GJ!いやぁ、早起きは3億の得だね!
こういうオタク的会話の日常があって、その中でしっかり人間関係が描かれてるのが読んでて凄く楽しかったですよ。
ごちそうさまでした!
>>840-851 いや〜蝶GJ!
最近のガンガル評判悪い程度しか知らないヘタレオタには、こういった詳しい
アニメの描写は出来ないので尊敬します。それが荻上の話の種になっている
のがまたGJです。自分ももの凄く楽しめた。
時期はSSだし、げんしけん内の話なので良い意味で全く気にならんかったす。
キャラも皆違和感なく、よく動いててい〜な〜。
お疲れ様でした。こんな感じなら又読みたいなぁ、マジで。
GJ!
やっぱり本編で描かれてないとこで、こんな風にやってたんだろうね。
「第〜回 今週の種死ここがつまんなかったぞ会議」
>>823-
>>834 乙&GJ!
正統派こそ王道です!!こう言うのを書きたかった!!と亜流SS書きが言ってみる・・・。
よかったです。早く原作でも雪解けと芽吹きを!できればタイトルつけて欲しかった。
>>840-851 乙&GJ!
Zガンダムの最終回で荻上と同じリアクションを取った漏れいる・・・。
オタ話に熱狂するオギーが可愛い。
このSSをみて、改めて最近の本編にオタク要素が足らないことがわかった。
まあでも、こんなんじゃマンガにはならんかw
そうだよな、オタクならこういう話題でずっと話してるんだよなー。
別になんでもないけどなんかそれが楽しいんだよなー。
たいへんGJ!でした。
このスレってリクエストありなんすかね?
さっき本スレで何か言われちゃったんで……
>>856 ありがとうございます!
タイトルは…「雪溶けの前に」(マイナーすぎるインスパイア)で。
>>858 既出じゃないか読んでからならOKだけど、スルーされたら不運と思って下さい。
>>819 書いてみましたけど、思ったより話は深くも長くも出来ませんでした。
申し訳ない。
では、斑目と恵子の昼休み…3レスの短編です。
恵子「ちわー」
斑目「あ…やあ、ちわ。」
恵子「………ども。」
笹原の就職が決まってから数日、いつもの部室の風景だったが…。
恵子「………。」
斑目「………。」もぐもぐ
沈黙が続く。いや、斑目のコンビニ弁当を食べる音だけが聞こえる。
今日はどうやら冷やし中華とサンドイッチのようだ。
なにしろこの二人、今まで会話なんてほとんど無かったし、馴染んでない。
恵子「ねぇ、マヨネーズ使わないんだね。」
斑目「ん?…ああ、まあね。」
先に話し掛けたのは恵子だった。退屈過ぎたようだ。
恵子「っていうか、ほんとよく来てるよね。昼休みに。」
斑目「まぁねぇ。近いし、落ち着くっていうか―――。」
恵子「会社に馴染んでないんだね。」
斑目「うっ。」
「やー、まぁねぇー。」ハハ…
恵子「………。」
また、しばらくの沈黙。斑目の食事は終わったようだ。
斑目「小さい会社だからね。他の社員は作業に出てるし、もう一人の事務員は
40歳のおばさんだから、まぁ昼に出ちゃうんだよネ。」
恵子「大学ってさ、居心地良いんだね。」
斑目「んー、そうとも限らないけど。」
恵子「………。」
やはり会話は弾まない。
斑目「あ、妹さんさ。今度の合宿なんだけど、俺も休み合いそうだから。」
恵子「あ、そうなんだ。おっけー。」
「軽井沢で温泉なんて楽しみ…って、興味あるの?」
斑目「え?え?そんなに不思議?」
ちょっと焦る斑目を見て、何故かニヤける恵子はさらに
恵子「オタクらしくないなぁ。アヤシー!」
斑目「妹さん、ちょ…」
恵子「ストーップ!さっきから[妹さん]って何なのよ。」
「あたしは恵子よ。知ってんでしょ。マ・ダ・ラ・メ・さん。」
赤くなる斑目。
斑目「…恵子…ちゃん。だって、今、名前呼んだの1回目じゃない。」
ちょっと笑う斑目を見て、恵子もつられて笑う。
恵子「ははは、合宿、楽しみだネ。」
斑目「まぁねぇ。」
恵子「さっきから、まぁねぇ。ばっかりじゃーん。」
と、昼休みが終わる時間になったようだ。予鈴が鳴る。
斑目「あ、ヤベ!じゃ、合宿幹事、頼んだよ。恵子ちゃん。」
恵子「あーわかったよー。」
背中にその声を受けて、午後からの仕事に向かう斑目だった。
以上です。まだまだ精進が必要ですね…。ガンガリマス。
865 :
819:2005/12/02(金) 23:26:26 ID:???
アリガトー!アリガトーゴザイマスー!!
なんだかありそうな風景です。
特に何もなく、普通な感じがイイ!
あと、「マ・ダ・ラ・メ・さん」に萌えた。w
あ、どういたしまして!
自分で書いてて萌えどころは「つられて笑う」ところでしたw
また妄想力を溜めます。そして偉大な先人に近づきたいものです。
867 :
840:2005/12/03(土) 01:09:27 ID:???
>>853-
>>857 まとめてですまんですが、ありでしたw
こんなことを妄想したりして日々過ごす俺はきっと駄目人間。
次回は!「RPGにおける傾向と好みの変遷」
お楽しみに!(マジカ
>>861-
>>863 乙〜&GJw
そういえば斑目って恵子とまともに話したことなさそうw
でも、なんかいいなー、こういう雰囲気。またよろしくですよw
書くのに時間がかかり過ぎて、やや時期外れの感もあり、下手するとスレの荒れを招くかもしれない。
だが誰かが1度こういう話を書いて置かないと、収まりがつかない人も多いことだろう。
ならば本スレのこの話題ではおそらく1番の急先鋒の過激派だった俺が、その任に就くべきだろう。
そんな自惚れと使命感、そして何よりも書きたいという欲求からこの話を書いた。
勝手に妄想したキャラの裏設定や、他の人のレスやSSや他の作品からの引用が多いなど、いろいろ不備な点はあると思うが、どうかそれは流して欲しい。
その代わりに荻上さん崇拝主義者や笹荻原理主義者の方々の恨みは、俺が地獄に流す。
12〜13ぐらいに分けて送る予定。
物語は1月号の330P、大野さんの「何としても笹原さんに荻上さんを幸せにしてもらいます、絶対!!」の直後から始まる。
最初はハードなトラウマ話に引いていた恵子だったが、咲ちゃんの「他の女たちはお咎め無し?」という問いに対する荻上さんの答えを聞いたあたりから段々表情が険しくなってきた。
そして荻上さんが泣き出し、前述の大野さんの発言の直後、低い声を出した。
恵子「・・・せねえ」
咲「ん?どした?」
恵子「ぜってえ許せねえ!」
驚く咲ちゃんと大野さん。
荻上さんも泣き止む。
恵子「そりゃあたしゃこれまでいろいろハンパなことやってきたよ。だけど、いじめだけはぜってえやんなかった。あんなことやる奴あ、ぜってえ許せねえ!」
咲「あんたも昔何かあったの?」
恵子の表情の一瞬の変化が、それが図星であることを示していた。
恵子「んなこたあどうでもいいよ!今問題なのは、その中島とかいう糞女はぜってえ許せねえってことだよ!」
咲「で、許せなきゃどうすんのよ?」
恵子「そりゃ当然、ゲンコでボコる!」
咲「こいつこんな熱い奴だっけ?やっぱ兄妹だねえ」
大野「咲さんの影響だと思いますよ」
咲ちゃんは内心少し感心していた。
一見何事にも冷めていて無気力に見えた恵子にも、こういう熱いところがあったことを好ましいと感じた。
だが彼女の怒りは純粋な反面、あまりにも単純過ぎて危ういものに見えた。
それだけで済むのなら自分もひと口乗ってもいいが、そうも行かない以上ここは止め役に徹することにした。
恵子「あんたらこの子の話聞いて何とも思わないのかよ!」
咲「そりゃ腹立たしいし、荻上かわいそうだと思うよ」
大野「あたしもそうです」
恵子「だろ?だったらグダグダ言ってねえでやっちまえばいいんだよ!」
咲「気持ちは分かるけど落ち着けよ。荻上の話聞く限り証拠無さそうだし、今さらそれやっても何にもなんないよ。荻上の心の傷にとっても、巻田君って子にとっても」
恵子「だってくやしいじゃねえか!(荻上に)あんただってそうだろ?」
荻上「・・・だって絵え描いたの私だし、それに・・・友だちだし・・・」
恵子「どこまでお人好しなんだよ!いいか、ダチってのは嬉しい時や楽しい時に一緒に笑い、悲しい時一緒に泣いてやる奴のことを言うんだよ! 初恋をこんな形で潰す奴らなんざ、ダチな訳ねえだろ!」
荻上「(泣きながら)やめて下さい!悪いのは私なんです!私さえあの時描かなきゃ・・・」
荻上さんの涙にたじろぐ恵子、咲ちゃんの方を救いを求めるように見る。
咲「そういうことだ。ここは引けよ」
恵子「(荻上さんの肩を抱き)わーったよ。もう言わないから、あんたも自分責めんなよ」
大野「そうですよ荻上さん。それよりもこれからのこと考えましょう」
そして翌日。
二日酔い気味の荻上さんと、その介抱係の笹原を残してみんなは出かけた。
いや正確には外に出ただけで、荻上さんの寝てる女子の寝室の外壁に集結して聞き耳を立てていた。
(ここから田中も合流して付き合う破目になる)
朽木「ここからなら寝室の物音がバッチリ聞けますにょー」
咲「お前まさか・・・」
朽木「とんでもない、わたくしは聞けるスポットを探しただけで・・・」
斑目「まあまあ、ややこしくなるからそゆことにしとこよ、春日部さん」
大野「荻上さん、がんばって!」
聞き耳を立てる一同。
恵子が怒声を上げた後、女だけの作戦会議が出した結論は、荻上さんのトラウマを笹原に話すことだった。
もちろん荻上さんは拒否した。
そこで3人は彼女に更に酒を飲ませつつ粘り強く説得を続け、「あくまでも先輩に悩みを相談することでトラウマを克服する」という方向で話すことを納得させるのに成功した。
そして荻上さんが酔い潰れた後、笹原に彼女がトラウマを話すことを伝えた。
当初あらかじめその内容を教えようとしたが、笹原はそれを拒否してこう答えた。
笹原「それは彼女から直接聞くよ。彼女から聞きたいし、もし話さないのなら話すまで待つさ。でないと、この問題に決着をつけることが出来ないと思うんだ」
その言葉を「何があろうと荻上さんが好きな気持ちは変わらない」と受け取った3人は納得し、全ての決着を笹原に託すことにした。
ベッドに寝てる荻上さんが体を起こす。
笹原が駆け寄る。
笹原「大丈夫?無理に起きなくていいよ」
荻上「大丈夫です。それより・・・笹原先輩に聞いて欲しいことがあるんです」
そして荻上さんは、中学のトラウマを話し始めた。
話が終わると、荻上さんは昨夜のように涙を流した。
黙って聞いていた笹原、話が終わった途端に星飛雄馬のような怒涛の涙を流した。
その涙を見た荻上さんは、夏コミで笹原の笑顔を見た時のようにドキリとした。
荻上「笹原先輩?」
笹原「(自分の涙に気付き)あっゴメン(袖で涙をぬぐい)かっこ悪いとこ見せちゃったね」
荻上「いえ・・・そんな・・・」
笹原「だけど、ほんと悲しかったんだ。荻上さんが、どんなにつらい思いをしてきたか、いろいろ想像しちゃて、そしたらつい泣けてきちゃって・・・」
荻上さんの脳裏に、昨夜恵子が言ってた「ダチってのは嬉しい時や楽しい時に一緒に笑い、悲しい時に一緒に泣いてやる奴のことを言うんだよ」という言葉が浮かんだ。
笹原「ねえ荻上さん」
荻上「はい」
笹原「君の背負ってきたもの、俺にも背負わせてくれないか?」
荻上「えっ?」
笹原「1人じゃ重過ぎる荷物でも、2人なら何とかなるかもしれないじゃないか」
あの夏コミの時のような笑顔を浮かべる笹原。
再びドキリとする荻上さん。
笹原「俺は頭も良かないし、スポーツだって得意じゃない。背も高くないし、顔だってごらんの通りだ。就職ったって所詮は派遣社員だからバイトと大して変わんない」
荻上「そんな・・・」
笹原「俺はただのオタクだ。君にしてあげられることと言えば、嬉しい時や楽しい時に一緒に笑い、悲しい時に一緒に泣くことぐらいだ」
荻上さんの鼓動が高鳴った。
そしてそれは笹原も同様だった。
笹原「こんな俺でよかったら、ずっと一緒にいさせてくれないか?(不意に背を向けて赤面し)つまり・・俺と付き合ってくれないか?」
笹原の涙と告白で、荻上さんは自分が今まで大きな勘違いをして来たことに気付いた。
自分が男の人と付き合うということは、自分のトラウマと厄介な自分自身を相手に一方的に背負わせて負担をかけることだと、いつの間にか思い込んでいたのだ。
笹原に対する愛ゆえの過大評価と、自分嫌いゆえの自己過小評価のミスマッチが、恋愛関係を保護者被保護者の関係のように錯覚させた為だ。
だが笹原の涙は、それが間違いだったことを悟らせた。
笹原もまた、自分と同じように弱い部分を持った1人の人間だという、当たり前の事実に気付いたのだ。
ちょっと冷静になって考えてみれば分かることに、トラウマで視野狭窄になっていた為に気付けなかったのだ。
そして思った。
自分は今は笹原先輩に助けられなければ前に進めないかもしれない。
だけど笹原先輩だって、この先つらいことや悲しいことはあるだろう。
その時、自分は彼を励ましたり慰めたり出来る人間でありたい。
少なくとも一緒に泣いて上げたい。
そしてその為には、彼と一緒にいなければ。
もっともこんな思考は後付けの理屈だ。
もっとシンプルな、「笹原先輩とずっと一緒に居たい」という欲求を細かく具体的に解析するとこうなるというだけだ。
荻上さんは決心した。
夏コミで自分の同人誌を売ることを決めたあの日、トラウマを抱えつつも一生ヤオイ道を進むことを決心したように。
それに続く2度目の大きな決心。
恋もするしヤオイも続ける、さしずめ乙女道を進むことを。
荻上「昨夜、妹さんが似たようなこと言ってました」
笹原「恵子が?」
驚いて振り返る笹原。
荻上「嬉しい時や楽しい時に一緒に笑い、悲しい時に一緒に泣いてやるのが本当の友だちだって」
笹原「へー、あいつがそんなことを・・・」
荻上「私も恵子さんの言う通りだと思います。友だち以外の人間関係でも、家族とか、仲間とか、(不意に背を向けて赤面し)こっ、恋人の条件も同じだと思いますよ」
笹原「えっ、それじゃあ!」
外のメンバーは、ほっと一安心していた。
咲「やるじゃない、笹やん」
高坂「よかったね、咲ちゃん」
斑目「まあ、よかったじゃないか・・・」
涙ぐむ大野さん。
バンダナを渡す田中。
恵子「ったく、手間かけさせやがって(涙ぐむ)」
ハンカチを渡す咲。
咲「お手柄じゃないか。やっぱ兄妹だな」
恵子「(苦笑して)偶然だよ偶然」
朽木「オロロローン!(男泣き)」
咲「お前もかよ!」
合宿の後、笹荻は今までの遅れた分を取り返すかのようにデートを繰り返した。
もちろん密かにげんしけんメンバーたちも、その度にこっそり付いてきた。
「そこだ、一気に押し倒せ!」「何やってんだ、そのまま連れ込んじまえ!」
決して本人たちには聞こえない野次を受けつつ、何度目かのデートで遂に2人は唇を重ねるところまで進展した。
(何度かお互いの部屋には行ってるが、泊まってないので最後の一線を越えたかは不明。ちなみにクッチーが盗聴を試みようとしたが、さすがに止められた)
そして学祭。
今回は笹荻成就記念という意味合いで、カップルでのコスプレ撮影会となった。
お題は荻上さんの希望を入れて「ハレガン」となった。
大野・田中カップルは、大野さんが巨乳の人造人間コス、田中はハゲヅラを被って大食いの人造人間コスをやることになった。
(ちなみに田中はこの2年ほどで何故か痩せたので、胴体はかなり綿入れしてボリュームを出している)
本来なら咲・高坂にもやってもらう予定だったが、高坂が急ぎの仕事の為に来れないので、結局咲ちゃん1人で目付きの鋭い女性の軍人さんコスで受付をやることで落ち着いた。
(笹荻成就記念の縁起物という名目で、大野さんに押し切られた)
その代わり(なのか?)斑目も殉職して准将になったメガネの軍人さんコスで受付その他を手伝うことになり、上司を密かに慕う女軍人と愛妻家の軍人の珍カップルの受付と相成った。
久我山は仕事だったが、時間があったら立ち寄るとのことだった。
恵子は来る予定だが、寝坊したので後で来るとのことだった。
そして我らが笹原・荻上カップルは、笹原が火とんの術使いの大佐コス、荻上さんは赤いコートに義手の主人公の錬金術師のコスをやることになった。
ちなみにクッチーは、主人公の弟の鎧コスでプラカードを持って学内を練り歩いていた。
そしていよいよ笹荻の出番。
金髪の三つ編みのヅラを被った荻上さんには、自分嫌いを克服したことによる自信に裏打ちされた妙な迫力と、不思議な可愛らしさが同居していた。
笹原も不思議と軍服が似合い、ちょっと顔を引き締めると今にも焔を出しそうな雰囲気を醸し出していた。
田中「いやーここまで似合うとは思わなかった」
大野「2人とも素敵ですー」
咲「笹やん男前が上がったじゃん」
斑目「荻上さんも・・・何か似合うね」
撮影会を待っていたカメコたち(女性もけっこういる)からも歓声や溜め息が聞こえた。
「荻上?」
聞き慣れない声が響いた。
いや、正確には「笹荻2人以外には」と頭に付けるべきか。
声の主は中島だった。
傍には夏コミの時に一緒にいた帽子の女と、肥った眼鏡の女がいた。
中学の文芸部のメンバーだ。
笹荻の顔色が変わる。
他の一同も異変に気付く。
中島「何そのかっこ、コスプレ?もしかしてハレガン?」
帽子「へー似合ってるじゃん」
眼鏡「わーすごーい」
中島「ヤオイの方は相変わらずと思ったら、今度はコスプレ?あんたも好きだねえ」
その口調には揶揄が感じられた。
咲「どうする?追い出すか?」
斑目「まあ待ちなよ、騒ぎになったらまずい。それに・・・」
咲「それに?」
斑目「あいつらの顔見なよ」
笹荻両人の表情は硬かったが、決して中島たちに怯えた様子は無かった。
斑目「ここはしばらく2人にまかせてみよう。(カメコたちに)すんませーん、ただ今取り込み中ですので、大佐たちの方はしばらくお待ち下さい。(大野と田中に)ちょっと間もう1回出ててよ」
撮影会場に再び出る大野さんと田中。
カメコA「あのーすんません、出来たら准将と中尉もお願いできますか?」
斑目「俺?」
咲「准将と中尉って?」
斑目「俺と春日部さんのこと!しゃあない、時間稼ぎだ、出るぞ!」
咲「えっ?ちょっ、ちょっと!」
斑目にしては珍しく、強引に咲ちゃんの手を取ってカメコたちの前に出る。
咲「ちょっ、ちょっとだけタンマ。(携帯を取り出して操作し)あっクッチー、今どこにいる?・・・随分端まで行ったな。まあいいや、急いで戻って来て!・・・後で話すから!今こっち取り込み中で人手足んねえんだよ!急げ!」
撮影会場の片隅で対峙する笹荻と中島軍団。
荻上「今度会った時に訊こうと思ってたんだけど・・・」
中島「なーに?」
荻上「あんたら巻田君のこと、どう思ってんの?」
固まる帽子と眼鏡。
中島「まきた?(しばし沈黙)あー巻田君ね。あれは笑ったわよね。ちょっと洒落んなってねけど」
同意を求めるように連れの2人を見る中島。
帽子「そっ、そうよね。笑っちゃうよね」
眼鏡「洒落なってねよね」
荻上さんの目付きが険しくなった。
この中島たちの返事で、荻上さんの中で5年前の出来事への決着がついた。
あの出来事が中島たちの仕業なのか不幸な事故なのかは、もうどっちでもよかった。
ただ彼女たちが巻田に対して、少しでも反省や後悔や同情の念を持っていてくれていれば、もうそれは問わず全て水に流そう、そして全ての罪は私が負って生きていけばいい、そう思っていた。
中島たちにとっても、巻田は大事な友だちだったはずだ。
その友の為に少しでも泣いてくれる気持ちがあれば、そんな僅かな希望を持っていた。
だが彼女たちにとって、巻田は遠い過去の他人事に過ぎなかった。
荻上「悪いけど帰ってくれる?」
中島「えっ?」
荻上「ここはあんたらみたいな、一般人だかオタだか分かんない半端な腐女子が来るとこじゃない。ここは一生オタク道を行く覚悟を決めた連中の集まるげんしけんなの。もう私とあんたらは、住んでる世界が違うのよ」
さすがに戸惑う帽子と眼鏡。
帽子「荻上―何言うのよー」
眼鏡「そーよー、友だちでねの、あたしら」
中島も明らかに戸惑っていた。
一言二言何か言ってやれば水面の木の葉のように心を揺らす、玩具のような存在と認識していた荻上さんからの思わぬ強気発言は、全くの想定外だった。
中島「(笹原をチラリと見て)何よ、何で今さら巻田君の名前なんて出すのよ。いいの?カレシの前で昔のことなんか言って・・・」
笹原「(中島の言葉尻に被せるように)知ってるよ、荻上さんから聞いた」
中島「何?あんた荻上がヤオイだって知ってて付き合ってるの?」
笹原「いけない?」
堂々とした笹原の態度に、またもや意表を突かれる中島。
ここで「今日はこの辺にしといてやるよ」ってな感じでクールビューティー気取って退散すれば、全て丸く収まったかもしれない。
だが相手を見下して余裕たっぷりな態度の悪役ほど守勢に回ると打たれ弱いという、古今東西多くの悪役に当てはまる法則に中島も該当した。
夏コミで会った時には自分の精神攻撃でどうにでもなると思っていたヌルそうな男と、かつてはその心を玩具にしてズタズタにして楽しんだ女。
その2人が、凛とした態度で受けて立っているという全くの想定外の事態に彼女の脳の冷徹な悪魔回路がショートし、彼女らしからぬ露骨な悪態をつき始めた。
中島「何よ、あんたこの女がどんな女か知ってるの?抜け駆けして男作るような奴だよ!そんな女の言うこと信じてるんだ。男たらし込む為に嘘ついてるに決まってるじゃない!バッカじゃないの?」
笹原「何だと・・・」
笹原の大佐そっくりのマジ顔にビビる帽子と眼鏡。
帽子「なっナカジ・・・」
眼鏡「まずいよ」
中島「荻上も荻上さ。あんたみたいなキモい趣味の腐女子と付き合う男なんて、ただやりたいだけのロリコンの変態に決まってるじゃないか!」
荻上「なっ・・・」
いつの間にか撮影会は中断され、げんしけんメンバーもカメコたちも、ことの成り行きを見守っている。
荻上さんと笹原は、同時に中島との間の距離を詰めた。
格闘技漫画などによく出てくる、双子キャラのように息の合ったタイミングだった。
それを招いたのは他ならぬ中島だった。
彼女は2つ間違いを犯した。
1つ目は先に笹原に噛み付いたことだ。
比較的温厚で落ち着いていて女を殴ることにタブー意識の強い笹原は、言われた瞬間にはキレなかった。
一方荻上さんは言われた瞬間にキレた。
その瞬間に笹原も一瞬遅れてキレたので、結果的にダブルでキレることになった。
2つ目の間違いは、笹原に荻上さんの、荻上さんに笹原の悪口を言ったことだ。
笹原は荻上さんを嘘つき呼ばわりしたことに、荻上さんは笹原を体目当てのロリコン扱いしたことにそれぞれキレた。
自分になら何を言っても構わない、だが、愛する人を悪く言うことだけは許さない。
愛の戦士と化した2人は、凄まじい加速を伴って中島に迫った。
2人が間合いに入り、怒りの拳を振り上げた瞬間、横合いから走り込む影があった。
恵子だった。
それに気を取られ、勢いをそがれて停止する笹荻。
恵子「なかじまー!」
恵子はその走る勢いの殆どを右拳に乗せて、怒りの絶叫と共に中島の横っ面に叩き込んだ。
中島はきれいに壁まで吹き飛んだ。
その傀儡の帽子と眼鏡は完全にビビって固まっていた。
恵子「感謝してよね!あたしが殴んなかったら、あんたあの2人にフクロにされてたよ!」
上半身を壁に預ける格好で、呆然と恵子を見上げる中島。
恵子「2度と2人に近付くな!!今度てめえら見たら、マジブッ殺す!!」
サムダウンのポーズと共に、啖呵をきる恵子。
悲鳴を上げて電流に打たれたように立ち上がり、出口に逃げ出す中島。
帽子と眼鏡も後に続く。
続いて恵子も出口に走り、廊下を走り去る3人に追い討ちをかけるように絶叫する。
恵子「お台場にも来んなよ!!来たらす巻きにして東京湾に放り込んでやるからな!!顔は覚えたからな!!」
その恵子の横を、何故か鎧コスのクッチーが走り去り、3人が消えた方へと向かった。
騒ぎがあった時、クッチーはちょうど撮影会場に戻ってきたところだった。
突然出口から見知らぬ女が3人出てきて走り去り、その後を追って出てきた恵子が何か叫んでる。
構ってもらったり、命令されたりすることに喜びを感じる、そんなクッチーは精神構造が犬に似ていた。
そのせいか物事や人の善悪には意外に鼻が利いた。
新人勧誘の際にコス泥棒に気付いたのもその為だ。
(まあそのくせ自分の言動の善悪には無頓着なのがクッチーのクッチーたる所以だ)
そんなクッチーには、逃げた3人は追うべき対象に見えた。
それに元々犬には、自分の目の前で走る者を追う習性がある。
こうしてクッチーの大追跡が始まった。
中島軍団はライトな腐女子だからハレガンぐらいは知っている。
それでも鎧の弟君コスが「にょにょにょー!!」と奇声を上げながら追いかけて来れば怖い。だから必死で学外まで逃げた。そうなればクッチーも意地になって追う。
鎧コスのハンディの分なかなか追いつけないが、振り切られることも無くクッチーは1時間以上も3人を追い回し続けた。
そして見失った時には道に迷ってしまい、結局近くの交番に保護された。
笹原「恵子・・・」
荻上「あのー・・・」
咲「ほんとにやっちまったな、このバカ」
恵子に近付く笹荻と咲ちゃん。
恵子「おっと、礼も説教も聞かないよ。あたしはあたしの気持ちのまんまのことをやっただけだ。やり方は知んねーけど、気持ちは間違ってない。だから礼には及ばないし、説教される筋合いも無い。」
笹原「そうか・・・ならいい」
咲「お前が後悔してないなら、それでいいさ」
無言で進み出て、義手を模した右手を差し出す荻上さん。
恵子もそれに応えて右手を差し出して握手する。
恵子「痛てて!」
互いに手を引っ込める2人。
荻上「大丈夫?」
恵子の右の拳は軽く出血していて、よく見ると腫れていた。
鍛えていない拳で思い切り殴ったので傷めたのだ。
(空手家ですら、人の頭を殴ると拳を傷めることがよくある)
殴った時はアドレナリンが分泌していたから痛くなかったのだ。
恵子「(拳を見て引き)・・・見なかったことにしよう」
一同「するのか!!!」
廊下の方から喧騒とドヤドヤという足音が聞こえてきた。
恵子「(廊下を見て)やべっ、自治会の連中だな。トンズラしなきゃ。(カメコたちに)いいかお前ら、あたしはたまたま通りがかって話を聞いて、ヤマカンで悪い方を決めてブン殴った部外者だ。ここの連中とは全く関係ねえ。分かったか?!」
カメコA「・・・あれっ、今のってアトラクションですよね?」
カメコB「そうですよね、いやー迫力のある芝居でしたね」
カメコC「そうそう、新手のドッキリだよね?」
ニヤリと笑うカメコ一同。
どうやら彼らなりに事情を悟り、このサークルが迷惑しないようにという恵子の意図を理解したようだ。
恵子「(カメコたちに)サンキュ!(笹荻に)じゃ後はよろしくなアニキ!千佳姉さん、アニキのこと頼んだよ!」
走り去る恵子。
それを笑顔で見送る一同。
カメコたちの証言のフォローもあって、この事件はげんしけんの届け出無しのアトラクションとして、後で自治会から厳重に注意されたが、さしたるペナルティも無く無事に処理された。
これでもう2度と中島たちは笹荻の前に現れることは無いだろう。
仮に現れても笹荻は自力で撃退するだろう。
いや、それ以外のあらゆる障害や困難に対しても、2人は果敢に立ち向かえるはずだ。
何故なら2人は、お互いの為になら何時でも愛の戦士になれるのだから。
以上です。
さすがに疲れたので、もう寝ます。
>>869-883 乙彼。ひょっとしてコピペじゃなくて手打ち??すげー時間…。
同じ題材でここまで違うとは面白いです。
Gガンとか島本好き?少年誌ノリを感じますた。
書かないと収まらないから、っていうのは同じなんで、よく解ります!
↓のシチュエーションおおいに萌えました。誰かこの設定でSS書いてください!!!!!!111ぬ
223 名前:名無しんぼ@お腹いっぱい[sage] 投稿日:2005/12/01(木) 21:34:05 ID:/OGL89t+0
>>220 二日目:
・遅れてやってきた田中と大野が二人でお出かけ
・春日部姉さんオギーのために一肌脱ぐつもりで、断腸の思いで二人っきりデートをあきらめ恵子も連れ出し三人デート
・斑目も空気読んでクッチーを連れ出して外へ
二日酔いでつぶれているオギーの介抱役を笹原に押しつける作戦
ベタなノリだが、回想で斑目に言い含んでいた伏線や、田中が遅れてやってくる伏線も全部活かせる
226 名前:名無しんぼ@お腹いっぱい[sage] 投稿日:2005/12/01(木) 21:43:38 ID:/OGL89t+0
やべえ、書いてたら妄想がむらむらと膨らんできた
二日酔いで意識朦朧としたまま、昨日の状態を引きずっているオギーが、看病してくれてる笹原を巻田と間違えtskwsdpv@:あばばばばば
すまんSSスレにいってくるノシ
つうかこれ以上書くのめんどいから、誰かこの設定でSS書いて。
残暑のひとこま
乙&GJ 知り合いと友人との間の微妙な関係
こそ最も表現が難儀ですよね。
笹荻、怒りの鉄拳乙・・・んー。微妙!!
個人的には報復的エピソードは原作ではありえんし、SSとしても
表現するべきなものかと悩んでいたところでしたが、勧善懲悪のカタルシス
に対する需要も確実にあるのも事実!偽らざる真実の声でさえある。
暴力的報復が解決となるわけでは無いことを踏まえた上で、残忍さを抑え
爽快感を抽出できた点は良かったかなと思います。うわっ評論家くせーこと
言っちまった。スマソ。
>>855 残念ながら自分の妄想に振り回されて人のリクエストに
答えられる余裕無し。スマソ。
俺も笹荻の帰省を一本書いてるが、
話がぶっとんで、オリキャラだすわ、純文学か山田洋次の
「息子」っぽい話になるわ、こんなん投稿できっかなと
考え込む始末。逆に過疎気味の今がチャンスか・・・。
オリキャラは正直勘弁
銅胃
あ、やっぱり?じゃあ割愛すっか。
どうしても地元の友人出さんと荻の学生生活寂しい
もんになっちゃうから自然に作ったんだけどなー。
とーちゃん、かーちゃん、弟(?)くらいは
出してもかまわんかな?ダメなると帰省話は
お蔵入りだな。
同級生は、今月号に絵が出てたら一応良いんじゃないか…?
名前も台詞もなさげだけど。
まあ帰省するなら家族は必然的だし家族構成さえ合ってれば。
と思いますた。
892 :
笹荻の帰省:2005/12/03(土) 19:50:48 ID:???
反対なさそうなんで、投下してみます。
笹荻成立後も二人はけっこう大変だと
思う。そんな二人も見てみたいと
思った妄想です。
東北新幹線は年末の帰省客の混雑で押し合いへし合いのありさまであった。
指定席の取れなかった笹原と荻上は早朝から上野駅に向かい、自由席に乗り
込んだが、その混雑ぶりに疲れきっていた。外の景色をかえりみる余裕さえ
なかった。乗換駅で鈍行列車に乗り換えて座席に座る事が出来て、ようやく
二人はほっとして微笑んだ。
荻「すみません、こんな慌ただしい帰省に付きあわせてしまって・・・」
笹「いや、とんでもない。それにしても綺麗な雪景色だよね。山も綺麗だ。
修学旅行以外で関東平野から一度も出た事無い俺には新鮮な光景だよ。こ
れが見れただけでも・・・」
荻「逆に東京に出てきた時、私には山が無い事が驚きでしたよ」
笹「そんなもんか。でもこれが荻上さんの『風景』なわけだ。」
鈍行列車はゴトゴトと音を立てながら、二人を荻上の生まれ故郷まで運んで
いった。ダイヤは大幅に狂い、予定よりも遅い時間に二人は到着駅についた。
古びた駅の構内。まばらな人。笹原は慣れない寒さにブルッと震えた
荻「寒いですか?もっと厚着してくれば良かったですね」
笹「いや、大丈夫。でもすごい雪景色だね」
荻「これでも昔ほど降らなくなったんですよ。温暖化の影響で。今年は珍し
くこの時期から降ったみたいですね。何も無くて恥ずかしいです・・・」
笹「じゃあ、行こうか!」
荻「すみません、車を運転できる父が用事で迎えにこれねくて。でもタクシ
ー使うほどの距離でもねし。」
笹「いいって。タクシー代がもったいないよ。それに荻上さんの生まれ故郷
ゆっくり見たいしね」
二人はゆっくりと歩き出した。笹原の目からも荻上の表情が段々生き生きと
していくのが分かった。会話も自然にお国言葉になっていった。笹原は荻上
の嬉しそうに話す表情を見るのが心から楽しかった。
笹「けっこう、傾斜が多いね。あれが荻上さんの通ってた中学校?」
荻「ええ、山沿いの町の上、地形が入り組んでて曲がり道も多い上、平地も
少ないんです。寂れて全然変わってません。」
笹「駅前にはコンビニも無かったよね?」
荻「あるにはありますけど、駅前より、街道沿いの方が開けてます。車が無
いと東北の生活は不便ですから」
笹「ふーん」
二人はどんどん歩いていったが、神社の前に差し掛かると、荻上は急に黙り
こくり、足早にその前を通り過ぎようとした。笹原はその理由がわからなか
ったが、何も聞かずに黙って従って荻上について行った。
笹「けっこう思ったより歩くね。」
荻「ええ、でも自転車だとそんなに遠くは感じませんでした。高校はとなり
町の公立女子高でしたから。駅まで毎日・・・始発で・・・」
笹「うわっ、すごいね!」
荻「これでも皆勤賞もらったんですよ。雪が降ると父が送り迎えしてくれま
した。本当に毎日、毎日・・・」
とうとう二人は荻上の実家までたどり着いた。二人は緊張の趣きで顔を合わ
せ、意を決して玄関を開けた。
荻「ただいま!!」
母「はーい、あら千佳ちゃん!遅かったね。悪りかったね、迎えにいけねく
て!ああ、よくいらしゃった。御疲れでしょ!さあ、どうぞ汚いとこです
けど!」
笹「とっ突然押しかけて申し訳ありませんでした!笹原完治と申します!」
母「あんまし、固くなんねで、ゆっくりなすってください」
弟「いらっしゃい!ねえちゃん!土産は?」
笹「??こんにちは!(ええっ、ほんとに弟さんいたんだ!てっきりあの時
の苦し紛れのウソだと思ってたのに)」
荻「(だから本当にいるって言ったじゃありませんか)」
ヒソヒソと二人は話し合った。
荻「おとさんは?」
母「まだ、けえってこねよ。」
荻「んだか、したらあたしたちおとさん帰るまで自分の部屋さいていい?」
母「ええよ、けえってきたら呼ぶから、疲れてるべからゆっくりなさい」
荻上と笹原は自室に入って、荷物をどさっとおろしてようやくハーと安堵の
声を上げた。
笹「いや、疲れた!いや緊張した!会社の面接より緊張したよ!あとお父さ
んへのご挨拶も残ってるよね!はー。持つかな俺・・・。」
荻「ちっ父は無口ですけどそんな気難しい人ではありませんから」
笹「うん・・・それにしてもなんか落ち着くねー、ようやくゆっくりできた
よね。」
荻「全然女の子らしい部屋じゃなくて恥ずかしいです。本ばかり・・・」
笹「いや、荻上さんらしいよ」
しばし、沈黙が続く。二人の顔が赤らんだ。
弟「ねえちゃん!かあちゃん呼んでるよ!」
荻「!ノックしなさい!」
弟「ごめん、なして顔赤いんだ?」
荻「うるさい!」
母「あんた、元旦だけ隣町の宮司やってる伯父さんの手伝いに巫女さんして
ほしいんだけど」
荻「巫女?なして?」
母「当てにしてたバイトの子に逃げられたんだって!」
荻「んーわがった」
母「あと、夕食の支度手伝って。おとさんも今帰ってきたから」
荻上が家事の手伝いが終わり、居間に戻ると、笹原がすでに父親の酒の相手をさせられていた。山盛りに盛り付けられた味の濃い田舎の料理と酒を、勧められるままに苦笑いしながら食べていた。
笹「もう限界です!!」
父「若いもんがだらしない!ささ!!」
そう言いながら先につぶれたのは父の方であった。荻上は笹原に正月
の元旦だけ、隣町の初詣の大きい神社の手伝いに行く事を告げた。
母「したら、父さんに送ってもらうかね。朝早いんだべ、年越しそばはもう
少ししたら、食べるかね。んで笹原さんにはどこで・・・」
荻上は顔を赤らめる。
荻「そしたら、笹原さん・・・」
笹「もも勿論、弟さんの部屋で!!いいよね!!君!!」
弟「せまいけど、どうぞ。うれしいな、兄貴が欲しかったんですよ、俺。」
笹「頼りないお兄さんかもしれないけどね。」
弟「そんなこと無いですよ。編集の仕事されるんですって?いいなあ、俺も
東京に出たいんですけどね。姉貴も地元にいるよりは東京の方がいいでし
ょうし。」
笹「それは例の中学の時、好きな人に同人誌を見られたって話と関係が?」
弟「ええ、俺も小学生だったから、当時。また聞きですけど。親父もお袋も
その件は口を閉ざすし。なにしろネタにされた本人が登校拒否・・・」
笹「いや、ちょっと、具体的な話は聞いてないんだ。根堀葉堀聞く事じゃ無
いし。」
弟「やべ・・・」
笹「大丈夫、詳しく・・・」
笹原は弟の部屋を出て、廊下の窓辺の側を流れる小川を眺めた。
笹「俺って薄っぺらいな・・・」
その晩、荻上は夢を見ていた。
幼い頃、東北でも有名な雪祭りに家族で旅行した光景だった。
夜、無数のかまくらから光がこぼれる。自分はその側にあるかがり火を見つ
めている。その焔は闇夜をこがすかのように夜空に向かって燃え上り、火の
粉は闇夜に吸い込まれて行った。不思議な興奮と畏れに襲われ、不安にから
れて、家族のもとに駆け出した。大きめのちゃんちゃんこと藁の長靴が体に
からまり、トテッと転んだ。父親が自分を抱きかかえ、そして父親にしがみ
つきながら震えていた。
荻上ははっと目を覚ました。両の目からは涙がこぼれている。あの時、あの
時の私が許されない罪を自分自身に対してしたとすれば・・・、あの時私は
罪の意識をしっかりと感じて、畏れを抱きながら同時に身も心も喜悦に包ま
れていた事を自覚していた事だろう。荻上はベットから起き上がり、廊下に
出ていった。すると笹原が窓辺にたたずんでいるのに気付いた。
荻「眠れないんですか?」
笹「ああ、荻上さん・・・。そうだね」
荻「私もです。明日は早いのに・・・。」
笹「俺ねえ、荻上さんのコスプレ姿にいやらしいこと考えたことあるんだよ」
荻「・・・そうですか。私も笹原さんと斑目さんとでいやらしいこと考えた
事ありますよ」
笹「どうしようもないねえ、俺たち」
荻「どうしようもないですね、私たち」
お互いに微笑み合い、自然に二人は手を取り合って握りしめあっていた。
明け方前、父親の車で笹原と荻上は隣町の稲荷大社まで連れて行ってもらっ
た。
伯父「待ってました!!じゃあ千佳が着替えている間、笹原さんにはお守り
とか破魔矢とか業者が搬入してくる奴を運んでもらおうかな!!」
荻「うわっちゃっかりしてるー」
伯父「まあまあ、ささ、こっちこっち!」
父親は一旦家に帰り、笹原は神社の職員の言われるままに社務所で手伝いを
していた。そうこうしているうちに、巫女姿に着替えた荻上が現れた。その
姿に茫然自失となり、白無垢と袴姿に我を忘れ、声をかけられてはっとする
まで気がつかないありさまだった。
笹「・・・綺麗だ・・・天女様かと思った・・・」
荻「馬鹿ですね!」
荻上は恥ずかしそうに小走りに立ち去っていった。