だいらんど連載中

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「ハイ、以上でアンケートはおしまいです!! 御協力ありがとうございました」
「いえ」
「結果は他のクラス委員長の方のと合わせて新聞の廃刊号に掲載されますので」
「はい 廃刊号?」
「そうなのよ〜〜 聞いてよ聞いてよ」
 アンケートは終了したが加藤の電話は続いた。
「宇田川の奴がさ〜 あのけっこう仮面の写真が気に入らなかったみたいで…
 いきなり新聞廃刊だってさ これって言論弾圧じゃん 権力の横暴だよね」
「あらあら」
「ところで話はかわるけど 清水さんと池田くんって…どっちが先に声をかけたの?
 あ いや これは新聞とは関係ないんだけどさ! 純粋に個人的な興味で…
 だってあれじゃん 二人って全然タイプ違うしさ! 学年トップの学級委員長と
 留年ギリギリの茶髪くんとでさ! 清水さんがナンパされたのかな〜とか」
「…加藤さんは中学別なんでしたっけ どっちが…と言えば私が池田君をナンパしたことに
 なるのかしら 私と池田君は中学からずっと一緒で…」
「へ〜」
「でも中学ではライバル同士で仲は悪かったんですよ 池田君も今とは全然違ってて…」
「そんでさ あんた達… うまく行ってんの?」
「多少の問題はありましたが…」
 清水の口元に隠し切れない笑みが浮かんだ。
「障害はすべて取り除かれたはずです」

 その頃、池田の顔面は桜井の胸に押し付けられていた。
4102/7:2005/12/09(金) 20:15:04 ID:???


       Look at ME!!
4113/7:2005/12/09(金) 20:15:41 ID:???
夜 学校 宿直室

「ほぉ〜ら どう? 女の子の体は 柔らかいでしょ?」
「……」どうする? いいのかこのままやっちまって…
 池田の心臓がどきんどきんと高鳴る。それは次第に大きくなっていった。
ここでやっちまったら正気に戻った桜井は教師をやめるなどと言い出しかねない…
 桜井が池田の首筋をちろちろと舐め始めた。
(だめだもうこれ以上耐えられん残念! 帰る!)
 池田は立ち上がった。そして次の瞬間ズボンの裾を桜井に引っ張られて倒れた。
「そうやってすぐ逃げる!」池田の顔面に桜井のお尻が押し付けられた。
「ほ〜ら ほ〜ら すぐに気持ちよくなるからね〜」チャックの下ろされる音が響く。
(もうダメ限界 これ以上我慢しろったって無理だ! なるようになれっ)
 ところが桜井は無言のままで池田のチャックを上げた。そして池田に背を向けたまま
もそもそと部屋の角に移動すると頭から毛布をかぶった。
「もしかして…正気に戻った?」こくん。池田は脱力のあまり腰を抜かした。
「なんでぇ〜〜…」じゃあもう用もないみたいだし、帰るぜオレ、と池田は言った。
 扉を開ける池田に桜井が声をかけた。もし池田君が我慢してくれなかったら私、教師を
やめなきゃならないところだった…
 池田は気にすんなよ、と言って扉を閉めた。桜井はありがとう…と応えた。
 一部始終を窓から覗く影に二人は気づかなかった。
4124/7:2005/12/09(金) 20:16:23 ID:???
朝 学校

「フラれたぁ〜?」清水は嫌そうな顔で言った。桜井は顔を赤くしていた。
 まあそういうわけでまたオレ達で面倒みることになったから…と池田は告げた。
清水は二人の間に流れる微妙な空気を察知した。
「ゆうべ…何かあったのですか?」
 二人の反応はわかりやすいものだった。彼らは同時にぎくっと驚いた。
「……やっちゃったのですか?」清水は目を曲げて聞いた。
「ばっばかいうなよ! なっなあ」「そっそっ そうよね 私たち何にも…」
 清水の額は寄る一方だった。

昼 学校 2-B 英語

 宇田川の授業は相変わらずぼそぼそと続いていた。ほとんどの生徒は真面目に聞いていない。
授業のつまらなさだけからではなかった。池田秀一がノートをとっていた。しかも宇田川の授業で。
「頭打ったんじゃね〜の?」噂が耳に届くと池田は睨み付けた。途端に沈黙がクラスを支配する。
 ぼそぼそと語りながら宇田川は横目でそれを見ていた。

昼 学校 職員室 会議中

 まことに残念なことですが…先日の中間試験で不正行為がなされた疑いがあります。現在まだ
調査中ですので実名は伏せますが…事前にある教師がある生徒に問題を洩らしていたようなのです。
確かにその生徒の成績は他の科目に比べてその科目だけ極端に高くなっています。さらにこの生徒と
教師は不純な関係にあるとの噂もあり…調査の結果が出しだいしかるべき処置を…
4135/7:2005/12/09(金) 20:17:29 ID:???
放課後 校舎裏 焼却炉前

 生徒たちがほうきで校庭を掃く中、桜井はただ一人たたずんでいた。そこにゴミ箱をもった
清水がやって来た。桜井は清水にあやまった。迷惑ばかりかけてごめんなさい。昨夜はほんとに
なんにもなかったの。清水は聞いているのかいないのかゴミ箱を逆さにして中身を焼却炉に入れた。
さらに桜井は聞いた。ねえ…清水さん… 弱弱しい声の調子に清水は振り向いた。
宇田川先生ってなんであんなに池田君のこと敵視するのかしら…

芝生に二人は座っていた。

 うちの高校の校則には髪の色に関する規定がありません というか私たちが入学した年度から
自由になったのです それで池田君は入学式の時… 何を勘違いしたのか…
「あの髪に染めてきたのです!」
「似合いもしないのに!」
「カッコイイと思っているのは自分だけなのに!」
 そして宇田川先生は一目見て池田君を劣等生と決め付けてしまいました 校則の変更に最後まで
反対したのも宇田川先生だったと後で聞きました がんばっても宇田川先生は認めてはくれません
池田君もあの性格ですから溝は深くなる一方で…
「そんな確執が今まで続いてきたのです もう一年以上も!」
 桜井は無言だった。清水が突然に聞いた。
「ところで先生 池田君のこと好きですか?」
「うん」うつむいたままの桜井は素直に答えてしまったことにハッと気がついてあわてて否定した。
「もももちろん生徒としてよ? へへへんな意味じゃなくて」清水は疑わしそうな顔だった。
「清水さんのことだって好きだし〜 他の生徒もみんな好きだし〜」清水は眉をひそめ続けた。
4146/7:2005/12/09(金) 20:18:15 ID:???
放課後 校庭

 あとからやってきた池田に清水は紙袋を手渡した。それは清水がここ一年で使ったノート全部だった。
「敵に塩を送るつもりかよ?」清水は勝ち誇った笑顔ではい!と応えた。
「塩不足でヨレヨレの人に勝ったところで…余計なお世話でしたら持って帰りますけど?」
 池田はしばらく紙袋を眺め、借りる、と言った。
「あとで後悔すんじゃね〜ぞ」「ぜひ後悔させてくださいな」桜井はそんなふたりのやりとりを
見て表情を持ち直した。それで、池田は桜井に向き直った。「あんたの用って言うのは?」
「えーっとその 今日の職員会議で…ごめんなさいなんでもないの 勉強がんばってね…」

夜 桜井自宅

 桜井は電気を消した部屋の中、布団の上でひざを抱えて座っていた。隣の部屋からニュース番組
の音が聞こえてくる。

 もうこれ以上池田君たちに甘えられない… もうこれ以上池田君たちを巻き込んじゃいけない…
だってこれは私の…教師としての仕事だもの! あなたたちを見ていて勇気を得ることができました!
がんばって池田君! 私もがんばるから!

朝 校庭

「宇田川先生 お お話がありますっ!」
4157/7:2005/12/09(金) 20:19:02 ID:???
朝 学校 相談室

「あの子は決して不正行為をする様な子じゃありません! ですからそっとしておいてあげて下さい!
 池田君も今はやる気を出しているんですから!」
 一気に言い切った桜井はハアハアと息を整えた。
「えらく御執心のようですなあ池田秀一に 何かありましたかな?」宇田川の返事に桜井は顔を赤くした。
「なっ何もありません 想像でおかしなことを言うのはやめてください!」
「…桜井先生…」宇田川は煙草を消した。
「プライバシーを守りたければ窓をちゃんと閉めた方がいいでしょう」
 そう言うと宇田川はソファーから立ち上がった。
「特に学校の宿直室で生徒と逢引なさる時などは…もう少し用心なさってしかるべきかと…」
 見られていた。

                          7話 おわり