422 :
1/12:
「やれやれ… あれほど不祥事を起こさないようにと注意したのに」宇田川はドアに手をかけた。
「まって下さい…」
桜井の声は震えていた。
「あれは… 悪いのは私で… 時々自分を抑えられなくなっちゃう時があって… その…」
彼女は振り返って言った。
「あの時は… 私が池田君を無理やり襲ってしまったんです!!」
宇田川は振り返らない。桜井の声は再び震えるような小声に戻った。
「池田君は被害者で… 罪はありません! ですから罰するなら私だけを…」
「それはそれは 私もあやかりたいものですな」
宇田川は出て行った。ドアを後ろ手にバタンと閉めた。靴音は次第に小さくなる。
あとには桜井が残された。
423 :
2/12:2005/12/12(月) 21:31:19 ID:???
Look at ME!!
424 :
3/12:2005/12/12(月) 21:31:57 ID:???
昼 学校 2-B 英語U
「え〜とこの文章は…」桜井は滞りなく授業を続けていた。それが清水には不自然に見えた。
彼女は振り返って池田に「ねえ 桜井先生…」と声をかけた。池田は驚いた顔をしていた。
「…何か?」「なっ 何でもね〜よ」池田は平静を装った。まさか授業中に清水の後姿を眺めていて
突然振り返った彼女と目が合ってしまい驚いたのだとは言えなかった。
清水は気にせずに続けた。「桜井先生 様子がおかしくありません? 一見明るそうに
見えるけど… なんだか心がここにないみたい…」
「けっ ど〜せまた宇田川にいびられたとか言うんだろ〜さ」
放課後 校庭
「大丈夫 大丈夫! なんにも問題ありません!」桜井は明るい笑顔で答えた。
「ほんとかよ? どうもあやしいぜ なんか隠してんじゃね〜のか」
「大丈夫だってば 心配してくれてありがとう でも先生は平気だから…
あなた達は勉強に専念して下さいな 実力テストもうすぐですものね」
池田はかばんを担いだ。
「…今さら遠慮なんかすんなよ 切れそうになったら電話するんだぞ!」
「はい!」桜井は元気に答えた。桜井は帰宅する二人を見た。校庭をチャイムの音が満たす。
キンコーン。
夜 公園
人影のない公園。数少ない照明。その光の中にブランコはあった。
桜井はそこに座っていた。ぎいっ ぎいっ ぎいっ ぎいっ
無言のまま、下を向いて、彼女はゆっくりと、静かに、ブランコをこぎ続けた。
どれだけの時がすぎたのか、彼女は足を止めた。彼女は前を向いた。目が吊り上がっていた。
「………」
独り言にしては大きすぎる声だった。
「あやからせてやろうじゃないの!!」
425 :
3/12:2005/12/12(月) 21:32:47 ID:???
朝 学校 実力試験 一日目
教室は試験前に喧騒に満ちていた。ざわざわざわざわざわ
清水は池田の席を見た。ざわざわ
まだ登校していない。 ざわ
職員室に教師は誰もいない。いや、いた。桜井和代であった。彼女はゆっくりと
ブラウスの第一ボタンを外し始めた。ぷち…
校舎に入ろうとする池田を待ち構える影があった。宇田川であった。彼は腕を組んでいた。
ぱさっ 桜井はブラウスを脱いだ。ブラジャーのホックを外した。ぽとっ
もうすぐで試験開始ですよ、はやく席について下さい、そういう意味のチャイムが鳴り始めた。
宇田川は池田を呼び止め話しかけた。キンコーン カンコーン
池田の顔色が見るみるうちに変化して行く。キンコーン
桜井はショーツを脱いだ。カンコーン 床に落とす。ぽとっ
「ですから試験が終わっても帰らないように 放課後事情聴取を行いますから」
宇田川は告げた。
「容疑は宿直室で行われた桜井教諭との淫らな行為についてです」
池田の顔面は蒼白だった。
「これでついにあなたの高校生活もおしまいですね」
ちゃっ 桜井は眼鏡を外した。
ばさっ 桜井は髪を下ろした。
彼女はしばらくたたずんで… 振り返って… にっ…と笑った!
426 :
5/12:2005/12/12(月) 21:33:56 ID:???
教室のドアが開かれ池田が入ってきた。
「遅いです池田君」清水が言った。「試験をボイコットする気かと思いました」
池田は応えられない。「…何かあったのですか?」「……何でもねえ!」
何でもないわけがなかった。池田の顔はかつてないほどに暗かった。
宇田川は職員室のドアを開けた。宇多川は誰かがいることに気がついた。
だがその相手は彼の予想をはるかに超えていた。
「うははははははは… けっこう仮面参上〜〜〜!!」
全裸だった。両手を大きく広げていた。首にはストッキングを巻いていた。
足にはハイヒールを履いていた。どうみても桜井教諭だった。
「さ… 桜井先生?」宇田川はあまりのことに呆然としていた。
2-Bの教室は相変わらずざわざわと喧騒に満ちていたが、その種類が変わりはじめて
いた。来る筈の宇田川が来ないのだ。
「ちょっと先生を呼びに行ってきます」清水が出て行った。池田は「あ ああ」と応えた。
清水は「失礼します」と断って職員室に入った。誰もいない。床には女性ものの服が一式落ちていた。
まるで歩きながら脱いだように並んでいた。「桜井先生!」清水は叫んだ。
427 :
6/12:2005/12/12(月) 21:34:33 ID:???
校庭の端っこをずるずると進む影が二つあった。ひとつは桜井、いやけっこう仮面。もうひとつは
それに引きずられる宇田川教諭であった。
「はっ 離せっ 離しなさい桜井先生!」声が震えていた。
「私はけっこう仮面だってば おとなしくしてないと大声だすわよ」桜井は鼻息を荒くして応えた。
「こんなところ生徒達に見られたくないでしょ?」宇田川は黙った。
ついに校舎のほとんどの窓が見渡せる位置に来た。向こうからも見えるということだった。
「よっ よしなさい桜井先生 こんなことをしてただで済むと思ってるんですか」
桜井は宇田川に馬乗りした。前後は逆であった。そして彼のベルトを外し始めた。
「あなたは教育者なんですよ」桜井はベルトを外し終えてから答えた。
「だって私 教師やめさせられちゃうんでしょ? だったらもう何したって同じじゃない」
「…では何をするつもりです」
宇田川が横転した。桜井がズボンを脱がしたのだった。
「宿直室で池田君にしたのと同じこと」
桜井はにんまりと笑っていた。
「な なんてハレンチな」
宇田川は四つんばいになって逃げようとした。
「そ〜 そ〜 池田君もそうやって逃げ回ったわよ」
桜井は宇田川の背中を踏みつぶした。
「男っていざとなると弱腰なんだから」桜井は宇田川のブリーフを脱がした。
「えいっ!」
「よっ 読めたぞ」
下半身を丸見えにされ、かえって冷静になったのか宇田川は言った。
「私を裸にしておいて人を呼ぶと脅迫し… 自分のことを黙っているように迫るつもりだろう?」
桜井は腰に手をあてて彼を見下ろしていた。颯爽とした表情だった。
「しかしな! 自分も裸だということを忘れているぞっ! ははっ 今人を呼べば自滅だな!」
桜井は「にっ」と笑い、首のストッキングを解き、宇田川の顔にかぶせ、彼を蹴り倒し、
胸を踏みけたまま、地面に仰向けにさせると、校舎の窓を振り仰ぎ、見事な発音で叫んだ。
428 :
7/12:2005/12/12(月) 21:35:35 ID:2YUlZovf
「 L o o k a t M E ! ! 」
429 :
8/12:2005/12/12(月) 21:36:11 ID:???
窓際の生徒たちはすぐに気づいた。生徒達は次々と席を立ち窓にむらがった。彼らは仰天した。
校庭に全裸の女性がいる。男を踏みつけて、手にパンストをつかんでいる。その根元は男の顔に
かぶせてある。ざわめきが校舎全体を満たすのに長い時間はかからなかった。あっという間に
生徒たちのそれは波となった。
わぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!
それは歓声だった。桜井は笑顔で手を振り応えていた。宇田川はパンストに顔を包まれたまま呆然としていた。
桜井が振り返った。
「さあ! この場で素顔をさらされたくなかったら! もうこれ以上池田君をいじめないと誓いなさい!」
一瞬の沈黙。
「……誓う」宇田川は答えた。
歓声の続く中、全裸の痴女は手を振り「Good bye!!」と告げ校庭から全裸のままで立ち去った。
パンスト男も後をついていく。パンストをかぶったまま、ズボンとベルトとブリーフを両手に抱えて。
その背後をカメラに収める姿があった。加藤である。彼女はいち早く飛び出していた。つぎにようやく
教師達が校舎を飛び出したが、遅かった。加藤を止めるのが関の山である。その中に池田と清水もいた。
清水は両手に桜井の衣服を抱えている。
430 :
9/12:2005/12/12(月) 21:36:49 ID:???
桜井と宇田川は公園まで逃げた。息をつきながら宇田川はズボンを穿いた。
「…身を挺して生徒を守る熱血先生ですか 私はすっかり悪者にされてしまいましたな」
宇田川はネクタイを調えながら続けた。
「いやその情熱がうらやましいですよ 私だって教師になりたての頃は希望に燃えていたものです
でもね これから毎年毎年! 何十年も同じことを繰り返していかねばならんのです しかも
生徒ときたら年々愚かに 年々粗暴になっていく一方だ… こんな状況で情熱を持ち続けられる
人なんていませんよ あなただって今に思い知らされる時が来るはずです」
「情けない言い訳しないでよね!」
桜井は両手を腰に当てて言った。
「はずかしくないの! そんな言い訳で自分を正当化してさ!」
桜井は言いながら後ろに体を移動させた。
「池田君や私をいじめてたのも若い人を見てると不安になるからでしょ いい迷惑だわ」
桜井はガサガサと音を立てながら植え込みの後ろに体を隠した。首だけを出して続ける。
「私は決して情熱を失ったりはしませんからね! 憧れてなった教師ですもの! 絶対退屈なんか
してたまるものですか!」
「正気に戻られたようですな…」宇田川は手を後ろに組んで言った。
「はい…」桜井は顔を赤らめた。
「……あなたは今自分が置かれている立場を理解しているのですかな?」
宇田川は眼鏡を指でぐいと押し上げた。横目で桜井を見る。
「このまま私が学校に戻ってあなたのことを報告すれば…」
「…覚悟はできてます…」桜井が目を伏せて応えた。
宇多川は桜井を見た。ある光景が思い出された。
生徒たちに着任の挨拶をする新任教師の姿だった。
その教師は緊張しながらも目は希望に輝いていた。
宇田川純一郎。
431 :
10/12:2005/12/12(月) 21:37:54 ID:???
もし校庭の痴女が桜井先生だとわかったら一緒にいたストッキング男は誰かということになる。
それは困ります。ですから悪者の私としては自己保身のためにも…けっこう仮面には謎の人であって
もらわねばなりません。おそらく校舎からは遠すぎてあれが誰なのかはわからなかったでしょう。
私と桜井先生は侵入者を追いかけたけど見失ったということにします。
「宇田川先生……」
「いじわるな私は今後もあなたの監視を続けますよ さきほどあなたが切った啖呵が間違っていると
確認するためにも… いいですね 桜井先生」
「はい!」
宇田川が公園から学校へと続く坂を上っていると、学校の方角から池田と清水が走ってきた。
すれちがいざまに宇田川は「そのの公園の植え込みの中」と告げた。ふたりは釈然としない
表情で、後ろ手に軽い調子で歩く宇多川を見た。
────こうして「変態カップル乱入事件」はうやむやのうちに迷宮入りとなった
けっこう仮面と桜井とを結びつけて考える奴も誰もいなかった いいかげんなもんだ!
当日のテストも時間をずらしてそのまま行われた 事件で延期になると期待していた奴らは不平たらたらだ
ただ 予定がずれたせいで放課後のオレへの「事情聴取」は延期された 期日は未定… いまだに事情聴取は
行われる気配もない… いいかげんなもんだ!
432 :
11/12:2005/12/12(月) 21:38:22 ID:???
号外 けっこう仮面校庭でSMショー 謎のパンスト男も共演
どお? あのあともう一度宇田川先生の所に嘆願に行ったらさ あっさりOKしてくれたのよ!
お土産に持っていった「パンスト男」のアップの写真がよかったのかなあ! 顔とお尻が鮮明に
写っているやつ! かわりにネガごと取り上げられちゃったけど! あはは〜
実力試験 成績発表
二年
1 2-B 池田 秀一
2 2-B 清水 まり
3 2-D 井上 明
4 2-A 塚本 祐子
ざわめきが周囲を満たしていた。
「ありゃ! トップ取っちまった!」
さすがに池田は驚いた。
「悪りぃなあ! 一年間も遊んでた奴が勝っちまってさ!」
笑顔で振り返り清水を見た。目が据わっていた。閉められたままの口元からつぶやきが漏れる。
「うふふふふふふっふふふふっふ」彼女は池田ににじり寄っていった。後ずさりながら池田が
おい清水、と戸惑った声を出した。清水は池田の首に手を回し、唇を、ぶちゅ!!と重ねた。
周囲の同級生たちは、おおっ!!と仰天した。あまりのことに場を沈黙が支配した。ちゅぽん、と
音を立てて唇が離れる。清水はうふふふふとつぶやきながら、肩をいからせて、去っていった。
あとにはざわめく同級生たちと呆然とする池田が残された。
433 :
12/12:2005/12/12(月) 21:39:00 ID:???
それからもうひとつ あのドタバタで桜井の露出狂も治っちまったそうだ 全校生徒に
ストリップを見てもらって満足しちまったんだとか… まったくいいかげんな────
「残念そうね池田君 もう先生のストリップが見れなくて」
「あ──? 別に残念なんかじゃ」「変わりに私がやりましょうか? ストリップを?」
池田の心臓がどきんと跳ねた。
「試験の成績で私を抜いた御ホウビもまだですし…… もちろん私でよければですけど」
「マ…マジ?」
「ええマジです」
「ちょちょっと待ってよ二人とも! 私も一応教師なんだからそういう話を見過すわけには…」
清水がキッと桜井に目を向けた。「わ」桜井は思わずびびった。清水の目は動かない。
桜井はあせった。
「え〜とあのっ 私別にその…」どっどうしよう 教師として不純異性交遊を黙認するわけにも
いかないし…… かといって口出しできる立場でもないし… えーとえーと
「あ…」
桜井は頭がくらくらして来た。
「切れそう…」
「こら」
池田が思わず声を出した。
「しっかりしろよ先生!」
「だ 大丈夫大丈夫…」
「先生っ!」
Look at ME!! おわり