かったろう?(苦笑)」
そんな二人に、また次の瓶から酒を注ぐ。
「あ、今度は味が濃いですね。美味し…。」
「私はこれ、ちょっとキツイかも…。」
ちょっとキツイと言った荻上が気になり、笹原は荻上を見遣る。
苦いものを食べたような表情の荻上。
「そうか、普通の純米酒なんだがなぁ。これはどうかね。」
次に3本目の酒を注いでもらう。
「これはまた、全く違った感じですね。」
「へー。ちょっと甘いです。」
そういう荻上の表情も、甘みを含んだ笑みが頬に浮かぶ。
「これなら一本1400円で、この瓶の奴だがね。」
そう言って示されたのは、荻上が最初に興味を示した青い瓶だった。
買って出ると、店主のお爺さんは店の外まで見送ってくれた。
「ちょうど今夜も十六夜だし、甘口で好みのが見つかって良かったな。」
荻上は、そう言うお爺さんの頭も、満月のようだと思ったが
小さい子供ではないので微笑で答えると、会釈をした。
月明かりが照らす中、月を眺めてゆっくりと歩く。
二人の足音は、ゆったりと夜道に響いていた。
笹原も荻上も、せかせかした気分からすっかりと
のんびり出来ているようだ。
笹原は荷物が重いが、荻上はさっきの酒瓶を嬉しく思えて
上機嫌になっていた。笹原もそんな様子をしみじみ見歩く。
早く呑みたいというより、今の楽しさを月の下で感じていたくて
足取りはますます遅くなっていくのだった。
なんていうか、趣味丸出しですみませんでした。
>やわらかい月
を読んで唐突に思いついたので。
久しぶりの”デート”を終えて、笹原と荻上は手を繋ぎながら夜道を歩く。
少し肌寒い空気の中、繋いだ手だけが熱い。
ふと荻上が足を止める。
笹原も足を止める。荻上を見つめる。
荻上はただ空を見つめていた。
自然と笹原もそれを追う。
中空に浮かぶ正円にはわずかに満たない月。
二人で月を見つめる。
不意に荻上が口を開く。
「昨日が満月だったんですよ」
笹原が答える。
「そうなんだ」
それ以上言葉も無くただ月を見つめる。
「へくちっ」
奇妙な音を立てて荻上がくしゃみをする。
「あ、ごめん。寒かった?」
笹原の問いに、荻上は握った手にわずかに力を込めて囁いた。
「…暖めてくれますか?」
笹原はただ握った手により力を込めると、手を引いて歩き出した。
荻上はそんな笹原の腕を抱きしめるように寄り添う。
そんな二人の姿を月の光が照らしていた。
以上です。即興なので粗は勘弁。
感想ありがとうです。
>>383 斑目さんらしくない・・・かもしれませんね。
でも、ただ独白を言わせたかっただけなので、ご了承ください。
上のSSのほうは完璧といってくださってありがとうございますw
>>384 短めにまとめて、読んでくれる人に後は任せる手抜きですw
でも、こういうほうが自分は読んでて楽しいのですよね。
死亡フラグ・・・ではないですw
書き直しかぁ・・・考えて見ます。
>>385 幸せには二つある、は、中島みゆきさんの「幸せ」という歌から拝借しました。
斑目さんがこういう台詞を言うと、重みがあると思うのです。
遠まわしな発言・・・。そうですね。もう少し考えればよかったかもw
というわけでまた投下しに着ました。
くじびきはーとアンバランス、略してやっぱりくじアン第一話放映記念!
げんしけんメンバーによる面白かった本会議です。
これでくじアン見てくれる人が増えると嬉しいなぁ。
私は楽しく見れたのでwでは3レスで投下します。
「え〜、第一回くじびきはーとアンバランス、略してやっぱりくじアンよかった本会議〜。」
「あ、やっぱりちゃんとやるんすね。」
「そりゃそうだろ〜。アレじゃちょっと使えんよ〜。」
「・・・すいませんね。」
「・・・あ〜、別に責めてるわけじゃ無いのよ?」
「・・・・・ベツニイイデス。」
「あー・・・っと。」
「まあまあ。作画は良かったな。前評判以上に動いてた気がするよ。」
「だ、だね。前はちょっとあまりにひどかったし・・・。」
「でも、息切れが怖いッすね。」
「あ〜、それはあるなぁ。」
「作画がとりあえずしゃんとしないとどうしようもないからな。」
「う、うーん、だいじょうぶかな?」
「わからんよ〜。」
「無駄に山田メカが動きまくっていたな。」
「あれ、他にも色々バージョンあるんですよね?」
「次回からの話を作る上で色々使えそうだよなぁ。」
「で、でも、このネタどっちかっていうと同人で使われそう・・・。」
「・・・確かに。陵辱メカってか?」
「うわぁ。書きやすい上にニーズもありそっすねー。」
「ま、出てたら買うわな。」
「う、うん。」
「それはともかくストーリーのほうは?」
「小雪と蓮子をメインにもってきたのは悪くないと思いますよ。」
「だよな。まぁ、いずみと小牧も人気がなかったわけじゃないが。」
「蓮子と山田はいい動きしてたねー。何度か笑っちゃったよ。」
「わ、笑ったといえば忍先生。あ、ああまでブラコンにしちゃうとはね。」
「ベッドに一緒に寝るなんて・・・。一部の人にはごほうびだぞ。」
「レンレンの動きが毎回ああなら見る価値はあるな。」
「まだ現生徒会は描かれてない感じですね。」
「なんか冷たい感じだったな。今後に期待だ。特に副会長。」
「でも、今回の副会長はけっこう変人設定らしいぞ。」
「あ、ああ、設定資料に書いてあったね。」
「う。刀もあまり抜かない設定にしたらしいしな・・・。」
「めちゃくちゃ強いらしいですね。」
「また曜湖さんコスするの?」
「あ〜、やってみたいですね〜。」
「今回の設定のほうがあってるきがす・・・ごめん。」
「・・・今曜湖さんの目が光った気がする。梟、がんばれ。」
「ま、まあ会長だけど・・ど、どうよ、ベンジャミン。」
「・・・まあ、まだわからんです。でも、おさげはどうも・・・。」
「あれはといたときに真価を発揮するのでは?」
「かもしれんです・・・。」
「まー、なんといっても小雪だよ小雪!」
「さすがマムシさん、つるペタの本領発揮ですね。」
「忍先生もいい感じだったけどなっ!メインになっただけあってたくさん出ててよかったぞ!」
「設定である超能力も早速出てきましたしね。」
「あー、あのシーンの涙、ギャグっぽくてよかったなぁ。」
「で、ここまで話に出てこないメインヒロインなわけですが。」
「あ、トシゾー初めての発言。」
「いやぁ。」
「うーん。時乃普通なんだよなぁ。天然ヒロインとしてはなかなかいいとは思うのだが。」
「他が濃いからね。特に蓮子・山田。山田が天然だし、食っちゃってる気がする。」
「う、運の良さや、あの物怖じしないって言うか物事を理解してない感じはいかせそうだけどね。」
「でも、魅力的かといわれたら・・・。」
「しかし、メインヒロインだし、まだまだ描写はするでしょうから、今後に期待ですね。」
「いずみにいたっては出てきていませんが〜。」
「小牧も完全におばちゃんじゃん。前作の小牧ファンキレるぞ〜。」
「まあ、しょうがないよな・・・。ところで回想シーンで幼い三人が出てきたわけだが。」
「千尋と、時乃、会長ですね。あの会長、もっと描写して欲しいかったなぁ。」
「今後もそのあたりにスポットは当たるだろう。」
「まあ、何はともあれ第二話にも期待だな。」
「ういーっす。・・・で、荻上さん?」
「・・・はい?」
「次回もやるからちゃんと出てね?」
「・・・・・・私いらなくないですか?」
「まあ、一応・・・。で、ペンネーム考えてきた?」
「・・・・・・前から使ってた於木野でいいです。」
「了解です。では、会議はお開きってことで。」
「また次回なっ!」
というわけで、今後も放映するたびに投下していこうかと思いますっ!
よろしくおねがいします。
>やわらかい月
お酒www書かれてる方の趣味が見えますねwww
ほのぼの日常、癒されます。
>月を見上げて
>「…暖めてくれますか?」
フフ、デレだデレwww
>第一回くじびき〜以下略
うははwすごく雰囲気でてます!GJ!
次回も楽しみにしてますー。
>>やわらかい月
なんだか引き込まれる感じでよかったです。
笹原…ムサシ=うおっまぶしっかよwww
>>月を見上げて
やわらかい雰囲気が二人にぴったりでした。
約二時間でこれなら十分ですよ〜!
>>第一回くじびき〜以下略
やっぱり感想系は面白いwww次週を楽しみにしてますw
ただ途中で誰だかわからなくなったので出来れば名前…単行本みたいに
マ、とかべ、とか一文字だけでも書いて頂けると…
>>二つの幸せ
いい先輩!こういうポジションすごい似合いますよ、斑目!
こういう話、自分も書いてみたいです。
>>一つの嘘
序盤じゃなくて酔いが回ってもっと話の流れが大河のように太ければ…
けっこうアリな話ですよね〜。書き直しというか、また気が向けば
同一テーマで書いて頂ければ…すごく読んでみたいです!
でも、このままでも、書ききった満足感とかシーンの切り取り感、
すごくよく解ってしまうし、じゅうぶん完成品と思いますよ!
>>月を見上げて
読んで思いついて書いて、を、おそらく1時間半ぐらいでこれですか?
すごっっ!ビビリましたよ!!しみじみしつつ、「暖めてくれますか?」
の台詞で一気にシリアスな感じでドキリとしました。良いですね!
>>第一回くじびき〜以下略
こういうノリ、大好きです!うはー!!これを毎週ですか!?
あ り が と う ご ざ い ま す !
というわけで、「やわらかい月」書いた者です。
毎度、感想いただき感謝しきりです。
>>402 日本酒呑まない人には申し訳ない感じです。
>>403 ムサシといえば今はあれですよね!おんみょうだんをくらえー
げんしけんSS書いてて、ふと「これげんしけんキャラで書く意味有るのか?」
思うことがあるんですが、オタクネタ入れ放題なのはやっぱり良いですよね!
うははw
新作SSの海にたゆたっております。たいへん気持ちがよい。みなさんありがと〜。
>>やわらかな月
5年ほど前に純米酒(プレーンな飲み口の銘柄が多い上になにしろ安いw)を飲みまくってた時期があるんですが、その当時近所の酒屋に夜な夜な物色に行ってました。
週何回も通ううちに店主と話をするようになってヨサゲな奴買って帰る夜道が、こんな感じのあたたかさに包まれていたのを思い出します。ま、ひとりぼっちの帰り道だったがよorz
文中に多めに散りばめられた月をあらわす言葉と文字が、まさに今時分の涼やかな夜風を感じさせて読後感も爽快でございます。お見事。
なお当時の俺様フェイバリットは秋田の『天の戸』。あえて無印純米の方を推しておく。
>>月を見上げて
こうやってほんの十数秒を切り取れる人ってうらやましい。しかも即興ですか。すげえ。
作品が並んでるとか影響受けてるせいもあるけど、『やわらかい月』がTVドラマで、エンディングのあとその銘柄の酒のCMに出くわしたみたいなお得感。ステキです。
>>第一回くじびき〜以下略
祝・連載!……って作者氏の体力がもちますようにハラハラ。
アニメ板も賛否拮抗しつつ微妙に賞賛寄りに盛り上がっているようです。「雑誌の物足りなさをアニメにぶつけたファンだったが、頭が冷えるに従って純粋な評価に戻りつつある」といったところか?俺的には山田に話数分だけ新メカ装着して欲しいw
ああ、SSの話だな。多分彼らは毎週放映後に部室とか居酒屋とかに集まってこんな話してるんだろう。雰囲気あって楽しい。……花山さんの乱入も期待だ。
実力者たちの本領発揮といった感じの大量投下でおなか一杯でございます。よし俺もまた書いて持ってくる。
ごちそうさまでした。
406 :
マロン名無しさん:2006/10/11(水) 19:23:04 ID:byz1APwS
ボア
くじアンで人がいない隙に……。
| |
| |∧_∧
|_|´・ω・`) そ〜〜・・・
|桃|o旦 o
| ̄|―u'
""""""""""
「どうもご迷惑おかけしました。失礼します」
「はいはーい。」
二人揃って頭を下げる笹原とハルコに、男は笑って手を振ってくれた。
その手には『いろはごっこ』が。後ろには大量の同人誌を収めた段ボールが山と積まれている。
笹原たちは改めて一礼してサークルスペースを後にした。
「なんかもー、どこ行っても人と同人誌の山ですね」
笹原は、くはーと疲れと高揚を滲ませた溜息をついた。
「やっぱ大手は違うね〜」
ハルコの顔も少し上気している。名前と作品でしか知らなかった人と立て続けに会話したのだから無理もない。
少ない胸に同人誌を抱えて、ハンカチで汗を拭いた。
「あとどこ回ればいいの?」
「えーとですねぇ…」
笹原は折り畳んだサークル配置図を開いて方角を合わせようとしてくるくる回した。
人の流れを避けるために端っこに移動して、残っているサークルの場所を確認する。
ハルコも笹原の斜め後ろから回り込んで配置図を覗き込んだ。笹原の首にハルコの吐息がかかる。
笹原はむずずずと体を震わせた。
「えーと、あと、ここと、ここと、こっちもですから、それで、あとは、3軒ですね」
慌てて配置図をしまい込み、笹原はハルコから離れた。
ちょっと今のは不意を突かれた。ただハルコの纏う涼やか香りには、少し未練を感じていた。
いや、何考えてんだ、俺は。
「ちょっと笹原」
当のハルコは、怪訝な表情を見せていた。笹原の心胆が寒からしめられる。
「あと3軒? コレあと2冊しかないけど」
「あ、あれ、マジすか?」
ハルコは重ねた同人誌を両手に取ってみせた。確かにハルコの白魚のごとき両手にはそれぞれ1冊ずつの本しか握られていない。
同人誌の間に浮いたハルコの顔には、やれやれという文字が大書きされていた。
ありゃりゃ、なんつー低レベルなミスだよ。
「すいません、すぐ取ってきますから」
居たたまれなさからか、笹原はシャツを翻してソッコーで現視研ブースに取って返そうとする。
そのシャツの首根っこをハルコがぐいっと掴んだ。
「こらっ」
「はいっ?」
「まずはちゃんと数を確認する! 本当に3軒でいいんでしょうね?」
委員長然に光らせたメガネを、ハルコはくいっと上げて睨んだ。
良いっ!
「あ〜〜〜、はいっ、えっと、ダイジョブです、三軒で」
「そんな慌てなくていいから。落ち着いて確認する!」
笹原は配置図を取り出してそこに目を据えつけた。あんまりハルコの方を見るのは不味い。
自分の気持ちに気付かれる気がして、必要以上に配置図に顔を近付けていた。
ここと、ここと…、うん、間違いない、OK。
「はい3軒で、合ってます」
「ほんとに合ってる?」
「はい!」
と笹原は断言して踵を返そうとすると、またぐいっと襟首を掴まれた。
「私が取ってくるから、今度はあんたが待ってなさい」
ハルコは同人誌を笹原の胸に押し付けた。笹原は着替えを除かれた乙女のようなポーズで同人誌を抱えたが、
慌ててハルコの前に回りこんだ。
「そういうわけには行かないっすよ。俺がミスったわけですから!」
「ややや、別に嫌味で言ってるわけじゃなくて……」
「俺が行きますんで、ハルコさんはここで待ってて下さい」
「えぇ〜〜? またぁ〜? たいくつなんですけどぉ〜」
「あ……、えと、そぅっすね、どうっすかな……」
俯く笹原。つつっと汗が吹き出る。
ハルコ小さく溜息を吐いて、笹原の抱えた同人誌を取り戻すと、
「もうめんどいから二人で戻ろっか?」
と言って微笑んだ。
くはー、やっべー!
ごくりと、ハルコに聞こえるんじゃないかという音を立てて笹原の喉が波打った。
会場の熱気に当てられたのか? はたまた有名同人作家巡りをしたことによる緊張と興奮が心理学における『つり橋効果』をもたらしたのか?
つーか何だ、このコミフェスという非日常空間? 年に二回のハレの日、かつ初のサークル参加。それが俺をキョドらせているのか?
まあ、無理もないかな。だってこんなことないもんなあ。売る側なってんだもんな、そんなの初めてコミフェス来たとき考えもしなかったよ。
あー、懐かしいなあ、アレからもう2年かあ。俺もすっかり成長しちまって。
って、ああ心の中で喋りまくる俺……。
いいや…、あれだ。そうじゃなくて、もう分かってんだけど、つまり、単純にかわいいんだな。
そう思ったとき、笹原はにへらと笑顔を零した。
「何を笑っとんじゃお前は?」
「あ、や、何でもないっすっ! 自分ッ、ダッシュで行って来ますからっ! もうスグですんでッ もうホントに!」
「あ、こらっ」
「それ、お願いします!」
半ば強引に、かつ逃げるように笹原は走り去って行った。二人で居るのが、妙に恥かしかったのだ。ガキめ。
「走っちゃダメだよー」
というハルコの声も届かない。ぴゅーっと行ってしまった。
「何だぁアイツ?」
頭のてっぺんにはてなマークを浮かべてハルコは小首を傾げていた。
でっかい石をひっくり返したら虫がいっぱい。まさにそんな感じに蠢く群衆をハルコは会場の隅っこで眺めていた。
みんな一様に額に汗をはっつけて、荷物片手にあっちをキョロキョロこっちをキョロキョロ、目的は一つ。
喧騒から少し離れて打ちっ放しのコンクリに背中を預けたら、ほんのちょっとだけ涼しさを感じた。
会場のうねりのようなどよめきと、立ち込める熱気、コンクリの涼感が、ハルコの眠気を誘った。
今回も毎度の如く徹夜の漫喫から始発に乗ってビッグサイトにやって来ていた。
桃色の唇があんぐりと開いて、ふふぁ〜〜とアクビが漏れてきた。彼女はそのまましゃがみ込んだ。
「ねむ……」
自分の両膝を枕に、足を抱えて頭を垂れた。どよどよ、ざわめきが遠くなる。
(いかんいかん…、寝ちゃいそうだった…)
重たい首を上げる。笹原が息を切らして戻ってくるかもしれないのだ。
でも、今日は何だかとっても疲れた。
(自分の買い物で昨日は歩き回ったなぁ…、そんで全然寝てないしぃ…、今日はハズいコスプレしたぁ…、立ちっ放しで売り子もやったなぁ…)
ハルコはちょっと笑った。
(何だか今年は盛りだくさんだなぁ…)
ハルコはクスクスと笑った。顔にニョヘラ〜とだらしなく垂れている。
瞼の裏に春日部君の顔が浮かんでいた。
(「いーじゃん。似合ってんじゃね?」って…、本気で言ってたのかなぁ、その前に思いっ切り笑ってたけど…。
でも……………、うれしいかも…)
眼鏡がないせいで滲んだインクのようにぼやけた春日部君の顔。
きっと、いつもみたいに余裕たっぷりに、キョドってる私を見て笑ってたんだろうなあ。
(ま……、それだけで……、良しとするかね〜〜……?)
小さく頭を揺すって、深く目を閉じる。何だか、とてもいい気持ち。体がほわほわと温かい。
(ホントに寝ちゃいそう……だなぁ………)
足音がした。
すぐ傍で、誰かが立ち止まった。もう多分ほんのすぐ目の前だ。
あ、笹原? そう思った。
「いっよぉ、調子どお?」
長髪を汗で湿らせた原口が不気味に微笑んでいた。
ハルコは立ち上がるタイミングを失っていた。
「ずいぶん余裕だねぇ? こんなことで油売ってて大丈夫なのかい?」
原口は圧し掛かるような声で言った。
ハルコはしゃがんだまま原口から視線を逸らす。
「今日は特別ですよ。普段はちゃんとやってますから」
「ふ〜〜ん」
顔に浮いた汗を首掛けタオルで拭くと、原口は薄ら笑ったままわざとらしく周囲を見回した。
そしてふふんッと鼻を膨らませた。
「一人だね〜」
その言い方にハルコは背筋に悪寒が走るのを感じて、反射的に、
「笹原が戻って来るのをまってるんです」と言い返した。
原口が一層ニヤリと笑った気がした。
「ほ〜〜、あの口の悪い彼氏は来てないのかなあ?」
「はぁ? 何ですかそれ?」
「はははっ、やっぱりデマカセだったんだなあ。まあそんなこったろうとは思ってたけどねぇ」
ハルコを口を尖らせてソッポを向いた。
彼氏? 何だソレ? また嫌がれせ? 彼氏いない歴=年齢と知ってバカにしてんのか!
ハルコは原口を無視したまま、体を横に向けて立ち上がった。
笹原を待っているので出来ればここから動きたく無かったけれど、これじゃしょうがないよね。
あとで笹原に謝っておこう。
「それじゃ失礼します」
「あれぇ? 笹原君を待ってるんじゃなかったかな?」
「遅いんでブースに戻ります」
ハルコは床に置いていた同人誌に手を伸ばした。
しかし既の所でロースハムのような腕に同人誌を掻っ攫われてしまった。
「ふ〜〜〜ん、これが現視研で作った本ねぇ〜」
強張っていたハルコの顔が、うろたえて崩れた。
「あ、返し…」
そう言いかけて慌てて口をつぐんだ。
「んーーーー?」
弛んだ口角を持ち上げてジロリと原口の目がハルコを捉えていた。
「んっふっふーーーーん、はふーーーーん」
原口は本の中身とハルコを交互に見てはニヤニヤとこれ見よがしに顔を緩ませた。
「はは、本当にエロだねぇ〜〜」
ハルコは謂れのない羞恥心に頬を赤らめ、バツの悪さに目を尖らせていた。
同人誌を取り返そうとするように構えた右手は、引っ込みもつかず宙を彷徨っている。
ハルコは気を取り直すために小さく息を吐いた。
まあ、いい。本を掠め取ったことはムカつくが、ブースに戻ればまだいくらでもストックがある。
無理に取り戻そうとする必要はない。
「それ差し上げますよ」
「んーーーー?」
原口がとぼけた声でハルコを見やった。一歩下がって間を取っていたハルコの体を、原口の目が頭からつま先まで舐めた。
そしてまた同人誌への視線を戻した。
「そういやぁ、ずいぶんと面白い格好してたねえ〜?」
「なっ…」
一瞬、ハルコが幼子のような顔になった。
「なんで……?」
知ってるのよ?
「ん〜〜〜? 漫研のブースで話題になってたからねぇ〜〜、僕も見物させてもらったよ〜〜。
評判だったよ〜。『現視研が色仕掛けで完売させようとしてる』ってね。まったく、
女の子ってのは口さがないよねぇ」
「――――――っっ……」
言い返そうにも言葉が出てこない。悔しいがその通りという気がしないでもなかった。
でも、コスプレして売り子してるとこなんていくらでもあるじゃない。あんなのちょっとしたネタよネタ。
だいたい大野はともかくとして、私に仕掛けられるほどの色気なんぞ元からありゃしないわけで…、
むしろ珍獣的なポジションのアレだったというか……。
「けっこうノリノリだったり?」
「違います!」
くそぉ……、大野だ、大野のせいなんだよぉぉぉぉぉぉ、私はいやいやなんだっ、あくまでも!
ハルコの顔は怒りと恥かしさでプリプリのプチトマトのように真っ赤になっていた。
それを見た原口は中堅企業のワンマン社長みたいにご満悦とばかりに笑った。
二十代とは思えない、スケベエ根性を隠そうともしない脂ぎった笑顔。
原口は腕組みにして、自分の網膜に写し撮った画像を思い浮かべるように顎を擦った。
「ははは、作ったのは田中かな。服飾の学校に進むんだってね、彼。結構、露出度高めだよねぇ」
こんな奴に見られたのかと思うと、ハルコは急に泣きたくなった。
涙が滲んで、乾いた目がチクチクとした。
別に、原口に見られたからって自分の何がどうなるわけじゃないのは分かっているけど、
何だかとても嫌だった。
「あ、写真見る? 便利だよねデジカメって。すぐその場で見れるもんねぇ」
原口は首に掛けていたカメラを得意気に外した。
「失礼します……」
蚊の鳴くような声で、ハルコは気が付かないぐらい小さい会釈をすると逃げるようにその場を離れようとした。
だが一瞬早く原口の手がハルコの手首を掴んだ。
「まあまあ、もうちょっといいんじゃないの? どーせ暇でしょ?」
言葉面はとぼけていたが、体から発する雰囲気が一変していた。
巨大な子供のようなぶよぶよした手が細いハルコの手首をがっしりと掴んでいる。
慌てて振り払おうとしたが、それを封じるように原口は手に力を込めた。
「――ッ!」
ハルコの表情が痛みに歪むのを見ながらも原口はそれを無視する。
「遠目から撮ったからね、あんまり写りは良くないんだけど。良かったら記念にプリントしようか?」
「あの……」
困惑をありありと滲ませた顔でハルコは原口を見上げる。
何でもいい、『やめて下さい』でも、『離して』でも、とにかく嫌がっていることを伝えないと。
しかし、原口に目をみたら言葉は出てこなかった。
威圧するような鋭い目は、にやけた口元とは違って全く笑っていない。
「あのさぁ……」
原口は周囲からハルコを隠すように歩み寄った。
「サークルの先輩がさぁ、丁寧に話してるわけでしょう? そういう態度は良くないんじゃないかな?」
手首に痛みが走り、ハルコは顔を歪める。
原口はニヤリと笑った。
「ね?」
つづく。
わお!お帰りなさい!
>>アルエ7話
ハラグーロ描写すげ。悪い、これは悪い原口だ。なんつーか、笑ってしまうほど見事な悪役っぷりでしたw
次回あたりで誰か助けに来ることを期待っつーか切望しておきますが、読み手側には微妙に見えてこない二人の関係がすごく心をくすぐります。
あと笹荻応援派としてはハナの下伸ばしてやがるヌルオタに後ろからポカリだ!けっ。
続き楽しみにしてまーす。
>>416 だだいま帰りました。
よかった、レスついて。感謝。
ちょっと悪く書きすぎたと反省してます。ブランクのせいってことにしておこうか…。
ハルコさんはともかく、原口さんに申し訳なかった。
ごめんね、原口さん。
3ヶ月も間が開いてしまった反省の意味を込めてあらすじを書いてみました。
よかったら思い出してやって下さい。
『アルエ』のあらすじ
天然泣き虫オタク女子大生&hearts;マジラブ桃色ウォーズ&hearts;
まさにハルコ争奪ラブハルマゲドン&hearts;
ハルコをピンクな目線でイビっちゃダメ&hearts;
現視研・一般人の春日部 マジラブ正義でハルコを死守&hearts;
愛憎因縁めちゃくちゃ……超煮えたぎるオタクたちの間でラブ新境地開拓戦争&hearts;
今日も愛が激しくハミ出る&hearts;
ん? 間違ったかな?
ハートマーク失敗した……orz
うわらば♥
419 :
うすびぃ:2006/10/14(土) 02:01:13 ID:???
ふん
>>アルエ7話
ハルコ!ハルコ!!続編待ってましたよ。
ハルコさんが憐れな…。続きどうなるかがすごく気になります。
>>405 感想ありがとうございます!
僕は兵庫・播磨の「富久錦」を一押しで。純米酒しか造ってない蔵です。
酒屋の店主には「ちょっと変わったアレやけど」と言われましたが
僕にとってのスタンダードです。
>>アルエ7話
こ、このままでは生殺し!!アニメでいうと前半15分ぐらいの展開ですよね?
続きを是非またよろしくですーーー。
しかしまぁ、ハルコさんが居たら笹もよろめきますわなぁ。
第二話見て思ったのです。
こ れ は バ ケ る
っていうか、マジで面白いです。
くじアンのSSが書ける気がしてきた。
って言うことで、感想SSです。
3レスで。
マ「え〜、第二回くじびきはーとアンバランス、略してやっぱりくじアンよかった本会議〜。」
梟「・・・なんか微妙な空気だな。」
ベ「だって、KODAMAさん、毒吐いちゃうんですもん。」
K「い、いや、別に俺だってね、こ、今回のがいやってワケじゃないんだよ。
た、たださ、小牧といずみの件に関しては譲れないっていうか・・・。」
マ「じゃあなんで前回言わんのよ〜。」
K「だ、だってさ、みんななんか肯定的だったじゃないか。」
梟「まて、別に全肯定してるわけじゃないぞ。」
ベ「え、梟さんも何かあります?」
梟「やっぱ副会長が強くなりすぎってのと、人間味が多少失われてるっぽいのがちょっとね。」
マ「でもよ〜、その辺は今回のラストあたりの描写でフォローされてね?」
K「だ、だな。会長なんか、冷たいのは責任ある立場だからみたいに見て取れたけどな。」
ベ「ですよね。本当に冷たい人間なら信用したりしないですよね。」
梟「むむ、まだ完全に人間性の描写はされてないからな。」
マ「そーいうこっちゃ。今後生徒会候補との交流で色々見えてくるんじゃね?
俺としちゃ逆に小牧もいずみももっと冴える使われ方するかもと思ってるぞ。」
K「ま、まぁ、そうなんだろうとは思うんだけどな・・・。」
ト「ネットとかでも『旧作ファンは別物と割り切ってみろ』という意見多いですからね。」
梟「たしかに、今期の中じゃ悪くない、それでころかいいほうだ、という意見が多いな。」
マ「批判してるのは俺らみたいな旧作ファンよ〜。」
ベ「ははっ、まあ、俺らは楽しんでるほうだと思いますけどね。」
ト「確かに作画はよく動く、物語もほんわか路線と、けっこう90年代っぽいですよね。」
マ「我らが青春のアニメだな。完成度も高いしのう。」
ベ「一部の人には『ひねりが足りない』ようなことも言われてますけどね。」
K「そ、それはこのアニメの路線とは違うからな。」
梟「なんか、製作者側がこの批判群ですら狙ってる気もしないでもない。」
マ「え〜、『旧作のほうがよかった』、『なんかベタすぎね?』とかか?
だとしたらすげえな。しかも内容はしっかり作ってる。」
ベ「ですねえ。特に今回はお話としてよかったですね。」
マ「そうよ!やっぱり小雪の正座はよかったのう。あれ、うちに持って帰って置いときたいわ。」
K「わ、変態発言。」
マ「別に何かしようって言ってるわけじゃねえだろうがっ!」
ト「生徒会メンバーの凄さが垣間見えてきましたね。」
梟「よもやデコピン一発とはね・・・。」
ベ「副会長に関しては更なる強さを得てますね。」
K「れ、蓮子よく動くな。さ、最初やかまし過ぎてつらかったけど、大分なれた。」
マ「レンレンは前より目立つな。彼女以外動くキャラがいないせいもあるが。」
梟「メインになったのもでかいと思うぞ。蓮子はメインにして正解だな。
対立性を持つキャラは仲間内にいたほうが面白い。」
ト「確かにそれはありますねえ。」
ベ「一緒に戦っているうちに和解する・・・か。ありがちですねえ。」
マ「爆弾に関してももっと捻り欲しいって言うやつが多いけどな・・・。
実際問題ドミノ研だからってドミノ使ってテロする奴はいねぇ!」
梟「あのドミノの描写は見事だったけどな。」
K「ま、まあ、あそこは時乃の応援と千尋の決断が見せ場だからな。」
ト「わざわざ捻りすぎても、というのはありますね。」
ベ「まぁ、確かに二本のコードとかシンプルな上、ベタ過ぎましたけどねぇ。」
マ「ま、そういうことも、全体的な流れを見てもな、ベタなんだよ。
しかも、ご都合主義。いやぁ、ここまでやってくれると清清しい。」
K「か、かもな。マジな流れで急にご都合主義持ってこられると辟易するけど、
こういう風に徹頭徹尾そうだとね、ぎ、逆にそれでいいかと思う。」
梟「本当、今回の時乃はベタなヒロインだな。何か、しっかり考えているような気がする。」
ベ「ですねえ。携帯のツーショットとかよかったですね。」
マ「山田とかぶってる気がしたけど、一線を画してるな。ベタ、地味。だが、最近無かったヒロインだ。」
K「そ、そうだな・・・。お、俺ら、なんか贅沢になってたな。」
マ「普通なキャラであるからこそ、いいな。これは。最後の笑顔とか、不覚にも萌えたぞ。」
梟「なんか、最終的に一番よかったキャラは時乃、で収まる気もしないでもなくなってきた。」
ト「まあ、前作が一般的に全く萌えないと言われたフシギなヒロインでしたし・・・。」
ベ「これも、まぁ、この作品の雰囲気を担っていると思いますね。
作風的に、かみちょ!、ましまる、べとべとさんとかに近いかもしれませんね。」
梟「さて、第一話、二話とこの辺はキャラ紹介って感じだな。」
マ「だな。麦男も出てきたしな。」
ト「で、鳴雪さん的にどう?」
マ「ちょっ・・・。」
小「・・・興味ないです。」
ト「え、でも・・・。」
小「・・・なにか?」
神「・・・フフッ。」
小「・・・・・・なんですか!?」
ベ「まぁ、まぁ、落ち着いて・・・。」
マ「そ、その辺はおいといてだね、次回だよ、次回。忍先生特集っぽいぞ!?」
梟「新キャラの『鏑木先生』も初登場だな。」
K「ど、どうだろうね。ヤンキーモードも初登場っぽいな。」
ト「ですねえ。楽しみだ。」
べ「あ、最後に、『焼きそばパン』40個って・・・。」
マ・梟・K「「「そこは流せ。」」」
ベ「・・・あい。」
マ「というわけで今回はここで会議お開き、また次回でな!」
もうすでに10回見ました。
ダメだね、こんなはまると自分でも思ってませんでした。
感想くれた皆様、ありがとうございました。
言葉の前に名前入れてみましたけど、やっぱこの方が見やすいでつね。
アドバイスしてくださった方ありがとうです。
このSSでくじアンを見てくれる人が一人でも増えると嬉しいですw
ようやく第二話観た。
>>第二回くじびき〜以下略
とりあえずあなたが小雪萌えなのは伝わったw
アニメから遠ざかってた時期があって、最終話まできっちり見た最後がりぜるまいん(ォ、げんしけんでこの世界に戻ってくる直前が種の無印の1話かな?そんな俺にはリハビリに最適な王道萌えアニメと感じました。
一方、最近のアニメ見慣れてる人にとってこんな展開で許されるのかって(観てない俺が言うのもどうかと思うが)思ったりもする。
おっしゃるとおりでベタですよね。劇中劇ならこうすべき、ってのを単独作品でやって、しかられないかどうか薄目あけてみてる気がする。
作品的にはこの展開でゲップが出る人が増えないことを祈ります。俺は妻子に隠れてでも見ることにしたので、急転直下打ち切りだけはカンベン。げんしけん二期のためにも。
なおクガピーはどうやら本作の山田には萌えていないようだ。いいよ、俺がイタダキだw みょ〜んみょ〜ん。
くじアン、俺は面白いと思う。小雪はくぁいい。蓮子と山田もとても良い。
旧作知らないから抵抗ないせいかも知れませんが・・・。
そして第二回くじびき〜以下略も面白い。毎週楽しみにしてますよ。
>第二回くじびき〜以下略
会議!会議!!このSSが読めて満足でっす。くじvアンばんざい!
(アニメまだ見てないけど、またじっくり見ようとおもいまつ!)
>第二回くじびき〜以下略
アニメ見れてませんが!SSだけでも面白いので、DVDBOX買うしか
無いかなぁ・・・とか!毎回よろしくです!
といったわけで?斑目をまた放浪リベンジさせてみます。10レスになります。
大安吉日の秋、某日。尾張名古屋の駅近くでのこと。
「晴信、あなたこれからどうるすの?母さん達は茨城の
おばちゃん達と集まってまた観光するけど。」
「俺は一人でぶらぶらしとくわ。」
紋付や黒いスーツ、そして白いネクタイの集団。
その輪の中から斑目は独り、離れて歩き始めた。
今日、斑目は家族とともに従姉妹の姉ちゃんの結婚式に
呼ばれて、名古屋にやってきていた。
主賓やその友人たちは二次会への移動、親戚は集まって
名古屋観光となるようだ。
とはいえ、あーでもないこーでもないとガヤガヤ話は続き
場が動きそうにないので、斑目は先に一人でホテルに戻り
着替えることにしたのだった。
昼間から酒を飲んでけだるい足取りのままに、ふらりと
見知らぬ二度目の街に繰り出した。
地下鉄での移動。不案内な路線図を見て乗り換え、
一番の繁華街と聞いた栄の駅で降りる。
「何か観光でもするかな…。名古屋城しか見て無いし。」
午前中の式の直前、会場のすぐ近くの名古屋城を
家族と一緒に見て回ったのだった。
「そーいや夏に朽木君と来た時は何も見なかったなー。
つーか名物食ってねぇっての!(笑)。」
思い出し笑いをしつつ、改札を出ると地下街だった。
なかなかの人手と、両側に並んだ喫茶店、衣料店、すし屋
などなど。もちろん味噌煮込みうどん屋やうなぎ屋もある。
しかし披露宴で飲み食いしたばかりの斑目に食欲は無い。
斑目は人の流れに乗って、長く続く地下街を物珍しげに
きょろきょろしつつ、かといって店にも入らず歩き続ける。
地下街の中の噴水広場に少しぎょっとしつつ、さらに歩くと
丸い吹き抜けの空間に出た。
「お、こんな所にジャプンショップ。」
ヲタセンサーが敏感に反応し、ドアをくぐる斑目。
(最近のジャプンはますますその、腐志向が…。)
そう言いつつも、なんだかんだでジャプンは読んでるし、
一般人の人ごみに疲れていたのでオタ空間が心地よい。
奥の棚では女の子3人連れが801会話で盛り上がっている。
(そういやデスの音の映画また観んとなぁ。)
そんなことを思いながら店を出ると、エレベーターが
気になったので乗ってみた。
家族連れに囲まれながら運ばれ、エレベータのドアが開くと
ガラスと水の空中公園に出て、明るい日差しが目にまぶしい。
楕円に広がるガラスと流水から、飾りガラスのように下が
ぼんやりと透けて見える。陽の光が反射して目が眩んだ。
しばらく呆っと眺めていた斑目だったが、ふと我に返り
気付くと周りは男女連ればかり。
さっき参加した結婚式の事も斑目の脳裏に浮かんでくる。
(何で俺、一人でこんな所に居るんだろう…。)
周りはと見ると、直線道路に挟まれた長い公園が続いてる。
100m道路、というものだ。斑目が歩いてきた地下街も
この下に続いているし、まだまだ広がっている。
そして、両側にはデパートや様々なビルが立ち並び、
TVの電波等も塔も近くに見える。
(うーん、せっかくだからあの塔にでも登ってみるか。
東京に行って東京タワーに登るみたいなもんか?)
このカップルや若夫婦の空間から、もっとベタな観光地
っぽいところへ移動したいとの判断が働いた。
東京タワーをこじんまりとしたような三角錐に惹かれて
地上に降りると、そちらに移動しようと横断歩道で信号が
変わるのを待つ。その時、携帯にメールの受信があった。
取り出してみるとスーと恵子からの2通で、お土産の
催促がそれぞれ来ている。
さらに名古屋名物を食べたら写真も送れ!と有る。
「あいつら、我がままお嬢か?(苦笑)」
笹原と高坂が卒業してから、一時は部室へ足も遠のきかけた
が、いつのまにか恵子と疎らにメールのやりとりをするように
なり、来日したスーからも、携帯を持つやいなやアドレス交換
を強制的にさせられ、電話や主にメールで、スーの日本語の
上達の一助となっているような状況だった。
特につきあう…といった感じには全くなく。斑目としては
手の掛かる妹が二人できたような感じに受け取っていた。
とはいえ、それがなければ夏以降の日々がいかに退屈で孤独
だったか。それを考えると二人には感謝していた。
「仕方ねぇな。」
そう言いながら、近くに見えたデパートの地下街で何か
土産物でも無いかと、電波塔ではない側の横断歩道に向かった。
(この俺が百貨店…デパートに入るとはねぇ(苦笑)。)
奇しくもこの辺りは、名古屋では4Mと呼ばれるデパート
密集地帯でもあった。
それから数時間後。斑目はデパートの紙袋を横に置き、
土産物だけでなくゲーセンのクレーンゲームのぬいぐるみも
その中に入れ、漫画喫茶の一室でくつろいでいた。
ドリンクを飲みながら、古典漫画の長編シリーズを読みふけり
目の前のネットで気が向いた時に、気になる掲示板を
チェックする。
(あー落ち着くわ…。)
靴も脱いで、すっかり気楽に過ごしていた。
やがて夜に差し掛かる頃、外に出た斑目は真っ暗になって
いたので少し焦った。
漫画喫茶の充電器に入れていた携帯電話には、親からの
伝言メッセージが残っていて
「晩御飯は、そっちはそっちで食べて自由にホテルに
帰ってきたらいいから。」
ということだった。
「さて、何を食うかな…。」
通りの向こうには、食べなれたカレーチェーン店と、
牛丼のチェーン店が見える。
カレーチェーンの方は、名古屋が発祥なのだが、だから
といって特別変わりがあるわけではない。
慣れというのは恐ろしいもので、自然に足が向いて、店に入り
そうになってしまう。
「いかんいかん、せっかくだから俺は名古屋名物を食べるぜ!」
一人で食事をしやすいチェーン店やラーメン屋の誘惑を
振り切って、さらにキャバレーその他の呼び込みを避けつつ
夜の繁華街を歩き続ける斑目は、いつのまにか完全に道に
迷ってしまっていた。
ふと見ると、前方にとんかつ屋が見える。
「腹も減ってきたし、ここ味噌カツ屋か?入るかな…。」
飲み屋に一人で入るのよりは抵抗が少ない。
カウンターに座ると、隣の席では大きなとんかつに味噌タレが
掛かったものが運ばれてきた。
「わらじカツおまたせしました〜。」
(うぉっ、でかっ!)
それを見て斑目は、腹が減っているもののそこまで
食べられないと悟った。
「えーと、串カツと生ビール中でお願いします…。」
(手羽先か味噌煮込みうどんでも、名古屋駅の
近くで食べてからホテルに戻るかな。)
とはいえ、まだ斑目は道に迷ったままなので、少し不安だ。
そこへ串カツと、よく冷えた生ビールが運ばれてきた。
テーブルの壷から味噌ダレをかけると、携帯カメラで撮影する。
珍しいものを食べたらいちいち携帯カメラで撮って送るなんて
行動は、熱々カップルか新婚夫婦のすることだと思うのだが
斑目は特に気にもせず、撮影している。
そして串カツを口に運ぶと、甘みのある、とんかつソース
とは違った味噌の味と串カツの豚肉、衣を味わう。
(あー、これはこれで美味いな。毎日とは言わんが。)
手持ち不沙汰なので、さっきの写真を恵子とスーに送る。
道に迷った事も書いておくと、「美味そう!」の返信とともに
「清算の時に最寄駅までの道を聞いたら?」と恵子から書かれ
(そりゃそうだ。迷ってると本人余裕無いんだなぁ。)
と、苦笑いを浮かべた。
今日は胃が大きくなっているのか、串カツとビール1杯では
まだまだ余裕のある斑目だったが、とりあえず店を出た。
支払いの時に、最寄の地下鉄乗り口もしっかり聞いたので
矢場町駅から名古屋駅まで、無事に帰りつくことが出来た。
名古屋駅から出るとそのまま下りエスカレーターで地下街に
降りた。衣料店は店じまいの雰囲気が漂っている。
(もう夜8時過ぎだしな。食べ物屋も有るけどもう終わりか?)
そう思いながら歩くと、味噌煮込みうどん専門店「山元屋」
という暖簾の前を通りかかった。営業中の札が出ている。
手羽先で呑もうかとも思っていたが、酒より食事の気分になり
店に入ってみた斑目だった。
「あのー、まだ大丈夫ですか…?」
「はい、こちらどうぞー。」
ラストオーダー間近の店内に通され、味噌煮込みうどんを
頼むと、待ちながら焼酎水割り(レモン入り)をちびちび
と呑む。周りの席の食べ方を見ると、土鍋の蓋を取り皿と
して使っているようだ。
(ふーん、なるほどね…。)
やがて、ぐつぐつと音を立てる土鍋が運ばれてきた。
ビールを追加で頼むと、斑目は土鍋の蓋を開ける。
味噌カツの時と違って甘いわけではない、味噌の匂いが
湯気とともに立ち上る。鍋の中はまだ沸騰していて
いかにも熱そうだ。そしてまた写真を撮る。
(この、乗ってる卵どうするかな…。)
そう考えながら蓋にうどんを取り始めると、うっかり
卵の黄身を割ってしまった。
「あぁ…。ま、これはこれで美味いかな。」
煮込み用の太いうどんと、トロリとした味噌のつゆが
からまり、ずっしりと腹に溜まってくる。
口の中を火傷してそれをビールで冷やしながら、
額に汗を浮かべて食べきったのだった。
食べ終わって、地上に出るとホテルに向かいながら
歩きつつ、またしてもスーと恵子にメールを送る。
スーからすぐ返信が来るが、日本の食べ物の味はまだ
想像が付かないものが多いようだ。特に味噌味は。
『名古屋には、甘いパスタが有るそうだな?是非!』
なんて無茶な要望を送ってきているが、店の場所も
知らないので無理だと苦笑しつつ歩く斑目だった。
ちなみにスーは携帯メールだとそれなりに簡単な漢字も使う。
「あれ?ひょっとして斑目じゃない?」
斑目は不意に声を掛けられてビックリし、ビクンと
飛び上がってしまった。携帯を落としそうになる。
「わたたっ…!」
「あははは、オーバーだねぇ。」
忘れるわけが無い、間違えるわけが無い。
春日部咲その人だった。ちょっと地味目のドレスを着て
同じような女性数人グループから抜けて近寄ってきた。
(え?え?なんで?名古屋だったよな、ココ!?)
「斑目、なんで名古屋に居るの?」
「それはこっちの台詞だね!」
「えー、友達の結婚式だけど、早いよねぇ。同級生なんて。」
「あ、ああ、そう。大安吉日だもんな。」
「んで、斑目は?」
「俺は従姉妹の姉ちゃんが同じく結婚式でネ。」
「ふーん、斑目はどっか観光した?あたし名古屋初めてでさ。」
「したさ!名古屋城に、繁華街で食べ歩きさね!」
「なんかテンション高いなー。酔ってるね(笑)。」
ふふふと笑う春日部に合わせて斑目もはははと笑う。
「いーなー、なんか可愛いものとか有った?」
「俺に可愛いものを聞くかね?まあ名古屋城の掘には
鹿が居たね。親子で。」
「え?ホント!?写真とか無い?」
斑目は春日部の友人が去っているのに気付いた。
「あのー、ご友人が居なくなってますが?」
「ああ、いいのよ。」
その返事を聞きつつ、斑目は携帯写真データを探す。
「ほら、これ―。」
「あー、見して見して。」
ぐっと接近する、斑目と春日部。
(このあと、春日部さん予定無いのかな…?)
(こんな遠くの地で偶然会った縁だし、一緒に飲むとか!)
(てか、俺まだ振り切ってなかったのな!?)
(あとで辛くなるからやめとけ!)
(いや、あくまで友達としてだねぇ――。)
様々な想いが頭の中をぐるぐる回る。
その時、春日部が見ていた斑目の携帯に、メールの受信が
有った。表示で恵子からのものだとわかった春日部は
ニヤリとしたあとホクホクと微笑むと、斑目に向き直る。
「あらー、斑目も隅に置けないねぇ。ほーほー。」
「え?ちょ!」
自分の携帯を手渡され、確認すると焦る斑目。
「やー、なるほどねぇ。お姉さんも安心だよ、うんうん。」
「ば、バカ言ってんじゃねえっての!スーとかあの辺の
現役会員とメールよくするようになってるだけだって!」
「まーまー、最初のきっかけは…そんなんだよねっ。」
春日部も酒が入っているのでノリノリである。
「あー、いい話もあったところで、せっかく名古屋で
会えたけど、私は帰るわ。明日も仕事なんで日帰り
なんだよねぇ。残念!!」
「あ――、ああ、そうなの?」
「東京でそのうち、根掘り葉掘り聞かせてもらうからね!」
「だーかーらー!違うっての!」
そうやって、さっぱりと別れていった春日部だった。
見送った斑目は、考えも良くまとまらないまま、とりあえず
恵子に「今偶然、結婚式で名古屋に来てた春日部さんに
会ってね、俺と恵子ちゃんが付き合ってると勘違いしてたよ。
さっき来たメールでね。また誤解だって言っといてよ。
まぁ迷惑かけるね。」と返信を送った。
とぼとぼろ暗い裏路地を歩いていると、メールでなく電話が
掛かってきた。もちろん恵子からだ。
「斑目、ごめん!ほんとゴメンね!」
「や、それ謝り過ぎだろ(苦笑)。」
「………うん、うん。でも――――。」
「ま、色んな偶然のタイミングだったなぁ。気にすんな。」
「うん、わかった。でもさぁ。でも…斑目が良かったら、
その勘違い、本当にしてみない?」
「……ぶっ!ははははは。あーはいはい、考えとくね。」
「もー、冗談だと思って(笑)。」
「冗談だと思ってだよ!(笑)。」
冗談ということにして二人は話を流してしまった。
電話を切って、ホテルに着くともう家族は戻っていた。
「晴信、大浴場が良かったぞ。入ってきたらどうだ?」
「あー、そうするわ。」
促されて、一人で大浴場に向かう。
体を洗いながら、春日部さんに会ったことや、恵子の
「その勘違い本当にしてみない?」の台詞を思い出す。
(俺が、恵子ちゃんと?ありえねぇっての(苦笑)。)
そう思いながらも、大きな湯船につかり、湯の熱がびりびりと
体に染みてくるのを感じながら、何故か去年の軽井沢合宿で
目撃してしまった着替えを思い出す。
(あー、なんで俺、ドキドキしてんだろ…。)
窓の外にはビルの明かりが見える。
(酒呑んで風呂入ったら心臓に来るわな!そりゃ!)
そういうことにして、名古屋の1日を終える斑目だった。
食べ歩き紀行のつもりが、欝展開になりそうになり、
さらに意外な(?)フラグ発生…と、書き手自身が
この展開にとまどっておりますorz
とりあえず、斑目に名古屋のリベンジ達成させました!
手羽先とマウンテンはまだだけどな!
>>441 斑目に登山は無理でしょw
つーかおかしなフラグばっか立ててるねえ、斑目…w
とりあえずGJ!
>>441 食事の描写が「孤独のグルメ」思い出した。
ウマソス。
色々フラグたててますなぁ。
今一番強いのはヤナフラグ?
斑目今度はどこ行くんだろうかっ?w
>斑目放浪気名古屋編2
感想書こうとコピペしてきたら、このシリーズが彼の本質であることを予感させるタイトルになっていてもうひと笑いできました(すんません)。
結婚式出席!そう来ましたか。俺も経験あるけどトシとってくるとこいつがツラいんだよね。ふらりと別行動したくなる気持ちも解る。
ご本人も書いておられますが展開が暗くなりそうでハラハラした。斑目って一人にすると輝度下がるなー。
咲さんとめぐり合えたのはよかった。……と思いきやおかしなフラグがw
斑目の気持ちを知っていて必要以上に詫びながらも、なんだか悪戯心が湧いて出た小悪魔恵子かわい。
なにはともあれ名古屋リベンジおつかれ〜。
斑恵好きのあっしとしては嬉しいフラグだった。
続きを楽しみにしてます。
え〜と、絵版のナカジ関係の絵群に触発されてSSかいた。
何枚かの絵の話をつなげてしまいました、絵師の方々すいませぬ。
大体7レスで投下します。
昔から一緒にいた私達だから、きっと分かり合えていると思っていた。
暑い夏が過ぎ、この地方の冷え込みは早く。
すでに長袖に変わった私達の制服は、その象徴でもあった。
「なぁ、中島ぁ。」
「ん?」
授業の合間に私のグループの一人であるおさげの少女は、
私に数枚のルーズリーフを渡してきた。
「これ、さ、荻上に挿絵頼もうかと思ってるんだけどぉ。」
「ふーん・・・?」
渡されたルーズリーフに興味もない私は、気のない返事をする。
この子の書く文章の稚拙さは分かっている。
いまさら読むまでもないのだ。
「・・・ほんだら、荻上にも見してみるよ。」
そういって、渡された紙束を机に押し込む。
「・・・そっか。よろしくお願いなぁ。」
その子はそろそろと自分の席に戻っていく。
放課後。
私はその紙束を燃え盛る焼却炉に放り込む。
あの子は気が小さいから、たぶん、こちらから何もいわない限り何もいわないだろう。
・・・荻上はこんなもののために絵を描く必要はないのだ。
私は、あの子をもっと大切にしたい。
「・・・あ、あのさ、中島?」
一週間も過ぎたころ、件のあの子がやってきた。
「ん?」
「わ、わたしてくれた?」
「・・・ああ。」
「なんだって?」
「今他の描いてるから忙しいって。」
「え、そうなんだぁ。じゃあ・・・。」
「でも、後で描くかも知れないから、借りておくって。」
「そ、そうかぁ。わ、わかったぁ。」
このいいわけも考えておいた。
「・・・なぁ、中島?」
「ん?」
荻上がやってきた。
「なんか、頑張ってねぇ、言われたんけど、何か分かるかぁ?」
「・・・ああ、まぁ、特に考えなくていいんでねぇか?」
ははっ、と私は笑うと、前に座った荻上の肩に手をかけ、そっと抱きつく。
「なんだぁ、どうしたべさ、中島。」
「まぁ、いいでない。ちょっとこのままでさ・・・。」
私とこの子は分かり合ってる。
この子はきっと知らないモノがたくさんあるから。
私はこの子を守らねばならない。
しかし、三年になっての初夏。
彼女は、男と・・・付き合いだしたのだ。
私は思った。
これは、いけない。
私はどうするべきか考えた。
あの男は荻上と何も分かり合っちゃいない。
荻上の真の姿を見せればいい。
あとは行動に移すだけだった。
・・・私のしたことは間違いだっただろうか。
いや、きっと間違いではないはずだ。
しかし荻上は教室で追い詰められることとなり・・・。
自殺未遂までするに至る。
私は・・・。
「んー、ナルホドっ。あなたは、何もしてはいないとぉ・・・。んーふっふっふっ。」
東京から来たという刑事が、この事件に興味を持ったらしい。
周りの情報を集めていることは私も耳にも入っていた。
数日前から付きまとっていたこの刑事が、なにを考えているのかは分からない。
「しかしですねぇ、中島さん?」
「はい?」
「あの本が出回る可能性があるのはあなたの所だけなんですよ。」
「なぜそういい切れるんですか?」
自信たっぷりのその口調が鼻につく。私も方便を抑えて返す。
「あの本の原稿が回収されたのは巻田君の家に投函されるつい3日前。
これは荻上千佳さんの証言からも確かです・・・。」
「はぁ。」
この刑事・・・なにを掴んだ?
「この原稿、他の部員さんは一応知ってはいたそうですが・・・。
肝心の中身自体は知らないと口をそろえていました。
荻上さんはあなたに渡した。他の部員は知らない。
ならだれがあの本を作れるというのでしょうか?」
「だから前もお話したでしょう?
一回ためしに製本したあと、私の手元からなくなったって・・・。」
「そこです。」
「はい?」
「発見された原稿、いつ製本されました?」
「そりゃ、もらってすぐ・・・。」
「んー、ん、ん、ん、おかしいですねぇ。」
「なにがですか?」
「この近所でコピーを扱ってる場所は無い。
あなたの家にはPCはあれどもスキャナは無い。
となると、学校のコピー機しかありえません。」
「・・・。」
「しかも、その原稿が渡された日は学校のコピー機は修理中でした・・・。
となるとまず、その日には出来ませぇん。その上ですねぇ・・・。
あなたがコピーをしている姿を、見ている方がいたんですよ。」
「え?」
「んー、ふっふっふっ・・・。しかも、その投函された当日にね。」
「あー・・・。間違えました。そうです、その日に・・・。」
「・・・なるほどぉ。」
「だから・・・その日のうちに盗まれて・・・。」
「そこがおかしいっ!」
「え?」
「あなたがコピー機前で見かけられているのは夕方三時。
投函され、発見されているのがなんと夕方五時なんですよ?
明らかに早すぎます。これはどう考えても・・・。」
「しかし、そうとも限らない。」
「そうですねぇ。
しかし、この状況だと、仮にあなたではないとすると、行きずりの犯行ということになる。」
「そうなんじゃないんですか?」
「・・・となるとおかしいんですよねぇ。」
そういいながら、あごに手を当てる刑事。
「え・・・?」
「指紋ですよ。指紋、あなたと・・・巻田君のご家族のしか付いてないんです。」
「!!」
「行きずりの悪戯をしようとする中学生が、わざわざ指紋を気にするとお思いですか?
それは無いですよねぇ、どう考えてもおかしい!
やはり、どう考えてもあなたが犯人でないとおかしいんですっ!
・・・お認めなられてはいかがですか・・・?んーふっふっふっふっ・・・。」
ここまでいい捲くし立てられ、私は何も言えなくなった。
・・・そういうことか。
この人は全てを知った上でここに来て、私を論破するつもりだったのだ。
「そうですね・・・。」
「やったことは悪戯です。しかし・・・やりすぎです。」
眉を顰め、指を額に当てる刑事。
たぶん、この人は勘違いしてる。
「やった事を認め、反省するのがいいと思いますが・・・。」
この人は、私がここまで言われれば自供すると思っている。
私を、ただの中学生だと思っている。
反省をすると思っている。
人気が無いところを選んだのは、私への配慮だろう。
しかし・・・それが仇になる・・・。
「刑事さん?」
私は、懐に隠していたナイフを取り出し・・・。
「ん?・・・ちょっとお待ちなさい・・・。」
「私ね、自分のやったことに反省なんかしてないんですよ?」
「なにを・・・。」
「荻上はね、あんなのと付き合ってちゃいけなかったんですよ。」
「・・・待ちなさい。」
じわりじわりと刑事との間合いを詰める私。
一歩進むと、刑事は一歩下がる。
「だから、あなたは死ななきゃ。これはばれちゃいけないんですよ。」
刑事の顔が歪む。私は・・・満面の笑みを浮かべて・・・。
「男だから、苦しまずに逝かせてあげますね。」
ザシュッ。
「ねえ、聞いた、中島ぁ。」
藤本が私に話しかけてくる。
「東京から来てた刑事さん、行方不明だってさぁ。」
「へぇ・・・。」
「何か掴んだ風だったんだけども。」
「まぁ、忙しいから帰っちゃったんじゃねぇの?」
「でも、東京の他の刑事さんとかやってきてたよ?」
「まぁ、私達には関係ないべさ。」
「そうなんかな・・・。」
相変わらず、荻上は自分の席で音楽を聞き続けてる。
自殺未遂した時の怪我も癒えてきているようだ。
・・・これでよかったのかな。
外には夏の終わりを告げるセミの声が聞こえている。
まるで、季節よ早く変われと急かすように。
ど、どうなんだんだ、これ。
投下しながらやばいかもと思ってしまいました。
絵師の皆様懺悔します。orz
でも、古○のくだりとか書いてて楽しかった・・・。
>斑目放浪気名古屋編2
これはいい斑目旅でつね!!
というか続編で恵斑展開とかは期待しちゃいけませんかね…??
咲とは…orz うんまあ、それは自分で補完しまつ。
>ヒグラシの啼く頃に
うは、面白かったw絵板を先に見てたから特にw古畑のくだりが…www
多分だいじょぶだとオモウデスヨ、そこまできっつい描写ないですし
456 :
うすじ:2006/10/21(土) 19:14:53 ID:dktjBGLh
そろそろ書くかな
20話くらいたまっているから
>>ヒグラシの啼く頃に
うわあぁぁあぁ(゚∀゚)ぁあははハハハ
「これでよかったのかな。」ってよかねえよ中島ァ!
この中島なら成長してなんでもやらかしそうですね。
本編でもめったに見られないうろたえる古○さんがよかった。万一ドラマ化したらこんな感じでしょう。
……えーっと。合掌。
>ヒグラシの啼く頃に
やぁ、これは良い中荻話ですね(笑)。
しかし中島のナイフ術…恐ろしい子っ!(それどころではない)
>>442-445,455
斑目放浪記名古屋編2の感想ありがとうございます!
名古屋は見所、食べどころの多い街ですよ〜。
しかし、タイトル間違えに全く気付きませんでした。。。うぅ
あと、斑恵展開での放浪記続編か、斑恵での別話かどっちか考えますね。
460 :
458:2006/10/24(火) 19:55:58 ID:???
>>459 斑目ハーレム展開っ!?それはそれでアリかも
タイミングを見計らってるウチに
ハーレム消滅するのがヘタレ斑目クオリティ
>>461 なんかリアルでやーね(´Д`)
でもそれが斑m(ry
ちょっと小ネタを投下しまつ。
最近SS書いてなかったからブランクを感じるゼ…。
「斑目ハーレム」
「え〜〜〜第24回…。
俺のお誕生日会を始めます〜〜〜〜〜〜………。
って、何で俺が言うの?(汗)」
大「は〜いみなさん拍手〜〜。斑目さんは細かいことを気にしないように!
もっと嬉しそうにしてください!!」
大野さんが言うと、部室に集まっていた女子のみなさんがまばらに拍手した。
大野さんのほかには、荻上さん、9月から留学してきたスーとアンジェラ、そして咲。
9月に無事卒業して、就職も決まり順風満帆の大野さんは、あり余った幸せと時間を持て余していたのだった。
そして、「周囲も幸せにしよう!」と閃き、信念のもと活動し始めたのだった。
斑「工エエェェ(´д`)ェェエエ工 もう誕生日とか嬉しいトシでもないんですけど…」
大「ツンデレですね!」
斑「いやそれ違うだろ」
荻「…大野先輩飛ばしすぎですよ、初めから」
大「あ〜〜らオホホ、そうかしら?」
斑「…ところで、何で春日部先輩はすでにできあがってるんですか?」
斑目の横で、春日部さんが赤い顔でへろへろになっている。
会社帰りに校門前で大野さんに拉致られて、何故か酔っ払ってる春日部さんのとなりに座らされ、女子に囲まれた斑目は、ひたすら困惑するのだった。
大「部室に来る前に、咲さんと飲みながら話してたんです☆」
荻「……え、昼間っから?」
大「まあまあ、咲さんを酔っ払わせたのはちゃんと理由があります!!」
荻「……どんな理由ですか。」
大「咲さんはですね………、出来上がると、陽気になるんですよ!!!」
荻「………それで?」
大「陽気になったら…楽しいじゃないですか!!」
荻「………だから?」
大「楽しいのが一番じゃないですか〜。他に何か必要な理由が?」
荻「いえ、もういいデス…」
大「ねッ、楽しいですよね咲さん!!」
咲「いっえーーーーーーー!!」
大野さん、荻上さんと向かいの席(斑目の隣)で、春日部さんがなにやらガッツポーズを作る。
斑「…何このノリ」
咲「おめでっとおーーーーーー!!」
斑「…春日部さん大丈夫か?」
大「ん、まあ、咲さんもね、仕事で色々ストレスためてるみたいですし。
さっきも斑目さんの誕生日会の話してたはずが、いつの間にか仕事の愚痴聞いてましたから。飲みながら」
荻「…そんでこんなに…仕方ないスかね…。」
咲「うひゃひゃひゃ、アンタも大人になったのねーーー!」
斑「…いや、4年前から大人ですけど」
咲「酔ってませーーん!」
斑「まだ聞いてねーーー!(汗)」
…と、不毛な会話をしている間、スーとアンは荻上さんの最近出した新刊をよんで英語でなにやら話していた。
アン「ファンタスティーーーック!エクセレンツ!グラッシーズ!!」
スー「リアルハードコア!!」
荻「………………」
大「あ、すっごい誉めてます」
荻「そ、そうですか…」
大『(英語)ほら、スーもアンもそのくらいにして、ケーキ食べましょケーキ』
スー「イエス!」
スーは荻上さんのほうに向かって、「GJ!!」と言ってからホールのケーキを切り始めた。
大「このケーキ、スーとアンが作ったんですよーーー」
斑「ほほう、これは………目のさめるようなスカイブルーで…(汗)」
大「ああ、このゼリー部分はペパーミント味ですからね。でも味は保証しますよ!」
斑「そ、そう。とにかくありがとう」
スー「アサメシマエ!!」
斑「?」
大「『このくらい朝飯前だ』って言いたかったみたいですw」
斑「スーさんは日本語覚えるの早いなあ…」
咲「はい斑目、あーーーーん!」
斑「!!???」
春日部さんがいきなりケーキを刺したフォークを突き出し、斑目はびっくりした。
斑「え、ちょ、な、ちょ、えええ」
咲「何、ワタシのケーキは食えないってか!」 ギロッ
斑「いやそういうワケじゃ…(目がすわってるよ、コエー…)」
咲「んじゃーーーはいっ☆」 ニッコリ
斑「えーとえーと、あうぅ」
咲「えーとえーと言わない!!」
斑「…ソウデスネ」
斑目が真っ赤になってしどろもどろになっているのを見て、大野さんと荻上さんはひそひそ話をした。
大(どうやってこういう展開にしようか迷ってたんですが…結果オーライですね!)
荻(色々はしょられてる感満載ですけど……というか手抜(ry)
大(そこは流せ!です!!)
咲「ほらあーーーん」
斑「………あーーーー」
斑目が口を閉じようとした瞬間、フォークがさっと引かれて春日部さんの口にしっかりとおさまった。
咲「んまーーーい!!」
斑「………………………うん、分かってたケドね……。そういうベタな罠だって分かってたけどね………!!!
くうっ、思わずつられたっ!!」
…と、横目で悔しそうにしながらもちょっと幸せそうな顔の斑目であった。
OWARI (ぇ
468 :
あとがき:2006/10/26(木) 22:15:51 ID:???
できることなら25日に投下したかった…orz
とにかく斑目ハピバースデー。
絵板でのコメントからヒントを得て書いたモンです。
お粗末さまでした。
469 :
訂正(汗):2006/10/26(木) 22:19:19 ID:???
斑目ハーレム1で。
>斑「…ところで、何で春日部先輩はすでにできあがってるんですか」
先輩!?
…すいません、「春日部さん」に読み直してもらえれば幸いです。ヤッチマッタ…
>斑目ハーレム
斑目…いい誕生日じゃね〜か たぶん男子含みの二次会があるんだろうな大野さんが飲む用の
>斑目ハーレム
春日部さんだけでなく、他の女子たちも斑目に優しくしてあげてくださいw
こんな誕生日だったとしたら、とりあえず最高じゃないですかっ!!
つかのまの救いGJです!
斑目ウラヤマシスw
私の誕生日も祝ってください、現視研の皆さ〜ん。
クッチーでもいいよっ!w
またまたやってまいりましたくじアン面白か(ry
今回は咲さんが次回予告で登場でしたね。
次回は・・・朽木だっ石田クッチーに期待だっ。
というわけで、3レスで投下します。
マ「え〜、第三回くじびきはーとアンバランス、略してやっぱりくじアンよかった本会議〜。」
K「よ、よもや春日部さんがみるとは思わなかったね。」
梟「よりにもよってこの回をなぁ・・・。」
ベ「正直、最初のシーン、予告見た限りじゃ妄想か何かと思ってたんですが・・・。」
ト「ああ、もしくはマッサージとかね、そういう落ちだとねぇ。」
マ「ガチかよっ!ってことでまず盛大にフイタわな。」
ベ「前回に比べると多少作画落ちてますかねぇ。」
梟「まぁ、前回は神作画、神コンテ回だったみたいだからな。アレを毎回期待するのも・・・。」
K「で、でも、一定以上の作画は維持してるね。」
マ「だわなぁ。予想外だわ。」
ト「え、マムシさんはそろそろガタが来ると。」
マ「ちょっと思ってたわなぁ。」
ベ「確かに、息切れしてもおかしくないくらいクオリティ高かったですもんね、二話。」
梟「たぶん、前の二話と比較して動きが多くなってたからな。
ここまで動かすには多少の妥協も必要だろう。」
べ「忍先生大暴走だったな。個人的には・・・ただの猫かぶりになってがっかりだが。」
梟「メガネをはずすと変わる、というキャラ設定はよかったからなぁ。」
K「え、エロイよね、で、でも。」
マ「ガチでブラコンとはなぁ。思い切ったキャラにしたもんだ。
しかも、学校のOGで、反生徒会として活動してたこともあるという設定・・・。
キャラ立ちすぎだな。ははっ。」
ベ「『子供は見ちゃだめぇ〜〜』とか、おいおい、そこまでやる気かいって感じでしたねぇ。」
ト「ハコノリを前回出来ていた理由とか、OPでの妙なほどのドラテクとか、判明した感じですね。」
マ「ヘッドとはね・・・。恐れ入りやした。声優の演技もうまかったなぁ。」
K「き、切り替え上手な人だよね。さ、笹本優子。ゆ、有名どころだとストリートファイターのさくらだよね。」
梟「ワキが多いが、それでも多様なキャラをやってる印象があるな。
少年から少女、大人の女性まで。バッチリな起用だな。」
ベ「鏑木先生に惚れ薬を頼む時の声の変調とか、良かったですよね。」
ト「まさに適役ですね。」
マ「で・・・まぁ、忍先生はいいんだ。まだな。鏑木・・・。」
梟「もはや完全に別キャラだな。専攻も生物→化学か。」
K「お、面白いキャラだけどね。ぜ、前作ではちょっとクールなキャラすぎたからちょっと浮いてたかな。」
マ「主人公以外にああも女性から好意を寄せられるキャラって・・・。」
ベ「明らかに『ラ○ひな』のセタ狙ってましたよね。」
ト「でも、展開的に使いづらかったっぽいですよね。」
マ「そういう意味じゃあ、いい改変かのう。いいコンビになってるからなっ。
『あれ混ぜちゃったまずかったんだなぁ〜」とか、いい感じだぜ。」
梟「今回は忍→鏑木でなくて鏑木→忍だからな。だが、結局また結婚するかもしれないな。」
K「ら、ラストの落ちが先生の結婚ってこと?わ、悪くないね。」
ベ「どう〆るつもりかはわからないですけど、1クールじゃ難しそうですよねえ。」
ト「その辺も含めて今回のスタッフには期待したいですねー。」
マ「蓮子たんは今回かわいさ爆発だったな。山田があまり出てこなかった為かやかましさも少なめだったしな。」
梟「『パンダた〜〜ん』だろ?うまく魅力を引き出していたな。」
K「こ、小雪もよかったよね。先生の妄想シーンは三人とも良かったけど、
特に小雪は力入れすぎ、だ、だったよなぁ。」
ベ「あのアップは反則ですよねぇ。これで小雪に転んだ人も多いのでは?」
マ「いやぁ、今回はどう考えても時乃だろ〜。」
梟「そうか?最後のアレで・・・でもま、色っぽいシーン多かったしな。」
ト「百合風味までバッチリしこむ、この感じ、やっぱり90年代OVAですねえ。」
マ「うむ!最近は細分化されて『ツヨキス』などの作品が目立ち始めていたが、
昔は全て詰め込むものだったよな。そのころのテイストがスゴイするわい。」
K「て、展開のベタさ加減も全てその頃の感じだよね。
こ、今回も、「あ、こうくるな、やっぱりね」という感じで笑っちゃうんだよなぁ。」
梟「惚れ薬、ってもんが出てくる時点でもうな。」
ベ「読めてるんですけど、少し斜め上というか、作画の妙というか、いいですよね。」
ト「細かいところでは、小雪ちゃんが「もう走れない」といった次のシーンではおんぶしてたり。」
ベ「細かいよねー。『守られるキャラ』という形が確立されつつあるよね。」
マ「山田メカの役に立たなさっぷりもな、もうあれはお約束だな。」
ト「あそこにあれだけの作画、そして「カオルコ・ヤマダいっきま〜〜〜す!!」ですからねえ。」
K「た、楽しいよね。「死んだら・・・」ってところとか。」
梟「メカの描写、車やバイクも細かすぎる。エンジンが火を噴くときの描写なんてすごいぞ。」
ト「アニメが好きな人が作ってる感じしますよね。
亜細亜堂は80年代の「ど根性ガエル」とか、ああいうのを手がけてたスタッフが作ったスタジオらしいですね。」
ベ「昔のアニメのアクションっぽいところもあるよねー。」
K「す、少し懐かしい感じがするのはそのせいか。」
梟「地味だし、たぶん本流になることもないんだろうけど、はまる奴にはたまらないだろうな。」
マ「冬コミが楽しみじゃのう!!」
ベ「でも、これの開始、申し込みより後だから、ブース集まってなさそうですね・・・。」
マ「全てマワリャいいんじゃ!!わかったかっ!!いいものは二冊買っとけ!!」
梟「おいおい・・・。まぁ、そういうことだな。」
ベ「で、於木野さんは・・・その・・・。」
於「なんですか?」
ベ「蓮子たんの・・・。」
於「しません。」
ベ「まだ何も・・・。そうですか、はい。」
神「えー、しないんですかぁ?」
於「しません、するわけないでしょう。」
神「そうですか・・・。ニヤリ。」
マ「・・・気になる笑みだがまぁ、いい。というわけで今回はここまでじゃ、また次回でな!」
>>474の、「忍先生〜」の台詞はベでなくてマでした。
たぶん台詞の違和感で気づいていただけたと思いますが・・・。
感想いただいてるかた感謝です。
たぶん、このまま最終回までかけそうですw
くじアン、おもしろいですからw
>>第三回くじびき〜以下略
毎週ご苦労様です!GJ!
先週は凄かったですねー。ギャグ王道シナリオでw今週も楽しみだ〜♪
ところで今回は本会議にクラッシャー花山17歳さんの登場を少し期待してた俺ガイル…
SSって何?
セガサターン!
なるほどーサンクス!