福井から雲隠れ、その後
91年10月13日付朝日新聞東京朝刊、及び翌日の読売新聞東京朝刊によると、
9月初めに、東京都内で「新潟産コシヒカリを産地直送」「食糧事務所の
承認を受けた特別栽培米」の誘い文句と共に、「62円切手10枚を郵送すれば
試食米2キロを送る」と書かれたチラシが配られた。
チラシの主は、新潟県南魚沼郡六日町の「新潟村おこし生産者米穀出荷協同農場」
を名乗っていた。
ところが9月末には、「切手を送ってもコメが届かない」という苦情が殺到。
食糧庁は販売中止を求めるとともに、調査に乗り出した。
結果、この業者は、7月初めに行方が分からなくなった福井県鯖江市の
「村おこし米作共同農場」の代表者と同一人物。
食糧事務所の承認も受けておらず、六日町の農場も実在しなかった。
チラシの住所はアパートの一室で、人の気配はなく、「11月20日から販売開始」
と書かれた張り紙があるのみ。電話も留守番電話が答えるだけ。
指導に対し、この業者は「米を送るのはやめる。切手も返す。」と返答。
一部は切手を返送した。だが業者が送ったお詫びの葉書には、米の値段と
新たな連絡先が書かれており、販売再開の可能性ありと食糧庁は警戒している。
この業者は「おいしい米を仲介しようとしただけ。指導には従う。福井の件は
食糧事務所にニセ米だといって潰された。食糧事務所に責任を取って貰いたい」
と話している。
更に91年10月22日の朝日新聞東京夕刊によると、
結局切手は一部しか返還されず、利用者には「返金不可能になりました。
誠に申し訳ありません」と書かれた倒産を知らせる葉書が届いた。
食糧事務所は再度返還を強く求め、業者も「誠意を持って応じる」と返答。
更に一部が返還されたが、利用者は千人を超えると思われ、
まだ大半が切手を返還されていないと見られる。
福井での前例があるため、消費者団体は、葉書は返還をあきらめさせる
狙いがあるのでは?と警戒している。
葉書についてこの業者は、「事務所を閉めたのではっきりした方が良いと考えた。
返金はできないと思っていたが、請求が殺到したので、借金をして返している。
まだ返金が済んでいないのは全体の1割ぐらい」と話している。
以上。