1 :
マロン名無しさん:
僕はネコ型ロボットで、そのとき野比家の屋根の上に座っていた。
十一月の冷ややかな雨が大地を暗く染め、傘をさした小学生たちや、
閑散とした裏山の上に立った杉の木や、明日ののびたの宿題やそんな何もかもを
フランドル派の陰うつな絵の背景のように見せていた。
やれやれ、またのびたの世話か、と僕は思った。
「完璧なネコ型ロボットなどといったものは存在しない。完璧な人間が存在しないようにね。」
僕に耳があったころ偶然にも知り合った未来デパートのの店員は僕に向ってそう言った。
僕がその本当の意味を理解できたのはのびたの子守になってからのことだったが、
少くともそれをある種の慰めとしてとることも可能であった。
完璧なネコ型ロボットなんて存在しない、と。
3 :
マロン名無しさん:2006/03/31(金) 20:15:56 ID:DQo8UiIg
にゃーん
「じゃあ私たちわかりあえるわね?」と静ちゃんは静かに言った。
彼女が電話の向こうで椅子にゆったりと座りなおし、脚を組んだような雰囲気が感じられた。
「それはどうかな」と僕は言った。「なにしろ子守りだからね」
「子守りというのはあなたが考えているよりも仕事をしているのかもしれないわよ」
「君は本当に僕のことを知っているの?」僕は訊いてみた。
「もちろんよ、何度も会ったわ」
「いつ、どこで?」
「いつか、どこかでよ」と彼女は言った。「そんなことここでいちいちあなたに
説明していたらとても6ページじゃ足らないわ。大事なのは今よ。そうでしょ?」
「でも何か証拠を見せてくれないかな。君が僕のことを知ってるって証拠を」
「例えば?」
「僕の誕生日は?」
「2112年9月3日」と女は即座に答えた。「四次元ポケット所有。それでいいかしら?」
これはまたハードボイルドなドラえもんだな