「鋼の錬金術師 盲目の錬金術師」
半年経ってるようなので、書いてみました。
【前提】
エドとアルの兄弟は死んだ母親を蘇らせる為、人体錬成を行い、失敗。
その代償として兄のエドは右腕と左足、弟のアルは身体を全て失った
(現在は からっぽの鎧に魂を定着)
二人は元の身体を取り戻す方法を探して、旅を続けている。
【ストーリー】
エドとアルは、人体錬成に成功したという噂のジュドウ氏に会いに行く。
彼が仕えているハンベルガング家には夫人と一人娘ロザリーがいた。
ロザリーは全身鎧のアルに興味を示し、一緒に遊ぶと言い出した為
アルはロザリーと、エドはジュドウ・夫人に分かれて話をすることになった。
エドは自分も人体錬成したことを話し、ジュドウに噂の真実を尋ねた。
答えはYes。
ジュドウは両方の目を失った代わりに、人体錬成したのが
先ほど目にしたロザリーだと告げた。
続く
その頃、ロザリーと遊んでいたアルは勢い余って頭部が取れ、
鎧の中身がからっぽがあることがバレてしまう。
ロザリーを怖がらせまいと慌てるアルだが、逆にロザリーは
興味津々で鎧の中をのぞき込んでくる。
「驚かないの?」
「ちょっとびっくりしたけど、もっとすごいの見てるから」
と、彼を「秘密の場所」へ連れて行く。
三年前に錬成したロザリーは、明るく元気に過ごしているという。
弟を元に戻せる希望を見つけたエドは懸命に錬成方法を尋ねるが、
夫人から「外部に秘術は教えられない」と はねのけられた。
主の意向である以上、ジュドウもそれ以上は口にできない。
夫人はエドを連れてその場を離れた。
「人体錬成はおやめなさい」という夫人に、なお食い下がるエド。
「聞いても無駄なのです」と、エドを「ある場所」へ連れて行く。
「秘密の場所」についたアルとロザリー。
「『ロザリー』、お客様よ」
部屋の中には、たくさんのぬいぐるみや本。
その中心にかわいらしい洋服をきた『ロザリー』が椅子に座っていた。
「これが、ジュドウが錬成した『ロザリー』よ」
−ただし、その姿は半ばミイラのようであったが。
続く
ロザリーは本名はエミといい、本物のロザリーに姿が似ている為、
孤児院から引き取られ、ロザリーの振りをしているのだという。
『ロザリー』は生きてはいるものの、以前の愛らしい姿はなく
震える程度にしか動くことができない。
それ以前にこの身体の中にいるのが、本当のロザリーなのかも分からない。
「本物だよ……きっと」
励まそうとするアルの言葉に、エミは寂しげに笑う。
「うん……だから私はこの家の本当の子にはなれない」
辛そうに見つめるアル。その背後には夫人とエドがいた。
ジュドウとハンベルガング一家は家族のような存在だった。
それ故に3年前ロザリーを亡くした時、夫妻の落胆する姿を見かねて
彼は人体錬成を行ってしまった。
両目を失い激痛に苦しみながらも、ロザリーが無事か尋ねるジュドウに
夫妻は真実を告げられず嘘をついた。
「娘は帰ってきた。元の姿のままに……」
その足下には『ロザリー』の姿があった。
続く
エミと執事が兄弟を見送る。
使用人達もジュドウと一家の絆の深さを知っている。
だから彼らも皆 ジュドウをだましていた。そしてこれからも。
「それでみんながいつも通りならば、それでいいのです」
門の外に出て振り返ると、エミが笑って手を振っていた。
ゆっくりと門が閉まっていく中、エミと執事は手をつなぎ家へと戻っていく。
「みんないい人だね」と言うアルに、うなづくエド。
しかし、暗く閉ざされた門の向こうでエドがつぶやく
「だけど、みんな救われねぇ」
〈終〉
…短編なのに長くなった。すみません。