本誌ではあまり語られることの無い「みえるひと」の日常を書いてみないか?
うたかた壮メンバー、十味さん、パラノイドサーカス、OL…
その他のキャラ達の日常も、コント風味でもシリアスでも楽しく書いてみようじゃないか。
週刊少年ジャンプで連載中の「みえるひと」のパロスレです。
ある晴れた日の朝。
澄んだ空気に青い空。玄関に出た明神は、大きく伸びをした。
ヒュゴオォォォォ
何かが空気を裂く音。
「何だ?」と思うまもなく頭に衝撃を感じた明神は、フラフラとよろけた。
頭上では「うわっ、ヤベェッ!」「逃げるぞツキタケ!」…そんな声が。
頭を抱えて蹲った明神の足元にコロコロ…と白球が転がる。
ズキズキと疼く後頭部を抑えながら、屋根に向いて怒鳴る明神の
「コラァッ!エージッ、ツキタ…ぶふっ」
視界一杯に広がる真っ赤な服。
「みょーじーん!みてみて、ゾウさん描いたの!」
屋根から降ってきたアズミに顔面に抱きつかれる。
またフラフラとよろけた明神は、何故か足元にあったバケツに足を取られて
盛大に玄関口ですっころぶ破目になった。
ドンガラガッシャーン ゴン カーン
転んだ上に蹴り上げたバケツに頭を強打されるというコント的な状況に
影から様子を窺っていたエージ達も、流石に心配になったのか出てきた。
「スゲェ…なんかドリフみてるみたい」
呟いた台詞は心配してるようには聞こえなかったが。
グググッ…っと身を起こした明神はアズミを剥がすと溜め息をついた。
「お前ら…ちょっと元気良すぎ…」
呆れ顔で悪がき二人と小さな怪獣を眺める。
だが皆一様に何かにビックリしたような表情で、明神の頭上を見上げている。
「膝枕の…敵ぃーッ!」
「うおっ!」
背後から感じる不穏な空気に身をかがめたと同時に、頭上をばかでかいハンマーが通り過ぎた。
チッと髪が少し擦れたのが解った。
「ガク!何だ敵って…つかお前まだそんな事言って…グフッ」
つい油断してしまったのか。まともに腹にハンマーを受けてしまう。
仰向けに地面に放り出され、青い空を眺めながら思った。
(何か…今日はよく体打つ日だな…)
「皆おはよー…って、どうしたの明神さん!」
地面にのびた明神を見つけた姫乃は慌てて駆け寄った。
「おー…ひめのん、おはよー」
明神の頭の上にはピヨピヨとヒヨコが回っている。
(うわぁ…こりゃ駄目だ)と一瞬思った姫乃だが
気を取り直して明神の鼻にティッシュを詰め込み始めた。
「……ちょ、ちょっと、ひめのん。何してんの。」
事態が飲み込めず、目をシロクロさせる明神。
ティッシュを片手に構えた姫乃が
「え、だって明神さん、鼻血凄い出てるよ。」
と言うまで鼻血が出てることに気付かなかったのは、何ともマヌケだ。
ああそう、ありがとう。と大人しく詰め込まれた明神は
姫乃の後ろにピタリと背後霊のようにくっつくガクから慌てて離れた。
今度はひめのんのティッシュの敵とか言われそうだ。
しばらくして鼻血は止まった。
悪がき二人はまた野球に興じ、小さな怪獣は目をきらきらさせてゾウさんの雲を追いかける。
姫乃は学生服に着替えるために部屋へと戻り
ガクはそんな姫乃の後姿をハートを浮かべながら見つめる。
いつもの和やかな光景に、明神は目を細めた。これが幸せってやつかもしれない。
そんな事を考えながら、顔についた血を落とそうと庭の蛇口に手をかけた。
キュッ
「…?」
キュキュッ
「……ッ!」
見る見る間に明神の顔が青くなる。
「水道…ま、また止められた…」
明神の絶叫がうたかた壮に響き渡った。
「うァァァァどうすんだよ!!!あ、雨!!金!!今日の天気予報なんだったっけ!?」
「ひめのん…マイスィート、一緒の墓に入ってくれ!」
「ガク、アズミ練習台にすんなって…イデッ!」
「エージ、行ったぞー…ブハッ!わ、悪い」
「ゾウさーん!」
姫乃が玄関に下りると、外から騒がしい声が聞こえてきた。
何だろう、と覗いて見ると、そこには見慣れた光景。
クスッと笑って暫く眺めていたが、つけっぱなしのTVの時間に気がつくと慌てて駆け出した。
「ちっ遅刻しちゃう〜!」
その声に気付いたエージが、「姫乃、気ぃつけろよー」と声をかけると
皆がつられるように「いってらっしゃい」と声をかけた。
「いってきます!」振り向いて手を振り元気良く駆け出した姫乃。
うたかた壮からは、置いて行かれた事に気付いたガクの「ひめのーん!」という叫び声と
明神の絶叫、賑やかな子供達の笑い声が聞こえた。
―うたかた壮は今日も平和です。
とりあえず一つ投下。
こんな日常も本誌で見てみたい…
人いねぇなw…orz
景気付けにもういっちょ投下。
歌ネタ有りなんで、そーゆーの不快な方はスルーでお願いしまつ。
「なぁ」
触れようと手を伸ばしたのは
「俺…少しでもアンタに近づけたか…?」
一番眩しいあの星
始まりは、押入れに埋もれていた科学の教科書を見つけた時だった。
まだ高校生だった頃の自分の思い出がつまっていて、捨てられずに取っていたものだった。
懐かしさからペラペラとページをめくる。
あぁ、そうだ。こんなことも習ったっけな。
ひめのんもこんな勉強するんだな…いや、その前に学校行かなきゃ駄目だろ。
今と昔の想いや思い出が交じり合って、色んな感情が生まれた。
「プラネタリウムの作り方」
ふと目を留めたそのページを見て、「作ってみようか」と思い立ったのも
そんな感情が関係していたのかもしれない。
「それがこんなことになるなんてな…」
自嘲気味に明神は笑った。
窓から外を覗けば、いつの間にやら辺りは真っ暗。
家々は寝静まり、いつもは騒がしいうたかた壮もすでに眠りについている。
その中で廊下に明かりがもれる部屋は、一階の一部屋、管理人室のみ。
その管理人室は足の踏み場も無い程散らかっていた。キレイ好きじゃない一人暮らしの男性の部屋と比べても、あまりにも酷い。
確か作り始めたのは朝ひめのんを送り出した後で、散らかさないようにとゴミ箱も空にしておいたのに…
夕方くらいには終わるだろうと高をくくっていたのが間違いだった。
正直自分がこれほど不器用だとは思わなかったのだ。
気がつけば部屋中ゴミの山で、晩飯も食べ忘れて熱中していたのだ。
ふぅと溜め息を一つついて座り込む。
傍らには、四苦八苦しながらもつい先刻出来上がったばかりの、不恰好なプラネタリウム。
壊れ物を扱うかのように優しく触れると、作り上げた嬉しさと高揚感が胸を包み込んだ。
つけてみようかと思ったが、折角作ったプラネタリウムをキレイな部屋で見たいという欲求と
ぐぎゅるるるぅ…と情け無く鳴った腹の虫に負けて、とりあえず遅い晩飯と掃除をすることにした。
簡単な炒飯を作って、片付いた部屋で黙々と食べながら
ゴミ袋一つ使い切った大量のゴミを眺めた。不器用にしてもゴミが出すぎだ。
もうちょっと器用に作れなかったものかと反省しながら温かい炒飯を食べてゴミ袋を見つめる。
そんな自分を想像すると何だか可笑しくなって窓の外に目をむけた。
辺りは暗闇に支配され、キレイな月が顔を出している。
ツキタケとエージのはしゃぎ声。ガクとひめのんのコント。楽しげなアズミの笑い声。
昼の賑やかな音も、今は聞こえない。辺りを包むのは、優しい静寂。
遠くの方でふわふわと、陽魂が気持良さ気に飛んでいるのがみえた。
(子供の頃は…怖かったはずなのにな。)
ふとそんなことを思い、笑う。
陽魂も陰魄も関係なく、『霊』を恐れていた。
自棄になって無茶もした。
救ってくれたのはアイツだった。
夜空を見上げる。師匠と同じ、黒い色。
黒が好きだったのか、よく好んで黒色のものを身につけていた。
幼い頃に恐れていた夜に安心感を抱くのも、アイツのおかげなのかもしれない。
空に向かって目を閉じて (俺も皆も、元気だよ。) そう考えた。届くような気がしたから。
上がったはずのアイツが、あの頃のままに笑ったような気がした。
食べ終えた後の皿を片付けて、再度プラネタリウムの前に座る。
ドキドキと心が昂っているせいか震える手は、ゆっくりとスイッチに伸ばされていた。
妙な緊張のせいもあるだろうが、少し息が苦しい。
ちゃんと点くかな。ちょっと心配しながら押したスイッチは、カチリと小さな音を立てた。
電気を消して、窓を閉めた暗い中での一筋の光。
暗闇に慣れた目にその光は少し眩しく、目を細めて天井を見つめた。
ホームスターや本物の星空には適わないが、それでも充分な出来になった事に歓声を上げた。真夜中なので小さくではあるが。
プラネタリウムに照らされた部屋は、天井も壁も全ての境界線が無くなって、明神だけの宇宙を作り出していた。
寝転んで、自分だけの宇宙を眺める。
星座の孔を開けるのに手間取ったが、苦労した分キレイになったのに満足していた。
手作りの、自分だけの…特別な、プラネタリウム。そっと触れるとほんのりと温かい。
贔屓目もあるだろうが、そこらの星よりキレイな気がする。手作りな分愛着も湧く。ボロいけど、きっと湧く。
一つ一つ、自分が作った星達を眺めていく。
小さい星。大きい星。詰め込めるだけ詰め込んだ星達は、部屋を優しく照らし出す。
宇宙を敷き詰めた部屋は、どこまでも高く澄んでいるような感じがした。
星座版を見て一つ一つ丁寧に詰め込んだ星達。
その中で、一つだけ。
星座版の何処にも無い、ここにしか無い星があった。この部屋にしか存在しない、明神だけが知っている星。
一通り眺め終えた明神が、その星に目を留める。
呼ばれた気がして体を起こした。そんな筈はないのに。
間違った訳じゃない。意図して作った、一番眩しい星。
「なぁ」
無意識に手を伸ばす。
「俺…少しでもアンタに近づけたか…?」
消えそうなくらい輝いているその星に
触れたいと思ったのかもしれない。
天井近くに位置するその星は、背伸びしたら驚くほど容易く触れる事ができた。
少しの間、思考が止まった。ほんの数瞬だったが。
伸ばした手を見ると、確かにその星に触れていた。
(…やめとけば良かった。)
酷く動揺した。当たり前だけど、本当に届いてしまった。
胸が締め付けられる程後悔していた。
早く…離さなきゃ。もっと辛くなる。
それなのに。手が、離れようとしないのは何故なんだろう。
(こんな…馬鹿みてぇな事…っ)
見たくなくて、頭を伏せて目を閉じた。
解ってた。いくら同じ名前を付けようと、この星はアンタじゃない。
俺の…夢。
アンタのコートきて、アンタのサングラス使って、アンタと同じ事して。
届くと思ったんだ。本当に届くわけ無いのに。
力を付ければ付けるほど、遠い存在になっていくのが解った。
近づいたぶんだけアンタを遠ざけてたんだ。
案内屋として追いつくことに挫けて、諦めようとしたときも消えてくれなかった、俺の中の、光。
「…近づけたよ…俺、皆の『明神』になった。」
ポツリと呟いた言葉に胸が詰まった。涙が滲んだが、一度瞬き目を閉じて堪えた。
聞こえないだろうと解っていても、安心させたかった。元気が無いと、よく心配して励ましてくれたから。
泣くことはないだろうけど、泣きそうなくらいに近づいてたことに気付く。…それでもやっぱり届かないだろうけど。
彼の名を受けた星は、変わらずに眩しく輝いていて。
見ている事に耐えられずに壁から離れた。離そうとしても離れてくれなかった手は、やっと離れてくれた。
熱を持ったプラネタリウムのスイッチを消して、窓を開ける。
見上げた夜空には現実が広がっている。あれほど自分を惹きつけた星も、この空にはない。
実在しないと解っていてもあの星を探すのは、心に焼きついたプラネタリウムの星空が忘れられないからだろうか。
空には見えなくても確かに輝いている、名前も場所も俺しか知らない星。
俺にしか見えない、一番眩しいあの星。
(いつだって見つけるよ。)
消えそうでも、見えなくても。
見つけられる。いつだって心の中にあるから。
見えない星に手を伸ばし名前を読んでみる。ちょっとこっ恥ずかしくなって笑ってみた。
この先案内屋として生きていても、届かないかもしれない。
また、挫けそうになるかもしれない。
それでも。
「…やってみるよ、明神。守りたいものができたんだ。」
頑張れる。アンタがくれた力と思い出と、皆がいるから。
伸ばした手の先には星空。上ったはずの明神が、頑張れよ、とまた笑った気がした。
プラネタリウム
乙です。リアルタイムで読んじまったww
時期としてはハセ編終わった後、明神の一人語りです。
仇を倒して決意を新たに案内屋を志す。
そんな感じで書いてみました。
>>19乙。
こんなスレあったんだな。
オレも先生の話書いてみるかw
しかし板違い。
板違いではないと思。
漫画系各板では板違いだしごみ箱未満だしな。
漫画が好きっぽいしそれでいいジャマイカ。
先生の話できたから投稿しまつよー
−1
東京のある町のある下水道のある一角。
そこには人に憧れる動物の幽霊−アニマ−がいるという。
どの町でも見かけるマンホール。耳を澄まして聞いてごらん。
聞こえてこないかい?あの高らかに響き渡る、少し変わった笑い声が…
「ホハハハハハッ!」
バシャバシャと水飛沫を上げながらバオは地蟲を追い回す。
いつになく地蟲を追い詰めるその様子に思わず笑い声を上げた。
愚鈍な事には変わり無いが勘が少し鋭くなったようだ。
「そうだ。それでいい。お前の内にたぎる怒りに身を任せるのだ。」
「バオォォ…」
発した言葉が聞こえるか聞こえないかの距離まで離れているというのに
バオはしっかりと返事をする。
−2
「ふむ…バオは随分と動きがよくなったな。」
「…フン。今のあいつならキサマにも勝てるかもな。」
「へっへへ…随分と見くびられたものだな。」
魂の再構築師 キヌマ。
その名は随分と有名なのだろう。今のグループに落ち着くまでにも、何度か耳にした名だった。
隣でのんびりと茶を啜る姿には微塵も強者の持つ空気は感じられないが
これでいて中々やるのは知っている。…しかしこいつの卑屈な笑いは癇に触って仕方ない。
「しかし…ホルト。お前も随分と変わった。」
「どういう意味だ。」
沼の古老がぽつりと漏らした。
−3
「このグループに属す前のお前は他の者の面倒なんか見ることもなかった筈だ。
…お前は変わったよ。バオに会ってから、随分とな。」
「……」
小さな衝撃が体を通り過ぎる。
大分遠くでバオがこけたのが見えた。
…馬鹿め!半端な知恵など持つから地蟲一匹狩れんのだ!
「…おかしなことを言うな。俺は変わってなどいない。」
内心のいらつきを隠すように吐き捨てる。
黙りこんでこちらを見つめる視線には微かだが興味が混じっていた。
その視線に更にいらつきを覚える。
すごすごと帰ってきたバオを視界に捕らえた。
更にイラッと来た。
…また狩れんかったのか。
−4
「俺は何も変わってなどいない。…が、一つ教えといてやろう。」
まだ遠い位置にいるバオに二、三歩歩み寄る。
振り向いてキヌマを見ると茶を注ぎ足す時にこぼしたらしくもんどりうっていた。
俺の周りには愚かな奴しか集まらんのか。
「なっ…なんだ?」
余程熱い茶だったのか?そんなに必死になって拭かんでもよさそうなもんだが…
「出来の悪い…弟のようなものを持つと苦労するぞ。持ったら持ったで後悔はせんだろうが、せいぜい持たんことだ。」
元々丸い目を更にまん丸にして驚く様はおかしく感じるものだ。
普段キヌマのそんな表情を見ることがない分余計にそう感じるのだろうな。
「バオォ……」
ようやく俺の隣まで来たバオは妙にしょぼくれた顔をしている。
やはりこいつは未熟だ。
−5
「地蟲を狩れんかったぐらいでそんな情け無い顔をするな。
…俺が手本を見せてやる。狩りはもっとスマートにやるもんだ。」
「バオ。」
…俺は変わってなどいない。ただ、生きている頃には無かったものを手に入れただけだ。
自分よりも大きな、だけど未熟で俺を慕う弟のような存在。
「行くぞ、バオ。」
歩きだすとドスドスとついてくる。
…フン!仕方ないな。見せてやるか。スマートな狩りってやつを。
−6
「…やはりお前は変わったよ。」
二匹の陰魄が見えなくなるまで驚きのあまり硬直していたキヌマが言った。
下水道には高らかな笑い声と破壊音が響いている。
「家族…か。」
湯飲みの中を懐かしげに見つめる彼は何を思うのか。
それは彼しか知る由もないことなのだが。
どの町でも見かけるマンホール。耳を澄まして聞いてごらん。
聞こえてくるだろう?あの高らかに響き渡る、少し変わった笑い声が…
「ホハハハハハッ!」
了
あの高飛車な先生がバオに指導する背景には
こんな感情があったりなかったりしたほうがいいなぁと思った。
コモン?寝てるんだよきっとヽ(;´Д`)ノ
乙。
こんなバックグラウンドがあったらって考えてアニマ編読むと
また違う面白さがあるな。